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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/16 20060101AFI20240717BHJP
   F02C 5/10 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F23R3/16
F02C5/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023525838
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 JP2022022050
(87)【国際公開番号】W WO2022255334
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2021091370
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 浩武
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寿恭
(72)【発明者】
【氏名】堀川 敦史
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0019602(US,A1)
【文献】特開2004-183944(JP,A)
【文献】特表2004-509313(JP,A)
【文献】米国特許第05644918(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/16
F02C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を画定する筒体であって、軸線方向の第1側から第2側に向けて延び、前記軸線方向の前記第2側に排出口を画定する筒体と、
前記燃焼室に空気を供給するための空気流路と、
前記空気流路に開口する少なくとも1つの開口と前記開口に連通する共鳴室とを有する少なくとも1つのレゾネータと、
整流孔を有する整流板と、を備え、
前記空気流路は、
前記筒体の外周面に沿っている上流領域と、
前記筒体の内周面に沿っていて、前記燃焼室に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記燃焼室に連通した下流領域と、
前記筒体の径方向において前記上流領域を前記下流領域に接続する方向転換領域であって、前記上流領域と前記方向転換領域との間で前記軸線方向に直交する断面積の変化を伴って前記上流領域に隣接する方向転換領域と、を含み、
前記レゾネータの前記開口は、前記空気流路のうち前記上流領域よりも下流の空間に開口しており
前記整流板は、前記空気流路のうち前記上流領域よりも下流の前記空間を、プレ整流空間とポスト整流空間とに区切り、
前記少なくとも1つのレゾネータの前記開口は、前記ポスト整流空間に開口している、ガスタービン燃焼器。
【請求項2】
燃焼室を画定する筒体であって、軸線方向の第1側から第2側に向けて延び、前記軸線方向の前記第2側に排出口を画定する筒体と、
前記燃焼室に空気を供給するための空気流路と、
前記空気流路に開口する少なくとも1つの開口と前記開口に連通する共鳴室とを有する少なくとも1つのレゾネータと、を備え
前記空気流路は、
前記筒体の外周面に沿っている上流領域と、
前記筒体の内周面に沿っていて、前記燃焼室に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記燃焼室に連通した下流領域と、
前記筒体の径方向において前記上流領域を前記下流領域に接続する方向転換領域であって、前記上流領域と前記方向転換領域との間で前記軸線方向に直交する断面積の変化を伴って前記上流領域に隣接する方向転換領域と、を含み、
前記レゾネータの前記開口は、前記空気流路のうち前記上流領域よりも下流の空間に開口しており、
前記少なくとも1つのレゾネータは、前記筒体に配置された第1レゾネータを含み、
前記第1レゾネータの前記開口は、前記空気流路のうち前記下流領域に開口しており、
前記第1レゾネータは、前記筒体のうち前記第1レゾネータと前記軸線方向に隣接する部分よりも前記上流領域に突出している、ガスタービン燃焼器。
【請求項3】
前記第1レゾネータは、前記筒体の外周面に嵌合された円筒状の中空部材であるレゾネータ本体を有し、
前記第1レゾネータの前記開口は、前記レゾネータ本体の内周壁及び前記筒体に形成された貫通孔である、請求項2に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項4】
前記筒体を収容するケーシングを更に備え、
前記ケーシングは、前記レゾネータと前記径方向に対向する部分において前記径方向の外側に向けて拡径した膨出部を有する、請求項2又は3に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項5】
燃焼室を画定する筒体であって、軸線方向の第1側から第2側に向けて延び、前記軸線方向の前記第2側に排出口を画定する筒体と、
前記燃焼室に空気を供給するための空気流路と、
前記空気流路に開口する少なくとも1つの開口と前記開口に連通する共鳴室とを有する少なくとも1つのレゾネータと、を備え
前記空気流路は、
前記筒体の外周面に沿っている上流領域と、
前記筒体の内周面に沿っていて、前記燃焼室に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記燃焼室に連通した下流領域と、
前記筒体の径方向において前記上流領域を前記下流領域に接続する方向転換領域であって、前記上流領域と前記方向転換領域との間で前記軸線方向に直交する断面積の変化を伴って前記上流領域に隣接する方向転換領域と、を含み、
前記レゾネータの前記開口は、前記空気流路のうち前記上流領域よりも下流の空間に開口しており、
前記少なくとも1つのレゾネータは、前記筒体に配置された第1レゾネータを含み、
前記第1レゾネータの前記開口は、前記空気流路のうち前記下流領域に開口しており、
前記第1レゾネータは、前記筒体のうち前記第1レゾネータと前記軸線方向に隣接する部分よりも前記下流領域に突出している、ガスタービン燃焼器。
【請求項6】
前記少なくとも1つのレゾネータは、第2レゾネータを含み、
前記第2レゾネータの前記開口は、前記方向転換領域に開口している、請求項1乃至のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項7】
前記筒体に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記空気流路に面する内面を有するエンドプレートを更に備え、
前記第2レゾネータは、前記エンドプレートに配置されている、請求項6に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項8】
前記筒体を収容するケーシングを更に備え、
前記ケーシングと前記筒体との間に、前記上流領域を含む空気導入路があり、
前記筒体は、前記燃焼室を画定する第1筒と、前記軸線方向の前記第1側にて前記第1筒に隣接し、前記下流領域を含む空気室を画定する第2筒を有し、
前記少なくとも1つのレゾネータの前記開口は、前記空気室に開口している、請求項1乃至のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項9】
前記筒体を収容するケーシングを更に備え、
前記少なくとも1つのレゾネータの前記共鳴室は、前記ケーシングの外部に配置されている、請求項1乃至のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項10】
前記少なくとも1つの開口は、前記軸線方向に並んで且つ前記軸線方向周りの周方向に並んだ複数の開口を含み、
前記少なくとも1つのレゾネータは、前記複数の開口のそれぞれに連通する複数の空洞に前記共鳴室を分割する仕切板であって、前記共鳴室を前記周方向に分割する仕切板を有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項11】
前記仕切板は、前記共鳴室を更に前記軸線方向又は前記径方向に分割している、請求項1に記載のガスタービン燃焼器。
【請求項12】
前記筒体は、前記方向転換領域をバイパスして前記下流領域を前記上流領域に連通させるリーク孔を有する、請求項1乃至のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスタービンエンジンの燃焼器に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼に起因した振動を低減するためにレゾネータを搭載したガスタービン燃焼器が知られている。特許文献1では、燃焼室を画定する燃焼筒にレゾネータが取り付けられ、当該レゾネータの共鳴室は燃焼室に開口している。特許文献2では、燃焼室を画定する燃焼筒の径方向外側に配置されたフロースリーブにレゾネータが取り付けられ、当該レゾネータの共鳴室は、フロースリーブが画定する空気流路に開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-159533号公報
【文献】特開2013-234833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、燃焼室の熱が直接的に共鳴室に伝達され、レゾネータが高温になる。レゾネータを特別に冷却して冷却分を補うように燃焼温度を高めると、NOxが増加し得る。特許文献2の構成では、燃焼室からレゾネータに伝達される熱は低減されるが、振動低減の点で改良の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係るガスタービン燃焼器は、燃焼室を画定する筒体であって、軸線方向の第1側から第2側に向けて延び、前記軸線方向の前記第2側に排出口を画定する筒体と、前記燃焼室に空気を供給するための空気流路と、前記空気流路に開口する少なくとも1つの開口を含む少なくとも1つのレゾネータと、を備える。前記空気流路は、前記筒体の外周面に沿っている上流領域と、前記筒体の内周面に沿っていて、前記燃焼室に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記燃焼室に連通した下流領域と、前記筒体の径方向において前記上流領域を前記下流領域に接続する方向転換領域であって、前記上流領域と前記方向転換領域との間で前記軸線方向に直交する断面積の変化を伴って前記上流領域に隣接する方向転換領域と、を含む。前記開口は、前記空気流路のうち前記上流領域よりも下流の空間に開口している。
【0006】
本開示の一態様に係るガスタービン燃焼器は、燃焼室を画定する筒体であって、軸線方向の第1側から第2側に向けて延び、前記軸線方向の前記第2側に排出口を画定する筒体と、前記燃焼室に空気を供給するための空気流路と、を備える。前記空気流路は、前記筒体の外周面に沿っている上流領域と、前記筒体の内周面に沿っていて、前記燃焼室に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記燃焼室に連通した下流領域と、前記筒体の径方向において前記上流領域を前記下流領域に接続する方向転換領域と、を含む。前記筒体は、前記方向転換領域をバイパスして前記下流領域を前記上流領域に連通させるリーク孔を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、特別な冷却構造を不要にでき、燃焼に起因した振動を効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ガスタービンエンジンの概略図である。
図2図2は、第1実施形態の燃焼器の断面斜視図である。
図3図3は、図2の燃焼器の断面図である。
図4図4は、図3の燃焼器における低周波の圧力波伝播を説明する図面である。
図5図5は、図3の燃焼器における高周波の圧力波伝播を説明する図面である。
図6図6は、図3の方向転換領域における圧力波伝播の経路差を説明する図面である。
図7図7(A)は、図3のレゾネータの変形例を示す斜視図である。図7(B)は、図7(A)のVIIB-VIIB線断面図である。図7(C)は、図7(A)のVIIC-VIIC線断面図である。
図8図8(A)は、図3の燃焼器の第1変形例を示す要部断面図である。図8(B)は、図3の燃焼器の第2変形例を示す要部断面図である。図8(C)は、図3の燃焼器の第3変形例を示す要部断面図である。
図9図9は、第2実施形態の燃焼器の要部断面図である。
図10図10(A)は、図9のレゾネータの変形例を示す斜視図である。図10(B)は、図10(A)のXB-XB線断面図である。
図11図11(A)は、図9の燃焼器の第1変形例を示す要部断面図である。図11(B)は、図9の燃焼器の第2変形例を示す要部断面図である。
図12図12は、第3実施形態の燃焼器の要部断面図である。
図13図13(A)~(C)は、燃焼器の空気流路のバリエーションを示す模式図である。
図14図14は、第4実施形態の燃焼器の要部断面図である。
図15図15は、第5実施形態の燃焼器の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0010】
図1は、ガスタービンエンジン1の概略図である。図1に示すように、ガスタービンエンジン1(以下、ガスタービンと称する)は、回転軸2、圧縮機3、燃焼器4及びタービン5を備える。ガスタービン1では、圧縮機3から供給される圧縮空気が燃焼器4に導かれ、燃焼器4において燃料供給ラインから供給される燃料と圧縮機3から供給される圧縮空気との混合気が燃焼し、燃焼器4から排出される高温高圧の燃焼ガスがタービン5を駆動する。タービン5は、回転軸2を介して負荷6(例えば、発電機)及び圧縮機3に機械的に連結されている。
【0011】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態の燃焼器4の断面斜視図である。図3は、図2の燃焼器4の断面図である。なお、以下の説明では、ケーシング11及び筒体12の軸線Cが延びる方向を「軸線方向X」と称する。軸線方向Xにおいて、筒体12の排出口32とは反対側を「第1側」と称し、排出口32側を「第2側」と称する。軸線方向Xに直交する方向は、「径方向Y」と称する。軸線C周りに周状に延びる方向は、「周方向Z」と称する。
【0012】
燃焼器4(ガスタービン燃焼器とも称する)は、例えば、ガスタービン1(図2参照)の回転軸2周りに環状に並べられる複数のカン型燃焼器の1つである。なお、燃焼器4は、これに限られず、例えば燃焼器を1つだけ有するガスタービンに適用されてもよい。図2及び3に示すように、燃焼器4は、ケーシング11、筒体12、燃料噴射器13、点火器14、燃料供給構造15、空気流路16、整流板17及びレゾネータ18を備える。
【0013】
ケーシング11は、筒ケーシング21及びエンドプレート22を備える。筒ケーシング21は、筒形状を有し、軸線方向Xの第1側(図3左側)から第2側(図3右側)に向けて延びている。筒ケーシング21は、圧縮機3(図1参照)から空気Aを受け入れるように第2側に開口した空気入口30を有する。エンドプレート22は、筒体12に対して軸線方向Xの第1側に配置され、後述の空気流路16に面する内面を有する。エンドプレート22は、筒ケーシング21の第1側の開口を閉鎖し、締結具によって筒ケーシング21の第1側の端部に固定されている。
【0014】
筒体12は、ケーシング11に収容されている。筒体12の軸線Cは、ケーシング11の軸線と一致している。筒体12は、第1筒である燃焼筒23と、第2筒である支持筒24とを備える。燃焼筒23は、その内側に燃焼室31を画定している。燃焼筒23の排出口32は、第2側に開口している。支持筒24は、燃焼筒23の第1側に隣接し、燃焼筒23と同軸上に配置されている。支持筒24は、その径方向Yの内側に空気室33を画定している。燃焼筒23の材料(例えば、コバルト合金又はニッケル合金)は、支持筒24の材料(例えば、ステンレス鋼)よりも耐熱性が高い。なお、筒体12は、燃焼筒23のみとして支持筒24を省略したものとしてもよい。
【0015】
燃料噴射器13は、筒体12に収容されている。燃料噴射器13は、燃焼室31に開口した燃料噴射口13aを有する。燃料噴射口13aは、後述の燃料供給構造15から供給される燃料Fを、空気室33から供給される空気Aとともに燃焼室31に噴射するように構成されている。燃料噴射器13は、燃焼室31に対して軸線方向Xの第1側に配置されている。本実施形態では、例示として、燃料噴射器13は、燃焼筒23と支持筒24との間の境界に対応して配置され、燃焼室31と空気室33とを区分けしている。
【0016】
なお、燃料Fは、炭素含有ガス(天然ガス、プロパンガス)又は水素含有ガス(水素ガス)のような気体燃料であるが、液体燃料が用いられてもよい。また、燃料F及び空気Aは、予混合されて混合気として燃焼室31に噴射されてもよいし、燃焼室31で混合されてもよい。
【0017】
点火器14は、筒ケーシング21及び燃焼筒23を径方向Yに貫通しており、点火器14の点火部14aが燃焼室31に露出している。燃焼器4の始動時には、燃料噴射器13から燃焼室31に噴射された混合気が点火器14によって点火され、燃焼室31に火炎が発生する。燃焼室31で発生した高温高圧の燃焼ガスGは、排出口32から排出される。
【0018】
燃料供給構造15は、ケーシング11外の燃料供給ラインから供給される燃料Fを燃料噴射器13に供給できればよく、その構造は特に限定されない。本実施形態では、例示として、燃料供給構造15は、母管25と、母管25から分岐した複数の分岐管26,27とを備える。
【0019】
母管25は、筒体12の軸線C上においてエンドプレート22を貫通し、軸線方向Xに延びている。母管25の一端部は空気室33に配置され、母管25の他端部はケーシング11外に配置されている。母管25は、複数の円筒管を同心状に配置した多管構造を有し、その内部に複数の円管状の燃料供給路25a,25bが同心状に設けられている。分岐管26,27は、母管25を燃料噴射器13に接続している。分岐管26の内部は、燃料供給路25aに連通し、分岐管27の内部は燃料供給路25bに連通している。
【0020】
分岐管26,27は、母管25から径方向Yの外方に突出する部分と、燃料噴射器13に向けて軸線方向Xに延びる部分とを有する。各分岐管26,27が燃料噴射器13に接続される径方向Yの各位置は、それぞれ異なっている。各燃料供給路25a,25bの流量を調節可能な流量制御弁の開度が調節されることで、燃料噴射器13の各部位に供給される燃料Fの流量が独立に制御可能となっている。
【0021】
空気流路16は、圧縮機3(図1参照)から供給される空気Aを燃焼室31に供給するように構成されている。空気流路16は、空気入口30を始点として軸線方向Xの第1側に向けて延び、軸線方向Xの第2側に向けて折り返す逆流形状を有する。
【0022】
空気流路16は、ケーシング11の内周面と筒体12の外周面との間の隙間である空気導入路34を有する。空気導入路34は、圧縮機3(図1参照)で圧縮された空気Aを、空気入口30から導入して燃焼室31の燃焼ガスGの流れ方向と逆方向に導く。なお、空気A及び燃焼ガスGの流れ方向が同じとなる軸流型が用いられてもよい。
【0023】
支持筒24は、その第1側の部分において周方向Zに並んだ複数の空気導入口35を有する。なお、支持筒24の空気導入口は、複数の空気導入口35を包含するような大きな口であってもよい。空気導入口35は、空気導入路34を空気室33に連通させている。空気導入路34を流れた空気Aは、空気導入口35を通って、支持筒24の径方向Yの内側の空気室33に導かれる。空気室33に導かれた空気Aは、燃料噴射器13に向けて流れ、燃料噴射器13において燃料Fと混合する。
【0024】
整流板17は、支持筒24内において軸線Cに直交するように配置されている。整流板17は、空気導入口35よりも軸線方向Xの第2側に配置されている。整流板17は、その外周部が支持筒24に固定され、その内周部が母管25に外嵌された筒状ブラケットを介してエンドプレート22に固定されている。整流板17は、複数の整流孔17aを有する。整流板17は、空気室33を軸線方向Xに並ぶ2つの空間に区切っている。即ち、整流板17は、空気室33をプレ整流空間33aとポスト整流空間33bとに区切っている。
【0025】
プレ整流空間33aは、空気室33のうち第1側の空間であり、空気導入口35に隣接している。ポスト整流空間33bは、空気室33のうち第2側の空間であり、燃料噴射器13に隣接している。整流板17は、空気導入口35よりも軸線方向Xの第2側に位置している。整流板17は、空気導入口35から空気室33に導入された空気Aを燃焼室31に向かう均一な流れに整流する。なお、整流板17は省略されてもよい。
【0026】
本実施形態では、空気流路16は、空気導入路34、空気導入口35及び空気室33によって構成されているが、空気流路16は、上流領域R1と方向転換領域R2と下流領域R3とに区分けして考えることができる。
【0027】
上流領域R1は、軸線方向Xにおける空気入口30と空気導入口35との間において筒体12の外周面に沿って設けられる。上流領域R1は、空気導入路34の一部である。下流領域R3は、軸線方向Xにおける空気導入口35と燃料噴射器13との間において筒体12の内周面に沿って設けられている。下流領域R3は、空気室33の一部である。方向転換領域R2は、上流領域R1を下流領域R3に接続する。
【0028】
方向転換領域R2は、上流領域R1と方向転換領域R2との間で軸線方向Xに直交する断面積の変化を伴って上流領域R1に隣接している。上流領域R1と方向転換領域R2との間の仮想境界面Mは、軸線方向Xの第2側における空気導入口35の端Eを通過して且つ軸線方向Xに直交する仮想面である。即ち、仮想境界面Mは、空気流路16のうち上流領域R1を下流領域R3に接続すべく径方向Yに延びた流路の軸線方向Xの第2側における端Eを通過して且つ軸線方向Xに直交し、端Eの径方向Yの外側に位置する仮想面である。
【0029】
方向転換領域R2と下流領域R3との間の仮想境界面Nも、空気導入口35の端Eを通過して且つ軸線方向Xに直交する仮想面である。即ち、仮想境界面Nは、空気流路16のうち上流領域R1を下流領域R3に接続すべく径方向Yに延びた流路の軸線方向Xの第2側における端Eを通過して且つ軸線方向Xに直交し、端Eの径方向Yの内側に位置する仮想面である。整流板17は、下流領域R3に配置されている。
【0030】
レゾネータ18(第1レゾネータ)は、開口41、絞り42及び共鳴室43を備える。開口41は、空気流路16のうち仮想境界面Mよりも下流側の空間(方向転換領域R2又は下流領域R3)に面して開口している。本実施形態では、開口41は、下流領域R3に直接的に面しており、支持筒24の内周面において下流領域R3に開口している。開口41は、下流領域R3に連続している。レゾネータ18は、支持筒24の一部を利用している。絞り42は、開口41を共鳴室43に接続する流路である。共鳴室43は、絞り42よりも大きい空間である。開口41の面積、絞り42の長さ、及び、共鳴室43の容積は、減衰させたい周波数に応じて決定される。なお、支持筒24は径方向Y外側に突出し、当該突出した部分の径方向Y内側にレゾネータ18があってもよい。この場合は、下流領域R3と共鳴室43の間に、開口41及び絞り42を有する板が位置する。すなわち、支持筒24の内周面は、レゾネータ18の当該板の径方向Y内側面を利用している。
【0031】
レゾネータ18の開口41は、燃焼室31よりも上流の空気流路16に開口しているので、燃焼室に開口している場合に比べ、レゾネータ18の内部の温度が低く、レゾネータ18を特別に冷却せずに済む。それゆえ、特別な冷却構造を不要にできるうえに、冷却分を補うように燃焼温度を高める必要がなくNOxの増加を防止できる。
【0032】
空気流路16では上流領域R1と方向転換領域R2との間の境界(仮想境界面M)において、軸線方向Xに直交する断面積の変化が生じる。仮想境界面Mの下流側では、燃焼振動に起因して燃焼室31から空気流路16を逆流するように空気伝達される圧力波は、部分的に反射されたり打ち消されたりする。燃焼器4内の圧力変動を単純化して燃焼室31で発生した圧力波の伝達に注目すると、この反射作用は、空気流路16のうち上流領域R1よりも下流の空間の音圧を上流領域R1の音圧よりも高める傾向を生む。よって、空気流路16のうち上流領域R1よりも下流の空間に開口41が開口することで、燃焼室31から空気流路16に空気伝達される圧力波を効果的に吸収でき、燃焼に起因した振動を低減できる。
【0033】
図4は、図3の燃焼器4における低周波の圧力波伝播を説明する図面である。図4に示すように、周波数が比較的低い圧力波、即ち、波長が伝播空間の大きさに対して長いとみなせる圧力波について考える。この場合、燃焼室31から空気流路16を逆進する圧力波P1は、第1側に向けて軸線方向Xに沿って進み、軸線方向Xの第1側において方向転換領域R2の壁面で反射し、その反射波P2は第2側に向けて軸線方向Xに沿って進む。反射波P2は、空気導入口35の端Eで反射する成分と、それ以外の成分とに分かれる。壁面反射した成分は、方向転換領域R2に残存する。端Eで反射しない成分は、上流領域R1に進むものと、方向転換領域R2及び下流領域R3に残存するものとに分かれる。そのため、上流領域R1に伝播される圧力波は、仮想境界面Mより下流側の空間の圧力波に比べて小さくなる。即ち、方向転換領域R2及び下流領域R3の音圧の方が、上流領域R1よりも大きくなる。よって、空気流路16のうち上流領域R1よりも下流の空間に開口41が開口することで、燃焼室31から空気流路16に空気伝達される圧力波を効果的に吸収できる。
【0034】
図5は、図3の燃焼器4における高周波の圧力波伝播を説明する図面である。図5では、周波数が比較的高い圧力波、即ち、波長が伝播空間の大きさに対して短いとみなせる圧力波について考える。この場合、燃焼室31から空気流路16を逆進する圧力波は、方向転換領域R2の壁面で反射する成分P3と、方向転換領域R2の流路軸線に沿って方向転換をして上流領域R1に伝達する成分P4に分かれる。方向転換領域R2の壁面で反射する圧力波の成分P3は、方向転換領域R2及び下流領域R3に残存する(成分P3の一部は上流領域R1にも伝達し得る。)。そのため、方向転換領域R2及び下流領域R3の音圧の方が、上流領域R1よりも大きくなる。よって、空気流路16のうち上流領域R1よりも下流の空間に開口41が開口することで、燃焼室31から空気流路16に空気伝達される圧力波を効果的に吸収できる。
【0035】
図6は、図3の方向転換領域R2における圧力波伝播の経路差を説明する図面である。図6に示すように、方向転換領域R2の曲線路を圧力波が伝播するときには、曲線路における内周側の経路P5と外周側の経路P6との間に経路差が生じる。内周側の経路P5を通過する圧力波の位相と、外周側の経路P6を通過する圧力波の位相との間には、ずれが生じる。仮想境界面Mにおいては、互いに位相の異なる圧力波が重ね合わさる干渉によって圧力波が部分的に打ち消しあう。そのため、方向転換領域R2及び下流領域R3の音圧の方が、上流領域R1よりも大きくなる。よって、空気流路16のうち上流領域R1よりも下流の空間に開口41が開口することで、燃焼室31から空気流路16に空気伝達される圧力波を効果的に吸収できる。
【0036】
具体的には、レゾネータ18の開口41は、下流領域R3に面しており、下流領域R3に開口している。空気流路16は、方向転換領域R2と下流領域R3との間の仮想境界面Nにおいても軸線方向Xに直交する流路断面積が変化する。下流領域R3は、方向転換領域R2よりも燃焼室31に近い。よって、レゾネータ18の開口41が下流領域R3に開口することで、圧力波を更に効果的に吸収できる。
【0037】
更に具体的には、レゾネータ18の開口41は、ポスト整流空間33bに面しており、ポスト整流空間33bに開口している。整流板17の整流孔17aにおいても軸線方向Xに直交する流路断面積が変化し、整流板17において圧力波の部分反射が生じる。よって、レゾネータ18の開口41がポスト整流空間33bに開口することで、圧力波を更に効果的に吸収できる。
【0038】
レゾネータ18は、空気のみが流れる空気流路16に開口しているため、レゾネータ18に導入される気体が混合気のような燃料を含む気体ではない。混合気は、エンジン出力に応じて燃料含有率が変化し、その変化に応じて音速を変化させ、共鳴周波数の設計が難しくなる。レゾネータ18は空気流路16に開口しているため、そのような問題を回避することができる。なお、空気流路16に空気及び燃料の混合気が流れる構成としてもよい。
【0039】
レゾネータ18は、ケーシング11に収容され、支持筒24に設けられている。レゾネータ18は、例えば、支持筒24の外周面に嵌合されたレゾネータ本体50を有する。レゾネータ18は、支持筒24の一部とレゾネータ本体50とで構成されている。レゾネータ本体50は、円筒状の中空部材である。絞り42は、レゾネータ本体50の内周壁及び支持筒24に形成された貫通孔である。
【0040】
絞り42の径方向Yの長さは、レゾネータ本体50の内周壁の肉厚によって決定できる。開口41は、支持筒24の前記貫通孔の径方向Yの内側の開口である。開口41は、軸線方向Xに並んで且つ周方向Zに並んでいる。全ての開口41及び絞り42は、1つの共鳴室43に連通しているが、これに限られず、共鳴室43が複数の空洞に分割されてもよい。
【0041】
なお、レゾネータ18は、支持筒24の外周面の全周にわたって配置されずに、周方向Zにおいて部分的に配置されてもよい。レゾネータ本体50は、中空部材でなくてもよく、支持筒24の外周面を覆うカバー部材(レゾネータ本体50の内周壁を無くしたもの)としてもよい。その場合には、当該カバー部材の内周面と支持筒24の外周面との間の隙間を共鳴室43とすればよい。
【0042】
レゾネータ18は、支持筒24のうちレゾネータ18と軸線方向Xに隣接する部分よりも上流領域R1に突出している。即ち、レゾネータ18の外周面は、支持筒24のうちレゾネータ18と軸線方向Xに隣接する部分の外周面よりも径方向Y外方に位置している。本実施形態では、支持筒24に外嵌されたレゾネータ本体50が、支持筒24から上流領域R1に突出するように配置されている。支持筒24の内周面は、軸線方向Xに沿って直線状に延びている。これにより、レゾネータ18を支持筒24に設けた場合でも空気室33を広くできる。レゾネータ18のうち上流領域R1に面する外面は、軸線方向Xの両側に向けて徐々に縮径する流線形にしてもよい。
【0043】
図7(A)は、図3のレゾネータ18の変形例を示す斜視図である。図7(B)は、図7(A)のVIIB-VIIB線断面図である。図7(C)は、図7(A)のVIIC-VIIC線断面図である。図7(A)~(C)に示すように、レゾネータ18は、共鳴室43を複数の空洞45に分割する仕切板44を有してもよい。複数の空洞45は、それぞれ複数の開口41に連通している。
【0044】
仕切板44は、共鳴室43を軸線方向X及び周方向Zの両方向に分割している。具体的には、仕切板44は、軸線方向Xに延びる部分と、周方向Zに延びる部分とを有する。1つ開口41のみが1つの空洞45に連通してもよいし、複数の開口41が1つの空洞45に連通してもよい。仕切板44は、径方向Yから見た展開図において各空洞45を多角形状(例えば、四角形、六角形など)又は円形状に分割する形状とし得る。
【0045】
これによれば、互いに逆位相の音圧が軸線方向X及び周方向Zの両方に分布しても、逆位相の音圧同士の干渉が防がれる。よって、音圧干渉による共鳴容積の減少が防がれ、設計通りの周波数で共鳴を起こすことができる。
【0046】
図8(A)は、図3の燃焼器4の第1変形例を示す要部断面図である。図8(A)に示すように、第1変形例の燃焼器104では、レゾネータ118は、支持筒24のうちレゾネータ18と軸線方向Xに隣接する部分よりも下流領域R3に突出している。即ち、レゾネータ118の内周面は、支持筒24のうちレゾネータ18と軸線方向Xに隣接する部分の内周面よりも径方向Yの内方に位置している。本実施形態では、支持筒24に内嵌されたレゾネータ本体150が、支持筒24から下流領域R3に突出するように配置されている。支持筒24の外周面は、例えば、軸線方向Xに沿って直線状に延び得る。これにより、レゾネータ118を支持筒24に設けた場合でも上流領域R1が狭くなるのを防止できる。なお、レゾネータは、図3のレゾネータ18の位置と図8(A)のレゾネータ118の位置との中間の位置に配置されてもよい。
【0047】
図8(B)は、図3の燃焼器4の第2変形例を示す要部断面図である。図8(B)に示すように、第2変形例の燃焼器204では、前述した実施形態に対し、レゾネータ18は同じであるが、筒ケーシング221が異なっている。筒ケーシング221は、レゾネータ18と径方向Yに対向する部分において径方向Yの外側に向けて拡径した膨出部221aを有する。これにより、上流領域R1のうちレゾネータ18の径方向Yの外側の部分が狭くなることが防止できる。
【0048】
図8(C)は、図3の燃焼器4の第3変形例を示す要部断面図である。図8(C)に示すように、第3変形例の燃焼器304では、レゾネータ318(第3レゾネータ)が筒ケーシング21の外に突出している。レゾネータ318は、支持筒24の外周面に接続されたレゾネータ本体350を有する。レゾネータ本体350は、共鳴室343を画定する中空部350aと、レゾネータ本体350から径方向Yの内側に突出した管部350bとを有する。
【0049】
中空部350aは、筒ケーシング21の径方向Yの外側に配置されている。なお、図8(C)では、筒ケーシング21とレゾネータ本体350とは互いに接触しているが、互いに接触していなくともよい。管部350bは、筒ケーシング21を径方向Yに貫通して上流領域R1を径方向に横断し、支持筒24に接続されている。支持筒24は、その内周面において下流領域R3に面する開口41を形成する貫通孔を有し、その貫通孔に管部350bの内部空間が連通している。即ち、管部350bの内部空間と支持筒24の貫通孔とが、絞り342を構成している。これによれば、共鳴室343の容積の自由度を高くすることができ、減衰させる周波数の設定自由度が向上する。例えば、共鳴室343を広くして低周波振動を低減するように設計することができる。
【0050】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の燃焼器404の要部断面図である。図9に示すように、燃焼器404では、レゾネータ418(第2レゾネータ)は、ケーシング411のエンドプレート422に設けられている。エンドプレート422は、空気室33に対向して軸線C周りに環状に延びる凹部422aを有する。レゾネータ418は、凹部422aに収容されている。レゾネータ418は、凹部422aと相似な環状の中空部材である。
【0051】
レゾネータ418は、開口441、絞り442及び共鳴室443を有する。共鳴室443は、レゾネータ418の環状の中空空間である。なお、レゾネータ418のうち一部の壁を省略し、エンドプレート422の表面を利用して共鳴室443を画定する構成としてもよい。開口441は、レゾネータ418のうち空気室33に対向する面において、軸線C周りに間隔をあけて並んでいる。絞り442は、レゾネータ418のうち空気室33に対向する壁において、開口441を共鳴室443に連通させる貫通孔である。
【0052】
レゾネータ418の開口441は、空気室33に直接的に面しており、空気室33に開口している。開口441は、方向転換領域R2に連続している。開口441は、空気導入口35よりも径方向Yの内側において方向転換領域R2に開口している。開口441は、燃焼室31に向くように軸線方向Xに開口している。具体的には、開口441の軸線は、軸線Cと実質的に平行である。絞り442の軸線は、軸線方向Xに延びている。
【0053】
空気流路16は、仮想境界面Mにおいて軸線方向Xに直交する流路断面積が変化し、仮想境界面Mの下流側では、圧力波が部分的に反射されたり打ち消されたりする。よって、レゾネータ418の開口441が方向転換領域R2に開口することで、圧力波を効果的に吸収できる。しかも、開口441は軸線方向Xに向いているので、燃焼室31から軸線方向Xに伝達される圧力波を効果的に吸収することができる。燃焼器404に設けられるレゾネータは、レゾネータ418のみでもよいし、第1実施形態のレゾネータ18(又は第1~4変形例のレゾネータ118,218,318の何れか)が併用されてもよい。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0054】
図10(A)は、図9のレゾネータ418の変形例を示す斜視図である。図10(B)は、図10(A)のXB-XB線断面図である。図10(A)(B)に示すように、レゾネータ418は、共鳴室443を複数の空洞445に分割する仕切板444を有してもよい。複数の空洞445は、それぞれ複数の開口441に連通している。
【0055】
仕切板444は、共鳴室443を周方向Zに分割している。1つの開口441のみが1つの空洞445に連通してもよいし、複数の開口441が1つの空洞445に連通してもよい。仕切板444は、軸線方向Xから見て各空洞445を扇形状に分割する形状とし得る。
【0056】
これによれば、互いに逆位相の音圧が周方向Zに分布しても、逆位相の音圧同士の干渉が防がれる。よって、音圧干渉による共鳴容積の減少が防がれ、設計通りの周波数で共鳴を起こすことができる。なお、各空洞445はさらに径方向に分割された形状であってもよい。各空洞445が径方向Yに分割されれば、径方向Yに逆位相の音圧分布があっても、逆位相の音圧同士の干渉が防がれる。
【0057】
図11(A)は、図9の燃焼器404の第1変形例を示す要部断面図である。図11(A)に示すように、第1変形例の燃焼器504では、レゾネータ518は、エンドプレート522から空気室33に向けて軸線方向Xに突出している。レゾネータ518自体の形状は、前述したレゾネータ418と同じである。これにより、エンドプレート522の局所的な薄肉化を緩和できる。なお、レゾネータ518の全体が、エンドプレート522よりも軸線方向Xの第2側即ち空気室33にあってもよい。
【0058】
図11(B)は、図9の燃焼器404の第2変形例を示す要部断面図である。図11(B)に示すように、第2変形例の燃焼器604では、レゾネータ618(第3レゾネータ)がエンドプレート622の外に突出している。レゾネータ618は、エンドプレート622の外面に接続されたレゾネータ本体650を有する。レゾネータ本体650は、ケーシング11の外側に配置され、その内部に共鳴室643を画定する。なお、図11(B)では、レゾネータ本体650とエンドプレート622とは互いに接触しているが、互いに接触していなくともよい。エンドプレート622は、共鳴室643と連通する軸線方向Xに延びた貫通孔を有する。
【0059】
エンドプレート622の前記貫通孔は、絞り642を構成する。レゾネータ本体650のうちエンドプレート622に面接触する壁(絞り642の一部を構成する壁)は省略されてもよい。また、レゾネータ本体650はエンドプレート622に面接触していなくてもよい。エンドプレート622は、その空気室33を画定する面(軸線方向Xの第2側の面)において、絞り642の入口となる開口641を有する。これによれば、共鳴室643の容積の自由度を高くすることができ、減衰させる周波数の設定自由度が向上する。例えば、共鳴室643を広くして低周波振動を低減するように設計することができる。
【0060】
(第3実施形態)
図12は、第3実施形態の燃焼器704の要部断面図である。図12に示すように、燃焼器704は、方向転換領域R2のうち空気導入口35よりも径方向Yの外側の部分に開口したレゾネータ718A、718Bを有する。レゾネータ718Aは、筒ケーシング721に設けられており、レゾネータ718Aの開口741Aは、方向転換領域R2の径方向Yの外側に配置され、径方向Y内側に向けて開口している。レゾネータ718Bは、エンドプレート722に設けられており、レゾネータ718Bの開口741Bは、方向転換領域R2の軸線方向Xの第1側に配置され、軸線方向Xの第2側に向けて開口している。燃焼器704には、第1実施形態のレゾネータ18が更に設けられてもよいし、第2実施形態のレゾネータ418が更に設けられてもよい。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0061】
図13(A)~(C)は、燃焼器4の空気流路16のバリエーションを示す模式図である。なお、理解容易のために、第1実施形態の各要素に対応する本バリエーションの各要素について形状が異なっても第1実施形態と同じ符号を付している。
【0062】
図13(A)では、ケーシング11は、上流領域R1、方向転換領域R2及び下流領域R3の何れも、筒体12の軸線周りに延びた環状となるように構成されている。図13(B)では、筒体12は、図示しないケーシングに収容されたガイド部材19により覆われている。ガイド部材19は、上流領域R1、方向転換領域R2及び下流領域R3の何れもが筒体12の軸線周りに延びた環状となるように構成されている。図13(C)では、ケーシング11は、方向転換領域R2が筒体12の軸線周りの円柱状となり、上流領域R1及び下流領域R3が筒体12の軸線周りに延びた環状となるように構成されている。
【0063】
図13(A)~(C)の何れにおいても、上流領域R1と方向転換領域R2との間の仮想境界面Mは、空気流路16のうち上流領域R1を下流領域R3に接続すべく径方向Yに延びた流路の軸線方向Xの第2側における端Eを通過して且つ軸線方向Xに直交する仮想面である。仮想境界面Mにおいて空気流路16の軸線方向Xの断面積の変化が生じ、図示しないレゾネータの開口は、空気流路16の仮想境界面Mよりも下流側の空間に開口する。
【0064】
(第4実施形態)
図14は、第4実施形態の燃焼器804の要部断面図である。図14に示すように、燃焼器804では、レゾネータ818は、筒体812(具体的には、支持筒824)に設けられ、下流領域R3に開口している。筒体812は、レゾネータ818の共鳴室843を上流領域R1に連通させる複数のリーク孔812aを有する。リーク孔812aは、方向転換領域R2よりも軸線方向Xの第2側に配置されている。リーク孔812aは、方向転換領域R2をバイパスするように、レゾネータ818を介して下流領域R3を上流領域R1に連通させる。
【0065】
リーク孔812aの各々の直径は、0.1mm以上10mm以下である。リーク孔812aの直径は、レゾネータ818の開口841及び絞り842の直径よりも小さい。具体的には、リーク孔812aの各々の直径は、リーク孔812aの高さ(即ち、リーク孔812aの流路軸線の長さ)の1/10以上とし得る。これにより、レーザーなどによる加工性を良好にしながらも、圧力波を効果的に低減できる。さらに、リーク孔812aの総開口面積は上流領域R1の流れ方向に垂直な面における断面積の1/2以下にしてもよい。リーク孔812aは、下流領域R3から上流領域R1に音響エネルギーを逃がすことができ、燃焼に起因した振動が更に効果的に低減される。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0066】
図14のレゾネータ818は、図8(A)のレゾネータ118と類似したものであるが、図3のレゾネータ18と類似したものでもよいし、図8(C)のレゾネータ318と類似したものとしてもよい。図8(C)のレゾネータ318と類似したものとする場合には、リーク孔812aは、支持筒24に形成されてもよいし、管部350bに形成されてもよい。
【0067】
(第5実施形態)
図15は、第5実施形態の燃焼器904の要部断面図である。図15に示すように、燃焼器904は、レゾネータを備えていない。筒体912(具体的には、支持筒924)は、下流領域R3を上流領域R1に連通させる複数のリーク孔912aを有する。リーク孔912aは、方向転換領域R2よりも軸線方向Xの第2側に配置されている。リーク孔912aは、方向転換領域R2をバイパスして下流領域R3を上流領域R1に連通させる。
【0068】
リーク孔912aの各々の直径は、0.1mm以上10mm以下である。具体的には、リーク孔912aの各々の直径は、リーク孔912aの高さ(即ち、リーク孔912aの流路軸線の長さ)の1/10以上とし得る。これにより、レーザーなどによる加工性を良好にしながらも、圧力波を効果的に低減できる。さらに、リーク孔912aの総開口面積は上流領域R1の流れ方向に垂直な面における断面積の1/2以下にしてもよい。リーク孔912aは、下流領域R3から上流領域R1に音響エネルギーを逃がすことができ、レゾネータがなくても燃焼に起因した振動を効果的に低減できる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0069】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、各実施形態及び各変形例を説明した。しかし、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用可能である。また、前述した各実施形態又は各変形例で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。例えば、1つの実施形態又は変形例中の一部の構成又は方法を他の実施形態又は変形例に適用してもよく、実施形態又は変形例の一部の構成は、その実施形態又は変形例の他の構成から分離して任意に抽出可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれる。
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
[項目1]
燃焼室を画定する筒体であって、軸線方向の第1側から第2側に向けて延び、前記軸線方向の前記第2側に排出口を画定する筒体と、
前記燃焼室に空気を供給するための空気流路と、
前記空気流路に開口する少なくとも1つの開口と前記開口に連通する共鳴室とを有する少なくとも1つのレゾネータと、を備え、
前記空気流路は、
前記筒体の外周面に沿っている上流領域と、
前記筒体の内周面に沿っていて、前記燃焼室に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記燃焼室に連通した下流領域と、
前記筒体の径方向において前記上流領域を前記下流領域に接続する方向転換領域であって、前記上流領域と前記方向転換領域との間で前記軸線方向に直交する断面積の変化を伴って前記上流領域に隣接する方向転換領域と、を含み、
前記レゾネータの前記開口は、前記空気流路のうち前記上流領域よりも下流の空間に開口している、ガスタービン燃焼器。
[項目2]
前記少なくとも1つのレゾネータは、第1レゾネータを含み、
前記第1レゾネータの前記開口は、前記空気流路のうち前記下流領域に開口している、項目1に記載のガスタービン燃焼器。
[項目3]
前記第1レゾネータは、前記筒体に配置されている、項目2に記載のガスタービン燃焼器。
[項目4]
前記第1レゾネータの外周面は、前記筒体のうち前記第1レゾネータと前記軸線方向に隣接する部分の外周面よりも前記径方向外方に位置している、項目3に記載のガスタービン燃焼器。
[項目5]
前記第1レゾネータの内周面は、前記筒体のうち前記第1レゾネータと前記軸線方向に隣接する部分の内周面よりも前記径方向内方に位置している、項目3又は4に記載のガスタービン燃焼器。
[項目6]
前記少なくとも1つのレゾネータは、第2レゾネータを含み、
前記第2レゾネータの前記開口は、前記方向転換領域に開口している、項目1乃至5のいずれかに記載のガスタービン燃焼器。
[項目7]
前記筒体に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記空気流路に面する内面を有するエンドプレートを更に備え、
前記第2レゾネータは、前記エンドプレートに配置されている、項目6に記載のガスタービン燃焼器。
[項目8]
前記筒体を収容するケーシングを更に備え、
前記ケーシングと前記筒体との間に、前記上流領域を含む空気導入路があり、
前記筒体は、前記燃焼室を画定する第1筒と、前記軸線方向の前記第1側にて前記第1筒に隣接し、前記下流領域を含む空気室を画定する第2筒を有し、
前記少なくとも1つのレゾネータの前記開口は、前記空気室に開口している、項目1乃至7のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器。
[項目9]
整流孔を有し、前記空気流路のうち前記上流領域よりも下流の前記空間を、プレ整流空間とポスト整流空間とに区切る整流板を更に備え、
前記少なくとも1つのレゾネータの前記開口は、前記ポスト整流空間に開口している、項目1乃至8のいずれかに記載のガスタービン燃焼器。
[項目10]
前記少なくとも1つのレゾネータの前記共鳴室は、前記ケーシングの外部に配置されている、項目1乃至9のいずれかに記載のガスタービン燃焼器。
[項目11]
前記少なくとも1つの開口は、前記軸線方向に並んで且つ前記軸線方向周りの周方向に並んだ複数の開口を含み、
前記少なくとも1つのレゾネータは、前記複数の開口のそれぞれに連通する複数の空洞に前記共鳴室を分割する仕切板であって、前記共鳴室を前記周方向に分割する仕切板を有する、項目1乃至10のいずれかに記載のガスタービン燃焼器。
[項目12]
前記仕切板は、前記共鳴室を更に前記軸線方向又は前記径方向に分割している、項目11に記載のガスタービン燃焼器。
[項目14]
前記筒体は、前記方向転換領域をバイパスして前記下流領域を前記上流領域に連通させるリーク孔を有する、項目1乃至12のいずれかに記載のガスタービン燃焼器。
[項目15]
燃焼室を画定する筒体であって、軸線方向の第1側から第2側に向けて延び、前記軸線方向の前記第2側に排出口を画定する筒体と、
前記燃焼室に空気を供給するための空気流路と、を備え、
前記空気流路は、
前記筒体の外周面に沿っている上流領域と、
前記筒体の内周面に沿っていて、前記燃焼室に対して前記軸線方向の前記第1側に配置され、前記燃焼室に連通した下流領域と、
前記筒体の径方向において前記上流領域を前記下流領域に接続する方向転換領域と、を含み、
前記筒体は、前記方向転換領域をバイパスして前記下流領域を前記上流領域に連通させるリーク孔を有する、ガスタービン燃焼器。
【符号の説明】
【0070】
1 ガスタービン
4 燃焼器
11 ケーシング
12 筒体
13 燃料噴射器
16 空気流路
17 整流板
17a 整流孔
18 レゾネータ
21 筒ケーシング
22 エンドプレート
23 燃焼筒(第1筒)
24 支持筒(第2筒)
31 燃焼室
32 排出口
33b ポスト整流空間
33 空気室
33a プレ整流空間
34 空気導入路
35 空気導入口
41 開口
42 絞り
43 共鳴室
44 仕切板
45 空洞
A 空気
C 軸線
E 端
F 燃料
G 燃焼ガス
M,N 仮想境界面
R1 上流領域
R2 方向転換領域
R3 下流領域
X 軸線方向
Y 径方向
Z 周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15