IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-剥離シート 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】剥離シート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240717BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 27/42 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240717BHJP
   C08L 33/08 20060101ALI20240717BHJP
   C08L 61/28 20060101ALI20240717BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B32B27/00 L
B32B27/30 A
B32B27/42 102
B32B27/32 Z
C08L33/08
C08L61/28
C08L23/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021509292
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012202
(87)【国際公開番号】W WO2020196223
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2019059116
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 敦史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 優季
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165818(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078026(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/122984(WO,A1)
【文献】国際公開第1998/051490(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/051953(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離層及び基材を有する剥離シートであって、
前記剥離層が、アクリル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、架橋性官能基を有するポリオレフィン(C)とを含む剥離剤組成物の硬化物であり、
前記成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%以上65質量%以下であり、
前記成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、55質量%以下である、剥離シート。
【請求項2】
前記成分(A)のガラス転移温度(Tg)が、10℃以上である、請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記成分(B)が、メラミン樹脂である、請求項1又は2に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記成分(C)の架橋性官能基が、水酸基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項5】
前記成分(C)が、架橋性官能基を有するポリブタジエン又は架橋性官能基を有するポリイソプレンである、請求項1~4のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項6】
前記成分(C)が、架橋性官能基を有する水添ポリオレフィンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項7】
粘着剤層から剥離する際の剥離力が500~4,000mN/20mmである、請求項1~6のいずれか一項に記載の剥離シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剥離シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、剥離シートは、例えば、紙、プラスチックフィルム、又はポリエチレンラミネート紙などの基材と、基材上に設けられた剥離層とを有する。剥離層は、例えば、反応性化合物を含む剥離剤組成物を基材上に塗布して硬化させることにより形成される。
剥離シートは、例えば、粘着シート等が有する粘着剤層の保護用シート、樹脂シート作製用工程フィルム、セラミックグリーンシート成膜用工程フィルム、及び合成皮革製造用工程フィルム等として幅広く用いられている。
【0003】
剥離層を形成するための剥離剤組成物としては、シリコーン樹脂、シロキサン、又はシリコーンオイル等のシリコーン化合物を含むシリコーン系剥離剤組成物が広く用いられている。
しかし、シリコーン化合物は、剥離層との接触面、例えば、粘着シートの粘着剤層表面に移行することがある。また、移行後、徐々に気化することもある。
そのため、シリコーン系剥離剤組成物から形成された剥離層を有する剥離シートを、例えば、電子材料用途で用いると、シリコーン化合物が電子部品に移行し、電子部品の腐食や誤作動の原因となることがある。
【0004】
そこで、シリコーン系剥離剤組成物を用いることなく、剥離層を形成する検討が行われている。例えば、特許文献1には、ポリオレフィン、1分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート、及びポリオレフィンポリオールを少なくとも含有する剥離剤組成物から形成された剥離層を有する剥離シートについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-52207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に剥離シートの剥離力の好ましい値は、適用される用途や積層する対象物の種類によって様々であり、例えば、剥離時の剥離操作を容易にするためには、より低い剥離力が望まれるが、一方で、積層される対象物の保持性(脱落耐性)が優先される場合には剥離力が高い方が好ましいため、剥離力が極端に低すぎず、適度な剥離力を有する剥離シートも要求されている。このように、剥離シートを用いて製造される製品を、その利用形態に合った剥離力に適合可能な剥離剤を設計することが要求されている。
また、剥離シートは、その保管状況によって、例えば、高温状況下での保管若しくは長期保管中に、剥離シートにカールが生じたりする虞がある。また、剥離シートを重ねて保管する場合若しくはロール状に巻回して保管される際には、当該剥離シート同士でブロッキングを生じる虞がある。したがって、剥離シートには、良好な剥離性に加えて、耐カール性、及び耐ブロッキング性といった特性も要求されている。また、剥離シートが用いられる用途によって、例えば、電子材料用途等では、剥離シートに有機溶剤への耐性(耐溶剤性)が要求されることが多い。
【0007】
そこで、本発明は、剥離性、耐カール性、耐ブロッキング性及び耐溶剤性がいずれも良好な剥離層を有する剥離シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、後述する成分(A)~(C)を含み、成分(B)及び(C)を特定の量で含む剥離剤組成物の硬化物である剥離層を有する剥離シートが、前記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]に関する。
[1] 剥離層及び基材を有する剥離シートであって、
前記剥離層が、アクリル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、架橋性官能基を有するポリオレフィン(C)とを含む剥離剤組成物の硬化物であり、
前記成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%以上65質量%以下であり、
前記成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、55質量%以下である、剥離シート。
[2] 前記成分(A)のガラス転移温度(Tg)が、10℃以上である、前記[1]に記載の剥離シート。
[3] 前記成分(B)が、メラミン樹脂である、前記[1]又は[2]に記載の剥離シート。
[4] 前記成分(C)の架橋性官能基が、水酸基である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の剥離シート。
[5] 前記成分(C)が、架橋性官能基を有するポリブタジエン又は架橋性官能基を有するポリイソプレンである、前記[1]~[4]のいずれかに記載の剥離シート。
[6] 前記成分(C)が、架橋性官能基を有する水添ポリオレフィンである、前記[1]~[5]のいずれかに記載の剥離シート。
[7] 粘着剤層から剥離する際の剥離力が500~4,000mN/20mmである、前記[1]~[6]のいずれかに記載の剥離シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、剥離性、耐カール性、耐ブロッキング性及び耐溶剤性がいずれも良好な剥離層を有する剥離シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一態様の剥離シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において、「固形分」とは、剥離剤組成物に含まれる成分のうち、溶媒を除いた成分を指す。
また、本明細書中、剥離シートを積層した対象物から、当該剥離シートの剥離操作を行うまでの対象物の保持性を「脱落耐性」ともいう。
また、本明細書中、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上であり、そして、好ましくは90以下、より好ましくは80以下、更に好ましくは70以下である」という記載から、好適範囲として、例えば、「10以上70以下」、「30以上70以下」、「40以上80以下」といったそれぞれ独立に選択した下限値と上限値とを組み合わせた範囲を選択することもできる。また、同様の記載から、例えば、単に、「40以上」又は「70以下」といった下限値又は上限値の一方を規定した範囲を選択することもできる。また、例えば、「好ましくは10以上90以下、より好ましくは30以上80以下、更に好ましくは40以上70以下である」、「好ましくは10~90、より好ましくは30~80、更に好ましくは40~70である」といった記載から選択可能な好適範囲についても同様である。なお、本明細書中、数値範囲の記載において、例えば、「10~90」という記載は「10以上90以下」と同義である。
【0013】
[剥離シート]
本発明の剥離シートは、剥離層と基材とを有する。
図1は、本発明の一態様の剥離シートを示す概略断面図である。剥離シート1は、基材10と該基材10上に設けられた剥離層11とを有する。剥離層11は、アクリル樹脂(A)と、特定量のアミノ樹脂(B)と、特定量の架橋性官能基を有するポリオレフィン(C)とを含む剥離剤組成物の硬化物である。
また、本発明の一態様において、剥離シートは、基材10の両面に剥離層を有するものであってもよい(図示せず)。この場合、本発明の効果を損なわない限り、複数存在する剥離層のうち少なくとも一層が剥離層11であればよく、剥離層11が複数存在する場合、各剥離層11を形成する剥離剤組成物の組成は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
なお、前記各態様は、基材10と剥離層11のみからなる態様であってもよく、また、基材10と剥離層11との間には、図示しない易接着層、帯電防止層等の他の層が設けられていてもよい。
以下、本発明の剥離シートを構成する剥離層と基材とについて説明する。
【0014】
<剥離層>
本発明の剥離シートが有する剥離層は、アクリル樹脂(A)と、アミノ樹脂(B)と、架橋性官能基を有するポリオレフィン(C)とを含む剥離剤組成物であって、前記成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%以上65質量%以下であり、前記成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、55質量%以下である剥離剤組成物から形成することができる硬化物である。
以下、剥離層の形成材料である剥離剤組成物について説明する。
なお、以降の記載において、「剥離剤組成物中の各成分の含有量」は、「当該剥離剤組成物から形成された剥離層中の各成分の含有量」とみなすこともできる。また、当該含有量は、各成分を配合するときの配合量から算出される値とみなすこともできる。
また、本明細書中、各成分の含有量及び合計含有量並びに各成分の比率に係る値は、いずれも、固形分換算の値を指す。
【0015】
(剥離剤組成物)
剥離剤組成物は、アクリル樹脂(A)(以下、「成分(A)」ともいう。)と、アミノ樹脂(B)(以下、「成分(B)」ともいう。)と、架橋性官能基を有するポリオレフィン(C)(以下、「成分(C)」ともいう。)とを含み、前記成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%以上65質量%以下であり、前記成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、55質量%以下である。
【0016】
本発明者らは、シリコーン系剥離剤組成物以外の剥離剤組成物を用いた剥離層の処方について、前記課題を解決できる処方を見出すために種々検討を行った。その結果、前述の要件を満たす剥離剤組成物を用いた剥離層の処方が、有効な処方であることを見出し、本発明に至った。
【0017】
以下、剥離剤組成物に含まれる各成分について説明する。
【0018】
〔成分(A):アクリル樹脂〕
前記剥離剤組成物は、成分(A)として、アクリル樹脂を含む。その理由は定かではないが、前記剥離剤組成物は、成分(A)を含有することで、後述する成分(B)及び(C)の組み合わせだけでは得ることが困難であった範囲の剥離力を有する剥離層を形成することが可能になる。
【0019】
前記アクリル樹脂としては、例えば、直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体等が挙げられる。
本明細書中、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」又は「メタクリレート」の一方若しくは双方を意味する用語として使用する。同様に、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタクリル」の一方若しくは双方を意味する用語として使用する。
【0020】
前記アクリル樹脂としては、アルキル(メタ)アクリレート(a1’)(以下、「モノマー(a1’)」ともいう。)に由来する構成単位(a1)を有する重合体が好ましく、構成単位(a1)と共に、官能基含有モノマー(a2’)(以下、「モノマー(a2’)」ともいう。)に由来する構成単位(a2)を有する共重合体がより好ましい。
【0021】
モノマー(a1’)が有するアルキル基の炭素数としては、好ましくは1~3である。
なお、モノマー(a1’)が有するアルキル基は、直鎖アルキル基であってもよく、分岐鎖アルキル基であってもよい。
モノマー(a1’)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのモノマー(a1’)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
モノマー(a2’)が有する官能基は、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。すなわち、モノマー(a2’)としては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
これらのモノマー(a2’)を用いる場合、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
モノマー(a2’)としては、水酸基含有モノマー及びカルボキシ基含有モノマーが好ましく、水酸基含有モノマーがより好ましい。
【0023】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸及びその無水物;2-(アクリロイルオキシ)エチルサクシネート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ基含有モノマーとしては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
また、前記アクリル樹脂は、更にモノマー(a1’)及び(a2’)以外の他のモノマー(a3’)に由来の構成単位(a3)を有する共重合体であってもよい。
モノマー(a3’)としては、例えば、塩化ビニル、ビニリデンクロリド等のハロゲン化オレフィン類;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート等の環状構造を有する(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
これらのモノマー(a3’)を用いる場合、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
なお、前記アクリル樹脂において、アクリル樹脂の全構成単位(100質量%)中における構成単位(a1)、(a2)及び(a3)の各含有量は、例えば、モノマー(a1’)、(a2’)及び(a3’)の各配合量を調整することによって調整することができる。例えば、後述するガラス転移温度(Tg)の好適範囲、及び/又は水酸基価の好適範囲を満たすように、モノマー(a1’)、(a2’)及び(a3’)の各配合量を、適宜、調整を行うことが好ましい。
【0026】
成分(A)のガラス転移温度(Tg)は、得られる剥離シートの耐ブロッキング性向上の観点から、好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、更に好ましくは20℃以上である。当該ガラス転移温度(Tg)の上限値は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、好ましくは150℃である。当該ガラス転移温度(Tg)は、例えば、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0027】
例えば、所望のガラス転移温度(Tg)を有するアクリル樹脂を得たい場合、単独で重合した場合に得られる単独重合体のガラス転移温度(Tg)が、所望のガラス転移温度(Tg)よりも高温になるモノマーと、単独で重合した場合に得られる単独重合体のガラス転移温度(Tg)が、所望のガラス転移温度(Tg)よりも低温になるモノマーとを選択する。そして、得られる共重合体が所望のガラス転移温度(Tg)になるよう、各モノマーを単独で重合した場合に得られる単独重合体のガラス転移温度(Tg)を参考として、各モノマーの配合量を、適宜、調整することで、所望のガラス転移温度(Tg)を有するアクリル樹脂を得ることができる。
【0028】
また、成分(A)の水酸基価は、得られる剥離シートの耐溶剤性向上の観点から、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは8mgKOH/g以上、更に好ましくは10mgKOH/g以上である。当該水酸基価の上限値は、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はないが、例えば、好ましくは200mgKOH/g、より好ましくは150mgKOH/g、更に好ましくは100mgKOH/gである。当該水酸基価の値は、例えば、JIS K0070-1992に記載の方法によっても測定することができる。
なお、所望の水酸基価を有するアクリル樹脂を得ようとする場合、例えば、前述の水酸基含有モノマーの配合量を、適宜、調整することで、所望の水酸基価を有するアクリル樹脂を得ることができる。
【0029】
また、成分(A)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000~100,000、より好ましくは8,000~80,000、更に好ましくは10,000~50,000である。当該質量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値を意味する。
成分(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の一態様において、剥離層の剥離性を向上させる観点から、成分(A)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上である。また、塗膜形成時における希釈溶媒への溶解性の観点及び剥離層の容易な剥離性と脱落耐性とのバランスに優れた剥離力を発現させる観点から、成分(A)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。
【0031】
〔成分(B):アミノ樹脂〕
前記剥離剤組成物は、成分(B)として、アミノ樹脂を成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%以上65質量%以下で含む。
本明細書において、「アミノ樹脂」とは、例えば、メラミン、尿素、アニリン、グアナミン等のアミノ基を有する化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒドとの反応により得られる化合物の総称を指す。
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂;尿素樹脂(ユリア樹脂と同じ。);アニリン樹脂;グアナミン樹脂;などが挙げられる。これらの中では、剥離剤組成物の硬化性及び得られる剥離層の耐溶剤性向上の観点から、メラミン樹脂が好ましい。
メラミン樹脂としては、好ましくは、メチロール化メラミン樹脂、イミノメチロール化メラミン樹脂、メチル化メラミン樹脂、エチル化メラミン樹脂、プロピル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ヘキシル化メラミン樹脂及びオクチル化メラミン樹脂からなる群より選ばれる1種以上、より好ましくはメチロール化メラミン樹脂、イミノメチロール化メラミン樹脂及びメチル化メラミン樹脂からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、剥離性組成物の低温硬化性の観点から、更に好ましくはメチル化メラミン樹脂である。
成分(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
前記剥離剤組成物が、成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、65質量%超である場合、アミノ樹脂の縮合反応に起因して、得られる剥離シートの耐カール性が悪化してしまう。一方、成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%未満である場合、アミノ樹脂の縮合反応に起因して、得られる剥離シートの耐溶剤性が悪化してしまう。
したがって、良好な耐カール性及び良好な耐溶剤性を両立させる観点から、成分(B)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、好ましくは16質量%以上、より好ましくは18質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは45質量%以下である。
【0033】
〔成分(C):架橋性官能基を有するポリオレフィン(C)〕
前記剥離剤組成物は、成分(C)として、架橋性官能基を有するポリオレフィンを、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、55質量%以下で含む。
本明細書において、「ポリオレフィン」とは、ブタジエン、イソプレン等のジオレフィンをモノマー単位として重合されるポリマーも包含する意味で用いられる。
また、本明細書において、「架橋性官能基」とは、少なくとも架橋剤となる成分(B)と反応する官能基を意味する。
【0034】
前記ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン、プロピレン及び炭素数が4~20のα-オレフィンからなる群より選ばれる少なくとも2種のオレフィンを重合して得られるエチレン-α-オレフィン系共重合体等のコポリマー;ポリブタジエン;ポリイソプレン;などの各種ポリオレフィンが挙げられる。これらの中では、良好な剥離性を備える剥離層を得る観点から、好ましくはポリブタジエン又はポリイソプレンである。
また、剥離シートの用途や剥離層上に積層される対象物との剥離力として求められる値によって異なるが、例えば、成分(A)~(C)の組み合わせにより得られる剥離層の剥離力の範囲内でより高い剥離力が求められる場合には、ポリブタジエンがより好ましく、より低い剥離力を求められる場合には、ポリイソプレンが好ましい。
【0035】
成分(C)が有する架橋性官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、チオール基、及びビニル基等が挙げられる。
これらの中でも、成分(B)との反応性をより良好なものとする観点から、架橋性官能基は、水酸基であることが好ましい。
また、成分(C)は、架橋性官能基を少なくとも1つ有していればよいが、架橋性官能基を2つ以上有することが好ましい。成分(C)が架橋性官能基を2つ以上有する場合、これらの官能基は互いに同一であっても異なっていてもよいが、互いに同一であることが好ましい。
【0036】
成分(C)が有する架橋性官能基の位置は、架橋性官能基が成分(B)と反応し得る位置であれば、特に限定されない。
ここで、本発明の一態様において、成分(C)のポリマー骨格を構成する分子鎖の少なくとも一方の末端に架橋性官能基を有することが好ましく、架橋点間の距離を長くして、剥離性により優れた剥離層を形成する観点から、成分(C)のポリマー骨格を構成する分子鎖の両末端に架橋性官能基を有することがより好ましく、成分(C)のポリマー骨格を構成する主鎖の両末端のみに架橋性官能基を有することが更に好ましい。
【0037】
また、成分(C)は、剥離力の経時安定性の観点から、水添ポリオレフィンであることが好ましい。成分(C)の水素添加の程度は、部分水添であってもよいし、完全水添であってもよいが、剥離層の剥離力の化学的安定性を向上させる観点からは、ビニル基等の不飽和結合の残存率が低い部分水添物であることが好ましく、完全水添物であることがより好ましい。
そのため、同様の観点から、成分(C)は、臭素価が低いことが好ましい。臭素価が低い程、成分(C)中の不飽和結合を含む不飽和結合の残存率が低く、酸化等の化学変化を受けにくいことから剥離層の剥離力の経時安定性が良好なものとなり易い。
例えば、本発明の一態様において、成分(C)の臭素価は、好ましくは100g/100g以下、より好ましくは20g/100g以下、更に好ましくは10g/100g以下、より更に好ましくは8g/100g以下である。
当該臭素価の値は、JIS K 2605-1996に準拠して測定される値である。
【0038】
成分(C)の数平均分子量(M)は、好ましくは1,000~30,000、より好ましくは1,000~20,000、更に好ましくは1,000~10,000、より更に好ましくは1,000~5,000である。
本明細書において、当該数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値であり、例えば、後述する実施例に記載の方法により測定される。
成分(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
前記剥離剤組成物が、成分(C)を成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、55質量%超含む場合、得られる剥離シートの耐ブロッキング性が悪化してしまう。したがって、耐ブロッキング性を向上させる観点から、成分(C)の含有量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。また、成分(C)の含有量は、剥離層として良好な剥離性を得る観点から、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。
【0040】
本発明の一態様において、前記剥離剤組成物中における成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量は、剥離剤組成物の全量(固形分100質量%)基準で、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上である。
【0041】
また、本発明の一態様において、本発明の効果を損なわない範囲で、良好な剥離力を得る観点からは、成分(A)と成分(B)との含有比率(A/B)は、質量比で、好ましくは15/85~85/15である。そして、例えば、成分(C)のポリオレフィンとしてポリブタジエンを用いる場合、本願効果をより得易くする観点から、より好ましくは40/60~80/20、更に好ましくは55/45~80/20、より更に好ましくは65/35~78/22である。
【0042】
また、本発明の一態様において、成分(A)と成分(C)との含有比率(A/C)は、質量比で、好ましくは36/64~96/4であり、より好ましくは37/63~95/5である。そして、例えば、成分(C)のポリオレフィンとしてポリブタジエンを用いる場合、本願効果をより得易くする観点から、更に好ましくは40/60~95/5、より更に好ましくは60/40~95/5、より更に好ましくは70/30~80/20である。
【0043】
〔酸触媒〕
本発明の一態様において、前記剥離剤組成物は、さらに酸触媒を含んでいてもよい。酸触媒を用いることで、成分(A)と成分(B)との架橋反応及び/又は成分(A)と成分(C)との架橋反応、並びに成分(B)と成分(C)との架橋反応性を向上させて、剥離層の剥離力の経時安定性をより向上させやすいものとできる。
酸触媒としては、特に制限はないが、例えばp-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、及びアルキルリン酸エステル等の有機系の酸触媒が好適である。
上記酸触媒は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
酸触媒の使用量は、成分(A)、(B)及び(C)の合計量100質量部に対し、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部、さらに好ましくは1~5質量部である。
【0044】
〔その他の添加剤〕
本発明の一態様において、前記剥離剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上述の成分(A)、(B)及び(C)、並びに酸触媒以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。
このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、無機または有機フィラー、帯電防止剤、界面活性剤、光開始剤、光安定剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0045】
〔シリコーン化合物〕
本発明の一態様において、前記剥離剤組成物は、シリコーン化合物を実質的に含有しないことが好ましい。
シリコーン化合物を含む剥離剤組成物から形成された剥離層を有する剥離シートを用いると、例えば、シリコーン化合物が貼付された粘着剤層中に移行して粘着剤層の本来の性能を阻害する虞がある。または、前記剥離層から直接若しくは前記粘着剤層を介して、剥離シートに接した物質(例えば、製造機器)や前記粘着剤層の貼付対象物にシリコーン化合物が移行することで、当該対象物の腐食や誤作動の原因となることがあるためである。
このような観点から、本発明の一態様において、剥離剤組成物中のシリコーン化合物の含有量としては、剥離剤組成物の全量(固形分100質量%)基準で、好ましくは5.0質量%未満、より好ましくは2.0質量%未満、更に好ましくは1.0質量%未満、より更に好ましくは0.1質量%未満、より更に好ましくは0.01質量%未満である。
【0046】
〔イソシアネート化合物〕
本発明の一態様において、前記剥離剤組成物は、耐溶剤性の観点から、イソシアネート化合物を実質的に含有しないことが好ましい。
本発明の一態様において、剥離剤組成物中のイソシアネート化合物の含有量としては、剥離剤組成物の全量(固形分100質量%)基準で、好ましくは1.0質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満、より更に好ましくは0.001質量%未満である。
【0047】
〔希釈溶媒〕
本発明の一態様において、基材への塗布性を向上させる観点から、剥離剤組成物は、上述した各成分に希釈溶媒を加えて、溶液の形態としてもよい。
希釈溶媒は、前述の成分(A)、(B)及び(C)の溶解性が良好である有機溶剤の中から選択される。
このような有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、n-ブタノール、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、希釈溶媒として使用する有機溶剤は、前述の成分(A)、(B)及び(C)の合成時に使用された有機溶剤をそのまま用いてもよいし、剥離剤組成物を均一に塗布できるように、前述の成分(A)、(B)及び(C)の合成時に使用された有機溶剤及び/又はそれ以外の1種以上の有機溶剤を加えてもよい。
【0048】
希釈溶媒の量は、剥離剤組成物が塗布時に適度な粘度を有する量となるように適宜選定すればよい。
具体的には、剥離剤組成物の溶液に含まれる固形分濃度は、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.2~10質量%、更に好ましくは0.5~5質量%の範囲となるように調整される。
【0049】
剥離層の厚さは、特に制限はないが、好ましくは25~1,000nm、より好ましくは50~500nmである。剥離層の厚みが25nm以上であれば、塗布量のバラつきによる剥離力のバラつきを抑制することができる。また、剥離層の厚みが1,000nm以下であれば、剥離剤組成物の塗布膜の硬化性を良好にすることができる。
剥離層の厚さは、例えば、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0050】
<基材>
本発明の剥離シートに用いる基材としては、例えば、上質紙、クレーコート紙、キャストコート紙、クラフト紙等の紙類、これらの紙類にポリエチレン樹脂等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、合成紙等の紙材シート、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;アセテート樹脂;ポリスチレン樹脂;塩化ビニル樹脂等の合成樹脂のシート等が挙げられる。
基材は、単層であってもよいし、同種又は異種の2層以上の多層であってもよい。
基材の厚さは、特に制限はないが、好ましくは10~300μm、より好ましくは20~200μmである。基材の厚さが10~300μmであれば、例えば、剥離シートを用いた粘着シート等に、印刷、裁断、貼付等の加工を施すのに適したコシや強度を与えることができる。
【0051】
また、基材として合成樹脂を用いる場合、基材の剥離層を設ける表面には、基材と剥離層との密着性を向上させるために、所望により酸化法や凹凸化法等の方法により表面処理を施すことができる。
酸化法としては、例えば、コロナ放電表面処理、クロム酸表面処理(湿式)、火炎表面処理、熱風表面処理、オゾン・紫外線照射表面処理等が挙げられる。また、凹凸化法としては、例えば、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理法は、基材の種類に応じて適宜選定されるが、一般には、コロナ放電表面処理法が効果及び操作性の観点から、好ましく用いられる。また、プライマー処理を施すこともできる。
【0052】
本発明の剥離シートは、剥離層側の面にエンボス加工等を施して、剥離シートの表面に凹凸を形成してもよい。
また、本発明の剥離シートは、基材と剥離層との間に、易接着層、帯電防止層等の他の層が設けられていてもよい。剥離シートが易接着層を備えることにより、剥離シートからの剥離層の脱落を効果的に防止することができる。
【0053】
易接着層は、通常、基材における剥離層側の面上に易接着コート剤を塗布して形成される。易接着コート剤としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、カルボジイミド基含有樹脂、エポキシ基含有樹脂、イソシアネート含有樹脂およびこれらの共重合体、および天然ゴムや合成ゴムを主成分とするコート剤等が挙げられる。
これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよいし、異なる2種を組み合わせて使用してもよい。なお、基材表面に対する易接着コート剤の塗布性、および基材と易接着層との密着性を向上させるため、基材における易接着コート剤を塗布する面に対して、化学処理、放電処理等の表面処理を行ってもよい。
【0054】
易接着層の厚さは、好ましくは50nm~5μm、より好ましくは100nm~1μmである。当該厚さが50nm以上であることで、易接着層の効果を良好に得ることができる。また、当該厚さが5μm以下であることで、易接着層の基材とは反対側の面の滑り性が良好なものとなり、易接着層上に剥離剤組成物を塗布する作業性が良好になる。
【0055】
一般に剥離シートの剥離力の好ましい値は、適用される用途や積層する対象物の種類によってさまざまであり、剥離時の剥離操作がスムーズになるようにより低い剥離力が好ましい場合があったり、脱落耐性を向上させるためにより高い剥離力が好ましい場合があったりする。
本発明の一態様において、剥離シートが示す剥離層の剥離力は、好ましくは500~4,000mN/20mm、より好ましくは1,000~3,950mN/20mm、更に好ましくは2,500~3,900mN/20mm以上である。
前記剥離力の値は、後述する実施例に記載の方法により測定される値である。
【0056】
[剥離シートの用途]
本発明の剥離シートは、粘着シート等の各種粘着体の保護シートとして使用可能であり、例えば、基材と、基材の一面に設けられる粘着剤層とを備える粘着シートの粘着剤層側の面に貼付して使用される。また、各種樹脂シート、セラミックグリーンシート、合成皮革、各種複合材料等を作製するときの工程フィルムとしても使用可能である。工程フィルムとして使用する場合には、剥離シートの剥離層側の面に樹脂、セラミックスラリー等を流延、塗布等して形成した各種のシート材料を剥離シートから剥離する工程にて使用する。また、本発明の剥離シートは、剥離層が非シリコーン系剥離剤組成物により形成されていることから、電子機器用としても好適に用いることができる。例えば、リレー、各種スイッチ、コネクタ、モーター、ハードディスク等の電子部品の製造工程において、電子部品の組立て時の仮止めや部品の内容表示等の粘着シート用の剥離シートとして好適に用いることができる。
【0057】
[剥離シートの製造方法]
本発明の剥離シートは、例えば、基材の少なくとも一方の面上に、前記剥離剤組成物を塗布し、加熱処理し、成分(A)~(C)を反応させて剥離層としての硬化物を形成することにより製造することができる。
剥離剤組成物は、前述したように、希釈溶媒により希釈された溶液の形態であってもよい。
【0058】
加熱処理温度は、100~170℃が好ましく、130~160℃がより好ましい。また、加熱処理時間は、特に制限ないが、30秒~5分間が好ましい。
【0059】
剥離剤組成物の塗布方法としては、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ゲートロールコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0060】
剥離剤組成物の塗布厚さは、好ましくは、得られる剥離層の厚みが、前述の範囲となるように調整される。
【実施例
【0061】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0062】
以下の実施例及び比較例における物性値は、以下の方法により測定した値である。
【0063】
[剥離層の厚さ]
剥離層の厚さは、分光エリプソメーター(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン株式会社製、商品名「分光エリプソメトリー 2000U」)を用いて測定した。
【0064】
[ガラス転移温度(Tg)]
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、製品名「DSC Q2000」)を用いて、30℃から200℃まで、昇温速度10℃/分で昇温して測定した。
【0065】
[臭素価]
JIS K 2605-1996に準拠して測定される値を用いた。
【0066】
[質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)]
アクリル樹脂の質量平均分子量(Mw)及び架橋性官能基を有するポリオレフィンの数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)装置(東ソー株式会社製、製品名「HLC-8320」)を用いて、下記の条件下で測定し、標準ポリスチレンの数平均分子量に換算した値を用いた。
(測定条件)
・測定試料:サンプル濃度1質量%のテトラヒドロフラン溶液
・カラム:「TSK gel Super HM-H」を2本、「TSK gel Super H2000」を1本(いずれも東ソー株式会社製)、上流からこの順で連結したもの
・カラム温度:40℃
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・流速:0.60mL/分
・検出器:示差屈折計(RI検出器)
【0067】
[実施例及び比較例]
実施例1~9及び比較例1~5の剥離シートを、以下の手順で作製した。なお、以下の説明中、特に言及しない限り、「質量部」の値は固形分換算での値である。
【0068】
<実施例1>
成分(A)であるアクリル樹脂(DIC株式会社製、製品名「アクリディック(登録商標) A-817」、ガラス転移温度(Tg)=95℃、水酸基価=60mgKOH/g、質量平均分子量=20,000)40質量部に対して、成分(B)であるメチル化メラミン樹脂(オルネクスジャパン株式会社製、製品名「CYMEL(登録商標)」、グレード「303LF」)40質量部、及び成分(C)である両末端水酸基変性水添ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、製品名「NISSO-PB(登録商標)」、グレード「GI-2000」、数平均分子量=2,000、臭素価=8g/100g)20質量部を添加し、更に、成分(A)、(B)及び(C)の合計100質量部に対して、酸触媒としてのp-トルエンスルホン酸を3.0質量部添加して、剥離剤組成物を調製した。
得られた剥離剤組成物を、トルエン及びメチルエチルケトンの混合溶媒(トルエン:メチルエチルケトン=6:4(質量比))を用いて固形分濃度4.3質量%に希釈することで、剥離剤組成物の塗工液を得た。
得られた剥離剤組成物の塗工液を、マイヤーバーを用いて、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル(登録商標)」、グレード「T-100」)の片面に塗工し、塗膜を形成した。当該塗膜を、150℃で1分間乾燥させることで硬化させ、厚さ200nmの剥離層を形成し、剥離シートを得た。
【0069】
<実施例2、3、8及び9>
成分(A)、(B)及び(C)の配合量を、下記表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして、各剥離シートを得た。
【0070】
<実施例4>
成分(A)のアクリル樹脂を、三井化学株式会社製のアクリル樹脂(製品名「オレスター(登録商標)」、グレード「Q-828」、ガラス転移温度(Tg)=135℃、水酸基価=25mgKOH/g、質量平均分子量=16,500)に変更した以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0071】
<実施例5>
成分(A)のアクリル樹脂を、DIC株式会社製のアクリル樹脂(製品名「アクリディック(登録商標) A-811-BE」、ガラス転移温度(Tg)=20℃、水酸基価=35mgKOH/g、質量平均分子量=25,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0072】
<実施例6>
成分(A)のアクリル樹脂を、DIC株式会社製のアクリル樹脂(製品名「アクリディック(登録商標) WMU-504」、ガラス転移温度(Tg)=60℃、水酸基価=95mgKOH/g、質量平均分子量=17,000)に変更した以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0073】
<実施例7>
成分(C)を、両末端水酸基変性水添ポリイソプレン(出光興産株式会社製、製品名「EPOL(登録商標)」、数平均分子量=2,500、臭素価=5g/100g)に変更した以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0074】
<比較例1~3>
成分(A)を用いず、成分(B)及び(C)の配合量を、下記表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして、各剥離シートを得た。
【0075】
<比較例4及び5>
成分(A)、(B)及び(C)の配合量を、下記表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にして、剥離シートを得た。
【0076】
実施例1~9及び比較例1~5の剥離シートについて、以下の測定及び評価を実施した。
【0077】
[剥離力の測定]
各実施例及び各比較例で得られた剥離シートの剥離層上に、幅20mmのポリエステル粘着テープ(日東電工株式会社製、品番「No.31B」)を、2kgローラーを用いて貼付して剥離力測定用のサンプルを作製した。
貼付30分後に、得られたサンプルを万能引張試験機(株式会社島津製作所製、製品名「オートグラフ(登録商標)」、型番「AGS-20NX」)に固定し、JIS K6854-2:1999に準拠して、180°方向に引張速度0.3m/分の速度で粘着テープから剥離層を剥離させることにより剥離シートの剥離力(mN/20mm)を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
[耐カール性の評価]
各実施例及び各比較例において、それぞれ、剥離層の厚さを1μmとなるように塗工した評価用サンプルを調製した。
得られた評価用サンプルから、縦10cm×横10cmの試験片を切り取り、120℃で24時間保管した。24時間保管後、水平な台上に当該試験片を置き、試験片の四隅の浮きを、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:台上から四隅の角の浮き上がりの距離の平均値が3mm未満。
B:台上から四隅の角の浮き上がりの距離の平均値が3mm以上5mm未満。
C:台上から四隅の角の浮き上がりの距離の平均値が5mm以上。
【0079】
[耐ブロッキング性の評価]
各実施例及び各比較例で得られた剥離シートから、それぞれ、縦10cm×横10cmの試験片を10枚切り出した。10枚の試験片を積層して、熱プレス機で2MPa、40℃の条件で24時間プレスした。プレス後、目視にてブロッキングの状況を確認し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:プレス後の積層したシートの外観が、プレス前と同様のヘイズを維持し、ブロッキングが見当たらない。
B:プレス後の積層したシートの外観が、部分的にヘイズが消え、当該箇所が軽度のブロッキングを示す。
C:プレス後の積層したシートの外観が、全面でヘイズが消失し、ブロッキングを示す。
【0080】
[耐溶剤性の評価]
各実施例及び各比較例で得られた剥離シートの剥離層上に、メチルエチルケトンを含浸させた不織布(旭化成株式会社製、商品名「ベンコット(登録商標)」)を置き、上方から100g荷重をかけて5回払拭した。目視で剥離層表面を観察して、以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
A:剥離層の表面に変化が見られなかった。
B:剥離層の表面に白化が見られるが、剥離層が完全には脱落しなかった。
C:剥離層が完全に脱落した。
【0081】
【表1】
【0082】
表1に示すとおり、成分(A)~(C)を含み、 前記成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%以上65質量%以下であり、かつ、前記成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、55質量%以下である剥離剤組成物の硬化物である剥離層を有する実施例1~9の剥離シートは、成分(A)を含まない剥離剤組成物の硬化物である剥離層を有する比較例1~3に記載の剥離シート、成分(B)を成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%未満で含む剥離剤組成物の硬化物である剥離層を有する比較例4に記載の剥離シート、及び成分(B)を成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、65質量%超で含む剥離剤組成物の硬化物である剥離層を有する比較例5に記載の剥離シートに対して、従来は得ることが困難であった範囲の剥離力に調整できるとともに、耐カール性、耐ブロッキング性及び耐溶剤性のいずれの特性も良好であることが確認された。
また、比較例1~3に記載の剥離シートでは、成分(B)及び(C)の配合比率を変更した場合でも、一定の剥離力の範囲内でしか剥離力を調整することができないことも確認された。
また、成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、65質量%を超える比較例1及び5の剥離シートは、耐カール性が劣ることが確認された。
一方で、成分(B)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、15質量%未満である比較例4の剥離シートは、耐溶剤性が劣ることが確認された。
また、成分(C)の含有量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計含有量100質量%中、55質量%を超える比較例2及び3の剥離シートは、耐ブロッキング性が劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の剥離シートは、粘着シート等の各種粘着体の保護シートとして使用可能であり、また、各種樹脂シート、セラミックグリーンシート、合成皮革、各種複合材料等を作製するときの工程フィルムとしても使用可能である。また、本発明の剥離シートは、剥離層が非シリコーン系剥離剤組成物により形成されていることから、各種電子機器用の剥離シート又は電子部品の製造工程において、電子部品の組立て時の仮止めや部品の内容表示等の粘着シート用の剥離シートとしても好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 剥離シート
10 基材
11 剥離層

図1