(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】多結晶シリコン塊のクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/037 20060101AFI20240717BHJP
C01B 33/02 20060101ALI20240717BHJP
B23K 26/36 20140101ALI20240717BHJP
【FI】
C01B33/037
C01B33/02 E
B23K26/36
(21)【出願番号】P 2021044270
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2020053478
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523119425
【氏名又は名称】高純度シリコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100085372
【氏名又は名称】須田 正義
(72)【発明者】
【氏名】野田 聖奈
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-505577(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122455(WO,A1)
【文献】特開2002-224878(JP,A)
【文献】特開2000-216129(JP,A)
【文献】特開平09-190995(JP,A)
【文献】特開2000-302594(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103072991(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0076853(US,A1)
【文献】特表2009-544564(JP,A)
【文献】特開2013-170122(JP,A)
【文献】米国特許第05669979(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
B08B 3/00 - 7/04
B23K 26/36 - 26/402
H01L 21/18 - 21/339
H01S 3/00 - 3/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内又は台上に置かれた1以上の多結晶シリコン塊の表面にレーザ光を照射するとともに、前記多結晶シリコン塊が置かれた容器又は台を移動させるか、又はレーザ光を移動させることにより、前記多結晶シリコン塊の表面に付着又は吸着した異物を除去する多結晶シリコン塊のクリーニング方法。
【請求項2】
前記レーザ光を直線状に走査する請求項1に記載のクリーニング方法。
【請求項3】
液体が移動する前記容器内に前記多結晶シリコン塊を置いて前記レーザ光を前記多結晶シリコン塊の表面に照射しながら前記容器又はレーザ光を移動させる請求項1又は2に記載のクリーニング方法。
【請求項4】
前記レーザ光の照射が、前記多結晶シリコン塊の薬液による処理の後で行われる請求項1ないし3いずれか1項に記載のクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の原料として使用される多結晶シリコン塊をクリーニングする方法に関する。更に詳しくは、レーザ光を用いて多結晶シリコン塊の表面をクリーニングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの性能向上とともにそのデバイスに広く用いられるシリコン単結晶基板は各種不純物の低減が求められており、その原料である多結晶シリコン塊にも品質向上の観点より不純物の低減の要求が高まっている。その中でも多結晶シリコン塊の表面不純物、特に表面炭素濃度低減の要求が強まっている。
【0003】
一般的に、多結晶シリコン塊の表面不純物を低減する方法として、高純度で分級された多結晶性シリコン断片(多結晶シリコン塊)を製造するための方法及び装置が開示されている(例えば、特許文献1(段落[0045]、段落[0054])参照。)。この方法では、ジーメンス法から製造される多結晶シリコンロッドを細断工具により破砕して多結晶シリコン塊にし、これをスクリーン装置により分級する過程で、多結晶シリコン塊に接触する工具や装置の異質粒子が多結晶シリコン塊に付着する場合に、この異質粒子を、酸液などの薬液中に浸漬させて、清浄浴内で溶解して、多結晶シリコン塊から除去するか、又は多結晶シリコン塊表面の溶解に伴い、溶解したシリコンとともに除去している。
【0004】
また、多結晶シリコン塊の表面不純物を低減する別の方法として、多結晶シリコンチャンク(多結晶シリコン塊)をクリーニングする方法が開示されている(例えば、特許文献2(段落[0016]、段落[0017]、段落[0062]~段落[0074])参照。)。この特許文献2には、多結晶シリコンの機械的処理における金属汚染や有機分子による汚染が生じることが示されており、有機物の汚染の一因として有機ポリマーやプラスチックから作られた部品との接触が示されている。この方法では、多結晶シリコンチャンク(多結晶シリコン塊)の表面汚染(有機物汚染)を低減するために、多結晶シリコンチャンクを、不活性ガス雰囲気下の高温状態で熱処理を行い、その後不活性ガスをパージしながら冷却している。
【0005】
一方、ワークの被クリーニング面に対しスキャンミラーを介してパルスレーザビームを照射しつつスキャニングして、被クリーニング面に付着している除去対象物を除去するようにしたレーザクリーニング方法が開示されている(例えば、特許文献3(請求項1、段落[0007])参照。)。この方法では、被クリーニング面に付着している除去対象物として、機械加工後の金属の切削面に付着している水分や油分等を挙げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2009-544564号公報
【文献】特開2013-170122号公報
【文献】特開2015-217427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法では、細断工具やスクリーン装置がポリシリコン断片(多結晶シリコン塊)と接触付着することを前提として、異質粒子を、清浄浴内で溶解するか、又は多結晶シリコン塊表面の溶解に伴い、溶解したシリコンとともに除去しなければならないため、清浄化浴で使用する薬液の種類の選定やその使用条件などに、一定の制約を必要とする課題があった。
【0008】
また、特許文献2の方法では、一定時間高温状態下で多結晶シリコンチャンクを加熱をして清浄化処理を行う場合、一定の減圧下,不活性ガス流量下で処理を行うため、処理量が多い場合、設備的にも規模の大型化が必要となる。また、加熱処理後は多結晶シリコンチャンクをオーブン外で不活性ガスパージにより室温まで冷却しているが、シリコン全体の加熱処理は昇温、冷却の工程が必要なため、かなりの処理時間がかかる課題があった。また処理空間からの汚染を防止するために、清浄化処理する環境を不純物が存在しない環境にする必要があった。
【0009】
また、多結晶シリコンには使用し易いように適当なサイズに破砕や加工が施されるが、その際に、シリコンが脆性材料で多結晶であることから、その表面には凹凸形状が形成され易く、鋭利な刃跡なども生じ易い。このため、処理過程において部材や治具などが多結晶シリコン表面に接触した際に部材や治具などの摩耗粉が異物として付着し易い。また、シリコンの破砕時には微細なクラックが表面に形成される場合があり、このようなクラック内に異物が付着すると、異物を除去するのが難しい。このため、上述の薬液による処理では、シリコン表面のエッチングによるシリコンの溶解量を増やす必要性や処理時間も増加する。その結果、薬液の使用量増によるコストアップや生産性低下にもなる。また、エッチングによるシリコンロスも増えることにも繋がり、多結晶シリコンの歩留り低下や処理コストの増加にもなる。また、加熱処理による方法でも付着量が多い場合や強固に付着した場合は、加熱蒸発にかかる時間もかかることになり、その結果、処理時間が長くなり易い。
【0010】
特許文献3のレーザクリーニング方法は、機械加工後の金属の切削面を清浄化することを目的とし、切削面に付着している水分や油分等が除去対象物であり、高品質の表面状態が求められる多結晶シリコン塊表面の異物の除去には利用されていない。
【0011】
本発明の目的は、多結晶シリコン塊の表面に付着又は吸着した異物、特に肉眼で見えない不純物を短時間で簡便に除去する多結晶シリコン塊のクリーニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点は、
図1~
図4に示すように、容器1内又は台5上に置かれた1以上の多結晶シリコン塊2の表面にレーザ光3を照射するとともに、多結晶シリコン塊2が置かれた容器1又は台5を移動させるか、又はレーザ光3を移動させることにより、多結晶シリコン塊2の表面に付着又は吸着した異物4を除去する多結晶シリコン塊2のクリーニング方法である。
【0013】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記レーザ光を直線状に走査するクリーニング方法である。
【0014】
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に基づく発明であって、
図5に示すように、液体9が移動する容器8内に多結晶シリコン塊2を置いてレーザ光3を多結晶シリコン塊2の表面に照射しながら容器8又はレーザ光3を移動させるクリーニング方法である。
【0015】
本発明の第4の観点は、第1ないし第3の観点のいずれかに基づく発明であって、レーザ光の照射が、多結晶シリコン塊の薬液による処理の後で行われるクリーニング方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の観点の方法では、容器内又は台上に置かれた1以上の多結晶シリコン塊の表面にレーザ光を照射するとともに、多結晶シリコン塊が置かれた容器又は台を移動させるか、又はレーザ光を移動させるため、多結晶シリコン塊の表面に付着又は吸着した異物、特に肉眼で見えない不純物を短時間で簡便に除去することができる。
【0017】
本発明の第2の観点の方法では、レーザ光を直線状に走査するため、多結晶シリコン塊の表面を均一にかつムラなく照射することができる。
【0018】
本発明の第3の観点の方法では、液体が移動する容器内に多結晶シリコン塊を置いてレーザ光を多結晶シリコン塊の表面に照射しながら容器又はレーザ光を移動させるため、多結晶シリコン塊表面から除去された異物が、液体により容器外に移送され、多結晶シリコン塊に再付着することがない。
【0019】
本発明の第4の観点の方法では、レーザ光の照射が、薬液による処理により不純物付着量が低減した多結晶シリコン塊へのレーザ光の照射であるため、より一層高純度の多結晶シリコン塊が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る容器内に置かれた複数個の多結晶シリコン塊をレーザクリーニング装置によりクリーニングしている状況を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る容器内に置かれた多結晶シリコン塊をレーザクリーニングしている状況を拡大して示す断面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るレーザクリーニング装置のレーザ光をその走査する直線に対して直交する方向に移動させる状況を示す平面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るレーザクリーニング装置のレーザ光をその走査する直線に対して斜交する方向に移動させる状況を示す平面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態における液体が移動する容器内に置かれた多結晶シリコン塊にレーザ光を照射する状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。以下の
図1~
図5に示す多結晶シリコン塊の数は一例であって、その数を限定するものではなく、必要に応じて増やすことができる。
【0022】
<第1の実施形態>
図1に示すように、本実施形態のレーザクリーニング装置10は、加工ヘッド11と本体制御部12を備える。本体制御部12は、レーザ発振器13と、加工ヘッド11及びレーザ発振器13を制御する制御部14を備える。加工ヘッド11には、レーザ発振器13からパルス発振されたレーザ光を反射する反射ミラーが取付けられた軸を回転制御するガルバノスキャナー(図示せず)が内蔵されている。
【0023】
レーザクリーニング装置10の下方には、上部が開口した容器1が置かれ、その容器1内に被クリーニング物として、複数個(
図1では6個)の多結晶シリコン塊2が重ならないように置かれている。これらの多結晶シリコン塊2の表面には、
図2に示すように、異物4が付着している。異物としては、有機物等の肉眼で見えない不純物が例示される。
図2において、
図1と同じ要素には同じ符号を付している。なお、多結晶シリコン塊が置かれる容器1の代わりに、
図3及び
図4に示すように、表面が平坦な台5でもよい。容器1又は台5の材質は、石英又はシリコンの他に、樹脂や紙等であってもよい。
【0024】
レーザクリーニング装置10の加工用レーザ光源としては、シリコン又は汚染物質による吸収効率が高く、パルス幅の狭いレーザ光源が、加工効率の観点で好適である。この観点から、産業用に広く利用されているNd:YAG(1064nm)やYb:ファイバ(1060nm~1070nm)のパルスレーザが現実的に利用可能なレーザ光源として挙げられる。
上記Nd:YAGやYb:ファイバレーザの波長は、シリコン塊においては、50%前後の吸収率を示す領域であり、実質的にシリコン塊の表面を加熱する作用がある。その結果、シリコン塊の表面に吸着している不純物を揮発除外することができる。
【0025】
レーザクリーニング装置10のレーザ光の強度は、500kJ/m2以下が好ましい。レーザ光の照射によるシリコン塊の表面温度が瞬間的に300℃~600℃に上昇することによって不純物の揮発が生じていると考えられ、パルス幅の短いレーザ光を使用すれば、加熱領域が限定されるため、このレーザ光の強度は1kJ/m2程度であっても不純物除去の効果を期待することができる。
シリコン塊は不定形の破砕物であり、レーザ光をシリコン塊の全表面に均一かつ完全に照射することは事実上困難である。シリコン塊表面の不純物を除去するため、このレーザ光をシリコン塊に照射する面積は、シリコン塊の表面積の少なくとも80%以上であることが好ましい。95%以上であることが更に好ましい。このためには、例えば、石英ガラスのようなレーザ光を透過する台上にシリコン塊を重なりがないように並べて上下両面からレーザ光を照射する方法などが挙げられる。
【0026】
このような構成のレーザクリーニング装置10では、加工ヘッド11内のガルバノスキャナーで反射されたレーザ光3を、ガルバノスキャナー内の軸を回転制御することにより、
図1のY軸方向に走査し、走査直線6を形成することが好ましい。本実施形態のクリーニング方法では、
図1に示すように複数個(
図1では2個)の多結晶シリコン塊2のY軸方向全体に、この走査直線6が及ぶように、レーザ光3が照射される。この走査直線6を形成しながら、加工ヘッド11を走査直線6に直交する
図1のX軸方向に移動させて、複数個すべて(
図1では6個)の多結晶シリコン塊2の表面をレーザクリーニングする。加工ヘッド11をX軸方向に往復移動させたり、また容器内の多結晶シリコン塊2を引っ繰り返して、レーザ光3の走査直線6による照射を繰り返し行ってもよい。
【0027】
レーザ光3の走査直線6のX軸方向の移動により、
図2に示すように、多結晶シリコン塊2の表面に付着又は吸着している異物4がレーザ光3を吸収して蒸発するか、又はプラズマ7による衝撃圧力を受けて、多結晶シリコン塊2の表面から除去される。
【0028】
なお、加工ヘッド11は、
図3に示すように、レーザ光3の走査直線6に対して直交する方向に移動させるだけでなく、多結晶シリコン塊2の置かれた位置に相応して、
図4に示すように、走査直線6に対して斜め方向に移動させるようにしてもよい。
図3及び
図4において、
図1と同じ要素には同じ符号を付している。なお、図示しないが、加工ヘッド11を移動させる代わりに、加工ヘッド11を固定して、台5を移動させてもよい。
【0029】
<第2の実施形態>
図5に示すように、複数個(
図5では6個)の多結晶シリコン塊2が容器8内に重ならないように配置される。
図5において、
図1と同じ要素には同じ符号を付している。容器8内には、純水、超純水、イオン交換水などの液体9が貯留される。容器8の右側下部には液体9の供給管8aが、容器8の左側上部には液体9の排出管8bが接続される。排出管8bの高さは、容器8の液面が容器内に配置された複数個の多結晶シリコン塊2の最上端よりも高くして、容器内の多結晶シリコン塊2が常に液体中に存在するように、設けられている。
この容器8の上方には、レーザクリーニング装置の加工ヘッド(
図5では図示せず)が設けられ、加工ヘッドで反射されたレーザ光3が走査直線を形成しながら、
図5の矢印に示す方向に移動するように構成される。
【0030】
このような構成のレーザクリーニング装置では、先ず、供給管8aから液体9を容器8に供給し、排出管8bから液体9を排出し、容器8内を液体9が移動するようにしておく。次いで、容器8内に配置された複数個の多結晶シリコン塊2の表面に、加工ヘッドからレーザ光3を照射する。レーザ光3は、走査直線を形成しながら、加工ヘッドの移動とともに容器8内のすべての多結晶シリコン塊2の上側表面に行き渡る。これにより、すべての多結晶シリコン塊2の上側表面から異物が除去される。除去された異物は液中に浮遊するが、移動する液体に移送されて排出管8bから排出される。これにより、異物の多結晶シリコン塊2の表面への再付着は防止される。
【0031】
なお、第1の実施形態で説明した多結晶シリコン塊は、レーザクリーニングする前に、例えば、フッ硝酸のような薬液で、表面を清浄化処理したものを用いることもできる。こうすることにより、レーザクリーニング後の多結晶シリコン塊をより一層高純度のシリコンにすることができる。
また、上記容器8では、排出管8bを容器上部に設けたが、
図5の破線に示すように、一例として、排出管8cを容器下端部にも配設してもよい。この排出管8cにより、液体中に浮上しない異物を、移動する液体により、容器内底部側から容器8外に移送することができる。
【実施例】
【0032】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0033】
<実施例1>
長辺長さが10mm~40mmの多結晶シリコン塊7個をフッ硝酸でエッチング洗浄し、純水でリンスした後に乾燥した。
図1に示すように、乾燥した多結晶シリコン塊7個を
シリコンの台上に並べ、レーザクリーニング装置を使用してクリーニングを実施した。これにより実施例1の7個のサンプルを得た。
【0034】
図1に示すように、クリーニングの際、多結晶シリコン塊の表面に平均出力63Wのパルスレーザ光(波長1060nm~1080nm、パルス周波数55kHz)を直線状に3900mm/sの速度で走査しながら照射するとともに、容器をレーザ光の走査直線に直交する方向に165mm/minの速度で2往復移動させた。2往復の移動が完了した後、多結晶シリコン塊を反転させ、同様にレーザ光を照射した。
【0035】
<比較例1>
実施例1と同様に、実施例1の7個のサンプルそれぞれと同じ製造ロットからサンプリングされた長辺長さ10mm~40mmの多結晶シリコン塊7個について、フッ硝酸でエッチング洗浄し、純水でリンスした後に乾燥した。乾燥した多結晶シリコン塊7個については、レーザ洗浄を行わなかった。これにより比較例1の7個のサンプルを得た。
【0036】
<比較試験と評価>
実施例1と比較例1で得られた各7個のサンプルのうち、各3個のサンプルについて加熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析装置(Thermal Desorption - Gas Chromatograph / Mass Spectrometer(TD-GC/MS))にて表面炭素濃度を測定し、各2個のサンプルについて、2wt%HFで溶出させてICP-MS(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)にて表面ボロン濃度を測定し、残りの各2個のサンプルについて、表面ボロン濃度と同様の方法にて、表面リン濃度を測定した。各条件におけるサンプルの平均値を次の表1に示す。
【0037】
【0038】
表1から明かなように、測定したサンプル中のサンプル表面の炭素濃度平均値に関して、比較例1では『0.57ppbw』であったのに対して、実施例1では『0.20ppbw』と低かった。また、測定したサンプル中のサンプル表面のボロン濃度平均値に関して、比較例1では『0.045ppbw』であったのに対して、実施例1では『0.031ppbw』と低かった。更に、測定したサンプル中のサンプル表面のリン濃度平均値に関して、比較例1では『0.051ppbw』であったのに対して、実施例1では『0.041ppbw』と低かった。これらのことから、レーザクリーニングを行った実施例1の方法では、レーザクリーニングを行わなかった比較例1の方法と比較して、サンプル表面の炭素濃度が大幅に低くなり、かつサンプル表面のボロン濃度及びリン濃度がそれぞれ低くなったことが判った。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の多結晶シリコン塊のクリーニング方法は、ジーメンス法から製造される多結晶シリコンロッドを破砕して作られる多結晶シリコン塊を清浄化する方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1,8 容器
2 多結晶シリコン塊
3 レーザ光
4 異物
5 台
6 走査直線
7 プラズマ
9 液体
10 レーザクリーニング装置
11 加工ヘッド
12 本体制御部
13 レーザ発振器
14 制御部