(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ポリマー膜
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20240717BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20240717BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
C03C27/12 D
C08L29/14
C08K5/10
(21)【出願番号】P 2022187685
(22)【出願日】2022-11-24
【審査請求日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】202111505156.1
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】591057290
【氏名又は名称】長春石油化學股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 子榮
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-235432(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12,
B32B 17/06-17/10,27/30,
B60J 1/00-1/02,
C08L 29/14,
C08K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー膜であって、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を含み、前記ポリマー膜は単層又は複数層であり、
測定温度が100℃から-20℃まで下げられ振とう数が1Hzに設定された場合に、前記ポリマー膜の損失正接の最低値が現れる温度は40℃~60℃
であり、前記損失正接の最低値は0.13~0.19であり、複数層である場合に、前記ポリマー膜は、上層の保護層と下層の保護層と前記上層の保護層及び前記下層の保護層に挟まれる中間層とからなる3層構造であり、前記中間層に含まれるポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量(Mn)は150,000~280,000であり、単層である場合に、前記ポリマー膜に含まれるポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量(Mn)は90,000~125,000である、ポリマー膜。
【請求項2】
単層である場合に、前記損失正接の最低値が現れる温度はそのガラス転移温度よりも高く、又は複数層である場合には、前記損失正接の最低値が現れる温度はその最大ガラス転移温度よりも高い、
請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項3】
前記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラールである、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項4】
厚みが0.2mm~2mmである、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項5】
50℃で1時間熱処理したときの熱収縮率が2%~5%である、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項6】
ASTM D412に基づき測定した伸長率が220%~300%である、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項7】
単層である場合に、前記ポリマー膜の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基含有比率は27mol%~31mol%、及び/又は前記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は68mol%~72mol%である、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項8】
単層である場合に、前記ポリマー膜の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記可塑剤は30~60重量部である、請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項9】
単層である場合に、前記ポリマー膜はヘッドアップディスプレイ用(head-up display,HUD)膜である、請求項1~
請求項8のいずれか1項に記載のポリマー膜。
【請求項10】
厚肉端と、厚みが前記厚肉端よりも薄い薄肉端と、を有する
請求項9に記載のポリマー膜。
【請求項11】
前記保護層の前記ポリビニルアセタール樹脂が有する水酸基含有比率は27mol%~31mol%、及び/又はアセタール化度は68mol%~72mol%である、
請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項12】
前記保護層の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記可塑剤は30~60重量部である、
請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項13】
前記中間層の前記ポリビニルアセタール樹脂が有する水酸基含有比率は22~27mol%、及び/又はアセタール化度は62mol%~68mol%である、
請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項14】
前記中間層の前記ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、前記可塑剤は60~90重量部である、
請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項15】
合わせガラス用の中間膜とされ、その厚みは0.5~2mmである、
請求項1に記載のポリマー膜。
【請求項16】
厚みは0.8mmであり、且つ前記保護層/中間層/保護層の厚みは0.335mm/0.13mm/0.335mmである、
請求項15に記載のポリマー膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主にポリマー膜体に関し、特に合わせガラスの中間膜に適用されるポリマー膜に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー膜は現代社会においてとても広く使用されており、製造のための材料も非常に多岐にわたる。ポリマー膜は良好な造膜性を有しており、原料や製造工程の調整によって高い透明性や弾性、靱性、強アルカリ耐性、耐油性、可撓性、耐候性、低温環境での耐衝撃性などの優れた特性を有することができる。ポリマー膜の材料によく使用されるポリビニルアセタール樹脂は、特殊な化学構造を有しており、ガラスや金属、セラミック粉末、プラスチック材料、皮革、木材などのいずれに対しても優れた接着性を持っている。また、ポリビニルアセタール樹脂は顔料や染料に対しても良好な分散性があり、様々な樹脂との相容性にも優れている。
【0003】
応用面では、ポリビニルアセタール樹脂で製造されるポリマー膜は単層膜や多層膜、或いはガラスの間に挟まれる中間膜など、様々な形態で存在することが可能である。しかし、ポリビニルアセタール樹脂は、最終製品の製造前に、延伸や裁断などの変形が関わる多くの加工工程を経る必要がある。そのため、ポリビニルアセタール樹脂が優れた加工性を具備しているか否か、という点が重要な指標となってくる。
【0004】
具体的には、ポリマーの加工性とその粘弾性質には高い関連性があり、粘弾性質とは、材料に変形が生じるときの可逆的・不可逆的な変形係数をいう。さらに、粘弾性質と関係するパラメータには、損失正接(tanδ)値と、それに対応するガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)が含まれる。tanδはタンデルタやダンピングファクター、損失角正接とも呼ばれ、材料の粘弾性質中のダンピング特性を表現するのに用いられており、材料の損失弾性率(loss modulus,G”)と貯蔵弾性率(storage modulus,G’)の比に等しい。これに対して、損失正接に対応する温度のピーク値がガラス転移温度であり、それは物質がガラス状態(材料が低流動性の状態にあることを指す)と高弾性状態(材料が高流動性で軟らかな状態にあることを指す)の間で可逆的に変化する温度と見なすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要は、本発明を簡潔に要約し、読者に本発明への基本的な理解を得させることを目的としている。発明の概要は、本発明を完全に記述するものではなく、本発明の実施例の重要又は主要構成要素の指摘や本発明の範囲の画定を意図するものでもない。
【0006】
本発明者は、ポリマー膜の加工時の温度条件下において現れる粘弾性質と加工性には更なる関連性があり、当該温度条件下における粘弾性質をコントロールすることによって優れた加工性を具備するポリマー膜を得られることに気づいた。合わせガラス用中間膜とされるポリビニルアセタールフィルムは延伸工程を経るが、この過程では膜を延伸することで所望の形状にする。薄膜が硬すぎれば延伸が難しくなるため、後の展延が容易ではなくなる。一方、軟らかすぎると延伸工程においてシワや破れが生じてしまう。よって、40~60℃における薄膜の粘弾性質がスムーズに加工できるか否かの鍵となる。本発明はこれに基づき、ポリマー膜の損失正接(tanδ)の最低値が発生する温度範囲を画定することにより、流動性や加工性を改良する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
具体的には、本発明の1つの態様において提供するポリマー膜は、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を含み、ポリマー膜は単層又は複数層であり、且つポリマー膜の損失正接の最低値が現れる温度は40℃~60℃である。
【0008】
本発明の実施例によれば、損失正接の最低値は0.13~0.19である。
【0009】
本発明の実施例によれば、単層である場合に、損失正接の最低値が現れる温度はそのガラス転移温度よりも高く、複数層である場合には、損失正接の最低値が現れる温度はその最大ガラス転移温度よりも高い。
【0010】
本発明の実施例によれば、ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール(Polyvinyl Butyral,PVB)である。
【0011】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜の厚みは0.2mm~2mmである。
【0012】
本発明の実施例によれば、50℃で1時間熱処理したポリマー膜の熱収縮率(%)((加熱前長さ-加熱後長さ)/加熱前長さX100)は2%~5%である。
【0013】
本発明の実施例によれば、ASTM D412に基づき測定したポリマー膜の伸長率は220%~300%である。
【0014】
本発明の実施例によれば、単層である場合に、ポリマー膜のポリビニルアセタール樹脂の水酸基含有比率は27mol%~31mol%、及び/又はポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は68mol%~72mol%である。
【0015】
本発明の実施例によれば、単層である場合に、ポリマー膜のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は30~60重量部である。
【0016】
本発明の実施例によれば、単層である場合に、ポリマー膜はヘッドアップディスプレイ用(head-up display,HUD)膜である。
【0017】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜は、厚肉端と、厚みが厚肉端よりも薄い薄肉端を有する。
【0018】
本発明の実施例によれば、複数層である場合に、ポリマー膜は3層構造であり、上下2層の保護層が中間層を挟んでいる。
【0019】
本発明の実施例によれば、保護層のポリビニルアセタール樹脂が有する水酸基含有比率は27mol%~31mol%、及び/又はアセタール化度は68mol%~72mol%である。
【0020】
本発明の実施例によれば、保護層のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は30~60重量部である。
【0021】
本発明の実施例によれば、中間層のポリビニルアセタール樹脂が有する水酸基含有比率は22mol%~27mol%、及び/又はアセタール化度は62mol%~68mol%である。
【0022】
本発明の実施例によれば、中間層のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は60~90重量部である。
【0023】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜は合わせガラス用の中間膜とされ、その厚みは0.5~2mmである。
【0024】
本発明の実施例によれば、ポリマー膜の厚みは0.8mmであり、且つ保護層/中間層/保護層の厚みは0.335mm/0.13mm/0.335mmである。
【発明の効果】
【0025】
本発明の特長は次の通りである。上述の特徴の画定に基づき、本発明が提供するポリマー膜は、より優れた加工性と流動性を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の上述及び他の目的、特徴、優位点並びに実施例をより明解にするため、図面について以下の通り説明する。
【
図1】本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の断面図である。
【
図2】本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の断面図である。
【
図3】本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の断面図である。
【
図4】本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の製造フローチャートである。
【
図5】本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の製造フローチャートである。
【0027】
なお、図における各種特徴や構成要素の比率については実際の比率ではなく、本発明に関する具体的な特徴や構成要素を最適な方式で示すため、慣例の作業方式を基にした作図方式により描いている。また、別々の図において、同一又は類似の構成要素符合は、類似の構成要素や部材を指している。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明をより詳細且つ不備なく叙述するため、以下に本発明の実施形態及び具体的な実施例について説明した記述を提出するが、それらは本発明を実施又は応用する具体的な実施例の唯一の形態ではない。本明細書及び添付する特許請求の範囲において、別途文脈に記載がない限り、「1つ」及び「当該」という用語は複数であると解釈し得る。また、本明細書及び添付する特許請求の範囲において、別途に記載がない限り、「ある物の上に設置される」とは、直接又は間接的にある物の表面と貼り付けられるか、その他の形態で接触すると見なすことができ、表面の画定は明細書の内容の前後/段落の含意及び本明細書が属する分野における通常の知識により判断されるものとする。
【0029】
本発明を画定する数値の範囲やパラメータはいずれもおおよその数値ではあるが、具体的な実施例における関連数値は可能な限り精確に示している。しかしながら、如何なる数値であれ、個別の試験方法に起因する標準偏差を含むことは本質的に不可避である。これにおいて、「約」は一般的に、実際の数値が特定の数値又は範囲の±10%、5%、1%又は0.5%以内であることを指す。或いは、「約」という用語は、本発明が属する分野の当業者によって考慮・判断される場合、実際の数値が平均値の許容可能な標準誤差内にあることを意味する。従って、反対の説明がない限り、本明細書及び添付する特許請求の範囲が開示する数値のパラメータはいずれも近似値であり、必要に応じて変化すると見なし得る。少なくとも、それらの数値のパラメータは、指し示される有効な桁数と通常の桁上げ法方法を適用することによって得た数値であると解釈されるべきである。
【0030】
本発明はポリマー膜を提供するが、それはポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を含む。具体的に、本明細書に記載のポリビニルアセタール樹脂とは、ポリビニルアルコールとアルデヒドとが縮合されて成る樹脂組成物をいう。上述のポリビニルアルコールはポリビニルエステルを鹸化することにより得ることができ、ポリビニルアルコールの鹸化度は通常、70mole%~99.9mole%の範囲内であり、例えば、70mole%、75mole%、80mole%、85mole%、90mole%、95mole%、99mole%又は99.9mole%である。上述のアルデヒドには通常は炭素数1~10のアルデヒドを使用することができ、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキサアルデヒド、n-オクタアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド及びベンズアルデヒドなどであり、好適には、アルデヒドはプロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキサアルデヒド又はn-バレルアルデヒドであり、より好適には、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド又はイソブチルアルデヒドである。本発明の実施例によれば、ポリビニルアセタールは、ポリビニルブチラール(Polyvinyl Butyral,PVB)である。
【0031】
また、可塑剤は通常、ポリビニルアセタール樹脂と併用されて、材料の粘弾性質に影響する。具体的には、可塑剤は非限定的に、一塩基酸エステル、多塩基酸エステル、有機リン酸及び有機亜リン酸からなる群から選択される。可塑剤はより具体的には、トリエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノアート)(triethylene glycol bis(2-ethylhexanoate),3GO)、テトラエチレングリコールビス(2-エチルヘキサノアート)、トリエチレングリコールビス(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコールビス(2-エチルブタノエート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ビス[2-(2-ブトキシエトキシ)エチル]、ポリアジペート、プロピレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、フタル酸ジイソノニル、ジブトキシエチルテレフタレート、ひまし油、リシノール酸メチル、大豆油、及びエポキシ化大豆油からなる群から選択される。
【0032】
本発明が提供するポリマー膜は単層又は複数層の構造であり、損失正接の最低値が現れる温度は40℃~60℃であり、例えば42.28℃、48.29℃、49.77℃、51.43℃、52.23℃、54.21℃、56.18℃、58.27℃又は59.14℃であるが、これらに限定されない。
【0033】
損失正接とは、tanδ(又はロスファクター、ダンピングファクター、損失角正接と呼ばれる)をいい、材料の粘弾性質中のダンピング特性を表現するのに用いられ、また、材料の損失弾性率(粘性係数、loss modulus,G’’とも呼ばれる)と貯蔵弾性率(弾性係数、storage modulus,G’とも呼ばれる)の比に等しい。特定の理論に限定されるものではないが、損失正接には最低値が現れ、この最下点はエネルギーが主に貯蔵されていることを表しており、この最下点の温度を越えた後は、エネルギーが徐々に消費へ転じ、このときに粘性が上昇しはじめる。よって、この最下点を調整することにより加工工程における要求を満たすことができる。例えば、この最下点が加工温度より低い場合には、膜が軟らかすぎて破れを招いてしまい、逆にこの最下点が加工温度より高い場合には、膜に靱性がありすぎて展延が難しくなってしまう。
【0034】
本発明の幾つかの実施例によれば、損失正接の最低値は0.13~0.19であり、例えば、0.138、0.141、0.144、0.149、0.151、0.174、0.177、0.179又は0.181であるが、これらに限定されない。本発明の幾つかの実施例によれば、ポリマー膜は単層膜体の構造であり、且つTgを有し、損失正接の最低値が現れる温度はその該Tgよりも高い。本発明の別の幾つかの実施例によれば、ポリマー膜は多層膜体の構造であり、且つ最大Tgを有し、損失正接の最低値が現れる温度は該最大Tgよりも高い。本明細書で用いる「Tg」とはガラス転移温度をいい、それは物質がガラス状態(材料が低流動性の状態にあることを指す)と高弾性状態(材料が高流動性で軟らかな状態にあることを指す)の間で可逆的に変化する温度をいう。また、損失正接のピーク値が生じる温度がガラス転移温度である。
【0035】
本明細書に記載のポリビニルアセタール樹脂の水酸基含有比率とは、水酸基と結合したエチレン量を主鎖のエチレンの総量で割って求めたモル分率を百分率で表したものである。本明細書に記載のポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度とは、アセタール基と結合したエチレン量を主鎖のエチレンの総量で割って求めたモル分率を百分率で表したものである。本明細書に記載のポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度とは、主鎖のエチレンの総量から水酸基と結合したエチレン量及びアセタール基と結合したエチレン量を引いて得た値を主鎖のエチレンの総量で割って求めたモル分率を百分率で表したものである。
【0036】
上述の水酸基含有比率、アセタール化度及びアセチル化度は、JIS K6728の「ポリビニルブチラール試験方法」に基づき測定した結果を算出したものである。
【0037】
図1~
図3は、本発明の異なる実施例に基づくポリマー膜の断面図である。上述の異なる実施例は、それぞれ本発明のポリマー膜の異なる構造態様を表現するものである。具体的には、本発明が提供するポリマー膜は、単層膜構造(
図1に示す通り)、3層膜構造(
図2に示す通り)及びくさび形膜構造(
図3に示す通り)であり得る。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない前提において、当業者は上述の構造態様の内容を必要に応じて調整又は修正することが可能である。
【0038】
単層膜
【0039】
図1を参照されたい。本発明が提供するポリマー膜100Aは、層体101を有する。層体101の厚みは、好適には0.2~2mmであり、より好適には0.38~1.52mmであり、例えば、0.38、0.76又は1.52mmであるが、これらに限定されない。層体101のガラス転移温度は10~35℃であり得るが、好適には25~35℃であり、より好適には28~33℃であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0040】
本発明が提供するポリマー膜100A中、層体101が含むポリビニルアセタール樹脂の水酸基含有比率は26~31mol%であり、好適には27.1~29.6mol%であり、例えば、27.1、27.4、27.5又は29.6mol%であるが、これらに限定されない。層体101が含むポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は68~73mol%であり、好適には69.4~71.9mol%であり、例えば、69.4、71.5、71.6又は71.9mol%であるが、これらに限定されない。層体101が含むポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は0.1~3.0mol%であり、好適には1.0mol%であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0041】
本発明が提供するポリマー膜100A中、層体101が含むポリビニルアセタール樹脂の仮比重は0.200~0.300であり得るが、好適には0.240~0.260であり、より好適には0.249~0.258であるが、本発明はこれらに限定されない。本明細書に記載の仮比重は、JIS K6720に基づき測定したものである。
【0042】
本発明が提供するポリマー膜100A中、層体101が含むポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量(Mn)は90,000~125,000であり得るが、好適には105,000~120,000であり、より好適には106,250~115,200であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0043】
3層膜
【0044】
図2を参照されたい。本発明が提供するポリマー膜100Bは、中間層102が上下2層の保護層104の間に挟まれて設けられた構造態様である。しかしながら、この3層構造以外にも、当業者は必要に応じて第4、第5又は第6層などを増設することが可能であり、同様に中間層と保護層を交互に積層して形成するのが好ましい。具体的には、中間層102の厚みは、好適には0.11~0.15mmであり、より好適には0.13mmである。保護層104の厚みは、好適には0.32~0.35mmであり、より好適には0.335mmである。ポリマー膜100Bの厚みは、好適には0.5~2mmであり、より好適には0.75~0.85mmであり、例えば、0.75、0.76、0.77、0.78、0.8、0.82又は0.85mmである。好ましい実施形態において、ポリマー膜は3層構造であり、上下2層の保護層が中間層を挟んでおり、それは合わせガラス用の中間膜とされる。
【0045】
本発明が提供するポリマー膜100Bのうち、中間層102のガラス転移温度は-10~6℃であり得るが、好適には-8~0℃であり、より好適には-7~-2℃であるが、本発明はこれらに限定されない。保護層104のガラス転移温度は10~35℃であり得るが、好適には25~35℃であり、より好適には28~33℃であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0046】
本発明が提供するポリマー膜100Bのうち、中間層102が含むポリビニルアセタール樹脂の水酸基含有比率は22~27mol%であり、好適には23.8~26.2mol%であり、例えば、23.8、24.9又は26.2mol%であるが、これらに限定されない。中間層102が含むポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は62~68mol%であり、好適には63.3~67.6mol%であり、例えば、63.3、63.7又は67.6mol%であるが、これらに限定されない。中間層102が含むポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は7~13mol%であり、例えば、8.6、10.5又は11.4mol%であるが、これらに限定されない。本発明はこれらに限定されない。一方、保護層104が含むポリビニルアセタール樹脂の水酸基含有比率は26~31mol%であり、好適には27.4~30.1mol%であり、例えば、27.4、27.8又は30.1mol%であるが、これらに限定されない。保護層104が含むポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は68~73mol%であり、好適には68.9~71.6mol%であり、例えば、68.9、71.2、又は71.6mol%であるが、これらに限定されない。保護層104が含むポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度は0.1~3.0mol%であり、好適には1.0mol%であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0047】
本発明が提供するポリマー膜100Bのうち、中間層102が含むポリビニルアセタール樹脂の仮比重は0.200~0.300であり得るが、好適には0.240~0.260であり、より好適には0.247~0.258であるが、本発明はこれらに限定されない。保護層104が含むポリビニルアセタール樹脂の仮比重は0.200~0.300であり得るが、好適には0.240~0.260であり、より好適には0.251~0.257であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0048】
本発明が提供するポリマー膜100Bのうち、中間層102が含むポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量(Mn)は100,000~280,000であり得るが、好適には120,000~250,000であり、より好適には150,000~225,000であるが、本発明はこれらに限定されない。保護層104が含むポリビニルアセタール樹脂の数平均分子量(Mn)は90,000~125,000であり得るが、好適には105,000~120,000であり、より好適には107,950~112,000であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0049】
くさび形膜
【0050】
図3を参照されたい。本発明はここではポリマー膜100Cを提供する。本発明の幾つかの実施例によれば、ポリマー膜100Cはヘッドアップディスプレイ用(head-up display,HUD)膜とすることができる。具体的には、ポリマー膜100Cは、HUD膜とした際に投影映像にオーバーラップが存在する状況を回避するため、膜体の両端にそれぞれ厚肉端と、厚みが厚肉端よりも薄い薄肉端が設けられている。薄肉端は厚さT
1を有し、厚肉端は厚さT
2を有する。厚さT
1は0.7~0.8mmであり、好適には0.76mmである。厚さT
2は1.4~1.5mmであり、好適には1.45mmである。さらに、ポリマー膜100Cは、全体すべてがくさび形を呈する膜体構造と説明され、且つその幅W
1は1200mmである。
【0051】
本発明が提供するポリマー膜100Cのうち、ポリマー膜100Cが含むポリビニルアセタール樹脂の範囲は、上述した単層膜の実施例の内容と類似しており、ポリマー膜100Cが含むポリビニルアセタール樹脂の水酸基含有比率は26~31mol%であり、好適には28.3~28.7mol%であり、例えば、28.3又は28.7mol%であるが、これらに限定されない。ポリマー膜100Cが含むポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度(mol%)は68~73mol%であり、好適には70.3~70.7mol%であり、例えば、70.3又は70.7mol%であるが、これらに限定されない。ポリマー膜100Cが含むポリビニルアセタール樹脂のアセチル化度(mol%)は0.1~3.0mol%であり、好適には1.0mol%であるが、本発明はこれらに限定されない。
【0052】
ポリマー膜の製造工程
【0053】
図4~
図5は、それぞれ本発明の異なる実施例におけるポリマー膜の製造フローチャートである。最初に
図4を参照されたい。ここで提供するポリマー膜の製造工程は、上述の単層膜及びくさび形膜のような態様を製造するのに用いられ、その工程は工程S100~S102を少なくとも含む。
【0054】
具体的には、工程S100において、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を混練して樹脂組成物を形成する。そのうち、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は好適には30~60重量部であり、より好適には、可塑剤は35~45重量部であり、例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45重量部である。なお、混練時の操作温度と回転数については慣用の方法や必要に応じて調整することができ、本案は細かな条件について限定しない。
【0055】
工程S102では、樹脂組成物をポリマー膜に調製する。ここで、調製方法については、例えば、押出成形や熱プレス成形など、慣用の薄膜調製方法を用いることができる。また、この工程では、調製するポリマー膜の態様に基づき、細部の調整を行うことができる。例えば、細部を調整することにより幾何学的パラメータの異なる単層膜やくさび形膜を調製することができる。
【0056】
再び
図5を参照されたい。ここで提供するポリマー膜の製造工程は、上述の3層膜のような態様を調製するのに用いられ、その工程は工程S200~S206を少なくとも含む。
【0057】
具体的には、工程S200において、第1ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を混練して第1樹脂組成物を形成する。そのうち、第1ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は好適には60~90重量部であり、より好適には、可塑剤は60~70重量部であり、例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70重量部である。なお、混練時の操作温度と回転数については慣用の方法や必要に応じて調整することができ、本案は細かな条件について限定しない。
【0058】
工程S202では、第2ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を混練して第2樹脂組成物を形成する。そのうち、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、可塑剤は好適には30~60重量部であり、より好適には、可塑剤は35~45重量部であり、例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45重量部である。なお、混練時の操作温度と回転数についても慣用の方法や必要に応じて調整することができ、本案は細かな条件について限定しない。
【0059】
工程S204では、第1樹脂組成物及び第2樹脂組成物をそれぞれ第1層及び第2層に調製するが、ここで、調製方法については、例えば押出成形や熱プレス成形など、慣用の薄膜調製方法を用いて実施することができる。工程S206では、第1層と第2層を結合してポリマー膜を形成するが、そのうち、第1層は中間層とし、第2層は保護層とする。なお、調製方法については同様に、例えば押出成形や熱プレス成形など、慣用の薄膜調製方法を用いることができる。少なくとも1つの実施例によれば、工程S204及び工程S206は、第2樹脂組成物(保護層とする)と第1樹脂組成物(中間層とする)をT-die法で共押出して、3層構造を有する中間膜を押し出すものでよく、中間膜の構造は保護層/中間層/保護層とする。
【0060】
ポリビニルアセタール樹脂の分子量の測定
【0061】
ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography,GPC)を用いてポリビニルアセタール樹脂の分子量分布を測定した。ここでは、ポリビニルアセタール樹脂をテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran,THF)中に溶解して、下記条件下でGPCによる解析を行い、ポリスチレン標準品(Waters PS STD)に対する面積比によりその分子量を計算した。
装置:Waters 1515 PUMP system
検出器:Waters 2414 RI
溶出条件:1.0ミリリットル/分(mL/min)、THF
カラム:Waters Styragel HR5 THF、Waters Styragel HR4 THF、Waters Styragel HR3 THF、Waters Styragel HR1 THF
【0062】
上記工程により調製されて成るポリマー膜を測定対象膜とし、以下の様々な特性測定を行うことができる。
【0063】
粘弾性質の測定
【0064】
本明細書で粘弾性質の測定に用いた方法には、少なくとも以下の工程が含まれる。先ず、測定対象膜を直径8mmの円形にカットし、測定対象膜を恒温恒湿器に24時間放置し、その温度と相対湿度はそれぞれ23℃と55%を維持するようにコントロールした。なお、注意すべき点として、円形にカットする工程では、測定対象膜の幅方向の中央部をカットした。
【0065】
次に、測定対象膜を回転レオメータ(Discovery Hybrid Rheometer II,DHR)(TA Instrument製)に入れ、振とう法により粘弾性質の分析を行った。分析条件は以下の通りである。測定温度は100℃から-20℃まで下げ、且つその降温速度は3℃/minとし、振とう数は1Hzに設定し、測定対象膜を1%のひずみに維持し、治具圧力は1Nに設定した。上述の方法により、分析結果から測定対象膜の損失正接とガラス転移温度を得た。
【0066】
熱収縮率の測定
【0067】
本明細書で用いた熱収縮率の測定方法は、以下の機器によって測定するものである。
加熱乾燥器(型番:Binder FD-115W)
熱風循環乾燥機
計尺機(精度1mm)
【0068】
本明細書で熱収縮率の測定に用いた方法には、少なくとも以下の工程が含まれる。測定対象膜を辺の長さが17cmの正方形にカットし、且つ測定対象膜内に15cmの正方形の線を引いた。次に、測定対象膜を50℃に温度設定した乾燥器内に1時間吊るした後、取り出して室温環境に1時間置いた。最後に、測定対象膜の熱収縮率を測定した。
【0069】
熱収縮率の計算方法は、熱収縮率(%)=(加熱前長さ-加熱後長さ)/加熱前長さ*100である。特定の理論に限定されるものではないが、計算により得た熱収縮率数値の結果が高いほど、測定対象膜の流動性が高く且つ軟らかな状態となる傾向にある一方で、熱収縮率数値の結果が低いほど、測定対象膜の流動性が低く且つ硬い状態となる傾向にある。少なくとも1つの実施例によれば、50℃で1時間熱処理した際に測定対象膜の現す熱収縮率数値が2%~5%の範囲内である場合、その測定対象膜は良好な加工性を具備していると見なし得る。
【0070】
伸長率の測定
【0071】
本明細書で用いる伸長率の測定方法は、ASTM D412の試験基準に従ったものであり、採用した機器はGOTECH製のAI-7000M引っ張り試験機である。具体的には、上述の方法は少なくとも以下の工程を含む。測定対象膜を相対湿度23%、温度23℃の環境下に2時間放置した。
【0072】
伸長率の計算方法は、伸長率(%)=(延伸後長さ-延伸前長さ)/延伸前長さ*100である。少なくとも1つの実施例によれば、測定対象膜の現す伸長率数値が220%~300%の範囲内である場合、その測定対象膜は良好な加工性を具備していると見なし得る。伸長率が300%より大きい場合には、延伸工程において変形しやすくなるが、伸長率が220%より小さい場合には、延伸しにくくなるため、使用において展延が難しくなってしまう。
【0073】
実施例1~9
【0074】
本発明は、上述の内容に基づき実施例1~9のポリマー膜を提供する。各実施例は異なるパラメータで調製することにより異なる特性を生じるように調整し、さらにポリマー膜の粘弾性質、熱収縮率及び伸長率の特性について分析を行った。実施例1~9の詳細なパラメータの画定及び特性分析結果は表1に示す通りである。
【0075】
実施例1~9のポリマー膜の調製方法について以下に簡単に説明する。
【0076】
保護層用樹脂組成物の調製:混練機で100重量部の第1ポリビニルアセタール樹脂(例示的にPVB樹脂を使用)と35~45重量部の可塑剤(例示的に3GOを使用)を十分に混練し、保護層用樹脂組成物を得た。
【0077】
中間層用樹脂組成物の調製:混練機で100重量部の第2ポリビニルアセタール樹脂(例示的にPVB樹脂を使用)と60~70重量部の可塑剤(例示的に3GOを使用)を十分に混練し、中間層用樹脂組成物を得た。
【0078】
膜体の調製:実施例1~4は、押出機で保護層用樹脂組成物を単層膜の形態に押し出し、厚みは0.38~1.52mmとした。実施例5と6は、くさび形膜(即ちHUD膜)の形態を採用し、押出機で前述の樹脂組成物を一端が厚く一端が薄くなるように押し出し、厚肉端と薄肉端の厚みはそれぞれ1.45mmと0.76mmとし、HUD膜の幅は約1200mmとした。実施例7~9は、保護層用樹脂組成物と中間層用樹脂組成物をT-die法で共押出して3層膜の形態に押し出し、厚みは0.8mmとし、その構造は保護層/中間層/保護層(厚み:0.335mm/0.13mm/0.335mm)とした。
【0079】
比較例1~8
【0080】
実施例1~9と類似する調製方法により比較例1~8のポリマー膜を調製した。異なる点は表2に示す通りである。さらに、ポリマー膜の粘弾性質、熱収縮率及び伸長率の特性について分析を行った。分析と評価の方法は実施例1~9と同じである。
【0081】
なお、比較例1~4は、単層膜の形態を採用し、比較例5と6はくさび形膜(即ちHUD膜)の形態を採用し、比較例7~8は3層膜(中間層が上下2層の保護層の間に挟まれている)の形態を採用した。比較例1~8の詳細なパラメータの画定及び特性分析結果は表2に示す通りである。
【0082】
【0083】
【0084】
表1と表2から分かるように、実施例1~9のポリマー膜は、単層膜であれ多層膜であれ、ポリマー膜の損失正接の最低値が現れる温度を40℃~60℃にコントロールすることによって、実施例1~9のポリマー膜に比較例1~8のポリマー膜よりも優れた流動性と加工性を示させていた。表2からさらに理解できる点として、比較例1、3、5及び7の損失正接の最低値が現れる温度はいずれも40℃未満であり、それらの熱収縮率はいずれも5%より大きく、伸長率も300%超となっており、比較例1、3、5及び7のポリマー膜は軟らかすぎるために延伸工程において変形や破れが生じやすいことが示された。一方、比較例2、4、6及び8の損失正接の最低値が現れる温度はいずれも60℃より高く、それらの熱収縮率はいずれも2%未満、伸長率も220%未満となっており、比較例2、4、6及び8のポリマー膜は靭性がありすぎるために展延しにくいことが示された。
【0085】
要約すると、本発明はポリマー膜を提供し、それはポリビニルアセタール樹脂と可塑剤を含み、ポリマー膜は単層又は複数層であり、且つポリマー膜の損失正接の最低値が現れる温度は40℃~60℃である。本発明が提供するポリマー膜は良好な流動性と加工性を有する。
【0086】
本明細書で別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学・技術用語は、本分野の当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有するものとする。また、文脈で別段の要求がない限り、単数の用語は複数を含むものとし、複数の用語は単数を含むものとする。
【0087】
以上で本発明について詳細に説明したが、上述は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。本発明の特許請求の範囲に基づく同等変化や修飾はいずれも本発明の特許請求の範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0088】
100A~100C ポリマー膜
101 層体
102 中間層
104 保護層
W1 幅
T1、T2 厚さ
S100~S102、S200~S206 工程