(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】堤体構築方法
(51)【国際特許分類】
E02B 7/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
E02B7/00 Z
(21)【出願番号】P 2021033743
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾口 佳丈
(72)【発明者】
【氏名】松本 孝矢
(72)【発明者】
【氏名】安田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】尾村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川中 勲
(72)【発明者】
【氏名】増田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】坂井 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 聖
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-176449(JP,A)
【文献】特開2018-145704(JP,A)
【文献】特開平08-312139(JP,A)
【文献】特開平02-210155(JP,A)
【文献】登録実用新案第3237886(JP,U)
【文献】特開昭63-089780(JP,A)
【文献】特開平05-106339(JP,A)
【文献】実開平06-016610(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/00
E02B 3/04-3/14
E04G 9/10
E04G 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1コンクリート構造体と、前記第1コンクリート構造体に接合された第2コンクリート構造体と、を備える堤体を構築する堤体構築方法であって、
前面と前記前面とは反対側の背面とを有する型枠を立設し、前記前面によって画定される第1領域にコンクリートを打設して前記第1コンクリート構造体を構築する第1打設工程と、
保温材を前記型枠の前記背面に設置する保温材設置工程と、
前記第1打設工程の後に前記保温材を前記背面から撤去し、前記背面によって画定される第2領域に新たなコンクリートを打設して前記第2コンクリート構造体を構築し、前記第1コンクリート構造体と前記第2コンクリート構造体の間に前記型枠を埋設する第2打設工程と、を備える、
堤体構築方法。
【請求項2】
前記型枠として鋼製型枠を用い、前記保温材として樹脂製保温材を用いる、
請求項1に記載の堤体構築方法。
【請求項3】
前記保温材設置工程では、光を遮る遮光材を前記保温材に設置する、
請求項1又は2に記載の堤体構築方法。
【請求項4】
前記第1打設工程では、前記型枠の前記前面に雌ねじ部材を設けた状態でコンクリートを打設し、
前記保温材設置工程では、前記雌ねじ部材と螺合可能に形成された締結部材を前記型枠及び前記保温材に貫通させ、前記締結部材を前記雌ねじ部材に螺合させることにより前記保温材を前記型枠に締結する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の堤体構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、堤体構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダムや堤防等におけるコンクリート製の堤体の構築では、堤体の壁面を成形する型枠が用いられる。特許文献1には、コンクリートの打設と、型枠の上昇と、を繰り返して堤体を下から順に構築する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンクリート製の堤体の構築において、堤体の一部となる第1コンクリート構造体をまず構築し、その後、第1コンクリート構造体の壁面に隣接するように第2コンクリート構造体を構築することがある。特許文献1に開示される方法を用いて第1コンクリート構造体を構築すると、第2コンクリート構造体が構築されるまで第1コンクリート構造体の壁面が露出することになる。その結果、第1コンクリート構造体の壁面に乾燥及び温度低下によるひび割れが生じ、堤体の品質が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、堤体の品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1コンクリート構造体と、第1コンクリート構造体に接合された第2コンクリート構造体と、を備える堤体を構築する堤体構築方法であって、前面と前面とは反対側の背面とを有する型枠を立設し、前面によって画定される第1領域にコンクリートを打設して第1コンクリート構造体を構築する第1打設工程と、保温材を型枠の背面に設置する保温材設置工程と、第1打設工程の後に保温材を背面から撤去し、背面によって画定される第2領域に新たなコンクリートを打設して第2コンクリート構造体を構築し、第1コンクリート構造体と第2コンクリート構造体の間に型枠を埋設する第2打設工程と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、堤体の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態に係る方法により構築される堤体の平面図であり、(b)は、
図1(a)に示すIB-IB線に沿う断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る方法に用いられる型枠養生ユニットの分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る堤体構築方法を説明するための図であり、第1コンクリート構造体を構築するまでの手順を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係る堤体構築方法を説明するための図であり、第2コンクリート構造体を構築するまでの手順を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る堤体構築方法について、図面を参照して説明する。
【0010】
まず、
図1を参照して、本実施形態により構築される堤体100の概略を説明する。
図1(a)は、堤体100の概略を示す平面図であり、
図1(b)は、
図1(a)に示すIB-IB線に沿う断面図である。ここでは、堤体100がダムである場合について説明するが、堤体100は、セメント系固化材を含む材料により構築される構造物であって、堤防であってもよい。
【0011】
図1(a)及び(b)に示すように、堤体100は、上流側から見て左側に構築される左岸側コンクリート構造体10と、右側に構築される右岸側コンクリート構造体20と、を備えている。右岸側コンクリート構造体20は、左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aに接合されており、左岸側コンクリート構造体10と右岸側コンクリート構造体20とが一体となって水を堰き止める。
【0012】
本実施形態では、まず、左岸側コンクリート構造体10を構築し、その後、十分な時間が経過した後(例えば3年後)、右岸側コンクリート構造体20の構築を開始する。左岸側コンクリート構造体10の構築では、右岸から間隔を空けて下方から上方にコンクリートを順次打設する。右岸側コンクリート構造体20の構築では、右岸と左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aとの間に下方から上方にコンクリートを順次打設し、右岸側コンクリート構造体20を構築する。なお、右岸側コンクリート構造体20を構築した後に、左岸側コンクリート構造体10を構築してもよい。
【0013】
ところで、堤体100となるコンクリートは、セメント系の固化材を含む材料であり打設後に水和反応により発熱する。そのため、右岸側コンクリート構造体20を構築するまで左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aを露出しておくと、左岸側コンクリート構造体10の水和熱が右壁面10aから放出される。その結果、温度低下によるひび割れが左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aに生じるおそれがある。また、右岸側コンクリート構造体20を構築するまで、左岸側コンクリート構造体10の水分が右壁面10aから散逸する。その結果、乾燥によるひび割れが左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aに生じるおそれがある。このように左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aにひび割れが生じることにより、堤体100の品質が低下するおそれがある。
【0014】
本実施形態では、
図2に示す型枠養生ユニット30を用いて、左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aからの放熱を軽減すると共に水分の散逸を軽減する。したがって、温度低下によるひび割れを防止することができると共に乾燥によるひび割れを防止することができ、堤体100の品質を向上させることができる。
【0015】
図2は、型枠養生ユニット30の分解斜視図である。
図2に示すように、型枠養生ユニット30は、コンクリートの打設領域を画定する型枠40と、型枠40に重ねて設置される保温材50と、保温材50に重ねて設置される遮光材60と、保温材50及び遮光材60を型枠40に締結する複数の締結部材70と、を備えている。
【0016】
型枠40は、鋼製であり、打設されたコンクリートの圧力に耐えられる強度を有している。型枠40は、板状に形成されており、前面40aと、前面40aとは反対側の背面40bと、を有している。型枠40には、前面40aと背面40bとの間を貫通する孔40cが複数形成されている。型枠40の前面40aには、複数の雌ねじ部材40dが例えば溶接により接合される。雌ねじ部材40dは、雌ねじ部材40dの内部空間が孔40cと連続するように型枠40の前面40aに配置される。雌ねじ部材40dは、例えば袋ナットである。
【0017】
保温材50は、樹脂製であり、型枠40よりも高い断熱性を有する。保温材50に用いられる樹脂は、好ましくは発泡スチロール製であり、より好ましくはポリスチレンフォーム製である。保温材50には、型枠40と同様に、孔50cが複数形成されている。保温材50を型枠40の背面40bに設置した状態では、型枠40の孔40cと保温材50の孔50cとが連続する。
【0018】
遮光材60は、光を遮断可能に形成されている。遮光材60は、例えば、金属樹脂複合板である。金属樹脂複合板は、紫外線に対する耐劣化性が樹脂よりも高いため、樹脂製の遮光材60を用いる場合と比較して、日光に曝されても遮光性を長期間維持することが可能である。
【0019】
金属樹脂複合板の構造を簡単に説明すると、金属樹脂複合板は、樹脂製の芯材と、芯材を挟み込む一対の金属製の面材と、を備えている。芯材は、好ましくはポリエチレン製であり、面材は、好ましくはアルミニウム製である。面材には表面処理が施されていてもよい。
【0020】
遮光材60には、型枠40及び保温材50と同様に、孔60cが複数形成されている。遮光材60を保温材50に設置した状態では、保温材50の孔50cと遮光材60の孔60cとが連続する。
【0021】
締結部材70は、型枠40の孔40c、保温材50の孔50c及び遮光材60の孔60cに挿通可能に形成された軸部材70aと、軸部材70aの一方の端部近傍の外周に螺合するナット70bと、を備えている。軸部材70aの他方の端部近傍における外周には、雌ねじ部材40dと螺合する雄ねじが形成されている。軸部材70aが遮光材60の孔60c、保温材50の孔50c及び型枠40の孔40cに挿通した状態で軸部材70aを雌ねじ部材40dに螺合させると共にナット70bを締めると、保温材50及び遮光材60が型枠40に締結される。
【0022】
ナット70bは、押え板部材80を介して遮光材60を押さえる。押え板部材80は、2つの軸部材70aの間に渡って設けられる。そのため、遮光材60における2つの孔60cの間の全体を押え板部材80で押さえることができる。したがって、型枠40と保温材50との間、及び保温材50と遮光材60との間に隙間ができるのを防止することができる。
【0023】
なお、軸部材70a及びナット70bに代えて、軸部にヘッド部が一体的に設けられたボルトを締結部材70として用いてもよい。また、型枠養生ユニット30は、締結部材70を複数備えていなくてもよく、締結部材70は1つであってもよい。
【0024】
図3及び
図4は、堤体構築方法を説明するための図であり、
図1に示すIII部に対応して示す。以下では、左岸側コンクリート構造体10の最下層を「第1左岸層11」とし、第1左岸層11の直上の層を「第2左岸層12」とする。また、右岸側コンクリート構造体20の最下層を「第1右岸層21」とし、第1右岸層21の直上の層を「第2右岸層22」とする。左岸側コンクリート構造体10の第1左岸層11の構築及び養生に用いる型枠養生ユニット30を「第1型枠養生ユニット31」する。第1型枠養生ユニット31の型枠40、保温材50、遮光材60及び締結部材70をそれぞれ「第1型枠41」、「第1保温材51」、「第1遮光材61」及び「第1締結部材71」とする。同様に、左岸側コンクリート構造体10の第2左岸層12の構築及び養生に用いる型枠養生ユニット30を「第2型枠養生ユニット32」とし、第2型枠養生ユニット32の型枠40、保温材50、遮光材60及び締結部材70をそれぞれ「第2型枠42」、「第2保温材52」、「第2遮光材62」及び「第2締結部材72」とする。
【0025】
まず、
図3(a)に示すように、地盤上に第1型枠41を立設し、その後、第1型枠41の前面40aによって画定される第1領域にコンクリートを打設して、左岸側コンクリート構造体10の第1左岸層11を構築する(第1打設工程)。
【0026】
第1型枠41の立設する手順を簡単に説明すると、まず、地盤に第1差筋91aを打ち込む。次に、第1型枠41を、前面40aが左岸側を向くように地盤上に立てる。その後、第1鉄筋91bを介して第1差筋91aと第1型枠41とを連結し、第1型枠41を立てた状態で保持する。以上により、第1型枠41の立設が完了する。
【0027】
第1左岸層11となるコンクリートは、雌ねじ部材40dを第1型枠41の前面40aに設けた状態で打設する。これにより、雌ねじ部材40dは、第1左岸層11に埋設される。第1型枠41の前面40aへの雌ねじ部材40dの設置は、第1型枠41を地盤上に立設する前に行ってもよいし、第1型枠41を地盤上に立設した後に行ってもよい。
【0028】
次に、
図3(b)に示すように、第1型枠41の背面40bに第1保温材51を設置すると共に第1保温材51に第1遮光材61を設置し、第1型枠養生ユニット31を組立てる(保温材設置工程)。
【0029】
具体的には、第1型枠41の背面40bに第1保温材51を重ね、第1保温材51に第1遮光材61を重ねる。第1締結部材71の軸部材70aを第1遮光材61の孔60c、第1保温材51の孔50c及び第1型枠41の孔40cに通し、軸部材70aを雌ねじ部材40dに螺合させる。押え板部材80に軸部材70aを通して第1締結部材71のナット70bを軸部材70aに螺合させることにより、第1保温材51及び第1遮光材61を第1型枠41に締結する。以上により、第1保温材51及び第1遮光材61の設置が完了する。
【0030】
なお、型枠40を地盤上に立設する前に保温材50を型枠40に設置してもよいし、型枠40を地盤上に立設する前に遮光材60を保温材50に設置してもよい。つまり、第1打設工程の前に保温材設置工程を行ってもよい。
【0031】
次に、
図3(c)に示すように、第1型枠41上に第2型枠42を立設し、その後、第1左岸層11の上にコンクリートを打設して左岸側コンクリート構造体10の第2左岸層12を構築する。また、第2型枠42に第2保温材52を設置すると共に第2保温材52に第2遮光材62を設置し、第2型枠養生ユニット32を組立てる。第2型枠42を立設する際には、第1左岸層11に打ち込まれた第2差筋92aと、第2差筋92aに連結された第2鉄筋92bと、が用いられる。
【0032】
第2型枠42を立設する作業は、第1左岸層11の上で行われる。すなわち、第1左岸層11は、第2型枠42を立設する作業の足場として用いられる。第2型枠42へ第2保温材52及び第2遮光材62を設置する作業は、例えば、クレーンの先端から吊り下げられたゴンドラ上で行われる。
【0033】
型枠40の立設と、左岸側コンクリート構造体10となるコンクリートの打設と、保温材50及び遮光材60の設置と、を上方に繰り返すことにより、左岸側コンクリート構造体10の構築が完了する。
【0034】
左岸側コンクリート構造体10の構築が完了した後、
図4(a)に示すように、第1遮光材61を第1保温材51から撤去すると共に第1保温材51を第1型枠41の背面40bから撤去する。第1型枠41の背面40bによって画定される第2領域にコンクリートを打設して、右岸側コンクリート構造体20の第1右岸層21を構築する(第2打設工程)。第2打設工程は、第1型枠41が残存した状態で行われるため、第1型枠41は、右岸側コンクリート構造体20の第1右岸層21と、左岸側コンクリート構造体10の第1左岸層11と、の間に埋設される。
【0035】
埋設された第1型枠41は、第1右岸層21及び第1左岸層11の膨張及び収縮を吸収する目地として機能する。
【0036】
なお、第1遮光材61及び第1保温材51を撤去した後、第1型枠41の孔40c及び雌ねじ部材40dの内部を例えばモルタルで埋め、その後、第1右岸層21となるコンクリートを打設してもよい。
【0037】
次に、
図4(b)に示すように、第2遮光材62を第2保温材52から撤去すると共に第2保温材52を第2型枠42の背面40bから撤去する。第2型枠42の背面40bによって画定される第2領域にコンクリートを打設して、右岸側コンクリート構造体20の第2右岸層22を構築する。
【0038】
第2型枠42から第2保温材52及び第2遮光材62を撤去する作業は、第1右岸層21の上で行われる。すなわち、第1右岸層21は、第2保温材52及び第2遮光材62を撤去する作業の足場として用いられる。
【0039】
保温材50及び遮光材60の撤去と、右岸側コンクリート構造体20となるコンクリートの打設と、を上方に繰り返すことにより、右岸側コンクリート構造体20の構築が完了する。以上により、堤体100の構築が完了する。
【0040】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0041】
本実施形態では、第1打設工程の後に保温材50を型枠40の背面40bから撤去する。そのため、第1打設工程にて構築された左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aは、保温材50が撤去されるまで、保温材50が設置された型枠40により覆われる。したがって、左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aからの放熱を軽減することができ、温度低下によるひび割れを防止することができる。
【0042】
また、保温材50を型枠40の背面40bから撤去し、第2領域に新たなコンクリートを打設して右岸側コンクリート構造体20を構築し、左岸側コンクリート構造体10と右岸側コンクリート構造体20の間に型枠40を埋設する。そのため、右岸側コンクリート構造体20が構築されるときには、左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aは、保温材50が撤去された型枠40によって覆われる。したがって、左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aからの水分散逸を軽減することができ乾燥によるひび割れを防止することができると共に、左岸側コンクリート構造体10と右岸側コンクリート構造体20との間に保温材50が残存することを防止することができる。
【0043】
このように、本実施形態では、温度低下及び乾燥によるひび割れを防止することができると共に保温材50が堤体100の内部に残存することを防止することができるため、堤体100の品質を向上させることができる。
【0044】
また、型枠40は鋼製である。鋼は、コンクリートと同程度の耐劣化性を有する。そのため、左岸側コンクリート構造体10と右岸側コンクリート構造体20との間に埋設された型枠40がコンクリートに比して劣化するのを防止することができる。したがって、堤体100の品質をより向上させることができる。
【0045】
また、保温材50は、樹脂製である。樹脂は、鋼も高い断熱性を有するため、樹脂製の保温材50を用いることにより、左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aからの放熱をより軽減することができ、温度低下によるひび割れをより防止することができる。したがって、堤体100の品質をより向上させることができる。
【0046】
また、保温材設置工程では、光を遮る遮光材60を保温材50に設置する。そのため、保温材50は、遮光材60により日光から保護される。したがって、日光による保温材50の劣化を防止することができ、左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aからの放熱をより軽減することができる。これにより、温度低下によるひび割れをより防止することができ、堤体100の品質をより向上させることができる。
【0047】
また、第1打設工程では、型枠40の前面40aに雌ねじ部材40dを設けた状態でコンクリートを打設し、保温材設置工程では、締結部材70の軸部材70aを保温材50及び型枠40に貫通させ、軸部材70aを雌ねじ部材40dに螺合させることにより保温材50を型枠40に締結する。そのため、雌ねじ部材40dは、左岸側コンクリート構造体10に埋設され、軸部材70aは、左岸側コンクリート構造体10に雌ねじ部材40dを介して固定される。したがって、軸部材70aにより保温材50を型枠40に強固に締結することができ、保温材50の脱落を防止することができる。これにより、左岸側コンクリート構造体10の右壁面10aからの放熱をより軽減することができ、堤体100の品質をより向上させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0049】
雌ねじ部材40dは、袋ナットには限られないが、雌ねじ部材40dが袋ナットである場合には、第1打設工程においてコンクリートが型枠40の孔40cに流入することを防ぐことができる。したがって、締結部材70の軸部材70aを型枠40に容易に貫通させることができ、堤体100を容易に構築することができる。
【0050】
本発明は、既存堤体の能力を向上させるために新たに堤体を構築する場合にも適用可能である。
【0051】
上記実施形態では、
図3(b)に示すように、第1保温材51及び第1遮光材61を第1型枠41に設置した状態で第2左岸層12となるコンクリートを打設している。第1保温材51及び第1遮光材61を第1型枠41に設置する前に、第2左岸層12となるコンクリートを打設してもよい。
【0052】
上記実施形態では、
図4(a)に示すように、第2保温材52及び第2遮光材62を第2型枠42に設置した状態で第1右岸層21となるコンクリートを打設している。第1右岸層21となるコンクリートを打設する前に、第2保温材52及び第2遮光材62を第2型枠42から撤去してもよい。
【0053】
第1右岸層21となるコンクリートを打設する前に第2保温材52及び第2遮光材62を第2型枠42から撤去する場合には、第2型枠42から第2保温材52及び第2遮光材62を撤去する作業は、例えば、クレーンの先端から吊り下げられたゴンドラ上で行われる。
【符号の説明】
【0054】
100・・・堤体
10・・・左岸側コンクリート構造体(第1コンクリート構造体)
10a・・・右壁面(壁面)
20・・・右岸側コンクリート構造体(第2コンクリート構造体)
40・・・型枠
40a・・・前面
40b・・・背面
40d・・・雌ねじ部材
50・・・保温材
60・・・遮光材
70・・・締結部材