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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】直動案内装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/04 20060101AFI20240717BHJP
   F16C 19/36 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F16C29/04
F16C19/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021012648
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116471
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】趙 彬
(72)【発明者】
【氏名】岸 弘幸
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0163741(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0115625(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/04
F16C 19/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの転動体を介して長手方向に相対移動可能な2つの案内レールと、
前記転動体を保持すると共に、前記2つの案内レールの少なくとも一つに設けられた噛合部に係合する歯車を保持する保持器と、を備える直動案内装置において、
前記保持器は、前記転動体を保持する転動体保持部と前記歯車を保持する歯車保持部が一体に形成された第1分割体と、前記転動体を保持する転動体保持部と前記歯車を保持する歯車保持部が一体に形成された第2分割体と、を備え、
前記第1分割体と前記第2分割体が互いに結合されており、
前記第1分割体の前記歯車保持部には前記歯車の軸が収容される凹部が形成され、
前記第2分割体の前記歯車保持部には前記歯車の軸が収容される凹部が形成される直動案内装置。
【請求項2】
前記転動体は、隣り合うローラの軸線が直角であるクロスローラであり、
前記隣り合うローラの一方のローラの軸線と他方のローラの中心が、前記第1分割体と前記第2分割体の合わせ面と実質的に同一の平面に配置されることを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項3】
前記第1分割体及び前記第2分割体の前記歯車保持部には、前記合わせ面に対して傾斜する歯車保持面が形成されることを特徴とする請求項2に記載の直動案内装置。
【請求項4】
前記転動体は、隣り合うローラの軸線が直角であるクロスローラであり、
前記第1分割体及び前記第2分割体の前記転動体保持部には、前記隣り合うローラの一方のローラがその軸線方向に挿入される凹部が形成されると共に、前記隣り合うローラの他方のローラがその軸線と直交する方向に挿入される凹部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の直動案内装置。
【請求項5】
前記第1分割体と前記第2分割体が溶着されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の直動案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持器の位置ずれを防止する機構を備える直動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
保持器の位置ずれを防止する位置ずれ防止機構を備える直動ガイド装置が知られている(特許文献1参照)。この直動ガイド装置は、少なくとも一つの転動体を介して長手方向に相対移動可能な2つの案内レールを備える。転動体は保持器に保持される。2つの案内レールを繰り返し相対移動させると、保持器が正規の位置からずれる場合がある。保持器の位置ずれを防止するために、位置ずれ防止機構が設けられる。
【0003】
位置ずれ防止機構は、案内レールに設けられるラックと、保持器に設けられるピニオンと、から構成される。2つの案内レールが相対移動する際、ピニオンがラックに噛み合いながら正規の位置を移動する。このため、保持器の位置ずれを防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-197850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の直動ガイド装置において、転動体を保持する保持器とピニオンを保持するホルダが別々に製作される。そして、ピニオンを保持するホルダを保持器の嵌着穴に嵌め、ホルダをスナップフィットにより保持器に結合している。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の直動ガイド装置においては、(1)保持器と転動体の組立て、(2)ピニオンとホルダの組立て、(3)ホルダと保持器の組立ての3工程が必要であり、組立てに手間がかかるという課題がある。
【0007】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、組立てが容易な直動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、少なくとも一つの転動体を介して長手方向に相対移動可能な2つの案内レールと、前記転動体を保持すると共に、前記2つの案内レールの少なくとも一つに設けられた噛合部に係合する歯車を保持する保持器と、を備える直動案内装置において、前記保持器は、前記転動体を保持する転動体保持部と前記歯車を保持する歯車保持部が一体に形成された第1分割体と、前記転動体を保持する転動体保持部と前記歯車を保持する歯車保持部が一体に形成された第2分割体と、を備え、前記第1分割体と前記第2分割体が互いに結合されており、前記第1分割体の前記歯車保持部には前記歯車の軸が収容される凹部が形成され、前記第2分割体の前記歯車保持部には前記歯車の軸が収容される凹部が形成される直動案内装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1分割体と第2分割体を結合すれば、転動体と歯車を同時に保持することが可能になる。このため、直動案内装置の組み立てが容易である。また、第1分割体と第2分割体を結合させてローラと歯車を保持しているので、ローラと歯車を確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態の直動案内装置の斜視図(一部断面図を含む)である。
図2】本実施形態の直動案内装置に組み込まれる保持器の斜視図である。
図3図2のIII矢視図である。
図4】本実施形態の直動案内装置の保持器の第1分割体の斜視図である。
図5】上記第1分割体の平面図である。
図6】上記第1分割体に転動体と歯車を組み付けた状態を示す斜視図である。
図7】本実施形態の直動案内装置の保持器の第2分割体の斜視図である。
図8】上記第2分割体の平面図である。
図9】本発明の第2の実施形態の直動案内装置に組み込まれる保持器の斜視図である。
図10図9のX矢視図である。
図11】上記保持器の斜視図である(ローラと歯車を取り外した状態)。
図12】上記保持器の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施形態の直動案内装置を説明する。ただし、本発明の直動案内装置は種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
(第1の実施形態)
【0012】
図1は、本発明の第1の実施形態の直動案内装置1の斜視図である。2,3は、案内レールである。案内レール2,3のそれぞれには、断面V字状の溝4,5が形成される。溝4,5は、互いに直角な軌道面7a,7bと軌道面8a,8bを備える。案内レール2,3の対向する溝4,5間には、転動体としてのローラ9が配置される。案内レール2,3は、ローラ9を介して長手方向に相対的に移動可能である。
【0013】
ローラ9は、隣り合うローラ9の軸線が直角であるクロスローラ9a,9bである(図2参照)。ローラ9は、側面視においてローラ9の直径がローラ9の軸線方向の長さよりも僅かに大きい略正方形である。ローラ9aの側面が案内レール2の軌道面7aと案内レール3の軌道面8bに接触する。ローラ9bの側面が案内レール2の軌道面7bと案内レール3の軌道面8aに接触する。案内レール2に働く力は、ローラ9a,9bを介して案内レール3に伝わる。
【0014】
案内レール2には、テーブル等に取り付けるための取付け孔2aが形成される。案内レール3には、ベース等に取り付けるための取付け孔3aが形成される。案内レール3の形状は、案内レール2を180°反転させた形状に略等しい。
【0015】
図2に示すように、ローラ9a,9bは、案内レール2,3に沿って長手方向に延びる保持器10に保持される。保持器10には、ピニオン状の歯車13も回転可能に保持される。
【0016】
図1に示すように、案内レール2,3の溝4,5の底部には、ラック状の噛合部2b,3bが形成される。歯車13の歯13aは、噛合部2b,3bに係合する。案内レール2,3に対する保持器10の相対位置は、案内レール2,3の相対位置によって決定される。このため、保持器10の位置ずれを防止することができる。図1には、歯車13と噛合部2b,3bを示すために、案内レール2,3を部分的に切り欠いている。
【0017】
なお、案内レール2,3のラック状の噛合部2b,3bは、歯車13と係合することができればよく、インボリュート歯形から構成されてもよいし、案内レール2,3の長手方向に等間隔で形成される複数の凹所から構成されてもよい。また、ピニオン状の歯車13の歯13aも噛合部2b,3bと係合することができればよく、インボリュート歯形から構成されてもよいし、複数の凹所に嵌まる複数の突起から構成されてもよい。
【0018】
図2に示すように、ローラ9a,9bと歯車13は保持器10に保持される。歯車13は、保持器10の長さ方向の略中央に配置される。保持器10は、案内レール2,3の長さ方向に延びる合わせ面14に沿って分割された第1分割体11と第2分割体12を備える。ローラ9aの軸線9a1とローラ9bの中心C(軸線9b1上でローラ9bの軸方向の中心)は、合わせ面14が含まれる平面Pと実質的に同一の平面に配置される。ローラ9bの軸線9b1は、平面Pと実質的に直交する。
【0019】
図4に示すように、第1分割体11において、ローラ9a,9bを保持する転動体保持部21と歯車13を保持する歯車保持部22が一体に形成される。転動体保持部21と歯車保持部22とは、例えば樹脂成型、金属成型、積層造形、又は切削加工により一体に形成される。
【0020】
第1分割体11の転動体保持部21には、ローラ9a,9bの一部が収容される凹部23a,23bが形成される。凹部23aには、例えば軸線9a1が横を向くローラ9aの片側半分(下側半分)が収容される。凹部23aは、ローラ9aの片側半分の形状に合わせた半円筒状に形成される。凹部23aには、ローラ9aが軸線9a1と直交する方向に挿入される。図5の平面図に示すように、凹部23aの底部には、ローラ9aの側面を露出させるように開口23a1が形成される。凹部23aの壁部には、ローラ9aの底面を露出させるように開口23a2(図4参照)が形成される。
【0021】
図4に示すように、凹部23bには、軸線9b1が縦を向くローラ9bの片側半分(下側半分)が収容される。凹部23bは、例えばローラ9bの片側半分の形状に合わせた短円筒状に形成される。凹部23bには、ローラ9bが軸線方向に挿入される。凹部23bの底部には、ローラ9bの底面を露出させるように開口23b1(図5参照)が形成される。凹部23bの壁部には、ローラ9bの側面を露出させるように開口23b2(図4参照)が形成される。
【0022】
図4に示すように、第1分割体11には、長手方向に延びる抜止め部24が一体に形成される。抜止め部24は、ローラ9aの角部とローラ9bの角部に係合してローラ9a,9bが軸線方向に抜けるのを防止する。抜止め部24は、案内レール2,3間に配置される。
【0023】
第1分割体11の転動体保持部21の合わせ面14には、多数の突起26が一体に形成される。突起26は、第1分割体11と第2分割体12を合わせるときの位置決めとして利用される。後述する第2分割体12には、突起26に嵌まる孔が形成される。
【0024】
歯車保持部22には、合わせ面14に対して傾斜する歯車保持面22aが形成される。歯車保持面22aは、合わせ面14に対して実質的に45度傾斜する。歯車保持面22aは、歯車13の側面13b1(図2参照)に対向する。歯車保持面22aは、第1傾斜面22a1と第2傾斜面22a2(図5参照)を備える。歯車13の僅かな振れを許容できるように、第1傾斜面22a1と第2傾斜面22a2は互いに傾斜する。
【0025】
歯車保持部22には、歯車13の軸13c(図2参照)が収容される凹部25が形成される。凹部25は溝状であり、歯車保持部22の上端から歯車保持面22aに沿って下方に延びる。
【0026】
図6は、第1分割体11にローラ9a,9bと歯車13を組み付けた状態を示す。転動体保持部21の凹部23a,23bには、例えばローラ9a,9bの片側半分が挿入される。ローラ9a,9bは、転動体保持部21に支持される。歯車保持部22の凹部25には、歯車13の軸13cが挿入される。歯車13は、歯車保持部22に支持される。
【0027】
図7は、第2分割体12の斜視図を示す。図7に示す第2分割体12を180度反転させ、第1分割体11に結合させれば、図2に示す保持器が得られる。
【0028】
図7に示すように、第2分割体12においても、ローラ9a,9bを保持する転動体保持部31と歯車13を保持する歯車保持部32が一体に形成される。
【0029】
第2分割体12の転動体保持部31には、ローラ9a,9bの一部が収容される凹部33a,33bが形成される。凹部33aには、例えば軸線9a1が横を向くローラ9aの片側半分(上側半分)が収容される。凹部33aは、ローラ9aの片側半分の形状に合わせた半円筒状に形成される。凹部33aには、ローラ9aが軸線9a1と直交する方向に挿入される。図8の平面図に示すように、凹部33aの底部には、ローラ9aの側面を露出させるように開口33a1が形成される。凹部33aの壁部には、ローラ9aの底面を露出させるように開口33a2(図7参照)が形成される。
【0030】
図7に示すように、凹部33bには、軸線9b1が縦を向くローラ9bの片側半分(上側半分)が収容される。凹部33bは、ローラ9bの片側半分の形状に合わせた短円筒状に形成される。凹部33bには、ローラ9bが軸線方向に挿入される。図8に示すように、凹部33bの底部には、ローラ9bの底面を露出させるように開口33b1が形成される。凹部33bの壁部には、ローラ9bの側面を露出させるように開口33b2(図7参照)が形成される。
【0031】
図7に示すように、第2分割体12には、長手方向に延びる抜止め部34が一体に形成される。抜止め部34は、ローラ9aの角部とローラ9bの角部に係合してローラ9a,9bが軸線方向に抜けるのを防止する。抜止め部34は、案内レール2,3間に配置される。
【0032】
第2分割体12の歯車保持部32には、合わせ面14に対して傾斜する歯車保持面32aが形成される。歯車保持面32aは、合わせ面14に対して実質的に45度傾斜する。歯車保持面32aは、歯車13の側面13b2(図2参照)に対向する。第1分割体11の歯車保持面22aと第2分割体12の歯車保持面32aとの間に歯車13が配置される。歯車保持面32aは、第1傾斜面32a1と第2傾斜面32a2を備える。歯車13の僅かな振れを許容できるように、第1傾斜面32a1と第2傾斜面32a2は互いに傾斜する。
【0033】
歯車保持部32には、歯車13の軸13cが収容される凹部35が形成される。凹部35は溝状であり、歯車保持部32の上端面から歯車保持面32aに沿って延びる。
【0034】
第2分割体12の合わせ面14には、第1分割体11の多数の突起26が嵌まる孔36が形成される。図7に示す第2分割体12を反転させて第1分割体11に合わせ、第1分割体11と第2分割体12の間に圧力を加えながら第1分割体11と第2分割体12を溶着する。第1分割体11の多数の突起26の円錐状の先端部が溶けて第1分割体11と第2分割体12が結合される。なお、溶着の替わりに、圧入、スナップフィット等により第1分割体11と第2分割体12を結合してもよい。
【0035】
以上に本実施形態の直動案内装置1の構成を説明した。本実施形態の直動案内装置1によれば、以下の効果を奏する。
【0036】
転動体保持部21,31と歯車保持部22,32が一体に形成された第1分割体11と第2分割体12を結合すれば、ローラ9a,9bと歯車13を同時に保持することが可能になる。このため、直動案内装置1の組み立てが容易である。
【0037】
また、従来の直動案内装置においては、板状に形成した保持器の孔にローラを嵌め、孔の周囲に設けた爪を変形させてローラを保持器で保持している(特許文献1参照)。このため、ローラの保持が弱いという問題がある。本実施形態の直動案内装置1によれば、第1分割体11と第2分割体12を結合させてローラ9a,9bと歯車13を保持しているので、ローラ9a,9bと歯車13を確実に保持することができる。
【0038】
さらに、位置ずれ防止機構は、正規の位置にある歯車13から位置ずれを起こしたローラ9a,9bに力を伝えてローラ9a,9bを正規の位置に戻すところ、転動体保持部21,31と歯車保持部22,32が一体に形成されているので、歯車13からローラ9a,9bに確実に力を伝えることができる。
【0039】
隣り合うローラ9a,9bの一方のローラ9aの軸線9a1と他方のローラ9bの中心Cが、合わせ面14と実質的に同一の平面Pに配置されるので、第1分割体11の上にローラ9a,9bを載せるだけで、第1分割体11にローラ9a,9bを組み付けることができるし、第1分割体11からローラ9a,9bが落ちにくくなる。このため、第1分割体11へのローラ9a,9bの組み付けが容易である。
【0040】
第1分割体11及び第2分割体12の転動体保持部21,31に、隣り合うローラ9a,9bの一方のローラ9bがその軸線方向に挿入される凹部23b,33bを形成すると共に、他方のローラ9aがその軸線9a1と直交する方向に挿入される凹部23a,33aを形成するので、第1分割体11と第2分割体12にローラ9a,9bを容易に組み付けることができる。
【0041】
第1分割体11と第2分割体12が溶着されるので、第1分割体11と第2分割体12を強固に結合することができ、ローラ9a,9bと歯車13をより確実に保持することができる。
(第2の実施形態)
【0042】
図9は、本発明の第2の実施形態の直動案内装置に組み込まれる保持器40の斜視図を示す。案内レール2,3、ローラ9a,9b、歯車13の構成は、第1の実施形態の直動案内装置1と同一である。
【0043】
図9に示すように、ローラ9a,9bと歯車13は、保持器40に保持される。歯車13は、保持器40の長さ方向の略中央に配置される。保持器40は、例えばスナップフィットにより互いに結合された第1分割体41と第2分割体42を備える。第1分割体41と第2分割体42とは、互いに同一形状である。
【0044】
図11は保持器40の斜視図を示し、図12は保持器40の分解斜視図を示す。図12に示すように、第1分割体41において、ローラ9a,9bを保持する転動体保持部51と歯車13を保持する歯車保持部52が一体に形成される。転動体保持部51と歯車保持部52とは、例えば樹脂成型、金属成型、積層造形、又は切削加工により一体に形成される。
【0045】
第1分割体41の転動体保持部51には、ローラ9a,9bの一部が収容される凹部53a,53bが形成される。凹部53aには、軸線9a1が斜め上を向くローラ9a(図9参照)の片側半分(下側半分)が収容される。凹部53aは、ローラ9aの片側半分の形状に合わせた短円筒状に形成される。凹部53aには、ローラ9aが軸線方向に挿入される。
【0046】
凹部53bには、軸線9b1が斜め下を向くローラ9b(図9参照)の片側半分(下側半分)が収容される。凹部23bは、ローラ9bの片側半分の形状に合わせた半円筒状に形成される。凹部53bには、ローラ9bが軸線9b1と直交する方向に挿入される。
【0047】
第1分割体41には、長手方向に延びる抜止め部54a,54bが一体に形成される。抜止め部54a,54bは、ローラ9aの角部とローラ9bの角部に係合してローラ9a,9bが軸線方向に抜けるのを防止する。
【0048】
第1分割体41の転動体保持部51には、多数のフック56が一体に形成される。第1分割体41のフック56と第2分割体42のフック66とが係合することにより、第1分割体41と第2分割体42が結合される。
【0049】
歯車保持部52には、歯車保持面52aが形成される。歯車保持面52aは、ローラ9aの軸線9a1とローラ9bの軸線9b1に対して実質的に45度傾斜する。歯車保持面52aは、歯車13の側面13b1(図9参照)に対向する。歯車保持面52aには、歯車13の軸13cが収容される凹部52bが形成される。凹部52bは穴状であり、歯車保持面52aに対して傾斜する。
【0050】
図12に示すように、第2分割体42においても、ローラ9a,9bを保持する転動体保持部61と歯車13を保持する歯車保持部62が一体に形成される。
【0051】
第2分割体42の転動体保持部61には、ローラ9a,9bの一部が収容される凹部63a,63bが形成される。凹部63aには、軸線9a1が斜め上を向くローラ9a(図9参照)の片側半分(上側半分)が収容される。凹部63aは、ローラ9aの片側半分の形状に合わせた短円筒状に形成される。凹部63aには、ローラ9aが軸線方向に挿入される。
【0052】
凹部63bには、軸線9b1が斜め下を向くローラ9bの片側半分(上側半分)が収容される。凹部63bは、ローラ9bの片側半分の形状に合わせた半円筒状に形成される。凹部63bには、ローラ9bが軸線9b1と直交する方向に挿入される。第2分割体42には、抜止め部64a,64bが一体に形成される。
【0053】
第2分割体42の歯車保持部62には、第1分割体41の歯車保持面52aに対向する歯車保持面62aが形成される。歯車保持面62aは、ローラ9aの軸線9a1とローラ9bの軸線9b1に対して実質的に45度傾斜する。歯車保持面62aは、歯車13の側面13b2(図9参照)に対向する。歯車保持面52aと歯車保持面62aとの間に歯車13が配置される。歯車保持面62aには、歯車13の軸13cが収容される凹部が形成される。
【0054】
第2分割体42の転動体保持部61には、多数のフック66が一体に形成される。フック66はフック56と係合する。
【0055】
第2の実施形態の直動案内装置によれば、以下の効果を奏する。
【0056】
転動体保持部51,61と歯車保持部52,62が一体に形成された第1分割体41と第2分割体42を結合すれば、ローラ9a,9bと歯車13を同時に保持することが可能になる。このため、直動案内装置の組み立てが容易である。
【0057】
また、第1分割体41と第2分割体42を結合させてローラ9a,9bと歯車13を保持しているので、ローラ9a,9bと歯車13を確実に保持することができる。
【0058】
さらに、転動体保持部51,61と歯車保持部52,62が一体に形成されているので、歯車13からローラ9a,9bに確実に力を伝えることができる。
【0059】
第1分割体41及び第2分割体42の転動体保持部51,61に、隣り合うローラ9a,9bの一方のローラ9aがその軸線方向に挿入される凹部53a,63aを形成すると共に、他方のローラ9bがその軸線9b1と直交する方向に挿入される凹部53b,63bを形成するので、第1分割体41と第2分割体42にローラ9a,9bを容易に組み付けることができる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に具現化できる。
【0061】
上記実施形態では、転動体としてクロスローラを使用しているが、転動体としてボールを使用してもよく、ニードルローラ等のパラレルローラを使用してもよい。
【0062】
なお、本実施形態の直動案内装置は、工作機械を始め半導体・液晶製造装置(例えば実装機)や、ロボットなどの産業機械分野から、システムキッチン、各種ゲーム機、医療機械、食品機械、搬送装置といった民生分野まで、幅広い分野に要素部品として組み込むことができる。
【符号の説明】
【0063】
1…直動案内装置、2,3…案内レール、2b,3b…噛合部、9,9a,9b…クロスローラ(転動体)、9a1,9b1…ローラの軸線、10,40…保持器、11,41…第1分割体、12,42…第2分割体、13…歯車、14…合わせ面、21,31,51,61…転動体保持部、22,32,52,62…歯車保持部、22a,32a…歯車保持面、23a,23b,33a,33b,53a,53b,63a,63b…凹部、C…ローラの中心、P…平面
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