(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】外壁パネル補修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240717BHJP
E04F 13/12 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
E04G23/02 A
E04F13/12 Z
(21)【出願番号】P 2021004692
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006910
【氏名又は名称】株式会社淀川製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 康寛
(72)【発明者】
【氏名】野田 智
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-096186(JP,A)
【文献】特開2018-040237(JP,A)
【文献】実開平07-021208(JP,U)
【文献】国際公開第2008/004285(WO,A1)
【文献】特開平08-284430(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110656706(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
E04F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁に配置される外壁パネルの隆起が解消される隆起解消工程を備え、
前記外壁パネルが、
芯材と、
前記芯材より前記建築物の外側に配置される外装板とを備え、
前記外装板が前記建築物の外側に向かって隆起するよう変形した隆起部を有する外壁パネル補修方法であって、
前記芯材のうち前記外装板の前記隆起部に対向する部分が前記建築物の内側から前記隆起部が露出するように除去される除去工程と、
前記除去工程の後、前記外装板に対向する箇所に接着層が形成されている補強体が前記建築物の内側から前記外装板に対して接触させられる補強体接触工程と、
前記除去工程の後、前記芯材の前記隆起部に対向する部分があった箇所に前記建築物の内側から充填体が配置される充填体配置工程とを前記隆起解消工程に加えて備え、
前記隆起解消工程が、前記補強体接触工程の後かつ前記充填体配置工程の前に前記建築物の内側に設けられる引寄手段によって前記隆起部が前記補強体へ引き寄せられ接触させられる工程を有することを特徴とする外壁パネル補修方法。
【請求項2】
前記外装板が強磁性体製の板であり、
前記引寄手段が磁石を有することを特徴とする請求項1に記載の外壁パネル補修方法。
【請求項3】
前記補強体が強磁性体製の板であることを特徴とする請求項2に記載の外壁パネル補修方法。
【請求項4】
前記充填体が、前記補強体に対向するよう配置される補強対向部を有しており、
前記充填体配置工程において、前記芯材の前記隆起部に対向する部分があった箇所に前記充填体が配置される際、前記充填体の前記補強対向部が前記補強体に接着されることを特徴とする請求項3に記載の外壁パネル補修方法。
【請求項5】
前記補強体が、
前記外装板の前記隆起部に対向するよう配置され前記接着層が形成されている外装対向部と、
前記外装対向部の端部にそれぞれ連なり互いに対向し前記建築物の内側へ向かって突出するよう配置される側面部の対とを有しており、
前記補強体接触工程において、前記補強体の前記外装対向部に前記接着層が形成され、かつ、前記補強体の前記側面部の対に接着層が形成されない状態で、前記補強体が前記外装板に対して接触させられることを特徴とする請求項1に記載の外壁パネル補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネル補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は外壁補修方法を開示する。この外壁補修方法は、養生工程と、穿孔工程と、注入工程と、養生除去工程とを含む。養生工程において、タイルの隆起が生じている建築物のタイル外壁に養生フィルムが形成される。穿孔工程において、タイルの隆起が生じている箇所に孔が穿設される。注入工程において、孔に低粘度の接着剤が注入される。養生除去工程において、接着剤の硬化後に養生フィルムが剥離される。特許文献1に開示されている外壁補修方法によれば、目地の箇所から接着剤が注入されても、それがタイル下の空隙に行き渡るので、十分な接着強度が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された外壁補修方法には、芯材と外装板とを備える外壁パネルへ適用された場合には外装板の隆起が生じている箇所での接着強度の偏りが生じやすくなるという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するものである。その目的は、芯材とこれより建築物の外側に配置される外装板とを備える外壁パネルにおいて隆起が生じた場合に隆起が生じた箇所での接着強度の偏りを抑え得る外壁パネル補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の外壁パネル補修方法が説明される。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
上述された課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、外壁パネル補修方法は、隆起解消工程S254を備える。隆起解消工程S254において、外壁パネル30の隆起が解消される。その外壁パネル30は、建築物20の外壁に配置される。外壁パネル30が、芯材50と、外装板52とを備える。外装板52は、芯材50より建築物20の外側に配置される。外装板52が、隆起部70を有する。隆起部70は、建築物20の外側に向かって隆起するよう変形したものである。外壁パネル補修方法は、除去工程S250と、補強体接触工程S252と、充填体配置工程S256とを隆起解消工程S254に加えて備える。除去工程S250において、芯材50のうち次に述べられる部分が建築物20の内側から除去される。その部分は、外装板52の隆起部70に対向する部分である。芯材50のうち除去される部分は、その隆起部70が露出するように除去される。補強体接触工程S252において、除去工程S250の後、補強体120,220が建築物20の内側から外装板52に対して接触させられる。その補強体120,220のうち外装板52に対向する箇所に接着層130が形成されている。充填体配置工程S256において、除去工程S250の後、芯材50の隆起部70に対向する部分があった箇所に建築物20の内側から充填体150が配置される。隆起解消工程S254が、次に述べられる工程を有する。その工程は、補強体接触工程S252の後かつ充填体配置工程S256の前に建築物20の内側に設けられる引寄手段によって隆起部70が補強体120,220へ引き寄せられる工程である。
【0008】
補強体120,220へ隆起部70が引き寄せられ接触させられると、その隆起部70は補強体120,220へ接着される。その補強体120,220のうち外装板52に対向する箇所に接着層130が形成されているためである。その隆起部70がその補強体120,220へ接着されるので、外装板52の隆起が解消する。その際、芯材50のうち隆起部70に対向する部分が建築物20の内側から除去されており、かつ、補強体120,220が建築物20の内側から外装板52に対して接触させられる。これにより、補強体120,220のうち外装板52に対向する箇所に均等に接着層130を形成することが可能になる。その結果、芯材50とこれより建築物20の外側に配置される外装板52とを備える外壁パネル30において隆起が生じた場合に隆起が生じている箇所での接着強度の偏りが抑えられ得る。
【0009】
また、上述された外装板52が強磁性体製の板であることが望ましい。この場合、引寄手段が磁石140を有することが望ましい。
【0010】
外装板52が強磁性体製の板であり、かつ、引寄手段が磁石140を有すると、建築物20の内側から外装板52へ至る孔を補強体120に設ける必要がなくなる。その孔を介して外装板52と引寄手段とを接続する必要もなくなる。その結果、隆起解消工程S254における作業の手間が軽減される。
【0011】
もしくは、上述された補強体120が強磁性体製の板であることが望ましい。補強体120が強磁性体製の板であると、補強体120が常磁性体である場合に比べて引寄手段が有する磁石140によって外装板52を強く引寄せることができる。補強体120が強磁性体製の板であると、補強体120が板状でない場合に比べて引寄手段が有する磁石140を外装板52に近づけることができる。その結果、磁石140の磁力の小ささに起因して隆起部70が十分に引き寄せられなくなる恐れが軽減される。
【0012】
もしくは、上述された充填体150が、補強対向部160を有していることが望ましい。補強対向部160は補強体120に対向するように配置される。この場合、充填体配置工程S256において、芯材50のうち隆起部70に対向する部分があった箇所に充填体150が配置される際、充填体150の補強対向部160が補強体120に接着されることが望ましい。
【0013】
充填体配置工程S256において、芯材50の隆起部70に対向する部分があった箇所に充填体150が配置される際、充填体150の補強対向部160が補強体120に接着される。これにより、補強対向部160が補強体120に接着しない場合に比べて、補強体120が力を受けたときに補強体120は変形し難くなる。補強体120が変形し難くなると、補強体120が隆起部70その他の外装板52から剥がれ難くなる。その結果、外壁パネル30に再び隆起が生じる可能性が低くなる。
【0014】
または、上述された補強体220が、外装対向部260と、側面部262の対とを有していることが望ましい。外装対向部260は、外装板52の隆起部70に対向するよう配置される。外装対向部260には接着層130が形成される。側面部262は、外装対向部260の端部にそれぞれ連なる。側面部262の対は、互いに対向する。側面部262は、建築物20の内側へ向かって突出するよう配置される。この場合、補強体接触工程S252において、補強体220の外装対向部260に接着層130が形成され、かつ、補強体220の側面部262の対に接着層130が形成されない状態で、補強体220が外装板52に対して接触させられることが望ましい。
【0015】
補強体接触工程S252において、補強体220の外装対向部260に接着層130が形成され、かつ、側面部262の対に接着層130が形成されない状態で、補強体220が外装板52に対して接触させられる。これにより、側面部262の対に接着層130が形成された場合にこれが外壁パネル30のいずれかの箇所に直接接着されることに起因する内部応力の発生が抑えられる。内部応力の発生が抑えられると、その内部応力に起因する外壁パネル30の新たな変形が生じる恐れが低くなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、芯材とこれより建築物の外側に配置される外装板とを備える外壁パネルにおいて隆起が生じた場合に隆起が生じた箇所での接着強度の偏りを抑え得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる外壁パネルの役割と構成とが示される概念図である。
【
図2】本発明の第1実施形態にかかる外壁パネル補修方法の工程が示されるフローチャートである。
【
図3】本発明の第1実施形態にかかる除去工程の施工完了状況が示される図である。
【
図4】本発明の第1実施形態にかかる外装板に補強体が接触させられた際の外壁パネルの断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態にかかる磁石が補強体に吸付いている状況が示される図である。
【
図6】本発明の第1実施形態にかかる充填体が進入する際の外壁パネルと充填体とが示される図である。
【
図7】本発明の第2実施形態にかかる補強体の外観図である。
【
図8】本発明の第2実施形態にかかる外装板に補強体が接触させられた際の外壁パネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態が説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能は同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返されない。
【0019】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態にかかる外壁パネル30の役割と構成とが示される概念図である。
図1に基づいて、本実施形態にかかる外壁パネル30の役割と構成とが説明される。
【0020】
本実施形態にかかる外壁パネル30は、建築物20の外壁に配置される。本実施形態にかかる外壁パネル30は、芯材50と、外装板52と、内装板54とを備える。芯材50は、外装板52および内装板54の基部となる。外装板52は、芯材50より建築物20の外側に配置される。本実施形態にかかる外装板52は、隆起部70を有する。その隆起部70は、建築物20の外側に向かって隆起する。その隆起部70は外装板52の表面が変形することにより形成されたものである。本実施形態の場合、外装板52は鋼板である。内装板54は芯材50より建築物20の内側に配置される。本実施形態の場合、内装板54も鋼板である。芯材50、外装板52、および、内装板54のより具体的な形態は周知の外壁パネル30と同様である。したがってここではその詳細な説明は繰り返されない。
【0021】
[工程の説明]
以下、本発明の一実施形態が説明される。
図2は、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法の工程が示されるフローチャートである。
図2に基づいて、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法の工程が説明される。
【0022】
本実施形態にかかる外壁パネル補修方法は、上述された外壁パネル30の隆起部70を補修する方法である。本実施形態にかかる外壁パネル補修方法は、除去工程S250と、補強体接触工程S252と、隆起解消工程S254と、充填体配置工程S256とを備える。
【0023】
除去工程S250において、芯材50のうち次に述べられる部分が建築物20の内側から除去される。その部分は、外装板52の隆起部70に対向する部分である。芯材50のうち除去される部分は、その隆起部70が露出するように除去される。
【0024】
補強体接触工程S252において、外壁パネル30の外装板52に対して補強体120が接触させられる。その補強体120の具体的な構成は後述される。
【0025】
隆起解消工程S254において、外装板52の隆起部70は引寄手段により補強体120へ引き寄せられる。その引寄手段は、建築物20の内側に設けられる。本実施形態にかかる引寄手段の具体的な説明は後述される。
【0026】
充填体配置工程S256において、芯材50のうち隆起部70に対向する部分があった箇所に充填体150が配置される。その充填体150は建築物20の内側からその箇所へ進入する。
【0027】
[動作の説明]
以下、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法における具体的な動作が説明される。
【0028】
まず、作業者は、上述された外壁パネル30の内装板54の一部を切取る。内装板54のうち切取られる個所は、建築物20の外側から外装板52を見たとき隆起部70の背面にあたる箇所である。その内装板54の一部は、建築物20の内側から切取られる。内装板54の一部が切取られると上述された外壁パネル30の芯材50が露出する。作業者は、露出した芯材50を除去する(S250)。これにより、芯材50のうち外装板52の隆起部70に対向する部分が建築物20の内側から除去されることとなる。
図3は、本実施形態にかかる除去工程S250の施工完了状況が示される図である。
図3から明らかなように、除去工程S250の施工完了時点で、外装板52の隆起部70が露出している。
【0029】
芯材50が除去されると、作業者は補強体120に接着剤を塗布する。本実施形態の場合、補強体120は平坦な鋼板である。接着剤が塗布されるのは、その鋼板のうち外装板52に対向させられる面である。この接着剤の塗布により、補強体120の表面に接着層130が形成される。補強体120の表面に接着層130が形成されると、作業者は、外壁パネル30の外装板52に対して補強体120を接触させる(S252)。このとき、作業者は、建築物20の内側から補強体120を外装板52に接触させる。
図4は、外装板52に補強体120が接触させられた際の外壁パネル30の断面図である。
図4から明らかなように、このとき外装板52の隆起部70は補強体120から離れたままとなっている。
【0030】
外装板52に補強体120が接触させられると、作業者は、補強体120に磁石140を押付ける。本実施形態の場合、6個の磁石140が縦横に並ぶように補強体120に押付けられる。これにより、磁石140は建築物20の内側に設けられることとなる。上述されたように、本実施形態の場合、補強体120は平坦な鋼板である。これにより、それらの磁石140は補強体120に吸付く。さらに、補強体120を介して外装板52がそれらの磁石140に引き寄せられる(S254)。
図5は、それらの磁石140が補強体120に吸付いている状況が示される図である。それらの磁石140が、本実施形態にかかる引寄手段である。外装板52の隆起部70は、それらの磁石140に引き寄せられることで、補強体120に密着することとなる。その結果、外壁パネル30の隆起が解消される。
【0031】
外装板52の隆起部70が補強体120に密着し、かつ、隆起部70が接着層130によって補強体120に接着されると、作業者は磁石140を補強体120から取外す。磁石140が取外されると、作業者は、芯材50の隆起部70に対向する部分があった箇所に充填体150を進入させる。本実施形態の場合、その充填体150は建築物20の内側からその空間へ進入させられる。これにより、その空間に充填体150が配置されることとなる(S256)。
図6は、充填体150が進入する際の外壁パネル30と充填体150とが示される図である。本実施形態の場合、充填体150が、平板状の補強対向部160と、側面部162の対と、被覆部164と、代替芯材166とを有している。
図6から明らかなように、補強対向部160は、補強体120に対向するよう配置される。補強対向部160には接着剤が塗布される。これにより、芯材50のうち隆起部70に対向する部分があった箇所に充填体150が配置される際、充填体150の補強対向部160が補強体120に接着されることとなる。側面部162は、補強対向部160の端部にそれぞれ連なる。側面部162は、互いに対向する。側面部162は、建築物20の内側へ向かって突出するよう配置される。本実施形態の場合、補強対向部160と側面部162の対とは一体となっている。本実施形態の場合、側面部162の対には接着剤が塗布されない。これにより、補強対向部160に図示されない接着層が形成され、かつ、側面部162の対に接着層が形成されない状態で、充填体150が補強体120に接触させられることとなる。本実施形態の場合、被覆部164は、板状の部材である。被覆部164は、側面部162に接続される。被覆部164の一方の端部は、側面部162の対の一方の端部に接続される。被覆部164の他方の端部は、側面部162の対の他方の端部に接続される。代替芯材166は、補強対向部160と側面部162の対と被覆部164とによって囲まれる空間に収容される。本実施形態の場合、代替芯材166は芯材50と同一の素材からなる。芯材50の隆起部70に対向する部分があった箇所への充填体150の進入が完了すると、作業者は周知の手段によって被覆部164を内装板54に固定する。これにより、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法は完了する。
【0032】
[本実施形態にかかる効果の説明]
本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、補強体120へ外装板52が引き寄せられ接触させられると、その外装板52は補強体120へ接着される。その補強体120のうち外装板52に対向する箇所に接着層130が形成されるうえ、補強体120へ外装板52が引き寄せられたためである。その外装板52がその補強体120へ接着されるので、外装板52の隆起が解消する。その際、芯材50が建築物20の内側から除去されており、かつ、補強体120が建築物20の内側から外装板52に対して接触させられる。これにより、補強体120のうち外装板52に対向する箇所に均一な厚さの接着層130を形成することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、外装板52が鋼板であり、かつ、引寄手段が磁石140を有するので、建築物20の内側から外装板52へ至る孔を補強体120に設ける必要がなくなる。その孔を介して外装板52と引寄手段とを接続する必要もなくなる。その結果、隆起解消工程S254における作業の手間が軽減される。
【0034】
また、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、補強体120が鋼板なので、補強体120が常磁性体である場合に比べて磁石140によって外装板52を強く引寄せることができる。補強体120が鋼板なので、補強体120が板状でない場合に比べて磁石140を外装板52に近づけることができる。その結果、磁石140の磁力の小ささに起因して隆起部70が十分に引き寄せられなくなる恐れが軽減される。
【0035】
<第2実施形態>
本実施形態にかかる外壁パネル補修方法は、第1実施形態にかかる外壁パネル補修方法と同様に、外壁パネル30の隆起部70を補修する方法である。本実施形態にかかる外壁パネル補修方法も、除去工程S250と、補強体接触工程S252と、隆起解消工程S254と、充填体配置工程S256とを備える。
【0036】
本実施形態の場合、補強体接触工程S252において、第1実施形態にかかる補強体120とは異なる補強体220が建築物20の内側から外装板52に対して接触させられる。
図7は、本実施形態にかかる補強体220の外観図である。本実施形態にかかる補強体220は鋼製である。本実施形態にかかる補強体220は、外装対向部260と、側面部262の対とを有している。外装対向部260は、外装板52の隆起部70に対向するよう配置される。側面部262は、外装対向部260の端部にそれぞれ連なる。側面部262の対は、互いに対向する。側面部262は、建築物20の内側へ向かって突出するよう配置される。
【0037】
本実施形態の場合、補強体接触工程S252において、作業者は、補強体220に接着剤を塗布する。接着剤が塗布されるのは、補強体220の外装対向部260のうち外装板52に対向させられる面である。側面部262には接着剤は塗布されない。この接着剤の塗布により、外装対向部260のうち外装板52に対向させられる面に接着層130が形成される。その面に接着層130が形成されると、作業者は、外壁パネル30の外装板52に対して補強体220を接触させる。このとき、作業者は、建築物20の内側から補強体220を外装板52に接触させる。これにより、補強体220の外装対向部260に接着層130が形成され、かつ、補強体220の側面部262の対に接着層130が形成されない状態で、補強体220が外装板52に対して接触させられることとなる。
図8は、外装板52に補強体220が接触させられた際の外壁パネル30の断面図である。
【0038】
本実施形態の場合、隆起解消工程S254において、作業者は、補強体220の外装対向部260のうち建築物20の内側に対向する面に磁石140を押付ける。これにより、磁石140は建築物20の内側に設けられることとなる。本実施形態の場合、外装対向部260の形状は平坦な板状である。これにより、それらの磁石140は補強体220の外装対向部260に吸付く。さらに、補強体220を介して外装板52がそれらの磁石140に引き寄せられる。
【0039】
本実施形態の場合、充填体配置工程S256において、作業者は、芯材50の隆起部70に対向する部分があった箇所へ、第1実施形態にかかる充填体150に代えて図示されない直方体状の充填体を進入させる。その充填体の材質は外壁パネル30の芯材50と同一である。本実施形態の場合もその直方体状の充填体は建築物20の内側からその空間へ進入させられる。これにより、その空間に充填体が配置されることとなる。本実施形態の場合、その空間にその充填体が配置されると、作業者は、図示されない板状の被覆材で内装板54のうち切取られた部分を被覆する。
【0040】
その他の点は第1実施形態にかかる外壁パネル補修方法と同様である。したがって、ここではその詳細な説明は繰り返されない。
【0041】
[本実施形態にかかる効果の説明]
本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、補強体220へ外装板52が引き寄せられ接触させられると、その外装板52は補強体220へ接着される。その補強体220のうち外装板52に対向する箇所に接着層130が形成されるうえ、補強体220へ外装板52が引き寄せられたためである。その外装板52がその補強体220へ接着されるので、外装板52の隆起が解消する。その際、芯材50が建築物20の内側から除去されており、かつ、補強体220が建築物20の内側から外装板52に対して接触させられる。これにより、補強体220のうち外装板52に対向する箇所に均一な厚さの接着層130を形成することが可能になる。
【0042】
また、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、外装板52が鋼板であり、かつ、引寄手段が磁石140を有するので、建築物20の内側から外装板52へ至る孔を補強体120に設ける必要がなくなる。その孔を介して外装板52と引寄手段とを接続する必要もなくなる。その結果、隆起解消工程S254における作業の手間が軽減される。
【0043】
また、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、側面部262の対に接着層130が形成された場合にこれが外壁パネル30のいずれかの箇所に直接接着されることに起因する内部応力の発生が抑えられる。内部応力の発生が抑えられると、その内部応力に起因する外壁パネル30の新たな変形が生じる恐れが低くなる。
【0044】
[変形例の説明]
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではない。もちろん、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよい。
【0045】
例えば、本発明にかかる引寄手段は磁石140に限定されない。引寄手段は例えば吸引装置であってもよい。この吸引装置は空気を吸引する。その場合、補強体は孔が形成されている板状部を有していることが望ましい。その場合、隆起解消工程S254において、吸引装置は、その板状部に形成されている孔を介して、外装板52と補強体との隙間の空気を吸引する。外装板52と補強体との隙間の空気が吸引されることにより、外装板52は補強体120へ引き寄せられる。
【0046】
また、外装板52の素材は鋼に限定されない。外装板52の素材は鋼以外の強磁性体であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
20…建築物
30…外壁パネル
50…芯材
52…外装板
54…内装板
70…隆起部
120,220…補強体
130…接着層
140…磁石
150…充填体
160…補強対向部
162,262…側面部
164…被覆部
166…代替芯材
260…外装対向部