(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】摩擦調整剤化合物ならびに関連する組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C10M 137/12 20060101AFI20240717BHJP
C10M 137/04 20060101ALI20240717BHJP
C10M 137/10 20060101ALI20240717BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240717BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20240717BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20240717BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240717BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20240717BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20240717BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C10M137/12
C10M137/04
C10M137/10
C10N30:06
C10N40:00 A
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2022543544
(86)(22)【出願日】2021-01-19
(86)【国際出願番号】 US2021013948
(87)【国際公開番号】W WO2021146706
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ベイカー、ジョン、マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】カイン、ナサニエル
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137748(JP,A)
【文献】特開平11-043685(JP,A)
【文献】特開2019-143107(JP,A)
【文献】特開2019-137829(JP,A)
【文献】特開2017-078156(JP,A)
【文献】特開昭60-256919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤添加剤組成物であって、
a)式(I)の摩擦調整剤化合物であって、
【化1】
式中、
R
1が、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24炭化水素であり、
R
2が、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルであり、
R
3が、水素、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルである、摩擦調整剤化合物と、
b)式(III)の化合物またはそのトライボロジー的に許容される塩である耐摩耗性化合物と、を含む、潤滑剤添加剤組成物:
【化2】
式中、
Aが、
【化3】
であり、
各R
9が、同一または異なり、かつアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから各々独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
R
10およびR
11が各々、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから独立して選択され、
Yが、アルキル、アルコキシアルキル、ベンジル、および-R
12-R
13-R
14からなる群から選択され、
R
12が、アルキレンであり、
R
13が、結合、アルキレン、および-C(O)-からなる群から選択され、
R
14が、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレンオキシ、ヒドロキシ、およびアルコキシからなる群から選択され、
mが、2~8の整数であり、
X
3が、R
16またはZであり、
X
4が、
【化4】
からなる群から選択され、
R
16が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、前記アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから各々独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
Zが、
【化5】
である
;
ただし、以下の化合物i)、ii)またはiii)を含む潤滑油添加剤組成物を除く、
i) 式(X)の化合物、式(X)の化合物の酸無水物、または式(X)の化合物の少なくとも1つのカルボキシル基に脂肪族モノアルコール、アルキレングリコールもしくはジアルキレングリコールが付加した付加物、
【化6】
式中、
R
24
およびR
25
は、それぞれ独立に1価の炭化水素基を表し、
R
26
は、水素原子またはカルボキシル基を表し、
R
27
およびR
28
は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、
X
21
は、硫黄原子または酸素原子を表す、
ii) ジチオリン酸亜鉛、
iii) ホウ酸エステル。
【請求項2】
前記摩擦調整剤が、オクタデシルホスホン酸ジエチル、オクタデシルホスホン酸ジプロピル、オクタデシルホスホン酸ジブチル、オクタデシルホスホン酸ジイソプロピル、およびオクタデシルホスホン酸ジフェニルからなる群から選択される化合物で
ある、請求項1に記載の潤滑剤添加剤組成物。
【請求項3】
前記摩擦調整剤が、オクタデシルホスホン酸ジブチルで
ある、請求項1に記載の潤滑剤添加剤組成物。
【請求項4】
溶解度向上剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑剤添加剤組成物。
【請求項5】
潤滑剤組成物であって、
a)基油またはそれから調製されるグリース、および
b)0.002~50重量%の請求項1に記載の潤滑剤添加剤組成物を含み、
前記基油が、主要量の前記組成物である、潤滑剤組成物。
【請求項6】
機械部品の可動金属表面を潤滑する方法であって、請求項
5に記載の潤滑剤組成物で前記表面を潤滑することを含む、方法。
【請求項7】
前記機械部品が、工業用ギア、風力タービンギア、車軸、差動装置、エンジン、クランクシャフト、トランスミッション、クラッチ、油圧装置、滑走路装置、およびタービンのうちの1つ以上から選択される、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
式(I)の摩擦調整剤化合物以外の摩擦調整剤化合物を含む潤滑剤組成物と比較して、耐摩耗性能が改善され、
【化7】
式中、
R
1が、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24炭化水素であり、
R
2が、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルであり、
R
3が、水素、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルである、請求項
6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年1月17日に出願された米国仮出願第62/962,562号の利益および優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
様々な化学成分を潤滑剤に添加して、機械構成要素の所望の特性を促進することができる。摩擦調整剤を潤滑剤に添加して、所望の摩擦特性を促進することができる。耐摩耗性化合物を潤滑剤に添加して、摩耗の低減を促進することができる。しかしながら、経時的な改善された摩擦低減および耐摩耗性能を促進する潤滑剤添加剤組成物および潤滑剤組成物に対する必要性が残っている。
【発明の概要】
【0003】
潤滑剤添加剤組成物、潤滑剤組成物、および関連する方法が提供される。潤滑剤添加剤組成物は、本明細書で提供されるような摩擦調整剤化合物および耐摩耗性化合物を含むことができる。潤滑剤組成物は、本明細書で提供される、基油、摩擦調整剤化合物、および耐摩耗性化合物を含むことができる。本明細書で提供される摩擦調整剤化合物は、炭素対リン(CP)結合を含むホスホネート化合物である。
【0004】
潤滑剤添加剤および潤滑剤組成物は、経時的な摩擦低減および耐摩耗性能向上の好適なバランスを提供する。本明細書で提供される潤滑剤添加剤組成物は、ギア流体を含む様々な完成流体に利用または添加され得る。
【0005】
一態様によれば、潤滑剤添加剤組成物であって、
a)式(I)の摩擦調整剤化合物であって、
【化1】
式中、
R
1が、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24炭化水素であり、
R
2が、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルであり、
R
3が、水素、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルである、摩擦調整剤化合物と、
b)耐摩耗性化合物と、を含む、潤滑剤添加剤組成物が提供される。
【0006】
一実施形態によれば、R2およびR3の各々は、独立して、エチル、任意に置換されたフェニル、または線状、分岐もしくは環状C3~C4アルキルである。一実施形態によれば、R1は、直鎖C16~C19ヒドロカルビルである。
【0007】
本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、ホスホネートを除外し、したがって、炭素対リン(CP)結合を特徴とする有機化合物を含まない。特定の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、無灰リン含有化合物であり得る。実施形態では、無灰リン含有化合物は、ホスファイト、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0008】
一実施形態によれば、無灰リン含有化合物は、少なくとも1つのリン中心を含有する。別の実施形態では、無灰リン含有化合物は、少なくとも2つのリン中心、少なくとも3つのリン中心、または少なくとも4つのリン中心などの2つ以上のリン中心を含有することができる。
【0009】
一実施形態によれば、摩擦調整剤は、オクタデシルホスホン酸ジエチル、オクタデシルホスホン酸ジプロピル、オクタデシルホスホン酸ジブチル、オクタデシルホスホン酸ジイソプロピル、およびオクタデシルホスホン酸ジフェニルであり、耐摩耗性化合物は、リン含有化合物、硫黄含有化合物、窒素含有化合物、またはそれらの組み合わせである。
【0010】
一実施形態によれば、摩擦調整剤は、オクタデシルホスホン酸ジブチルであり、耐摩耗性化合物は、リン含有化合物である。一実施形態によれば、潤滑剤添加剤組成物は、溶解度向上剤を含む。一実施形態によれば、潤滑剤添加剤組成物は、酸化防止剤、溶解性向上剤、追加の耐摩耗剤、腐食防止剤、清浄剤、極圧剤、分散剤、粘度指数向上剤、および追加の摩擦調整剤のうちの1つ以上をさらに含む。
【0011】
別の態様によれば、本明細書で提供されるように、主要量の基油またはグリースおよび少量の潤滑剤添加剤組成物を含む潤滑剤組成物が提供される。得られた潤滑剤組成物は、摩擦低減と耐摩耗性能のバランスを提供する。
【0012】
一態様によれば、機械部品の可動金属表面を潤滑する方法が提供される。本方法は、本明細書で提供されるような潤滑剤組成物で表面を潤滑するステップを含む。一実施形態によれば、機械部品は、工業用ギア、風力タービンギア、車軸、差動装置、エンジン、クランクシャフト、トランスミッション、クラッチ、油圧装置、滑走路装置、およびタービンのうちの1つ以上である。一実施形態によれば、ASTM D4172に従って試験されたときに、耐摩耗性能はベースラインの新しい潤滑剤組成物と比較して、熟成した潤滑剤組成物内に維持される。一実施形態によれば、式(I)の摩擦調整剤化合物以外の摩擦調整剤化合物を含む潤滑剤組成物と比較して、耐摩耗性能が改善され、
【化2】
式中、
R
1が、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24炭化水素であり、
R
2が、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルであり、
R
3が、水素、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルである。
【0013】
本明細書で提供される潤滑剤組成物ならびに潤滑剤添加剤濃縮物はまた、自動車用ギア、工業用ギア、固定ギア、後車軸、制限付きスリップディファレンシャル、従来のディファレンシャル、および/もしくは自動および手動トランスミッションを含むがこれらに限定されない、多種多様なギアならびに/またはトランスミッション用途に特に好適である。さらに、そのような組成物および濃縮物は、マルチプレートディファレンシャル、コーンクラッチディファレンシャル、トルセンディファレンシャル、および/またはドッグクラッチディファレンシャルでの使用に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、本開示は、その例示的な実施形態を参照して、以下により完全に説明される。これらの例示的な実施形態は、この開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者に開示の範囲を十分に伝えるように記載されている。実際、本開示は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が適用可能な法的要件を満たすように提供されている。
【0015】
本明細書で使用される場合、「トライボロジー的に許容される塩」という用語は、アミン塩の代替物を含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」、「ヒドロカルビル基」、または「ヒドロカルビル」という用語は、当業者に周知の通常の意味で使用される。具体的には、「ヒドロカルビル置換基」、「ヒドロカルビル基」、または「ヒドロカルビル」という用語は、分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、かつ主として炭化水素の特性を有する、基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、
(1)炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環状(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、ならびに芳香族、脂肪族および脂環状置換芳香族置換基、ならびに環が分子の別の部分を介して完成する(例えば、2つの置換基が一緒になって脂環状ラジカルを形成する)環状置換基と、
(2)置換された炭化水素置換基、すなわち、本開示の文脈において、主として炭化水素置換基を変化させない非炭化水素基を含有する置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)と、が挙げられる。
【0017】
本明細書で使用される場合、「油組成物」、「潤滑組成物」、「潤滑性組成物」、「潤滑性油組成物」、「潤滑性油」、「潤滑剤組成物」、「完全配合潤滑剤組成物」、および「潤滑剤」という用語は、同義の完全に互換可能な用語とみなされ、主要量の基油および少量の潤滑剤濃縮物または潤滑剤添加剤組成物を含む完成した潤滑生成物を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「潤滑剤濃縮物」および「潤滑剤添加剤組成物」という用語は、完成した潤滑製品を形成するために基油に導入される添加剤を指す同義の完全に交換可能な用語とみなされる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「溶解度向上剤」という用語は、摩擦調整剤化合物のいずれかの溶解度を改善する化合物である。
【0020】
本明細書中で使用される場合、「基油」という用語は、米国石油協会(API)カテゴリーグループのグループI-V油によって分類される油、ならびに動物油、植物油(例えばヒマシ油およびラード油)、石油、鉱油、合成油、および石炭または頁岩から誘導された油を指す。
【0021】
機械構成要素の摩耗は、材料の故障および機能の喪失につながる得、そのような摩耗は、多くの形態を取り得る。
【0022】
潤滑剤組成物は、機械構成要素と固体表面との間に潤滑剤層を形成することによって、摩耗から保護することができる。潤滑剤層の厚さが増すにつれて、摩擦は低減する。しかしながら、微視的なレベルでの金属表面は、凹凸と呼ばれる欠陥を有する粗い表面である。潤滑剤層は、表面を分離するのに十分な厚さでもよいが、2つの表面間のすべての凹凸を分離するのに十分な厚さではない。凹凸が反対側の表面に接触してそれ自体が壊れたり、反対側の表面が削られたり割れたりすると、アブレシブ摩耗が発生する可能性がある。
【0023】
反対側の表面間の接触を減らすのを助けるために、耐摩耗性化合物を潤滑剤組成物に添加することができる。耐摩耗性化合物は、摩擦膜と称される化学膜の形成を促進することができる。摩擦膜の厚さおよび粗さは、摩擦と摩耗の両方の保護に影響を与えることができる。
【0024】
加えて、摩擦調整剤を潤滑剤組成物に添加することができる。摩擦調整剤は、むき出しの反対側の表面がそうでなければ有していたであろう摩擦係数を減らすのを助けることができる。摩擦係数の低減は、対向する表面への応力の低減をもたらす可能性がある。しかしながら、本発明者らは、摩擦調整剤が摩擦膜の厚さまたは滑らかさに影響を及ぼし、その結果、耐摩耗化合物が他の方法で提供するであろう摩耗保護特性の経時的な低下をもたらす可能性があることを発見した。
【0025】
本開示は、経時的な摩耗保護を維持またはさらに改善しながら、摩擦を予期せず維持または改善する潤滑剤濃縮物、潤滑剤組成物、および関連する方法を提供する。本明細書に記載の特定のクラスの摩擦調整剤と耐摩耗性化合物との組み合わせは、摩擦を低減するだけでなく、摩耗保護を維持またはさらに改善することが見出された。
【0026】
摩擦調整剤化合物
上で論じられるように、本明細書に記載の摩擦調整剤化合物は、耐摩耗性化合物と組み合わせて、摩擦の低減、および摩耗に対する保護の拡張を提供することができる。特定の実施形態では、特定の理論に限定されることなく、摩擦調整剤化合物は、摩耗に対する保護を改善するより滑らかな摩擦膜の形成を調節するのを助けることができると考えられている。
【0027】
一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、式(I)の1つ以上の化合物を含むことができる:
【化3】
式中、
R
1が、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24炭化水素であり、
R
2が、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルであり、
R
3が、水素、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルである。
【0028】
別の実施形態によれば、式(I)の化合物は、ホスホン酸のモノエステルを含む。好適なモノエステルとしては、C
6~C
24炭化水素(直鎖および分岐ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコサニルなど)ホスホン酸のモノエステルのいずれかが挙げられるが、これらに限定されず、式中、モノエステルのアルコール部分は、フェノール、エタノール、ならびに線状、分岐、および環状C
3~C
4炭化水素(n-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、またはシクロブタノールなど)などのアルコールから誘導される。一実施形態によれば、アルコールの炭化水素は、ヘテロ原子を含有しない。例えば、次のモノエステルは、
【化4】
C
6-ヒドロカルビル(すなわち、直鎖または分岐ヘキシル)のホスホン酸のモノエステルであり、アルコールは2-プロパノールから誘導される。当業者は、すべてのC
6~C
24ヒドロカルビルホスホン酸がどのようにして上記のアルコールのいずれかとモノエステルを形成することができるかを想像することができる。
【0029】
特定の実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、式(I)の1つ以上の化合物を含むことができる:
【化5】
式中、
R
1、R
2、およびR
3は各々、独立して、ヒドロカルビル基であり、
R
2およびR
3は各々、少なくとも2個の炭素を有する。一実施形態によれば、R
1は、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24ヒドロカルビルであり、R
2およびR
3の各々は、独立して、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルである。
【0030】
一実施形態によれば、R1は、直鎖または分岐であり得る飽和ヒドロカルビル基である。特定の実施形態によれば、R1は、ヘテロ原子を含有しない。
【0031】
特定の実施形態によれば、R1は、少なくとも6個の炭素、または少なくとも8個の炭素、または少なくとも10個の炭素、または少なくとも12個の炭素、または少なくとも14個の炭素、さらには少なくとも16個の炭素を有する。特定の実施形態によれば、R1は、24個以下の炭素、または22個以下の炭素、または20個以下の炭素、または18個以下の炭素を有する。例えば、R1は、6~24個の炭素を有するか、10~22個の炭素を有するか、または14~20個の炭素を有する。特定の実施形態によれば、R1のC6~C24ヒドロカルビルは、ヘテロ原子を含有しない。
【0032】
一実施形態によれば、R2およびR3の各々は、個々に、線状、分岐、または環状であり得るヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基は、任意に置換することができる。特定の実施形態では、R2およびR3の各々は、個別にC2~C8ヒドロカルビルであり得る。例えば、R2およびR3の各々は、独立して、線状または分岐C2~C8ヒドロカルビルであり得る。別の例として、R2およびR3の各々は、独立して、線状または分岐C3~C4ヒドロカルビルであり得る。
【0033】
特定の例として、R2およびR3の各々は、独立して、線状または分岐C2ヒドロカルビル基であり得る。C2ヒドロカルビル基は、エチル基であり得る。
【0034】
特定の例として、R2およびR3の各々は、独立して、線状または分岐C3ヒドロカルビル基であり得る。C3ヒドロカルビル基は、n-プロピル、イソプロピル、またはシクロプロピルなどのプロピル基であり得る。
【0035】
特定の例として、R2およびR3の各々は、独立して、線状または分岐C4ヒドロカルビル基であり得る。C4ヒドロカルビル基は、n-ブチル、イソブチル、tertブチル、またはシクロブチルなどのブチル基であり得る。
【0036】
特定の例として、R2およびR3の各々は、独立して、フェニル基であり得る。
【0037】
一実施形態によれば、R2およびR3の各々は、ヘテロ原子を含有しない。
【0038】
他の実施形態では、R2およびR3の一方は、任意に置換されたエチルであり、他方は、任意に置換された線状、分岐、または環状C2~C8ヒドロカルビルである。他の実施形態では、R2およびR3の一方は、任意に置換されたエチルであり、他方は、任意に置換された線状、分岐、または環状C2~C8ヒドロカルビルであり、ヒドロカルビルはヘテロ原子を含有しない。
【0039】
一実施形態によれば、R2およびR3の一方は、任意に置換されたフェニルであり、他方は、任意に置換されたエチルである。他の実施形態では、一方のR2およびR3は、任意に置換されたフェニルであり、他方は、任意に置換された線状、分岐、または環状C2~C8ヒドロカルビルである。他の実施形態では、一方のR2およびR3は、任意に置換されたフェニルであり、他方は、任意に置換された線状、分岐、または環状C2~C8ヒドロカルビルであり、ヒドロカルビルはヘテロ原子を含有しない。
【0040】
一実施形態によれば、R2およびR3は同じである。別の実施形態によれば、R2およびR3は異なる。一実施形態によれば、R2およびR3のC2~C8ヒドロカルビルは、ヘテロ原子を含有しない。
【0041】
一実施形態によれば、R1は、C15~C18、C15~C19、C15~C20、C16~C18、C16~C19、またはC16~C20ヒドロカルビルであり、各R2およびR3は、独立して、フェニル、または任意に置換され得る線状、分岐、もしくは環状C2~C8ヒドロカルビルである。
【0042】
一実施形態によれば、R1は、飽和した直鎖または分岐C15~C18、C15~C19、C15~C20、C16~C18、C16~C19、またはC16~C20ヒドロカルビルであり、R2およびR3の各々は、独立して、任意に置換されたフェニルである。
【0043】
一実施形態によれば、R1は、飽和した直鎖または分岐C15~C18、C15~C19、C15~C20、C16~C18、C16~C19、またはC16~C20ヒドロカルビルであり、R2およびR3の各々は、独立して、任意に置換された線状、分岐、または環状C3~C4ヒドロカルビルである。
【0044】
一実施形態によれば、R1は、飽和した直鎖または分岐C15~C18、C15~C19、C15~C20、C16~C18、C16~C19、またはC16~C20ヒドロカルビルであり、R2およびR3の各々は、独立して、任意に置換された線状または分岐C3~C4ヒドロカルビルである。
【0045】
一実施形態によれば、R1は、飽和した直鎖または分岐C15~C18、C15~C19、C15~C20、C16~C18、C16~C19、またはC16~C20ヒドロカルビルであり、R2およびR3の各々は、独立して、任意に置換された環状C3~C4ヒドロカルビルである。
【0046】
一実施形態によれば、R1は、飽和した直鎖または分岐C15~C18、C15~C19、C15~C20、C16~C18、C16~C19、またはC16~C20ヒドロカルビルであり、R2およびR3の各々は、独立して、任意に置換された線状または分岐C4ヒドロカルビルである。
【0047】
一実施形態によれば、R1は、飽和した直鎖または分岐C15~C18、C15~C19、C15~C20、C16~C18、C16~C19、またはC16~C20ヒドロカルビルであり、R2およびR3の各々は、独立して、任意に置換された線状または分岐C3ヒドロカルビルである。
【0048】
一実施形態によれば、R1は、飽和した直鎖または分岐C15~C18、C15~C19、C15~C20、C16~C18、C16~C19、またはC16~C20ヒドロカルビルであり、R2およびR3の各々は、独立して、任意に置換された線状C2ヒドロカルビルである。
【0049】
ダイエスター
別の実施形態によれば、式(I)の化合物は、ホスホン酸のジエステルを含む。ホスホン酸のジエステルの好適な例としては、C
6~C
24炭化水素(直鎖および分岐ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコサニルなど)ホスホン酸のジエステルのいずれかが挙げられるが、これらに限定されず、式中、ジエステルのアルコール部分は、独立して、フェノール、エタノール、ならびに線状、分岐、および環状C
3~C
4炭化水素(n-プロパノール、2-プロパノール、シクロプロパノール、n-ブタノール、2-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、またはシクロブタノールなど)から誘導される。一実施形態によれば、アルコールの炭化水素は、ヘテロ原子を含有しない。例えば、次のジエステルは、
【化6】
C
6ヒドロカルビル(すなわち、直鎖または分岐ヘキシル)ホスホン酸のジエステルであり、2つのアルコールは2-プロパノールおよびtert-ブタノールから誘導される。当業者は、すべてのC
6~C
24ヒドロカルビルホスホン酸がどのようにして上記のアルコールのいずれかとジエステルを形成することができるかを想像することができる。
【0050】
一実施形態によれば、1つ以上の摩擦調整剤化合物は、例えば、米国特許第10,329,511号、米国特許第9,944,879号、米国特許第9,481,696号、米国特許第9,518,242号、および米国特許第9,885,003号に完全に記載されるものを含み、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0051】
一実施形態によれば、式Iの化合物は、以下から選択される。
【表1】
式中、各R
1は、直鎖または分岐C
16アルキル、C
17アルキル、C
18アルキル、C
19アルキル、またはC
20アルキルである。
【0052】
特定の実施形態によれば、式(I)の摩擦調整剤化合物は、オクタデシルホスホン酸ジエチル、オクタデシルホスホン酸ジプロピル、オクタデシルホスホン酸ジブチル、オクタデシルホスホン酸ジイソプロピル、およびオクタデシルホスホン酸ジフェニルのうちの1つ以上である
【0053】
ホスホン酸エステルの製造方法
ホスホン酸エステルの製造方法は、例えば、Silesらによる米国特許第2,724,718号、Kleinerらによる米国特許第3,812,222号に記載されている。ジエステルは通常、最大約15の総酸価(TAN)を有する。
【0054】
摩擦調整剤の処理速度
一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0.001%w/w~約10%w/wの量で潤滑剤組成物中に存在する。一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、約0.01%w/w~10%w/wの量で潤滑剤組成物中にあり得る。一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、約0.01%w/w~約5%w/wの量で潤滑剤組成物中にあり得る。一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、約0.01%w/w~約2.0%w/wの量で潤滑剤組成物中にあり得る。一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、約0.01%w/w~約0.5%w/wの量で潤滑剤組成物中にあり得る。一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、約0.01%w/w~約0.4%w/wの量で潤滑剤組成物中にあり得る。一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、約0.01%w/w~約0.3%w/wの量で潤滑剤組成物中にあり得る。一実施形態によれば、摩擦調整剤化合物は、約0.01%w/w~約0.2%w/wの量で潤滑剤組成物中にあり得る。基油中のエステルの長期安定性を提供するために、ジエステルとモノエステルとの比率は変動され得る。
【0055】
耐摩耗性化合物
ここで提供される潤滑剤添加剤および潤滑剤組成物は、1つ以上の耐摩耗性化合物を含む。本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、ホスホネートを除外し、したがって、炭素対リン(CP)結合を特徴とする有機化合物を含まない。
【0056】
特定の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は熱的に安定であり、リンを含む。リン含有耐摩耗性化合物は、使用される場合、一般に、その中に約100~約500ppmのリンを提供するのに十分な量で、完成した潤滑剤中に含有されることになる。
【0057】
好適な耐摩耗性化合物の他の例としては、チタン化合物、酒石酸塩、タルトリミド、リン化合物の油溶性アミン塩が含まれるが、これらに限定されない。タータラートまたはタルトリミドは、アルキル-エステル基を含有してもよく、アルキル基上の炭素原子の合計は、少なくとも8であってもよい。特定の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、クエン酸塩を含み得る。別の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、硫化オレフィン;チオカルバメートエステル、アルキレン結合チオカルバメート、およびビス(S-アルキルジチオカルバミル)ジスルフィドを含むチオカルバメート含有化合物;ならびにそれらの混合物である。
【0058】
耐摩耗性化合物は、欧州特許第1490460号に、より完全に記載されており、その説明は、参照により本明細書に組み込まれる。他の好適なリン含有耐摩耗性化合物としては、米国特許第5,354,484号、同第5,763,372号、および同第5,942,470号で教示されているものなどの油溶性アミン塩またはリン酸エステルのアミン付加物が挙げられ、これらの説明は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
実施形態では、リン含有耐摩耗性化合物は、ホスファイト、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。
【0060】
特定の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、ジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)およびその任意のトライボロジー的に許容される塩(アミン塩代替物を含む)を含む。特定の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、無灰、塩素を含まないジアルキルジチオホスフェート、およびその任意のトライボロジー的に許容される塩(アミン塩代替物を含む)を含む。特定の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、BASFから市販されているIrgalube(登録商標)353を含む。
【0061】
特定の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、無灰リン含有化合物であり得る。
【0062】
実施形態では、リン含有化合物は、少なくとも1つのリン中心を含有する。別の実施形態では、リン含有化合物は、少なくとも2つのリン中心、少なくとも3つのリン中心、または少なくとも4つのリン中心などの2つ以上のリン中心を含有することができる。
【0063】
特定の実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、例えば、米国特許第10,329,511号、米国特許第9,944,879号、米国特許第9,481,696号、米国特許第9,518,242号、および米国特許第9,885,003号に完全に記載される耐摩耗化合物のうちの1つ以上を含み、これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0064】
一実施形態によれば、本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、式(II)の化合物、
【化7】
またはそのトライボロジー的に許容される塩であり、
式中、
各X
1が、独立して、酸素(O)または硫黄(S)であり、
各X
2が、独立して、-OR’’、-OH、-SR’’、-SR’’’C(O)OH、および-SHであり、
R
4が、-OR’’、-OH、またはHであり、
R
5が、-R’’であり、
各R’’が、独立して、C
1~C
18ヒドロカルビル鎖であり、
各R’’’が、独立して、C
1~C
3分岐または直鎖アルキル鎖であり、
nが、1、2、または3であり、
nが1である場合、mは、0であり、
nが2または3である場合、mは、1であり、
Lが、非環状C
1~C
5炭化水素および環状C
3~C
10炭化水素からなる二価基から選択されるリンカーである。
【0065】
一実施形態によれば、X1は、Oであり、X2は、Sを含有する。一実施形態によれば、X1は、Sであり、X2は、Oを含有する。一実施形態によれば、X1およびX2の両方が、両方Oを含有するか、または両方Sを含有する。
【0066】
特定の実施形態では、式(II)の無灰リン含有化合物は、チオホスフェートであり得、式中、
X1が、Sであり、
X2が、-OR’’または-OHであり、
R4が、-OR’’または-OHであり、
R5が、-R’’である。
【0067】
例えば、チオホスフェートは、硫化ジブチル水素ホスファイトまたは硫化ジブチルオレイル水素ホスファイトなどの硫化ホスファイトであり得る。
一実施形態では、R’’は、独立して、線状、分岐、または環状のC4~C18アルキルである。一実施形態によれば、R’’は、独立して、線状または分岐C4~C18アルキルである。一実施形態によれば、R’’は、独立して、環状C4~C18アルキルである。一実施形態によれば、R’’は、線状または分岐C4~C18アルキルであり、他方は、環状C4~C18アルキルである。環状C4~C18アルキルとしては、単環状シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル、ならびに単環状および二環状シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。
【0068】
線状C4~C18アルキル基の好適な例としては、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルが挙げられるが、これらに限定されない。分岐C4~C18アルキルの例としては、イソブチル(2-メチルプロピル)、tert-ブチル(1,1-ジメチルエチル)、イソペンチル(2-メチルブチル)、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)、イソヘキシル(2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、もしくは2,3-ジメチルブチル)、ネオヘキシル(2,2-ジメチルブチル)、イソヘプチル(2-メチルヘキシル)、3-メチルヘキシル、ネオヘプチル(2,2-ジメチルペンチル)、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、3-エチルペンチル。2,2,3-トリメチルブチル、2-メチルヘプチル、3-メチルヘプチル、4-メチルヘプチル、3-エチルヘキシル、2,2-ジメチルヘキシル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルヘキシル、3,4-ジメチルヘキシル、3-エチル-2-メチルペンチル、3-エチル-3-メチルペンチル、2,2,3-トリメチルペンチル、2,2,4-トリメチルペンチル、2,3,3-トリメチルペンチル、2,3,4-トリメチルペンチル、または2,2,3,3-テトラメチルブチルが挙げられる。一実施形態によれば、R’’は、独立して、前述のアルキル基の例のいずれかである。
【0069】
いずれの実施形態においても、Lは、非環状C1~C5炭化水素および環状C3~C10炭化水素からなる二価基から選択されるリンカーである。いずれの実施形態においても、Lは、リンカー選択された非環状C1~C5炭化水素である。非環状C1~C5炭化水素の例には、-CH2-、-CH2CH2-、-CCH3-、-CH2CH2CH2-、-CH2CHCH3-、-CHCH3CH2-、-C(CH3)2-、
-CH2CH2CH2CH2-、-CHCH3CH2CH2-、-CH2-CH2CHCH3-、-CH2CHCH3CH2-、-C(CH3)2CH2-、
-CH2C(CH3)2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-CH2CH(CH2CH3)-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、-CH2CHCH3CH2CH2-、-CHCH3CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CHCH3-、-CH2CH2CHCH3CH2-、
-CH2CH2CHCH3CH2-、-CH2CHCH3CH2CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-、-C(CH3)2CH2CH2-、
-CH2CH(CH2CH3)CH2-、-CH(CH2CH3)CH2CH2-、-CH(CH2CH2CH3)CH2-、
-C(CH3)(CH2CH3)CH2-、-CH2C(CH3)(CH2CH3)-、-CH2CH2CH(CH2CH3)-、H2CH(CH2CH3)CH2-、および-CH2CH(CH2CH2CH3)-が挙げられる。当業者は、上記に列挙された非環状C1~C5炭化水素リンカーの一覧が必ずしも網羅的であるとは限らず、上記に列挙されていない任意の非環状C1~C5炭化水素リンカーも好適なリンカーであり得ることを理解するであろう。
【0070】
一実施形態によれば、Lは、環状C3~C10炭化水素から選択されるリンカーである。環状C4~C8炭化水素としては、単環状シクロペンチルおよびシクロヘキシル、ならびに単環状および二環状シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルが挙げられる。
【0071】
いずれの実施形態においても、nは、1、2、または3である。いずれの実施形態においても、nが1である場合、mは、0である。
【0072】
一実施形態によれば、nが2または3である場合、mは、1である。一実施形態によれば、nが1(およびmがゼロ)である場合、式(II)の化合物は、1つのリン中心を有する式(IIa)の化合物である。
【化8】
【0073】
実施形態では、式(IIa)の化合物は、ホスファイト、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。一実施形態によれば、式(IIa)の化合物において、X1、X2、R4、およびR5は、式(II)の化合物について上で定義されたとおりである。
【0074】
特定の実施形態では、式(IIa)の化合物は、ホスファイトであり得る。
X1が、Oであり、
X2が、Hであり、
R4が、OR’’であり、
R5が、-R’’である。
【0075】
例えば、ホスファイトは、ジアルキル水素ホスファイト、例えば、ジブチル水素ホスファイト、ジオレイル水素ホスファイト、またはそれらの任意のトライボロジー的に許容される塩(アミン塩の代替物を含む)であり得る。
【0076】
特定の実施形態では、式(IIa)の化合物は、ホスフェートであり得る。
X1が、Oであり、
X2が、-OR’’または-OHであり、
R4が、-OR’’または-OHであり、
R5が、-R’’である。
【0077】
例えば、ホスフェートは、モノアルキルホスフェート(X2およびR4が両方とも-OHである場合)、ジアルキルホスフェート(X2が-OHおよびR4-OR’’である場合、またはその逆)、トリアルキルホスフェート(X2およびR4が両方とも-OR’’である場合)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。特定の例では、ホスフェートは、アミル酸ホスフェート、2-エチルヘキシル酸ホスフェート、トリクレジルホスフェート、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0078】
一実施形態によれば、本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、式(IIb)の化合物、
【化9】
またはそのトライボロジー的に許容される塩であり、
式中、
X
1が、Oであり、
R
7が、n-ヘキシルである。
式中、w=1である場合、R
5はR
7であり、y=2であり、これによって、X
2およびR
4は、両方とも-OHであり、
式中、w=2である場合、R
5はR
7であり、R
4はR
7Oであり、y=1であり、これによって、X
2は-OHである。
【0079】
式(IIb)に示されるように、ホスフェートは、アミンで塩処理することができ、式中、R8は、非環状C11~C18ヒドロカルビルである。
【0080】
特定の実施形態によれば、式(IIIb)の耐摩耗性化合物は、Irgalube349(BASFから市販されている)およびその任意のトライボロジー的に許容される塩(アミン塩代替物を含む)を含む。
【0081】
一実施形態によれば、本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、式(IIc)の化合物、
【化10】
またはそのトライボロジー的に許容される塩であり、
式中、式(II)を参照すると、X
1はSであり、X
2はOHであり、R
4はOR
9であり、式(IIc)を参照すると、R
5はR
9である。
式中、各R
9は、独立して、水素、または線状、分岐、もしくは環状C
4~C
8アルキルである。
式(IIb)に示されるように、式(IIc)におけるホスフェートは、アミンで塩処理することができ、式中、R
8は、非環状C
11~C
18ヒドロカルビルである。特定の実施形態では、無灰リン含有化合物は、式(II)および(IIc)内のジチオホスフェートであり得る。
R
1が、Sであり、
X
2が、-SR’’または-SR’’’C(O)OHであり、
R
4が、OR’’であり、
R
5が、-R’’である。
【0082】
特定の実施形態では、ジチオホスフェート中のX2は、-SR’’’C(O)OHである。このようなジチオホスフェートの例は、Irgalube63(BASFによって商品化されている)である。
【0083】
一実施形態によれば、nが2または3である場合、式(II)の化合物は、2つ以上のリン中心を有する式(IId)または(IIe)の化合物である。実施形態によれば、nが2であり、mが1である場合、式(II)の化合物は、2つのリン中心を有する式(IId)の化合物である。
【化11】
【0084】
一実施形態によれば、式(IId)の化合物において、X1、X2、R4、およびR5は、式(II)の化合物について上で定義されたとおりである。式(IId)の特定の化合物によれば、X1およびX2は、独立して、OまたはSである。
【0085】
一実施形態によれば、Lは、非環状C1~C5炭化水素および環状C3~C10炭化水素からなる二価基から選択されるリンカーである。他の実施形態では、Lは、リンカー選択された非環状C1~C5炭化水素である。非環状C1~C5炭化水素の例には、-CH2-、-CH2CH2-、-CCH3-、-CH2CH2CH2-、-CH2CHCH3-、-CHCH3CH2-、-C(CH3)2-、
-CH2CH2CH2CH2-、-CHCH3CH2CH2-、-CH2-CH2CHCH3-、-CH2CHCH3CH2-、-C(CH3)2CH2-、
-CH2C(CH3)2-、-CH(CH2CH3)CH2-、-CH2CH(CH2CH3)-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、
-CH2CHCH3CH2CH2-、-CHCH3CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CHCH3-、-CH2CH2CHCH3CH2-、
-CH2CH2CHCH3CH2-、-CH2CHCH3CH2CH2-、-CH2C(CH3)2CH2-、-C(CH3)2CH2CH2-、
-CH2CH(CH2CH3)CH2-、-CH(CH2CH3)CH2CH2-、-CH(CH2CH2CH3)CH2-、
-C(CH3)(CH2CH3)CH2-、-CH2C(CH3)(CH2CH3)-、-CH2CH2CH(CH2CH3)-、CH2CH(CH2CH3)CH2-、および-CH2CH(CH2CH2CH3)-が挙げられる。当業者は、上記に列挙された非環状C1~C5炭化水素リンカーの一覧が必ずしも網羅的であるとは限らず、上記に列挙されていない任意の非環状C1~C5炭化水素リンカーも好適なリンカーであり得ることを理解するであろう。一実施形態によれば、Lは、環状C3~C10炭化水素から選択されるリンカーである。環状C4~C8炭化水素としては、単環状シクロペンチルおよびシクロヘキシル、ならびに単環状および二環状シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルが挙げられる。
【0086】
別の実施形態によれば、nが2(およびmが1)である場合、式(II)の化合物は、3つのリン中心を有する式(IIe)の化合物である。
【化12】
【0087】
式(IIe)の化合物において、X1、X2、R4、およびR5は、式(IIb)の化合物について上で定義されたとおりである。
【0088】
一実施形態によれば、本明細書で提供されるトライボロジー的に許容される塩は、式(IIf)のアミン塩である。
【化13】
式中、
R
6は、水素、直鎖もしくは分岐C
1~C
18アルキル、非環状C
1~C
18ヒドロカルビル、または環状C
3~C
18ヒドロカルビル。
【0089】
一実施形態によれば、耐摩耗性化合物は、本明細書で論じられる耐摩耗性化合物のアミン塩またはアミン付加物を含み得る。特定の実施形態では、塩は、脂肪族アミンで形成することができる。脂肪族アミンは、アミノ窒素が三級炭素に結合してt-ブチル基を与える、一級アミンであり得る。そのような実施形態によれば、脂肪族アミンは、C
12~C
14の範囲の異性体アミンの混合物を含み得る。脂肪族アミンの一例は、Primene81(アミノ(amnio)窒素原子が三級炭素に結合してt-アルキル基を与える、高度に分岐した鎖を有する一級脂肪族アミン;Dowから市販されている)であり得る。
【化14】
【0090】
特定の実施形態では、式(II)の耐摩耗性化合物は、無灰リン含有化合物であり得る。
【0091】
一実施形態によれば、本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、少なくとも3つのリン中心を有する式(III)の化合物、
【化15】
またはそのトライボロジー的に許容される塩であり、
式中、Aが、
【化16】
であり、
各R
9が、同一または異なり、かつアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、該アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから各々独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
R
10およびR
11が各々、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから独立して選択され、
Yが、アルキル、アルコキシアルキル、ベンジル、および-R
12-R
13-R
14からなる群から選択され、
R
12が、アルキレンであり、
R
13が、結合、アルキレン、-C(O)-、および-C(R
7)-からなる群から選択され、
R
14が、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレンオキシ、ヒドロキシ、およびアルコキシからなる群から選択され、
R
15が、ヒドロキシであり、
mが、2~8の整数であり、
X
1が、R
16またはZであり、
X
2が、R
8、
【化17】
からなる群から選択され、
R
16が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、該アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから各々独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
Zが、
【化18】
であり、
式中、X
3がR
16である場合、X
4は、Zである。
【0092】
特定の実施形態では、式(III)の耐摩耗性化合物は、無灰リン含有化合物であり得る。
【0093】
本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、潤滑性組成物の総重量に基づいて、約0.001%w/w~約15%w/wの量で存在し得る。別の実施形態によれば、本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、約0.01%w/w~約10%w/wの量で存在し得る。別の実施形態によれば、本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、約0.05%w/w~約5%w/wの量で存在し得る。別の実施形態によれば、本明細書で提供される耐摩耗性化合物は、約0.1%w/w~約3.0%w/wの量で存在し得る。
【0094】
基油
本明細書で提供される潤滑剤添加剤濃縮物は、潤滑粘度の油中に直接添加され得る。一般に、潤滑剤添加剤濃縮物は、最終潤滑剤組成物の総重量に対する特定の重量パーセントで潤滑粘度の油にさらに配合されることになる。選択された重量パーセントは、一般に処理率と称され、潤滑剤添加剤濃縮物を含有する潤滑剤組成物は、一般に完成流体と称される。
【0095】
本明細書で提供される潤滑剤組成物は、潤滑基油を含む。ここで提供される潤滑剤添加剤濃縮物は、基油に添加され得る。本明細書に記載されているように、基油は、米国石油協会(API)によってカテゴリーグループのグループI-Vに分類されている。米国石油協会は、これらの異なるベースストックタイプを次のように分類した。グループI、0.03重量パーセント超の硫黄、および/または90体積パーセント未満の飽和物、80~120の粘度指数;グループII、0.03重量パーセント以下の硫黄、および90体積パーセント以上の飽和物、80~120の粘度指数;グループIII、0.03重量パーセント以下の硫黄、および90体積パーセント以上の飽和物、120超の粘度指数;グループIV、全ポリアルファオレフィン。水素化処理ベースストックおよび触媒的脱ロウベースストックは、これらの低硫黄および芳香族化合物含有量のために、一般にグループIIおよびグループIIIカテゴリーに入る。ポリアルファオレフィン(グループIVベースストック)は、様々なアルファオレフィンから調製された合成基油であり、硫黄および芳香族を実質的に含まない。
【0096】
グループI、グループII、およびグループIIIは、鉱物油プロセス原料である。グループIVの基油は、オレフィン性不飽和炭化水素の重合によって生成される、真の合成分子種を含有する。多くのグループVの基油も真の合成生成物であり、ジエステル、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、アルキル化芳香族、ポリリン酸エステル、ポリビニルエーテル、および/またはポリフェニルエーテルなどが含まれてもよいが、植物油などの天然に存在する油であってもよい。グループIII基油は、鉱物油から誘導されるが、これらの流体が受ける厳しい加工のために、それらの物理的特性がPAOのようないくつかの真の合成物に非常に類似する。したがって、グループIII基油由来の油は、業界では合成流体と称されることがあり得る。
【0097】
本明細書で提供される基油は、鉱物油または合成油、動物油、植物油、またはそれらの混合物の形態であり得る。一実施形態によれば、パラフィン系およびナフテン系の両方の鉱物油ならびにそれらの混合物は、潤滑性油としてまたはグリース媒体として用いることができる。前述の油のいずれかが基剤として使用されるグリースも考えられる。
【0098】
本明細書で提供される潤滑性組成物は、少なくともSAE90または75W-85の粘度を呈し得る。一実施形態によれば、粘度指数は約95~約130である。一実施形態によれば、これらの油の平均分子量は、約250~約800の範囲であり得る。
【0099】
一実施形態によれば、合成油は、本明細書で提供される耐摩耗性化合物、摩擦調整剤化合物、または潤滑剤添加剤濃縮物のためのビヒクルとして使用され得る。一実施形態によれば、鉱物油と合成油との混合物をビヒクルとして使用することができる。典型的な合成油としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリデセン、シロキサン、およびシリコーン(ポリシロキサン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
一実施形態によれば、本明細書で提供される潤滑剤組成物は、主要量の潤滑粘度の基油またはそれから調製されるグリースと、少量の摩擦調整剤および耐摩耗性化合物と、を含む。特定の実施形態では、主要量の基油は、総潤滑性組成物の約50.00重量%~約99.999重量%である。
【0101】
機械部品との併用
本明細書で提供される潤滑剤組成物は、様々な機械部品および構成要素での使用に好適である。
【0102】
追加の添加剤
潤滑剤組成物は、任意に、1つ以上の他の添加剤化合物をさらに含むことができる。本明細書で提供される潤滑剤組成物に使用できる添加剤化合物には、酸化防止剤、追加の耐摩耗性化合物、腐食防止剤、清浄剤、極圧剤、粘度指数向上剤、および追加の摩擦低減剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0103】
一実施形態では、本発明に記載の潤滑剤組成物は、摩擦調整化合物と、酸化防止剤、耐摩耗剤、腐食防止剤、清浄剤、極圧剤、分散剤、粘度指数向上剤、および摩擦調整剤からなる群から選択される少なくとも1種の追加の添加剤組成物と、を含む。
【0104】
酸化防止剤
一実施形態によれば、本明細書で提供される潤滑剤組成物は、酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は、例えば、フェネート、フェネートスルフィド、硫化オレフィン、ホスホ硫化テルペン、硫化エステル、芳香族アミン、アルキル化ジフェニルアミン(例えば、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチルジフェニルアミン)、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、ヒンダード非芳香族アミン、フェノール、ヒンダードフェノール、油溶性モリブデン化合物、高分子酸化防止剤、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。酸化防止剤は、単一の酸化防止剤または2つ以上の酸化防止剤の組み合わせを含むことができる。
【0105】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、立体障害基として、二級ブチル基および/または三級ブチル基を含有してもよい。フェノール基は、ヒドロカルビル基および/または第2の芳香族基に結合する架橋基でさらに置換されていてもよい。ヒンダードフェノール酸化防止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール 4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、または4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノールが挙げられ得る。実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり得、例えば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールとアルキルアクリレートとから誘導された付加生成物を含むことができ、アルキル基は、約1個~約18個、または約2個~約12個、または約2個~約8個、または約2個~約6個、または約4個の炭素原子を含有し得る。
【0106】
酸化防止剤は、ジアリールアミンおよび高分子量フェノールを含むことができる。実施形態では、潤滑剤組成物は、ジアリールアミン酸化防止剤と高分子量フェノール酸化防止剤との混合物を含有し得、その結果、それらの各酸化防止剤は、潤滑剤組成物の最終重量に基づいて、最大約5重量%の酸化防止剤を提供するのに十分な量で存在し得る。実施形態では、酸化防止剤は、本潤滑剤組成物の全重量に基づいて、約0.3~約1.5重量%のジアリールアミンと約0.4~約2.5重量%の高分子量フェノールとの混合物であり得る。
【0107】
硫化オレフィンは、使用される場合、オレフィンから誘導することができ、オレフィンは、硫化されて硫化オレフィンを形成する。オレフィンとしては、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、ポリイソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン、ドデセン、トリデセン、テトラデセン、ペンタデセン、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、またはそれらの混合物が挙げられ得る。特定の実施形態では、オレフィンは、ヘキサデセン、ヘプタデセン、オクタデセン、ノナデセン、エイコセン、それらの混合物、またはそれらの二量体、三量体および四量体のうちの1つ以上を含み得る。別の実施形態では、オレフィンは、1,3-ブタジエンなどのジエンのディールス・アルダー付加物、およびブチルアクリレートなどの不飽和エステルであってもよい。
【0108】
硫化オレフィンは、使用される場合、硫化脂肪酸、そのエステル、またはその両方を含むことができる。脂肪酸は、植物油または動物油から得ることができ、約4~約22個の炭素原子を含有することができる。脂肪酸およびそのエステルは、トリグリセリド、オレイン酸、リノール酸、パルミトレイン酸、またはそれらの混合物を含むことができる。実施形態では、脂肪酸は、ラード油、トール油、ピーナッツ油、大豆油、綿実油、ヒマワリ種子油、またはそれらの混合物から得ることができる。脂肪酸および/またはそのエステルは、α-オレフィンなどのオレフィンと混合することができる。
【0109】
酸化防止剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0%w/w~約20%w/w、または約0.1%w/w~約10%w/w、または約1%w/w~約5%w/wの範囲の各酸化防止剤の重量で存在し得る。
【0110】
清浄剤
一実施形態によれば、本明細書で提供される潤滑剤組成物は、任意に、1つ以上の中性、低塩基性、または過塩基性の清浄剤、およびそれらの混合物を含み得る。好適な清浄剤基質には、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、カリキサレート、サリキサレート、サリチレート、カルボン酸、リン酸、モノ-および/またはジ-チオリン酸、アルキルフェノール、硫黄結合アルキルフェノール化合物、ならびにメチレン架橋フェノールが含まれる。好適な清浄剤およびその調製方法は、米国特許第7,732,390号、およびその中で引用される参考文献を含む、多数の特許公報においてより詳細に記載されている。
【0111】
清浄剤基質は、限定されないが、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、リチウム、バリウム、またはそれらの混合物などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属で塩基化されてもよい。一実施形態によれば、清浄剤は、バリウムを含まない。好適な清浄剤は、石油スルホン酸のアルカリまたはアルカリ土類金属塩、および長鎖モノ-またはジ-アルキルアリールスルホン酸を含むことができ、アリール基は、ベンジル、トリル、およびキシリルのうちの1つである。
【0112】
過塩基性清浄剤添加剤は、当該技術分野において既知であり、アルカリまたはアルカリ土類金属過塩基性清浄剤添加剤であり得る。そのような清浄剤添加剤は、金属酸化物または金属水酸化物を基質および二酸化炭素ガスと反応させることによって調製されてもよい。基質は、典型的には、酸、例えば、脂肪族置換スルホン酸、脂肪族置換カルボン酸、または脂肪族置換フェノールなどの酸である。
【0113】
「過塩基性」という用語は、存在する金属の量が化学量論的量を超える、スルホン酸塩、カルボン酸塩、およびフェネートの金属塩などの金属塩に関する。そのような塩は、100%超の変換レベルを有してもよい(すなわち、これらは、酸をその「標準」「中性」の塩に変換するのに必要な理論的量の金属の100%より多くを含んでもよい)。多くの場合MRと略記される「金属比」という表現は、既知の化学反応性および化学量論性による中性塩中の金属の化学当量に対する過塩基性塩中の金属の総化学当量の比を示すために使用される。正塩または中性塩では、金属比は、1であり、過塩基性塩では、MRは、1より大きい。そのような塩は、一般的には、過塩基性、高塩基性、または超塩基性塩と称され、有機硫黄酸、カルボン酸、またはフェノールの塩であり得る。過塩基性清浄剤は、1.1:1から、または2:1から、または4:1から、または5:1から、または7:1から、または10:1からの金属比を有してもよい。
【0114】
一実施形態によれば、清浄剤は、ギア、車軸、またはエンジンの錆を低減または防止するために使用することができる。清浄剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0%w/w~約10%w/w、または約0.1%w/w~約8%w/w、または約1%w/w~約4%w/w、または約4%w/w超~約8%w/wの範囲の清浄剤の重量で存在し得る。
【0115】
分散剤
一実施形態によれば、本明細書で提供される潤滑剤組成物は、任意に、1つ以上の分散剤またはそれらの混合物を含み得る。分散剤は、潤滑剤組成物への混合前にそれらが灰形成金属を含有せず、潤滑剤への添加時にそれらが通常いかなる灰にも寄与しないため、多くの場合、無灰型分散剤として知られている。無灰型分散剤は、極性基、比較的高分子量の炭化水素鎖、および極性基と炭化水素鎖とをつなぐ結合基によって特徴付けられる。炭化水素鎖は、ポリアルケン、オレフィンコポリマー、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、またはスチレンエステルポリマーなどの高分子量ポリマーから誘導することができる。特定の実施形態では、ポリアルケンは、ポリイソブチレンを含むことができる。特定の実施形態では、オレフィンコポリマーは、エチレンアルファ-オレフィンコポリマーを含むことができる。特定の実施形態では、エチレンアルファ-オレフィンコポリマーは、エチレンおよび1つ以上のC3~10アルファ-オレフィンから誘導されたコポリマーを含むことができる。極性基は、アルコールまたはアミンから誘導することができる。リンクグループは、コハク酸リンクグループを含むことができる。
【0116】
分散剤は、N置換長鎖アルケニルスクシンイミドを含むことができる。N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、約350~約5000、または約500~約3000の範囲の数平均分子量のポリイソブチレン置換基を有するポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。スクシンイミド分散剤およびそれらの調製は、例えば、米国特許第7,897,696号および米国特許第4,234,435号に開示されている。スクシンイミド分散剤は、典型的には、ポリアミン、典型的にはポリ(エチレンアミン)から形成されたイミドである。
【0117】
実施形態では、潤滑剤組成物は、約350~約5000、または約500~約3000の範囲の数平均分子量を有するポリイソブチレンから誘導された少なくとも1つのポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を含む。ポリイソブチレンスクシンイミドは、単独で、または他の分散剤と組み合わせて使用してもよい。
【0118】
実施形態では、ポリイソブチレン(PIB)は、含まれる場合、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、または少なくとも90モル%の末端二重結合の含有量を有することができる。そのようなPIBは、高反応性PIB(「HR-PIB」)とも称される。約800~約5000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBは、本開示の実施形態における使用に好適である。従来の非高反応性PIBは、通常、50mol%以下、40mol%以下、30mol%以下、20mol%以下、または10mol%以下の末端二重結合の含有量を有する。
【0119】
約900~約3000の範囲の数平均分子量を有するHR-PIBが、好適であってもよい。そのようなHR-PIBは、市販されているか、または米国特許第4,152,499号および米国特許第5,739,355号に記載される、三フッ化ホウ素などの非塩素化触媒の存在下でのイソブテンの重合によって合成され得る。前述の熱エン反応に使用される場合、HR-PIBは、増加した反応性のために、反応におけるより高い変換率、およびより少ない量の沈殿物形成をもたらし得る。
【0120】
分散剤は、マンニッヒ塩基を含むことができる。マンニッヒ塩基は、より高分子量のアルキル置換フェノール、ポリアルキレンポリアミン、およびホルムアルデヒドのようなアルデヒドの縮合によって形成される物質である。マンニッヒ塩基は、米国特許第3,634,515号により詳細に記載されている。
【0121】
分散剤は、高分子量エステルまたはハーフエステルアミドを含むことができる。分散剤は、薬剤との反応によって後処理することができる。薬剤としては、ホウ素、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換コハク酸無水物、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、炭酸塩、環状炭酸塩、ヒンダードフェノールエステル、またはリン化合物、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。米国特許第7,645,726号、米国特許第7,214,649号、および米国特許第8,048,831号は、いくつかの好適な後処理方法および後処理された製品を記載している。
【0122】
存在する場合、分散剤は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、最大約20%w/wを提供するのに十分な量で使用され得る。使用できる分散剤の量は、潤滑性組成物の総重量に基づいて、約0.1%w/w~約15%w/w、または約0.1%w/w~約10%w/w、または約3%w/w~約10%w/w、または約1%w/w~約6%w/w、または約7%w/w~約12%w/wであり得る。実施形態では、潤滑剤組成物は、混合分散剤系を利用する。
【0123】
極圧剤
一実施形態によれば、本明細書で提供される潤滑性組成物は、任意に、1つ以上の極圧剤を含み得る。油に可溶性である極圧(EP)剤は、硫黄およびクロロ硫黄含有EP剤、塩素化炭化水素EP剤、ならびにリンEP剤を含む。そのようなEP剤の例としては、塩素化ワックス;ジベンジルジスルフィド、ビス(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化テルペン、および硫化ディールス・アルダー付加物等の有機硫化物およびポリ硫化物;硫化リンとターペンティンまたはオレイン酸メチルとの反応生成物などのリン硫化炭化水素;ジヒドロカルビルおよびトリヒドロカルビルホスファイトなどのリンエステル、例えば、ジブチルホスファイト、ジヘプチルホスファイト、ジシクロヘキシルホスファイト、ペンチルフェニルホスファイト;ジペンチルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジステアリルホスファイト、およびポリプロピレン置換フェニルホスファイト;ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびヘプチルフェノール二酸バリウムなどの金属チオカルバメート;例えば、ジアルキルジチオリン酸とプロピレンオキシドの反応生成物のアミン塩を含む、アルキルおよびジアルキルリン酸のアミン塩;ならびにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
追加の摩擦調整剤
一実施形態によれば、本明細書で提供される潤滑剤組成物は、任意に、1つ以上の追加の摩擦調整剤化合物を含み得る。好適な摩擦調整剤としては、金属含有および金属非含有摩擦調整剤が挙げられ、イミダゾリン、アミド、アミン、スクシンイミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホン酸、金属含有化合物、グリセロールエステル、硫化脂肪化合物およびオレフィン、ヒマワリ油および他の天然由来植物油または動物油、ジカルボン酸エステル、ポリオールと1種類以上の脂肪族もしくは芳香族カルボン酸のエステルまたは部分エステルなどを挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
好適な摩擦調整剤は、直鎖状、分岐鎖状、もしくは芳香族ヒドロカルビル基、またはそれらの混合物から選択されるヒドロカルビル基を含有してもよく、かつ飽和であっても不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素および水素または硫黄もしくは酸素などのヘテロ原子で構成されてもよい。ヒドロカルビル基は、約12~約25個の炭素原子の範囲であり得る。一実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであり得る。実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノ-エステル、またはジ-エステル、または(トリ)グリセリドであり得る。摩擦調整剤は、長鎖脂肪アミド、長鎖脂肪エステル、長鎖脂肪エポキシド誘導体、または長鎖イミダゾリンであり得る。
【0126】
他の好適な摩擦調整剤には、有機、無灰(金属を含まない)、窒素を含まない有機摩擦調整剤が含まれてもよい。そのような摩擦調整剤には、カルボン酸および無水物をアルカノールと反応させることによって形成されるエステルを含んでもよく、一般に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。有機無灰窒素非含有摩擦調整剤の例は、一般に、オレイン酸のモノ-、ジ-およびトリ-エステルを含み得るモノオレイン酸グリセロール(GMO)として知られている。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号に記載されている。
【0127】
アミン性摩擦調整剤は、アミンまたはポリアミンを含んでもよい。そのような化合物は、直鎖、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有することができ、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。好適な摩擦調整剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。そのような化合物は、直鎖、飽和もしくは不飽和のいずれか、またはそれらの混合物であるヒドロカルビル基を有してもよく、約12~約25個の炭素原子を含有してもよい。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。アミンおよびアミドは、それ自体として、または酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタボレート、ホウ酸またはモノ-、ジ-、もしくはトリ-アルキルボレートなどのホウ素化合物との付加物もしくは反応生成物の形態で使用してもよい。他の好適な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号に記載されている。
【0128】
追加の摩擦調整剤化合物は、潤滑剤組成物の総重量に基づいて、約0%w/w~約10%w/w、または約0.01%w/w~約8%w/w、または約0.1%w/w~約4%w/wの量で存在し得る。
【0129】
粘度指数向上剤
一実施形態によれば、本明細書で提供される潤滑性組成物は、1つ以上の粘度指数向上剤を含み得る。好適な粘度指数向上剤には、ポリオレフィン、オレフィンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン-イソプレンポリマー、スチレン/マレイン酸エステルコポリマー、水素化スチレン/ブタジエンコポリマー、水素化イソプレンポリマー、アルファ-オレフィン無水マレイン酸コポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、またはそれらの混合物が含まれてもよい。粘度指数改善剤は星型ポリマーを含んでもよく、好適な例は、米国特許公開第2012/0101017A1号に記載されている。
【0130】
本明細書の潤滑剤組成物はまた、任意に、粘度指数改善剤に加えて、または粘度指数改善剤の代わりに、1つ以上の分散剤粘度指数改善剤を含有してもよい。好適な分散剤粘度指数改善剤としては、官能基化ポリオレフィン、例えば、アシル化剤(無水マレイン酸など)とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、またはアミンと反応したエステル化無水マレイン酸-スチレンコポリマーが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0131】
粘度指数向上剤および/または分散剤粘度指数向上剤の総量は、潤滑性組成物の総重量に基づいて、約0%w/w~約20%w/w、約0.1%w/w~約15%w/w、約0.1%w/w~約12%w/w、または約0.5%w/w~約10%w/wであり得る。
【0132】
効果量
特定の配合物についての様々な添加剤成分の有効量は容易に確かめることができるが、説明の目的のために代表的な有効量についてのこれらの一般的な指針を提供する。下記の例示的な量は、完成した流体の重量パーセントで示される。
【表2】
【0133】
用途
本明細書で提供される潤滑油組成物および潤滑油添加剤濃縮物は、極圧力、負荷、および温度条件下で動作する自動車スパイラルベベルおよびウォームギア車軸油、高速、低トルク条件と低速、高トルク条件との両方で動作するハイポイドギア油として機能し得る。
【0134】
本明細書で提供される潤滑剤組成物および潤滑剤添加剤濃縮物が使用され得る工業用潤滑用途としては、油圧油、工業用ギア油、滑斜面機油、循環油および蒸気タービン油、重構造ガスタービンおよび航空機ガスタービンの両方用のガスタービン油、ウェイ潤滑剤、ギア油、圧縮機油、ミスト油および工作機械用潤滑剤が挙げられる。乗用車用モーター油、大型ディーゼルエンジン油、船舶用エンジン油、機関車、および高速自動車用ディーゼルエンジンなどのエンジン油もまた企図される。
【0135】
機能性流体はまた、本明細書で提供される潤滑剤組成物および潤滑剤添加剤濃縮物から調製することができる。これらの流体には、手動トランスミッション流体、自動トランスミッション流体、無段トランスミッション流体、パワーステアリング流体およびパワーブレーキ流体などの自動車用流体が含まれる。本明細書で提供される潤滑剤添加剤組成物はまた、自動車用、工業用、および航空用グリースなどのグリース、ならびに自動車シャシ潤滑剤に組み込むことができる。
【0136】
グリースオプション
一実施形態によれば、本明細書で提供される潤滑剤組成物がグリースとして用いられる場合、潤滑剤組成物は一般に、所望の量の増粘剤、およびグリース配合物に含まれる他の添加化合物を考慮した後、全グリース組成物のバランスを取るのに十分な量で使用することができる。カルシウム、またはリチウムステアレートまたはヒドロキシステアレートなどの従来の金属塩または石鹸のいずれかを含むがこれらに限定されない多種多様な材料を増粘剤またはゲル化剤として用いることができ、これらは、得られるグリース組成物に所望の粘度を付与するのに十分な量のグリース形成量で潤滑剤ビヒクル中に分散される。グリース配合物に用いることができる他の増粘剤としては、表面改質粘土およびシリカなどの非石鹸増粘剤、アリール尿素、カルシウム錯体、ならびに類似の材料が挙げられる。一実施形態によれば、特定の環境内で必要な温度で使用した場合、溶融または溶解しないグリース増粘剤が用いられ得るが、他のすべての点で、グリースを形成するための炭化水素流体を増粘またはゲル化するために通常用いられる任意の材料が、使用され得る。
【0137】
潤滑方法
金属表面を潤滑する方法も提供される。一実施形態によれば、本方法は、潤滑剤組成物で表面を潤滑するステップを含む。特定の実施形態によれば、本明細書で提供されるような潤滑剤組成物で金属表面を潤滑することにより、移動するときの金属表面間の摩耗を低減することができる。一実施形態によれば、潤滑される金属表面は、金属機械部品に関連付けることができる。機械部品は、車軸、差動、エンジン、手動トランスミッション、自動トランスミッション、無段トランスミッション、クランクシャフト、クラッチ、油圧装置、工業用ギア、滑り面装置、およびタービンを含むことができる。
【0138】
潤滑剤組成物中の摩擦調整剤成分の溶解度を改善する方法も提供される。本方法は、本明細書で提供される潤滑剤組成物を少なくとも1つのアルキルホスホン酸ジエステル化合物とブレンドするステップを含む。一実施形態によれば、ホスホン酸ジエステル化合物は、式(V)の化合物である:
【化19】
式中、
R
17は、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24ヒドロカルビルであり、式中、ヒドロカルビルはヘテロ原子を含有しない。
R
18は、水素、または最大8個の炭素原子を含有する線状、分岐、もしくは環状である。
【0139】
ドライブライン、工業用、または金属加工デバイスを潤滑する方法が提供されている。一実施形態によれば、この方法は、本明細書で提供されるような潤滑剤組成物でドライブライン、工業用、または金属加工デバイスを潤滑するステップを含む。
【0140】
潤滑性組成物の酸化安定性を高める方法が提供される。本方法は、本明細書で提供されるような有効量の潤滑剤組成物を組成物に添加するステップを含む。
【0141】
機械部品の可動金属表面間の摩耗を低減する方法が提供される。本方法は、本明細書で提供されるような潤滑剤組成物で機械部品を潤滑するステップを含む。一実施形態によれば、機械部品は、工業用ギア、風力タービンギア、車軸、差動装置、エンジン、クランクシャフト、トランスミッション、クラッチ、油圧装置、滑走路装置、およびタービンのうちの1つ以上である。
【0142】
機械部品の可動金属表面間の摩擦を低減する方法が提供される。本方法は、本明細書で提供されるような潤滑剤組成物で機械部品を潤滑するステップを含む。一実施形態によれば、機械部品は、工業用ギア、風力タービンギア、車軸、差動装置、エンジン、クランクシャフト、トランスミッション、クラッチ、油圧装置、滑走路装置、およびタービンのうちの1つ以上である。
【0143】
機械部品の可動金属表面間の摩耗および摩擦の両方を低減する方法が提供される。本方法は、本明細書で提供されるような潤滑剤組成物で機械部品を潤滑することを含む。
【0144】
ギア流体が提供され、本明細書で提供されるような潤滑剤組成物または潤滑剤添加剤濃縮物を含み得る。ギア流体は、自動車用ギア、工業用ギア、固定ギア、後車軸、制限付きスリップディファレンシャル、従来のディファレンシャル、および/もしくは自動および手動トランスミッションを含むがこれらに限定されない、多種多様なギアならびに/またはトランスミッション用途に好適であり得る。本明細書で提供されるような潤滑剤組成物を含み、マルチプレートディファレンシャル、コーンクラッチディファレンシャル、トルセンディファレンシャル、および/またはドッグクラッチディファレンシャルでの使用に好適であり得る添加剤パッケージも提供される。
【0145】
本明細書で提供されるような潤滑剤添加剤濃縮物成分の添加から生じる潤滑剤組成物および任意のギア流体は、経時的な摩擦および摩耗を伴う優れた高温および低温性能を呈する。
【0146】
前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲を説明することを意図しており、限定することを意図していない。他の態様、利点、および修正は特許請求の範囲内にある。本明細書および実施例は、例示のみとして考えられ、本開示の真の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。本発明の特定の実施形態が本明細書で個々に説明されている場合があるが、任意の一実施形態を任意の他の実施形態(複数可)と組み合わせることができ、かつ本開示の範囲によって企図されることを当業者は理解する。
【0147】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考慮および本明細書に開示される実施形態の実施から当業者に明らかとなるであろう。本明細書および特許請求の範囲を通して使用されるとき、「a」および/または「an」は、1つまたは2つ以上を指し得る。他に指示がない限り、本明細書で使用される成分の量、分子量、パーセント、比、反応条件などのような特性を表すすべての数字は、「約」という用語が存在するか否かにかかわらず、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、本明細書に記載される数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。せめて、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数値パラメータは、少なくとも、報告された有効桁の数字を考慮し、通常の丸め技法を適用することによって解釈されるべきである。広範囲の開示を記載する数値範囲およびパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も、それらのそれぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる、所定の誤差を本質的に含有する。
【実施例】
【0148】
実施例1:
摩擦、耐摩耗性、およびマイクロピッチング性能を長期間維持することは、自動車および工業用潤滑剤にとって有益であろう。次の例は、本明細書に記載の摩擦調整剤化合物が、時間の経過とともにこのバランスにどのように寄与したかを示している。
【0149】
摩擦調整剤と組み合わせた耐摩耗性化合物を、グループI基油混合物に組み込んだ。摩擦特性は、9分間、周波数20Hzで、1mmのストロークで、4Nの負荷を使用して、70℃でHFRR(高周波往復リグ)によって測定した。耐摩耗性能は、4Ball wear(60kg/55℃/1800rpmでのASTM D4172)によって測定した。本発明の例では、摩擦調整剤は、ホスホン酸ジブチルオクタデシルであった。比較例では、摩擦調整剤は、ホスホン酸ジメチルオクタデシルであった。耐摩耗性化合物は、両方の例で同じであった。
【0150】
拡張性能をシミュレートするために、これらの各液体を55℃で8週間熟成させ、ベースライン(新しい流体)に対してテストした。以下の表1に示すように、許容可能な摩擦係数(0.1以下)は、各流体のHFRRテストごとに本質的に維持された。しかしながら、ジメチルオクタデシルホスホネート摩擦調整剤を含む比較例は、耐摩耗性能の低下を示した。驚くべきことに、本発明の例のように摩擦調整剤をホスホン酸ジブチルオクタデシルに切り替えた場合、流体は、それ自体のベースライン(新しい)流体と比較して耐摩耗性能を維持することができ、それによって比較例と比較して改善を示した。
【表3】
【0151】
実施例2:
摩擦調整剤化合物のマイクロピッチング性能を説明するために、マイクロピッチングテスト(DIN3990-16、以前はマイクロピッチングFVA54/7として知られていた)を使用して、3つの流体(流体A、流体B、および流体C)をテストした。
【0152】
流体Aは、市販の工業用ギア潤滑剤添加剤を含む工業用ギア油であった。市販の工業用ギア潤滑剤添加剤としては、極圧剤、リンを含有する耐摩耗性化合物(チオリン酸ジブチルアミン塩および2-エチルヘキシル酸ホスフェート)、およびスクシンイミドが挙げられる。
【0153】
流体Bは、ジメチルオクタデシルホスホネートを添加した、同じ市販の工業用ギア潤滑剤添加剤を含有する工業用ギア油であった。
【0154】
流体Cは、本明細書に記載の摩擦調整剤化合物(オクタデシルホスホン酸ジブチル)を添加した、同じ市販の工業用ギア潤滑剤添加剤を含有する工業用ギア油であった。
【0155】
マイクロピッチングテストの結果を、表2、表3、および表4に提示する。プロファイル偏差の変化およびマイクロピッチング算出の変化は、マイクロピッチングテストからのデータに基づいており、Flenderおよびその他の工業用OEMによって次の制限が設定された。
a.耐久フェーズの1回目のLS(「負荷段階」)10実行またはLS8実行ではピッチングはない。
b.2回目のLS10実行は、耐久フェーズで開始していなければならない。
c.ピッチングは、2回目のLS10実行で発生し得る。
d.プロファイル偏差(「PD」)の変化は2ミクロン未満である必要がある。PDの変化は、グレードf
fg耐久性テストを指し、次の式を使用してミクロン単位で算出される。
([耐久性テスト後のf
全fg[μm]]-f
LS8後fg耐久性テスト[μm]])/LS10ステップ耐久性テストの数。
e.マイクロピッチングの変化は5%未満でなければならない。マイクロピッチングの変化は、グレードGFの耐久性テストを指し、次の式を使用してパーセント単位で算出される。
([耐久性テスト後のGF
全[%]]-GF
LS8後耐久性テスト[%]])/LS10ステップ耐久性テストの数
【表4】
【表5】
【表6】
【0156】
3つの流体の各々が[a、b、およびc]を満たし、dおよびeの結果は上記の表2、3、および4にある。3つの流体の各々がFlenderおよび他の工業用OEMによって設定された制限を満たしていたが、表4の結果は、流体Bにオクタデシルホスホン酸ジメチルを導入することと、流体Cにオクタデシルホスホン酸ジブチルを導入することとの両方が、流体Aと比較して、マイクロピッチングテストでの向上した性能を示していることを示している。
【0157】
実施例1の結果と組み合わせて見た実施例2の結果は、オクタデシルホスホン酸ジブチルなどの本明細書に記載の摩擦調整剤化合物を潤滑組成物に導入することは、摩擦性能およびマイクロピッチング性能を維持するか、さもなければ改善するだけではなく、オクタデシルホスホン酸ジメチルなどの同様の摩擦調整剤が摩耗性能を低下させる可能性がある摩耗性能も改善するいという驚くべき結果を示す。
【0158】
本開示はさらに、以下の番号付けされた実施形態に関する。
1.潤滑剤添加剤組成物であって、
a)式(I)の摩擦調整剤化合物であって、
【化20】
式中、
R
1が、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24炭化水素であり、
R
2が、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルであり、
R
3が、水素、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルである、摩擦調整剤化合物と、
b)耐摩耗性化合物と、を含む、潤滑剤添加剤組成物。
【0159】
2.R2およびR3の各々が、独立して、エチル、任意に置換されたフェニル、または線状、分岐もしくは環状C3~C4アルキルである、実施形態1の潤滑剤添加剤組成物。
【0160】
3.R1が、直鎖C16~C19ヒドロカルビルである、実施形態1の潤滑剤添加剤組成物。
【0161】
4.耐摩耗性化合物が、式(II)のリン含有化合物、
【化21】
またはそのトライボロジー的に許容される塩であり、
式中、
各X
1が、独立して、酸素(O)または硫黄(S)であり、
各X
2が、独立して、-OR’’、-OH、-SR’’、-SR’’’C(O)OH、および-SHであり、
R
4が、-OR’’、-OH、またはHであり、
R
5が、-R’’であり、
各R’’が、独立して、C
1~C
18ヒドロカルビル鎖であり、
各R’’’が、独立して、C
1~C
3分岐または直鎖アルキル鎖であり、
nが、1、2、または3であり、
nが1である場合、mは、0であり、
nが2または3である場合、mは、1であり、
Lが、非環状C
1~C
5炭化水素および環状C
3~C
10炭化水素からなる二価基から選択されるリンカーである、実施形態1の潤滑剤添加剤組成物。
【0162】
5.耐摩耗性化合物が式(III)の化合物、
【化22】
またはそのトライボロジー的に許容される塩であり、
式中、
Aが、
【化23】
であり、
各R
9が、同一または異なり、かつアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルから独立して選択され、該アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから各々独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
R
10およびR
11が各々、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから独立して選択され、
Yが、アルキル、アルコキシアルキル、ベンジル、および-R
12-R
13-R
14からなる群から選択され、
R
12が、アルキレンであり、
R
13が、結合、アルキレン、-C(O)-、および-C(R
7)-からなる群から選択され、
R
14が、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルキレンオキシ、ヒドロキシ、およびアルコキシからなる群から選択され、
R
15が、ヒドロキシであり、
mが、2~8の整数であり、
X
1が、R
16またはZであり、
X
2が、R
8、
【化24】
からなる群から選択され、
R
16が、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、およびアラルキルであり、アリールおよびアラルキルが、アルキルおよびアルケニルから各々独立して選択される1~3個の置換基で任意に置換され、
Zが、
【化25】
であり、
式中、X
3がR
16である場合、X
4は、Zである、実施形態1の潤滑剤添加剤組成物。
【0163】
6.耐摩耗性化合物が、ホスファイト、ホスフェート、チオホスフェート、およびジチオホスフェートからなる群から選択される無灰リン含有化合物である、実施形態1の潤滑剤添加剤組成物。
【0164】
7.無灰リン含有化合物が、少なくとも1つのリン中心を含む、実施形態6の潤滑剤添加剤組成物。
【0165】
8.
摩擦調整剤が、オクタデシルホスホン酸ジエチル、オクタデシルホスホン酸ジプロピル、オクタデシルホスホン酸ジブチル、オクタデシルホスホン酸ジイソプロピル、およびオクタデシルホスホン酸ジフェニルからなる群から選択される化合物であり、
耐摩耗性化合物が、リン含有化合物である、実施形態1の潤滑剤添加剤組成物。
【0166】
9.
摩擦調整剤が、オクタデシルホスホン酸ジブチルであり、
耐摩耗性化合物が、リン含有化合物である、実施形態1の潤滑剤添加剤組成物。
【0167】
10.溶解性向上剤をさらに含む、実施形態1の潤滑剤添加剤組成物。
【0168】
11.潤滑剤組成物であって、
a)基油またはそれから調製されるグリース、および
b)少量の実施形態1に記載の潤滑剤添加剤組成物を含み、
基油が、主要量の組成物である、潤滑剤組成物。
【0169】
12.機械部品の可動金属表面を潤滑する方法であって、請求項11に記載の潤滑剤組成物で表面を潤滑することを含む、方法。
【0170】
13.機械部品が、工業用ギア、風力タービンギア、車軸、差動装置、エンジン、クランクシャフト、トランスミッション、クラッチ、油圧装置、滑走路装置、およびタービンのうちの1つ以上から選択される、請求項12に記載の方法。
【0171】
14.ASTM D4172に従って試験されたときに、耐摩耗性能が、ベースラインの新しい潤滑剤組成物と比較して、熟成した潤滑剤組成物内に維持される、請求項12に記載の方法。
【0172】
15.式(I)の摩擦調整剤化合物以外の摩擦調整剤化合物を含む潤滑剤組成物と比較して、耐摩耗性能が改善され、
【化26】
式中、
R
1が、直鎖、分岐、飽和、または不飽和C
6~C
24炭化水素であり、
R
2が、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルであり、
R
3が、水素、任意に置換されたC
2~C
8ヒドロカルビル、任意に置換されたフェニル、または任意に置換されたエチルである、請求項12に記載の方法。
【0173】
本開示の添加剤および潤滑剤は、その詳細な説明および本明細書の要約とともに記載されているが、上記の記載は例示を意図しており、添付の特許請求の範囲によって規定される本開示の範囲を限定するものではないことが理解されるべきである。他の態様、利点、および修正は特許請求の範囲内にある。本明細書および実施例は、例示のみとして考えられ、本開示の真の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示されることが意図される。