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特許7522304電動自転車に電気駆動部を固定するための固定器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電動自転車に電気駆動部を固定するための固定器具
(51)【国際特許分類】
   B62K 19/30 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B62K19/30
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2023513609
(86)(22)【出願日】2021-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2021073046
(87)【国際公開番号】W WO2022043182
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】102020210864.1
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】フライシャー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ハオイサーマン,コンラート
(72)【発明者】
【氏名】ディクメンリ,エルドガン
(72)【発明者】
【氏名】フント,ハラルト
(72)【発明者】
【氏名】シッパーゲス,ヤニス-イェレミアス
(72)【発明者】
【氏名】ヤルチン,メフメト
(72)【発明者】
【氏名】ニーベル,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】デリング,ローランド
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ジークムント
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト,シュテファン
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197132(JP,A)
【文献】特開2001-071982(JP,A)
【文献】特開平10-259811(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102017201617(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0054785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 1/00 - 25/32
F16C 1/00 - 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの互いに向かい合う穴(31,32)を有する中空部品(3)に装置(2)を固定するために適応された固定器具であって、
- 前記穴のうち第1の穴(31)に通されるよう適応されているヘッド(40)付きの第1のネジ(4)と、
- 前記第1のネジ(4)を収容するよう適応されているスライドスリーブ(6)とを含み、前記スライドスリーブ(6)が、前記中空部品(3)および/または前記装置(2)に対して相対的に変位可能である、固定器具において、
- 前記スライドスリーブ(6)が、公差のある外径を有し、
- 前記スライドスリーブ(6)が、前記穴のうち第2の穴(32)において前記第1のネジ(4)を収容するよう適応されており、かつ
- 前記スライドスリーブの前記外径においてすきまばめ(9)が形成されており、前記スライドスリーブが前記第1のネジの軸方向(X-X)に変位可能である、
固定器具
【請求項2】
前記スライドスリーブが、前記第2の穴(32)内で、前記第1のネジの軸方向(X-X)に変位可能である、請求項1に記載の固定器具。
【請求項3】
前記スライドスリーブ(6)が、前記第1のネジ(4)を収容するための雌ネジ(63)を有する、請求項1または2に記載の固定器具。
【請求項4】
第2のネジ(5)をさらに含み、
- 前記第1のネジ(4)が、雌ネジ(43)付きの止まり穴(42)を有し、かつ前記第2のネジ(5)が、前記止まり穴(42)の前記雌ネジ(43)とネジ結合するために適応されている雄ネジ(51)を有し、または
- 前記第1のネジ(4)が雄ネジを有し、かつ前記第2のネジ(5)が、前記第1のネジ(4)の前記雄ネジを収容するよう適応されている雌ネジ付きの止まり穴を有し、請求項1または2に記載の固定器具。
【請求項5】
前記第1のネジ(4)の長さが前記第2のネジ(5)の長さより大きい、請求項4に記載の固定器具。
【請求項6】
前記スライドスリーブ(6)が前記第2の穴(32)内に配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の固定器具。
【請求項7】
前記スライドスリーブ(6)が、本体(60)および内フランジ(61)を有し、前記本体(60)が、前記内フランジ(61)とは違う材料から製造されており、かつ前記本体(60)が、前記内フランジ(61)より低い硬度を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の固定器具。
【請求項8】
前記スライドスリーブ(6)がさらに外フランジ(62)を有する、請求項に記載の固定器具。
【請求項9】
前記外フランジ(62)が前記内フランジ(61)と同じ材料から製造されている、請求項8に記載の固定器具。
【請求項10】
前記外フランジ(62)および前記内フランジ(61)が、前記本体(60)と固定的に結合されているかまたは前記本体(60)に無固定で当接されている穴あき円板として形成されている、請求項8または9に記載の固定器具。
【請求項11】
前記すきまばめ(9)が前記本体(60)の外周面において形成されている、請求項10のいずれか一項に記載の固定器具。
【請求項12】
第1のブッシュ(7)および第2のブッシュ(8)をさらに含み、前記第1のネジ(4)が前記第1のブッシュ(7)および前記第2のブッシュ(8)に通されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の固定器具。
【請求項13】
前記第1のブッシュ(7)が内ブッシュ(70)および外ブッシュ(71)を有し、かつ/または
- 前記第2のブッシュ(8)が内ブッシュ(80)および外ブッシュ(81)を有し、かつ
- 前記内ブッシュ(70,80)が前記外ブッシュ(71,81)とは違う材料から製造されている、請求項12に記載の固定器具。
【請求項14】
前記内ブッシュ(70,80)の硬度が前記外ブッシュ(71,81)の硬度より大きい、請求項13に記載の固定器具。
【請求項15】
前記第2のブッシュ(8)が雌ネジ(82)を有し、かつ前記第1のネジ(4)が、前記第2のブッシュ(8)の前記雌ネジ(82)と噛み合う雄ネジ(41)を有する、請求項13または14に記載の固定器具。
【請求項16】
前記第1のブッシュ(7)および前記第2のブッシュ(8)がそれぞれその端部の一方で、外側に向けられたフランジを有する、請求項1315のいずれか一項に記載の固定器具。
【請求項17】
前記第1のブッシュ(7)および前記第2のブッシュ(8)がそれぞれその端部の一方で、外側に向けられたフランジを有し、前記フランジが、前記内ブッシュおよび前記外ブッシュによって形成されている、請求項1315のいずれか一項に記載の固定器具。
【請求項18】
中心開口部(12a)を有する鋼線メッシュに由来する減衰要素(12)をさらに含み、少なくとも前記第1のネジ(4)が前記減衰要素(12)に通されている、請求項1~17のいずれか一項に記載の固定器具。
【請求項19】
装置(2)と、2つの互いに向かい合う穴(31,32)を備えた中空部品(3とを含み、請求項1~18のいずれか一項に記載の固定器具を含む、車両。
【請求項20】
前記装置(2)が電気駆動部である、請求項19に記載の車両。
【請求項21】
前記中空部品(3)がフレームまたはフレーム部品である、請求項19または20に記載の車両。
【請求項22】
前記車両が電動自転車である、請求項19~21のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの互いに向かい合う穴を有する中空部品に、例えば自転車の中空フレームに、装置を固定できるよう適応されている固定器具に関する。本発明はとりわけ、自転車フレームに電気駆動部を固定するための固定器具と、電動自転車の中空フレーム部品に電気駆動部を固定するためにこのような固定器具を備えた電動自転車とに関する。
【背景技術】
【0002】
固定器具を使って部品を固定する場合にはしばしば、場合によっては互いに矛盾する異なる観点に注意が払われるべきである。とりわけ自転車フレームに電気駆動部を取り付ける場合には特殊な要求が生じる。第一に、固定器具により、寿命全体にわたって機械的安定性が達成されなければならない。さらに、電気駆動部のメカニカルインタフェースと、中空フレームまたは開放的な保持部またはその類似物との間の公差補正が可能にされなければならない。自転車フレームに電気駆動部を固定するには、通常は、2つの互いに向かい合う穴に通される一続きのネジが使用される。この場合、公差補正は、一続きのネジとフレームの間のインタフェースの領域内の弾性変形によって行われる。しかしながらこれは、このシステムに機械的応力を加える。さらなる問題領域は、中空部品としてのフレームが共振体を形作り、その結果、動作中の電気駆動部によって発生する騒音が中空フレームによって増強されること、または電動自転車を振動させることにある。このことから、中空部品における装置の、とりわけ自転車フレームまたはその類似物における電気駆動部の改善された固定を実現することが望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
これに対し、請求項1の特徴を有する本発明による固定器具は、一方では、固定されるべき部品の寿命にわたって高い機械的安定性が達成され、かつ固定されるべき装置と中空部品との間のメカニカルインタフェースにおける公差補正も可能であるという利点を有する。さらに、本発明による固定器具は小さな所要面積しか有せず、そのうえ、固定されるべき装置が動作中に騒音を発生させ、この騒音が共振体としての中空部品によって増強され得る場合の騒音軽減も可能にする。これは本発明によれば、2つの互いに向かい合う穴を備えた中空部品に装置を固定するための固定器具が、ヘッド付きの第1のネジおよびスライドスリーブを有することによって達成される。ヘッド付きの第1のネジは、少なくとも、両方の穴のうち第1の穴に通されるよう適応されている。スライドスリーブは、例えば両方の穴のうち第2の穴内で第1のネジを収容するよう適応されており、このスライドスリーブは、中空部品および/または固定されるべき装置に対して相対的に変位可能である。したがってスライドスリーブにより、簡単で確実なやり方で公差補正が実現され得る。スライドスリーブは、第1のネジを固定するために使用されるか、または代替策として、第1のネジに対する対向要素、例えば第2のネジもしくはナットもしくはその類似物のための中間部品としても使用され得る。
【0004】
引用形式請求項は本発明の好ましい変形形態を示している。
固定されるべき装置が自転車の電気駆動部であり、中空部品がフレームまたはフレーム部品であることが好ましい。
【0005】
固定器具が、中空部品内の穴のうち第1の穴に通されるよう適応されたヘッド付きの第1のネジを含むことが好ましい。さらに、穴のうちのもう一方の穴において第1のネジを収容するよう適応されている、公差のある外径を備えたスライドスリーブが企図されている。このスライドスリーブの外径は、第1のネジが配置されていないもう一方の穴とのすきまばめが存在するように選択されている。このすきまばめが、固定器具の必要な機械的安定性を保ちながら、簡単で確実な公差補正を可能にする。さらに、固定されるべき装置が動作中に騒音を発生させる場合、スライドスリーブによって騒音軽減の可能性が提供されており、これは例えば自転車の電気駆動部の場合に可能である。
【0006】
スライドスリーブが第1のネジを収容するための雌ネジを有することが好ましく、かつ第1のネジが、スライドスリーブの雌ネジと噛み合い得る雄ネジを有することが好ましい。これにより、固定器具の最少の部品数およびとりわけ小さな所要面積および少ない重量が実現され得る。
【0007】
固定器具がさらに、第1のネジと好ましくは直接的にまたはその代わりに間接的に結合されている第2のネジを含むことがさらに好ましい。第1のネジが雌ネジ付きの止まり穴を有することが好ましく、この止まり穴は、雄ネジ付きの第2のネジを収容するよう適応されている。代替策として、第2のネジが雌ネジ付きの止まり穴を有し、この止まり穴が、相応に形作られた雄ネジを備えた第1のネジを収容するよう適応されている。止まり穴の代わりに通り穴が設けられていてもよい。
【0008】
第1のネジの形態は、第1のネジが第2のネジより長いことが特に好ましい。これに関し、第1のネジが中空部品内の穴のうち第1の穴も第2の穴も通り抜ける長さを有するように、第1のネジが形成されていることが特に好ましい。
【0009】
スライドスリーブが、本体および内フランジを有することがさらに好ましい。これに関し、本体と内フランジは2つの異なる材料から製造されている。この本体が、とりわけすきまばめされるよう、スライドスリーブの外径を規定する。内フランジは本体より硬い材料から形成されている。内フランジが金属材料から、本体がプラスチック材料から製造されていることが好ましい。
【0010】
スライドスリーブがさらに外フランジを有することがさらに好ましい。外フランジは好ましくは内フランジと同じ材料から製造されている。内フランジおよび外フランジが、穴あき円板またはワッシャーとして製造されていることが特に好ましい。これに関し本体は内フランジと外フランジの間に配置されている。内フランジが本体より大きな外径を有することが好ましい。外フランジが本体より小さな直径を有することが好ましい。外フランジおよび内フランジは本体と固定的に結合されてもよく、または代替策として、外フランジおよび内フランジは無固定で本体に当接されているだけである。これに関し、固定器具を取り付ける際に外フランジおよび内フランジが中空円筒形の本体の端面に押し付けられ、本体は、公差補正および固定を実施するために弾性変形する。
【0011】
固定器具が第1のブッシュおよび第2のブッシュを含むことがさらに好ましく、これに関し、第1のネジは第1および第2のブッシュに通されている。
第1のブッシュが内ブッシュおよび外ブッシュを有することが好ましく、この内ブッシュと外ブッシュは異なる材料から製造されている。内ブッシュが外ブッシュより硬い材料から製造されていることが好ましい。同じように、第2のブッシュが内ブッシュおよび外ブッシュを有することが好ましく、内ブッシュと外ブッシュは異なる材料で製造されている。第2のブッシュでは、内ブッシュが、第1のネジの雄ネジと噛み合うよう適応されている雌ネジを有することがさらに好ましい。
【0012】
第1のブッシュおよび第2のブッシュがそれぞれ外側に向けられたフランジを有することが特に好ましい。この外側に向けられたフランジが内ブッシュにも外ブッシュにも設けられていることが特に好ましい。
【0013】
第1および第2のブッシュの内ブッシュの材料が、硬質弾性素材、とりわけ金属であることが好ましい。第1および第2のブッシュの外ブッシュの材料が、軟質弾性素材、とりわけプラスチックであることが好ましい。
【0014】
本発明のさらなる好ましい一形態によれば、固定器具がさらに、鋼線メッシュに由来する第1および/または第2の中間要素を含み、この中間要素の各々が中心開口部を有する。中間要素がブッシュ状に形成されていることが好ましく、第1のネジおよび/または第2のネジは、中間要素の中心開口部に通されている。
【0015】
本発明はさらに、本発明による固定器具を備えた車両、とりわけ電動自転車に関する。
以下に、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい例示的実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の例示的実施形態に基づく自転車フレームにおける電気駆動部の固定器具の概略断面図である。
図2】本発明の第2の例示的実施形態に基づく自転車フレームにおける電気駆動部の固定器具の概略断面図である。
図3】本発明の第3の例示的実施形態に基づく自転車フレームにおける電気駆動部の固定器具の概略断面図である。
図4図3の鋼線メッシュに由来する要素の概略透視図である。
図5】本発明の第4の例示的実施形態に基づく自転車フレームにおける電気駆動部の固定器具の概略断面図である。
図6】本発明の第5の例示的実施形態に基づく自転車フレームにおける電気駆動部の固定器具の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図1を参照しながら本発明の第1の好ましい例示的実施形態に基づく固定器具1を詳細に説明する。
固定器具1は、中空部品3に、この例示的実施形態では自転車のフレーム部品に、複数の部分からなるハウジング2a、2bを備えた装置2を、この例示的実施形態では自転車の電気駆動部を固定するために適応されている。
【0018】
図1から明らかであるように、中空部品3は、第1の穴31および第2の穴32を含む。両方の穴は、中空部品において互いに向かい合って配置されている。両方の穴の間に、貫通口20を有する装置2が配置されている。これに関し固定器具1は、装置2内の貫通口20に通されている。固定器具1は、ヘッド40付きの第1のネジ4およびスライドスリーブ6を含む。スライドスリーブ6は、第1のネジ4をとりわけ第2の穴32内で収容するよう適応されており、このスライドスリーブ6は、中空部品3および装置2に対して相対的に変位可能である。
【0019】
スライドスリーブ6は、中空円筒形の本体60、内フランジ61、および外フランジ62を含む。内フランジ61は、本体60の外径より大きな外径を有する。外フランジ62は、本体60の外径より小さな外径を有する。スライドスリーブ6は、2つの異なる材料から製造されている。これに関し本体60は軟質フレキシブル材料、例えばプラスチックから製造されている。とりわけ本体60は弾性変形可能である。内フランジ61および外フランジ62は硬質弾性材料、例えば金属から製造されている。この例示的実施形態では、内フランジ61および外フランジ62は穴あき円板として企図されている。これに関し内フランジ61および外フランジ62はそれぞれ、本体60の端面側の端部領域に当接されているだけである。
【0020】
本体60はその外径により、中空部品3の第2の穴32に対するすきまばめ9を規定する。これにより、第1のネジ4の軸方向X-Xでのスライドスリーブ6の変位が可能である。
【0021】
固定器具1はさらに第2のネジ5ならびに第1のブッシュ7および第2のブッシュ8を含む。
第2のネジ5は、ヘッド50および雄ネジ51を備えた胴部を有する。図1から分かるように、第2のネジ5の軸方向X-Xの長さは、第1のネジ4の長さより短い。これに関し、第2のネジ5は第1のネジ4より明らかに短い。第1のネジ4は、第1の穴31にも第2の穴32にも通されているような長さを有する。第1のネジ4は、雌ネジ43付きの止まり穴42をさらに有する。第2のネジ5はその雄ネジ51により、第1のネジ4の雌ネジ43にねじ込まれている。これに関し、第1のネジ4のうち止まり穴42が形成されている領域は部分的にスライドスリーブ6の内部に配置されている。
【0022】
第1のブッシュ7は、内ブッシュ70および外ブッシュ71を含む。内ブッシュ70と外ブッシュ71は異なる材料から製造されている。内ブッシュ70が金属材料から、外ブッシュ71がプラスチック材料から製造されていることが好ましい。これに関し、内ブッシュも外ブッシュもそれぞれ外側に向けられたフランジ70aまたは71aを有する(図1を参照)。第2のブッシュは、第1のブッシュ7と類似の、内ブッシュ80および外ブッシュ81を備えた構造を有する。内ブッシュ80は外側に向けられたフランジ80aを、外ブッシュ81は外側に向けられたフランジ81aを有する。第2のブッシュ8はさらに、内ブッシュ80に雌ネジ82を有する。
【0023】
図1から明らかであるように、第1のネジ4は、止まり穴42内の雌ネジ43だけでなく、これに加えて雄ネジ41も有する。雄ネジ41は、第2のブッシュ8の雌ネジ82と噛み合っている。
【0024】
図1は、固定器具1が先ずは事前の取付け状態にある固定器具1の状態を示す。この場合、第2のブッシュ8とスライドスリーブ6の間にはまだ隙間10が存在している(図1を参照)。完全に取り付けられた状態では、第2のネジ5が第1のネジ4の止まり穴42に完全にねじ込まれ、その際にスライドスリーブ6が矢印Aの方向に、第2のブッシュ8の方向に動く。これにより隙間10が閉じられる。内フランジ61の領域内のスライドスリーブ6と、フランジ80aの領域内の第2のブッシュ8とが接触するとすぐに、最終的な固定までのスライドスリーブ6の本体60の弾性変形が始まる。したがってスライドスリーブ6により、簡単で効果的なやり方での公差補正が提供され得る。
【0025】
よって固定器具1は二段階のネジ固定を可能にし、これに加え、スライドスリーブ6の本体60により、電気駆動部から中空フレームへの構造力学的伝達経路の遮音が可能にされる。これに関し固定器具1の取付けは、システム全体にさほどの応力を加えず、とりわけ、装置2から中空部品3への音響伝達経路を断つ。
【0026】
さらに、第1のブッシュ7および第2のブッシュ8はそのそれぞれの内ブッシュ70,80により、固定器具の必要なテンションが引き出される当てがい部を形作る。図1は内ブッシュ70と80の間に小さな第2の隙間11が存在している状態も示す。長い第1のネジ4により、さらに装置2が図1では左側で固定される。これにより、第1のネジ4と第2のブッシュ8の間で第1のネジ固定が提供されており、かつ第1のネジ4と第2のネジ5の間で第2のネジ固定が実現されている。したがって第2のネジ5のネジ締め工程の際には、スライドスリーブ6が、すきまばめ9の故に、隙間10が閉じるまで軸方向X-Xにおいてフランジ80aに向かって限界まで変位される。これにより、装置2と中空部品3の間の公差補正が可能にされ得る。さらなる公差補正は、両方の外ブッシュ71,81の変形および第2の隙間11が閉じることによって可能にされる。第1のネジ4内に第2のネジ5をさらにねじ込むと、この場合、上で説明したように本体60が弾性変形し、これにより、本体60が第2の穴32内で永続的に固定的に締付固定されるように、第2の穴32内で本体60が拡張される。よって固定器具1の第2の側も、フレームに固定的に係止されており、かつフレームでの電気駆動部の確実な固定が可能にされている。
【0027】
図2は、本発明の第2の例示的実施形態に基づく固定器具1を示す。同じまたは機能的に同じ部分は同じ符号で表されている。
第1の例示的実施形態とは異なり、第2の例示的実施形態の固定器具1は、雌ネジ63を有するスライドスリーブ6を有する。第1のネジ4は雄ネジ41を有する。雄ネジ41はスライドスリーブ6の雌ネジ63と噛み合っている。第1のブッシュ7および第2のブッシュ8がさらに設けられており、第2の例示的実施形態の第2のブッシュ8は雌ネジを有しない。第1および第2のブッシュ7および8はそれぞれ内ブッシュ70,80および外ブッシュ71,81を有する。この第1と第2のブッシュ7,8の軸方向の長さが異なっている。
【0028】
スライドスリーブ6と第2の穴32の間にはここでもすきまばめ9が形成されている。これにより公差補正が可能にされ得る。その代わりにスライドスリーブ6と第2の穴32の間の中間ばめが設けられていてもまたよい。これにより、第1のネジ4を締めると、スライドスリーブ6が第2のブッシュ8のフランジ80aに接触するまで、スライドスリーブ6が軸方向において装置2の方向に変位される。この場合、接触した時点から、中空部品3に装置2を固定するためのプリロードが発生する。
【0029】
図3および図4は、本発明の第3の例示的実施形態に基づく固定器具1を示す。同じまたは機能的に同じ部分は前出の例示的実施形態と同じ符号で表されている。
第3の例示的実施形態は、追加的にさらに、装置2と中空部品3の間に配置されている減衰要素12を有する。減衰要素12はより正確には、図4から明らかであるように中心開口部12aを備えた円板状の部品であり、自転車フレームの内側で左右に配置されている。したがって減衰要素12は、第1のブッシュ7と自転車フレームの間または第2のブッシュ8と自転車フレームの間に配置されている。減衰要素12は鋼線メッシュから製造されている。減衰要素12の減衰の程度および剛性は、メッシュおよび予め決定される加圧度合いによって的確に調整され得る。したがって、この編まれた減衰要素12の使用により、熱的結合も電気的結合も実現可能である。減衰要素12は、とりわけ振動減衰のために、および装置2から中空部品3に伝達される騒音低減のために役立つ。これにより、とりわけ自転車の電気駆動部からの自転車フレームのデカップリングが可能にされ得る。金属として、CrNiまたは相応の合金が使用されることが好ましい。これは、長い寿命および高い負荷耐性の利点を有する。さらにこの材料は耐老朽化性であり、これによりクリープおよび硬化が発生しない。その他の点では、この例示的実施形態は1つ前の例示的実施形態に相応しており、よってそこで述べた説明を参照することができる。
【0030】
図5は、本発明の第4の例示的実施形態に基づく固定器具1を示す。同じまたは機能的に同じ部分はここでも前出の例示的実施形態と同じ符号で表されている。
第4の例示的実施形態では、スライドスリーブ6はもう中空部品3内ではなく装置2内に配置されている。これに関し、図5から明らかであるように、2つのスライドスリーブ6が設けられている。さらにスライドスリーブ6はそれぞれ雌ネジ63を有する。この雌ネジ63はそれぞれ第1のネジ4の雄ネジ41または第2のネジ5の雄ネジ51と噛み合っている。スライドスリーブ6が、中空部品3と装置2の間の公差を補正し得る。このスライドスリーブ6はそれぞれ、装置2内にすきまばめ9で配置されている。これに関し、隙間腐食を防止するため、装置2の収容開口部内に潤滑油が施されることが好ましい。これにより、構造が非常に単純な固定器具1において公差補正が可能にされ得る。
【0031】
図6は、本発明の第5の例示的実施形態に基づく固定器具1を示す。同じまたは機能的に同じ部分は前出の例示的実施形態と同じ符号で表されている。第5の例示的実施形態は、第3の例示的実施形態のように、図4に示されたような鋼線メッシュに由来する減衰要素12を有する。減衰要素12は、装置2と中空部品3の音響デカップリングを可能にする。2つのスライドスリーブ6は、第4の例示的実施形態のように装置2内で相応の孔またはその類似物内に配置されている。第1のネジ4または第2のネジ5はそれぞれ、第4の例示的実施形態のように装置2内のスライドスリーブ6の一方にねじ込まれている。このねじ込み工程中に、ここでもスライドスリーブ6の軸方向の変位によって公差補正が可能にされ得る。その他の点では、この例示的実施形態は前出の例示的実施形態に相応しており、よってそこで述べた説明を参照することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6