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特許7522193集電体、電極シート、電極アセンブリ、電池セル、電池及び電気装置
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  • 特許-集電体、電極シート、電極アセンブリ、電池セル、電池及び電気装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】集電体、電極シート、電極アセンブリ、電池セル、電池及び電気装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/66 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
H01M4/66 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022532686
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-06
(86)【国際出願番号】 CN2022083779
(87)【国際公開番号】W WO2023071045
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】202122614507.4
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲興▼星
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 智明
(72)【発明者】
【氏名】黄 小▲騰▼
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-533734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0317710(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0081304(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0037060(US,A1)
【文献】特開2017-016787(JP,A)
【文献】国際公開第2020/258860(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子有機材料から製造される支持層(51)と、
前記支持層(51)の対向する両側の少なくとも一側に設置され、且つ前記支持層(51)の受熱収縮時に前記支持層(51)と共に収縮して受熱部位を取り囲む孔(526)を形成する導電層(52)と、を含み、
前記導電層(52)は、前記支持層(51)と接触する第1の導電層(524)を含み、
前記第1の導電層(524)は、粉末状のアルミニウム粉末から製造されるアルミニウム粒子層又は粉末状の銅粉から製造される銅粒子層である集電体(5)。
【請求項2】
前記導電層(52)は、以下のうちの少なくとも1つとして構成され、
前記導電層(52)は、第2の導電層(525)を含み、前記第2の導電層(525)は前記粉末状のアルミニウム粉末から製造されるアルミニウム粒子層又は粉末状の銅粉から製造される銅粒子層の前記支持層(51)から離れた表面に電気的に接続されており、
前記導電層(52)の導電率は、10~10S/cmであり、
前記第1の導電層(524)は、前記支持層(51)にスプレーされている請求項1に記載の集電体(5)。
【請求項3】
前記第2の導電層(525)は、前記第1の導電層(524)に接着されており、及び/又は、前記第2の導電層(525)は、グラファイト層(522)を含む請求項に記載の集電体(5)。
【請求項4】
前記支持層(51)は、以下のうちの少なくとも1つとして構成され、
前記支持層(51)の融点は、120°以下であり、
前記支持層(51)は、支持フィルム(511)である請求項1~のいずれか一項に記載の集電体(5)。
【請求項5】
前記支持層(51)は、ポリエチレンフィルム(512)である請求項に記載の集電体(5)。
【請求項6】
活物質(6)を含み、且つ、
請求項1~のいずれか一項に記載の集電体(5)をさらに含み、
前記活物質(6)は、前記集電体(5)の表面に設置されている電極シート(4)。
【請求項7】
正極シート(1)と、負極シート(2)とを含み、
ここで、前記正極シート(1)及び/又は前記負極シート(2)は、請求項に記載の電極シート(4)である電極アセンブリ(201)。
【請求項8】
外殻(202)を含み、且つ、
請求項に記載の電極アセンブリ(201)をさらに含み、
前記電極アセンブリ(201)は、前記外殻(202)内に設置されている電池セル(20)。
【請求項9】
収容箱(30)を含み、且つ、
請求項に記載の電池セル(20)をさらに含み、
前記電池セル(20)は、前記収容箱(30)に設置されている電池(10)。
【請求項10】
請求項に記載の電池(10)又は請求項に記載の電池セル(20)を含む電気装置(100)であって、
前記電池セル(20)は、前記電気装置(100)に電気エネルギーを供給するために用いられる電気装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年10月28日に提出された中国特許出願202122614507.4の優先権を主張し、該出願の全ての内容は、引用により本願に組み込まれている。
【0002】
本願は、電池技術分野に関し、特に集電体、電極シート、電極アセンブリ、電池セル、電池及び電気装置に関する。
【背景技術】
【0003】
電子製品及び電動車両等の電気装置の急速な発展に伴い、電池の適用がますます広がっている。しかしながら、電池は、短絡しやすく熱暴走を引き起こし、作業の安全性に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、安全性能がより高い集電体、電極シート、電極アセンブリ、電池セル、電池及び電気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本願により提供された集電体は、
支持層と、
支持層の対向する両側の少なくとも一側に設置され、且つ支持層の受熱収縮時に支持層と共に収縮して受熱部位を取り囲む孔を形成する導電層と、を含み、
導電層は、支持層と接触する第1の導電層を含み、
第1の導電層は、粒子状導電層である。
【0006】
支持層及び導電層の作用で、集電体は、故障回路を速やかに遮断して熱暴走を阻止することができる。そのため、安全性能を効果的に向上させることができる。
【0007】
いくつかの実施例において、粒子状導電層は金属粒子層を含む。これにより、集電体は、優れた導電性能を有することができる。
【0008】
いくつかの実施例において、金属粒子層は、銅粒子層、アルミニウム粒子層、金粒子層、銀粒子層、又は合金粒子層を含む。このようにして、集電体の導電性能を効果的に改善することができる。
【0009】
いくつかの実施例において、合金粒子層における合金の抵抗率は、30・10-9Ω・m以下である。このようにして、集電体は、優れた導電性能を有することができる。
【0010】
いくつかの実施例において、第1の導電層は支持層にスプレーされている。これにより、支持層に粒子状導電層を容易に複合することができる。また、スプレーされた後、粒子状導電層は、支持層に強固に付着することができる。
【0011】
いくつかの実施例において、導電層は第2の導電層を含む。第2の導電層は粒子状導電層の支持層から離れた表面に電気的に接続されている。これにより、導電層の導電能力を向上させることができる。
【0012】
いくつかの実施例において、第2の導電層は第1の導電層に接着されている。これにより、第1の導電層と第2の導電層との接続が容易になると共に、接続の強固性も高くなる。同時に、両者の電気的な接続関係も実現しやすい。
【0013】
いくつかの実施例において、第2の導電層はグラファイト層を含む。これにより、導電層の導電性能をより効果的に向上させることができる。
【0014】
いくつかの実施例において、導電層の導電率は10~10S/cmである。この時、導電層が集電体の導電要求をより良好に満たすことができるため、電池セルが通常の充放電過程において発熱量が過大であることを効果的に防止することができる。
【0015】
いくつかの実施例において、支持層の融点は120°以下である。これにより、他の部分が溶融しないうちに、支持層はより溶融収縮しやすくなり、故障回路を遮断する。そのため、熱暴走をより確実に防止し、安全性能をより効果的に向上させることができる。
【0016】
いくつかの実施例において、支持層は支持フイルムである。この時、集電体は、安全性能が良いだけでなく、構成の安定性も高い。
【0017】
いくつかの実施例において、支持層は高分子有機材料から製造される。高分子有機材料から製造された支持層は、必要に応じて故障回路を速やかに遮断するため、熱暴走を防止して安全性能を向上させることができる。
【0018】
いくつかの実施例において、支持層はポリエチレンフイルムである。ポリエチレンフイルムは、熱暴走を効果的に防止するだけでなく、集電体の耐屈曲性を向上させることもできる。
【0019】
本願により提供された電極シートは、
活物質を含み、且つ、
本願の実施例に係る集電体をさらに含み、
活物質は、集電体の表面に設置されている。
【0020】
本願の実施例に係る集電体を含むため、電極シートの安全性能がより高くなる。
【0021】
本願により提供された電極アセンブリは、
正極シートと、負極シートと、を含み、
ここで、正極シート及び/又は負極シートは、本願の実施例に係る電極シートである。
【0022】
本願の実施例に係る集電体を含むため、電極アセンブリの安全性能がより高くなる。
【0023】
本願により提供された電池セルは、外殻を含み、且つ、本願の実施例に係る電極アセンブリをさらに含み、電極アセンブリは、外殻内に設置されている。
【0024】
本願の実施例に係る集電体を含むため、電池セルの安全性能がより高くなる。
【0025】
本願により提供された電池は、収容箱を含み、且つ、本願の実施例に係る電池セルをさらに含み、電池セルは、収容箱に設置されている。
【0026】
本願の実施例に係る集電体を含むため、電池の安全性能がより高くなる。
【0027】
本願により提供された電気装置は、本願の実施例に係る電池又は電池セルを含み、電池セルは、電気装置に電気エネルギーを供給するために用いられる。
【0028】
本願の実施例に係る集電体を含むため、電気装置の安全性能がより高くなる。
【0029】
本願の実施例に係る集電体によると、電池セルの作業中に短絡が発生する場合、故障箇所の高温の影響で支持層が溶融収縮するとともに、導電層も収縮して受熱部位を取り囲む孔を形成し、故障回路を遮断して熱暴走現象の発生を防止する。また、導電層は、粒子状導電層を含むため、他の形態の導電層と比較すると、粒子状導電層は、支持層の受熱収縮時に支持層と共に収縮しやすい。そのため、短絡事故の発生時に回路をより速やかに遮断し、熱暴走をよりタイムリーに阻止することができる。そのため、電池の安全性能をより効果的に向上させることができる。
【0030】
以下、図面を参照して本願の例示的な実施例を詳細に説明することにより、本願の他の特徴及びその利点は明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下、本願の実施例又は従来の技術における技術案をより明確に説明するために、実施例又は従来の技術の説明に必要な図面を簡単に紹介する。自明なこととして、以下に説明する図面は単に本願のいくつかの実施例である。当業者であれば、創造的労働をしない前提でこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
図1】本願の実施例に係る電気装置の構成略図である。
図2】本願の実施例に係る電池の爆発模式図である。
図3】本願の実施例に係る電池セルの爆発模式図である。
図4】本願の実施例に係る電極アセンブリの構成略図である。
図5】本願の実施例に係る集電体の構成略図である。
図6】本願の実施例に係る集電体が熱暴走を防止する原理模式図である。
【0032】
符号の説明
100:電気装置、101:車両、102:コントローラ、103:動力設備、104:モータ、105:本体
10:電池
20:電池セル、201:電極アセンブリ、202:外殻、203:ケース、204:エンドキャップ、205:アダプタ、206:電極端子、207:タブ、208:スペーサ
30:収容箱、301:箱本体、302:箱カバー
1:正極シート
2:負極シート
3:セパレータ
4:電極シート
5:集電体、51:支持層、511:支持フイルム、512:ポリエチレンフイルム、52:導電層、521:粒子状導電層、522:グラファイト層、523:金属粒子層、524:第1の導電層、525:第2の導電層、526:孔
6:活物質
7:短絡開始部材、71:穿刺針
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下は、本願の実施例における図面を参照して、本願の実施例における技術案を明確で、完全に説明する。明らかに、説明された実施例は、単に本願の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。以下、少なくとも一つの例示的な実施例の説明は実際に例示的なものだけであり、本願及びその適用又は使用に対する任意の制限とするものではない。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的労働をしない前提で得られた全ての他の実施例は、何れも本願の保護範囲に属する。
【0034】
関連分野の当業者に知られている技術、方法及び設備を詳細に説明しない可能性があるが、適切な状況で、前記技術、方法及び設備が明細書の一部と見なされるべきである。
【0035】
本願の説明において、理解すべきこととして、例えば「前、後、上、下、左、右」、「横方向、縦方向、垂直、水平」及び「頂、底」等の方向用語で指示された方位又は位置関係は図面が指示した方位又は位置関係によるものであり、本願の説明と説明の簡略化を容易にするに過ぎず、逆に説明しない場合、これらの方向用語は、指された装置又は素子が特定の方位を備えるか又は特定の方位で構成し操作しなければならないことを指示するか又は暗示するものではないため、本願の保護範囲を限定するものと理解すべきではない。方向用語である「内、外」は各部材自体の輪郭に対する内外を指す。
【0036】
本願の説明において、理解すべきこととして、「第1」、「第2」等の用語を使用して部品を限定することは、対応する部品を区別することを容易にするに過ぎず、特に断らない限り、上記用語は、特に意味がないため、本願の保護範囲を限定するものと理解すべきではない。
【0037】
また、以下に説明する本願の異なる実施形態に係る技術的特徴は、互いに衝突がない限り互いに組み合わせることができる。
【0038】
現在、電池の適用がますます広がっている。電池は、水力、火力、風力及び太陽光発電所等のエネルギー貯蔵電源システムに適用されるだけでなく、電動自転車、電動バイク、電気自動車等の電動交通機関並びに軍事装置及び航空宇宙等のいくつかの分野に広く適用される。電池の適用分野の拡大に伴い、その性能に対する要求も高まっている。
【0039】
ここで、安全性能は、電池の重要な性能指標である。電池の使用過程や日常メンテナンス過程では、熱暴走事故の発生を防止する必要がある。如何に熱暴走をより効果的に防止して安全性能を向上させるかは、重要な課題となっている。
【0040】
電池の安全性能を向上させるために、本願は、集電体、電極アセンブリ、電池セル、電池及び電気装置を提供する。
【0041】
図1図6は、本願のいくつかの実施例に係る電気装置、電池、電池セル、電極アセンブリ及び集電体の構成を示す。
【0042】
次に、図1図6を合わせて本願を説明する。
【0043】
図1は、電気装置100の構成を例示している。図1に示すように、電気装置100は、電源として電池セル20を使用する装置であり、且つ電池10又は電池セル20を含む。電池セル20は、電気装置100に電気エネルギーを提供するために用いられる。具体的に、電気装置100は、本体105と電池セル20とを含む。電池セル20は、本体105に設置され、且つ本体105に電気エネルギーを提供する。
【0044】
ここで、電気装置100は、携帯電話、タブレット、ノートパソコン、電動玩具、電動工具、バッテリーカー、電気自動車、船舶、宇宙船等の様々な電気設備であってもよい。ここで、電動玩具は、例えば、ゲーム機、電気自動車玩具、電動船舶玩具及び電動飛行機玩具等の固定式又は移動式の電動玩具を含むことができる。宇宙船は、飛行機、ロケット、スペースシャトル及び宇宙船等を含むことができる。
【0045】
電気装置100は、動力源を含む。動力源は、電気装置100に駆動力を提供する電池10を含む。いくつかの実施例において、電気装置100の駆動力は全部で電気エネルギーである。この時、動力源は電池10のみを含む。他の実施例において、電気装置100の駆動力は、電気エネルギー及び他のエネルギー(例えば、機械的エネルギー)を含む。この時、動力源は、電池10と、エンジン等の他の設備とを含む。
【0046】
電気装置100が車両101である場合を例とする。図1に示すように、いくつかの実施例において、電気装置100は、純電気自動車、ハイブリッド自動車又は航続距離延長型自動車等の新エネルギー車であり、且つ電池10、コントローラ102及びモータ104等の動力設備103を含む。電池10は、コントローラ102でモータ104等の動力設備103に電気的に接続する。これにより、電池10は、コントローラ102の制御下でモータ104等の動力設備103に電力を供給することができる。
【0047】
以上より、電池10は、電気装置100の重要な組成部分である。
【0048】
図2は、電池10の構成を例示している。図2に示すように、電池10は、収容箱30と、収容箱30に設置される電池セル20とを含む。収容箱30は、箱本体301と箱カバー302とを含む。箱本体301と箱カバー302が互いに嵌合して収容箱30の内部に密閉された収容空間を形成し、電池セル20を収容する。収容箱30における電池セル20の数は少なくとも二つであってもよく、より多くの電気エネルギーを提供して、より高い使用要求を満たす。電池10の各電池セル20は、直列、並列又は混合の方式で電気的に接続し、それにより大きな容量又はパワーを実現することができる。理解できるように、図2において、電池セル20について略図を採用している。
【0049】
以上より、電池セル20は、電気エネルギーを提供するための最小の電池ユニットであり、電気装置100及び電池10のコア組成部分である。その性能は、電気装置100及び電池10の性能を直接的に影響を与える。電池セル20の安全性能を向上させることは、電気装置100及び電池10の性能を改善することに役立つ。
【0050】
電池セル20は、リチウムイオン電池等の様々な電池セルであってもよい。また、その形状は、角形又は円柱形等の様々な形状であってもよい。
【0051】
図3は、電池セル20の構成を例示している。図3に示すように、電池セル20は、外殻202、電極アセンブリ201、アダプタ205、電極端子206及びスペーサ208を含む。
【0052】
ここで、外殻202は、電極アセンブリ201等を収容し、それにより電極アセンブリ201等に保護を提供するために用いられる。外殻202は、外殻203と、エンドキャップ204とを含む。エンドキャップ204がケース203の端部開口にカバーされ、それにより外殻202の内部に電極アセンブリ201等を収容するための密閉空間を形成する。
【0053】
電極アセンブリ201は、電気エネルギーを生成するために用いられ、且つ外殻202の内部に設置され、外殻202内に注入された電解液と電気化学反応を行うことにより電気エネルギーを提供する。実際の使用要求に応じて、電池セル20における電極アセンブリ201の数は一つ、二つ、又はいくつかであってもよい。電極アセンブリ201により生成された電気エネルギーはタブ207を介して外部に伝送される。
【0054】
電極アセンブリ201の正負極シートに活物質6が塗布されていない部分として、タブ207は、正負極シートの活物質6が塗布された部分から外向きに延伸し、アダプタ205及び電極端子206により外部回路と電気的に接続するため、電気エネルギーの外部への伝送を実現する。ここで、正極シートのタブ207は正極タブと呼ばれ、負極シートのタブ207は負極タブと呼ばれる。
【0055】
アダプタ205は、外殻202内に設置され、電極アセンブリ201のタブ207と電極端子206との間に位置し、電極アセンブリ201と電極端子206との間の電気的な接続を実現するために用いられ、それにより、電極アセンブリ201で生成された電気エネルギーを電極端子206に伝送する。ここで、正極タブに対応するアダプタ205は正極アダプタと呼ばれ、負極タブに対応するアダプタ205は負極アダプタと呼ばれる。
【0056】
電極端子206は、アダプタ205で電極アセンブリ201と電気的に接続され、外部回路に接続するために用いられ、それにより、電極アセンブリ201で生成された電気エネルギーを電池セル20の外部に伝送する。ここで、正極タブに対応する電極端子206は正極端子と呼ばれ、負極タブに対応する電極端子206は負極端子と呼ばれる。
【0057】
スペーサ208は、外殻202内に設置され、電極アセンブリ201とケース203との間に位置して、電極アセンブリ201とケース203とを絶縁するために用いられ、それにより、電極アセンブリ201とケース203との間に短絡が発生することを防止する。
【0058】
そのため、電極アセンブリ201は、電池セル20の重要な組成部分であり、電池セル20が電気エネルギーを提供できる鍵である。
【0059】
図4は、電極アセンブリ201の構成をさらに示している。図4に示すように、電極アセンブリ201は、電極シート4を含み、且つそれぞれ正極シート1と負極シート2である極性が逆の二つの電極シート4を含む。正極シート1と負極シート2は、積層又は巻回している。且つ、正極シート1と負極シート2との間に正極シート1と負極シート2を仕切るセパレータ3が設置されている。
【0060】
図4に示すように、正極シート1及び負極シート2は、いずれも活物質6及び集電体5を含む。活物質6は、集電体5に塗布され、外殻202内の電解液と電気化学反応を行うために用いられて電気エネルギーを生成し、充放電過程を実現する。図4から分かるように、いくつかの実施例において、集電体5の対向する両側の表面にいずれも活物質6が塗布されている。
【0061】
正極シート1と負極シート2の極性が逆であるように、正極シート1と負極シート2における活物質6が同じではない。例えば、いくつかの実施例において、正極シート1における活物質6は、LiCoO(リチウム含有の二酸化コバルト)粒子を含み、負極シート2における活物質6は、SnO(二酸化スズ)粒子を含む。
【0062】
電極アセンブリ201において、集電体5は、活物質6を担持する役割を果たすだけでなく、電気化学反応で生成された電流を集めて大きな電流を形成し、外部へ出力する役割も果たす。集電体5は、電池セル20の不可欠な組成部分であり、電池セル20の作業安全性に影響する重要な要素でもある。
【0063】
通常に、関連技術において、集電体5は金属材料から製造される。例えば、正極シート1の集電体5は、通常アルミニウム箔に製造され、負極シート2の集電体5は、通常銅箔に製造される。しかしながら、このような金属材質の集電体5は、電池セル20が短絡した時に熱暴走を阻止しにくく、電池セル20の安全性能の向上を制限する。
【0064】
電池セル20の熱暴走は、電池セル20の内部で激しい化学反応や電気化学反応に由来することが多い。電池セル20内のセパレータ3が内部の異物(例えば、金属粒子、正負極シートのバリ又は電池の使用過程で析出した金属リチウムのデンドライト等)又は外部穿刺等の原因で破損された場合、破損箇所の両側の正負極シートが導通される恐れがあり、更に短絡現象が発生する。短絡現象が発生した場合、短絡電流により温度が急激に上昇し、より激しい反応を起こして他の部位に拡散し、熱暴走を起こして発火や爆発事故を起こし、使用者の身の安全を著しく脅かす。
【0065】
金属材料の融点が高いため、金属材質の集電体5は溶融しにくい。これにより、短絡現象が発生すると、集電体5は溶融せず、電池セル20の他の組成部分(例えば、活物質6及びセパレータ3)は既に故障している。このような状況で、集電体5は、電流の伝送を遮断することができず、熱暴走現象の発生を阻止することもできない。そのため、電池セル20の安全性能に影響を与える。
【0066】
上記状況について、本願は、集電体5の構成を改善することで、集電体5、電極アセンブリ201、電池セル20、電池10及び電気装置100の安全性能を向上させる。
【0067】
図5図6は、集電体5の構成を例示している。
【0068】
図5図6に示すように、本願の実施例に係る集電体5は、支持層51及び導電層52を含む。導電層52は、支持層51の対向する両側の少なくとも一側に設置され、且つ支持層51の受熱収縮時に支持層51と共に収縮して受熱部位を取り囲む孔526を形成する。また、導電層52は支持層51と接触する第1の導電層524を含む。第1の導電層524は、粒子状導電層521である。
【0069】
以上より、本願の実施例において、集電体5は、単層金属箔の構成ではなく、支持層51及び導電層52を含む少なくとも二層構成になっている。
【0070】
支持層51は、融点が低いため、受熱する時に溶融し、導電層52と共に収縮して受熱部位の周りに孔526を形成することができる。そのため、電池セル20が作業する過程で短絡が発生した場合、支持層51は、故障箇所の高温の作用で導電層52と共に収縮することにより故障箇所の周りに孔526を形成し、故障回路を遮断して熱暴走現象の発生を防止する。図6に示すように、孔526が形成された後、短絡事故の発生を誘発した短絡開始部材7(例えば、穿刺針71、金属粒子又はバリ)の周りに導体がなくなり、短絡開始部材7が導体と接触することができなくなることで、回路が遮断され、セパレータ3の破損により正極シート1と負極シート2とが導通されることを防止することができる。また、局所的な熱量が他の部位に拡散し続けることを防止することもできる。そのため、熱暴走を防止することができる。
【0071】
また、本願の実施例において、導電層52の支持層51と接触する第1の導電層524は粒子状導電層521である。粒子状導電層521は、他の形態の導電構成と比較すると、支持層51の受熱収縮時によりに支持層51と共に収縮しやすい。そのため、短絡事故の発生時に回路をより速やかに遮断し、熱暴走をよりタイムリーに阻止することが容易となるため、安全性能をより効果的に向上させることができる。
【0072】
以上より、集電体5を支持層51と導電層52とを備えるように構成し、導電層52の支持層51と接触する第1の導電層524を粒子状導電層521として構成することにより、熱暴走をより効率的且つ確実に阻止できるため、安全性能の効果的な向上を実現することができる。
【0073】
ここで、粒子状導電層521は、様々な金属又は非金属の導電粒子から構成される。例示的に、図5に示すように、粒子状導電層521は金属粒子層523を含む。
【0074】
金属が良い導電性能を有するため、粒子状導電層521が金属粒子層523を含む場合、熱暴走を効果的に防止すると同時に、集電体5の導電性能を両立することができる。これにより、集電体5は、優れた導電性能を有し、短絡がない正常な作業状態で高効率に導電することができる。
【0075】
金属粒子層523の例として、金属粒子層523は銅粒子層、アルミニウム粒子層、金粒子層、銀粒子層、又は合金粒子層を含む。銅、アルミニウム、金、銀又は合金等の金属材料は、いずれも導電性能が良い金属材料であるため、集電体5の導電性能を効果的に改善することができる。
【0076】
いくつかの実施例において、合金粒子層における合金の抵抗率が30・10-9Ω・m(オーム・メートル)以下である。この時、合金粒子層の導電効率がより高いため、集電体5は良い導電性能を有することができる。
【0077】
第1の導電層524と支持層51との間の結合形態は多様であってもよい。その一つとして、第1の導電層524は支持層51にスプレーされる。
【0078】
スプレー方式を採用すると、第1の導電層524における粒子状導電層521の粒子状状態により適応し、粒子状導電層521を支持層51に容易に複合させることができる。また、スプレーした後、粒子状導電層521は支持層51により強固に付着することができる。一方で、支持層51が局所溶融時に粒子状導電層521と共に溶融収縮することに役立つため、集電体5が短絡事故の発生時に回路をスムーズに遮断することができる。他方で、粒子状導電層521が非短絡状態で意図せず脱落することを防止することに役立つため、集電体5が正常な作業過程において電流をより確実に集めて伝送することができる。
【0079】
また、図5に示すように、いくつかの実施例において、導電層52は、第1の導電層524を含むだけでなく、第2の導電層525をさらに含む。第2の導電層525は、粒子状導電層521の支持層51から離れた表面に電気的に接続されている。
【0080】
第2の導電層525が導電層52の導電能力をさらに向上させることができるため、第1の導電層524に基づいて、第2の導電層525を増設して集電体5の導電能力をより効果的に向上させることができる。
【0081】
ここで、第2の導電層525と第1の導電層524との間の結合方式は多様であってもよい。その一つとして、第2の導電層525は第1の導電層524に接着することができる。例えば、第2の導電層525は、導電剤及び接着剤を介して第1の導電層524に接着することができる。これにより、第1の導電層524と第2の導電層525との接続が容易になると共に、接続の強固性も高くなる。同時に、両者の電気的な接続関係も実現しやすい。
【0082】
また、第2の導電層525の構成形式は多様であってもよい。例えば、図5に示すように、いくつかの実施例において、第2の導電層525は、グラファイト層522を含む。グラファイトが他の非金属導電材料の導電性よりも高いため、第2の導電層525をグラファイト層522を含むように設けると、導電層52の導電性能をより効果的に向上させることができる。
【0083】
いくつかの実施例において、導電層52の導電率は、10~10S/cm(シーメンス/センチメートル)である。このような状況で、導電層52は、集電体5の導電要求をより良好に満たすことができるため、電池セル20が通常の充放電過程において発熱量が過大であることを効果的に防止することができる。
【0084】
前述の各実施例において、支持層51は、導電層52を支持するために用いられ、且つ短絡事故が発生した時に導電層52と共に収縮して故障回路を遮断し、熱暴走現象の発生を阻止する。
【0085】
ここで、支持層51の融点は、120°以下であってもよい。これにより、他の部分が溶融しないうちに、支持層51は、より溶融収縮しやすくなり、故障回路を遮断する。そのため、熱暴走がより確実に防止され、安全性能をより効果的に向上させることができる。
【0086】
いくつかの実施例において、支持層51は、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリウレタン等の高分子有機材料から製造される。ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリウレタン等の高分子有機材料は融点が低く、且つ局所的に受熱する場合に受熱部位が速やかに収縮して崩壊できるという特徴を有する。そのため、高分子有機材料から製造された支持層51は、必要に応じて、故障回路を速やかに遮断して熱暴走を防止するため、安全性能を向上させることができる。
【0087】
また、支持層51の形状は多様であってもよい。例えば、粒子状、又は非粒子状を呈することができる。例示的に、図5に示すように、支持層51はフイルム状を呈する。この時、支持層51は支持フイルム511である。支持フイルム511が導電層52をよく支持することができるため、集電体5は、安全性能が良いだけでなく、構成の安定性も高い。
【0088】
また、図5に示すように、いくつかの実施例において、支持層51は、ポリエチレンフイルム512である。この時、支持層51は、ポリエチレン材料から製造された支持フイルム511であるので、熱暴走を効果的に防止することができるだけでなく、集電体5の耐屈曲性を向上させることができる。
【0089】
次に、図5に示す実施例についてさらに説明する。
【0090】
図5に示すように、本実施例において、集電体5は、支持層51及び二つの導電層52を含む。二つの導電層52は、支持層51の対向する両側に設置される。また、各導電層52はいずれも第1の導電層524と第2の導電層525とを含む。
【0091】
ここで、支持層51は、具体的にポリエチレンフイルム512である。第1の導電層524は具体的に金属粒子層523である。第2の導電層525は具体的にグラファイト層522である。
【0092】
ポリエチレンフイルム512は、中間に位置している。ポリエチレンフイルム512の対向する両側の表面に、いずれも金属粒子層523がスプレーされている。各側の金属粒子層523の外表面には、何れもグラファイト層522が接着されている。グラファイト層522は、導電剤及び接着剤で金属粒子層523のポリエチレンフイルム512から離れた表面に接着されている。グラファイト層522における金属粒子層523から離れた表面は導電層52の外表面となり、活物質6を担持するために用いられる。電極シート4を製造する時、活物質6がグラファイト層522の外表面に塗布されるため、集電体5の対向する両側の表面には、いずれも活物質6が塗布されている。
【0093】
上記設置に基づいて、集電体5は、中間がポリエチレンフイルム512であり、且つポリエチレンフイルム512の両側に金属粒子層523及びグラファイト層522が対称的に設置された五層構成を形成する。
【0094】
ここで、金属粒子層523及びグラファイト層522は主に導電作用を果たす。金属粒子層523とグラファイト層522から組成された導電層52は、導電率が10~10S/cm(シーメンス/センチメートル)の範囲内に維持して、集電体5の導電要求をよく満たすことができるため、電池セル20が集電体5の抵抗率が大きいにより通常の充放電過程において発熱量が過大であることを効果的に防止することができる。
【0095】
ポリエチレンフイルム512は、金属粒子層523及びグラファイト層522を支持することで、集電体5の耐屈曲性を向上させると共に、集電体5の安全性能を向上させる。
【0096】
図6に示す穿刺故障の場合を例として、如何に本実施例の集電体5の安全性能を向上するかについて説明する。図6において、金属粒子層523について、略図を採用している。
【0097】
図4と合わせて図6を参考すると、穿刺針71が正負極シート及びセパレータ3を貫通した場合、穿刺針71は、正極シート1の集電体5と、負極シート2の集電体5とを導通し、故障箇所には、極大な電流が流れるため、故障点の温度が極めて高くなる。このような状況で、集電体5が金属集電体であると、金属集電体の融点が他の材料より高いため、活物質6又はセパレータ3等の他の部材が故障になって熱暴走を引き起こす。しかしながら、本実施例の集電体5は、単層金属箔の構成ではなく、ポリエチレンフイルム512、金属粒子層523及びグラファイト層522を含む五層構成になっている。ここで、金属粒子層523及びグラファイト層522を支持するポリエチレンフイルム512の穿刺針71の周りに位置する部分は、故障箇所の温度が上昇する過程で速やかに溶融収縮し、ポリエチレンフイルム512の対応する部分に位置する金属粒子層523及びグラファイト層522と共に収縮させ、集電体5の穿刺針71の周りに位置する部分が速やかに崩壊して孔526を形成する。形成された孔526が穿刺針71と集電体5との電気的な接続を遮断して故障回路を遮断するため、電池内部の電気化学反応及び内部短絡のさらなる発展を効果的に阻止して熱暴走を防止することができる。そのため、安全性能を効果的に向上させることができる。
【0098】
金属箔等の非粒子状の場合に比較すると、金属粒子層523が粒子状を呈すため、金属粒子の結合密着性が相対的に低く、金属粒子の間が高温で遮断されやすい。そのため、ポリエチレンフイルム512が溶融収縮する時、金属粒子層523がそれに伴って一緒に収縮しやすく、集電体5が故障回路をより速やかに遮断することに役立つ。そのため、熱暴走をより確実に防止することに役立つため、安全性能をより効果的に向上させる。
【0099】
ここで、集電体5は、正極シート1の集電体5であってもよく、負極シート2の集電体5であってもよい。集電体5が正極シート1の集電体5である場合、金属粒子層523は粉末状のアルミニウム粉末から製造されるアルミニウム粒子層であってもよい。集電体5が負極シート2の集電体5である場合、金属粒子層523は、粉末状の銅粉から製造される銅粒子層であってもよい。
【0100】
以上の説明は、本願の例示的な実施例に過ぎず、本願を限定するものではない。本願の精神及び規則の範囲内において、いかなる修正、同等の置換、改良等がなされたものであっても、いずれも本願の保護範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0101】
100 電気装置
101 車両
102 コントローラ
103 動力設備
104 モータ
105 本体
10 電池
20 電池セル
201 電極アセンブリ
202 外殻
203 ケース
204 エンドキャップ
205 アダプタ
206 電極端子
207 タブ
208 スペーサ
30 収容箱
301 箱本体
302 箱カバー
1 正極シート
2 負極シート
3 セパレータ
4 電極シート
5 集電体
51 支持層
511 支持フイルム
512 ポリエチレンフイルム
52 導電層
521 粒子状導電層
522 グラファイト層
523 金属粒子層
524 第1の導電層
525 第2の導電層
526 孔
6 活物質
7 短絡開始部材
71 穿刺針
図1
図2
図3
図4
図5
図6