(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電池、電力消費装置、電池製造方法及び電池製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6568 20140101AFI20240717BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240717BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20240717BHJP
H01M 10/6561 20140101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M10/6568
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/6561
(21)【出願番号】P 2022561577
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2021109918
(87)【国際公開番号】W WO2023004831
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】唐 ▲ユ▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲海▼奇
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 小▲騰▼
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0133289(KR,A)
【文献】国際公開第2013/061869(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第113036256(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
H01M 10/613
H01M 10/615
H01M 10/6561
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池であって、
第一の方向に配列される少なくとも2層の電池ユニットと、
上蓋と筐体ケースを有する筐体とを含み、
前記上蓋と前記筐体ケースで形成される空間内に前記少なくとも2層の電池ユニットが収納され、
前記第一の方向において、前記少なくとも2層の電池ユニットは、トップ層に位置する第一の電池ユニットと、底層に位置する第二の電池ユニットとを含み、
前記上蓋と前記筐体ケースにはそれぞれ流体を収容するための流路が形成され、前記上蓋は、前記流体により前記第一の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置され、前記筐体ケースは、前記流体により前記第二の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置さ
れ、
任意の隣接する2層の電池ユニット間に熱管理部品が形成され、前記熱管理部品には、流体を収容し、前記隣接する2層の電池ユニットに対して温度調節を行うための中間層流路が形成されている、電池。
【請求項2】
前記電池ユニットは、電池単体を含み、前記電池単体は、電極端子を有し、前記電極端子は、前記電池単体の、前記第一の方向と直交する第二の方向における端面に設けられる、請求項
1に記載の電池。
【請求項3】
前記上蓋と前記筐体ケースの少なくとも一方は、前記第一の方向及び前記第二の方向と直交する第三の方向に沿って延びる複数のサブ流路と、前記第二の方向に沿って延び、前記サブ流路の前記第三の方向における端部に位置して、前記複数のサブ流路を連通させる合流流路と、前記第二の方向に沿って前記サブ流路と交互に設けられる仕切り部であって、前記仕切り部に隣接する2つの前記サブ流路を仕切るための仕切り部とを含む、請求項
2に記載の電池。
【請求項4】
電池であって、
第一の方向に配列される少なくとも2層の電池ユニットと、
上蓋と筐体ケースを有する筐体とを含み、
前記上蓋と前記筐体ケースで形成される空間内に前記少なくとも2層の電池ユニットが収納され、
前記第一の方向において、前記少なくとも2層の電池ユニットは、トップ層に位置する第一の電池ユニットと、底層に位置する第二の電池ユニットとを含み、
前記上蓋と前記筐体ケースにはそれぞれ流体を収容するための流路が形成され、前記上蓋は、前記流体により前記第一の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置され、前記筐体ケースは、前記流体により前記第二の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置され、
前記電池ユニットは、電池単体を含み、前記電池単体は、電極端子を有し、前記電極端子は、前記電池単体の、前記第一の方向と直交する第二の方向における端面に設けられ
、
前記上蓋と前記筐体ケースの少なくとも一方は、前記第一の方向及び前記第二の方向と直交する第三の方向に沿って延びる複数のサブ流路と、前記第二の方向に沿って延び、前記サブ流路の前記第三の方向における端部に位置して、前記複数のサブ流路を連通させる合流流路と、前記第二の方向に沿って前記サブ流路と交互に設けられる仕切り部であって、前記仕切り部に隣接する2つの前記サブ流路を仕切るための仕切り部とを含む、電池。
【請求項5】
前記上蓋の流路と前記筐体ケースの流路とを連通させるための接続管を含み、前記接続管は、前記筐体の外部流路と連通する、請求項1
~4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記接続管は、前記筐体の外部に設けられる、請求項
5に記載の電池。
【請求項7】
前記上蓋及び/又は前記筐体ケースにおいて、前記第一の方向において、前記仕切り部の厚さは、前記サブ流路の厚さよりも小さい、請求項
3又は4に記載の電池。
【請求項8】
前記上蓋及び/又は前記筐体ケースは、対向して設けられる凹凸板と平板とを含み、
前記凹凸板の凹部を前記平板にシール接続して前記仕切り部が形成され、前記凹凸板の凸部と前記平板との間に前記流路が形成される、請求項
3、4及び7のいずれか1項に記載の電池。
【請求項9】
前記平板は、前記凹凸板よりも前記電池ユニットに近接する、請求項
8に記載の電池。
【請求項10】
前記電池単体は、複数の側面を有し、前記第一の方向において、前記上蓋又は前記筐体ケースに隣接する側面は、前記流体により温度調節される温度調節面となる、請求項
3~
4及び7~9のいずれか1項に記載の電池。
【請求項11】
前記電池単体の複数の側面のうち、前記温度調節面の面積が最も大きい、請求項
10に記載の電池。
【請求項12】
前記第二の方向において、前記温度調節面は、中央領域と、前記中央領域の両側に位置する側辺領域とを有する、請求項
10又は
11に記載の電池。
【請求項13】
前記第二の方向において、前記中央領域の長さは、前記温度調節面の長さの1/8~1/2であり、前記中央領域は、前記温度調節面の中心を含む、請求項
12に記載の電池。
【請求項14】
前記第一の方向において、前記上蓋及び/又は前記筐体ケースにおける、前記中央領域に対向して設けられるのは、前記仕切り部である、請求項
12又は
13に記載の電池。
【請求項15】
前記上蓋及び/又は前記筐体ケースにおいて、前記第一の方向において前記側辺領域に対向する位置に少なくとも一つの前記流路が設けられている、請求項
12~
14のいずれか1項に記載の電池。
【請求項16】
前記上蓋及び/又は前記筐体ケースは、緩衝構造を有し、前記第一の方向における投影では、前記緩衝構造は、前記温度調節面の外側に位置し、前記緩衝構造は、変形マージンを提供するために用いられる、請求項
12~15のいずれか1項に記載の電池。
【請求項17】
前記中間層流路は、前記上蓋の前記流路及び前記筐体ケースの前記流路と連通する、請求項
1~3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項18】
前記熱管理部品は、前記隣接する2層の電池ユニットに接着される、請求項
1~3及び17
のいずれか1項に記載の電池。
【請求項19】
電力消費装置であって、請求項1~18のいずれか1項に記載の電池を含み、前記電池は、電気エネルギーを提供するために用いられる電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、エネルギー蓄積装置の分野に関し、より具体的には、電池、電力消費装置、電池製造方法及び電池製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
省エネ・排出削減は、自動車産業の持続可能な発展の鍵である。この場合、電気自動車は、その省エネ・環境保護の優位性から、自動車産業の持続可能な発展の重要な構成部分となっている。電気自動車にとって、電池技術は、その発展に関わる重要な要素である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電池技術の絶え間ない発展に伴い、電池の性能に対してより高い要求を提出し、電池が多方面の設計要素を同時に考慮できることを望んでいる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本出願は、電池の安全性を向上させるための電池、電力消費装置、電池製造方法及び電池製造装置を提供する。
【0005】
第一の方面によれば、電池であって、第一の方向に沿って配列される少なくとも2層の電池ユニットと、上蓋と筐体ケースを有する筐体とを含み、前記上蓋と前記筐体ケースで形成される空間内に前記少なくとも2層の電池ユニットが収納され、前記第一の方向において、前記少なくとも2層の電池ユニットは、トップ層に位置する第一の電池ユニットと、底層に位置する第二の電池ユニットとを含み、前記上蓋と前記筐体ケースにはそれぞれ流体を収容するための流路が形成され、前記上蓋は、前記流体により前記第一の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置され、前記筐体ケースは、前記流体により前記第二の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置されている電池を提供する。
【0006】
電池では、電池の給電効率を向上させるために、一般的には、それぞれ複数の電池単体を有する多層の電池ユニットを有する。この場合、電池が優れた電気化学的性能を発揮するように、多層の電池単体の熱管理効率を向上させ、各層の電池ユニットの温度を一定範囲に保つ必要がある。
【0007】
本出願の技術案では、電池の筐体における上蓋と筐体ケースにはそれぞれ熱管理用の流路が集積され、上蓋を利用してトップ層の電池ユニットに対して熱管理を行い、筐体ケースを利用して底層の電池ユニットに対して熱管理を行う。これによって、上蓋と筐体ケースを利用して、電池を包む熱管理環境を形成して、多層の電池ユニットのそれぞれをより良く熱管理することができ、それにより電池の給電性能と安全性を向上させる。
【0008】
いくつかの実施例では、前記電池は、前記上蓋の流路と前記筐体ケースの流路とを連通させるための接続管を含み、前記接続管は、前記筐体の外部流路と連通する。これによって、上蓋の流路における流体と筐体ケースの流路における流体を連通させ、筐体全体の流体循環を実現するとともに、多層の電池単体の温度一致性を向上させる。
【0009】
いくつかの実施例では、前記接続管は、前記筐体の外部に設けられる。これによって、筐体の外で上蓋及び筐体ケースにおける流路のシールを行うことができ、シール性と安全性を向上させることができる。また、筐体の外に位置する接続管は、メンテナンスや交換がより容易であり、操作の利便性を向上させることができる。
【0010】
いくつかの実施例では、前記電池ユニットは、電池単体を含み、前記電池単体は、電極端子を有し、前記電極端子は、前記電池単体の、前記第一の方向と直交する第二の方向における端面に設けられる。即ち、少なくとも2層の電池ユニットは第一の方向に配列されるが、各電池ユニットにおける電池単体の電極端子はいずれも第二の方向に向けて設けられるので、電池単体における上蓋と筐体ケースにより冷却/加熱される面は、電極端子が設けられる端面ではなく、電極単体の側面である。このように設けることにより、上蓋と筐体ケースによる電極単体の温度調節面積を増大させ、それにより熱管理効率を向上させることができる。
【0011】
いくつかの実施例では、前記上蓋と前記筐体ケースの少なくとも一方は、前記第一の方向及び前記第二の方向と直交する第三の方向に沿って延びる複数のサブ流路と、前記第二の方向に沿って延び、前記サブ流路の前記第三の方向における端部に位置して、前記複数のサブ流路を連通させる合流流路と、前記第二の方向に沿って前記仕切り部と交互に設けられる仕切り部であって、前記仕切り部に隣接する2つの前記サブ流路を仕切るための仕切り部とを含む。上蓋及び/又は筐体ケースでこのような流路構造及び仕切り部構造を採用することにより、上蓋及び/又は筐体ケースの剛性を高めることができ、電池単体の膨張に対する拘束作用が強化され、それにより電池全体の構造強度が向上する。
【0012】
いくつかの実施例では、前記上蓋及び/又は前記筐体ケースにおいて、前記第一の方向において、前記仕切り部の厚さは、前記サブ流路よりも小さい。電池単体に故障又は過熱などが発生した場合、電池単体は、膨張変形し、特に側面に生じる変形の度合いがより大きい。これによって、電池単体の側面に対して熱管理を行う上蓋及び/又は筐体ケースに、厚さが比較的小さい仕切り部を形成する。厚さが比較的小さい仕切り部の剛性は、隣接するサブ流路に比べて比較的低いため、仕切り部は電池単体の膨張とともに変形しやすく、また厚さが比較的小さいため、膨張空間を提供でき、それにより電池の安全性を保証することができる。そのうち、ここでの「前記上蓋及び/又は前記筐体ケース」とは、仕切り部を有する上蓋及び/又は筐体ケースである。
【0013】
いくつかの実施例では、前記上蓋及び/又は前記筐体ケースは、対向して設けられる凹凸板と平板とを含み、前記凹凸板の凹部を前記平板にシール接続して前記仕切り部が形成され、前記凹凸板の凸部と前記平板との間に前記流路が形成される。このような凹凸板と平板は成形しやすく、凹凸板と平板を組み合わせることで、簡単なプロセスにより上蓋及び/又は筐体ケースを得ることができるとともに、容易に上蓋及び/又は筐体ケースにおける仕切り部の厚さを隣接するサブ流路の厚さよりも小さくすることができる。
【0014】
いくつかの実施例では、前記平板は、前記凹凸板よりも前記電池ユニットに近接する。これによって、上蓋及び/又は筐体ケースの電池単体に面する面は平坦であり、それにより、凹凸板の凹部を利用して第一の方向における高さを低くして、膨張空間を確保することができるとともに、平板を利用して電池単体に対する熱管理面積を増加させることができる。
【0015】
いくつかの実施例では、前記電池単体は、複数の側面を有し、前記第一の方向において、前記上蓋又は前記筐体ケースに隣接する側面は、前記流体により温度調節される温度調節面となる。
【0016】
いくつかの実施例では、前記電池単体の複数の側面のうち、前記温度調節面の面積が最も大きい。即ち、第一の電池ユニットにおける電池単体の、面積が最も大きい側面は、上蓋の流体により温度調節され、第二の電池ユニットにおける電池単体の、面積が最も大きい側面は、筐体ケースの流体により温度調節される。面積が最も大きい側面に対して温度調節を行うことにより、熱管理効率を向上させることができる。
【0017】
いくつかの実施例では、前記第二の方向において、前記温度調節面は、中央領域と、前記中央領域の両側に位置する側辺領域とを有する。
【0018】
いくつかの実施例では、前記第二の方向において、前記中央領域の長さは、前記温度調節面の長さの1/8~1/2であり、前記中央領域は、前記温度調節面の中心を含む。そのうち、温度調節面の第二の方向における中心とは、温度調節面の第二の方向における長さの半分の位置である。電池単体が変形する際に、その温度調節面の中央領域の変形度合いが比較的大きい。
【0019】
いくつかの実施例では、前記上蓋及び/又は前記筐体ケースにおいて、前記第一の方向において前記中央領域に対向して設けられるのは、前記仕切り部である。即ち、仕切り部を有する上蓋及び/又は筐体ケースにおいて、第一の方向の投影では、温度調節面の中央領域は、仕切り部と重なる。温度調節面における変形が比較的大きい中央領域と、剛性が比較的低い仕切り部とが対向して設けられることによって、仕切り部は、電池単体の中央領域の膨張とともに容易に変形でき、前記第一の方向において、仕切り部の少なくとも一側に膨張空間があり、それにより、電池単体の膨張変形を制限することなく、上蓋及び/又は筐体ケースにおける応力を解放することができる。
【0020】
いくつかの実施例では、前記上蓋及び/又は前記筐体ケースにおいて、前記第一の方向において前記側辺領域に対向する位置に少なくとも一つの前記流路が設けられている。上蓋及び/又は筐体ケースにおいて、流路部分は、仕切り部に比べて剛性が大きい。電池単体の温度調節面では、側辺領域の膨張変形の度合いが比較的小さい。そうすると、側辺領域に対向する位置に少なくとも一つの流路を設けることで、上蓋及び/又は筐体ケースにおける側辺領域に対向する部位の剛性が向上するが、中央領域に対向する部位の柔軟性が高くなるので、電池単体が第一の方向に膨張すると、上蓋及び/又は筐体ケースと電池単体との間の距離が大きくなることに起因する効果的な熱管理の面積の低下による熱管理効果への影響を回避できる。
【0021】
いくつかの実施例では、前記上蓋及び/又は前記筐体ケースは、緩衝構造を有し、前記第一の方向における投影では、前記緩衝構造は、前記温度調節面の外側に位置し、前記緩衝構造は、変形マージンを提供するために用いられる。これによって、電池単体が膨張変形する際に、前記緩衝構造は、それに伴って変形して、電池単体の膨張変形を制限することなく、膨張空間を提供することができる。
【0022】
いくつかの実施例では、任意の隣接する2層の電池ユニット間に熱管理部品が形成され、前記熱管理部品には、流体を収容し、前記隣接する2層の電池ユニットに対して温度調節を行うための中間層流路が形成されている。電池単体の温度をさらに均等化するために、上蓋と筐体ケースに温度調節用の流路が集積されているだけではなく、2層の電池ユニット間にも熱管理部品が設けられているので、2層の電池ユニットにおける電池単体の対向する面も温度調節されることができ、即ち層間の温度調節面となる。
【0023】
いくつかの実施例では、前記中間層流路は、前記上蓋及び前記筐体ケースの前記流路と連通する。これによって、上蓋の流路における流体と、筐体ケースの流路における流体と、中間層流路における流体とを連通させ、筐体全体の流体循環を実現するとともに、多層の電池単体の温度一致性を向上させる。
【0024】
いくつかの実施例では、前記熱管理部品は、前記隣接する2層の電池ユニットに接着される。熱伝導性の良い接着剤によって熱管理部品を隣接する2層の電池ユニットに接着することにより、熱管理部品を電池ユニットに安定的に固定して、熱管理部品の変位による熱管理効果の低下を防止することができる。そうすると、電池単体との接着面を介して、隣接する2層の電池ユニットの温度調節を安定的に行い、熱管理効率を向上させることができる。
【0025】
第二の方面によれば、電力消費装置であって、第一の方面による電池を含み、前記電池は、電気エネルギーを提供するために用いられる電力消費装置を提供する。
【0026】
第三の方面によれば、電池製造方法であって、第一の方向に沿って少なくとも2層配列される電池ユニットを提供することと、上蓋と筐体ケースを有し、前記上蓋と前記筐体ケースにはそれぞれ流体を収容するための流路が形成されている筐体を提供することと、前記電池ユニットを前記上蓋と前記筐体ケースで形成される空間に収納することとを含み、前記第一の方向において、前記電池ユニットは、トップ層に位置する第一の電池ユニットと、底層に位置する第二の電池ユニットとを含み、前記上蓋は、前記流体により前記第一の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置され、前記筐体ケースは、前記流体により前記第二の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置されている電池製造方法を提供する。
【0027】
第四の方面によれば、電池製造装置であって、第一の方向に沿って少なくとも2層配列される電池ユニットを提供するための第一の提供モジュールと、上蓋と筐体ケースを有し、前記上蓋と前記筐体ケースにはそれぞれ流体を収容するための流路が形成されている筐体を提供するための第二の提供モジュールと、前記上蓋と前記筐体ケースで形成される空間内に前記電池ユニットを収納するための取り付けモジュールとを含み、前記第一の方向において、前記電池ユニットは、トップ層に位置する第一の電池ユニットと、底層に位置する第二の電池ユニットとを含み、前記上蓋は、前記流体により前記第一の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置され、前記筐体ケースは、前記流体により前記第二の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置されている電池製造装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
ここで説明される添付図面は、本出願に対するさらなる理解のために提供されるもので、本出願の一部を構成し、本出願の例示的な実施例及びその説明は、本出願を解釈するためのものであり、本出願に対する不当な限定を構成するものではない。添付図面において、
【0029】
【
図2】本出願の一実施例の電池の立体構造概略図である。
【
図10】本出願の一実施例の電池製造方法の例示的なフローチャート。
【
図11】本出願の一実施例の電池製造装置の例示的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本出願の実施例の目的、技術案及び利点をより明瞭にするために、以下に、本出願の実施例における添付図面を結び付けながら、本出願の実施例における技術案について明瞭に記述する。明らかに、記述された実施例は、本出願の一部の実施例であり、全部の実施例ではない。本出願における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を払わない前提で得られるすべての他の実施例は、いずれも本出願の保護範囲に属する。
【0031】
特に定義がない限り、本出願で使用されるすべての技術および科学用語は、当業者が通常理解している意味と同じである。本出願の明細書で使用される用語は、具体的な実施例を記述するためのものにすぎず、本出願を制限するためのものではない。本出願の明細書、特許請求の範囲及び上記図面の簡単な説明における用語である「含む」、「有する」及びそれらの任意の変形は、非排他的な「含む」を意図的にカバーするものである。本出願の明細書と特許請求の範囲又は上記添付図面における「第一」、「第二」などの用語は、特定の順序または主従関係を記述するのではなく、異なる対象を区別するためのものである。
【0032】
本出願で言及される「実施例」とは、実施例を結び付けながら記述される特定の特徴、構造又は特性が本出願の少なくとも一つの実施例に含まれてもよいことを意味する。明細書における各位置にこのフレーズが現れるのは、必ずしも同じ実施例を指すわけではなく、他の実施例と排他的な独立した実施例または代替的な実施例でもない。当業者は、本出願に記述されている実施例を他の実施例と組み合わせることができることを明示的かつ暗黙的に理解している。
【0033】
本出願の記述では、説明すべきことは、特に明確な規定と限定がない限り、「取り付け」、「接続」、「結合」、「付着」という用語は、広義に理解されるべきであり、例えば、固定接続でもよいし、取り外し可能な接続でもよいし、一体的に接続してもよい。直接接続でもよいし、中間媒体を介する間接的接続でもよいし、二つの素子の内部の連通でもよい。当業者にとって、上記の用語の本出願における具体的な意味を具体的な状況に応じて理解することができる。
【0034】
本出願において「及び/又は」という用語は、関連対象の関連関係を記述するものであり、三種類の関係が存在し得ることを示し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在するか、AとBが同時に存在するか、Bが単独で存在するという三種類の状況を表すことができる。また、本出願における符号「/」は、前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0035】
本出願において現れる「複数」とは、2つ以上(2つを含む)を意味し、同様に、「複数グループ」とは、2グループ以上(2グループを含む)を意味し、「複数枚」とは、二枚以上(二枚を含む)を意味する。
【0036】
本出願の実施例で言及される電池とは、より高い電圧及び容量を提供するために複数の電池単体を含む単一の物理モジュールを指す。例えば、本出願で言及される電池は、電池モジュール又は電池パックなどを含んでもよい。
【0037】
電池単体は、電極組立体と電解液とを含み、電極組立体は、正極シートと、負極シートと、セパレータフィルムとを含む。電池単体は、主に金属イオンが正極シートと負極シートとの間で移動することにより作動する。正極シートは、正極集電体と正極活物質層とを含み、正極活物質層は、正極集電体の表面に塗布され、正極活物質層が塗布されていない正極集電体は、正極活物質層が塗布された正極集電体から突出し、正極活物質層が塗布されていない正極集電体は、正極タブとなる。リチウムイオン電池を例とすると、正極集電体の材料は、アルミニウムであってもよく、正極活物質は、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、三元リチウム又はマンガン酸リチウムなどであってもよい。負極シートは、負極集電体と負極活物質層とを含み、負極活物質層は、負極集電体の表面に塗布され、負極活物質層が塗布されていない負極集電体は、負極活物質層が塗布された負極集電体から突出し、負極活物質層が塗布されていない負極集電体は、負極タブとなる。負極集電体の材料は、銅であってもよく、負極活物質は、カーボン又はシリコーンなどであってもよい。溶断せずに大電流を流すことを確保するために、正極タブは複数で積層され、負極タブは複数で積層される。セパレータフィルムの材質は、PP又はPEなどであってもよい。なお、電極組立体は、巻回式構造であってもよく、シート積層式構造であってもよく、本出願の実施例はこれに限らない。
【0038】
電池技術の発展は、多方面の設計要素、例えば、エネルギー密度、サイクル寿命、放電容量、充放電レートなどの性能パラメータを同時に考慮しなければならない。また、電池の安全性も考慮する必要がある。
【0039】
現在、電気自動車の電池は、往々にして、数十~数千個の電池単体で構成される必要がある。電池の給電効率を向上させるために、通常、一つの方向に多層配列される電池ユニットを有し、各電池ユニットは、電池単体を有する。この場合、多層の電池単体の熱管理効率を向上させ、各層の電池ユニットの温度を維持して、電池全体の温度が常に性能快適領域にあるようにし、過熱による熱暴走問題を防止する必要がある。
【0040】
これに鑑み、本出願は、第一の方向に沿って配列される少なくとも2層の電池ユニットと、上蓋と筐体ケースを有する筐体とを含み、前記上蓋と前記筐体ケースで形成される空間内に前記少なくとも2層の電池ユニットが収納され、前記第一の方向において、前記少なくとも2層の電池ユニットは、トップ層に位置する第一の電池ユニットと、底層に位置する第二の電池ユニットとを含み、前記上蓋と前記筐体ケースにはそれぞれ流体を収容するための流路が形成され、前記上蓋は、前記流体により前記第一の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置され、前記筐体ケースは、前記流体により前記第二の電池ユニットに対して温度調節を行うように配置されている電池を提供する。
【0041】
筐体における上蓋と筐体ケースにはそれぞれ熱管理流路が集積されることにより、上蓋を利用してトップ層の電池ユニットに対して熱管理を行い、筐体ケースを利用して底層の電池ユニットに対して熱管理を行うことができる。これによって、上蓋と筐体ケースを利用して、電池を包む熱管理環境を形成して、多層の電池ユニットをそれぞれより良く熱管理することができ、それにより電池の給電性能と安全性を向上させる。
【0042】
本出願の一実施例は、電池が電気エネルギーを提供するために用いられる電力消費装置を提供する。
【0043】
本出願の実施例に記述される技術案は、電池を使用する様々な装置、例えば、携帯電話、携帯型機器、ノートパソコン、電動バイク、電動玩具、電動工具、電気自動車、船舶や航空機などのすべてに適用でき、例えば、航空機は、飛行機、ロケット、スペースシャトルや宇宙船などを含む。
【0044】
本出願の実施例に記述される技術案は、上述した装置に適用できるだけではなく、電池を使用するすべての装置にも適用できることは理解すべきであるが、記述を簡潔にするために、以下の実施例は、いずれも車両を例にして説明する。
【0045】
例えば、
図1に示すように、本出願の一実施例の車両100の構造概略図であり、車両100は、燃料自動車、燃料ガス自動車又は新エネルギー自動車であってもよく、新エネルギー自動車は、純電気自動車、ハイブリッド自動車又はレンジエクステンダ式自動車などであってもよい。車両100の内部には、モータ2、コントローラ3及び電池1が設けられてもよく、コントローラ3は、モータ2に給電するように電池1を制御するために用いられる。例えば、車両100の底部又は車頭又は車尾に電池1が設けられてもよい。電池1は、車両100への給電に用いられてもよい。例えば、電池1は、車両100の操作電源として、車両100の回路システム、例えば、車両100の起動、ナビゲーション及び運転時の動作電力需要に用いられてもよい。本出願の別の実施例では、電池1は、車両100の操作電源としてもよく、車両100の駆動電源として、燃料又は天然ガスを代替してまたは部分的に代替して車両100に駆動動力を提供するようにしてもよい。
【0046】
図2に示すように、異なる電力使用需要を満たすために、電池1は、第一の方向Zに配列される多層の電池ユニット10を含んでもよく、電池ユニット10は、複数の電池単体20を有し、複数の電池単体20の間は、直列接続又は並列接続又は直並列接続されてもよく、直並列接続とは、直列接続と並列接続との組み合わせである。
【0047】
例えば、
図2に示すように、本出願の一実施例の電池1の立体構造概略図である。電池1は、筐体50を含み、筐体50の内部は中空構造であり、筐体50内に電池ユニット10が収納され、電池ユニット10は、電池単体20を有する。
図2に示すように、筐体50は、それぞれ上蓋51と筐体ケース52と呼ばれる二つの部分を含んでもよい。上蓋51と筐体ケース52とは係合される。上蓋51と筐体ケース52の形状は、複数の電池単体20の組み合わせの形状によって決められてもよい。例えば、上蓋51と筐体ケース52は、いずれも中空の直方体であり、それぞれ一つの面のみが開口面となり、上蓋51の開口と筐体ケース52の開口とが対向して設けられ、且つ上蓋51と筐体ケース52とが互いに係合されて密閉チャンバーを有する筐体50を形成するようにしてもよい。上蓋51は、開口を有する直方体である一方、筐体ケース52は、板状であるか、又は、筐体ケース52は、開口を有する直方体である一方、上蓋51は、板状であり、上蓋51と筐体ケース52が対向して設けられ、且つ係合されて密閉チャンバーを有する筐体50を形成するようにしてもよい。
【0048】
図2に示すように、筐体50内には第一の方向Zに配列される多層の電池ユニット10が収納され、各電池ユニット10における複数の電池単体20は、第二の方向Xと第三の方向Yに沿って配列でき、そのうち第二の方向Xと第三の方向Yは直交し、且つ第二の方向Xと第三の方向Yはいずれも第一の方向Zと直交する。即ち、電池ユニット10における複数の電池単体20は、行列状の構造に配列されてもよい。複数の電池単体20は、互いに並列接続又は直列接続又は直並列接続して組み合わせられて、上蓋51と筐体ケース52とが係合されて形成される筐体50内に置かれる。選択的に、各電池ユニット10は、1つの電池単体20のみを有してもよい。
【0049】
図2に示すように、電池1は、第一の方向Zに沿って配列される少なくとも2層の電池ユニット10と、上蓋51と筐体ケース52を有する筐体50とを含み、上蓋51と筐体ケース52で形成される空間内に少なくとも2層の電池ユニット10が収納され、第一の方向Zにおいて、少なくとも2層の電池ユニット10は、トップ層に位置する第一の電池ユニット11と、底層に位置する第二の電池ユニット12とを含み、上蓋51と筐体ケース52にはそれぞれ流体を収容するための流路30が形成され、上蓋51は、流体により第一の電池ユニット11に対して温度調節を行うように配置され、筐体ケース52は、流体により第二の電池ユニット12に対して温度調節を行うように配置されている。
【0050】
図2には、電池1が2層の電池ユニット10を含むことを例示したが、3層以上の電池ユニット10を有してもよい。
【0051】
電池1が多層の電池ユニット10を有する場合、電池1が優れた電気化学的性能を発揮するように、多層の電池ユニット10の熱管理効率を向上させ、各層の電池ユニット10の温度を一定範囲に保つ必要がある。本出願では、筐体50における上蓋51と筐体ケース52にはそれぞれ熱管理流路が集積され、上蓋51を利用してトップ層の第一の電池ユニット11に対して熱管理を行い、筐体ケース52を利用して底層の第二の電池ユニット12に対して熱管理を行う。これによって、上蓋51と筐体ケース52を利用して、電池1全体を包む熱管理環境を形成して、多層の電池ユニット10をより良く熱管理することができ、それにより電池1の給電性能と安全性を向上させる。
【0052】
本出願では、熱管理流路が集積された上蓋51と筐体ケース52は、熱管理機能を兼ね備え、電池単体20に対して温度を調節するために、上蓋51と筐体ケース52に流体が収容される。ここでの流体は、液体又はガスであってもよく、温度調節とは、電池単体20を加熱又は冷却することである。電池単体20を冷却又は降温させる場合、上蓋51と筐体ケース52は、電池単体20を降温させるために冷却流体を収容するために用いられる。収容される流体は、冷却媒体又は冷却流体と呼ばれてもよく、より具体的には、冷却液又は冷却ガスと呼ばれてもよい。また、上蓋51と筐体ケース52は、電池単体20を昇温させるための加熱に用いられてもよく、本出願の実施例では、これについて限定しない。
【0053】
いくつかの実施例では、流体は、より良い温度調節効果を達成するために循環流動してもよい。
【0054】
いくつかの実施例では、流体は、水、水とエチレングリコールの混合液又は空気などであってもよい。
【0055】
図2に示すように、電池1は、上蓋51の流路30と筐体ケース52の流路30とを連通させるための接続管60を含み、接続管60は、筐体50の外部流路と連通する。これによって、上蓋51及び筐体ケース52の流路30における流体を連通させ、筐体50全体の流体循環を実現するとともに、多層の電池ユニット10の温度一致性を向上させる。
【0056】
いくつかの実施例では、
図2に示すように、接続管60は、筐体50の外部に設けられる。これによって、筐体50の外で流路のシールを行うことができ、シール性と安全性を向上させることができる。また、筐体50の外に位置する接続管60は、メンテナンスや交換がより容易であり、操作の利便性を向上させることができる。
【0057】
図2には、第一の電池ユニット11と第二の電池ユニット12は、それぞれ複数の電池単体20を含み、電池単体20は、電極端子21を有し、電極端子21は、電池単体20の第二の方向Xにおける端面22に設けられることが示されている。
図2は、一つの端面22に2つの電極端子21が設けられる構造が示されているが、これに限らない。第二の方向Xにおける対向する別の端面22に電極端子21が設けられてもよい。
【0058】
第一の電池ユニット11と第二の電池ユニット12は第一の方向Zに配列されるが、第一の電池ユニット11と第二の電池ユニット12における電池単体20の電極端子21はいずれも第二の方向Xに向けて設けられるので、
図2に示すように、電池単体20における上蓋51と筐体ケース52により冷却/加熱される面は、電極端子21が設けられる端面22(及び、この端面22と第二の方向Xに対向する別の端面22)ではなく、電極単体10の2つの端面22以外の他の側面である。
【0059】
電池単体20が有する側面のうち、第一の方向Zにおいて上蓋51又は筐体ケース52に隣接する側面は、流体により温度が調節される温度調節面23となる。
【0060】
いくつかの実施例では、
図2に示すように、温度調節面23は、電池単体20の各側面のうち面積が最も大きい。これによって、第一の電池ユニット11における電池単体20の温度調節面23は、上蓋51により温度が調節され、第二の電池ユニット12における電池単体20の温度調節面23は、筐体ケース52により温度が調節される。面積が最も大きい側面を介して温度調節を行うことにより、上蓋51と筐体ケース52による電池単体20の熱管理面積を増大させ、それにより熱管理効率を向上させることができる。
【0061】
図3に示すように、電池1の構造を示す平面概略図である。筐体ケース52は、同様な流路構造を有してもよい。
図3には、電池ユニット10において、第一の方向Xに2つの電池単体20が配列される状態が示されている。以下の各図も同様である。しかし、電池ユニット10は、これに限らず、第一の方向Xに1つ以上の電池単体20が設けられればよい。
【0062】
図3及び
図4に示すように、上蓋51は、第一の方向Z及び第二の方向Xと直交する第三の方向Yに沿って延びる複数のサブ流路31と、第二の方向Xに沿って延び、サブ流路31の第三の方向Yにおける端部に位置して、複数のサブ流路31を連通させる合流流路32と、第二の方向Xに沿ってサブ流路31と交互に設けられる仕切り部33であって、仕切り部33に隣接する2つのサブ流路31を仕切るための仕切り部33とを含む。そのうち、サブ流路31と合流流路32は、上蓋51の流路30を構成する。このような上蓋51の流路30の構造と仕切り部33の構造を採用することにより、上蓋51の剛性を高めることができ、電池単体20の膨張に対する拘束作用が強化され、それにより電池1全体の構造強度が向上する。
【0063】
図4に示すように、
図3のI-I断面図である。
図5に示すように、
図4におけるC部分の拡大概略図である。以下は、上蓋51の構造について詳細に説明する。筐体ケース52の構造は、上蓋51と同じであってもよい。
【0064】
図4に示すように、上蓋51において、第一の方向Zにおいて、仕切り部33の厚さは、仕切り部33以外の部分よりも小さい。上蓋51に厚さが比較的小さい仕切り部33が形成され、仕切り部33の剛性が他の部分に比べて比較的低いため、仕切り部33は電池単体20の膨張とともに変形しやすく、また仕切り部33の厚さが比較的小さいため、膨張空間を提供でき、それにより、上蓋51が膨張力を受けて流路30が潰れて閉塞され、流体の流量に影響を与えることを回避する。
【0065】
この機能を実現するためには、仕切り部33の厚さは、上蓋51における他の部分の厚さよりも小さければよい。この厚さ関係を形成する例として、
図4及び
図5に示す上蓋51の構造がある。
図4及び
図5では、上蓋51は、対向して設けられる凹凸板53と平板54とを含み、凹凸板53の凹部56を平板54にシール接続して仕切り部33が形成され、凹凸板53の凸部55と平板54との間に上蓋51の流路30が形成される。このような凹凸板53と平板54は成形しやすく、凹凸板53と平板54を組み合わせることで、簡単なプロセスにより上蓋51を得ることができるとともに、容易に上蓋51における仕切り部33の厚さをサブ流路31の厚さよりも小さくすることができる。
【0066】
いくつかの実施例では、平板54を凹凸板53よりも電池ユニット10に近接させることにより、上蓋51の電池単体20に面する面は平坦であり、それにより、凹凸板53の凹部56を利用して第一の方向Zにおける高さを低くして、膨張空間を確保することができるとともに、平板54を利用して電池単体20に対する熱管理面積を増加させることができる。
【0067】
第二の方向Xにおいて、温度調節面23は、中央領域Aと、中央領域Aの両側に位置する側辺領域Bとを有する。
【0068】
第二の方向Xにおいて、中央領域Aの長さL1は、温度調節面23の長さLの1/8~1/2であり、中央領域Aは、温度調節面23の中心Oを含む。そのうち、温度調節面23の中心Oとは、温度調節面23の第二の方向Xにおける長さの半分の位置である。電池単体20が膨張変形する際に、その温度調節面23の中央領域Aの変形度合いが比較的大きい。
【0069】
上蓋51において、第一の方向Zにおいて中央領域Aに対向して設けられるのは、仕切り部33である。即ち、第一の方向Zに沿う投影では、温度調節面23の中央領域Aは、仕切り部33と重なる。温度調節面23における変形が比較的大きい中央領域Aと、剛性が比較的低い仕切り部33とが対向して設けられることによって、仕切り部33は、電池単体20の中央領域Aの膨張とともに容易に変形でき、第一の方向Zにおいて、仕切り部33の少なくとも一側に膨張空間があり、それにより、電池単体20の膨張変形を制限することなく、上蓋51の応力を解放することができる。
【0070】
いくつかの実施例では、第二の方向Xにおいて、仕切り部33の長さは、中央領域Aの長さ以上であってもよい。
【0071】
上蓋51において、第一の方向Zにおいて側辺領域Bに対向する位置に少なくとも一つの流路30が設けられている。上蓋51において流路30が設けられる部分は、仕切り部33に比べて剛性が大きいが、電池単体20の温度調節面23では、側辺領域Bの膨張変形の度合いが比較的小さい。そうすると、側辺領域Bに対向する位置に少なくとも一つの流路30を設けることで、上蓋51における側辺領域Bに対向する部位の剛性が向上するが、中央領域Aに対向する部位の柔軟性が高くなるので、電池単体20が第一の方向Zに膨張すると上蓋51と電池単体20との間の距離が大きくなることに起因する効果的な熱管理の面積の低下による熱管理効果への影響を回避できる。
【0072】
図4には、上蓋51と筐体ケース52にそれぞれ上記特徴を有する構造が形成されることが示されているが、上蓋51と筐体ケース52のうちの少なくとも一方がこの構造を有すればよい。
【0073】
図4には、隣接する第一の電池ユニット11と第二の電池ユニット12との間に熱管理部品70が形成される構造がさらに示されている。
図6に示すように、
図4におけるD部分の拡大概略図である。熱管理部品70には、流体を収容し、隣接する第一の電池ユニット11と第二の電池ユニット12に対して温度調節を行うための中間層流路71が形成されている。この場合、上蓋51と筐体ケース52に温度調節用の流路30が集積されているだけではなく、隣接する2層の電池ユニット10の間にも熱管理部品70が設けられているので、隣接する2層の電池ユニット10における電池単体20の対向する面も温度調節されることができ、即ち層間の温度調節面となり、熱管理効率を向上させ、電池単体20の温度をさらに均等化することができる。
【0074】
中間層流路71は、上蓋51の流路30及び筐体ケース52の流路30と連通することができ、これによって、上蓋51の流路30における流体と、筐体ケース52の流路30における流体と、中間層流路71における流体とが連通し、筐体50全体の流体循環を実現するとともに、多層の電池ユニット10の温度一致性を向上させる。
【0075】
熱管理部品70の第一の方向Zにおける2つの端面はそれぞれ隣接する電池単体20に接着され、熱管理部品70の2つの端面は、接着の信頼性を高めるために、それぞれ平坦面として形成されてもよい。熱伝導性の良い接着剤によって熱管理部品70を隣接する電池ユニット10における電池単体20に接着することにより、電池単体20との接着面を介して、隣接する2層の電池ユニット10の温度調節を良好に行うことができ、それにより、上蓋51と筐体ケース52の温度調節に合わせて、熱管理効率を大幅に向上させることができる。
【0076】
熱伝導性の良い接着剤によって熱管理部品70を隣接する電池ユニット10における電池単体20に接着することにより、熱管理部品70を電池ユニット10に安定的に固定して、熱管理部品70の変位による熱管理効果の低下を防止することができる。そうすると、電池単体20との接着面を介して、隣接する2層の電池ユニット10の温度調節を安定的に行い、熱管理効率を向上させることができる。
【0077】
図4及び
図6には、電池1が2層の電池ユニット10を有し、2層の電池ユニット10の間に熱管理部品70が設けられる構造が示されている。電池1が3層以上の電池ユニット10を有する場合、任意の隣接する2層の電池ユニット10の間に以上の態様で熱管理部品70を設けてもよい。
【0078】
図7に示すように、上蓋51が有する緩衝構造27の構造概略図である。第一の方向Zに沿う投影では、緩衝構造27は、温度調節面23の外側に位置し、緩衝構造27は、変形マージンを提供するために用いられる。
図8に示すように、
図7におけるE部分の拡大概略図である。
【0079】
図7及び
図8に示すように、上蓋51には、ボルトを挿入して上蓋51と筐体ケース52を固定するための取付穴28が形成されている。第一の方向Zに沿う投影では、緩衝構造27は、温度調節面23の外側に位置し、且つ取付穴28の内側に位置する。
図7及び
図8には、緩衝構造27は、上蓋51を形成する板を折り曲げることにより形成されることが示され、
図7及び
図8における緩衝構造27は、波形状に形成される。このように折り曲げられた緩衝構造27が形成されているので、電池単体20が膨張変形する際に、緩衝構造27は、それに伴って変形して変形マージンを提供することができる。
図7に示すように、この緩衝構造27は、第三の方向Yに延設される。
【0080】
いくつかの実施例では、
図9に示すように、緩衝構造27は、上蓋51の一部の形成材料を除去することで形成される。例えば上蓋51に溝又は穴が形成され、一部の形成材料を除去することで、この部位は、剛性が低くなって変形しやすくなる。
図9に示すように、緩衝構造27は、第三の方向Yに複数形成された溝又は穴を含む。なお、緩衝構造27が穴である場合、筐体の内部に発生するガスが穴から漏れることを防止するために、穴は上蓋51全体を貫通しない。例えば上蓋51が2つの板で形成される場合、2つの板のうちのいずれの板のみに穴を形成する。溝と穴の形状は、限定されず、
図9は、長方形に形成される例を示した。
【0081】
緩衝構造27を設けることにより、電池単体20が膨張変形する際に、上蓋51全体は、適応的に変形可能で、筐体50全体の構造安定性と安全性を向上させることができる。
【0082】
図7~
図9は、上蓋51が上記特徴性を有する構造として形成されることのみを示したが、筐体ケース52にこの構造を有するようにしてもよい。
【0083】
上記各実施例は、上蓋51について詳細に説明した。筐体ケース52も以上のように設計されてもよいことは理解できる。
【0084】
本出願では、熱管理流路が集積される上蓋51及び/又は筐体ケース52に上記緩衝構造27が形成される例を説明した。電池単体20に隣接する任意の部品には、いずれも電池単体20が膨張変形する際に変形マージンを提供するように緩衝構造27を形成することができる。
【0085】
本出願の一実施例は、電力消費装置をさらに提供する。この電力消費装置は、前述各実施例における電池1を含んでもよい。電池1は、この電力消費装置において電気エネルギーを提供するために用いられる。
【0086】
以上は、本出願の実施例の電池及び電力消費装置が記述され、以下は、本出願の実施例の電池製造方法及び装置について記述し、そのうち詳細に記述されていない部分は、前述各実施例を参照すればよい。
【0087】
図10は、本出願の一実施例の電池製造方法400の例示的なフローチャートを示す。図10に示すように、この方法400は、
第一の方向Zに沿って少なくとも2層配列される電池ユニット10を提供する410と、
上蓋51と筐体ケース52を有し、上蓋51と筐体ケース52にはそれぞれ流体を収容するための流路が形成されている筐体50を提供する420と、
電池ユニット10を上蓋51と筐体ケース52で形成される空間に収納する430とを含み、
第一の方向Zにおいて、電池ユニット10は、トップ層に位置する第一の電池ユニット11と、底層に位置する第二の電池ユニット12とを含み、上蓋51は、流体により第一の電池ユニット11に対して温度調節を行うように配置され、筐体ケース52は、流体により第二の電池ユニット12に対して温度調節を行うように配置されている。
【0088】
図11は、本出願の一実施例の電池製造装置500の例示的なブロック図を示す。図11に示すように、電池製造装置500は、
第一の方向Zに沿って少なくとも2層配列される電池ユニット10を提供するための第一の提供モジュール510と、
上蓋52と筐体ケース52を有し、上蓋51と筐体ケース52にはそれぞれ流体を収容するための流路が形成されている筐体50を提供するための第二の提供モジュール520と、
上蓋51と筐体ケース52で形成される空間内に電池ユニット10を収納するための取り付けモジュール530とを含み、
第一の方向Zにおいて、電池ユニット10は、トップ層に位置する第一の電池ユニット11と、底層に位置する第二の電池ユニット12とを含み、上蓋51は、流体により第一の電池ユニット11に対して温度調節を行うように配置され、筐体ケース52は、流体により第二の電池ユニット12に対して温度調節を行うように配置されている。
【0089】
最後に、以上の実施例は、本願の技術案を説明するためのものであり、制限するものではないことを説明すべきである。前述の実施例を参照して本願について詳細に説明したが、当業者は、依然として前述の各実施案に記載された技術案を修正したり、技術的特徴の一部を均等に置き換えたりすることができるが、これらの修正または置き換えは、対応する技術案の本質を本願の各実施例の技術案の精神と範囲から逸脱させるものではないことを理解すべきである。
【符号の説明】
【0090】
1 電池
2 モータ
3 コントローラ
10 電池ユニット
11 第一の電池ユニット
12 第二の電池ユニット
20 電池単体
21 電極端子
22 端面
23 温度調節面
27 緩衝構造
28 取付穴
30 温度調節用の流路
31 サブ流路
32 合流流路
33 仕切り部
50 筐体
51 上蓋
52 筐体ケース
53 凹凸板
54 平板
55 凸部
56 凹部
60 接続管
70 熱管理部品
71 中間層流路
100 車両
400 電池製造方法
500 電池製造装置
510 第一の提供モジュール
520 第二の提供モジュール
530 取り付けモジュール