(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】シートバックパネル及び車両用シートバック
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20240717BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20240717BHJP
B68G 7/05 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/64
B68G7/05 A
(21)【出願番号】P 2021109382
(22)【出願日】2021-06-30
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000182454
【氏名又は名称】寿屋フロンテ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 一貴
【審査官】永冨 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-229306(JP,A)
【文献】実開昭60-108300(JP,U)
【文献】特開2016-073478(JP,A)
【文献】実開昭62-111497(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0000061(US,A1)
【文献】独国特許発明第10026337(DE,C1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B60N 2/64
B68G 7/05
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバックを構成するシートバックパネルであって、
前記車両用シートとして用いられた状態で、前記シートバックの背面側に、表面が露出する部分であるパネル本体部と、
前記シートバックの表皮材を縫製するための部分であって、前記パネル本体部の外周から延長して配置された縫製部と、
前記縫製部の外周から、前記縫製部の表面に対し突出する方向に延長して配置された突起部と、
を備え、
前記縫製部は、前記パネル本体部の外周から延長して配置され、前記パネル本体部よりも低い剛性を有する低剛性部を備える
ことを特徴とするシートバックパネル。
【請求項2】
前記低剛性部は、前記パネル本体部よりも厚さが薄いことを特徴とする請求項1に記載のシートバックパネル。
【請求項3】
前記低剛性部の曲げ剛性は、前記パネル本体部の曲げ剛性の1/2以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシートバックパネル。
【請求項4】
前記突起部の外周から前記低剛性部まで延びる複数のスリットを有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシートバックパネル。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のシートバックパネルと、
前記シートバックパネルの前面側に設置されたシートバック本体部と、
前記シートバックパネルの前記縫製部の縫製位置に縫い付けられて、前記縫製位置から折り返され、前記シートバック本体部を覆う表皮材と、
を備え、
前記表皮材の張力により前記突起部が押圧されることで、前記低剛性部は、前記パネル本体部の外周端部の延長方向よりも内側の方向に曲がり、
前記表皮材のうち、折り返された前記表皮材の内側に配置される縫い代部は、前記縫製部と前記突起部とで構成される窪み内に配置され、
前記縫製部と前記突起部とで構成される前記窪みの表面は、前記表皮材で覆われている、
ことを特徴とする車両用シートバック。
【請求項6】
前記表皮材を縫い付ける前記縫製位置は、
前記低剛性部の内周端部から、前記表皮材の厚さ分、外周側に離れた位置から、
前記低剛性部の外周端部から、前記表皮材の2倍の厚さ分、外周側に離れた位置まで、
の範囲内である
ことを特徴とする請求項5に記載の車両用シートバック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はシートバックパネル及びこれを用いた車両用シートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、国際公開WO2010/038314号公報には、樹脂製のコアシートにカバーシートを積層した積層素材が記載されている。この積層素材は、車両用内装材として利用できるものであり、積層素材の端部には加熱及び押圧処理によって端末処理が施されている。この端末処理により、端部切断面からコアシートが露出する口開きが押えられ、車室空間の見栄え向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両用シートのシートバックには、シートバックパネルに縫製された表皮材により、シートバック本体部を覆った構成のものがある。このような構成のシートバックでは、表皮材は、通常、シートバックパネルとの縫製位置で折り返され、シートバック本体部側に張設される。従って、縫製位置付近には、折り返しによる表皮材の重なりによって、盛り上がりができる虞がある。縫製部の盛り上がりは、擦れ等を発生させる虞がある。また、車両用シートの見栄えを良好にするという観点からも、表皮材の縫製部における盛り上がりは好ましいものではない。この点、特許文献1の積層素材の端末処理は、積層素材自体の段差を解消するものであるが、表皮材が縫製された場合の縫製部を盛り上がりの問題に関するものではない。
【0005】
本出願の1つの目的は、上記課題に鑑みて、シートバックパネルに表皮材が縫製された場合にも表皮材の縫製部における盛り上がりを低減できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の1つの例は、車両用シートのシートバックを構成するシートバックパネルに関する。このシートバックパネルは、パネル本体部と、縫製部と、突起部とを備える。パネル本体部は、車両用シートとして用いられた状態で、シートバックの背面側に、表面が露出する部分である。縫製部は、シートバックの表皮材を縫製するための部分であって、パネル本体部の外周から延長して配置されている。突起部は、縫製部の外周から、縫製部の表面に対し突出する方向に延長して配置されている。縫製部は、パネル本体部の外周から延長して配置され、パネル本体部よりも低い剛性を有する低剛性部を備えている。
【0007】
本出願の他の例は、車両用シートバックに関する。この車両用シートバックは、本出願のいずれかの例のシートバックパネルと、シートバック本体部と、表皮材とを備える。シートバック本体部は、シートバックパネルの前面側に設置されている。表皮材は、シートバックパネルの縫製部の縫製位置に縫い付けられて、縫製位置から折り返され、シートバック本体部を覆う。シートバックパネルの低剛性部は、表皮材の張力により突起部が押圧されることで、パネル本体部の外周端部の延長方向よりも内側の方向に曲がっている。また、表皮材のうち、折り返された表皮材の内側に配置される縫い代部は、縫製部と突起部とで構成される窪み内に配置されている。縫製部と突起部とで構成される窪みの表面は、表皮材で覆われている。
【発明の効果】
【0008】
シートバックパネルに表皮材が縫製部に縫い付けられ、縫製位置から表皮材が折り返されて張設された場合、張力により突起部が押しこまれ、低剛性部が曲がることで、縫製部と突起部とによる窪みが形成される。そしてこの窪みに表皮材の縫い代部側を収め込むことができる。従って、このシートバックパネルを用いることで、車両用シートバックを表皮材の盛り上がりが抑制された、外観の美しいものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本出願の実施の形態1に係る車両用シートの全体構成を示す模式図である。
【
図2】本出願の実施の形態1に係るシートバックパネルの背面側の一部を模式的に示す正面図である。
【
図3】本出願の実施の形態1に係るシートバックパネルの一部を模式的に示す断面図である。
【
図4】本出願の実施の形態1に係るシートバックパネルにシート生地を縫製した状態を模式的に示す断面図である。
【
図5】本出願の実施の形態1に係るシートバックパネルにシート生地を縫製した状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】本出願の実施の形態1に係るシートバックパネルとシート生地との縫製部を拡大して模式的に示す断面図である。
【
図7】本出願の実施の形態2に係るシートバックパネルの背面側の一部を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本出願に係る車両用内装材の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は本実施の形態に係る車両用シート1の全体構成を示す模式図である。
図1に示される車両用シート1は、車両内に配置されて用いられる。以下の説明では、方向について言及する場合、車両用シート1が車両内に配置された状態におけるシート前方(即ち、
図1の矢印FR方向)、シート上方(
図1の矢印UP方向)をそれぞれ基準とするものとする。また、以下の説明において「表面」とは、各部材が車両用シート1として用いられる場合に、シートの表面に露出する側の面をいうものとする。
【0012】
図1の車両用シート1は、シートバック2とシートクッション3とヘッドレスト4とを備えている。シートバック2は、シートクッション3の後端部に支持されている。シートバック2は、乗員の背部を支持するためのものである。ヘッドレスト4は、シートバック2の上端部に配置されている。ヘッドレスト4は、乗員の頭部を支持するためのものである。
【0013】
シートバック2は、図示しないシートバック本体部を備える。シートバック本体部はパッド等のクッション材及び支持フレーム等を含み得る。シートバック本体部の背面側には、シートバックパネル10が設置されている。また、シートバック本体部表面の、シートバックパネル10で覆われていない部分は、シートバックパネル10に縫製されたシート生地20によって被覆されている。
【0014】
シートバックパネル10は、例えば、樹脂のハニカム構造体により形成されている。樹脂のハニカム構造体を用いることで、薄くしても必要な強度を確保できると共に、シート生地20の縫製を容易とすることができる。ただし、シートバックパネル10の構成材料は、必要な剛性を確保できる比較的軽い材料であれば、必ずしも樹脂のハニカム構造体に限定されない。シートバックパネル10の構成材料として、具体的に例えば、繊維、圧縮フェルト又は編フェルト等のフェルト、又は、発泡ウレタン等の発泡樹脂及び樹脂の中空構造体等が用いることができる。また、シートバックパネル10は、これらの材料のうちいずれか2以上の材料が積層された構成であってもよい。あるいは、シートバックパネル10は、これらの材料を、後述するシート生地20等と同様の材料の表皮材で被覆したものであってもよい。
【0015】
シート生地20を形成する材料に、特に限定はない。ただし、シート生地20は、乗客が接する部分を被覆するものであるから、シート生地20の構成材料は、触感や外観の高級感を考慮して選択することが望ましい。具体的に、シート生地20として、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)を含む合成皮革、あるいは不織布等が用いられる。ここで、PVCを含む合成皮革には、PVCのみからなる合成皮革、及び、PVCを主成分とする合成皮革が含まれる。PVCを主成分とする合成皮革には、例えば、PVCの表面にナイロンやポリウレタン等の樹脂を塗布したものなどがある。また、シート生地20は、例えば、PP(ポリプロピレン)等、他の材料を含む合成皮革、不織布及び織物等の繊維、及び、天然皮革等からなるものであってもよい。
【0016】
図2は、本実施の形態に係るシートバックパネル10の背面側の一部を模式的に示す正面図である。
図2に示されるように、シートバックパネル10は、背面側にその表面が露出するパネル本体部11と、パネル本体部11と一体的に形成された外縁構造12とを有している。シート生地20は、シートバックパネル10の外縁構造12に縫製されて、取り付けられる。以下、外縁構造12の構成について具体的に説明する。
【0017】
図3は、本実施の形態に係るシートバックパネル10の一部を模式的に示す断面図である。
図3の断面は、
図1におけるA-Aに相当する位置の断面であると共に、
図2におけるB-B断面である。
図3に示されるように、シートバックパネル10の外縁構造12は、パネル本体部11と、縫製部14、及び、突起部15からなる外縁構造12と、を備える。これらの部分は一体的に成型されている。
【0018】
パネル本体部11は、その表面が車両用シート1の背面側に露出する部分である。パネル本体部11の外周には、パネル本体部11と一体的に構成された低剛性部13が配置されている。
【0019】
縫製部14は、パネル本体部11の外周端部から、その表面が、パネル本体部11の外周端部の表面方向と同一方向に延長するように配置された平板状の部分である。縫製部14は、シート生地20を縫製するための部分であり、縫製部14の縫製位置に、シート生地20が縫い付けられるようになっている。縫製部14の幅W14、即ち、パネル本体部11の外周端部から縫製部14の外周端部までの長さは、シートバックパネル10の外周の全個所に応じて概ね一定である。ただし、縫製部14の幅W14は、場所によって異なるものであってもよい。
【0020】
縫製部14は、縫製部14の内周端部側の部分に、パネル本体部11の外周端部から延長して形成された低剛性部13を含む。低剛性部13は、パネル本体部11より厚さの薄い部分である。具体的には、シートバックパネル10の、縫製部14の内周端部となる部分の内側(即ち、車両用シート1の背面に露出する表面とは反対側の面側)に、切り欠き形状の部分が形成されており、これにより他の部分より厚さの薄い低剛性部13が構成されている。低剛性部13は、他の部分より薄く形成されることで、その剛性が他の部分より低くなっている。本実施の形態に係るシートバックパネル10では、低剛性部13の曲げ剛性は、パネル本体部11の曲げ剛性の1/2以下となるように調整されている。なお、縫製部14の、低剛性部13以外の部分、即ち、低剛性部13よりも外周側の部分の厚さは、パネル本体部11と概ね同一である。
【0021】
突起部15は、縫製部14の外周端部から、縫製部14の表面に対し突出する方向に延長するように配置された部分である。突起部15の幅W15、即ち、突起部15の外周端部から縫製部14との境界位置までの距離は、全ての個所において概ね一定となっている。ただし、突起部15の幅W15は、場所によって異なるものであってもよい。
【0022】
図4及び
図5は、シートバックパネル10に、シート生地20を縫製した状態を模式的に示す断面図であり、
図4は、シート生地20をシートバックパネル10に縫い付けた後、シート生地20を折り返す前の状態、
図5は、縫製されたシート生地20を折り返し、シートバック本体部の前面側に調節した状態を示している。
図4及び
図5は、
図3と同じ位置の断面を表す。以下、
図4及び
図5を用いて、シートバックパネル10とシート生地20との縫製の手順について説明する。
【0023】
シート生地20をシートバックパネル10に縫製する場合、
図4に示されるように、シート生地20の表面とシートバックパネル10の表面とが向き合わされた状態で重ねられる。そして、シート生地20とシートバックパネル10の縫製部14とが縫製位置Aにおいて縫い合わされる。本実施の形態では、縫製位置Aは、低剛性部13の内周端部からシート生地20の厚さd分外周側となる位置と、低剛性部13の外周端部から、シート生地20の2倍の厚さ2d分外周側となる位置とに挟まれた範囲L内に入るように調整されるものとする。
【0024】
その後、シート生地20は、
図4の矢印Bの方向、即ち、シートバックパネル10の外周側に折り返される。折り返されたシート生地20は、シートバック本体部を覆うようにして、シートバック2の前面側の表面に張設される。ここで、折り返されたシート生地20は、
図5に示されるように、シート生地20の縫製位置Aより外周側の部分である縫い代部21の上に重なるように配置される。また、シートバックパネル10の縫製位置Aより外周側の部分、即ち、縫製部14の縫製位置Aより外周側と突起部15とは、折り返されたシート生地20の内側に配置される。この状態で、縫い代部21は、縫製部14と突起部15とで形成される窪みに収まる。
【0025】
シート生地20がシートバック本体部側に張設されることで、シート生地20は、
図5の矢印B方向の張力を発し、シートバックパネル10の縫製位置Aには、この張力が作用する。シート生地20の張力の方向は、車両用シート1の側面に沿った方向であり、したがって、パネル本体部11の外周端部(即ち、低剛性部13との境界部)の表面方向と概ね一致する。また突起部15の外周端部は、張設されたシート生地20に押圧される。その結果、
図5の矢印Cに示されるように、外縁構造12全体が、低剛性部13から内側方向に向けて曲がり、シート生地20の表面が平坦な状態で、縫製部14と突起部15とで形成される窪みの表面がシート生地20に覆われる。なお、縫製部14の幅W14、突起部15の幅W15、及び、突起部15の縫製部14の表面に対する角度は、シート生地20の張設により低剛性部13が曲がる角度及び低剛性部13の曲げ剛性に応じて、突起部15の先端がシート生地20の表面を押し返して突出しない範囲に調整して設計される。
【0026】
縫製部14と突起部15とに囲まれた部分は、シート生地20の表面方向に対し、窪んだ部分となる。シート生地20の縫い代部21は、この縫製部14と突起部15とに挟まれる窪み内に収容される。また、上述したように、縫製位置Aは、パネル本体部11の外周端部からシート生地20の厚さd分外周側の位置から、低剛性部13の外周側端部からシート生地20の2倍の厚さ2d分外周側の位置までの間に来るように調整されている。即ち、縫製位置Aから低剛性部13の内周側端部までの距離Lは、少なくともシート生地20の厚さdより厚い。従って、シート生地20は、折り返された縫製位置A近傍にもおいても、シートバックパネル10の表面より盛り上がらないようになっている。
【0027】
以上のように、シートバックパネル10を、外周に外縁構造12を有する構成とすることで、シート生地20を縫製した場合に、縫製部におけるシート生地20の盛り上がりを抑制することができる。これにより、シート生地20の盛り上がりによる擦れ等を抑制すると共に、車両用シート1の外観をより美しいものとすることができる。
【0028】
なお、本実施の形態では、低剛性部13は、低剛性部13部分の厚さが薄くなるように成形することで、剛性を低下させた部分である場合について説明した。これにより、比較的容易にパネル本体部11と一体的に低剛性部13を形成することができる。ただし、低剛性部13の形成方法はこれに限られるものではない。例えば、シートバックパネル10全体を、低剛性部13の剛性に応じた必要な厚さで形成したあと、パネル本体部11に補強部材を接着し、パネル本体部11の剛性を高めたものであってもよい。あるいは、シートバックパネル10全体を、パネル本体部11と同様の高い剛性の厚さで形成したあと、外縁構造12となる外周部分全体を低剛性部13の厚さに薄く削ることで、低剛性部13を形成してもよい。
【0029】
また、本実施の形態では、低剛性部13の曲げ剛性は、パネル本体部11の曲げ剛性の1/2以下である場合について説明した。これにより、シート生地20による張力を受けた場合に、パネル本体部11の他の部分が曲がることなく、外縁構造12を低剛性部13から確実に内側に曲げ入れることができる。
【0030】
また本実施の形態では、シート生地20の縫製位置Aが、低剛性部13の内周端部からシート生地20の厚さd分外周側の位置から、低剛性部13の外周端部からシート生地20の2倍の厚さ2d分外周側の位置までの範囲Lに来るように調整されている場合について説明した。このように、縫製位置Aをシート生地20の厚さdに応じて設定することで、シート生地20の折り返し部に生じる段差をより小さく抑えることができる。なお、この範囲Lであれば、縫製位置Aは、
図6に示されるように、低剛性部13に重なっていてもよい。
【0031】
また、縫製位置Aの範囲Lは、必ずしもこの範囲に限られるものではない。縫製位置Aが、この範囲Lを超えるものであっても、本実施の形態の外縁構造12を有し、縫製部13にシート生地20が縫製されるものであれば、ある程度、シート生地20の折り返し部の段差を小さく抑えることは可能である。
【0032】
また、縫製位置Aを、より狭い範囲で調整するものとしてもよい。例えば、縫製位置Aを、低剛性部13の外周端部からシート生地20の厚さd分外周側の位置から、低剛性部13の内周端部からシート生地20の2倍の厚さ2d分外周側の位置の範囲に調整されるものとしてもよい。ただし、このような縫製位置Aの調整は、低剛性部13の幅が、シート生地20の厚さdより短い場合に限られる。また、低剛性部13の中心、内周端部、及び、外周端部の何れかの位置を基準位置とし、縫製位置Aは、この基準位置より外周側であって、この基準位置からシート生地の厚さd以上かつシート生地の2倍の厚さ2d以下の範囲に調整されるものとしてもよい。
【0033】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2に係るシートバックパネル40の背面側の一部を模式的に示す正面図である。このシートバックパネル40は、実施の形態1のシートバックパネル10に替えて、車両用シート1のシートバックパネルとして用いられる。実施の形態2のシートバックパネル40は、外縁構造42にスリット45を有する点を除き、実施の形態1のシートバックパネルと同一の構成を有している。
【0034】
具体的に、実施の形態2に係るシートバックパネル40は、パネル本体部41とパネル本体部と一体的に形成された外縁構造42とを有している。外縁構造42は、実施の形態1のシートバックパネル10と同様に、低剛性部と縫製部と突起部とを有している。
【0035】
外縁構造42には、
図7に示されるように、複数のスリット45が形成されている。スリット45は、突起部の外周端部から低剛性部にまで及ぶ切り欠きである。スリット45は、シートバックパネル40の外縁部の曲率が比較的大きい複数個所の部分に形成されている。
図7の例では、シートバックパネル40の左右上部の角部に3つずつのスリット45と、左右側面部に2つずつのスリット45が形成されている。
【0036】
実施の形態2に係るシートバックパネル40によれば、シート生地20が縫製され、折り返されたあと、折り返し部近傍においてシート生地20に皺が寄った場合にも、皺による盛り上がりをスリット45に隠し、シート生地20の表面の盛り上がりを抑えることができる。これにより、シート生地20とシートバックパネル40との縫製位置近傍をより平坦にすることができ、車両用シート1の外観をより美しいものとすることができる。
【0037】
なお、実施の形態2に係るシートバックパネル40のスリット45の数、形状、及び、形成位置は、
図7に示される例に限定されない。縫製されたシート生地20を折り返した場合に生じる皺及びそれによるシート生地20の表面の盛り上がりは、シートバックパネル40の各部の曲率及び用いられるシート生地20の厚さ等によって異なる。従って、これらを考慮して、適宜、シート生地20の盛り上がりを小さく抑えることができるように、スリット45の形成位置、スリット45の数、及び、スリット45の形状を決定すればよい。
【0038】
以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この出願のシートバックパネル及び車両用シートの各例が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この出願のシートバックパネル及び車両用シートの構成に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 車両用シート
2 シートバック
3 シートクッション
4 ヘッドレスト
10 シートバックパネル
11 パネル本体部
12 外縁構造
13 低剛性部
14 縫製部
15 突起部
A 縫製位置
20 シート生地
21 縫い代部
40 シートバックパネル
41 パネル本体部
42 外縁構造
45 スリット