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特許7522232動的制御を伴う高スループットマルチビーム荷電粒子検査システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】動的制御を伴う高スループットマルチビーム荷電粒子検査システム
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20240717BHJP
   H01J 37/20 20060101ALI20240717BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/20 D
H01L21/66 J
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022572747
(86)(22)【出願日】2021-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 EP2021061216
(87)【国際公開番号】W WO2021239380
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】102020206739.2
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521126944
【氏名又は名称】カール ツァイス マルティセム ゲゼルシヤフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】ザイドラー ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ビアー ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】アードルフ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー インゴ
(72)【発明者】
【氏名】ベーンケ ミヒャエル
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-208576(JP,A)
【文献】特表2020-511770(JP,A)
【文献】国際公開第2019/238553(WO,A1)
【文献】特開2017-198588(JP,A)
【文献】特表2014-505965(JP,A)
【文献】特開2018-017526(JP,A)
【文献】特開平10-134757(JP,A)
【文献】特開2008-130361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
第1の時間区間Ts1における第1の像パッチ17.1の第1の像取得と、
第2の時間区間Ts2における第2の像パッチ17.2の第2の像取得と、
前記第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から前記第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)までウェハステージ(500)を移動させる第3の時間区間Trであり、前記第1の時間区間Ts1および前記第2の時間区間Ts2の少なくとも一方が重なり合う、第3の時間区間Trと、
を含み、
前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの前記第1の像パッチ17.1の前記第1の中心位置の位置ずれまたは前記ウェハステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、前記第1の像パッチ17.1の像取得の前記第1の時間区間Ts1におけるウェハ移動の前記第3の時間区間Trの開始時間の演算をさらに含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【請求項2】
高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
第1の時間区間Ts1における第1の像パッチ17.1の第1の像取得と、
第2の時間区間Ts2における第2の像パッチ17.2の第2の像取得と、
前記第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から前記第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)までウェハステージ(500)を移動させる第3の時間区間Trであり、前記第1の時間区間Ts1および前記第2の時間区間Ts2の少なくとも一方が重なり合う、第3の時間区間Trと、
を含み、
前記ウェハステージ(500)の移動の前記時間区間Trにおいて、一連のウェハステージ位置を予測するステップと、
前記予測したウェハステージ位置から、少なくとも第1および第2の制御信号を演算するステップと、
前記第1の制御信号を前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の一次ビーム経路(13)中の第1の偏向系(110)に供給し、前記第2の制御信号を前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の二次ビーム経路(11)中の第2の偏向系(222)に供給するステップと、
をさらに含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【請求項3】
前記第2の像パッチ17.2の前記第2の像取得が、前記ウェハステージ(500)が完全に停止した場合、前記第3の時間区間Trの終了の前に開始される、請求項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【請求項4】
ウェハ移動の前記第3の時間区間Trが、前記第1の像パッチ17.1の像取得が終了となった場合、前記時間区間Ts1の終了の前に開始される、請求項1~3のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【請求項5】
前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの前記第2の像パッチ17.2の前記第2の中心位置21.2の位置ずれまたは前記ウェハステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、ウェハステージ移動の前記時間区間Trにおける前記第2の像取得の前記第2の時間区間Ts2の開始時間の演算をさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【請求項6】
高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子システム(1)であって、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のスポット位置(5)で物体面(101)に配置されたウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)の生成のため、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、前記ウェハ表面(25)を走査する第1の偏向系(110)を備えた物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)、第2の偏向系(222)、および像センサ(207)を備え、前記複数の二次電子ビームレット(9)を前記像センサ(207)上に結像する(image)とともに、使用時、前記ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)および第2の像パッチ(17.2)のデジタル像を取得する検出ユニット(200)と、
ステージ動作コントローラを備えたサンプルステージ(500)であり、前記ステージ動作コントローラが、独立して制御されるように構成された複数のモータを備え、前記ステージが、前記第1の像パッチ(17.1)および前記第2の像パッチ(17.2)の前記デジタル像の取得時に、前記物体面(101)において前記ウェハ表面(25)を位置決めおよび保持するように構成された、サンプルステージ(500)と、
ステージ位置センサ(520)および前記像センサ(207)を備え、使用時、前記サンプルステージ(500)の位置データを含む複数のセンサデータを生成するように構成された複数の検出器と、
使用時、第1の時間区間Ts1における前記第1の像パッチ17.1の第1の像取得および第2の時間区間Ts2における前記第2の像パッチ17.2の第2の像取得を実行するように構成されるとともに、第3の時間区間Trにおける前記サンプルステージ(500)のトリガによって、前記第1の時間区間Ts1および前記第2の時間区間Ts2の少なくとも一方が前記第3の時間区間Trと重なり合うように、前記第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から前記第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)まで前記サンプルステージ(500)を移動させるように構成された制御ユニット(800)と、
を備え、
前記制御ユニットが、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの前記第1の像パッチ17.1の前記第1の中心位置の位置ずれまたはサンプルステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、前記第1の像パッチ17.1の像取得の前記第1の時間区間Ts1におけるウェハ移動の前記第3の時間区間Trの開始時間を決定するようにさらに構成された、システム。
【請求項7】
高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子システム(1)であって、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のスポット位置(5)で物体面(101)に配置されたウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)の生成のため、前記複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、前記ウェハ表面(25)を走査する第1の偏向系(110)を備えた物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)、第2の偏向系(222)、および像センサ(207)を備え、前記複数の二次電子ビームレット(9)を前記像センサ(207)上に結像する(image)とともに、使用時、前記ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)および第2の像パッチ(17.2)のデジタル像を取得する検出ユニット(200)と、
ステージ動作コントローラを備えたサンプルステージ(500)であり、前記ステージ動作コントローラが、独立して制御されるように構成された複数のモータを備え、前記ステージが、前記第1の像パッチ(17.1)および前記第2の像パッチ(17.2)の前記デジタル像の取得時に、前記物体面(101)において前記ウェハ表面(25)を位置決めおよび保持するように構成された、サンプルステージ(500)と、
ステージ位置センサ(520)および前記像センサ(207)を備え、使用時、前記サンプルステージ(500)の位置データを含む複数のセンサデータを生成するように構成された複数の検出器と、
使用時、第1の時間区間Ts1における前記第1の像パッチ17.1の第1の像取得および第2の時間区間Ts2における前記第2の像パッチ17.2の第2の像取得を実行するように構成されるとともに、第3の時間区間Trにおける前記サンプルステージ(500)のトリガによって、前記第1の時間区間Ts1および前記第2の時間区間Ts2の少なくとも一方が前記第3の時間区間Trと重なり合うように、前記第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から前記第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)まで前記サンプルステージ(500)を移動させるように構成された制御ユニット(800)と、
を備え、
前記制御ユニットが、前記サンプルステージ(500)の移動の前記時間区間Trにおいて、一連のサンプルステージ位置を予測し、前記予測したサンプルステージ位置から、少なくとも第1および第2の制御信号を演算し、前記第1の制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の一次ビーム経路(13)中の第1の偏向系(110)に供給し、前記第2の制御信号を前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の二次ビーム経路(11)中の第2の偏向系(222)に供給するようにさらに構成された、システム。
【請求項8】
前記制御ユニットが、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの前記第2の像パッチ17.2の前記第2の中心位置21.2の位置ずれまたは前記サンプルステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、サンプルステージ移動の前記時間区間Trにおける前記第2の像取得の前記第2の時間区間Ts2の開始時間を決定するようにさらに構成された、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子システム(1)を動作させる方法であって、
第1の像パッチ17.1の第1の像取得と、第2の像パッチ17.2の第2の像取得と、前記第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から前記第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)までウェハステージ(500)を移動させることと、をすべて時間区間TG内に含み、
第1の像パッチ17.1の前記第1の像取得が、第1の時間区間Ts1にあり、
第2の像パッチ17.2の前記第2の像取得が、第2の時間区間Ts2にあり、
前記第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から前記第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)まで前記ウェハステージ(500)を移動させることが、第3の時間区間Trにあり、
前記時間区間TGが、Ts1、Ts2、およびTrの合計よりも短い、すなわち、TG<Ts1+Ts2+Trであり、
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの前記第1の像パッチ17.1の前記第1の中心位置の位置ずれまたは前記ウェハステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、前記第1の像パッチ17.1の像取得の前記第1の時間区間Ts1におけるウェハ移動の前記第3の時間区間Trの開始時間の演算をさらに含む、マルチビーム荷電粒子システム(1)を動作させる方法。
【請求項10】
高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子システム(1)を動作させる方法であって、
第1の像パッチ17.1の第1の像取得と、第2の像パッチ17.2の第2の像取得と、前記第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から前記第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)までウェハステージ(500)を移動させることと、をすべて時間区間TG内に含み、
第1の像パッチ17.1の前記第1の像取得が、第1の時間区間Ts1にあり、
第2の像パッチ17.2の前記第2の像取得が、第2の時間区間Ts2にあり、
前記第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から前記第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)まで前記ウェハステージ(500)を移動させることが、第3の時間区間Trにあり、
前記時間区間TGが、Ts1、Ts2、およびTrの合計よりも短い、すなわち、TG<Ts1+Ts2+Trであり、
前記ウェハステージ(500)の移動の前記時間区間Trにおいて、一連のウェハステージ位置を予測するステップと、
前記予測したウェハステージ位置から、少なくとも第1および第2の制御信号を演算するステップと、
前記第1の制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の一次ビーム経路(13)中の第1の偏向系(110)に供給し、前記第2の制御信号を前記マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の二次ビーム経路(11)中の第2の偏向系(222)に供給するステップと、
をさらに含む、マルチビーム荷電粒子システム(1)を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム荷電粒子検査システムおよびマルチビーム荷電粒子検査システムを動作させる方法に関する。より詳細に、本発明は、高スループット、高分解能、および高信頼性のウェハ検査のためのマルチビーム荷電粒子線検査システム、関連する方法、ならびにコンピュータプログラム製品に関する。この方法およびマルチビーム荷電粒子線検査システムは、複数のセンサデータから、一組の制御信号を抽出して、マルチビーム荷電粒子線検査システムを制御するように構成されている。
【背景技術】
【0002】
半導体装置等の微細構造体の小型化および高機能化の継続した発展に伴い、微細構造体の微小寸法の加工および検査のための平面加工技術および検査システムのさらなる開発および最適化が求められている。半導体装置の開発および加工には、たとえばテストウェーハの設計検証が必要であり、平面加工技術には、信頼性のある高スループットの加工のためのプロセス最適化を伴う。また近年、半導体装置のリバースエンジニアリングおよび個別のカスタマイズ構成のため、半導体ウェハの解析が必要となっている。したがって、ウェハ上の微細構造体を高精度に調べる高スループット検査ツールが求められている。
【0003】
半導体装置の製造に用いられる通常のシリコンウェハは、直径が最大12インチ(300mm)である。各ウェハは、最大およそ800平方mmサイズの30~60個の繰り返しエリア(「ダイ」)に分割される。半導体は、平面集積技術によってウェハの表面に層状に加工された複数の半導体構造を含む。半導体ウェハは、それに関連する加工プロセスのため、通常は平らな表面を有する。集積半導体構造のフィーチャサイズは、数μmから5nmの限界寸法(CD)までの範囲にあり、近い将来には、フィーチャサイズはさらに小さくなり、3nm未満(たとえば、2nm)あるいは1nm未満のフィーチャサイズまたは限界寸法までになる。前述の小さな構造サイズでは、非常に広い面積で短時間に限界寸法のサイズの欠陥を識別する必要がある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、半導体装置の開発中もしくは製造中またはリバースエンジニアリングにおいて、少なくとも限界寸法の分解能での集積半導体フィーチャの高スループット検査を可能にする荷電粒子システムおよび荷電粒子システムの動作方法を提供することである。また、ウェハ上の一組の特定位置(たとえば、いわゆるプロセス制御モニタPCMまたは重要エリアのみ)の高分解能像を取得することも可能である。
【0005】
荷電粒子顕微鏡CPMの分野で最近開発されたのがMSEM(マルチビーム走査型電子顕微鏡)である。マルチビーム荷電粒子線顕微鏡は、たとえば米国特許第7244949号、米国特許出願公開第20190355545号、または米国特許出願公開第US20190355544号に開示されている。マルチビーム電子顕微鏡またはMSEM等のマルチビーム荷電粒子顕微鏡においては、たとえば、一次放射として、4~10000本の電子ビームを含むことから各電子ビームが隣接する電子ビームから1~200マイクロメートルの距離だけ分離された電子ビームレットのアレイによってサンプルが照射される。たとえば、MSEMでは、およそ100本の分離された電子ビームすなわちビームレットが六角形のアレイ状に配置され、およそ10μmの距離だけ分離されている。複数の一次荷電粒子ビームレットは、共通の対物レンズによって、調査対象サンプル(たとえば、可動ステージに搭載されたウェハチャックに固定された半導体ウェハ)の表面に集束される。一次荷電粒子ビームレットによるウェハ表面の照射中は、一次荷電粒子ビームレットの焦点により形成された複数の交差点から相互作用生成物(たとえば、二次電子)が生じる一方、相互作用生成物の量およびエネルギーは、ウェハ表面の材料組成およびトポグラフィによって決まる。相互作用生成物が複数の二次荷電粒子ビームレットを形成し、これが共通の対物レンズによって収集され、マルチビーム検査システムの投射結像系によって、検出器平面に配置された検出器上へとガイドされる。検出器は、それぞれが複数の検出画素を備えた複数の検出エリアを含み、複数の二次荷電粒子ビームレットそれぞれの強度分布を検出するため、たとえば100μm×100μmの像パッチが得られる。
【0006】
従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一連の静電・磁気素子を備える。静電・磁気素子の少なくとも一部を調整することによって、複数の二次荷電粒子線の焦点位置およびスティグマを調整可能である。一例として、米国特許第10535494号は、二次荷電粒子ビームレットの焦点の検出強度分布が所定の強度分布から外れている場合の荷電粒子顕微鏡の再調整を提案している。検出強度分布が所定の強度分布に従う場合に、調整が実現される。二次荷電粒子ビームレットの強度分布の大域的な変位または変形によって、トポグラフィ効果、サンプルの形状もしくは傾斜、またはサンプルの帯電効果についての結論に達し得る。米国特許第9336982号は、二次荷電粒子を光に変換するシンチレータプレートを備えた二次荷電粒子検出器を開示している。シンチレータプレートの変換効率の低下を抑えるため、複数の二次荷電粒子ビームレットの焦点スポットおよびシンチレータプレートの相対的な横方向位置は、たとえば荷電粒子ビーム偏向器またはシンチレータプレートの横方向変位用アクチュエータにより可変である。
【0007】
従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一次または二次荷電粒子ビームレットの少なくとも1つのクロスオーバ面を備える。従来技術のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、調整を容易化する検出システムおよび方法を備える。
【0008】
一般的には、荷電粒子顕微鏡の結像設定を変更するのが望ましい。マルチビーム荷電粒子顕微鏡の像取得設定を第1の結像設定から第2の異なる結像設定に変更する方法が米国特許第9799485号に記載されている。
【0009】
ただし、ウェハ検査用の荷電粒子顕微鏡においては、高信頼性かつ高再現性の結像が実行され得るように、結像条件を安定に保つことが望まれる。スループットは、複数のパラメータ(たとえば、ステージおよび新たな測定部位での再位置合わせの速度)のほか、取得時間当たりの測定面積自体によって決まる。後者は、ビームレットの滞留時間、分解能、および数によって決まる。ウェハは、2つの像パッチの取得の間に、ウェハステージによって次の関心点まで横方向に移動する。像取得のための次の位置へのステージの移動および正確な位置合わせは、マルチビーム検査システムのスループットを制限する因子のうちの1つである。高スループットの像取得中は、不要なステージの移動またはドリフトによって、像分解能が低下し得る。高スループットの像取得中は、一次および二次荷電粒子線の所定の経路のドリフトおよびずれが測定結果の像品質および信頼性に悪影響を及ぼす。たとえば、平面エリアセグメント内のラスター構成によって複数の一次荷電粒子ビームレットが劣化する可能性もあるし、マルチビーム荷電粒子検査システムの分解能が変化する可能性もある。
【0010】
シングルビーム電子顕微鏡では一般的に、電子ビームおよびステージ移動の位置決め精度を向上させるため、いわゆるビーム誤差機能(BEF)を使用する。BEFは、この目的でサンプルをビーム偏向系に保持するステージに由来する(位置)信号をフィードバックする。最近の例が国際公開WO2020/136094号に記載されている。ただし、マルチビーム荷電粒子顕微鏡がより複雑である一方、シングルビーム電子顕微鏡の単純な方法では不十分である。たとえば、従来技術では、ウェハステージに対する複数の一次荷電粒子ビームレットの複数の焦点の回転を補償できない。さらに、マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の二次電子ビームレットを検出器上に結像する(image)ための投射結像系を有するため、複数の二次電子の正確な結像を保つ必要がある。また、二次ビーム経路の収差についても同様に、分離して考慮する必要がある。
【0011】
米国特許第9530613号は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の焦点制御の方法を示している。複数の荷電粒子ビームレットの部分集合が非点収差形態に成形され、焦点位置のずれの検出に用いられる。非点収差形状のビームレットの各楕円形状から、誤差信号が生成され、サンプルステージの鉛直方向位置が調整されるか、または、荷電粒子顕微鏡の1つまたは複数のレンズを通る電流が変更される。これにより、複数の荷電粒子ビームレットの焦点スポットが最適化される。この方法は、走査型電子顕微鏡の通常の動作と並行して行われる。ただし、この方法は、焦点制御のフィードバックループを提供するだけであり、予測制御を提供するわけでもなければ、ステージ位置センサからのセンサ信号を考慮するわけでもない。
【0012】
米国特許出願公開第20190355544号または米国特許出願公開第20190355545号は、走査中にサンプルの帯電を補償する調整可能な投射系を備えたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を開示している。したがって、投射系には、サンプルから検出器への二次荷電粒子ビームレットの適正な結像を保つ高速静電素子が構成されている。両文献において、二次ビームレットの結像品質を解析するとともに、二次電子ビーム経路におけるサンプル帯電による劣化を補償する像検出器を使用している。両文献とも、二次電子ビームレットがサンプル表面を起点とする場合の二次電子ビーム経路の制御のための方法および装置を記載する。ただし、本発明の課題として、一次ビーム経路内にも誤差源が存在しており、基板表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットのスポット位置およびスポット形状の劣化の原因となる。さらに、付加的な誤差源が基板テーブルの位置決め誤差または移動となって、一次または二次ビーム経路の劣化なく、物体の取得デジタル像における収差となり得る。これらの付加的な収差および誤差は、異なる時間スケールで可変となり得る(たとえば、熱ドリフトのような低速変動ドリフト)。別の例として、たとえば音響振動等により高速に変動する動的収差がある。これらの誤差は、二次ビーム経路中の手段だけでは補償できない。本発明の課題は、高スループットかつ高信頼性の高精度かつ高分解能像取得を可能にする手段を備えたマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。本発明の課題として、ステージの正確な位置合わせの時間が減っても、複数の一次荷電粒子ビームレットの横方向位置および焦点を所定の位置精度で所定のラスター構成に維持する手段を含む高速ステージを備えたマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することがある。本発明の課題として、一連の像パッチの高スループットかつ高信頼性の像取得中の高分解能および高像コントラストを維持する手段を備えたマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することがある。本発明の課題として、第1の検査部位から第2の検査部位にウェハを移動させるステージを備えた高スループットかつ高信頼性のマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することがある。本発明の課題として、所定の一次および二次荷電粒子線経路のドリフトのほか、ステージ移動(たとえば、寄生ステージ移動)を補償する手段を備えたマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することがある。
【0013】
ステージの加速、減速、およびリングダウンを含むステージ移動は、マルチビーム検査システムのスループットを制限する因子のうちの1つである。短時間でのステージの加速および減速には、複雑で高価なステージを必要とする。本発明の課題は、技術的な複雑性およびコストを抑えたステージによって、高スループットかつ高信頼性の高精度かつ高分解能像取得を可能にする手段を備えたマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。
【0014】
一般的に、本発明の課題は、高信頼性かつ高スループットの高精度かつ高分解能像取得を可能にする手段を備えたウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子検査システムを提供することである。
【発明の概要】
【0015】
本発明の実施形態は、像パッチの像取得時に誤差振幅の変化を補償する一組の補償器を備えたマルチビーム荷電粒子顕微鏡によって、本発明の目的を達成する。このマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数のセンサデータを与えるとともに、複数のセンサデータから、所定の一組の正規化誤差ベクトルの一組の実際の誤差振幅を抽出する複数の検出器またはセンサを備える。正規化誤差ベクトルの導出によって、異なる誤差源からの寄与を分離可能である。これらの異なる誤差源には、一次荷電粒子線経路、二次電子ビーム経路、およびステージの位置内の誤差源を含む。このマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一組の結像収差に対応する一組の誤差振幅を補償することにより、像パッチのデジタル像の像取得時に、実際の誤差振幅を所定の閾値未満に保つ一組の補償器を駆動する駆動信号を導出する制御ユニットを備える。異なる誤差源からの寄与を表す正規化誤差ベクトルから、一次荷電粒子線経路内の第1の補償器および二次電子ビーム経路内の第2の補償器の少なくとも一方を含む一組の補償器の駆動信号が導出される。別の補償器としては、取得デジタル像の演算像後処理またはウェハステージ内の補償器が挙げられる。
【0016】
一例において、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、一組の誤差振幅のうちの少なくとも1つの誤差振幅の変化を予測し、これに応じて、対応する駆動信号を一組の補償器に供給するように構成されている。一例において、複数のセンサデータには、ステージ位置センサまたはステージ加速センサからのデータを含む。一例において、一組の補償器は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の第1および第2の偏向系または偏向走査子を含む。別の例において、一組の補償器は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の検出ユニットにおける第3の偏向系を含む。一例において、一組の補償器は、少なくとも高速静電補償器またはマルチアパーチャアクティブアレイ素子をさらに含む。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、高スループットかつ高信頼性の高精度かつ高分解能像取得を可能にする手段を備えたマルチビーム荷電粒子検査システムが提供される。ウェハステージおよびウェハステージの位置を制御する手段が設けられ、ウェハステージは、ウェハ等のサンプルを保持するように構成され、x方向、y方向、またはz方向のうちの少なくとも1つの方向に移動可能である。ステージは通常、独立して作動または制御可能な複数のモータまたはアクチュエータを備えたステージ動作コントローラを備える。モータまたはアクチュエータとしては、圧電モータ、圧電アクチュエータ、または超音波圧電モータのうちの少なくとも1つが挙げられる。また、ステージの横方向および鉛直方向の変位または回転を決定するように構成された位置検知システムをさらに備える。位置検知システムには、レーザ干渉計、静電容量センサ、共焦点センサアレイ、格子干渉計のいずれか、またはこれらの組み合わせを使用する。
【0018】
このマルチビーム荷電粒子検査システムには、ウェハ表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点の横方向位置を維持する手段と、複数の二次電子ビームレットの焦点の横方向位置を維持する手段と、が設けられており、それぞれが所定のラスター構成であるとともに、一組の閾値未満の所定の位置精度である。これにより、一例においては、ステージの正確な位置合わせの時間の短縮が実現される。別の例においては、像取得およびウェハステージ移動に必要な時間区間を重ね合わせることにより、スループットがさらに向上する。付加的な手段としては、複数の一次荷電粒子ビームレットの偏向を走査する第1の偏向ユニットおよび複数の二次電子ビームレットの偏向を走査する少なくとも第2の偏向ユニットが挙げられる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、一連の像パッチの高スループットかつ高信頼性の像取得中の高分解能および高像コントラストを維持する手段を備えたマルチビーム荷電粒子検査システムが提供される。第1および第2の像取得時に、像センサおよびステージ位置センサからのセンサデータを含む複数のセンサデータが生成される。このマルチビーム荷電粒子検査システムは、複数のセンサデータから一組の制御信号を生成するように構成された制御ユニットを備える。一組の制御信号は、一組の補償器を制御する制御モジュールに供給される。本発明の一実施形態によれば、所定の一次および二次荷電粒子線経路のドリフトのほか、ステージ移動を補償する手段を備えたマルチビーム荷電粒子検査システムが提供される。
【0020】
一例によれば、マルチビーム荷電粒子線システムは、サンプルに入射する複数の一次荷電粒子ビームレットを偏向させる第1の信号の適用によって、ステージの横方向変位を少なくとも部分的に補償するとともに、サンプル上の偏向した一次荷電粒子ビームレットの位置から生じた複数の二次電子ビームレットを偏向させる第2の信号の適用によって、複数の二次電子ビームレットの変位を少なくとも部分的に補償するように構成されたコントローラまたは制御ユニットを備える。第1の信号は、X軸またはY軸の少なくとも一方における複数の一次荷電粒子ビームレットの偏向の仕方に影響を及ぼす電気信号を含む。コントローラは、サンプル上の複数の一次荷電粒子ビームレットの走査中に、第1の信号または第2の信号の少なくとも一方を動的に調整するようにさらに構成されている。コントローラはステージ動作コントローラに接続されており、ステージが一次荷電粒子線の光軸と実質的に垂直となるように、複数のモータそれぞれがステージの傾斜を調整するように独立して制御される。本発明の一実施形態によれば、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムは、使用時、第1の荷電粒子線を生成するように構成された荷電粒子源と、使用時、入射する第1の荷電粒子線から、複数の一次荷電粒子ビームレットを生成するように構成されたマルチビーム生成器と、を備え、複数の一次荷電粒子ビームレットの個々のビームレットが、複数の荷電粒子ビームレットのその他すべてのビームレットから空間的に分離されている。このマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムは、複数の荷電粒子ビームレットのうちの第1の個々の一次ビームレットが物体面に衝突する第1の像サブフィールドが、複数の一次荷電粒子ビームレットのうちの第2の個々の一次ビームレットが物体面に衝突する第2の像サブフィールドから空間的に分離されるように、ウェハ表面が設けられた物体面に入射する一次荷電粒子ビームレットを集束させるように構成された対物レンズを含む物体照射ユニットをさらに備える。このマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムは、投射系と、複数の個々の検出器を備えた像センサと、を含む検出ユニットをさらに備える。投射系は、複数の個々の検出器のうちの第1の検出器または第1群の検出器に対する一次荷電粒子の衝突によって物体面内の第1の像サブフィールド中のウェハから放出された二次電子を結像するとともに、複数の個々の検出器のうちの第2の検出器または第2群の検出器に対する一次荷電粒子の衝突によって物体面内の第2の像サブフィールド中のウェハから放出された二次電子を結像するように構成されている。
【0021】
一実施形態において、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムは、誤差振幅の動的変化の高速補償を提供する高速補償器の部分集合を備える。高速補償器の部分集合には、静電レンズ、静電偏向器、静電非点収差補正器、静電マイクロレンズアレイ、静電非点収差補正器アレイ、または静電偏向器アレイのうちの少なくとも1つを含む。静電偏向器および/または静電非点収差補正器等の静電素子には、渦電流も誘導性もなく、誤差振幅の動的変化の補償のために10μs未満の範囲の調整時間が与えられる、という利点がある。
【0022】
動的変化の高速補償を提供するサブコンポーネントは、一次荷電粒子ビームレットが走査される走査周波数と同等の調整周波数を提供可能である。すなわち、動的変化の高速補償は、複数の一次荷電粒子ビームレットによってウェハ表面上の像パッチの像取得が実行されている間に複数回すなわち2回以上実行され得る。通常のライン走査周波数は、1kHz~5kHzのオーダであり、動的補償素子の電気駆動信号の周波数帯域としては、0.1kHz~10kHzの範囲が可能であるため、たとえば50走査ライン毎または10回の1走査ライン毎の補償を提供可能である。
【0023】
一実施形態において、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムは、誤差振幅の低速変化すなわちドリフトの補償を提供する低速動作補償器の部分集合を備える。低速動作補償器の部分集合には、磁気レンズ、磁気偏向器、磁気非点収差補正器、または磁気ビームスプリッタのうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
一実施形態においては、ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡が提供される。このウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の一次荷電粒子ビームレットを生成する荷電粒子マルチビームレット生成器と、物体面に配置されたウェハ表面のエリアを複数の一次荷電粒子ビームレットで走査することにより、ウェハ表面から放出される複数の二次電子ビームレットを生成する第1の偏向系を備えた物体照射ユニットと、を備える。このウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、複数の二次電子ビームレットを結像するとともに、使用時、ウェハ表面の第1の像パッチのデジタル像を取得する投射系、第2の偏向系、および像センサを備えた検出ユニットをさらに備える。このウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、第1の像パッチのデジタル像の取得時に、物体面においてウェハ表面を位置決めおよび保持するステージ位置センサを備えたサンプルステージをさらに備える。第1の偏向系は、ウェハがウェハステージに保持されている間に、ウェハ表面上の所定の走査経路に沿って複数の一次荷電粒子ビームレットを走査し、第2の偏向ユニットは、所定の走査経路に沿って複数の二次電子ビームレットを走査することにより、複数の二次電子ビームレットの像点が検出ユニットの像センサに固定されて一定となるようにする。このウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、制御ユニットと、使用時、サンプルステージの位置および配向データを含む複数のセンサデータを生成するように構成されたステージ位置センサおよび像センサを含む複数の検出器と、をさらに備える。このウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、少なくとも第1および第2の偏向系を備えた一組の補償器をさらに備える。制御ユニットは、第1の像パッチのデジタル像の取得時に、複数のセンサデータから一組のP個の制御信号Cpを生成して、一組の補償器を制御するように構成されている。一組の補償器は、荷電粒子マルチビームレット生成器の補償器および検出ユニットの補償器のうちの少なくとも1つをさらに含み得る。一例において、制御ユニットは、使用時、複数のセンサデータを解析するとともに、使用時、K個の誤差ベクトルの一組のK個の振幅Akを演算するように構成されたセンサデータ解析システムを備える。一実施形態において、制御ユニットは、使用時、像センサデータの10%未満、好ましくは2%未満を表す像センサデータ断片まで像センサからの像センサデータを縮小し、この像センサデータ断片をセンサデータ解析システムに提供するように構成された像データ取得ユニットをさらに備える。一例において、像センサデータ断片には、低サンプリングレートでの複数の二次電子ビームレットのデジタル像データを含む。一例において、像センサデータ断片には、縮小した一組の二次電子ビームレット(9)のデジタル像データを含む。
【0025】
一例において、センサデータ解析システムは、誤差ベクトルの一組の振幅Akのうちの少なくとも1つの振幅Anの時間的推移を導出または予測するようにさらに構成されている。
【0026】
一例において、制御ユニットは、誤差ベクトルの一組の振幅Akから一組の制御信号Cpを演算する制御演算プロセッサをさらに備える。一例において、複数または一組の制御信号のうちの少なくとも1つの抽出はさらに、ステージの作動出力の予測モデルに基づく。
【0027】
一例において、センサデータ解析システムは、複数のセンサデータから、長さL(L≧K)のセンサデータベクトルDVを導出するように構成されている。
【0028】
一例において、制御ユニットは、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つを演算して第1および第2の偏向ユニットに供給することにより、サンプルステージの位置または配向の変化を補償するように構成されている。サンプルステージの位置または配向の変化は、ステージの横方向変位によって与えられ、X-Y軸の少なくとも一方におけるステージの現在の位置および回転とステージの目標位置および回転との差に対応する。
【0029】
制御ユニットは、複数のセンサデータから、物体照射ユニット中の第1の補償器の駆動信号を導出して、ウェハ表面の横方向変位と同期した複数の一次荷電粒子ビームレットの走査スポット位置の付加的な変位を実現するように構成されている。一例において、付加的な変位には、複数の一次荷電粒子ビームレットのラスター構成の回転を含む。制御ユニットは、投射系中の第2の補償器による変位ウェハ表面上のスポット位置の付加的な変位を補償するようにさらに構成されており、投射系中の第2の補償器は、物体照射ユニット中の第1の補償器と同期して動作することにより、像検出器上の複数の二次電子ビームレットのスポット位置を一定に保つように構成されている。一例においては、物体照射ユニット中の第1の補償器が第1の偏向系であり、制御ユニットは、複数の一次荷電粒子ビームレットの走査スポット位置の付加的な変位または回転の制御信号を演算して第1の偏向系に供給することにより、サンプルステージの変位または回転を補償するように構成されている。一例においては、投射系中の第2の補償器が第2の偏向系であり、制御ユニットは、制御信号を演算して第2の偏向系に供給することにより、変位ウェハ表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットの走査スポット位置の付加的な変位または回転を補償するように構成されている。これにより、二次電子ビームレットのスポット位置は、ウェハステージの変位または移動に応じた走査経路の修正に関わらず、像センサにおいて一定に保たれる。
【0030】
一実施形態において、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡の荷電粒子マルチビームレット生成器は、高速補償器をさらに備えており、制御ユニットは、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つを演算し、高速補償器に供給して、複数の一次荷電粒子ビームレットの回転を誘導することにより、サンプルステージの回転を補償するように構成されている。一実施形態において、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットは、第2の像パッチのデジタル像の像取得のため、ウェハステージにより、物体面における第2の像パッチの第2の中心位置までウェハ表面を移動させる第3の制御信号を生成するようにさらに構成されている。一実施形態において、制御ユニットは、第2の像パッチの第2の中心位置までのウェハステージの移動の時間区間Trにおいて、複数のセンサデータからの第2の一組のP個の制御信号Cpを演算することにより、一組の補償器を制御するようにさらに構成されている。一実施形態において、制御ユニットは、時間区間Trにおける第2の像パッチの像取得の開始時間を演算するとともに、ウェハステージの減速時間区間Tdにおいて第2の像パッチの像取得を開始するようにさらに構成されており、また、時間区間Tdにおけるウェハステージの予測オフセット位置の少なくともオフセット信号を第1および第2の偏向系に供給するようにさらに構成されている。
【0031】
一実施形態においては、マルチビーム荷電粒子顕微鏡によるウェハ検査の方法が提供される。この方法のマルチビーム荷電粒子顕微鏡は、像センサおよびステージ位置センサを備えた複数の検出器と、少なくとも第1および第2の偏向系を備えた一組の補償器と、を備える。この方法は、
a.マルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線を含むローカルウェハ座標系の位置に対してウェハのウェハ表面を位置決めおよび位置合わせするステップと、
b.像取得を実行して、ウェハ表面の第1の像パッチのデジタル像を取得するステップと、
c.像取得のステップにおいて、複数の検出器から複数のセンサデータを収集するステップと、
d.複数のセンサデータから、一組のK個の誤差振幅Akを導出するステップと、
e.一組の誤差振幅Akから、一組のP個の制御信号Cpを導出するステップと、
f.像取得のステップbにおいて、一組の制御信号Cpを一組の補償器に供給するステップと、
を含む。
【0032】
一実施形態において、このウェハ検査の方法は、複数のセンサデータから、長さL(L≧K)のセンサデータベクトルDVを導出するステップ(g)をさらに含む。一実施形態において、このウェハ検査の方法は、誤差ベクトルの一組の振幅Akのうちの少なくとも1つの振幅Anの時間的推移を導出するステップ(h)をさらに含む。一実施形態において、このウェハ検査の方法は、制御信号Cpを第1および第2の偏向ユニットに供給することにより、サンプルステージの位置または配向の変化を補償するステップ(i)をさらに含む。一実施形態において、このウェハ検査の方法は、一組の誤差振幅Akから第2の一組の制御信号Cpを導出し、ウェハのウェハ表面の位置決めおよび位置合わせのステップa)において、第2の一組の制御信号を供給するステップ(j)をさらに含む。
【0033】
本発明の一実施形態においては、ウェハ検査タスクの結像仕様要件に応じた高スループットかつ高分解能の荷電粒子顕微鏡および荷電粒子顕微鏡を動作させる方法が提供され、第1の時間区間Ts1における第1の像パッチの第1の像取得および第2の時間区間Ts2における第2の像パッチの第2の像取得を含み、第1の像パッチの第1の中心位置から第2の像パッチの第2の中心位置までサンプルステージを移動させる第3の時間区間Trをさらに含み、第1および第2の時間区間Ts1またはTs2の少なくとも一方が第3の時間区間Trと重なり合うようにする一連の像取得ステップにおいて、一連の像パッチが結像される。第1の時間区間Ts1の開始から第2の時間区間Ts2の終了までの総時間区間は、3つの時間区間Ts1、Tr、およびTs2の合計よりも短く、高スループットの高速ウェハ検査が実現される。一例において、第2の像パッチの第2の像取得は、サンプルステージが完全に停止した場合、第3の時間区間Trの終了の前に開始される。一例において、サンプル移動の第3の時間区間Trは、第1の像パッチの像取得が終了となった場合、時間区間Ts1の終了の前に開始される。この方法の一例において、ウェハ移動の第3の時間区間Trの開始時間の演算は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線からの第1の像パッチの第1の中心位置の位置ずれまたはサンプルステージの移動速度が所定の閾値を下回るように、第1の像パッチの像取得の第1の時間区間Ts1において実行される。この方法の一例において、第2の像取得の第2の時間区間Ts2の開始時間の演算は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線からの第2の像パッチの第2の中心位置の位置ずれまたはサンプルステージの移動速度が所定の閾値を下回るように、サンプルステージ移動の時間区間Trにおいて実行される。
【0034】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法の一例において、この方法は、
ウェハステージの移動の時間区間Trにおいて、一連のサンプルステージ位置を予測するステップと、
予測したサンプルステージ位置から、少なくとも第1および第2の制御信号を演算するステップと、
第1の制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡の一次ビーム経路中の第1の偏向系に供給し、第2の制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡の二次ビーム経路中の第2の偏向系に供給するステップと、
をさらに含む。
【0035】
一例において、荷電粒子顕微鏡は、第1の像パッチの第1の像取得に、第1の像パッチから第2の像パッチまでのサンプルステージ移動の開始時間を演算するように構成された制御ユニットを備える。本発明の一例において、荷電粒子顕微鏡は、第1の像パッチから第2の像パッチまでのサンプルステージ移動時に、第2の像パッチの第2の像取得の開始時間を演算するように構成された制御ユニットを備える。
【0036】
一実施形態においては、ウェハ検査用に構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法であって、
一組の像品質および一組の像品質からの逸脱を表す一組の所定の正規化誤差ベクトルを規定する予備ステップと、
一組の正規化誤差ベクトルの振幅に対する一組の閾値を決定する予備ステップと、
マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の補償器を選択する予備ステップと、
一組の補償器それぞれの少なくとも駆動信号の変動によって、線形および/または非線形摂動モデルに応じた感度行列を決定する予備ステップと、
一組の正規化誤差ベクトルそれぞれを補償する一組の正規化駆動信号を導出する予備ステップと、
正規化駆動信号および一組の閾値をマルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットのメモリに格納する予備ステップと、
を含む方法が記載される。
【0037】
一例において、一組の補償器は、複数の一次荷電粒子の走査および偏向のためのマルチビーム荷電粒子顕微鏡の第1の偏向ユニットと、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の使用時に生成された複数の二次電子の走査および偏向のための第2の偏向ユニットと、を備える。
【0038】
感度行列は、たとえば特異値分解または類似のアルゴリズムにより解析される。一例において、感度行列は、2つ、3つ、またはそれ以上のカーネルまたは像品質の独立した部分集合への分割によって分解される。このため、演算の複雑性が抑えられ、非線形効果すなわち高次効果が抑えられる。
【0039】
使用時(たとえば、ウェハ検査時)、この動作方法は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットのメモリに格納された正規化誤差ベクトル、正規化駆動信号、および一組の閾値を使用することを含む。マルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法は、
使用時、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の複数のセンサから、センサデータベクトルを構成する複数のセンサデータを受信するステップと、
センサデータベクトルを制御ユニットのメモリに格納された一組の正規化誤差ベクトルに展開し、センサデータベクトルから、正規化誤差ベクトルの一組の実際の振幅を決定するステップと、
一組の実際の振幅を制御ユニットのメモリに格納された一組の閾値と比較するステップと、
比較の結果に基づいて、一組の実際の振幅から、一組の制御信号を導出するステップと、
一組の制御信号により、制御ユニットのメモリに格納された一組の正規化駆動信号から一組の実際の駆動信号を導出するステップと、
一組の実際の駆動信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の補償器に供給することにより、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時、一組の正規化誤差ベクトルの一組の実際の振幅を一組の閾値未満にするステップと、
を含む。
【0040】
一例において、複数のセンサデータには、マルチビーム荷電粒子顕微鏡による検査時にウェハを保持するウェハステージの実際の位置および実際の速度に関する位置または速度情報の少なくとも一方を含む。センサデータベクトルからの正規化誤差ベクトルの一組の実際の振幅は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の像品質の実際の状態を表す。所定の格納された閾値との比較により、一組の制御信号が導出される。制御信号から、たとえば制御信号と所定の一組の正規化駆動信号との乗算によって、一組の実際の駆動信号が演算される。少なくとも1つの像パッチの像走査または像取得時に、一組の実際の駆動信号が一組の補償器に供給されることにより、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時、実際の振幅の部分集合が制御ユニットのメモリに格納された所定の閾値の部分集合を下回る。この方法のステップは、各像パッチの取得時に、少なくとも2回、少なくとも10回、好ましくは走査ラインごとに繰り返される。
【0041】
一例において、この方法は、ウェハ検査時に、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の予想推移に従って、一組の実際の振幅の少なくとも部分集合の推移振幅の部分集合を予測するステップをさらに含む。この方法は、使用時、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の実際の振幅の少なくとも部分集合を記録して、一組の実際の振幅の部分集合の履歴を生成するステップをさらに含み得る。このマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法は、ウェハ検査時に、一組の推移振幅から一組の予測制御信号を導出するとともに、一組の予測制御信号から一組の予測駆動信号を導出するステップと、ウェハ検査時に、一組の予測駆動信号を時系列的に一組の補償器に供給することによって、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時、実際の振幅の部分集合を一組の閾値未満にするステップと、をさらに含み得る。
【0042】
予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の予想推移は、予測モデル関数または一組の実際の振幅の履歴の線形、2次、もしくは高次の外挿のうちの1つに従って決定される。一例において、この方法は、使用時、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の実際の振幅の少なくとも部分集合を記録して、一組の実際の振幅の部分集合の履歴を生成するステップをさらに含む。この方法は、ウェハ検査時に、一組の推移振幅から一組の予測制御信号を導出するとともに、一組の予測制御信号から一組の予測駆動信号を導出するステップと、ウェハ検査時に、一組の予測駆動信号を時系列的に一組の補償器に供給することによって、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時、実際の振幅の部分集合を閾値の部分集合未満にするステップと、をさらに含む。本実施形態は、使用時、上述の方法ステップを適用するように構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を含む。
【0043】
実施形態において、センサデータから導出された誤差振幅は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線もしくはマルチビーム荷電粒子顕微鏡の像座標系に対するウェハステージの相対的な位置および配向の少なくとも一方、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の倍率もしくはピッチ、複数の荷電粒子ビームレットの偏心状態、コントラスト状態、絶対位置精度、ならびに複数の荷電粒子ビームレットの歪み収差、非点収差、および色収差等の高次収差等、ウェハ検査タスクの像性能仕様を表す。
【0044】
一実施形態においては、マルチビーム荷電粒子顕微鏡およびソフトウェアコードが開示される。マルチビーム荷電粒子顕微鏡は、偏向器を含む一組の補償器、制御ユニット、およびインストールされたソフトウェアコードを備え、上述の方法ステップのいずれかに従って方法のいずれかを適用するように構成されている。
【0045】
一実施形態においては、複数の一次荷電粒子ビームレットを生成する荷電粒子源を含むマルチビーム荷電粒子装置の1つまたは複数のプロセッサによって、
X-Y軸の少なくとも一方において移動可能なステージの横方向変位を決定することと、
サンプルに入射する複数の一次荷電粒子ビームレットを偏向させる第1の信号の適用によって、横方向変位を少なくとも部分的に補償するようにコントローラに指示することと、
を含む方法を装置に行わせるように実行可能な一組の命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体が開示される。一例において、一組の命令は、サンプルから放出された複数の二次電子ビームレットを偏向させる第2の信号の適用によって、サンプルステージの横方向変位を少なくとも部分的に補償するようにコントローラに指示することを含む方法の実行を含む。
【0046】
以下、添付の図面を参照して、さらに詳細を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】一実施形態に係る、マルチビーム荷電粒子顕微鏡システムを示した図である。
図2】第1および第2の像パッチを含む第1の検査部位ならびに第2の検査部位を示した図である。
図3a】ローカルウェハ座標系に対して変位および回転した像座標系の模式図である。
図3b】ローカルウェハ座標系に対して回転した像パッチの模式図である。
図4】本発明に係る、(a)補償前および(b)補償後の誤差振幅の低速変動ドリフト成分を示した図である。
図5】本発明に係る、(a)補償前および(b)補償後の誤差振幅の高速変動成分または動的変化を示した図である。
図6】本発明の一実施形態に係る、制御ユニット800を詳細に示したマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムのブロック図である。
図7】本発明の一実施形態に係る、ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムの動作方法のブロック図である。
図8】アクティブマルチアパーチャプレートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
後述の例示的な実施形態において、機能および構造が類似する構成要素は、可能な限り、同様または同一の参照番号で示す。
【0049】
図1の模式的表現は、本発明の実施形態に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1の基本的な特徴および機能を示している。図中で使用する記号は、図示の構成要素の物理的構成を表すのではなく、それぞれの各機能を記号で表すために選定したものであることに留意されたい。図示のようなシステムは、対物レンズ102の物体面101に配置されたウェハ等の物体7の表面に複数の一次荷電粒子ビームスポット5を生成するための複数の一次電子ビームレット3を用いた走査型電子顕微鏡(SEM)のものである。簡素化のため、5つの一次荷電粒子ビームレット3および5つの一次荷電粒子ビームスポット5のみを示している。マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の特徴および機能は、電子またはイオン(特に、ヘリウムイオン)等の他種の一次荷電粒子を使用することにより実装可能である。
【0050】
顕微鏡システム1は、物体照射ユニット100、検出ユニット200、および一次荷電粒子ビーム経路13から二次荷電粒子ビーム経路11を分離するビームスプリッタユニット400を備える。物体照射ユニット100は、複数の一次荷電粒子ビームレット3を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器300を備え、サンプルステージ500によってウェハ7の表面25が配置された物体面101に一次荷電粒子ビームレット3を集束させるように構成されている。サンプルステージ500は、ステージ動作コントローラを備え、ステージ動作コントローラは、制御信号により独立して制御されるように構成された複数のモータを備える。ステージ動作コントローラは、制御ユニット800に接続されている。
【0051】
一次ビームレット生成器300は、物体照射ユニット100の視野曲率を補償するために通常は球状の湾曲面である中間像面321において、複数の一次荷電粒子ビームレットスポット311を生成する。一次ビームレット生成器300は、一次荷電粒子(たとえば、電子)源301を備える。一次荷電粒子源301は、たとえばコリメータレンズ303.1および303.2により平行化されて平行ビームを構成する発散一次荷電粒子線309を放出する。コリメータレンズ303.1および303.2は通例、1つまたは複数の静電または磁気レンズ、あるいは静電レンズおよび磁気レンズの組み合わせから成る。平行化された一次荷電粒子線は、一次マルチビームレット構成ユニット305に入射する。マルチビームレット構成ユニット305は基本的に、一次荷電粒子線309により照射される第1のマルチアパーチャプレート306.1を備える。第1のマルチアパーチャプレート306.1は、平行化一次荷電粒子線309の透過により生成される複数の一次荷電粒子ビームレット3を生成するためのラスター構成の複数のアパーチャを備える。マルチビームレット構成ユニット305は、ビーム309の電子の移動方向に対して、第1のマルチアパーチャプレート306.1の下流に配置された少なくとも別のマルチアパーチャプレート306.2を備える。たとえば、第2のマルチアパーチャプレート306.2は、マイクロレンズアレイの機能を有し、中間像面321において複数の一次ビームレット3の焦点位置が調整されるように、規定の電位に設定されるのが好ましい。第3のアクティブマルチアパーチャプレート構成306.3(図示せず)は、複数のアパーチャごとに個々の静電素子を備えることにより、複数のビームレットそれぞれに個別の影響を及ぼす。アクティブマルチアパーチャプレート構成306.3は、偏向器アレイ、マイクロレンズアレイ、または非点収差補正器アレイを構成するマイクロレンズ用の円形電極、多極電極、または一連の多極電極等の静電素子を備えた1つまたは複数のマルチアパーチャプレートから成る。マルチビームレット構成ユニット305には、隣り合う第1の静電視野レンズ307が構成されており、第2の視野レンズ308および第2のマルチアパーチャプレート306.2と併せて、複数の一次荷電粒子ビームレット3が中間像面321またはその近傍に集束される。
【0052】
中間像面321またはその近傍においては、複数の荷電粒子ビームレット3それぞれを個別に操作する静電素子(たとえば、偏向器)を備えた複数のアパーチャを含むビームステアリングマルチアパーチャプレート390が配置されている。ビームステアリングマルチアパーチャプレート390のアパーチャには、複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点スポットがそれぞれの設計位置からずれている場合であっても、一次荷電粒子ビームレット3の通過を可能にするより大きな直径が設定されている。
【0053】
中間像面321を通過する一次荷電粒子ビームレット3の複数の焦点は、視野レンズ群103.1および103.2と、ウェハ7の調査面がサンプルステージ500上の物体マウントによって位置決めされた像面101の対物レンズ102と、によって結像される。物体照射システム100は、第1のビームクロスオーバ108に近接して、ビーム伝搬方向の方向(ここでは、z方向)と垂直な方向に複数の荷電粒子ビームレット3を偏向可能な偏向系110をさらに備える。偏向系110は、制御ユニット800に接続されている。対物レンズ102および偏向系110は、ウェハ表面25と垂直なマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の光軸105を中心とする。そして、像面101に配置されたウェハ表面25が偏向系110によってラスター走査される。これにより、ラスター構成に配置された複数のビームスポット5を構成する複数の一次荷電粒子ビームレット3がウェハ表面101上で同期して走査される。一例において、複数の一次荷電粒子3の焦点スポット5のラスター構成は、およそ100本以上の一次荷電粒子ビームレット3の六角形ラスターである。一次ビームスポット5は、距離がおよそ6μm~15μmで、直径が5nm未満(たとえば、3nm、2nm、あるいはそれ以下)である。一例においては、ビームスポットサイズがおよそ1.5nmであり、2つの隣り合うビームスポット間の距離が8μmである。複数の一次ビームスポット5それぞれの各走査位置においては、複数の二次電子が生成され、一次ビームスポット5と同じラスター構成の複数の二次電子ビームレット9を構成する。各ビームスポット5で生成される複数の二次荷電粒子の強度は、対応するスポットを照らす衝突一次荷電粒子ビームレットの強度、ビームスポット下の物体の材料組成およびトポグラフィによって決まる。サンプル帯電ユニット503により生成された静電界によって二次荷電粒子ビームレット9が加速され、対物レンズ102により収集され、ビームスプリッタ400によって検出ユニット200へと案内される。検出ユニット200は、二次電子ビームレット9を像センサ207上に結像して、複数の二次荷電粒子像スポット15を形成する。検出器は、複数の検出器画素または個々の検出器を含む。複数の二次荷電粒子ビームスポット15それぞれについて強度が別々に検出され、ウェハ表面の材料組成が高分解能で検出されて、高スループットの大きな像パッチが実現される。たとえば、8μmピッチの10×10ビームレットのラスターによって、偏向系110による1回の像走査で約88μm×88μmの像パッチが生成され、像分解能は、たとえば2nmである。像パッチは、たとえば2nmのビームスポットサイズの半分でサンプリングされるため、各ビームレットの像ラインあたりの画素数が8000画素となり、100本のビームレットにより生成される像パッチは、64億画素を含む。像データは、制御ユニット800により収集される。たとえば並列処理を用いた像データの収集および処理の詳細については、独国特許出願第102019000470.1号(本明細書に援用)および前述の米国特許第9536702号に記載されている。
【0054】
複数の二次電子ビームレット9は、第1の偏向系110を通過し、第1の偏向系110によって走査偏向され、ビームスプリッタユニット400によって、検出ユニット200の二次ビーム経路11をたどるようにガイドされる。複数の二次電子ビームレット9は、一次荷電粒子ビームレット3と反対方向に推移し、ビームスプリッタユニット400は、通例は磁界または磁界および静電界の組み合わせによって、一次ビーム経路13から二次ビーム経路11を分離するように構成されている。任意選択としては、一次ビーム経路のほか、二次ビーム経路にも付加的な磁気補正素子420が存在する。投射系205は、投射系制御ユニット820に接続された少なくとも第2の偏向系222をさらに備える。制御ユニット800は、複数の二次電子焦点スポット15の位置が像センサ207で一定に保たれるように、複数の二次電子ビームレット9の複数の焦点15の位置の残差を補償するように構成されている。
【0055】
検出ユニット200の投射系205は、複数の二次電子ビームレット9の少なくとも第2のクロスオーバ212を含み、アパーチャ214が配置されている。一例において、アパーチャ214は、投射系制御ユニット820に接続された検出器(図示せず)をさらに備える。投射系制御ユニット820は、静電または磁気レンズ208、209、210を別途備えた投射系205の少なくとも1つの静電レンズ206に接続されるとともに、第3の偏向ユニット218にさらに接続されている。投射系205は、複数の二次電子ビームレット9それぞれに個別の影響を及ぼすアパーチャおよび電極を備えた少なくとも第1のマルチアパーチャ補正器220と、任意選択としての別の能動素子216と、をさらに備えており、それぞれが制御ユニット800に接続されている。
【0056】
像センサ207は、投射レンズ205によって像センサ207上に集束された二次電子ビームレット9のラスター構成に適合したパターンの検知エリアのアレイにより構成されている。これにより、像センサ207に入射するその他の二次電子ビームレット9から独立して、個々の二次電子ビームレット9を検出可能となる。複数の電気信号が生成され、デジタル像データに変換されて、制御ユニット800において処理される。像走査中、制御ユニット800は、像センサ207のトリガによって、複数の二次電子ビームレット9からの複数の時間分解強度信号を所定の時間区間において検出するように構成されており、複数の一次荷電粒子ビームレット3のすべての走査位置から、像パッチのデジタル像が蓄積され、一体的にステッチングされる。
【0057】
図1に示す像センサ207としては、CMOSまたはCCDセンサ等の電子感受性検出器アレイが可能である。このような電子感受性検出器アレイは、シンチレータ素子またはシンチレータ素子のアレイ等の電子-光子変換ユニットを備え得る。別の実施形態において、像センサ207は、複数の二次電子粒子像スポット15の焦点面に配置された電子-光子変換ユニットまたはシンチレータプレートとして構成可能である。本実施形態において、像センサ207は、複数の光電子増倍管またはアバランシェフォトダイオード(図示せず)等の専用光子検出素子において、二次荷電粒子像スポット15で電子-光子変換ユニットにより生成された光子を結像してガイドする中継光学系をさらに備え得る。このような像センサは、米国特許第9536702号に開示されており、これを本明細書に援用する。一例において、中継光学系は、光を分割して第1の低速光検出器および第2の高速光検出器にガイドするビームスプリッタをさらに備える。第2の高速光検出器は、たとえばアバランシェフォトダイオード等のフォトダイオードアレイによって構成されており、複数の一次荷電粒子ビームレットの走査速度に応じて複数の二次電子ビームレットの像信号を分解するのに十分高速である。第1の低速光検出器は、CMOSまたはCCDセンサであるのが好ましく、複数の二次電子ビームレット9の焦点スポット15をモニタリングするとともに、以下により詳しく説明するようなマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作を制御するための高分解能センサデータ信号を提供する。
【0058】
図示の例において、一次荷電粒子源は、エミッタチップおよび抽出電極を特徴とする電子源301の形態で実装されている。たとえばヘリウムイオンのように、電子以外の一次荷電粒子を使用する場合は、一次荷電粒子源301の構成を図示のものと異ならせることができる。一次荷電粒子源301、アクティブマルチアパーチャプレート構成306.1・・・306.3、およびビームステアリングマルチアパーチャプレート390は、制御ユニット800に接続された一次ビームレット制御モジュール830によって制御される。
【0059】
ステージ500は、複数の一次荷電粒子ビームレット3の走査による像パッチの取得時には移動せず、像パッチの取得後、次に取得する像パッチまで移動するのが好ましい。ステージの移動およびステージの位置は、レーザ干渉計、格子干渉計、共焦点マイクロレンズアレイ等、当技術分野において知られているセンサによりモニタリングおよび制御される。たとえば、位置検知システムがレーザ干渉計、静電容量センサ、共焦点センサアレイ、格子干渉計のいずれか、またはこれらの組み合わせを使用して、ステージの横方向および鉛直方向の変位および回転を決定する。本発明の一実施形態において以下に示すように、第1の像パッチから次の像パッチまでのステージ500の移動は、像パッチの取得と重なり合うため、スループットが向上する。
【0060】
像パッチの取得によるウェハ検査の方法の一実施形態を図2においてより詳しく説明する。ウェハは、第1の像パッチ17.1の中心21.1で、そのウェハ表面25を複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点面内として配置されている。像パッチ17.1・・・kの所定の位置は、半導体フィーチャの検査のためのウェハの検査部位に対応する。第1の検査部位33および第2の検査部位35の所定の位置は、標準的なファイルフォーマットの検査ファイルからロードされる。所定の第1の検査部位33は、複数の像パッチ(たとえば、第1の像パッチ17.1および第2の像パッチ17.2)に分割されており、第1の像パッチ17.1の第1の中心位置21.1は、検査タスクの第1の像取得ステップのため、マルチビーム荷電粒子顕微鏡システムの光軸下に位置合わせされる。第1の像パッチの第1の中心21.1は、第1の像パッチ17.1の取得のための第1のローカルウェハ座標系の原点として選択される。当技術分野においては、ウェハ表面25が位置決めされ、ウェハ座標の座標系が生成されるようにウェハを位置合わせする方法がよく知られている。
【0061】
複数の一次ビームレットは、各像パッチにおいて、規則的なラスター構成41に分布しており、走査機構による走査によって、像パッチのデジタル像が生成される。本例において、複数の一次荷電粒子ビームレット3は、矩形のラスター構成41に配置されており、矩形のラスター構成41は、N個のビームスポットを有する第1のラインにおいてn個の一次ビームスポット5.11、5.12~5.1Nを有しており、M本のラインにビームスポット5.11~5.MNがある。簡素化のため、M=5×N=5個のビームスポットを図示しているが、ビームスポットの数M×Nは、これより大きくすることも可能であり、複数のビームスポット5.11~5.MNは、六角形または円形等のさまざまなラスター構成41を有し得る。
【0062】
一次荷電粒子ビームレットはそれぞれ、ウェハ表面25上で走査され、図示のように、ビームスポット5.11~5.MNを含む一次荷電粒子ビームレットの例では、複数の一次荷電粒子ビームレットの走査経路27.11~27.MNが存在する。複数の一次荷電粒子それぞれの走査は、たとえば走査経路27.11・・・27.MNによる前後移動にて実行されるが、各一次荷電粒子ビームレットの各焦点5.11・・・5.MNは、たとえば本例における像サブフィールド31.mnの最も左側の像点である像ラインの開始位置からのx方向の偏向器110の走査によって移動する。そして、右側位置への一次荷電粒子ビームレットの走査により各焦点が走査された後、走査偏向器110は、各サブフィールド31.11・・・31.MNにおける次のラインのライン開始位置と平行に複数の荷電粒子ビームレットを移動させる。後続の走査ラインのライン開始位置に戻す移動は、フライバックと称する。複数の一次荷電粒子ビームレットが走査経路27.11~27.MNを並列にたどることにより、各サブフィールド31.11~31.MNの複数の走査像が並列に得られる。像取得に関しては、上述の通り、焦点5.11~5.MNで複数の二次電子が放出され、複数の二次電子ビームレット9が生成される。複数の二次電子ビームレット9は、対物レンズ102により収集され、第1の偏向系110を通過し、検出ユニット200にガイドされて、像センサ207により検出される。複数の二次電子ビームレット9それぞれのデータの連続ストリームが走査経路27.11・・・27.MNと同期して複数の二次元データセットに変換され、各サブフィールドのデジタル像データを構成する。予め選択された走査プログラムによれば、複数の一次荷電粒子ビームレットは、所定の走査経路27.11~27.MNをたどる。複数のサブフィールドの複数のデジタル像は最終的に、像ステッチングユニットによる一体的なステッチングによって、第1の像パッチ17.1のデジタル像を構成する。各像サブフィールドには、サブフィールド31.mnおよびサブフィールド31.m(n+1)の重畳エリア39によって示すように、隣り合う像サブフィールドとの小さな重畳エリアが設定されている。従来技術の複数の一次荷電粒子ビームスポット5.11~5.MN間のピッチは通常、ドリフト、レンズ歪み、および他の収差によって変動する。したがって、従来技術の重畳エリア39は通常、ビームスポット位置の変動にも関わらず、像パッチ全体を1回の像走査で網羅するのに十分大きく設定されている。
【0063】
ウェハ検査の方法の一実施形態においては、重畳エリア39のサイズの縮小によって、ウェハ検査のためのマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムのスループットが向上する。これにより、各像パッチのサイズの増大によって、スループットが向上する。一例において、複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点5のビームピッチは、10μmである。たとえば各重畳エリア39の200nmの幅が25%小さくなると、像パッチのサイズが約1%大きくなり、スループットが約1%向上する。さらに、重畳エリアの幅を65%小さくすると、スループットは2.5%向上する。重畳エリア39の縮小は、複数の一次荷電粒子ビームレット3のピッチの制御によって実現される。図1のアクティブマルチアパーチャプレート306.3等の補償器(マルチビーム多極偏向装置)によって、複数の一次荷電粒子ビームレット3により形成されたビームスポット5の位置が高精度に制御される。制御演算のため、複数のビームスポット5の位置を表すセンサ信号を提供するように検出器(たとえば、複数の二次電子ビームレット9を検出する検出ユニット200の像センサ207)が構成されている。そして、複数の一次ビームスポット5のビーム位置のずれが補正されることにより、重畳エリアが小さくなる。70nm未満の精度での対応するラスター位置における複数の一次荷電粒子ビームレット3の一次荷電粒子ビームスポット5それぞれの正確な制御によって、スループットの2%の向上が実現される。30nm未満の一次荷電粒子ビームスポット位置のさらに正確な制御によって、スループットを3.5%よりも大きく向上可能である。次のステップにおいては、第1の像パッチのデジタル像の取得後、センサ制御下でウェハステージによって、隣り合う所定の中心位置21.2までウェハが移動し、所定の中心位置21.2を中心とする新たなローカルウェハ座標系が定義される。そして、2つの隣り合う像パッチ17.1および17.2が重畳エリア19とともに得られるように、第2の像パッチ17.2が求められる。この場合も、上述のような重畳エリア39の縮小と同様に、重畳エリア19のサイズの縮小によって、スループットが向上する。そして、2つの像パッチ17.1および17.2の一体的なステッチングにより、所定のウェハエリアの像が形成される。第1の検査部位33のデジタル像の取得後、ウェハステージは、たとえば次の第2の検査部位35の像取得によって所定のウェハエリアにおけるプロセス制御モニタ(PCM)を検査するため、ウェハを所定の中心位置21.kまで移動させる。そして、走査動作の実行(図示せず)によって、像パッチ17.kが得られる。簡素化された本例に示す通り、この方法によって、ウェハの複数の検査部位が順次検査される。
【0064】
次に、ウェハ検査タスクの要件または仕様を説明する。高スループットのウェハ検査の場合は、像パッチ17.1・・・kの像取得のほか、像パッチ17.1・・・k間のステージ移動を高速にする必要がある。一方、像分解能、像精度、および再現性等の像品質に関する厳しい仕様を維持する必要もある。たとえば、像分解能の要件は通常、高い再現性で2nm以下である。像精度は、像忠実度とも称する。たとえば、フィーチャのエッジ位置、一般的にはフィーチャの絶対位置精度は、高い絶対精度で決まることになる。たとえば、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの絶対横方向位置精度は、10nm未満が必要であり、複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれの絶対横方向位置は、1nm未満の精度で把握する必要がある。通常、位置精度の要件は、分解能要件のおよそ50%以下である。次に、高い像均一性を得る必要がある。像均一性誤差は、像取得下の均一物体の最大および最小像強度ImaxおよびIminを用いて、dU=(Imax-Imin)/(Imax+Imin)により定義される。通常、像均一性誤差dUは、5%未満が必要である。像のコントラストおよびダイナミックレンジは、検査下の半導体ウェハの半導体フィーチャおよび材料組成を正確に表現するのに十分なものとする必要がある。通常は、ダイナミックレンジが6または8ビットを超え、像コントラストが80%を超えている必要がある。
【0065】
高い像再現性の下、同じエリアの繰り返し像取得では、第1および第2の繰り返しデジタル像が生成され、第1および第2の繰り返しデジタル像間の差が所定の閾値を下回ることが了解される。たとえば、第1および第2の繰り返しデジタル像間の像歪みの差は、1nm未満、好ましくは0.5nm未満が必要であり、像コントラストの差は、10%未満が必要である。このように、結像動作の繰り返しによっても、同様の像結果が得られる。このことは、たとえば異なるウェハダイにおける類似の半導体構造の像取得および比較、あるいは、CADデータによる像シミュレーションもしくはデータベースから得られた代表像または基準像に対する取得像の比較にとって重要である。
【0066】
ウェハ検査タスクの要件または仕様のうちの1つがスループットである。スループットは、複数のパラメータ(たとえば、サンプルステージの速度、ステージの加減速に要する時間、および新たな各測定部位におけるステージの位置合わせに要する反復回数)のほか、取得時間当たりの測定面積自体によって決まる。重畳エリアの縮小による像パッチサイズの拡大によるスループットの向上の一例は、上述した通りである。取得時間当たりの測定面積は、ビームレットの滞留時間、分解能、および数によって決まる。滞留時間の通常の例は、20ns~80nsである。したがって、高速像センサ207における画素レートは、12MHz~50MHzの範囲であり、毎分およそ20個の像パッチまたはフレームを取得することも可能である。ただし、ウェハは、2つの像パッチの取得の間に、ウェハステージによって次の関心点まで横方向に移動する。一例において、第1の像パッチから第2の像パッチまでウェハが移動する時間区間Trは、およそ1秒であり、フレームレートは、およそ15フレーム/分まで低下する。標準的なステージで第1の像パッチから第2の像パッチまでウェハが移動する通常の時間区間Trは、第2の像パッチにおける正確な調整のための時間区間を含めて1sを超え、3sまたはそれ以上(たとえば、5s)のオーダが可能である。100本のビームレットの場合、画素サイズが0.5nmの高分解能モードでのスループットの通常の例は、およそ0.045平方mm/分(平方ミリメートル/分)であり、ビームレットの増数および低分解能の場合(たとえば、ビームレットが10000本で滞留時間が25nsの場合)は、7平方mm/分を超えるスループットが可能である。ステージの加速および減速を含むステージ移動は、マルチビーム検査システムのスループットを制限する因子のうちの1つである。短時間でのより高速のステージの加速および減速では、複雑で高価なステージを必要とするか、または、マルチビーム荷電粒子システムにおける動的振動を誘発する。本発明の実施形態によれば、たとえば上述のような要件内に像性能仕様を十分に維持しつつ、ウェハ検査タスクの高スループットを実現可能である。
【0067】
通常、制御を伴わない高速かつ高スループットの像取得は、ドリフトならびにステージの残留および不要な移動等の動的効果によって品質が低下する。一般的に、理想的な像取得条件からの逸脱は、誤差関数により記述される。複数の像スポット5がウェハ7に対して回転および変位する誤差関数の一例を複数のビームスポット5の円形配置の例として図3aに示す。像座標xiおよびyiを含む像座標系51は、ビームスポット5(3つ示す)を伴う一組の一次荷電粒子ビームレットの走査により得られるような像パッチの中心での仮想座標系により定義される。所定の中心走査位置における一組の一次荷電粒子ビームレットの中心線を視線53と称するが、この視線53および像座標系のz軸が同一である。理想的な状況において、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システムの適正な校正の後、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の視線53および光軸105は、同一である。現実の結像状況において、視線53は、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の光軸105から逸脱する。この逸脱は、たとえば物体照射ユニット100のドリフト、第1の走査偏向器110またはマルチビームレット生成器能動素子330もしくはビームスプリッタ400等の一次荷電粒子ビーム経路13中の他の静電および磁気素子における収差に起因する。現実の結像状況において、視線53の逸脱は、各像パッチ17.1・・・kの1回の像走査の像取得時間等の時間とともに変化する。
【0068】
ローカルウェハ座標系551は、ローカルウェハ座標xlおよびylによってウェハの検査部位に定義される。現実の結像状況において、ローカルウェハ座標系551は、視線53によって像座標系51からずれている。変位ベクトル55は、たとえばウェハステージの位置ずれ、ウェハステージのドリフトもしくは像座標系51のドリフトまたは両者に起因する。現実の結像状況において、ローカルウェハ座標系551の逸脱は、1回の像走査の像取得時間等の時間とともに変化する。変位ベクトル55は一般的に、時間依存ベクトルD(t)=[Dx,Dy,Dz](t)として記述される。現実の結像状況において、変位ベクトル55には、視線53の逸脱およびウェハステージ500のドリフトの差を含むが、これらはいずれも、各像パッチ17.1・・・kの1回の像走査の像取得時間等の時間とともに独立して変化する。
【0069】
像座標系51は、ローカルウェハ座標系551に対して、矢印57で示す回転角Rzだけ、z軸または視線53の周りに回転可能であり、ウェハ表面25からの像パッチ17の像は、座標(xi’,yi’)を含む回転像座標系59において得られる。回転角はいずれの軸でも発生し、時間依存によって、回転角ベクトルR(t)=[Rx,Ry,Rz](t)を構成する。z軸周りの回転によってすべての像スポット5が像スポット5’(図示のスポット)へと回転するが、これを未回転像スポット5と回転像スポット5’との間の変位ベクトル61によって示す。像回転によるずれは、鉛直軸またはz軸周りの像スポット5の回転、ステージの回転、または両者によって生じる。
【0070】
図3bは、図2の像パッチ17.1の例における像回転の状況を示している。図2と同じ参照番号を使用するが、像座標系51は、ウェハ座標系551に対して回転している。ラスター構成に配置された複数の焦点5が回転し、像パッチ31が回転し、走査経路27がそれぞれ回転している。以下により詳しく説明する本発明の一実施形態においては、複数の焦点5のラスター構成の回転によって像回転が補償される。これは、動的な走査回転すなわち単一の走査経路の変化による像回転の補償によって単一の走査経路の回転を効果的に実現するシングルビーム荷電粒子顕微鏡とは異なる。2本の一次荷電粒子ビームレットの例における複数の一次荷電粒子ビームに対する走査回転の効果の例として、走査回転の効果をサブフィールド37.1および37.2に示す。マルチビーム荷電粒子顕微鏡の走査ビーム偏向器による走査経路27の回転は可能であるが、複数のスポット5のラスター構成を走査偏向器によって回転させることはできない。複数のスポット5のラスター構成の回転の動的な変化を含めて、回転を補償するため、本発明のいくつかの実施形態おいて提供されるように、付加的な手段が必要となる。
【0071】
本発明の実施形態に係るマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システムは、像取得時にセンサ信号を提供する複数のセンサを備える。センサは、たとえばステージ500のステージ位置センサ、アパーチャ214等のアパーチャに配置されたセンサ、または像センサ207である。制御ユニット800は、センサ信号から、焦点位置または像面傾斜の変化を含む像変位ベクトルD(t)、像回転R(t)等の誤差関数を抽出するように構成されている。一般的に、制御ユニット800は、センサ信号を解析するとともに、当技術分野において知られている方法(たとえば、誤差振幅を伴う一組の所定のモデル誤差関数のセンサデータに対するフィッティング演算)によって、センサ信号を一組の個々のモデル誤差関数に分解するように構成されている。このようなフィッティング演算としては、たとえば最小二乗フィッティング演算または特異値分解が可能であり、一組のモデル誤差関数それぞれの複数の誤差振幅が演算される。誤差振幅の演算により、複数の一次および二次荷電粒子ビームレット3および9ならびにステージ500の制御のためのデータ量は、たとえば6つの誤差振幅へと大幅に少なくなる。ただし、本発明の一実施形態においては、倍率誤差、さまざまな高次歪み、および個々のフィールド依存の像収差パターン等、より多くの誤差振幅が同様に考慮される。正規化誤差振幅は、たとえば両横方向の視線の変位、横方向および軸方向のウェハステージの変位、ウェハステージの回転、視線の回転、倍率誤差、焦点誤差、非点収差誤差、または歪み誤差を表し得る。限られた一組の誤差振幅へのセンサ信号の分解によって、演算の速度および補正信号の制御が大幅に改善される。
【0072】
実施形態の一例において、制御ユニット800は、誤差振幅の経時的な推移を解析するように構成されている。誤差振幅の経時的な変化の履歴は記録され、制御ユニットは、誤差振幅の変化を時間依存モデル関数に展開するように構成されている。制御ユニット800は、たとえば走査時間区間Tsの像走査の断片において、短時間にわたり、誤差振幅の少なくとも部分集合の変化を予測するように構成されている。像パッチの走査時間区間Tsは、滞留時間に応じて、1秒~5秒である。通常の一例において、像パッチの走査時間区間Tsは、およそ3秒である。一例においては、一般的に動的変化と称する誤差振幅の予測推移の高速動的変動から、一般的にドリフトと称する誤差振幅の予測変化の低速変動が分離される。一例において、制御ユニット800は、ステージが第1の像パッチから第2の像パッチまで移動する時間区間Trにおいて、誤差振幅の少なくとも部分集合の変化を予測するように構成されている。ステージが第1の像パッチから第2の像パッチまで移動する時間区間Trは、0.5秒~5秒である。一例において、制御ユニット800は、ステージが高速移動から停止位置へと減速する時間区間Tdにおいて、誤差振幅の少なくとも部分集合の変化を予測するように構成されている。一般的に、制御ユニット800は、ステージの作動出力の予測モデルに基づいて、複数の制御信号のうちの少なくとも1つを抽出するように構成されている。
【0073】
実施形態の一例において、誤差振幅の低速変動部(ドリフト)および動的変動部すなわち動的変化の推移は、別々に外挿される。ドリフト部は通常、たとえば線形挙動または漸近挙動を示す。たとえば、熱効果は通常、漸近挙動の低速ドリフトとなる。誤差振幅の時間的推移に関する予備知識により、所定の漸近挙動のモデル関数に基づいてドリフトの推移が導出され、制御ユニット800は、予測誤差振幅を見込んだ制御信号を生成するように構成されている。誤差振幅の低速変動推移すなわちドリフトが高速推移から分離され、たとえば誤差振幅のドリフトの直接転送によって、ステージ500が制御される。図4および図5は、代表的な誤差振幅の経時的な変化を示している。図4aは、時間tに対する誤差振幅モデル関数907の所定の漸近挙動を含むドリフトすなわち低速変動誤差振幅Sn(t)の一例を示している。このような挙動は通常、熱ドリフトまたは静電もしくは電磁素子のドリフトに対するものであるが、他の効果も類似の経時的推移を有する。他のドリフト源としては、像走査中の導電性部品またはウェハの帯電により誘導される可変電歪力またはドリフトが可能である。動作時、制御ユニット800は、センサデータから、ドリフト誤差振幅Sn(t)を継続的に導出するように構成されている。動作時間には、第1の像パッチ17.1の第1の像走査の第1の時間区間Ts1、第1の像パッチ17.1の第1の中心位置21.1から第2の像パッチ17.2の第2の中心位置21.2までのウェハステージ移動の時間区間Tr、および第2の像パッチ17.1の第2の像走査の第2の時間区間Ts2を含む(参照番号については、図2参照)。たとえば、第1の時間区間Ts1における実際の時間Taにおいて、誤差振幅Sn(t)の時間的勾配903が決定されるか、または、モデル関数907が測定誤差振幅Sn(t)に近似される。誤差振幅モデル関数907または勾配ベクトル903によって、誤差振幅Sn(t)の推移が予測され、第2の時間区間Ts2における将来の時間tcにおいて、誤差振幅Sn(t)のドリフト部がライン901で示す所定の閾値Sn_maxに達することが予測される。この閾値は、たとえば誤差ベクトルSn(t)と関連する像品質パラメータの仕様から予め決定される。2つの像パッチ17.1および17.2の後続の2つの像走査間の時間区間Trにおいて、制御ユニット800は、これに応じて補償器の制御値を変更するように構成されており、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の能動素子の調整によって、誤差振幅Sn(t)のドリフト成分が減少する。能動素子には、低速動作補償器(たとえば、磁気素子またはステージ)を含み得る。本発明の一実施形態においては、たとえばウェハステージ500の横方向位置へのオフセットの追加によって、視線53または像座標系51の横方向ドリフトが補償され、たとえばウェハステージ500のz位置へのオフセットの追加によって、焦点位置のドリフトが補償される。本発明の一実施形態において、複数の一次荷電粒子ビームレット3の結像倍率のドリフトは、複数の一次荷電粒子ビームレット3のピッチの変化を招来し、たとえば対物レンズ102の専用磁気レンズ素子へのオフセット電流の追加によって補償される。本発明の一実施形態において、図3に記載のような複数の一次荷電粒子ビームレット3の回転ドリフトは、z軸周りのステージ500の対応する回転、あるいは、たとえば対物レンズ102の第2の専用磁気レンズ素子へのオフセット電流の追加による複数の一次荷電粒子ビームレット3の回転の補正によって補償される。その結果を図4bに示す。この調整により、誤差振幅閾値Sn_maxを超えて、補正された低速変動ドリフト誤差振幅Sn(t)が十分に制御される。ドリフト部が時間的に低速変動であることから、後続の像走査間の時間Trにおいて、誤差振幅Sn(t)を少なくとも部分的に調整および補償可能である。これにより、マルチビーム荷電粒子顕微鏡によるウェハ検査の方法であって、
第1の時間区間Ts1における第1の像パッチの第1の像取得ステップと、
時間区間Trにおける第1の像パッチの位置から第2の像パッチまでのウェハステージの移動ステップと、
第2の時間区間Ts2における第2の像パッチの第2の像取得ステップと、
により、
第1の時間区間Ts1において、複数のセンサ信号から、少なくとも第1の誤差振幅を演算するステップと、
第1の時間区間Ts1において、少なくとも第1の時間区間Ts1、移動時間区間Tr、および第2の時間区間Ts2にわたり、第1の誤差振幅の推移を予測するステップと、
少なくとも移動時間区間Trにおいて、制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットに供給することにより、第2の時間区間Ts2において、予測した誤差振幅の推移を所定の閾値未満に保つステップと、
を含む、方法が提供される。
【0074】
一例において、第1の誤差振幅の推移の予測は、予測モデルまたは外挿によって生成される。
【0075】
一例においては、制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットに供給することにより、時間区間Ts1またはTs2の像走査中も、予測した誤差振幅の推移を所定の閾値未満に保つ。たとえば、像座標系の低速ドリフトが予測される場合は、像取得時にSn(t)が閾値Sn_max未満に十分制御されるようなステージ500の低速補償移動によって、像座標系のドリフトを補償可能である。
【0076】
図5は、誤差振幅Nn(t)の動的変化により表される結像ずれの高速動的変化を示している。このような結像ずれの動的変化は、たとえば真空ポンプ等の内部ノイズ源またはウェハステージの高速の加速および減速により誘導される振動等の他の内部ノイズ源によって導入され得る。他のノイズ源としては、外部源が可能である。
【0077】
動的変化Nn(t)は、半周期が1つの像パッチの走査時間区間Ts1またはTs2よりも短い単純な周期的挙動を示す。本発明の一実施形態において、制御ユニット800は、誤差振幅Nn(t)の動的変化を導出するとともに、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の高速能動素子の制御信号を高速に決定するように構成されている。このような能動素子は、たとえば静電ビーム偏向走査子または静電補正器であって、高速に調整可能である。走査時間Tsの第1の像パッチの像走査中、制御されていない誤差振幅Nn(t)は、tc1およびtc2の少なくとも2回、参照番号905で示す所定の誤差振幅ウィンドウDNnを超える。誤差振幅Nn(t)に対する上側および下側閾値を有する誤差振幅ウィンドウ905は、誤差振幅Nn(t)により表される像品質パラメータの仕様要件を表す。制御ユニット800は、図5bに示す補正された動的逸脱または誤差振幅Nn(t)が所定の誤差振幅ウィンドウ905の上側および下側閾値間で制御されるように、動的制御信号を高速能動素子の制御ユニットに供給するようにさらに構成されている。制御演算子800には、高速制御ループ(たとえば、開制御ループ)が設定されており、およそ0.3Hzの像走査周波数またはフレームレート1/Tsの少なくとも50倍、好ましくは少なくとも100倍、より好ましくは1000倍の帯域幅での調整および制御を可能とする。一例においては、制御周波数がおよそ2.5kHz以上のライン走査毎に少なくとも1回、誤差ベクトルの演算および結像収差の場合の補償のための制御信号の抽出が実行される。したがって、電気制御信号は、0.1kHz~10kHz以上の範囲の帯域幅を有する信号を含む。
【0078】
図5bに示す補正誤差振幅Nn(t)の周波数は、制御演算子800の制御ループの周波数応答に応じて、図5aに示す未補正誤差振幅Nn(t)の周波数と異なり得ることに留意されたい。
【0079】
一例において、制御ユニット800は、誤差振幅Nn(t)の動的変化を予測するように構成されている。たとえば、制御ユニット800は、誤差振幅Nn(t)の時間Taにおける局所勾配909の導出によって、時間区間Ts1の像走査中の動的制御のための高速能動素子の制御信号を導出するように構成されている。
【0080】
ウェハステージの位置ずれまたはドリフトの駆動誤差源は、第1の像パッチ17.1から第2の像パッチ17.2までステージを移動させるために与えられた時間区間Trにある。特に、ウェハステージの位置ずれまたはドリフトは、調整反復回数と、第2の像パッチ17.2の近傍で移動速度から停止位置までステージを減速させるのに要する時間Tdと、によって決まる。本発明の一実施形態においては、第1の像パッチ17.1および第2の像パッチ17.2の2つの像取得ステップ間の時間差が大幅に短くなって、スループットが向上する。本発明の一実施形態により、荷電粒子顕微鏡および荷電粒子顕微鏡を動作させる方法が提供され、第1の時間区間Ts1における第1の像パッチ17.1の第1の像取得および第2の時間区間Ts2における第2の像パッチ17.2の第2の像取得を含み、第1の像パッチ17.1の第1の中心位置21.1から第2の像パッチ17.2の第2の中心位置21.2までウェハステージ500を移動させる第3の時間区間Trをさらに含み、第1および第2の時間区間Ts1またはTs2の少なくとも一方が第3の時間区間Trと重なり合うようにする一連の像取得ステップにおいて、一連の像パッチが結像される。第1の時間区間Ts1の開始から第2の時間区間Ts2の終了までの総時間区間は、3つの時間区間Ts1、Tr、およびTs2の合計よりも短く、スループットが向上するとともに高速検査モードが実現される。図5aおよび図5cは、高スループットの高速検査モードに関する本実施形態を示している。図5aの第1の例において、第2の像パッチ17.2の像取得は、ウェハステージ500が完全に停止となる前に開始される。ウェハステージが終了位置まで減速される時間区間Tdにおいて像取得が開始されるが、像取得の時間区間Ts2は、ステージ500の減速の時間区間Tdと重なり合う。減速時間区間Tdには、ステージの調整の反復と、ステージを完全に停止させるのに要する時間と、を含む。高速移動後は、ステージがドリフト、揺動、または振動し得るが、ステージの減速の時間区間Tdには、第1の所定の閾値未満の精度および第2の所定の閾値未満の動的位置安定性でマルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線と位置が一致するまでステージを遅らせるのに要する時間を含む。制御ユニット800は、予想横方向位置Xl(t)、Yl(t)および時間Tdにおけるウェハステージ500の移動速度をモニタリングまたは予測するように構成されている。制御ユニット800は、荷電粒子顕微鏡の走査偏向ユニットの制御信号を導出し、視線53の可変オフセットDx(t)、Dy(t)によって、減速時間Tdにおけるウェハステージの残留移動を補償する。制御ユニット800は、ウェハステージの予測移動速度から、第2の像パッチ17.2の像取得の開始時間を演算するように構成されている。たとえば、第2の像パッチ17.2の像取得の時間区間Ts2の開始時間は、減速時間区間Tdにおけるウェハステージの残留移動を補償できるように、ウェハステージの予測速度が所定の閾値を下回る時間として決定される。制御ユニット800は、第2の像パッチ17.2を走査結像することによって像取得を開始し、第2の像取得の時間区間Ts2と重なり合う減速時間区間Tdの少なくとも一部において、オフセット座標の時間関数を偏向ユニットに与えることにより、ウェハステージの残留移動を補償するように構成されている。結果として、第1の時間区間Ts1における第1の像走査と第2の時間区間Ts2における第2の像走査との間の時間区間Tr’が短くなる。
【0081】
図5cは、本実施形態の第2の例をより詳しく示している。本例において、制御ユニット800は、偏向器の走査によるウェハ移動の補償が荷電粒子顕微鏡の走査偏向器の最大範囲内となるように、第1の像パッチの第1の像取得の時間区間Ts1におけるウェハステージ加速の開始時間r1を導出するように構成されている。像取得時およびウェハステージを加速させる時間区間Tuの少なくとも一部において、制御ユニット800は、制御信号を偏向ユニットに供給するように構成されており、誤差振幅Nn(t)(本例では、上述のような座標系の横方向位置オフセット)は十分に、第1の像パッチの横方向位置オフセットに対する規定の閾値範囲905.1内であり、ウェハ移動の開始時間riの後、第1の像取得の時間区間Ts1の終了時間t1まで像取得が継続される。時間区間Trにおけるウェハ移動の間、制御ユニット800は、走査偏向器によるウェハ移動の補償が荷電粒子顕微鏡の走査偏向器の最大範囲内となり、座標系の横方向位置オフセットが十分に、第2の像パッチの横方向位置オフセットに対する規定の閾値範囲905.2内となるように、第2の像パッチの第2の像取得の第2の時間区間Ts2の開始時間t0’を導出するように構成されている。第2の像取得は、ウェハ移動時の開始時間t0’に開始され、終了時間r2には、ウェハステージがその目標位置の近傍に達する。結果として、第1の時間区間Ts1における第1の像走査と第2の時間区間Ts2における第2の像走査との間の時間区間Tr’が短くなる。第2の像取得の開始t0’とウェハステージの移動時間区間Trの終了時間rsまでのウェハステージの減速との間の重畳時間区間は通常、第1の像取得の終了t1とウェハステージの移動時間区間Trの時間riで開始となるウェハステージの加速との間の重畳時間区間よりも長い。一例において、ウェハステージの減速時間区間Tdには、それぞれの検査部位における像パッチの像取得時のウェハステージの正確な位置合わせの少なくとも1回の反復を含むため、ウェハ移動が偏向ユニットと同期して制御ユニットにより制御され、ウェハステージ移動時のウェハステージの予測およびモニタリング位置は、ウェハステージの位置に対応して偏向ユニットに与えられた一連のオフセット座標または関数により補償される。ウェハステージの正確な位置合わせの反復は、目標位置からのずれが大きな第1の位置から目標位置からのずれが所定の閾値を下回る第2の位置までのウェハステージ位置の反復的な再調整である。一例において、この閾値は、2つの隣り合う像パッチ間の重畳エリアの縮小によって決まり、たとえば100nm未満、50nm未満、あるいは30nm未満に決まる。これにより、後続の像取得間の時間区間の短縮および隣り合う像パッチ間の重畳エリアの縮小によってスループットが向上する。一例において、第1および第2の像パッチの後続の2つの像取得間の時間区間は2倍短くなり、マルチビーム荷電粒子顕微鏡のスループットまたはフレームレートは、およそ10~およそ14フレーム/分だけ向上する。別の例において、第1および第2の像パッチの後続の2つの像取得間の時間区間は3倍短くなり、マルチビーム荷電粒子顕微鏡のスループットまたはフレームレートは、およそ10~15フレーム/分よりも大きく向上し、本実施形態に係るウェハ移動時の像品質の制御方法によれば、スループットは50%よりも大きく向上する。一般的に、提供の方法は、2つの離れた像パッチ17.1および17.2それぞれの取得に要する時間区間Ts1およびTs2ならびに第1の検査部位から第2の検査部位までサンプルを移動させるのに要する時間Trと比較して、より短い時間区間TG内での少なくとも2つの離れた像パッチ17.1および17.2の像取得を可能にする(TG<Ts1+Ts2+Tr)。
【0082】
誤差振幅の推移ならびにドリフトおよび動的変化への分離は、たとえば高速フーリエ解析または移動平均演算法によって実現される。当技術分野において知られている他の方法も可能である。一例においては、誤差振幅の変化の最大勾配の所定の閾値が適用され、最大勾配の線形ドリフトおよび誤差振幅部が最大勾配を超える残留動的変化への分解が得られる。最大勾配を下回る誤差振幅の線形部が減算され、線形ドリフトが減算された誤差振幅の推移によって動的変化が得られる。誤差振幅の最大勾配は、線形ドリフトを補償する補償器の最大速度によって決まる。このような低速動作補償器としては、たとえばマルチビーム荷電粒子顕微鏡の磁気素子が可能である。別の例においては、誤差振幅の変化の最大周波数の所定の閾値が適用され、誤差振幅の推移の低域通過フィルタリングによってドリフト部が決まる。一例において、ドリフト部および動的部への分離の場合は、滞留時間、ライン走査レート、およびフレームレートが考慮される。たとえば50nsの滞留時間では、ライン走査レートがおよそ2.5kHzである。周波数範囲がおよそ10kHz以上の結像性能の変化または逸脱は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニット800および高速補償器によって補償可能である。したがって、複数の一次荷電粒子ビームレットによる複数のラインの走査中は、結像性能からの高速かつ動的な変化または逸脱を制御可能である。したがって、およそ3sの時間区間Tsの像取得時に複数回(たとえば、制御周波数がおよそ2.5kHzのフライバックごとに)あるいは制御周波数が2.5kHzを超える(たとえば5kHzまたは10kHz以上の)各ライン走査中に動的変化が補償される。秒の時間区間での低速ドリフトは、たとえば2つの連続する像走査間の時間区間Tr’において、たとえばおよそ0.5s未満の時間区間Tr’内で低速補償器により補償される。異なる応答時間の補償器を同期させるため、たとえば制御ユニットに遅延ラインを含めることができる。
【0083】
誤差振幅の推移の予測は、多項式の展開および外挿(たとえば、線形外挿)による近似に従って演算されるが、2次以上等、他の高次の外挿も可能である。高次の多項式外挿の一例として、ルンゲ・クッタ法が与えられる。移動するウェハステージ等の低速変動補償器の例においては、ウェハステージ等の低速変動補償器の校正性能の制御およびモニタリングによって、誤差振幅の推移(たとえば、ステージ位置)の予測が実現される。誤差振幅の推移の予測は、モデルに従うことも可能であり、いわゆるモデルベース予測器は、誤差振幅の予想推移のモデル関数に従って、予想誤差振幅を生成する。このような所定のモデル関数は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡のシミュレーションまたは代表的なテスト動作により生成され、制御ユニット800のメモリに格納される。一例において、このような所定のモデル関数は、個々のマルチビーム荷電粒子顕微鏡ごとに個別である。多くの例において、予測モデルに従う誤差挙動の推定は、周波数解析、低域通過フィルタリング、および多項式近似を含む。
【0084】
誤差振幅のドリフトおよび動的変化への分離または予備知識によるモデル関数の適用等、上述の推移および外挿方法は、誤差振幅の時間的推移により表される像性能パラメータの異なる逸脱に対して異なる選択が可能である。一例において、制御ユニット800は、一連の像パッチの像取得時に、
A)複数のセンサデータを構成するデータストリームを一組の誤差振幅に展開するステップと、
E)一組のドリフト制御信号および一組の動的制御信号を抽出するステップと、
F)一組のドリフト制御信号を低速動作補償器に供給するステップと、
G)一組の動的制御信号を高速動作補償器に供給するステップと、
を含む一連の動作ステップを実行するように構成されている。
【0085】
一実施形態において、制御ユニット800は、時間的推移を誤差振幅のうちの少なくとも1つに近似するステップBを含むようにさらに構成されている。一実施形態において、制御ユニット800は、誤差振幅のうちの少なくとも1つの低速変動ドリフトを予測するステップCを含むようにさらに構成されている。一実施形態において、制御ユニット800は、誤差振幅のうちの少なくとも1つの高速変動動的変化を予測するステップDを含むようにさらに構成されている。
【0086】
一例において、制御ユニット800の設定には、一連の像パッチのうちの第1の像パッチの像走査の時間区間Ts1において、一組の動的制御信号を高速動作補償器に供給するステップGの実行を含む。
【0087】
一例において、制御ユニット800の設定には、一連の像パッチのうちの第1の像パッチの第1の像走査と第2の像パッチの後続の第2の像走査との間の時間区間Trにおいて、一組のドリフト制御信号を低速動作補償器に供給するステップFの実行を含む。時間区間Trは、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1による走査結像によって得られる第1の像パッチの第1の中心位置から後続の第2の像パッチの第2の中心位置までのウェハステージ500の移動に要する時間区間により規定される。一例において、制御ユニット800の設定には、1つの像パッチの1回の像走査の時間区間Tsにおいて、一組のドリフト制御パラメータを低速動作補償器に与えるステップFの実行を含む。
【0088】
一例において、制御ユニット800の設定には、ステージ移動の時間区間Trと重なり合う少なくとも1つの重畳時間区間において、像パッチの像走査の時間区間Ts1またはTs2におけるステップGの実行を含む。一例において、少なくとも1つの重畳時間区間は、ウェハステージの加速のための時間区間Tuの少なくとも一部、ウェハステージの減速のための時間区間Tdの少なくとも一部、または両時間区間である。
【0089】
本発明の一実施形態は、ウェハ検査タスクを実行するためのマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の動作の方法およびこのようなウェハ検査タスクのためのソフトウェア製品である。ウェハ検査タスクを実行する方法には、前述のステップA~Gを実行するためのソフトウェアコードを含む。この方法については、以下の図7においてより詳しく説明する。
【0090】
以上から、本発明の一実施形態において、ウェハ検査のためのマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1は、ドリフト、動的効果、ならびに残留および不要なステージ移動を補償するための複数の尺度を有する。一例を図6に示す。上記図面と同じ参照番号を使用するため、上記図面を参照するものとする。ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、物体面(101)に配置されたウェハ表面(25)のエリアを複数の一次荷電粒子ビームレット(3)で走査することにより、ウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)を生成する第1の偏向系(110)を備えた物体照射ユニット(100)と、を備える。複数の二次電子ビームレット(9)は、投射系(205)と、当該複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得する第2の偏向系(222)と、を備えた検出ユニット(200)によって結像される。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に、物体面(101)においてウェハ表面(25)を位置決めおよび保持するステージ位置センサ(520)を備えたサンプルステージ(500)をさらに備える。
【0091】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、少なくとも第1および第2の偏向系(110、222)と、磁気素子または機械的アクチュエータ等の低速動作補償器と、を含む一組の補償器を具備する。一例において、低速動作補償器は、ウェハステージ500を含む。一組の補償器は、静電素子または低質量の機械的アクチュエータ等の一組の高速動作補償器(132、232、332)をさらに含む。マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1には、ステージ位置センサ(520)および像センサ(207)を備え、使用時、複数のセンサデータを生成するように構成された複数の検出器が構成されている。複数のセンサデータには、ステージ位置センサ(520)が与えるサンプルステージ(500)の位置および配向データを含む。
【0092】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、制御ユニット(800)をさらに備え、制御ユニット(800)は、複数のセンサデータから、第1の一組のP個の制御信号Cpを生成することにより、使用時に動作制御が実現され、一連の像パッチの像取得時に前述の仕様が維持されるように、第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に一組の補償器を制御するように構成されている。
【0093】
ステージ500のステージ移動時には、ステージ位置センサ520によってステージ移動がモニタリングされる。ステージ位置センサ520は、当技術分野において知られており、レーザ干渉計、格子センサ、または共焦点レンズアレイセンサを含み得る。一連の像パッチのうちの1つの像パッチの像走査の時間区間Tsにおいては、ウェハステージ500の相対位置が高い安定性(たとえば、1nm未満、好ましくは0.5nm未満)で制御されるのが好ましい。上述の通り、第1の像パッチおよび後続の第2の像パッチの第1および第2の像走査間においては、ステージ500が制御ユニット800によりトリガされて、第1の検査部位から第2の検査部位まで移動する。第2の検査部位においては、新たなローカルウェハ座標系が定義され、ステージ500がその予測位置に配置されるように、ステージ制御モジュール880によって制御され、視線に対する相対位置が高い安定性で制御される。ステージ位置センサ520は、1nm未満、好ましくは0.5nm未満の精度で6自由度のステージ位置および移動を測定する。一例において(図示せず)、ステージ位置センサ520は、ステージ制御モジュール880への直接接続によって、ステージ位置および移動の制御のための直接フィードバックループを構成する。ただし、このような直接フィードバックループおよび高質量のウェハステージの制御は、通常は低速であり、像走査中に十分な精度を提供しない。フィードバックループは、不要なステージのジッターまたはラグを誘導する可能性もある。したがって、本発明の実施形態によれば、ステージ位置センサ520は、制御ユニット800のセンサデータ解析システム818に接続されている。
【0094】
本実施形態の一例によれば、制御ユニット(800)は、使用時、たとえば像センサデータの10%未満を表す像センサデータ断片まで像センサ(207)からの像センサデータを縮小し、この像センサデータ断片をセンサデータ解析システム(818)に提供するように構成された像データ取得ユニット(810)を備える。使用時、電子感受性像センサ207は、複数の二次電子強度値の像センサデータの大きな像データストリームを受信し、像データを制御ユニット800の像データ取得ユニット810に供給する。この大量の像データは、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の像演算のモニタリングに直接使用されるわけではない。そして、像データストリームの小断片が分岐され、像センサデータ断片がセンサデータ解析システム818にガイドされる。たとえば、像データ取得ユニット810は、複数の荷電粒子ビームレットの所定の走査位置で生成された二次荷電粒子信号の部分集合を分岐するように構成されている。あるいは、走査荷電粒子ビーム3のフライバック時に生成された信号が抽出され、センサデータ解析システム818に転送される。所定の走査位置としては、たとえば走査ラインの部分集合のライン開始位置(たとえば、5番目の走査ラインごとまたはそれぞれの中心位置)が可能である。一例においては、一次荷電粒子ビームレットの部分集合(たとえば、スポット位置5.11(図2参照)における1本のビームレットのみ)の像データが像センサデータ断片の生成に用いられる。米国特許第9530613号は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御用のセンサ信号を提供するため周辺に配置された一次荷電粒子ビームレットの専用部分集合の一例を示しており、これを本明細書に援用する。米国特許第9536702号は、複数のサブフィールドそれぞれの像データの専用部分集合の分岐によるライブビュー像の生成の一例を示しており、これを本明細書に援用する。ライブビュー像データの少なくとも一部を像センサデータ断片として適用可能である。荷電粒子ビームレットの所定の部分集合からの信号の分岐または荷電粒子ビームレットの所定の走査位置における信号の使用によって、センサデータ解析システム818に転送される像センサデータ断片は、およそ2%未満、1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満、あるいは0.01%未満という像データストリームの小断片へと大幅に縮小される。一実施形態において、像センサ207は、図1と併せて上述した通り、第1の低速・高分解能像センサおよび第2の高速像センサを含む。本実施形態において、像センサデータ断片は、第1の低速像センサが与えるセンサデータによって形成され、像データ取得ユニット810は、第1の低速像センサにより与えられたセンサデータをセンサデータ解析システム818に与えるとともに、第2の高速像センサのセンサ信号を像ステッチングユニット812に与えるように構成されている。
【0095】
像センサデータ断片およびステージセンサ520からのステージ位置データは、センサデータ解析システム818において結合される。センサデータ解析システム818は、図3の例で説明した通り、像センサ207からの像センサデータ断片およびステージセンサ520からの位置情報を解析するとともに、複数の一次荷電粒子ビームレット3の実際の像座標系に対するウェハステージの位置情報を抽出する。
【0096】
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の制御ユニット(800)は、複数のセンサデータから長さLのセンサデータベクトルDVを導出するとともに、センサデータベクトルDVを解析して、像変位、像回転、センサデータベクトルDVからの焦点位置および像面傾斜の変化等の誤差関数を抽出するように構成されたセンサデータ解析システム(818)を備える。センサデータ解析システム818は、K個の誤差ベクトル(K≦L)の一組のK個の振幅Akを演算するように構成されている。一般的に、センサデータ解析システム818は、複数のセンサ信号を解析するとともに、当技術分野において知られている方法(たとえば、一組の正規化誤差関数の複数のセンサ信号に対するフィッティング演算)によって、複数のセンサ信号を一組の正規化誤差関数に分解するように構成されている。
【0097】
制御ユニット(800)は、誤差ベクトルの一組の振幅Akから第1の一組の制御信号Cpを演算する制御演算プロセッサ(840)をさらに備える。像点5の横方向変位の動的変化の例において、制御演算プロセッサ840は、誤差振幅の動的変化に対する補正または制御信号を導出するように構成されている。制御ユニット(800)は、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つを演算して第1および第2の偏向ユニット(110、222)に供給することにより、サンプルステージ(500)の位置または配向の変化を補償するように構成されている。像センサ207からのセンサデータは、ステージ位置センサ520からの情報と同期され、組み合わされる。そして、検査部位におけるローカルウェハ座標系と視線により規定される像座標系との間の相対横方向変位ベクトル55がセンサデータ解析システム818によって導出される。制御演算プロセッサ840は、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の第1の走査偏向器110の動作を制御する偏向制御モジュール860に補正または制御信号を供給するように構成されている。その結果、第1の静電走査偏向器110は、横方向(ここでは、xおよびy方向)のウェハステージ500の不要な動的変化と同期して、一次荷電粒子ビームレット3の走査動作を制御する。また、これと並行して、偏向制御モジュール860は、像センサ207上の複数の二次電子ビームレット9の位置が一定に保たれるように、第2の走査偏向器222の動作を制御する。これにより、制御ユニット800は、第1および第2の偏向器110および222による一次および二次荷電粒子ビームレットの走査動作の補正によって、横方向のステージ500の位置の動的変化を補償するように構成されており、ウェハ検査タスクの要件または仕様の範囲内において、高い像忠実度および高い像コントラストでの像取得が十分に維持される。したがって、制御ユニット800は、少なくとも付加的な電圧信号を演算して一次荷電粒子線経路13中のビーム偏向器110に適用することにより、使用時、複数の一次荷電粒子ビームレット3の付加的な変位または回転を生成して、視線に対するステージの横方向変位または回転を少なくとも部分的に補償するように構成されている。したがって、制御ユニット800は、少なくとも第2の付加的な電圧信号を演算して二次電子ビーム経路11中のビーム偏向器222に適用することにより、調整走査中の複数の一次荷電粒子ビームレット3のビームスポット5から生じた複数の二次電子ビームレットの付加的な変位または回転を少なくとも部分的に補償するように構成されている。
【0098】
次に、ウェハステージ500が鉛直方向すなわちz方向にドリフトする誤差関数の一例を示す。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の一組の補償器は、荷電粒子マルチビームレット生成器(300)の補償器(332)、物体照射ユニットの高速補償器(132)、および検出ユニット(200)の補償器(230、232)のうちの少なくとも1つを含む。この場合も、ステージ位置センサ520からのステージ位置データと併せて、像センサデータ断片がセンサデータ解析システム818により解析される。センサデータ解析システム818は、像センサ207からの像センサデータ断片およびステージセンサ520からの位置情報を解析するとともに、複数の一次荷電粒子ビームレット3の実際の走査位置および視線に対するウェハステージの位置情報を抽出する。制御演算プロセッサ840は、複数の一次および二次荷電粒子ビームレット3および9の焦点制御のための制御信号を抽出する。したがって、制御ユニット800の制御演算プロセッサ840は、一次ビーム経路制御モジュール830を介して、マルチビームレット生成器300の少なくとも1つの高速補償器332(たとえば、静電視野レンズ308(図1参照)等の一次荷電粒子ビーム経路13の静電集束レンズ)または複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点を制御する物体照射ユニットの高速補償器132に接続されている。また、制御演算プロセッサ840は、像センサ207上の複数の二次電子ビームレット9の焦点位置が一定に保たれるように、検出ユニット200の少なくとも1つの高速補償器232(たとえば、静電集束レンズ206(図1参照))を制御する投射系制御モジュール820に接続されている。これにより、一次ビーム経路制御モジュール830および投射系制御モジュール820が鉛直方向すなわちz方向のステージ500のステージドリフトを補償するため、ウェハ検査タスクの要件または仕様の範囲内において、高コントラストかつ高分解能の像取得が十分に維持される。
【0099】
一例において、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)のセンサデータ解析システム(818)は、誤差ベクトルの一組の振幅Akのうちの少なくとも1つの振幅Anの時間的推移を予測するように構成されている。結像レンズの一部(たとえば、対物レンズ102またはビームスプリッタ素子420(図1参照))が磁気素子であり、一次および二次電子ビームレット3および9のビーム経路に対して回転を誘導する。静的な像回転または像回転のドリフトは、たとえば物体照射ユニット100の磁気集束素子により補償される。制御ユニット(800)は、第2の像パッチ(17.2)のデジタル像の像取得のため、物体面(101)においてウェハステージ(500)によりウェハ表面(25)を位置決めする第3の信号を生成するようにさらに構成されるとともに、複数のセンサデータからの第2の一組のドリフト制御信号を提供することにより、第2の像パッチ(17.2)の位置に対するウェハステージ(500)の位置決めにおいて一組の補償器を制御するようにさらに構成されている。一例において、制御演算プロセッサ840は、一次ビーム経路制御モジュール830に接続されている。一次ビーム経路制御モジュール830は、物体照射ユニット100の少なくとも1つの低速補償器130またはビームスプリッタ400の磁気素子430(図1参照)に接続されて、一組の一次荷電粒子ビームレット3の回転のドリフトすなわち低速変動部を補正する。一例においては、像センサ207の所定の回転によって、静的な像回転がさらに補償される。制御演算プロセッサ840は、二次電子ビーム経路の低速補償器230(たとえば、磁気レンズ)を制御する投射系制御モジュール820にさらに接続されている。ただし、磁気素子が補償し得るのは、限られた速度の回転のドリフト部である。
【0100】
一例において、荷電粒子マルチビームレット生成器(300)は、高速補償器(332)をさらに備えており、制御ユニット(800)は、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つを演算し、高速補償器(332)に供給して、複数の一次荷電粒子ビームレットの回転を誘導することにより、サンプルステージ(500)の回転を補償するように構成されている。たとえば、ウェハステージの回転の動的変化によって、ウェハステージに対する複数の一次荷電粒子ビームレットの所定の配向からの高速変化および逸脱が生じる。本例においては、回転の動的変化が高速に補償される。制御演算プロセッサ840は、一次ビーム経路制御モジュール830に接続されている。一次ビーム経路制御モジュール830は、本例において、一次荷電粒子ビームレットそれぞれの個別の高速偏向によりローカルウェハ座標系に対する一組の一次ビームレット3の回転の不要な動的変化を補償する静電偏向器アレイを備えたマルチビームレット生成器300の高速補償器332(たとえば、アクティブマルチアパーチャプレート306.3(図1参照))にさらに接続されている。投射系制御モジュール820は、たとえば複数の二次電子ビームレット9の回転の不要な動的変化を補償する静電偏向器のアレイを含む第2のマルチアパーチャプレートを備えた検出ユニット200の高速補償器232に接続されている。これにより、一連の像パッチのうちの像パッチの像走査中の像回転が補償され、ウェハ検査タスクの仕様の範囲内において、高い像忠実度および像コントラストが十分に維持される。
【0101】
一例において、ステージ位置センサ520は、たとえばxおよびy軸それぞれの二重干渉計等の位置および回転検知センサを備える。
【0102】
一例において、ウェハステージの回転の補償は、図5aおよび図5cと併せて上述した通り、第1の像パッチから第2の像パッチまでのウェハステージの移動の時間区間Trにおいて実行される。これにより、スループットが向上する。
【0103】
一実施形態においては、制御演算プロセッサ840が像ステッチングユニット812にさらに接続されている。像ステッチングユニット812は、像データ取得ユニット810から大きな像データストリームを受信し、データストリームの時系列デコンボリューションおよび像サブフィールド27の像ステッチングによって像データストリームを2D像に変換することにより、1つの像パッチ17を得る(図2参照)。複数の像パッチ(たとえば、第1および第2の像パッチ17.1および17.2)の一体的なステッチングによって、ウェハ表面25のあるエリアの2D像表現が得られる。たとえばステージのジッターによる高速像回転および像座標系に対するウェハ7の高速回転を補償するため、制御演算プロセッサ840は、走査中の複数の像スポット5の残留回転を抽出して、このスポット5の残留回転を像ステッチングユニット812に供給するように構成されている。像ステッチングユニット812は、既知のデジタル像処理法によってスポット5の残留回転を補償することにより、1つの像パッチのデータストリームから2D像を高い像忠実度で取得するように構成されている。最終像が最後に圧縮され、像データメモリ814に格納される。
【0104】
一例において、制御ユニット800の制御演算プロセッサ840は、並行したドリフトおよび動的補償によって像回転を補償するように構成されている。偏向器アレイとして構成されたマルチアパーチャプレートによる像回転の補償は範囲が限られるため、磁気レンズを含むドリフト補償器(130、230、330)によって低速変動ドリフトオフセットを連続的に変化させることにより、高速変動動的補償の範囲を縮小可能であるとともに、一次荷電粒子ビーム経路13および二次電子ビーム経路11で偏向器アレイとして構成されたマルチアパーチャプレートによる実現が可能となる。
【0105】
次に、ウェハ表面に対して傾斜した像面において複数の像スポット5が形成される誤差関数の一例を示す。本例において、制御演算プロセッサ840は、一次ビーム経路制御モジュール830に転送される像傾斜補正信号を導出するように構成されている。一次ビーム経路制御モジュール830は、一次荷電粒子ビームレット3それぞれの焦点位置を変化させるように構成されたマルチビームレット生成器300の高速補償器332(たとえば、アクティブマルチアパーチャプレート306(図1参照))を制御して、複数の焦点スポット5の傾斜焦点面を効果的に実現するように構成されている。これにより、ウェハステージ500が傾斜していたり、その傾斜角が変化していたりしても、一次荷電粒子ビームレット3それぞれがウェハ表面25において合焦する。制御演算プロセッサ840は、検出ユニット200の高速補償器232(たとえば、マルチアパーチャ補正器220を含む)を制御する投射系制御モジュール820にさらに接続されている。検出ユニット200の高速補償器232は、像センサ207の焦点位置においてビームスポット15が一定に保たれるように、二次電子ビームレット9それぞれの焦点位置を補正する。これにより、制御演算プロセッサ840、一次ビーム経路制御モジュール830、および投射系制御モジュール820は、像傾斜を補償するように構成されており、像パッチ17全体で高コントラストかつ高分解能の像取得が維持される。
【0106】
本発明の一例においては、上記例と同様に、ステージ位置センサ520と第1の偏向系110との間の制御ユニット800内に直接フィードバックループが設けられ、制御ユニット800は、ステージ位置センサ520からステージ位置信号を受信し、少なくとも第1のオフセット信号を第1の偏向系110に供給して、第1の偏向系110を制御することによりウェハステージ500の移動およびウェハステージ500の目標位置からのずれを補償するように構成されている。制御ユニット800は、少なくとも対応する第2のオフセット信号を第2の偏向系222に供給するようにさらに構成されている。これにより、ウェハステージの位置誤差または移動の高速補償が可能となり、ウェハ検査タスクの要件仕様を維持しつつ、スループットが向上する。
【0107】
当然のことながら、上述の例は、単独のみならず、並行して発生する。上述の装置および誤差補正方法は、上述の例に限定されない。制御演算プロセッサ840は、一組の結像ずれの一組の誤差振幅に対する上述のような直接フィードバック、予測補正、またはモデルベース補正によって、制御信号を並行に導出するように構成されている。また、一例において、投射系制御モジュール820は、サンプル電圧源503に接続されることにより、二次荷電粒子の抽出のための抽出場を制御することによって、二次電子の収集効率ひいては二次電子ビームレット9の強度のほか、二次電子の運動エネルギーを制御する。運動エネルギーは、像コントラスト等、他の複数の特性の原因となる。一例において、投射系制御モジュール820は、検出ユニット200の他の能動素子230および232(第3の偏向系218等)または多極レンズ216等の補正器に接続されている(図1参照)。一例において、二次電子ビーム経路のセンサ238(アパーチャ素子上のセンサ等)は、付加的なセンサ信号をセンサデータ解析システム818に供給する。一例においては、二次荷電粒子ビーム経路11のクロスオーバ212に配置されたアパーチャ素子214の外周に多極センサが配置されている。多極センサから供給された信号によって、二次荷電粒子ビーム経路11の偏心状態が測定される。別の例においては、たとえば複数の一次荷電粒子ビームレット3の偏心補正のため、ビームステアリングマルチアパーチャプレート390(図1参照)等の能動高速素子が荷電粒子顕微鏡1に含まれる。ビームステアリングマルチアパーチャプレート390は、制御演算プロセッサ840による制御信号を受信する一次ビーム経路制御モジュール830に接続されている。一例において、物体照射ユニット100に含まれるセンサ138(アパーチャ素子の近傍またはマルチアパーチャプレート上のセンサ等)は、付加的なセンサ信号をセンサデータ解析システム818に供給する。一例においては、電磁ノイズを測定するコイルのアレイが異なる配向にて含まれる。一例において、一次ビーム経路制御モジュール830は、粒子源301に接続され、粒子源301が提供する粒子源出力または荷電粒子線量を制御するように構成されている。これにより、一組の像パッチの一連の像走査全体を通して、一定の荷電粒子線量が維持される。一例においては、荷電粒子顕微鏡の要素(たとえば、ウェハステージ500)に加速度計またはジャイロスコープ等の振動センサが取り付けられている。振動センサは、振動を測定して、信号をセンサデータ解析システム818に供給する。温度センサ(たとえば、磁気レンズ中または冷却流体の戻り経路中の温度センサ)は、システムの要素のステータスおよび一部の像品質の予想ドリフト挙動についての指標を提供する。すべてのセンサ信号は、たとえばテストサンプルでの模擬検査タスク中の校正によって、ウェハ検査タスクの代表的なセンサデータを提供可能である。代表的なセンサデータは、センサデータベクトルの設定および現実のウェハ検査タスクのセンサデータベクトルからの正規化誤差ベクトルの振幅の抽出に使用可能である。
【0108】
一般的に、制御ユニット800の制御演算プロセッサ840は、誤差振幅から、たとえばステージ500の低速ドリフト等の誤差関数の低速変動推移を補償する補正信号を導出するように構成されている。制御演算プロセッサ840は、誤差振幅の動的変化から、動的変化の高速補償のための補正策を導出し、一次ビームレット制御モジュール830、投射系制御モジュール820、および偏向制御モジュール860に制御信号を分配して、たとえばステージ500の高速振動のような誤差振幅の高速または動的変化を補償する。制御ユニット800のセンサデータ解析システム818によって誤差振幅のドリフトおよび動的変化が演算されるが、これらは、外挿またはモデルベース制御に基づいて直接導出することも可能である。補正策は、ルックアップテーブルに従い得る。あるいは、線形分解によって、荷電粒子顕微鏡1の異なる能動素子が提供する所定の補正関数へと誤差振幅が分解される。したがって、制御演算プロセッサ840は、荷電粒子顕微鏡1の能動素子の実際のステータスおよびステータスの変化もモニタリングする。一例において、制御演算プロセッサ840は、二次電子経路能動素子230、232、一次ビーム経路能動素子330および332、偏向器ユニット110または222等の能動素子に提供された制御信号の履歴を蓄積することにより、荷電粒子顕微鏡1の能動素子の実際のステータスを予測するように構成されている。
【0109】
本発明の一態様は、図6と併せて図1に示すように、誤差ベクトルおよびマルチビーム荷電粒子顕微鏡の使用時に像品質パラメータを最適化するように補償器を駆動する駆動信号の導出である。本態様は一次ビーム経路に図示されるが、検出ユニット200の要素にも同様に、類似の検討が適用される。図1および図6には、荷電粒子顕微鏡の一次ビーム経路の要素の典型的な部分集合を示しており、荷電粒子源301、第1および第2のコリメータレンズ303.1および303.2、第1および第2のアクティブマルチアパーチャプレート構成306.1および306.2(1つのみ図示)、第1の視野レンズ308、第2の視野レンズ307、第3の視野レンズ103.1および第4の視野レンズ103.2、ビームステアリングマルチアパーチャプレート390、第1および第2対物レンズ102.1および102.2(1つのみ図示)、ならびにサンプル電圧源503およびステージ500を含む。制御ユニット800は、使用時、少なくとも1つの制御信号(たとえば、電圧、電流、または両者)を上記すべての要素に供給するように構成されている。マルチアパーチャ構成には、複数の電圧(たとえば、少なくとも複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれに対する個々の電圧)が供給される。100個の一次荷電粒子ビームレットを含むマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システムの場合は、使用時におよそ50個の異なる駆動信号がグローバル要素に印加され、およそ200~800個の異なる電圧がマルチアパーチャ構成それぞれに印加され、個々の電圧または電流の数は、一次荷電粒子ビームレットの数の約10倍を超え得る。本発明の実施形態に係るマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システムの動作に先立ち、ウェハ検査タスクの仕様に従って、一組の像品質が規定される。仕様の一部は、上述した通りである。一組の像品質は、像品質ベクトルを構成しており、像品質の逸脱量は、誤差ベクトルの振幅に対応する。便宜上は、一組の誤差ベクトルの正規化によって、一組の正規化誤差ベクトルを構成する。感度すなわち一次ビーム経路の一組の要素それぞれに印加される駆動信号の変化に対する一組の像品質の変化量は、たとえばシミュレーションまたは校正測定によって決定される。たとえば、校正測定においては、一組のセンサまたは検出器によって代表的なセンサデータ集合が測定され、感度ごとにセンサデータベクトルが生成される。そして、一次ビーム経路の要素の感度の感度行列が形成される。感度行列は、ウェハ検査タスクに適した一組の結像品質に関するマルチビーム荷電粒子顕微鏡の線形摂動モデルを構成しており、通常は直交行列ではない。感度行列は、たとえば特異値分解または類似のアルゴリズムによって解析され、像品質ごとに、像品質の逸脱または収差を補償する補償器の制御信号として少なくとも一組の基本制御信号が選択されることにより、対応する誤差ベクトルの振幅が抑えられる。一例において、感度行列は、一組の像品質の特定の部分集合に対応する2つ、3つ、またはそれ以上のカーネルまたは独立した感度カーネルの部分集合への分割によって分解される。このため、演算の複雑性が抑えられ、非線形効果すなわち高次効果が抑えられる。
【0110】
一例においては、少なくとも感度行列のカーネルがマルチビーム荷電粒子顕微鏡の温度によって決まる。たとえば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡のカラムまたはカラムの要素の温度変化によって、焦点ドリフト、倍率ドリフト、スティグマドリフトが生じる。マルチビーム荷電粒子顕微鏡に設けられた検出器は、温度センサ(たとえば、冷却水中の温度センサまたは機械的構成要素、マルチアパーチャプレート、もしくは磁気素子の内側に取り付けられた温度センサ)を含む。これにより、感度行列の各カーネルを複数の代表的な温度で直交化し、温度補正された感度行列を使用して、温度信号に応じた補償器の対応する駆動信号を演算することができる。実際の温度を考慮し、温度補正された感度行列および対応する駆動信号を適用することは、後述のようなマルチビーム荷電粒子顕微鏡システムの校正の繰り返しステップに特に適する。簡素化された一例においては、複数の温度センサが削減され、マルチビーム荷電粒子顕微鏡システムの動作履歴から予想温度が予測される。
【0111】
一例においては、高速補償器(たとえば、マルチビームレット生成器の高速補償器332、偏向系110、物体照射ユニット100の高速補償器132等の静電補償器および偏向器を含む)に対して第1の一組の基本駆動信号が選択され、低速動作補償器(たとえば、図6の物体照射ユニット130の低速補償器等の磁気素子を含む)に対して第2の一組の基本駆動信号が選択される。一例においては、個々の要素の制御演算子の数が抑えられ、演算時間が短くなり、ウェハ検査タスクの要件仕様の範囲内において一組の像品質を制御可能となるように、各一組の基本駆動信号の数が最小限に抑えられ、最小の数の駆動信号になる。
【0112】
各一組の基本駆動信号は、制御ユニット800のメモリ(たとえば、一次ビーム経路制御モジュール830のメモリ)に格納される。制御演算プロセッサ840は、誤差ベクトルの一組の振幅から、一組の制御信号を導出する。一次ビーム経路制御モジュール830は、たとえば制御演算プロセッサ840により演算された一組の制御信号との乗算によって、一組の基本駆動信号から一組の駆動信号を導出する。二次ビーム経路制御モジュール820は、たとえば制御演算プロセッサ840により演算された一組の制御信号との乗算によって、一組の基本駆動信号から一組の駆動信号を導出する。
【0113】
したがって、ウェハ検査用に構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作を準備する方法には、センサデータベクトルと併せて、一組の像品質および当該一組の像品質からの逸脱を表す一組の正規化誤差ベクトルを規定することを含む。上述のようなウェハ検査タスクの結像仕様に従って、一組の正規化誤差ベクトルの振幅の一組の閾値が決定され、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の補償器の予備選択が実行される。一組の補償器は、複数の一次荷電粒子の走査および偏向のためのマルチビーム荷電粒子顕微鏡の第1の偏向ユニットと、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の使用時に生成された複数の二次電子の走査および偏向のための第2の偏向ユニットと、を備える。ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作を準備する方法には、一組の補償器それぞれの少なくとも駆動信号の変動によって、線形および/または非線形摂動モデルに応じた感度行列を決定することをさらに含む。感度行列は、たとえば特異値分解または類似のアルゴリズムにより解析される。一例において、感度行列は、2つ、3つ、またはそれ以上のカーネルまたは像品質の独立した部分集合への分割によって分解される。このため、演算の複雑性が抑えられ、非線形効果すなわち高次効果が抑えられる。ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作を準備する方法には、一組の正規化誤差ベクトルそれぞれを補償するための一組の正規化駆動信号を導出することをさらに含む。正規化誤差ベクトル、正規化駆動信号、および一組の閾値は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットのメモリに格納されて、所定の誤差ベクトルおよび所定の駆動信号を構成する。
【0114】
使用時(たとえば、ウェハ検査時)、マルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法には、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の複数のセンサから、センサデータベクトルを構成する複数のセンサデータを受信するステップをさらに含む。一例において、複数のセンサデータには、マルチビーム荷電粒子顕微鏡による検査時にウェハを保持するウェハステージの実際の位置および実際の速度に関する位置または速度情報の少なくとも一方を含む。複数のセンサデータを生成する一組のセンサは、所定の誤差ベクトルを明確に導出可能となるように準備および設定がなされ、使用時は、センサデータベクトルから正規化誤差ベクトルの一組の実際の振幅が導出されて、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の像品質の実際の状態が表される。たとえば制御信号との乗算によって、一組の実際の振幅から一組の制御信号が導出され、所定の正規化駆動信号から一組の実際の駆動信号が導出される。制御ユニットは、一組の実際の振幅が一組の閾値未満に保たれ、ウェハ検査タスクの動作が結像仕様の範囲内に十分維持されるように、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の補償器を制御するとともに、一組の実際の駆動信号を一組の補償器に供給する。図7において、本発明の一実施形態に係る動作の方法をより詳しく説明する。説明を目的として、図1図6の同じ参照番号を使用している。ウェハ検査のため、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)は、像センサ(207)およびステージ位置センサ(520)を備えた複数の検出器と、少なくとも第1および第2の偏向系(110、222)を備えた一組の補償器と、を具備する。マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の制御ユニット800のメモリには、誤差ベクトルの振幅および少なくとも一組の正規化駆動信号の閾値が格納されている。
【0115】
第1のステップSRにおいては、たとえばオペレータによりウェハ検査タスクが登録されるか、または、外部オペレーティングシステムにより命令が与えられる。マルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1の所定のグローバルウェハ座標系において、ロードされたウェハの位置合わせおよび位置決めが行われる。ウェハ検査タスクには、一連の検査部位(たとえば、図2の33、35)を含む。一連の検査部位から、少なくとも第1および第2の検査部位33および35における複数のウェハエリアの一連の像取得タスクが生成される。少なくとも1つの検査部位には、少なくとも第1および第2の像パッチ17.1および17.2を含み得る。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1においては、ラスターアレイに構成された複数の一次荷電粒子ビームレット3によって横方向寸法PXの像パッチがそれぞれ結像され、横方向寸法SXのサブフィールド31それぞれに対して複数の一次荷電粒子ビームレット3がそれぞれ走査される。複数の一次荷電粒子ビームレット3により走査された複数のサブフィールドの一体的なステッチングによって、像パッチ17が形成される。サブフィールドの横方向寸法SXは通常、10μm以下であり、1つの像パッチ17の像寸法PXは通常、およそ100μm以上である。一次ビームレット3の数は通常、10×10ビームレットあるいはそれ以上(300ビームレットまたは1000ビームレット等)である。好適なラスター構成は、たとえば六角形ラスター、矩形ラスター、ビームレットが少なくとも円形に配置された円形ラスターであるが、他のラスター構成も同様に可能である。
【0116】
像パッチ17.1および17.2の第1および第2のパッチ中心位置21.1および21.2は、ウェハ表面上の検査部位33の位置および検査タスクの面積を含む検査タスクリストから演算される。検査部位のエリアの横方向寸法が像パッチを超える場合は、少なくとも第1および第2のパッチ中心位置21.1、21.2を有する少なくとも2つの像パッチ17.1、17.2へと検査部位のエリアが分割される。第1および第2のパッチ中心位置21.1、21.2は、ウェハ座標に変換されて、グローバルウェハ座標系に対する第1および第2のローカルウェハ座標系を規定する。これにより、対応する像パッチ17.1および17.2の取得のための複数のローカルウェハ座標系のリストが生成される。
【0117】
第1および第2の部材による複数の部材の説明においてはいつでも、複数の部材が3つ以上の部材を含み得る。たとえば、検査タスクには、複数の50、100、またはそれ以上の検査部位を含み、各検査部位には、複数の2、4、またはそれ以上の像パッチを含み得ることが了解される。
【0118】
ステップS1においては、たとえばマルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の動作履歴または初期化により、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システムのステータスが決定される。マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の初期化には、対応するトリガ信号が供給された場合のシステムの校正を含み得る。システムの校正には、複数の荷電粒子ビームレット3のうちの選択されたビームレットを使用可能である。システムの校正ならびに荷電粒子顕微鏡の視線53およびウェハステージの位置の決定には、ウェハステージ500または第2の計測ステージ上の専用ホルダに取り付けられた少なくとも1つの基準サンプルを使用可能である。倍率、歪み、または非点収差等の異なる像性能関数の校正には、異なる位置における2つ以上の基準サンプルを使用可能である。
【0119】
ステップS0は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線を含むローカルウェハ座標系(551)の位置に対してウェハのウェハ表面(25)を位置決めおよび位置合わせすることを含む。ウェハは、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡1の光軸または視線53の直下で次のローカルウェハ座標系551に対して位置決めおよび位置合わせされる。次のローカルウェハ座標系551としては、ステップSRにおいて生成されたローカルウェハ座標系リストからの後続の1番目または任意のローカルウェハ座標系551が可能である。
【0120】
ウェハステージ500は、ウェハの移動によって、ローカルウェハ座標系551が荷電粒子顕微鏡の視線53と位置合わせされるようにトリガされる。ウェハステージの移動による各ローカルウェハ座標系の位置合わせは、ウェハ表面に形成または可視化されたパターンによって任意選択的に実行される。そして、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1のz軸としての視線53を含む像座標系51とローカルウェハ座標系551との間の差分ベクトルが閾値を下回った場合に調整が停止となる。差分ベクトル55は、たとえば変位ならびに回転もしくは傾斜等、ステージの移動のための6自由度を含むベクトルである。微調整の場合、差分ベクトルは、横方向に50nm以下、視線方法または焦点方向に100nm未満とすることができる。z軸における像回転の閾値は通常、0.5ミリラジアンであり、xy面像座標系に対する傾斜の閾値は通常、1ミリラジアンである。微調整には、少なくとも検査部位の結像ステップおよびステージ移動の複数回の反復を含み得る。
【0121】
本発明の一実施形態においては、ウェハ検査タスクの高速動作モードが選択され、精度調整に対する要件は、2倍、10倍、あるいはそれ以上の閾値の増大によって緩和され、閾値を超える残留差分ベクトルは、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の一組の補償器よって補償される。このため、制御ユニット800により複数のオフセット誤差ベクトル振幅が生成され、以下のステップS2に与えられる。
【0122】
ステップS1においては、像取得の実行によって、ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)のデジタル像が取得され、複数の検出器から複数のセンサデータが収集される。また、一連の検査部位の検査タスクが実行される。ステップS1は、少なくとも以下を含む。
ステップS1-1においては、第1の像パッチ17.1の走査結像による像取得のプロセスが開始される。各像パッチ17は、ステップS0に従ってステージ500がマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の視線53と一致するように調整された状態またはステージが上述の通り低速度で移動する状態で結像されるのが好ましい。
ステップS1-2においては、ステップS1-1と並行して、複数の検出器により複数のセンサデータが生成される。複数の検出器には、少なくともステージ位置センサ520および像センサ207を含む。また、一例において、複数の検出器には、像取得時にセンサデータを生成するセンサ238および138等のマルチビームレット荷電粒子顕微鏡の他の検出器も含む。また、複数のセンサデータには、静電素子および磁気素子に印加された電流または電圧を含み得る。センサデータを提供するセンサの他の例としては、たとえば温度センサ(たとえば、冷却流体中または磁気素子の温度をモニタリングする温度センサ)がある。
【0123】
ステップS1-1の結像には、複数の一次荷電粒子ビームレット3がウェハ表面25と交差する位置で生成された複数の二次電子の収集を含む。二次電子から、複数の二次電子ビームレット9が形成される。複数の二次荷電粒子ビームレット9がそれぞれ、別々に検出されることにより、各ローカルウェハ座標系551における像パッチ17のデジタル像が得られる。
【0124】
ステップS2においては、センサデータ解析システム818において、複数のセンサデータが評価される。ステップS2は、少なくとも以下を含む。
S2-1においては、実時間Taにおける長さLのセンサデータベクトルDV(i)および長さLの一組の所定のK個の誤差ベクトルEk(i)中の展開センサデータベクトルDV(i)に対して、異なるセンサからの複数のセンサデータが結合される。上述の通り、一組の所定の誤差ベクトルEk(i)は、像取得の一組の像品質パラメータの逸脱を表す。一組の所定の誤差ベクトルEk(i)の一組のK個の誤差振幅Akは、以下となるように演算される。
DV(i)=Σkk・Ek(i)+ε
残留誤差ベクトルεは、所定の閾値を下回る。誤差振幅Akの演算においては、ステップS0において生成された複数のオフセット誤差ベクトル振幅またはオフセット誤差ベクトル振幅の予測時間的挙動が考慮される。一例において、Kのサイズは6であり、ローカルウェハ座標系と視線との6自由度の差を表すが、一般にはKが6よりも大きく、たとえば一組の誤差ベクトルは、ウェハステージ位置、ローカルウェハ座標系および視線、倍率変化、アナモルフィック歪み変化、非点収差、視野曲率、3次歪み、ならびに色収差間の6自由度の差を含むK=14個の誤差ベクトルを含む。一般的に、KはLよりも小さい(すなわち、K<L)。センサデータベクトルDV(i)を構成するセンサデータの数Lは、10以上が可能であるものの、小さな値として、演算速度を上げるのが好ましい(たとえば、K<L<4K)。たとえば、K=14の場合、Lは50未満が好ましい。複数のセンサデータを減らして、長さLを縮小したK個の誤差ベクトル振幅の誤差ベクトルとすることにより、データ量が抑えられ、演算速度が向上する。
S2-2においては、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の予想推移に従って、一組の実際の振幅の少なくとも部分集合の推移振幅の部分集合が予測される。n個の誤差振幅Anの少なくとも部分集合の時間的推移が導出され、誤差振幅の部分集合が時間依存関数An(t)と考えられる。実時間Ta後の予測時間区間における誤差振幅An(t>Ta)の時間的推移の導出の一例は、誤差振幅An(t<Ta)の履歴からの外挿であって、上述のような線形または高次外挿のいずれかによる。したがって、使用時には、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の実際の振幅の少なくとも部分集合が記録されて、一組の実際の振幅の部分集合の履歴が生成される。誤差振幅An(t>Ta)の時間的推移の導出の別の例として、所定の一組のモデル関数Mn(t)に対する誤差振幅An(t)の履歴の近似がある。
S2-3においては、誤差振幅An(t)の少なくとも部分集合の時間的推移が振幅An(t)の時間的推移のドリフト部Sn(t)および動的変化Nn(t)に分離される(An(t)=Sn(t)+Nn(t))。
【0125】
一例において、所定の誤差ベクトルには、一次荷電粒子ビーム経路に導入された像収差を含む。一次荷電粒子ビーム経路の収差には、倍率誤差、キーストーン等のアナモルフィック歪み、または3次以上の歪み等の歪みを含む。他の収差は、たとえば視野曲率、非点収差、または色収差である。
【0126】
一例において、所定の誤差ベクトルには、二次電子ビーム経路11に導入された像収差を含む。二次電子ビーム経路11の収差によって、たとえば二次電子の収集効率が低下し、たとえば像コントラストが低下してノイズが増大する。
【0127】
一例において、複数のセンサデータのセンサデータベクトルDV(i)への結合には、複数のセンサデータの差分(たとえば、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線の位置座標とステージ位置センサの位置・配向データとの差分)の演算を含む。
【0128】
一例においては、選択された誤差振幅の特定のシグネチャが誤差振幅An(t)の時間的推移から減算されるように、誤差振幅An(t)の時間的推移のうちの少なくとも1つにフィルタが適用される。これにより、像品質に影響を及ぼさない誤差振幅An(t)の時間的推移の特定のシグネチャが減算され、制御演算量が抑えられる。
【0129】
一例において、一組の誤差ベクトルは、一組の補償器の作動の制御によって一組の誤差ベクトルが補償され得るように、マルチビーム荷電粒子顕微鏡で利用可能な一組の補償器の能力から導出される。一例においては、結像実験によって考え得る一組の誤差ベクトルが導出され、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡には、一組の誤差ベクトルを補償可能な一組の補償器が設けられている。
【0130】
一例においては、制御ユニット800のメモリに格納された所定の一組の閾値に対して、一組の誤差ベクトルの振幅または振幅の推移が比較される。
【0131】
ウェハ検査タスクにおいては、振幅の推移から一組の予測制御信号が決定されるとともに一組の予測制御信号から一組の予測駆動信号が決定され、一組の予測駆動信号が時系列的に一組の補償器に供給されることにより、予測時間区間において、実際の振幅の部分集合が各閾値を下回る。
【0132】
ステップS3においては、一組の誤差振幅Akから、一組のP個の制御信号Cpが導出される。誤差関数En’の誤差振幅Anの時間的推移を含む誤差振幅Akの逸脱および振幅は、制御演算処理装置840によって、所定のマッピング関数MFにより解析され、一組のP個の制御信号Cpにマッピングされる。
MF:Ak→Cp
【0133】
一組のP個の制御信号への一組のK個の誤差振幅の所定のマッピング関数MFによるマッピングは、たとえばルックアップテーブル、行列反転、または特異値分解等の数値フィッティング演算により実現される。
【0134】
一例において、異なるグループの誤差ベクトルは、異なる誤差ベクトルカテゴリにおいて並行に処理される。たとえば、視線およびローカルウェハ座標系により規定された2つの座標系の座標系ドリフトがある座標誤差カテゴリにおいて別々に処理される。高次の結像収差または偏心収差は、それぞれの誤差ベクトルカテゴリにおいて処理される。これにより、一組の誤差ベクトルの一組の制御信号が並行して高速に演算される。
【0135】
ステップS3-1においては、一組の制御信号Cpから一組の偏向制御信号が導出される。
【0136】
ステップS3-2においては、一組の制御信号Cpから一組の一次制御信号が導出される。一次制御信号は、一次ビーム経路の補償器の制御によって、焦点ずれ、像面傾斜、視野曲率、倍率、非点収差、色収差、偏心収差、または他の高次収差等の結像収差を補償するように選択される。
【0137】
ステップS3-3においては、一組の制御信号Cpから一組の二次制御信号が導出される。
【0138】
ステップS3-4においては、一組の制御信号Cpから一組の像処理制御信号が導出される。一組の像処理制御信号には、像ステッチング時に考慮される像ステッチング成分ISpの部分集合を含む。
【0139】
任意選択としてのステップS3-5(図示せず)においては、一組の制御信号Cpから一組のステージ制御信号が導出される。
【0140】
ステップS4においては、投射系制御モジュール820、一次ビーム経路制御モジュール830、偏向制御モジュール860、ステージ制御モジュール880、および像ステッチングユニット812を含む一組の制御モジュールのうちの少なくとも1つの制御モジュールに一組の制御信号Cpが供給される。制御モジュールはそれぞれ、一組の補償器のうちの少なくとも1つの補償器に供給されて、一組の誤差ベクトルのうちの1つの誤差ベクトルにより表される結像収差を補償する一組の作動値または駆動信号(たとえば、一連の電圧または電流)を一組の制御信号Cpから導出する。像取得のステップS1においては、第1の制御信号が一組の補償器に供給される。また、制御信号の第2の部分集合がメモリに格納され、ステップS0に与えられて、次のローカルウェハ座標系の位置決めおよび位置合わせにおいて適用される。
【0141】
ステップS4-1においては、一組の偏向制御信号が偏向制御モジュール860に供給される。像収差を表す一組の誤差ベクトルを補償するため、ローカルウェハ座標系551および横方向位置精度が10nm以下の所定のラスター構成により規定された所定の横方向位置で焦点がウェハ表面25上に形成されるように、複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点5の横方向位置が最初に補正される。所定の位置の焦点5の横方向位置合わせは、複数の一次荷電粒子ビームレット3を偏向させる第1の偏向ユニット110によって制御される。これにより、たとえば制御信号Cpを第1および第2の偏向ユニット(110、222)に供給することによって、サンプルステージ(500)の位置または配向の変化が補償される。
【0142】
したがって、一組の偏向制御信号のうちの制御信号Cpの一例は、偏向制御モジュール860に供給される一次オフセット信号である。偏向制御モジュール860は、静電偏向走査子を備えた第1の偏向ユニット110の第1のオフセット信号を導出し、複数の一次荷電粒子ビームレット3は、オフセット位置の走査経路27によってウェハ表面25上で走査される。これにより、ローカルウェハ座標系551とマルチビーム荷電粒子顕微鏡1の視線53との間の横方向変位ベクトル55が補償され、所定の閾値未満(たとえば、10nm、5nm、2nm、あるいは1nm未満)だけローカルウェハ座標系551から逸脱するように視線53の補正が実現される。
【0143】
さらに、第2のオフセット信号を第2の偏向ユニット222に供給することにより、像検出器207において、二次電子ビームレット9の焦点15が一定の位置に保たれ、高い像コントラストおよび像忠実度が実現される。複数の二次電子ビームレット9の焦点15の位置を像センサ207において一定の位置に保つため、複数の二次電子ビームレット9は、第1の偏向ユニット110および第2の偏向ユニット222を通過する。ウェハ表面25上の複数の一次荷電粒子ビームレット5の走査経路27をオフセット位置で変更した後、第2の独立した偏向ユニット222に一組の偏向制御信号の第2のオフセット信号が供給され、複数の二次電子ビームレット9の焦点15が像センサ207において一定に保たれるように、ウェハ表面5上の焦点5のオフセット位置が第2の偏向ユニット222によって補償される。
【0144】
オフセット位置は、時間とともに変化し得る。また、オフセット制御信号は、像パッチ17の像走査中に変更される。これにより、たとえばサンプルステージ500の横方向ドリフトまたはジッターが補償される。
【0145】
ステップS4-2においては、一組の一次制御信号が一次ビーム経路制御モジュール830に供給される。像収差を表す一組の誤差ベクトルを補償するため、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の被写界深度未満の精度で焦点がウェハ表面25上に形成されるように、複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点5の長手方向位置が補正される。マルチビーム走査型電子顕微鏡は通常、被写界深度がおよそ10nm~100nmであり、像面からの最大焦点スポット逸脱の仕様は、10nm未満、好ましくは5nm未満である。複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点5の像収差には、焦点ずれ、像面傾斜、および視野曲率を含む。
【0146】
たとえば、像面傾斜を補正する一次制御信号が一次ビーム経路制御モジュール830に供給されると、一次ビーム経路制御モジュール830は、アクティブマルチアパーチャプレート構成306(たとえば、マルチアパーチャレンズアレイ)の一組の焦点補正電圧を導出する。これにより、個々の一次荷電粒子ビームレット3の焦点位置がそれぞれ個別に変更され、たとえば像座標系51に対するサンプルステージ500の傾斜を補償するための像面傾斜の補正が実現される。
【0147】
別の例において、焦点ずれを補正する一次制御信号が一次ビーム経路制御モジュール830に供給されると、一次ビーム経路制御モジュール830は、全体としてz方向に像面位置を変更する視野レンズ306の電圧変化を導出する。これにより、複数の一次荷電粒子ビームレット3の焦点位置の変更によって、たとえば一次ビームレット3の伝搬方向であるz方向のサンプルステージ500の移動が補償される。
【0148】
別の例において、像座標系51とローカルウェハ座標系551との間の回転を補正する一次制御信号が一次ビーム経路制御モジュール830に供給されると、一次ビーム経路制御モジュール830は、アクティブマルチアパーチャプレート構成306(たとえば、マルチアパーチャ偏向器アレイ)の一組の偏向電圧を導出する。これにより、個々の一次荷電粒子ビームレット3が個別に偏向され、たとえば像座標系51に対するサンプルステージ500の回転を補償するための像座標系51の回転が実現される。
【0149】
一次ビーム経路の他の像収差を補正する他の制御信号も適宜供給される。一次ビーム経路の結像収差には、倍率変化、非点収差、色収差等の収差を含む。一組の一次制御信号には、荷電粒子マルチビームレット生成器300および物体照射ユニット100の補償器を含む一次ビーム経路の補償器を制御する制御信号を含む。
【0150】
ステップS4-3においては、一組の二次制御信号が投射系制御モジュール820に供給される。像収差を表す一組の誤差ベクトルを補償するため、二次ビーム経路または検出ユニットの結像収差が補正される。
【0151】
たとえば、像面傾斜を補正する二次制御信号が投射系制御モジュール820に供給されると、投射系制御モジュール820は、マルチアパーチャ補正器220(たとえば、マルチアパーチャレンズアレイ)の一組の焦点補正電圧を導出する。これにより、個々の二次電子ビームレット9の焦点位置がそれぞれ個別に変更され、たとえば像座標系51に対するサンプルステージ500の傾斜を補償するための像面傾斜の補正が実現されるとともに、傾斜ウェハ表面25からの二次電子ビームレット9の像検出器207上での結像が維持される。
【0152】
別の例において、焦点ずれを補正する二次制御信号が投射系制御モジュール820に供給されると、投射系制御モジュール820は、全体として像面位置を変更する静電レンズ206の電圧変化を導出する。これにより、複数の二次電子ビームレット9の焦点位置が変更され、たとえば一次ビームレットの伝搬方向であるz方向のサンプルステージ500の移動が補償されるとともに、焦点ずれウェハ表面25からの二次電子ビームレット9の像検出器207上での結像が維持される。
【0153】
別の例において、像座標系51とローカルウェハ座標系551との間の回転を補正する二次制御信号が投射系制御モジュール820に供給されると、投射系制御モジュール820は、マルチアパーチャ補正器220(たとえば、マルチアパーチャ偏向器アレイ)の一組の偏向電圧を導出する。これにより、個々の二次電子ビームレット9が個別に偏向され、像検出器上の所定の一定位置に複数の二次電子ビームレット9を結像するための像座標系51の回転が補償される。
【0154】
上記例は、一次ビーム経路13および二次電子ビーム13における像収差の補償を併せて示している。たとえば非点収差または視野曲率等、一次ビーム経路の像収差を補正するためのいくつかの一次制御信号が一次ビーム経路制御モジュール830に供給され、一次ビーム経路13においてのみ像収差が補償される。たとえば二次ビーム経路の像収差を補正するためのいくつかの二次制御信号が投射系制御モジュール820に適宜供給され、二次ビーム経路11においてのみ像収差が補償される。
【0155】
ステップS4-4においては、一組の像処理制御信号が像ステッチングユニット812に供給される。一組の像処理制御信号ISpは、像ステッチングユニット812により実行される像処理および像ステッチング動作における適用のため、直接適用または像データストリームと併せた格納が行われる。
【0156】
任意選択としてのステップS4-5(図示せず)においては、一組のステージ制御信号がステージ制御モジュール880に供給される。一例において、ステップS2においてはサンプルステージ500の低速ドリフトが検出され、ステージ制御信号によって補償される。
【0157】
一例において、一組の制御信号Cpの少なくとも部分集合は、ドリフト部Sn(t)および動的変化Nn(t)における誤差振幅An(t)の少なくとも部分集合の時間的推移の分離に従って、ドリフト制御成分CSpの部分集合および動的制御成分CNpの部分集合に分割される。ドリフト制御成分CSpの部分集合は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡システムの一組の補償器または能動素子に供給される。一例において、ドリフト制御成分CSpは、磁気素子を含む低速変動能動素子の部分集合に供給され、低速変動能動素子は、駆動によってそれぞれのステータスを変更する。一例においては、静電偏向器、静電多極補正器、または静電マルチアパーチャ素子等の高速変動能動素子にドリフト制御成分CSpが供給される。一例においては、補償器の両部分集合にドリフト制御成分CSpが供給される。動的制御成分CNpの部分集合は、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システムの高速変動能動素子に供給され、高速変動能動成分は、荷電粒子ビームレットへの作用を変化させるように駆動される。高速変動能動素子は、静電偏向器、静電多極補正器、静電レンズ、または静電マルチアパーチャ素子等の静電素子である。
【0158】
一般的に、制御信号の数Pは、誤差振幅Akの数Kを超え得る(P≧K)。制御信号Cpそれぞれは、時間とともに変化し得る。また、制御信号Cpの少なくとも一部は、像パッチ17の像走査中に変更される。これにより、たとえばある像パッチの像取得時に、サンプルステージ500の横方向ドリフトが補償される。一例においては、少なくとも1つの制御信号が時間依存関数であって、後続の時間区間における誤差振幅の予測推移を表す。これにより、予測結像ずれの補償のための連続的な制御演算が実現される。
【0159】
ステップS5においては、ドリフト制御成分CSpおよび動的制御成分CNpの部分集合を含む一組の制御信号Cpのモニタリングおよび蓄積によって、マルチビーム荷電粒子顕微鏡に対する変化の履歴を記録する。
【0160】
ステップS6においては、変化の履歴に基づいて、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の実際のシステムステータスが推定される。
【0161】
任意選択としてのステップS7においては、時間的推移モデル関数Mn(t)が変化の履歴に適応され、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の実際のシステムステータスがステップS2に与えられる。
【0162】
ステップS8においては、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の実際のシステムステータスが解析され、システムステータスの推移が後続の像走査中に予測される。誤差ベクトルの推移が補償不可能な値に達することをシステムステータスの予測が示す場合は、たとえば後続の像走査中に補償のためのアクチュエータの範囲に達する可能性があることから、後続の像走査前にマルチビーム荷電粒子顕微鏡のアクチュエータの再校正および再設定がトリガされる。この場合は、トリガ信号がステップS1に与えられる。次の結像タスクが可能であることをシステムステータスの予測が示す場合、この方法は、検査タスクのリストから、次のローカルウェハ座標系における後続の像パッチの像取得について、ステップS0~ステップS7を継続する。
【0163】
一例において、ステップS8においては、たとえば誤差振幅の推移の予測によって制御信号のドリフト成分が演算され、ステップS0に与えられる。ステップS0においては、第1の像パッチから次の第2の像パッチまたは次の検査部位までステージが移動する間に、補償器の作動によってドリフト成分が補償される。したがって、ステップS0において、制御ユニット800は、制御信号をステージ制御モジュール880に供給することにより、ステージ500を第1のローカルウェハ座標系から後続のローカルウェハ座標系まで移動させ、さらに、一次ビーム経路制御モジュール830、投射系制御モジュール820、または偏向制御モジュール860を含む制御モジュールのうちの少なくとも1つに制御信号のドリフト成分を供給する。
【0164】
上記説明から明らかなように、動作の方法のステップS1~S7は、並行して流れ、像パッチの像取得時にリアルタイムで実行されるとともに相互作用する。当業者であれば、上述の方法の変形および改良が可能であることが認識され得よう。
【0165】
本発明の一実施形態においては、ウェハ検査タスクの仕様要件を維持しつつ、複数の一次荷電粒子ビームレットの物体面101または焦点位置の変更が有効化される。物体面101の変更の理由としては、たとえばステップS7またはステップS8においてモニタリングされるような像取得のための結像設定の所定の変更(たとえば、倍率の変更または開口数の変更、所望の分解能の変更または一次ビーム経路13もしくは二次ビーム経路11に配置された要素のドリフト)が挙げられる。マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の磁気対物レンズ102による焦点面の変更は、複数の一次荷電粒子ビームレット3に回転の影響を及ぼす。焦点面または物体面101が変化すると、図3に示すように、マルチビーム荷電粒子顕微鏡1の光軸105に対して複数の一次荷電粒子ビームレットのラスター構成が回転し、ローカルウェハ座標系551に対する像座標系51の回転が生じる。ウェハ表面25上に配置された半導体構造は通常、互いに直交して配置された構造である。図3bに示すような半導体構造の配置に対する一次荷電粒子ビームレット3の像座標系または走査経路27の回転によって、高スループットのウェハ検査タスクの仕様要件の少なくとも一部が実現不可能となる。また、複数の一次荷電粒子ビームレットの偏心または複数の一次荷電粒子ビームレットの倍率もしくはピッチ等、他の像性能パラメータも変更される。複数の一次荷電粒子ビームスポットの変更位置で放出された複数の二次電子が調整対物レンズ102によって収集されると、像性能パラメータの変化が大きくなる。本実施形態において、像面または焦点面の変更により誘導された像性能パラメータの不要な変化は、制御ユニット800により補償される。制御ユニット800は、第1の像面位置から第2の像面位置までの像面位置または焦点位置の変更により誘導された誤差振幅を補償する制御信号を予測するように構成されている。制御ユニット800は、一次ビーム経路13および二次ビーム経路11における補償器ならびにウェハステージに制御信号を供給するように構成されている。一次ビーム経路の補償器は、たとえば中間像面321の近傍に配置された第2の対物レンズ(図1には示さず)、視野レンズ103.1もしくは103.2、マルチアパーチャ偏向器アレイ306.3、またはマルチアパーチャ偏向器アレイ390を含む。二次ビーム経路の補償器は、たとえば磁気レンズ、非点収差補正器、またはマルチアパーチャアレイ素子を含む。第1の位置から第2の位置までの像面または焦点位置の変更がトリガされた後、制御ユニット800は、一次ビーム経路および二次ビーム経路の補償器またはウェハステージを含む複数の要素を組み合わせて制御する。
【0166】
一例において、制御ユニット800またはマルチビーム荷電粒子顕微鏡1は、複数のセンサデータから、像座標系51または走査経路27もしくは複数の一次荷電粒子ビームレットの方向からの半導体構造の配向の逸脱を表す誤差ベクトルを導出するように構成されるとともに、一組の制御信号を導出して制御モジュールに供給するようにさらに構成されている。制御モジュールは、複数の一次荷電粒子ビームレットの回転、複数の二次電子ビームレットの回転、およびサンプルステージ500の回転のうちの少なくとも1つを生じさせるように構成されている。たとえば、制御ユニット800は、制御信号を上述の方法のステップ0に与えることにより、ウェハステージ500または対物レンズ102を含む低速動作補償器による回転を生じさせるように構成されている。たとえば、制御ユニット800は、制御信号を与えることにより、一次荷電粒子、二次電子ビーム経路、または両者に配置された静電偏向器アレイ等の高速動作補償器を回転させるようにさらに構成されている。
【0167】
一実施形態において、ウェハ検査用に構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法は、a)一組の像品質からの逸脱を表す一組の所定の正規化誤差ベクトルをメモリにロードするステップと、b)一組の所定の正規化誤差ベクトルの振幅の一組の所定の閾値をメモリにロードするステップと、c)一組の正規化誤差ベクトルそれぞれを補償するための一組の所定の正規化駆動信号をメモリにロードするステップと、を含む。ウェハ検査タスクが実行されている間、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作せる方法は、d)マルチビーム荷電粒子顕微鏡の複数のセンサから、センサデータベクトルを構成する複数のセンサデータを受信するステップを含む。一例において、複数のセンサデータには、マルチビーム荷電粒子顕微鏡による検査時にウェハを保持するウェハステージの実際の位置および実際の速度に関する位置または速度情報の少なくとも一方を含む。ウェハ検査タスクが実行されている間、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法は、e)センサデータベクトルから、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の像品質の実際の状態を表す所定の正規化誤差ベクトルの一組の実際の振幅を決定するステップと、f)ウェハ検査時に、一組の実際の振幅から一組の制御信号を導出し、一組の所定の正規化駆動信号から一組の実際の駆動信号を導出するステップと、g)ウェハ検査時に、一組の実際の駆動信号を一組の補償器に供給することによって、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時、実際の振幅の部分集合を、ステップb)において決定した閾値の部分集合未満にするステップと、をさらに含む。一例において、このマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法は、h)ウェハ検査時に、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の予想推移に従って、一組の実際の振幅の少なくとも部分集合の推移振幅の部分集合を予測するステップをさらに含む。一例において、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の予想推移は、予測モデル関数または一組の実際の振幅の履歴の線形、2次、もしくは高次の外挿のうちの1つに従って決定される。このマルチビーム荷電粒子顕微鏡を動作させる方法は、i)ウェハ検査時に、一組の推移振幅から一組の予測制御信号を導出するとともに、一組の予測制御信号から一組の予測駆動信号を導出するステップと、j)ウェハ検査時に、一組の予測駆動信号を時系列的に一組の補償器に供給することによって、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時、実際の振幅の部分集合を閾値の部分集合未満にするステップと、k)ウェハ検査時に、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の実際の振幅の少なくとも部分集合を記録して、一組の実際の振幅の部分集合の履歴を生成するステップと、をさらに含む。
【0168】
このマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作の方法は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の補償器を選択するステップによる動作の前に準備される。一例において、一組の補償器は、複数の一次荷電粒子の走査および偏向のためのマルチビーム荷電粒子顕微鏡の第1の偏向ユニットと、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の使用時に生成された複数の二次電子の走査および偏向のための第2の偏向ユニットと、を備える。このマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作の方法はさらに、一組の像品質からの逸脱を表す一組の所定の正規化誤差ベクトルを決定するステップと、一組の補償器のそれぞれの少なくとも駆動信号の変動によって線形摂動モデルに応じた感度行列を決定するステップと、感度行列から、一組の所定の正規化誤差ベクトルそれぞれを補償する一組の所定の正規化駆動信号を決定するステップと、による動作の前に準備される。
【0169】
図6と併せて説明したマルチビーム荷電粒子顕微鏡の構成要素および図7と併せて説明した方法ステップは、本発明に係るウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡の構成および動作方法を説明するための簡素化された例であることが了解される。方法ステップまたは構成要素の少なくとも一部を組み合わせ可能である。たとえば、制御演算プロセッサ840およびセンサデータ解析システム818を一体として組み合わせることも可能であるし、一次ビーム経路制御モジュール820を制御演算プロセッサ840に組み込むことも可能である。
【0170】
上述の実施形態において使用される補償器のうちの少なくとも1つがマルチビームアクティブアレイ素子である。一次荷電粒子ビーム経路における静電マイクロレンズアレイ、静電非点収差補正器アレイ、または静電偏向器アレイによって、複数の一次荷電粒子ビームレットのうちの個々の一次荷電粒子ビームレットそれぞれが個別に影響を受ける。一例として、このようなマルチアパーチャアレイ601を図8に示す。マルチアパーチャアレイ601は、複数の一次荷電粒子ビームレットのラスター構成(本例においては、六角形ラスター構成)に配置された複数のアパーチャを備える。アパーチャのうちの2つを参照番号685.1および685.2で示す。複数のアパーチャそれぞれの周囲には、複数の電極681.1~681.8が配置されている。本例において、電極の数は8つであるが、1つ、2つ、4つ以上等、他の個数も可能である。電極は、相互かつマルチアパーチャアレイ601の担体に対して、電気的に絶縁されている。複数の電極はそれぞれ、導電性ライン607のうちの1つによって制御モジュールに接続されている。電極681それぞれに個別かつ所定の電圧を印加することにより、各アパーチャ685を通過する複数の一次荷電粒子ビームレットそれぞれに対して異なる効果が実現され得る。静電効果のみが使用されることから、アパーチャ685を透過する荷電粒子ビームレットを高速かつ高頻度に、個別に調整または変更することができる。たとえば、このような効果としては、偏向、焦点面の変更、一次荷電粒子ビームレットの非点収差の補正が可能である。一例においては、複数(たとえば、2つまたは3つ)のこのようなマルチアパーチャプレートが連続配置されている。同様に、二次電子ビーム経路における静電マイクロレンズアレイ、静電非点収差補正器アレイ、または静電偏向器アレイによって、複数の二次電子ビームレットのうちの個々の二次電子ビームレットそれぞれが類似した様式で個別に影響を受け得る。
【0171】
次に、本発明の別の実施形態をより詳しく説明する。図1を参照して、ウェハ検査用に構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡およびこのような顕微鏡を動作させる方法を説明した。上記説明から了解される通り、たとえば第1の像パッチ17.1のデジタル像の取得時に、複数の一次荷電粒子ビームレット3および複数の二次電子9が共通ビーム経路において第1の偏向系110により一体走査偏向され、検出ユニット200における二次ビーム経路11において、複数の二次電子9が第2の偏向系222によりさらに走査偏向される。これにより、像センサ207上の複数の二次電子ビームレット9の焦点スポット15は像走査中、一定の位置に保たれる。検出ユニット200は、複数の二次電子ビームレット9がフィルタリングされるアパーチャ214を備える。したがって、アパーチャフィルタ214は、像センサ207に与えられる二次電子ビームレットのトポグラフィコントラストを制御する。検出ユニット200のずれ(たとえば、複数の二次電子ビームレット9のクロスオーバ212の中心のシフト)または第2の偏向系222のずれによって、像コントラストは変化する。本実施形態によれば、トポグラフィコントラストの不要な変化が検出され、補償される。したがって、検出ユニット200は、第3の偏向系218を備えており、第1、第2、および第3の偏向ユニット110、222、および218の組み合わせ動作によって、複数の二次電子ビームレット9のクロスオーバ212の中心は、アパーチャ絞り214のアパーチャ絞り位置と一致するように保たれ、二次荷電粒子像スポット15の位置は、像センサ207上で一定に保たれる。これにより、ウェハ検査タスクの仕様要件に応じたウェハ検査が可能となる。像パッチ17.1の走査経路27.11・・・27.MN上かつ異なるサブフィールド31.11・・・31.MN内において、複数の二次電子ビームレットごとに一定の像コントラストが維持される。図1には、検出ユニット200の投射系205における第2および第3の偏向系222および218の位置を一例として示すが、像センサ207上の一定の像コントラストのほか、複数の二次電子ビームレット9の焦点15の一定の位置を実現するには、投射系205における第2および第3の偏向系222および218の他の位置も可能である。たとえば、第2および第3の偏向系222および218の両者をアパーチャフィルタ214の前に配置可能である。制御ユニット800は、センサデータベクトルから、複数の二次電子ビームレット9全体にわたるコントラスト変動を表す誤差ベクトルの振幅を導出するように構成されるとともに、第1の制御信号を導出して偏向制御モジュール860に供給するようにさらに構成されている。偏向制御モジュール860は、検出ユニット200の二次ビーム経路11に配置された第2および第3の偏向系222および218を含む偏向系の変更駆動信号を導出するように構成されている。一例において、制御モジュール800は、第2の制御信号を導出して投射系制御モジュール820に供給するようにさらに構成されている。投射系制御モジュール820は、投射系205の別の高速補償器232(たとえば、マルチアレイ能動素子220の静電レンズまたは非点収差補正器)を制御する第2の駆動信号を導出するように構成されている。これにより、高スループットのウェハ検査タスクの性能仕様の範囲内において、像コントラストが十分に維持される。別の例において、複数の一次荷電粒子ビームレット3の偏向を走査する第1の偏向系110は、複数の一次荷電粒子ビームレット3の第1のビームクロスオーバ108に近接して配置されているのが好ましい。ただし、一次ビーム経路13のずれによって、第1のビームクロスオーバ108の位置がその設計位置から逸脱する可能性もあり、複数の一次荷電粒子ビームレット3に対する偏心誤差が導入される。制御ユニット800は、センサデータから、複数の一次荷電粒子ビームレット3によるウェハ表面25の偏心照射からの逸脱を表す誤差ベクトルの振幅を導出するとともに、この逸脱から制御信号を導出して、たとえば中間像面321の近傍のマルチアパーチャ偏向器390に駆動信号を供給するように構成されている。これにより、複数の一次荷電粒子ビームレット3によるウェハ表面の偏心照射が維持される。偏心照射とは、複数の一次荷電粒子ビームレット3それぞれがウェハ表面25に平行かつほぼ垂直に(たとえば、表面法線からの角度ずれが25ミリラジアン未満で)衝突する照射を意味する。実施形態において、センサデータベクトルから導出される実際の誤差振幅は、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線およびマルチビーム荷電粒子顕微鏡の像座標系に対するウェハステージの相対位置および配向、偏心状態、コントラスト状態、複数の荷電粒子ビームレットの絶対位置精度、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の倍率もしくはピッチ、またはマルチビーム荷電粒子顕微鏡の一次荷電粒子ビームレットの開口数のうちの少なくとも1つ等、ウェハ検査タスクの像性能仕様を表す。像走査中は、複数の荷電粒子ビームレットの歪み、非点収差、および色収差といった高次収差等、ウェハ検査タスクの像性能仕様の他の逸脱についても同様にモニタリングおよび補償可能である。たとえば、非点収差を表す誤差ベクトルの振幅は、像センサのデータ断片から導出して、静電補償器により補償可能である。たとえば、一次荷電粒子ビームレットの色収差を表す誤差ベクトルの振幅は、ビームスプリッタユニット400の付加的な磁気レンズ420および電圧源ユニット503によって補償可能である。上述の実施形態または例に係るマルチビーム荷電粒子顕微鏡によれば、ウェハ表面の高速走査が可能であり、半導体装置の開発中もしくは製造中またはリバースエンジニアリングにおいて、少なくとも数ナノメートル(たとえば、2nm未満)の限界寸法の分解能での集積半導体フィーチャの高スループット検査がもたらされる。
【0172】
複数の一次荷電粒子ビームレットがウェハの表面上で並行して走査され、二次荷電粒子が生成され、たとえば直径100μm~1000μmの像パッチのデジタル像が形成される。第1の像パッチの第1のデジタル像の取得後は、基板またはウェハステージが次の第2の像パッチの位置に移動し、複数の一次荷電粒子ビームレットの再走査によって、第2の像パッチの第2のデジタル像が取得される。動作時および各像取得時は、像センサおよびステージ位置センサを含む複数の検出器によって複数のセンサデータが生成されるとともに、一組の制御信号が生成される。制御信号は、複数の一次および二次荷電粒子ビームレットを走査する偏向ユニット、静電レンズ、磁気レンズ、非点収差補正器、マルチアパーチャアクティブアレイ、または他の補償器等の能動素子の動作を制御する制御モジュールに供給される。たとえば、第1および第2のデジタル像の取得間で、ステージが第1の像パッチから第2の像パッチに移動している間は、たとえば磁気素子等の低速補償器によって、少なくとも結像収差の部分集合が補償される。第1または第2の像パッチのデジタル像の像取得時は、偏向ユニットを含む制御モジュールに制御信号の部分集合が供給される。これにより、たとえばマルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線に対するウェハステージの位置誤差またはドリフトが像走査中に補償される。他の収差または結像性能仕様からの逸脱がセンサデータから決定および予測され、それぞれの制御信号がリアルタイムに生成され、高速アクチュエータに供給される。これにより、複数の像サブフィールドまたはパッチの一体的なステッチングによって、高い像忠実度かつ精度で、5nm、2nm、または1nm未満の高分解能のデジタル像が形成される。ステージは、たとえば反復的な正確なステージの位置合わせのための時間を短縮しつつ、第1および第2の像パッチ間または次の関心位置(たとえば、次のPCMまたは隣り合う像フィールド)まで高速に移動する。
【0173】
上記説明から明らかとなるように、上記例および実施形態の組み合わせおよび種々改良が可能であり、上記実施形態または例にも同様に適用可能である。一次ビームの荷電粒子としては、たとえば電子が可能であるが、Heイオン等の他の荷電粒子も可能である。二次電子には、狭義の二次電子のほか、後方散乱電子または後方散乱電子により生成される第2の二次電子等、一次荷電粒子ビームレットのサンプルとの相互作用により生成されるその他任意の二次荷電粒子も含む。別の例においては、二次電子の代わりに二次イオンが収集され得る。
【0174】
以下の複数組の条項の使用によって、いくつかの実施形態をさらに説明することも可能である。ただし、本発明は、これら複数組の条項のいずれにも限定されないものとする。
【0175】
第1の条項集合
条項1:高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
第1の時間区間Ts1における第1の像パッチ17.1の第1の像取得と、
第2の時間区間Ts2における第2の像パッチ17.2の第2の像取得と、
第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)までウェハステージ(500)を移動させる第3の時間区間Trであり、第1の時間区間Ts1および第2の時間区間Ts2の少なくとも一方が重なり合う、第3の時間区間Trと、
を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0176】
条項2:第2の像パッチ17.2の第2の像取得が、ウェハステージ(500)が完全に停止した場合、第3の時間区間Trの終了の前に開始される、条項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0177】
条項3:ウェハ移動の第3の時間区間Trが、第1の像パッチ17.1の像取得が終了となった場合、時間区間Ts1の終了の前に開始される、条項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0178】
条項4:マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの第1の像パッチ17.1の第1の中心位置の位置ずれまたはウェハステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、第1の像パッチ17.1の像取得の第1の時間区間Ts1におけるウェハ移動の第3の時間区間Trの開始時間の演算をさらに含む、条項1~3のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0179】
条項5:マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの第2の像パッチ17.2の第2の中心位置21.2の位置ずれまたはウェハステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、ウェハステージ移動の時間区間Trにおける第2の像取得の第2の時間区間Ts2の開始時間の演算をさらに含む、条項1~4のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0180】
条項6:ウェハステージ(500)の移動の時間区間Trにおいて、一連のウェハステージ位置を予測するステップと、
予測したウェハステージ位置から、少なくとも第1および第2の制御信号を演算するステップと、
第1の制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の一次ビーム経路(13)中の第1の偏向系(110)に供給し、第2の制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の二次ビーム経路(11)中の第2の偏向系(222)に供給するステップと、
をさらに含む、条項1~5のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0181】
条項7:高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子システム(1)であって、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のスポット位置(5)で物体面(101)に配置されたウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)の生成のため、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、ウェハ表面(25)を走査する第1の偏向系(110)を備えた物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)、第2の偏向系(222)、および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)および第2の像パッチ(17.2)のデジタル像を取得する検出ユニット(200)と、
ステージ動作コントローラを備えたサンプルステージ(500)であり、ステージ動作コントローラが、独立して制御されるように構成された複数のモータを備え、ステージが、第1の像パッチ(17.1)および第2の像パッチ(17.2)のデジタル像の取得時に、物体面(101)においてウェハ表面(25)を位置決めおよび保持するように構成された、サンプルステージ(500)と、
ステージ位置センサ(520)および像センサ(207)を備え、使用時、サンプルステージ(500)の位置データを含む複数のセンサデータを生成するように構成された複数の検出器と、
使用時、第1の時間区間Ts1における第1の像パッチ17.1の第1の像取得および第2の時間区間Ts2における第2の像パッチ17.2の第2の像取得を実行するように構成されるとともに、第3の時間区間Trにおけるサンプルステージ(500)のトリガによって、第1の時間区間Ts1および第2の時間区間Ts2の少なくとも一方が第3の時間区間Trと重なり合うように、第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)までサンプルステージ(500)を移動させるように構成された制御ユニット(800)と、
を備えた、システム。
【0182】
条項8:制御ユニットが、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの第1の像パッチ17.1の第1の中心位置の位置ずれまたはウェハステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、第1の像パッチ17.1の像取得の第1の時間区間Ts1におけるウェハ移動の第3の時間区間Trの開始時間を決定するようにさらに構成された、条項7に記載のシステム。
【0183】
条項9:制御ユニットが、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線(53)からの第2の像パッチ17.2の第2の中心位置21.2の位置ずれまたは前ウェハステージ(500)の移動速度が所定の閾値を下回るように、ウェハステージ移動の時間区間Trにおける第2の像取得の第2の時間区間Ts2の開始時間を決定するようにさらに構成された、条項7または8に記載のシステム。
【0184】
条項10:制御ユニットが、ウェハステージ(500)の移動の時間区間Trにおいて、一連のウェハステージ位置を予測し、予測したウェハステージ位置から、少なくとも第1および第2の制御信号を演算し、第1の制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の一次ビーム経路(13)中の第1の偏向系(110)に供給し、第2の制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の二次ビーム経路(11)中の第2の偏向系(222)に供給するようにさらに構成された、条項7~9のいずれか1項に記載のシステム。
【0185】
条項11:高スループットかつ高分解能のマルチビーム荷電粒子システム(1)を動作させる方法であって、
第1の像パッチ17.1の第1の像取得と、第2の像パッチ17.2の第2の像取得と、第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)までウェハステージ(500)を移動させることと、をすべて時間区間TG内に含み、
第1の像パッチ17.1の第1の像取得が、第1の時間区間Ts1にあり、
第2の像パッチ17.2の第2の像取得が、第2の時間区間Ts2にあり、
第1の像パッチ(17.1)の第1の中心位置(21.1)から第2の像パッチ17.2の第2の中心位置(21.2)までウェハステージ(500)を移動させることが、第3の時間区間Trにあり、
時間区間TGが、Ts1、Ts2、およびTrの合計よりも短い、すなわち、TG<Ts1+Ts2+Trである、マルチビーム荷電粒子システム(1)を動作させる方法。
【0186】
条項12:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)で物体面(101)に配置されたウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)の生成のため、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、ウェハ表面(25)を走査する第1の偏向系(110)を備えた物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)、第2の偏向系(222)、および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)および第2の像パッチ(17.2)のデジタル像を取得する検出ユニット(200)と、
ステージ位置センサ(520)を備えたサンプルステージ(500)であり、第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に、物体面(101)においてウェハ表面(25)を位置決めおよび保持するとともに、第1の像パッチ(17.1)から第2の像パッチ(17.2)までウェハ表面を移動させる、サンプルステージ(500)と、
ステージ位置センサ(520)および像センサ(207)を備え、使用時、サンプルステージ(500)の位置データを含む複数のセンサデータを生成するように構成された複数の検出器と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)をウェハ表面(25)上で変位または回転させるように構成された物体照射ユニット(100)中の第1の補償器と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)の変位または回転を補償するとともに、複数の二次電子ビームレット(9)のスポット位置(15)を像センサ(207)上で一定に保つように構成された投射系(205)中の第2の補償器と、
第1の像パッチ(17.1)または第2の像パッチ(17.2)のデジタル像の取得時に、複数のセンサデータから、第1の一組の制御信号Cpを生成することにより、物体照射ユニット(100)中の第1の補償器および投射系(205)中の第2の補償器を同期制御するように構成された制御ユニット(800)と、
を備えた、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0187】
条項13:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpを演算して第1の補償器および第2の補償器に供給することにより、サンプルステージ(500)の位置の変化または配向の変化を補償するように構成された、条項12に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0188】
条項14:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpを演算して第1の補償器および第2の補償器に供給することにより、物体照射ユニット(100)の視線(53)の位置の変化を補償するように構成された、条項12または13に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0189】
条項15:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpを演算して第1の補償器および第2の補償器に供給することにより、サンプルステージ(500)の位置の変化または配向の変化と物体照射ユニット(100)の視線(53)の位置の変化との差を補償するように構成された、条項12~14のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0190】
条項16:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpを演算して第1の補償器および第2の補償器に供給することにより、第1の像パッチ(17.1)または第2の像パッチ(17.2)のデジタル像の取得時に、サンプルステージ(500)の移動速度を補償するように構成された、条項12~15のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0191】
条項17:マルチビーム荷電粒子顕微鏡によるウェハ検査の方法であって、
第1の時間区間Ts1における第1の像パッチの第1の像取得ステップと、
時間区間Trにおける第1の像パッチの位置から第2の像パッチまでのウェハステージの移動ステップと、
第2の時間区間Ts2における第2の像パッチの第2の像取得ステップと、
により、
第1の時間区間Ts1において、複数のセンサ信号から、少なくとも第1の誤差振幅を演算するステップと、
第1の時間区間Ts1において、少なくとも移動時間区間Trおよび第2の時間区間Ts2にわたり、第1の誤差振幅の推移を予測するステップと、
少なくとも移動時間区間Trにおいて、制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットに供給することにより、第2の時間区間Ts2において、予測した誤差振幅の推移を所定の閾値未満に保つステップと、
を含む、方法。
【0192】
条項18:第1の誤差振幅の推移の予測が、予測モデルまたは外挿によって生成される、条項17に記載の方法。
【0193】
条項19:第1の誤差振幅が、視線の変位、ウェハステージの変位、ウェハステージの回転、視線の回転、倍率誤差、焦点誤差、非点収差誤差、または歪み誤差のうちの少なくとも1つを表す、条項17または18に記載の方法。
【0194】
条項20:制御信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットに供給することにより、ウェハステージ、第1の偏向ユニット、第2の偏向ユニット、マルチビームレット生成ユニットの高速補償器、または検出ユニットの高速補償器のうちの少なくとも1つを含むコンポーネントを制御する、条項17~19のいずれか1項に記載の方法。
【0195】
条項21:制御ユニットを備えたマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作の方法であって、第1の像パッチおよび第2の像パッチを含む一連の像パッチの像取得時に、
複数のセンサデータを構成するデータストリームを一組の誤差振幅に展開するステップと、
一組のドリフト制御信号および一組の動的制御信号を抽出するステップと、
一組のドリフト制御信号を低速動作補償器に供給するステップと、
一組の動的制御信号を高速動作補償器に供給するステップと、
を含む一連の動作ステップを含む、方法。
【0196】
条項22:一組のドリフト制御信号および一組の動的制御信号を抽出するステップが、第1の像パッチの像取得の時間区間Ts1において実行され、一組のドリフト制御信号を低速動作補償器に供給するステップが、第1の像パッチから第2の像パッチまでの基板ステージによる基板の移動の時間区間Trにおいて実行される、条項21に記載の方法。
【0197】
条項23:一組の動的制御信号を高速動作補償器に供給するステップが、時間区間Ts1において実行される、条項21または22に記載の方法。
【0198】
条項24:一組の動的制御信号を高速動作補償器に供給するステップが、第2の像パッチの像走査の時間区間Ts2においてさらに実行される、条項22または23に記載の方法。
【0199】
条項25:誤差振幅のうちの少なくとも1つの時間的推移を予測するステップをさらに含む、条項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【0200】
条項26:誤差振幅のうちの少なくとも1つの低速変動ドリフトを予測するステップと、誤差振幅のうちの少なくとも1つの高速変動動的変化を予測するステップと、を含む、条項25に記載の方法。
【0201】
条項27:複数の一次荷電粒子ビームレットを生成する荷電粒子源を含む装置の1つまたは複数のプロセッサによって、
X-Y軸の少なくとも一方において移動可能なステージの横方向変位を決定することと、
物体照射ユニットの視線の横方向変位を決定することと、
サンプルに入射する複数の一次荷電粒子ビームレットを偏向させる第1の信号の適用によって、横方向変位を少なくとも部分的に補償するようにコントローラに指示することと、
を含む方法を装置に行わせるように実行可能な一組の命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体。
【0202】
第2の条項集合
条項1:サンプルを保持するように構成された可動ステージと、
複数の一次荷電粒子ビームレットの複数の焦点スポットによってサンプルの表面を照射するように構成された物体照射ユニットと、
荷電粒子源から複数の一次荷電粒子ビームレットを生成するように構成された荷電粒子線生成器と、
ステージの横方向変位または回転を決定するように構成されたステージセンサと、
物体照射ユニットの視線の横方向変位を決定するように構成された像センサと、
少なくとも付加的な電圧信号を生成し、使用時、複数の一次荷電粒子ビームレットの付加的な変位または回転を生成するように構成された物体照射ユニット中の第1のビーム偏向器に適用して、視線の横方向変位とステージの横方向変位または回転との差を少なくとも部分的に補償するように構成された制御ユニットと、
を備えたマルチビーム荷電粒子線システム。
【0203】
条項2:制御ユニットが、サンプル表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットの走査中に、ステージの現在の位置とステージの目標位置との差に対応するステージの横方向変位または回転を演算するようにさらに構成された、条項1に記載のシステム。
【0204】
条項3:制御ユニットが、サンプル表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットの走査中に、視線の現在の位置と視線の目標位置との差に対応する視線の横方向変位を演算するようにさらに構成された、条項1または2に記載のシステム。
【0205】
条項4:制御ユニットおよび第1のビーム偏向器が、サンプル上の一次荷電粒子ビームレットの走査中に、少なくとも1つの駆動電圧信号を動的に調整するようにさらに構成された、条項2または3に記載のシステム。
【0206】
条項5:走査中の複数の一次荷電粒子ビームレットのビームスポット位置から生じた複数の二次電子ビームレットの付加的な変位または回転を少なくとも部分的に補償するように構成された二次電子ビーム経路中の第2のビーム偏向器をさらに備えた、条項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【0207】
条項6:制御ユニットが、ステージ動作コントローラをさらに備え、ステージ動作コントローラが、制御信号により独立して制御されるように構成された複数のモータを備えた、条項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【0208】
条項7:制御ユニットが、複数のセンサ信号に基づいて複数の誤差ベクトル振幅を導出するとともに、複数の誤差ベクトル振幅から、複数の制御信号のうちの少なくとも1つを抽出するように構成されたプロセッサを備えた、条項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【0209】
条項8:マルチビーム荷電粒子線システム中のステージに配設されたサンプルを照射する方法であって、
荷電粒子源から複数の一次荷電粒子ビームレットを生成することと、
X-Y平面において移動可能なステージの横方向変位または回転を決定することと、
マルチビーム荷電粒子システムの視線を決定することと、
ステージの横方向変位もしくは回転ならびに視線の位置から変位ベクトルを決定することと、
少なくとも付加的な電圧信号を一次荷電粒子線経路中のビーム偏向器に適用することにより、使用時、複数の一次荷電粒子ビームレットの付加的な変位または回転を生成して、視線の位置に対するステージの横方向変位または回転に対応する変位ベクトルを少なくとも部分的に補償することと、
を含む、方法。
【0210】
条項9:ステージの横方向変位または回転が、ステージの現在の位置とステージの目標位置との差に対応し、回転変位が、サンプル表面上の複数の一次荷電粒子ビームレットの走査中に変動する、条項8に記載の方法。
【0211】
条項10:サンプル上の一次荷電粒子ビームレットの走査中に、電圧信号のうちの少なくとも1つを動的に調整することをさらに含む、条項8または9に記載の方法。
【0212】
条項11:少なくとも第2の付加的な電圧信号を二次電子ビーム経路中のビーム偏向器に適用して、走査中の複数の一次荷電粒子ビームレットのビームスポット位置から生じた複数の二次電子ビームレットの付加的な変位または回転を少なくとも部分的に補償することをさらに含む、条項8~10のいずれか1項に記載の方法。
【0213】
条項12:制御信号をステージ動作コントローラに適用することをさらに含み、ステージ動作コントローラが、制御信号により独立して制御されるように構成された複数のモータを備えた、条項8~11のいずれか1項に記載の方法。
【0214】
条項13:複数のセンサ信号に基づいて複数の誤差ベクトル振幅を導出することと、複数の誤差ベクトル振幅から、複数の制御信号のうちの少なくとも1つを抽出することと、をさらに含む、条項8~12のいずれか1項に記載の方法。
【0215】
第3の条項集合
条項1:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
ラスター構成(41)の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成するように構成された荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)で物体面(101)に配置されたウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)の生成のため、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、ウェハ表面(25)を照射するように構成された物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するように構成された検出ユニット(200)と、
使用時、ウェハ表面(25)を物体照射ユニット(100)の物体面(101)に位置決めおよび保持するように構成されたステージ位置センサ(520)を備えたサンプルステージ(500)と、
使用時、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)をウェハ表面(25)上で付加的に変位または回転させるように構成された物体照射ユニット(100)中の第1の補償器(132、110)と、
使用時、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)の付加的な変位または回転を補償することによって、複数の二次電子ビームレット(9)のスポット位置(15)を像センサ(207)上で一定に保つように構成された投射系(205)中の第2の補償器(232、222)と、
少なくとも第1の補償器(132、110)および第2の補償器(232、222)によって、サンプルステージ(500)の移動により誘導されたウェハ表面(25)の変位を補償するように構成された制御ユニット(800)と、
を備えた、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0216】
条項2:第1の補償器(132、110)が、静電レンズ、静電偏向器、静電非点収差補正器、静電マイクロレンズアレイ、静電非点収差補正器アレイ、または静電偏向器アレイのうちの1つを含む、条項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0217】
条項3:制御ユニット(800)が、第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に、第1の一組の制御信号Cpを生成することにより、物体照射ユニット(100)中の第1の補償器(132、110)および投射系(205)中の第2の補償器(232)を同期制御するように構成された、条項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0218】
条項4:使用時、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)をウェハ表面(25)上で付加的に変位または回転させるように構成された荷電粒子マルチビームレット生成器(300)中の第3の補償器(330、332)をさらに備えた、条項1~3のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0219】
条項5:制御ユニット(800)が、第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に、第1の一組の制御信号Cpを生成することにより、物体照射ユニット(100)中の第1の補償器(132、110)、投射系(205)中の第2の補償器(232、222)、または荷電粒子マルチビームレット生成器(300)中の第3の補償器(330、332)のいずれかを同期制御するように構成された、条項4に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0220】
条項6:ステージ位置センサ(520)および像センサ(207)を備え、使用時、複数のセンサデータを生成するように構成された複数の検出器をさらに備えた、条項1~5のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0221】
条項7:制御ユニット(800)が、複数のセンサデータから、物体照射ユニット(100)中の第1の補償器(132、110)の駆動信号を導出して、ウェハ表面(25)の変位と同期した複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)の付加的な変位を実現するように構成された、条項6に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0222】
条項8:付加的な変位が、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のラスター構成(41)の回転を含む、条項7に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0223】
条項9:制御ユニット(800)が、投射系(205)中の第2の補償器(232、222)による変位ウェハ表面(25)上のスポット位置(5)の付加的な変位を補償するようにさらに構成され、投射系(205)中の第2の補償器(232、222)が、物体照射ユニット(100)中の第1の補償器(132、110)と同期して動作することにより、像検出器(207)上の複数の二次電子ビームレット(9)のスポット位置を一定に保つように構成された、条項6~8のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0224】
条項10:物体照射ユニット(100)中の第1の補償器が第1の偏向系(110)であり、制御ユニット(800)が、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)の付加的な変位または回転の制御信号を演算して、第1の偏向系(110)に供給することにより、物体照射ユニット(100)の視線(53)に対するサンプルステージ(500)の変位または回転を補償するように構成された、条項1~9のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0225】
条項11:投射系(205)中の第2の補償器が第2の偏向系(222)であり、制御ユニット(800)が、制御信号を演算して第2の偏向系(110)に供給することにより、変位ウェハ表面(25)上の複数の一次荷電粒子ビームレット(3)の走査スポット位置(5)の付加的な変位または回転を補償するように構成された、条項1~10のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0226】
条項12:荷電粒子マルチビームレット生成器(300)の別の補償器、検出ユニット(200)の別の補償器、または物体照射ユニット(100)の別の補償器のうちの少なくとも1つを備えた、条項1~11のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0227】
条項13:制御ユニット(800)が、使用時、複数のセンサデータを解析するとともに、使用時、K個の誤差ベクトルの一組のK個の振幅Akを演算するように構成されたセンサデータ解析システム(818)を備えた、条項1~12のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0228】
条項14:制御ユニット(800)が、使用時、像センサデータの10%未満、好ましくは2%未満を表す像センサデータ断片まで像センサ(207)からの像センサデータを縮小し、この像センサデータ断片をセンサデータ解析システム(818)に提供するように構成された像データ取得ユニット(810)を備えた、条項13に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0229】
条項15:像データ取得ユニット(810)が、使用時、低サンプリングレートでの複数の二次電子ビームレットのデジタル像データを含む像センサデータ断片まで、像センサ(207)からの像センサデータを縮小するように構成された、条項14に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0230】
条項16:像データ取得ユニット(810)が、縮小した一組の二次電子ビームレット(9)のデジタル像データを含む像センサデータ断片まで、像センサ(207)からの像センサデータを縮小するように構成された、条項14に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0231】
条項17:センサデータ解析システム(818)が、誤差ベクトルの一組の振幅Akの少なくとも1つの振幅Anの時間的推移を予測するように構成された、条項13~16のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0232】
条項18:制御ユニット(800)が、誤差ベクトルの一組の振幅Akから第1の一組の制御信号Cpを演算する制御演算プロセッサ(840)をさらに備えた、条項13~17のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0233】
条項19:センサデータ解析システム(818)が、複数のセンサデータから、長さL(L≧K)のセンサデータベクトルDVを導出するように構成された、条項13~18のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0234】
条項20:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つを演算し、第3の補償器(330、332)に供給して、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のラスター構成(41)の回転を誘導することにより、サンプルステージ(500)の回転を補償するように構成された、条項4~19のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0235】
条項21:制御ユニット(800)が、第2の像パッチ(17.2)のデジタル像の像取得のため、ウェハステージ(500)により、物体面(101)における第2の像パッチ(17.2)の第2の中心位置までウェハ表面(25)を移動させる制御信号を生成するようにさらに構成された、条項1~20のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0236】
条項22:制御ユニット(800)が、第2の像パッチ(17.2)の第2の中心位置までのウェハステージ(500)の移動の時間区間Trにおいて、複数のセンサデータからの第2の一組のP個の制御信号Cpを演算することにより、補償器のいずれかを制御するようにさらに構成された、条項21に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0237】
条項23:制御ユニット(800)が、時間区間Trにおける第2の像パッチ(17.2)の像取得の開始時間を演算するとともに、ウェハステージ(500)の減速時間区間Tdにおいて第2の像パッチ(17.2)の像取得を開始するようにさらに構成されており、また、時間区間Tdにおけるウェハステージ(500)の予測オフセット位置の少なくともオフセット信号を第1および第2の補償器に供給するようにさらに構成された、条項21または22に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0238】
第4の条項集合
条項1:サンプルを保持するように構成され、X-Y軸およびZ軸のうちの少なくとも1つにおいて移動可能なステージと、
ステージの横方向および鉛直方向の変位または回転を決定するように構成された位置検知システムと、
サンプルに入射する複数の一次荷電粒子ビームレットを偏向させる第1の信号の適用によって、ステージの横方向変位を少なくとも部分的に補償するとともに、サンプル上の偏向した一次荷電粒子ビームレットの位置から生じた複数の二次電子ビームレットを偏向させる第2の信号の適用によって、複数の二次電子ビームレットの変位を少なくとも部分的に補償するように構成されたコントローラと、
を備えたマルチビーム荷電粒子線システム。
【0239】
条項2:第1の信号が、X-Y軸の少なくとも一方における複数の一次荷電粒子ビームレットの偏向の仕方に影響を及ぼす電気信号を含む、条項1に記載のシステム。
【0240】
条項3:電気駆動信号が、0.1kHz~10kHzの範囲の帯域幅を有する信号を含む、条項2に記載のシステム。
【0241】
条項4:横方向変位が、X-Y軸の少なくとも一方におけるステージの現在の位置とステージの目標位置との差に対応する、条項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【0242】
条項5:コントローラが、サンプル上の複数の一次荷電粒子ビームレットの走査中に、第1の信号または第2の信号の少なくとも一方を動的に調整するようにさらに構成された、条項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【0243】
条項6:第3の信号により独立して制御されるように構成された複数のモータを備えたステージ動作コントローラをさらに備えた、条項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【0244】
条項7:ステージが一次荷電粒子線の光軸と実質的に垂直となるように、複数のモータそれぞれがステージの傾斜を調整するように独立して制御される、条項6に記載のシステム。
【0245】
条項8:複数のモータが、圧電モータ、圧電アクチュエータ、または超音波圧電モータのうちの少なくとも1つを含む、条項6または7に記載のシステム。
【0246】
条項9:複数のセンサ信号に基づいて複数の誤差ベクトル振幅を形成するように構成された第1のコンポーネントと、複数の誤差ベクトル振幅から、複数の制御信号のうちの少なくとも1つを抽出するように構成された第2のコンポーネントと、をさらに備えた、条項1~8のいずれか1項に記載のシステム。
【0247】
条項10:第1のコンポーネントが、ステージの横方向変位および当該マルチビーム荷電粒子線システムの視線の実際の位置に基づいて、複数の誤差ベクトル振幅を形成するように構成された、条項9に記載のシステム。
【0248】
条項11:複数の制御信号のうちの少なくとも1つの抽出が、複数の誤差ベクトル振幅の予測モデルに基づく、条項9または10に記載のシステム。
【0249】
条項12:複数の制御信号のうちの少なくとも1つの抽出が、ステージの作動出力の予測モデルにさらに基づく、条項9~11のいずれか1項に記載のシステム。
【0250】
条項13:位置検知システムが、レーザ干渉計、静電容量センサ、共焦点センサアレイ、格子干渉計のいずれか、またはこれらの組み合わせを使用して、ステージの横方向および鉛直方向の変位および回転を決定する、条項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【0251】
第5の条項集合
条項1:マルチビーム荷電粒子線システム中のステージに配設されたサンプルを照射する方法であって、
荷電粒子源から複数の一次荷電粒子ビームレットを生成することと、
X-Y軸およびZ軸のうちの少なくとも1つにおいて移動可能なステージの横方向変位および回転を決定することと、
サンプルに入射する複数の一次荷電粒子ビームレットを偏向させる第1の信号の適用によって、ステージの横方向変位または回転を少なくとも部分的に補償することと、
サンプル上の偏向した一次荷電粒子ビームレットの位置から生じた複数の二次電子ビームレットを偏向させる第2の信号の適用によって、複数の二次電子ビームレットの変位を少なくとも部分的に補償することと、
を含む、方法。
【0252】
条項2:第1の信号が、X-Y軸の少なくとも一方における一次荷電粒子ビームの偏向の仕方に影響を及ぼす電気信号を含む、条項1に記載の方法。
【0253】
条項3:横方向変位が、X-Y軸の少なくとも一方におけるステージの現在の位置とステージの目標位置との差に対応する、条項1または2に記載の方法。
【0254】
条項4:サンプル上の複数の一次荷電粒子ビームの走査中に、第1の信号または第2の信号の少なくとも一方を動的に調整することをさらに含む、条項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0255】
条項5:第3の信号をステージ動作コントローラに適用することであり、ステージ動作コントローラが、第3の信号により独立して制御されるように構成された複数のモータを備えた、ことをさらに含む、条項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【0256】
条項6:複数のセンサ信号に基づいて複数の誤差ベクトル振幅を導出することと、複数の誤差ベクトル振幅から、複数の制御信号のうちの少なくとも1つを抽出することと、をさらに含む、条項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【0257】
条項7:複数の誤差ベクトル振幅の時間的挙動の予測モデルに基づいて、制御信号のうちの少なくとも1つを予測することをさらに含む、条項6に記載の方法。
【0258】
条項8:ステージの作動出力の予測モデルに基づいて、複数の制御信号のうちの少なくとも1つを予測することをさらに含む、条項6または7に記載の方法。
【0259】
第6の条項集合
条項1:像センサ(207)およびステージ位置センサ(520)を備えた複数の検出器と、少なくとも第1および第2の偏向系(110、222)を備えた一組の補償器と、を備えたマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)によるウェハ検査の方法であって、
マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の視線を含むローカルウェハ座標系(551)の位置に対してウェハのウェハ表面(25)を位置決めおよび位置合わせするステップと、
像取得を実行して、ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得するステップと、
複数の検出器から複数のセンサデータを収集するステップと、
複数のセンサデータから、一組のK個の誤差振幅Akを導出するステップと、
一組の誤差振幅Akから、第1の一組の制御信号Cpを導出するステップと、
像取得のステップbにおいて、第1の一組の制御信号を一組の補償器に供給するステップと、
を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)によるウェハ検査の方法。
【0260】
条項2:複数のセンサデータから、長さL(L≧K)のセンサデータベクトルDVを導出するステップをさらに含む、条項2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)によるウェハ検査の方法。
【0261】
条項3:誤差ベクトルの一組の振幅Akのうちの少なくとも1つの振幅Anの時間的推移を導出するステップをさらに含む、条項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)によるウェハ検査の方法。
【0262】
条項4:制御信号Cpを第1および第2の偏向ユニット(110、222)に供給することにより、サンプルステージ(500)の位置または配向の変化を補償するステップをさらに含む、条項1~3のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)によるウェハ検査の方法。
【0263】
条項5:一組の誤差振幅Akから第2の一組の制御信号Cpを導出し、ウェハのウェハ表面(25)の位置決めおよび位置合わせのステップa)において、第2の一組の制御信号を供給するステップをさらに含む、条項1~4のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)によるウェハ検査の方法。
【0264】
第7の条項集合
条項1:ウェハ検査用に構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法であって、
一組の像品質および一組の像品質からの逸脱を表す一組の所定の正規化誤差ベクトルを規定することと、
一組の正規化誤差ベクトルの振幅に対する一組の閾値を決定することと、
マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の補償器を選択することと、
一組の補償器それぞれの少なくとも駆動信号の変動によって、線形摂動モデルに応じた感度行列を決定することと、
一組の正規化誤差ベクトルそれぞれを補償する一組の正規化駆動信号を導出することと、
正規化駆動信号、一組の閾値、および正規化誤差ベクトルをマルチビーム荷電粒子顕微鏡の制御ユニットのメモリに格納することと、
を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0265】
条項2:一組の補償器が、複数の一次荷電粒子(3)の走査および偏向のためのマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の第1の偏向ユニット(110)と、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の使用時に生成された複数の二次電子ビームレット(9)の走査および偏向のための第2の偏向ユニット(222)と、を備えた、条項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0266】
第8の条項集合
条項1:使用時、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の複数のセンサから、複数のセンサデータを受信するとともに、センサデータベクトルを構成するステップと、
センサデータベクトルを制御ユニットのメモリに格納された一組の正規化誤差ベクトルに展開し、センサデータベクトルから、正規化誤差ベクトルの一組の実際の振幅を決定するステップと、
一組の実際の振幅を制御ユニットのメモリに格納された一組の閾値と比較するステップと、
格納された一組の閾値に対する一組の実際の振幅の比較に基づいて、一組の実際の振幅から一組の制御信号を導出するステップと、
一組の制御信号により、制御ユニットのメモリに格納された一組の正規化駆動信号から一組の実際の駆動信号を導出するステップと、
一組の実際の駆動信号をマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の一組の補償器に供給することにより、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)の動作時、一組の正規化誤差ベクトルの一組の実際の振幅を一組の閾値未満にするステップと、
を含む、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0267】
条項2:複数のセンサデータが、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)による検査時にウェハを保持または移動するウェハステージ(500)の実際の位置および実際の速度に関する位置または速度情報の少なくとも一方を含む、条項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0268】
条項3:複数のセンサデータが、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)によるウェハ検査時の視線(52)の実際の位置のうちの少なくとも1つを含む、条項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0269】
条項4:上記ステップが、像パッチの取得時に、少なくとも2回、少なくとも10回、好ましくは走査ラインごとに繰り返される、条項1~3のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0270】
条項5:ウェハ検査時に、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の予想推移に従って、一組の実際の振幅の少なくとも部分集合の推移振幅の部分集合を予測するステップをさらに含む、条項1~4のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0271】
条項6:使用時、マルチビーム荷電粒子顕微鏡の一組の実際の振幅の少なくとも部分集合を記録して、一組の実際の振幅の部分集合の履歴を生成するステップをさらに含む、条項1~5のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0272】
条項7:ウェハ検査時に、一組の推移振幅から一組の予測制御信号を導出するとともに、一組の予測制御信号から一組の予測駆動信号を導出するステップと、ウェハ検査時に、一組の予測駆動信号を時系列的に一組の補償器に供給することによって、予測時間区間におけるマルチビーム荷電粒子顕微鏡の動作時、実際の誤差振幅の部分集合を一組の閾値未満にするステップと、をさらに含む、条項1~6のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)を動作させる方法。
【0273】
条項8:制御ユニット(800)およびインストールされたソフトウェアコードを備え、条項1~7のいずれか1項に記載の方法のいずれかを適用するように構成されたマルチビーム荷電粒子顕微鏡。
【0274】
第9の条項集合
条項1:複数の一次荷電粒子ビームレットをサンプル上に集束させる方法であって、
マルチビーム荷電粒子線システムのステージに配設されたサンプルに複数の一次荷電粒子ビームレットを照射して、サンプルの表面上に複数の焦点スポットを形成することと、
マルチビーム荷電粒子システムの少なくとも第1のコンポーネントを使用することにより、サンプルを基準に、複数の荷電粒子ビームレットの複数の焦点スポットの位置および回転を調整することと、
マルチビーム荷電粒子システムの第2のコンポーネントを使用することにより、サンプルを基準に、複数の所定の一次走査ビーム経路に沿って、複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点スポットを走査することと、
第1のコンポーネント、第2のコンポーネント、または第3のコンポーネントを使用することにより、サンプルを基準に、所定の走査ビーム経路を動的に操作することと、
を含む、方法。
【0275】
条項2:少なくとも第1の偏向電圧を第1の走査電圧に追加することにより、第2のコンポーネントを使用して、複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点スポットを走査することを含む、条項1に記載の方法。
【0276】
条項3:荷電粒子マルチビームレット生成器を使用して、複数の一次荷電粒子ビームレットを生成することと、
荷電粒子マルチビームレット生成器のコンポーネントを使用することにより、サンプルを基準に、複数の荷電粒子ビームレットの複数の焦点スポットの位置および回転を調整または動的に操作することと、
をさらに含む、条項1または2に記載の方法。
【0277】
条項4:複数の一次荷電粒子ビームレットの複数の焦点スポットでサンプルの表面から複数の二次電子ビームレットを生成して収集することと、
マルチビーム荷電粒子システムの投射系の第4のコンポーネントを使用することにより、複数の二次電子ビームレットの焦点スポットが像センサ上の一定の位置となるように、所定の二次電子ビーム経路に沿って、複数の二次電子ビームレットを走査することと、
マルチビーム荷電粒子システムの投射系の第4のコンポーネントまたは第5のコンポーネントを使用することにより、像センサを基準に、所定の二次電子ビーム経路を動的に操作することと、
をさらに含む、条項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0278】
条項5:少なくとも第2の偏向電圧を第2の走査電圧に追加することにより、第4のコンポーネントを使用して、複数の二次荷電粒子ビームレットを走査することを含む、条項4に記載の方法。
【0279】
条項6:ステージの現在の位置を決定することと、
ステージの現在の位置とステージの目標位置との差から、ステージの横方向変位または回転を決定することと、
をさらに含む、条項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【0280】
条項7:ステージの横方向変位または回転を補償するための第1の偏向電圧を決定することと、
第1の偏向電圧を少なくとも第1、第2、または第3のコンポーネントに供給して、サンプルを基準に、所定の第1の走査ビーム経路を動的に操作することと、
をさらに含む、条項6に記載の方法。
【0281】
条項8:第2の偏向電圧を決定することと、
第2の偏向電圧を少なくとも第4または第5のコンポーネントに供給して、像センサを基準に、所定の二次電子ビーム経路を動的に操作することと、
をさらに含む、条項6または7に記載の方法。
【0282】
第10の条項集合
条項1:複数の一次荷電粒子ビームレットの複数の焦点スポットによってサンプルの表面を照射するように構成された物体照射ユニットと、
サンプルを基準に、複数の荷電粒子ビームレットの複数の焦点スポットの位置および回転を調整するように構成された物体照射ユニットの第1のコンポーネントと、
サンプルを基準に、複数の所定の一次走査ビーム経路に沿って、複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点スポットを走査する用に構成された物体照射ユニットの第2のコンポーネントと、
サンプル位置を基準に、所定の走査ビーム経路を動的に操作するように構成された第3のコンポーネントと、
を備えたマルチビーム荷電粒子線システム。
【0283】
条項2:第3のコンポーネントが、第1のコンポーネントである、条項2に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0284】
条項3:第3のコンポーネントが、第2のコンポーネントである、条項2に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0285】
条項4:複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点スポットを走査するように構成された第2のコンポーネントに供給された第1の走査電圧に対して、所定の走査ビーム経路を動的に操作するように構成された少なくとも第1の偏向電圧を追加するように構成された制御ユニットをさらに備えた、条項3に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0286】
条項5:複数の一次荷電粒子ビームレットを生成するように構成された荷電粒子マルチビームレット生成器をさらに備えた、条項1~4のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0287】
条項6:使用時、第1のコンポーネントによって、物体照射ユニットの視線を調整するように構成された制御ユニットをさらに備えた、条項1~5のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0288】
条項7:複数の一次荷電粒子ビームレットの複数の焦点スポットでサンプルの表面から生じた複数の二次電子ビームレットを収集および結像するように構成された投射系と、
複数の二次電子ビームレットの複数の焦点スポットを検出するように構成された像センサと、
複数の二次電子ビームレットの焦点スポットが像センサ上の一定の位置となるように、所定の二次電子ビーム経路に沿って、複数の二次電子ビームレットを走査するように構成されたマルチビーム荷電粒子システムの投射系の第4のコンポーネントと、
像センサを基準に、所定の二次電子ビーム経路を動的に操作するように構成されたマルチビーム荷電粒子システムの投射系の第5のコンポーネントと、
をさらに備えた、条項1~6のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0289】
条項8:第5のコンポーネントが、第4のコンポーネントである、条項7に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0290】
条項9:制御ユニットが、複数の二次荷電粒子ビームレットを走査する第4のコンポーネントに供給された第2の走査電圧に対して、所定の二次電子ビーム経路を動的に操作するように構成された少なくとも第2の偏向電圧を追加するようにさらに構成された、条項8に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0291】
条項10:ステージの横方向変位または回転を決定するように構成されたステージセンサをさらに備えた、条項1~9のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0292】
条項11:制御ユニットが、ステージセンサにより与えられた横方向変位または回転から、第1および第2の偏向電圧を導出するようにさらに構成された、条項10に記載のマルチビーム荷電粒子線システム。
【0293】
条項12:第1のコンポーネントが、第2のコンポーネントの上流に配置された、条項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【0294】
第11の条項集合
条項1:マルチビーム荷電粒子線装置によってウェハ検査を実行する方法であって、
ステージに配設されたサンプルに複数の一次荷電粒子ビームレットを照射することと、
複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点の静的調整を実行することと、
複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点の動的操作を実行することと、
を含む、方法。
【0295】
条項2:マルチビーム荷電粒子線装置の低速変化する変動を決定することであり、物体照射ユニットの低速変化する変動を決定することと、サンプルを保持するように構成されたステージのドリフトを検出することと、を含む、ことと、
低速変化する変動を補償する第1のドリフト補償信号を決定することと、
第1のドリフト補償信号を少なくとも物体照射ユニットのコンポーネントに適用して、複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点の静的調整を実行することと、
をさらに含む、条項1に記載の方法。
【0296】
条項3:物体照射ユニットの低速変化する変動の決定が、物体照射ユニットの視線の低速変動の決定を含む、条項2に記載の方法。
【0297】
条項4:マルチビーム荷電粒子線装置の動的変動を決定することであり、物体照射ユニットの動的変動を決定することと、サンプルを保持するように構成されたステージの振動を検出することと、を含む、ことと、
動的変動を補償する第1の動的補償信号を決定することと、
第1の動的補償信号を少なくとも物体照射ユニットのコンポーネントに適用して、複数の一次荷電粒子ビームレットの焦点の動的操作を実行することと、
をさらに含む、条項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0298】
条項5:物体照射ユニットの動的変動の決定が、物体照射ユニットの視線の動的変化の決定を含む、条項4に記載の方法。
【0299】
条項6:低速変化する変動を補償する第2のドリフト補償信号を決定することと、
第2のドリフト補償信号を少なくとも投射ユニットのコンポーネントに適用して、複数の一次荷電粒子ビームレットの調整焦点から生じた複数の二次電子ビームレットの静的調整を補償することと、
をさらに含む、条項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【0300】
条項7:動的変動を補償する第2の動的補償信号を決定することと、
第2の動的補償信号を少なくとも投射ユニットのコンポーネントに適用して、複数の一次荷電粒子ビームレットの動的操作焦点から生じた複数の二次電子ビームレットの動的操作を補償することと、
をさらに含む、条項4~6のいずれか1項に記載の方法。
【0301】
条項8:第1および第2のドリフト補償信号の決定が、マルチビーム荷電粒子線装置の時間的挙動の予測モデルに基づく、条項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【0302】
条項9:第1または第2のドリフト補償信号および第1または第2の動的補償信号の決定が、マルチビーム荷電粒子線装置の時間的挙動の周波数解析に基づく、条項8に記載の方法。
【0303】
条項10:ステージ位置センサおよび像センサからのセンサ信号を含む複数のセンサ信号を受信することをさらに含む、条項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【0304】
条項11:制御ユニットを使用することにより、受信した複数のセンサ信号に基づいて、ドリフトおよび動的補償信号を決定することをさらに含む、条項10に記載の方法。
【0305】
条項12:制御ユニットのプロセッサを使用することにより、マルチビーム荷電粒子線装置の時間的挙動の予測モデルを推定することと、
制御ユニットを使用することにより、予測モデルに基づいて、ドリフトおよび動的補償信号を決定することと、
をさらに含む、条項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【0306】
条項13:予測モデルの推定が、周波数解析、低域通過フィルタリング、および多項式近似を含む、条項12に記載の方法。
【0307】
条項14:少なくとも遅延ラインを使用することにより、ドリフトおよび動的補償信号を予測モデルと同期させることをさらに含む、条項12または13に記載の方法。
【0308】
条項15:動的補償信号に基づいて、ビーム偏向信号を生成することと、
ビーム偏向信号によってビーム走査信号を修正することと、
修正したビーム走査信号を走査ビーム偏向ユニットに供給することと、
をさらに含む、条項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【0309】
第12の条項集合
条項1:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
複数の一次荷電粒子ビームレット(3)のスポット位置(5)で物体面(101)に配置されたウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)の生成のため、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、ウェハ表面(25)を走査する第1の偏向系(110)を備えた物体照射ユニット(100)と、
投射系(205)、第2の偏向系(222)、および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得する検出ユニット(200)と、
ステージ位置センサ(520)を備えたサンプルステージ(500)であり、第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に、物体面(101)においてウェハ表面(25)を位置決めおよび保持する、サンプルステージ(500)と、
ステージ位置センサ(520)および像センサ(207)を備え、使用時、サンプルステージ(500)の位置データを含む複数のセンサデータを生成するように構成された複数の検出器と、
少なくとも物体照射ユニット(100)中の補償器および投射系(205)中の補償器を含む一組の補償器と、
第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に、複数のセンサデータから第1の一組の制御信号Cpを生成して、一組の補償器を制御するように構成された制御ユニット(800)と、
を備え、
制御ユニット(800)が、サンプルステージ(500)の移動により誘導されたウェハ表面(25)の変位を補償するように構成された、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0310】
条項2:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpを演算して第1の補償器および第2の補償器に供給することにより、物体照射ユニット(100)の視線(53)の位置の変化を補償するように構成された、条項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0311】
条項3:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpを演算して第1の補償器および第2の補償器に供給することにより、サンプルステージ(500)の位置の変化または配向の変化と物体照射ユニット(100)の視線(53)の位置の変化との差を補償するように構成された、条項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0312】
第13の条項集合
条項1:ウェハ検査用のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)であって、
a.複数の一次荷電粒子ビームレット(3)を生成する荷電粒子マルチビームレット生成器(300)と、
b.物体面(101)に配置されたウェハ表面(25)から放出される複数の二次電子ビームレット(9)の生成のため、複数の一次荷電粒子ビームレット(3)によって、ウェハ表面(25)を走査する第1の偏向系(110)を備えた物体照射ユニット(100)と、
c.投射系(205)、第2の偏向系(222)、および像センサ(207)を備え、複数の二次電子ビームレット(9)を像センサ(207)上に結像するとともに、使用時、ウェハ表面(25)の第1の像パッチ(17.1)のデジタル像を取得する検出ユニット(200)と、
d.ステージ位置センサ(520)を備えたサンプルステージ(500)であり、第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に、物体面(101)においてウェハ表面(25)を位置決めおよび保持する、サンプルステージ(500)と、
e.制御ユニット(800)と、
f.ステージ位置センサ(520)および像センサ(207)を備え、使用時、サンプルステージ(500)の位置データを含む複数のセンサデータを生成するように構成された複数の検出器と、
g.少なくとも第1および第2の偏向系(110、222)を備えた一組の補償器と、
を備え、
制御ユニット(800)が、第1の像パッチ(17.1)のデジタル像の取得時に、複数のセンサデータから第1の一組の制御信号Cpを生成して、一組の補償器を制御するように構成された、マルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0313】
条項2:一組の補償器が、荷電粒子マルチビームレット生成器(300)の補償器(330、332)および検出ユニット(200)の補償器(230、232)のうちの少なくとも1つをさらに含む、条項1に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0314】
条項3:制御ユニット(800)が、使用時、複数のセンサデータを解析するとともに、使用時、K個の誤差ベクトルの一組のK個の振幅Akを演算するように構成されたセンサデータ解析システム(818)を備えた、条項1または2に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0315】
条項4:制御ユニット(800)が、使用時、像センサデータの10%未満、好ましくは2%未満を表す像センサデータ断片まで像センサ(207)からの像センサデータを縮小し、この像センサデータ断片をセンサデータ解析システム(818)に提供するように構成された像データ取得ユニット(810)を備えた、条項3に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0316】
条項5:センサデータ解析システム(818)が、誤差ベクトルの一組の振幅Akの少なくとも1つの振幅Anの時間的推移を予測するように構成された、条項3または4に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0317】
条項6:制御ユニット(800)が、誤差ベクトルの一組の振幅Akから第1の一組の制御信号Cpを演算する制御演算プロセッサ(840)をさらに備えた、条項3~5のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0318】
条項7:センサデータ解析システム(818)が、複数のセンサデータから、長さL(L>K)のセンサデータベクトルDVを導出するように構成された、条項3~6のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0319】
条項8:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つを演算して第1および第2の検出ユニット(110、222)に供給することにより、サンプルステージ(500)の位置の変化または配向の変化を補償するように構成された、条項1~7のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0320】
条項9:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つを演算して第1および第2の検出ユニット(110、222)に供給することにより、物体照射ユニット(100)の視線(53)の位置の変化を補償するように構成された、条項1~8のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0321】
条項10:制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つ演算して第1および第2の検出ユニット(110、222)に供給することにより、サンプルステージ(500)の位置の変化または配向の変化と物体照射ユニット(100)の視線(53)の位置の変化との差を補償するように構成された、条項1~9のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0322】
条項11:荷電粒子マルチビームレット生成器(300)が、高速補償器(330)をさらに備え、制御ユニット(800)が、第1の一組の制御信号Cpの制御信号のうちの少なくとも1つを演算し、高速補償器(330)に供給して、複数の一次荷電粒子ビームレットの回転を誘導することにより、サンプルステージ(500)の回転を補償するように構成された、条項1~10のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0323】
条項12:制御ユニット(800)が、第2の像パッチ(17.2)のデジタル像の像取得のため、ウェハステージ(500)により、物体面(101)における第2の像パッチ17.2の第2の中心位置までウェハ表面(25)を移動させる第3の制御信号を生成するようにさらに構成された、条項1~11のいずれか1項に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0324】
条項13:制御ユニット(800)が、第2の像パッチ(17.2)の第2の中心位置までのウェハステージ(500)の移動の時間区間Trにおいて、複数のセンサデータからの第2の一組のP個の制御信号Cpを演算することにより、一組の補償器を制御するようにさらに構成された、条項12に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0325】
条項14:制御ユニット(800)が、時間区間Trにおける第2の像パッチ(17.2)の像取得の開始時間を演算するとともに、ウェハステージ(500)の減速時間区間Tdにおいて第2の像パッチ(17.2)の像取得を開始するようにさらに構成されており、また、時間区間Tdにおけるウェハステージ(500)の予測オフセット位置の少なくともオフセット信号を第1および第2の検出ユニット(110、222)に供給するようにさらに構成された、条項12または13に記載のマルチビーム荷電粒子顕微鏡(1)。
【0326】
第14の条項集合
条項1:マルチビーム荷電粒子顕微鏡のスループットを向上させる方法であって、
ビームピッチd1のラスター構成でサンプルの表面上に複数の一次荷電粒子ビームレットの複数のビームスポットを生成するステップと、
所定の走査経路に沿って、複数の一次荷電粒子をまとめて走査するステップと、
複数の一次荷電粒子ビームレットのビームピッチd1を制御するステップと、
を含み、
制御するステップが、ビームスポット位置を操作する補償器の使用によって、ビームピッチd1の変動を補償することにより、重畳エリアを小さくすることを含む、方法。
【0327】
条項2:制御するステップが、制御信号をマルチビーム多極偏向装置に供給して、100nm未満、70nm未満、あるいは30nm未満の高精度でサンプル表面上の複数のビームスポット位置を動的に制御することを含む、条項1に記載の方法。
【0328】
条項3:像センサを使用することにより、100nm未満、70nm未満、あるいは30nm未満の高精度でサンプル表面上の焦点スポット位置を検知するステップをさらに含む、条項1または2に記載の方法。
【0329】
条項4:ビームピッチd1が、およそ10μmである、条項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0330】
ウェハ検査、ウェハ結像、ステージ校正、変位誤差校正、変位誤差補償、サンプルと関連付けられた電磁界の操作、像データ取得ユニット810との通信、加速度センサの作動、サンプルステージ500を含むマルチビーム荷電粒子顕微鏡システム1の性能を推定もしくは予測するアルゴリズムの実行、ならびにマルチビーム荷電粒子システムの制御演算を(たとえば、制御ユニット800またはセンサデータ解析システム818の)プロセッサが実行するための命令を格納した非一時的コンピュータ可読媒体を提供することができる。非一時的媒体の一般的な形態としては、たとえばハードディスク、ソリッドステートドライブ、任意の光学データ記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラム可能リードオンリーメモリ(PROM)、消去・プログラム可能リードオンリーメモリ(EPROM)、フラッシュEPROMまたはその他任意のフラッシュメモリ、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、キャッシュ、レジスタ、その他任意のメモリチップまたはカートリッジが挙げられる。
【0331】
図面中のブロック図は、本開示の例示的な種々実施形態に係るシステム、方法、ならびにコンピュータハードウェアもしくはソフトウェア製品の考え得る実施態様のアーキテクチャ、機能、および動作を示す。この点、フローチャートまたはブロック図中の各ブロックは、規定の論理機能を実装するための1つまたは複数の実行可能な命令を含むモジュール、セグメント、またはコードの一部を表すことができる。いくつかの代替実施態様においては、ブロックに示す機能が図面に記載の順番から外れて起こり得ることが了解されるものとする。たとえば、含まれる機能に応じて、連続して示す2つのブロックを実質的に同時に実行または実施することもできるし、2つのブロックを逆の順序で実行することができる場合もある。また、いくつかのブロックを省略することもできる。また、規定の機能もしくは動作を実行する専用ハードウェアベースシステムまたは専用ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって、ブロック図の各ブロックおよびブロックの組み合わせを実施できることが了解されるものとする。
【0332】
当然のことながら、本開示の実施形態は、上述するとともに添付の図面に示した厳密な構成に限定されず、その範囲から逸脱することなく、種々改良および変更を行うことができる。当然のことながら、本発明は、上記条項集合に限定されず、その範囲から逸脱することなく、種々改良および変更または他の条項の組み合わせを行うことができる。当然のことながら、本発明は、方法にも装置にも限定されず、任意の方法に従って動作するように構成された任意の装置または上記説明もしくは条項集合の任意の装置の要素および構成を利用した任意の方法を網羅することになる。
【符号の説明】
【0333】
1 マルチビーム荷電粒子顕微鏡システム
3 一次荷電粒子ビームレット(複数の一次荷電粒子ビームレットを構成)
5 一次荷電粒子ビーム焦点スポット
7 物体またはウェハ
9 二次電子ビームレット(複数の二次電子ビームレットを構成)
11 二次電子ビーム経路
13 一次ビーム経路
15 二次荷電粒子像スポットまたは焦点スポット
17 像パッチ(たとえば、第1または第2の像パッチ17.1、17.2)
19 重畳エリア
21 像パッチ中心位置
25 ウェハ表面
27 一次荷電粒子ビームレットの走査経路
29 像サブフィールドの中心
31 像サブフィールド
33 第1の検査部位
35 第2の検査部位
37 走査回転後の像サブフィールド
39 サブフィールド31の重畳エリア
41 ラスター構成
51 像座標系
53 マルチビーム荷電粒子顕微鏡の視線
55 変位ベクトル
59 回転ベクトル成分
61 像スポットの個々の変位
100 物体照射ユニット
101 物体面
102 対物レンズ
103.1、103.2 第1および第2の視野レンズ
105 マルチビーム荷電粒子顕微鏡システムの光軸
108 第1のビームクロスオーバ
110 第1の偏向系
130 物体照射ユニットの低速補償器
132 物体照射ユニットの動的または高速補償器
138 物体照射ユニットセンサ
200 検出ユニット
205 投射系
206 静電レンズ
207 像センサ
208 結像レンズ
209 結像レンズ
212 第2のクロスオーバ
214 アパーチャ
216 能動素子
218 第3の偏向系
220 マルチアパーチャ補正器
222 第2の偏向系
230 二次電子ビーム経路の低速補償器
232 検出ユニットの高速補償器
238 二次電子ビーム経路センサ
300 荷電粒子マルチビームレット生成器
301 荷電粒子源
303 コリメータレンズ
305 一次マルチビームレット構成ユニット
306 アクティブマルチアパーチャプレート構成
307 第1の視野レンズ
308 第2の視野レンズ
309 発散電子ビーム
311 一次電子ビームレットの焦点スポット
321 中間像面
330 マルチビームレット生成器の低速補償器
332 マルチビームレット生成器の高速補償器
390 ビームステアリングアレイまたは偏向器アレイ
400 ビームスプリッタユニット
420 磁気集束レンズ
430 ビームスプリッタユニットの低速補償器
500 サンプルステージ
503 サンプル電圧源
520 ステージ位置センサ
551 ローカルウェハ座標系
601 マルチアパーチャアクティブアレイ
607 導電線
681 電極
685 アパーチャまたはアパーチャアレイ
800 制御ユニット
810 像データ取得ユニット
812 像ステッチングユニット
814 像データメモリ
818 センサデータ解析システム
820 投射系制御モジュール
830 一次ビーム経路制御モジュール
840 制御演算プロセッサ
860 偏向制御モジュール
880 ステージ制御モジュール
901 誤差振幅閾値
903 誤差振幅勾配
905 誤差振幅閾値ウィンドウ
907 誤差振幅モデル関数
909 誤差振幅勾配
図1
図2
図3a
図3b
図4a)】
図4b)】
図5a)】
図5b)】
図5c)】
図6
図7
図8