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特許7522097抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートとPARP阻害剤の組み合わせ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートとPARP阻害剤の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20240717BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/502 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/5025 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240717BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240717BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K31/502
A61K31/55
A61K31/454
A61K31/5025
A61K31/5517
A61K9/08
A61P35/04
C07K16/28
C12N15/13
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2021509568
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013555
(87)【国際公開番号】W WO2020196712
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019061761
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】北村 道子
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/137556(WO,A1)
【文献】特表2016-512540(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0149449(US,A1)
【文献】特表2015-534996(JP,A)
【文献】特許第7273716(JP,B2)
【文献】特許第7133079(JP,B2)
【文献】ZHONG Haihong et al.,Improved Therapeutic Window in BRCA-mutant Tumors with Antibody-linked Pyrrolobenzodiazepine Dimers,Molecular Cancer Therapeutics,2018年10月23日,Vol.18, No.1,pp.89-99
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
A61K 45/00-45/08
A61K 39/395
A61K 31/00-33/44
A61K 9/00- 9/72
C07K 16/28
C12N 15/13
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲート及び/又はPARP阻害剤を含むがん治療のための医薬組成物であって、該抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートと、該PARP阻害剤が、組み合わされて投与されることを特徴とし、
該コンジュゲートが、次式;
【化1】
【化2】
【化3】
又は、
【化4】
で示され、
上記で示されるそれぞれの構造式において、m1は1又は2の整数であり、
Abは、抗体又は該抗体の機能性断片であり、
N297糖鎖は次式で示される構造を有するN297-(Fuc)MSG1、N297-(Fuc)MSG2もしくはそれらの混合物、又はN297-(Fuc)SGであり、
【化5】
【化6】
【化7】
式中、波線は抗体のAsn297に結合していることを示し、
N297糖鎖中のL(PEG)は、*-(CH2CH2-O)3-CH2CH2-NH-であることを示し、
ここで、右端のアミノ基がN297糖鎖のβ-Manの分岐鎖の1-3鎖側又は/及び1-6鎖側の非還元末端のシアル酸の2位のカルボン酸とアミド結合を介して結合しており、左端のアステリスク*は、前記式中のトリアゾール環上の1位又は3位の窒素原子と結合していることを示す医薬組成物。
【請求項2】
抗体が、腫瘍細胞に発現している抗原に結合し、腫瘍細胞内に取り込まれて内在化することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
抗体が、抗腫瘍効果を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
抗体が、抗CLDN6抗体、抗CLDN9抗体、抗CLDN6/CLDN9抗体、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗DLL3抗体、抗FAP抗体、抗CDH11抗体、抗A33抗体、抗CanAg抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD25抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD70抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3抗体、抗TROP2抗体、抗CEA抗体、抗Cripto抗体、抗EphA2抗体、抗FGFR2抗体、抗G250抗体、抗MUC1抗体、抗GPNMB抗体、抗Integrin抗体、抗PSMA抗体、抗Tenascin-C抗体、抗SLC44A4抗体、抗Mesothelin抗体、抗EGFR抗体、抗5T4抗体、抗LRRC15抗体、抗DR5抗体、抗CDH3抗体、抗PDPN 抗体、又は抗CD123抗体である、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
抗体が、CLDN6及び/又はCLDN9に特異的に結合することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
抗体が、以下の(a)又は(b)に記載のCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖、並びに、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖を含んでなる、請求項5に記載の医薬組成物;
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号7に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL3、又は、
(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3。
【請求項7】
抗体が、以下の(a)又は(b)に記載のCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖、並びに、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖を含んでなる、請求項6に記載の医薬組成物;
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、及び、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号7に記載のアミノ酸配列又は配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、又は、
(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、及び、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3。
【請求項8】
抗体が、以下の(a)又は(b)に記載の重鎖可変領域、及び、軽鎖可変領域を含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の医薬組成物;
(a)配列番号21に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号19に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は、
(b)配列番号25に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【請求項9】
抗体が、以下の(a)~(e)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び(f)~(k)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の医薬組成物;
(a)配列番号54に記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号58に記載のアミノ酸配列、
(c)配列番号62に記載のアミノ酸配列、
(d)(a)~(c)の配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
(e)(a)~(c)の配列における各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、
(f)配列番号38に記載のアミノ酸配列、
(g)配列番号42に記載のアミノ酸配列、
(h)配列番号46に記載のアミノ酸配列、
(i)配列番号50に記載のアミノ酸配列、
(j)(f)~(i)の配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び、
(k)(f)~(i)の配列における各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列。
【請求項10】
抗体が、以下の(a)~(e)からなる群から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、請求項9に記載の医薬組成物;
(a)配列番号54に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号38に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(b)配列番号58に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(c)配列番号54に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号46に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(d)配列番号58に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号50に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び、
(e)配列番号62に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号46に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【請求項11】
抗体が、キメラ抗体である、請求項5~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
抗体が、ヒト化抗体である、請求項5~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
抗体が、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4の重鎖定常領域を含む、請求項5~12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
抗体が、以下の(a)~(e)からなる群から選択される重鎖及び軽鎖を含む、請求項12又は13に記載の医薬組成物;
(a)配列番号52のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号36のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(b)配列番号56のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる、重鎖および配列番号40のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(c)配列番号52のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号44のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(d)配列番号56のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号48のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、及び、
(e)配列番号60のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号44のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖。
【請求項15】
抗体が、請求項6~10及び14のいずれか一項に記載の抗体と、CLDN6及び/又はCLDN9への結合において競合するか、又は、請求項6~10及び14のいずれか一項に記載の抗体が認識するCLDN6及び/又はCLDN9上の部位に結合する、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項16】
抗体が、HER2に特異的に結合する請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有する請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
抗体の重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域であり、ADCC及び/又はCDC活性の低減をもたらす変異を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
抗体の重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域であり、該重鎖定常領域においてEU Indexにより示される234位及び235位のロイシンがアラニンに置換されている、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
配列番号65に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号64に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、請求項16又は17に記載の医薬組成物。
【請求項21】
配列番号75のアミノ酸番号20~139に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号73のアミノ酸番号21~127に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗体である、請求項16、18及び19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
配列番号75のアミノ酸番号20~469に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号73のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体である、請求項16、18、19及び21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
配列番号77のアミノ酸番号20~469に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号76のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体である、請求項16、18、19及び21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
抗体が、N-結合型糖鎖付加、O-結合型糖鎖付加、N末のプロセッシング、C末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末におけるメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化、及び重鎖のカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸残基の欠失からなる群より選択される1又は2以上の修飾を含む、請求項5~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
抗体の重鎖のカルボキシル末端において1つ又は数個のアミノ酸残基が欠失している、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
抗体の2本の重鎖の双方のカルボキシル末端において1つのアミノ酸残基が欠失している、請求項24又は25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
抗体の重鎖のカルボキシル末端のプロリン残基が更にアミド化されている、請求項24~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
N297糖鎖が、N297-(Fuc)MSG1である、請求項1~27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
m1が、1の整数である、請求項1~28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
抗体―ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートにおける抗体1分子あたりの平均薬物結合数が、1~3又は3~5である、請求項1~29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、若しくはタラゾパリブ、又はそれらの薬理上許容される塩である、請求項1~30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
抗体-薬物コンジュゲートと、PARP阻害剤が、それぞれ別異の製剤に有効成分として含有され、同時に又は異なる時間に投与されることを特徴とする、請求項1~31のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
肺がん(非小細胞肺がん、小細胞肺がん等)、腎がん、尿路上皮がん、大腸がん、前立腺がん、多形神経膠芽腫、卵巣がん(表層上皮性腫瘍、間質性腫瘍、胚細胞腫瘍等)、膵がん、乳がん、メラノーマ、肝がん、膀胱がん、胃がん、食道がん、子宮体がん、精巣がん(セミノーマ、非セミノーマ)、子宮頸がん、胎盤絨毛がん、脳腫瘍、頭頚部がんならびにそれらの転移性形態からなる群より選択される少なくとも一つのがんの治療のための、請求項1~32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
PARP阻害剤と併用するための、請求項1に記載の抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートを含む医薬組成物。
【請求項35】
PARP阻害剤を含み、請求項1に記載の抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートと併用することにより、該コンジュゲートの作用を上昇させる医薬組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートと併用するための、PARP阻害剤を含む医薬組成物。
【請求項37】
請求項1に記載の抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートを含み、PARP阻害剤と併用することより、PARP阻害剤の作用を上昇させる医薬組成物。
【請求項38】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
該ピロロベンゾジアゼピン誘導体がDNAのマイナーグルーブにおいてクロスリンクを形成しない医薬組成物。
【請求項39】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
がんが、PARP阻害剤に非感受性である医薬組成物。
【請求項40】
請求項1に記載の医薬組成物であって、
がんが、相同的組換え(HR)依存的DNA二本鎖破壊(DSB)修復経路に非依存的である医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の抗体-薬物コンジュゲートとPARP阻害剤が、組み合わされて投与されることを特徴とする、がんの治療のための医薬組成物及びがんの治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate;ADC)は、がん治療等において使用されており、例えば、がん細胞表面に発現している抗原に結合し、その結合によって抗原を細胞内に内在化できる抗体に、細胞傷害活性を有する薬物を結合させたものである。ADCは、がん細胞に効率的に薬物を送達することによって、がん細胞内に薬物を蓄積させ、がん細胞を死滅させることが期待できる。
ADCに用いられる薬物として有用なものの一つにピロロベンゾジアゼピン(PBD)が挙げられる。PBDはDNA小溝のPuGPu配列などに結合することによって細胞毒性を示す。天然由来のPBDであるanthramycinは1965年に初めて発見され、それ以降様々な天然由来、またその類縁体のPBDが発見された(非特許文献1~4)。
PBDの一般的な構造式は下式
【化1】
で示される。PBDはそれぞれA,C環部において置換基の数、種類、部位において異なり、また、それぞれB,C環部の不飽和度が異なるものが知られている。
PBDは二量体構造にすることにより、飛躍的に細胞毒性が向上することが知られており(非特許文献5、6)、二量体PBDをADC化したものも種々報告されている(特許文献1~15)。しかしながら、C2位においてスピロ環を有するPBD又はそのADC体は知られていない。
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤は、PARP(特にPARP-1及びPARP-2)を阻害することにより、一本鎖切断の修復を妨げる機能を有する薬剤である。乳がんや卵巣がん等の一部のがんでは、二本鎖切断の修復に異常があることが知られており、PARP阻害剤は、これらのがんに対し、合成致死による抗腫瘍効果が認められている(非特許文献7~11)。
PARP阻害剤としては、Olaparib(非特許文献12)、Rucaparib(非特許文献13)、Niraparib(非特許文献14)、及びTalazoparib(非特許文献15)等が知られている。
PARP阻害剤とPBDを用いたADCを併用することにより、合成致死に類似した効果を得られることも知られている。例えば、PARP阻害剤が有効性を示すBRCA2ノックアウトDLD1細胞のXenograftモデルにおいてOlaparibとADCの併用効果が確認されている。しかしながら、親株のDLD1細胞のXenograftモデルでは併用効果は認められなかった(非特許文献16)。また、上記スピロ環を有するPBDやその抗体-薬物コンジュゲートについてPARP阻害剤との併用効果については知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2013/173496号
【文献】国際公開第2014/130879号
【文献】国際公開第2017/004330号
【文献】国際公開第2017/004025号
【文献】国際公開第2017/020972号
【文献】国際公開第2016/036804号
【文献】国際公開第2015/095124号
【文献】国際公開第2015/052322号
【文献】国際公開第2015/052534号
【文献】国際公開第2016/115191号
【文献】国際公開第2015/052321号
【文献】国際公開第2015/031693号
【文献】国際公開第2011/130613号
【文献】国際公開第2005/040170号
【文献】国際公開第2017/137556号
【非特許文献】
【0004】
【文献】Angewandte Chemie Internationl Edition 2016,55,2-29
【文献】Chemical Reviews 2010, 111, 2815-2864
【文献】In Antibiotics III. Springer Verlag, New York, pp.3-11
【文献】Accounts of Chemical Research 1986, 19, 230
【文献】Journal of the American Chemical Society 1992, 114, 4939
【文献】Journal of Organic Chemistry 1996, 61, 8141
【文献】Lord CJ, et al., Nature (2012) 481, 287-294.
【文献】Benafif S, et al., Onco. Targets Ther. (2015) 8, 519-528.
【文献】Fong PC, et al., N. Engl. J. Med. (2009) 361, 123-134.
【文献】Fong PC, et al., J. Clin. Oncol. (2010) 28, 2512-2519.
【文献】Gelmon KA, et al., Lancet Oncol. (2011) 12, 852-861.
【文献】Menear KA, et al., J. Med. Chem. (2008) 51, 6581-6591.
【文献】Gillmore AT, et al., Org. Process Res. Dev. (2012) 16, 1897-1904.
【文献】Jones P, et al., J. Med. Chem. (2009) 52, 7170-7185.
【文献】Shen Y, et al., Clin. Cancer Res. (2013) 19(18), 5003-5015.
【文献】Zhong H, et al., Mol Cancer Ther. (2019) 18(1), 89-99.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートとPARP阻害剤とを組み合わせて投与されることを特徴とするがんの治療のための医薬、抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートとPARP阻害剤とを組み合わせて投与されることを特徴とするがんの治療方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートとPARP阻害剤が組み合わされて投与されることにより、優れた抗腫瘍効果を示した。また、当該コンジュゲートは、PARP阻害剤が感受性を示さない細胞株およびゼノグラフト腫瘍に対してもPARP阻害剤と組み合わされて投与されることにより、優れた抗腫瘍効果を示した。本発明は、前記知見を基に完成された。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に関するものである。
[1]抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲート及び/又はPARP阻害剤を含むがん治療のための医薬組成物であって、該抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートと、該PARP阻害剤が、組み合わされて投与されることを特徴とし、
該コンジュゲートが、次式;
【0008】
【化2】
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
、又は、
【0011】
【化5】
【0012】
で示され、
上記で示されるそれぞれの構造式において、m1は1又は2の整数であり、
Abは、抗体又は該抗体の機能性断片であり、
N297糖鎖は次式で示される構造を有するN297-(Fuc)MSG1、N297-(Fuc)MSG2もしくはそれらの混合物、又はN297-(Fuc)SGであり、
【0013】
【化6】
【0014】
【化7】
【0015】
【化8】
【0016】
式中、波線は抗体のAsn297に結合していることを示し、
N297糖鎖中のL(PEG)は、*-(CH2CH2-O)3-CH2CH2-NH-であることを示し、
ここで、右端のアミノ基がN297糖鎖のβ-Manの分岐鎖の1-3鎖側又は/及び1-6鎖側の非還元末端のシアル酸の2位のカルボン酸とアミド結合を介して結合しており、左端のアステリスク*は、前記式中のトリアゾール環上の1位又は3位の窒素原子と結合していることを示す医薬組成物。
【0017】
[2]抗体が、腫瘍細胞に発現している抗原に結合し、腫瘍細胞内に取り込まれて内在化することを特徴とする、[1]に記載の医薬組成物。
【0018】
[3]抗体が、抗腫瘍効果を有することを特徴とする、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
【0019】
[4]抗体が、抗CLDN6抗体、抗CLDN9抗体、抗CLDN6/CLDN9抗体、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗DLL3抗体、抗FAP抗体、抗CDH11抗体、抗A33抗体、抗CanAg抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD25抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD70抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3抗体、抗TROP2抗体、抗CEA抗体、抗Cripto抗体、抗EphA2抗体、抗FGFR2抗体、抗G250抗体、抗MUC1抗体、抗GPNMB抗体、抗Integrin抗体、抗PSMA抗体、抗Tenascin-C抗体、抗SLC44A4抗体、抗Mesothelin抗体、抗EGFR抗体、抗5T4抗体、抗LRRC15抗体、抗DR5抗体、抗CDH3抗体、抗PDPN 抗体、又は抗CD123抗体である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0020】
[5]抗体が、CLDN6及び/又はCLDN9に特異的に結合することを特徴とする、[1]~[4]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0021】
[6]抗体が、以下の(a)又は(b)に記載のCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖、並びに、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖を含んでなる、[5]に記載の医薬組成物;
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号7に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL3、又は、
(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3。
【0022】
[7]抗体が、以下の(a)又は(b)に記載のCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖、並びに、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖を含んでなる、[6]に記載の医薬組成物;
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、及び、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号7に記載のアミノ酸配列又は配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、又は、
(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、及び、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3。
【0023】
[8]抗体が、以下の(a)又は(b)に記載の重鎖可変領域、及び、軽鎖可変領域を含む、[5]~[7]のいずれか一つに記載の医薬組成物;
(a)配列番号21に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号19に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は、
(b)配列番号25に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0024】
[9]以下の(a)~(e)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び(f)~(k)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、[5]~[8]のいずれか一つに記載の医薬組成物;
(a)配列番号54に記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号58に記載のアミノ酸配列、
(c)配列番号62に記載のアミノ酸配列、
(d)(a)~(c)の配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
(e)(a)~(c)の配列における各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、
(f)配列番号38に記載のアミノ酸配列、
(g)配列番号42に記載のアミノ酸配列、
(h)配列番号46に記載のアミノ酸配列、
(i)配列番号50に記載のアミノ酸配列、
(j)(f)~(i)の配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び、
(k)(f)~(i)の配列における各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列。
【0025】
[10]抗体が、以下の(a)~(e)からなる群から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、[9]に記載の医薬組成物;
(a)配列番号54に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号38に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(b)配列番号58に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(c)配列番号54に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号46に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(d)配列番号58に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号50に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び、
(e)配列番号62に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号46に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0026】
[11]抗体が、キメラ抗体である、[5]~[10]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0027】
[12]抗体が、ヒト化抗体である、[5]~[10]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0028】
[13]抗体が、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4の重鎖定常領域を含む、[5]~[12]のいずれか一つに記載の医薬。
【0029】
[14]以下の(a)~(e)からなる群から選択される重鎖及び軽鎖を含む、[12]又は[13]に記載の医薬組成物;
(a)配列番号52のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号36のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(b)配列番号56のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる、重鎖および配列番号40のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(c)配列番号52のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号44のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(d)配列番号56のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号48のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、及び、
(e)配列番号60のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号44のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖。
【0030】
[15]抗体が、[6]~[10]及び[14]のいずれか一つに記載の抗体と、CLDN6及び/又はCLDN9への結合において競合するか、又は、[6]~[10]及び[14]のいずれか一つに記載の抗体が認識するCLDN6及び/又はCLDN9上の部位に結合する、[5]に記載の医薬組成物。
【0031】
[16]抗体が、HER2に特異的に結合する[1]~[4]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0032】
[17]抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有する[16]に記載の医薬組成物。
【0033】
[18]抗体の重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域であり、ADCC及び/又はCDC活性の低減をもたらす変異を含む、[16]に記載の医薬組成物。
【0034】
[19]抗体の重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域であり、該重鎖定常領域においてEU Indexにより示される234位及び235位のロイシンがアラニンに置換されている、[18]に記載の医薬組成物。
【0035】
[20]配列番号65に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号64に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、[16]又は[17]に記載の医薬組成物。
【0036】
[21]配列番号75のアミノ酸番号20~139に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号73のアミノ酸番号21~127に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗体である、[16]、[18]及び[19]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0037】
[22]配列番号75のアミノ酸番号20~469に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号73のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体である、[16]、[18]、[19]及び[21]のいずれかに一つに記載の医薬組成物。
【0038】
[23]配列番号77のアミノ酸番号20~469に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号76のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む抗体である、[16]、[18]、[19]及び[21]のいずれかに一つに記載の医薬組成物。
【0039】
[24]抗体が、N-結合型糖鎖付加、O-結合型糖鎖付加、N末のプロセッシング、C末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末におけるメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化、及び重鎖のカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸残基の欠失からなる群より選択される1又は2以上の修飾を含む、[5]~[23]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0040】
[25]抗体の重鎖のカルボキシル末端において1つ又は数個のアミノ酸残基が欠失している、[24]に記載の医薬組成物。
【0041】
[26]抗体の2本の重鎖の双方のカルボキシル末端において1つのアミノ酸残基が欠失している、[24]又は[25]に記載の医薬組成物。
【0042】
[27]抗体の重鎖のカルボキシル末端のプロリン残基が更にアミド化されている、[24]~[26]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0043】
[28]N297糖鎖が、N297-(Fuc)MSG1である、[1]~[27]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0044】
[29]m1が、1の整数である、[1]~[28]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0045】
[30]抗体―ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートにおける抗体1分子あたりの平均薬物結合数が、1~3又は3~5である、[1]~[29]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0046】
[31]PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、若しくはタラゾパリブ、又はそれらの薬理上許容される塩である、[1]~[30]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0047】
[32]抗体-薬物コンジュゲートと、PARP阻害剤が、それぞれ別異の製剤に有効成分として含有され、同時に又は異なる時間に投与されることを特徴とする[1]~[31]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0048】
[33]肺がん(非小細胞肺がん、小細胞肺がん等)、腎がん、尿路上皮がん、大腸がん、前立腺がん、多形神経膠芽腫、卵巣がん(表層上皮性腫瘍、間質性腫瘍、胚細胞腫瘍等)、膵がん、乳がん、メラノーマ、肝がん、膀胱がん、胃がん、食道がん、子宮体がん、精巣がん(セミノーマ、非セミノーマ)、子宮頸がん、胎盤絨毛がん、脳腫瘍、頭頚部がんならびにそれらの転移性形態からなる群より選択される少なくとも一つのがんの治療のための、[1]~[32]のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0049】
[34]抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートと、PARP阻害剤が、組み合わされて投与されることを特徴とするがんの治療方法であって、
該コンジュゲートが、次式;
【0050】
【化9】
【0051】
【化10】
【0052】
【化11】
、又は、
【0053】
【化12】
【0054】
で示され、
上記で示されるそれぞれの構造式において、m1は1又は2の整数であり、
Abは、抗体又は該抗体の機能性断片であり、
N297糖鎖は次式で示される構造を有するN297-(Fuc)MSG1、N297-(Fuc)MSG2もしくはそれらの混合物、又はN297-(Fuc)SGであり、
【0055】
【化13】
【0056】
【化14】
【0057】
【化15】
【0058】
式中、波線は抗体のAsn297に結合していることを示し、
N297糖鎖中のL(PEG)は、*-(CH2CH2-O)3-CH2CH2-NH-であることを示し、
ここで、右端のアミノ基がN297糖鎖のβ-Manの分岐鎖の1-3鎖側又は/及び1-6鎖側の非還元末端のシアル酸の2位のカルボン酸とアミド結合を介して結合しており、左端のアステリスク*は、前記式中のトリアゾール環上の1位又は3位の窒素原子と結合していることを示す治療方法。
【0059】
[35]抗体が、腫瘍細胞に発現している抗原に結合し、腫瘍細胞内に取り込まれて内在化することを特徴とする、[34]に記載の治療方法。
【0060】
[36]抗体が、抗腫瘍効果を有することを特徴とする、[34]又は[35]に記載の治療方法。
【0061】
[37]抗体が、抗CLDN6抗体、抗CLDN9抗体、抗CLDN6/CLDN9抗体、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗DLL3抗体、抗FAP抗体、抗CDH11抗体、抗A33抗体、抗CanAg抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD25抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD70抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3抗体、抗TROP2抗体、抗CEA抗体、抗Cripto抗体、抗EphA2抗体、抗FGFR2抗体、抗G250抗体、抗MUC1抗体、抗GPNMB抗体、抗Integrin抗体、抗体PSMA抗体、抗Tenascin-C抗体、抗SLC44A4抗体、抗Mesothelin抗体、抗EGFR抗体、抗5T4抗体、抗LRRC15抗体、抗DR5抗体、抗CDH3抗体、抗PDPN 抗体、又は抗CD123抗体である、[34]~[36]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0062】
[38]抗体が、CLDN6及び/又はCLDN9に特異的に結合することを特徴とする、[34]~[37]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0063】
[39]抗体が、以下の(a)又は(b)に記載のCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖、並びに、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖を含んでなる、[38]に記載の治療方法;
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号7に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列において1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL3、又は、
(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、並びに、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3。
【0064】
[40]抗体が、以下の(a)又は(b)に記載のCDRH1、CDRH2及びCDRH3を含む重鎖、並びに、CDRL1、CDRL2及びCDRL3を含む軽鎖を含んでなる、[39]に記載の治療方法;
(a)配列番号9に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号10に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、及び、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号6に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号7に記載のアミノ酸配列又は配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3、又は、
(b)配列番号15に記載のアミノ酸配列からなるCDRH1、配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるCDRH2及び配列番号17に記載のアミノ酸配列からなるCDRH3、及び、配列番号12に記載のアミノ酸配列からなるCDRL1、配列番号13に記載のアミノ酸配列からなるCDRL2及び配列番号14に記載のアミノ酸配列からなるCDRL3。
【0065】
[41]抗体が、以下の(a)又は(b)に記載の重鎖可変領域、及び、軽鎖可変領域を含む、[38]~[40]のいずれか一つに記載の治療方法;
(a)配列番号21に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号19に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、又は、
(b)配列番号25に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列番号23に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0066】
[42]以下の(a)~(e)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び(f)~(k)からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、[38]~[41]のいずれか一つに記載の治療方法;
(a)配列番号54に記載のアミノ酸配列、
(b)配列番号58に記載のアミノ酸配列、
(c)配列番号62に記載のアミノ酸配列、
(d)(a)~(c)の配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、
(e)(a)~(c)の配列における各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列、
(f)配列番号38に記載のアミノ酸配列、
(g)配列番号42に記載のアミノ酸配列、
(h)配列番号46に記載のアミノ酸配列、
(i)配列番号50に記載のアミノ酸配列、
(j)(f)~(i)の配列において各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列に対して少なくとも95%以上の相同性を有するアミノ酸配列、及び、
(k)(f)~(i)の配列における各CDR配列以外のフレームワーク領域の配列において1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列。
【0067】
[43]抗体が、以下の(a)~(e)からなる群から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む、[42]に記載の治療方法;
(a)配列番号54に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号38に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(b)配列番号58に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号42に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(c)配列番号54に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号46に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、
(d)配列番号58に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号50に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域、及び、
(e)配列番号62に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号46に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域。
【0068】
[44]抗体が、キメラ抗体である、[38]~[43]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0069】
[45]抗体が、ヒト化抗体である、[38]~[43]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0070】
[46]抗体が、ヒトIgG1、ヒトIgG2又はヒトIgG4の重鎖定常領域を含む、[38]~[45]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0071】
[47]以下の(a)~(e)からなる群から選択される重鎖及び軽鎖を含む、[45]又は[46]に記載の治療方法;
(a)配列番号52のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号36のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(b)配列番号56のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる、重鎖および配列番号40のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(c)配列番号52のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号44のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、
(d)配列番号56のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号48のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖、及び、
(e)配列番号60のアミノ酸番号20~471に記載のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号44のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖。
【0072】
[48]抗体が、[39]~[43]及び[47]のいずれか一つに記載の抗体と、CLDN6及び/又はCLDN9への結合において競合するか、又は、[39]~[43]及び[47]のいずれか一つに記載の抗体が認識するCLDN6及び/又はCLDN9上の部位に結合する、[38]に記載の治療方法。
【0073】
[49]抗体が、HER2に特異的に結合する[34]~[37]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0074】
[50]抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有する[49]に記載の治療方法。
【0075】
[51]抗体の重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域であり、ADCC及び/又はCDC活性の低減をもたらす変異を含む、[49]に記載の治療方法。
【0076】
[52]抗体の重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域であり、該重鎖定常領域においてEU Indexにより示される234位及び235位のロイシンがアラニンに置換されている、[51]に記載の治療方法。
【0077】
[53]抗体が、配列番号65に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号64に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、[49]又は[50]に記載の治療方法。
【0078】
[54]抗体が、配列番号75のアミノ酸番号20~139に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号73のアミノ酸番号21~127に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含んでなる、[49]、[51]及び[52]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0079】
[55]抗体が、配列番号75のアミノ酸番号20~469に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号73のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、[49]、[51]、[52]及び[54]のいずれかに一つに記載の治療方法。
【0080】
[56]抗体が、配列番号77のアミノ酸番号20~469に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号76のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、[49]、[51]、[52]及び[54]のいずれかに一つに記載の治療方法。
【0081】
[57]抗体が、N-結合型糖鎖付加、O-結合型糖鎖付加、N末のプロセッシング、C末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化、N末におけるメチオニン残基の付加、プロリン残基のアミド化 、及び重鎖のカルボキシル末端における1つ又は2つのアミノ酸残基の欠失からなる群より選択される1又は2以上の修飾を含む[38]~[56]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0082】
[58]抗体の重鎖のカルボキシル末端において1つ又は数個のアミノ酸残基が欠失している、[57]に記載の治療方法。
【0083】
[59]抗体の2本の重鎖の双方のカルボキシル末端において1つのアミノ酸残基が欠失している、[57]又は[58]に記載の治療方法。
【0084】
[60]抗体の重鎖のカルボキシル末端のプロリン残基が更にアミド化されている、[57]~[59]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0085】
[61]N297糖鎖が、N297-(Fuc)MSG1である、[34]~[60]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0086】
[62]m1が、1の整数である[34]~[61]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0087】
[63]抗体―ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートにおける抗体1分子あたりの平均薬物結合数が、1~3又は3~5である、[34]~[62]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0088】
[64]PARP阻害剤が、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、若しくはタラゾパリブ、又はそれらの薬理上許容される塩である、[34]~[63]のいずれか一つに記載の治療方法。
【0089】
[65]肺がん(非小細胞肺がん、小細胞肺がん等)、腎がん、尿路上皮がん、大腸がん、前立腺がん、多形神経膠芽腫、卵巣がん(表層上皮性腫瘍、間質性腫瘍、胚細胞腫瘍等)、膵がん、乳がん、メラノーマ、肝がん、膀胱がん、胃がん、食道がん、子宮体がん、精巣がん(セミノーマ、非セミノーマ)、子宮頸がん、胎盤絨毛がん、脳腫瘍、頭頚部がんならびにそれらの転移性形態からなる群より選択される少なくとも一つのがんの治療のための、[34]~[64]のいずれか1つに記載の治療方法。
【0090】
[66]PARP阻害剤と併用するための、[1]に記載の抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートを含む医薬組成物。
【0091】
[67]PARP阻害剤を含み、[1]に記載の抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートと併用することにより、該コンジュゲートの作用を上昇させる医薬組成物。
【0092】
[68][1]に記載の抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートと併用するための、PARP阻害剤を含む医薬組成物。
【0093】
[69][1]に記載の抗体-ピロロベンゾジアゼピン誘導体コンジュゲートを含み、PARP阻害剤と併用することより、PARP阻害剤の作用を上昇させる医薬組成物。
【0094】
[70][1]に記載の医薬組成物であって、
該ピロロベンゾジアゼピン誘導体がDNAのマイナーグルーブにおいてクロスリンクを形成しない医薬組成物。
【0095】
[71][1]に記載の医薬組成物であって、
がんがPARP阻害剤に非感受性である医薬組成物。
【0096】
[72][1]に記載の医薬組成物であって、
がんが、相同的組換え(HR)依存的DNA二本鎖破壊(DSB)修復経路に非依存的である医薬組成物。
[73][1]に記載の抗体-薬物コンジュゲートと、PARP阻害剤が、それぞれ別異の製剤に有効成分として含有され、同時に又は異なる時間に投与されることを特徴とする、[34]~[64]のいずれか一つに記載の治療方法。
【発明の効果】
【0097】
本発明は、がんの治療方法、および/または抗がん剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】ヒト膵臓がん細胞株CFPAC-1細胞を皮下移植したマウスにおける抗HER2抗体-薬物コンジュゲートADC2、及びタラゾパリブそれぞれの単剤投与群、並びに、HER2抗体-薬物コンジュゲートADC2とタラゾパリブの併用投与群の腫瘍増殖抑制効果を示した図である。
図2】ヒト乳がん株JIMT-1細胞を皮下移植したマウスにおける抗HER2抗体-薬物コンジュゲートADC2、及びオラパリブそれぞれの単剤投与群、並びに、HER2抗体-薬物コンジュゲートADC2とオラパリブの併用投与群の腫瘍増殖抑制効果を示した図である。
図3】ヒト乳がん株JIMT-1細胞を皮下移植したマウスにおける抗HER2抗体-薬物コンジュゲートADC2、及びタラゾパリブそれぞれの単剤投与群、並びに、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートADC2とタラゾパリブの併用投与群の腫瘍増殖抑制効果を示した図である。
図4】ヒト咽頭がん細胞株FaDuを皮下移植したマウスにおける抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートADC3、及びオラパリブそれぞれの単剤投与群、並びに、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートADC3とオラパリブの併用投与群の腫瘍増殖抑制効果を示した図である。
図5】ヒト咽頭がん細胞株FaDuを皮下移植したマウスにおける抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートADC3、及びタラゾパリブそれぞれの単剤投与群、並びに、抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートADC3とタラゾパリブの併用投与群の腫瘍増殖抑制効果を示した図である。
図6】ヒトCLDN6の全長アミノ酸配列(配列番号1)及び全長cDNAの塩基配列(配列番号2)を示す。
図7】ヒトCLDN9の全長アミノ酸配列(配列番号3)及び全長cDNAの塩基配列(配列番号4)を示す。
図8】B1抗体軽鎖のCDRL1~3のアミノ酸配列(配列番号5~7)を示す。
図9】ヒト化B1抗体軽鎖L4のCDRL3のアミノ酸配列(配列番号8)を示す。
図10】B1抗体重鎖のCDRH1~3のアミノ酸配列(配列番号9~11)を示す。
図11】C7抗体軽鎖のCDRL1~3のアミノ酸配列(配列番号12~14)を示す。
図12】C7抗体重鎖のCDRH1~3のアミノ酸配列(配列番号15~17)を示す。
図13】B1抗体軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号18)及びB1抗体軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号19)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図14】B1抗体重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号20)及びB1抗体重鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号21)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図15】C7抗体軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号22)及びC7抗体軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号23)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図16】C7抗体重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列(配列番号24)及びC7抗体重鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号25)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図17】chB1軽鎖のアミノ酸配列(配列番号28)及びchB1軽鎖のアミノ酸配列をコードするDNA配列を含むDNA断片(配列番号29)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図18】chB1軽鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号30)及びchB1軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号31)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図19】chB1重鎖のアミノ酸配列(配列番号32)及びchB1重鎖をコードするヌクレオチド配列(配列番号33)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図20】chB1重鎖の可変領域のアミノ酸配列(配列番号34)及びchB1重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号35)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図21】ヒト化抗体軽鎖hL1のアミノ酸配列(配列番号36)及びヒト化抗体軽鎖hL1をコードするヌクレオチド配列(配列番号37)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図22】ヒト化抗体軽鎖hL1の可変領域のアミノ酸配列(配列番号38)及びヒト化抗体軽鎖hL1の可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号39)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図23】ヒト化抗体軽鎖hL2のアミノ酸配列(配列番号40)及びヒト化抗体軽鎖hL2をコードするヌクレオチド配列(配列番号41)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図24】ヒト化抗体軽鎖hL2の可変領域のアミノ酸配列(配列番号42)及びヒト化抗体軽鎖hL2の可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号43)を示す。
図25】ヒト化抗体軽鎖hL3のアミノ酸配列(配列番号44)及びヒト化抗体軽鎖hL3をコードするヌクレオチド配列(配列番号45)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図26】ヒト化抗体軽鎖hL3の可変領域のアミノ酸配列(配列番号46)及びヒト化抗体軽鎖hL3の可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号47)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図27】ヒト化抗体軽鎖hL4のアミノ酸配列(配列番号48)及びヒト化抗体軽鎖hL4をコードするヌクレオチド配列(配列番号49)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図28】ヒト化抗体軽鎖hL4の可変領域のアミノ酸配列(配列番号50)及びヒト化抗体軽鎖hL4の可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号51)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図29】ヒト化抗体重鎖hH1のアミノ酸配列(配列番号52)及びヒト化抗体重鎖hH1をコードするヌクレオチド配列(配列番号53)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図30】ヒト化抗体重鎖hH1の可変領域のアミノ酸配列(配列番号54)及びヒト化抗体重鎖hH1の可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号55)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図31】ヒト化抗体重鎖hH2のアミノ酸配列(配列番号56)及びヒト化抗体重鎖hH2をコードするヌクレオチド配列(配列番号57)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図32】ヒト化抗体重鎖hH2の可変領域のアミノ酸配列(配列番号58)及びヒト化抗体重鎖hH2の可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号59)を示す。
図33】ヒト化抗体重鎖hH3のアミノ酸配列(配列番号60)及びヒト化抗体重鎖hH3をコードするヌクレオチド配列(配列番号61)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図34】ヒト化抗体重鎖hH3の可変領域のアミノ酸配列(配列番号62)及びヒト化抗体重鎖hH3の可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号63)を示す。アミノ酸配列における下線はCDR配列を示す。
図35】B1抗体及びC7抗体のフローサイトメトリーによるヒトCLDN6及びファミリー分子CLDN3、CLDN4、CLDN9に対する結合能を示す。
図36】B1抗体及びC7抗体のMab-ZAPによる抗体内在化活性能を示す。
図37】ヒト化抗CLDN6抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、及びH3L3のフローサイトメトリーによるCLDN6及びファミリー分子に対する結合能を示す。
図38】Trastuzumab軽鎖のアミノ酸配列(配列番号64)及び重鎖のアミノ酸配列(配列番号65)を示す。
図39】Trastuzumab変異体の軽鎖のアミノ酸配列(配列番号73)及び重鎖のアミノ酸配列(配列番号75)を示す。
図40】ヒトキメラ化抗CLDN6抗体chB1の重鎖であるchB1_H、ヒト化抗体重鎖であるhH1、hH2及びhH3のアミノ酸配列の比較を示す図。「・」はchB1_Hと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
図41】ヒトキメラ化抗CLDN6抗体chB1の軽鎖であるchB1_L、ヒト化抗体軽鎖であるhL1、hL2、hL3及びhL4のアミノ酸配列の比較を示す図。「・」はchB1_Lと同一のアミノ酸残基を示し、アミノ酸残基が記載されている箇所は置換されたアミノ酸残基を示す。
図42】ヒト卵巣がん細胞株OV-90を皮下移植したマウスにおける抗CLDN6抗体-薬物コンジュゲートADC1、及びニラパリブそれぞれの単剤投与群、ならびに、抗CLDN6抗体-薬物コンジュゲートADC1とニラパリブの併用投与群の腫瘍増殖抑制効果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0099】
1.抗体-薬物コンジュゲート
本発明において使用される抗体-薬物コンジュゲートは、腫瘍細胞に発現している抗原を認識又は当該抗原に結合できる抗体にリンカー部分を介して抗腫瘍性化合物を結合させた抗腫瘍性薬物である。
【0100】
本発明のコンジュゲートは、好ましくは、次式;
【0101】
【化16】
【0102】
で示され、
m1は1又は2の整数(好ましくは、1)であり、Dは薬物、LはN297糖鎖とDを連結するリンカー、Abは抗体又は該抗体の機能性断片、N297糖鎖は前記抗体のAsn297の側鎖に結合する糖鎖を示す。N297糖鎖はリモデンリングされた糖鎖でも良い。
【0103】
<薬物>
本発明の薬物Dは抗腫瘍性化合物であることが好ましい。本抗腫瘍性化合物は、本発明の抗体-薬物コンジュゲートのリンカーの一部又は全部が腫瘍細胞内で切断され抗腫瘍性化合物部分が遊離されて抗腫瘍効果が発現される。本発明の薬物Dとして、次式;
【0104】
【化17】
【0105】
に示される構造を含むPBD誘導体が挙げられる。本発明の薬物Dとして、DNAのマイナーグルーブにおいてクロスリンクを形成しないPBD誘導体が挙げることができるが、これに限定されない。
【0106】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物すなわちPBD誘導体は、好ましくは、以下の群から選択されるいずれか一つであり、
【0107】
【化18】
【0108】
ここで、式中、アステリスク*はLと結合していることを示す。
【0109】
本発明のPBD誘導体は下記部分構造I(a)又はI(b)で示すように、11’位に不斉炭素が存在するため、光学異性体が存在する。
【0110】
【化19】
【0111】
従って、上記の本発明のPBD誘導体は、それぞれ、光学異性体及び光学異性体の任意の割合での混合物を含む。PBD誘導体の11’位の絶対立体配置は結晶性の生成物又は中間体もしくはそれらの誘導体のX線結晶構造解析やMosher法等のNMRにより決定することができる。その際、立体配置が既知である不斉中心を持つ試薬で誘導体化された結晶性の生成物又は中間体を用いて絶対立体配置を決定してもよい。立体異性体は、合成した本発明に係る化合物を所望により通常の光学分割法又は分離法を用いて単離することにより得ることができる。
【0112】
本発明の抗体-薬物コンジュゲート、その遊離薬物もしくはその製造中間体には、立体異性体あるいは不斉炭素原子に由来する光学異性体、幾何異性体、互変異性体又はd体、l体、アトロプ異性体等の光学異性体が存在することもあるが、これらの異性体、光学異性体及びこれらの混合物のいずれも本発明に含まれる。
本発明のPBD誘導体の部分構造としては、上記I(a)が好ましい。好ましくは、以下の群から選択されるいずれか一つである。
【0113】
【化20】
【0114】
ここで、式中、アステリスク*はLと結合していることを示す。
【0115】
<リンカー構造>
本発明のリンカーLは、N297糖鎖とDを連結するリンカーである。
当該リンカーLは、次式で示される。
-Lb-La-Lp-NH-B-CH2-O(C=O)-*
アステリスク*は、薬物DのN10’位の窒素原子と結合していることを示し、Lbは、LaとN297糖鎖又はリモデリングされたN297糖鎖を結合するスペーサーを示す。
【0116】
Bは、フェニル基又はヘテロアリール基を示し、好ましくは、1,4-フェニル基、2,5-ピリジル基、3,6-ピリジル基、2,5-ピリミジル基、2,5-チエニル基であり、より好ましくは、1,4-フェニル基である。
【0117】
Lpは、生体内又は標的細胞において切断可能なアミノ酸配列からなるリンカーを示す。Lpは、例えば、エステラーゼやペプチダーゼ等の酵素の作用によって、切断される。
Lpは、2から7個(好ましくは、2から4個)のアミノ酸で構成されるペプチド残基である。すなわち、2から7個のアミノ酸がペプチド結合したオリゴペプチドの残基によって構成される。
Lpは、N末端においてLb-La-のLaのカルボニル基に結合し、C末端においてリンカーの-NH-B-CH2-O(C=O)-部分のアミノ基(-NH-)とアミド結合を形成する。前記エステラーゼ等の酵素によって、LpのC末端と-NH-間の結合が切断される。
【0118】
Lpを構成するアミノ酸は、特に限定されないが、例えば、L-又はD-アミノ酸であり、好ましくはL-アミノ酸である。また、α-アミノ酸の他、β-アラニン、ε-アミノカプロン酸、γ-アミノ酪酸等の構造のアミノ酸であってもよく,さらには例えばN-メチル化されたアミノ酸等の非天然型のアミノ酸であってもよい。
【0119】
Lpのアミノ酸配列は、特に限定されないが、構成するアミノ酸として、グリシン(Gly;G)、バリン(Val;V)、アラニン(Ala;A)、フェニルアラニン(Phe;F)、グルタミン酸(Glu;E)、イソロイシン(Ile;I)、プロリン(Pro;P)、シトルリン(Cit)、ロイシン(Leu;L)、セリン(Ser;S)、リシン(Lys;K)及びアスパラギン酸(Asp;D)等を挙げることができる。これらのうちで好ましくは、グリシン(Gly;G)、バリン(Val;V)、アラニン(Ala;A)、シトルリン(Cit)である。
これらのアミノ酸は重複してもよく、任意に選択されたアミノ酸を含むアミノ酸配列を有する。また、アミノ酸の種類によって、薬物遊離のパターンをコントロールすることができる。
【0120】
リンカーLpの具体例として、
-GGVA-、-GG-(D-)VA-、-VA-、-GGFG-、-GGPI-、-GGVCit-、-GGVK-、-GG(D-)PI-、-GGPL-、-EGGVA、-PI-、-GGF-、-DGGF-、(D-)D-GGF-、-EGGF-、-SGGF-、-KGGF-、-DGGFG-、-GGFGG-、-DDGGFG-、-KDGGFG-、-GGFGGGF-
を挙げることができる。
ここで、上記の『(D-)V』はD-バリン、『(D-)P』はD-プロリン、『(D-)D』はD-アスパラギン酸を意味する。
【0121】
リンカーLpは、好ましくは、以下である。
-GGVA-、-GG-(D-)VA-、-VA-、-GGFG-、-GGPI-、-GGVCit-、-GGVK-、-GG(D-)PI-、-GGPL-
【0122】
リンカーLpは、より好ましくは、以下である。
-GGVA-、-GGVCit-、-VA-
【0123】
Laは、以下の群から選択されるいずれか一つを示す。
-C(=O)-(CH2CH2)n2-C(=O)-、-C(=O)-(CH2CH2)n2-C(=O)-NH-(CH2CH2)n3-C(=O)-、
-C(=O)-(CH2CH2)n2-C(=O)-NH-(CH2CH2O)n3-CH2-C(=O)-、
-C(=O)-(CH2CH2)n2-NH-C(=O)-(CH2CH2O)n3-CH2CH2-C(=O)-、-(CH2)n4-O-C(=O)-
ここで、式中、n2は1~3の整数(好ましくは、1又は2)、n3は1~5の整数(好ましくは、2~4の整数、より好ましくは、2又は4)、n4は0~2の整数(好ましくは、0又は1)を示す。
【0124】
Laは、好ましくは、以下の群から選択されるいずれか一つを示し、
-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-、-C(=O)-(CH2CH2)2-C(=O)-、
-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-NH-(CH2CH2)2-C(=O)-
-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-NH-(CH2CH2O)2-CH2-C(=O)-、
-C(=O)-CH2CH2-NH-C(=O)-(CH2CH2O)4-CH2CH2-C(=O)-、
-CH2-OC(=O)-、及び、-OC(=O)-
Laは、より好ましくは、-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-、又は、-C(=O)-(CH2CH2)2-C(=O)-である。
【0125】
Lbのスペーサーは、特に限定されないが、例えば、次式で示されるスペーサーが挙げられる。
【0126】
【化21】
【0127】
【化22】
【0128】
【化23】
【0129】
上記で示されるLbのそれぞれの構造式において、アステリスク*はLaの左端の-(C=O)、又は-(CH2)n4と結合していることを示し、波線はAbのN297糖鎖又はリモデリングされたN297糖鎖と結合していることを示す。
上記で示されるLb(Lb-1、Lb-2又はLb-3)のそれぞれの構造式において、アジド基とDBCOのclick reactionで形成されるトリアゾール環部位は、幾何異性構造を有し、1つのLb中に、これら2種類の構造のいずれか一方、又は、それらの混合物として存在する。すなわち、本発明の抗体-薬物コンジュゲート1分子中には2又は4個(m1は1又は2)の『-L-D』が存在し、2又は4個それぞれの『-L-D』におけるL中のそれぞれのLb(Lb-1、Lb-2又はLb-3)は、これら2種類の構造のいずれか一方、又は、その両方が混在している。
【0130】
Lは、好ましくは、-Lb-La-Lp-NH-B-CH2-O(C=O)-*で示され、
Bは、1,4-フェニル基であり、
Lpは、以下の群から選択されるいずれか一つを示し、
-GGVA-、-GG-(D-)VA-、-VA-、-GGFG-、-GGPI-、-GGVCit-、-GGVK-、-GGPL-
Laは、以下の群から選択されるいずれか一つを示し、
-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-、-C(=O)-(CH2CH2)2-C(=O)-、
-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-NH-(CH2CH2)2-C(=O)-、
-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-NH-(CH2CH2O)2-CH2-C(=O)-、
-C(=O)-CH2CH2-NH-C(=O)-(CH2CH2O)4-CH2CH2-C(=O)-、-CH2-OC(=O)-、-OC(=O)-
Lbは、上記で示されるLbのいずれかの構造式を示す。
【0131】
Lは、より好ましくは、以下の群から選択されるいずれか一つである。
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GGVA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GG-(D-)VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-(CH2CH2)2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GGPI-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GGVCit-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GGVK-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GGPL-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-NH-(CH2CH2)2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-NH-(CH2CH2O)2-CH2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-NH-C(=O)-(CH2CH2O)4-CH2CH2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z2-OC(=O)-GGVA-NH-B-CH2-OC(=O)-、-Z3-CH2-OC(=O)-GGVA-NH-B-CH2-OC(=O)-
ここで、Z1は、上記Lbの以下で示される構造式;
【0132】
【化24】
を示し、Z2は、上記Lbの以下で示される構造式:
【0133】
【化25】
を示し、Z3は上記Lbの以下で示される構造式:
【0134】
【化26】
を示し、Bは1,4-フェニル基である。
【0135】
Lは、最も好ましくは、以下のいずれかである。
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GGVA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-(CH2CH2)2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-GGVCit-NH-B-CH2-OC(=O)-、-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-NH-(CH2CH2)2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、
-Z1-C(=O)-CH2CH2-C(=O)-NH-(CH2CH2O)2-CH2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-、及び
-Z1-C(=O)-CH2CH2-NH-C(=O)-(CH2CH2O)4-CH2CH2-C(=O)-VA-NH-B-CH2-OC(=O)-
ここで、Bは1,4-フェニル基であり、
Z1は上記Lbの以下で示される構造式:
【0136】
【化27】
である。
【0137】
<遊離薬物>
本発明の抗体-薬物コンジュゲートの遊離薬物は、以下の群から選ばれる一つである。
【0138】
【化28】
【0139】
本発明の遊離薬物は、本発明の抗体-薬物コンジュゲートが腫瘍細胞内に移行した後、抗体-薬物コンジュゲートにおけるリンカーL部分が切断されて生成する。当該遊離薬物は抗腫瘍細胞効果が確認された。
【0140】
<抗体>
本発明において、「がん」と「腫瘍」は同じ意味に用いている。
本発明において、「遺伝子」とは、蛋白質のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチドもしくはヌクレオチド配列、またはその相補鎖を意味し、例えば、蛋白質のアミノ酸をコードするヌクレオチド配列が含まれるヌクレオチド配列またはその相補鎖であるポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、mRNA、cDNA、RNA等は「遺伝子」の意味に含まれる。「CLDN6遺伝子」としては、例えば、CLDN6蛋白質のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列が含まれるDNA、mRNA、cDNA、cRNA等をあげることができる。
本発明において、「ヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」又は「ヌクレオチド配列」と「核酸」は同義であり、例えば、DNA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、プライマー等も「ヌクレオチド」又は「ヌクレオチド配列」の意味に含まれる。
本発明においては、「ポリペプチド」、「ペプチド」、「蛋白質」は区別せずに用いている。
本発明において、「CLDN6」は、CLDN6蛋白質と同じ意味で用いている。
【0141】
本発明において、「細胞」には、動物個体内の細胞、培養細胞も含んでいる。
本発明において、「細胞傷害活性」とは、何らかの形で、細胞に病理的な変化を引き起こすことをいい、直接的な外傷にとどまらず、DNAの切断や塩基の二量体の形成、染色体の切断、細胞分裂装置の損傷、各種酵素活性の低下などあらゆる細胞の構造や機能上の損傷を引き起こすことをいう。
【0142】
本発明において、「抗体の機能性断片」とは、「抗体の抗原結合断片」とも呼ばれ、抗原との結合活性を有する抗体の部分断片を意味しており、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、diabody、線状抗体及び抗体断片より形成された多特異性抗体等を含む。また、F(ab’)2を還元条件下で処理した抗体の可変領域の一価の断片であるFab’も抗体の抗原結合断片に含まれる。但し、抗原との結合能を有している限りこれらの分子に限定されない。また、これらの抗原結合断片には、抗体蛋白質の全長分子を適当な酵素で処理したもののみならず、遺伝子工学的に改変された抗体遺伝子を用いて適当な宿主細胞において産生された蛋白質も含まれる。
本発明の機能性断片は、IgG重鎖のFc領域においてよく保存されたN結合型糖鎖による修飾を受けるアスパラギン(Asn297)及びその周辺のアミノ酸を保持し、且つ抗原との結合能を有している機能性断片を含む。
【0143】
本発明において、「エピトープ」とは、特定の抗体(例えば、抗CLDN6抗体)が結合する抗原の部分ペプチド又は部分立体構造(例えば、CLDN6の部分ペプチド又は部分立体構造)を意味する。前記の部分ペプチド(例えば、CLDN6の部分ペプチド)であるエピトープは免疫アッセイ法等当業者にはよく知られている方法によって、決定することができる。
【0144】
本発明における「CDR」とは、相補性決定領域(CDR:Complementarity determining region)を意味する。抗体分子の重鎖及び軽鎖にはそれぞれ3箇所のCDRがあることが知られている。CDRは、超可変領域(hypervariable region)とも呼ばれ、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域内にあって、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖及び軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造上において、それぞれ3ヶ所に分離している。本明細書中においては、抗体のCDRについて、重鎖のCDRを重鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRH1、CDRH2、CDRH3と表記し、軽鎖のCDRを軽鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRL1、CDRL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する抗原に対する特異性を決定している。
【0145】
本発明において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、市販のハイブリダイゼーション溶液ExpressHyb Hybridization Solution(クロンテック社)中、68℃でハイブリダイズすること、又はDNAを固定したフィルターを用いて0.7-1.0MのNaCl存在下68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1-2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度SSCとは150mM NaCl、15mMクエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することによって同定することができる条件又はそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう。
本発明において、「1~数個」とは、1~10個、1~9個、1~8個、1~7個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個又は1~2個を意味する。
【0146】
本発明において、CLDN6もしくはCLDN6及びCLDN9を認識する又は結合する抗体を、それぞれ「抗CLDN6抗体」、「抗CLDN6/CLDN9抗体」と標記することがある。かかる抗体には、キメラ化抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等が含まれる。CLDN6及びCLDN9を認識する又は結合する抗体を、「抗CLDN6抗体」と標記することがある。
【0147】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートに使用される抗体は、免疫グロブリンを意味し、抗原と免疫特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子である。本発明の抗体として、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgYのいずれのクラスでもよいが、IgGが好ましい。また、サブクラスとして、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2のいずれであってもよいがIgG1、IgG2、IgG4が好ましい。IgG1又はIgG4を用いる場合は、定常領域のアミノ酸残基の一部を置換することによって、エフェクター機能を調整することが可能である(WO88/07089、WO94/28027、WO94/29351参照)。
【0148】
また、本発明の抗体のアイソタイプとしてIgG1を用いる場合は、定常領域のアミノ酸残基の一部を置換することによって、エフェクター機能を調整することが可能である。エフェクター機能を低減又は減弱させたIgG1の変異体としては、IgG1 LALA(IgG1-L234A,L235A)、IgG1 LAGA(IgG1-L235A,G237A)等が挙げられ、好ましくはIgG1 LALAである。なお、前記L234A,L235AはEU index(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A., Vol. 63, No.1 (May 15, 1969), pp.78-85)により特定される234位、235位のロイシンのアラニンへの置換、G237AはEU indexにより特定される237位のグリシンのアラニンへの置換を示す。
【0149】
本発明の抗体は、好ましくは腫瘍細胞を標的にできる抗体である。
本発明の抗体-薬物コンジュゲートは抗腫瘍効果を発揮する化合物を結合させてあるので、抗体自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが、必須ではない。抗腫瘍性化合物の細胞傷害性を腫瘍細胞において特異的・選択的に発揮させる目的からは、抗体又は抗体-薬物コンジュゲートが内在化して腫瘍細胞内に移行する性質を有することが重要であり、好ましい。抗腫瘍効果の発揮の点からは抗体又は抗体-薬物コンジュゲートが内在化して腫瘍細胞内に移行する性質を有することが、薬物によって腫瘍細胞を特異的・選択的に傷害を与える点で重要であり、好ましい。抗体の抗腫瘍活性は、腫瘍細胞への細胞傷害活性、抗細胞効果をいう。公知のin vitro又はIn vivoの評価系を用いて、抗腫瘍活性を確認することができる。抗体の内在化能は公知の評価系で測定することができる。
このような抗体として、腫瘍関連抗原に対する抗体が挙げられ、抗CLDN6抗体、抗CLDN9抗体、抗CLDN6/CLDN9抗体、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗DLL3(Delta like protein3)抗体、抗A33抗体、抗CanAg抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD25抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD70抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3(CD276)抗体、抗TROP2抗体、抗CEA 抗体、抗Cripto抗体、抗EphA2抗体、抗FGFR2抗体(WO201315206等)、抗G250抗体、抗MUC1抗体(WO2011012309等)、抗GPNMB抗体、抗Integrin抗体、抗PSMA抗体、抗Tenascin-C抗体、抗SLC44A4抗体、抗Mesothelin抗体、抗EGFR抗体、抗5T4 (oncofetal antigen 5T4; also TPBG and trophoblast glycoprotein)抗体、抗LRRC15 (Leucine-rich repeat-containing protein 15)抗体、抗DR5抗体、抗CDH3(cadherin 3)抗体、抗PDPN (podoplanin) 抗体、又は抗CD123抗体を例示できるがこれに限らない。
本発明の抗体として、好ましくは、抗CLDN6抗体、抗CLDN6/CLDN9抗体、抗HER2抗体、抗CD98抗体、抗TROP2抗体であり、さらに好ましくは抗CLDN6抗体、抗HER2抗体(例えば、Trastuzumab、Trastuzumab変異体、Trastuzumab変異体2)である。
【0150】
以下に、本発明において使用される抗CLDN6抗体について説明する。
1.CLDN6及びCLDN9
CLDN6は、Claudinファミリーに属する、220アミノ酸からなる4回膜貫通型の蛋白質であり、N末端及びC末端を細胞内に持つ。
ヒトCLDN6のアミノ酸配列及びDNA配列は公的データベース上に公開されており、例えばNP_067018(配列番号1)、NM_021195(配列番号2(ともにNCBI)等のアクセッション番号により参照可能である。
ヒトCLDN6蛋白質のアミノ酸配列(以下、「CLDN6アミノ酸配列」)について、細胞外領域は、配列表の配列番号1のアミノ酸番号29~81からなる細胞外ドメイン(EC1)、アミノ酸番号138~160からなる細胞外ドメイン(EC2)で構成されている。
CLDN9は、Claudinファミリーに属する、217アミノ酸からなる4回膜貫通型の蛋白質であり、N末端及びC末端を細胞内に持つ。CLDN9はCLDN6と高い相同性をもつ。
ヒトCLDN9のアミノ酸配列及びDNA配列は公的データベース上に公開されており、例えばNP_066192(配列番号3)、NM_020982(配列番号4)(ともにNCBI)等のアクセッション番号により参照可能である。
【0151】
2.抗CLDN6抗体
本発明の抗CLDN6抗体の一例として、配列表の配列番号1に示すCLDN6のN末端より29から81番目のアミノ酸配列、及び138から160番目のアミノ酸配列の2つの細胞外領域からなる高次構造を認識し、かつ内在化活性を有する抗CLDN6抗体を挙げることができる。
本発明の抗CLDN6抗体は腫瘍細胞を標的にできる抗体であり、すなわち腫瘍細胞を認識できる特性、腫瘍細胞に結合できる特性、そして腫瘍細胞内に取り込まれて内在化する特性等を備えている。したがって、本発明の抗CLDN6抗体と抗腫瘍活性を有する化合物を、リンカーを介して結合させて抗体-薬物コンジュゲートとすることができる。
本発明の抗CLDN6抗体は抗腫瘍活性を有していてもよい。
【0152】
(1)本発明の抗CLDN6抗体は、以下(a)及び(b)の特性を有する;
(a)CLDNファミリーを認識又は結合する。
本発明の抗体はCLDNファミリーを認識する。言い換えれば、本発明の抗体はCLDNファミリーに結合する。本発明の抗体は、好ましくはCLDN6に結合し、より好ましくは、CLDN6に特異的に結合する。更に、本発明の抗体はCLDN9を認識し又はCLDN9に結合してもよい。
本発明において「特異的な認識」、すなわち「特異的な結合」とは、非特異的な吸着ではない結合を意味する。結合が特異的であるか否かの判定基準としては、例えば、解離定数(Dissociation Constant:以下、「KDという」)をあげることができる。本発明の好適な抗体のCLDN6及び/又はCLDN9に対するKD値は1×10-5M以下、5×10-6M以下、2×10-6M以下または1×10-6M以下、より好適には5×10-7M以下、2×10-7M以下または1×10-7M以下である。
本発明における抗原と抗体の結合は、ELISA法、RIA法、Surface Plasmon Resonance(以下、「SPR」という)解析法等により測定または判定することができる。細胞表面上に発現している抗原と抗体との結合は、フローサートメトリー法等により測定することができる。
(b)CLDN6及び/又はCLDN9と結合することによってCLDN6及び/又はCLDN9発現細胞に内在化する活性を有する。
(2)CLDN6及び/又はCLDN9がヒトCLDN6及び/又はヒトCLDN9である上記(1)に記載の抗体。
【0153】
本発明の抗CLDN6モノクローナル抗体は、ハイブリドーマを用いる方法等で得ることができる。抗CLDN6モノクローナル抗体の例としては、マウス抗CLDN6抗体B1及びC7を挙げることができる。なお、本発明においては、当該「B1」を「B1抗体」、当該「C7」を「C7抗体」と表記することもある。
B1抗体の重鎖可変領域の塩基配列は、配列表の配列番号20に、アミノ酸配列は配列番号21に記載されている。また、B1抗体の軽鎖可変領域の塩基配列は、配列表の配列番号18に、アミノ酸配列は配列番号19に記載されている。
B1抗体のCDRH1のアミノ酸配列は配列番号9に、CDRH2のアミノ酸配列は配列番号10に、CDRH3のアミノ酸配列は配列番号11に、CDRL1のアミノ酸配列は配列番号5に、CDRL2のアミノ酸配列は配列番号6に、CDRL3のアミノ酸配列は配列番号7に記載されている。
C7抗体の重鎖可変領域の塩基配列は、配列表の配列番号24に、アミノ酸配列は配列番号25に記載されている。また、C7抗体の軽鎖可変領域の塩基配列は、配列表の配列番号22に、アミノ酸配列は配列番号23に記載されている。
C7抗体のCDRH1のアミノ酸配列は配列番号15に、CDRH2のアミノ酸配列は配列番号16に、CDRH3のアミノ酸配列は配列番号17に、CDRL1のアミノ酸配列は配列番号12に、CDRL2のアミノ酸配列は配列番号13に、CDRL3のアミノ酸配列は配列番号14に記載されている。
【0154】
本発明の抗CLDN6抗体として、B1抗体又はC7抗体と同一のエピトープに結合する抗体を挙げることができる。該抗体が、B1抗体又はC7抗体の結合する部分ペプチド又は部分立体構造に結合すれば、該抗体がB1抗体又はC7抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。また、B1抗体又はC7抗体のCLDN6に対する結合に対して該抗体が競合する(即ち、該抗体が、B1抗体又はC7抗体とCLDN6の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列又は構造が決定されていなくても、該抗体が抗CLDN6抗体と同一のエピトープに結合すると判定することができる。エピトープが同一であることが確認された場合、該抗体がB1抗体又はC7抗体と同等の抗原結合能、生物活性及び/又は内在化活性を有していることが強く期待される。
【0155】
本発明の抗体には、上記CLDN6に対するモノクローナル抗体に加え、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト抗体等も含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
【0156】
(1)キメラ抗体
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げることができる。
本発明のキメラ抗体として例示されるマウス抗ヒトCLDN6抗体B1抗体由来のキメラ抗体は、配列番号21に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖及び配列番号19に示される軽鎖可変領域を含む軽鎖を含む抗体であり、任意のヒト由来の定常領域を有していてよい。
マウス抗ヒトCLDN6抗体B1抗体由来のキメラ抗体の具体例として、マウス抗ヒトCLDN6抗体B1抗体由来のキメラ抗体chB1抗体(以下、「chB1」とも記載する。)を挙げることができる。chB1抗体のアミノ酸配列は、配列表の配列番号32の20~471番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列を有する重鎖及び配列表の配列番号28の21~234からなるアミノ酸配列を有する軽鎖を含む抗体を挙げることができる。
なお、配列表の配列番号32に示される重鎖配列中で、1~19番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、20~141番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は重鎖可変領域であり、142~471番目の残基からなるアミノ酸配列は重鎖定常領域である。また、配列表の配列番号28に示される軽鎖配列中で、1~20番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、21~127番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は軽鎖可変領域であり、128~234番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は軽鎖定常領域である。
chB1抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は配列表の配列番号34、配列番号30に記載されている。
chB1抗体の重鎖アミノ酸配列は、配列表の配列番号33に示されるヌクレオチド配列によってコードされている。配列表の配列番号33に示されるヌクレオチド配列の1~57番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はchB1抗体重鎖のシグナル配列をコードしており、配列表の配列番号33に示されるヌクレオチド配列の58~423番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はchB1抗体の重鎖可変領域をコードしており、配列表の配列番号33に示されるヌクレオチド配列の424~1413番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はchB1抗体の重鎖定常領域をコードしている。
chB1抗体の重鎖可変領域の塩基配列は配列表の配列番号35に記載されている。
chB1抗体の軽鎖アミノ酸配列は、配列表の配列番号29に示されるヌクレオチド配列によってコードされている。配列表の配列番号29に示されるヌクレオチド配列の26~85番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はchB1抗体軽鎖のシグナル配列をコードしており、配列表の配列番号29に示されるヌクレオチド配列の86~406番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はchB1抗体の軽鎖可変領域をコードしており、配列表の配列番号29に示されるヌクレオチド配列の407~727番目のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列はchB1抗体の軽鎖定常領域をコードしている。
chB1抗体の軽鎖可変領域の塩基配列は配列表の配列番号31に記載されている。
【0157】
(2)ヒト化抗体
ヒト化抗体としては、相補性決定領域(CDR;complementarity determining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nature(1986)321,p.522-525参照)、CDR移植法によって、CDRの配列に加え一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(WO90/07861号)、更に、抗原に対する結合能を維持しつつ、一部のCDRのアミノ酸配列を改変した抗体を挙げることができる。
CDRのアミノ酸配列は、Kabatの定義、Chothiaの定義、Abmの定義、IMGT等公知の方法によって決めることができるが、本発明におけるCDRはいずれの方法によって定義されたものでもよい。
但し、B1抗体又はC1抗体由来のヒト化抗体としては、B1抗体又はC1抗体の6種全てのCDR配列を保持し、CLDN6結合活性を有する限り、特定のヒト化抗体に限定されず、更に1~数個(好ましくは、1~2個、より好ましくは1個)のCDRのアミノ酸配列を改変したヒト化抗体変異体もCLDN6蛋白質を認識する又は該抗体のCLDN6蛋白質結合活性を有する限り、特定のヒト化抗体に限定されない。
本発明の抗CLDN6ヒト化抗体又はその機能性断片としては、例えば、
配列表の配列番号9に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の1~数個(好ましくは、1~2個)のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRH1、
配列表の配列番号10に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の1~数個(好ましくは、1~2個)のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRH2、及び、
配列表の配列番号11に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の1~数個(好ましくは、1~2個)のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRH3を含む可変領域を有する重鎖、並びに、
配列表の配列番号5に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の1~数個(好ましくは、1~2個)のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL1、
配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の1~数個(好ましくは、1~2個)のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL2、及び、
配列表の配列番号7に示されるアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の1~数個(好ましくは、1~2個)のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列からなるCDRL3を含む可変領域を有する軽鎖を含み、
本発明のCLDN6蛋白質を認識する又は該抗体のCLDN6蛋白質結合活性を保持している抗体又は該抗体の機能性断片等を挙げることができる。
上記抗CLDN6ヒト化抗体又はその機能性断片におけるCDRのアミノ酸置換の例としては、好ましくは、上記CDRL3の1~数個(好ましくは、1~2個)のアミノ酸置換が挙げられ、配列表の配列番号7のアミノ酸番号4番と5番のアミノ酸を置換した配列表の配列番号8に示されるCDRL3を例示できる。
【0158】
上記CDRHを有するヒト化抗体の重鎖可変領域として、配列表の配列番号54に示されるアミノ酸配列、配列表の配列番号58に示されるアミノ酸配列、及び配列表の配列番号62に示されるアミノ酸配列を例示でき、上記CDRLを有するヒト化抗体の軽鎖可変領域として配列表の配列番号38に示されるアミノ酸配列、配列表の配列番号42に示されるアミノ酸配列、配列表の配列番号46に示されるアミノ酸配列、及び配列表の配列番号50に示されるアミノ酸配列を例示できる。
【0159】
上記、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含むヒト化抗体として、
配列表の配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号38に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、
配列表の配列番号58に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号42に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、
配列表の配列番号54に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号46に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、
配列表の配列番号58に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号50に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体、
配列表の配列番号62に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び、配列表の配列番号46に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含むことからなるヒト化抗体を好適に例示できる。
【0160】
上記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含むことからなるヒト化抗体の全長配列として、
配列表の配列番号52のアミノ酸番号20~471に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号36のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H1L1)、
配列表の配列番号56のアミノ酸番号20~471に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号40のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H2L2)、
配列表の配列番号52のアミノ酸番号20~471に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号44のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H1L3)、
配列表の配列番号56のアミノ酸番号20~471に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号48のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H2L4)、又は、
配列表の配列番号60のアミノ酸番号20~471に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号44のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H3L3)を例示できる。
なお、配列表の配列番号52、56、又は60に示される重鎖アミノ酸配列中で、1~19番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、20~141番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は重鎖可変領域であり、142~471番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は重鎖定常領域である。
また、配列表の配列番号36、40、44又は48に示される軽鎖アミノ酸配列中で、1~20番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列はシグナル配列であり、21~127番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は軽鎖可変領域であり、128~234番目のアミノ酸残基からなるアミノ酸配列は軽鎖定常領域である。
【0161】
上記ヒト化抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、H3L3の重鎖のカルボキシル末端は、後述のように、1又は2つのアミノ酸が欠失していてもよく、当該欠失体も本発明に含まれる。
欠失体の重鎖として、配列表の配列番号52、56、60のアミノ酸番号20~470番目に記載のアミノ酸配列を含む重鎖が挙げられる。
当該欠失体として、
配列表の配列番号52のアミノ酸番号20~470に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号36のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H1L1)、
配列表の配列番号56のアミノ酸番号20~470に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号40のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H2L2)、
配列表の配列番号52のアミノ酸番号20~470に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号44のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H1L3)、
配列表の配列番号56のアミノ酸番号20~470に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号48のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H2L4)、又は、
配列表の配列番号60のアミノ酸番号20~470に示されるアミノ酸配列からなる重鎖、及び、配列表の配列番号44のアミノ酸番号21~234に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖を含むことからなるヒト化抗体(H3L3)を例示できる。
【0162】
上記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含むことからなる抗体、又は、上記重鎖及び軽鎖の組合せを含むことからなる抗体のアミノ酸配列との同一性又は相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上である抗体もCLDN6への結合活性を有する限り、本発明の抗体に含まれる。
また、上記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の組合せを含むことからなる抗体、又は、上記重鎖及び軽鎖の組合せを含むことからなる抗体のCDRと同一のアミノ酸配列からなるCDRを有し、かつ該抗体のCDRのアミノ酸配列を除いたアミノ酸配列の同一性又は相同性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上である抗体もCLDN6への結合活性を有する限り、本発明の抗体に含まれる。
更に、重鎖又は軽鎖のアミノ酸配列に1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加されたアミノ酸配列を組み合わせることによっても、上記の各抗体と同等の生物活性を有する抗体を選択することが可能である。また、本明細書中におけるアミノ酸の置換としては保存的アミノ酸置換が好ましい(WO2013154206)。
保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸側鎖に関連のあるアミノ酸グループ内で生じる置換である。かかるアミノ酸置換は元のアミノ酸配列を有する物質の特性を低下させない範囲で行うのが好ましい。
二種類のアミノ酸配列間の相同性は、Blast algorithm version 2.2.2(Altschul, Stephen F., Thomas L.Madden, Alejandro A.Schaaffer, Jinghui Zhang, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J.Lipman(1997), 「Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs」, Nucleic Acids Res.25:3389-3402)のデフォルトパラメーターを使用することによって決定することができる。Blast algorithmは、インターネットでwww.ncbi.nlm.nih.gov/blastにアクセスすることによっても使用することができる。
【0163】
(3)ヒト抗体
本発明の抗体としては、さらに、CLDN6及び/又はCLDN9に結合する、ヒト抗体を挙げることができる。抗CLDN6及び/又はCLDN9ヒト抗体とは、ヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列のみを有するヒト抗体を意味する。抗CLDN6ヒト抗体は、公知の方法によって得ることができる(Nature Genetics(1997)16,p.133-143、Nucl.Acids Res.(1998)26, p.3447-3448、Animal Cell Technology:Basic and Applied Aspects, vol.10, p.69-73、Kluwer Academic Publishers, 1999.、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(2000) 97, p.722-727、Investigative Ophthalmology & Visual Science.(2002)43(7), p.2301-2308、Briefings in Functional Genomics and Proteomics(2002), 1(2), p.189-203、Ophthalmology(2002)109(3),p.427-431、WO92/01047、WO92/20791、WO93/06213、WO93/11236、WO93/19172、WO95/01438、WO95/15388、Annu.Rev.Immunol(1994)12, p.433-455、
Nature Biotechnology(2005)23(9), p.1105-1116)も知られている。
【0164】
以下に、本発明において使用される抗HER2抗体について説明する。
本発明の抗HER2抗体は、以下の特性を有する;
(1)以下の特性を有することを特徴とする抗HER2抗体;
(a)HER2に特異的に結合する。
(b)HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する。
(2)HER2の細胞外ドメインに結合する上記(1)に記載の抗体。
(3)前記抗体がモノクローナル抗体である上記(1)又は(2)に記載の抗体。
(4)抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活性を有する上記(1)~(3)のいずれかに記載の抗体。
(5)マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体又はヒト化モノクローナル抗体である、上記(1)~(4)のいずれかに記載の抗体。
(6)重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域であり、ADCC及び/又はCDC活性の低減をもたらす変異を含む、上記(1)~(3)及び(5)のいずれかに記載の抗体。
(7)重鎖定常領域がヒトIgG1の重鎖定常領域であり、EU Indexにより示される234位及び235位のロイシンがアラニンに置換されている、上記(6)に記載の抗体。
(8)配列番号65に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号64に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、上記(1)~(5)のいずれかに記載の抗体。
(9)配列番号75のアミノ酸番号20~139に記載のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域及び配列番号73のアミノ酸番号21~127に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む抗体である、上記(1)~(3)及び(5)~(7)のいずれかに記載の抗体。
(10)配列番号75のアミノ酸番号20~469に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号73のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、上記(1)~(3)、(5)~(7)及び(9)のいずれかに記載の抗体。
(11)配列番号77のアミノ酸番号20~469に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号76のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる抗体である、上記(1)~(3)、(5)~(7)及び(9)のいずれかに記載の抗体。
(12)重鎖カルボキシル末端において1又は2つのアミノ酸が欠失している、上記(1)~(11)のいずれかに記載の抗体。
(13)配列番号65のアミノ酸番号1~449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号64のアミノ酸番号1~214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、上記(1)~(5)、(8)及び(12)のいずれかに記載の抗体。
(14)配列番号75のアミノ酸番号20~468に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号73のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、上記(1)~(3)、(5)~(7)、(9)、(10)及び(12)のいずれかに記載の抗体。
(15)配列番号77のアミノ酸番号20~468に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号76のアミノ酸番号21~234に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなる、上記(1)~(3)、(5)~(7)、及び(9)、(11)及び(12)のいずれかに記載の抗体。
(16)上記(1)~(15)のいずれかに記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を培養する工程及び当該工程で得られた培養物から目的の抗体を採取する工程を含む当該抗体の製造方法によって得られる抗体。
なお、本願において、trastuzumabの重鎖定常領域(配列番号65)のEU Indexにより示される234位及び235位のロイシンがアラニンに置換されている抗体をTrastuzumab変異体又はTrastuzumab変異体2と呼ぶ。
【0165】
本発明の抗体には抗体の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、本発明の抗体に化学的又は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格への化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖の化学修飾体等が含まれる。生物学的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合型糖鎖付加、N末又はC末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化)されたもの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末にメチオニン残基が付加したもの等が含まれる。また、本発明の抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾体の意味に含まれる。このような本発明の抗体の修飾体は、抗体の安定性及び血中滞留性の改善、抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
また、本発明の抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコース化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修飾の調節技術としては、WO1999/54342、WO2000/61739、WO2002/31140、WO2007133855、WO2013120066等が知られているが、これらに限定されるものではない。本発明の抗体には当該糖鎖修飾を調節された抗体も含まれる。
かかる修飾には、抗体又はその機能性断片における任意の位置に、または所望の位置においても施されてもよく、1つ又は2つ以上の位置に同一又は2種以上の異なる修飾がなされていてもよい。
本発明において「抗体断片の修飾体」は「抗体の修飾体の断片」をもその意味に含むものである。
【0166】
抗体遺伝子を一旦単離した後、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。抗体遺伝子の具体例としては、本明細書に記載された抗体の重鎖配列等をコードする遺伝子、及び軽鎖配列等をコードする遺伝子を組み合わせたものを挙げることができる。宿主細胞を形質転換する際には、重鎖配列遺伝子等と軽鎖配列遺伝子等は、同一の発現ベクターに挿入されていることが可能であり、又別々の発現ベクターに挿入されていることも可能である。
真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真核微生物を用いることができる。特に動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Cell(1981)23,p.175-182、ATCC CRL-1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL-1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.(1980)77、 p.4126-4220)、FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を挙げることができる。
原核細胞を使用する場合は、例えば、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。
これらの細胞に目的とする抗体遺伝子を形質転換によって導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することによって抗体が得られる。当該培養においては抗体の配列によって収量が異なる場合があり、同等な結合活性を持つ抗体の中から収量を指標に医薬としての生産が容易なものを選別することが可能である。よって、本発明の抗体には、上記形質転換された宿主細胞を培養する工程、及び当該工程で得られた培養物から目的の抗体又は当該抗体の機能性断片を採取する工程を含むことを特徴とする当該抗体の製造方法によって得られる抗体も含まれる。
【0167】
上記抗体遺伝子は、好ましくは、以下の(a)~(e)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドを含むポリヌクレオチドである。
(a)B1もしくはC7抗体、chB1抗体、ヒト化抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、H3L3、 Trastuzumab及びその変異体のいずれか一つの抗体の重鎖アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと軽鎖アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの組み合わせ、
(b)B1もしくはC7抗体、chB1抗体、及び、ヒト化抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、H3L3、 Trastuzumab及びその変異体のいずれか一つの抗体のCDRH1~CDRH3を含む重鎖アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドとCDRL1~CDRL3を含む軽鎖アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの組み合わせ
(c)B1もしくはC7抗体、chB1抗体、及び、ヒト化抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、H3L3、 Trastuzumab及びその変異体のいずれか一つの抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列を含む重鎖アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと軽鎖可変領域のアミノ酸配列を含む軽鎖アミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの組み合わせ
(d)(a)~(c)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドに相補的なポリヌクレオチドからなるヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ、CDLN6又はHER2に結合する抗体のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、及び、
(e)(a)~(c)のいずれか一つに記載のポリヌクレオチドにおいて1~50個、1~45個、1~40個、1~35個、1~30個、1~25個、1~20個、1~15個、1~10個、1~8個、1~6個、1~5個、1~4個、1~3個、1若しくは2個、または1個のアミノ酸が置換、欠失、付加または挿入してなるポリペプチドのアミノ酸配列をコードし、且つ、CLDN6又はHER2に結合する抗体のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド。
本発明は、本発明の抗体もしくはその機能性断片又はその修飾体をコードするヌクレオチド、該遺伝子が挿入された組換えベクター、該遺伝子又は該ベクターが導入された細胞を含む。
また、本発明は、前記細胞を培養する工程、及び、その培養物から抗体もしくはその機能性断片又はその修飾体を回収する工程を含む、抗体もしくはその機能性断片又はその修飾体の製造方法も含む。
【0168】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失することが知られており(Journal of Chromatography A, 705:129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基がアミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry、360:75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞傷害作用等)には影響を及ぼさない。従って、本発明に係る抗体には、当該修飾を受けた抗体及び当該抗体の機能性断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2つのアミノ酸が欠失した欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残基がアミド化された重鎖)等も包含される。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からなる群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせたものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては2本の重鎖の双方でカルボキシル末端の1つのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる。
【0169】
得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常の蛋白質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばカラムクロマトグラフィー、フィルター濾過、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Strategies for Protein Purification and Characterization:A Laboratory Course Manual, Daniel R.Marshak et al. eds., Cold Spring Harbor Laboratory Press(1996);Antibodies:A Laboratory Manual.Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory(1988))が、これらに限定されるものではない。
【0170】
<N297糖鎖>
近年、不均一な抗体の糖タンパク質を、酵素反応等によってリモデリングし、官能基を有する糖鎖を均一に導入する方法が報告されている(ACS Chemical Biology 2012, 7, 110、ACS Medicinal Chemistry Letters 2016, 7, 1005、Bioconjugate Chemistry 2015, 26, 2233、Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 2361-2367、US2016361436)。
【0171】
本発明の糖鎖のリモデリングはまず加水分解酵素を利用して、蛋白質(抗体等)に付加されている不均一な糖鎖を末端のGlcNAcのみ残して切除し、GlcNAcが付加した均一な蛋白質部分を調製する(以下、「アクセプター」と言う)。次に、別途調製した任意の糖鎖を用意し(以下、「ドナー」と言う)、このアクセプターとドナーを糖転移酵素を用いて連結する。これにより、任意の糖鎖構造を持った均一な糖蛋白質を合成できる。
【0172】
本発明において、「糖鎖」とは、2つ以上の単糖がグリコシド結合により結合された構造単位を意味する。具体的な単糖や糖鎖を、例えば”GlcNAc-”、”MSG-”のように、略号として標記することがある。構造式中でこれらの略号で記載した場合、還元末端で別の構造単位とのグリコシド結合に帰属する酸素原子又は窒素原子は、特別な定義がある場合を除き、当該糖鎖を表す略号には含まれないものとして表示される。
【0173】
本発明において、糖鎖の基本単位となる単糖の記載は、別に定める場合を除き、便宜上、その環構造において、環を構成する酸素原子に結合し、且つ、水酸基(又はグリコシド結合に帰属する酸素原子)と直接結合した炭素原子を1位(シアル酸においてのみ2位)として表記する。実施例化合物の名称は、化学構造全体として付されたものであり、このルールは必ずしも適用されない。
【0174】
本発明において、糖鎖を記号(例えば、GLY、SG、MSG、GlcNAc等)として記載する場合、別に定義される場合を除き、還元末端の炭素までを、当該記号に含めるものとし、N-又はO-グリコシド結合に帰属するN又はOは、当該記号には含まれないものとする。
【0175】
本発明において、特別な記載がない限り、アミノ酸の側鎖において糖鎖と連結した場合の部分構造は、側鎖部分を括弧で表示し、例えば、「(SG-)Asn」のように表記するものとする。
【0176】
本発明の抗体―薬物コンジュゲートは、次式;
【化29】
【0177】
で示され、抗体Ab又はその機能性断片は、N297糖鎖又はリモデリングされたN297糖鎖からLに結合しており、好ましくは、Abのリモデリングされた糖鎖からLに結合している。
【0178】
本発明におけるAbの糖鎖は、N結合型糖鎖やO結合型糖鎖であり、好ましくは、N結合型糖鎖である。
N結合型糖鎖は、Nグリコシド結合、O結合型糖鎖はOグリコシド結合により、抗体のアミノ酸側鎖と結合している。
【0179】
IgGはその重鎖のFc領域における297番目のアスパラギン残基(以下、「Asn297又はN297」という)によく保存されたN結合型糖鎖を有しており、抗体分子の活性や動態等に寄与することが知られている(Biotechnol.Prog.、2012,28, 608-622、 Anal.Chem.,2013,85,715-736)。
【0180】
IgGの定常領域におけるアミノ酸配列はよく保存されており、Edelman et al.,(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A., Vol.63, No.1(May 15,1969),p.78-85)において、それぞれのアミノ酸がEu番号(Eu INDEX)で特定されている。例えば、Fc領域においてN結合型糖鎖が付加するAsn297は、Eu番号において297位に相当するものであり、分子の断片化や領域欠損によって実際のアミノ酸位置が変動した場合であってもEu番号で表示することによってアミノ酸が一義的に特定される。
【0181】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、好ましくは、抗体又はその機能性断片はそのAsn297の側鎖に結合する糖鎖(以下、「N297糖鎖」という)からLに結合しており、より好ましくは、抗体又はその機能性断片は前記N297糖鎖からLに結合しており、当該N297糖鎖がリモデリングされた糖鎖である。
【0182】
SGPはSialyl GlycoPeptideの略であり、N結合型複合糖鎖の代表的なものである。鶏卵の卵黄から、SGPは、例えば、WO2011/0278681に記載の方法に従って単離、精製することができる。また、SGPの精製品が市販(東京化成(株)、(株)伏見製薬所)されており、購入することができる。SGの糖鎖部分において還元末端のGlcNAcが一つ欠損した糖鎖(以下、「SG(10)」)のみからなるジシアロオクタサッカリド(東京化成(株))などが市販されている。
【0183】
本発明において、SG(10)のβ-Manの分岐鎖のいずれか一方のみで非還元末端のシアル酸が欠失した糖鎖構造をMSG(9)といい、分岐鎖の1-3糖鎖のみにシアル酸を有するものをMSG1、分岐鎖の1-6糖鎖のみにシアル酸を有するものをMSG2、とそれぞれ表記するものとする。
【0184】
本発明のリモデリングされた糖鎖は、N297-(Fuc)MSG1、N297-(Fuc)MSG2もしくはN297-(Fuc)MSG1とN297-(Fuc)MSG2の混合物、又はN297-(Fuc)SGであり、好ましくは、N297-(Fuc)MSG1、N297-(Fuc)MSG2又はN297-(Fuc)SGであり、より好ましくはN297-(Fuc)MSG1又はN297-(Fuc)MSG2である。
【0185】
N297-(Fuc)MSG1は以下の構造式又は配列式で示される。
【化30】
【0186】
【化31】
【0187】
上記式中、波線は抗体のAsn297に結合していることを示し、
L(PEG)は、*-(CH2CH2-O)3-CH2CH2-NH-を示し、右端のアミノ基がN297糖鎖のβ-Manの分岐鎖の1-3鎖側の非還元末端のシアル酸の2位のカルボン酸とアミド結合を介して結合しており、左端のアステリスク*は、前記リンカーLにおけるLbの1,2,3-トリアゾール環上の1位又は3位の窒素原子と結合していることを示し、n5は2~10の整数であり、好ましくは、2~5の整数である。
【0188】
N297-(Fuc)MSG2は以下の構造式又は配列式で示される。
【化32】
【0189】
【化33】
【0190】
上記式中、波線は抗体のAsn297に結合していることを示し、
L(PEG)は、*-(CH2CH2-O)3-CH2CH2-NH-を示し、右端のアミノ基がN297糖鎖のβ-Manの分岐鎖の1-6鎖側の非還元末端のシアル酸の2位のカルボン酸とアミド結合を介して結合しており、左端のアステリスク*は、前記リンカーLにおけるLbの1,2,3-トリアゾール環上の1位又は3位の窒素原子と結合していることを示し、n5は2~10の整数であり、好ましくは、2~5の整数である。
【0191】
N297-(Fuc)SGは以下の構造式又は配列式で示される。
【化34】
【0192】
【化35】
【0193】
上記式中、波線は抗体のAsn297に結合していることを示し、
L(PEG)は、*-(CH2CH2-O)3-CH2CH2-NH-を示し、右端のアミノ基がN297糖鎖のβ-Manの分岐鎖の1-3鎖側及び1-6鎖側の両方の非還元末端のシアル酸の2位のカルボン酸とアミド結合していることを示し、左端のアステリスク*は、前記リンカーLにおけるLbの1,2,3-トリアゾール環上の1位又は3位の窒素原子と結合していることを示し、n5は2~10の整数であり、好ましくは、2~5の整数である。
【0194】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体のN297糖鎖が、N297-(Fuc)MSG1もしくはN297-(Fuc)MSG2又はそれらの混合物である場合、抗体は二量体であるため、抗体―薬物コンジュゲートは2つの薬物リンカー(-L-D)が結合された分子(上記m1=1)となる(図1参照)。
例えば、実施例19:ADC1はN297糖鎖がN297-(Fuc)MSG1の場合である。
【0195】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体のN297糖鎖が、N297-(Fuc)SGである場合、抗体は二量体であるため、抗体-薬物コンジュゲートは4つの薬物リンカー(-L-D)が結合された分子(上記m1=2)となる。
【0196】
N297糖鎖は、好ましくは、N297-(Fuc)MSG1もしくはN297-(Fuc)MSG2又はN297-(Fuc)SGであり、より好ましくは、N297-(Fuc)MSG1もしくはN297-(Fuc)MSG2であり、最も好ましくは、N297-(Fuc)MSG1である。
本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体のN297糖鎖がN297-(Fuc)MSG1もしくはN297-(Fuc)MSG2又はN297-(Fuc)SGである場合、均一な品質のADCを取得することができる。
【0197】
本発明は、以下i)~iii)の工程を含む糖鎖リモデリング抗体又は該抗体の機能性断片の製造方法を提供する。
i)上述の宿主細胞(例えば、動物細胞(CHO細胞等))を培養し、得られた培養物から目的の抗体を採取する工程、
ii)工程i)で得られた抗体を加水分解酵素で処理し、N297糖鎖が(Fucα1,6)GlcNAcである抗体((Fucα1,6)GlcNAc-抗体)を製造する工程(図3A)、
好ましくは、更に当該反応液を、ハイドロキシアパタイトカラムによる精製を含む工程により(Fucα1,6)GlcNAc-抗体を精製する工程、及び、
iii)MSG(9)又はSG(10)のシアル酸の2位のカルボン酸のカルボニル基にアジド基を有するPEGリンカー-(N3-L(PEG))を導入し、且つ、還元末端をオキサゾリン化した糖鎖ドナー分子と、糖転移酵素存在下で(Fucα1,6)GlcNAc-抗体を反応させ、シアル酸にアジド基が導入された糖鎖リモデリング抗体を合成する工程。
また、かかる製造方法により得られた糖鎖リモデリング抗体もしくはその機能性断片、又はそれらの修飾体も本発明に含まれる。
【0198】
前記本抗体―薬物コンジュゲートの製造中間体はDBCO(Dibenzocyclooctyne)等のアジド基と反応するアルキン構造を有する(実施例2-1、化合物3-14参照)。従って、当該製造中間体を前記i)~iii)の工程で得られる糖鎖のシアル酸にアジド基を有するPEGリンカーが導入されたMSG1型、MSG2型又はSG型糖鎖リモデリング抗体又は該抗体の機能性断片と反応させることで、本発明の抗体―薬物コンジュゲートを製造することができる。
【0199】
本発明のN297糖鎖において、還元末端のフコース付加したGlcNAc-(Fucα1,6)GlcNAc)は、動物細胞で産生された抗体に由来し、それより非還元末端側の糖鎖は、上述したMSG(MSG1、MSG2)又はSGと同様の糖鎖構造にリモデリングされたものが好ましい。いずれもその非還元末端のシアル酸2位に結合したカルボン酸を利用して、L(PEG)と結合している。
このようなMSG(MSG1、MSG2)又はSG型N297糖鎖を有する糖鎖リモデリング抗体は、例えばWO2013/120066などに記載の方法に準じて、図3に示すような方法で製造することができる。公知の方法に準じて宿主として動物細胞を用いて、遺伝子組み換え蛋白質として抗体を産生させた場合(上記工程i)、N297糖鎖は、基本構造としてフコース付加したN結合型糖鎖構造を有するが、非還元末端の構造や構成糖に多様な修飾がされた様々な構造からなる糖鎖を有する抗体またはその断片の混合物として得られる(図3AのIV)。このように動物細胞で産生された抗体は、EndoSなどの加水分解酵素で処理することによって、還元末端のキトビオース構造のGlcNAcβ1-4GlcNAcの間のグリコシド結合が加水分解され、N297糖鎖として(Fucα1,6)GlcNAcのみを有する単一の糖鎖構造を有する抗体分子(「(Fucα1,6)GlcNAc-抗体」という、図2のA参照)が得られる(図3A)(上記工程ii))。
【0200】
N297糖鎖の加水分解反応に用いる酵素としては、Endo S又はその加水分解活性を保持した変異酵素などを用いることができる。
【0201】
上記の加水分解反応により得られた(Fucα1,6)GlcNAc-抗体を糖鎖アクセプター分子として、EndoS D233Q又はEndoS D233Q/Q303L変異体のような糖転移酵素(WO2017010559等)を用いてMSG(MSG1、MSG2)又はSG型糖鎖ドナー分子と反応させることによって、上述の構造からなるMSG(MSG1、MSG2)又はSG型N297糖鎖を有する抗体(図2のB参照)を得ることができる(図3B)(上記工程iii)-1、iii)-2)。
【0202】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体1分子あたりの薬物結合数m1が1の場合、糖鎖としてMSG(MSG1、MSG2)を有する糖鎖ドナー分子を採用する。このような糖鎖は、市販のmonosialo-Asn free(1S2G/1G2S-10NC-Asn、(株)糖鎖工学研究所、以下、「(MSG-)Asn」と言う)を原料に実施例3に記載の方法に準じて(MSG-)Asn1又は(MSG2-)Asnを分離して採用することもできるし、分離せずに混合物として採用することもできる。
【0203】
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体1分子あたりの薬物結合数m1が2の場合、この糖転移反応には糖鎖としてSG(10)を有する糖鎖ドナー分子を用いる。このようなSG(10)糖鎖は、例えばSGPから加水分解等によって取得されたものを用いても良く、市販のジシアロオクタサッカリド(東京化成工業(株))のようなSG(10)糖鎖を用いてもよい。
【0204】
ドナー分子に含まれるMSG(MSG1、MSG2)又はSG型糖鎖はそのシアル酸の2位にアジド基を含むPEGリンカー(N3-L(PEG))を有する。
【0205】
ドナー分子に含まれるMSG(MSG1、MSG2)又はSG型糖鎖の還元末端のGlcNAcは、例えば2-クロロ-1,3-ジメチル-1H-ベンズイミダゾール-3-イウム-クロライド処理によるオキサゾリン化のような形で活性化されたものを用いることが好ましい(J.Org.Chem.,2009,74(5),2210-2212)。
【0206】
糖転移反応に用いる酵素(糖転移酵素)としては、N297糖鎖に複合型糖鎖を転移させる活性を有するものであれば様々なものが採用できるが、好ましいものはEndoSの233番目のAspをGlnに置換することで加水分解反応を抑制した改変体であるEndoS D233Qである。EndoS D233Qを用いた糖転移反応については、WO2013/120066などに記載されている。また、EndoS D233Qに対して、さらに変異を加えたEndoS D233Q/Q303Lのような改変体酵素(WO2017010559)を利用してもよい。
【0207】
抗体の糖鎖リモデリング(糖加水分解、及び糖鎖転移反応)後の抗体の精製操作は、反応に使用した低分子化合物及び酵素との分離を目的とし、このような精製には、通常、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどが使用されるが、更にハイドロキシアパタイトカラムによる追加精製を行ってもよい。すなわち、本発明は、抗体の糖加水分解後の反応液からの中間体の精製工程において、更にハイドロキシアパタイトカラムによる精製工程を含む、抗体-薬物コンジュゲートの製造方法を提供する。糖鎖リモデリング報告例(JACS. 2012, 134,12308-12318.、Angew. Chem. Int. Ed. 2016, 55, 2361-2367)に従うと、抗体を加水分解酵素で処理した反応液をプロテインAカラム(アフィニティクロマトグラフィーカラム)で精製するのみであるが、この精製方法では、加水分解酵素(EndoS等)が完全には除去できず、残留酵素が影響して、次の糖転移反応に影響を与えることが判明した。ここで、精製法を検討した結果、抗体を加水分解酵素で処理した反応液をプロテインAカラム、ハイドロキシアパタイトカラム(CHTカラム、Bio-Rad Laboratories, Inc.)の順に精製することによって、残留酵素の影響なく、次の糖鎖転移反応の反応効率が向上した。
【0208】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、最も好ましくは、次の群から選ばれる1の抗体-薬物コンジュゲートである。
【0209】
【化36】
【0210】
【化37】
【化38】
【0211】
【化39】
【0212】
上記で示されるそれぞれの構造式において、m1は1又は2の整数(好ましくは、m1は1の整数)であることを示し、
抗体Abは、抗CLDN6抗体、抗CLDN9抗体、抗CLDN6/CLDN9抗体、抗HER2抗体、抗HER3抗体、抗DLL3抗体、抗FAP抗体、抗CDH11抗体、抗A33抗体、抗CanAg抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD25抗体、抗CD30抗体、抗CD33抗体、抗CD37抗体、抗CD56抗体、抗CD70抗体、抗CD98抗体、抗B7-H3抗体、抗TROP2抗体、抗CEA抗体、抗Cripto抗体、抗EphA2抗体、抗FGFR2抗体、抗G250抗体、抗MUC1抗体、抗GPNMB抗体、抗Integrin抗体、抗PSMA抗体、抗Tenascin-C抗体、抗SLC44A4抗体、抗Mesothelin抗体、抗EGFR抗体、抗5T4抗体、抗LRRC15抗体、抗DR5抗体、抗CDH3抗体、抗PDPN抗体、又は抗CD123抗体であり(好ましくは、前記抗CLDN6抗体または抗HER2抗体)であり、
N297糖鎖は、N297-(Fuc)MSG1、N297-(Fuc)MSG2もしくはそれらの混合物又は N297-(Fuc)SG(好ましくは、N297-(Fuc)MSG1)のいずれか一つであることを示し、
L(PEG)は、*-(CH2CH2-O)3-CH2CH2-NH-であることを示し、右端のアミノ基がN297糖鎖のβ-Manの分岐鎖の1-3鎖側又は/及び1-6鎖側(好ましくは、1-3鎖側)の非還元末端のシアル酸の2位のカルボン酸とアミド結合を介して結合しており、左端のアステリスクは、前記構造式中のトリアゾール環上の1位又は3位の窒素原子と結合していることを示す。
便宜上、上記最も好ましい抗体-薬物コンジュゲートとして、コンジュゲート1分子中に「N297糖鎖がL中のLbのトリアゾール環上の1位の窒素原子と結合した『-(N297糖鎖)-L-D』(『(N297糖鎖)-(N1Lb)L-D』)を2又は4個(m2=1又は2)有するか、「3位の窒素原子と結合した『-(N297糖鎖)-L-D』(『(N297糖鎖)-(N3Lb)L-D』)」を2又は4個(m2=1又は2)有する構造を記載しているが、コンジュゲート1分子中に『(N297糖鎖)-(N1Lb)L-D』(m2=1の場合、1個、m2=2の場合、1,2,3個)及び『(N297糖鎖)-(N3Lb)L-D』(m2=1の場合、1個、m2=2の場合、3,2,1個)の両方を有する抗体-薬物コンジュゲートも含む。すなわち、コンジュゲート1分子中に『(N297糖鎖)-(N1Lb)L-D』か『(N297糖鎖)- (N3Lb)L-D』のいずれか一方のみ、又は、その両方が混在している。
【0213】
本発明の抗体-薬物コンジュゲート、その遊離薬物もしくはその製造中間体には、立体異性体あるいは不斉炭素原子に由来する光学異性体、幾何異性体、互変異性体又はd体、l体、アトロプ異性体等の光学異性体が存在することもあるが、これらの異性体、光学異性体及びこれらの混合物のいずれも本発明に含まれる。
【0214】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートは、強い腫瘍活性(in vivo抗腫瘍活性、in vitro抗細胞活性)、良好な体内動態及び物性を示し、かつ安全性が高いため、医薬品として有用である。
【0215】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、抗体1分子への薬物の結合数は、その有効性、安全性に影響する重要因子である。抗体-薬物コンジュゲートの製造は、薬物の結合数が一定の数となるよう、反応させる原料・試薬の使用量等の反応条件を規定して実施されるが、低分子化合物の化学反応とは異なり、異なる数の薬物が結合した混合物として得られるのが通常である。抗体1分子への薬物の結合数は平均値、すなわち、平均薬物結合数(DAR:Drug to Antibody Ratio)として特定することができる。抗体分子へのピロロベンゾジアゼピン誘導体の結合数はコントロール可能であり、1抗体あたりの平均薬物結合数(DAR)として、1から10の範囲のピロロベンゾジアゼピン誘導体を結合させることができるが、好ましくは1から8個であり、より好ましくは1から5個である。
本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、抗体が、抗体のリモデリングされた糖鎖からLに結合している場合、抗体薬物コンジュゲートにおける抗体1分子あたりの薬物結合数m2は1または2の整数である。当該糖鎖がN297糖鎖であり、糖鎖がN297-(Fuc)MSG1、N297-(Fuc)MSG2又はN297-(Fuc)MSG1とN297-(Fuc)MSG2の混合物の場合、m2は1であり、DARは1~3の範囲(好ましくは、1.0~2.5の範囲、より好ましくは、1.2~2.2もしくは1.6~2.2の範囲)である。N297糖鎖が、N297-(Fuc)SGの場合、m2は2であり、DARは3~5の範囲(好ましくは、3.2~4.8の範囲であり、より好ましくは、3.5~4.2の範囲)である。
なお、当業者であれば本願の実施例の記載から抗体に必要な数の薬物を結合させる反応を設計することができ、ピロロベンゾジアゼピン誘導体の結合数をコントロールした抗体を取得することができる。
【0216】
なお、本発明の抗体-薬物コンジュゲート、遊離薬物又は製造中間体は、大気中に放置したり、又は再結晶することにより、水分を吸収し、吸着水がついたり、水和物になる場合があり、そのような水を含む化合物及び塩も本発明に包含される。
【0217】
本発明の抗体-薬物コンジュゲート、遊離薬物又は製造中間体が、アミノ基等の塩基性基を有する場合、所望により医薬的に許容される塩とすることができる。そのような塩としては、例えば塩酸塩、ヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩等の低級アルカンスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩等のアリ-ルスルホン酸塩;ギ酸、酢酸、りんご酸、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及びオルニチン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸塩を挙げることができる。
【0218】
本発明の抗体-薬物コンジュゲート、遊離薬物又は製造中間体が、カルボキシ基等の酸性基を有する場合、一般的に塩基付加塩を形成することが可能である。医薬的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩等の無機塩;ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-N-(2-フェニルエトキシ)アミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩等の有機アミン塩、等を挙げることができる。
【0219】
本発明の抗体-薬物コンジュゲート、遊離薬物又は製造中間体は、空気中の水分を吸収すること等により水和物として存在することもある。本発明の溶媒和物としては、医薬的に許容し得るものであれば特に限定されないが、具体的には、水和物、エタノール和物、2-プロパノール和物等が好ましい。また、本発明の抗体-薬物コンジュゲート、遊離薬物又は製造中間体中に窒素原子が存在する場合にはN-オキシド体となっていてもよく、これら溶媒和物及びN-オキシド体も本発明の範囲に含まれる。
【0220】
また、本発明には、種々の放射性または非放射性同位体でラベルされた化合物も包含される。本発明の抗体-薬物コンジュゲート、遊離薬物又は製造中間体を構成する原子の1以上に、原子同位体の非天然割合も含有し得る。原子同位体としては、例えば、重水素(2H)、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)等を挙げることができる。また、本発明化合物は、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)または炭素-14(14C)のような放射性同位体で放射性標識され得る。放射性標識された化合物は、治療または予防剤、研究試薬、例えば、アッセイ試薬、及び診断剤、例えば、インビボ画像診断剤として有用である。本発明の抗体-薬物コンジュゲートの全ての同位体変異種は、放射性であると否とを問わず、本発明の範囲に包含される。[製造方法]
【0221】
R法:抗体の調製
糖鎖リモデリング抗体、例えばWO2013/120066などに記載の方法に準じて、図3に示すような方法で製造することができる。
【0222】
上記の糖鎖リモデリング抗体の調製において、抗体水溶液の濃縮、濃度測定、バッファー交換は以下の共通操作A乃至Cに従って行うことができる。
(共通操作A:抗体水溶液の濃縮)
Amicon Ultra(30,000乃至50,000 MWCO,Millipore Co.)の容器内に抗体又は抗体-薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X-15R,Beckman Coulter,Inc.)を用いた遠心操作(2000G乃至4000Gで5乃至20分間遠心)にて、抗体および後述する抗体-薬物コンジュゲート溶液を濃縮した。
(共通操作B:抗体の濃度測定)
UV測定器(Nanodrop 1000, Thermo Fisher Scientific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った。その際に、抗体ごとに異なる280nm吸光係数(1.3mLmg-1cm-1乃至1.8mLmg-1cm-1)を用いた。
(共通操作C:抗体のバッファー交換)
抗体水溶液は緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)、リン酸緩衝液(pH6.0)等)を加え共通操作Aを用いて濃縮した。この操作を数回行った後、共通操作Bを用いて抗体濃度の測定を行い、緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)、リン酸緩衝液(pH6.0)等)を用いて10mg/mLに抗体濃度を調整した。
【0223】
S法:コンジュゲーション
本製造法は、上述の糖鎖リモデリング抗体と製造中間体(2)をSPAAC反応(strain-promoted alkyne azide cycloaddition: JACS. 2004, 126,15046-15047)により結合させ、抗体-薬物コンジュゲートを製造する方法である。
【0224】
【化40】
【0225】
式中Abは糖鎖リモデリング抗体を示し、
La’、Lp’、B’は、La、Lp、Bと同義であり、
Jは、以下で示されるいずれかの構造式を示し、
式中、アステリスクはLa’と結合していることを示す。
【0226】
【化41】
【0227】
J-La’-Lp’-NH-B’-CH2-O(C=O)-PBDは実施例2-1~2-6に記載の方法等により合成することができる。
【0228】
抗体Abの緩衝溶液(酢酸ナトリウム溶液、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム溶液等またはそれらの混合物)と、化合物(2)を適当な溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピリドン(NMP)、プロピレングリコール(PG)等またはそれらの混合物)に溶解させた溶液を混合することで、SPAAC反応は進行する。
抗体1モルに対し、化合物(2)は2モルから過剰モル、好ましくは1モルから30モルであり、有機溶媒の比率は、抗体の緩衝液に対し1乃至200%v/vが好ましい。反応温度は0℃乃至37℃、好ましくは10℃から25℃であり、反応時間は1から150時間、好ましくは6時間から100時間である。反応時のpHは5乃至9が好ましい。
【0229】
抗体-薬物コンジュゲートは、前述の共通操作A乃至Cおよび後述の共通操作D乃至Fによってバッファー交換、精製、抗体濃度、及び抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定を行い、抗体-薬物コンジュゲート化合物(ADC)の同定を行うことができる。
【0230】
共通操作D:抗体-薬物コンジュゲートの精製
市販のSorbitol(5%)を含む酢酸緩衝液(10mM,pH5.5;本明細書でABSと称する)でNAP-25カラムを平衡化させた。このNAP-25カラムに、抗体-薬物コンジュゲート反応水溶液(約1.5~2.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ、緩衝液で溶出させるゲルろ過精製操作を計2乃至3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーやジメチルスルホキシド、プロピレングリコールを除いた抗体-薬物コンジュゲートを得た。必要に応じて、共通操作AおよびCにより抗体-薬物コンジュゲート溶液の濃度を調製した。
共通操作E:抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度の測定
抗体-薬物コンジュゲートにおける結合薬物濃度は、下記に示すランベルト・ベールの法則を用いて、算出することができる。
以下にランベルト・ベールの法則を用いた式(I)を示す。
【0231】
【数1】
【0232】
ここで、A280は抗体-薬物コンジュゲート水溶液の280nmにおける吸光度を示し、ε280、は抗体-薬物コンジュゲートの280nmにおけるモル吸光係数を示し、C(mol・L-1)は抗体-薬物コンジュゲートのモル濃度を示す。
上記式(I)より抗体-薬物コンジュゲートのモル濃度C(mol・L-1)は以下の式(II)で求められる。
【0233】
【数2】
【0234】
さらに両辺に抗体-薬物コンジュゲートのモル質量MW(g・mol-1)を掛けることで、抗体-薬物コンジュゲートの重量濃度C’(mg・mL-1)を求めることができる(式(III))。
【0235】
【数3】
【0236】
以下に、上記式に用いて本実施例に適用した各値について記載する。
吸光度A280は、抗体-薬物コンジュゲート水溶液の280nmにおけるUV吸光度の実測値を用いた。モル質量MW(g・mol-1)は抗体のアミノ酸配列からより求められる抗体分子量の計算推定値を抗体-薬物コンジュゲートのモル質量の近似値として用いている。光路長l(cm)は1cmで測定した。
抗体薬物コンジュゲートのモル吸光係数ε280は、以下の式(IV)によって求めることができる。
【0237】
【数4】
【0238】
ここで、εAb,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εDL,280は280nmにおける薬物のモル吸光係数を示す。
εAb,280は抗体のアミノ酸配列から、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって推定することができる。実施例において、Trastuzumabのモル吸光係数は、εAb,280=215400(計算推定値)を用いた。CLDN6抗体のモル吸光係数は、εAb,280=221340(計算推定値)、TROP2抗体のモル吸光係数は、εAb,280=226400(計算推定値)、CD98抗体のモル吸光係数は、εAb,280=240400(計算推定値)、LPS抗体のモル吸光係数は、εAb,280=230300(計算推定値)を、Trastuzumab変異体のモル吸光係数は、εAb,280=215057(計算推定値)を用いた。
εDL,280は、都度UV測定で得た実測値より算出したものを使用した。すなわち、コンジュゲート前駆体(薬物)をあるモル濃度に溶解させた溶液の吸光度を測定し、ランベルト・ベールの法則、式(I)を適用することで得られる値を使用した。
【0239】
(共通操作F:抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定)
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数は、以下の方法を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によって求めることができる。
[F-1.HPLC分析用サンプルの調製(抗体-薬物コンジュゲートの還元)]
抗体-薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合する。混合物を37℃で30分インキュベートすることで、抗体-薬物コンジュゲートのL鎖及びH鎖間のジスルフィド結合を切断したサンプルを、HPLC分析に用いる。
【0240】
[F-2.HPLC分析]
HPLC分析を、下記の測定条件にて行う。
HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent Technologies)
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm、329nm)
カラム:BEH Phenyl(2.1×50mm、1.7μm、Waters Acquity)
カラム温度:75℃
移動相A:0.1%トリフルオロ酢酸(TFA),15%イソプロピルアルコール水溶液
移動相B:0.075%TFA、15%イソプロピルアルコールアセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:14%-36%(0分-15分)、36%-80%(15-17分)、80%-14%(17分―17.1分)、14%-14%(17.1分―23分)
サンプル注入量:5μL
【0241】
[F-3.データ解析]
〔F-3-1〕薬物の結合していない抗体のH鎖(H0)に対して、薬物の結合したH鎖(薬物が一つ結合したH鎖:H1、薬物が二つ結合したH鎖:H2)は、結合した薬物の数に比例して疎水性が増して保持時間が大きくなることから、L0、H0、H1、H2、の順に溶出される。L0及びH0との保持時間比較により検出ピークをL0、H0、H1、H2のいずれかに割り当てることができる。また薬物の結合は、薬物の特長的な329nmの波長吸収でも確認できる。
〔F-3-2〕薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、L鎖、H鎖及び薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値の補正を行う。
【0242】
【数5】
【0243】
ここで、各抗体におけるL鎖及びH鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体のL鎖及びH鎖のアミノ酸配列から推定される値を用いることができる。Trastuzumabの場合、そのアミノ酸配列に従ってH鎖のモル吸光係数として81290を推定値として用いた。同様に、CLDN6抗体の場合H鎖のモル吸光係数として77280を、TROP2抗体の場合H鎖のモル吸光係数として68990を、CD98抗体の場合H鎖のモル吸光係数として78500を、LPS抗体の場合H鎖のモル吸光係数として77470を、Trastuzumab変異体の場合H鎖のモル吸光係数として81488を、薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、コンジュゲート前駆体である化合物(1)の実測のモル吸光係数(280nm)を用いた。
【0244】
〔F-3-3〕 ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って計算する。
【0245】
【数6】
【0246】
〔F-3-4〕 抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数を、下式に従って計算する。
【0247】
【数7】
【0248】
2.PARP阻害剤
本発明において「PARP阻害剤」とは、PARP(ポリアデノシン5’ニリン酸(ADP)リボースポリメラーゼ)を阻害することにより、一本鎖切断の修復を妨げる機能を有する薬剤である(Benafif S, et al., Onco. Targets Ther. (2015) 8, 519-528.)(Fong PC, et al., N. Engl. J. Med. (2009) 361, 123-134.)(Gelmon KA, et al., Lancet Oncol. (2011) 12, 852-861.)。PARPには複数のサブタイプが存在するが、本発明におけるPARP阻害剤は、好適には、PARP-1及びPARP-2を阻害する。本発明におけるPARP阻害剤は、PARPを阻害することにより、一本鎖切断の修復を妨げる機能を有する薬剤であれば限定はされないが、好適には、オラパリブ(Olaparib)(Menear KA, et al., J. Med. Chem. (2008) 51, 6581-6591.)、ルカパリブ(Rucaparib)(Gillmore AT, et al., Org. Process Res. Dev. (2012) 16, 1897-1904.)、ニラパリブ(Niraparib)(Jones P, et al., J. Med. Chem. (2009) 52, 7170-7185.)、タラゾパリブ(Talazoparib)(Shen Y, et al., Clin. Cancer Res. (2013) 19(18), 5003-15.)、ベリパリブ(Veliparib)、パミパリブ(Pamiparib)、及びフルゾパリブ(Fluzoparib)、並びにそれらの薬理上許容される塩を挙げることができ、より好適には、オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、及びタラゾパリブ、並びにそれらの薬理上許容される塩を挙げることができる。
【0249】
本発明におけるPARP阻害剤の「薬理上許容される塩」は、酸付加塩と塩基付加塩のどちらであってもよいが、好適には酸付加塩であり、例えば、カンシル酸塩(カンファースルホン酸塩)、メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、及びエタンスルホン酸塩等の低級アルカンスルホン酸塩;トシル酸塩(p-トルエンスルホン酸塩)、及びベンゼンスルホン酸塩等のアリールスルホン酸塩;リン酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、及び硫酸塩等の無機酸塩;塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、及びフッ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩;酢酸塩、りんご酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、及びマレイン酸塩等の有機酸塩;並びにオルニチン酸塩、グルタミン酸塩、及びアスパラギン酸塩等のアミノ酸塩を挙げることができる。
【0250】
また、PARP阻害剤及びその薬理上許容される塩は、溶媒和物として存在することもあり、これらの溶媒和物も本発明におけるPARP阻害剤及びその薬理上許容される塩に含まれる。
【0251】
3.医薬
以下、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲートとPARP阻害剤が組み合わされて投与されることを特徴とする医薬組成物及び治療方法(予防も含む)について説明する。
【0252】
本発明の医薬組成物及び治療方法は、抗体-薬物コンジュゲートと、PARP阻害剤が、それぞれ別異の製剤に有効成分として含有され、同時に又は異なる時間に投与されることを特徴とするものであってもよいし、抗体-薬物コンジュゲートと、PARP阻害剤が、単一の製剤に有効成分として含有され、投与されることを特徴とするものであってもよい。
【0253】
本発明の医薬組成物及び治療方法は、がんの治療のために使用することができ、好適には、乳がん、胃がん(胃腺がんと呼ぶこともある)、大腸がん(結腸直腸がんと呼ぶこともあり、結腸がん及び直腸がんを含む)、肺がん(小細胞肺がん及び非小細胞肺がんを含む)、食道がん、頭頚部がん(唾液腺がん及び咽頭がんを含む)、胃食道接合部腺がん、胆道がん(胆管がんを含む)、ページェット病、膵臓がん、卵巣がん、子宮がん肉腫、尿路上皮がん、前立腺がん、膀胱がん、胃腸間質腫瘍、消化管間質腫瘍、子宮頸がん、扁平上皮がん、腹膜がん、肝臓がん、肝細胞がん、子宮体がん、腎臓がん、外陰部がん、甲状腺がん、陰茎がん、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞腫、骨髄腫、多型神経膠芽腫、骨肉腫、及びメラノーマからなる群より選択される少なくとも一つの治療のために使用することができ、より好適には、乳がん、胃がん、大腸がん、肺がん、食道がん、唾液腺がん、胃食道接合部腺がん、胆道がん、ページェット病、膵臓がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、及び子宮がん肉腫からなる群より選択される少なくとも一つのがんの治療のために使用することができる。
【0254】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートのうち、特にどのような抗体を有する抗体-薬物コンジュゲートが好適であるかは、がんの種類や、腫瘍マーカーを検査することにより、決定することができる。例えば、本発明の抗CLDN6抗体-薬物コンジュゲートが適用されるがんの種類としては、肺がん(非小細胞肺がん、小細胞肺がん等)、腎がん、尿路上皮がん、大腸がん、前立腺がん、多形神経膠芽腫、卵巣がん(表層上皮性腫瘍、間質性腫瘍、胚細胞腫瘍等)、膵がん、乳がん、メラノーマ、肝がん、膀胱がん、胃がん、食道がん等、子宮体がん、精巣がん(セミノーマ、非セミノーマ)、子宮頸がん、胎盤絨毛がん、脳腫瘍、頭頚部がんならびにそれらの転移性形態等、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートが適用されるがんの種類としては、肺がん、尿路上皮がん、大腸がん、前立腺がん、卵巣がん、膵がん、乳がん、膀胱がん、胃がん、胃腸間質腫瘍、子宮頸がん、食道がん、扁平上皮がん、腹膜がん、肝臓がん、肝細胞がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん、外陰部がん、甲状腺がん、又は陰茎がんならびにそれらの転移性形態等を挙げることができるが、治療対象となるがん細胞において抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が認識できる蛋白質を発現しているがん細胞であればこれらには限定されることはない。
【0255】
いくつかの実施形態において、がんは、相同的組換え(HR)依存的DNA二本鎖破壊(DSB)修復経路に非依存的である。DSB修復経路に非依存的とは、DSB修復経路が野生型か変異型(HRの機能が欠損又は低減している)のいずれでも良いことを意味する。HRにおいて機能し得る遺伝子としては、BRCA1、BRCA2、BLM、RBBP8、DNAポリメラーゼδ(POLD1~4)、POLH、DNA2、EME1、ERCC1、EXO1、FANCM、GEN1、MRE11、MUS81、NBS1、PALB2、PCNA、RAD50、RAD51、RAD51AP1、RAD51B、RAD51C、RAD51D、RAD54、RAD54B、RM11、RM12、RPA、RTEL1、SLX1、SLX2、SLX4、TOP2A、XPF、XRCC2、XRCC3等が挙げられる。好ましくは、がんは、BRCA1又はBRCA2に非依存的である。
【0256】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートとPARP阻害剤は組み合わせて投与されることにより、DSB修復経路の変異の有無にかかわらず、細胞増殖抑制効果を示す。
【0257】
ある種の実施形態において、がんはPARP阻害剤に非感受性であるか、がんはPARP阻害剤に非感受性かつ相同的組換え(HR)依存的DNA二本鎖破壊(DSB)修復経路に非依存的である。
【0258】
他の実施形態において、DNAマイナーグルーブにおいてクロスリンクを形成しないPBD誘導体を含む抗体-薬物コンジュゲートとPARP阻害剤を組み合わせて投与することを特徴とするがん治療のための医薬組成物又はがんの治療方法であって、
がんはPARP阻害剤に非感受性であるか、相同的組換え(HR)依存的DNA二本鎖破壊(DSB)修復経路に非依存的であるか、PARP阻害剤に非感受性かつ相同的組換え(HR)依存的DNA二本鎖破壊(DSB)修復経路に非依存的である。
【0259】
本発明の医薬組成物及び治療方法は、哺乳動物に対して好適に使用することができるが、より好適にはヒトに対して使用することができる。
【0260】
本発明の医薬組成物及び治療方法の抗腫瘍効果は、例えば、がん細胞を被検動物に移植したモデルを作成し、本発明の医薬組成物及び治療方法を施すことによる腫瘍体積の減少や延命効果を測定することにより確認することができる。そして、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲート及びPARP阻害剤それぞれの単独投与での抗腫瘍効果と比較することにより、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲート及びPARP阻害剤の併用効果を確認することができる。
【0261】
また、本発明の医薬組成物及び治療方法の抗腫瘍効果は、臨床試験において、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST)評価法、WHO評価法、Macdonald評価法、体重測定、及びその他の手法により確認することができ、完全奏効(Complete response;CR)、部分奏効(Partial response;PR)、進行(Progressive disease;PD)、奏効率(Objective Response Rate;ORR)、奏効期間(Duration of response;DoR)、無憎悪生存期間(Progression-Free Survival;PFS)、全生存期間(Overall Survival;OS)等の指標により判定することができる。
上述の方法により、本発明の医薬組成物及び治療方法の抗腫瘍効果について、既存のがん治療用医薬組成物及び治療方法に対する優位性を確認することができる。
【0262】
本発明の医薬組成物及び治療方法は、がん細胞の成長を遅らせ、増殖を抑え、さらにはがん細胞を破壊することができる。これらの作用によって、がん患者において、がんによる症状からの解放や、QOLの改善を達成でき、がん患者の生命を保って治療効果が達成される。がん細胞の破壊には至らない場合であっても、がん細胞の増殖の抑制やコントロールによってがん患者においてより高いQOLを達成しつつより長期の生存を達成させることができる。
【0263】
本発明の医薬組成物は、患者に対しては全身療法として適用する他、がん組織に局所的に適用して治療効果を期待することができる。
【0264】
本発明の医薬組成物は、1種以上の薬学的に適合性の成分を含み投与され得る。薬学的に適合性の成分は、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲート及びPARP阻害剤の投与量や投与濃度等に応じて、この分野において通常使用される製剤添加物その他から適宜選択して適用することができる。例えば、本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートは、ヒスチジン緩衝剤等の緩衝剤、スクロース又はトレハロース等の賦形剤、並びにポリソルベート80又は20等の界面活性剤を含む医薬組成物として投与され得る。本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物は、好適には、注射剤として使用することができ、より好適には、水性注射剤又は凍結乾燥注射剤として使用することができ、更により好適には、凍結乾燥注射剤として使用することができる。
【0265】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物が水性注射剤である場合、好適には、適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、ブドウ糖溶液や、生理食塩液、等を挙げることができ、好適には、ブドウ糖溶液を挙げることができ、より好適には5%ブドウ糖溶液を挙げることができる。
【0266】
本発明で使用される抗体-薬物コンジュゲートを含む医薬組成物が凍結乾燥注射剤である場合、好適には、注射用水により溶解した後、必要量を適切な希釈液で希釈した後、静脈内に点滴投与することができる。希釈液としては、ブドウ糖溶液や、生理食塩液、等を挙げることができ、好適には、ブドウ糖溶液を挙げることができ、より好適には5%ブドウ糖溶液を挙げることができる。
【0267】
本発明の医薬組成物を投与するために使用され得る導入経路としては、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、及び腹腔内の経路を挙げることができ、好適には、静脈内の経路を挙げることができる。
【0268】
医薬組成物の組成及び濃度は投与方法によっても変化するが、本発明の医薬組成物に含まれる抗体-薬物コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートの抗原に対する親和性、すなわち、抗原に対する解離定数(Kd値)の点において、親和性が高い(Kd値が低い)ほど、少量の投与量であっても薬効を発揮させことができる。したがって、抗体-薬物コンジュゲートの投与量の決定に当たっては、抗体-薬物コンジュゲートと抗原との親和性の状況に基づいて投与量を設定することもできる。本発明の抗体-薬物コンジュゲートをヒトに対して投与する際には、例えば、約0.001~100mg/kgを1回あるいは1~180日間に1回の間隔で複数回投与すればよい。
【0269】
本発明に係るPARP阻害剤は、ヒトに対して、1~7日に1~2回の間隔で投与することができ、好適には、1日に1回、又は1日に2回の間隔で投与することができる。また、本発明で使用されるPARP阻害剤は、1回あたり0.1mg~3000mgの投与量で投与することができ、好適には、1回あたり0.25mg~600mgの投与量で投与することができる。
【0270】
本発明で使用されるPARP阻害剤がオラパリブ又はその薬理上許容される塩である場合、好適には、1回あたり、100mg、150mg、200mg、又は300mgの投与量を1日に2回の間隔で経口投与することができる。
【0271】
本発明で使用されるPARP阻害剤がルカパリブ又はその薬理上許容される塩である場合、好適には、1回あたり、200mg、250mg、300mg、400mg、500mg又は600mgの投与量を1日に2回の間隔で経口投与することができる。
【0272】
本発明で使用されるPARP阻害剤がニラパリブ又はその薬理上許容される塩である場合、好適には、1回あたり、100mg、200mg、又は300mgの投与量を1日に1回の間隔で経口投与することができる。
【0273】
本発明で使用されるPARP阻害剤がタラゾパリブ又はその薬理上許容される塩である場合、好適には、1回あたり、0.25mg、0.5mg、又は1mgの投与量を1日に1回の間隔で経口投与することができる。
【0274】
本発明の医薬組成物及び治療方法は、本発明に係る抗体-薬物コンジュゲート及びPARP阻害剤以外のがん治療剤を更に含んでいてもよい。本発明の医薬組成物及び治療方法は、他のがん治療剤と併用して投与することもでき、これによって抗腫瘍効果を増強させることができる。この様な目的で使用される他のがん治療剤は、本発明の医薬組成物と同時に、別々に、或は連続して個体に投与されてもよいし、それぞれの投与間隔を変えて投与されてもよい。この様ながん治療剤としては、抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはないが、例えば、イリノテカン(Irinotecan、CPT-11)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)、オキサリプラチン(Oxaliplatin)、フルオロウラシル(Fluorouracil、5-FU)、ゲムシタビン(Gemcitabine)、カペシタビン(Capecitabine)、ドキソルビシン(Doxorubicin)、エピルビシン(Epirubicin)、シクロフォスファミド(Cyclophosphamide)、マイトマイシンC(Mitomycin C)、テガフール(Tegafur)・ギメラシル(Gimeracil)・オテラシル(Oteracil)配合剤、セツキシマブ(Cetuximab)、パニツムマブ(Panitumumab)、ベバシズマブ(Bevacizumab)、ラムシルマブ(Ramucirumab)、レゴラフェニブ(Regorafenib)、トリフルリジン(Trifluridine)・チピラシル(Tipiracil)配合剤、ゲフィチニブ(Gefitinib)、エルロチニブ(Erlotinib)、アファチニブ(Afatinib)、メトトレキサート(Methotrexate)、ペメトレキセド(Pemetrexed)、トラスツズマブ、ペルツズマブ、及びラパチニブからなる群より選択される少なくとも一つを挙げることができる。
【0275】
本発明の医薬組成物及び治療方法は、放射線療法と組み合わせて使用することもできる。例えば、がん患者は、本発明の医薬組成物による治療を受ける前及び/又は後、あるいは同時に放射線療法を受ける。
本発明の医薬組成物及び治療方法は、外科手術と組み合わせた補助化学療法として使用することもできる。本発明の医薬組成物は外科手術の前に腫瘍の大きさを減じさせる目的で投与されてもよい(術前補助化学療法、又はネオアジュバント療法という)し、外科手術後に、腫瘍の再発を防ぐ目的で投与されてもよい(術後補助化学療法、又はアジュバント療法という)。
【実施例
【0276】
以下に示す例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されるものではない。
【0277】
参考例1:抗HER2抗体Trastuzumab
抗HER2抗体はUS5821337を参照して作製した。Trastuzumabの軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を配列番号64及び配列番号65に示した。
【0278】
参考例2:抗TROP2抗体hRS7
抗TROP2抗体はWO2003/074566、WO2015/098099(参考例1)を参照して作製した。hRS7の軽鎖及び重鎖のアミノ酸配列を配列番号68及び配列番号69に示した。
【0279】
〔製造中間体(薬物リンカー)の合成〕
実施例1
[実施例1-1:中間体1]
【0280】
【化42】
【0281】
工程1:ベンジル(6S)-6-(ヒドロキシメチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-5-カルボキシレート(1-2)
5-ベンジル 6-メチル(6S)-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-5,6-ジカルボキシレート(1-1)(104mmol,WO2012087596)のテトラヒドロフラン(500mL)溶液に、水素化ホウ素リチウム(4.30g,178mmol)を0℃にて少量ずつ加えた。0℃にて30分撹拌した後、室温にて2時間撹拌した。0℃にて水(180mL)、2規定塩酸(186mL)を加え、減圧留去した。得られた残渣を酢酸エチルで4回抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去し、得られた残渣(1-2)(27.9g,90%)をそのまま次の反応に用いた。
【0282】
工程2:ベンジル (6S)-6-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-5-カルボキシレート(1-3)
上記工程1にて得られた化合物(1-2)(27.9g,107mmol)とイミダゾール(14.5g,214mmol)のジクロロメタン(300mL)溶液に、室温にてtert-ブチルジメチルシリルクロリド(24.2g,160mmol)を加え、室温にて18時間撹拌した。反応溶液を飽和クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~50:50(v/v)]にて精製し、目的物(1-3)(32.5g,81%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.39-7.34(5H,m),5.23-5.11(2H,m),4.10-3.48(4H,m),3.16-3.14(1H,m),2.15-2.04(1H,m),1.81-1.77(1H,m),0.91-0.88(9H,m),0.65-0.55(4H,m),0.08-0.01(6H,m).
MS (APCI)m/z:376(M+H)+
【0283】
工程3:(6S)-6-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン(1-4)
上記工程2で得られた化合物(1-3)(32.5g,86.5mmol)のエタノール(400mL)溶液に、室温にて7.5%パラジウム炭素触媒(54%水分、5.00g)を加え、室温、水素雰囲気下にて6時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過し、濾液を減圧留去し、目的物(1-4)(21.3g,定量的)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:3.79-3.77(1H,m),3.71-3.69(1H,m),3.65-3.60(1H,m),3.01-2.98(2H,m),1.81-1.71(2H,m),0.90(9H,s),0.65-0.57(4H,m),0.08(3H,s),0.07(3H,s).
MS(APCI、ESI)m/z:242(M+H)+
【0284】
工程4:[(6S)-6-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル](5-メトキシ-2-ニトロ-4-{[トリ(プロパン-2-イル)シリル]オキシ}フェニル)メタノン(1-5)
5-メトキシ-2-ニトロ-4-{トリ(プロパン-2-イル)シリル]オキシ}安息香酸(52.2g,141mmol,US20150283262)と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(23.8g,155mmol)のジクロロメタン(500mL)溶液に、氷冷下にてN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(35.0g,170mmol)を加えた。反応混合物を室温にて撹拌した。カルボン酸消失後、-60℃にて上記工程3にて得られた化合物(1-4)(34.1g,141mmol)とトリエチルアミン(29.4mL,212mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液をゆっくりと滴下した。反応溶液を室温にて一晩撹拌した後、反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧留去して得られた残渣に酢酸エチルとジエチルエ-テルを加え、固体成分を濾過により取り除き、濾液を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~25:75(v/v)]にて精製し、目的物(1-5)(55.0g,66%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.72-7.66(1H,m),6.80-6.73(1H,m),4.53-4.49(1H,m),4.04-3.95(1H,m),3.91-3.88(3H,m),3.59-3.54(1H,m),3.36-3.25(0.5H,m),3.01-2.96(1.5H,m),2.24-2.20(0.3H,m),2.09-2.05(0.7H,m),2.00-1.97(0.7H,m),1.69-1.67(0.3H,m),1.32-1.24(3H,m),1.12-1.05(18H,m),0.93-0.91(6H,m),0.79-0.77(3H,m),0.71-0.62(2H,m),0.57-0.40(2H,m),0.12-0.10(4H,m),0.11-0.15(2H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:593(M+H)+
【0285】
工程5:(2-アミノ-5-メトキシ-4-{[トリ(プロパン-2-イル)シリル]オキシ}フェニル)[(6S)-6-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル]メタノン(1-6)
上記工程4で得られた化合物(1-5)(55.0g,92.8mmol)のエタノール(300mL)溶液に、窒素雰囲気下にて、7.5%パラジウム炭素(10.0g)を加えた。窒素風船を直ちに水素風船に付け替え、反応混合物を水素雰囲気下、室温で激しく撹拌した。原料消失後、反応混合物を濾過し、濾液を減圧留去し、得られた目的物(1-6)(52.2g,100%)をそのまま次の反応に用いた。
1H-NMR(CDCl3)δ:6.71(1H,s),6.25(1H,s),4.55-4.28(2H,m),3.97(1H,m),3.75-3.62(3H,m),3.70(3H,s),3.09-3.07(1H,m),2.24-2.19(1H,m),1.81-1.68(1H,m),1.27-1.22(3H,m),1.09-1.05(18H,m),0.90(9H,s),0.65-0.46(4H,m),0.07-0.03(6H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:563(M+H)+
【0286】
工程6:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-[4-({[(2-{[(6S)-6-({[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}メチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル]カルボニル}-4-メトキシ-5-{[トリ(プロパン-2-イル)シリル]オキシ}フェニル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]-L-アラニンアミド(1-7)
上記工程5で得られた化合物(1-6)(18.6g,33.0mmol)およびトリエチルアミン(6.26mL,45.2mmol)のTHF(300mL)溶液に、エタノール-氷浴上にて、トリホスゲン(4.22g,14.2mmol)をゆっくりと添加した。添加後、氷冷した反応混合物に、N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]-L-アラニンアミド(11.4g,30.2mmol,WO2011130598)とトリエチルアミン(6.26mL,45.2mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)、N,N-ジメチルホルムアミド(30mL)混合溶液をゆっくりと滴下した。滴下後、氷浴をはずし、反応混合物を、窒素雰囲気下、40℃にて撹拌した。原料消失後、反応混合物に水を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~40:60(v/v)]にて精製し、目的物(1-7)(23.5g,74%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:8.99(1H,m),8.58(1H,s),7.80(1H,s),7.55-7.53(2H,m),7.34-7.32(2H,m),6.77-6.75(2H,m),5.94-5.87(1H,m),5.40-5.38(1H,m),5.33-5.29(1H,m),5.23-5.21(1H,m),5.13(1H,m),5.10(2H,m),4.69-4.64(1H,m),4.62-4.52(2H,m),4.06-4.03(1H,m),3.98(1H,m),3.76-3.65(6H,m),3.04(1H,m),2.28-2.26(1H,m),2.18-2.13(1H,m),1.46(3H,m),1.32-1.25(3H,m),1.11-1.09(18H,m),0.99-0.84(15H,m),0.65-0.40(4H,m),0.08-0.00(6H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:966(M+H)+
【0287】
工程7:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-[4-({[(2-{[(6S)-6-(ヒドロキシメチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル]カルボニル}-4-メトキシ-5-{[トリ(プロパン-2-イル)シリル]オキシ}フェニル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]-L-アラニンアミド(1-8)
上記工程6で得られた化合物(1-7)(23.5g,24.3mmol)のテトラヒドロフラン(50mL),メタノール(50mL),水(44mL)溶液に、室温下にて酢酸(200mL)を加えた。反応混合物を室温にて撹拌した。原料消失後、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~0:100(v/v)]にて精製し、目的物(1-8)(18.0g,87%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:8.64-8.62(1H,m),8.50(1H,m),7.69(1H,m),7.55-7.53(2H,m),7.34-7.32(2H,m),6.79-6.75(3H,m),5.91-5.89(1H,m),5.39(1H,m),5.32-5.29(1H,m),5.23-5.21(1H,m),4.68-4.54(4H,m),4.31(1H,m),4.06-4.04(1H,m),3.81-3.79(3H,m),3.76(3H,s),3.63-3.61(1H,m),3.13-3.11(1H,m),2.16-2.13(1H,m),1.87-1.81(2H,m),1.46-1.43(3H,m),1.30-1.24(3H,m),1.12-1.08(18H,m),0.98-0.91(6H,m),0.63-0.45(4H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:852(M+H)+
【0288】
工程8:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-5’-オキソ-8’-{[トリ(プロパン-2-イル)シリル]オキシ}-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(1-9)
ジメチルスルホキシド(3.75mL,52.8mmol)のジクロロメタン(300mL)溶液に、窒素雰囲気下、-78℃にて、塩化オキサリル(2.17mL,25.3mmol)をゆっくりと滴下した。滴下後、反応混合物を-78℃にて撹拌した。反応混合物に、上記工程7で得られた化合物(1-8)(18.0g,21.1mmol)のジクロロメタン(50.0mL)溶液をゆっくりと滴下した。反応溶液に-78℃にて、トリエチルアミン(14.6mL,105mmol)を加えた。添加後、冷媒浴をはずし、室温までゆっくりと昇温した。原料消失後、反応混合物に水を加え、反応混合物をクロロホルム(200mL)で抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。濾過後、減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~0:60(v/v)]にて精製し、目的物(1-9)(16.5g,92%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:8.51-8.36(1H,m),7.54-7.38(2H,m),7.22-7.07(3H,m),6.73-6.64(1H,m),5.94-5.87(2H,m),5.33-5.22(3H,m),5.09(1H,m),4.97(1H,m),4.64-4.58(4H,m),4.02-4.00(1H,m),3.86-3.83(3H,m),3.75-3.70(1H,m),3.61-3.54(2H,m),3.38-3.29(1H,m),2.40(1H,m),2.16-2.14(1H,m),1.74-1.71(1H,m),1.44(3H,m),1.18-1.16(3H,m),1.05-1.00(18H,m),0.97-0.92(6H,m),0.72-0.60(4H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:850(M+H)+
【0289】
工程9:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-7’-メトキシ-5’-オキソ-8’-{[トリ(プロパン-2-イル)シリル]オキシ}-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(1-10)
上記工程8で得られた化合物(1-9)(12.0g,14.1mmol)および2,6-ルチジン(6.58mL,56.5mmol)のジクロロメタン(200mL)溶液に、窒素雰囲気下、0℃にて、トリフルオロメチルスルホン酸tert-ブチルジメチルシリル(9.73mL,42.3mmol)をゆっくりと滴下した。氷冷下、10分間撹拌した後に、氷浴をはずし、室温にて撹拌した。原料消失後、反応混合物に水を加え、反応混合物をクロロホルムで抽出した水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~25:75(v/v)]にて精製し、目的物(1-10)(8.12g,60%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:8.67-8.45(1H,m),7.50-7.44(2H,m),7.19(1H,s),7.13(2H,m),6.95(2H,m),6.62-6.57(2H,m),6.01(1H,m),5.95-5.86(1H,m),5.33-5.13(3H,m),4.82(1H,m),4.65-4.54(3H,m),4.03-4.01(1H,m),3.84-3.82(3H,m),3.73-3.66(1H,m),3.50-3.48(1H,m),3.27(1H,m),2.37-2.33(1H,m),2.19-2.13(1H,m),1.54-1.43(3H,m),1.22-1.13(3H,m),1.10-1.00(18H,m),0.97-0.91(6H,m),0.81(9H,s),0.76-0.59(4H,m),0.19-0.09(6H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:964(M+H)+
【0290】
工程10:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-8’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(1-11)
上記工程9で得られた化合物(1-10)(8.12g,8.42mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(90mL)、水(2mL)溶液に、酢酸リチウム(0.611g,9.26mmol)を加え、室温下で撹拌した。原料消失後、反応混合物に水を加え、反応混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~0:100(v/v)]にて精製し、目的物(1-11)(5.48g,81%)を得た。
1H-NMR(400MHz,CDCl3,20.9℃)δ:8.76-8.60(1H,m),7.45-7.44(2H,m),7.21(1H,s),7.10-7.09(2H,m),6.81-6.74(1H,m),6.65(1H,s),6.23(1H,s),6.01-5.99(1H,m),5.95-5.84(1H,m),5.41-5.20(2H,m),5.16(1H,m),4.84(1H,m),4.67-4.54(4H,m),4.05-4.03(1H,m),3.87(3H,s),3.71(1H,m),3.55-3.51(1H,m),3.26(1H,m),2.35(1H,m),2.18-2.12(1H,m),1.55-1.42(4H,m),0.97-0.92(6H,m),0.81(9H,s),0.76-0.61(4H,m),0.20-0.06(6H,m)
MS(APCI、ESI)m/z:808(M+H)+
【0291】
1H-NMR(500MHz,CDCl3,27℃)δ:8.76(1H,s),7.43(2H,brd),7.20(1H,s),7.08(2H,d,J=8.3Hz),7.00(1H,br),6.66(1H,s),6.44(1H,s),6.00(1H,H-11’,d,J11’,11’a=9.2Hz),5.89(1H,m),5.53(1H,brd),5.30(1H,d,J=17.2Hz),5.20(1H,d,J=10.3Hz),5.15(1H,d,JABq=12.5Hz),4.85(1H,d,JABq=12.5Hz),4.66(1H,m),4.60-4.52(2H,m),4.07(1H,m),3.84(3H,s),3.71(1H,H-3’β,d,Jgem=11.7Hz),3.53(1H,H-11’a,m),3.26(1H,H-3’α,d,Jgem=11.7Hz),2.35(1H,H-1’β,dd,J1’ β,11’a=8.30Hz,Jgem=13.1Hz),2.14(1H,m),1.54(1H,H-1’ α,d,Jgem=13.1Hz),1.41(3H,d,J=6.90Hz),0.95(3H,d,J=6.80Hz),0.92(3H,d,J=6.80Hz),0.81(9H,s),0.80-0.70(1H,m),0.70-0.59(3H,m),0.2-0.06(6H,m)
【0292】
化合物(1-11)についてselective 1D ROESYスペクトルで得られた相関(下図)より、11’ 位の絶対立体配置の解析を行った。1’α-Hと11’-H、 3’α-Hと11’-H、および1’β-Hと3’ β-H間に相関が認められることから、11’位の絶対立体配置はS 配置であることが分かった。
【0293】
【化43】
【0294】
従って、化合物(1-11)、それと同じ絶対立体配置を有する化合物(1-9)及び化合物(1-10)、化合物(1-11)を用いて合成された化合物(3-11)、化合物(3-12)、化合物(3-13)及び薬物リンカー1(化合物(3-14))、化合物(4-9)、化合物(4-10)、化合物(4-11)及び薬物リンカー2(化合物(4-12))、ならびに、化合物(6-10)、化合物(6-11)、化合物(6-12)及び薬物リンカー4(化合物(6-13))における11’位の絶対立体配置はS配置であることが分かった。また、同様の合成手法で得られる化合物(5-9)、化合物(5-10)及び薬物リンカー3(化合物(5-11))の11’位の絶対立体配置はS 配置であると決定した。
【0295】
[実施例1-2:中間体2]
【化44】
【0296】
工程1:N-[4-(11,12-ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-4-オキソブタノイル]グリシルグリシン(2-2)
グリシルグリシン(0.328g,2.49mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.433mL,2.49mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(20mL)溶液に、1-{[4-(11,12-ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-4-オキソブタノイル]オキシ}ピロリジン-2,5-ジオン(2-1)(1.00g,2.49mmol,Click Chemistry Tools)、水(10mL)を室温にて加え、同温度にて一晩撹拌した。減圧留去し、得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノ-ル:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、目的物(0.930g,89%)を得た。
1H-NMR(DMSO-D6)δ:12.58(1H,s),8.14-8.12(1H,m),8.08-8.07(1H,m),7.69-7.68(1H,m),7.62-7.61(1H,m),7.53-7.45(3H,m),7.40-7.29(3H,m),5.05-5.01(1H,m),3.73-3.72(2H,m),3.66-3.60(3H,m),2.66-2.60(1H,m),2.33-2.24(1H,m),2.08-2.04(1H,m),1.81-1.77(1H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:420[(M+H)+].
【0297】
実施例2
[実施例2-1:薬物リンカー1]
【化45】
【0298】
工程1:(2R,11aS)-2-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-8-ヒドロキシ-7-メトキシ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(3-2)
(2R,11aS)-8-(ベンジルオキシ)-2-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-7-メトキシ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(3-1)(25.5g,41.6mmol,WO2016149546)のテトラヒドロフラン(150mL)、エタノール(150mL)溶液に、窒素雰囲気下、5%パラジウム炭素(54%水分、10.0g)を加えた後、反応溶液を水素雰囲気下、室温にて三日間撹拌した。反応溶液にクロロホルムを加え、セライト濾過した後、濾液を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~50:50(v/v)]にて精製し、目的物(3-2)(19.4g,89%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.36(1H,s),7.25(1H,s),6.01(1H,s),5.45-5.43(1H,m),4.69-4.67(1H,m),4.60-4.55(1H,m),4.23-4.21(1H,m),3.96(3H,s),3.76-3.68(2H,m),3.63-3.61(1H,m),3.56-3.53(1H,m),2.88-2.83(1H,m),2.03-2.00(1H,m),1.00-0.98(2H,m),0.87(9H,s),0.10(6H,s),0.02(9H,s).
MS(APCI、ESI)m/z:523(M+H)+
【0299】
工程2:(2R,11aS)-8-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-2-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-7-メトキシ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(3-3)
上記工程1にて得られた化合物(3-2)(10.8g,20.7mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(30mL)溶液に、1,5-ジブロモペンタン(23.8g,103mmol)、炭酸カリウム(3.43g,24.8mmol)を室温で加えた。室温で3時間撹拌した後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=90:10(v/v)~50:50(v/v)]にて精製し、目的物(3-3)(14.5g,定量的)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.34(1H,s),7.21(1H,s),5.52-5.49(1H,m),4.63-4.62(1H,m),4.58-4.55(1H,m),4.24-4.22(1H,m),4.07-4.04(2H,m),3.92(3H,s),3.82-3.64(3H,m),3.56-3.53(1H,m),3.45-3.43(2H,m),2.86-2.84(1H,m),2.04-2.00(1H,m),1.97-1.87(4H,m),1.66-1.62(2H,m),1.01-0.98(2H,m),0.87(9H,s),0.10(6H,s),0.04(9H,s)
MS(APCI、ESI)m/z:673[81Br,(M+H)+],671[79Br,(M+H)+].
【0300】
工程3:(2R,11aS)-8-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-2-ヒドロキシ-7-メトキシ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(3-4)
上記工程2にて得られた化合物(3-3)(21.5mmol)のテトラヒドロフラン(40mL)溶液に、1mol/Lのテトラブチルアンモニウムフロリド テトラヒドロフラン溶液(28.0mL,28.0mmol)を0℃にて加えた。室温にて30分間撹拌した後、反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=97.5:2.5(v/v)~92.5:7.5(v/v)]にて精製し、目的物(3-4)(11.3g,94%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.34(1H,s),7.21(1H,s),5.53-5.50(1H,m),4.69-4.64(2H,m),4.32-4.30(1H,m),4.10-4.00(2H,m),3.91(3H,s),3.88-3.75(2H,m),3.73-3.64(2H,m),3.45-3.44(2H,m),2.99-2.96(1H,m),2.15-2.09(1H,m),1.99-1.85(5H,m),1.68-1.62(2H,m),1.01-0.95(2H,m),0.04(9H,s).
MS(APCI、ESI)m/z:559[81Br,(M+H)+],557[79Br,(M+H)+].
【0301】
工程4:(11aS)-8-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7-メトキシ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2,5,11(3H,10H,11aH)-トリオン(3-5)
上記工程3にて得られた化合物(3-4)(11.3g,20.2mmol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(0.325g,1.01mmol)、臭化カリウム(0.240g,2.02mmol,)を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(60mL)、ジクロロメタン(60mL)に溶解させ、nor-AZADO(0.0279g,0.202mmol)、次亜塩素酸ナトリウム五水和物(2.03g,27.2mmol)を0℃にて加え、0℃にて30分間撹拌した。原料が残存したため、次亜塩素酸ナトリウム五水和物(1.00g、13.4mmol)を0℃にて加え、0℃にて15分撹拌した。さらに次亜塩素酸ナトリウム五水和物(0.300g、4.03mmol)を0℃にて加え、0℃にて15分撹拌し、原料の消失をTLCにて確認した。反応溶液にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=75:25(v/v)~40:60(v/v)]にて精製し、目的物(3-5)(9.74g,87%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.33(1H,s),7.24(1H,s),5.56-5.53(1H,m),4.71-4.69(1H,m),4.66-4.63(1H,m),4.27-4.22(1H,m),4.12-4.02(2H,m),3.93-3.88(4H,m),3.82-3.75(1H,m),3.69-3.67(1H,m),3.61-3.56(1H,m),3.46-3.44(2H,m),2.82-2.77(1H,m),1.97-1.89(4H,m),1.68-1.64(2H,m),1.05-0.93(2H,m),0.04(9H,s).
MS(APCI、ESI)m/z:557[81Br,(M+H)+],555[79Br,(M+H)+].
【0302】
工程5:(11aS)-8-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7-メトキシ-5,11-ジオキソ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル トリフルオロメタンスルフォネート(3-6)
上記工程4にて得られた化合物(3-5)(9.74g,17.5mmol)のジクロロメタン(160mL)溶液に、2,6-ルチジン(8.17mL,70.1mmol)を-40℃にて加え、-40℃にて10分間撹拌した。反応溶液に無水トリフルオロメタンスルホン酸(8.85mL,52.6mmol)を-40℃にて加え、-40℃にて30分間撹拌した。反応溶液に10%クエン酸水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=95:5→70:35]にて精製した後,NH2シリカゲルクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=95:5(v/v)~65:35(v/v)]にて精製し、目的物(3-6)(7.10g,59%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.32(1H,s),7.24(1H,s),7.15-7.14(1H,m),5.56-5.53(1H,m),4.70-4.68(1H,m),4.66-4.63(1H,m),4.11-4.01(2H,m),3.94-3.90(4H,m),3.84-3.75(1H,m),3.73-3.68(1H,m),3.46-3.44(2H,m),3.18-3.14(1H,m),1.96-1.88(4H,m),1.69-1.61(2H,m),1.02-0.92(2H,m),0.04(9H,s).
MS(APCI、ESI)m/z:689[81Br,(M+H)+],687[79Br,(M+H)+].
【0303】
工程6:(11aS)-8-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(3-7)
上記工程5にて得られた化合物(3-6)(2.00g,2.91mmol)、4-メトキシフェニルボロン酸(0.884g,5.82mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.336g,0.291mmol)、炭酸ナトリウム(1.23g,11.6mmol)の混合物にトルエン(20mL)、エタノール(10mL)、水(10mL)を室温にて加えた。反応溶液を室温にて30分撹拌した後、反応溶液を酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=90:10(v/v)~50:50(v/v)]にて精製し、目的物(3-7)(1.71g,91%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.38-7.37(3H,m),7.33(1H,s),7.25(1H,s),6.89-6.88(2H,m),5.56-5.54(1H,m),4.71-4.68(1H,m),4.65-4.62(1H,m),4.09-4.04(2H,m),3.96-3.91(4H,m),3.85-3.66(5H,m),3.46-3.45(2H,m),3.16-3.12(1H,m),1.99-1.94(4H,m),1.69-1.64(2H,m),1.00-0.98(2H,m),0.04(9H,s).
MS(APCI、ESI)m/z:647[81Br,(M+H)+],645[79Br,(M+H)+].
【0304】
工程7:(11aS)-8-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-1,11a-ジヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン(3-8)
上記工程6にて得られた化合物(3-7)(0.789g,1.22mmol)をエタノール(10mL)、テトラヒドロフラン(10mL)に溶解し、2.0Mの水素化ホウ素リチウムテトラヒドロフラン溶液(6.11mL,12.2mmol)を0℃にて加え、0℃にて3時間撹拌した。反応溶液に水を加え、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去し、得られた残渣をジクロロメタン(10mL)、エタノール(20mL)、水(10mL)に溶解し、シリカゲル(4g)を室温にて加え、室温で4日間撹拌した。シリカゲルをろ過により除き、水を加え、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=60:40(v/v)~25:75(v/v)]にて精製し、目的物(3-8)(0.496g,81%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.90-7.89(1H,m),7.53(1H,s),7.40-7.40(1H,m),7.35-7.34(2H,m),6.92-6.90(2H,m),6.83-6.81(1H,m),4.43-4.40(1H,m),4.13-4.06(2H,m),3.96(3H,s),3.84(3H,s),3.61-3.57(1H,m),3.47-3.36(3H,m),2.00-1.92(4H,m),1.67-1.63(2H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:501[81Br,(M+H)+],499[79Br,(M+H)+].
【0305】
工程8:(11aS)-8-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-1,10,11,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン(3-9)
上記工程7にて得られた化合物(3-8)(0.496g,0.992mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(0.421g,1.99mmol)を0℃にて加えた。室温にて2時間撹拌した後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧留去した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=60:40(v/v)~25:75(v/v)]にて精製し、目的物(3-9)(0.426g,86%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.53-7.53(2H,m),7.32-7.30(2H,m),6.89-6.87(2H,m),6.05(1H,s),4.33-4.27(2H,m),4.00-3.98(2H,m),3.86(3H,s),3.82(3H,s),3.57-3.55(2H,m),3.42-3.38(3H,m),2.76-2.72(1H,m),1.96-1.88(4H,m),1.65-1.62(2H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:503[81Br,(M+H)+],501[79Br,(M+H)+].
【0306】
工程9:プロプ-2-エン-1-イル (11aS)-8-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-11,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-10(5H)-カルボキシレート(3-10)
上記工程8にて得られた化合物(3-9)(0.426g,0.849mmol)のジクロロメタン(30mL)溶液に、ピリジン(0.102mL1.27mmol)、クロロぎ酸アリル(0.374mL,3.54mmol)を0℃にて加え、0℃にて15分間撹拌した。反応溶液に10%クエン酸水溶液を加え、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄後、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=90:10(v/v)~50:50(v/v)]にて精製し、目的物(3-10)(0.465g,94%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.38(1H,s),7.31-7.29(2H,m),7.26-7.25(1H,m),6.89-6.87(2H,m),6.71(1H,s),5.80-5.78(1H,m),5.14-5.11(2H,m),4.65-4.62(1H,m),4.39-4.26(3H,m),4.03-4.01(2H,m),3.92(3H,s),3.82(3H,s),3.66-3.64(1H,m),3.46-3.44(2H,m),3.30-3.27(1H,m),2.72-2.68(1H,m),1.96-1.88(4H,m),1.68-1.60(2H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:587[81Br,(M+H)+],585[79Br,(M+H)+].
【0307】
工程10:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-7’-メトキシ-8’-{[5-({(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-10-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル}オキシ)ペンチル]オキシ}-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(3-11)
実施例1-1工程10にて得られた化合物(1-11)(0.130g,0.161mmol)と上記工程9にて得られた化合物(3-10)(0.104g,0.177mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(3mL)溶液に炭酸カリウム(0.0266g,0.193mmol)を室温にて加え、室温にて一晩撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、水、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去した後、得られた残渣をNH2-シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=70:30(v/v)~0:100(v/v)]にて精製し、目的物(3-11)(0.184g,87%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:8.76(1H,s),7.58-7.56(2H,m),7.39(1H,s),7.32-7.30(2H,m),7.26-7.24(2H,m),7.19-7.17(3H,m),6.90-6.88(2H,m),6.78(1H,s),6.68-6.66(1H,m),6.37(1H,s),5.99-5.93(3H,m),5.34-5.20(6H,m),4.66-4.01(11H,m),3.90(3H,s),3.89(3H,s),3.78-3.54(9H,m),3.31-3.28(2H,m),2.73-2.69(1H,m),2.38-2.35(1H,m),2.19-2.13(1H,m),1.82-1.80(2H,m),1.46-1.29(6H,m),0.98-0.90(6H,m),0.83(9H,s),0.69-0.63(4H,m),0.19-0.16(6H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:1312(M+H)+
【0308】
工程11:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-{[5-({(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-10-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル}オキシ)ペンチル]オキシ}-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(3-12)
上記工程10にて得られた化合物(3-11)(0.1837g,0.140mmol)と酢酸(0.048mL,0.840mmol)のテトラヒドロフラン(5.00mL)溶液に1mol/Lのテトラブチルアンモニウムフロリド テトラヒドロフラン溶液(0.700mL,0.700mmol)を室温にて加え、室温にて3時間撹拌した。反応溶液を酢酸エチルで希釈し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去した後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=99.5:0.5(v/v)~95:5(v/v)]にて精製し、目的物(3-12)(0.178g、定量的)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:8.86(1H,s),7.60-7.59(2H,m),7.39(1H,s),7.32-7.20(7H,m),6.90-6.88(2H,m),6.78(1H,s),6.68(1H,s),6.38(1H,s),5.90-5.87(3H,m),5.39-5.22(6H,m),4.72-4.02(11H,m),3.90(3H,s),3.88(3H,s),3.83(3H,s),3.70-3.63(6H,m),3.32-3.29(3H,m),2.73-2.69(1H,m),2.43-2.40(1H,m),2.12-2.06(1H,m),1.77-1.74(2H,m),1.39-1.25(6H,m),0.96-0.89(6H,m),0.73-0.66(4H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:1198(M+H)+
【0309】
工程12:L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-[(5-{[(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル]オキシ}ペンチル)オキシ]-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(3-13)
上記工程11にて得られた化合物(3-12)(0.140mmol)のジクロロメタン(2mL)溶液に、室温にてピロリジン(0.0579mL, 0.700mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.0162g, 0.0140mmol)を加え、室温にて15分撹拌した。減圧留去した後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=99.5:0.5(v/v)~92.5:7.5(v/v)]にて精製し、目的物(3-13)(0.143g, 99%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:9.12(1H,s),7.94-7.92(1H,m),7.57-7.53(4H,m),7.33-7.31(2H,m),7.20-7.18(3H,m),6.90-6.88(2H,m),6.36(1H,s),6.07(1H,s),5.91-5.88(1H,m),5.47-5.44(1H,m),5.21-5.13(1H,m),4.66-4.58(3H,m),4.32(1H,s),4.03-3.49(17H,m),3.38-3.29(4H,m),3.15-3.14(1H,m),2.77-2.73(1H,m),2.57(2H,s),2.43-2.40(1H,m),2.32-2.27(1H,m),1.81-1.39(8H,m),0.98-0.96(3H,m),0.85-0.83(3H,m),0.75-0.62(4H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:1030(M+H)+
【0310】
工程13:N-[4-(11,12-ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-4-オキソブタノイル]グリシルグリシル-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-[(5-{[(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル]オキシ}ペンチル)オキシ]-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(3-14)
実施例1-2工程1にて得られた化合物(2-2)(0.0640g, 0.153mmol)、N‐エトキシカルボニル‐2-エトキシ‐1,2‐ジヒドロキノリン(0.0446g, 0.180mmol)の混合物にジクロロメタン(2mL)を室温にて加え、室温にて15分撹拌した。反応溶液に上記工程12にて得られた化合物(3-13)(0.143g, 0.139mmol)のジクロロメタン(2mL)溶液を加え、室温にて五時間撹拌した後、減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=99.5:0.5(v/v)~92.5:7.5(v/v)]で精製し、目的物(3-14)(0.103g, 52%)を得た。
1H-NMR(DMSO-D6)δ:9.93(1H,s),8.21-8.16(2H,m),8.07-8.04(1H,m),7.83-7.64(2H,m),7.60-7.55(3H,m),7.51-7.28(10H,m),7.19-7.16(2H,m),7.10-7.04(1H,m),6.92-6.90(2H,m),6.76-6.70(1H,m),6.39(1H,s),5.77-5.75(1H,m),5.21-5.18(1H,m),5.03-4.99(1H,m),4.82-4.79(1H,m),4.37-4.35(1H,m),4.21-4.20(2H,m),4.02-3.24(26H,m),3.16-3.13(1H,m),2.79-2.59(2H,m),2.39-2.28(2H,m),2.05-1.97(2H,m),1.91-1.77(4H,m),1.57-1.54(3H,m),1.28-1.23(3H,m),0.85-0.80(6H,m),0.67-0.61(4H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:1431(M+H)+
【0311】
[実施例2-2:薬物リンカー2]
【化46】
【0312】
工程1:(2R,11aS)-8-(3-ブロモプロポキシ)-2-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-7-メトキシ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(4-1)
実施例2-1工程1にて得られた化合物(3-2)(5.06g,9.67mmol)と1,3-ジブロモプロパン(4.93mL,48.4mmol)を、実施例2-1工程2と同様に反応させ、目的物(4-1)(4.85g,78%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:645[81Br,(M+H)+],643[79Br,(M+H)+].
【0313】
工程2:(2R,11aS)-8-(3-ブロモプロポキシ)-2-ヒドロキシ-7-メトキシ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(4-2)
上記工程1にて得られた化合物(4-1)(4.85g,7.54mmol)を、実施例2-1工程3と同様に反応させ、目的物(4-2)(4.05g,定量的)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:531[81Br,(M+H)+],529[79Br,(M+H)+].
【0314】
工程3:(11aS)-8-(3-ブロモプロポキシ)-7-メトキシ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2,5,11(3H,10H,11aH)-トリオン(4-3)
上記工程2にて得られた化合物(4-2)(7.54mmol)を、実施例2-1工程4と同様に反応させ、目的物(4-3)(3.73g,93%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.34(1H,s),7.29(1H,s),5.56-5.53(1H,m),4.72-4.69(1H,m),4.67-4.61(1H,m),4.23-4.17(3H,m),3.97-3.88(4H,m),3.82-3.75(1H,m),3.74-3.56(4H,m),2.82-2.77(1H,m),2.43-2.38(2H,m),1.06-0.94(2H,m),0.08-0.00(9H,m).
【0315】
工程4:(11aS)-8-(3-ブロモプロポキシ)-7-メトキシ-5,11-ジオキソ-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-2-イル トリフルオロメタンスルフォネート(4-4)
上記工程3にて得られた化合物(4-3)(3.73g,7.08mmol)を、実施例2-1工程5と同様に反応させ、目的物(4-4)(3.27g,70%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:661[81Br,(M+H)+],659[79Br,(M+H)+].
【0316】
工程5:(11aS)-8-(3-ブロモプロポキシ)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル-10-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5,11(10H,11aH)-ジオン(4-5)
上記工程4にて得られた化合物(4-4)(3.27g,4.96mmol)を、実施例2-1工程6と同様に反応させ、目的物(4-5)(2.49g,81%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:619[81Br,(M+H)+],617[79Br,(M+H)+].
【0317】
工程6:(11aS)-8-(3-ブロモプロポキシ)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-1,11a-ジヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン(4-6)
上記工程5にて得られた化合物(4-5)(2.49g,4.04mmol)を、実施例2-1工程7と同様に反応させ、目的物(4-6)(1.59g,84%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:473[81Br,(M+H)+],471[79Br,(M+H)+].
【0318】
工程7:(11aS)-8-(3-ブロモプロポキシ)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-1,10,11,11a-テトラヒドロ-5H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-5-オン(4-7)
上記工程6にて得られた化合物(4-6)(1.59g,3.38mmol)を、実施例2-1工程8と同様に反応させ、目的物(4-7)(1.39g,87%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:475[81Br,(M+H)+],473[79Br,(M+H)+].
【0319】
工程8:プロプ-2-エン-1-イル (11aS)-8-(3-ブロモプロポキシ)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-11,11a-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-10(5H)-カルボキシレート(4-8)
上記工程7にて得られた化合物(4-7)(1.40g,2.95mmol)を、実施例2-1工程9と同様に反応させ、目的物(4-8)(0.885g,54%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:559[81Br,(M+H)+],557[79Br,(M+H)+].
【0320】
工程9:N-{[(プロプ-2-エン-1-イル)オキシ]カルボニル}-L-バリル-N-[4-({[(11’S,11’aS)-11’-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-7’-メトキシ-8’-(3-{[(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-10-{[(プロプ-2-エン-1-イル)オキシ]カルボニル}-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル]オキシ}プロポキシ)-5’-オキソ-11’,11’a-ジヒドロ-1’H,3’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]-L-アラニンアミド(4-9)
上記工程8にて得られた化合物(4-8)(0.0381g,0.0683mmol)と実施例1-1工程10で得られた化合物(1-11)(0.0552g、0.0683mmol)を、実施例2-1工程10と同様に反応させ、目的物(4-9)(0.0712g,81%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:1284(M+H)+.
【0321】
工程10:N-{[(プロプ-2-エン-1-イル)オキシ]カルボニル}-L-バリル-N-[4-({[(11’S,11’aS)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-(3-{[(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-10-{[(プロプ-2-エン-1-イル)オキシ]カルボニル}-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル]オキシ}プロポキシ)-5’-オキソ-11’,11’a-ジヒドロ-1’H,3’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]-L-アラニンアミド(4-10)
上記工程9にて得られた化合物(4-9)(0.0712g,0.0554mmol)を、実施例2-1工程11と同様に反応させ、目的物(4-10)(0.0671g,定量的)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:1170(M+H)+.
【0322】
工程11:L-バリル-N-[4-({[(11’S,11’aS)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-(3-{[(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル]オキシ}プロポキシ)-5’-オキソ-11’,11’a-ジヒドロ-1’H,3’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]-L-アラニンアミド(4-11)
上記工程10にて得られた化合物(4-10)(0.0571mmol)を、実施例2-1工程12と同様に反応させ、目的物(4-11)(0.0574g,99%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:9.16(1H,s),7.93-7.91(1H,m),7.55-7.52(1H,m),7.50-7.47(3H,m),7.35-7.32(2H,m),7.21(1H,s),7.13-7.11(2H,m),6.90-6.87(2H,m),6.40(1H,s),6.08(1H,s),5.90-5.87(1H,m),5.37-5.34(1H,m),4.73-4.53(3H,m),4.23-4.08(5H,m),3.89(3H,s),3.82(3H,s),3.78-3.72(5H,m),3.57-3.51(3H,m),3.38-3.30(3H,m),2.76-2.71(1H,m),2.36-2.24(4H,m),1.78-1.42(6H,m),1.00-0.98(3H,m),0.87-0.84(3H,m),0.74-0.62(4H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:1002(M+H)+.
【0323】
工程12:N-[4-(11,12-ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-4-オキソブタノイル]グリシルグリシル-L-バリル-N-[4-({[(11’S,11’aS)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-(3-{[(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル]オキシ}プロポキシ)-5’-オキソ-11’,11’a-ジヒドロ-1’H,3’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-カルボニル]オキシ}メチル)フェニル]-L-アラニンアミド(4-12)
上記工程11にて得られた化合物(4-11)(0.189g,0.189mmol)と実施例1-2工程1で得られた化合物(2-2)(0.087g、0.207mmol)を、実施例2-1工程13と同様に反応させ、目的物(4-12)(0.169g,64%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:1402(M+H)+.
【0324】
[実施例2-3:薬物リンカー3]
【化47】
【0325】
工程1:ジメチル(6S,6’S)-5,5’-{1,5-ペンタンジイルビス[オキシ(5-メトキシ-2-ニトロベンゼン-4,1-ジイル)カルボニル]}ビス(5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-6-カルボキシレート)(5-2)
4,4’-[1,5-ペンタンジイルビス(オキシ)]ビス(5-メトキシ-2-ニトロ安息香酸)(5-1)(5.41g,10.9mmol,Journal of Medicinal Chemistry 2004,47,1161)のジクロロメタン(50mL)溶液に、0℃にて塩化オキサリル(5.63mL,65.7mmol)を加え、N,N-ジメチルホルムアミド(0.0844mL,1.09mmol)滴下した。反応溶液を室温まで昇温し、2時間撹拌した。減圧留去して得られた残渣をジクロロメタン(100mL)に溶解し、メチル(6S)-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-6-カルボキシレート塩酸塩(4.28g,24.1mmol,Tetrahedron Letters 2012. 53. 3847)とトリエチルアミン(6.07mL,43.8mmol)のジクロロメタン溶液(100mL)に窒素雰囲気下、-40℃で滴下した。反応溶液を0℃に昇温して2時間撹拌した。反応混合物に1規定塩酸(100mL)を加え、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去し、目的物(5-2)(8.40g、定量的)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:769(M+H)+.
【0326】
工程2:{1,5-ペンタンジイルビス[オキシ(5-メトキシ-2-ニトロベンゼン-4,1-ジイル)]}ビス{[(6S)-6-(ヒドロキシメチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル]メタノン}(5-3)
上記工程1にて得られた化合物(5-2)(8.40g,10.9mmol)のテトラヒドロフラン(100mL)溶液に、水素化ほう素リチウム(714mg,32.8mmol)を加え、0℃にて30分撹拌し、室温に昇温して1時間撹拌した。0℃にて1規定塩酸を加えた後、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下にて溶媒留去して、目的物(5-3)(7.70g,99%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:713(M+H)+.
【0327】
工程3:ペンタン-1,5-ジイルビス[オキシ(5-メトキシ-2-ニトロベンゼン-4,1-ジイル)カルボニル(6S)-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-5,6-ジイルメタンジイル]ジアゼテート(5-4)
上記工程2にて得られた化合物(5-3)(7.70g、10.8mmol)をピリジン(20mL)及び無水酢酸(10mL,105.9mmol)に溶解して、室温にて撹拌した。減圧留去して、目的物(5-4)(8.38g,97%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:797(M+H)+.
【0328】
工程4:1,5-ペンタンジイルビス[オキシ(2-アミノ-5-メトキシベンゼン-4,1-ジイル)カルボニル(6S)-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-5,6-ジイルメタンジイル]ジアセテート(5-5)
上記工程3にて得られた化合物(5-4)(8.28g,10.4mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(100mL)溶液に、5%パラジウム炭素(54%水分、1.00g)を加えた後、反応溶液を水素雰囲気下、室温にて6時間激しく撹拌した。セライトろ過した後、ろ液を減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=100:0(v/v)~90:10(v/v)]にて精製し、目的物(5-5)(5.05g,66%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:737(M+H)+.
【0329】
工程5:{(6S)-5-[4-({5-[4-({(6S)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル}カルボニル)-5-アミノ-2-メトキシフェノキシ]ペンチル}オキシ)-5-メトキシ-2-{[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]アミノ}ベンゾイル]-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-6-イル}メチルアセテート(モノアリルオキシカルボニル体)(5-6)
上記工程4にて得られた化合物(5-5)(5.05g,6.85mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、ピリジン(1.10mL,13.7mmol)を加え、窒素雰囲気下、-78℃にてクロロギ酸アリル(0.725mL,6.85mmol)を加え、2時間撹拌した。減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=70:30(v/v)~100:0(v/v)、クロロホルム:メタノール=100:0(v/v)~90:10(v/v)]にて精製し、目的物であるモノアリルオキシカルボニル体(5-6)(2.63g,47%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:821(M+H)+.
【0330】
工程6:N-[(2-プロペン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[2-({(6S)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル}カルボニル)-5-({5-[4-({(6S)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル}カルボニル)-2-メトキシ-5-{[(2-プロペン-1-イルオキシ)カルボニル]アミノ}フェノキシ]ペンチル}オキシ)-4-メトキシフェニル]カルバモイル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(5-7)
上記工程5で得られたモノアリルオキシカルボニル体(5-6)(2.00g,2.44mmol)とN-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-[4-(ヒドロキシメチル)フェニル]-L-アラニンアミド(1.10g,2.92mmol,WO2011130598)を、実施例1-1工程6と同様に反応させ、目的物(5-7)(2.64g,89%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:1224(M+H)+.
【0331】
工程7:N-[(2-プロペン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-[4-({[(2-{[(6S)-6-(ヒドロキシメチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル]カルボニル}-5-{[5-(4-{[(6S)-6-(ヒドロキシメチル)-5-アザスピロ[2.4]ヘプト-5-イル]カルボニル}-2-メトキシ-5-{[(2-プロペン-1-イルオキシ)カルボニル]アミノ}フェノキシ)ペンチル]オキシ}-4-メトキシフェニル)カルバモイル]オキシ}メチル)フェニル]-L-アラニンアミド(5-8)
上記工程6にて得られた化合物(5-7)(2.64g,2.16mmol)のメタノール(10mL)溶液に、炭酸カリウム(1.49g,10.8mmol)を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧留去して、目的物(5-8)(2.21g,90%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:1140(M+H)+.
【0332】
工程8:N-[(2-プロペン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-8’-{[5-({(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-5’-オキソ-10’-[(2-プロペン-1-イルオキシ)カルボニル]-5’,10’,11’,11a’-テトラヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-8’-イル}オキシ)ペンチル]オキシ}-7’-メトキシ-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(5-9)
上記工程7にて得られた化合物(5-8)(2.03g,1.78mmol)のジクロロメタン(50mL)溶液に、デスマーチンペルヨージナン(1.59g,3.74mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧留去して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=100:0(v/v)~90:10(v/v)]にて精製し、目的物(5-9)(2.05g,定量的)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:1136(M+H)+.
【0333】
工程9:L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-[(5-{[(11a’S)-7’-メトキシ-5’-オキソ-5’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-8’-イル]オキシ}ペンチル)オキシ]-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(5-10)
上記工程8にて得られた化合物(5-9)(2.05g,1.80mmol)を、実施例2-1工程12と同様に反応させ、目的物(5-10)(1.02g,60%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:950(M+H)+.
【0334】
工程10:N-[4-(11,12-ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-4-オキソブタノイル]グリシルグリシル-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-[(5-{[(11a’S)-7’-メトキシ-5’-オキソ-5’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-8’-イル]オキシ}ペンチル)オキシ]-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(5-11)
上記工程9にて得られた化合物(5-10)(0.710g,0.747mmol)と実施例1-2工程1にて得られた化合物(2-2)(0.313g、0.747mmol)をジクロロメタン(1.5mL)とメタノール(0.1mL)の混合溶媒に溶解した。4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(0.264g,0.897mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム:メタノール=100:0(v/v)~80:20(v/v)]にて精製し目的物(5-11)(0.671g,66%)を得た。
1H-NMR(DMSO-D6)δ:9.91(1H,s),8.32(1H,s),8.23-7.91(3H,m),7.81-7.19(14H,m),7.04(1H,m),6.80-6.62(3H,m),5.77-5.75(1H,m),5.20(1H,m),5.01(1H,m),4.79(1H,m),4.46-4.35(1H,m),4.04(4H,m),3.86-3.38(18H,m),3.22-3.15(2H,m),2.67-2.63(1H,m),2.46-2.23(3H,m),2.09-1.91(2H,m),1.80-1.78(5H,m),1.57(3H,m),1.27(3H,s),1.11-1.04(1H,m),0.87-0.79(6H,m),0.63-0.55(6H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:1351(M+H)+.
【0335】
[実施例2-4:薬物リンカー4]
【化48】
【0336】
工程1:メチル(6S)-5-[4-(ベンジルオキシ)-5-メトキシ-2-ニトロベンゾイル]-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-6-カルボキシレート(6-2)
4-(ベンジルオキシ)-5-メトキシ-2-ニトロ安息香酸(6-1)(6.07g,20.0mmol,Tetrahedron 1995,51,5617)、N,N-ジメチルホルムアミド(1.08mL,13.9mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、氷冷下にて塩化オキサリル(3.43mL,40.0mmol)を5分間かけて滴下した。室温にて反応溶液を5時間撹拌した後、減圧留去し、得られた残渣をジクロロメタン(20mL)に溶解させ、減圧留去した。この操作を3回繰り返した後に、残渣をジクロロメタン(5mL)に懸濁させ、これに過剰のジエチルエ-テルとヘキサンを加え、ろ過し、減圧下に乾燥させることにより粗酸クロリドを得た。得られた酸クロリドをジクロロメタンに溶解させ、-40℃(ドライアイス-アセトニトリル浴)に冷却し、メチル(6S)-5-アザスピロ[2.4]ヘプタン-6-カルボキシレート塩酸塩(4.22g,22.0mmol,Tetrahedron Letters 2012.53.3847)、トリエチルアミン(3.36mL,24.2mmol)を徐々に加えた。反応混合物を一晩かけて室温にまで昇温した。反応混合物に1規定塩酸を加え、反応混合物をジクロロメタンで抽出した。有機層を水,飽和炭酸水素ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0~50:50]にて精製し、目的物(6-2)(6.55g,80%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:441(M+H)+
【0337】
工程2:(11a’S)-8’-(ベンジルオキシ)-7’-メトキシ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’,11’(10’H,11a’H)-ジオン(6-3)
上記工程1にて得られた化合物(6-2)(6.55g,16.0mmol)のエタノール(150mL),テトラヒドロフラン(150mL)溶液に窒素雰囲気下、ラネ-ニッケル(7.00g)を加えた。反応混合物にヒドラジン一水和物(7mL)を加え、50℃まで徐々に昇温した。50℃にて2時間撹拌した後にラネ-ニッケル(3.00g)、ヒドラジン一水和物(3mL)を加え、1時間撹拌した。反応混合物にTHF(100mL)を加えて、セライトろ過した。減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0~25:75]にて精製し、目的物(6-3)(4.42g,73%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:379(M+H)+
【0338】
工程3:(11a’S)-8’-(ベンジルオキシ)-7’-メトキシ-10’-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’,11’(10’H,11a’H)-ジオン(6-4)
上記工程2にて得られた化合物(6-3)(10.0g,26.4mmol)のテトラヒドロフラン(150mL)溶液に-40℃にて、2.6mol/Lのノルマルブチルリチウムノルマルヘキサン溶液(12.0mL,31.8mmol)をゆっくりと滴下した。反応溶液を-40℃にて15分間撹拌し後、2-(クロロメトキシ)エチルトリメチルシラン(5.57mL,31.7mmol)をゆっくりと滴下した。反応溶液を室温にて3時間撹拌した後、水を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を水および飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0~30:70]にて精製し、目的物(6-4)(11.8g,88%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:509(M+H)+
【0339】
工程4:(11a’S)-8’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-10’-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’,11’(10’H,11a’H)-ジオン(6-5)
上記工程3にて得られた化合物(6-4)(18.7g,36.8mmol)のテロラヒドロフラン(50mL)、エタノール(100mL)溶液に、窒素雰囲気下において5%のパラジウム炭素触媒(5.00g)を加えた。直ちに窒素風船を水素風船に付け替え、反応混合物を水素雰囲気下にて6時間撹拌した。反応混合物にクロロホルムを加えて希釈し、セライトろ過をした後、濾液を減圧留去して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0~25:75]にて精製し、目的物(6-5)(15.1g,98%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:419(M+H)+
【0340】
工程5:(11a’S)-8’-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7’-メトキシ-10’-{[2-(トリメチルシリル)エトキシ]メチル}-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’,11’(10’H,11a’H)-ジオン(6-6)
上記工程4にて得られた化合物(6-5)(2.77g,6.62mmol)を、実施例2-1工程2と同様に反応させ、目的物(6-6)(3.31g,88%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.36(1H,s),7.25(1H,s),5.55(1H,m),4.65(1H,m),4.24-4.23(1H,m),4.11-4.03(2H,m),3.93(3H,s),3.85-3.78(1H,m),3.72-3.69(2H,m),3.46-3.39(3H,m),2.47-2.44(1H,m),2.25-2.22(1H,m),1.95-1.91(4H,m),1.67-1.59(1H,m),1.03-0.95(2H,m),0.90-0.85(1H,m),0.70-0.66(4H,m),0.05(9H,s).
【0341】
工程6:(11a’S)-8’-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7’-メトキシ-1’,11a’-ジヒドロ-5’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’-オン(6-7)
上記工程5にて得られた化合物(6-6)(3.31g,5.83mmol)を、実施例2-1工程7と同様に反応させ、目的物(6-7)(1.11g,45%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.81(1H,m),7.53(1H,s),6.82(1H,s),4.13-4.06(2H,m),3.97(3H,s),3.88-3.83(1H,m),3.69(1H,m),3.52-3.39(3H,m),2.55-2.52(1H,m),2.06-1.89(5H,m),1.67-1.63(2H,m),0.76-0.72(4H,m).
【0342】
工程7:(11a’S)-8’-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7’-メトキシ-1’,10’,11’,11a’-テトラヒドロ-5’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’-オン(6-8)
上記工程6にて得られた化合物(6-7)(2.56g,6.08mmol)を、実施例2-1工程8と同様に反応させ、目的物(6-8)(1.15g,45%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.60(1H,s),6.07(1H,s),4.11-4.04(1H,m),3.99(2H,m),3.87-3.84(1H,m),3.85(3H,s),3.73(1H,m),3.58-3.53(2H,m),3.47-3.42(3H,m),2.03-1.78(6H,m),1.65-1.63(2H,m),0.77-0.56(4H,m).
【0343】
工程8:プロプ-2-エン-1-イル (11a’S)-8’-[(5-ブロモペンチル)オキシ]-7’-メトキシ-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-カルボキシレート(6-9)
上記工程7にて得られた化合物(6-8)(1.15g,2.72mmol)を、実施例2-1工程9と同様に反応させ、目的物(6-9)(1.14g,82%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.23(1H,s),6.69(1H,s),5.79(1H,s),5.13-5.10(2H,m),4.68-4.66(1H,m),4.48-4.45(2H,m),4.01(2H,m),3.92(3H,s),3.76(1H,m),3.54-3.37(3H,m),2.39(1H,m),1.95-1.90(4H,m),1.68-1.61(3H,m),1.44(1H,m),0.75-0.66(4H,m).
【0344】
工程9:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-7’-メトキシ-8’-{[5-({(11a’S)-7’-メトキシ-5’-オキソ-10’-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-5’,10’,11’,11a’-テトラヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-8’-イル}オキシ)ペンチル]オキシ}-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(6-10)
上記工程8にて得られた化合物(6-9)(0.374g,0.737mmol)と実施例1-1工程10にて得られた化合物(1-11)(0.452g、0.56mmol)を、実施例2-1工程10と同様に反応させ、目的物(6-10)(0.589g,65%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:1234(M+H)+
【0345】
工程10:N-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-{[5-({(11a’S)-7’-メトキシ-5’-オキソ-10’-[(プロプ-2-エン-1-イルオキシ)カルボニル]-5’,10’,11’,11a’-テトラヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-8’-イル}オキシ)ペンチル]オキシ}-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(6-11)
上記工程9にて得られた化合物(6-10)(0.589g,0.477mmol)を、実施例2-1工程11と同様に反応させ、目的物(6-11)(0.382g,71%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:8.90(1H,s),7.55(2H,m),7.25-7.21(2H,m),6.74(2H,m),6.38(1H,s),5.90-5.87(5H,m),5.33-5.09(8H,m),4.66-4.60(8H,m),3.98-3.91(10H,m),3.77-3.30(12H,m),2.42-2.36(2H,m),1.77-1.39(6H,m),0.91-0.70(14H,m).
【0346】
工程11:L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-[(5-{[(11a’S)-7’-メトキシ-5’-オキソ-5’,10’,11’,11a’-テトラヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-8’-イル]オキシ}ペンチル)オキシ]-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド (6-12)
上記工程10にて得られた化合物(6-11)(0.382g,0.341mmol)を、実施例2-1工程12と同様に反応させ、目的物(6-12)(0.200g,62%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:952(M+H)+
【0347】
工程12:N-[4-(11,12-ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン-5(6H)-イル)-4-オキソブタノイル]グリシルグリシル-L-バリル-N-{4-[({[(11’S,11a’S)-11’-ヒドロキシ-7’-メトキシ-8’-[(5-{[(11a’S)-7’-メトキシ-5’-オキソ-5’,10’,11’,11a’-テトラヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-8’-イル]オキシ}ペンチル)オキシ]-5’-オキソ-11’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-10’(5’H)-イル]カルボニル}オキシ)メチル]フェニル}-L-アラニンアミド(6-13)
上記工程11にて得られた化合物(6-12)(0.0560g,0.0588mmol)と実施例1-2工程1にて得られた化合物(2-2)(0.022g、0.053mmol)を、実施例2-1工程13と同様に反応させ、目的物(6-13)(0.0500g,63%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:1354(M+H)+
【0348】
〔糖鎖ドナーの合成〕
実施例3:[N3-PEG(3)]-MSG1-Ox
【0349】
【化49】
【0350】
工程1:(MSG1-)Asn
市販品であるmonosialo-Asn free (1S2G/1G2S-10NC-Asn、(株)糖鎖工学研究所製)(「(MSG-)Asn」と呼ぶ)(500mg)を以下の条件で逆相HPLC分離精製し、1st main peakとして溶出される(MSG1-)Asn(保持時間 15~19 min 付近)と2nd main peakとして溶出される(MSG2-)Asn(保持時間 21~26 min 付近)に分離した。0.1%ぎ酸水溶液を溶離液として使用し、装置にはELS-PDAトリガー分取システム(日本分光株式会社製)を使用し、カラムにはInertsil ODS-3(10um、 30Φx250mm、GLサイエンス社製)を使用し、流速を30mL/minとした。溶出中にUV検出(210nm)された最初のピ-クを分取し、凍結乾燥して、目的物(238mg)を得た。
【0351】
工程2:MSG1
上記工程1で得られた化合物(229mg)を200mMりん酸緩衝溶液(pH6.25)(1145μL)に溶解させ、EndoM(東京化成工業(株)製、1U/mL))水溶液(100μL)を加え、35℃で6日間インキュベートした。反応終了後、反応液をVIVASPIN 15R (Hydrosart膜、30K,6,000xG)を用いて限外ろ過し、得られた通過液を逆相HPLC分離精製した。0.1%トリフルオロ酢酸水溶液を溶離液として使用し、装置にはELS-PDA トリガー分取システム(日本分光株式会社製)、カラムにはInertsil ODS-3(GLサイエンス社製)を使用した。溶出中にUV検出(210nm)された目的物のピークを分取し、凍結乾燥し、目的物(117mg)を得た。
【0352】
工程3:[N3-PEG(3)]-MSG1
5mlサンプリングチューブ((株)イナ・オプティカ)に、11-アジド-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-アミン(0.108mL,0.541mmol)と上記工程2で得られたMSG1(117mg,0.068mmol)の水溶液(1.2mL)を加え、1時間撹拌した後に、凍結乾燥した。凍結乾燥後の5mlサンプリングチューブに、O-(7-アザベンゾトリアゾ-ル-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(103mg,0.27mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(1.2mL)とジイソプロピルエチルアミン(0.046mL,0.27mmol)を加え、37℃で3時間撹拌した。反応終了後、あらかじめジエチルエ-テル(20ml)を加えた遠沈管(50ml)に反応液を移した。小型遠心機(日立工機、CF16RX)を利用して、固形物を沈殿させ、上澄みを取り除いた。さらにジエチルエ-テル(10ml)を加えて、遠心分離操作後、デカンテーションを行った。続いて、アセトニトリル(10mL)を加え、遠心分離後、デカンテーションする操作を二回繰り返した後、減圧下乾燥し、粗生成物を得た。得られた固形物を上記工程2と同様の条件にて逆相HPLC精製を行い、目的物(94.2mg)を得た。
【0353】
工程4:[N3-PEG(3)]-MSG1-Ox
5mLサンプリングチューブ((株)イナ・オプティカ製)に、上記工程3で合成した化合物(100mg)、2-クロロ-1,3-ジメチル-1H-ベンズイミダゾ-ル-3-イウム-クロライド(伏見製薬所製、56mg,0.257mmol)の水溶液(520μl)を加えた。氷冷後の反応液にりん酸三カリウム(165mg,0.78mmol)の水溶液(520μl)を加え、氷冷下で3時間撹拌した。得られた反応液を、アミコンウルトラ(ウルトラセル30K、Merck Millipore製)を用いて限外ろ過し、固形物を除去した。その通過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーにて精製した。装置にはPurif-Rp2(昭光サイエンティフィック製)を使用し、カラムにはHiPrep 26/10 Desalting(GEヘルスケア製)を使用し、移動相に0.03% NH3水溶液を使用し、流速を10mL/min、分画容量を10mLとした。溶出中にUV検出(220nm)された目的物を含むフラクションを一つにまとめ、1N水酸化ナトリウム水溶液(104μl,0.104mmol)を加えて凍結乾燥し、目的物(84mg)を得た。
【0354】
実施例4:[N3-PEG(3)]-MSG-Ox
【化50】
【0355】
工程1:(MSG-)Asnの調製
市販品である1S2G/1G2S-10NC-Asn-Fmoc((株)糖鎖工学研究所製)(「Fmoc-(MSG-)Asn」と呼ぶ)(1000mg)をエタノール/水(1/1)(10mL)に溶解させ、1規定の水酸化ナトリウム水溶液(1.75mL,4当量)を加え、室温で3時間撹拌した。反応終了後、反応液をアミコンウルトラ(30K、ミリポア社製)を用いて限外ろ過し、固形物を除去し、得られた通過液に1N塩酸(832μl,1.9当量)加えた。高速濃縮装置V-10(Biotage社製)を用いて、溶媒を除去した。アセトニトリルを加えて、高速濃縮装置V-10(Biotage社製)を用いて、溶媒を除去した後に、逆相HPLC分離精製 した。0.1%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液を溶離液とし、装置にはPurif-Rp2(昭光サイエンティフィック製)を使用し、カラムにはInertsil ODS-3(GLサイエンス製)を使用した。溶出中にUV検出(220nm)された目的物を含むフラクションを一つにまとめ、凍結乾燥した。再び、純水に溶解させると、pH試験紙で酸性であることが確認されたので、18%アンモニア水(150μl)を加え、pH試験紙で塩基性になったことを確認し、再び凍結乾燥した。得られた目的物(840mg)をそのまま次の反応に用いた。
【0356】
工程2:MSGの合成
工程1にて得られた化合物(840mg)を200mMりん酸緩衝溶液(pH6.25)(6000μL)に溶解させ、EndoM(東京化成工業(株)製、1U/mL))水溶液(200μL)を加え、28℃で26時間インキュベートした。反応が完了していないため、EndoM(東京化成工業(株)製、1U/mL))水溶液(50μL)を加え、28℃で2時間インキュベートした後に、反応が完了するまで室温で放置した。反応終了後、反応液をアミコンウルトラ(30K、ミリポア社製)を用いて限外ろ過した。得られた通過液にトリフルオロ酢酸(80μl)加え、逆相HPLC分離精製した。0.1%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液を溶離液とし、装置にはPurif-Rp2(昭光サイエンティフィック製)を使用し、カラムにはInertsil ODS-3 (GLサイエンス製)を使用した。溶出中にUV検出(220nm)された目的物を含むフラクションを一つにまとめ、凍結乾燥した。残留トリフルオロ酢酸を除く目的で、再度純水に溶解させ、目的化合物(618mg)を無色固体として得た。
ESI-MS: Calcd for C66H110N4O49 : [M+H]+ 1743.62, Found 1743.63
【0357】
工程3:[N3-PEG(3)]-MSGの合成
上記工程2にて得られた化合物(120mg)を用いて、実施例3工程3と同様の手法に従って、目的物(88.6mg)を得た。
ESI-MS: Calcd for C73H124N8O51 :[M+2H]2+ 965.37, Found 965.37
【0358】
工程4[N3-PEG(3)]-MSG-Oxの合成
上記工程3にて得られた合成した化合物(100mg)を用いて、実施例3工程4と同様の手法に従って、目的物(88mg)を得た。
【0359】
実施例5:[N3-PEG(3)]2-SG(10)-Ox
【化51】
【0360】
工程1:[N3-PEG(3)]2-SG(10)
5mlサンプリングチューブ((株)イナ・オプティカ)に、11-アジド-3,6,9-トリオキサウンデカン-1-アミン(0.096mL,0.485mmol)、ジシアロオクタサッカリド(50 mg,0.24mmol)の水溶液(0.5mL)を加え、1時間撹拌した後に、凍結乾燥した。凍結乾燥後の5mlサンプリングチューブに、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(92mg,0.24mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド溶液(0.6mL)とジイソプロピルエチルアミン(0.042mL,0.24mmol)を加え、37℃で4時間撹拌した。反応終了後、あらかじめジエチルエ-テル(20ml)を加えた遠沈管(50ml)に反応液を移した。小型遠心機(日立工機、CF16RX)を利用して、固形物を沈殿させ、上澄みを取り除いた。ジエチルエ-テル(20ml)を加えて、デカンテーションした。続いて、アセトニトリル(20mL)を加えて、デカンテーションした後に、減圧下乾燥し、粗生成物を得た。得られた固形物を適量の0.2%トリフルオロ酢酸水溶液に溶解させ、逆相HPLC分離精製した。0.1%トリフルオロ酢酸水溶液と0.1%トリフルオロ酢酸アセトニトリル溶液を溶離液とし、装置にはPurif-Rp2(昭光サイエンティフィック製)を使用し、カラムにはInertsil ODS-3(GLサイエンス製)を使用した。溶出中にUV検出(220nm)された目的物を含むフラクションを一つにまとめ、凍結乾燥して、目的物(42mg)を得た。
【0361】
工程2:[N3-PEG(3)]2-SG(10)-Ox
5mLサンプリングチューブ((株)イナ・オプティカ製)に、上記工程1で合成した化合物(40mg)、2-クロロ-1,3-ジメチル-1H-ベンズイミダゾール-3-イウム-クロライド(伏見製薬所製、17.9mg,0.083mmol)の水溶液(200μl)を加えた。氷冷後の反応液にりん酸三カリウム(52.6mg,0.25mmol)の水溶液(200μl)を加え、氷冷下で2時間撹拌した。得られた反応液を、アミコンウルトラ(ウルトラセル30K、 Merck Millipore製)を用いて限外ろ過し、固形物を除去した。その通過液を、ゲルろ過クロマトグラフィーにて精製した。装置にはPurif-Rp2(昭光サイエンティフィック製)を使用し、カラムにはHiPrep 26/10 Desalting(GEヘルスケア製)を使用し、移動相に0.03%-NH3水溶液を使用し、流速を10mL/min、分画容量を10mLとした。溶出中にUV検出(220nm)された目的物を含むフラクションを一つにまとめ、1N水酸化ナトリウム水溶液(33μl,0.033mmol)を加えて凍結乾燥し、目的物(34mg)を得た。
【0362】
実施例6:マウス抗CLDN6抗体B1産生ハイブリドーマ(218B1)及びマウス抗CLDN6抗体C7産生ハイブリドーマ(218C7)
6-1.マウスの免疫とハイブリドーマの取得
1-1)マウス免疫に用いる細胞の準備
2×106個もしくは5×106個のNOR-P1細胞(ヒト膵がん細胞株、RIKEN RCB-2139)をRPMI-1640(Roswell Park Memorial Institute-1640)10%FBS(ウシ胎児血清)(+)培地(10mlもしくは20ml)で5日間培養後に回収し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で2回洗浄し、PBS(300μl)中に再懸濁した。
【0363】
1-2)マウスへの免疫
BALB/cマウス(12週齢)に対し、1~5回目の免疫は約1週間間隔でNOR-P1細胞(2×106個)を腹腔内へ免疫した。5回目の免疫より約2週間後にNOR-P1細胞(5×106個)を腹腔内へ免疫した。6回目の免疫より約3週間後にNOR-P1細胞(2×106個)を腹腔内へ免疫した。8~10回目は約2週間間隔で2×106個のNOR-P1細胞を腹腔内へ免疫した。10回目の約3週間後(11回目)及びその3日後(12回目、最終免疫)では、5×106個のNOR-P1細胞を腹腔内へ免疫した。脾臓細胞は最終免疫から3日後に摘出した。
【0364】
1-3)免疫したマウスの脾臓細胞の準備
免疫済みマウスの脾臓を摘出し、すりつぶしてRPMI1640 10%FBS(+)培地に懸濁した。細胞懸濁液をセルストレイナー(70μm、BD Falcon社)に通した後、1500rpmで5分間、室温にて遠心して上清を廃棄した。Tris-NH4Cl溶液(20mM Tris-HCl pH7.2、77.6mM NH4Cl;20mL)を加え、室温で5分間処理した。PBS(20mL)を加え、1500rpmで5分間、室温にて遠心した。上清を廃棄した後に、RPMI1640 FBS(+)培地(10ml)を加えた。
【0365】
1-4)ミエローマ細胞の準備
P3U1細胞(マウスミエローマ細胞株)をRPMI1640 FBS(+)培地で5日間培養した後に回収し、RPMI1640 FBS(+)培地(20ml)に再懸濁した。
【0366】
1-5)細胞融合
脾臓細胞とミエローマ細胞を5:1になるように混合し、1500rpmで5分間、室温にて遠心した。RPMI1640 FBS(-)培地(10ml)で2回洗浄した後に、遠心分離(1500rpm、5分間)した。得られた沈殿画分の細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、ポリエチレングリコール-1500(PEG-1500;1ml)を約1分かけて徐々に加えた。3分30秒間攪拌した後に、30秒間室温で静置した。その後、該細胞液に1分かけてRPMI培地 10%Low IgG FBS(+)(10ml)を加えた。該細胞懸濁液を遠心分離(1500rpm、5分間)し、得られた沈殿画分の細胞をゆるやかにほぐした後、HAT培地(10%Low IgG FBS、HAT Media Supplement、5%BriCloneを含むRPMI1640培地;200ml)中にゆるやかに懸濁した。該懸濁液を96ウェル培養用プレートに200μl/ウェルずつ分注し、37℃、5% CO2のインキュベーター中で、6日間培養した。
【0367】
1-6)ハイブリドーマのスクリーニング・プローブの準備
抗体の内在化及びイムノトキシン活性の測定を目的にリコンビナント複合蛋白質であるDT3Cを作製した。このDT3Cは、ジフテリア毒素(DT)の触媒領域と連鎖球菌プロテインGの抗体結合領域を遺伝子工学的に融合させた蛋白質である。DT3Cは抗体のFc部分に特異的に結合し、細胞内へ取り込まれると蛋白質合成阻害により細胞死を誘導する。この系を用いることで抗体の内在化とイムノトキシンによる殺細胞効果を同時に観察することができる(Yamaguchi, M. et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 454 (2014) 600-603)。
【0368】
1-7)DT3Cによるハイブリドーマのスクリーニング
96ウェルプレートに4μg/mlのDT3C(25μl)を加え、さらに工程1-5で取得されたハイブリドーマの培養上清(25μl)を加え、室温で30分インキュベーションした。2×105個/ml(RPMI培地 10%Low IgG FBS(+))のNOR-P1細胞(50μl)を播種し、37℃ CO2インキュベーターで3日間培養した。培養後の顕微鏡観察により、陰性対照抗体を用いた際の付着細胞数の約25%以下の付着細胞数を示したウェルを陽性と判定した。選抜したクローンは1~2回サブクローニングを行い、モノクローナルなハイブリドーマ細胞株8株を樹立した。
【0369】
6-2:ハイブリドーマの産生する抗体の結合する抗原の同定
実施例6-1において調製されたハイブリドーマの産生する抗体のうち2つのクローン218B1及び218C7について抗原の同定を行った。
2-1)ビオチンラベルした細胞表面蛋白質の218B1抗体及び218C7抗体を用いた免疫沈降
2×106個のNTERA-2細胞(ヒト精巣がん細胞株、ATCC CRL-1973)の培養上清を除去し、PBSで2回洗浄した。EZ-Link Sulfo-NHS-Biotin(Thermo Fisher SCIENTIFIC社)を0.1mg/mlの濃度でPBSに懸濁した。PBSを除去した後に、Biotin/PBS溶液を加え、30分間振盪器上でインキュベーションした後に100mMグリシン/PBS溶液(25ml)で2回洗浄し、その後、PBS(10ml)で1回洗浄した。洗浄後の細胞を200μlの溶解バッファー(150mM NaCl、50mM Tris-HCl pH7.4、1%DDM、Protease inhibitor、Complete EDTA free(Roche社)1粒/50ml)中に再懸濁し、4℃で30分間処理した。遠心分離(13000rpm、20分間、4℃)して細胞溶解液を調製した。Protein G Sepharose(Protein G Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare社))のバッファーを溶解バッファーに置換して得られたProtein G Sepharose/溶解バッファー(50%スラリー;30μl)を細胞溶解液に加え、4℃で30分間ローテートした後に4℃で1分間遠心し、上清を回収した。この上清に218B1抗体あるいは218C7抗体(約3μg)を加え、4℃で30分間ローテートした後にProtein G Sepharose/溶解バッファー(50%スラリー;60μl)を加え、4℃で1時間ローテートした。溶解バッファー(1ml)でProtein G Sepharoseを6回洗浄した後に1×SDSサンプルバッファー(BioRad社)に再懸濁した。100℃で5分間懸濁液を処理した後、溶液を回収し、SDS-PAGE(ポリアクリルアミドゲル電気泳動)のためのサンプルとした。
【0370】
2-2)SDS-PAGE及びウエスタンブロッティング
2-1)で調製したSDS-PAGEサンプルをSuperSep Ace 5ー20%(Wako社)を用いて、50mVで30分間スタッキングした後に、200mVで1時間泳動した後、ゲルよりメンブレンへ12mVで47分間ブロッティングした。メンブレンをPBS-T(PBS(-)-0.02% Tween 20)で洗浄した後、1時間ブロッキングを行った。メンブレンをPBS-Tで5分間3回洗浄した後にStreptavidin-horseradish peroxidase conjugate(GE Healthcare社;PBS-Tで2000倍に希釈して使用)と1時間反応させた。メンブレンをPBS-Tで5分間2回洗浄した後に、目的のバンドをenhanced chemiluminecscence(ECL)法を用いて検出した。218B1抗体及び218C7抗体を用いたいずれの場合においても、DTTの添加の有無によらず分子量18kDaのバンドが検出された。
【0371】
2-3)細胞蛋白質の218B1抗体及び218C7抗体を用いた免疫沈降産物の質量分析
2×107個のNTERA-2細胞を回収し、PBSで2回洗浄した。セルスクレーパーを用いて細胞を回収し、1500rpm、5分間遠心した。上清を除去した後に2mlの溶解バッファー中に再懸濁し、4℃で30分間処理した。遠心分離(13000rpm、20分間、4℃)して細胞溶解液を調製した。Protein G Sepharose/溶解バッファー(50%スラリー;180μl)を細胞溶解液に加え、4℃で30分間ローテートした後に4℃で1分間遠心し、上清を回収した。この上清に218B1抗体(約9μg)を加え、4℃で30分間ローテートした後にProtein G Sepharose/溶解バッファー(50%スラリー;180μl)を加え、4℃で1時間ローテートした。溶解バッファー(1ml)でProtein G Sepharoseを6回洗浄した後に1×SDSサンプルバッファーに再懸濁した。100℃で5分間懸濁液を処理した後、溶液を回収し、SDS-PAGEのためのサンプルとした。2-2)と同様の方法でSDS-PAGEを行い、泳動ゲルをCBB染色した。泳動ゲルより18kDaに相当する部分を切り出し、質量分析に供した。質量分析の結果、該ゲル片はClaudin-6を含むことが判明した。
【0372】
2-4)FACS解析
質量分析から218B1抗体及び218C7抗体の抗原がClaudin-6であることが予測できたため、cDNAの遺伝子導入による強制発現解析を行った。FACS解析の結果、ヒトClaudin-6発現CHO-K1細胞では218B1抗体及び218C7抗体は強陽性反応を示したため、218B1抗体及び218C7抗体の抗原はClaudin-6であることが示された。
【0373】
2-5)ハイブリドーマ培養上清からの抗体の精製
マウス抗CLDN6抗体B1産生ハイブリドーマ(218B1)及びマウス抗CLDN6抗体C7産生ハイブリドーマ(218C7)を、10%のFetal Bovine Serum, Ultra-Low IgG(Thermo Fisher Scientific)を含むHybridoma-SFM(Thermo Fisher Scientific)で培養した。培養上清を遠心により回収し0.45μmのフィルター(Corning社製)でろ過した。rProtein Aアフィニティークロマトグラフィー(4~6℃下)1段階工程で、培養上清から抗体を精製した。rProtein Aアフィニティークロマトグラフィー精製後のバッファー置換工程は4~6℃下で実施した。最初に培養上清をPBSで平衡化したMabSelectSuRe(GE Healthcare Bioscience社製)が充填されたカラムにアプライした。培養液がカラムに全て入ったのち、カラム容量2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2M アルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBS(-)への液置換を行った。最後にCentrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社,4℃下)にて濃縮し、IgG濃度を1 mg/mL以上に調製した。Minisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0374】
実施例7:マウス抗CLDN6抗体B1及びC7のin vitro評価
7-1:フローサイトメトリーによるマウス抗CLDN6抗体の結合能評価
実施例6で作製したマウス抗CLDN6抗体のヒトCLDN6及びファミリー分子CLDN3、CLDN4、CLDN9結合性をフローサイトメトリー法により評価した。Origene社より購入したhuman CLDN3/pCMV6-Entry, human CLDN4/pCMV6-Entry, human CLDN6/pCMV-Entry, human CLDN9/pCMV6-Entry, またはpCMV6-Entryを、293T細胞 (Thermo Fisher Scientific HCL4517)にLipofectamine 2000 (Thermo Fisher Scientific)を用いて一過性に導入し、37℃、5%CO2の条件下で一晩培養した後、細胞懸濁液を調製した。遺伝子導入した293T細胞懸濁液を遠心し、上清を除去した後、マウス抗CLDN6抗体(クローン番号はB1、C7)、又はマウスIgG1コントロール抗体(R&D Systems)を終濃度30μg/mL, 10μg/mL, 3.3μg/mL, 1.1μg/mLで加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5%のウシ胎児血清(Hyclone)を含むDulbecco’s phosphate buffered saline (Sigma-Aldrich)(以下、5%FBS含有PBS)で2回洗浄した後、5%FBS含有PBSで500倍希釈したFLUORESCEIN-CONJUGATED GOAT IGG FRACTION TO MOUSE IGG (WHOLE MOLECULE) (MP BIOMEDICALS)を加えて懸濁し、4℃で1時間静置した。5%FBS含有PBSで2回洗浄した後、フローサイトメーター(FC500;Beckman Coulter)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行った。なお、各遺伝子導入の確認は、細胞を0.25%Tween20含有PBSで透過処理した後にマウス抗FLAG抗体(Sigma-Aldrich)を用いて行った。結果を図11に示す。図11のグラフにおいて、縦軸は抗体結合量を表すFITCの蛍光強度、横軸は抗体濃度を示す。作製したマウス抗CLDN6抗体はヒトCLDN6とヒトCLDN9に同程度に結合し、ヒトCLDN3、ヒトCLDN4には結合しなかった。マウスコントロールIgG1はいずれの細胞にも結合しなかった。
【0375】
7-2:抗体内在化活性
マウス抗CLDN6抗体B1およびC7の内在化活性は、蛋白質合成を阻害する毒素(サポリン)を結合させた抗マウスIgG試薬Mab-ZAP(ADVANCED TARGETING SYSTEMS)を用いて評価した。この評価では、マウス抗CLDN6抗体の内在化活性に依存してMab-ZAPが細胞内に取り込まれ、蛋白質合成を阻害するサポリンが細胞内に放出されることで、細胞増殖が抑制される。
ヒトCLDN6陽性細胞のヒト絨毛がん株であるJEG-3(ATCC HTB-36)、ヒトCLDN6陽性細胞のヒト卵巣がん株であるNIH:OVCAR-3 (ATCC HTB-161)、又はヒトCLDN6陰性細胞のヒト膵臓がん株であるBxPC-3(ATCC CRL-1687)を2x103 cells/wellで96穴細胞培養用マイクロプレートに播種して37℃、5% CO2の条件下で一晩培養した。翌日、マウス抗CLDN6抗体、又はマウスIgG1抗体(R&D Systems)を終濃度1nMとなるように、Mab-ZAP(終濃度:0.5nM)、又は毒素を結合していないAffiniPure Goat Anti-Mouse IgG, Fcγ Fragment Specific (Jackson ImmunoResearch) (終濃度:0.5 nM)と混合した混合溶液を添加して、37℃、5% CO2の条件下で5日間培養した。生存細胞数は、CellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega)を用いたATP活性の定量で測定した。抗CLDN6抗体添加による細胞増殖抑制作用は、混合溶液非添加ウェルの値を100%とする相対生存率で求めた。図12に結果を示す。マウス抗CLDN6抗体(B1、C7)はヒトCLDN6陽性細胞株JEG-3とNIH:OVCAR-3に対して細胞増殖抑制効果を認めた。一方、ヒトCLDN6陰性細胞株BxPC-3に対しては細胞増殖抑制効果を認めなかった。また、マウスIgG1抗体はいずれの細胞株に対しても細胞増殖抑制効果を認めなかった。この結果、作製した抗CLDN6抗体(B1、C7)は内在化活性を有し、抗体―薬物コンジュゲート用の抗体として適すると考えられる。
【0376】
実施例8:マウス抗CLDN6抗体B1及びC7の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
8-1:B1抗体の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
8-1-1:B1抗体産生ハイブリドーマのtotal RNAの調製
B1抗体の可変領域をコードするcDNAを増幅するため、B1抗体産生ハイブリドーマよりTRIzol Reagent(Ambion社)を用いてtotal RNAを調製した。
8-1-2:5’-RACE PCRによるB1抗体の軽鎖可変領域をコードするcDNAの増幅と配列の決定
軽鎖可変領域をコードするcDNAの増幅は、実施例8-1-1で調製したtotal RNAの約1μgとSMARTer RACE 5’/3’ Kit(Clontech社)を用いて実施した。B1抗体の軽鎖遺伝子の可変領域をコードするcDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして、UPM (Universal Primer A Mix:SMARTer RACE 5’/3’ Kitに付属)、及び公知のマウス軽鎖の定常領域の配列から設計したプライマーを用いた。
5’-RACE PCRで増幅した軽鎖の可変領域をコードするcDNAをプラスミドにクローニングし、次に軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列のシークエンス解析を実施した。
決定されたB1抗体の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号18に示し、アミノ酸配列を配列番号19に示す。
8-1-3:5’-RACE PCRによるB1抗体の重鎖可変領域をコードするcDNAの増幅と配列の決定
重鎖可変領域をコードするcDNAの増幅は、実施例8-1-1で調製したtotal RNAの約1μgとSMARTer RACE 5’/3’ Kit(Clontech社)を用いて実施した。LB1抗体の重鎖遺伝子の可変領域をコードするcDNAをPCRで増幅するためのプライマーとして、UPM (Universal Primer A Mix:SMARTer RACE 5’/3’ Kitに付属)、及び公知のマウス重鎖の定常領域の配列から設計したプライマーを用いた。
5’-RACE PCRで増幅した重鎖の可変領域をコードするcDNAをプラスミドにクローニングし、次に重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列のシークエンス解析を実施した。決定されたB1抗体の重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号20に示し、アミノ酸配列を配列番号21に示す。
【0377】
8-2:C7抗体の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列の決定
実施例8-1と同様の方法で実施した。決定されたC7抗体の軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号22に示し、アミノ酸配列を配列番号23に示す。重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列を配列番号24に示し、アミノ酸配列を配列番号25に示す。
【0378】
実施例9:キメラ化抗CLDN6抗体chB1の作製
9-1:キメラ化抗CLDN6抗体chB1の発現ベクターの構築
9-1-1:キメラ化及びヒト化軽鎖発現ベクターpCMA-LKの構築
プラスミドpcDNA3.3-TOPO/LacZ(Invitrogen社)を制限酵素XbaI及びPmeIで消化して得られる約5.4kbのフラグメントと、配列番号26に示すヒト軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片をIn-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、pcDNA3.3/LKを作製した。pcDNA3.3/LKからネオマイシン発現ユニットを除去することによりpCMA-LKを構築した。
9-1-2:キメラ化及びヒト化IgG1LALAタイプ重鎖発現ベクターpCMA-G1LALAの構築
pCMA-LKをXbaI及びPmeIで消化して軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片と、配列番号27で示されるヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1LALA定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片をIn-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて結合して、pCMA-G1LALAを構築した。
9-1-3:キメラ化chB1重鎖発現ベクターの構築
配列番号33に示すchB1重鎖のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、pCMA-G1LALAを制限酵素BlpIで切断した箇所に合成したDNA断片を挿入することによりchB1重鎖発現ベクターを構築した。chB1重鎖のアミノ酸配列を配列番号32に示す。
9-1-4:キメラ化chB1軽鎖発現ベクターの構築
配列番号29に示すchB1軽鎖をコードするDNA配列を含むDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、合成したDNA断片とpCMA-LKをXbaI及びPmeIで消化して軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域を取り除いたDNA断片を結合することにより、chB1軽鎖発現ベクターを構築した。chB1軽鎖のアミノ酸配列を配列番号28に示す。
【0379】
9-2:キメラ化抗CLDN6抗体chB1の生産及び精製
9-2-1:キメラ化抗体chB1の生産
FreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)はマニュアルに従い、継代、培養を行なった。対数増殖期の1.2×10 9 個のFreeStyle 293F細胞(Invitrogen社)を3L Fernbach Erlenmeyer Flask(CORNING社)に播種し、FreeStyle293 expression medium(Invitrogen社)で希釈して2.0×10 6 細胞/mLに調製した。40 mLのOpti-Pro SFM培地(Invitrogen社)に0.24mgの重鎖発現ベクターと0.36 mgの軽鎖発現ベクターと1.8 mgのPolyethyleneimine(Polyscience #24765)を加えて穏やかに攪拌し、さらに5分間放置した後にFreeStyle 293F細胞に添加した。37℃、8%CO2インキュベーターで4時間、90rpmで振とう培養後に600 mLのEX-CELL VPRO培地(SAFC Biosciences社)、18 mLのGlutaMAX I(GIBCO社)、及び30 mLのYeastolate Ultrafiltrate(GIBCO社)を添加し、37℃、8%CO2インキュベーターで7日間、90rpmで振とう培養して得られた培養上清をDisposable Capsule Filter (Advantec #CCS-045-E1H)でろ過した。取得したキメラ化抗CLDN6抗体を「chB1」と命名した。
9-2-2:キメラ化抗体chB1の精製
実施例9-2-1で得られた培養上清から抗体をrProtein Aアフィニティークロマトグラフィーの1段階工程で精製した。培養上清をPBSで平衡化したMabSelectSuReが充填されたカラム(GE Healthcare Bioscience社製)にアプライしたのちに、カラム容量の2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で溶出し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBS(-)へのバッファー置換を行った。Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社)で抗体を濃縮し、IgG濃度を1mg/mL以上に調製した。最後にMinisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0380】
実施例10:ヒト化抗CLDN6抗体の作製
10-1:抗CLDN6抗体のヒト化体デザイン
10-1-1:キメラ化抗体chB1の可変領域の分子モデリング
chB1の可変領域の分子モデリングは、ホモロジーモデリングとして公知の方法(Methods in Enzymology,203,121-153,(1991))を利用した。chB1の重鎖と軽鎖の可変領域に対して高い配列同一性を有するProtein Data Bank(Nuc.Acid Res.35,D301-D303(2007))に登録されている構造(PDB ID:1XIW)を鋳型に、市販の蛋白質立体構造解析プログラムBioLuminate(Schrodinger社製)を用いて行った。
10-1-2:ヒト化アミノ酸配列の設計
chB1は、CDRグラフティング(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029-10033(1989))によりヒト化した。Kabat et al.(Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed.Public Health Service National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))において既定されるヒトのgamma鎖サブグループ1およびkappa鎖サブグループ1のコンセンサス配列が、chB1のフレームワーク領域に対して高い同一性を有することから、それぞれ、重鎖と軽鎖のアクセプターとして選択された。アクセプター上に移入すべきドナー残基は、Queen et al.(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86,10029-10033(1989))によって与えられる基準などを参考に三次元モデルを分析することで選択された。なお、CDRL3が疎水的なアミノ酸に富んでいたため、CDRL3に変異を導入したヒト化軽鎖も設計した。
【0381】
10-2:chB1重鎖のヒト化
設計された3種の重鎖をhH1、hH2及びhH3と命名した。hH1の重鎖全長アミノ酸配列を、配列番号52に記載する。配列番号52のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号53に記載する。hH2の重鎖全長アミノ酸配列を、配列番号56に記載する。配列番号56のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号57に記載する。hH3の重鎖全長アミノ酸配列を、配列番号60に記載する。配列番号60のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号61に記載する。
【0382】
10-3:chB1軽鎖のヒト化
設計された4種の軽鎖をhL1、hL2、hL3及びhL4と命名した。hL1の軽鎖全長アミノ酸配列を、配列番号36に記載する。配列番号36のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号37に記載する。hL2の軽鎖全長アミノ酸配列を、配列番号40に記載する。配列番号40のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号41に記載する。hL3の軽鎖全長アミノ酸配列を、配列番号44に記載する。配列番号44のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列は、配列番号45に記載する。hL4の軽鎖全長アミノ酸配列を、配列番号48に記載する。配列番号48のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を、配列番号49に記載する。
【0383】
10-4:重鎖及び軽鎖の組み合わせによるヒト化抗体の設計
hH1及びhL1からなる抗体を「H1L1抗体」又は「H1L1」と称する。hH2及びhL2からなる抗体を「H2L2抗体」又は「H2L2」と称する。hH1及びhL3からなる抗体を「H1L3抗体」又は「H1L3」と称する。hH2及びhL4からなる抗体を「H2L4抗体」又は「H2L4」と称する。hH3及びhL3からなる抗体を「H3L3抗体」又は「H3L3」と称する。
【0384】
10-5:ヒト化抗CLDN6抗体の作製
10-5-1:ヒト化重鎖発現ベクターの構築
10-5-1-1:hH1発現ベクターの構築
配列番号53に示すhH1のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例9-1-3と同様の方法でhH1発現ベクターを構築した。
10-5-1-2:hH2発現ベクターの構築
配列番号57に示すhH2のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例9-1-3と同様の方法でhH2発現ベクターを構築した。
10-5-1-3:hH3発現ベクターの構築
配列番号61に示すhH2のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号36乃至440に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例9-1-3と同様の方法でhH3発現ベクターを構築した。
10-5-2:ヒト化軽鎖発現ベクターの構築
10-5-2-1:hL1発現ベクターの構築
配列番号37に示すhL1のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至402に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。In-Fusion HD PCRクローニングキット(Clontech社)を用いて、pCMA-LKを制限酵素BsiWIで切断した箇所に合成したDNA断片を挿入することによりhL1発現ベクターを構築した。
10-5-2-2:hL2発現ベクターの構築
配列番号41に示すhL2のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至402に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例10-5-2-1と同様の方法でhL2発現ベクターを構築した。
10-5-2-3:hL3発現ベクターの構築
配列番号45に示すhL3のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至402に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例10-5-2-1と同様の方法でhL3発現ベクターを構築した。
10-5-2-4:hL4発現ベクターの構築
配列番号49に示すhL4のヌクレオチド配列のヌクレオチド番号37乃至402に示されるDNA断片を合成した(GENEART社)。実施例10-5-2-1と同様の方法でhL4発現ベクターを構築した。
10-5-3:ヒト化抗体の調製
10-5-3-1:ヒト化抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、及びH3L3の生産
実施例9-2-1と同様の方法で生産した。実施例10-4に示した重鎖と軽鎖の組み合わせに対応する重鎖発現ベクターと軽鎖発現ベクターの組み合わせにより、H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、及びH3L3を生産した。
10-5-3-2:ヒト化抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、及びH3L3の2step精製
実施例10-5-3-1で得られた培養上清をrProtein Aアフィニティークロマトグラフィーとセラミックハイドロキシアパタイトの2段階工程で精製した。培養上清をPBSで平衡化したMabSelectSuReが充填されたカラム(GE Healthcare Bioscience社製)にアプライした後に、カラム容量の2倍以上のPBSでカラムを洗浄した。次に2Mアルギニン塩酸塩溶液(pH4.0)で抗体を溶出した。抗体の含まれる画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりPBSへのバッファー置換を行い、5mMリン酸ナトリウム/50mM MES/pH7.0のバッファーで5倍希釈した後に、5mM NaPi/50mM MES/30mM NaCl/pH7.0のバッファーで平衡化したセラミックハイドロキシアパタイトカラム(日本バイオラッド、Bio-Scale CHT Type-1 Hydroxyapatite Column)にアプライした。塩化ナトリウムによる直線的濃度勾配溶出を実施し、抗体の含まれる画分を集めた。その画分を透析(Thermo Scientific社、Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette)によりHBSor(25mM ヒスチジン/5% ソルビトール、pH6.0)へのバッファー置換を行った。Centrifugal UF Filter Device VIVASPIN20(分画分子量UF10K,Sartorius社)にて抗体を濃縮し、IgG濃度を50mg/mLに調製した。最後にMinisart-Plus filter(Sartorius社)でろ過し、精製サンプルとした。
【0385】
実施例11:フローサイトメトリーによるヒト化抗CLDN6抗体の結合能評価
実施例10で作製したヒト化抗CLDN6抗体のヒトCLDN6及びファミリー分子CLDN3、CLDN4、CLDN9結合性をフローサイトメトリー法により評価した。実施例7-1と同様の手法にて一過性に遺伝子導入した293T細胞を使用した。ヒトCLDN6又はヒトCLDN9遺伝子を導入した細胞には、ヒト化抗CLDN6抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、及びH3L3、又はヒトIgG1コントロール抗体(CALBIOCHEM)を終濃度100nM、20nM、4nM、0.8nMで加えて懸濁し、4℃で30分静置した。ヒトCLDN3、ヒトCLDN4遺伝子、又は空のベクターを導入した細胞には、ヒト化抗CLDN6抗体H1L1、H2L2、H1L3、H2L4、及びH3L3を終濃度100 nMで加えて懸濁し、4℃で30分静置した。5%のウシ胎児血清(Hyclone)を含むDulbecco’s phosphate buffered saline (Sigma-Aldrich)(以下、5%FBS含有PBS)で洗浄した後、5%FBS含有PBSで150倍希釈したFITC AffiniPureF(ab’)2 Fragment Goat Anti-Human IgG(H+L) (Jackson ImmunoResearch)を加えて懸濁し、4℃で30分静置した。5%FBS含有PBSで洗浄した後、フローサイトメーター(FC500;Beckman Coulter)で検出を行った。データ解析はFlowJo(TreeStar)で行い、抗体の結合量を示すFITCの平均蛍光強度(MFI)を算出した。結果を図13に示す。図13のグラフにおいて、横軸は抗体濃度、縦軸はMFIを示す。作製したヒト化抗CLDN6抗体はヒトCLDN6とヒトCLDN9に同程度に結合し、ヒトCLDN3、ヒトCLDN4には結合しなかった。ヒトコントロールIgG1はいずれの細胞にも結合しなかった。
【0386】
〔糖鎖リモデリング抗体の調製〕
実施例12:糖鎖変換1(T-SG)
【化52】
【0387】
工程1:(Fucα1,6)GlcNAc-Trastuzumabの調製
参考例1で調製したTrastuzumab溶液22mg/mLの(25mMヒスチジン溶液(pH6.0)、5%ソルビトール溶液)(45.5mL)を共通操作Cを用いて、50mMりん酸緩衝液(pH6.0)への緩衝液交換を二回に分けて行った。得られた28.1mg/mLのTrastuzumab溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0)(18mL)と28.0mg/mLの同溶液(18mL)に、2.0mg/mL野生型EndoS溶液(PBS)をそれぞれ1.26mL、1.27mL加え、37℃で4時間インキュベートした。反応の進行具合をExperion電気泳動ステーション(BIO-RAD製)を用いて確認した。反応終了後、以下の方法に従い、アフィニティークロマトグラフィーによる精製とハイドロキシアパタイトカラムによる精製を行った。
【0388】
(1)アフィニティークロマトグラフィーによる精製
精製装置:AKTA pure150(GE ヘルスケア製)
カラム:HiTrap rProtein A FF (5mL)(GE ヘルスケア製)
流速:5mL/min(チャージ時は1.25mL/min)
上記で得た反応液を複数回に分けて精製した。カラムは2連結し、カラムへの結合時は、反応液をカラム上部へ添加し、結合バッファー(20mMりん酸緩衝液(pH6.0))を1.25mL/minで2CV流し、更に5mL/minで5CV流した。中間洗浄時は、洗浄溶液(20mMりん酸緩衝液(pH7.0)、0.5M 塩化ナトリウム溶液)を15CV流した。溶出時は、溶出バッファー(ImmunoPure IgG Eution buffer、PIERCE製)を6CV流した。溶出液を1M トリス緩衝液(pH9.0)で直ちに中和した。溶出中にUV検出(280nm)されたフラクションについて、微量分光光度計Xpose(Trinean製)、及びExperion電気泳動ステーション(BIO-RAD製)を用いて確認した。目的物を含むフラクションを共通操作Cを用いて、5mMりん酸緩衝液50mM2-モルホリノエタンスルホン酸(MES)溶液(pH6.8)への緩衝液交換を行った。
【0389】
(2)ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーによる精製
精製装置:AKTA avant25(GE ヘルスケア製)
カラム:Bio-Scale Mini CHT Type Iカートリッジ(5mL)(BIO-RAD製)
流速:5mL/min(チャージ時は1.25mL/min)
カラムを2連結し、上記(1)で得られた溶液を複数回に分けて精製した。溶液をカラムの上部へ添加し、A液(5mMりん酸緩衝液50mM-モルホリノエタンスルホン酸(MES)溶液(pH6.8))を1.25mL/minで2CV流し、更に5mL/minで3CV流した。その後、A液とB液(5mMりん酸緩衝液50mM-モルホリノエタンスルホン酸(MES)溶液(pH6.8)、2M塩化ナトリウム溶液)を用いて、溶出した。溶出条件は、A液:B液=100:0~0:100(15CV)である。さらに、洗浄溶液(500mMりん酸緩衝液(pH6.5))を5CV流した。
目的物を含むフラクションを共通操作Cを用いて緩衝液交換を行い、25.5mg/mLの(Fucα1,6)GlcNAc-Trastuzumab溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(35mL)を得た。
【0390】
工程2:Trastuzumab[SG-(N322の調製
上記工程1にて得られた23.9mg/mL (Fucα1,6)GlcNAc-Trastuzumab溶液 (50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(3.37mL)に、実施例5工程2で合成した化合物(12.9mg)の50mMりん酸緩衝液(pH6.0)溶液(0.258mL)、4.90mg/mLのEndoS D233Q/Q303L溶液(PBS)(0.328mL)を加えて、30℃で4.5時間インキュベートした。以上の操作を2ロット行った。反応の進行具合をExperion電気泳動ステーション(BIO-RAD製)を用いて確認した。反応終了後、上記工程1と同様にアフィニティークロマトグラフィーによる精製とハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーによる精製を行った後、目的物を含むフラクションを共通操作Cを用いてりん酸緩衝生理食塩水(pH6.0)へ緩衝液交換を行い、10.0mg/mLのTrastuzumab[SG-(N322溶液(りん酸緩衝生理食塩水(pH6.0))(15.5mL)を得た。
【0391】
実施例13:糖鎖変換2(T-MSG)
【化53】
【0392】
工程1:Trastuzumab[MSG-N32
以下の操作を5ロット行った。実施例12工程1にて得られた化合物(20mg/mL,15.0mL)を用いて、実施例4工程4にて得られた化合物(25.5mg)を糖鎖供与体として使い、30℃で3時間インキュベートし、実施例12工程2と同様の操作を行った。5ロット合わせて、14.4mg/mL Trastuzumab[MSG-N32溶液(りん酸緩衝生理食塩水(pH6.0))(93.5mL)を得た。
【0393】
実施例14:糖鎖変換3(T-MSG1)
【化54】
【0394】
工程1:Trastuzumab[MSG1-N32
以下の操作を2ロット行った。実施例12工程1で得られた化合物(25.5mL,7.8mL)を用いて、実施例3工程4にて得られた化合物(25.5mg)を糖鎖供与体として使い、30℃で3時間インキュベートし、実施例12工程2と同様の操作を行った。2ロット合わせて、10.6mg/mL Trastuzumab[MSG1-N32溶液(りん酸緩衝生理食塩水(pH6.0))(31mL)を得た。
【0395】
実施例15:糖鎖変換4(CLDN6-MSG1(H1L1))
【化55】
【0396】
工程1:(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6抗体(H1L1)
実施例10で調製した抗CLDN6抗体(H1L1)溶液ca.37.7mg/mL(25mMヒスチジン溶液(pH6.0)、5%ソルビトール溶液)(2.5mL)を用いて、実施例12工程1と同様の操作を行い、19.2mg/mLの(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6抗体(H1L1)溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(4.8mL)を得た。
【0397】
工程2:抗CLDN6抗体(H1L1)-[MSG1-N32
上記工程1で得られた19.2mg/mL(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6(H1L1)抗体溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(4.8mL)を用いて、実施例3工程4にて得られた化合物(25.5mg)を糖鎖供与体として使い、実施例12工程2と同様の操作を行うことによって、10.2mg/mL抗CLDN6抗体(H1L1)-[MSG1-N32溶液(リン酸緩衝生理食塩水(pH6.0))(7.2mL)を得た。
【0398】
実施例16:糖鎖変換5(CLDN6-MSG1(H2L2))
工程1:(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6抗体(H2L2)
実施例10で調製した抗CLDN6抗体(H2L2)溶液ca.20mg/mL(25mMヒスチジン溶液(pH6.0)、5%ソルビトール溶液)(6mL)を用いて、実施例12工程1と同様の操作を行い、21.84mg/mLの(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6抗体(H2L2)溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(5.7mL)を得た。
【0399】
工程2:抗CLDN6抗体(H2L2)-[MSG1-N32
上記工程1で得られた21.8mg/mL(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6(H2L2)抗体溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(5.7mL)を用いて、実施例3工程4にて得られた化合物(25.5mg)を糖鎖供与体として使い、実施例12工程2と同様の操作を行うことによって、10.2mg/mL抗CLDN6抗体(H2L2)-[MSG1-N32溶液(リン酸緩衝生理食塩水(pH6.0))(11.1mL)を得た。
【0400】
実施例17:糖鎖変換6(CLDN6-MSG1(H1L3))
工程1:(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6抗体(H1L3)
実施例10で調製した抗CLDN6抗体(H1L3)溶液ca.39.4mg/mL(25mMヒスチジン溶液(pH6.0)、5%ソルビトール溶液)(3mL)を用いて、実施例12工程1と同様の操作を行い、39.2mg/mLの(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6抗体(H1L3)溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(4.5mL)を得た。
【0401】
工程2:抗CLDN6抗体(H1L3)-[MSG1-N32
上記工程1で得られた39.2mg/mL(Fucα1,6)GlcNAc-抗CLDN6(H1L3)抗体溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(4.5mL)を用いて、実施例3工程4にて得られた化合物(25.5mg)を糖鎖供与体として使い、実施例12工程2と同様の操作を行うことによって、9.83mg/mL抗CLDN6抗体(H1L3)-[MSG1-N32溶液(リン酸緩衝生理食塩水(pH6.0))(7.2mL)を得た。
【0402】
実施例18:糖鎖変換7(TROP2-MSG1)
工程1:(Fucα1,6)GlcNAc-抗Trop2抗体
参考例2で調製した抗Trop2抗体溶液ca.20mg/mL(25mMヒスチジン溶液(pH6.0)、5%ソルビトール溶液)(6mL)を用いて、実施例12工程1と同様の操作を行い、21.69mg/mLの(Fucα1,6)GlcNAc-抗Trop2抗体溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(3.3mL)を得た。
【0403】
工程2:抗Trop2抗体-[MSG1-N32
上記工程1で得られた21.69mg/mL(Fucα1,6)GlcNAc-抗Trop2抗体溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(3.35mL)を用いて、実施例3工程4にて得られた化合物(25.5mg)を糖鎖供与体として使い、実施例12工程2と同様の操作を行うことによって、10.3mg/mLの抗Trop2抗体-[MSG1-N32溶液(リン酸緩衝生理食塩水(pH6.0))(6.4mL)を得た。
【0404】
〔ADCの合成〕
実施例19~23にADC1~ADC6の調製方法を示す。実施例19~23の反応式中のR基はいずれも次式に示すものである。
【0405】
【化56】
【0406】
(実施例19~23それぞれの工程1で得られる化合物は、上記式で示すようにトリアゾール環の幾何異性体を有し、上記Rとして示した2種類の構造からなるドラッグリンカーを混合して保持する。)
【0407】
実施例19:ADC1
【化57】
【0408】
工程1:抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
実施例15工程2にて得られた抗体のリン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)溶液(10.2mg/mL,2.50mL)に、室温にて1,2-プロパンジオール(2.29mL)、実施例2-1工程13にて得られた化合物(3-14)を10mM含むジメチルスルホキシド溶液(0.206mL;抗体1分子に対して12当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて、室温にて48時間反応させた。
精製操作:上記溶液を共通操作Dを用いて精製を行い、目的の化合物を有する溶液を14.5mL得た。
特性評価:共通操作E、Fを用いて下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.54mg/mL,抗体収量:22.3mg(89%),抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):1.9
【0409】
実施例20:ADC2
【化58】
【0410】
工程1:抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
実施例14工程1にて得られた抗体のリン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)溶液(10.2mg/mL,1.00mL)に、室温にて1,2-プロパンジオール(0.917mL)、実施例2-1工程13にて得られた化合物(3-14)を10mM含むジメチルスルホキシド溶液(0.0825mL;抗体1分子に対して12当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて、室温にて2日間反応させた。
精製操作:上記溶液を共通操作Dを用いて精製を行い、目的の化合物を有する溶液を6.00mL得た。
特性評価:共通操作E、Fを用いて下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.41mg/mL,抗体収量:8.45mg(85%),抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):1.9
【0411】
実施例21:ADC3
【化59】
【0412】
工程1:抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
実施例18工程2にて得られた抗体のリン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)溶液(10mg/mL,1.00mL)に、室温にて1,2-プロパンジオール(0.917mL)、実施例2-1工程13にて得られた化合物(3-14)を10mM含むジメチルスルホキシド溶液(0.0825mL;抗体1分子に対して12当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて、室温にて2日間反応させた。
精製操作:上記溶液を共通操作Dを用いて精製を行い、目的の化合物を有する溶液を6.00mL得た。
特性評価:共通操作E、Fを用いて下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.47mg/mL,抗体収量:8.8mg(88%),抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):1.9
【0413】
実施例22:ADC4
【化60】
【0414】
工程1:抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
実施例16工程2にて得られた抗体のリン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)溶液(9.96mg/mL,2.50mL)に、室温にて1,2-プロパンジオール(2.29mL)、実施例2-1工程13にて得られた化合物(3-14)を10mM含むジメチルスルホキシド溶液(0.206mL;抗体1分子に対して12当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて、室温にて48時間反応させた。
精製操作:上記溶液を共通操作Dを用いて精製を行い、目的の化合物を有する溶液を14.5mL得た。
特性評価:共通操作E、Fを用いて下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.52mg/mL,抗体収量:22.0mg(88%),抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):1.9
【0415】
実施例23:ADC5
【化61】
【0416】
工程1:抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
実施例17工程2にて得られた抗体のリン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)溶液(9.83mg/mL,2.50mL)に、室温にて1,2-プロパンジオール(2.29mL)、実施例2-1工程13にて得られた化合物(3-14)を10mM含むジメチルスルホキシド溶液(0.206mL;抗体1分子に対して12当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて、室温にて48時間反応させた。
精製操作:上記溶液を共通操作Dを用いて精製を行い、目的の化合物を有する溶液を14.5mL得た。
特性評価:共通操作E、Fを用いて下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.45mg/mL,抗体収量:21.0mg(84%),抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):1.9
【0417】
〔ピロロベンゾジアゼピン誘導体の合成〕
実施例24:ピロロベンゾジアゼピン誘導体A
薬物1を下記のスキームに従って合成した。
【0418】
【化62】
【0419】
工程1:化合物7-1
実施例1-1工程5にて得られた化合物(1-6)を(4.59g,8.15mmol)を、実施例2-1工程9と同様に反応させ、目的物(7-1)(4.86g,92%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:647(M+H)+
【0420】
工程2:化合物7-2
上記工程1にて得られた化合物(7-1)(4.86g,7.51mmol)を、実施例1-1工程7と同様に反応させ、目的物(7-2)(3.42g,86%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:533(M+H)+
【0421】
工程3:化合物7-3
上記工程2にて得られた化合物(7-2)(6.68g,12.5mmol)を、実施例1-1工程8と同様に反応させ、目的物(7-3)(6.44g,97%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:531(M+H)+
【0422】
工程4:化合物7-4
上記工程3にて得られた化合物(7-3)(3.24g,6.10mmol)を、実施例1-1工程9と同様に反応させ、目的物(7-4)(3.86g,98%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:645(M+H)+
【0423】
工程5:化合物7-5
上記工程4にて得られた化合物(7-4)(4.49g,6.96mmol)を、実施例1-1工程10と同様に反応させ、目的物(7-5)(3.24g,95%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:489(M+H)+
【0424】
工程6:化合物7-6
上記工程5にて得られた化合物(7-5)(0.080g,0.164mmol)を、実施例2-1工程10と同様に反応させ、目的物(7-6)(0.160g,98%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:993(M+H)+
【0425】
工程7:化合物7-7
上記工程6にて得られた化合物(7-6)(160mg,0.161mmol)を、実施例2-1工程11と同様に反応させ、目的物(7-7)(141mg,定量的)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:879(M+H)+
【0426】
工程8:(11a’S)-7’-メトキシ-8’-[(5-{[(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル]オキシ}ペンチル)オキシ]-1’,11a’-ジヒドロ-5’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’-オン(7-8)
上記工程7にて得られた化合物(7-7)(141mg,0.161mmol)を、実施例2-1工程12と同様に反応させ、目的物(7-8)(109.8mg,99%)を得た。
1H-NMR(DMSO-D6)δ:7.92-7.91(1H,m),7.45(1H,s),7.39-7.37(2H,m),7.33(1H,s),7.29(1H,s),6.92-6.89(2H,m),6.85(1H,s),6.56-6.54(1H,m),6.31(1H,s),4.19-4.12(2H,m),4.05-3.99(1H,m),3.95-3.93(2H,m),3.82-3.79(4H,m),3.76(3H,s),3.66(3H,s),3.52-3.46(3H,m),3.30-3.21(2H,m),2.78-2.74(1H,m),2.45-2.42(1H,m),2.06-2.05(1H,m),1.89-1.82(4H,m),1.60-1.58(2H,m),0.80-0.63(4H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:693(M+H)+
【0427】
実施例27:ピロロベンゾジアゼピン誘導体B
【化63】
【0428】
工程1:化合物8-1
実施例2-4工程1にて得られた化合物(6-2)(6.49g,14.7mmol)のテトラヒドロフラン(147mL)溶液に、水素化ホウ素リチウム(0.642g,29.5mmol)を0℃で加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液に1規定塩酸を加え、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧留去した。得られた残渣(6.94g,定量的)は精製せず次工程で使用した。
MS(APCI、ESI)m/z:413(M+H)
【0429】
工程2:化合物8-2
上記工程1にて得られた化合物(8-1)(4.50g,11.0mmol)を、実施例1工程8と同様に反応させ、目的物(8-2)(1.94g,43%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:411(M+H)
【0430】
工程3:化合物8-3
上記工程2にて得られた化合物(8-2)(1.94g,4.73mmol)のテトラヒドロフラン(25mL)、酢酸エチル(25mL)、メタノール(25mL)の混合溶液に、窒素雰囲気下、5%パラジウム炭素(54%水分、1.0g)を加えた後、反応溶液を水素雰囲気下、室温にて22時間撹拌した。反応溶液をセライト濾過した後、濾液を減圧留去した。得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=80:20(v/v)~0:100(v/v)]にて精製し、目的物(8-3)(1.20g,93%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:275(M+H)+
【0431】
工程4:化合物8-4
実施例24工程5にて得られた化合物(7-5)(0.300g,0.614mmol)を、実施例2-1工程2と同様に反応させ、目的物(8-4)(0.388g,99%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:639[81Br,(M+H)+],637[79Br,(M+H)+].
【0432】
工程5:化合物8-5
上記工程4にて得られた化合物(8-4)(0.203g, 0.318mmol)と上記工程3にて得られた化合物(0.131g,0.478mmol)を、実施例2-1工程10と同様に反応させ、目的物(8-5)(0.0880g,33%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:831(M+H)
【0433】
工程6:化合物8-6
上記工程5にて得られた化合物(8-5)(0.0880g,0.106mmol)を、実施例2-1工程11と同様に反応させ、目的物(8-6)(0.0500g、66%)を得た。
MS(APCI、ESI)m/z:717(M+H)
【0434】
工程7:(11a’S)-7’-メトキシ-8’-[(5-{[(11a’S)-7’-メトキシ-5’-オキソ-5’,11a’-ジヒドロ-1’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-8’-イル]オキシ}ペンチル)オキシ]-1’,10’,11’,11a’-テトラヒドロ-5’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’-オン(8-7)
上記工程6にて得られた化合物(8-6)(0.0500g、0.0698mmol)を実施例2-1工程12と同様に反応させ、目的物(8-7)(0.0330g,77%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.80(1H,m),7.58(1H,s),7.52(1H,s),6.81(1H,s),6.05(1H,s),4.17-3.97(5H,m),3.94(3H,s),3.87(1H,m),3.84(3H,s),3.72-3.68(3H,m),3.51-3.45(5H,m),2.54-2.51(1H,m),2.03-1.90(6H,m),1.75-1.68(2H,m),0.66(8H,m).
MS(APCI、ESI)m/z:615(M+H)+
【0435】
実施例28:ピロロベンゾジアゼピン誘導体C
【化64】
【0436】
工程1:化合物(9-1)
実施例2-1工程1で得られた化合物(3-2)(5.00g,9.66mmol)を実施例2-1工程3と同様に反応させ目的物(9-1)(3.95g,100%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:409(M+H)+
【0437】
工程2:化合物(9-2)
上記工程1で得られた化合物(9-1)(3.95g,9.67mmol)のジクロロメタン(97mL)溶液に、イミダゾール(1.65g,24.2mmol)、トリイソプロピルシリルクロリド(2.46mL,11.6mmol)とジメチルホルムアミド(5mL)を加え、室温で21時間攪拌した。反応溶液に水を加え、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を水で洗浄し、減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/v)~20:80(v/v)]にて精製し、目的物(9-2)(4.78g,87%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:565(M+H)+
【0438】
工程3:化合物(9-3)
上記工程2にて得られた化合物(9-2)(4.78g,8.43mmol)を、実施例2-1工程4と同様に反応させ、目的物(9-3)(2.36g,50%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:563(M+H)+
【0439】
工程4:化合物(9-4)
上記工程3にて得られた化合物(9-3)(1.53g,2,72mmol)を実施例2-1工程5と同様に反応させ、目的化合物(9-4)(1.27g,69%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.31(2H,s),7.15(1H,m),5.52(1H,m),4.65(1H,m),4.57(1H,m),3.95-3.89(1H,m),3.87(3H,s),3.75-3.58(2H,m),3.18-3.14(1H,m),1.33-1.25(3H,m),1.10(18H,m),1.00-0.96(2H,m),0.03(9H,s).
【0440】
工程5:化合物(9-5)
上記工程4で得られた化合物(9-4)(0.519g,0.747mmol)を、実施例2-1工程6と同様に反応させ、目的化合物(9-5)(0.511g,定量的)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:653[(M+H)+]
【0441】
工程6:化合物(9-6)
上記工程5で得られた化合物(9-5)(0.178g,0.272mmol)を、実施例2-1工程7と同様に反応させ、目的化合物(9-6)(0.094g,68%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:507[(M+H)+]
【0442】
工程7:化合物(9-7)
上記工程6で得られた化合物(9-6)(0.063g,0.124mmol)を用いて、実施例2-1工程8と同様に反応させ、目的化合物(9-7)(0.046g,72%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:509[(M+H)+]
【0443】
工程8:化合物(9-8)
上記工程7で得られた化合物(10-7)(0.046g,0.090mmol)を用いて、実施例2-1工程9と同様に反応させ、目的化合物(9-8)(0.03g,56%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:593[(M+H)+]
【0444】
工程9:化合物(9-9)
上記工程8で得られた化合物(10-8)(0.030g,0.050mmol)を、実施例2-1工程10と同様に反応させ、目的化合物(9-9)(0.015g,0.034mmol)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.39-7.25(4H,m),6.92-6.78(3H,m),6.03-5.92(1H,m),5.86-5.68(1H,m),5.20-5.07(2H,m),4.66-4.57(1H,m),4.52-4.40(1H,m),4.40-4.27(1H,m),4.27-4.16(1H,m),3.95(3H,s),3.82(3H,s),3.66-3.59(1H,m),3.32-3.21(1H,m),2.74-2.64(1H,m).
MS(APCI,ESI)m/z:437[(M+H)+]
【0445】
工程10:化合物(9-10)
実施例7工程5で得られた化合物(7-5)(0.131g,0.268mmol)を実施例2-2工程1と同様に反応させ、目的物(9-10)(0.086g,52%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:611[81Br,(M+H)+],609[79Br,(M+H)+]
【0446】
工程11:化合物(9-11)
上記工程10で得られる化合物(10-10)(0.015g,0.034mmol)と、上記工程9で得られる化合物(10-9)(0.030g,0.048mmol)を用いて、実施例2-1工程10と同様に反応させ、目的化合物(9-11)(0.032g,96%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:965[(M+H)+]
【0447】
工程12:化合物(9-12)
上記工程11で得られた化合物(9-11)(0.031g,0.032mmol)を実施例2-1工程11と同様に反応させ、目的物(9-12)(0.026g,95%)を得た。
MS(APCI,ESI)m/z:851[(M+H)+]
【0448】
工程13:(11a’S)-7’-メトキシ-8’-(3-{[(11aS)-7-メトキシ-2-(4-メトキシフェニル)-5-オキソ-5,10,11,11a-テトラヒドロ-1H-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン-8-イル]オキシ}プロポキシ)-1’,11a’-ジヒドロ-5’H-スピロ[シクロプロパン-1,2’-ピロロ[2,1-c][1,4]ベンゾジアゼピン]-5’-オン(9-13)
上記工程12で得られた化合物(10-12)(0.026g,0.030mmol)を実施例2-1工程12と同様に反応させ、目的物(9-13)(0.018g,88%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:7.80(1H,m),7.54-7.51(3H,m),7.33-7.29(2H,m),6.91-6.85(3H,m),6.14(1H,s),4.35-4.17(6H,m),3.95(3H,s),3.85(3H,s),3.82(3H,s),3.76-3.25(5H,m),2.79-2.69(1H,m),2.52(1H,m),2.45-2.35(1H,m),2.03-1.96(1H,m),1.28-1.23(2H,m),0.78-0.69(4H,m).
MS(APCI,ESI)m/z:665[(M+H)+]
【0449】
実施例29:細胞増殖阻害試験(1)
ATCC(American Type Culture Collection)より入手したヒト肺がん細胞株Calu-6を評価に使用した。10%のウシ胎児血清(GE Healthcare)とMEM Non-Essential Amino Acids Solution(Thermo Fisher Scientific)およびSodium Pyruvate(Thermo Fisher Scientific)を含むMEM (Thermo Fisher Scientific;以下、EMEM培地)で1.25×10 Cells/mLになるように調製し、96穴細胞培養用マイクロプレートに80μLずつ添加した。細胞添加後、37℃、5%CO下で一晩培養した。
翌日、EMEM培地で100pM、50pM、25pM、12.5pM、6.25pM、3.13pM、1.56pM、0.78pMに希釈したピロロベンゾジアゼピン誘導体A、B、又はCをマイクロプレートに10μLずつ添加した。ピロロベンゾジアゼピン誘導体の非添加ウェルにはEMEM培地を10μLずつ添加した。さらに、EMEM培地で2μMに調製したオラパリブをマイクロプレートに10μLずつ添加した。オラパリブ非添加ウェルにはEMEM培地を10μLずつ添加した。その後、マイクロプレートを37℃、5%CO下で6日間培養した。培養後、マイクロプレートをインキュベーターから取り出して室温で30分間静置した。培養液と等量のCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega)を添加してプレートミキサーで攪拌した。室温で10分間静置後にプレートリーダー(PerkinElmer)で発光量を計測した。
【0450】
誘導体A、B、又はC添加ウェルの生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:誘導体A、B、又はC添加ウェルの発光量の平均値
b:培地添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM) =antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10(a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:誘導体A、B、又はCの濃度a
b:誘導体A、B、又はCの濃度b
c:濃度aの誘導体A、B、又はCを添加した時の生細胞率
d:濃度bの誘導体A、B、又はCを添加した時の生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0451】
また誘導体A、B、又はCとオラパリブ2μM同時添加ウェルの生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:誘導体A、B、又はCとオラパリブ2μM同時添加ウェルの発光量の平均値
b:オラパリブ2μM添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM) =antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10(a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:誘導体A、B、又はCの濃度a
b:誘導体A、B、又はCの濃度b
c:濃度aの誘導体A、B、又はCとオラパリブ2μMを添加した時の生細胞率
d:濃度bの誘導体A、B、又はCとオラパリブ2μMを添加した時の生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0452】
Calu-6細胞に対してオラパリブ2μMは増殖抑制効果を示さなかった(増殖抑制率10%未満)。一方、誘導体A、B、又はCは単独添加時にそれぞれIC50値6.8pM、119.8pM、113.0pM、オラパリブ2μM同時添加時にそれぞれIC50値4.3pM、79.4pM、89.4pMの増殖抑制効果を示した。併用では、個々の薬剤単独と比べ、優れた増殖抑制効果を示した。
【0453】
実施例30:細胞増殖阻害試験(2)
ATCC(American Type Culture Collection)より入手したヒト咽頭がん細胞株FaDuを評価に使用した。10%のウシ胎児血清(GE Healthcare)とMEM Non-Essential Amino Acids Solution(Thermo Fisher Scientific)およびSodium Pyruvate(Thermo Fisher Scientific)を含むMEM (Thermo Fisher Scientific;以下、EMEM培地)で6.25×10 Cells/mLになるように調製し、96穴細胞培養用マイクロプレートに80μLずつ添加した。細胞添加後、37℃、5%CO下で一晩培養した。
翌日、EMEM培地で100pM、50pM、25pM、12.5pM、6.25pM、3.13pM、1.56pM、0.78pMに希釈したピロロベンゾジアゼピン誘導体A、B、又はCをマイクロプレートに10μLずつ添加した。ピロロベンゾジアゼピン誘導体の非添加ウェルにはEMEM培地を10μLずつ添加した。さらに、EMEM培地で1μMに調製したオラパリブをマイクロプレートに10μLずつ添加した。オラパリブ非添加ウェルにはEMEM培地を10μLずつ添加した。その後、マイクロプレートを37℃、5%CO下で6日間培養した。培養後、マイクロプレートをインキュベーターから取り出して室温で30分間静置した。培養液と等量のCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega)を添加してプレートミキサーで攪拌した。室温で10分間静置後にプレートリーダー(PerkinElmer)で発光量を計測した。
【0454】
誘導体A、B、又はCD添加ウェルの生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:誘導体A、B、又はC添加ウェルの発光量の平均値
b:培地添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM) =antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10(a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:誘導体A、B、又はCの濃度a
b:誘導体A、B、又はCの濃度b
c:濃度aの誘導体A、B、又はCを添加した時の生細胞率
d:濃度bの誘導体A、B、又はCを添加した時の生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0455】
また誘導体A、B、又はCとオラパリブ1μM同時添加ウェルの生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:誘導体A、B、又はCとオラパリブ1μM同時添加ウェルの発光量の平均値
b:オラパリブ1μM添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM) =antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10(a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:誘導体A、B、又はCの濃度a
b:誘導体A、B、又はCの濃度b
c:濃度aの誘導体A、B、又はCとオラパリブ1μMを添加した時の生細胞率
d:濃度bの誘導体A、B、又はCとオラパリブ1μMを添加した時の生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0456】
FaDu細胞に対してオラパリブ1μMは増殖抑制効果を示さなかった(増殖抑制率10%未満)。一方、誘導体A、B、又はCは単独添加時にそれぞれIC50値8.6pM、123.2pM、73.2pM、オラパリブ1μM同時添加時にそれぞれIC50値4.4pM、71.9pM、44.5pMの増殖抑制効果を示した。併用では、個々の薬剤単独と比べ、優れた増殖抑制効果を示した。
【0457】
実施例31:細胞増殖阻害試験(3)
ATCC(American Type Culture Collection)より入手したヒト咽頭がん細胞株FaDuを評価に使用した。10%のウシ胎児血清(GE Healthcare)とMEM Non-Essential Amino Acids Solution(Thermo Fisher Scientific)およびSodium Pyruvate(Thermo Fisher Scientific)を含むMEM (Thermo Fisher Scientific;以下、EMEM培地)で6.25×10 Cells/mLになるように調製し、96穴細胞培養用マイクロプレートに80μLずつ添加した。細胞添加後、37℃、5%CO下で一晩培養した。
翌日、EMEM培地で100pM、50pM、25pM、12.5pM、6.25pM、3.13pM、1.56pM、0.78pMに希釈したピロロベンゾジアゼピン誘導体A、B、又はCをマイクロプレートに10μLずつ添加した。ピロロベンゾジアゼピン誘導体の非添加ウェルにはEMEM培地を10μLずつ添加した。さらに、EMEM培地で2nMに調製したタラゾパリブをマイクロプレートに10μLずつ添加した。タラゾパリブ非添加ウェルにはEMEM培地を10μLずつ添加した。その後、マイクロプレートを37℃、5%CO下で6日間培養した。培養後、マイクロプレートをインキュベーターから取り出して室温で30分間静置した。培養液と等量のCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega)を添加してプレートミキサーで攪拌した。室温で10分間静置後にプレートリーダー(PerkinElmer)で発光量を計測した。
【0458】
誘導体A、B、又はC添加ウェルの生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:誘導体A、B、又はC添加ウェルの発光量の平均値
b:培地添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM) =antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10(a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:誘導体A、B、又はCの濃度a
b:誘導体A、B、又はCの濃度b
c:濃度aの誘導体A、B、又はCを添加した時の生細胞率
d:濃度bの誘導体A、B、又はCを添加した時の生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0459】
また誘導体A、B、又はCとタラゾパリブ2nM同時添加ウェルの生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:誘導体A、B、又はCとタラゾパリブ2nM同時添加ウェルの発光量の平均値
b:タラゾパリブ2nM添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM) =antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10(a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:誘導体A、B、又はCの濃度a
b:誘導体A、B、又はCの濃度b
c:濃度aの誘導体A、B、又はCとタラゾパリブ2nMを添加した時の生細胞率
d:濃度bの誘導体A、B、又はCとタラゾパリブ2nMを添加した時の生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0460】
FaDu細胞に対してタラゾパリブ2nMは増殖抑制効果を示さなかった(増殖抑制率10%未満)。一方、誘導体A、B、又はCは単独添加時にそれぞれIC50値7.7pM、121.2pM、83.1pM、タラゾパリブ2nM同時添加時にそれぞれIC50値4.7pM、82.1pM、51.2pMの増殖抑制効果を示した。併用では、個々の薬剤単独と比べ、優れた増殖抑制効果を示した。
【0461】
実施例32:細胞増殖阻害試験(4)
ATCC(American Type Culture Collection)から購入したヒト卵巣がん株SK-OV-3細胞を評価に使用した。10%のウシ胎児血清(GE Healthcare)を含むMcCoy‘s 5A(Modified)Medium(Thermo Fisher Scientific;以下、McCoy’s 5A培地)で1.25×10 C ells/mLになるように調製し、96穴細胞培養用マイクロプレートに80μLずつ添加した。細胞添加後、37℃、5%CO下で一晩培養した。
翌日、McCoy’s 5A培地で100pM、50pM、25pM、12.5pM、6.25pM、3.13pM、1.56pM、0.78pMに希釈したピロロベンゾジアゼピン誘導体Aをマイクロプレートに10μLずつ添加した。ピロロベンゾジアゼピン誘導体A非添加ウェルにはMcCoy’s 5A培地を10μLずつ添加した。さらに、McCoy’s 5A培地で5nMに調製したタラゾパリブをマイクロプレートに10μLずつ添加した。タラゾパリブ非添加ウェルにはMcCoy’s 5A培地を10μLずつ添加した。その後、マイクロプレートを37℃、5%CO下で6日間培養した。培養後、マイクロプレートをインキュベーターから取り出して室温で30分間静置した。培養液と等量のCellTiter-Glo Luminescent Cell Viability Assay (Promega)を添加してプレートミキサーで攪拌した。室温で10分間静置後にプレートリーダー(PerkinElmer)で発光量を計測した。
【0462】
誘導体A添加ウェルの生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:誘導体A添加ウェルの発光量の平均値
b:培地添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM) =antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10(a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:誘導体Aの濃度a
b:誘導体Aの濃度b
c:濃度aの誘導体Aを添加した時の生細胞率
d:濃度bの誘導体Aを添加した時の生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0463】
また誘導体Aとタラゾパリブ5nM同時添加ウェルの生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:誘導体Aとタラゾパリブ5nM同時添加ウェルの発光量の平均値
b:タラゾパリブ5nM添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM) =antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10(a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:誘導体Aの濃度a
b:誘導体Aの濃度b
c:濃度aの誘導体Aとタラゾパリブ5nMを添加した時の生細胞率
d:濃度bの誘導体Aとタラゾパリブ5nMを添加した時の生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0464】
SK-OV-3細胞に対してタラゾパリブ5nMは増殖抑制効果を示さなかった(増殖抑制率10%未満)。一方、誘導体Aは単独添加時にIC50値8.1pM、タラゾパリブ5nM同時添加時にIC50値4.6pMの増殖抑制効果を示した。併用では、個々の薬剤単独と比べ、優れた増殖抑制効果を示した。
【0465】
実施例33:抗腫瘍試験(1)
マウス:5-6週齢の雌BALB/c ヌードマウス(日本チャールス・リバー社)を実験に供した。
測定・計算式:全ての研究において、腫瘍の長径及び短径を電子式デジタルキャリパー(CD-15CX,Mitutoyo Corp.)で1週間に2回測定し、腫瘍体積(mm)を計算した。計算式は以下に示す通り。
腫瘍体積(mm)=1/2×長径(mm)×[短径(mm)]
抗CLDN6抗体-薬物コンジュゲートADC1、抗HER2抗体-薬物コンジュゲートADC2および抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートADC3はABS buffer (10mM酢酸緩衝液 (pH5.5), 5%ソルビトール)で希釈し、10mL/kgの液量を尾静脈内投与した。オラパリブはDimethyl sulfoxide(DMSO)で溶解し、10% 2-hydroxy-propyl-β-cyclodextrin(SIGMA-ALDRICH)/Dulbecco’s Phosphate-Buffered Salineで希釈した後に10mL/kgの液量を腹腔内投与した。タラゾパリブはDMSOで溶解し、10%N,N-ジメチルアセトアミド/5%Kolliphor HS15(SIGMA-ALDRICH)/Dulbecco’s Phosphate-Buffered Salineで希釈し、10mL/kgの液量を経口投与した。ニラパリブはDMSOで溶解し、0.5% methylcelluloseで希釈し、10mL/kgの液量を経口投与した。以上の方法は、実施例34~37で共通である。
ATCC(American Type Culture Collection)から購入したヒト膵臓がん細胞株CFPAC-1を生理食塩水に懸濁し、5.0×10cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し、移植10日後に無作為に群分けを実施した(Day0)。ADC2はDay0に0.2mg/kgの用量で投与した。タラゾパリブはDay0から5日間、0.8mg/kgの用量で投与した。それぞれの単剤投与群と併用投与群および、コントロール群として薬物処置なし(No treatment)の群を設定した。
ADC2とタラゾパリブの併用効果を図1に示す。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。タラゾパリブ単剤投与の試験最終日(Day35)における腫瘍増殖抑制率(Tumor Growth Inhibition,TGI)は17%であった。ADC2の単剤投与によるTGIは94%であった。一方、ADC2とタラゾパリブとの併用投与では、タラゾパリブ単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められた(P<0.005。Dunnett’s testにより算出。以下同様。)。また、ADC2単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められ(P<0.05)、腫瘍増殖抑制率は(TGI,99%)であった。また、いずれの単剤および併用投与群において、体重減少等の特に目立った所見は認められなかった。
【0466】
実施例34:抗腫瘍試験(2)
DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH)から購入したヒト乳がん株JIMT-1細胞を生理食塩水に懸濁して5×10cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し、移植10日後に無作為に群分けを実施した(Day0)。抗HER2抗体-薬物コンジュゲートADC2はDay0に0.2mg/kgの用量で投与した。PARP阻害剤はオラパリブを50mg/kgの用量またはタラゾパリブを0.8mg/kgの用量でDay0から5日間投与した。それぞれの単剤投与群、ADC2とPARP阻害剤の併用投与群および、コントロール群としてABS buffer投与群を設定した。
ADC2とオラパリブの併用効果を図2に示す。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。オラパリブ単剤投与では腫瘍増殖抑制効果を認めなかった。ADC2の単剤投与による試験最終日(Day43)における腫瘍増殖抑制率(Tumor Growth Inhibition,TGI)は75%であった。一方、ADC2とオラパリブとの併用投与では、オラパリブ単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められた(P<0.005)。また、ADC2単剤投与よりも腫瘍増殖抑制率は高く(TGI,82%)、強い併用効果が認められた。また、いずれの単剤および併用投与群において、体重減少等の特に目立った所見は認められなかった。
ADC2とタラゾパリブの併用効果を図3に示す。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。タラゾパリブ単剤投与では腫瘍増殖抑制効果を認めなかった。ADC2の単剤投与による試験最終日(Day43)における腫瘍増殖抑制率(Tumor Growth Inhibition,TGI)は75%であった。一方、ADC2とタラゾパリブとの併用投与では、タラゾパリブ単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められた(P<0.005)。また、ADC2単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められ(P<0.05)、腫瘍増殖抑制率は(TGI,91%)であった。また、いずれの単剤および併用投与群において、体重減少等の特に目立った所見は認められなかった。
【0467】
実施例35:抗腫瘍試験(3)
ATCC(American Type Culture Collection)より入手したヒト咽頭がん細胞株FaDuを生理食塩水に懸濁し、3.0×10cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し、移植10日後に無作為に群分けを実施した(Day0)。抗TROP2抗体-薬物コンジュゲートADC3はDay0に0.2mg/kgの用量で投与した。PARP阻害剤はオラパリブを50mg/kgの用量またはタラゾパリブを0.8mg/kgの用量でDay0から5日間投与した。それぞれの単剤投与群、ADC3とPARP阻害剤の併用投与群および、コントロール群としてABS buffer投与群を設定した。
ADC3とオラパリブの併用効果を図4に示す。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。オラパリブ単剤投与の試験最終日(Day25)における腫瘍増殖抑制率(Tumor Growth Inhibition,TGI)は7%であった。ADC3の単剤投与による試験最終日における腫瘍増殖抑制率(Tumor Growth Inhibition,TGI)は67%であった。一方、ADC3とオラパリブとの併用投与では、オラパリブ単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められた(P<0.005)。また、ADC3単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められ(P<0.05)、腫瘍増殖抑制率は(TGI,76%)であった。また、いずれの単剤および併用投与群において、体重減少等の特に目立った所見は認められなかった。
ADC3とタラゾパリブの併用効果を図5に示す。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。タラゾパリブ単剤投与の試験最終日(Day25)における腫瘍増殖抑制率(Tumor Growth Inhibition,TGI)は33%であった。ADC3の単剤投与による試験最終日における腫瘍増殖抑制率(Tumor Growth Inhibition,TGI)は67%であった。一方、ADC3とタラゾパリブとの併用投与では、タラゾパリブ単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められた(P<0.005)。また、ADC3単剤投与よりも有意に優れた腫瘍増殖抑制効果が認められ(P<0.005)、腫瘍増殖抑制率は(TGI,83%)であった。また、いずれの単剤および併用投与群において、体重減少等の特に目立った所見は認められなかった。
【0468】
実施例36:抗腫瘍試験(4)
ATCC(American Type Culture Collection)から購入したヒト卵巣がん細胞株OV-90をマトリゲル(CORNING)に懸濁し、2.5×10cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し、移植18日後に無作為に群分けを実施した(Day0)。抗CLDN6抗体-薬物コンジュゲートADC1はDay0に0.3mg/kgの用量で投与した。ニラパリブはDay0から5日間、75mg/kgの用量で投与した。それぞれの単剤投与群と併用投与群および、コントロール群として薬物処置なし(No treatment)の群を設定した。
ADC1とニラパリブの併用結果を図42に示す。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。ニラパリブ単剤投与によるDay21時点の腫瘍増殖抑制率(Tumor Growth Inhibition、TGI)は1%で、Day21時点で体重減少等の目立った所見は認められなかった。ADC1単剤投与群およびADC1とニラパリブの併用投与群におけるDay21時点のTGIはいずれも96%であり、Day21時点で体重減少等の目立った所見は認められなかった。一方、Day53時点ではADC1とニラパリブの併用投与では、ADC1単剤投与と比較して腫瘍増殖抑制効果が認められた。Day53時点でADC1単剤投与、およびADC1とニラパリブの併用投与による体重減少等の目立った所見は認められなかった。
なお、本実施例で使用したADC1は、抗CLDN6(H1L1)抗体を用いて、実施例15及び実施例19と同様の方法を従い作製した。
【0469】
実施例37:抗腫瘍試験(5)
ATCC(American Type Culture Collection)から購入したヒト卵巣がん細胞株OV-90をマトリゲル(CORNING)に懸濁し、2.5×10cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し、移植13~18日後に無作為に群分けを実施する(Day0)。抗CLDN6抗体-薬物コンジュゲートADC1はDay0に0.2mg/kgの用量で投与する。PARP阻害薬はオラパリブを50mg/kgの用量またはタラゾパリブを0.8mg/kgの用量でDay0から5日間投与する。それぞれの単剤投与群、ADC1とPARP阻害薬の併用投与群および、コントロール群として薬物処置なし(No treatment)の群を設定する。
【0470】
実施例38:Trastuzumab変異体- [MSG1-N3]2又はTrastuzumab変異体2- [MSG1-N3]2
工程1:(Fucα1,6)GlcNAc-Trastuzumab変異体の調製
Trastuzumab 変異体(軽鎖:配列番号73, 重鎖:配列番号75)溶液ca.22.3mg/mL(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(2.69mL)に、7.7mg/mL野生型EndoS溶液(PBS)を0.156mL加え、37℃で4時間インキュベートした。反応の進行具合をExperion電気泳動ステーション(BIO-RAD製)を用いて確認した。反応終了後、以下の方法に従い、アフィニティークロマトグラフィーによる精製とハイドロキシアパタイトカラムによる精製を行った。
(1)アフィニティークロマトグラフィーによる精製
精製装置:AKTA avant(GEヘルスケア製)
カラム:HiTrap rProtein A FF(5mL)(GEヘルスケア製)
流速:5mL/min(チャージ時は1.25mL/min)
上記で得た反応液を複数回に分けて精製した。カラムへの結合時は、反応液をカラム上部へ添加し、結合バッファー(20mMりん酸緩衝液(pH6.0))を1.25mL/minで4CV(Column Volume)流し、更に5mL/minで5CV流した。中間洗浄時は、洗浄溶液(20mMりん酸緩衝液(pH7.0)、0.5M塩化ナトリウム溶液)を15CV流した。溶出時は、溶出バッファー(ImmunoPure IgG Eution buffer、PIERCE製)を6CV流した。溶出液を1Mトリス緩衝液(pH9.0)で直ちに中和した。目的物を含むフラクションを共通操作Cを用いて、5mMりん酸緩衝液50mM-モルホリノエタンスルホン酸(MES)溶液(pH6.8)への緩衝液交換を行った。
(2)ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーによる精製
精製装置:AKTA avant(GE ヘルスケア製)
カラム:Bio-Scale Mini CHT Type Iカートリッジ(5mL)(BIO-RAD製)
流速:5mL/min(チャージ時は1.25mL/min)
上記(1)で得られた溶液をカラムの上部へ添加し、A液(5mMりん酸緩衝液50mM-モルホリノエタンスルホン酸(MES)溶液(pH6.8))を1.25mL/minで4CV流し、更に5mL/minで3CV流した。その後、A液とB液(5mMりん酸緩衝液50mM-モルホリノエタンスルホン酸(MES)溶液(pH6.8)、2M塩化ナトリウム溶液)を用いて、溶出した。溶出条件は、A液:B液=100:0~0:100(15CV)である。さらに、洗浄溶液(500mMりん酸緩衝液(pH6.5))を5CV流した。
目的物を含むフラクションを共通操作Cを用いて緩衝液交換を行い、6.08mg/mLの(Fucα1,6)GlcNAc-Trastuzumab変異体溶液(50mMリン酸緩衝液(pH6.0))(6.10mL)を得た。
【0471】
工程2:Trastuzumab 変異体- [MSG1-N3]2の調製
上記工程1にて得られた6.08mg/mL(Fucα1,6)GlcNAc-Trastuzumab変異体溶液(50mMりん酸緩衝液(pH6.0))(6.10mL)を用いて、実施例3工程4で合成した化合物(9.78mg)の50mMりん酸緩衝液(pH6.0)溶液(0.200mL)、5.80mg/mLのEndoS D233Q/Q303L溶液(PBS)(0.128mL)を加えて、30℃で3時間インキュベートした。反応の進行具合をExperion電気泳動ステーション(BIO-RAD製)を用いて確認した。反応終了後、上記工程1と同様にアフィニティークロマトグラフィーによる精製とハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーによる精製を行った後、目的物を含むフラクションを共通操作Cを用いてりん酸緩衝生理食塩水(pH6.0)へ緩衝液交換を行い、10.2mg/mLのTrastuzumab 変異体-[MSG1-N32溶液(りん酸緩衝生理食塩水(pH6.0))(3.65mL)を得た。
Trastuzumab変異体2(軽鎖:配列番号76, 重鎖:77)を用いて、実施例38の工程1及び2と同様の操作を行うことによってTrastuzumab 変異体2- [MSG1-N3]2を得た。
【0472】
実施例39:ADC6
【0473】
工程1:抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション
実施例38工程2にて得られたTrastuzumab 変異体- [MSG1-N3]2のリン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)溶液(10.0mg/mL,0.40mL)に、室温にて1,2-プロパンジオール(0.767mL)、実施例2-1工程13にて得られた化合物(3-14)の10mMジメチルスルホキシド溶液(0.033mL;抗体1分子に対して12当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて、室温にて48時間反応させた。
精製操作:上記溶液を後述の共通操作Dを用いて精製を行い、目的の化合物を有する溶液を7.00mL得た。
特性評価:共通操作E,Fを用いて下記の特性値を得た。
抗体濃度:0.48mg/mL,抗体収量:3.39mg(85%),抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):1.7
【0474】
実施例40: ADC7
工程1-1:抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション(ADC7)
実施例38にて得られたTrastuzumab 変異体2- [MSG1-N3]2のリン酸緩衝生理食塩水(pH6.0)溶液(10.0mg/mL,0.50mL)に、室温にて1,2-プロパンジオール(0.486mL)、実施例2-1工程13にて得られた化合物(3-14)の10mMジメチルスルホキシド溶液(0.014mL;抗体1分子に対して4当量)を加え、チューブローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて、室温にて40時間反応させた。
精製操作:上記溶液を後述の共通操作Dを用いて精製を行い、目的の化合物を有する溶液を2.50mL得た。
特性評価:共通操作E,Fを用いて下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.12mg/mL,抗体収量:2.80mg(56%),抗体一分子あたりの平均薬物結合数(n):1.8
【産業上の利用可能性】
【0475】
本発明の抗体-薬物コンジュゲート、抗体及び/又はPBD誘導体等を用いることにより、各種がんの治療又は予防が可能となる。
【配列表フリーテキスト】
【0476】
配列番号1:ヒトCLDN6のアミノ酸配列
配列番号2:ヒトCLDN6のアミノ酸配列をコードするcDNAのヌクレオチド配列
配列番号3:ヒトCLDN9のアミノ酸配列
配列番号4:ヒトCLDN9のアミノ酸配列をコードするcDNAのヌクレオチド配列
配列番号5:B1抗体軽鎖のCDRL1のアミノ酸配列
配列番号6:B1抗体軽鎖のCDRL2のアミノ酸配列
配列番号7:B1抗体軽鎖のCDRL3のアミノ酸配列
配列番号8:ヒト化B1抗体軽鎖L4のCDRL3のアミノ酸配列
配列番号9:B1抗体重鎖のCDRH1のアミノ酸配列
配列番号10:B1抗体重鎖のCDRH2のアミノ酸配列
配列番号11:B1抗体重鎖のCDRH3のアミノ酸配列
配列番号12:C7抗体軽鎖のCDRL1のアミノ酸配列
配列番号13:C7抗体軽鎖のCDRL2のアミノ酸配列
配列番号14:C7抗体軽鎖のCDRL3のアミノ酸配列
配列番号15:C7抗体重鎖のCDRH1のアミノ酸配列
配列番号16:C7抗体重鎖のCDRH2のアミノ酸配列
配列番号17:C7抗体重鎖のCDRH3のアミノ酸配列
配列番号18:B1抗体軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列
配列番号19:B1抗体軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号20:B1抗体重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列
配列番号21:B1抗体重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号22:C7抗体軽鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列
配列番号23:C7抗体軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号24:C7抗体重鎖の可変領域をコードするcDNAのヌクレオチド配列
配列番号25:C7抗体重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号26:ヒト軽鎖シグナル配列及びヒトκ鎖定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片
配列番号27:ヒト重鎖シグナル配列及びヒトIgG1LALA定常領域をコードするDNA配列を含むDNA断片
配列番号28:chB1軽鎖のアミノ酸配列
配列番号29:chB1軽鎖のアミノ酸配列をコードするDNA配列を含むDNA断片
配列番号30:chB1軽鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号31:chB1軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号32:chB1重鎖のアミノ酸配列
配列番号33:chB1重鎖をコードするヌクレオチド配列
配列番号34:chB1重鎖の可変領域のアミノ酸配列
配列番号35:chB1重鎖の可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号36:ヒト化抗体軽鎖hL1のアミノ酸配列
配列番号37:ヒト化抗体軽鎖hL1をコードするヌクレオチド配列
配列番号38:ヒト化抗体軽鎖hL1の可変領域のアミノ酸配列
配列番号39:ヒト化抗体軽鎖hL1の可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号40:ヒト化抗体軽鎖hL2のアミノ酸配列
配列番号41:ヒト化抗体軽鎖hL2をコードするヌクレオチド配列
配列番号42:ヒト化抗体軽鎖hL2の可変領域のアミノ酸配列
配列番号43:ヒト化抗体軽鎖hL2の可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号44:ヒト化抗体軽鎖hL3のアミノ酸配列
配列番号45:ヒト化抗体軽鎖hL3をコードするヌクレオチド配列
配列番号46:ヒト化抗体軽鎖hL3の可変領域のアミノ酸配列
配列番号47:ヒト化抗体軽鎖hL3の可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号48:ヒト化抗体軽鎖hL4のアミノ酸配列
配列番号49:ヒト化抗体軽鎖hL4をコードするヌクレオチド配列
配列番号50:ヒト化抗体軽鎖hL4の可変領域のアミノ酸配列
配列番号51:ヒト化抗体軽鎖hL4の可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号52:ヒト化抗体重鎖hH1のアミノ酸配列
配列番号53:ヒト化抗体重鎖hH1をコードするヌクレオチド配列
配列番号54:ヒト化抗体重鎖hH1の可変領域のアミノ酸配列
配列番号55:ヒト化抗体重鎖hH1の可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号56:ヒト化抗体重鎖hH2のアミノ酸配列
配列番号57:ヒト化抗体重鎖hH2をコードするヌクレオチド配列
配列番号58:ヒト化抗体重鎖hH2の可変領域のアミノ酸配列
配列番号59:ヒト化抗体重鎖hH2の可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号60:ヒト化抗体重鎖hH3のアミノ酸配列
配列番号61:ヒト化抗体重鎖hH3をコードするヌクレオチド配列
配列番号62:ヒト化抗体重鎖hH3の可変領域のアミノ酸配列
配列番号63:ヒト化抗体重鎖hH3の可変領域をコードするヌクレオチド配列
配列番号64:Trastuzumab軽鎖のアミノ酸配列
配列番号65:Trastuzumab重鎖のアミノ酸配列
配列番号66:抗LPS抗体(h#1G5-H1L1)軽鎖のアミノ酸配列
配列番号67:抗LPS抗体(h#1G5-H1L1)重鎖のアミノ酸配列
配列番号68:抗TROP2抗体(hRS7)軽鎖のアミノ酸配列
配列番号69:抗TROP2抗体(hRS7)重鎖のアミノ酸配列
配列番号70:抗CD98抗体(hM23-H1L1)軽鎖のアミノ酸配列
配列番号71:抗CD98抗体(hM23-H1L1)重鎖のアミノ酸配列
配列番号72:Trastuzumab変異体軽鎖をコードするヌクレオチド配列
配列番号73:Trastuzumab変異体軽鎖のアミノ酸配列
配列番号74:Trastuzumab変異体重鎖をコードするヌクレオチド配列
配列番号75:Trastuzumab変異体重鎖のアミノ酸配列
配列番号76:Trastuzumab変異体2軽鎖のアミノ酸配列
配列番号77:Trastuzumab変異体2重鎖のアミノ酸配列
図1
図2
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