(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】美容器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/26 20060101AFI20240717BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240717BHJP
A46B 3/04 20060101ALI20240717BHJP
A46D 1/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A61N1/26
A61N1/36
A46B3/04
A46D1/00
(21)【出願番号】P 2022081153
(22)【出願日】2022-05-17
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114628
【氏名又は名称】ヤーマン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511216318
【氏名又は名称】廣東雅思電子有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG ACE-TEC CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.420, Jinxing Road Xixi Industrial Park, Liaobu Town DongGuan, Guangdong, 523000, China
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 貴三代
(72)【発明者】
【氏名】楊 暁川
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/064873(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/26
A61N 1/36
A46B 3/04
A46D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に多数のピンを有するピン体を備えるブラシ状の美容器であって、
少なくとも一部の該ピンに使用者の作用部位に対して通電可能な電極領域を有すると共に、
該ピンの軸方向に亘って導電性シリコン樹脂で形成された弾性体を内装し、
該本体の通電回路から該弾性体を通して該電極領域に通電を行って該作用部位に対して美容作用を及ぼす構成において、
前記導電性シリコン樹脂が、ニッケル粉を含有し、前記弾性体の前記通電回路と前記電極領域との間の電気抵抗が10オーム以下である、
ことを特徴とする美容器。
【請求項2】
前記弾性体の一端が、前記通電回路を構成する回路基板に直接接触すると共に、
該弾性体の他端が、前記電極領域を構成する先端部と直接接触する
請求項1に記載の美容器。
【請求項3】
前記ピン体が、
複数の前記ピンの共通の基部となる基盤体と、
前記基盤体から立設する略円筒状の柱状部と、
該柱状部の先端の少なくとも一部に導電体である先端部と
を備えた
請求項1に記載の美容器。
【請求項4】
前記先端部が、前記柱状部の筒内に挿入される、筒内径よりも小径の延出部を備え、
前記弾性体の一端に該延出部が嵌入する延出受け部を備える
請求項2に記載の美容器。
【請求項5】
前記弾性体の他端にも、前記延出受け部と略同一な形状の反対側延出受け部を備えると共に、
前記通電回路から、該反対側延出受け部に嵌入する接点部を備える
請求項4に記載の美容器。
【請求項6】
本体と、該本体に着脱可能なブラシアタッチメントとからなるブラシ状の美容器であって、
該ブラシアタッチメントは、多数のピンを有するピン体を備え、
少なくとも一部の該ピンに使用者の作用部位に対して通電可能な電極領域を有すると共に、
該ピンの軸方向に亘って導電性シリコン樹脂で形成された弾性体を内装し、
該本体又は基盤体に備える通電回路から該弾性体を通して該電極領域に通電を行って該作用部位に対して美容作用を及ぼす構成において、
前記導電性シリコン樹脂が、
ニッケル粉を含有し、前記弾性体の前記通電回路と前記電極領域との間の電気抵抗が10オーム以下である、
ことを特徴とする美容器。
【請求項7】
前記弾性体の一端が、前記通電回路を構成する回路基板に直接接触すると共に、
該弾性体の他端が、前記電極領域を構成する先端部と直接接触する
請求項6に記載の美容器。
【請求項8】
前記ピン体が、
複数の前記ピンの共通の基部となる基盤体と、
前記基盤体から立設する略円筒状の柱状部と、
該柱状部の先端の少なくとも一部に導電体である先端部と
を備えた
請求項6に記載の美容器。
【請求項9】
前記先端部が、前記柱状部の筒内に挿入される、筒内径よりも小径の延出部を備え、
前記弾性体の一端に該延出部が嵌入する延出受け部を備える
請求項7に記載の美容器。
【請求項10】
前記弾性体の他端にも、前記延出受け部と略同一な形状の反対側延出受け部を備えると共に、
前記通電回路から、該反対側延出受け部に嵌入する接点部を備える
請求項9に記載の美容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の顔や頭などの作用部位に美容作用を及ぼす美容器に関し、特に美容器に備えるブラシのピン体から電気的な美容作用を及ぼす技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来から肌にパルス性の電気を流し、筋肉を収縮運動(EMS:Electrical Muscle Stimulation)させることにより、リンパ液の流れを促進させて疲労回復等のトリートメントを行ったり、筋肉の強化を図ったりする美容機器が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、ブラッシングを行いつつ振動によって頭皮に刺激を与える振動ヘアブラシが開示されている。本件出願人によるこの振動ヘアブラシによると、頭皮に対して様々な方向から刺激を与えることが可能で、しかも高い周波数で振動させることも可能として、多様な効果が得られる。
【0004】
特許文献2は頭皮を対象とするものではないが、複数のピンが頬等の柔らかい肌や筋肉の起伏に即して均一に接触し、違和感なく心地良い振動と電気的刺激を与えて疲労等を回復することができるマッサージ器用のピンヘッドを開示している。
本発明において、複数のピンの基端部を囲み複数のピンそれぞれを外方に付勢するコイルスプリングが備えられている。
【0005】
また特許文献3に開示される美容装置の頭部は、頭部、弾性挿入部および外部の回路構造に電気接続される電気接続部を含み、頭部内には導電構造が形成され、弾性挿入部は弾性の方向に両端を含み、一端は頭部内に挿入されて導電構造に電気接続され、他端は電気接続部に電気接続される構成が開示されている。
【0006】
特許文献4ないし6には、ヘアブラシの各ピン体の基部にコイルスプリングを設けた構成が開示されている。
【0007】
特許文献7には、育毛剤導入装置であって、電極本体はその形状をブラシ状に形成されており、電極が櫛歯状に配設される先端部と、使用時に使用者に握られる部分となる胴部とから構成される。そして、先端部において、電極の電極胴部を櫛歯形状に形成された櫛歯部の絶縁部に挿入するようにする一方、電極先端部を絶縁部により露出させるようにして、頭皮に接触可能とされている。このように電極について電極先端部のみを露出させ、電極胴部を絶縁部により絶縁状態とすることにより、隣接する電極の干渉を防止する、としている。
【0008】
特許文献8には、皮膚刺激ブラシの発明であって、皮膚刺激ブラシ用ピンは、電気回路から導電可能に接続できる金属製の基底部材と、細長の筒体であって、基底部材が基端部に配設されてなる胴部材と、胴部材の先端側の開口に接続されて、先端が露出してなる電極部材と、胴部材の筒内部に挿通されて、基底部材と電極部材とを連結する金属軸と、を有する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2013-188250号公報
【文献】特許5789064号
【文献】登実3226151号公報
【文献】登実3036599号公報
【文献】特開2000-140131号公報
【文献】特開2000-262637号公報
【文献】特開2009-247526号公報
【文献】特開2022-30257号公報
【文献】実用新案登録第3229284号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術によると、ブラシのピン体の基部にコイルスプリングを介入させて、ピン体が出没可能にすることや、このコイルスプリングを通して通電することは記載されている。一方、このような構造では基部とピン体との間に剛性が異なる部位が生じるためピン体の折れにつながったり、しなやかにピン体が曲がらず使用感が悪くなる問題があった。
【0011】
また、ピン体の先端に電極領域を設ける構成では、当該電極領域まで必要十分な電力を安定して供給する必要があるが、基部にコイルスプリングを設けてこれを通電しても、先端までの通電経路を確保することはできなかった。
【0012】
特許文献8は、金属製の基底部材を備えて、金属軸が基底部材と電極部材とを連結する構成を開示しているが、金属軸が径方向に屈曲可能な柔軟性を有するとすれば、基底部材と電気回路との接続を確実にしなければならず、導電性の確保と柔軟性の両立に課題を有する。
【0013】
さらに、従来提供されてきたブラシ状の美容器では、ピン体の先端に電極を備えて電気的な美容作用を行う他に、通常のヘアブラシとしての機能や、さまざまな美容作用に対応する簡便な構成が提供されておらず、また頭皮や頭髪部位以外の作用部位に対応可能な構成も提供されていない。
【0014】
そこで本発明は、電気的な美容作用を及ぼすために優れた構造を備えたブラシ状の美容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は次のような美容器を提供する。
本発明の第1の態様によれば、本体に多数のピンを有するピン体を備えるブラシ状の美容器であって、少なくとも一部のピンに使用者の作用部位に対して通電可能な電極領域を有すると共に、ピンの軸方向に亘って導電性シリコン樹脂で形成された弾性体を内装し、本体の通電回路から弾性体を通して電極領域に通電を行って作用部位に対して美容作用を及ぼす美容器を提供する。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、上記のピン体が、複数のピンの共通の基部となる基盤体と、基盤体から立設する略円筒状の柱状部と、 柱状部の先端の少なくとも一部に導電体である先端部とを備えた構成でもよい。
【0017】
本発明の第3の態様によれば、弾性体の通電回路と電極領域との間の電気抵抗が100オーム以下であることが好ましい。
【0018】
本発明の第4の態様によれば、導電性シリコン樹脂が、ニッケル粉を含有することが好ましい。
【0019】
本発明の第5の態様によれば、先端部が、柱状部の筒内に挿入される、筒内径よりも小径の延出部を備え、弾性体の一端に延出部が嵌入する延出受け部を備える構成でもよい。
【0020】
本発明の第6の態様によれば、弾性体の他端にも、軸孔部と略同一な形状の反対側軸孔部を備えると共に、通電回路から、反対側軸孔部に嵌入する接点部を備える構成でもよい。
【0021】
本発明の第7の態様によれば、本体と、本体に着脱可能なブラシアタッチメントとからなるブラシ状の美容器であって、ブラシアタッチメントは、多数のピンを有するピン体を備え、少なくとも一部のピンに使用者の作用部位に対して通電可能な電極領域を有すると共に、ピンの軸方向に亘って導電性シリコン樹脂で形成された弾性体を内装し、本体又は基盤体に備える通電回路から弾性体を通して電極領域に通電を行って作用部位に対して美容作用を及ぼす美容器を提供する。
【0022】
本発明の第8の態様によれば、ピン体が、複数のピンの共通の基部となる基盤体と、基盤体から立設する略円筒状の柱状部と、 柱状部の先端の少なくとも一部に導電体である先端部とを備えた構成でもよい。
【0023】
本発明の第9の態様によれば、弾性体の通電回路と電極領域との間の電気抵抗が100オーム以下であることが好ましい。
【0024】
本発明の第10の態様によれば、導電性シリコン樹脂が、ニッケル粉を含有することが好ましい。
【0025】
本発明の第11の態様によれば、先端部が、柱状部の筒内に挿入される、筒内径よりも小径の延出部を備え、弾性体の一端に延出部が嵌入する延出受け部を備える構成でもよい。
【0026】
本発明の第12の態様によれば、弾性体の他端にも、軸孔部と略同一な形状の反対側軸孔部を備えると共に、通電回路から、反対側軸孔部に嵌入する接点部を備える構成でもよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明は上記構成により次のような効果を奏する。
ピン体の軸方向に亘って導電性の弾性体を内装することで、ピン体がしなやかな可撓性を備えると共に、導電性シリコン樹脂の弾性体を通して電極領域に通電することによって安定した電力供給が実現される。
同時に、本発明によれば最適な通電態様によって各作用部位における美容効果を最大限高めることができる。
【0028】
また、本体と、本体に着脱可能なブラシアタッチメントとからなる美容器を提供することによって、ブラシアタッチメントを交換することで多様な機能を提供することができる。同時に、本発明のブラシアタッチメントの構造によれば、本体からピン体に向けて確実かつ簡易な構成で電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図9】ブラシアタッチメントの態様を説明する説明図。
【
図10】ブラシアタッチメントの着脱部を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施例を基に説明する。なお、実施形態は下記に限定されるものではない。
図1は本発明に係る美容器(1)の斜視図である。美容器は略棒状の本体(10)の一方が使用者が把持する把持部(11)、他方が美容作用を及ぼすブラシ状のブラシ部(12)から構成される。
【0031】
本実施例は、ブラシ部(12)にブラシアタッチメント(20)が着脱自在に構成されており、美容作用の種類や作用部位に応じてブラシアタッチメントを随意に交換することができる。
ただし、本発明におけるブラシ部(12)にはブラシ状体を直接備えてもよく、必ずしも着脱可能とした構成に限定されない。以下において説明するブラシアタッチメントは、いずれもブラシ部(12)に固設した構成でもよい。
【0032】
ブラシアタッチメント(20)は、多数のピンを有するピン体(21)を備えている。ピン体(21)の先端部には使用者の作用部位に対して通電可能な電極領域である先端部(22)を有する。先端部(22)は金属製であるが、導電性の樹脂などで構成してもよい。
【0033】
図2及びその拡大図である
図3には美容器のピン体の構造を説明する断面図を示す。本実施例では、ピン体(21)は複数のピンの共通の基部となる基盤体(23)と、基盤体(23)から略円筒状の柱状部(24)を非導電性のシリコン樹脂で立設して構成する。
【0034】
柱状部(24)の筒内には導電性シリコン樹脂で形成された弾性体(25)が挿嵌されている。弾性体(25)の外径は柱状部(24)の筒内径と略同一であって、柱状部(24)が撓む際に弾性体(25)の弾性によって使用時のクッション性と、ピンの立ち上がり力に合わせて、適度なしなやかさを奏することができる。これにより、従来のコイルスプリングを用いた構成に比して、美容効果の向上,特に引き上げ感の向上が図られる。
同時に、弾性体(25)によって柱状部(24)の耐久性の向上にも寄与する。
【0035】
従来から美容器のピン全体を導電性シリコン樹脂で形成したものは知られている(例えば特許文献9)。しかし、ピン全体を導電性シリコン樹脂すると、柱状部の側面からも外部に放電してしまうため、先端部(22)から集中して通電を行うことができず、十分な効果を奏することができなかった。
これに対して、本発明では、柱状部(24)は非導電性のシリコン樹脂で形成し、その内部に内装した弾性体を通して通電回路から電極領域である先端部に通電するため、十分な刺激を与えることができる。
また、本発明では柱状部(24)の略全長に亘って弾性体が内装されていることで、しなり方向の弾性と補強を同時に実現している。
【0036】
柱状部(24)の略円筒状は基盤体(23)の厚み部分まで貫通しており、コイルスプリング(25)は該厚み部分まで通して挿嵌されている。そして、基盤体(23)の裏面から弾性体(25)の端部(25a)が露出している。
【0037】
弾性体(25)の端部(25a)は背面側の回路基板(26)と電気的に接触する。回路基板(26)には、弾性体(25)の位置に合わせて接点が設けられ、本体(10)に備える図示しない通電回路から通電される。
【0038】
導電性シリコン樹脂の弾性体は、柱状部(24)の筒内の形状に合わせて、先端部側が小径、回路基板側に向けて漸次台形となる円錐台状であり、端部(25a)から1mm程度突出する長さを有している。そして、回路基板(26)と接触した時に弾性体(25)が圧縮変形して回路基板(26)との接触を確保すると共に、柱状部(24)の筒内で内径が拡大し、柱状部の内周と側面全体が接するようになり、安定した撓り特性を有するピン体が形成される。
【0039】
導電性シリコンの端部(25a)は金属製の軸やコイルスプリングと異なり、十分な摩擦係数を有するため、回路基板(26)の接点からずれることがなく、通電性も安定する。本発明において導電性シリコンを用いる利点の一つが、この摩擦力による接触の安定性である。
【0040】
通電回路としては周知のように充電池や電池、あるいは電源アダプタ等の電力を供給する電源と、電流、電圧等の態様を制御する制御回路からなる。なお、本発明において、通電回路は必ずしも本体(10)に備える構成に限らず、ブラシアタッチメント(20)内に備えてもよい。また、電源だけ本体(10)に備えたり、制御回路の一部を本体とブラシアタッチメントとに分散して配置してもよい。
【0041】
基盤体(23)は上記の回路基板(26)と反対側の面に補強樹脂板(27)が重ねられて、結果として基盤体(23)がサンドされた状態になっている。補強樹脂板(27)は基盤体(23)が変形することを防ぐだけでなく、厚みによって柱状部(24)の根元を補強する役割を持っている。補強樹脂板(27)によってピン体(21)が根元から曲がらないよう支えることで、折れなどの破損を防ぐ。補強樹脂板(27)は平面の樹脂に柱状部(24)の位置に対応する穴が開口した構造である。
【0042】
弾性体(25)の他端(25b)の内周には先端部(22)の一端の延出部(22a)が所定長だけ挿通している。延出部(22a)は先端部(22)及び柱状部の筒内径よりも小径の棒状に延出した部分であり、弾性体(25)の一端に設けた棒状の孔である延出受け部に嵌入して弾性体(25)との間で電気的に接触する。これにより、回路基板(26)から弾性体(25)を介して先端部(22)までの電気的経路が構成される。
【0043】
すなわち、本発明では弾性体(25)は、しなり方向の弾性と補強を同時に実現するだけでなく、さらに回路基板(26)から電極領域である先端部(22)までの電気的経路としても作用している。この点、柱状部(24)が撓ると一般的な電線等では断線による接触不良などが生じやすい欠点がある。一方、本発明の構成では弾性体(25)を挿嵌することで、ピン体(21)が大きく撓っても伸張して両端部の電気的接触は維持され、当然ながら断線の恐れがなく、抵抗の少ない電気的経路を実現することができる。
【0044】
発明者の知見によると、本発明の弾性体(25)の材料は、一般的な導電性シリコン樹脂を用いると電気抵抗が大きすぎ、十分な通電が行えない問題がある。
そこで、本発明では、弾性体の前記通電回路と前記電極領域との間の電気抵抗が100オーム以下とする必要がある。特に好ましくは10オーム以下である。
【0045】
本実施例において弾性体(25)の長さは12mm~13mmであるが、カーボンブラックを主たる導電性材料とする従来の導電性シリコン樹脂で形成すると抵抗値が200オーム以上であった。この時、電気的刺激を十分に与えられないことから、本発明の構成を実現するにあたって、特に材料の選択に試行錯誤を繰り返す必要があった。
【0046】
実験によると、100オーム以下であれば一定の電気的刺激を与えることができ、特に10オーム以下であればユーザが十分な体感を得ることができた。
本実施例で選択した材料では、弾性体の全長の両端における抵抗値が3オーム程度となっている。
【0047】
材料は、カーボンブラックシリカ(SiO2)が10ないし30%、ニッケル粉を60-70%、その他の20-+30%が有機高分子シリコンゴムである。有機高分子シリコンゴムの分子式は、
RMe2SiO-(Me2SiO-)n-(MeViSiO)m-SiMe2R
ここで、Rは、Me、ET、Viであり、n,mは重合度である。
【0048】
先端部(22)の延出部(22a)の中途位置には上記小径の棒状よりも大径な係止部(22b)が形成される。係止部(22b)は柱状部(24)の対応する部位に設けられた溝部(24a)に係合する。製造時には先端部(22)を所定位置に設置した状態で金型内にシリコン樹脂を流し、係止部(22b)が溝部(24a)に係合した状態で成形される。係止部(22b)の凸部と、先端側の凹部によって柱状部(24)に対し安定して固定される。
【0049】
先端部(22)と柱状部(24)とは、隙間が生じないように射出成形等により一体形成されてもよい。これにより、先端部(22)と柱状部(24)との隙間から、液体が内部に浸入しないので、頭皮に美容液などの液体を塗布して使う場合にも、弾性体(25)と先端部(22)との接点腐食を防止でき、電気抵抗の増加を防止できるので、長期間にわたって、安定した効果を得ることができる。
【0050】
本実施例において係止部(22b)から先の延出部(22a)の長さは3mm、先端部(22)の電極領域の長さは4.6mmである。延出部(22a)の長さは、1~10mm、好ましくは2~6mmが好ましい。電極領域の長さは、柱状部(24)が大きく撓っても肌面に接触しつづける長さとして、2mmないし6mm程度、特に3mmないし5mmの長さが好ましい。
【0051】
本発明の弾性体(25)は、上記実施例と異なり、等しい直径の円柱であってもよい。特に、
図4のように、弾性体(25)の他端にも、延出受け部(250)と略同一な形状の反対側延出受け部(251)を備えることもできる。
図示は回路基板(26)と接点で接触するだけの構成を示しているが、回路基板(26)側から反対側延出受け部(251)に嵌入する針状の接点部を突出させてもよい。
【0052】
本構成は、両側に同一形状の延出受け部(250)と反対側延出受け部(251)を備えるので、組み立て時に向きを問わず、生産効率が向上する。
同時に反対側延出受け部(251)に孔部を設けることでその端部付近が柔軟になり、ピン体の撓りに対しても電気的な接触を維持しやすい利点を有する。
【0053】
さらに、
図5に示すように先端側には延出受け部(252)を設ける一方、他端には吸盤状に開いて形成した吸盤端部(253)を設け、回路基板(26)と吸着して接触させる構成でもよい。この時、常時吸着しなくとも吸盤状とすることで十分に摩擦を高めることができるので安定した通電に寄与する。
【0054】
図6に示すように先端側には延出受け部(252)を設ける一方、他端(255)からさらに延出し、回路基板(260)に開口した弾性体(25)の外径と同一の孔部を通し、回路基板(260)の反対面において傘状に開いた係止部(256)で抜け止めするように構成してもよい。樹脂の柔軟性により、孔部を通す時には係止部(256)が内側に閉じて通過し、反対面に抜けた時に開くことで、生産も容易でありかつ、抜け止め、通電性の確保を図ることができいる。
【0055】
図7は本発明に係る美容器の正面図、
図8は同、右側面図である。図示されるように、本実施例のブラシアタッチメント(20)は、縦に配列されたピン体(21)が3列構成され、中央の列は直線状に、両側の列は途中でそれぞれ外側にして配列されている。そして、先端部(22)からはEMSの美容作用を及ぼすために低・中周波の電気刺激が付与される。
【0056】
本実施例で示すブラシアタッチメント(20)は、
図8に見られるように上側と下側のピン体(21)の高さが高く、中央部は相対的に低く構成されている。ピン体(21)の先端を結ぶ仮想線は椀型に凹状となっており、これによって顔面に当てると表面に沿って均一に先端部(22)を当接させることができる。
【0057】
図8では本体(10)を充電スタンド(13)に立てた状態を示している。充電スタンド(13)から本体(10)内部に備える充電池を充電し、必要な電力を供給する。
【0058】
ブラシアタッチメント(20)の着脱機構について説明する。
図2においてブラシアタッチメント(20)は、一点鎖線(A)の位置でブラシ部(12)との間で分離する。ブラシアタッチメント(20)は基盤体(23)、回路基板(26)とさらにその背面側のアタッチメント基台(28)を備える。
【0059】
図9はブラシアタッチメントの態様を説明する説明図、
図10はブラシアタッチメントの着脱部を示す説明図である。
図9に示すように、本発明では複数のブラシアタッチメントを交換して使用することができる。上記実施例で示した顔用のブラシアタッチメント(20)の他、頭皮のケアを行うためのブラシアタッチメント(30)に交換することもできる。
【0060】
図10はブラシアタッチメントの着脱部を示す説明図である。
本体(10)のブラシ部(12)は、略楕円形の凹部(120)であり、当該凹部(120)にアタッチメント基台(28)(38)が嵌着する。
凹部(120)とアタッチメント基台(28)(38)とが互いに磁着するように磁性体が設けられており、ある程度近接させるとブラシアタッチメントがカチッと装着される。
【0061】
さらに、凹部(120)には本体側電極(121)(122)(123)と、アタッチメント基台(28)にはアタッチメント側電極(280)(281)(282)を備えて、両者によって通電部を成す。
該通電部を通して、本体(10)からピン体(1)の電極領域に対して電力を供給する。
【0062】
凹部(120)の左右両側には発光ダイオード(124)を備える。発光ダイオードによって例えば赤色を肌面に照射することにより、血行の促進などの美容効果を及ぼすことができる。
【0063】
さらに、本体(10)の凹部(120)は振動機構を備えている。振動機構は一般的な振動モータを内装し、その振動をブラシアタッチメント(20)に伝動することで構成している。
なお、振動機構はブラシアタッチメント側に設けてもよい。この場合、上記の通電部を通して電力を供給し、ブラシアタッチメント内の振動モータを駆動する。
【0064】
本発明は、上記のようにブラシアタッチメントを交換することで様々な美容作用を及ぼすことができる。例えば、
図11は頭皮に対して用いるブラシアタッチメント(30)である。ヘアブラシのように髪をかき上げるようにして頭皮をケアする。
【0065】
本実施例では、電極領域を有するピン体を減らし、頭皮に柔らかく密着する硬度の低いシリコンブラシを用いる。シリコン樹脂製のピン体は直径4mm程度の太さであり、3~6mmの直径の範囲が好ましい。
なお、本発明においてブラシアタッチメントのピン体には用途に応じて導電性の弾性体を内装しなくてもよい。
【0066】
頭皮に対しては先端電極(32)(32)から微弱な電流を流しイオン導入を行うこともできる。また、ストレッチを行うために、30Vないし50Vのパルス波を肌面に対して通電することができる。図示されるように近接する一対の先端電極(32)を+極、-極として電極間に通電する。一例として隣接する先端電極(32)同士を反対極性としている。実施に際しては右半分と左半分、上半分と下半分、のように分けてもよい。
同時に、頭皮に対して振動機構から振動を与えることが好ましい。
【0067】
一方、
図12に示すブラシアタッチメント(20)は顔やデコルテの筋肉に対して美容作用を及ぼすものである。例えば、頬骨から側頭部に広がる側頭筋にピン体を当ててマッサージをする。側頭筋が緊張して硬くなると、顔を横に引張、顔が大きくなったりエラが張ったりする。側頭筋と共に大頬骨筋、小頬骨筋を緩めることで顔が小さく引き締まり、リフトアップもできる。
【0068】
本実施例では、先端部(22)の中央の列を-極、両側の列を+極(交流を印加する場合は極性の分け方を示す)とした例を示す。このように同じ極性をエリアごとにまとめることで、使用者の体感を強くすることができる。
もちろん、極性の配置は任意であり、交互にしたり、右半分と左半分、上半分と下半分、のように分けてもよい。
【0069】
このような顔の部位に適したようにブラシアタッチメント(20)は可撓性のあるピン体(21)を採用して、柔らかく接した状態で、EMSに適した電流を印加する。EMSには通電する電流は10Hz~100Hzなどの低周波、1kHzないし10KHzなどの中周波、特に1kHzの交流電流を流すことができる。また、EMSと合わせて、あるいはEMSの代わりにマイクロカレントを筋肉に通電してもよい。
【0070】
美容器(1)の把持部(11)には操作を行うための操作ボタン(14)(15)を備えている。上の操作ボタン(14)では、美容作用の強度等、レベルを切り替えることができ、例えばEMSの印加電圧をレベル1で30V、レベル2で40V、レベル3で50Vのように切り替えることができる。
【0071】
さらに、美容器に備える最適なEMSのモードを以下に示す。美容器には頭皮を対象とすスカルプモードと、顔やデコルテを対象とするフェイスモードの2つのモードを備え、これに上記レベル1ないし3を組み合わせて切り替える。また、振動機構を作動するバイブレーションモードが加わる。バイブレーションを併用することで、スカルプモード及びフェイスモードにおいてそれぞれ適する刺激を与えることができる。
【0072】
また、下の操作ボタン(15)は電源の入切や、モード切替を行うことができる。モードとしては、頭に使用するのに適したモード、顔に適したモード、デコルテに適したモードのように部位別に切り替えたり、EMS,マイクロカレント、光照射、振動など美容作用に応じたモードの切り換えを行うことができる。
【0073】
本発明では、装着するブラシアタッチメントによって本体(10)から自動的に適した電流を通電するようにしてもよい。例えば、ブラシアタッチメント内にICチップを有して該ICチップに電圧や周波数等の通電の条件を格納した上で、本体(10)の制御回路がICチップの情報を読み出して、それに従った通電を行うこともできる。
【0074】
あるいは、ブラシアタッチメントにはその種類に応じた接点を設け、接点の位置や導通の有無によって本体(10)の制御回路が取り付けたブラシアタッチメントの種類を判別し、それに適した通電を行うようにしてもよい。
自動的にブラシアタッチメントの種類を判別した場合に、上記操作ボタン(14)(15)はその種類に応じた切替を行うようにしてもよい。
【0075】
このようにブラシアタッチメントを簡便に着脱できるだけでなく、それに適した通電を自動的に行うことで、知識や経験が必要なく、だれでも簡単に使用することができる。
【0076】
ところで、パルス波の仕様は上記の通り100V以下、特に30Vないし50V以下の低電圧、かつ電流値が1mAを下回るようなマイクロカレントの場合に、筋収縮をほとんど伴わない。そのため、EMSによる電気刺激が苦手な使用者には使いやすい利点がある。
【0077】
これに加えて、本発明で次のような電流を通電することもできる。すなわち、先端電極(32)(32)から約1mAよりも小さな微弱電流で、無負荷時の電圧を200Vないし800Vの範囲内とすることで、微弱電流の体感をアップさせて、施術エリアを実感しながら施術できるようにしても良い。また、低周波を利用して、筋収縮を促し、引き締め効果や結構促進などの効果を奏することもできる。一般的なEMSによる電気刺激を行うモードを備えても良い。
【0078】
100Vよりも電圧が低い場合には一般的なマイクロカレントの体感と変わりがなく、800Vを超えると刺激が強くなりすぎる。そこで、200Vないし800V、特に400Vないし800Vの範囲が好適である。
また、出願人の実験によると、頭皮に用いる場合、顔やデコルテに用いる場合、共に12.5ないし50Hzの範囲のパルス波とすることが好ましい。
【0079】
相対的に高電圧にすることで低周波の電気刺激にも似たような、体感や刺激を感じることができ、飽きることなく、効果的なマッサージが行える。
【符号の説明】
【0080】
1 美容器
10 本体
11 把持部
12 ブラシ部
120 凹部
13 充電スタンド
14 操作ボタン
15 操作ボタン
20 ブラシアタッチメント
21 ピン体
22 先端部
23 基盤体
24 柱状部
25 コイルスプリング
26 回路基板
27 補強樹脂板
28 アタッチメント基台
30 ブラシアタッチメント
32 先端部