(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】外壁パネル補修方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240717BHJP
E04F 13/12 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
E04G23/02 A
E04F13/12 Z
(21)【出願番号】P 2021024850
(22)【出願日】2021-02-19
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006910
【氏名又は名称】株式会社淀川製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【氏名又は名称】鈴江 正二
(74)【代理人】
【識別番号】100142376
【氏名又は名称】吉村 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 康寛
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 政成
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-052453(JP,A)
【文献】特開2018-096186(JP,A)
【文献】特開平09-256641(JP,A)
【文献】特開2018-040237(JP,A)
【文献】特開昭62-133246(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110656706(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
E04F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外壁に配置され芯材と前記芯材より前記建築物の外側に配置される外装板とを備える外壁パネルの前記外装板における隆起部が前記建築物の外側から除去される除去工程と、
前記隆起部が除去された後に前記外装板を覆うように被覆材が前記外壁パネルに貼付けられる被覆材貼付工程とを備える外壁パネル補修方法であって、
前記外装板のうち前記隆起部が除去されたことで形成される孔に前記外装板と同一の厚さの孔埋板材が嵌め込まれ前記孔埋板材が前記芯材に貼付けられる孔埋板材貼付工程をさらに備えており、
前記被覆材貼付工程において、前記孔埋板材が貼付けられた後、前記孔埋板材ごと前記外装板のうち露出する箇所が覆われるように、前記被覆材が前記外装板に加えて前記孔埋板材に貼付けられることを特徴とする外壁パネル補修方法。
【請求項2】
前記被覆材が、
前記外装板および前記孔埋板材を覆う際に前記建築物の外側に露出する露出面と前記外装板および前記孔埋板材を覆う際に前記外装板および前記孔埋板材に対向する対向面とを形成する被覆面形成部と、
前記対向面に配置される外装板貼付膜部とを有しており、
前記被覆材貼付工程において、前記被覆材が前記外装板および前記孔埋板材に貼付けられる際、前記外装板貼付膜部によって前記被覆面形成部が前記外装板および前記孔埋板材に貼付けられることを特徴とする請求項1に記載の外壁パネル補修方法。
【請求項3】
前記外装板貼付膜部が並んで配置される複数の貼付膜を有していることを特徴とする請求項2に記載の外壁パネル補修方法。
【請求項4】
前記隆起部を有する外壁パネルの下端が別の外壁パネルの上端を覆うものであり、
前記被覆面形成部が、
所定の面が前記露出面となり前記所定の面の背面が前記対向面となる板状部と、
前記隆起部を有する外壁パネルの前記外装板に前記被覆材が貼付けられる際に前記板状部の下端となる位置に配置され前記隆起部を有する外壁パネルと前記別の外壁パネルとの間に挿入され前記被覆材が前記外装板に貼付けられる際の斜め上向きとなる方向に突出する金属板製の下挿入片部とを有していることを特徴とする請求項2に記載の外壁パネル補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外壁パネル補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は外壁補修方法を開示する。この外壁補修方法は、養生工程と、穿孔工程と、注入工程と、養生除去工程とを含む。養生工程において、タイル外壁に養生フィルムが形成される。穿孔工程において、タイルの隆起が生じている箇所に孔が穿設される。注入工程において、孔に低粘度の接着剤が注入される。養生除去工程において、接着剤の硬化後に養生フィルムが剥離される。特許文献1に開示されている外壁補修方法によれば、目地の箇所から接着剤が注入されても、それがタイル下の空隙に行き渡るので、十分な接着強度が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された外壁補修方法には、芯材と外装板とを備える外壁パネルへ適用された場合には外観の劣化が生じやすいという問題点がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解消するものである。その目的は、芯材とこれより建築物の外側に配置される外装板とを備える外壁パネルにおいて外観が劣化する可能性を軽減できる外壁パネル補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の外壁パネル補修方法が説明される。なお、この欄で図中の符号を使用したのは、発明の内容の理解を助けるためであって、内容を図示した範囲に限定する意図ではない。
【0007】
上述された課題を解決するために、本発明のある局面に従うと、外壁パネル補修方法は、除去工程S250と、被覆材貼付工程S254とを備える。除去工程S250において、外壁パネル30の外装板52における隆起部70が除去される。その外壁パネル30は、建築物20の外壁に配置される。その外壁パネル30がその外装板52を備える。その外壁パネル30は、その外装板52に加えて芯材50を備える。外装板52は、芯材50より建築物20の外側に配置される。隆起部70は建築物20の外側から除去される。被覆材貼付工程S254において、隆起部70が除去された後に外装板52を覆うように被覆材90が外壁パネル30に貼付けられる。外壁パネル補修方法は、孔埋板材貼付工程S252をさらに備える。孔埋板材貼付工程S252において、外装板52のうち隆起部70が除去されたことで形成される孔80に外装板52と同一の厚さの孔埋板材92が嵌め込まれその孔埋板材92が芯材50に貼付けられる。この場合、被覆材貼付工程S254において、孔埋板材92が貼付けられた後、孔埋板材92ごと外装板52のうち露出する箇所が覆われるように、被覆材90が外装板52に加えて孔埋板材92に貼付けられる。
【0008】
外装板52のうち隆起部70が除去されたことで形成される孔80に外装板52と同一の厚さの孔埋板材92が嵌め込まれその孔埋板材92が芯材50に貼付けられる。孔埋板材92が貼付けられた後、孔埋板材92ごと外装板52のうち露出する箇所が覆われるように、被覆材90が外装板52に加えて孔埋板材92に貼付けられる。これにより、孔埋板材92が露出しなくなる。さらに、隆起部70が除去されたことで形成される孔80に対向する箇所において被覆材90がどこにも貼付けられないという事態が回避される。その事態が回避されることで、その事態に起因して被覆材90と外装板52との間の貼付強度が低下するという事態も回避される。孔埋板材92が露出しなくなり、かつ、被覆材90と外装板52との間の貼付強度が低下するという事態が回避されるので、外壁パネル30において外観が劣化する可能性が軽減される。
【0009】
また、上述された被覆材90が、被覆面形成部110と、外装板貼付膜部112とを有していることが望ましい。被覆面形成部110は、露出面130と対向面132とを形成する。露出面130は、外装板52および孔埋板材92を覆う際に建築物20の外側に露出する面である。対向面132は、外装板52および孔埋板材92を覆う際に外装板52および孔埋板材92に対向する面である。外装板貼付膜部112は、対向面132に配置される。この場合、被覆材貼付工程S254において、被覆材90が外装板52および孔埋板材92に貼付けられる際、外装板貼付膜部112によって被覆面形成部110が外装板52および孔埋板材92に貼付けられることが望ましい。
【0010】
被覆材90が外装板貼付膜部112を有している。外装板貼付膜部112によって被覆面形成部110が外装板52および孔埋板材92に貼付けられる。これにより、ヒトが被覆面形成部110の表面に接着剤を手作業で塗布してその被覆面形成部110を外装板52および孔埋板材92に貼付ける場合に比べ、被覆面形成部110と外装板52および孔埋板材92とを貼付けるものの厚さが一様に近くなる。その貼付けるものの厚さが一様に近くなるので、その厚さの大小差が大きい場合に比べて、被覆面形成部110と外装板52および孔埋板材92との間における貼付けられる箇所ごとの貼付強度の差が小さくなる。貼付強度の差が小さくなるので、貼付強度が小さい箇所において隆起が生じて外観が劣化する可能性は軽減される。
【0011】
もしくは、上述された外装板貼付膜部112が複数の貼付膜150,150を有していることが望ましい。複数の貼付膜150が並んで配置される。
【0012】
外装板貼付膜部112が複数の貼付膜150,150を有しており、それらが並んで配置される。外装板貼付膜部112が複数の貼付膜150,150を有していると、それら複数の貼付膜150,150のいずれかに瑕疵が生じたとき、その瑕疵が生じた貼付膜150を除去して新たな貼付膜150を設ければ瑕疵は解消する。一方、外装板貼付膜部112が一枚の貼付膜からなっていると、その中のいずれかの箇所に瑕疵が生じたとき、その一枚の貼付膜を除去して新たな貼付膜を設ける必要がある。これにより、外装板貼付膜部112が複数の貼付膜150,150を有していると、外装板貼付膜部112を設けることが容易になる。
【0013】
もしくは、上述された隆起部70を有する外壁パネル30の下端が別の外壁パネル34の上端を覆っていることが望ましい。この場合、被覆面形成部110が、板状部190と、金属板製の下挿入片部192とを有していることが望ましい。板状部190の所定の面が露出面130となる。板状部190の所定の面の背面が対向面132となる。下挿入片部192は、隆起部70を有する外壁パネル30の外装板52に被覆材90が貼付けられる際に板状部190の下端となる位置に配置される。下挿入片部192は、隆起部70を有する外壁パネル30と別の外壁パネル34との間に挿入される。下挿入片部192は、被覆材90が外装板52に貼付けられる際の斜め上向きとなる方向に突出する。
【0014】
下挿入片部192は、被覆材90が外装板52に貼付けられる際の斜め上向きとなる方向に突出する。一方、隆起部70を有する外壁パネル30の下端が別の外壁パネル34の上端を覆っている。これにより、いったん下挿入片部192によって被覆材90を固定できる。その際、被覆材90の被覆面形成部110が建築物20の外壁から突出する状態となる。下挿入片部192は金属板製である。下挿入片部192が金属板製なので、被覆面形成部110を立てたり寝かせたりすることが容易になる。これにより、外装板貼付膜部112によって被覆面形成部110が外装板52および孔埋板材92に貼付けられる際、被覆材90が自在に移動可能な状態で被覆面形成部110が外装板52および孔埋板材92に貼付けられる場合に比べて、その貼付作業が容易になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、芯材とこれより建築物の外側に配置される外装板とを備える外壁パネルにおいて外観が劣化する可能性を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のある実施形態にかかる外壁パネルの役割が示される概念図である。
【
図2】本発明のある実施形態にかかる外壁パネルの構成が示される概念図である。
【
図3】本発明のある実施形態にかかる外壁パネル補修方法の各工程が示されるフローチャートである。
【
図4】本発明のある実施形態にかかる被覆材貼付工程の具体的内容が示されるフローチャートである。
【
図5】本発明のある実施形態にかかる孔埋板材の貼付前後の状況が示される図である。
【
図6】本発明のある実施形態にかかる被覆材の外観図である。
【
図7】本発明のある実施形態にかかる下挿入片部が外壁パネルの間に挿入された状況が示される図である。
【
図8】本発明のある実施形態にかかる下挿入片部と外壁パネルとの間にバックアップ部材が挿入された状況が示される図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態が説明される。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能は同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返されない。
【0018】
図1は、本実施形態にかかる外壁パネル30,32,34の役割が示される概念図である。
図2は、本実施形態にかかる外壁パネル30の構成が示される概念図である。
図1および
図2に基づいて、本実施形態にかかる外壁パネル30,32,34の役割および構成が説明される。
【0019】
本実施形態にかかる外壁パネル30,32,34はいずれも建築物20の外壁に配置される。これら外壁パネル30,32,34は縦に並ぶように配置されている。したがって、これら外壁パネル30,32,34の一つである外壁パネル30の上に他の外壁パネル32が配置される。前者の外壁パネル30の下にさらに別の外壁パネル34が配置される。なお、本実施形態の場合、前者の外壁パネル30は隆起部70を有する。その隆起部70は、建築物20の外側に向かって隆起する。したがって、その隆起部70を有する外壁パネル30が本実施形態にかかる補修対象となる。
【0020】
図2に示されるように、本実施形態にかかる外壁パネル30は、芯材50と、外装板52と、内装板54と、嵌込材56とを備える。
【0021】
芯材50は、外装板52と内装板54と嵌込材56との基部となる。したがって、外装板52と内装板54と嵌込材56とは芯材50に取付けられる。
【0022】
外装板52は、芯材50より建築物20の外側に配置される。本実施形態の場合、外装板52は鋼板である。上述された隆起部70は、外装板52の表面が変形することにより形成されたものである。本実施形態の場合、外装板52の下端に板状のツノ先60が形成されている。ツノ先60は芯材50の下端より下まで突出している。したがって、この外壁パネル30の下に別の外壁パネル34が配置されるとき、前者の外壁パネル30のツノ先60は、後者の外壁パネル34の上端を覆うこととなる。
【0023】
内装板54は芯材50より建築物20の内側に配置される。本実施形態の場合、内装板54も鋼板である。
【0024】
嵌込材56は他の外壁パネル32の下端に形成されている凹部に嵌込まれる。これにより、外壁パネル30と他の外壁パネル32との間に位置ずれが生じることが防止される。
【0025】
芯材50、外装板52、内装板54、および、嵌込材56のより具体的な形態は周知の外壁パネル30と同様である。したがってここではその詳細な説明は繰り返されない。
【0026】
隆起部70を有する外壁パネル30の上に配置される他の外壁パネル32、および、隆起部70を有する外壁パネル30の下に配置されるさらに別の外壁パネル34の構成は、隆起部70を有する外壁パネル30と同様である。したがってここではそれらの詳細な説明は繰り返されない。ただし、それらの外壁パネル32,34には隆起部70が形成されていない。
【0027】
[工程の説明]
図3は、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法の各工程が示されるフローチャートである。
図3に基づいて、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法の工程が説明される。
【0028】
本実施形態にかかる外壁パネル補修方法は、上述された隆起部70を有する外壁パネル30を補修するための方法である。本実施形態にかかる外壁パネル補修方法は、除去工程S250と、孔埋板材貼付工程S252と、被覆材貼付工程S254とを備える。
【0029】
除去工程S250において、外壁パネル30の隆起部70が建築物20の外側から除去される。隆起部70が除去されることにより、外装板52に孔80が形成される。隆起部70が除去されるための具体的な手順は特に限定されない。そのために用いられる器具も特に限定されない。そのような器具の例には電気サンダーがある。電気サンダー自体は周知なのでここではその詳細な説明は繰り返されない。本実施形態にかかる外壁パネル補修方法を実施しようとする者(以下「作業者」と称される)が隆起部70の前に到達するための手段も特に限定されない。
【0030】
孔埋板材貼付工程S252において、外装板52の隆起部70が除去されたことで形成される孔80に外装板52と同一の厚さの孔埋板材92が嵌め込まれその孔埋板材92が芯材50に貼付けられる。その貼付のための具体的な手段は特に限定されない。そのような手段の例にはアクリル系接着剤の塗布がある。
【0031】
被覆材貼付工程S254において、外装板52を覆うように被覆材90が外壁パネル30に貼付けられる。本実施形態の場合、孔埋板材92が接着された後、孔埋板材92ごと外装板52のうち露出する箇所が覆われるように被覆材90が外装板52および孔埋板材92に貼付けられる。
【0032】
図4は、本実施形態にかかる被覆材貼付工程S254の具体的内容が示されるフローチャートである。
図4に基づいて、本実施形態にかかる被覆材貼付工程S254の具体的内容が説明される。本実施形態の場合、被覆材貼付工程S254は、搬送工程S270と、仮取付工程S272と、本取付工程S274と、加圧工程S276と、固定工程S278と、シーリング工程S280とを有する。
【0033】
搬送工程S270において、孔80が形成された外装板52の前へ被覆材90が搬送される。被覆材90が搬送されるための具体的な手段は特に限定されない。そのような手段の具体例には、周知の可搬型ゴンドラがある。そのような手段は建築物20の周囲の状況および外壁パネル30の大きさといった様々な要件に応じて任意に定められるものである。
【0034】
仮取付工程S272において、孔80が形成された外装板52のうち露出している部分を覆うように、その外装板52へ被覆材90が取付けられる。
【0035】
本取付工程S274において、位置決めの為、外装板52へ取付けられた被覆材90の上端がいったんその外装板52から外される。被覆材90の上端がその外装板52から外されると、被覆材90が貼付可能な状態にされる。被覆材90が貼付可能な状態にされると、被覆材90は再びその外装板52へ取付けられる。
【0036】
加圧工程S276において、被覆材90が外装板52へ押し付けられるように被覆材90の全面に圧力が加えられる。
【0037】
固定工程S278において、被覆材90が外装板52へ固定される。本実施形態の場合、被覆材90はねじによって外装板52へ固定される。
【0038】
シーリング工程S280において、被覆材90の外周にシーリング材が充填される。これにより、被覆材90の外周はシーリングされる。
【0039】
[動作の説明]
以下、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法における具体的な動作が説明される。
【0040】
まず、作業者は、上述された外壁パネル30の隆起部70の前に行く。この場合、周知の可搬型ゴンドラによって作業者は隆起部70の前に行くこととする。隆起部70の前に行った作業者は、隆起部70の周りに線を引く。本実施形態の場合、その線は周知のケガキによって引かれることとする。隆起部70の周りに線が引かれると、作業者はその線に沿って外装板52のうち隆起部70とその周囲とを切取る。本実施形態の場合、作業者は電気サンダーによって隆起部70とその周囲とを切取ることとする。隆起部70とその周囲とが切取られると切取られた場所に孔80が形成される。本実施形態の場合、その孔80は矩形であることとする。作業者は、その孔80の縁に生じたバリを電気サンダーによって取る(S250)。
図5(A)は、本実施形態にかかる除去工程S250の施工完了状況が示される図である。
図5(A)から明らかなように、除去工程S250の施工完了時点で、隆起部70があった個所に形成された孔80から芯材50が露出している。
【0041】
バリが取られると、作業者は孔埋板材92にアクリル系接着剤を塗布する。この場合、本実施形態の場合、孔埋板材92は平坦な鋼板である。この鋼板の材質は外装板52の材質と同一である。この鋼板の厚さは外装板52の厚さと同一である。孔埋板材92の形状は上述された孔80と同一である。除去工程S250において隆起部70の周りに線が引かれその線に沿って外装板52が切取られるので、孔埋板材92の形状を上述された孔80と同一とすることが可能になる。これにより、作業者が隆起部70とその周囲とを切取ったことにより形成された孔80に孔埋板材92がぴったりと嵌ることとなる。本実施形態の場合、接着剤は、孔埋板材92のうち芯材50に密着する面全体に均一に塗布される。作業者は、接着剤が塗布された孔埋板材92を上述された孔80を介して露出している芯材50に押付ける。これにより、孔埋板材92は上述された孔80に嵌込まれ、かつ、孔埋板材92が芯材50に貼付けられることとなる(S252)。
【0042】
孔埋板材92が芯材50に貼付けられると、作業者は、孔80が形成された外装板52の前へ被覆材90を搬送する(S270)。この場合、周知の可搬型ゴンドラによって被覆材90が搬送されることとする。
【0043】
図6は、本実施形態にかかる被覆材90の外観図である。本実施形態にかかる被覆材90は、被覆面形成部110と、外装板貼付膜部112とを有している。なお、
図6において外装板貼付膜部112の一部は切欠かれている。
【0044】
本実施形態の場合、被覆面形成部110は周知の鋼板によって形成される。被覆面形成部110は、被覆面形成部110は、露出面130(
図7参照)と対向面132とを形成する。露出面130は、被覆材90が外装板52および孔埋板材92を覆う際に建築物20の外側に露出する面である。対向面132は、被覆材90が外装板52および孔埋板材92を覆う際に外装板52および孔埋板材92に対向する面である。本実施形態の場合、被覆面形成部110は、板状部190と、下挿入片部192と、上挿入片部194とを有している。
【0045】
板状部190は、被覆面形成部110のうち平板状の部分である。板状部190は下挿入片部192と上挿入片部194とが固定されるための基礎となる。板状部190の所定の面が露出面130となる。板状部190の所定の面の背面が対向面132となる。なお、本実施形態の場合、板状部190のうち露出面130となる面には図示されない保護フィルムが貼られている。保護フィルムが貼られているのは、露出面130となる面を保護するためである。
【0046】
下挿入片部192は、隆起部70を有する外壁パネル30の外装板52に被覆材90が貼付けられる際に板状部190の下端となる位置に配置される。本実施形態の場合、下挿入片部192は、被覆材90が外装板52に貼付けられる際の斜め上向きとなる方向に突出する。
【0047】
上挿入片部194は、隆起部70を有する外壁パネル30の外装板52に被覆材90が貼付けられる際に板状部190の上端となる位置に配置される。本実施形態の場合、上挿入片部194は、内突出部210と、上突出部212とを有している。内突出部210は、隆起部70を有する外壁パネル30の外装板52に被覆材90が貼付けられる際に板状部190の上端となる位置から建築物20の内側に向かう方向へ突出する。上突出部212は、隆起部70を有する外壁パネル30の外装板52に被覆材90が貼付けられる際の上方向へ内突出部210の先端から突出する。
【0048】
外装板貼付膜部112は、対向面132に配置される。本実施形態の場合、外装板貼付膜部112は、2枚の貼付膜150,150を有している。それらの貼付膜150,150は並んで配置される。
図6から明らかなように、それらの貼付膜150,150は、隆起部70を有する外壁パネル30の外装板52に被覆材90が貼付けられる際の水平方向に沿って延びるように配置される。本実施形態の場合、それらの貼付膜150,150は、ブチル製のシートの表面に周知の接着剤が均一に塗布されたものである。なお、本実施形態の場合、貼付膜150,150の表面には図示されない離型紙が貼られている。離型紙が貼られているのは、貼付膜150,150の表面を保護するためである。
【0049】
上述された被覆材90が搬送されると、作業者は、孔80が形成された外装板52のうち露出している部分を覆うように、その外装板52へ被覆材90を取付ける(S272)。そのために、まず、被覆材90の下挿入片部192が、隆起部70を有する外壁パネル30とその下に配置された別の外壁パネル34との間に挿入される。
【0050】
図7は、下挿入片部192が外壁パネル30,34の間に挿入された状況が示される図である。上述されたように、下挿入片部192は、外装板52に被覆材90が貼付けられる際の斜め上向きとなる方向に突出する。隆起部70を有する外壁パネル30のツノ先60がその下に配置される別の外壁パネル34の上端を覆う。これにより、作業者は、
図7に示されるように、隆起部70を有する外壁パネル30とその下に配置されている外壁パネル34との間に板状部190が傾いた状態で下挿入片部192を挿入することが可能である。それらの外壁パネル30,34の間に下挿入片部192が挿入されると、作業者は、板状部190を外壁パネル30に近づける。
【0051】
板状部190が外壁パネル30に近づけられると、作業者は、被覆材90の下挿入片部192と外壁パネル34との間に任意の部材を挿入する。本実施形態においては、その部材はバックアップ部材230と称される。
図8は、下挿入片部192と外壁パネル34との間にそのバックアップ部材230が挿入された状況が示される図である。このバックアップ部材230は、被覆材90が落下することを防止するために挿入されるものである。
【0052】
次いで、作業者は、板状部190を外側に倒す。これにより板状部190は下挿入片部192を支点にして傾く。板状部190が傾くと、作業者は、2枚の貼付膜150,150から図示されない離型紙を剥がす。これにより、被覆材90の外装板貼付膜部112が接着可能な状態にされる。離型紙が剥がされると、作業者は、板状部190を外壁パネル30に再び近づける。これにより、被覆材90が再び外装板52へ取付けられることとなる(S274)。
【0053】
板状部190が外壁パネル30に再び近づけられると、作業者は、被覆材90が外装板52へ押し付けられるように被覆材90の全面に圧力を加える(S276)。本実施形態の場合、圧力は被覆材90の中央から両端へ向かって順次加えられる。そのためにゴムローラが用いられる。これにより、外装板貼付膜部112によって被覆面形成部110が外装板52と孔埋板材92とに貼付けられることとなる。しかも、被覆材90の全面に圧力が加えられるので、2枚の貼付膜150,150がいずれも被覆面形成部110を外装板52と孔埋板材92とのうち少なくとも一方に接着させることとなる。また、外装板52のうち露出する箇所が被覆材90によって覆われることとなる。
【0054】
被覆材90の全面に圧力が加えられると、作業者は、上挿入片部194のうち露出している箇所をねじに貫通させることによって被覆材90を外装板52へ固定する(S278)。被覆材90が外装板52へ固定されると、作業者は、板状部190のうち露出面130となる面に貼られている保護フィルムを剥がす。保護フィルムが剥がされると、作業者は、被覆材90の外周をシーリングする(S280)。被覆材90の外周のシーリングが完了すると、本実施形態にかかる外壁パネル補修が完了する。
【0055】
[本実施形態にかかる効果の説明]
本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、外壁パネル30において外観が劣化する可能性が軽減される。外装板52のうち露出する箇所が被覆材90によって覆われることが外観の劣化の可能性の一層の軽減に寄与する。
【0056】
また、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、被覆面形成部110と外装板52および孔埋板材92との間における貼付けられる箇所ごとの貼付強度の差が小さくなる。
【0057】
また、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、外装板貼付膜部112が一枚の貼付膜からなっている場合に比べ、外装板貼付膜部112を設けることが容易になる。
【0058】
また、本実施形態にかかる外壁パネル補修方法によれば、被覆面形成部110を立てたり寝かせたりすることが容易になる。これにより、外装板貼付膜部112によって被覆面形成部110が外装板52および孔埋板材92に貼付けられる際、被覆材90が自在に移動可能な状態で被覆面形成部110が外装板52および孔埋板材92に貼付けられる場合に比べて、その貼付作業が容易になる。
【0059】
[変形例の説明]
今回開示された実施形態はすべての点で例示である。本発明の範囲は上述した実施形態に基づいて制限されるものではない。もちろん、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更をしてもよい。
【0060】
例えば、本発明にかかる外装板貼付膜部112が少なくとも3枚の貼付膜150,150を有していてもよい。本発明にかかる外装板貼付膜部112は1枚の貼付膜150からなっていてもよい。本発明にかかる外装板貼付膜部112の構造は上述されたものに限定されない。
【0061】
また、本発明にかかる外壁パネル補修方法の対象である外壁パネルの構造は上述したものに限定されない。例えば、その外壁パネルは、上述された外壁パネル30のように嵌込材56が他の外壁パネルの下端の凹部に嵌め込まれるものでなくてもよい。したがって、その外壁パネルは、外装板52および内装板54の少なくとも一方の端が嵌込材56の上端と同様の形態となっていて他の外壁パネルの下端の凹部に嵌め込まれるものであってもよい。このような外壁パネルは周知なので、ここではその詳細な説明は繰り返されない。ただし、本発明にかかる外壁パネル補修方法の対象である外壁パネルは、芯材とその芯材より建築物の外側に配置される外装板とを備えるものに限られる。
【符号の説明】
【0062】
20…建築物
30,32,34…外壁パネル
50…芯材
52…外装板
54…内装板
70…隆起部
80…孔
90…被覆材
92…孔埋板材
110…被覆面形成部
112…外装板貼付膜部
130…露出面
132…対向面
150…貼付膜
190…板状部
192…下挿入片部
194…上挿入片部
210…内突出部
212…上突出部
230…バックアップ部材