(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】スプリンクラヘッドカバーおよび試験方法
(51)【国際特許分類】
A62C 37/50 20060101AFI20240717BHJP
A62C 37/11 20060101ALI20240717BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A62C37/50
A62C37/11
A62C35/68
(21)【出願番号】P 2021058307
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 卓也
(72)【発明者】
【氏名】尾形 理人
(72)【発明者】
【氏名】矢木 里実
(72)【発明者】
【氏名】森田 英聖
【審査官】松永 謙一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-046545(JP,A)
【文献】特開2001-061988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 37/11
A62C 37/50
A62C 35/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラヘッドのヘッド本体に装着される略円筒状のカバー本体であって、外周面から略径方向に突出する係止突部を有するカバー本体と、
前記カバー本体に取り付けられた物体検知センサと、
前記スプリンクラヘッドの感熱部を覆うように前記カバー本体の下側に支持された略椀状のカバープレートと、
前記スプリンクラヘッドの感熱部を覆うように前記カバープレートに収容されたプロテクタと、
前記プロテクタにおいて、前記物体検知センサと対向する位置に取り付けられた検知対象物と、
前記プロテクタから略斜め上方向に延びる板バネであって、先端に係止部を有する板バネと、
前記カバー本体に取り付けられた基板であって、前記物体検知センサの出力に基づいて、前記検知対象物が変位したと判定すると、作動信号を送信する制御回路を搭載した基板と
を備え、
前記係止部は、前記板バネが前記カバープレートにより外側から押圧されることにより、前記カバー本体の略周方向に移動可能なように前記係止突部に係止され、
前記カバープレートは、低融点合金を介して前記プロテクタと連結されることにより前記カバー本体の下側に支持されている
ことを特徴とするスプリンクラヘッドカバー。
【請求項2】
前記係止突部は、前記略周方向に間隔を空けて並べられた第1の係止突部と第2の係止突部により構成され、
前記カバー本体は、下面に形成された溝部をさらに有し、
前記溝部は、前記第1の係止突部と前記第2の係止突部に挟まれた前記カバー本体の外周面に一端が開口し、前記係止部を前記略周方向に案内可能なように形成されており、
前記係止部は略T字形状を有し、前記板バネが前記カバープレートにより外側から押圧されることにより、前記溝部の開口に向けて押し込み可能なように前記第1の係止突部の先端部と前記第2の係止突部の先端部の間に架け渡される
ことを特徴とする、請求項1に記載のスプリンクラヘッドカバー。
【請求項3】
前記係止突部は、前記略周方向に間隔を空けて並べられた第1の係止突部と第2の係止突部により構成され、
前記係止部は略T字形状を有し、前記板バネが前記カバープレートにより外側から押圧されることにより、前記第1の係止突部と前記第2の係止突部の間を前記板バネが前記略周方向に移動可能なように前記第1の係止突部と前記第2の係止突部の間に架け渡される
ことを特徴とする、請求項1に記載のスプリンクラヘッドカバー。
【請求項4】
前記係止突部は、前記略周方向に沿って設けられたフランジであり、
前記係止部は鉤状をなし、前記板バネが前記カバープレートにより外側から押圧されることにより、前記係止突部の外周に沿ってスライド可能なように前記係止突部に係止される
ことを特徴とする、請求項1に記載のスプリンクラヘッドカバー。
【請求項5】
スプリンクラヘッドのヘッド本体に装着されるカバー本体と、
前記カバー本体に取り付けられた物体検知センサと、
前記スプリンクラヘッドの感熱部を覆うように低融点合金を用いて前記カバー本体の下側に支持された略椀状のカバープレートと、
前記スプリンクラヘッドの感熱部を覆うように前記カバープレートに収容されたプロテクタと、
前記プロテクタにおいて、間隙を挟んで前記物体検知センサと対向する位置に
取り付けられた検知対象物と、
前記カバー本体に取り付けられた基板であって、前記物体検知センサの出力に基づいて、前記検知対象物が変位したと判定すると、作動信号を送信する制御回路を搭載した基板と
を備え、
前記カバープレート
および前記プロテクタは、前記物体検知センサと前記検知対象物の間の間隙に、前記物体検知センサによる前記検知対象物の検知を阻害するための板体を挿入するための開口を有することを特徴とするスプリンクラヘッドカバー。
【請求項6】
前記物体検知センサは磁気センサであり、
前記検知対象物は永久磁石であり、
前記板体は、軟磁性材料からなる板体である
ことを特徴とする、請求項5に記載のスプリンクラヘッドカバー。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のスプリンクラヘッドカバーの試験方法であって、前記カバープレートを前記カバー本体に対して前記略周方向に回転させることで前記物体検知センサと前記検知対象物を離間させるステップを含む試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラヘッドカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラヘッドを外的衝撃から守るための部材として、スプリンクラヘッドカバーが知られている。例えば、特許文献1には、スプリンクラヘッドに装着される取付部材と、取付部材の下端部に着脱自在に取り付けられてスプリンクラヘッドの感知部を覆うカバー部材とを備えるスプリンクラヘッドカバーが記載されている。このスプリンクラヘッドカバーのカバー部材は、スプリンクラヘッドの感知部を覆って保護する。
【0003】
加えて、特許文献1に記載のスプリンクラヘッドカバーは、一端がカバー部材に固定され、他端が取付部材に係止されるばねフックと、カバー部材の内側において取付部材の下端部に着脱可能に接合されたプロテクタとを備えている。このスプリンクラヘッドカバーのばねフックは、一端がはんだによりカバー部材に固定されており、他端が、カバー部材により外側から押圧されることで取付部材に係止される。
【0004】
このスプリンクラヘッドカバーのカバー部材が火炎によりが加熱されると、カバー部材にばねフックを固定しているはんだが溶けて、カバー部材はばねフックから分離する。ばねフックから分離したカバー部材は、ばねフックの付勢力により下方に押し出される。カバー部材が下方に押し出されると、カバー部材によるばねフックに対する拘束が外れ、ばねフックの他端が取付部材から外れる。その結果、カバー部材は自重により落下し、これに続いてばねフックとプロテクタも自重により落下することになる。プロテクタが落下すると、プロテクタに設けた可動端子が、取付部材に設けた2個の固定端子から離脱し、固定端子間が非通電状態になる。スプリンクラ消火設備の制御部は、この非通電状態への変化を検知することにより、スプリンクラヘッドが動作したことを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のスプリンクラヘッドカバーは、一度作動してカバー部材等が取付部材から分離してしまうと使用不能となり、新品と交換する必要がある。すなわち、非再用型である。そのため、スプリンクラヘッドカバーが正常に作動するか否かを試験することができない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スプリンクラヘッドカバーの作動試験を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係るスプリンクラヘッドカバーは、スプリンクラヘッドのヘッド本体に装着される略円筒状のカバー本体であって、外周面から略径方向に突出する係止突部を有するカバー本体と、前記カバー本体に取り付けられた物体検知センサと、前記スプリンクラヘッドの感熱部を覆うように前記カバー本体の下側に支持された略椀状のカバープレートと、前記スプリンクラヘッドの感熱部を覆うように前記カバープレートに収容されたプロテクタと、前記プロテクタにおいて、前記物体検知センサと対向する位置に取り付けられた検知対象物と、前記プロテクタから略斜め上方向に延びる板バネであって、先端に係止部を有する板バネと、前記カバー本体に取り付けられた基板であって、前記物体検知センサの出力に基づいて、前記検知対象物が変位したと判定すると、作動信号を送信する制御回路を搭載した基板とを備え、前記係止部は、前記板バネが前記カバープレートにより外側から押圧されることにより、前記カバー本体の略周方向に移動可能なように前記係止突部に係止され、前記カバープレートは、低融点合金を介して前記プロテクタと連結されることにより前記カバー本体の下側に支持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る別のスプリンクラヘッドカバーは、スプリンクラヘッドのヘッド本体に装着されるカバー本体と、前記カバー本体に取り付けられた物体検知センサと、前記スプリンクラヘッドの感熱部を覆うように低融点合金を用いて前記カバー本体の下側に支持された略椀状のカバープレートと、前記カバープレートにより収容され、間隙を挟んで前記物体検知センサと対向する位置に前記カバープレートにより支持された検知対象物と、前記カバー本体に取り付けられた基板であって、前記物体検知センサの出力に基づいて、前記検知対象物が変位したと判定すると、作動信号を送信する制御回路を搭載した基板とを備え、前記カバープレートは、前記物体検知センサと前記検知対象物の間の間隙に、前記物体検知センサによる前記検知対象物の検知を阻害するための板体を挿入するための開口を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプリンクラヘッドカバーの作動試験が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図9】基板挿入部1213に挿入された基板122の平面図
【
図19】火災監視システム100の火災発生時の動作を示すシーケンス図
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施形態
1-1.構成
本発明の一実施形態に係る火災監視システム100について図面を参照して説明する。
図1は、この火災監視システム100の構成を示す図である。この火災監視システム100は、同図に示すように、2階建ての建物に設置されており、複数のコンシールドヘッド1と、火災受信機2と、スプリンクラ制御盤3と、複数の電動弁ユニット4により構成されている。
【0013】
この火災監視システム100を構成するコンシールドヘッド1は、カバー付きのスプリンクラヘッドである。このコンシールドヘッド1は、建物の各階の天井に設置されており、火災受信機2と信号線で接続されている。また、このコンシールドヘッド1は、同じ階に設置されている電動弁ユニット4の2次側に配管を介して接続されている。本実施形態のスプリンクラ設備は乾式であり、この配管には平時は圧縮空気が充填されている。
【0014】
コンシールドヘッド1は、後述するように、スプリンクラヘッド部11と、スプリンクラヘッド部11のヘッド本体111に装着された本体121と、スプリンクラヘッド部11の感熱部112を覆うコンシールドプレート1241とを備えている。このコンシールドヘッド1のコンシールドプレート1241は、はんだ1243を用いて本体121の下側に固定されている。このコンシールドプレート1241は、火災時の火炎によって加熱されて、その熱によりはんだ1243が溶けると、本体121から分離して落下する。コンシールドヘッド1は、このコンシールドプレート1241の落下を検知し、その検知を契機として火災受信機2に作動信号を送信する。ここで送信される作動信号は、火災の発生を知らせる信号である。このようにコンシールドヘッド1は、火災感知器の機能を有している。
【0015】
コンシールドプレート1241が落下すると、スプリンクラヘッド部11が露出する。この露出したスプリンクラヘッド部11の感熱部112に火災時の火炎が作用すると、スプリンクラヘッド部11が作動する。
【0016】
次に、火災受信機2について説明する。
火災受信機2は、建物の1階に設置されており、スプリンクラ制御盤3と信号線で接続されている。この火災受信機2は、コンシールドヘッド1から作動信号を受信すると、火災が発生したと判定し、盤面の火災灯を点灯させ、音響を鳴動させる。加えて、作動したコンシールドヘッド1に対応する地区音響装置(図示略)を特定し、特定した地区音響装置を鳴動させる。さらに、スプリンクラ制御盤3に対して火災信号を送信する。
【0017】
スプリンクラ制御盤3は、建物の1階に設置されており、電動弁ユニット4と信号線で接続されている。このスプリンクラ制御盤3は、火災受信機2から火災信号を受信すると、火災階の電動弁ユニット4に開制御信号を送信する。また、このスプリンクラ制御盤3は、図示せぬ電動弁閉止ボタンを備えており、この電動弁閉止ボタンが利用者により押下されると、電動弁ユニット4に閉止制御信号を送信する。
【0018】
電動弁ユニット4は、建物の各階に設置されており、その1次側が水道配管に接続されている。この電動弁ユニット4は、スプリンクラ制御盤3から開制御信号を受信すると、電動弁を開放して2次側の配管に通水する。また、この電動弁ユニット4は、スプリンクラ制御盤3から閉止制御信号を受信すると、電動弁を閉止して2次側配管への通水を停止する。
【0019】
以下では、火災監視システム100の構成要素のうち、特にコンシールドヘッド1について詳細に説明する。
【0020】
図2および
図3は、コンシールドヘッド1の側面図と底面図である。
図4は、
図3のA-A線断面図である。コンシールドヘッド1は、これらの図に示すように、スプリンクラヘッド部11、コンシールド部12およびシーリングプレート13により構成されている。
【0021】
このコンシールドヘッド1を構成するスプリンクラヘッド部11は、
図4に示すように、略円柱形状を有し、ヘッド本体111と感熱部112を有している。このスプリンクラヘッド部11は、天井板5に形成された開口部51内に、感熱部112が室内に突出するように設置されている。このスプリンクラヘッド部11の後端は、配管(図示略)を介して電動弁ユニット4の2次側に接続されている。このスプリンクラヘッド部11のはんだの融点は約72度である。
【0022】
コンシールド部12は、略有底円筒形状を有するスプリンクラヘッドカバーである。このコンシールド部12は、スプリンクラヘッド部11のヘッド本体111に装着されている。
【0023】
シーリングプレート13は、略円環形状を有する板体である。このシーリングプレート13は、天井板5の開口部51の開口縁とコンシールド部12の間の隙間を塞ぐための部材である。
【0024】
以下では、コンシールドヘッド1の構成要素のうち、特にコンシールド部12について詳細に説明する。
【0025】
コンシールド部12は、
図4に示すように、本体121、基板122、信号線123(
図2参照)、保護カバー124、プロテクタ125およびスプリング126により構成されている。以下、このコンシールド部12の各構成要素について説明する。
【0026】
まず、本体121について説明する。
本体121は、スプリンクラヘッド部11のヘッド本体111に装着されたカバー本体である。
【0027】
図5~
図7は、この本体121の側面図、平面図および底面図である。
図8は、
図6のB-B線断面図である。本体121は、これらの図に示すように、略円環状のベース板1211を有している。また、この本体121は、ベース板1211の上面の内周縁に沿って立設された周壁1212を有している。この周壁1212は、
図6に示すように、7枚の円弧状に湾曲した板体により構成され、平面視でC字形状を有している。この周壁1212を構成する7枚の板体のうち、4枚の板体の内周面には、スプリンクラヘッド部11の雄ねじ(図示略)にねじ込むための雌ねじ12121が形成されている。一方、残りの3枚の板体の内周面には、スプリンクラヘッド部11を支持するための段部12122が形成されている。
【0028】
また、本体121は、ベース板1211の上面の内周縁であって、周壁1212が立設されていない部分に沿って立設された基板挿入部1213を有している。この基板挿入部1213は、
図4および
図6に示すように、スプリンクラヘッド部11の軸方向に延びる筒体である。また、この基板挿入部1213は、平面視で、スプリンクラヘッド部11の外周に沿って円弧状に湾曲している。この基板挿入部1213は、内周壁12131、外周壁12132および2枚の側壁12133により構成されている。
【0029】
この基板挿入部1213を構成する内周壁12131の内周面には、スプリンクラヘッド部11を支持するための段部12134が形成されている。また、2枚の側壁12133の内側には、その長手方向に沿って直線状に延びる一対の溝12135が形成されている。この一対の溝12135は、平面視で、外周壁12132側に形成されている。
【0030】
また、本体121は、ベース板1211の下面に設けられた環状突部1214を有している。この環状突部1214は、
図7に示すように、底面視でC字形状を有しており、ベース板1211の径方向中央に設けられている。この環状突部1214が設けられることで、ベース板1211の下面には係止段部1215が形成される。この係止段部1215には、後述するプロテクタ125の係止突部1252が嵌め合わされる。
【0031】
また、本体121は、環状突部1214の外周面から略径方向に突出する3組の係止突部1216を有している。この3組の係止突部1216は、
図7に示すように、等間隔で設けられており、それぞれ、本体121の略周方向に間隔を空けて並べられた2つの係止突部1216により構成されている。また、この3組の係止突部1216は、
図5等に示すように、下方に向かって約45度の角度で傾斜している。この3組の係止突部1216の各々には、後述するプロテクタ125の係止部12581が係止される。
【0032】
また、本体121は、環状突部1214の下面に形成された3本の溝1217を有している。この3本の溝1217は、
図7に示すように、その一端が、1組の係止突部1216に挟まれた環状突部1214の外周面に開口し、環状突部1214の略周方向に延びるように形成されている。また、この3本の溝1217は、環状突部1214の高さと略等しい深さを有している。この3本の溝1217には、後述するプロテクタ125の支持バネ1258の先端が挿入され、挿入された先端を本体121の略周方向に案内する。
【0033】
次に、基板122について説明する。
基板122は、
図4に示すように、本体121に取り付けられている。より具体的には、本体121の基板挿入部1213に挿入されている。
図9は、基板挿入部1213に挿入された基板122の平面図である。基板122は、同図に示すように、基板挿入部1213の一対の溝12135に沿って挿入され、その水平方向の位置が固定されている。この基板122は、平面視で、基板挿入部1213の内周壁12131と外周壁12132の並び方向に対して略垂直に配置されている。また、この基板122は、平面視で、外周壁12132の側に配置されている。これは、基板122と内周壁12131の間のスペースをできるだけ確保し、基板122に背の高い部品を搭載可能とするためである。
【0034】
基板122の上端には、信号線123(
図2参照)が接続されている。この信号線123は、火災受信機2に接続されている。また、基板122の下側には、
図4に示すように、MRセンサ1221が搭載されている。このMRセンサ1221は、磁気センサであり、後述する永久磁石1259の変位(より具体的には、本体121からの離脱)を検出するために使用される。
【0035】
また、基板122には、図示せぬ制御回路と送受信回路が搭載されている。これら2つの回路のうち、制御回路は、MRセンサ1221からの出力に基づいて、永久磁石1259が変位したか否か(より具体的には、本体121から離脱したか否か)を判定する。そして、変位したと判定すると、送受信回路を制御して火災受信機2に作動信号を送信する。
【0036】
次に、保護カバー124について説明する。
保護カバー124は、
図4に示すように、スプリンクラヘッド部11の感熱部112を覆うように本体121の下側に支持されている。この保護カバー124の支持は、はんだ1243を介してプロテクタ125と連結されることで行われている。
【0037】
図10は、この保護カバー124の平面図であり、
図11は、
図10のC-C線断面図である。保護カバー124は、これらの図に示すように、略椀状のコンシールドプレート1241を有している。このコンシールドプレート1241は、熱伝導率の高い銅やアルミニウムなどの金属からなるカバー用のプレートである。また、保護カバー124は、コンシールドプレート1241の内面中央に取り付けられたフック1242を有している。このフック1242は、側面視でコ字状をなし、2本の腕部12421の先端を外側に折り曲げることで形成される。このフック1242は、保護カバー124をプロテクタ125に固定するために使用される。また、このフック1242は、はんだ1243を用いてコンシールドプレート1241に取り付けられている。用いられるはんだ1243の融点は約60度である。
【0038】
次に、プロテクタ125について説明する。
プロテクタ125は、スプリンクラヘッド部11の感熱部112を覆って保護するための部材であり、
図4に示すように、本体121と保護カバー124の間に挿入され、保護カバー124により収容されている。このプロテクタ125は、後述するように、保護カバー124により外側から拘束されることで、本体121に係止されている。言い換えると、保護カバー124により支持されている。
【0039】
図12~
図14は、このプロテクタ125の側面図、平面図および底面図である。
図15は、
図13のD-D線断面図である。プロテクタ125は、これらの図に示すように、略円環状の上枠1251を有している。また、このプロテクタ125は、上枠1251の上面に設けられた略環状の係止突部1252を有している。この係止突部1252は、
図13に示すように、平面視で、上枠1251の径方向内側に設けられている。この係止突部1252は、本体121の係止段部1215に嵌め合わされる。
【0040】
また、プロテクタ125は、上枠1251よりも小径で略円板状の下枠1253を有している。この下枠1253の中央には、一対の半円形の開口部1254が形成されている。この一対の開口部1254には、保護カバー124のフック1242の腕部12421が挿入されている(
図16参照)。
【0041】
また、プロテクタ125は、上枠1251と下枠1253を連結するリブ1255、1256および1257を有している。このリブ1255、1256および1257は、
図14に示すように、等間隔で設けられている。このリブ1255、1256および1257のうち、リブ1256の外側面には、上下方向に延びる凹部12561が形成されている。
【0042】
また、プロテクタ125は、リブ1256の凹部12561に固定された支持バネ1258を有している。この支持バネ1258は板ばねであり、凹部12561の下端部に、斜め上方に向かって傾斜するように固定されている。また、この支持バネ1258は、その先端部にT字形状の係止部12581を有している。この係止部12581は、本体121の係止突部1216に係止される。
【0043】
また、プロテクタ125は、上枠1251の上面に埋め込まれた直方体の永久磁石1259を有している。
【0044】
次に、スプリング126について説明する。
スプリング126は、具体的にはコイルバネであり、
図4に示すように、プロテクタ125と保護カバー124の間に挿入されている。このスプリング126は、保護カバー124を、プロテクタ125と本体121から離れる方向に付勢する。
以上が、コンシールド部12の各構成要素についての説明である。
【0045】
次に、コンシールドヘッド1の組立手順の一例について説明する。
まず、本体121の下端部に設けた係止段部1215(
図8参照)に、プロテクタ125の上面に設けた係止突部1252(
図13参照)を嵌め合わせる。このとき、各支持バネ1258の位置を、本体121の1組の係止突部1216の位置と整合させる。加えて、永久磁石1259の位置を、本体121の基板挿入部1213の位置(より具体的には、MRセンサ1221が配置される位置)と整合させる。そして、プロテクタ125の下面にスプリング126を嵌め合わせ、この状態で治具を使用する等して、これら3部品を保護カバー124内に押し込む。このとき、これら3部品を、本体121のベース板1211の下面が保護カバー124の上端部に当接するまで押し込む。
【0046】
これにより、保護カバー124の底部に設けたフック1242の腕部12421は、プロテクタ125の下面に設けた開口部1254に挿入される。また、スプリング126はプロテクタ125と保護カバー124の間に圧縮されて介装される。また、各支持バネ1258は、保護カバー124に押圧されて凹部12561内に折り曲げられて収容され、その先端部の係止部12581が、本体121の1組の係止突部1216に係止される。この状態で、フック1242の腕部12421の先端を外側に折り曲げることで、保護カバー124をプロテクタ125に固定する。このときの状態を
図16に示す。この
図16は、
図2のE-E線断面図である。ただし、スプリンクラヘッド部11の図示は省略している。
【0047】
このようにして組み立てられたコンシールド部12では、保護カバー124はプロテクタ125との間に挿入されたスプリング126により常時下方に向う付勢力を受けている。しかし、保護カバー124とプロテクタ125はフック1242により一体に固定されている。加えて、プロテクタ125に設けた各支持バネ1258は、保護カバー124を外方に付勢する反力により、その係止部12581が本体121の1組の係止突部1216に係止されている。そのため保護カバー124は、スプリング126の付勢力に打ち勝って、その位置に保持される。
【0048】
コンシールド部12をスプリンクラヘッド部11に取り付ける際には、まず、本体121の基板挿入部1213に基板122を挿入する(
図4参照)。加えて、本体121の上方からシーリングプレート13の開口部を嵌め合わせてベース板1211上に位置させる(
図4参照)。その上で、本体121を天井板5の下から開口部51内に挿入し、スプリンクラヘッド部11の雄ねじに本体121の雌ねじ12121をねじ込むことで、スプリンクラヘッド部11にコンシールド部12を装着する。このように装着されたコンシールド部12の保護カバー124は、スプリンクラヘッド部11を覆って保護する(
図4参照)。
【0049】
次に、コンシールドヘッド1の作用について説明する。
図4に示す監視状態において、火災時の熱によってコンシールドプレート1241が加熱されると、このコンシールドプレート1241にフック1242を固定しているはんだ1243が溶ける。はんだ1243が溶けると、コンシールドプレート1241はフック1242から分離し、コンシールドプレート1241とプロテクタ125の間に介装されたスプリング126のばね力によって下方に押し出される。コンシールドプレート1241が下方に押し出されると、プロテクタ125の各支持バネ1258に対する拘束が外れ、各支持バネ1258はそのばね力によって外方に変形する。その結果、各支持バネ1258の係止部12581は、本体121の1組の係止突部1216から外れる。
【0050】
下方に押し出されたコンシールドプレート1241は本体121から外れて落下し、これに続いてスプリング126とプロテクタ125が自重により落下する。その結果、スプリンクラヘッド部11が露出する。このときの状態を
図17に示す。露出したスプリンクラヘッド部11は火災の熱により作動する。
【0051】
図17に示すようにプロテクタ125が落下すると、これに取り付けられた永久磁石1259も落下する。この永久磁石1259の落下は、基板122のMRセンサ1221により検知される。この永久磁石1259の落下が検知されると、基板122の制御回路は、送受信回路を制御して火災受信機2に作動信号を送信する。
【0052】
次に、コンシールド部12の作動試験について説明する。
コンシールド部12の作動試験は、コンシールド部12のコンシールドプレート1241が落下したときに、作動信号が正常に火災受信機2に送信されるか否かを確認するための試験である。この作動試験を行うために実際にコンシールドプレート1241を落下させてしまうと、コンシールド部12を新品と交換する必要がある。そこで、本実施形態では、コンシールドプレート1241を実際には落下させずに、コンシールドプレート1241が落下した状態を模擬する。具体的には、コンシールド部12の保護カバー124を本体121に対して回転させて、保護カバー124に収容される永久磁石1259と、本体121に取り付けたMRセンサ1221を離間させる。この回転操作の結果、MRセンサ1221が永久磁石1259との離間を検知し、作動信号が火災受信機2に送信されれば、コンシールド部12は正常に作動すると判定される。一方、この回転操作の結果、MRセンサ1221が永久磁石1259との離間を検知せず、またはその他の理由により、作動信号が火災受信機2に送信されない場合は、コンシールド部12は正常に作動しないと判定される。以下では、この保護カバー124の回転操作について、
図18を参照して詳細に説明する。ここで参照する
図18は、本体121の底面図である。
【0053】
コンシールド部12の点検者は、まず、保護カバー124の上端部を内側に押し込む(
図4の矢印A1参照)。この際、点検者により内側に押し込まれる上端部は、特に支持バネ1258の係止部12581を覆っている上端部である。この上端部を内側に押し込むことにより、係止突部1216の先端部に架け渡されていた係止部12581は(
図18(a)参照)、係止突部1216の基端側に移動する(
図18(b)参照)。言い換えると、係止部12581は、溝1217の開口の方に移動する。
【0054】
次に点検者は、保護カバー124の上端部を内側に押し込んだ状態で、保護カバー124を本体121に対して反時計回りに回転させる(
図2の矢印A2参照)。この際、点検者により回転させられる保護カバー124は、はんだ1243を用いてプロテクタ125と連結されている。そのため、保護カバー124を本体121に対して回転させると、プロテクタ125も本体121に対して回転する。その際、プロテクタ125の係止部12581は、係止突部1216の基端側から(
図18(b)参照)、溝1217に沿って回転方向にスライドする(
図18(c)参照)。言い換えると、係止部12581は、本体121の略周方向にスライドする。また、プロテクタ125の永久磁石1259も、本体121のベース板1211の底面に沿って回転方向にスライドする(
図18(c)参照)。このように係止部12581と永久磁石1259が回転方向にスライドすることで、プロテクタ125は本体121に対して回転することができる。
【0055】
このプロテクタ125の回転の結果、永久磁石1259はMRセンサ1221と離間する(
図18(c)参照)。この時、コンシールド部12が正常に作動すれば、永久磁石1259との離間はMRセンサ1221により検知され、作動信号が火災受信機2に送信される。一方、コンシールド部12が正常に作動しなければ、永久磁石1259との離間はMRセンサ1221により検知されず、またはその他の理由により、作動信号が火災受信機2に送信されない。点検者は、作動信号が火災受信機2に送信されるか否かを確認することで、コンシールド部12が正常に作動するか否かを確認することができる。
【0056】
以上説明したように、コンシールド部12は作動試験が可能になっている。加えて、作動試験を行うためには、保護カバー124の上端部を内側に押し込んだ状態で保護カバー124を回転させる必要がある。言い換えると、保護カバー124を回転させるためには、その上端部を内側に押し込む必要がある。そのため、非試験時に保護カバー124が回転してしまい、火災が発生していないにもかかわらず作動信号が火災受信機2に送信されるといった事態を防止することができる。
【0057】
1-2.動作
火災監視システム100の火災発生時の動作について説明する。
図19は、この火災発生時の動作を示すシーケンス図である。
【0058】
火災監視システム100のコンシールドヘッド1は、
図4に示す状態で火災を監視する。この状態において、火災時の熱によってコンシールドプレート1241が加熱され、はんだ1243が溶けると、コンシールドプレート1241は本体121から分離して落下する。コンシールドヘッド1は、このコンシールドプレート1241の落下を検知する(ステップS1)。落下検知後、コンシールドヘッド1は、火災受信機2に対して作動信号を送信する(ステップS2)。ここで送信される作動信号には、コンシールドヘッド1のアドレスが含まれる。
【0059】
火災受信機2は、作動信号を受信すると、火災が発生したと判定し、盤面の火災灯を点灯させ、音響を鳴動させる(ステップS3)。加えて、作動したコンシールドヘッド1に対応する地区音響装置を特定し、特定した地区音響装置を鳴動させる(ステップS4)。さらに、スプリンクラ制御盤3に対して火災信号を送信する(ステップS5)。ここで送信される火災信号には、火災階を示す情報が含まれる。
【0060】
スプリンクラ制御盤3は、火災信号を受信すると、火災階の電動弁ユニット4を特定し、特定した電動弁ユニット4に開制御信号を送信する(ステップS6)。
【0061】
火災階の電動弁ユニット4は、開制御信号を受信すると、その電動弁を開放して2次側の配管に通水する(ステップS7)。
【0062】
作動したコンシールドヘッド1では、コンシールドプレート1241の落下後、コンシールドプレート1241の支持バネ1258に対する拘束が外れることで、プロテクタ125も落下する。その結果、スプリンクラヘッド部11が露出する。この露出したスプリンクラヘッド部11は、火災の熱により作動し、散水が開始される。
【0063】
その後、消火が完了し、スプリンクラ制御盤3の電動弁閉止ボタンが利用者により押下されると(ステップS8)、スプリンクラ制御盤3は火災階の電動弁ユニット4に閉止制御信号を送信する(ステップS9)。
【0064】
火災階の電動弁ユニット4は、閉止制御信号を受信すると、その電動弁を閉止して2次側配管への通水を停止する(ステップS10)。その結果、作動したスプリンクラヘッド部11からの散水が停止する。
以上が、火災発生時の動作についての説明である。
【0065】
以上説明した火災監視システム100は、コンシールドヘッド1を採用している。このコンシールドヘッド1は、スプリンクラヘッド部11と、スプリンクラヘッド部11に装着された本体121と、スプリンクラヘッド部11を覆うように、はんだ1243を用いて本体121の下側に支持されたコンシールドプレート1241とを備えている。このコンシールドヘッド1のコンシールドプレート1241は、火災時の火炎によって加熱されて、その熱によりはんだ1243が溶けると、本体121から分離して落下する。コンシールドヘッド1は、このコンシールドプレート1241の落下を検知し、その検知を契機として火災受信機2に作動信号を送信する。すなわち、このコンシールドヘッド1は、火災感知器の機能を有している。
【0066】
このようにコンシールドヘッド1は、スプリンクラヘッドと火災感知器を一体化して構成されている。そのため、従来のスプリンクラヘッドと火災感知器に代えて、このコンシールドヘッド1を採用することで、防災設備設計を簡素化することができる。加えて、消火範囲と火災感知範囲が近似し、消火効率が向上する。
【0067】
加えて、このコンシールドヘッド1を採用することで、火元の詳細な位置の把握が可能になる。この効果について詳細に説明すると、まず一般に、スプリンクラヘッドの有効散水面積は火災感知器の感知面積よりも狭い。そのため、スプリンクラヘッドの設置台数は火災感知器の設置台数よりも多くなる。これはコンシールドヘッド1についても例外ではなく、コンシールドヘッド1は一般の火災感知器と比較して多く設置されることになる。そして、このコンシールドヘッド1は、上記の通り、火災感知器の機能を有しており、火災を感知すると自機のアドレスを含む作動信号を火災受信機2に送信する。この火災受信機2に送信されるアドレスは、火元の位置を示す識別情報である。そのため、このコンシールドヘッド1を採用することで、火元の詳細な位置の把握が可能になる。
【0068】
2.変形例
上記の実施形態は下記のように変形してもよい。また、下記の変形例は互いに組み合わせてもよい。
【0069】
2-1.変形例1
図1に示す火災監視システム100の各構成要素の台数および配置はあくまで一例であり、防火対象物に応じて適宜変更してよい。
【0070】
2-2.変形例2
コンシールドヘッド1は、
図1に示すように、火災受信機2と信号線で接続されている。言い換えると、火災受信機2と有線で接続されている。これに代えて、コンシールドヘッド1を、火災受信機2と無線で通信可能なように接続してもよい。
【0071】
2-3.変形例3
コンシールドヘッド1は、乾式のスプリンクラ設備に限らず、湿式のスプリンクラ設備で採用してもよい。湿式のスプリンクラ設備で採用しても、スプリンクラヘッドと火災感知器の両方の機能を兼ねることで、防災設備設計を簡素化することができる。
【0072】
2-4.変形例4
図4等に示すコンシールド部12の形状はあくまで一例であり、装着するスプリンクラヘッド部11の形状に応じて適宜変更してよい。
【0073】
2-5.変形例5
コンシールドヘッド1では、MRセンサ1221が磁気センサとして使用されている。しかし、このMRセンサ1221に代えて別の磁気センサを使用してもよい。例えば、ホールセンサやリードスイッチを使用してもよい。
【0074】
MRセンサ1221とホールセンサとリードスイッチの中では、MRセンサ1221とホールセンサが比較的小型であり、基板122に搭載することができる。そのため、リードスイッチと比較して、基板122とリード線で接続する必要がなく、かつ、装置を小型化することができる。
【0075】
2-6.変形例6
保護カバー124のフック1242をコンシールドプレート1241の取り付けるための部材として、はんだ(すなわち、錫と鉛の合金)以外の低融点合金を使用してもよい。ただし、使用する低融点合金は、スプリンクラヘッド部11のはんだよりも融点が低いものとする。
【0076】
2-7.変形例7
火災受信機2はR型受信機であり、コンシールドヘッド1からアドレスを含む作動信号を受信する。しかし、火災受信機2は必ずしもR型受信機である必要はなく、P型受信機とし、コンシールドヘッド1からオンオフの作動信号を受信するようにしてもよい。
【0077】
2-8.変形例8
コンシールドヘッド1では、コンシールドプレート1241の落下を検知するための仕組みとして、MRセンサ1221と永久磁石1259を使用している。しかし、このMRセンサ1221と永久磁石1259の組み合わせに代えて、別の物体検知センサと検知対象物の組み合わせを使用してもよい。例えば、反射型光電センサと反射板の組み合わせを使用してもよい。この組み合わせを使用する場合、本体121に光電センサを取り付け、プロテクタ125の光電センサに対向する位置に反射板を取り付け、光電センサの出力に基づいて反射板の変位を検知する。この組み合わせによっても、コンシールドプレート1241の落下を検知することができる。
【0078】
2-9.変形例9
コンシールド部12は、上記の通り、保護カバー124を本体121に対して回転させることで作動試験を行うことができる。この保護カバー124の回転を可能にするために、コンシールド部12の本体121には3本の溝1217が形成されている(
図7参照)。しかし、保護カバー124を回転させるための構造は、この3本の溝1217に限られない。以下では、保護カバー124を回転可能にするための別の構造を備えるコンシールド部12Aについて説明する。
【0079】
コンシールド部12Aは、本体121Aとプロテクタ125Aを備える点においてコンシールド部12と相違している。以下では、これらの本体121Aとプロテクタ125Aについて、
図20と
図21を参照して説明する。
【0080】
図20は、本体121Aの底面図である。本体121Aは、同図に示すように、本体121と異なり、3本の溝1217を有していない。また、本体121Aは、本体121の3組の係止突部1216に代えて、3組の係止突部1216Aを有している。この3組の係止突部1216Aは、各組ごとに係止突部1216同士の間隔が広くなっている点において係止突部1216と異なっている。この3組の係止突部1216Aの各々には、後述するプロテクタ125Aの係止部12581Aが係止される。
【0081】
次に、
図21は、プロテクタ125Aの平面図である。プロテクタ125Aは、同図に示すように、プロテクタ125の3枚の支持バネ1258に代えて、3枚の支持バネ1258Aを有している。この3枚の支持バネ1258Aは、その先端部に係止部12581Aを有している点において3枚の支持バネ1258と異なっている。この3枚の支持バネ1258Aが有する係止部12581Aは、略T字形状を有し、支持バネ1258に対して略垂直方向に円弧状に延びている。この係止部12581Aは、本体121Aの1組の係止突部1216Aに架け渡されて係止される。
【0082】
次に、コンシールド部12Aの回転操作について、
図22を参照して説明する。ここで参照する
図22は、本体121Aの底面図である。
【0083】
コンシールド部12Aの点検者は、保護カバー124を把持して本体121Aに対して反時計回りに回転させる。この際、点検者により回転させられる保護カバー124は、はんだ1243を用いてプロテクタ125Aと連結されている。そのため、保護カバー124を本体121Aに対して回転させると、プロテクタ125Aも本体121Aに対して回転する。その際、プロテクタ125Aの支持バネ1258Aは、1組の係止突部1216A間を回転方向に移動する。より具体的には、支持バネ1258Aは、一方の係止突部116Aの側(
図22(a)参照)から他方の係止突部1216Aの側(
図22(b)参照)へ、本体121Aの略周方向に移動する。また、支持バネ1258Aの係止部12581Aは、1組の係止突部1216Aに架け渡された状態で、本体121Aの略周方向にスライドする。また、プロテクタ125Aの永久磁石1259は、本体121Aのベース板1211の底面に沿って回転方向に移動する(
図22(b)参照)。このように支持バネ1258Aと永久磁石1259が回転方向に移動することで、プロテクタ125Aは本体121Aに対して回転することができる。
【0084】
このプロテクタ125Aの回転の結果、永久磁石1259はMRセンサ1221と離間する(
図22(b)参照)。この時、コンシールド部12Aが正常に作動すれば、永久磁石1259との離間はMRセンサ1221により検知され、作動信号が火災受信機2に送信される。一方、コンシールド部12Aが正常に作動しなければ、永久磁石1259の離間とはMRセンサ1221により検知されず、またはその他の理由により、作動信号が火災受信機2に送信されない。点検者は、作動信号が火災受信機2に送信されるか否かを確認することで、コンシールド部12Aが正常に作動するか否かを確認することができる。
【0085】
以上説明したように、コンシールド部12Aが備える回転構造によっても、保護カバー124を本体121Aに対して回転させることができる。
【0086】
2-10.変形例10
さらに別の回転構造を備えるコンシールド部12Bについて説明する。
【0087】
コンシールド部12Bは、本体121Bとプロテクタ125Bを備える点においてコンシールド部12と相違している。以下では、これらの本体121Bとプロテクタ125Bについて、
図23~
図26を参照して説明する。
【0088】
図23は、本体121Bの底面図であり、
図24は、
図23のF-F線断面図である。本体121Bは、これらの図に示すように、本体121と異なり、3本の溝1217を有していない。また、本体121Bは、本体121の3組の係止突部1216に代えて、係止突部1218を有している。この係止突部1218は、環状突部1214の外周面から略径方向に突出し、本体121Bの略周方向に沿って設けられたフランジである。この係止突部1218は、
図24に示すように、下方に向かって約45度の角度で傾斜している。また、この係止突部1218は、
図23に示すように、底面視でC字形状を有している。この係止突部1218には、後述するプロテクタ125Bの係止部12581Bが係止される。
【0089】
次に、
図25および
図26は、プロテクタ125Bの側面図と平面図である。プロテクタ125Bは、これらの図に示すように、プロテクタ125の3枚の支持バネ1258に代えて、3枚の支持バネ1258Bを有している。この3枚の支持バネ1258Bは、その先端部に鉤状の係止部12581Bを有している点において3枚の支持バネ1258と異なっている。この係止部12581Bは、本体121Bの係止突部1218に係止される。
【0090】
次に、コンシールド部12Bの回転操作について、
図27を参照して説明する。ここで参照する
図27は、本体121Bの底面図である。
【0091】
コンシールド部12Bの点検者は、保護カバー124を把持して本体121Bに対して反時計回りに回転させる。この際、点検者により回転させられる保護カバー124は、はんだ1243を用いてプロテクタ125Bと連結されている。そのため、保護カバー124を本体121Bに対して回転させると、プロテクタ125Bも本体121Bに対して回転する。その際、プロテクタ125Bの係止部12581Bは、係止突部1218の外周に沿って回転方向にスライドする(
図27(a)および(b)参照)。言い換えると、係止部12581Bは、係止突部1218に沿って本体121Bの略周方向にスライドする。また、プロテクタ125Aの永久磁石1259は、本体121Bのベース板1211の底面に沿って回転方向に移動する(
図27(a)および(b)参照)。このように係止部12581Bと永久磁石1259が回転方向にスライドすることで、プロテクタ125Bは本体121Bに対して回転することができる。
【0092】
このプロテクタ125Bの回転の結果、永久磁石1259はMRセンサ1221と離間する(
図27(b)参照)。この時、コンシールド部12Bが正常に作動すれば、永久磁石1259との離間はMRセンサ1221により検知され、作動信号が火災受信機2に送信される。一方、コンシールド部12Bが正常に作動しなければ、永久磁石1259との離間はMRセンサ1221により検知されず、またはその他の理由により、作動信号が火災受信機2に送信されない。点検者は、作動信号が火災受信機2に送信されるか否かを確認することで、コンシールド部12Bが正常に作動するか否かを確認することができる。
【0093】
以上説明したように、コンシールド部12Bが備える回転構造によっても、保護カバー124を本体121Bに対して回転させることができる。
なお、コンシールド部12Bにおいても、コンシールドプレート1241の落下を検知するための仕組みとして、MRセンサ1221と永久磁石1259の組み合わせに代えて、反射型光電センサと反射板の組み合わせを使用してもよい。
【0094】
2-11.変形例11
コンシールド部12の作動試験では、保護カバー124を本体121に対して回転させ、永久磁石1259とMRセンサ1221を離間させることで、コンシールドプレート1241が落下した状態を模擬している。しかし、この回転操作に代えて、永久磁石1259からMRセンサ1221に向かう磁束を遮断することで、コンシールドプレート1241が落下した状態を模擬してもよい。以下では、この磁気遮断構造を備えるコンシールド部12Cについて説明する。
【0095】
コンシールド部12Cは、保護カバー124Aとプロテクタ125Cを備える点においてコンシールド部12と相違している。以下では、これらの保護カバー124Aとプロテクタ125Cについて、
図28~
図30を参照して説明する。
【0096】
図28は、保護カバー124Aの側面図である。保護カバー124Aは、同図に示すように、保護カバー124と異なり、挿入口1244を有している。この挿入口1244は、コンシールドプレート1241に形成された矩形の開口である。この挿入口1244には、後述する磁気遮断プレートPが挿入される。
【0097】
次に、
図29は、プロテクタ125Cの側面図であり、
図30は、
図29のG-G線断面図である。プロテクタ125Cは、これらの図に示すように、プロテクタ125と異なり、挿通口12571を有している。この挿通口12571は、リブ1257に形成された矩形の開口である。この挿通口12571には、後述する磁気遮断プレートPが挿通される。また、プロテクタ125Cは、プロテクタ125の永久磁石1259に代えて、永久磁石1259Aを有している。この永久磁石1259Aは、その上面が挿通口12571よりも高い位置とならないように、上枠1251に埋め込まれている。
【0098】
次に、コンシールド部12Cの作動試験について、
図31を参照して説明する。ここで参照する
図31は、コンシールド部12Cの縦断面図である。
【0099】
コンシールド部12Cの点検者は、保護カバー124Aの挿入口1244に磁気遮断プレートPを挿入する。この際、点検者により挿入される磁気遮断プレートPは、パーマロイ等の軟磁性材料からなる板体である。この磁気遮断プレートPは、挿入口1244から挿入されると、プロテクタ125Cの挿通口12571を通って、永久磁石1259AとMRセンサ1221の間の間隙に案内される。永久磁石1259AとMRセンサ1221の間に案内された磁気遮断プレートPは、永久磁石1259からMRセンサ1221に向かう磁束を遮断する。言い換えると、磁気遮断プレートPは、MRセンサ1221による永久磁石1259の検知を阻害する。その結果、コンシールド部12Cが正常に作動すれば、MRセンサ1221は磁界強度の低下を検出し、作動信号が火災受信機2に送信される。一方、コンシールド部12Cが正常に作動しなければ、MRセンサ1221は磁界強度の低下を検出せず、またはその他の理由により、作動信号が火災受信機2に送信されない。点検者は、作動信号が火災受信機2に送信されるか否かを確認することで、コンシールド部12Cが正常に作動するか否かを確認することができる。
【0100】
以上説明したように、コンシールド部12Cが備える磁気遮断構造によっても作動試験が可能になる。
【0101】
なお、コンシールド部12Cの作動試験は、上記の通り、保護カバー124Aの挿入口1244に磁気遮断プレートPを挿入することによって行われる。そのため、コンシールド部12Cは、作動試験を可能にするための回転構造(具体的には、3本の溝1217)を備えなくてもよい。
【0102】
なお、上記のコンシールド部12Cにおいて、MRセンサ1221と永久磁石1259の組み合わせに代えて、反射型光電センサと反射板の組み合わせを使用する場合には、磁気遮断プレートPに代えて、遮光板を光電センサと反射板の間に挿入すればよい。
【0103】
2-12.変形例12
コンシールドヘッド1は、コンシールドプレート1241の落下を検知すると、火災受信機2に対して作動信号を送信する。しかし、作動信号の送信先は必ずしも火災受信機2に限られない。作動信号の送信先は、コンシールドヘッド1が設置される防火設備に応じて適宜変更されてよい。
【符号の説明】
【0104】
1…コンシールドヘッド、2…火災受信機、3…スプリンクラ制御盤、4…電動弁ユニット、5…天井板、11…スプリンクラヘッド部、12、12A、12B、12C…コンシールド部、13…シーリングプレート、51…開口部、100…火災監視システム、111…ヘッド本体、112…感熱部、121、121A、121B…本体、122…基板、123…信号線、124、124A…保護カバー、125、125A、125B、125C…プロテクタ、126…スプリング、1211…ベース板、1212…周壁、1213…基板挿入部、1214…環状突部、1215…係止段部、1216、1216A…係止突部、1217…溝、1218…係止突部、1221…MRセンサ、1241…コンシールドプレート、1242…フック、1243…はんだ、1244…挿入口、1251…上枠、1252…係止突部、1253…下枠、1254…開口部、1255、1256、1257…リブ、1258、1258A、1258B…支持バネ、1259、1259A…永久磁石、12121…雌ねじ、12122…段部、12131…内周壁、12132…外周壁、12133…側壁、12134…段部、12135…溝、12421…腕部、12561…凹部、12571…挿通口、12581、12581A、12581B…係止部