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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】信号機監視装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 5/18 20060101AFI20240717BHJP
   B61L 23/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B61L5/18 A
B61L23/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021004850
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109500
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】猪谷 多聞
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-143368(JP,A)
【文献】特開2013-014265(JP,A)
【文献】特開2000-241458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 5/18
B61L 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道に設置され、複数の信号灯器の点灯/非点灯を用いて複数の信号現示を切替え可能に表す信号機における信号灯器の動作電流及び動作電圧のうちの少なくとも一方に関する検出結果を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記検出結果に基づいて、前記信号機における現示変化を検出する現示変化検出部と、
前記現示変化検出部で検出された前記現示変化の発生時点に基づいて、当該現示変化に伴って前記検出結果が不安定となる不安定期間を設定する期間設定部と、
前記取得部で取得された前記検出結果について、前記不安定期間の期間中に取得されたものか否かを識別する識別処理部と、
前記取得部で取得された前記検出結果、及び前記識別処理部による識別結果、に基づいて前記信号機の状態を表す状態情報を生成する情報生成部と、
前記情報生成部で生成された前記状態情報を出力する情報出力部と、
を備え
前記期間設定部が、一度設定した前記不安定期間の期間中に前記現示変化検出部において新たな現示変化が検出された場合には、前記新たな現示変化の発生時点に基づいて前記不安定期間を延長するとともに、延長後の前記不安定期間において最初の現示変化が検出されてからの経過時間と所定のタイムアウト閾値との比較に基づいて前記不安定期間の延長を停止することを特徴とする信号機監視装置。
【請求項2】
鉄道に設置され、複数の信号灯器の点灯/非点灯を用いて複数の信号現示を切替え可能に表す信号機における信号灯器の動作電流及び動作電圧のうちの少なくとも一方に関する検出結果を取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記検出結果に基づいて、前記信号機における現示変化を検出する現示変化検出部と、
前記現示変化検出部で検出された前記現示変化の発生時点に基づいて、当該現示変化に伴って前記検出結果が不安定となる不安定期間を設定する期間設定部と、
前記取得部で取得された前記検出結果について、前記不安定期間の期間中に取得されたものか否かを識別する識別処理部と、
前記取得部で取得された前記検出結果、及び前記識別処理部による識別結果、に基づいて前記信号機の状態を表す状態情報を生成する情報生成部と、
前記情報生成部で生成された前記状態情報を出力する情報出力部と、
を備え
前記期間設定部が、一度設定した前記不安定期間の期間中に前記現示変化検出部において新たな現示変化が検出された場合には、前記新たな現示変化の発生時点に基づいて前記不安定期間を延長するとともに、延長後の前記不安定期間において最初の現示変化が検出されてからの経過時間と所定のタイムアウト閾値との比較に基づいて、前記信号機において信号現示の切替え異常が生じているか否かを判定し、
前記情報生成部が、前記状態情報に加えて、前記切替え異常に関する判定結果を含む情報も生成することを特徴とする信号機監視装置。
【請求項3】
前記情報生成部が、前記取得部で取得された前記検出結果のうち前記識別処理部によって前記不安定期間の期間中に取得されたものではないと判定された検出結果に基づいて、前記信号機において信号現示の異常が生じているか否かを判定し、前記状態情報として、前記信号現示の異常に関する判定結果を含む情報を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の信号機監視装置。
【請求項4】
前記期間設定部が、前記現示変化の発生時点を始点とした所定長さの期間を前記不安定期間として設定することを特徴とする請求項1~のうち何れか一項に記載の信号機監視装置。
【請求項5】
前記期間設定部は、前記現示変化の発生時点を終点とした所定長さの期間も前記不安定期間に加えることを特徴とする請求項に記載の信号機監視装置。
【請求項6】
前記信号機が、予め定められた複数の周期の中から選択された一の周期を有する交流電流及び交流電圧を前記動作電流及び前記動作電圧として動作するものであり、
前記取得部が、前記複数の周期の最小公倍数の整数倍をサンプリング時間とし、当該サンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて前記検出結果を取得することを特徴とする請求項1~に記載の信号機監視装置。
【請求項7】
前記信号機が、予め定められた一の周期を有する交流電流及び交流電圧を前記動作電流及び前記動作電圧として動作するものであり、
前記取得部が、前記周期の整数倍をサンプリング時間とし、当該サンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて前記検出結果を取得することを特徴とする請求項1~に記載の信号機監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路脇に設置された信号機の状態を監視する信号機監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道における列車の通過を制御するために、運転士から視認しやすいように鉄道線路脇の各所に信号機が設置されている。信号機は、複数の信号灯器の点灯/非点灯を用いて複数の信号現示を切替え可能に表す機器であり、従来、このような信号機の状態を監視する装置が用いられている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の装置では、各信号現示における信号機の電球、もしくはLED等の信号灯器の通電状態が計測され、その計測結果に基づいた信号機の異常検知が行われることとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-143368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、信号機では、信号現示の切替えに際して通電状態が変動する場合があるが、このような状態変動中の期間が異常と捉えられると誤検知となってしまう。他方で、このような誤検知を抑制するために、信号現示の切替え時の状態変動を考慮して例えば異常検知に関する判定閾値を緩めに設定すると、その分、検知精度が低下してしまう。
【0005】
従って、本発明は、上記のような事情に着目し、検知精度の低下を抑えつつ、信号現示の切替え時の状態変動による信号機異常の誤検知を抑制することができる信号機監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、信号機監視装置は、鉄道に設置され、複数の信号灯器の点灯/非点灯を用いて複数の信号現示を切替え可能に表す信号機における信号灯器の動作電流及び動作電圧のうちの少なくとも一方に関する検出結果を取得する取得部と、前記取得部で取得された前記検出結果に基づいて、前記信号機における現示変化を検出する現示変化検出部と、前記現示変化検出部で検出された前記現示変化の発生時点に基づいて、当該現示変化に伴って前記検出結果が不安定となる不安定期間を設定する期間設定部と、前記取得部で取得された前記検出結果について、前記不安定期間の期間中に取得されたものか否かを識別する識別処理部と、前記取得部で取得された前記検出結果、及び前記識別処理部による識別結果、に基づいて前記信号機の状態を表す状態情報を生成する情報生成部と、前記情報生成部で生成された前記状態情報を出力する情報出力部と、を備え、前記期間設定部が、一度設定した前記不安定期間の期間中に前記現示変化検出部において新たな現示変化が検出された場合には、前記新たな現示変化の発生時点に基づいて前記不安定期間を延長するとともに、延長後の前記不安定期間において最初の現示変化が検出されてからの経過時間と所定のタイムアウト閾値との比較に基づいて前記不安定期間の延長を停止することを特徴とする。
また、信号機監視装置は、鉄道に設置され、複数の信号灯器の点灯/非点灯を用いて複数の信号現示を切替え可能に表す信号機における信号灯器の動作電流及び動作電圧のうちの少なくとも一方に関する検出結果を取得する取得部と、前記取得部で取得された前記検出結果に基づいて、前記信号機における現示変化を検出する現示変化検出部と、前記現示変化検出部で検出された前記現示変化の発生時点に基づいて、当該現示変化に伴って前記検出結果が不安定となる不安定期間を設定する期間設定部と、前記取得部で取得された前記検出結果について、前記不安定期間の期間中に取得されたものか否かを識別する識別処理部と、前記取得部で取得された前記検出結果、及び前記識別処理部による識別結果、に基づいて前記信号機の状態を表す状態情報を生成する情報生成部と、前記情報生成部で生成された前記状態情報を出力する情報出力部と、を備え、前記期間設定部が、一度設定した前記不安定期間の期間中に前記現示変化検出部において新たな現示変化が検出された場合には、前記新たな現示変化の発生時点に基づいて前記不安定期間を延長するとともに、延長後の前記不安定期間において最初の現示変化が検出されてからの経過時間と所定のタイムアウト閾値との比較に基づいて、前記信号機において信号現示の切替え異常が生じているか否かを判定し、前記情報生成部が、前記状態情報に加えて、前記切替え異常に関する判定結果を含む情報も生成することを特徴とする。
【0007】
上記の信号機監視装置によれば、信号機における現示変化の発生時点に基づいて不安定期間が設定される。そして、信号機の異常検知に使われる動作電流及び動作電圧のうちの少なくとも一方に関する検出結果について不安定期間の期間中に取得されたものか否かが識別される。これにより、検出結果の変動が想定される不安定期間の検出結果を除いた異常検知等が可能となり、判定閾値を厳密に設定して検知精度の低下を抑えたとしても、信号現示の切替え時の状態変動による信号機異常の誤検知を抑制することができる。
【0008】
ここで、上述のように、前記期間設定部が、一度設定した前記不安定期間の期間中に前記現示変化検出部において新たな現示変化が検出された場合には、前記新たな現示変化の発生時点に基づいて前記不安定期間を延長することが好適である。
【0009】
信号機においては、一旦他の信号現示に切り替わった後に最終的に目的とする信号現示に切り替わるというように、複数回の切替えを経て信号現示が切り替わる場合がある。上記の構成によれば、切替えが繰り返される場合に不安定期間が延長されるので、複数回の切替えを経て信号現示が切り替わる場合においても信号機異常の誤検知を効果的に抑制することができる。
【0010】
また、上述のように、前記期間設定部が、延長後の前記不安定期間において最初の現示変化が検出されてからの経過時間と所定のタイムアウト閾値との比較に基づいて、前記信号機において信号現示の切替え異常が生じているか否かを判定し、前記情報生成部が、前記状態情報に加えて、前記切替え異常に関する判定結果を含む情報も生成することが更に好適である。
【0011】
複数回の切替えを経て信号現示が切り替わる場合があるといっても、そのような切替えが余りにも長く続く場合には、信号機に切替え異常が生じている可能性が高い。上記の構成によれば、このような切替え異常が判定されて状態情報に反映されるので、信号機の異常に関する検知精度を向上させることができる。
【0012】
また、前記情報生成部が、前記取得部で取得された前記検出結果のうち前記識別処理部によって前記不安定期間の期間中に取得されたものではないと判定された検出結果に基づいて、前記信号機において信号現示の異常が生じているか否かを判定し、前記状態情報として、前記信号現示の異常に関する判定結果を含む情報を生成することが好適である。
【0013】
この構成によれば、不安定期間の期間中に取得されたものではないと判定された検出結果に基づく異常判定の判定結果そのものが状態情報に反映されるので、情報の受取り側における処理負担を軽減することができる。
【0014】
また、前記期間設定部が、前記現示変化の発生時点を始点とした所定長さの期間を前記不安定期間として設定することが好適である。
【0015】
この構成によれば、信号現示の切替えに伴う状態変動が生じる可能性が高い現示変化の発生後の一定期間が不安定期間として設定されるので、状態変動による信号機異常の誤検知を効果的に抑制することができる。
【0016】
また、前記期間設定部は、前記現示変化の発生時点を終点とした所定長さの期間も前記不安定期間に加えることが更に好適である。
【0017】
この構成によれば、現示変化の発生前の一定期間についても、予備変動的な状態変動が生じる可能性を考慮して不安定期間に加えられるので、信号機異常の誤検知を一層効果的に抑制することができる。
【0018】
また、前記信号機が、予め定められた複数の周期の中から選択された一の周期を有する交流電流及び交流電圧を前記動作電流及び前記動作電圧として動作するものであり、前記取得部が、前記複数の周期の最小公倍数の整数倍をサンプリング時間とし、当該サンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて前記検出結果を取得することが好適である。
【0019】
例えば、日本では、50Hz(1/50秒周期)及び60Hz(1/60秒周期)の交流電源が商用電源として用いられており、国内の鉄道に設置される信号機も、このような商用電源によって駆動されている。上記の構成によれば、複数の周期の最小公倍数の整数倍であるサンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果が取得される。これにより、サンプリング時間が信号機の電源周波数の周期と一致するので、両者の不一致に起因する誤差等が抑えられてサンプリング精度を向上させることができる。
【0020】
また、前記信号機が、予め定められた一の周期を有する交流電流及び交流電圧を前記動作電流及び前記動作電圧として動作するものであり、前記取得部が、前記周期の整数倍をサンプリング時間とし、当該サンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて前記検出結果を取得することが好適である。
【0021】
信号機が予め定められた一の周期の交流電源によって駆動される場合、上記の構成によれば、サンプリング時間が信号機の電源周波数の一の周期と一致するので、両者の不一致に起因する誤差等が抑えられてサンプリング精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
上述の信号機監視装置によれば、検知精度の低下を抑えつつ、信号現示の切替え時の状態変動による信号機異常の誤検知を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】信号機監視装置の一実施形態の概略構成図である。
図2図1に示されている信号機監視装置が有する機能ブロックを示す模式図である。
図3図1及び図2に示されている信号機監視装置における検出結果の取得から信号機の状態情報の生成に至るまでの処理の流れを表した模式的なフローチャートである。
図4図1及び図2に示されている信号機監視装置における検出結果の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
図5図3に示されている期間設定処理において不安定期間が設定される様子を示す模式図である。
図6】一の信号現示が非点灯状態(OFF状態)へと変化した後、タイムラグを経て他の信号現示が点灯状態(ON状態)へと変化する場合に不安定期間が設定される様子を示す模式図である。
図7】一の信号現示が非点灯状態(OFF状態)へと変化した後、他の信号現示の短期間の点灯を経て更に他の信号現示が点灯状態(ON状態)へと変化する場合に不安定期間が設定される様子を示す模式図である。
図8】不安定期間における最初の現示変化が検出されてからの経過時間に基づいて信号現示の切替え異常が生じている旨の判定が下される例を示す図である。
図9図3のフローチャートで表される処理によって信号機の状態情報が生成される様子を、図4に示されているタイムチャートに応じて示す図である。
図10図2に示されている情報出力部が読出し要求に応じて信号機の状態情報を出力する処理の流れを表した模式的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、信号機監視装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、信号機監視装置の一実施形態の概略構成図である。
【0026】
信号機監視装置1は、鉄道に設置された信号機の状態を監視する装置であり、図1に示したように、電流信号処理部11と、電圧信号処理部12と、MPU13と、RS485伝送部14と、電源部15と、発振子16と、リセットIC17と、を備えている。
【0027】
電流信号処理部11は、電流センサ2が接続され、電流センサ2が検出した信号灯器の電流値(電流波形)の信号処理を行う。ここで、電流信号処理部11は、図1に示した例では1つ設けられているが、複数設けられることとしてもよい。つまり、図1に示した信号機監視装置1は、電流センサ2を1つだけ接続可能としているが、複数接続可能としてもよい。図1に示した例では、電流センサ2が信号機の全体電流を検出するように1つだけ設置されており、信号機監視装置1には、この1つの電流センサ2に応じて電流信号処理部11も1つだけ設けられている。
【0028】
電流信号処理部11は、半波整流回路111と、積分回路112と、第1非反転増幅器113と、第2非反転増幅器114と、を備えている。半波整流回路111は、電流センサ2が検出した電流波形について半波整流を行う回路であり、積分回路112は整流波形に対して積分処理を施して直流波形へと均す回路である。第1非反転増幅器113は、積分回路112を通過した直流波形について、所定倍(例えば3.3倍)に増幅する非反転増幅回路である。第2非反転増幅器114は、第1非反転増幅器113で増幅された直流波形について、さらに所定倍(例えば40倍)に増幅する非反転増幅回路である。第2非反転増幅器114は、直流波形が表わす直流の電流値が小さい場合でも後段のADコンバータにおいて十分な精度でデジタル信号に変換できるように増幅するものである。
【0029】
電圧信号処理部12は、電圧センサ3が接続され、電圧センサ3が検出した電圧値(電圧波形)の信号処理を行う。電圧信号処理部12は、図1に示した例では5つ設けられているが、1つ以上設けられていればよい。つまり、図1に示した信号機監視装置1は、電圧センサ3を最大5つまで接続可能としているが、1つ以上接続可能であればよい。
【0030】
ここで、図1に示した例では、信号機が、複数の信号灯器の点灯/非点灯を用いて5つの信号現示を切替え可能に表すものとなっている。具体的には、1つの赤色灯(R)、2つの黄色灯(Y)、及び1つの緑色灯(G)、の4つの信号灯器の点灯/非点灯を用いて、R現示、YY現示、Y現示、YG現示、G現示、の5つの信号現示を切替え可能に表すものとなっている。そして、電圧センサ3は、5つの信号現示それぞれについて電圧を検出するように5つが信号機に設置されている。図1に示した信号機監視装置1には、これら5つの電圧センサ3に応じて電圧信号処理部12も5つが設けられている。以下、この電圧信号処理部12の内部構成について説明する。
【0031】
電圧信号処理部12は、変圧器121と、半波整流回路122と、積分回路123と、非反転増幅器124と、を備えている。変圧器121は、電圧センサ3が検出した電圧波形を、電圧センサ3とは電気的に絶縁された状態で受け取るものである。半波整流回路122は、変圧器121が受け取った電圧波形について半波整流を行う回路であり、積分回路123は整流波形に対して積分処理を施して直流波形へと均す回路である。非反転増幅器124は、積分回路123を通過した直流波形について、所定倍(例えば3.6倍)に増幅する非反転増幅回路である。非反転増幅器124は、直流波形が表わす直流の電圧値が小さい場合でも後段のADコンバータにおいて十分な精度でデジタル信号に変換できるように増幅するものである。
【0032】
MPU13は、CPU(Central Processing Unit)等を有するマイクロプロセッサである。MPU13は、後述する各種動作等を内蔵するメモリに記憶されたプログラムにより実行する。また、MPU13は、ADコンバータ131,132,133と、UART134,135と、を備えている。
【0033】
ADコンバータ131は、電流信号処理部11における第1非反転増幅器113で増幅された直流の電流波形が入力され、アナログ信号をデジタル信号に変換する。ADコンバータ132は、電流信号処理部11における第2非反転増幅器114で増幅された直流の電流波形が入力され、アナログ信号をデジタル信号に変換する。ADコンバータ133は、電圧信号処理部12における非反転増幅器124で増幅された直流の電圧波形が入力され、アナログ信号をデジタル信号に変換する。また、ADコンバータ131,132は、電流信号処理部11の数と同数が設けられ、ADコンバータ133は、電圧信号処理部12の数と同数が設けられている。図1の場合であれば、ADコンバータ131,132が、それぞれ1チャンネルずつ設けられ、ADコンバータ133が5チャンネル設けられている。
【0034】
UART134は、RS485伝送部14へ送信するパラレルデータをシリアルデータに変換し、RS485伝送部14から受信したシリアルデータをパラレルデータに変換するインターフェース回路である。UART134は、MPU13で演算された信号機の状態を表す状態情報をシリアルデータとして出力する。また、UART134は、RS485伝送部14が受信した信号機の監視に関する各種指示信号等が入力されパラレルデータとしてMPU13内に出力する。UART135は、各種設定用のPC5とシリアル通信するためにパラレルデータをシリアルデータに変換する。また、PC5から受信したシリアルデータをパラレルデータに変換する。
【0035】
RS485伝送部14は、UART134から入力された情報等を外部機器4に出力する。また、RS485伝送部14は、外部機器4から入力された各種指示信号等をUART134に出力する。本実施形態では、信号機監視装置1と外部機器4との間はRS485規格により通信を行っているが、RS485規格に限らず、有線、無線を問わず他の通信規格であってもよい。
【0036】
電源部15は、電源6から供給された電力を信号機監視装置1の各ブロックが必要とする電圧等に変換して供給する。
【0037】
発振子16は、例えば水晶発振子により構成され、MPU13が動作するためのクロック信号を生成する。
【0038】
リセットIC17は、電源6の出力電圧がMPU13の動作電圧以上になったことを監視し、MPU13へのリセット信号を解除することでMPU13を起動させる周知の回路である。
【0039】
電流センサ2は、信号機に電流を供給する基幹配線に設けられ、当該基幹配線に流れる全体電流を検出する周知のセンサである。電流センサ2は、クランプ型の電流センサが好適であるが、他の非接触型の電流センサ、あるいは接触型の電流センサでもよい。電圧センサ3は、上述したように信号機における5つの信号現示それぞれの動作電圧を検出する周知のセンサである。
【0040】
外部機器4は、信号機監視装置1が出力した情報を受信する。外部機器4は、RS485伝送部41と、マイコン回路42と、を備えている。RS485伝送部41は、信号機監視装置1から出力された情報を受信する。マイコン回路42は、マイクロプロセッサ等を備え、信号機監視装置1から受信した情報に基づいて、例えば内部への蓄積や監視センター等への送信等の処理を行う。
【0041】
PC5は、信号機監視装置1の各種設定用の端末等となるコンピュータである。PC5は、設定等の必要な際に接続される。電源6は、信号機監視装置1へ電力(例えば直流5V)を供給する。
【0042】
本実施形態では、以上に説明した信号機監視装置1において、以下に説明する機能ブロックが構築される。
【0043】
図2は、図1に示されている信号機監視装置が有する機能ブロックを示す模式図である。
【0044】
本実施形態の信号機監視装置1は、取得部1Aと、現示変化検出部1Bと、期間設定部1Cと、識別処理部1Dと、情報生成部1Eと、情報出力部1Fと、を備えている。
【0045】
取得部1Aは、電流信号処理部11、電圧信号処理部12、及びMPU13のADコンバータ131,132,133によって構築される機能ブロックである。取得部1Aは、信号機における動作電流及び動作電圧のそれぞれの検出結果として、直流化され、増幅され、更にデジタル値に変換されたものを取得する。
【0046】
ここで、本実施形態では、信号機が、日本における2種類の商用電源の周期である1/50秒周期と1/60秒周期の中から選択された一の周期を有する交流電流及び交流電圧を動作電流及び動作電圧として動作する。このとき、取得部1Aは、上記の2種類の周期の最小公倍数の整数倍をサンプリング時間とし、当該サンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果を取得する。具体的には、1/50秒周期と1/60秒周期の最小公倍数である100m秒の整数倍(ここでは2倍)である200m秒がサンプリング時間として採用されている。そして、この200m秒の間に、1m秒間隔で得られる200個のサンプリング値の平均値が取得部1Aにおいて検出結果として取得される。取得部1Aでは、直流化及び増幅を経てデジタル値に変換された動作電流及び動作電圧の平均値が検出結果として200m秒間隔で順次に取得される。取得された検出結果は、MPU13の内部メモリに記憶される。尚、本実施形態では、50Hz、60Hzの周期の最小の公倍数である100m秒をサンプリング時間に設定したが、公倍数であれば最小である必要はない。サンプリング時間の基準を100m秒に設定することにより、50Hz地域では5波形分の倍数、60Hz地域では6波形分の倍数のデータを処理することができる。そのため測定データにおける波形の山欠け等がなく測定が可能となり、両者の周波数の相違による影響を除外できる。
【0047】
また、サンプリング時間に関しては、本実施形態とは異なり、次の変形例ように設定することとしてもよい。即ち、信号機における信号灯器の動作させる交流電流及び交流電圧が有する一の周期が予め判明している場合、当該周期の整数倍をサンプリング時間に設定することとしてもよい。本変形例では、信号灯器の動作電流及び動作電圧の周期が例えば1/50m秒である場合には、1/50m秒,2/50m秒,3/50m秒,・・・等といった時間がサンプリング時間に設定される。また、信号灯器の動作電流及び動作電圧の周期が1/60m秒である場合には、1/60m秒,2/60m秒,3/60m秒,・・・等といった時間がサンプリング時間に設定される。そして、この変形例における取得部が、このようなサンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果を取得することとなる。このような変形例によっても、上述した実施形態の場合と同様に、測定データにおける波形の山欠け等がなく測定が可能となり、両者の周波数の相違による影響を除外できる。
【0048】
現示変化検出部1Bは、MPU13の動作によって構築される機能ブロックであり、取得部1Aで取得された検出結果に基づいて、信号機における現示変化を検出する。この検出は、動作電流及び動作電圧に関する検出結果を信号灯器について点灯/非点灯であることが視認できる電圧値、電流値である所定の閾値と比較することで行われる。
【0049】
期間設定部1Cは、MPU13の動作によって構築される機能ブロックであり、現示変化検出部1Bで検出された現示変化の発生時点に基づいて、当該現示変化に伴って検出結果が不安定となる不安定期間を設定する。
【0050】
識別処理部1Dは、MPU13の動作によって構築される機能ブロックであり、取得部1Aで取得され、上述したようにMPU13の内部メモリに記憶された検出結果について、不安定期間の期間中に取得されたものか否かを識別する。
【0051】
情報生成部1Eは、MPU13の動作によって構築される機能ブロックであり、取得部1Aで取得された検出結果、及び識別処理部1Dによる識別結果、に基づいて信号機の状態を表す状態情報を生成する。本実施形態では、情報生成部1Eが、内部メモリに記憶されている検出結果のうち識別処理部1Dによって不安定期間の期間中に取得されたものではないと判定された検出結果に基づいて、信号機において信号現示の異常が生じているか否かを判定する。更に言えば、本実施形態では、内部メモリに記憶されている検出結果のうち不安定期間の直前の検出結果に基づいて異常判定が行われる。この判定は、動作電流及び動作電圧の検出結果を所定の判定閾値と比較すること等によって行われる。そして、情報生成部1Eは、状態情報として、信号現示の異常に関する判定結果を含む情報を生成する。具体的には、判定に用いた不安定期間の直前の検出結果と判定結果とを含む情報が信号機の状態情報として生成される。生成された状態情報は、MPU13の内部メモリにおける、上記の検出結果とは別の記憶領域に記憶される。
【0052】
情報出力部1Fは、MPU13におけるUART134及びRS485伝送部14によって構築される機能ブロックであり、情報生成部1Eで生成された状態情報を出力する。本実施形態では、外部機器4からの指示に応じてMPU13の内部メモリから状態情報を読み出して外部機器4へと出力する。
【0053】
次に、上述した構成の信号機監視装置1の動作について図3図10を参照して説明する。
【0054】
図3は、図1及び図2に示されている信号機監視装置における検出結果の取得から信号機の状態情報の生成に至るまでの処理の流れを表した模式的なフローチャートである。また、図4は、図1及び図2に示されている信号機監視装置における検出結果の時間変化の一例を示すタイムチャートである。
【0055】
電源が投入されて信号機監視装置1が起動すると、まず、取得部1Aによる取得処理S11が実行されて、信号機の動作電流及び動作電圧についての検出結果がサンプリング時間毎に取得されてMPU13の内部メモリに記憶される。
【0056】
次に、現示変化検出部1Bによって点灯判定処理S12、現示判定処理S13、及び現示変化判定処理S14が実行される。
【0057】
点灯判定処理S12では、複数の信号現示のそれぞれについて点灯/非点灯が判定される。具体的には、各信号現示について、動作電流及び動作電圧の検出結果が、それぞれに設定されたON閾値を超えていれば点灯判定とし、OFF閾値未満であれば非点灯判定とする。ON閾値、OFF閾値は信号機として点灯/非点灯が正しく視認できるよう、電球、LED等の灯器に応じて予め設定される。この点灯判定処理S12は、サンプリング時間毎に検出結果が取得されると、複数の信号現示それぞれについて行われる。
【0058】
図4に示されている例では、R現示、YY現示、Y現示、YG現示、G現示、の5つの信号現示についての動作電圧V(R),V(YY),V(Y),V(YG),V(G)の時間変化が例示されている。また、信号機の全体電流としての1つの動作電流Iの時間変化が例示されている。ここでの例では、時間経過に伴う一連の信号動作において、例えば図4中の最も左側の期間では信号機がR現示となっており、これに伴って、動作電流IがON閾値を超えて信号灯器の一灯分に相当する電流値となっている。また、R現示の動作電圧V(R)がON閾値を超え、他の4つの信号現示の動作電圧V(YY),V(Y),V(YG),V(G)は何れもOFF閾値未満となっている。また、その右隣の期間では信号機がYY現示となっており、これに伴って、動作電流IがON閾値を超えて信号灯器の二灯分に相当する電流値となっている。この時、YY現示の動作電圧V(R)がON閾値を超え、他の4つの信号現示の動作電圧V(R),V(Y),V(YG),V(G)は何れもOFF閾値未満となっている。点灯判定処理S12では、取得部1Aで取得される検出結果に基づいて、ON閾値を超えた信号現示について点灯と判定し、OFF閾値未満の信号現示については非点灯と判定する。
【0059】
現示判定処理S13では、点灯判定処理S12での判定結果に基づいて、現在の信号現示が、信号機でなし得る複数の信号現示の何れであるかを判定する。即ち、複数の信号現示のうち一の信号現示が点灯と判定され、他の信号現示が非点灯と判定された場合に、点灯と判定された信号現示が現在の信号現示であると判定される。これに対し、点灯と判定された信号現示が複数存在する場合や、点灯判定された信号現示が存在しない場合には、多灯や滅灯といった現示異常が起きていると判定される。図4に示されている例では、右から3番目の期間が、R現示とYY現示との2つが点灯判定される多灯の状態となっており、その次の期間が滅灯の状態となっている。
【0060】
現示変化判定処理S14では、現示判定処理S13での判定結果に基づいて信号機に現示変化が発生した否かが判定される。現示変化が発生していない判定された場合(NO判定)、処理が取得処理S11に戻って以降の処理が繰り返される。
【0061】
他方、現示変化が発生したと判定された場合(YES判定)、期間設定部1Cによって期間設定処理S15が実行される。期間設定処理S15では、現示変化の発生時点に基づいて、当該現示変化に伴って検出結果が不安定となる不安定期間T1が次のように設定される。
【0062】
図5は、図3に示されている期間設定処理において不安定期間が設定される様子を示す模式図である。この図5の例では、信号現示がR現示からY現示に切り替わった際に不安定期間T1が設定される様子が各信号現示における動作電圧の変化とともに示されている。また、ここでの例では、R現示が点灯状態(ON状態)から非点灯状態(OFF状態)へと変化するのと略同時にY現示が非点灯状態(OFF状態)から点灯状態(ON状態)へと変化している。
【0063】
期間設定処理S15では、現示変化の発生時点ST11を始点とした所定長さの期間T11が不安定期間T1として設定されるとともに、現示変化の発生時点ST11を終点とした所定長さの期間T12も不安定期間T1に加えられる。即ち、期間設定処理S15では、現示変化の発生時点ST11を挟んだ前後2つの期間T11,T12を合わせた期間が不安定期間T1として設定される。ここでいう所定長さとは、電球、LED等の灯器の種類、特性、回路の時定数等に応じ、灯器への突入電流や、電流、電圧の立ち上がり、立下りの過渡状態を除外した時間として予め設定することができる。
【0064】
ここで、現示変化の際には、図5に示されている例とは異なり、一の信号現示が非点灯状態(OFF状態)へと変化した後、タイムラグを経て他の信号現示が点灯状態(ON状態)へと変化する場合がある。
【0065】
図6は、一の信号現示が非点灯状態(OFF状態)へと変化した後、タイムラグを経て他の信号現示が点灯状態(ON状態)へと変化する場合に不安定期間が設定される様子を示す模式図である。
【0066】
図6の例では、R現示の動作電圧がOFF閾値未満となって非点灯状態(OFF状態)へと変化してから、Y現示の動作電圧がON閾値を超えて点灯状態(ON状態)へと変化するまで、信号機が僅かの期間滅灯状態となる。この場合、まず、R現示の非点灯状態(OFF状態)への変化時点、即ち、R現示から滅灯状態への現示変化の発生時点ST21を始点とした期間T11と、発生時点ST21を終点とした期間T12とを合わせた、図5の例と同じ不安定期間T1が設定される。ここで、図6には、一旦設定された不安定期間T1において、最初の現示変化の発生時点ST21以降の設定期間が延長される様子が、発生時点ST21以降の時間経過を表すグラフG21によって模式的に示されている。
【0067】
グラフG21に示されているように、一度設定された不安定期間T1の期間中に、滅灯状態からY現示への現示変化が新たに検出されると、この新たな現示変化の発生時点ST22に基づいて不安定期間T1が延長される。この延長は、新たな現示変化の発生時点ST22を始点として新たな期間T11が設定し直されることによってなされる。これにより、最初の現示変化の発生時点ST21以降の期間が、滅灯状態の期間分延長され、最初の現示変化の発生時点ST21前の期間T12と、発生時点ST21以降の延長された期間T21と、を合わせた新たな不安定期間T2が設定される。
【0068】
尚、上記の図5にも、現示変化の発生時点ST11以降の時間経過を表すグラフG11が示されている。この図5のグラフG11では、R現示の非点灯とY現示の点灯との間にタイムラグがないので、現示変化の発生時点ST11に設定された期間T11は、図6の例のような延長を経ることなく満了することとなっている。
【0069】
また、現示変化の際には、図6に示されているようなタイムラグとも異なり、一の信号現示が非点灯状態(OFF状態)へと変化した後、他の信号現示の短期間の点灯を経て更に他の信号現示が点灯状態(ON状態)へと変化する場合がある。
【0070】
図7は、一の信号現示が非点灯状態(OFF状態)へと変化した後、他の信号現示の短期間の点灯を経て更に他の信号現示が点灯状態(ON状態)へと変化する場合に不安定期間が設定される様子を示す模式図である。この図7にも、最初の現示変化の発生時点ST31以降の時間経過を表すグラフG31が示されている。
【0071】
この図7の例では、R現示の非点灯の後、滅灯状態を経てY現示が短期間点灯し、そのY現示の非点灯の後、滅灯状態を経てG現示が点灯している。この例では、まず、R現示の非点灯という最初の現示変化の発生時点ST31を始点とした期間T11が設定される。続いて、その期間T11の満了前のY現示の点灯という現示変化の発生時点ST32を始点として期間T11が設定し直され、その期間の満了前にY現示の非点灯という現示変化の発生時点ST33を始点として期間T11が設定し直される。そして、最後にG現示の点灯という現示変化の発生時点ST34を始点として期間T11が設定し直され、その期間T11の満了に至っている。この例では、最終的に設定される不安定期間T3における最初の現示変化の発生時点ST31以降の期間T31は、一旦設定された期間T11中に現示変化が発生する度に再設定されることで3回に亘って延長される。つまり、最初の現示変化の発生時点ST31以降の期間T31は、当該発生時点ST31から、3回目に設定された期間T11の満了時までの期間となる。そして、この例における不安定期間T3は、上記のように延長された期間T31と、最初の現示変化の発生時点ST31前の期間T12と、を合わせた期間として設定される。
【0072】
ここで、本実施形態では、不安定期間T3における最初の現示変化が検出されてからの経過時間、即ち当該現示変化の発生時点ST31以降の期間T31と所定のタイムアウト閾値との比較に基づいて、信号現示の切替え異常が生じているか否かが判定される。図7のグラフG31には、最初の現示変化の現示変化の発生時点ST31以降の期間T31と所定のタイムアウト閾値とが比較される様子が最下段に示されている。この図7の例では、最初の現示変化の現示変化の発生時点ST31以降の期間T31はタイムアウト閾値に達する前に満了し、信号現示の切替え異常が生じていない旨の判定が下されることとなる。尚、図5及び図6でも図示は省略されているが、何れの例でも最初の現示変化の現示変化の発生時点ST11以降の期間T11,T21について同様の判定が行われる。そして、何れの例でも、上記の期間T11,T12がタイムアウト閾値に達する前に満了し、信号現示の切替え異常が生じていない旨の判定が下されることとなる。
【0073】
図8は、不安定期間における最初の現示変化が検出されてからの経過時間に基づいて信号現示の切替え異常が生じている旨の判定が下される例を示す図である。この図8にも、最初の現示変化の発生時点ST41以降の時間経過を表すグラフG41が示されている。
【0074】
この図8の例では、R現示の非点灯の後、一の信号現示に落ち着くことなく、滅灯状態、Y現示の点灯/非点灯、滅灯状態、G現示の点灯/非点灯、滅灯状態、R現示の点灯/非点灯、が繰り返されている。この例では、まず、最初の現示変化の発生時点ST41を始点とした期間T11が設定された後、現示変化が発生する度に期間T11が再設定されることで、最初の現示変化の発生時点ST41からの期間T41が繰返し延長される。この延長後の期間T41と、最初の現示変化の発生時点ST41前の期間T12と、を合わせた期間が不安定期間T4に設定される。そして、図8の例では、この不安定期間T4のうち最初の現示変化の発生時点ST41からの期間T41が満了前にタイムアウト閾値に達してしまっている。これは、信号現示が落ち着くことなく現示変化が短期間に繰り返されるという切替え異常が生じていることを意味しており、図3に示されている期間設定処理S15ではこのような場合に信号現示の切替え異常が生じている旨の判定を下す。このタイムアウト閾値は、あまりにも長くすると検出したい現示切替え異常を検出できず、逆にあまりにも短すぎると現示切替え異常の発生頻度が多くなってしまう。そのためどこまでを許容範囲とするか、発生頻度、設置場所等に応じて予め設定することができる。
【0075】
図3に示されているフローチャートの処理では、以上に説明した期間設定処理S15が終了すると、次に図2に示されている識別処理部1Dによって識別処理S16が実行される。この識別処理S16では、取得処理S11で取得された動作電圧及び動作電流の検出結果について、不安定期間が設定される前のものも含めて、期間設定処理S15で設定された不安定期間の期間中に取得されたものか否かが識別される。
【0076】
識別処理S16の終了後、図2に示されている情報生成部1Eによって、取得処理S11で取得された動作電圧及び動作電流の検出結果、及び識別処理部1Dによる識別結果、に基づいて信号機の状態を表す状態情報を生成する情報生成処理S17が実行される。
【0077】
この情報生成処理S17では、取得処理S11で取得されて記憶された検出結果のうち、期間設定処理S15で設定された不安定期間の直前の検出結果と判定閾値との比較等によって信号現示の異常が生じているか否かが判定される。そして、判定に用いた不安定期間の直前の検出結果と判定結果とを含む情報が信号機の状態情報として生成される。生成された状態情報は、MPU13の内部メモリにおける、上記の検出結果とは別の記憶領域に記憶される。また、本実施形態では、現示判定処理S13で多灯や滅灯といった現示異常が判定された場合や、期間設定処理S15でタイムアウトによる切替え異常が判定された場合には、情報生成処理S17において当該異常を表す状態情報が生成されて記憶される。
【0078】
情報生成処理S17の終了後、処理が取得処理S11に戻って以降の処理が繰り返される。図1及び図2に示されている信号機監視装置1では、以上に説明した図3のフローチャートで表される処理が、電源が遮断されるまで実行され続ける。この処理によって、信号機の状態情報が次のように生成されることとなる。
【0079】
図9は、図3のフローチャートで表される処理によって信号機の状態情報が生成される様子を、図4に示されているタイムチャートに応じて示す図である。
【0080】
上述のように、図3のフローチャートで表される処理では、信号現示が切り替わる度に不安定期間が設定され、その不安定期間の直前の検出結果に基づいて信号機の状態情報J(R),・・・J(G)が生成される。図9に示されているように、このような処理が、5つの信号現示それぞれの動作電流及び動作電圧の検出結果について行われる。そして、各信号現示では、点灯から非点灯に切り替わったときに設定された不安定期間の直前の点灯時の検出結果に基づいて信号機の状態情報J(R),・・・J(G)が生成される。このときに生成された状態情報J(R),・・・J(G)は、次に切替えが行われるまでMPU13の内部メモリに保持される。そして、切替えを契機に新たに状態情報J(R),・・・J(G)が生成されると、この新たな状態情報J(R),・・・J(G)によって内部メモリの記憶内容が更新される。また、本実施形態では、現示異常が判定された場合やタイムアウトによる切替え異常が判定された場合には、当該異常を表す状態情報が生成されて記憶される。図9には、一例として多灯や滅灯による現示異常を表す状態情報J(E)が生成されて記憶される様子も示されている。
【0081】
本実施形態では、このように生成されて記憶される信号機の状態情報が、図1に示されている外部機器4からの読出し要求に応じ、図2に示されている情報出力部1Fによって出力される。
【0082】
図10は、図2に示されている情報出力部が読出し要求に応じて信号機の状態情報を出力する処理の流れを表した模式的なフローチャートである。
【0083】
このフローチャートの処理は、信号機監視装置1に電源が投入されて起動すると開始される。すると、まず、各要素のイニシャライズS21が行われ、その後、図1に示されている外部機器4から読出し要求が送られてきたか否かを判定する判定待機状態S22となる。外部機器4からの読出し要求が無い場合(NO判定)には、判定待機状態S22が続けられる。そして、外部機器4から読出し要求が送られてくると(YES判定)、その時点で、図9に示されているように各信号現示について記憶されている状態情報についての情報出力処理S23が実行される。このとき、現示異常や切替え異常を表す状態情報が生成されている場合には、この状態情報も一緒に出力される。
【0084】
また、本実施形態では、不安定期間の期間中に取得されて信号現示の異常判定に使われることのなかった検出結果が、状態情報とは別のメモリ領域に保管されており、そのような検出結果の出力が可能となっている。外部機器4からの読出し要求において、このような検出結果の出力が要求されている場合には、情報出力処理S23において、信号機の状態情報や現示異常や切替え異常を表す状態情報と一緒に、要求された検出結果も出力されることとなる。
【0085】
以上に説明した信号機監視装置1によれば、信号機における現示変化の発生時点に基づいて不安定期間が設定される。そして、信号機の異常検知に使われる動作電流及び動作電圧に関する検出結果について不安定期間の期間中に取得されたものか否かが識別される。これにより、検出結果の変動が想定される不安定期間の検出結果を除いた異常検知等が可能となり、判定閾値を厳密に設定して検知精度の低下を抑えたとしても、信号現示の切替え時の状態変動による信号機異常の誤検知を抑制することができる。
【0086】
ここで、本実施形態では、期間設定部1Cが、一度設定した不安定期間の期間中に現示変化検出部1Bにおいて新たな現示変化が検出された場合には、その新たな現示変化の発生時点に基づいて不安定期間を延長する。この構成によれば、信号機において信号現示の切替えが繰り返される場合に不安定期間が延長されるので、複数回の切替えを経て信号現示が切り替わる場合においても信号機異常の誤検知を効果的に抑制することができる。
【0087】
また、本実施形態では、期間設定部1Cが、延長後の不安定期間において最初の現示変化が検出されてからの経過時間と所定のタイムアウト閾値との比較に基づいて、信号現示の切替え異常が生じているか否かを判定する。そして、情報生成部1Eが、状態情報に加えて、切替え異常に関する判定結果を含む情報も生成する。信号現示の切替えが余りにも長く続く場合には、信号機に切替え異常が生じている可能性が高い。上記の構成によれば、このような切替え異常が判定されて状態情報に反映されるので、信号機の異常に関する検知精度を向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態では、情報生成部1Eが、不安定期間の期間中に取得されたものではないと判定された検出結果に基づいて信号現示の異常が生じているか否かを判定し、状態情報として、その信号現示の異常に関する判定結果を含む情報を生成する。この構成によれば、不安定期間の期間中に取得されたものではないと判定された検出結果に基づく異常判定の判定結果そのものが状態情報に反映されるので、情報の受取り側における処理負担を軽減することができる。
【0089】
また、本実施形態では、期間設定部1Cが、現示変化の発生時点を始点とした所定長さの期間を不安定期間として設定する。この構成によれば、信号現示の切替えに伴う状態変動が生じる可能性が高い現示変化の発生後の一定期間が不安定期間として設定されるので、状態変動による信号機異常の誤検知を効果的に抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、期間設定部1Cは、現示変化の発生時点を終点とした所定長さの期間も不安定期間に加える。この構成によれば、現示変化の発生前の一定期間についても、予備変動的な状態変動が生じる可能性を考慮して不安定期間に加えられるので、信号機異常の誤検知を一層効果的に抑制することができる。
【0091】
また、本実施形態では、取得部1Aが、信号機の交流電源として想定される複数の周期の最小公倍数の整数倍をサンプリング時間とし、当該サンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果を取得する。この構成によれば、1/50秒周期及び1/60秒周期等といった複数の周期の最小公倍数の整数倍であるサンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果が取得される。これにより、サンプリング時間が信号機の電源周波数の周期と一致するので、両者の不一致に起因する誤差等が抑えられてサンプリング精度を向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態に対する上述の変形例では、取得部が、信号機の交流電源として予め判明している周期の整数倍をサンプリング時間とし、当該サンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果を取得する。この構成によっても、サンプリング時間が信号機の電源周波数の一の周期と一致するので、両者の不一致に起因する誤差等が抑えられてサンプリング精度を向上させることができる。
【0093】
尚、以上に説明した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の信号機監視装置の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0094】
例えば、上述の実施形態では、信号機監視装置の一例として、R現示、YY現示、Y現示、YG現示、G現示、の5つの信号現示を切替え可能に表す信号機の状態を監視する信号機監視装置1が例示されている。しかしながら、信号機監視装置はこれに限るものではなく、その監視対象たる信号機において表示可能な現示について、その具体的な数や種類を問うものではない。
【0095】
また、上述の実施形態では、取得部の一例として、信号機における動作電流及び動作電圧の両方に関する検出結果を取得する取得部1Aが例示されている。しかしながら、取得部はこれに限るものではない。取得部は、取得された検出結果に基づいた現示変化の検出が可能であるのならば、動作電流及び動作電圧のうちの一方のみに関する検出結果を取得するものであってもよい。
【0096】
また、上述の実施形態では、情報生成部の一例として、信号機の状態情報を生成してMPU13の内部メモリに記憶するとともに、その記憶内容を適宜に更新する情報生成部1Eが例示されている。しかしながら、情報生成部はこれに限るものではなく、内部メモリの記憶内容を更新するのではなく、生成した状態情報を内部メモリに記憶させて蓄積させるもの等であってもよい。
【0097】
また、上述の実施形態では、期間設定部の一例として、不安定期間の期間中における新たな現示変化の発生時点に基づいて不安定期間を延長する期間設定部1Cが例示されている。しかしながら、期間設定部はこれに限るものではなく、不安定期間の延長は行わないものとしてもよい。ただし、不安定期間を延長することで、複数回の切替えを経て信号現示が切り替わる場合においても信号機異常の誤検知を効果的に抑制することができる点は上述した通りである。
【0098】
また、上述の実施形態では、期間設定部の一例として、最初の現示変化が検出されてからの経過時間と所定のタイムアウト閾値との比較に基づいて、信号現示の切替え異常が生じているか否かを判定する期間設定部1Cが例示されている。しかしながら、期間設定部はこれに限るものではなく、タイムアウトによる異常判定は行わずに不安定期間の延長を行うものであってもよい。ただし、不安定期間の延長とともにタイムアウトによる異常判定も行うことで、信号機の異常に関する検知精度を向上させることができる点は上述した通りである。
【0099】
また、上述の実施形態では、情報生成部の一例として、不安定期間の期間中のものを除いた検出結果に基づいて信号現示の異常が生じているか否かを判定し、その信号現示の異常に関する判定結果を含む状態情報を生成する情報生成部1Fが例示されている。しかしながら、情報生成部はこれに限るものではなく、信号現示の異常判定は行わず、例えば、そのような異常判定に用いる検出結果のみを含む状態情報を生成するもの等であってもよい。ただし、情報生成部において信号現示の異常判定も行って、その判定結果を含む状態情報を生成することで、情報の受取り側における処理負担を軽減することができる点は上述した通りである。
【0100】
また、上述の実施形態では、期間設定部で設定される不安定期間の一例として、現示変化の発生時点を始点とした所定長さの期間と、現示変化の発生時点を終点とした所定長さの期間と、を合わせた期間が例示されている。しかしながら、不安定期間はこのような期間に限るものではなく、現示変化の発生時点に基づいて設定される、当該現示変化に伴って検出結果が不安定となる期間であれば、その具体的な期間態様を問うものではない。ただし、現示変化の発生時点を始点とした所定長さの期間や現示変化の発生時点を終点とした所定長さの期間を不安的期間として採用することで、状態変動による信号機異常の誤検知を効果的に抑制することができる点は上述した通りである。
【0101】
また、上述の実施形態では、取得部の一例として、日本における2種類の商用電源の周期の最小公倍数の整数倍であるサンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果を取得する取得部1Aが例示されている。また、上述の変形例では、予め判明している場合の一の周期の整数倍であるサンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果を取得する取得部が例示されている。しかしながら、取得部はこれらに限るものではなく、サンプリング時間等といった具体的な取得態様を問うものではない。ただし、上記のような複数の周期の最小公倍数の整数倍や一の周期の整数倍であるサンプリング時間中おける一定間隔毎のサンプリング値に基づいて検出結果を取得することで、サンプリング精度を向上させることができる点は上述した通りである。尚、サンプリング時間の設定の元となる周期は、日本における2種類の商用電源の周期に限るものではなく、例えば海外の商用電源の周期等というように、信号機の設置場所等に応じて適宜に設定されるものである。
【符号の説明】
【0102】
1 信号機監視装置
1A 取得部
1B 現示変化検出部
1C 期間設定部
1D 識別処理部
1E 情報生成部
1F 情報出力部
2 電流センサ
3 電圧センサ
4 外部機器
5 PC
6 電源
11 電流信号処理部
12 電圧信号処理部
13 MPU
14,41 RS485伝送部
15 電源部
16 発振子
17 リセットIC
42 マイコン回路
111 半波整流回路
112 積分回路
113 第1非反転増幅器
114 第2非反転増幅器
121 変圧器
122 半波整流回路
123 積分回路
124 非反転増幅器
131,132,133 ADコンバータ
134,135 UART
S11 取得処理
S12 点灯判定処理
S13 現示判定処理
S14 現示変化判定処理
S15 期間設定処理
S16 識別処理
S17 情報生成処理
S21 イニシャライズ
S22 判定待機状態
S23 情報出力処理
I 動作電流
V(R),V(YY),V(Y),V(YG),V(G) 動作電圧
J(R),J(YY),J(Y),J(YG),J(G),J(E) 状態情報
T1,T2,T3,T4 不安定期間
T11,T12,T21,T31,T41 期間
ST11,ST21,ST22,ST31,ST32,ST34,ST41 発生時点
G11,G21,G31,G41 グラフ
図1
図2
図3
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図5
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図8
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図10