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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】コート紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240717BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240717BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240717BHJP
   D21H 19/20 20060101ALI20240717BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20240717BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B27/30 102
B32B29/00
D21H19/20 B
D21H19/82
B65D65/42
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022549690
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021078468
(87)【国際公開番号】W WO2022079178
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】102020127373.8
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522327876
【氏名又は名称】コーラー イノベーション アンド テクノロジー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェール,アルヨシャ
(72)【発明者】
【氏名】ユリッシュ,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】キント,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュルテ,マリウス
(72)【発明者】
【氏名】セラー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フォークト,アンドリュー
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021200(JP,A)
【文献】国際公開第2013/069788(WO,A1)
【文献】特開2009-249575(JP,A)
【文献】特開2001-294832(JP,A)
【文献】特開2020-015990(JP,A)
【文献】特開2010-037387(JP,A)
【文献】特開2019-014957(JP,A)
【文献】KUMAKI, Yosuke et al.,Enhanced Polyvinyl Alcohol as a Barrier Paper Coating for Food Packaging,TAPPI PaperCon 2014 Conference Proceedings,2014年,p.2399-2410
【文献】株式会社クラレ 「クラレポバール」カタログ,2019年09月,https://www.kuraray-poval.com/fileadmin/technical_information/brochures/poval/japanese/kuraray_poval_catalog.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
D21B1/00-D21J7/00
B65D65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙及び前記原紙に塗布されたバリア層を含むコート紙であって、前記バリア層が少なくとも1つのポリマーを含み、前記ポリマーが、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーを含み、そのそれぞれがDSCによって求めた210℃未満の開始温度を有し、開始温度が、融解又は結晶化ピークの開始時の外挿されたベースラインと変曲接線との交点として、DIN EN ISO 11357-1:2010-03によるDSCによって定義され、
少なくとも1つの無機顔料及びポリマーバインダを含むプレコートが、前記原紙表面に塗布され、前記原紙と前記バリア層との間に存在する、
ことを特徴とする、コート紙。
【請求項2】
前記無機顔料が小板の形態であり、ルク、沈降炭酸カルシウム又はケイ酸塩を含むこと、及び/又は前記ポリマーバインダがポリアクリレートを主成分とするポリマーバインダを含むことを特徴とする、請求項1に記載のコート紙。
【請求項3】
前記少なくとも1つのポリマーが、30%~95%の鹸化度、0超~100,000g/mol未満の平均分子量、及びDSCによって求めた200℃未満の開始温度を有する、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコート紙。
【請求項4】
前記少なくとも1つのポリマーが、95%超~100%の鹸化度、70,000g/mol超の平均分子量、DSCによって求めた200℃未満の開始温度を有する、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコート紙。
【請求項5】
前記少なくとも1つのポリマーが、5%~100%の鹸化度、60,000g/mol超の平均分子量、及びDSCによって求めた210℃未満の開始温度を有する、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーあることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のコート紙。
【請求項6】
前記少なくとも1つのポリマーが、請求項3に記載のポリビニルアルコール、請求項4に記載のポリビニルアルコール、及び請求項5に記載のポリビニルアルコールコポリマーの混合物を含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のコート紙。
【請求項7】
乾燥含量が4%の前記部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は前記部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが、30mPa・s未満の粘度を有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のコート紙。
【請求項8】
前記バリア層の塗布面密度が、乾燥した最終製品(風乾)に対して5~20g/m であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のコート紙。
【請求項9】
ハロゲン含有化合物を含まないことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のコート紙。
【請求項10】
前記原紙が、20~120g/m の面密度を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のコート紙。
【請求項11】
前記原紙が、10~80重量%の長繊維含量及び20~90重量%の短繊維含量を有し、長繊維が2.6~4.4mmの繊維長を有する繊維であり、短繊維が0.7~2.2mmの繊維長を有する繊維であることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のコート紙。
【請求項12】
金属及び/又は金属酸化物を含むさらなる層が、前記バリア層に塗布されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のコート紙。
【請求項13】
前記バリア層の出発材料を含む水性懸濁液が、前記原紙に塗布され、前記水性懸濁液が5~50重量%の固形分を有し、カーテンコーティングプロセスによって、少なくとも200m/分のコーティング設備の動作速度にて塗布されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載のコート紙の製造方法。
【請求項14】
包装材料としての、又は包装材料の構成要素としての、請求項1~11のいずれか一項に記載のコート紙の使用。
【請求項15】
請求項1~11のいずれか一項に記載のコート紙を含む包装であって、コールドシール包装、又はヒートシール包装である、包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コート紙、そのようなコート紙の製造方法、包装材料としてのコート紙の使用、及びコート紙を含む包装に関する。
【背景技術】
【0002】
「包装」という用語は、一般に、特に物体を保護する又はより良好に取り扱うための、物体の被覆又は(部分的若しくは完全な)包装を指す。結果として、包装材料は、そのような包装を形成する材料を含む。
【0003】
包装材料は、例えば紙、プラスチック及び/又は金属を基材とすることができる。本発明は、紙を基材とする包装材料に関する。
【0004】
あらゆる起源の包装材料の主な要件は、包装された製品を外部の影響から保護し、包装された製品の漏出を防止することである。この目的のために、包装材料は、包装された製品及び包装プロセスに応じて異なる基準を満たすべきである。例えば、水、グリース、酸素又は鉱油に対するいわゆるバリア特性に加えて、好適な包装材料は、機械的及びプロセス固有の要件も満たすべきである。包装システムに応じて、包装材料は、十分な引裂抵抗、好適な摩擦値(摩擦係数)及び可撓性を有するべきであり、ヒートシール性又はコールドシール接着剤と適合性であるべきであり、外側から印刷可能であるべきであり、変換及び包装プロセス全体の間に保護効果を消失すべきではない。
【0005】
紙は、その組成及び面密度に応じて、多くの機械的要件を満たすことができるが、その物性並びにその多孔質構造のために、例えばヒートシール性又はバリアを与える追加のコーティングが必要である。
【0006】
既知の紙系コート包装材料は、(ハロゲンを含有する)ポリ塩化ビニリデンなどの化合物を含有することが多く、又は紙と金属箔又はプラスチックフィルムとの複合体であり、包装機器での走行問題につながるおそれのある、引裂強度に対する改善を要し、及び/又は高すぎるコーティング含有量、接着剤成分、又は紙繊維流を介したいわゆる粘着異物の形成のために再利用できないことが多い。
【0007】
ポリビニルアルコールは、紙用を含む、直鎖水溶性生分解性バリアコーティングとして広く既知である。ここでそのようなコーティングは、油、グリース、酸素、溶媒及び他の非極性ガス、液体又は固体に対して良好なバリアを示す。しかしポリビニルアルコールは、その親水性のために、水などの極性化合物に対して非常に高い透過性を有する。ポリビニルアルコールは、水分吸収し、膨潤、ゆえにバリアコーティングを通じた分子レベルでの経路の生成に非常に優れているため、このことは非極性移動に対するバリア効果に影響を及ぼし得る。
【0008】
例えば、国際公開第2010/129032号に開示されているような顔料の添加により、又は例えば国際公開第2020/109401号若しくは米国特許第6,444,750号に開示されているポリマー鎖の架橋により、50又は60%を超える相対湿度におけるバリア劣化を実現するために多くの試みがなされてきた。しかし、これらの微視的な欠陥が、バリアとしてのポリビニルアルコールの使用にとって不利であるだけでなく、とりわけ包装及び変換システムにおける機械的応力に起因する巨視的欠陥の発生も、ポリビニルアルコールの使用範囲を狭めている。
【0009】
ポリビニルアルコールは、完全に鹸化されたポリ酢酸ビニルを意味すると理解され、これは通常、酢酸ビニルのフリーラジカル重合によって合成される、以下の式(I)の(熱可塑性)プラスチック材料である。
【0010】
【化1】
【0011】
ポリ酢酸ビニル中のエステル基は、比較的容易にアルカリ鹸化することができ、アルカリ鹸化によってポリマーがポリビニルアルコールに変換され、親水性及び水感受性となる。
【0012】
部分的に鹸化されたポリ酢酸ビニルは、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールとも呼ばれる。
【0013】
本発明において、「部分的に鹸化されたポリ酢酸ビニル」という用語は、「部分的に鹸化されたポリビニルアルコール」という用語と同義に使用され得る。
【0014】
この場合の鹸化度は、鹸化されて-OH基として現存するエステル基の割合を示す。例えば、鹸化度90%のポリビニルアルコールは、元々存在していたエステル基の90%が鹸化された酢酸ビニルポリマーである。したがって、このポリビニルアルコールには、90%のOH基及び10%のエステル基が存在する。鹸化度が100%では、元々存在していたエステル基がすべて鹸化されているため、OH基のみが存在する。
【0015】
純粋なホモポリマーに加えて、ポリビニルアルコールの多くのコポリマーも技術的に非常に重要である。コポリマーは、合成に使用されるモノマー数が異なるにもかかわらず、最大の割合(50%超)を占めるビニルアルコール単位又は酢酸ビニル単位からなるすべてのポリマーを意味すると理解される。
【0016】
このようなポリビニルアルコールコポリマーは、好ましくはポリエチレンビニルアルコールを含む。
【0017】
より狭義には、ここでの鹸化は、水酸化ナトリウムなどの水酸化物の水溶液による、又は特殊な酵素(エステラーゼ)によるエステルの加水分解を意味する。酸エステル加水分解(エステル化の逆反応)とは対照的に、エステル化に必要なプロトンがカルボン酸には欠けているため、これらは不可逆的である。生成された反応生成物は、エステルが構成していたアルコール及び酸の塩(カルボキシル化)である。より広い意味で、エステルのいずれの加水分解も、鹸化と呼ぶことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】国際公開第2010/129032号パンフレット
【文献】国際公開第2020/109401号パンフレット
【文献】米国特許第6,444,750号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、既知の材料の欠点を克服し、包装材料、特に酸化感受性で脂肪分の多い食品向けの包装材料として好適であり、ヒートシール又はコールドシールプロセスによるチューブ状バッグなどの包装の製造に使用することができる、材料を提供することである。さらに、材料は、ハロゲン含有化合物を主成分とするバリア層を含有するものではない。さらに、本発明による材料は、既知の包装材料と比較して、以下の特性の1つ以上を有するものとする。
【0020】
改善された酸素バリア、改善されたグリースバリア、改善された鉱油バリア、改善されたしわ耐性/可撓性、古紙サイクルによる再利用性、改善されたヒートシール特性、
【0021】
改善されたコールドシール特性(水系コールドシール接着剤などのシール媒体との適合性)、高い引裂き耐性、包装された内容物の味が変化しない、アロマシールを有する、外側は印刷可能であるべきである。材料はまた、改善された水蒸気バリアを有するべきであり、シーリングシームは、可能な限り水分に耐性があるべきである。包装材料は、必要に応じてバリア特性をさらに最適化するために、特にマイクロメートル及びナノメートル範囲の金属被覆にも好適であるべきである。最後に、材料は、可能な限り経済的に製造できるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、請求項1に記載のコート紙、即ち、原紙及び原紙に塗布されたバリア層を含むコート紙であって、バリア層が少なくとも1つのポリマーを含み、ポリマーが、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーを含み、そのそれぞれがDSCによって求めた210℃未満の開始温度を有することを特徴とする、コート紙によって対処される。
【0023】
開始温度は、DSCによって以下のように求めた:
【0024】
(DIN EN ISO 11357-1:2010-03による)(外挿された)開始温度は、DSC測定における融解又は結晶化ピークの開始時の外挿されたベースラインと変曲接線との交点である。ベースライン及び変曲接線は、温度依存性熱流信号から求められる。純粋で均質な材料の場合、初期温度は融解温度として規定することができる。ピーク温度とは対照的に、開始温度は加熱速度及びサンプル質量にあまり依存しない。さらに開始温度は、DSCの温度較正によく使用される。
【0025】
このようにしてコーティングされた紙は、特に酸化感受性で脂肪分の多い物体、特に食品の包装材料として特に好適であり、ヒート又はコールドシーリングによってバッグを製造するために使用することができ、コールドシーリングプロセスに水系コールドシール接着剤を使用することが可能であるという点で特に特徴付けられている。さらに、ハロゲン含有化合物を主成分とするバリア層が存在する必要はない。
【0026】
部分的に鹸化されたポリビニルアルコールは、完全に鹸化されたポリビニルアルコール(PVOH)又はポリエチレンビニルアルコール(EVOH)よりも、ヒートシールプロセスにおいて最適シール温度がはるかに低いという利点を有する。シーリングシーム強度は、これによって悪影響を受けない。さらに、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールは、わずかに低い粘度を有し、さもなければ同じ濃度である。この場合、PVOH溶液をより高度に希釈する必要があり、したがってコーティングプロセスにおいてより大量の水を乾燥しなければならないため、高い粘度はむしろ不利である。これはエネルギーの点からコストがかかり、ゆえにより高い乾燥能力を有するコーティング設備を必要とするだけでなく、所望のコーティング重量に応じて、塗布技術の観点から実現も困難であり得る。さらに、高粘度での水分子の拡散、ゆえに乾燥プロセス自体が遅くなる。さらに、コーティング中の気体状の水の蓄積がより起こりやすく、巨視的なコーティング欠陥の形成につながるおそれがある。
【0027】
したがって、部分的に鹸化されたポリビニルアルコール又は部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマー、例えばポリエチレンビニルアルコールは、完全に鹸化された別形よりも好ましい。
【0028】
本発明によるコート紙はまた、改善された酸素バリア、改善されたグリースバリア、改善された鉱油バリア及び改善された水蒸気バリアによって特徴付けられる。
【0029】
本発明によるコート紙は、バリア効果を損なうことなく、改善された折り目耐性も有し、高い引裂強度によっても特徴付けられる。
【0030】
本発明によるコート紙は、古紙サイクルによって再利用することもできる。
【0031】
本発明によるコート紙が食品用包装材料として使用される場合、特に、包装された食品の味に影響しない、及び/又は味を変化させないという点で特徴付けられている。
【0032】
本発明によるコート紙は、さらにヒートシール性であり、コールドシール特性(水系コールドシール接着剤などのシーリング媒体と適合する)の改善を示し、シーリングシームはそれぞれ十分な耐湿性を有する。
【0033】
本発明によるコート紙は、非コート側(外側)にも印刷しやすい。
【0034】
本発明によるコート紙は、必要に応じてバリア特性をさらに最適化するために、マイクロメートル及びナノメートル範囲での金属被覆にも好適である。
【0035】
最後に、本発明によるコート紙は、比較的容易に低コーティング重量で製造することができ、古紙サイクルによって再利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下において、用語「含む(comprise)」は「からなる(consisting of)」も意味し得る。
【0037】
「疎水性」という用語は、水と混合することができない、又は界面活性剤の使用によってのみ水で湿潤させることができる物質を指す。「親水性」という用語は、水と混合することができる、又は界面活性剤を使用せずに水で湿潤させることができる物質を指す。疎水性ポリマーは非極性ポリマーとも呼ばれ、親水性ポリマーは極性ポリマーとも呼ばれる。
【0038】
疎水性又は親水性は、例えばlog P値によって定義することができる。n-オクタノール/水分配係数Kow(オクタノール/水分配係数などの表記も一般的で正確である)は、当業者に既知の無次元分配係数であり、n-オクタノールと水で形成された二相系における化学物質の濃度の比を示し、ゆえに物質の疎水性又は親水性の尺度である。log P値は、n-オクタノール-水分配係数Kowの10進対数である。ここで以下が当てはまる:
【0039】
【数1】
【0040】
式中、co Si=オクタノールが豊富な相中の化学物質の濃度、及び
【0041】
w Si=水が豊富な相中の化学物質の濃度。
【0042】
owは、物質がn-オクタノールなどの脂肪様溶媒により可溶性である場合、1超であり、水により可溶性である場合、1未満である。したがって、log Pは、疎水性/親油性物質について正であり、親水性/親油性物質については負である。
【0043】
酸素、鉱油、脂肪及び他の非極性移動体に対するポリビニルアルコールの透過性が低いのは、それらの親水性が比較的高いことに起因する。
【0044】
さらに、(鹸化)ポリエチレンビニルアルコールなどのエチレン含有ポリマーは、水蒸気透過性がより低く、これはエチレン含有量及び関連するより低い親水性に起因し得る。
【0045】
本発明によるコート紙に使用される原紙は、原則として限定されない。
【0046】
しかし、原紙は、20~120g/m2、好ましくは40~100g/m2の面密度を有することが好ましい。
【0047】
紙は、10~80重量%、好ましくは20~50重量%の長繊維含量、及び20~90重量%、好ましくは50~80重量%の短繊維含量を有する組成物を有することがさらに好ましい。
【0048】
長繊維は、2.6~4.4mmの繊維長を有する繊維を意味すると理解され、短繊維は、0.7~2.2mmの繊維長を有する繊維を意味すると理解される。
【0049】
さらに、例えば商品名Hydrocarb 60又はHydroplex 60で既知のGCC(粉砕炭酸カルシウム)、例えば商品名Precarb 105で既知のPCC(沈降炭酸カルシウム)、天然カオリン及び/又はタルク、値0%が好ましくは除外される、0%~20%、好ましくは0%~5%の充填剤、並びに保持剤及び/又はサイズ剤などの通常の助剤などを含有することができる。
【0050】
このような原紙の利点は、一方では、その高い可撓性であり、他方では、プラスチック材料フィルムなどの可撓性材料向けの既存の包装機におけるその良好な加工性、高い機械可用性の維持、及び必要な耐穿刺性の実現である。
【0051】
一般的な包装機は、例えばスタンドアップパウチ、フローパック、ピローパックなどを製造するための縦型及び横型フォームフィルシール機、同じ又は異なる材料の2つのウェブを合わせて、それらをヒートシールによって接合する機械、例えばトレイシーラー、チャンバーベルト装置(真空も用いる)、バッグ充填シール機、熱成形包装機、ヒートシールによって蓋を貼り付けて包装を密封する線形充填機、最終ヒートシールステップを備えた包装機、ブリスター包装機、及びX折りたたみ包装機である。
【0052】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも1つの無機顔料及びポリマー結合剤を含むプレコートが、原紙とバリア層との間に存在することを特徴とする。
【0053】
無機顔料は、好ましくは薄片の形態であり、特にタルク、沈降炭酸カルシウム又はケイ酸塩、好ましくはフィロケイ酸塩、非常に特に好ましくはカオリンを含む。
【0054】
好適なポリマーバインダとしては、特に、アクリレート系又はスチレン/ブタジエン系バインダが挙げられる。原則として、製紙業界で顔料コーティング用のバインダとして使用することができるすべてのポリマーが好適である。デンプン系バインダ(変性デンプンの溶液、架橋デンプンの分散液、いわゆるバイオラテックス)及びポリマー-デンプンハイブリッドラテックスも考えられる。
【0055】
ポリマーバインダは、好ましくはポリアクリレート系ポリマーバインダを含む。
【0056】
プレコートは、全体として疎水性プレコートであり得る。
【0057】
別の実施形態では、プレコートは全体として親水性である。
【0058】
プレコートは、好ましくは1~70重量%、好ましくは5~50重量%のポリマーバインダを含有する。この量は、最終生成物中の乾燥プレコートに関する。
【0059】
プレコートは、50~95重量%、好ましくは80~90重量%の無機顔料を含むことがさらに好ましい。この量は、最終生成物中の乾燥プレコートに関する。
【0060】
さらに、プレコートは、増粘剤、例えばアクリレート系増粘剤、界面活性剤、及び/又はレオロジー調整剤などの添加剤を含有し得る。架橋剤の使用も考えられる。好ましくは、プレコートはジルコニウム系架橋剤を含有し、それ自体ホルムアルデヒドで架橋されている。
【0061】
これらの添加剤はそれぞれ、好ましくは0~2重量%、好ましくは0超~2重量%の量で存在し、値0%は好ましくは除外される。この量は、最終生成物中の乾燥プレコートに関する。
【0062】
プレコートの塗布量は、1~10g/m2が好ましく、2~6g/m2が特に好ましい。この量は、最終生成物中の乾燥プレコートに関する。
【0063】
そのようなプレコート(プライマとも呼ばれる)が塗布される場合、これは例えば、紙表面がシールされ、その上にコーティングされたさらなるバリア層が紙の中にわずかにしか移行せず、ゆえに十分な層間密着力生じるという利点を有する。さらに、このプレコートは、原紙の平均粗さ深度を低減し、表面全体を被覆する用途及び定義された表面エネルギーによって特徴付けられる、有利な「ホールドアウト」を与えるので、塗布されたバリア層を最適に形成することができる。さらに、プレコートは、その後のシーリング用途にとって重要であり得る、原紙とバリア層との間の層間密着力を媒介する。
【0064】
プレコートに塗布されるバリア層は、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーを含む。加工プロセスに使用される配合物は、好ましくは10~100重量%、特に好ましくは50~99.8重量%の量のポリマーを含む。
【0065】
バリア層は、増粘剤、例えばアクリレート系増粘剤、界面活性剤、例えばスルホスクシネート、延伸レオロジー助剤、例えばポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、及び/又は架橋剤、例えばアルデヒド及び多価アルデヒド、ジルコネート、多価エポキシド、エピクロロヒドリン樹脂及び/又はヒドラジドなどの添加剤をさらに含有し得る。
【0066】
これらの添加剤はそれぞれ、バリア層の総重量に対して、好ましくは0.1~1重量%の量で含有される。
【0067】
一実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが100,000g/mol未満の平均分子量を有することを特徴とする。
【0068】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが、30,000g/mol超の、又は40,000g/mol超の、又は50,000g/mol超の、又は60,000g/mol超の、又は70,000g/mol超の平均分子量を有することを特徴とする。
【0069】
一実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが、30%~100%の鹸化度を有することを特徴とする。
【0070】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが、30%~100%未満の鹸化度を有することを特徴とする。
【0071】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが、95%未満又は30%~95%の鹸化度を有することを特徴とする。
【0072】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが、95%~100%の鹸化度を有することを特徴とする。
【0073】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが、95%~100%未満の鹸化度を有することを特徴とする。
【0074】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコール及び/又は少なくとも部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーが、DSCによって求めた200℃未満の開始温度を有することを特徴とする。
【0075】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも1つのポリマーが、95%未満又は30%~95%の鹸化度、0超~100,000g/mol未満の平均分子量、及びDSCによって求めた200℃未満の開始温度を有する、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールを含むことを特徴とする。
【0076】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも1つのポリマーが、95%~100%の鹸化度、70,000g/mol超の平均分子量、及びDSCによって求めた200℃未満の開始温度を有する、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールを含むことを特徴とする。
【0077】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、少なくとも1つのポリマーが、95%~100%の鹸化度、60,000g/mol超の平均分子量、及びDSCによって求めた210℃未満の開始温度を有する、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマー、好ましくは部分的に鹸化されたポリエチレンビニルアルコールであることを特徴とする。
【0078】
ポリエチレンビニルアルコールなどの部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマーは、通常、ポリビニルアルコールよりも可撓性であることが示されている。
【0079】
別の実施形態において、本発明によるコート紙は、好ましくは、少なくとも1つのポリマーが、1%~95%の鹸化度、0超~100,000g/mol未満の平均分子量、及びDSCによって求めた200℃未満の開始温度を有する、部分的に鹸化されたポリビニルアルコール、95%~100%の鹸化度、70,000g/mol超の平均分子量、及び200℃未満の開始温度を有する部分的に鹸化されたポリビニルアルコール、並びに/又は95%~100%の鹸化度、60,000g/mol超の平均分子量、及びDSCによって求めた210℃未満の開始温度を有する、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールコポリマー、好ましくは部分的に鹸化されたポリエチレンビニルアルコールの混合物であることを特徴とする。
【0080】
鹸化度は、以下のようにDIN EN ISO 3681に従って求めた。
【0081】
PVOH(1g)を蒸留水(70mL)及び中和エタノール(30mL)と混合し、完全に溶解するまで還流下で加熱する。冷却後、溶液を苛性カリ溶液(0.1M)で中和する。部分鹸化PVOHタイプの場合、苛性カリ溶液(50mL、0.1M)をさらに添加して、還流下で加熱する(60分)。完全に鹸化されたPVOHタイプの場合、より少ない量の苛性カリ溶液(25mL、0.1M)をさらに使用して、過剰カリ下での二酸化炭素の吸収を防止し、還流時間(30分)も短縮する。続いて、フェノールフタレインを指示薬として過剰カリを塩酸(0.1M)で逆滴定する。盲検試験を並行して行う。
【0082】
鹸化度(%)は、式1:
【0083】
【数2】
【0084】
に従って計算することができ、エステル数は、式2:
【0085】
【数3】
【0086】
に従って求める。
【0087】
平均分子量は、以下の条件下でサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)によって求めた:
【0088】
溶離液:DMSO/+0.1M LiCl;プレカラム:10μm、Guard、内径 8.00mm×50.00mm;カラム:10μm、30Å、内径 8.00mm×300.00mm;10μm、3000Å、内径8.00mm×300.00mm;10μm、3000Å、内径8.00mm×300.00mm;ポンプ:1260 HPLCポンプ;流量:1.0mL/分;インジェクタ:1260オートサンプラ;注入量:200μL;試料濃度:5.0g/L;温度:80℃;検出器:SECcurity2屈折率検出器(RI)-WEG eta 1001 HT粘度計;計算:WinGPC UniChromバージョン8.33
【0089】
サンプルを温度80℃で溶媒(5mg/mL)に3時間溶解させて、オートサンプラによって注入した。
【0090】
検量線を求めるために、異なる分子量を有するいくつかのPMMA標準を測定した。固有粘度の測定により、検量線を普遍検量線に変換した。
【0091】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、乾燥含量4%のポリビニルアルコールが30mPa・s未満又は20mPa・s未満、特に好ましくは15mPa・s未満の粘度を有することを特徴とする。
【0092】
粘度は、Brookfield粘度計を100rpmで用いて23℃にて求める。
【0093】
この範囲の粘度は、より高い固形分を塗布に使用することができ、したがって乾燥に使用する必要があるエネルギーがより少ないという利点を有する。さらに、より高いプロセス速度を実現することができる。経済上の利点に加えて、このことはコーティング設備におけるより大きい乾燥ウィンドウの使用にも反映される。
【0094】
本発明によるコート紙は、好ましくは、走行方向に80 N 15mm超、好ましくは90 N 15mm超、紙の走行方向に対して横に40 N 15mm超、好ましくは50 N 15mm超の破断強度を有する。
【0095】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、0.7未満、好ましくは0.6未満、特に好ましくは0.5未満の動摩擦係数を有する。これは、コート側に対するコート側の摩擦(コーティングに対するコーティング)を指す。
【0096】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、バリア層の塗布面密度が、乾燥した最終製品(風乾)に対して5~20g/m2、好ましくは8~12g/m2であることを特徴とする。
【0097】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、バリア層が一般の水系コールドシール接着剤によって湿潤できることを特徴とする。この目的のために、バリアコーティングの表面エネルギーは、40mN/m超、好ましくは50mN/m超、特に好ましくは55mN/m超である。
【0098】
バリア層のこのような湿潤性は、コールドシール接着剤の塗布及び乾燥プロセス中に未コート領域が形成されず、塗布のために十分な接着力も与えられるという利点を有する。
【0099】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、10cm3/m2/d未満、好ましくは5cm3/m2/d未満の酸素透過度(23℃、相対湿度0%)を有することを特徴とする。
【0100】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、10cm3/m2/d未満、好ましくは5cm3/m2/d未満の酸素透過度(23℃、相対湿度50%)を有することを特徴とする。
【0101】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、20cm3/m2/d未満、好ましくは10cm3/m2/d未満の酸素透過度(23℃、相対湿度70%)を有することを特徴とする。
【0102】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、25g/m2/d未満、好ましくは15g/m2/d未満の酸素透過度(23℃、相対湿度80%)を有することを特徴とする。
【0103】
酸素透過度(又は酸素透過速度-OTR)は、ISO 15105-2に従って求められる。
【0104】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、DIN 53116による試験条件Iに対応するグリースバリアを有することを特徴とする。
【0105】
本発明によるコート紙は、好ましくは、得られた折り目に330g/cmの荷重を加え、コーティングが内側(内側折り目)又は外側(外側折り目)であり得るローラーによる、180°折り目の機械的応力によって、このグリースバリアも失わない。
【0106】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、コート紙が10g/m2/d未満の鉱油バリア(ヘキサン)を有することを特徴とする。
【0107】
鉱油バリアは、ヘキサンをビーカー(耐溶媒性)に注ぎ、コート紙で密封し、経時的な重量減少を追うことによって求められる。
【0108】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、コート紙が水蒸気バリアを有することを特徴とする。これは、すべての水蒸気バリアに当てはまるわけではないが、コーティングがグリースと接触する場合でも維持される。
【0109】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、折り目のない状態、内側折り目、及び外側折り目においても折り目耐性であることを特徴とする。
【0110】
本発明によるコート紙は、古紙サイクルによる再利用性によって特徴付けられる。
【0111】
本発明によるコート紙はヒートシール性であり、最適なシーリング温度にて、好ましくは3.5N/15mm超、特に好ましくは5.0N/15mm超のシーリングシーム強度を与え、コート紙のシーリングシーム強度は以下のように求められている。
【0112】
コート紙を3.3バールで0.3秒間、100℃~230℃の温度範囲にて、紙の走行方向を横にシールして、シーリングシーム強度をDIN 55529(2012)に従って求めた。
【0113】
「ヒートシール」という用語は、好ましくは、局所的な熱の投入及び/又は圧力によってコート紙の2つの層を接合することを意味すると理解される。さらなる実施形態では、紙のコート側は、それ自体はヒートシールできない紙の反対側に、又は別の紙にヒートシールによって接合することもできる。
【0114】
さらに、本発明によるコート紙はまた、一般のコールドシール媒体とのその適合性のために、コールドシール性でもある。コールドシールは、一般に、圧力系プロセスによってシールされる平面包装材料の一部にコールドシール接着剤が塗布されることを意味すると理解される。コールドシール接着剤は、包装機のシールジョー間での圧力上昇の下でのみ接着効果を発現し、さもなければ粘着性がない又は限定されるという特性を有する。
【0115】
ヒートシール紙及びコールドシール紙はどちらも、シーリングシームの高い耐湿性によって特徴付けられている。
【0116】
本発明によるコート紙はまた、引裂耐性もある。
【0117】
本発明によるコート紙は、その中に包装された食品の味が影響されないという点でさらに特徴付けられている。
【0118】
本発明によるコート紙は、ナノメートル範囲で、例えばAl23又はAlで金属被覆することもできる。
【0119】
本発明によるコート紙は、さらに好ましくは、金属、特にアルミニウム、並びに/又は金属酸化物、特に酸化アルミニウム及び/若しくは酸化ケイ素を含むさらなる層がバリア層に塗布されることを特徴とする。
【0120】
本発明によるコート紙は、公知の製造方法を使用して経済的に得ることができる。
【0121】
しかし、本発明によるコート紙は、バリア層の出発材料を含む水性懸濁液が原紙に塗布される方法によって得られることが好ましく、水性塗布懸濁液は、5~50重量%、好ましくは10~30重量%の固形分を有し、カーテンコーティングプロセス、好ましくはダブルカーテンコーティングプロセスによって、少なくとも200m/分のコーティング設備の運転速度にて塗布される。
【0122】
この方法は、経済的観点及び紙ウェブへの均一な塗布のために特に有利である。
【0123】
固形分の値が約10重量%を下回ると、短時間の穏やかな乾燥によって大量の水を除去する必要があり、このことコーティング速度に悪影響を及ぼすため、経済効率が悪化する。一方、50重量%の値を超えると、この場合、機械を再び非常に迅速に作動させなければならないので、この値によって、コーティングプロセス及び塗布されたフィルムの乾燥中にコーティングカーテン材料の安定性を確保するのに技術的な労力が増大するだけである。
【0124】
カーテンコーティング法では、コーティング分散液の自由落下カーテンが形成される。薄膜(カーテン)の形態であるコーティング分散液を基材上に、自由落下により「注ぐ」ことで、基材にコーティング分散液を塗布する。文献DE 10196052 T1には、情報記録材料、の製造におけるカーテンコーティング法の使用が開示され、多層記録層は、複数のコーティング分散フィルムからなるカーテンを基材に塗布することによって実現される。
【0125】
本発明による方法の好ましい実施形態では、水性脱気コーティング懸濁液は、約100~約800mPa・s(Brookfield、100rpm、20℃)の粘度を有する。粘度が約100mPa・sの値を下回るか、又は約800mPa・sの値を超えると、コーティング組成物がコーティングユニットを通過しにくくなる。特に好ましくは、水性脱気コーティング懸濁液の粘度は、約200~約500mPa・sである。
【0126】
好ましい実施形態において、水性コーティング懸濁液の表面張力は、プロセスを最適化するために、(以下に記載されるように、泡圧式張力測定(ASTM D 3825-90)の規格に従って測定した)約25~約70mN/m、好ましくは約35~約60mN/mに調整することができる。コーティングプロセスに対するより良好な制御は、コーティング材料の動的表面張力を求めて、適切な界面活性剤を選択することによって、及び必要な界面活性剤の量を求めることによって、目標とする方法で動的表面張力を調整することによって得られる。
【0127】
ポリビニルアルコール溶液は、分散液、特に粒径が小さいために、粒子表面積が大きい分散液と比較して、同一の表面張力を生成するために必要な界面活性剤が著しく少ないことが示されている。
【0128】
動的表面張力は、泡圧式張力計によって測定される。キャピラリを介して液体中に形成された気泡の最大内圧が測定される。球形気泡の内圧p(ラプラス圧)は、ヤング・ラプラスの式に従う曲率半径r及び表面張力σに依存する。
【0129】
【数4】
【0130】
液体中の毛細管の先端に気泡が生成されると、曲率は最初に増加し、次いで再び減少し、最大圧力をもたらす。曲率半径が毛細管半径に等しい場合、最大曲率、ゆえに最大圧力が生じる。
【0131】
泡圧式測定中の圧力曲線、圧力最大値の位置:
【0132】
毛細管の半径は、表面張力が既知の液体、通常は水を用いて行われる基準測定によって求められる。そこで半径が既知であると、表面張力は最大圧力pmaxから計算することができる。毛細管は液体に浸漬されるので、液体の浸漬深さ及び密度から生じる静水圧p 0を測定圧力から差し引く必要がある(これは最新の測定機器の場合には自動的に行われる)。これにより、泡圧法では以下の式が得られる。
【0133】
【数5】
【0134】
測定値は、気泡形成の開始から最大圧力の発生までの時間である、ある表面寿命における表面張力に対応する。気泡が発生する速度を変化させることにより、表面張力の表面寿命に対する依存性を記録することができ、表面張力が時間に対してプロットされた曲線が得られる。
【0135】
界面活性剤の拡散速度及び吸着速度が場合により低いため、多くのプロセスで界面張力は平衡値に全く到達しないので、この依存性は界面活性剤の使用で重要な役割を果たす。
【0136】
個々のコーティングは、コーティングユニットを備えた抄紙機にてオンラインで、又はコーティング機にてオフラインの別個のコーティングプロセスにおいて形成することができる。
【0137】
さらなる実施形態では、以下の方法を使用して個々の層を原紙に塗布することもできる。
【0138】
バリア層は、印刷方法によって原紙及び/又は既存のプレコートに塗布することができる。
【0139】
バリア層は、押出によって原紙及び/又は既存のプレコートに塗布することができる。
【0140】
この技術は、著しくより多くの材料を塗布できるという利点を有するが、この利点は、製品全体が紙として再利用可能とする必要がない場合にのみ重要である。一方、欠点は、塗布速度がより低く、エネルギー消費量がより多く、最小塗布重量がより大きいことである。
【0141】
バリア層は、例えば、原紙及び/又は既存のプレコートに塗布されたプラスチック材料フィルムの形態の紙を積層することによって塗布することができる。
【0142】
バリア層及びプレコートは、複数の塗布ステップにわたって連続的に塗布することもできる。
【0143】
本発明はさらに、上記の方法によって得られるコート紙に関する。
【0144】
バリア層は、その比較的高い極性のために、溶融押出又はフィルムとの積層によって、ポリマー水溶液又は分散液の形態でさらなるバリアを塗布するのにも好適である。
【0145】
バリア層は、必要に応じて、蒸着又は特に真空蒸着によって超薄金属層、金属酸化物層、又は他の無機化合物を塗布することによって、すべてのバリアについて改善することができる。そのような薄いバリア層は、粒子(例えば、無機顔料)を含有せず、その上に密閉(closed)層を形成することができる、非常に平滑で可撓性の基板に接着する場合にのみ有効である。バリア層の比較的高い表面エネルギー、特に包括的ポリマーの表面エネルギーは、金属酸化物及び他の無機酸化物などの極性材料並びに金属などの分極性導電性材料の層接着に有利である。このようにして得られた紙は、次に、ヒートシール層又はコールドシール接着剤を塗布することによってシール性にすることができる。
【0146】
本発明は、上記のようなコート紙又は上記の方法によって得られるコート紙の包装材料としての使用にも関する。
【0147】
最後に、本発明は、食品、特に脂肪分の多い及び酸化感受性の食品用の包装材料としての、上記のようなコート紙又は上記の方法によって得られるコート紙の使用にも関する。
【0148】
本発明は、さらに好ましくは、例えばシリアルバー、チョコレート、チョコレート含有製品、又はポテトチップスの包装材料としての、上記のようなコート紙、又は上記の方法によって得られるコート紙の使用に関する。
【0149】
本発明のさらに好ましい実施形態では、本発明によるコート紙は、特に積層又は接合によって厚紙又は板紙に適用される。
【0150】
最後に、本発明は、食品用の、特に脂肪分の多い及び酸化感受性の食品用の包装材料としての、本発明によるコート紙が特に積層又は接合によって厚紙又は板紙に適用された複合体の使用にも関する。
【0151】
このように、両方の材料構成要素の利点、例えばコート紙と比較した厚紙又は板紙の強度及び剛性の向上、並びにコート紙の記載された利点を有する包装材料を、簡単かつ経済的な方法で製造することができる。適用は、例えばデンプン又は水性分散接着剤を使用して行うことができる。
【0152】
したがって、コート紙は好ましくは、厚紙又は板紙を基材とする包装材料の構成要素であり得る。
【0153】
本発明によるこれらの包装材料により、より重い食品を特に安全に包装し、小売店において直立包装の形態で顧客に魅力的に提供することができる。
【0154】
これらの包装材料は、好ましくは、95%超の均一材料型の紙、厚紙又は板紙の質量分率を有する。ここで、本発明のさらなる利点は、本発明によるこれらの包装材料がGerman Packaging Actの§3(5)による複合包装ではないことであり、ゆえに、本発明のこの実施形態は、包装廃棄物の環境への影響の低減に著しく寄与する。
【0155】
本発明は、上記のような、又は上記のような厚紙若しくは板紙との複合体におけるコート紙を含む包装にも関する。
【0156】
本発明による使用の特徴は、本発明による包装にも同様に当てはまる。
【0157】
包装は、コールドシール包装であり得る。コールドシール包装は、好ましくは、チョコレート、チョコレート含有製品、バー、例えばシリアルバー及び/又は他の菓子製品などの食料品の包装に好適である。これは、チョコレートの熱感受性並びに考えられるより高い機械速度のためである。ヒートシール媒体の加熱には比較的長い時間がかかるため、コールドシーリングに基づく包装機はより速く作動させることができる。
【0158】
包装は、ヒートシール包装であることもできる。ヒートシール包装は、好ましくは、二次包装又は配量及び充填スケール上の容器用の包装としての使用に適している。
【0159】
包装は、コールドシール包装でもあり得る。
【0160】
包装はさらに、フォームフィルシール包装、特にコールドシールされた又はコールドシールされたフォームフィルシール包装であり得る。
【0161】
本発明は、非限定的な実施例に基づいて以下に詳細に説明する。
【実施例
【0162】
以下のコーティングを、長繊維含量が40%及び短繊維含量が60%の60g/m2の原紙に塗布した。
【0163】
プレコート/プライマ:
【0164】
プレコートは、75.9%の顔料(フィロケイ酸塩)、22.8%のラテックス(スチレン-ブタジエンラテックス)及び1.3%のレオロジー調整剤(0.2%のアクリレート系増粘剤、1.1%のジルコニウム系架橋剤)を含有する。
【0165】
バリア層:
【0166】
実施例1~5及び比較例1では、ポリビニルアルコールを使用した。実施例6~7では、ポリエチレンビニルアルコールを使用した。
【0167】
実施例1~7及び比較例1のバリア層は、純粋なポリマーコーティングを含む。実施例1’は、99.8%のポリビニルアルコール(実施例1;鹸化度:87%;Mw:50900)及び0.2%のレオロジー調整剤(Na-ドクセート)を含むポリマーコーティングを含む。
【0168】
この目的のために、ブレードを使用してプレコートを塗布した。実施例1~7及び比較例1のバリア層をドクターブレードで塗布した。実施例1とは対照的に、実施例1’のバリア層をカーテンコーターで塗布した。
【0169】
以下の特性を調べた:
【0170】
コーティング重量:バリアコーティングの塗布重量(g/m2)。これは、コート紙と非コート紙の間の重量差によって求める。
【0171】
粘度:粘度は、Brookfield粘度計を用いて、23℃及び速度100rpm、4%の乾燥含量にて測定した。
【0172】
WVTR:ISO 15106-2に従って求めた、水蒸気透過度。
【0173】
OTR:DIN 15105-2に従って求めた、酸素透過度
【0174】
HVTR:ヘキサン蒸気透過度。ここで、n-ヘキサンをビーカー(耐溶媒性)に充填し、試験サンプルで密封し、重量の減少を経時的に監視する。折り目付けされたサンプルの場合、得られた折り目に330g/cmの荷重を加えるローラーで180°の折り目を生成させ、コーティングを内側(内側折り目)又は外側(外側折り目)に配置することができる。
【0175】
パーム核油試験:DIN 53116と同様。折り目付けされたサンプルの場合、得られた折り目に330g/cmの荷重を加えるローラーを用いて180°の折り目が作成され、折り目を内側(内側折り目)又は外側(外側折り目)に配置することができる。
【0176】
表示紙:DIN 53116に記載されている表示紙の評価。ここで、>/<1mmの直径(d)グリース浸透点をカウントする。
【0177】
サンプル用紙:DIN 53116に記載されているサンプル紙の裏側の評価。これは標準の一部ではないが、差異化を向上させるために行った。
【0178】
シーリングシーム強度:サンプルを3.3バールで0.3秒間、100℃~220℃の温度範囲にて、紙の走行方向を横にシールして、シーリングシーム強度をDIN 55529(2012)に従って求める。最適シール温度と、比較のために、150℃でのシール力(実施例1の最適シール温度)を記録する。
【0179】
DSC融解温度/開始:DSC曲線は、冷間溶接アルミニウムるつぼ及び穿孔蓋内で、Mettler DSC 20 Sを用いて測定した。加熱速度は、30℃~280℃の範囲で10K/分であった。融解温度は、融解プロセスのピーク最小値によって求めた。
【0180】
表面張力又はエネルギー 接触角測定装置OCA 20(DataPhysics)及びソフトウェアSCA 20
【0181】
測定原理:OWRK法(Owens、Wendt、Rabel、Kaelble)
【0182】
使用した測定液及び材料定数の起点を入力した:
【0183】
水及びジヨードメタン(Buscherによる)及び1,5-ペンタンジオール(Gebhardtによる)
【0184】
得られたコート紙を調べた。結果を以下の表に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
使用される部分的に鹸化されたポリビニルアルコールは、非常に低いヘキサン及び酸素透過度を有する。これはおそらく親水性が比較的高いためである。
【0187】
鹸化度がより高いポリビニルアルコールは、同じ乾燥含量で粘度がより高いことによって、コーティング材料において特徴付けられる。化学的観点から、このことだけが意味をなすのは、極性が高いために各分子が周囲の溶媒(水)とより強く相互作用するからである。
【0188】
コーティングプロセスにおいて低乾燥含量で大量の水を乾燥させなければならないため、このことはかなり不利である。これは、エネルギーの点から費用がかかるだけでなく、所望のコーティング重量に応じて、塗布技術の点からも実現が困難であり得る。さらに、水分子の拡散、ゆえに乾燥自体が遅くなる。さらに、これはコーティング中の気体水の蓄積をもたらし、巨視的なコーティング欠陥の形成につながるおそれがある。
【0189】
調べたポリエチレンビニルアルコールの水蒸気透過性は、ポリビニルアルコールの水蒸気透過性よりも低く、これはおそらくエチレン含有量及び関連するより低い親水性のためである。
【0190】
一般に、完全に鹸化されたPVOHは、形成可能な水素結合の数が多いため、部分鹸化PVOHよりも脆弱性であるはずである。比較例1についても同様である(パーム核油試験参照)。
【0191】
このことは、実施例2ではまだ証明されていない。この理由は、分子量が大きいためと考えられる。他の点は同一のポリビニルアルコールの中で、異なる分子量がその物性に多大な影響を及ぼすことが、ポリビニルアルコール繊維について既に示されている(例えば、Gotoh et al.,Polymer Journal,vol.32,no.12(2000),pp.1049-1051:’’Molecular Weight Dependence of Tensile Properties in Poly(vinyl alcohol)Fibers’’)。例えば、より高重量のポリビニルアルコールの破断伸びはより低いが、これに必要な力は何倍も高い。