(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0567 20100101AFI20240717BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2023508031
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 KR2022005798
(87)【国際公開番号】W WO2022270739
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-02-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082887
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ウンホ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェギル・イ
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087580(WO,A1)
【文献】特開2009-252637(JP,A)
【文献】特開2002-319431(JP,A)
【文献】特開2003-100342(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110343043(CN,A)
【文献】国際公開第2021/095574(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/017999(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057588(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム二次電池用電解液において、
前記添加剤は、下記化学式1で表される化合物を含
み、
前記リチウム二次電池用電解液は、電解液の総重量対比
0.01重量%ないし0.9重量%の前記化学式1で表される化合物を含む、リチウム二次電池用電解液:
【化1】
前記化学式1において、Rは
、メチル基;エチル基;n-プロピル基;イソプロピル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;tert-ペンチル基;n-ヘキシル基;1-メチルペンチル基;2-メチルペンチル基;4-メチル-2-ペンチル基;3,3-ジメチルブチル基;及び2-エチルブチル基;からなる群から選択されるものである。
【請求項2】
前記Rはメチル基;エチル基;n-プロピル基;イソプロピル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;及びsec-ブチル基;からなる群から選択されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項3】
前記リチウム二次電池用電解液は、電解液の総重量対比
0.01重量%ないし0.4重量%の前記化学式1で表される化合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項4】
前記化学式1で表される化合物は、メチルトリフルオロアセテートであり、
前記リチウム二次電池用電解液は、電解液の総重量対比0.01重量%ないし0.8重量%の前記化学式1で表される化合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物は、メチルトリフルオロアセテートであり、
前記化学式1で表される化合物の
1H-NMR(300MHz、CDCl
3、標準物
質TMS)スペクトルにおいて、3.95ppmないし4.00ppmの範囲で1つのピークが表れるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物は、エチルトリフルオロアセテートであり、
前記化学式1で表される化合物の
1H-NMR(300MHz、CDCl
3、標準物
質TMS)スペクトルにおいて、1.31ppmないし1.50ppmの範囲で3つのピーク及び4.25ppmないし5.55ppm範囲で4つのピークが表れるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項7】
前記リチウム二次電池用電解液はリチウム-硫黄電池用電解液である、請求項1に記載のリチウム二次電池用電解液。
【請求項8】
正極;
負極;
前記正極と負極との間に介在する分離膜;及び
請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の電解液を含む、リチウム二次電池。
【請求項9】
前記リチウム二次電池はリチウム-硫黄電池である、請求項
8に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月25日付韓国特許出願第10-2021-0082887号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容を本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用電解液及びそれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
二次電池が活用される範囲が小型の携帯型電子機器から中大型の電気自動車(Electric vehicle;EV)、エネルギー貯蔵装置(Energy Storage System、ESS)、電気船舶などに拡張するにつれ、高容量、高エネルギー密度及び長い寿命を有するリチウム二次電池に対する需要が急増している。
【0004】
リチウム金属は理論的に3,860mAh/gの非常に高い比容量(Specific cappacity)を有し、負極材として電位が低く、密度が非常に小さいという点で、電池の負極として使用しようとする様々な試みがなされてきた。
【0005】
なかでもリチウム-硫黄二次電池は、「S-S結合(Sulfur-Sulfur Bond)」を有する硫黄系列の物質を正極活物質であって、リチウム金属を負極活物質として用いる電池システムを意味する。前記正極活物質の主材料である硫黄は、低い原子当たりの重量を有しながらも資源が豊富で、需給が容易であるだけでなく、安価で電池の製造コストを下げることができ、毒性がなく環境に優しいという点で特性を有する。
【0006】
特に、リチウム-硫黄二次電池は理論放電容量が1,675mAh/g-sulfurであり、理論上では重量対比2,600Wh/kgの高いエネルギー貯蔵密度が具現でき、現在研究されている他の電池システム(Ni-MH電池:450Wh/kg、Li-FeS電池:480Wh/kg、Li-MnO2電池:1,000Wh/kg、Na-S電池:800Wh/kg)及びリチウムイオン電池(250Wh/kg)の理論エネルギー密度に比べて非常に高い数値を有するため現在まで開発されている中大型の二次電池市場において大いに注目されている。
【0007】
前記リチウム二次電池の寿命に影響を及ぼす要因としてリチウム負極の退化が挙げられ、これは正極活物質との反応や電解液との反応などが原因となって発生できる。前記負極の退化は結果的にデンドライトを形成させ、クーロン効率(Coulombic Efficiency, C.E)を低下させる問題点が指摘されてきた。特にデンドライトが一次元の形態で形成されると、気孔を含む分離膜を通じてInternal short circuitが発生し、電解液の燃焼による安全や寿命減少の問題が発生できる。
【0008】
よって、前記デンドライト現象によるリチウム二次電池の問題点を改善するために、負極表面に均一にリチウムを蒸着(plating)及び剥離(stripping)させてデンドライトの形成を抑制するための研究が必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国公開特許公報第10-2017-0009994号「リチウム-硫黄バッテリー用電解質添加剤」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、前記問題を解決するために、リチウム二次電池用電解液に対して添加剤であるアルキルトリフルオロアセテート(Alkyl trifluoro acetate)を添加し、電池の寿命及び効率を改善させたリチウム二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の側面によると、
リチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム二次電池用電解液において、前記添加剤は下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0012】
【0013】
前記化学式1において、Rは置換または非置換したC1ないしC60のアルキル基である。
【0014】
本発明の一具体例において、前記Rはメチル基;エチル基;n-プロピル基;イソプロピル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;tert-ペンチル基;n-ヘキシル基;1-メチルペンチル基;2-メチルペンチル基;4-メチル-2-ペンチル基;3,3-ジメチルブチル基;及び2-エチルブチル基;からなる群から選択されるものである。
【0015】
本発明の一具体例において、前記Rはメチル基;エチル基;n-プロピル基;イソプロピル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;及びsec-ブチル基;からなる群から選択されるものである。
【0016】
本発明の一具体例において、前記リチウム二次電池用電解液は、電解液の総重量対比0.01ないし0.9重量%の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0017】
本発明の一具体例において、前記リチウム二次電池用電解液は、電解液の総重量対比0.01ないし0.4重量%の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0018】
本発明の一具体例において、前記化学式1で表される化合物はメチルトリフルオロアセテートであり、前記リチウム二次電池用電解液は、電解液の総重量対比0.01ないし0.8重量%の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0019】
本発明の一具体例において、前記化学式1で表される化合物はメチルトリフルオロアセテートであり、前記化学式1で表される化合物の1H-NMR(300MHz、CDCl3、標準物質TMS)スペクトルにおいて、3.95ppmないし4.00ppmの範囲で1つのピークが表れるものである。
【0020】
本発明の一具体例において、前記化学式1で表される化合物はエチルトリフルオロアセテートであり、前記化学式1で表される化合物の1H-NMR(300MHz、CDCl3、標準物質TMS)スペクトルにおいて、1.31ppmないし 1.50ppmの範囲で3つのピーク及び4.25ppmないし4.55ppmの範囲で4つのピークが表れるものである。
【0021】
本発明の一具体例において、前記リチウム二次電池用電解液は、リチウム-硫黄電池用電解液である。
【0022】
本発明の第2の側面によると、
正極;負極;前記正極と負極との間に介在する分離膜;及び前記電解液を含む、リチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るリチウム二次電池は、アルキルトリフルオロアセテートを電解液内添加剤として含んでリチウム系金属である負極表面において効率的な蒸着(plating)及び剥離(stripping)過程を通じて、デントライトの生成を抑制してリチウム二次電池の寿命特性を向上させる効果を有することができる。
【0024】
また、本発明に係るリチウム二次電池は、アルキルトリフルオロアセテートを電解液内添加剤として含んでフレッシュ(fresh)な状態のリチウムに露出した際に保護膜(-CF3または-F Layer)を形成してデントライト生成を抑制することができ、放電時に生成されるリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide)との化学的相互作用(chemical interaction)を通じた溶解度(solubility)の上昇で活用度(utilization)増大、リチウム負極の保護及びリチウムポリスルフィドの安定性を向上させられる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は本発明の実施例及び比較例を通じて製造されたリチウム二次電池の寿命特性を評価した結果に対するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明により提供される具体例は、下記の説明によって全て達成できる。下記の説明は本発明の好ましい具体例を記述こととして理解されるべきであり、本発明が必ずしもこれに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0027】
本明細書において用いられている用語「置換」は、化合物の炭素原子に結合した水素原子が他の置換基に変わることを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定せず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一であるか相違である。
【0028】
本明細書において用いられている「置換または非置換」の任意の置換基としては重水素;ハロゲン;シアノ基;炭素数1ないし60のアルキル基;炭素数2ないし60のアルケニル基;炭素数2ないし60のアルキニル基;炭素数3ないし60のシクロアルキル基;炭素数2ないし60のヘテロシクロアルキル基;炭素数5ないし60のアリール基;炭素数2ないし60のヘテロアリール基;炭素数1ないし60のアルコキシ基;炭素数5ないし60のアリールオキシ基;炭素数1ないし60のアルキルシリル基;及び炭素数6ないし60のアリールシリル基からなる群から選択された1以上の置換基であることができ、置換基が複数の場合には互いに同一であるか相違である。
【0029】
リチウム二次電池用電解液
本発明によるリチウム塩、有機溶媒及び添加剤を含むリチウム二次電池用電解液において、前記添加剤は下記化学式1で表される化合物を含む、リチウム二次電池用電解液を提供する。
【0030】
【0031】
前記化学式1において、Rは置換または非置換したC1ないしC60のアルキル基である。
【0032】
前記リチウム二次電池用電解液に対して添加剤として前記化学式1で表される化合物であるアルキルトリフルオロアセテート(Alkyl trifluoro acetate)を含むことにより、負極として用いられるリチウム系金属表面上において化学的に安定して均一に蒸着(plating)及び剥離(stripping)する過程を通じてリチウム二次電池の寿命及び効率特性を改善させる効果が表れ得る。
【0033】
具体的に、前記化学式1で表される化合物であるアルキルトリフルオロアセテートは、充・放電時に保護膜(-CF3または-F Layer)を形成してデントライト生成を抑制することができる。
【0034】
本発明のリチウム二次電池用電解液は、好ましくはリチウム-硫黄電池用電解液である。それにより、前記化学式1で表される化合物であるアルキルトリフルオロアセテートは、リチウム-硫黄電池の放電時に生成されるリチウムポリスルフィド(Lithium polysulfide)との化学的相互作用(chemical interaction)、例えば求核置換反応(nucleophilic reaction)またはアルキル化(alkylation)を通じて溶解度(solubility)が上昇し、活用度(utilization)の増大、リチウム負極の保護及びリチウムポリスルフィドの安定性を向上させられる効果がある。
【0035】
本明細書において「フレッシュ(fresh)な状態のリチウム」は、「純粋(pure)リチウム」に定義される。
【0036】
前記Rは置換または非置換したC1ないしC60のアルキル基;置換または非置換したC1ないしC40のアルキル基;置換または非置換したC1ないしC20のアルキル基;置換または非置換したC1ないしC10のアルキル基;または置換または非置換したC1ないしC5のアルキル基である。
【0037】
前記Rはメチル基;エチル基;n-プロピル基;イソプロピル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;tert-ペンチル基;n-ヘキシル基;1-メチルペンチル基;2-メチルペンチル基;4-メチル-2-ペンチル基;3,3-ジメチルブチル基;及び2-エチルブチル基;からなる群から選択されるものである。
【0038】
前記Rはメチル基;エチル基;n-プロピル基;イソプロピル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;sec-ブチル基;1-メチル-ブチル基;1-エチル-ブチル基;n-ペンチル基;イソペンチル基;ネオペンチル基;及びtert-ペンチル基;からなる群から選択されるものである。
【0039】
前記Rはメチル基;エチル基;n-プロピル基;イソプロピル基;n-ブチル基;イソブチル基;tert-ブチル基;及びsec-ブチル基;からなる群から選択されるものである。
【0040】
前記Rはメチル基;エチル基;n-プロピル基;及びイソプロピル基;からなる群から選択されるものである。
【0041】
前記Rはメチル基;またはエチル基である。
【0042】
前記化学式1で表される化合物はメチルトリフルオロアセテート(methyl trifluoro acetate)、エチルトリフルオロアセテート(ethyl trifluoro acetate)、プロピルトリフルオロアセテート(propyl trifluoro acetate)、ブチルトリフルオロアセテート(butyl trifluoro acetate)、ペンチルトリフルオロアセテート(pentyl trifluoro acetate)、ヘキシルトリフルオロアセテート(hexyl trifluoro acetate)及びイソプロピルトリフルオロアセテート(isopropyl trifluoro acetate)からなる群から選択されることができ、好ましくはメチルトリフルオロアセテート(methyl trifluoro acetate)またはエチルトリフルオロアセテート(ethyl trifluoro acetate)であることができ、さらに好ましくはメチルトリフルオロアセテート(methyl trifluoro acetate)である。
【0043】
前記リチウム二次電池用電解液は、電解液の総重量対比0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、0.04重量%以上、0.05重量%以上、0.06重量%以上、0.07重量%以上、0.08重量%以上、0.09重量%以上、0.1重量%以上の前記化学式1で表される化合物を含むことができ、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、0.5重量%以下、0.4重量%以下、0.3重量%以下、0.2重量%以下の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。前記リチウム二次電池用電解液が電解液の総重量対比0.01重量%未満の前記化学式1で表される化合物を含むなら、添加される量が非常に少なく、リチウム蒸着(plating)及び剥離(stripping)を均一に引き起こすためにアルキルトリフルオロアセテート添加剤を投入することによる所望の機能を発揮することができず、電池の寿命が増加する効果がかすかである。一方、前記リチウム二次電池用電解液が電解液の総重量対比0.9重量%を超える前記化学式1で表される化合物を含むなら、電解液の粘度上昇を誘発し、ポリスルフィドと化学的反応(chemical reaction)を通じて電池性能を低下させる問題が生じる。
【0044】
前記化学式1で表される化合物はメチルトリフルオロアセテートであり、前記リチウム二次電池用電解液は、電解液の総重量対比0.01ないし0.9重量%の前記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0045】
前記化学式1で表される化合物はメチルトリフルオロアセテートであることができ、前記化学式1で表される化合物の1H-NMR(300MHz、CDCl3、標準物質TMS)スペクトルにおいて、3.95ppmないし4.00ppmの範囲で1つのピークが表れることができる。
【0046】
前記化学式1で表される化合物はエチルトリフルオロアセテートであることができ、前記化学式1で表される化合物の1H-NMR(300MHz、CDCl3、標準物質TMS)スペクトルにおいて、1.31ppmないし1.50ppmの範囲で3つのピーク及び4.25ppmないし4.55ppmの範囲で4つのピークが表れることができる。
【0047】
すなわち、本発明において前記化学式1で表される化合物は、1H-NMRスペクトルで前記の固有ピークを示すことができ、これを通じてリチウム二次電池用電解液内に前記化学式1で表される化合物が添加剤として含まれていることを確認することができる。一方、リチウム二次電池用電解液において、前記化学式1で表される化合物を含まない場合には、前記1H-NMRピークが表れない。
【0048】
前記有機溶媒は、線状エーテル化合物、環状エーテル化合物及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるものを含むことができる。
【0049】
前記線状エーテル化合物は、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、エチルメチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルtertブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジメトキシプロパン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチレンエーテル、ブチレングリコールエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールtertブチルエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むことができる。
【0050】
前記環状エーテル化合物は、1,3-ジオキソラン、4,5-ジメチル-ジオキソラン、4,5-ジエチル-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、4-エチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメチルテトラヒドロフラン、2,5-ジメトキシテトラヒドロフラン、2-エトキシテトラヒドロフラン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、2-ビニル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン、2-メトキシ-1,3-ジオキソラン、2-エチル-2-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、1,4-ジメトキシベンゼン、イソソルビドジメチルエーテル(isosorbide dimethyl ether)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むことができる。
【0051】
本発明のリチウム二次電池用電解液はリチウム塩を含むことができる。前記リチウム塩は有機溶媒に溶解しやすい物質であって、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiB(Ph)4、LiC4BO8、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiSO3CH3、LiSO3CF3、LiSCN、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、LiN(SO2F)2、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、テトラフェニルホウ酸リチウム及びリチウムイミドからなる群から選択されるものであることができ、好ましくは、LiN(CF3SO2)2(LITFSI)である。
【0052】
前記リチウム塩の濃度は、電解液に含まれた混合物の正確な組成、塩の溶解度、溶解した塩の伝導性、電池の充電及び放電条件、作業温度及びリチウムバッテリー分野において公知された他の要因のようないくつの要因により、0.1~5.0M、好ましくは0.2~3.0M、さらに具体的には0.5~2.5Mである。0.1M未満に使用すれば電解液の伝導度が低くなって電解液の性能が低下でき、5.0Mを超えて使用すれば電解液の粘度が増加してリチウムイオン(Li+)の移動性が減少できる。
【0053】
本発明のリチウム二次電池用電解液は、前述の組成以外に該当技術分野において通常用いられる添加剤をさらに含むことができる。一例として、硝酸リチウム(LiNO3)、硝酸カリウム(KNO3)、硝酸セシウム(CsNO3)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3)2)、硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、亜硝酸リチウム(LiNO2)、亜硝酸カリウム(KNO2)、亜硝酸セシウム(CsNO2)及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものを含むことができる。
【0054】
本発明によるリチウム二次電池用電解液の製造方法は、本発明において特に限定せず、当業界において公知の通常の方法により製造することができる。
【0055】
リチウム二次電池
本発明によるリチウム二次電池は正極;負極;前記正極と負極との間に介在した分離膜;及び電解液;を含み、前記電解液として本発明によるリチウム二次電池用電解液を含む。
【0056】
前記正極は、正極集電体と前記正極集電体の一面または両面に塗布された正極活物質層とを含むことができる。
【0057】
前記正極集電体は正極活物質を支持し、当該電池に化学的変化を誘発せず高い導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタニウム、パラジウム、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いることができる。
【0058】
前記正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質との結合力を強化させることができ、フィルム、シート、箔、メッシュ、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態を用いることができる。
【0059】
前記正極活物質層は正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0060】
前記正極活物質はリチウム遷移金属酸化物が好ましく用いられ、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiaCobMnc)O2(0<a<1、0<b<1、0<c<1、a+b+c=1)、LiNi1-yCoyO2、LiCo1-yMnyO2、LiNi1-yMnyO2(0≦y<1)、Li(NiaCobMnc)O4(0<a<2、0<b<2、0<c<2、a+b+c=2)、LiMn2-zNizO4、LiMn2-zCozO4(0<z<2)、LiCoPO4及びLiFePO4からなる群から選択されるいずれか一つまたはこれらのうち2種以上の混合物を用いることができる。また、このような酸化物(oxide)の他に硫化物(sulfide)、セレン化物(selenide)及びハロゲン化物(halide)なども使用できる。
【0061】
前記正極活物質は、硫黄化合物を含み、前記硫黄化合物は硫黄元素(Elemental sulfur、S8)、有機硫黄化合物Li2Sn(n≧1)及び炭素-硫黄ポリマー((C2Sx)n:x=2.5~50、n≧2)からなる群から選択された1種以上である。好ましくは無機硫黄(S8)を用いることができる。
【0062】
前記正極活物質が硫黄化合物を含むことにより、本発明のリチウム二次電池はリチウム-硫黄電池である。
【0063】
前記正極活物質に含まれる硫黄の場合、単独では電気伝導性がないため、炭素材のような伝導性素材と複合化して用いられる。これにより、前記硫黄は硫黄-炭素複合体の形態で含まれ、好ましくは前記正極活物質は硫黄-炭素複合体である。
【0064】
前記硫黄-炭素複合体に含まれる炭素は、多孔性炭素材で、前記硫黄が均一かつ安定的に固定され得る骨格を提供し、硫黄の低い電気伝導度を補完して電気化学的反応が円滑に進行できるようにする。
【0065】
前記多孔性炭素材は、一般に様々な炭素材質の前駆体を炭化することにより製造され得る。前記多孔性炭素材は内部に一定でない気孔を含み、前記気孔の平均直径は1ないし200nmの範囲であり、気孔度または空隙率は多孔性炭素材の総体積の10ないし90%の範囲である。万一、前記気孔の平均直径が前記範囲未満の場合、気孔サイズが分子レベルに過ぎないので硫黄の含浸が不可能であり、逆に前記範囲を超える場合多孔性炭素材の機械的強度が弱化し、電極の製造工程に適用するに好ましくない。
【0066】
前記多孔性炭素材の形態は、球形、棒形、針状、板状、チューブ型、またはバルク型であって、リチウム二次電池において通常用いられるものであれば制限なく用いることができる。
【0067】
前記多孔性炭素材は多孔性構造であるか、比表面積の高いものであって、当業界において通常用いられるものであればいずれもかまわない。例えば、前記多孔性炭素材としてはグラファイト(graphite);グラフェン(graphene);デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などのカーボンナノチューブ(CNT);グラファイトナノファイバー(GNF)、カーボンナノファイバー(CNF)、活性化カーボンファイバー(ACF)などの炭素繊維;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛;及び活性炭素からなる群から選択された1種以上であるが、これに限らない。
【0068】
前記硫黄-炭素複合体の製造方法は本発明において特に限定せず、当業界において通常用いられる方法を用いることができる。
【0069】
前記正極は前記正極活物質以外に遷移金属元素、IIIA族元素、IVA族元素、これらの元素の硫黄化合物、及びこれらの元素と硫黄の合金の中から選択される1つ以上の添加剤をさらに含むことができる。
【0070】
前記遷移金属元素としてはSc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、AuまたはHgなどが含まれ、前記IIIA族元素としてはAl、Ga、In、Tiなどが含まれ、前記IVA族元素としてはGe、Sn、Pbなどが含まれる。
【0071】
前記導電材は、電解液と正極活物質とを電気的に連結させ、集電体(current collector)から電子が正極活物質まで移動する経路の役割を果たす物質であって、導電性を有するものであれば制限なく用いることができる。
【0072】
例えば、前記導電材としては天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;スーパーP(Super-P)、デンカブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;カーボンナノチューブ、フラーレンなどの炭素誘導体;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン;アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末またはポリアニリン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリピロールなどの伝導性高分子を単独または混合して用いることができる。
【0073】
前記バインダーは正極活物質を正極集電体に維持させ、正極活物質の間を有機的に連結してこれらの間の結着力をより高めるもので、当該業界において公知の全てのバインダーを用いることができる。
【0074】
例えば、前記バインダーはポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVdF)またはポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)を含むフッ素樹脂系バインダー;スチレン-ブタジエンゴム(Styrene butadiene rubber、SBR)、アクリロニトリル-ブチジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムを含むゴム系バインダー;カルボキシメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose、CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロースを含むセルロース系バインダー;ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)を含むポリアルコール系バインダー;ポリアクリル酸(polyacrylic acid、PAA)を含むポリアクリル系バインダー;ポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィン系バインダー;ポリイミド系バインダー;ポリエステル系バインダー;及びシラン系バインダー;からなる群から選択された1種、2種以上の混合物または共重合体を用いることができる。
【0075】
前記正極の製造方法は本発明において特に限定せず、当業界において通常用いられる方法を用いることができる。一例として、前記正極は正極スラリー組成物を調製した後、これを前記正極集電体の少なくとも一面に塗布することで製造されたものである。
【0076】
前記正極スラリー組成物は前述のところの正極活物質、導電材及びバインダーを含み、その他の溶媒をさらに含むことができる。
【0077】
前記溶媒としては正極活物質、導電材及びバインダーを均一に分散することができるものを用いる。このような溶媒としては水系溶媒として水が最も好ましく、この際、水は蒸留水(distilled water)、脱イオン水(deionzied water)である。ただし、必ずしもこれに限定されるものではなく、必要な場合、水と容易に混合可能な低級アルコールを用いることができる。前記低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどがあり、好ましくはこれらは水とともに混合して用いることができる。
【0078】
前記正極において硫黄のローディング量は、1ないし10mAh/cm2、好ましくは1ないし6mAh/cm2である。
【0079】
前記負極は負極集電体及び前記負極集電体の一面または両面に塗布された負極活物質層を含むことができる。または前記負極はリチウム金属板である。
【0080】
前記負極集電体は負極活物質層の支持のためのものであり、電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限せず、銅、アルミニウム、ステンレススチール、亜鉛、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、鉄、クロム、これらの合金及びこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。前記ステンレススチールはカーボン、ニッケル、チタンまたは銀で表面処理することができ、前記合金としてはアルミニウム-カドミウム合金を用いることができ、その他にも焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子、または伝導性高分子などを用いることもできる。一般に、負極集電体としては銅薄板を適用する。
【0081】
また、その形態は、表面に微細な凹凸が形成された/未形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など様々な形態が用いられる。
【0082】
前記負極活物質層は、負極活物質以外に導電材、バインダーなどを含むことができる。この際、前記導電材及びバインダーは前述した内容にしたがう。
【0083】
前記負極活物質は、リチウム(Li+)を可逆的に挿入(intercalation)または脱挿入(deintercalation)できる物質、リチウムイオンと反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質、リチウム金属またはリチウム合金を含むことができる。
【0084】
前記リチウムイオン(Li+)を可逆的に挿入または脱挿入することができる物質は、例えば結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの混合物である。リチウムイオン(Li+)と反応して可逆的にリチウム含有化合物を形成することができる物質は、例えば、酸化錫、窒化チタンまたはシリコンである。前記リチウム合金は、例えば、リチウム(Li)とナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、フランシウム(Fr)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ラジウム(Ra)、アルミニウム(Al)及び錫(Sn)からなる群から選択される金属の合金である。
【0085】
好ましくは、負極活物質はリチウム金属であることができ、具体的にはリチウム金属薄膜またはリチウム金属粉末の形態である。
【0086】
前記負極活物質の形成方法は特に限定されず、当業界において通常用いられる層または膜の形成方法を用いることができる。例えば、圧着、コーティング、蒸着などの方法を用いることができる。また、集電体にリチウム薄膜がない状態で電池を組立てた後、初期充電により金属板上に金属リチウム薄膜が形成される場合も本発明の負極に含まれる。
【0087】
前記電解液は、それを媒介に前記正極と負極において電気化学的酸化または還元反応を引き起こすためのものであり、前述した内容にしたがう。
【0088】
前記電解液の注入は、最終製品の製造工程及び要求物性により、リチウム-硫黄電池の製造工程のうち適切な段階で行われる。すなわち、リチウム-硫黄電池の組立て前または組立ての最終段階などで適用される。
【0089】
前記正極と負極との間には通常の分離膜が介在できる。前記分離膜は電極を物理的に分離する機能を有する物理的な分離膜であって、通常の分離膜として用いられるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に電解液のイオン移動に対して低抵抗で、かつ電解液含湿能に優れるものが好ましい。
【0090】
また、前記分離膜は、前記正極と負極とを互いに分離または絶縁させ、正極と負極との間にリチウムイオン輸送を可能にするもので、多孔性非伝導性または絶縁性物質からなり得る。前記分離膜は通常、リチウム-硫黄電池において分離膜として用いられるものであれば、特に制限なく使用可能である。前記分離膜はフィルムのような独立した部材であってもよく、正極及び/または負極に付加されたコーティング層であってもよい。
【0091】
前記分離膜は多孔性基材からなり得るが、前記多孔性基材は通常リチウム二次電池に用いられる多孔性基材であれば全て使用可能であり、多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して用いることができ、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布またはポリオレフィン系多孔性膜を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0092】
前記多孔性基材の材質としては、本発明において特に限定せず、通常リチウム二次電池に用いられる多孔性基材であれば全て使用可能である。例えば、前記多孔性基材は、ポリエチレン(polyethylene)、ポリプロピレン(polypropylene)などのポリオレフィン(polyolefin)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephthalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate)などのポリエステル(polyester)、ポリアミド(polyamide)、ポリアセタール(polyacetal)、ポリカーボネート(polycarbonate)、ポリイミド(polyimide)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone)、ポリエーテルスルホン(polyethersulfone)、ポリフェニレンオキシド(polyphenyleneoxide)、ポリフェニレンスルファイド(polyphenylenesulfide)、ポリエチレンナフタレン(polyethylenenaphthalate)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、セルロース(cellulose)、ナイロン(nylon)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(poly(p-phenylene benzobisoxazole)及びポリアリレート(polyarylate)からなる群から選択された1種以上の材質を含むことができる。
【0093】
前記多孔性基材の厚さは特に限定されないが、1ないし100μm、好ましくは5ないし50μmである。前記多孔性基材の厚さ範囲が前述の範囲に限定されるものではないが、厚さが前述の下限より薄すぎる場合には機械的物性が低下し、電池の使用中に分離膜が容易に損傷されることがある。
【0094】
前記多孔性基材に存在する気孔の平均直径及び気孔度また特に限定されないが、それぞれ0.1ないし50μm及び10ないし95%である。
【0095】
本発明によるリチウム二次電池は、一般的な工程である巻取り(winding)以外にも、分離膜と電極との積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0096】
前記リチウム二次電池の形状は特に限定されず、円筒形、積層型、コイン形など様々な形状とすることができる。
【0097】
以下、本発明の理解に役立つために好ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであるだけで、本発明がこれに限定されるものではない。
【0098】
実施例:リチウム-硫黄電池の製造
リチウム-硫黄電池用電解液の製造:製造例1ないし7
[製造例1]
有機溶媒である1,3-ジオキソラン(1,3-dioxolane)と1,2-ジメトキシエタン(1,2-dimethoxyethane)を1:1の体積比(v/v)で混合及び添加剤としてメチルトリフルオロアセテート(methyl trifluoro acetate)0.005重量%を添加し、1Mのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)と1重量%のLiNO3を溶解してリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0099】
[製造例2ないし7]
添加剤であるメチルトリフルオロアセテートの添加重量比を下記表1のように異にしたことを除いては、前記製造例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池用電解液を製造した。
【0100】
【0101】
リチウム-硫黄電の製造:実施例1ないし6及び比較例1
[実施例1]
水を溶媒とし、正極活物質と硫黄-炭素複合体、導電材及びバインダーを87.5:5:7.5の割合で混合して正極活物質スラリーを製造した。この際、硫黄-炭素複合体は、硫黄と炭素ナノチューブ(CNT)を75:25の重量比で混合して製造した。また導電材としてはデンカブラックを、バインダーとしてはスチレン-ブタジエンゴム/カルボキシメチルセルロース(SBR:CMC=70:30、重量比)を混合して、正極活物質スラリー組成物を製造した。
【0102】
前記正極活物質スラリーをアルミニウム集電体の一面に塗布した後、100℃で乾燥した後圧延して気孔度68%及びローディング量5.6mAh/cm2の正極を製造した。
【0103】
負極としては厚さ45μmのリチウム金属を用いた。
【0104】
前記製造された正極と負極とを対面するように位置させた後に、厚さ16μm及び気孔度45%のポリエチレン分離膜を正極と負極との間に介在して電極組立て体を製造した。その後、前記電極組立て体をケース内部に位置させた後、ケース内部へ前記製造例1のリチウム二次電池用電解液を注入してリチウム-硫黄電池を製造した。
【0105】
[実施例2ないし6]
リチウム二次電池用電解液として前記製造例2ないし6の電解液を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池を製造した。
【0106】
[比較例1]
リチウム二次電池用電解液として前記製造例7の電解液を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法でリチウム-硫黄電池を製造した。
【0107】
【0108】
実験例1:電池の寿命特性の評価
前記実施例1ないし6及び比較例1により製造されたリチウム-硫黄電池について、充/放電サイクルの繰り返しを通じて電池の寿命特性を評価した。評価結果は下記表3及び
図1に示す。
【0109】
具体的に、リチウム-硫黄電池に対して25℃の電池駆動温度条件においてCCモードで0.1Cで1.8Vまで放電及び0.1Cで2.5Vまで充電を2回繰り返した後、0.2Cで充電及び放電を1回繰り返し、0.3C充電/0.5C放電を200サイクルまで繰り返して電池の寿命特性を評価した。
【0110】
前記電池寿命特性評価では、0.3C充電/0.5C放電を始めるサイクルにおける放電容量対比当該サイクルにおける放電容量の割合(%)をRetentionに定義し、
図1に示し、また寿命を評価するためにRetention(%)が80%になったときのサイクル数を下記表3のように示す。
【0111】
【0112】
前記表3及び
図1の結果を通じて、電解液添加剤としてアルキルトリフルオロアセテートを一定範囲内重量比として含むリチウム-硫黄電池の場合、サイクルが繰り返されても容量維持率が高く維持される優れた寿命特性を有することを確認することができた。
【0113】
具体的に、実施例2ないし5のように電解液の総重量対比0.01ないし0.9重量%のアルキルトリフルオロアセテートを電解液添加剤として添加する場合には、リチウム負極表面において効率的な剥離(stripping)/蒸着(plating)過程が進行し、少なくとも73サイクルに達してから80%のRetentionに達することが分かった。特に実施例2ないし4のように0.01ないし0.8重量%のアルキルトリフルオロアセテートを添加剤として添加した場合には、110サイクルに達してこそ80%のRetentionに達したことが分かった。
【0114】
一方、比較例1のように電解液中にアルキルトリフルオロアセテート添加剤を全く添加していないリチウム-硫黄電池の場合、71サイクル前に既に80%Retentionに達して容量維持率が相対的に低下することが確認できた。また、電解液にアルキルトリフルオロアセテートを添加しても、添加量が0.9重量%を超える実施例6の場合には、51サイクル前に既に80%Retentionに達して充・放電による容量維持率が著しく低下することを確認することができた。
【0115】
特に、添加剤としてアルキルトリフルオロアセテートを0.01ないし0.4重量%で含む実施例2の場合には、158サイクルに達した後にようやく80%Retentionに到達し、著しく優れた寿命特性を有することを確認することができた。
【0116】
実験例2:1H-NMRスペクトル測定
実施例1ないし6及び比較例1によって製造されたリチウム-硫黄電池用電解液内の前記化学式1で表される化合物であるアルキルトリフルオロアセテートが含まれているか否かを確認するために、1H-NMR(300MHz、CDCl3、標準物質(TMS)スペクトルを測定した。
【0117】
【0118】
前記表4の1H-NMR Peakを通じて、実施例1ないし6のリチウム-硫黄電池用電解液は、メチルトリフルオロアセテートを添加剤として含むことを確認することができた。
【0119】
一方、比較例1の1H-NMRスペクトルは、前記1H-NMR Peakを示さない点で、リチウム-硫黄電池用電解液内にメチルトリフルオロアセテート添加剤を含まないことを確認することができた。
【0120】
本発明の単なる変形ないし変更はすべて本発明の範囲に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付の特許請求の範囲によって明確になる。