(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20240717BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20240717BHJP
H10N 50/80 20230101ALI20240717BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20240717BHJP
【FI】
G01R33/02 V
G01R33/09
H10N50/80 Z
H10N50/10 Z
(21)【出願番号】P 2021558170
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2020029194
(87)【国際公開番号】W WO2021100252
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】P 2019211066
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】悪七 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】亀野 誠
(72)【発明者】
【氏名】笠島 多聞
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004618(JP,A)
【文献】特開2019-174140(JP,A)
【文献】特開2019-174438(JP,A)
【文献】特開2019-132719(JP,A)
【文献】特開平09-113592(JP,A)
【文献】特開2003-139828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/02
G01R 33/09
H10N 50/80
H10N 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
少なくとも一つの感磁素子が形成された素子形成面が前記基板の表面に対して垂直又は所定の傾きを持つよう、前記基板の表面に搭載されたセンサチップと、
前記基板の表面に搭載され、検出対象磁界を前記感磁素子に集磁する少なくとも一つの外部磁性体と、
前記基板と干渉することなく前記外部磁性体に巻回された補償コイルと、を備えることを特徴とする磁気センサ。
【請求項2】
前記補償コイルは、前記基板と重ならない位置において、前記外部磁性体に巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記外部磁性体は、前記基板の表面から突出した突出部を有しており、
前記補償コイルは、前記突出部に巻回されていることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記基板は、前記外部磁性体と重なるスリット又は開口部を有しており、
前記補償コイルは、前記スリット又は前記開口部と重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記外部磁性体は、前記基板の表面から離れた離間部を有しており、
前記補償コイルは、前記外部磁性体の前記離間部に巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記少なくとも一つの感磁素子は、第1及び第2の感磁素子を含むブリッジ接続された複数の感磁素子からなり、
前記少なくとも一つの外部磁性体は、前記素子形成面に対して垂直な方向から見て、前記第1の感磁素子と前記第2の感磁素子の間に配置された第1の外部磁性体を含むことを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記補償コイルは、前記第1の外部磁性体に巻回されていることを特徴とする請求項
6に記載の磁気センサ。
【請求項8】
前記少なくとも一つの外部磁性体は、前記素子形成面の反対側に位置する前記センサチップの裏面を覆う第2の外部磁性体をさらに含むことを特徴とする請求項
6又は7に記載の磁気センサ。
【請求項9】
前記補償コイルは、前記第2の外部磁性体に巻回されていることを特徴とする請求項
8に記載の磁気センサ。
【請求項10】
前記補償コイルは、ボビンを介して前記外部磁性体に巻回されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項11】
前記ボビンの内径領域には、前記基板及び前記外部磁性体が挿入されていることを特徴とする請求項
10に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気センサに関し、特に、感磁素子に磁束を集める外部磁性体と補償コイルを備えた磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
感磁素子に磁束を集める外部磁性体と補償コイルを備えた磁気センサとしては、特許文献1及び2に記載された磁気センサが知られている。特許文献1及び2に記載された磁気センサは、センサチップに集積された感磁素子及び補償コイルと、センサチップ上に配置された外部磁性体とを備えている。そして、外部磁性体によって集磁された磁界が感磁素子に印加されるとともに、感磁素子に印加される磁界を補償コイルによってキャンセルすることによって、いわゆるクローズドループ制御が行われる。これにより、感磁素子に印加される磁界が常にゼロの状態が保たれることから、温度変化などに起因するオフセットが生じず、正確な磁界測定が可能となる。
【0003】
しかしながら、特許文献1及び2に記載された磁気センサでは、補償コイルがセンサチップに集積された構造を有していることから、補償コイルのターン数を十分に確保することが困難であり、このため補償コイルに流れる電流から発生する磁界が比較的小さい。このため、測定対象となる磁界が比較的強い場合には、感磁素子に印加される磁界をキャンセルすることが困難であった。また、補償コイルと外部磁性体の距離が離れていることから、測定対象となる磁界が強いと外部磁性体が磁気飽和してしまうことも考えられる。外部磁性体が磁気飽和すると、集磁能力の低下によって、磁界の強度とセンサ出力との間のリニアリティがなくなり、正確な磁界測定ができなくなるという問題があった。
【0004】
このような問題を解決する方法としては、特許文献1の
図12に示すように、センサチップが搭載された基板上に、センサチップを取り囲むような大型の補償コイルを別途付加する方法が考えられる。この方法によれば、感磁素子及び外部磁性体に強いキャンセル磁界を印加することができるため、測定対象となる磁界が比較的強い場合であっても、感磁素子に印加される磁界を正しくキャンセルすることができるとともに、外部磁性体の磁気飽和を防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/077870号パンフレット
【文献】特開2018-179738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大型の補償コイルを基板上に搭載する方法では、磁気センサ全体のサイズが大型化するという問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、感磁素子に印加される磁界を補償コイルによって正しくキャンセルすることができ、且つ、外部磁性体の磁気飽和を防止することが可能な小型の磁気センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による磁気センサは、基板と、少なくとも一つの感磁素子が形成された素子形成面が基板の表面に対して垂直又は所定の傾きを持つよう、基板の表面に搭載されたセンサチップと、基板の表面に搭載され、検出対象磁界を感磁素子に集磁する少なくとも一つの外部磁性体と、外部磁性体に巻回された補償コイルとを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、補償コイルが外部磁性体に巻回されていることから、コイル径を小さくできる。このため、磁気センサ全体のサイズの大型化を防止しつつ、キャンセル磁界を外部磁性体に効率よく印加することが可能となる。これにより、感磁素子に印加される磁界を正しくキャンセルすることができるとともに、外部磁性体の磁気飽和を防止することが可能となる。しかも、外部磁性体が基板の表面に搭載されていることから、外部磁性体の長さが長い場合であっても、基板上に外部磁性体を安定して支持することが可能となる。また、補償コイルを別部品として配置しなくても良いので、補償コイルの位置ずれ等によるキャンセル磁界の変化が低減され、安定した歩留まりでセンサを提供できる。
【0010】
本発明において、補償コイルは、基板と重ならない位置において外部磁性体に巻回されていても構わない。これによれば、補償コイルと基板の接触によって外部磁性体の支持が不安定となることもない。この場合、外部磁性体は基板の表面から突出した突出部を有しており、補償コイルは突出部に巻回されていても構わない。或いは、基板が外部磁性体と重なるスリット又は開口部を有しており、補償コイルはスリット又は開口部と重なる位置に設けられていても構わない。これらによれば、補償コイルと基板の接触を防止することが可能となる。
【0011】
本発明において、外部磁性体は基板の表面から離れた離間部を有しており、補償コイルは外部磁性体の離間部に巻回されていても構わない。これによれば、補償コイルを基板と重なる位置に配置しつつ、基板との接触を防止することが可能となる。
【0012】
本発明において、補償コイルは外部磁性体と基板の両方に巻回されていても構わない。これによれば、補償コイルと基板の干渉を防止しつつ、外力による外部磁性体の破損を防止することが可能となる。
【0013】
本発明において、少なくとも一つの感磁素子は、第1及び第2の感磁素子を含むブリッジ接続された複数の感磁素子からなり、少なくとも一つの外部磁性体は、素子形成面に対して垂直な方向から見て、第1の感磁素子と第2の感磁素子の間に配置された第1の外部磁性体を含むものであっても構わない。これによれば、第1及び第2の感磁素子に対して逆方向の磁界を与えることが可能となる。この場合、補償コイルは、第1の外部磁性体に巻回されていても構わない。これによれば、キャンセル磁界を第1の外部磁性体に効率よく印加することが可能となる。
【0014】
本発明において、少なくとも一つの外部磁性体は、素子形成面の反対側に位置するセンサチップの裏面を覆う第2の外部磁性体をさらに含むものであっても構わない。これによれば、感磁素子に印加される磁界の強度がより高められる。この場合、補償コイルは、第2の外部磁性体に巻回されていても構わない。これによれば、キャンセル磁界を第2の外部磁性体に効率よく印加することが可能となる。
【0015】
本発明において、補償コイルはボビンを介して外部磁性体に巻回されていても構わない。これによれば、外部磁性体に補償コイルを直接巻回する作業が不要となる。この場合、ボビンの内径領域には基板及び外部磁性体が挿入されていても構わない。これによれば、基板にセンサチップ及び外部磁性体を実装した後、補償コイルが巻かれたボビンを基板に挿入することによって作製できることから、アセンブリ作業の作業性が向上する。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明による磁気センサは、感磁素子に印加される磁界を補償コイルによって正しくキャンセルすることができ、且つ、外部磁性体の磁気飽和を防止することができる。しかも、補償コイルが外部磁性体に巻回されていることから、磁気センサ全体のサイズの大型化も防止される。さらに、基板と接触することなく補償コイルが巻回されていることから、補償コイルと基板の接触によって外部磁性体の支持が不安定となることもない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサ1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、磁気センサ1の略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、センサチップ20の略平面図である。
【
図5】
図5は、磁性体層と感磁素子が重なりを有している例を説明するための略断面図である。
【
図6】
図6は、感磁素子R1~R4と補償コイル41の接続関係を説明するための回路図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の第1の変形例による磁気センサ1Aの外観を示す略斜視図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の第2の変形例による磁気センサ1Bの外観を示す略斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施形態による磁気センサ2の外観を示す略斜視図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の変形例による磁気センサ2Aの外観を示す略斜視図である。
【
図11】
図11は、本発明の第3の実施形態による磁気センサ3の外観を示す略斜視図である。
【
図12】
図12は、本発明の第4の実施形態による磁気センサ4の外観を示す略斜視図である。
【
図13】
図13は、第4の実施形態の変形例による磁気センサ4Aの外観を示す略斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の第5の実施形態による磁気センサ5の外観を示す略斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明の第6の実施形態による磁気センサ6の外観を示す略斜視図である。
【
図16】
図16は、第6の実施形態の変形例による磁気センサ6Aの外観を示す略斜視図である。
【
図17】
図17は、本発明の第7の実施形態による磁気センサ7の外観を示す略斜視図である。
【
図18】
図18は、本発明の第8の実施形態による磁気センサ8の外観を示す略斜視図である。
【
図19】
図19は、第8の実施形態の第1の変形例による磁気センサ8Aの外観を示す略斜視図である。
【
図20】
図20は、第8の実施形態の第2の変形例による磁気センサ8Bの外観を示す略斜視図である。
【
図21】
図21は、本発明の第9の実施形態による磁気センサ9の外観を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態による磁気センサ1の外観を示す略斜視図である。また、
図2は、磁気センサ1の略分解斜視図である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態による磁気センサ1は、基板10と、基板10のxz面を構成する表面11に搭載されたセンサチップ20及び外部磁性体31~33と、外部磁性体31に巻回された補償コイル41とを備えている。センサチップ20は、xy面を構成する素子形成面21及び裏面22と、yz面を構成する側面23,24と、xz面を構成する側面25,26とを有しており、側面26が基板10の表面11と向かい合うよう、基板10に搭載されている。センサチップ20の素子形成面21上には、後述する感磁素子及び磁性体層M1~M3が形成されている。このように、本実施形態においては、基板10の表面11とセンサチップ20の素子形成面21が垂直である。但し、本発明おいて両者が完全に垂直であることは必須でなく、垂直に対して所定の傾きを有していても構わない。
【0021】
外部磁性体31~33は、センサチップ20に磁束を集める役割を果たし、いずれもフェライトなどの高透磁率材料によって構成される。このうち、外部磁性体31はz方向を長手方向とする棒状体であり、磁性体層M1の一部を覆うよう、素子形成面21のx方向における略中央部に位置決めされている。外部磁性体32は、磁性体層M2の一部を覆うとともに、センサチップ20の側面24及び裏面22を覆っており、z方向を長手方向とする棒状形状を有している。同様に、外部磁性体33は、磁性体層M3の一部を覆うとともに、センサチップ20の側面23及び裏面22を覆っており、z方向を長手方向とする棒状形状を有している。かかる構成により、z方向の磁界が選択的に集磁され、集磁された磁界がセンサチップ20に印加されることになる。
【0022】
補償コイル41は、z方向が軸方向となるよう外部磁性体31に巻回されたワイヤ(被覆導線)からなる。
図1及び
図2に示すように、外部磁性体31は、基板10からz方向に突出した突出部31zを有しており、補償コイル41がこの突出部31zに巻回されている。本実施形態においては、補償コイル41が外部磁性体31に直接巻回されている。また、巻崩れを防止するために、外部磁性体31に巻回した補償コイル41を接着剤などで固めても構わない。補償コイル41を構成するワイヤのターン数については特に限定されず、目的とするキャンセル磁界の発生に必要なターン数とすれば良い。本実施形態においては、補償コイル41を外部磁性体31に巻回していることから、センサチップ20に補償コイルを集積する方式と比べて、ターン数を大幅に増やすことが可能であるとともに、より大きな電流を流すことが可能である。また、基板上に補償コイルを別途配置する方式のように、磁気センサ全体のサイズが大型化することもない。
【0023】
図3はセンサチップ20の略平面図であり、
図4は
図3のA-A線に沿った略断面図である。
【0024】
図3及び
図4に示すように、センサチップ20の素子形成面21には、4つの感磁素子R1~R4が形成されている。感磁素子R1~R4は、磁束の向きによって電気抵抗が変化する素子であれば特に限定されず、例えばMR素子などを用いることができる。感磁素子R1~R4の固定磁化方向は、互いに同じ向き(例えばx方向におけるプラス側)に揃えられている。感磁素子R1~R4は絶縁層27で覆われており、絶縁層27の表面には、パーマロイなどからなる磁性体層M1~M3が形成されている。磁性体層M1~M3は絶縁層28で覆われている。そして、磁性体層M1~M3のうち、y方向における一方側(
図3における上側)に位置する部分を磁性体層M11,M21,M31と定義し、y方向における他方側(
図3における下側)に位置する部分を磁性体層M12,M22,M32と定義した場合、平面視で(z方向から見て)、感磁素子R1は磁性体層M11と磁性体層M21の間に位置し、感磁素子R2は磁性体層M12と磁性体層M22の間に位置し、感磁素子R3は磁性体層M11と磁性体層M31の間に位置し、感磁素子R4は磁性体層M12と磁性体層M32の間に位置している。これにより、磁気ギャップG1~G4を通過する磁界が感磁素子R1~R4に印加される。
【0025】
但し、本発明において、各感磁素子R1~R4が平面視で2つの磁性体層間に位置することは必須でなく、2つの磁性体層からなる磁気ギャップG1~G4の近傍、つまり、磁気ギャップG1~G4によって形成される磁路上に各感磁素子R1~R4が配置されていれば足りる。また、磁気ギャップG1~G4の幅が感磁素子R1~R4の幅よりも広い必要はなく、磁気ギャップG1~G4の幅が感磁素子R1~R4よりも狭くても構わない。
図5に示す例では、磁気ギャップG1のx方向における幅Gxが感磁素子R1のx方向における幅Rxよりも狭く、これにより、z方向から見て磁性体層M1,M2と感磁素子R1が重なりOVを有している。磁気ギャップG1~G4と感磁素子R1~R4との関係は、
図5に示す関係であっても構わない。
【0026】
図3及び
図4において、符号31a~33aで示す領域はそれぞれ外部磁性体31~33によって覆われる領域を示している。
図3及び
図4に示すように、外部磁性体31は磁性体層M1を覆い、外部磁性体32は磁性体層M2を覆い、外部磁性体33は磁性体層M3を覆う。
【0027】
図6は、感磁素子R1~R4と補償コイル41の接続関係を説明するための回路図である。
【0028】
図6に示すように、感磁素子R1は端子電極T11,T13間に接続され、感磁素子R2は端子電極T12,T14間に接続され、感磁素子R3は端子電極T11,T12間に接続され、感磁素子R4は端子電極T13,T14間に接続されている。端子電極T11~T14は、
図2に示す端子電極群T10を構成する端子電極である。端子電極群T10はセンサチップ20に設けられ、基板10に形成された図示しない配線を介して、
図1及び
図2に示す端子電極群T30に接続される。端子電極T11には電源電位Vccが与えられ、端子電極T14には接地電位GNDが与えられる。そして、感磁素子R1~R4は全て同一の磁化固定方向を有していることから、外部磁性体31からみて一方側に位置する感磁素子R1,R2の抵抗変化量と、外部磁性体31からみて他方側に位置する感磁素子R3,R4の抵抗変化量との間には差が生じる。これにより、感磁素子R1~R4は差動ブリッジ回路を構成し、磁束密度に応じた感磁素子R1~R4の電気抵抗の変化が差動信号Vaとして端子電極T12,T13に現れることになる。
【0029】
端子電極T12,T13から出力される差動信号Vaは、基板10又はセンサチップ20に設けられた差動アンプ51に入力される。差動アンプ51の出力信号は、端子電極T21にフィードバックされる。
図6に示すように、端子電極T21と端子電極T22との間には補償コイル41が接続されており、これにより、補償コイル41は差動アンプ51の出力信号に応じたキャンセル磁界を発生させる。端子電極T21,T22は、
図1及び
図2に示す端子電極群T20を構成する端子電極である。かかる構成により、検出対象磁界の磁束密度に応じた感磁素子R1~R4の電気抵抗の変化に応じた差動信号Vaが端子電極T12,T13に現れると、これに応じた電流が補償コイル41に流れ、逆方向のキャンセル磁界を発生させる。これにより、検出対象磁界が打ち消される。そして、差動アンプ51から出力される電流を検出回路52によって電流電圧変換すれば、検出対象磁界の強さを検出することが可能となる。このようなクローズドループ制御により、外部磁性体31~33を介して集磁された磁界を高精度に検出することが可能となる。
【0030】
そして、本実施形態においては、補償コイル41が外部磁性体31に巻回されていることから、十分なターン数を確保することができるとともに、より大きな電流を流すことが可能である。これにより、強いキャンセル磁界を発生させることができるため、測定対象となる磁界が比較的強い場合であっても、感磁素子R1~R4に印加される磁界を正しくキャンセルすることができるだけでなく、外部磁性体31の磁気飽和を防止することが可能となる。
【0031】
しかも、本実施形態においては、外部磁性体31が突出部31zを有しており、補償コイル41がこの突出部31zに巻回されていることから、補償コイル41と基板10の接触や干渉が生じない。これにより、外部磁性体31を基板10の表面11に密着させることができることから、外部磁性体31を基板10の表面11に安定的に固定することが可能となる。
【0032】
図7は、本実施形態の第1の変形例による磁気センサ1Aの外観を示す略斜視図である。
図7に示すように、第1の変形例による磁気センサ1Aは、補償コイル41が円形の空芯コイルからなる点において、上述した磁気センサ1と相違する。このように、補償コイル41として空芯コイルを用いれば、外部磁性体31に補償コイル41を直接巻回する作業が不要となり、すでに巻回された補償コイル41を外部磁性体31に装着すれば足りる。
【0033】
図8は、本実施形態の第2の変形例による磁気センサ1Bの外観を示す略斜視図である。
図8に示すように、第2の変形例による磁気センサ1Bは、補償コイル41が樹脂などからなるボビン41Bを介して外部磁性体31に巻回されている点において、上述した磁気センサ1と相違する。このように、補償コイル41をボビン41Bに巻回すれば、外部磁性体31に補償コイル41を直接巻回する作業が不要となり、ボビン41Bに巻回された補償コイル41を外部磁性体31に装着すれば足りる。
【0034】
図9は、本発明の第2の実施形態による磁気センサ2の外観を示す略斜視図である。
【0035】
図9に示すように、第2の実施形態による磁気センサ2は、基板10にスリット12が設けられている点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。「スリット」とは閉じていない、つまり、内壁面が基板10の側面と連続的につながる切り欠きを意味する。スリット12はy方向から見て外部磁性体31と重なっており、外部磁性体31のうちスリット12と重なる部分に補償コイル41が巻回されている。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
本実施形態においては、外部磁性体31が基板10から突出していないものの、基板10にスリット12が設けられ、スリット12と重なる部分に補償コイル41が巻回されていることから、第1の実施形態と同様、補償コイル41と基板10の接触が生じない。しかも、外部磁性体31が基板10から突出しないことから、外力による外部磁性体31の破損も生じにくくなる。
【0037】
図10は、本実施形態の変形例による磁気センサ2Aの外観を示す略斜視図である。
図10に示すように、変形例による磁気センサ2Aは、外部磁性体32と外部磁性体33が別部品ではなく、これらが一体化された外部磁性体34を用いている。本実施形態が例示するように、一体化された外部磁性体34を用いても構わない。
【0038】
図11は、本発明の第3の実施形態による磁気センサ3の外観を示す略斜視図である。
【0039】
図11に示すように、第3の実施形態による磁気センサ3は、基板10に開口部13が設けられている点において、第2の実施形態による磁気センサ2と相違している。「開口部」とは閉じた、つまり、内壁面が基板10の側面と連続的につながらない独立した切り欠きを意味する。開口部13はy方向から見て外部磁性体31と重なっており、外部磁性体31のうち開口部13と重なる部分に補償コイル41が巻回されている。その他の基本的な構成は、第2の実施形態による磁気センサ2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
本実施形態においては、外部磁性体31が基板10から突出していないものの、基板10に開口部13が設けられ、開口部13と重なる部分に補償コイル41が巻回されていることから、第1の実施形態と同様、補償コイル41と基板10の接触が生じない。しかも、外部磁性体31が基板10から突出しないことから、外力による外部磁性体31の破損も生じにくくなる。さらに、開口部13のz方向位置を変更することにより、補償コイル41を任意のz方向位置に巻回することが可能となる。
【0041】
図12は、本発明の第4の実施形態による磁気センサ4の外観を示す略斜視図である。
【0042】
図12に示すように、第4の実施形態による磁気センサ4は、外部磁性体32,33のz方向における端部のx方向幅が狭くなっており、この部分に別の補償コイル42が巻回されている点において、第2の実施形態による磁気センサ2と相違している。さらに、基板10には、スリット12だけでなく開口部14が設けられている。その他の基本的な構成は、第2の実施形態による磁気センサ2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
開口部14はy方向から見て外部磁性体32,33と重なっており、外部磁性体32,33のうち開口部14と重なる部分に補償コイル42が巻回されている。補償コイル42のコイル軸はz方向であり、外部磁性体31に巻回された補償コイル41と同方向に巻回される。補償コイル41と補償コイル42は、直列に接続することが好ましい。補償コイル41と補償コイル42を直列に接続すれば、補償コイル41,42に同じ補償電流が流れることから、補償コイル41によって外部磁性体31を通過する磁束がキャンセルされるとともに、補償コイル42によって外部磁性体32,33を通過する磁束がキャンセルされる。このため、外部磁性体31だけでなく、外部磁性体32,33の磁気飽和も防止される。
【0044】
図13は、本実施形態の変形例による磁気センサ4Aの外観を示す略斜視図である。
図13に示すように、変形例による磁気センサ4Aは、スリット12の代わりに開口部13が設けられており、外部磁性体31のうち開口部13と重なる位置に補償コイル41が巻回されている。また、開口部13,14のz方向における長さも拡大されており、これにより補償コイル41,42のターン数が増加している。このように、補償コイル41,42のターン数を増やす必要がある場合には、開口部13,14のz方向における長さを拡大すればよい。
【0045】
図14は、本発明の第5の実施形態による磁気センサ5の外観を示す略斜視図である。
【0046】
図14に示すように、第5の実施形態による磁気センサ5は、スリット12の代わりに開口部13が設けられ、且つ、基板10に別のスリット15,16が設けられている。そして、外部磁性体32のうちスリット15と重なる位置に補償コイル43が巻回され、外部磁性体33のうちスリット16と重なる位置に補償コイル44が巻回されている。その他の基本的な構成は、第4の実施形態による磁気センサ4と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0047】
本実施形態が例示するように、外部磁性体32,33に補償コイルを巻回する場合、補償コイル42を外部磁性体32,33にまとめて巻回する必要はなく、外部磁性体32,33に補償コイル43,44をそれぞれ巻回しても構わない。これによれば、補償コイルのターン数をより細かく調整することが可能となる。
【0048】
図15は、本発明の第6の実施形態による磁気センサ6の外観を示す略斜視図である。
【0049】
図15に示すように、第6の実施形態による磁気センサ6は、補償コイル41が省略されている点において、第4の実施形態による磁気センサ4と相違している。これに伴い、基板10のスリット12も省略されている。その他の基本的な構成は、第4の実施形態による磁気センサ4と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
本実施形態が例示するように、外部磁性体31に補償コイル41を巻回することは必須でなく、補償コイル41を省略する代わりに、外部磁性体32,33に補償コイル42を巻回しても構わない。
【0051】
図16は、本実施形態の変形例による磁気センサ6Aの外観を示す略斜視図である。
図16に示すように、変形例による磁気センサ6Aは、外部磁性体32,33のx方向における幅が長手方向の途中で狭くなるくびれた形状を有しており、このくびれ部分に補償コイル42が巻回されている。これによれば、補償コイル42が脱落しにくくなる。
【0052】
図17は、本発明の第7の実施形態による磁気センサ7の外観を示す略斜視図である。
【0053】
図17に示すように、第7の実施形態による磁気センサ7は、外部磁性体31の先端が細くなっているとともに、外部磁性体31が基板10から突出しない点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0054】
図17に示す例では、外部磁性体31の先端がx方向及びy方向に細くなっている。この細くなった部分は、基板10の表面11から離れた離間部31sを構成する。そして、本実施形態においては、この離間部31sに補償コイル41を巻回することにより、補償コイル41と基板10の接触が防止されている。
【0055】
本実施形態が例示するように、基板10と重なる位置に補償コイル41を巻回しても構わない。尚、
図17に示す例では、離間部31sがx方向及びy方向に細くなっているが、補償コイル41と基板10の接触を防止する離間部31sがどのような形状であっても構わない。
【0056】
図18は、本発明の第8の実施形態による磁気センサ8の外観を示す略斜視図である。
【0057】
図18に示すように、第8の実施形態による磁気センサ8は、外部磁性体31の先端と重なる基板10の端部10aの幅が外部磁性体31と同程度に細く、且つ、補償コイル41が基板10の端部10aと外部磁性体31の両方に巻回されている点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。これに伴い、外部磁性体31は突出部31zを有しておらず、全体が基板10と重なっている。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0058】
本実施形態が例示するように、補償コイル41を外部磁性体31と基板10の両方に巻回しても構わない。この場合であっても、補償コイル41と基板10の干渉を防止することができるとともに、外部磁性体31の全体が基板10と重なることから、外力による外部磁性体31の破損も生じにくくなる。
【0059】
図19は、本実施形態の第1の変形例による磁気センサ8Aの外観を示す略斜視図である。
図19に示すように、変形例による磁気センサ8Aは、補償コイル41が省略される代わりに、外部磁性体32,33と基板10の両方に補償コイル42が巻回されている。このように、外部磁性体32,33に巻回する補償コイル42を基板10ごと巻回しても構わない。
【0060】
図20は、本実施形態の第2の変形例による磁気センサ8Bの外観を示す略斜視図である。
図20に示すように、変形例による磁気センサ8Bは、補償コイル41が樹脂などからなるボビン41Bに巻回されているとともに、ボビン41Bの内径領域に基板10及び外部磁性体31が挿入されている。このように、補償コイル41をボビン41Bに巻回すれば、外部磁性体31に補償コイル41を直接巻回する作業が不要となる。つまり、基板10にセンサチップ20及び外部磁性体31を実装した後、補償コイル41が巻かれたボビン41Bを基板10に挿入することによって作製できることから、アセンブリ作業の作業性が向上する。しかも、ボビン41Bを使用していることから、補償コイル41を正確に巻くことができ、その結果、補償コイル41による印加磁場精度が向上する。
【0061】
図21は、本発明の第9の実施形態による磁気センサ9の外観を示す略斜視図である。
【0062】
図21に示すように、第9の実施形態による磁気センサ9は、外部磁性体31が基板10から突出していない点において、第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。これに伴い、外部磁性体31は突出部31zを有しておらず、全体が基板10と重なっている。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0063】
本実施形態が例示するように、本発明において補償コイル41と基板10の干渉を防止することは必須でない。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0065】
例えば、上記の各実施形態では、4つの感磁素子R1~R4をブリッジ接続しているが、本発明において4つの感磁素子を用いることは必須でない。
【符号の説明】
【0066】
1,1A,1B,2,2A,3,4,4A,5,6,6A,7,8,8A,8B,9 磁気センサ
10 基板
10a 基板の端部
11 基板の表面
12,15,16 スリット
13,14 開口部
20 センサチップ
21 素子形成面
22 センサチップの裏面
23~26 センサチップの側面
27,28 絶縁層
31~33 外部磁性体
31s 離間部
31z 突出部
41~44 補償コイル
41B ボビン
51 差動アンプ
52 検出回路
G1~G4 磁気ギャップ
M1~M3,M11,M21,M31,M12,M22,M32 磁性体層
R1~R4 感磁素子
T10,T20,T30 端子電極群
T11~T14,T21,T22 端子電極