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特許7522077昇降機の保守システム及び昇降機の保守方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】昇降機の保守システム及び昇降機の保守方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021093478
(22)【出願日】2021-06-03
(65)【公開番号】P2022185702
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】星崎 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】主税 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一朗
(72)【発明者】
【氏名】神谷 駿
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114645(JP,A)
【文献】特開2007-058303(JP,A)
【文献】特開2006-160505(JP,A)
【文献】特開2018-193145(JP,A)
【文献】特開2011-088711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0225458(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102040130(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機の保守に使用する保守アプリを管理する昇降機の保守システムであって、
保守アプリを格納するアプリ記憶部と、
作業日程情報、作業者情報、作業情報、を含むデータベースと、
前記作業日程情報に基づいて作業に使用する保守アプリを選択し作業者が使用する保守用端末で使用可能とする保守アプリ選択部を備え、
前記データベースに格納された作業者情報は作業者の資格に関する情報を含み、
前記保守アプリ選択部は前記資格に基づいて保守作業を実施する作業者が使用を許可された保守アプリを前記保守用端末で使用可能とする昇降機の保守システム。
【請求項2】
さらに昇降機故障発生が通知されたとき作業者を割当て保守用端末へ通知された昇降機故障の対応を依頼する指示を送付する作業者割当部を備え、
前記保守アプリ選択部は、割り当てられた当該故障を担当する作業者へ作業者の資格、故障情報に基づいて保守アプリを選択し、前記保守用端末で択された保守アプリを使用可能とする請求項1に記載の昇降機の保守システム。
【請求項3】
計算機を用いて昇降機の保守に使用する保守アプリを管理する昇降機の保守方法であって、
保守アプリと、保守についての作業日程情報、作業者情報、作業情報、を記憶し、
前記作業日程情報に基づいて作業に使用する前記保守アプリを選択し作業者が使用する保守用端末で使用可能とし、
前記作業者情報は作業者の資格に関する情報を含み、
前記資格に基づいて保守作業を実施する作業者が使用を許可された保守アプリを前記保守用端末で使用可能とする昇降機の保守方法。
【請求項4】
さらに昇降機故障発生が通知されたとき作業者を割当て保守用端末へ通知された昇降機故障の対応を依頼する指示を保守用端末に送付し、
割り当てられた当該故障を担当する作業者へ作業者の資格、故障情報に基づいて保守アプリを選択し、前記保守用端末で選択された保守アプリを使用可能とする請求項3に記載の昇降機の保守方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介してクライアントにアプリケーションプログラムの実行を管理する昇降機の保守システム及び昇降機の保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昇降機の保守に際して保守員は昇降機の保守機能を実装した保守用端末を持参する。このときに保守用端末における保守機能は、昇降機および使用者である保守員の安全性を維持するため、職務内容や技量を示す資格に応じて保守機能の使用許可/不許可を制御する必要がある。例えば資格のない新人に高度な保守機能の作業を行わせるわけにはいかない。
【0003】
そのため、職務内容や資格に応じて端末の種類や、配布するソフトウェアを分類して対応している。このため、保守用端末およびソフトウェアの管理が煩雑となる。また、ソフトウェアの更新時に、保守用端末に実装しているソフトを全て更新する必要がある。さらに、保守用端末の紛失、盗難時のリスクが高いことが問題となっている。
【0004】
これに対応した装置として、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1は、一般作業者であるクライアントに対して任意のアプリケーションプログラムのサーバ上における実行制御を許容する個人向けの保守サーバ装置を提供することを目的にクライアントによるアプリケーションプログラムの実行を可能とする保守サーバ装置であり、登録クライアントの識別情報及び認証情報と、該登録クライアントに割り当てる該アプリケーションプログラムの実行環境を設定する実行環境設定情報とを該登録クライアントに関連付けて保持する。これにより、該クライアントからの要求に応じて該登録クライアントであるか否か判定し、登録クライアントであると判定された場合に、該実行環境設定情報に基づいて該実行環境を形成して、この実行環境においてアプリケーションプログラムの実行を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-244861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、端末のWebブラウザから保守サーバ装置と常時接続し、Webブラウザからの入力に基づいて保守サーバ装置でアプリケーションを実行して実行結果をWebブラウザに出力することで、ユーザーが選択した機能を提供することを実現している。
【0007】
しかし、ユーザーが使用可能な全機能から、作業に使用する機能を選択する必要があり、提供機能の増加とともに機能選択の操作が煩雑になる問題があった。
【0008】
以上のことから本発明においては、計画された保守作業や突発的な故障復旧作業などの種々の作業形態において最適かつ最小限の機能を提供し、作業者の操作性低下を防ぐことが可能となる保守サーバ装置および昇降機の保守システム及び昇降機の保守方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のことから本発明においては、「昇降機の保守に使用する保守アプリを管理する昇降機の保守システムであって、保守アプリを格納するアプリ記憶部と、作業日程情報、作業者情報、作業情報、を含むデータベースと、作業日程情報に基づいて作業に使用する保守アプリを選択し作業者が使用する保守用端末で使用可能とする保守アプリ選択部を備える昇降機の保守システム」としたものである。
【0010】
また本発明においては、「計算機を用いて昇降機の保守に使用する保守アプリを管理する昇降機の保守方法であって、保守アプリと、保守についての作業日程情報、作業者情報、作業情報、を記憶し、作業日程情報に基づいて作業に使用する保守アプリを選択し作業者が使用する保守用端末で使用可能とする昇降機の保守方法」としたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、昇降機の保守時に作業者が使用可能な保守アプリを使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る昇降機保守システムの全体構成例を示す図。
図2】保守アプリ選択テーブルTBの構成例を示す図。
図3】作業日程情報データベースDB1の作業日程情報D1の構成例を示す図。
図4】作業者情報データベースDB2の作業者情報D2の構成例を示す図。
図5】作業情報データベースDB3の作業情報D3の構成例を示す図。
図6】物件情報データベースDB4の物件情報D4の構成例を示す図。
図7】故障情報データベースDB5の故障情報D5の構成例を示す図。
図8】本発明の昇降機保守システムの動作概要を示したフローの例。
図9】本発明で保守作業を行う際のシーケンス図の例。
図10】本発明で故障復旧作業を行う際のシーケンス図の例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施する形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
まず、本発明の実施例に係る昇降機保守システムの全体構成例について、図1を用いて説明する。
【0015】
本実施例では、昇降機10は、昇降機の動作や、故障状態の検出や、保守用端末20との通信が実施可能な制御盤11と、制御盤の情報を読取り一般回線を介して保守サーバ装置30と通信可能な監視装置12とを備えて構成されている。また本発明における昇降機10の保守システムは、作業者である保守員が携帯する保守用端末20と、保守サーバ装置30とから構成されている。
【0016】
このうち保守用端末20は、一般回線に接続し、後述する保守サーバ装置30と通信可能な通信部1(21)と、昇降機の制御盤11と通信可能な通信部2(22)と、作業者が操作するための操作部23と、操作結果などを表示する表示部24と、通信部1(21)、通信部2(22)、操作部23、表示部24を制御するための制御部25とを具備する。
【0017】
なお、保守用端末20の制御部25はCPU(Central Processing Unit)などの一般的に知られる情報処理装置で構成され、表示部24と操作部23には液晶タッチパネルなどの表示部と操作部が一体となったものを採用してもよく、保守用端末20は上記機能を備えたスマートフォンにより構成してもよい。
【0018】
計算機を用いて実現される保守サーバ装置30は、データ群としてメモリ内に構成された、保守のための各種データを記憶している複数のデータベースを含むデータベースDBと、保守のための複数の保守アプリMと、保守アプリMを選択するための保守アプリ選択テーブルTBを備えており、計算機の演算部により実行される機能である保守アプリ選択部34と、通信部1(21)、通信部2(22)との間で通信を行うための通信処理部35、37を有する。
【0019】
このうちデータベースDBは、作業日程情報D1を記憶する作業日程情報データベースDB1と、作業者情報D2を記憶する作業者情報データベースDB2と、作業情報D3を記憶する作業情報データベースDB3と、物件情報D4を記憶する物件情報データベースDB4と、故障情報D5を記憶する故障情報データベースDB5とからなり、作業者に提供する保守アプリを判断する根拠となる情報を記憶しておく。
【0020】
保守のための複数の保守アプリM(MA、MB・・・MZ)は、作業者の操作によって昇降機10に指令を送るための昇降機制御部312を備えている。また保守アプリ選択テーブルTBには、予め定めた保守アプリM(MA、MB・・・MZ)の選択条件を設定している。
【0021】
これらを用いて、計算機の演算部の機能である保守アプリ選択部34は、データベースDBの情報と保守アプリ選択テーブルTBから提供する保守アプリM(MA、MB・・・MZ)を決定し、作業者のアクセスを制御する。
【0022】
作業者割当部38は予め保守作業が予定されている作業については作業日程情報D1、作業情報D3、物件情報D4を参照し、作業を行うことができる作業者を作業者情報D2から選択し割り当てる。昇降機10の監視装置12から通信処理部2を経由してDB5に格納された故障情報D5の作業についても同様に作業情報D3、物件情報D4を参照し、作業を行うことができる作業者を作業者情報D2から選択し割り当てる。
【0023】
また通信処理部1(35)は、作業者の携帯する保守用端末20と一般公衆回線を経由して通信可能であり、通信処理部2(37)は、昇降機の監視装置12と一般回線を経由して通信可能であり、昇降機の故障情報を故障情報データベースDB5に格納する。
【0024】
次に、保守サーバ装置30のデータベースDB及び保守アプリ選択テーブルTBに格納されるデータの一例について図2から図6を用いて説明する。なお、これらに格納されるデータDには2桁の番号を付しており、10位の数値は各データベース(DB1からDB5)に付与した番号であり、一位の数値はそのデータベース内におけるデータ個別の番号である。なお保守アプリ選択テーブルTBについてはD0としている。また保守アプリ選択テーブルTBは、複数のデータベースDBを参照するためのものであるので、各データベースのデータの番号を記載している。
【0025】
図3に示す作業日程情報データベースDB1の作業日程情報D1は、作業者ID(D11)と作業日D12に紐づけられ、どの建物に納められた昇降機であるかを示す現場コードD13と、現場コードの何台目の昇降機であるかを示す号機D14と、昇降機の一意の値である製造番号D15と、作業日に計画された作業の内容を示す作業D16の各情報を備える。これによれば例えば、IDが「12345678」の作業者は、4月10日に現場コード「54321」の「01」号機である製造番号「AA0123」の昇降機にて、「通常保守」の作業を実施する計画が立てられていることを示している。
【0026】
図4に示す作業者情報データベースDB2の作業者情報D2は、作業者の固有の値として作業者ID(D11)と、作業者IDに紐づけられるPW(D21)と、作業者が昇降機の保守作業や、定期検査作業など何の作業を主任務としているかを判別するための職務内容D22と、職務の経験年数や所持している資格などのからあらかじめ設定される資格D23と、職務内容と資格から決められ、使用を許可される保守アプリ利用権限D24とを備える。これによればたとえば、ID「12345678」の作業者は、主任務として昇降機の保守作業を実施する作業者であり、資格から保守作業に使用する保守アプリMA~MFの使用が許可されるが、検査にしか使用しない保守アプリMZの使用は許可されていないことを示している。
【0027】
図5に示す作業情報データベースDB3の作業情報D3は、昇降機型式D31と作業D32に紐づけられ、予め標準の作業フローで定められた保守アプリの使用有無D33を記憶している。これによれば例えば、昇降機型式「A」の昇降機に「整備A」の作業を行う場合、保守アプリMAと、保守アプリMBと、保守アプリMCと、保守アプリMDは使用するが、保守アプリMEと、保守アプリMFから保守アプリMZは使用しないということを示している。
【0028】
図6に示す物件情報データベースDB4の物件情報D4は、昇降機の製造番号D41に紐づけられ、昇降機型式D31と、所在地D42と、昇降機の詳細仕様D43とを備える。これによれば例えば、製造番号「AA0123」の昇降機は、「A」という型式の昇降機が、「AAA」の建物に納められており、詳細な仕様についても記載されたものとなる。
【0029】
図7に示す故障情報データベースDB5の故障情報D5は、監視装置12を経由して昇降機10で検出された故障状態を記憶しておくものであり、昇降機の製造番号D15に紐づけられて、故障検出D51と、検出日時D52と、故障の対応の為に出動する保守作業員の作業者IDとを記憶する。これによれば例えば、製造番号「BB0234」の昇降機でE2の故障を、YYYYMMDDhhmmss1の日時に検出したことを示している。
【0030】
次に、保守アプリ選択テーブルTBの一例を、図2を用いて説明する。保守アプリ選択テーブルTBは、職務内容D01と、作業種別D32と、昇降機型式D31と、昇降機状況D51と、保守アプリ作業有無D33とからなる判定用テーブルである。これによれば例えば、職務内容が「保守」の作業者が、作業種別が「通常」の作業を行う際、昇降機の状況が「N」であれば、保守アプリAの使用が許可されるが、その他の保守アプリB~Zの使用は許可されないことを示している。
【0031】
図1のシステム構成において図2から図7の各種データやテーブルを保有する保守サーバ装置30は、保守用端末20と連携して以下のように機能する。図8は、この一連処理内容を示すフロー図である。なお、以下の説明では保守サーバ装置30はクラウド上に設置したサーバとして説明している。
【0032】
図8の一連の処理における最初の処理ステップS1において、作業者である保守員は保守用端末20からクラウド上の保守サーバ装置30に接続する。接続による呼び出しを受けた保守サーバ装置30は、処理ステップS2において保守用端末20が接続してきた場合の認証機能として、作業者IDとPW(パスワード)の入力を求める画面を表示し、作業者は作業者IDとPWを入力すると次のステップに進む。
【0033】
処理ステップS3では、保守サーバ装置30の作業者IDを図4の作業者情報データベースDB2から検索し、作業者ID(D11)に紐づけられたPW(D21)と保守用端末20で入力されたPWが一致するか判定し。作業者IDとPWが作業者情報データベースDB2に登録されているものであれば、接続してきた保守用端末の作業者を特定する。処理ステップS4では、特定した作業者IDの職務内容D22と資格D23の情報を抽出し、これを確定させる。
【0034】
次に処理ステップS5では、図3の作業日程情報データベースDB1を参照し、作業者が当日作業する作業物件(現場コードD13、号機D14製造番号D15)、作業内容D16を確定させる。
【0035】
処理ステップS6では、処理ステップS4および処理ステップS5で確定させた情報と、保守アプリ選択テーブルTBとを比較し、作業者に許可する保守アプリを確定し、保守用端末20に通知する。例えば作業者が「12345678」であった場合、作業者情報データベースDB2に登録されている作業者IDの職務内容D22は保守、資格D23はSクラスという内容のものであり、保守アプリMZ以外の保守アプリ作業権限を有する。また作業日程情報データベースDB1に登録されている作業者IDが「12345678」の4月10日の製造番号「AA0123」の案件の作業D16は「通常保守」であることから、保守アプリ選択テーブルTBの1行目の事項について、作業内容D01が保守であり、作業種別D32が通常であり、昇降機型式D31がA(製造番号「AA0123」の最初の記号)であることが該当する。そして、この1行目によれば、この作業では保守アプリMAのみを作業することが判明する。この内容の通知により、作業者は保守用端末20に通知された保守アプリの中から、適宜作業に使用する保守アプリを選択し使用することができる。
【0036】
その後処理ステップS7において、作業者は例えば、現場の昇降機10の制御盤11と通信し、昇降機10の動作を制御する保守アプリの場合、作業者は保守用端末20を昇降機10に接続し、処理ステップS8において保守サーバ装置30内の許可された保守アプリMを実行する。
【0037】
そして、作業者が操作すると、処理ステップS9において保守サーバ装置30内の実行中の保守アプリMがコマンドを保守用端末20経由で昇降機10に送信し、保守アプリMを使用した作業が実施されることになる。
【0038】
上記、昇降機保守システムの動作について、図9を用いて通常保守作業における動作を説明する。図9は、縦方向に時系列を示し、横方向に通信を介して接続される保守用端末20、昇降機10、保守サーバ装置30内の保守アプリ選択部TB及び各データベースDB、保守アプリ選択テーブルTBとのデータの参照関係、制御の流れを示している。
【0039】
この図によれば、作業を実施する昇降機10に到着した後、作業者は保守用端末20を起動し、作業者ID(D11)とPW(D21)を入力し、保守用端末20は、作業者が入力した作業者(D11)とPW(D21)を保守アプリ選択部TBへ通知する。以降、保守アプリ選択部TBは、関連するデータを参照すべく、各データベースDBに順次アクセスする。
【0040】
まず保守アプリ選択部TBは、保守用端末20から通知された作業者ID(D11)に紐づけされ、作業者情報データベースDB2に登録されている登録PW(D21)と、職務内容D22と、資格D23を読み出す。なお、作業者の入力したPWと登録PWが一致しない場合は、使用拒否を保守用端末20に通知するが、一致した場合は、次の動作に移行する。
【0041】
次に保守アプリ選択部TBは、作業日程情報データベースDB1から当日の作業者IDに紐づけられた対象現場D13と作業内容D16を検索する。
【0042】
次に保守アプリ選択部TBは、物件情報データベースDB4から対象現場D42をキーとして作業する昇降機の型式D31を検索する。
【0043】
次に保守アプリ選択部TBは、作業情報データベースDB3から昇降機型式D31と作業内容D32に紐づけられた作業で、使用保守アプリ一覧D33を取得する。
【0044】
その後に、保守アプリ選択部TBは、作業者の職務内容D22と、資格D23と、作業で使用するアプリ一覧D0から、作業者に使用を許可する保守アプリMを選択し、使用許可保守アプリを保守用端末20に通知する。
【0045】
作業者は通知された使用許可保守アプリの中から機能を選択する。選択機能は保守用端末20から保守アプリ選択部TBに通知され、保守アプリ選択部TBは保守サーバ装置30内の保守アプリMを呼び出し、呼び出された保守アプリMは機能実行のために昇降機に送信するコマンドを、保守アプリ選択部TBを経由し、保守用端末20へ送信する。
【0046】
保守用端末20から昇降機10にコマンドを送信すると、昇降機10はコマンドを実行し、コマンドの実行可否を返信する。返信があれば保守用端末20は保守アプリ選択部34が保守アプリ選択テーブルTBを参照し、保守アプリMの使用が許可されていれば保守アプリMに返信内容を通知し、保守アプリMが返信内容に応じた動作を行っていくことで、作業が進められる。
【0047】
なお、保守アプリMと昇降機間で使用する通信コマンドにあらかじめ規定しておいた定型のデータ列を挿入しておくことで、毎回作業者の権限チェックを実施する処理を省くことも可能である。具体的な方法としては、保守アプリMの使用開始と使用終了のコマンドを定義しておき、保守アプリM使用開始後、保守アプリMの使用終了コマンドが入力されるまでは、保守アプリM用に定型データ列の挿入された通信コマンドについては、作業者の利用権限チェックを不要とする方法が考えられる。
【0048】
図9に示すように本発明においては、保守サーバ装置30は作業者に対して使用する保守アプリの利用権限のみを与え、保守アプリそのものは保守サーバ装置内に保持して、保守アプリ内の昇降機制御部で演算して求めたコマンドのみを保守用端末20を経由して昇降機10に与え、その結果を逆のルートで保守サーバ装置30に戻すという流れでの処理を行う。
【0049】
つまり、保守用端末20は保守アプリをダウンロードして使用するのではなく、あくまでも保守サーバ装置30側保守アプリの実行によるコマンドを受信し、このコマンドを昇降機10内の制御盤に伝達するとともに、昇降機10の状態を保守サーバ装置30側に返送、伝達するための通信手段、あるいは接続手段として使用される。
【0050】
これにより、保守用端末20およびソフトウェアの管理が保守サーバ装置30で集中的に行うことができ、ソフトウェアの更新が容易であり、保守用端末20の紛失、盗難時のリスクを低減できる。
【実施例2】
【0051】
次に故障復旧における昇降機保守システムの動作について、図10を用いて説明する。なお図10は、基本的に図9と同じ書式により、時系列及び各部の関連を示している。
【0052】
まず、昇降機10は故障を検出すると、監視装置12を経由して保守サーバ装置30へ昇降機故障情報を通知する。保守サーバ装置30に送信された昇降機故障情報は故障情報データベースDB5内に故障情報データD5として記憶され、次に作業者割当部38に通知される。通知を受けた作業者割当部38にて、作業日程情報データベースDB1に故障復旧のスケジュール変更を登録し、保守用端末20には出動指示を通知する。保守アプリ選択部34により選択された作業者、故障情報を基に作業者情報D2、物件情報D4、作業情報D3、保守アプリ選択テーブルTB等を参照し、使用許可を与える保守アプリが選ばれ使用権限が付与される。以降の処理は、基本的に図9と同じであるので、特に留意すべき点などを説明する。
【0053】
出動指示を受け取った作業者は現地に到着後に、保守用端末20で作業者IDとPWを入力する。この状態では、故障復旧の作業も作業日程情報データベースDB1として登録されているため、図9を用いて説明した通常保守作業同様に使用許可保守アプリの通知が行われ、作業者は故障復旧作業に使用する保守アプリMが使用可能となる。
【0054】
なお、想定外の故障原因や故障原因不明の場合は、作業情報として予め使用を想定していた保守アプリMだけで対応が不可能な場合があるため、例えば故障原因が不明である旨の登録を作業者が実施すれば、保守アプリ選択部34が全ての保守アプリMの使用を許可してもよい。この場合は誰が全ての保守アプリの使用をいつ許可したかを示す履歴情報を保存し、特定の権限のある人物しか全てのアプリを使用できないよう作業者IDに割り当てたPWとは異なるPWを設定しても良い。
【0055】
このような動作とすることで、既知の原因による故障であれば、通常の保守作業と同様の作業で復旧作業が行え、故障原因が不明である故障であっても、ツールの使用が制限されることなく作業が実施可能になる。
【0056】
上記構成及び動作のシステムを実現することにより、昇降機の保守作業計画に基づいた必要な機能や、昇降機の故障状況によって故障復旧に必要な機能など、作業形態に応じた機能の使用を可能とする機能を持つ保守サーバ装置30を備えた昇降機保守システムを提供することができる。
【0057】
なお、本実施例では昇降機が監視装置を含む構成として説明したが、監視装置を含まない構成とし、故障情報は昇降機から保守用端末を経由し、保守サーバ装置30の故障情報に通知する構成も考えられる。動作としては監視装置の動作を保守用端末が実施することとなり、監視装置がない昇降機においては、保守用端末20を昇降機に接続した際に故障情報を読み出す手順として設定しておき、作業日程情報を変更させることとで、上記実施例と同様の動作が行える。
【0058】
また、保守サーバ装置30の構成として、保守サーバ装置30はクラウドサービスを利用した構成としなくともよく、さらにデータベースDBと、保守アプリMと、保守アプリ選択部TBとを夫々個別の構成として説明したが、すべてを一つの構成としてもよいし、それぞれの構成をさらに細分化してもよく、構成を限定するものではない。
【符号の説明】
【0059】
10:昇降機
11:昇降機の制御盤
12:昇降機の監視装置
20:保守用端末
21:保守用端末の通信部1
22:保守用端末の通信部2
23:保守用端末の操作部
24:保守用端末の表示部
25:保守用端末の制御部
30:保守サーバ装置
M:保守アプリ
312:保守アプリの昇降機制御部
DB:データベース
DB1:作業日程情報データベース
DB2:作業者情報データベース
DB3:作業情報データベース
DB4:物件情報データベース
DB5:故障情報データベース
TB:保守アプリ選択テーブル
34:保守アプリ選択部
35:通信処理部1
37:通信処理部2
38:作業者割当部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10