(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】リアルタイム空間高精度磁気位置決め装置、放射線結像システムおよび磁気位置決め方法
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20240717BHJP
A61B 6/08 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G01B7/00 103M
A61B6/08 510
(21)【出願番号】P 2022577619
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 CN2020133372
(87)【国際公開番号】W WO2021253736
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】202010547154.8
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522488627
【氏名又は名称】ケアレイ デジタル メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CARERAY DIGITAL MEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】501, Building B3,/Building A2, Biobay, No.218 Xinghu Street, Suzhou Industrial Park Suzhou, Jiangsu 215123 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】リウ ユィハオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ジェンチァン
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-535020(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110293860(CN,A)
【文献】特表2014-507247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0239943(US,A1)
【文献】実開平06-086009(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00-7/34
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S31、磁界発生器の2つのコイルを予設角度で第1オブジェクトに設置し、前記予設角度が90°に等しくなく、第2オブジェクトに位置合わせる必要のある参照エリアを設定し、前記参照エリアの中心点を決定して、前記第2オブジェクトに複数の磁気センサを配置して各磁気センサと前記中心点の位置関係を取得するステップと、
S32、前記磁界発生器の2つのコイルを交互に動作させ、交番磁界を発生させ、前記複数の磁気センサにより独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出するステップと、
S33、2つのコイルが交互に動作するたびに1組として記録し、磁気誘導強度の検出データを複数組に分け、磁気誘導強度の検出データに応じて、前記磁界発生器に対する各磁気センサの位置座標をそれぞれ算出するステップと、
S34、ある組内の2つの位置座標の差が予設閾値を超えると、他の前記磁気センサによって検出したデータと比較して、オフセットの大きい位置座標データを破棄するステップと、
S35、前記S34の処理を経た残りの位置座標データおよび前記他の磁気センサと前記中心点の位置関係から、前記第1オブジェクトに対する前記中心点の位置座標を取得するステップと、
S36、前記第1オブジェクトに対する前記中心点のx/y/z軸の3次元座標において、前記第1オブジェクトが位置する平面に平行な2つの座標軸の座標が0または0に近い予設範囲内にあると、現在位置の前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせ、位置決めを終了し、そうでないとS37を実行するステップと、
前記S37、前記第1オブジェクトおよび/または前記第2オブジェクトの位置を調整して、前記ステップS32~S36を繰り返して実行するステップと、を含む、ことを特徴とするリアルタイム空間高精度磁気位置決め方法。
【請求項2】
S41、請求項
1に記載の磁気位置決め方法を用いて、磁界センサの3次元磁界データから、時刻t0における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置を算出するステップと、
S42、時刻t1において、前記磁気センサ、加速度計および角度センサを用いて、時刻t1における3次元磁界データ、3次元加速度データ、3次元姿勢データをそれぞれ取得するステップと、
S43、時刻t1の3次元磁界データと3次元姿勢データから、時刻t1における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置pt1を算出し、時刻t1の3次元加速度データから、時刻t1における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対速度v1を算出するステップと、
S44、時刻t2において、前記磁気センサ、前記加速度計および前記角度センサを用いて、時刻t2における3次元磁界データ、3次元加速度データ、3次元姿勢データをそれぞれ取得するステップと、
S45、時刻t2の3次元磁界データと3次元姿勢データから、時刻t2における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置pt2を算出し、時刻t2の3次元加速度データと時刻t1の相対速度v1から、時刻t2における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置pt2’を算出するステップと、
S46、pt2とpt2’を比較して、両者の誤差が1cm以内であれば、時刻t2における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置がpt2とpt2’の平均値であり、そうでないとS47~S48を実行するステップと、
前記S47、時刻t2の3次元加速度値
を求めて0と比較し、同時に時刻t1の速度v1
を求めて0と比較して、前記速度v1
及び前記3次元加速度値
と0との差が所定の閾値以下であると、時刻t2の前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置がpt2であり、そうでないとpt2’であるステップと、
前記S48、前記第1オブジェクトおよび/または前記第2オブジェクトの位置を調整して、前記ステップS41~S46を繰り返して実行するステップと、を含む、ことを特徴とするリアルタイム空間高精度磁気位置決め補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年6月16日に中国特許局に出願された出願番号2020105471548の中国特許出願の優先権を主張し、そのすべての内容が参照によって本出願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、医療機器の位置決め技術分野に関し、特にリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置、放射線結像システムおよび磁気位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、位置決めに用いられる技術は、主に衛星位置決め技術、無線位置決め技術(Wi-Fi位置決め、ブルートゥース位置決めなど)、環境特徴磁気位置決め技術、加速度計位置決め技術などから構成される。
【0004】
その中で、衛星位置決め技術は、位置決め点と異なる衛星の電磁波伝搬時間差を測定し、さらに位置決め点と衛星の距離に換算して位置決め点の位置を決定するものであり、無線位置決め技術は、位置決め点における無線信号強度(Wi-Fiやブルートゥースなどの信号強度)を測定して位置決め点の位置を決定するものであり、環境特徴磁気位置決め技術は、位置決め点が位置する環境磁界を測定し、データベースとの比較により位置決め点の位置を決定するものであり、加速度計位置決め技術は、オブジェクトの加速度をリアルタイムで測定し、2回時間積分することにより位置決め点の運動軌跡を求めるものである。現在、応用分野に応じて、これらの位置決め技術を組み合わせて相互に補完し合い、様々な応用方式を形成している。
【0005】
しかしながら、上記の位置決め技術にはそれぞれ欠点がある。衛星位置決め技術は、位置決め点と衛星の相対位置を測定するために、位置決め点で3つ以上の衛星からの信号を受信して位置を決定する必要があり、室外でしか適用できずコストが高く、また、電磁波の伝搬速度が非常に速いため、タイムサービスに原子時計を用いても、メートルレベルの位置決め誤差が発生してしまうという欠点がある。
【0006】
無線位置決め技術と特徴磁気位置決め技術は、室内外を問わず適用できるが、位置決め点の測定データとデータベースを比較する必要があるため、位置決め前に環境のマッピングとデータベースの構築を行う必要があり、既知の環境にしか適用できず、干渉が大きいため位置決め精度が高くなく、概ねメートルレベルである。
【0007】
加速度計位置決め技術は、測定点の相対運動しか決定できないため、位置決め開始前に指定位置で移動を開始するなどの位置校正を行う他の技術が必要であり、また、この技術は時間的な加速度変化を測定するだけなので、時間の経過にその誤差が累積し、一般に数分間後位置決め精度が1メートルを超える。
【0008】
しかし、医療機器の位置決め精度はセンチメートルレベルである必要があり、従来技術では、室内環境の医療機器に適用できる精密な位置決め技術は存在しない。
【発明の概要】
【0009】
従来技術の欠点を解決するために、本発明は、リアルタイム空間高精度磁気位置決め装置、放射線結像システムおよび磁気位置決め方法を提供し、室内で使用できセンチメートルレベルあるいは1cm以下の位置決め精度を有し、前記技術手段は以下のとおりである。
【0010】
一側面によれば、本発明は、第1オブジェクトと第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせを実現するために使用されるリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置を提供し、前記磁気位置決め装置は、プロセッサ、前記第1オブジェクトと同軸に配置された磁界発生装置および前記第2オブジェクトに設けられた磁気センサアレイを備え、前記磁界発生装置は交番磁界を発生する交番磁界発生器を少なくとも備え、前記磁気センサアレイは、前記磁気センサアレイの各磁気センサから前記参照エリアの中心点までの距離を等しくするように構成され、
前記磁気センサアレイの複数の前記磁気センサは独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出し、リアルタイムで検出した磁気誘導強度データを前記プロセッサに送信し、前記プロセッサは各磁気センサによってリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさを比較し、
前記第1オブジェクトおよび/または前記第2オブジェクトの位置を調整し、前記プロセッサは、半分以上の磁気センサがリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさが同じであるか、または磁気誘導強度の差が予設閾値または比例閾値よりも小さいことを比較して得ると、現在位置の前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせが完了したと決定する。
【0011】
別の技術手段として、本発明は、第1オブジェクトと第2オブジェクト上の参照エリア間の位置関係を決定するために使用される第2種類のリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置を提供し、前記磁気位置決め装置は、プロセッサ、前記第1オブジェクトと同軸に配置された磁界発生装置および前記第2オブジェクトに設けられた磁気センサアレイを備え、前記磁界発生装置は交番磁界を発生する交番磁界発生器を少なくとも備え、前記磁気センサアレイは、複数の磁気センサの設置位置と前記参照エリアの中心点とは所定の位置関係を有し、
前記磁気センサアレイの複数の前記磁気センサは、独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出し、リアルタイムで検出した磁気誘導強度データを前記プロセッサに送信し、前記プロセッサは、前記磁気誘導強度データに基づいて前記磁界発生装置に対する各磁気センサの位置座標を算出し、
前記プロセッサは、前記磁界発生装置に対する半分以上の前記磁気センサの位置座標およびこの磁気センサと前記参照エリアの中心点の位置関係に基づいて、前記第1オブジェクトに対する前記参照エリアの中心点の位置座標を取得する。
【0012】
第2種類のリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置の技術手段について、前記プロセッサによって得られた前記第1オブジェクトに対する前記参照エリアの中心点の位置座標はx/y/z軸の3次元座標であり、前記プロセッサは前記3次元座標を解析し、前記第1オブジェクトが位置する平面に平行な2つの座標軸の座標が0または0に近い予設範囲内にあると、現在位置の前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせが完了したと決定する。
【0013】
以上の2種類のリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置の技術手段については、さらに、前記磁界発生装置は、前記磁気センサを予設動作磁界範囲にバイアスするためのバイアス磁石をさらに備え、前記バイアス磁石は永久磁石または電磁石である。
【0014】
以上の2種類のリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置の技術手段について、さらに、前記交番磁界発生器は、磁界エンコーディングを行うことができ、前記磁界発生装置は前記磁気センサアレイと双方向通信が可能である。
【0015】
さらに、前記交番磁界発生器は、前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置に応じて、自身が発生する磁界強度が弱くなるように調整する。
【0016】
選択可能に、前記交番磁界発生器は以下の3つの態様のうちいずれか1つであり:
前記交番磁界発生器は、直交する3つの変調コイルを含み、コイル電流を変調することにより、前記磁界発生装置で発生する磁界の磁界大きさおよび/または方向を3次元空間内で変化させ、または、
前記交番磁界発生器は、予設角度の2つの変調コイルを含み、前記2つの変調コイルは交互に動作し、前記センサは一方のコイルの磁界勾配が0.01mT/m未満の位置にある場合、2つのコイルが予設角度を有するため、このセンサの位置で他方のコイルが発生する磁界の勾配が必然的に0.01mT/mより大きく、このとき磁界センサは前記他方のコイルが発生する磁界によって前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクト間の相対位置を取得し、または、
前記交番磁界発生器は、永久磁石、および前記永久磁石を移動させるための機械伝達装置を含み、前記永久磁石は前記機械伝達装置によって駆動されて、空間で交番磁界を発生し、前記磁界は前記機械伝達装置によって変調可能である。
【0017】
さらなる第1解決策として、前記交番磁界発生器とセンサアレイは、それぞれ角度センサを備え、前記角度センサは、前記磁気センサが磁界を測定すると同時に前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの方位角をそれぞれ測定して、2つのオブジェクト間の姿勢を決定するために使用される。
【0018】
さらなる第2解決策として、前記交番磁界発生器とセンサアレイは、それぞれ加速度センサを備え、前記加速度センサは、前記磁気センサが磁界を測定すると同時に前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの3次元加速度データをそれぞれ算出して、前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの加速度、速度およびその相対位置を決定するために使用される。
【0019】
他の側面によれば、本発明は、放射線源、コリメータ、フラットパネル検出器およびリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置を備える磁気位置決め機能付きの放射線結像システムを提供し、その中で、前記磁気位置決め装置は、プロセッサ、磁界発生装置および磁気センサアレイを備え、前記磁界発生装置は前記コリメータと同軸に配置され、前記磁気センサアレイの複数の磁気センサは前記フラットパネル検出器に分布され、
前記磁界発生装置は、交番磁界を発生する交番磁界発生器を少なくとも備え、前記磁気センサアレイの複数の磁気センサは独立して磁気誘導強度を検出し、リアルタイムで検出した磁気誘導強度データを前記プロセッサに送信でき、前記プロセッサは、各磁気センサがリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさに応じて前記コリメータと前記フラットパネル検出器間の位置関係を決定する。
【0020】
他の側面によれば、本発明は、第1種類のリアルタイム空間高精度磁気位置決め方法を提供し、この方法は、
S11、磁界発生装置と第1オブジェクトとを同軸に配置し、第2オブジェクトに位置合わせる必要のある参照エリアを設定し、前記参照エリアの中心点を決定して、前記磁気センサから前記中心点までの距離が同じであるように、前記第2オブジェクトに複数の前記磁気センサを配置するステップと、
S12、前記磁界発生装置により交番磁界を発生させ、前記複数の磁気センサにより独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出するステップと、
S13、前記複数の磁気センサによってリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさを比較するステップと、
S14、半分以上の前記磁気センサがリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさが同じであるか、または磁気誘導強度の差が予設閾値または比例閾値よりも小さいことを比較して得ると、現在位置の前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクト上の前記参照エリアとの位置合わせ、位置決めを終了し、そうでないとS15を実行するステップと、
前記S15、前記第1オブジェクトおよび/または前記第2オブジェクトの位置を調整して、前記ステップS12~S14を繰り返して実行するステップと、を含む。
【0021】
他の側面によれば、本発明は、第2種類のリアルタイム空間高精度磁気位置決め方法を提供し、この方法は、
S21、磁界発生装置と第1オブジェクトとを同軸に配置し、第2オブジェクトに位置合わせる必要のある参照エリアを設定し、前記参照エリアの中心点を決定して、前記第2オブジェクトに複数の磁気センサを配置して各磁気センサと前記中心点の位置関係を取得するステップと、
S22、前記磁界発生装置により交番磁界を発生させ、前記複数の磁気センサにより独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出するステップと、
S23、磁気誘導強度の検出データに応じて、それぞれ前記磁界発生装置に対する各磁気センサの位置座標を算出するステップと、
S24、1つまたは半分未満の前記磁気センサの位置座標が残りの前記磁気センサの位置座標によって決まる平面から外れると、この1つまたは半分未満の前記磁気センサが邪魔な前記磁気センサとして除外され、前記磁界発生装置に対する前記残りの磁気センサの位置座標および前記残りの磁気センサと前記中心点の位置関係のみから、前記第1オブジェクトに対する前記中心点の位置座標を取得するステップと、
S25、前記第1オブジェクトに対する前記中心点のx/y/z軸の3次元座標において、前記第1オブジェクトが位置する平面に平行な2つの座標軸の座標が0または0に近い予設範囲内にあると、現在位置の前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせ、位置決めを終了し、そうでないとS26を実行するステップと、
前記S26、前記第1オブジェクトおよび/または前記第2オブジェクトの位置を調整して、前記ステップS22~S25を繰り返して実行するステップと、を含む。
【0022】
他の側面によれば、本発明は、第3種類のリアルタイム空間高精度磁気位置決め方法を提供し、この方法は、
S31、磁界発生器の2つのコイルを予設角度で第1オブジェクトに設置し、前記予設角度が90°に等しくなく、第2オブジェクトに位置合わせる必要のある参照エリアを設定し、前記参照エリアの中心点を決定して、前記第2オブジェクトに複数の磁気センサを配置して各磁気センサと前記中心点の位置関係を取得するステップと、
S32、前記磁界発生器の2つのコイルを交互に動作させ、交番磁界を発生させ、前記複数の磁気センサにより独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出するステップと、
S33、2つのコイルが交互に動作するたびに1組として記録し、磁気誘導強度の検出データを複数組に分け、磁気誘導強度の検出データに応じて、前記磁界発生器に対する各磁気センサの位置座標をそれぞれ算出するステップと、
S34、ある組内の2つの位置座標の差が予設閾値を超えると、他の前記磁気センサによって検出したデータと比較して、オフセットの大きい位置座標データを破棄するステップと、
S35、前記S34の処理を経った残りの位置座標データおよび前記他の磁気センサと前記中心点の位置関係から、前記第1オブジェクトに対する前記中心点の位置座標を取得するステップと、
S36、前記第1オブジェクトに対する前記中心点のx/y/z軸の3次元座標において、前記第1オブジェクトが位置する平面に平行な2つの座標軸の座標が0または0に近い予設範囲内にあると、現在位置の前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせ、位置決めを終了し、そうでないとS37を実行するステップと、
前記S37、前記第1オブジェクトおよび/または前記第2オブジェクトの位置を調整して、前記ステップS32~S36を繰り返して実行するステップと、を含む。
【0023】
さらに、本発明は、リアルタイム空間高精度磁気位置決め補正方法を提供し、この方法は、
S41、請求項11~13のいずれか1項に記載の磁気位置決め方法を用いて、磁界センサの3次元磁界データから、時刻t0における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置を算出するステップと、
S42、時刻t1において、前記磁気センサ、加速度計および角度センサを用いて、時刻t1における3次元磁界データ、3次元加速度データ、3次元姿勢データをそれぞれ取得するステップと、
S43、時刻t1の3次元磁界データと3次元姿勢データから、時刻t1における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置pt1を算出し、時刻t1の3次元加速度データから、時刻t1における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対速度v1を算出するステップと、
S44、時刻t2において、前記磁気センサ、前記加速度計および前記角度センサを用いて、時刻t2における3次元磁界データ、3次元加速度データ、3次元姿勢データをそれぞれ取得するステップと、
S45、時刻t2の3次元磁界データと3次元姿勢データから、時刻t2における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置pt2を算出し、時刻t2の3次元加速度データと時刻t1の相対速度v1から、時刻t2における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置pt2’を算出するステップと、
S46、pt2とpt2’を比較して、両者の誤差が1cm以内であれば、時刻t2における前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置がpt2とpt2’の平均値であり、そうでないとS47~S48を実行するステップと、
前記S47、時刻t2の3次元加速度値と時刻t1の速度v1を比較して、前記速度v1と3次元加速度が両方ともほぼ0であると、時刻t2の前記第1オブジェクトと前記第2オブジェクトの相対位置がpt2であり、そうでないとpt2’であるステップと、
前記S48、前記第1オブジェクトおよび/または前記第2オブジェクトの位置を調整して、前記ステップS41~S46を繰り返して実行するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0024】
本発明によって提供される技術手段は以下の有益な効果を有する。
a.数メートルの空間範囲内で1cm未満の位置決め精度を実現することができる。
b.強力な抗干渉能力を有する。
c.コストが制御可能であり、産業制御や医療機器の分野で広く使用されているデバイスの位置決めや位置合わせに適している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明の実施例中の技術手段をより明確に説明するために、以下、実施例の説明で使用される必要のある図面を簡単に説明するが、明らかに、以下で説明される図面は本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者は、創造的な労働をすることなく、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の実施例が提供するリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置の放射線結像システムへの取付および応用を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施例が提供する磁気位置決め装置における3つの直交する変調コイルを含む交番磁界発生器の構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例が提供する磁気位置決め装置における機械伝達装置および永久磁石を含む交番磁界発生器の構造を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施例が提供する第1種類の高精度磁気位置決め方法のフローチャートである。
【
図5】本発明の実施例が提供する第2種類の高精度磁気位置決め方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
当業者が本発明の解決策をより良く理解し、本発明の目的、技術手段およびその利点をより明確に理解するために、以下、具体的な実施例と併せて添付図面を参照しながら本発明の実施例における技術手段を明確かつ完全に説明する。なお、添付図面に図示または記載されていない実施形態は、当業者に周知の形態である。さらに、本明細書では特定値を含むパラメータの例を提供するが、パラメータは対応の値に正確に等しい必要がなく、許容誤差範囲または設計制限内で近似される値であり得ることを理解されたい。明らかに、説明される実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明中の実施例に基づいて、当業者は創造的な労働をすることなく得られた他の実施例は、すべて本発明の保護範囲に含まれる。さらに、本発明の明細書および特許請求の範囲における「含む」、「有する」およびそれらの変形は、非排他的な包含を意図しており、例えば一連のステップまたはユニットの過程、方法、装置、製品またはデバイスは必ずしも記載されるそれらのステップまたはユニットに限定されず、明示的に記載されていないまたはこれらの過程、方法、製品またはデバイスに固有の他のステップまたはユニットを含んでもよい。
【0027】
本発明は、単一磁石または磁石アレイと磁気センサアレイを併用した高精度位置決め方法を提供する。その磁石/磁石アレイは1つまたは複数の永久磁石または電磁石または両者の組み合わせから構成され、磁気センサは複数の磁界センサから構成され、両者は無線通信が可能である。この技術は、数メートルの範囲で1cm未満の位置決め精度を実現でき、センチメートルレベル精度の位置決めのギャップを埋め、産業制御や医療機器などの分野で幅広く応用することができる。
【0028】
本発明の一実施例では、第1オブジェクト1と第2オブジェクト2上の参照エリアの位置合わせを実現するために使用されるリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置を提供し、
図1に示すように、前記磁気位置決め装置は、プロセッサ、前記第1オブジェクト1と同軸に配置された磁界発生装置および前記第2オブジェクト2に設けられた磁気センサアレイを備え、前記磁界発生装置は交番磁界を発生する交番磁界発生器31を少なくとも備え、前記磁気センサアレイは、前記磁気センサアレイの各磁気センサ4から前記参照エリアの中心点までの距離を等しくするように構成される。具体的に、前記交番磁界発生器31は様々な形態を有し得る。
【0029】
本発明の一実施例では、前記交番磁界発生器31は、永久磁石及前記永久磁石を移動させるための機械伝達装置を備え、前記磁界は前記機械伝達装置によって変調され、例えば永久磁石をモータに固定し、
図3に示すように、モータが一定の回転数で永久磁石を回転させると、この永久磁石は空間で交番磁界を発生させることができる。モータの回転数を制御することにより、空間磁界を変調する。より好ましくは、永久磁石をコイルと組み合わせて、永久磁石の強い磁界、電力消費がないなどの利点とコイル磁界の便利な制御などの利点とを互いに補完・組合わせて、コストを削減する同時に位置決め精度を高める。
【0030】
本発明の他方の実施例では、前記交番磁界発生器31は3つの直交する変調コイルを備え、
図2に示すように、コイル電流の変調により、磁界発生装置が発生する磁界を3次元空間で任意の磁界大きさおよび/または磁界方向で変更することができる。このような場合、以下の位置決め方法が考えられる。
【0031】
可能な位置決め方法は走査である。磁界発生装置が発生する磁界が3次元空間で一定の速度で走査する。磁気センサアレイ中のある磁気センサ軸がそれと正確に平行であるとき、その値が最大となる。磁気センサアレイと磁界発生装置が互いに通信可能であるため、磁界が空間全体のスキャンを完了すると、磁気センサアレイは磁界発生装置に対する位置を算出することができる。
【0032】
別の可能な位置決め方法は誘導である。まず、磁気センサは空間全体を探索し、磁気センサの位置を見つける。その後、磁界発生装置は、その方向(必ずしも磁界方向ではなく、磁界の反対方向、磁界の垂直方向などの概念的な方向のみ)が常に磁気センサアレイを向くように、狭い範囲のみを走査する。毎回空間全体で磁界を走査する必要がないため、位置決め効率を大幅に向上させることができる。
【0033】
交番磁界発生器に加えて、本発明の1つの好ましい実施例では、前記磁界発生装置は、磁気センサ(4)を予設動作磁界範囲にバイアスするためのバイアス磁石(32)をさらに備え、前記バイアス磁石(32)は永久磁石または電磁石である。具体的には、磁界発生装置は空間に不均一な磁界を発せさせ、2つの部分から構成され、一方の部分がバイアス磁石であり、この部分の磁界は永久磁石または電磁石によって生成され、磁気センサを適切な動作磁界範囲にバイアスするために使用され、他方の部分が交番磁界であり、この磁界は交流コイルまたは運動磁石によって生成され、その交番磁界の周波数は交流または磁石運動を制御する機械構造の運動周波数によって制御され、磁界エンコーディングを行うことができる。なお、バイアス磁界は交番磁界発生器に内蔵、つまり交流に定電流を重畳することができ、バイアス磁界がなくても磁気センサが高精度な測定ができれば、バイアス磁石32を省略してもよい。
【0034】
前記磁気センサアレイの複数の磁気センサ4は独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出し、リアルタイムで検出した磁気誘導強度データをプロセッサに送信し、前記プロセッサは各磁気センサ4によってリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさを比較し、
前記第1オブジェクト1および/または第2オブジェクト2の位置を調節し、前記プロセッサは、半分以上の磁気センサ4によってリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさが同じであるか、または磁気誘導強度の差が予設閾値または比例閾値よりも小さいことを比較して得ると、具体的に、磁気誘導強度の最大値と磁気誘導強度の最小値間の磁気誘導強度の差が1mGs未満、または、磁気誘導強度の差と現在磁気誘導強度平均値の比が1%未満であると、現在位置の第1オブジェクト1と第2オブジェクト2上の参照エリアとの位置合わせが完了したと決定する。
【0035】
具体的に、前記第2オブジェクト2は好ましく平坦な表面を有し、前記平坦な表面に前記第1オブジェクト1と位置合わせを行う必要がある参照エリアを設定し、前記参照エリアの中心点を決定する。前記磁気位置決め装置を放射線結像システムに応用する場合を例にすると、前記放射線結像システムは放射線源、コリメータ、フラットパネル検出器を備え、前記磁気位置決め装置はプロセッサ、磁界発生装置および磁気センサアレイを備え、前記磁気位置決め装置の磁界発生装置は前記コリメータと同軸に配置され(つまり前記コリメータは第1オブジェクト1であり)、1つのバイアスコイルと1つの交番磁界コイルを選択し、同軸に配置すると、磁石が空間でX線ビームを軸線とする中心対称の空間磁界を発生し、前記磁気センサアレイの複数の磁気センサ4が前記フラットパネル検出器に分布され(つまり前記フラットパネル検出器が第2オブジェクト2であり)、
図1に示すように、4つの磁気センサ4がフラットパネルの四隅に設置されるが、磁気センサ4の設置数および位置形態が限定されるものではない。
【0036】
図1に示すように、4つの磁気センサの設置形態を例にすると、位置決め開始するとき、4つの磁気センサが同時に動作し、位相同期フィルタリングと増幅技術により磁界発生器で発生する磁界の振幅を復調する。その振幅から、コリメータに対する各磁気センサの位置を算出することができる。4つの磁気センサを使用しているため、一方が妨害されて磁界の振幅の測定が不正確になった場合でも、検出器は残りの3つの磁気センサを通じてフラットパネルの位置を決定することもできる。システムの抗干渉能力をさらに向上させるために、より多くの磁気センサからなるアレイを設けることができ、例えば8つの磁気センサを設けてアレイを形成し、最大で3つのセンサが干渉して動作する場合でも位置を正確に決定でき、具体的には以下のとおりである。
【0037】
前記フラットパネル検出器は、撮影時には、被写体の撮影エリアに近づける必要があり、X線ビームの中心線はフラットパネル検出器の中心エリア(フラットパネル中心付近のエリア範囲)に一致し、かつ垂直であることが要求される。このため、医師は、前記フラットパネル検出器とX線源(コリメータ)の相対配置位置を正確に判断する必要があり、本発明の実施例が提供する磁気位置決め技術手段は、医師に対して位置決めガイダンスを提供でき、主な発明の概念は次のとおりである。前記磁界発生装置は交番磁界を発生する交番磁界発生器を少なくとも備え、前記磁気センサアレイの複数の磁気センサは独立して磁気誘導強度を検出し、リアルタイムで検出した磁気誘導強度データをプロセッサに送信し、前記プロセッサは各磁気センサリによってアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさから、前記コリメータとフラットパネル検出器間の位置関係を決定することができる。
【0038】
位置決めの信頼性をさらに向上させるために、前記交番磁界発生器31は磁界エンコーディングを行うことができ、前記磁界発生装置は磁気センサアレイと双方向通信が可能であり、前記交番磁界発生器31は複数回決定した前記第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対位置に応じて自ら発生する磁界強度を調整でき、2つのオブジェクトの相対位置を決定する方法は具体的に次のように説明し、例えば、前記交番磁界発生器31は発生した磁界強度が弱くなるように調整する。各磁気センサの各軸の磁界が弱いと磁気センサアレイが感知した場合、磁気センサアレイは無線通信により磁界発生装置に磁界強度を増加させることを通知し、逆に、磁界が強すぎてその測定範囲を超えると磁気センサアレイが感知した場合、前記磁界発生装置に磁界を減少させることを通知すればよい。
【0039】
本発明の一実施例では、リアルタイム空間高精度磁気位置決め方法を提供し、
図4に示すように、前記磁気位置決め方法は、
S11、磁界発生装置と第1オブジェクトとを同軸に配置し、第2オブジェクトに位置合わせを行う必要のある参照エリアを設定し、前記参照エリアの中心点を決定して、前記磁気センサから前記中心点までの距離が同じであるように、第2オブジェクトに複数の磁気センサを配置するステップと、
S12、前記磁界発生装置により交番磁界を発生させ、前記複数の磁気センサにより独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出するステップと、
S13、複数の磁気センサリによってアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさを比較するステップと、
S14、半分以上の磁気センサがリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさが同じであるか、または磁気誘導強度の差が予設閾値または比例閾値よりも小さいことを比較して得ると、現在位置の第1オブジェクトと第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせ、位置決めを終了し、そうでないとS15を実行するステップと、
S15、第1オブジェクトおよび/または第2オブジェクトの位置を調整して、ステップS12~S14を繰り返して実行するステップと、を含む。
【0040】
上記より、すべての磁気センサを第2オブジェクトの第1オブジェクトに位置合わせを行う参照エリアの中心点から同じ距離に配置する場合、幾何学的関係から、1つの平面が3点で決定できることが分かるので、好ましくは、前記磁気センサの数が3以上である。3以上の場合、3つ以上の磁気センサが配置された円の中心に磁界発生装置が正対しているときのみ、複数の磁気センサがリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさが同じになる可能性がある。実際の操作では、第1オブジェクトが第2オブジェクトの中心点に正対することが最も理想的な状態であり、一定のずれを許容する場合、磁気センサがリアルタイムで検出した磁気誘導強度の差が予設閾値または比例閾値よりも小さい場合も、位置合わせの判断基準とし、例えば、すべての磁気センサが検出した磁気誘導強度値中の最大値から磁気誘導強度の最小値を差し引いて磁気誘導強度の差を取得し、この磁気誘導強度の差が1mGs未満、または、前記磁気誘導強度の差が現在磁気誘導強度平均値との比が1%未満である場合、現在位置の第1オブジェクト1と(許容誤差範囲内)第2オブジェクト2上の参照エリアとの位置合わせが完了したと判断する。
【0041】
好ましくは、磁気センサの数を3つ以上、例えば4に設定し、そうすると、1つの磁気センサが干渉しても磁気位置決めに影響を及ばさないようにし、または8つの磁気センサを設けて、そのうちの3つの磁気センサが干渉しても、干渉していない残りの5つの磁気センサにより第1オブジェクトと第2オブジェクトとの位置合わせが完了したかどうかを判断できる。具体的に、例えば8つの磁気センサのうち6つの磁気センサがリアルタイムで検出した磁気誘導強度の大きさが同じであるが、残りの2つの検出した磁気誘導強度値が異なる場合、この2つの磁気センサが干渉していると判断し、その干渉した検出結果を除外することが可能である。
【0042】
以上、実施例の技術手段は、各磁気センサと中心点の距離を同じにすることを制限しており、この条件下では、具体的な磁気センサ(または中心点)と磁界発生装置間の距離および座標値を考慮しない場合がある。本発明の以下の実施例では、別の発明概念に基づくリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置を提供し、第1オブジェクト1と第2オブジェクト2上の参照エリア間の位置関係を決定するために使用され、前記磁気位置決め装置は、プロセッサ、前記第1オブジェクト1と同軸に配置された磁界発生装置および前記第2オブジェクト2に設けられた磁気センサアレイを備え、前記磁界発生装置は交番磁界を発生する交番磁界発生器31を少なくとも備え、前記磁気センサアレイは、複数の磁気センサ4の設置位置と前記参照エリアの中心点とは明確な位置関係を有するように構成され、
本実施例では、磁気センサ4の位置を任意に設定した後、前記磁気センサ4と中心点の位置関係を決定する。例えば、1つの予め設定された座標系において、前記磁気センサ4を原点として、前記中心点の座標を(x1,y1,z1)とする。
【0043】
前記磁気センサアレイの複数の磁気センサ4は独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出し、リアルタイムで検出した磁気誘導強度データをプロセッサに送信し、磁界変化の周波数が既知しているので、位相同期増幅技術によりノイズをフィルタリングして抑制し、高精度の磁界測定値を取得し、前記プロセッサは各磁気センサの検出結果から対応の演算により磁界発生装置に対する磁気センサの正確な位置、つまり前記磁界発生装置に対する各磁気センサ4の位置座標を求めることができる。ここでの位置座標は、上記と同じ座標系(x/y/z軸方向が同じ座標系を同一座標系という)で、前記磁界発生装置を原点とし、前記磁気センサの座標を(x2,y2,z2)とすると、前記磁界発生装置に対する前記中心点の座標は(x1+x2,y1+y2,z1+z2)である。
【0044】
具体的には、磁気センサがリアルタイムで磁気誘導強度を検出することにより磁界振幅を求めることができ、振幅に基づいて磁界発生装置に対する各磁気センサの位置を算出する古典的なアルゴリズムの1つはビオ・サバ―ル則(Biot-Savart Law)であり、空間のある点Pで電流要素Idlが発生する磁気誘導強度dBの大きさは電流要素Idlの大きさに比例し、電流要素Idlの位置からP点までの位置ベクトルと電流要素Idl間の夾角の正弦に比例し、電流要素IdlからP点までの距離の二乗に反比例する。古典的な式は次のとおりであり:
【数1】
【0045】
ここで、Iはソース電流、Lは積分経路、dlはソース電流の微小線要素であり、
【数2】
は求める磁界点を指す電流要素の単位ベクトルであり、μ
0は真空透磁率で、その値が4π×10
-7N/A
2であり、dBの方向がIdlと
【数3】
で決定した平面に垂直であり、rは磁気センサと磁界発生装置の距離であり、
【数4】
は磁気センサから磁界発生装置に向けられたベクトルである。
【0046】
以上の式で算出したベクトル
【数5】
は座標系中の座標に変換することができる。
【0047】
コイルが磁気センサから十分に離れる場合、以下の近似式を用いることができる。
【数6】
【0048】
m=NSInであり、
【0049】
ここで、Nはコイルのターン数、Sはコイルの面積、Iはコイルの電流、nは方向で、コイルの軸心に沿ってコイル面に垂直な方向である。
【0050】
原理的には、1つの磁気センサだけで磁界発生装置に対する前記中心点の位置関係を求めることができる。しかし、位置決め精度を高め、磁気センサが干渉して誤った位置決め結果を招くことを防止するために、前記磁気センサアレイは3つ以上の磁気センサを備えることが好ましく、1つの磁気センサが干渉してもアレイ全体の位置判断に影響を及ぼさなく、安定性が高い。
【0051】
前記プロセッサは、前記磁界発生装置に対する半分以上の磁気センサ4の位置座標およびこの磁気センサ4と前記参照エリアの中心点の位置関係から、前記第1オブジェクト1に対する参照エリアの中心点の位置座標を求める。例えば、磁気センサの数が6つであり、4つの磁気センサがリアルタイムで検出した結果から得られた中心点座標はいずれも(x’,y’,z’)であり、他の2つの磁気センサがリアルタイムで検出した結果から得られた中心点座標が異なると、この2つの磁気センサが干渉していると判断し、その干渉した検出結果を除外することが可能である。
【0052】
このリアルタイム空間高精度磁気位置決め装置の技術手段では、前記プロセッサが前記第1オブジェクト1に対する前記参照エリアの中心点の位置座標をx/y/z軸の3次元座標として求め、前記プロセッサが前記3次元座標を解析し、前記第1オブジェクト1が位置する平面に平行な2つの座標軸の座標が0であると、現在位置の第1オブジェクト1と第2オブジェクト2上の参照エリアとの位置合わせが完了したと判断できる。実際の操作では、第1オブジェクトが第2オブジェクトの中心点に完全に正対していることが最も理想的であり、例えば、磁界発生装置を原点として座標系を構築し、コリメータの中心線をx軸(またはy軸、z軸)し、上記中心点の座標値が(50,0,0)であると、現在第1オブジェクト1が第2オブジェクト2の中心点に正対していることを意味し、一定のずれが許容される場合、例えば中心点の座標値において、y軸とz軸の座標値が、例えば[-5,+5]範囲のように、0に近い予設範囲内にあると、例えば異なる磁気センサに対応する中心点座標が(50,5,-5)、(50,-5,5)、(50,5,5)、(50,-5,-5)などであれば、現在位置の第1オブジェクト1と(許容誤差範囲内)第2オブジェクト2上の参照エリアとの位置合わせが完了したと判断できる。
【0053】
先の実施例と同様に、本実施例の磁界発生装置は、交番磁界発生器に加え、磁気センサ4を予設動作磁界範囲にバイアスするためのバイアス磁石32をさらに備え、前記バイアス磁石32は永久磁石または電磁石である。
【0054】
位置決めの信頼性をさらに高めるために、前記交番磁界発生器31は磁界エンコーディングを行うことができ、前記磁界発生装置は磁気センサアレイと双方向通信が可能であり、前記交番磁界発生器31は複数回決定した前記第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対位置に応じて自ら発生する磁界強度を調整でき、例えば前記交番磁界発生器31は発生した磁界強度が弱くなるように調整する。つまり、各磁気センサの各軸の磁界が弱いと磁気センサアレイが感知した場合、磁気センサアレイは無線通信により磁界発生装置に磁界強度を増加させることを通知し、逆に、磁界が強すぎてその測定範囲を超えると磁界磁気センサアレイが感知した場合、前記磁界発生装置に磁界を減少させることを通知すればよい。
【0055】
本発明の実施例では、別のリアルタイム空間高精度磁気位置決め方法を提供し、
図5を参照すると、
S21、磁界発生装置と第1オブジェクトとを同軸に配置し、第2オブジェクトに位置合わせを行う必要のある参照エリアを設定し、前記参照エリアの中心点を決定して、第2オブジェクトに複数の磁気センサを配置して各磁気センサと前記中心点の位置関係を取得するステップと、
S22、前記磁界発生装置により交番磁界を発生させ、前記複数の磁気センサにより独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出するステップと、
S23、磁気誘導強度の検出データに応じて、それぞれ磁界発生装置に対する各磁気センサの位置座標を算出するステップと、
S24、1つまたは半分未満の磁気センサの位置座標が残りの磁気センサの位置座標によって決まる平面から外れると、この1つまたは半分未満の磁気センサが邪魔な磁気センサとして除外され、前記磁界発生装置に対する前記残りの磁気センサの位置座標および前記残りの磁気センサと前記中心点の位置関係のみから、前記第1オブジェクトに対する前記中心点の位置座標を取得するステップと、偏差がない場合、すなわち、すべての磁気センサが同一平面にある場合、前記磁界発生装置に対するすべてまたは一部の磁気センサの位置座標および前記すべてまたは一部の磁気センサと前記中心点の位置関係から、前記第1オブジェクトに対する前記中心点の位置座標を取得する。
S25、第1オブジェクトに対する前記中心点のx/y/z軸の3次元座標において、前記第1オブジェクトが位置する平面に平行な2つの座標軸の座標が0または0に近い予設範囲内にあると、現在位置の第1オブジェクトと第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせ、位置決めを終了し具体的には上記を参照し、そうでないとS26を実行するステップと、
S26、第1オブジェクトおよび/または第2オブジェクトの位置を調整して、ステップS22~S25を繰り返して実行するステップと、を含む。
【0056】
なお、上記磁気位置決め方法の実施例は、上記実施例が提供する磁気位置決め装置と同じ概念に属し、具体的な実現プロセスは装置の実施例を参照されたく、つまり、上記装置の実施例におけるすべての特徴は参照によって方法の実施例に導入することができ、ここで説明を省略する。
【0057】
本発明の実施例は、前記交番磁界発生器31の第3種類の構造形態を提出する。前記交番磁界発生器31は、2つの予設角度の変調コイルを備え、2つの変調コイルが交互に動作し、磁気センサは1つのコイルの勾配が0.01mT/m未満のエリアに位置すると、他方のコイルにより第1オブジェクト1と第2オブジェクト2間の相対位置を取得することができる。
【0058】
具体的に、前記交番磁界発生器31とセンサアレイはそれぞれ角度センサを有し、前記角度センサは、磁気センサの磁界測定期間前記第1オブジェクト1と第2オブジェクト2の方位角をそれぞれ算出して、2つのオブジェクト間の姿勢を決定し、および/または、
前記交番磁界発生器31とセンサアレイはそれぞれ加速度センサを有し、前記加速度センサは磁気センサの磁界測定期間前記第1オブジェクト1と第2オブジェクト2の3次元加速度データをそれぞれ算出して、前記第1オブジェクト1と第2オブジェクト2の加速度、速度およびその相対位置を決定し、磁気位置決めを補正し、具体的な補正方法は以下で詳細に説明する。
【0059】
上記他方のコイルにより第1オブジェクト1と第2オブジェクト2間の相対位置を取得する方法は、具体的に、
S31、磁界発生器の2つのコイルを予設角度で第1オブジェクトに設置し、前記予設角度が90°に等しくなく、第2オブジェクトに位置合わせを行う必要のある参照エリアを設定し、前記参照エリアの中心点を決定して、第2オブジェクトに複数の磁気センサを配置して各磁気センサと前記中心点の位置関係を取得するステップと、
S32、前記磁界発生器の2つのコイルを交互に動作させ、交番磁界を発生させ、前記複数の磁気センサにより独立して磁気誘導強度をリアルタイムで検出するステップと、
S33、2つのコイルが交互に動作するたびに1組として記録し、磁気誘導強度の検出データを複数組に分け、磁気誘導強度の検出データに応じて、磁界発生器に対する各磁気センサの位置座標をそれぞれ算出するステップと、
S34、ある組内の2つの位置座標の差が予設閾値を超えると、他の磁気センサによって検出したデータと比較して、オフセットの大きい位置座標データを破棄するステップと、
S35、S34の処理を経った残りの位置座標データおよび前記他の磁気センサと前記中心点の位置関係から、前記第1オブジェクトに対する前記中心点の位置座標を取得するステップと、
S36、第1オブジェクトに対する前記中心点のx/y/z軸の3次元座標において、前記第1オブジェクトが位置する平面に平行な2つの座標軸の座標が0または0に近い予設範囲内にあると、現在位置の第1オブジェクトと第2オブジェクト上の参照エリアとの位置合わせ、位置決めを終了し、そうでないとS37を実行するステップと、
S37、第1オブジェクトおよび/または第2オブジェクトの位置を調整して、ステップS32~S36を繰り返して実行するステップと、を含む。
【0060】
上記の磁気位置決めを補正する方法は、
S41、上記の磁気位置決め方法を用いて、磁界センサの3次元磁界データから、時刻t0における第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対位置を算出するステップと、
S42、時刻t1において、磁気センサ、加速度計および角度センサを用いて、時刻t1における3次元磁界データ、3次元加速度データ、3次元姿勢データをそれぞれ取得するステップと、
S43、時刻t1の3次元磁界データと3次元姿勢データから、時刻t1における第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対位置pt1を算出し、時刻t1の3次元加速度データから、時刻t1における第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対速度v1を算出するステップと、
S44、時刻t2において、磁気センサ、加速度計および角度センサを用いて、時刻t2における3次元磁界データ、3次元加速度データ、3次元姿勢データをそれぞれ取得するステップと、
S45、時刻t2の3次元磁界データと3次元姿勢データから、時刻t2における第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対位置pt2を算出し、時刻t2の3次元加速度データと時刻t1の相対速度v1から、時刻t2における第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対位置pt2'を算出するステップと、
S46、pt2とpt2'を比較して、両者の誤差が1cm以内であれば、時刻t2における第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対位置がpt2とpt2'の平均値であり、そうでないとS47~S48を実行するステップと、
S47、時刻t2の3次元加速度値を求めて0と比較し、同時に時刻t1の速度v1を求めて0と比較して、前記速度v1及び前記3次元加速度値と0との差が所定の閾値以下であると、時刻t2の第1オブジェクトと第2オブジェクトの相対位置がpt2であり、そうでないとpt2'であるステップと、
S48、第1オブジェクトおよび/または第2オブジェクトの位置を調整して、ステップS41~S46を繰り返して実行するステップと、を含む。
【0061】
本発明は、複数の磁気センサアレイを同時に位置決め、つまり複数のオブジェクトの位置決めを実現することができる。これは、異なる磁気センサアレイが独立して磁界発生装置と通信し、磁界発生装置に対する位置を決定することができるためである。空間磁界をよりよく制御し、位置決め精度を高めるために、複数の磁界発生装置を使用し、異なる空間位置に配置することも可能である。
【0062】
心臓ペースメーカーなど、磁気感受性の高い一部の装置は、磁気位置決めに使用できないが、これは、弱い磁界を使用するものの、特に磁界発生装置の近くでは、磁界が依然として地磁気より大きい場合があるためである。このため、これらの磁界感応装置の近傍に、さらに磁気センサーアレイを搭載することができる。以上のように、本技術は、1つの磁界発生装置を用いて複数の磁気センサアレイを位置決めることができるため、位置決め時リアルタイムで磁気感応装置の位置を決定することができ、磁気感応装置付近の磁界を地磁気レベルまで積極的に低減することにより、その影響を受けないように保証することができる。
【0063】
上記は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、本発明の精神および原則から逸脱することなく加えられた任意の修正、等価置換、および改善などは、すべて本発明の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 第1オブジェクト
2 第2オブジェクト
31 交番磁界発生器
32 バイアス磁石
4 磁気センサ