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  • 特許-土塊混入抑制具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】土塊混入抑制具
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/72 20060101AFI20240717BHJP
   E02D 5/24 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
E02D5/72
E02D5/24
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021057447
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154417
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正美
(72)【発明者】
【氏名】小川 敦
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-072238(JP,U)
【文献】特公昭47-038087(JP,B1)
【文献】特開昭51-061115(JP,A)
【文献】中国実用新案第211368686(CN,U)
【文献】特開平07-289816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0281625(US,A1)
【文献】特開2011-106253(JP,A)
【文献】特開2017-002628(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102071684(CN,A)
【文献】特開2020-111908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/72
E02D 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントミルク工法による埋込杭の形成に用いられる管状の既製杭又はH形鋼からなる杭材に適用される土塊混入抑制具であって、
前記杭材の先端部を受け入れる一端部及び該一端部に相対する他端部を有する筒体と、
前記筒体の他端部内に配置されかつ該他端部に固定された、目の粗さを異にする複数のメッシュ板を備え、
前記土塊混入抑制具は、その筒体の一端部において、前記杭材の先端部に取り付けられ、
前記複数のメッシュ板は互いに間隔をおいて、また、前記複数のメッシュ板の目の粗さが前記筒体の一端部から他端部に向けて次第に増大するように配置されている、土塊混入抑制具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントミルク工法による埋込杭の形成に用いられる管状の既製杭又はH形鋼からなる杭材に適用される土塊混入抑制具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セメントミルク工法による埋込杭の形成の際、地中に形成された削孔の形成時に生じ、あるいはその後における削孔の周壁の崩壊により生じた粘土の塊(土塊)が削孔の底部上の根固め液中に混入すると、根固め液の固化物からなる根固め部が脆性破壊し易い状態となることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-106253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来の事情に鑑み、セメントミルク工法により形成される埋込杭の根固め部への土塊の混入を抑制し得る土塊混入抑制具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る土塊混入抑制具は、セメントミルク工法による埋込杭の形成に用いられる管状の既製杭又はH形鋼からなる杭材に適用される。前記土塊混入抑制具は、前記杭材の先端部を受け入れる一端部及び該一端部に相対する他端部を有する筒体と、前記筒体の他端部内に配置されかつ該他端部に固定された少なくとも1つのメッシュ板とを備える。前記土塊混入抑制具は、その筒体の一端部において、前記杭材の先端部に取り付けられる。
【0006】
前記土塊混入抑制具は、埋込杭の形成に際して、前記杭材の先端部にこれを受け入れる前記筒体の一端部において取り付けられ、前記杭材と共に、セメントミルクを含む根固め液及び杭周固化液が満たされた削孔中に建て込まれる。前記削孔中に建て込まれた前記杭材の先端部が前記根固め液内に達し、該根固め液中を下降するとき、前記根固め液が前記土塊混入抑制具の筒体内をその他端部からその一端部に向けて流動する。このとき、前記根固め液中に浮遊する、前記メッシュ板の目の大きさより大きい土塊が前記メッシュ板に当たり該メッシュ板下に留められる。前記メッシュ板下に留められた土塊は、前記削孔の底部に向けての前記杭材の押し込み操作により、前記削孔の底部上に圧密される。これにより、前記根固め液の固化物からなる根固め部内における前記土塊の混入量が低減され、前記根固め部が脆性破壊し難いものとされる。
【0007】
前記メッシュ板について、目の粗さを異にする複数のメッシュ板とすることができる。ここに、複数のメッシュ板は互いに間隔をおいて、また、複数のメッシュ板の目の粗さが前記筒体の一端部から他端部に向けて次第に増大するように配置される。これによれば、前記根固め液中に存する大きさの異なる土塊をそれぞれ複数のメッシュ板間に留めることができ、これにより前記根固め部内に存する土塊の量をより少なくし、前記根固め部をより一層脆性破壊し難いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】土塊混入抑制具の断面図である。
図2】(a)は根固め液と杭周固定液とが満たされた削孔中に建て込まれている状態にある杭材及び該杭材の先端部に取り付けられた土塊混入抑制具の側面図である。(b)は削孔中をさらに下降された状態にある杭材及び土塊混入抑制具の側面図である。
図3】土塊混入抑制具の比較的目の細かいメッシュ板の一例を概略的に示す平面図である。
図4】土塊混入抑制具の比較的目の粗いメッシュ板の一例を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、セメントミルク工法による埋込杭の形成に用いられる杭材12の先端部12aに適用される土塊混入抑制具が全体に符号10で示されている。杭材12は管状の既製杭又はH形鋼からなる。図示の杭材12は前記既製杭からなり、該既製杭は鋼管コンクリート杭からなる。
【0010】
図2(a)、(b)を参照すると、前記セメントミルク工法においては、地盤14に例えばアースオーガ(図示せず)を用いて削孔16が形成され、その後、前記アースオーガの引き上げの間に、削孔16内に、前記アースオーガの先端からセメントミルクを含む根固め液18及び杭周固定液20を順次に注入される。土塊混入抑制具10は、杭材12と共に、根固め液18及び杭周固定液20が満たされた削孔16内に建て込まれる。前記土塊混入抑制具10及び杭材12は、根固め液18及び杭周固定液20の固化物中に埋設され、これにより前記埋込杭が形成される。
【0011】
再び図1を参照すると、土塊混入抑制具10は鋼製の筒体22と、鋼製の複数(図示の例において3つ)のメッシュ板24、26、28とを備える。
【0012】
図示の筒体22は円筒体からなる。また、筒体22は一端部22aと、該一端部に相対する他端部22b、すなわち筒体22の軸線lの伸長方向に関して一端部22aに相対する他端部22bとを有する。筒体22は杭材12(既製杭)の外径より大きい内径を有し、その一端部22a内に杭材12の先端部12aを受け入れることができる。杭材12が前記H形鋼からなるものであるときは、矩形の断面形状を有する角筒体からなる筒体22が準備される。前記角筒体は、その内壁面が規定する矩形が前記H形鋼の周囲を取り囲み得る大きさを有し、前記角筒体からなる筒体22は、その一端部22a内に前記H形鋼の先端部を受け入れることができる。
【0013】
土塊混入抑制具10は、その筒体22の一端部22aにおいて該一端部内に受け入れられた杭材12の先端部12aに取り付けられる。取り付けは、例えば溶接により行うことができる。
【0014】
筒体22は、杭材12の先端部12aの受入れ長さをaとしたとき、好ましくは3aに相当する長さを有する。受入れ長さaは前記既製杭の外径の大きさに相当する値に設定することができる。また、杭材12が前記H形鋼からなる場合にあっては、受入れ長さaは前記矩形の長辺の長さに相当する値に設定することができる。
【0015】
図示の3つのメッシュ板24~28は円形の平面形状を有する。これに対し、杭材12が前記H形鋼からなる場合にあっては、3つのメッシュ板24~28は前記角筒体の内壁面が規定する矩形にほぼ等しい平面形状を有する。
【0016】
3つのメッシュ板24~28は、筒体22の他端部22b内に軸線lの伸長方向に関して互いに間隔をおいて平行に配置され、溶接によりこれらの周縁部において筒体22の周壁面に固定されている。
【0017】
3つのメッシュ板24~28は互いに異なる目の粗さ(目の大きさ)を有し、これらの目24a、26a及び28aの大きさに関して筒体22の一端部22aから他端部22bに向けて次第に増大するように配置されている。図示の例にあっては、最も小さい大きさの目24aを有するメッシュ板24が筒体22の一端部22a内に位置する杭材12の先端部12aから間隔をおいて配置され、最も大きい大きさの目28aを有するメッシュ板28が筒体22の他端部22bの開口端に配置され、これらの目24a、28aの大きさの中間の大きさの目26aを有するメッシュ板26が、両メッシュ板24、28から互いに間隔をおいて配置されている。メッシュ板24と杭材12の端部12aとの間には前記長さaに相当する間隔が存することが望ましい。前記3つのメッシュ板の目の大きさについては、一例として、次のように設定することができる。すなわち、メッシュ板24の目24aの大きさを10mmとし、メッシュ板26の目26aの大きさを20mmとし、また、メッシュ板28の目28aの大きさを30mmとすることができる。
【0018】
図3及び図4を参照すると、3つのメッシュ板24~28のうちの2つのメッシュ板26及びメッシュ板28が代表的に示されている。両メッシュ板26及び28はそれぞれこれらの周縁を規定する円形の枠部30と、枠部30内に配置かつ該枠部に固定された網部32とを有する。前記3つのメッシュ板の相互間隔は任意に定めることができる。また、前記メッシュ板の数は、これを3つとする図示の例に代えて、1、2又は4以上とすることができる。1つのみのメッシュ板は、好ましくは、筒体22の他端部22bの開口端に配置される。
【0019】
再び図2を参照すると、削孔16中に建て込まれた杭材12の先端部12aが根固め液18内に達し、該根固め液中を下降するとき、根固め液18が土塊混入抑制具10の筒体22内をその他端部22bからその一端部22aに向けて流動する。このとき、根固め液18中に浮遊する比較的大きい土塊(図示せず)、すなわち最下方に位置するメッシュ板28の目28aの大きさより大きい土塊がメッシュ板28に当たり該メッシュ板下に留められる。また、このとき、メッシュ板28を通り抜けた比較的小さい土塊が、メッシュ板28の上方に位置するメッシュ板26下に留められ、さらに、メッシュ板26を通り抜けたより小さい土塊が、メッシュ板26の上方に位置するメッシュ板24下に留められる。メッシュ板28下に留められた土塊は、削孔16の底部16aに向けての杭材12の押し込み操作により、削孔16の底部16a上に圧密される。これにより、根固め液18の固化物からなる根固め部内における前記土塊の混入量が低減され、前記根固め部が脆性破壊し難いものとされる。
【符号の説明】
【0020】
10 土塊混入抑制具
12、12a 杭材及びその先端部
16 削孔
18 根固め液
20 杭周固定液
22 筒体
22a、22b 筒体の一端部及び他端部
24、26、28 メッシュ板
図1
図2
図3
図4