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特許7522315置換ジアリールアミン化合物及びその医薬組成物、製造方法と用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】置換ジアリールアミン化合物及びその医薬組成物、製造方法と用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/04 20060101AFI20240717BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 25/36 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 31/08 20060101ALI20240717BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240717BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20240717BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240717BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240717BHJP
   C07D 239/48 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
C07D487/04 140
C07D487/04 CSP
A61P43/00 111
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P35/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P9/00
A61P25/08
A61P25/36
A61P1/04
A61P31/08
A61P37/02
A61K31/5377
C07D519/00 301
A61K31/519
C07D519/00 311
C07B61/00 300
C07D239/48
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023526283
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2021126790
(87)【国際公開番号】W WO2022089497
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】202011187029.7
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522078392
【氏名又は名称】蘇州亜宝薬物研発有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】シャ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】郭増山
(72)【発明者】
【氏名】江子卿
(72)【発明者】
【氏名】王西志
(72)【発明者】
【氏名】朱桃桃
(72)【発明者】
【氏名】王川
(72)【発明者】
【氏名】ズォ,ラン
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/049028(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105294737(CN,A)
【文献】特表2009-513703(JP,A)
【文献】特表2009-513575(JP,A)
【文献】特表2020-518672(JP,A)
【文献】国際公開第2016/015605(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/149723(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/130920(WO,A1)
【文献】特表2017-504635(JP,A)
【文献】特開2014-159473(JP,A)
【文献】国際公開第2010/034740(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61P 43/00
A61P 25/00
A61P 35/00
A61P 25/16
A61P 25/28
A61P 9/00
A61P 25/08
A61P 25/36
A61P 1/04
A61P 31/08
A61P 37/02
A61K 31/5377
C07D 519/00
A61K 31/519
C07D 239/48
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で示される化合物、またはそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、若しくは薬学的に許容される塩:
【化1】


そのうち、
、Rは、それらと接続された原子と共に、
【化2】


を形成し、
、Rは相同又は相異であり、互いに独立的にH、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC1- アルキル基から選ばれ、それぞれのR は相同又は相異であり、互いに独立的にハロゲン及びCNから選ばれ、且つR、Rは同時にHとはならず、
或いは、R、Rは、それらと接続された原子と共に、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換されたシクロプロピル基を形成し、それぞれのR は相同又は相異であり、互いに独立的にハロゲン及びCNから選ばれ、
Arは、1、2個又はそれ以上のRにより置換されたフェニル基から選ばれ、それぞれのR は相同又は相異であり、互いに独立的にハロゲン、OH、CN、及び非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のR により置換された基から選ばれ、前記基は、C 1-6 アルキル基、又はC 1-6 アルキルオキシ基であり、
Arは、1、2個又はそれ以上のRにより置換された以下の基であり、
【化3】


それぞれのR は相同又は相異であり、互いに独立的にH、ハロゲン、OH、CN、及び非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のR により置換された基から選ばれ、前記非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のR により置換された基は、C 1-6 アルキル基、C 1-6 アルキルオキシ基及びNH であり、それぞれのRは相同又は相異であり、互いに独立的にハロゲン、OH、CN、C 1- アルキル基、及び1- アルキルオキシ基から選ばれる
【請求項2】
、Rは相同又は相異であり、互いに独立的にH、メチル基及びトリフルオロメチル基から選ばれ、且つR、Rは同時にHとはならず、
或いは、R、Rは、それらと接続された原子と共に、シクロプロピル基を形成し、
は、1、2個又はそれ以上のRにより置換されたフェニル基から選ばれる
ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物、またはそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項3】
式(I)で示される化合物は、式(II)で示される構造を有してもよい:
【化4】


そのうち、R、R、R、R、Ar、Arは、独立的に請求項1又は2に記載の定義を有する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の化合物、またはそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項4】
式(I)で示される化合物は、
【化5】

という化合物から選ばれてもよい、ことを特徴とする、請求項1に記載の化合物、またはそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、若しくは薬学的に許容される塩。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の化合物、またはそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、若しくは薬学的に許容される塩の製造方法であって、
【化6】


そのうち、PGは保護基であり、前記保護基は、C 1-40 アルキル基、C 6-20 アリールC 1-40 アルキル基、C 1-40 アルキルスルホニル基、C 1-40 アルキルベンゼンスルホニル基から選ばれ、
Ar 2’ は、Ar 基が1つのHを失って形成されたサブ構造であり、
、R、R、R、Ar、Ar 、独立的に請求項1~4の何れか一項に記載の定義を有する、製造方法。
【請求項6】
式(I-1)で示される化合物:
【化7】


そのうち、PGは保護基であり、前記保護基は、C 1-40 アルキル基、C 6-20 アリールC 1-40 アルキル基、C 1-40 アルキルスルホニル基、C 1-40 アルキルベンゼンスルホニル基から選ばれ、Ar2’は、Ar基が1つのHを失って形成されたサブ構造であり、
、R、R、R、Ar、Arは、独立的に請求項1~4の何れか一項に記載の定義を有する。
【請求項7】
請求項6に記載の化合物の製造方法であって、式(I-2)の化合物と式(I-3)の化合物を反応させて式(I-1)で示される化合物を得ることを含み、
【化8】


そのうち、PGは保護基であり、前記保護基は請求項6に記載の定義を有し、Ar 2’ は、請求項6に記載の定義を有し、、R、R、R、Ar、Ar 、独立的に請求項1~4の何れか一項に記載の定義を有し、
記製造方法は、有機溶媒の存在下で行われ、
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノールから選ばれるアルコール類
エチルプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn-ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテルと、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドのポリエーテルから選ばれるエーテル類
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及び、メチレン塩化物、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、フルオロベンゼン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼンから選ばれるフッ素と塩素原子により置換可能な種類シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、オクタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、キシレンから選ばれる脂肪族、環脂肪族又は芳香族炭化水素類
酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及びジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート又はビニルカーボネートから選ばれるエステル類から選ばれる少なくとも1つであってもよく、
任意的に、前記製造方法は触媒の存在下で行われてもよく、前記触媒はPd触媒から選ばれ、前記Pd触媒は、Pd(dba)、Pd(dba)、Pd(OAc)、Pd[(PPh)、Pd[(PPh)Cl又はPd(dppf)Clから選ばれる少なくとも1つであってもよく、
任意的に、前記製造方法は有機ホスフィンリガンドを加えてもよく、前記有機ホスフィンリガンドは、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル(RuPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N-ジメチルアミン)-ビフェニル(DavePhos)、ラセミ又はR配置又はS配置の2,2’-ビス-ジフェニルホスフィノアルキル-[1,1’]ビナフチル(BINAP)、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、ビス-(2-ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEPhos)から選ばれる少なくとも1つであってもよく、
任意的に、前記製造方法は塩基作用下で行われてもよく、前記塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムと炭酸セシウムから選ばれる少なくとも1つである、製造方法。
【請求項8】
治療有効量の請求項1~4の何れか一項に記載の化合物、またはそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、若しくは薬学的に許容される塩の中の少なくとも1つを含む、医薬組成物。
【請求項9】
薬剤の調製のための、請求項1~4の何れか一項に記載の化合物、またはそのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、若しくは薬学的に許容される塩の中の少なくとも1つの使用であって、
前記薬剤は、LRRKキナーゼ活性に関連する疾患又は病症を治療又は予防するために使用され、前記LRRKキナーゼは、LRRK2キナーゼ又はその突然変異体若しくはイソフォーム、又はそれらの組み合わせから選ばれる、使用
【請求項10】
前記LRRKキナーゼ活性に関連する疾患又は病症は、神経変性疾患、増殖性疾患、タンパク質キナーゼに関連する疾患、リソソーム疾患、タウ病及びドーパミン濃度の低下による疾患パーキンソン病、GBA突然変異に関連するパーキンソン病(PD)、他のα-シヌクレイノパチー、タウオパチー、認知損傷又は認知障害、アルツハイマー病、ゴーシェ病、C型ニーマン・ピック病(NPC)、嗜銀顆粒性認知症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上まひ、認知症、17番染色体に関連する遺伝性前頭側頭型認知症、頭蓋脳損傷、脳卒中、てんかん、薬物嗜癖関連の離脱症状/再発、炎症性腸疾患、ハンセン病、免疫系疾患から選ばれる、請求項9の使用
【請求項11】
前記LRRKキナーゼ活性に関連する疾患と病症は、がん、アルツハイマー病、認知症、17番染色体に関連する遺伝性前頭側頭型認知症、頭蓋脳損傷、脳卒中、及びてんかんから選ばれる、請求項9の使用。
【請求項12】
前記LRRKキナーゼ活性に関連する疾患と病症は、乳がんである、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本願は、2020年10月29日に中国国家知識産権局に提出された、特許出願番号が202011187029.7、名称が「置換ジアリールアミン化合物及びその医薬組成物、製造方法と用途」である先行出願の優先権を主張する。当該先行出願の全文は、引用により本願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、製薬技術分野に属し、具体的に、置換ジアリールアミン化合物及びその医薬組成物、製造方法と用途に関する。
【0003】
〔背景技術〕
パーキンソン病(Parkinson’s disease,PD)は、よく見られる神経変性疾患の1つであり、1~2%の高齢世代に影響を与えている。ゲノムワイド関連研究(Genome-wide association studies,GWAS)は、非家族性PDの24個の部位に、関連する遺伝的リスク変異を28種関連した。そのうち、LRRK2(Park8)の突然変異は遺伝形式においても発見され、家族性と非家族性PDの共通分子経路により駆動される発症機序が確定され、関連疾患を引き起こす最も一般的な原因である(Simon-Sanchez J, Schulte C, Bras JM, Sharma M, Gibbs JR, et al. Genome-wide association study reveals genetic risk underlying Parkinson’s disease. Nat Genet,2009,41,1308-1312.)。PD病原性LRRK2突然変異マップは主にキナーゼ(G2019S、I2020T)及びROC-CORドメイン(R1441C/G/H、Y1699C)に関連していることで、これらの酵素活性が病状に非常に大切であることを意味する。病原性突然変異の頻度は、大体、全体の2%程度と稀であるが、ある人種の人々では、最もよく見られる突然変異G2019Sが最大40%の患者で発見され、当該キナーゼが2~3倍に活性化される(West AB, Moore DJ, Biskup S, Bugayenko A, Smith WW, et al. From The Cover: Parkinson’s disease-associated mutations in leucine-rich repeat kinase 2 augment kinase activity. Proceedings of the National Academy of Sciences,2005,102,16842-16847.)。病原性突然変異の他に、LRRK2の一般的な遺伝的変異は、散発性PDの危険因子である(Tan, E. K. Identification of a common genetic risk variant(LRRK2 Gly2385Arg) in Parkinson’s disease. Ann Acad Med Singapore. 2006,35,840-842.)。
【0004】
2004年に、LRRK2は、PD遺伝を担当する遺伝子と確定され、PARK8部位に関連しており、且つ51個のエキソンから構成されることで、1つの大きな(268kDa)タンパク質が産生されることが発見された。その後、散発性PDにも現れる家族性PDから離れた優性突然変異、及びLRRK2遺伝子座における多型性を含め、多くのLRRK2一次構造変異体が同定され、上記多型性は、散発性PDの発展の生涯リスクを増加させた。
【0005】
LRRK2は、コアに2つの酵素機能を有するマルチドメインタンパク質である。GTP酵素ドメインは、複合タンパク質のRAS(Ras of complex protein,ROC)を含み、上記ROCは、1つのRocドメインC末端(COR)のスペーサードメインで終わり、その次はセリン/スレオニンキナーゼに属するキナーゼドメインである。当該酵素コアは、タンパク質間相互作用ドメインにより取り囲まれており、Armadillo、アンキリン及びLRRK2のN末端でロイシンに富んだ反復配列(leucine-rich repeat,LRR)ドメインを含む。LRRK2のC末端には、タンパク質の折り畳みに必要な区域であり、LRRK2の機能とキナーゼ活性を制御することができるWD40ドメインが含まれる(Rudenko IN, Kaganovich A, Hauser DN, Beylina A, Chia R, et al. The G2385R variant of leucine-rich repeat kinase 2 associated with Parkinson’s disease is a partial loss-of-function mutation. Biochemical Journal,2012,446,99-111.)。興味深いことに、優性病原性突然変異がLRRK2の酵素コア内に発生されるという新しい記載により、LRRK2活性の修飾はPDの発生と進行に極めて大きく影響することが明らかになる。
【0006】
現在までは、LRRK2突然変異のうち、40個近くのモノアミノ酸置換突然変異は、常染色体優性PDに関連している。ヨーロッパで最も一般的なLRRK2突然変異形式は、Gly2019のアミノ酸のSer残基への置換を含め、大体、家族性PDの6%と散発性PD症例の3%を占めている。Gly2019は、保存的なDYG-Mg2+結合モチーフ内にあり、キナーゼドメインのサブドメイン-VIIにある。最近の報告によると、このような突然変異は、LRRK2の自己リン酸化を強化すると共に、そのミエリン塩基性タンパク質に対するリン酸化能力を2~3倍に向上させる。酸化ストレスの有無を問わず、細胞株及び初代ニューロンの培養においてG2019S-LRRK2が過剰発現される場合に、何れも細胞毒性と封入体の形成が認められる。これらの結果及びLRRK2キナーゼ活性の遺伝子不活性化は、この毒性表現型に対する保護作用を示していることで、LRRK2キナーゼ活性の変化は、LRRK2-PDの神経毒性及び発症機序に関わり得ることが明らかになる。
【0007】
研究によると、LRRK2 G2019Sパーキンソン病患者から誘導された多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cells,iPSC)は、神経突起増殖欠陥及びロテノンに対する感受性の増加を示すことが発見され、これは、G2019S突然変異の遺伝子修正又はLRRK2キナーゼ活性の低分子阻害剤による細胞の処理により改善することができる(Reinhardt P, Schmid B, Burbulla Lena F, Schondorf David C, Wagner L, et al. Genetic Correction of a LRRK2 Mutation in Human iPSCs Links Parkinsonian Neurodegeneration to ERK-Dependent Changes in Gene Expression. Cell Stem Cell,2013,12,354-367.)。iSPCにおけるLRRK2 G2019S突然変異に関連する増加したミトコンドリア損傷も、G2019S突然変異の遺伝修正により遮断される。
【0008】
〔発明の概要〕
上記技術問題を改善するため、本発明は、式(I)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、N-酸化物、水和物、溶媒和物、結晶多形物、代謝物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるエステル又はそのプロドラッグ化合物を提供する:
【0009】
【化1】
【0010】
そのうち、
、Rは、それらと接続された原子と共に、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換された3~20員ヘテロシクリル基を形成し、
、Rは相同又は相異であり、互いに独立的にH、CN、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC1-40アルキル基、C3-40シクロアルキル基、C6-20アリール基、5~20員ヘテロアリール基、3~20員ヘテロシクリル基、C1-40アルキルオキシ基、C3-40シクロアルキルオキシ基、C6-20アリールオキシ基、5~20員ヘテロアリールオキシ基、3~20員ヘテロシクリルオキシ基から選ばれ、且つR、Rは同時にHとはならず、
或いは、R、Rは、それらと接続された原子と共に非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC3-40シクロアルキル基、3~20員ヘテロシクリル基を形成し、
Arは、1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC6-20アリール基、5~20員ヘテロアリール基から選ばれ、
Arは、1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC6-20アリール基、5~20員ヘテロアリール基から選ばれ、
それぞれのR、R、R、R、Rは相同又は相異であり、互いに独立的にH、ハロゲン、OH、CN、NO、オキソ(=O)、チオ(=S)、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC1-40アルキル基、C2-40アルケニル基、C2-40アルキニル基、C3-40シクロアルキル基、C3-40シクロアルケニル基、C3-40シクロアルキニル基、C6-20アリール基、5~20員ヘテロアリール基、3~20員ヘテロシクリル基、C1-40アルキルオキシ基、C2-40アルケニルオキシ基、C2-40アルキニルオキシ基、C3-40シクロアルキルオキシ基、C3-40シクロアルケニルオキシ基、C3-40シクロアルキニルオキシ基、C6-20アリールオキシ基、5~20員ヘテロアリールオキシ基、3~20員ヘテロシクリルオキシ基、C1-40アルキルチオ基、C2-40アルケニルチオ基、C2-40アルキニルチオ基、C3-40シクロアルキルチオ基、C3-40シクロアルケニルチオ基、C3-40シクロアルキニルチオ基、C6-20アリールチオ基、5~20員ヘテロアリールチオ基、3~20員ヘテロシクリルチオ基、NH、-C(O)R11、-C(O)OR12、-OC(O)R13、-S(O)14、-S(O)OR15、-OS(O)16から選ばれ、
それぞれのRは相同又は相異であり、互いに独立的にH、ハロゲン、OH、CN、NO、オキソ(=O)、チオ(=S)、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基、C2-40アルキニル基、C3-40シクロアルキル基、C3-40シクロアルケニル基、C3-40シクロアルキニル基、C6-20アリール基、5~20員ヘテロアリール基、3~20員ヘテロシクリル基、C1-40アルキルオキシ基、C2-40アルケニルオキシ基、C2-40アルキニルオキシ基、C3-40シクロアルキルオキシ基、C3-40シクロアルケニルオキシ基、C3-40シクロアルキニルオキシ基、C6-20アリールオキシ基、5~20員ヘテロアリールオキシ基、3~20員ヘテロシクリルオキシ基、C1-40アルキルチオ基、C2-40アルケニルチオ基、C2-40アルキニルチオ基、C3-40シクロアルキルチオ基、C3-40シクロアルケニルチオ基、C3-40シクロアルキニルチオ基、C6-20アリールチオ基、5~20員ヘテロアリールチオ基、3~20員ヘテロシクリルチオ基、NH、-C(O)C1-40アルキル基、-C(O)NH、-C(O)NHC1-40アルキル基、-C(O)-NH-OH、-COOC1-40アルキル基、-COOH、-OC(O)C1-40アルキル基、-OC(O)H、-S(O)1-40アルキル基、S(O)H、-S(O)OC1-40アルキル基、-OS(O)1-40アルキル基から選ばれ、
11、R12、R13、R14、R15、R16は相同又は相異であり、互いに独立的にH、C1-40アルキル基、C2-40アルケニル基、C2-40アルキニル基、C3-40シクロアルキル基、C3-40シクロアルケニル基、C3-40シクロアルキニル基、C6-20アリール基、5~20員ヘテロアリール基、3~20員ヘテロシクリル基、NHから選ばれる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、R、Rは、それらと接続された原子と共に、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換された3~10員ヘテロシクリル基を形成し、
本発明の実施形態によれば、R、Rは相同又は相異であり、互いに独立的にH、CN、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C1-6アルキルオキシ基、C3-8シクロアルキルオキシ基から選ばれ、且つR、Rは同時にHとはならず、
或いは、R、Rは、それらと接続された原子と共に、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC3-8シクロアルキル基、3~8員ヘテロシクリル基を形成し、
本発明の実施形態によれば、Arは、1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC6-10アリール基、5~10員ヘテロアリール基から選ばれ、
本発明の実施形態によれば、Arは、1、2個又はそれ以上のRにより置換されたC6-10アリール基、5~10員ヘテロアリール基から選ばれる。
【0012】
本発明の例示的な実施形態によれば、R、Rは、それらと接続された原子と共に、非置換又は任意選択的に1、2個又はそれ以上のRにより置換された
【0013】
【化2】
【0014】
を形成し、
本発明の例示的な実施形態によれば、R、Rは相同又は相異であり、互いに独立的にH、C1-6アルキル基、ハロC1-6アルキル基、例えば、H、メチル基、トリフルオロメチル基から選ばれ、且つR、Rは同時にHとはならず、
或いは、R、Rは、それらと接続された原子と共にC3-8シクロアルキル基、例えば、シクロプロパン基を形成し、
本発明の例示的な実施形態によれば、Arは、1、2個又はそれ以上のRにより置換されたフェニル基から選ばれ、
本発明の例示的な実施形態によれば、Arは、1、2個又はそれ以上のRにより置換された
【0015】
【化3】
【0016】
から選ばれる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、式(I)で示される化合物は、式(II)で示される構造を有してもよい:
【0018】
【化4】
【0019】
そのうち、R、R、R、R、Ar、Arは、独立的に上述した定義を有する。
【0020】
本発明の実施形態によれば、式(I)で示される化合物は、下記の化合物から選ばれてもよい:
【0021】
【化5】

【0022】
本発明の実施形態によれば、上記一般式に含まれる化合物、例えば、本発明の文脈で具体的に挙げられた具体的な化合物は、独立的にキラルな化学構造を有してもよいので、種々の立体異性体形態、立体異性体混合物の形態又はラセミ体の形態で存在してもよい。
【0023】
従って、本発明の文脈での化合物は、純粋なエナンチオマーである(+)-エナンチオマー又は(-)-エナンチオマー(即ち、対応するエナンチオマー過剰率(ee)>99%)として、又は過剰な(+)-エナンチオマー又は過剰な(-)-エナンチオマーを有する混合物として存在してもよい。
【0024】
当業者は、本発明の化合物の旋光度[α]によって、異なるエナンチオマーを明らかに区別することができ、上記化合物の立体異性体(例えば、エナンチオマー形態)は、独立的に正の旋光度又は負の旋光度を有してもよい。例えば、非キラル溶媒に溶ける場合、それらの旋光度[α]によって異なるエナンチオマーを明らかに区別することができる:その一方のエナンチオマーは0°より大きい旋光度[α]を有し((+)-化合物とも呼ばれる)、他方のエナンチオマーは0°より小さい旋光度[α]を有する((-)-化合物とも呼ばれる)。
【0025】
実例として、本発明の下記の化合物のエナンチオマーは、それぞれ0°より大きい旋光度と0°より小さい旋光度を有する:
【0026】
【化6】
【0027】
当該化合物のエナンチオマーは、それぞれ化合物1及び化合物4と標識してもよい、そのうち、
化合物1の旋光度は<0°、好ましくは<約-40°、より好ましくは<約-50°であり、例えば、1mg/mLのエタノール溶液中の旋光度は約-52.5°であり、
化合物4の旋光度は>0°、好ましくは>約+20°、より好ましくは>約+40°であり、例えば、1mg/mLのエタノール溶液中の旋光度は約+43.5°である。
【0028】
或いは選択として、移動相の保持時間差によって異なるエナンチオマーを区別してもよく、例えば、超臨界流体クロマトグラフ(supercritical fluid chromatography,SFC)により分離し、chiralpak-ICカラム、4.6mm×250mm、5μm、CO-IPA(0.2%DEA)で溶離する場合に、1つのエナンチオマーの保持時間tはもう1つのエナンチオマーよりも低い。例えば、化合物1のtは<2min、例えば約1.94minであり、化合物4のtは>2min、例えば約2.33minである。
【0029】
本発明は、式(I-1)で示される化合物を更に提供する:
【0030】
【化7】
【0031】
そのうち、PGは保護基であり、Ar2’は、Ar基が1つのHを失って形成されたサブ構造であり、
、R、R、R、Ar、Arは、独立的に上述した定義を有する。
【0032】
本発明は、式(I)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、N-酸化物、水和物、溶媒和物、結晶多形物、代謝物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるエステル又はそのプロドラッグ化合物の製造における、式(I-1)で示される化合物の用途を更に提供する。
【0033】
本発明は、式(I)で示される化合物の製造方法を更に提供し、
【0034】
【化8】
【0035】
そのうち、PG、R、R、R、R、Ar、Ar、Ar2’は、独立的に上述した定義を有し、
本発明の実施形態によれば、PGは、アミノ保護基から選ばれてもよい。そのうち、好適なPGは、C1-40アルキル基、C6-20アリールC1-40アルキル基、C1-40アルキルスルホニル基、C1-40アルキルベンゼンスルホニル基、例えば、4-トルエンスルホニル基、tert-ブチル基、イソプロピル基、ベンジル基、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、2-ビフェニル-2-プロポキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc)、トリフルオロアセチル基から選ばれてもよい。
【0036】
本発明の実施形態によれば、式(I-1)の化合物は、保護基PGを除去した条件下で反応し、式(I)の化合物を得る。上記の保護基PGを除去する条件は、当業者に知られているような反応条件である。
【0037】
本発明は、式(I-1)で示される化合物の製造方法を更に提供し、式(I-2)の化合物と式(I-3)の化合物を反応させて式(I-1)で示される化合物を得ることを含み、
【0038】
【化9】
【0039】
そのうち、PG、R、R、R、R、Ar、Ar、Ar2’は、独立的に上述した定義を有する。
【0040】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法は、有機溶媒などの溶媒の存在下で行われてもよい。例えば、上記有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール類、エチルプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、アニソール、フェネトール、シクロヘキシルメチルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、ジフェニルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn-ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、イソプロピルエチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロジエチルエーテルと、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドのポリエーテルなどのエーテル類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、及びフッ素と塩素原子により置換可能な種類、例えば、メチレン塩化物、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、フルオロベンゼン、クロロベンゼン又はジクロロベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、オクタン、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、キシレンなどの脂肪族、環脂肪族又は芳香族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル及びジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート又はビニルカーボネートなどのエステル類から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0041】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法は触媒の存在下で行われてもよく、上記触媒はPd触媒であってもよく、上記Pd触媒は、Pd(dba)、Pd(dba)、Pd(OAc)、Pd[(PPh)、Pd[(PPh)Cl又はPd(dppf)Clから選ばれる少なくとも1つであってもよい。上記製造方法はリガンドを加えてもよく、上記リガンドは有機ホスフィンリガンドであってもよく、上記有機ホスフィンリガンドは、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル(RuPhos)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N-ジメチルアミン)-ビフェニル(DavePhos)、ラセミ又はR配置又はS配置の2,2’-ビス-ジフェニルホスフィノアルキル-[1,1’]ビナフチル(BINAP)、1,1-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(DPPF)、ビス-(2-ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル(DPEPhos)から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0042】
本発明の実施形態によれば、上記製造方法は塩基作用下で行われてもよく、上記塩基は無機塩基であってもよく、上記無機塩基は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムと炭酸セシウムから選ばれる少なくとも1つである。
【0043】
本発明は、治療有効量の式(I)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、N-酸化物、水和物、溶媒和物、結晶多形物、代謝物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるエステル又はそのプロドラッグ化合物の中の少なくとも1つを含む医薬組成物を更に提供する。
【0044】
本発明の実施形態によれば、上記医薬組成物は、1種又は複数種の薬学的に許容される添加物を更に含む。
【0045】
本発明の実施形態によれば、上記医薬組成物は、1種又は複数種の追加の治療剤を更に含んでもよい。
【0046】
本発明は、LRRKキナーゼ、特にLRRK2キナーゼ活性を調整する方法を更に提供し、予防又は治療有効量の式(I)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、N-酸化物、水和物、溶媒和物、結晶多形物、代謝物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるエステル又はそのプロドラッグ化合物の中の少なくとも1つを患者に投与することを含む。
【0047】
本発明の実施形態によれば、上記LRRKキナーゼは、LRRK2キナーゼ又はその突然変異体若しくはイソフォーム、又はそれらの組み合わせが好ましい。
【0048】
本発明は、LRRKキナーゼ、特にLRRK2キナーゼ活性に関連する疾患又は病症に用いられる式(I)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、N-酸化物、水和物、溶媒和物、結晶多形物、代謝物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるエステル又はそのプロドラッグ化合物の中の少なくとも1つを更に提供する。
【0049】
本発明の実施形態によれば、上記LRRKキナーゼは、LRRK2キナーゼ又はその突然変異体若しくはイソフォーム、又はそれらの組み合わせが好ましい。
【0050】
上記のLRRKキナーゼ、特にLRRK2キナーゼ活性に関連する疾患又は病症は、神経変性疾患、増殖性疾患、タンパク質キナーゼに関連する疾患、リソソーム疾患、タウ病及びドーパミン濃度の低下による疾患、例えば、がん(例えば、乳がん)、パーキンソン病、GBA突然変異に関連するパーキンソン病(PD)、他のα-シヌクレイノパチー、タウオパチー、認知損傷又は認知障害、アルツハイマー病、ゴーシェ病、C型ニーマン・ピック病(NPC)、嗜銀顆粒性認知症、ピック病、大脳皮質基底核変性症、進行性核上まひ、認知症、17番染色体に関連する遺伝性前頭側頭型認知症、パーキンソン病(FTDP-17)、頭蓋脳損傷、脳卒中、てんかん、薬物嗜癖関連の離脱症状/再発、炎症性腸疾患(例えば、クローン病、潰瘍性結腸炎)、ハンセン病、免疫系疾患などを含む。好ましくは、上記疾患と病症は、脳に関連する、特に脳血流の供給又は神経に関連する疾患又は病症、例えば、認知損傷又は認知障害、アルツハイマー病、認知症、17番染色体に関連する遺伝性前頭側頭型認知症、パーキンソン病(FTDP-17)、頭蓋脳損傷、脳卒中、てんかんを含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、上記患者はヒトである。
【0052】
本発明は、LRRKキナーゼ、特にLRRK2キナーゼ活性に関連する疾患又は病症を治療又は予防する方法を更に提供し、式(I)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、N-酸化物、水和物、溶媒和物、結晶多形物、代謝物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるエステル又はそのプロドラッグ化合物の中の少なくとも1つを患者に投与することを含む。
【0053】
本発明は、式(I)で示される化合物、そのラセミ体、立体異性体、互変異性体、同位体標識、N-酸化物、水和物、溶媒和物、結晶多形物、代謝物、薬学的に許容される塩、薬学的に許容されるエステル又はそのプロドラッグ化合物の中の少なくとも1つの、薬物の製造における用途を更に提供する。
【0054】
上記薬物は、LRRKキナーゼ、特にLRRK2キナーゼ活性に関連する疾患又は病症に利用可能である。
【0055】
薬物である場合、本発明の化合物は、医薬組成物の形態で投与してもよい。これらの組成物は、薬物分野でよく知られている方法に従って製造することができ、局所的又は全身的治療の要否及び治療される区域によって、様々な経路を介して投与することができる。局所投与(例えば、経皮、皮膚、目、及び鼻内、膣と直腸を含む粘膜への投与)、肺投与(例えば、噴霧器によることを含む、粉末やエアゾール剤を吸い込むか又は吹き込むことによる気管内、鼻内への投与)、経口又は非経口投与であってもよい。非経口投与は、静脈内、動脈内、皮下、腹膜内又は筋肉内注射又は輸注、或いは鞘内や脳室内などの頭蓋内投与を含む。単回ボーラス形態で非経口投与してもよく、又は例えば連続灌流ポンプによって投与してもよい。局所投与の医薬組成物及び製剤は、経皮貼付剤、軟膏、ローション、クリーム剤、ゲル剤、ドロップ剤、坐剤、スプレー剤、液剤、粉末製剤及び粉末剤を含んでもよい。通常の薬物担体、水、粉末又は油性基質、増粘剤などは、必須又は必要であり得る。
【0056】
本発明の組成物を製造する場合は、一般的に、活性成分を賦形剤と混合し、賦形剤により希釈したり、例えば、カプセル、小薬袋、紙や他の容器形のような担体内に入れたりする。賦形剤は希釈剤として使用される場合、溶媒、担体又は活性成分の媒体として使用される固体、半固体又は液体物質であってもよい。従って、組成物は、錠剤、丸剤、粉末剤、外用塗布剤、小薬袋、カシェ、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、溶液剤、シロップ剤、エアゾール剤(固体又は液体溶媒に溶解されたもの)、例えば10重量%にも達した活性化合物を含む軟膏剤、軟・硬質ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射溶液及び無菌包装粉末という形であってもよい。
【0057】
好適な賦形剤のある実例は、ラクトース、グルコース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ及びメチルセルロースを含む。製剤は、滑石粉、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムと鉱物油などの潤滑剤、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、安息香酸メチルと安息香酸ヒドロキシプロピルなどの防腐剤、甘味料及び矯味薬を更に含んでもよい。本発明の組成物は、患者への投与後に活性成分を即時放出、徐放又は遅延放出する作用が提供されるように、この分野で既知の方法で調製することができる。
【0058】
組成物は単位剤形で調製してもよく、1用量当たり約5~1000mg、より一般的には約100~500mgの活性成分を含む。「単位剤形」という用語は、物理的に分離された、ヒト患者及び他の哺乳動物に適切な単一用量単位を指し、各単位は好適な薬物賦形剤と混合された、計算により所望の治療効果を生み出せる所定量の活性物質を含む。
【0059】
活性化合物の有効用量の範囲は非常に大きくてもよく、通常は薬学的有効量で投与される。しかし、実際に投与される化合物の量は一般的に、医師によって、治療される病症、選択される投与経路、投与される実際の化合物、患者個体の年齢、重量及び反応、患者症状の重症度を含む関連状況に応じて決定されることが理解できる。
【0060】
錠剤などの固体組成物の製造は、主な活性成分を薬物賦形剤と混合し、本発明の化合物を含む均一な混合物である固体予備処方組成物を形成する。これらの予備製剤組成物が均一であると呼ばれる場合、活性成分が通常、組成物全体に均一に分布することで、当該組成物を同等に有効な錠剤、丸剤及びカプセル剤などの単位剤形に容易に分割できることを意味する。そして、当該固体予備製剤を、上記タイプの例えば約0.1~1000mgの本発明の活性成分を含む単位剤形に分割する。
【0061】
本発明の錠剤又は丸剤をコーティング又は複合し、持効性作用の利点を提供する剤形を得ることができる。例えば、錠剤又は丸剤には、内部用量成分及び外部用量成分が含まれ、後者は前者の被膜形態である。腸溶性層によって2つの成分を分離することができ、腸溶性層は、内部成分が十二指腸を完全に通過するか又は遅延放出されるように、胃内で崩壊を阻止するためのものである。複数の物質は、このような腸溶性層又はコーティング剤に使用可能であり、このような物質は、複数種の高分子酸、及び高分子酸と例えばシェラック、セチルアルコール、セルロースアセテートのような物質との混合物を含む。
【0062】
その中に本発明の化合物及び組成物を組み込んでもよく、経口又は注射投与用の液体形態は、水溶液、適当に味を矯正したシロップ剤、水又は油懸濁液、綿子油、ゴマ油、ヤシ油又はピーナッツ油などの食用油で味を矯正した乳剤、及びエリキシル剤と類似の薬用溶媒を含む。
【0063】
吸い込み又は吹き込みに使用される組成物には、薬学的に許容される水又は有機溶剤又はその混合物に溶解した溶液剤及び懸濁液、粉末剤が含まれる。液体又は固体組成物は、上記のような好適な薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。ある実施形態において、組成物は、局所的又は全身的効果を実現するために、経口又は鼻呼吸経路によって投与される。不活性なガスを使用することにより、組成物を霧化することができる。霧化装置によって霧化溶液を直接に吸い込んでもよく、又は霧化装置は、フェイスマスクテント又は間欠陽圧人工呼吸器に接続されてもよい。溶液、懸濁液又は粉末組成物は、経口投与されてもよく、又は適切な方法で製剤を送達する装置により経鼻投与されてもよい。
【0064】
患者に投与される化合物又は組成物の量は一定ではなく、投与される薬物、予防又は治療などの投与の目的、患者の状態、投与の方式などによって決定される。治療用途において、疾患及びその合併症の症状を治癒又は少なくとも部分的に抑制するのに十分な量の組成物を、疾患に罹患した患者に投与することができる。有効用量は、治療される疾患の状態及び主治臨床医の判断に依存すべきであり、この判断は、例えば、疾患の重症度、患者の年齢、体重及び一般的な状況などの要因に依存する。
【0065】
患者に投与される組成物は、上記医薬組成物の形態であってもよい。これらの組成物は、通常の滅菌技術又はろ過滅菌によって滅菌することができる。水溶液の包装をそのまま使用するか、又は凍結乾燥し、投与前に凍結乾燥製剤と無菌の水性担体を混合してもよい。化合物製剤のpHは、通常3~11、より好ましくは5~9、最も好ましくは7~8である。ある上記の賦形剤、担体又は安定剤を使用することで、薬学的塩が形成されることが理解できる。
【0066】
本発明の化合物の治療用量は、例えば、治療される具体的な用途、化合物の投与方式、患者の健康と状態、及び処方を下す医師の判断により決定することができる。医薬組成物における本発明の化合物の比率又は濃度は一定ではなく、用量、化学特性(例えば、疎水性)及び投与経路を含む様々な要因に依存する。例えば、非経口投与のために、約0.1~10%w/vの当該化合物を含む生理的緩衝水溶液により本発明の化合物を提供してもよい。ある典型的な用量範囲は、約1μg/kg~約1g/kg体重/日である。ある実施形態において、用量範囲は、約0.01mg/kg~約100mg/kg体重/日である。用量は、例えば、疾患又は病症の種類や進行の程度、具体的な患者の一般的な健康状態、選択される化合物の相対的な生物学的効力、賦形剤製剤及びその投与経路のような変数に依存する可能性が高い。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験システムから導出された用量-反応曲線によって外挿することで得ることができる。
【0067】
本発明は、分析試験における式(I)で示される化合物の用途を提供し、上記分析試験は、1種又は複数種のキナーゼを抑制可能な化合物の同定に用いられ、上記キナーゼはLRRKが好ましく、LRRK2がより好ましい。
【0068】
好ましくは、上記分析試験は競合的結合試験である。
【0069】
より好ましくは、競合的結合試験は、本発明の化合物をキナーゼに接触させ、且つ本発明による化合物とキナーゼとの間の相互作用の何れかの変化を検測することを含む。
【0070】
本発明の別の態様は、本発明の化合物とキナーゼの結合を検測する方法を提供し、上記方法は、
(i)キナーゼ及び既知基質の存在下で、本発明の化合物を上記キナーゼに接触させるステップと、
(ii)上記キナーゼと上記既知基質との間の相互作用の何れかの変化を検測するステップと、を含む。
【0071】
〔有益な効果〕
本発明により提供される化合物は、良好なLRRK2キナーゼ調節/阻害作用を有すると共に、より優れた脳透過率を有し、LRRK2キナーゼ活性に関連する病症と疾患、特に脳透過率に関連する病症と疾患の治療、及びこのような症状と疾患のための薬物の調製に利用可能である。本発明の化合物は、製造方法が簡単で、良い応用の見通しを有する。
【0072】
〔用語の定義と説明〕
特に説明のない限り、本願の明細書及び特許請求の範囲に記載される基と用語の定義は、実例としての定義、例示的な定義、好ましい定義、表に記載される定義、実施例における具体的な化合物の定義などを含み、互いに任意に組み合わせたり、結合したりすることができる。このような組み合わせと結合後の基の定義及び化合物の構造は、本願の明細書及び/又は特許請求の範囲に記載される範囲内であると理解すべきである。
【0073】
特に説明のない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載される数値範囲は、少なくともその中のそれぞれの具体的な整数値が記載されていることに相当する。例えば、数値範囲「1~40」は、数値範囲「1~10」における各整数値である1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、及び数値範囲「11~40」における各整数値である11、12、13、14、15、......、35、36、37、38、39、40が記載されていることに相当する。また、ある数値範囲が「数」と定義される場合、当該範囲の2つの端点、当該範囲における各整数及び当該範囲における各小数が記載されていると理解すべきである。例えば、「0~10の数」は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10の各整数が記載されているだけでなく、更に少なくとも各整数と0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9との和が記載されていると理解すべきである。
【0074】
本明細書では、1、2個又はそれ以上を記載する場合、「それ以上」とは、2よりも大きい、例えば3以上の整数、例えば、3、4、5、6、7、8、9又は10を指すべきであると理解すべきである。
【0075】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表す。
【0076】
「C1-40アルキル基」という用語は、1~40個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和一価炭化水素基を表すと理解すべきである。例えば、「C1-10アルキル基」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖アルキル基を示し、「C1-6アルキル基」は、1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖アルキル基を示す。上記アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、2-メチルブチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、4-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、1-メチルペンチル基、2-エチルブチル基、1-エチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基や1,2-ジメチルブチル基など又はそれらの異性体である。
【0077】
「C2-40アルケニル基」という用語は、好ましくは1つ又は複数の二重結合を含むと共に2~40個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を示すと理解すべきであり、「C2-10アルケニル基」が好ましい。「C2-10アルケニル基」は、好ましくは1つ又は複数の二重結合を含むと共に2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有し、例えば、2、3、4、5又は6個の炭素原子(即ち、C2-6アルケニル基)を有し、2又は3個の炭素原子(即ち、C2-3アルケニル基)を有する直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を示すと理解すべきである。上記アルケニル基が1より多い二重結合を含む場合、上記二重結合は互いに分離又は共役してもよいと理解すべきである。上記アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、(E)-2-メチルビニル基、(Z)-2-メチルビニル基、(E)-ブト-2-エニル基、(Z)-ブト-2-エニル基、(E)-ブト-1-エニル基、(Z)-ブト-1-エニル基、ペント-4-エニル基、(E)-ペント-3-エニル基、(Z)-ペント-3-エニル基、(E)-ペント-2-エニル基、(Z)-ペント-2-エニル基、(E)-ペント-1-エニル基、(Z)-ペント-1-エニル基、ヘキシ-5-エニル基、(E)-ヘキシ-4-エニル基、(Z)-ヘキシ-4-エニル基、(E)-ヘキシ-3-エニル基、(Z)-ヘキシ-3-エニル基、(E)-ヘキシ-2-エニル基、(Z)-ヘキシ-2-エニル基、(E)-ヘキシ-1-エニル基、(Z)-ヘキシ-1-エニル基、イソプロペニル基、2-メチルプロプ-2-エニル基、1-メチルプロプ-2-エニル基、2-メチルプロプ-1-エニル基、(E)-1-メチルプロプ-1-エニル基、(Z)-1-メチルプロプ-1-エニル基、3-メチルブト-3-エニル基、2-メチルブト-3-エニル基、1-メチルブト-3-エニル基、3-メチルブト-2-エニル基、(E)-2-メチルブト-2-エニル基、(Z)-2-メチルブト-2-エニル基、(E)-1-メチルブト-2-エニル基、(Z)-1-メチルブト-2-エニル基、(E)-3-メチルブト-1-エニル基、(Z)-3-メチルブト-1-エニル基、(E)-2-メチルブト-1-エニル基、(Z)-2-メチルブト-1-エニル基、(E)-1-メチルブト-1-エニル基、(Z)-1-メチルブト-1-エニル基、1,1-ジメチルプロプ-2-エニル基、1-エチルプロプ-1-エニル基、1-プロピルビニル基、1-イソプロピルビニル基である。
【0078】
「C2-40アルキニル基」という用語は、1つ又は複数の三重結合を含むと共に2~40個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を示すと理解すべきであり、「C2-10アルキニル基」が好ましい。「C2-10アルキニル基」という用語は、好ましくは1つ又は複数の三重結合を含むと共に2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有し、例えば、2、3、4、5又は6個の炭素原子(即ち、C2-6アルキニル基)を有し、2又は3個の炭素原子(即ち、C2-3アルキニル基)を有する直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を示すと理解すべきである。上記アルキニル基は、例えば、エチニル基、プロプ-1-イニル基、プロプ-2-イニル基、ブト-1-イニル基、ブト-2-イニル基、ブト-3-イニル基、ペント-1-イニル基、ペント-2-イニル基、ペント-3-イニル基、ペント-4-イニル基、ヘキシ-1-イニル基、ヘキシ-2-イニル基、ヘキシ-3-イニル基、ヘキシ-4-イニル基、ヘキシ-5-イニル基、1-メチルプロプ-2-イニル基、2-メチルブト-3-イニル基、1-メチルブト-3-イニル基、1-メチルブト-2-イニル基、3-メチルブト-1-イニル基、1-エチルプロプ-2-イニル基、3-メチルペント-4-イニル基、2-メチルペント-4-イニル基、1-メチルペント-4-イニル基、2-メチルペント-3-イニル基、1-メチルペント-3-イニル基、4-メチルペント-2-イニル基、1-メチルペント-2-イニル基、4-メチルペント-1-イニル基、3-メチルペント-1-イニル基、2-エチルブト-3-イニル基、1-エチルブト-3-イニル基、1-エチルブト-2-イニル基、1-プロピルプロプ-2-イニル基、1-イソプロピルプロプ-2-イニル基、2,2-ジメチルブト-3-イニル基、1,1-ジメチルブト-3-イニル基、1,1-ジメチルブト-2-イニル基又は3,3-ジメチルブト-1-イニル基である。特に、上記アルキニル基は、エチニル基、プロプ-1-イニル基又はプロプ-2-イニル基である。
【0079】
「C3-40シクロアルキル基」という用語は、3~40個の炭素原子を有する飽和の一価単環、二環(例えば、縮合環、架橋環、スピロ環)式炭化水素環又は三環式アルカンを示すと理解すべきであり、「C3-10シクロアルキル基」が好ましい。「C3-10シクロアルキル基」という用語は、3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子を有する飽和の一価単環、二環(例えば、架橋環、スピロ環)式炭化水素環又は三環式アルカンを示すと理解すべきである。上記C3-10シクロアルキル基は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基やシクロデシル基などの単環式炭化水素基、又は、ボルニル基、インドリル基、ヘキサヒドロインドリル基、テトラヒドロナフチル基、デカヒドロナフチル基、ジシクロ[2.1.1]ヘキシル基、ジシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ジシクロ[2.2.1]ヘプテン基、6,6-ジメチルジシクロ[3.1.1]ヘプチル基、2,6,6-トリメチルジシクロ[3.1.1]ヘプチル基、ジシクロ[2.2.2]オクチル基、2,7-ジアザスピロ[3,5]ノナン基、2,6-ジアザスピロ[3,4]オクタン基などの二環式炭化水素基、又は、アダマンチル基などの三環式炭化水素基であってもよい。
【0080】
特に定義のない限り、「3~20員ヘテロシクリル基」という用語は、飽和又は不飽和の非芳香族の環又は環系を指し、例えば、4-、5-、6-又は7-員の単環、7-、8-、9-、10-、11-又は12-員の二環(例えば、縮合環、架橋環、スピロ環)又は10-、11-、12-、13-、14-又は15-員の三環式環系であり、且つO、S及びNから選ばれる少なくとも1個、例えば1、2、3、4、5個又はそれ以上のヘテロ原子を含み、そのうち、NとSは、窒素酸化物、-S(O)-又は-S(O)-の状態が形成されるように、任意選択的に様々な酸化状態に酸化されてもよい。好ましくは、上記ヘテロシクリル基は、「3~10員ヘテロシクリル基」から選ばれてもよい。「3~10員ヘテロシクリル基」という用語は、飽和又は不飽和の非芳香族環又は環系であり、且つO、S及びNから選ばれる少なくとも1つのヘテロ原子を含むものを指す。上記ヘテロシクリル基は、上記炭素原子の何れか1つ又は窒素原子(存在する場合)により分子の残りの部分と接続してもよい。上記ヘテロシクリル基は、縮合又は架橋式の環及びスピロ環式の環を含んでもよい。特に、上記ヘテロシクリル基は、アゼチジニル基、オキセタニル基などの4員環、テトラヒドロフラニル基、ジオキソリル基、ピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピロリニル基などの5員環、又はテトラヒドロピラニル基、ピペリジニル基、モルホリニル基、ジチアニル基、チオモルホリニル基、ピペラジニル基やトリチアニル基などの6員環、又はジアゼパニル基などの7員環を含んでもよいが、これらに限定されない。任意選択的に、上記ヘテロシクリル基はベンゾ縮合式のものであってもよい。上記ヘテロシクリル基は、二環式のものであってもよく、例えば、ヘキサヒドロシクロペンタ[c]ピロール-2(1H)-イル環などの5,5員環、又はヘキサヒドロピロロ[1,2-a]ピラジン-2(1H)-イル環などの5,6員二環であるが、これらに限定されない。ヘテロシクリル基は、部分的に不飽和であってもよく、即ち、1つ又は複数の二重結合を含んでもよく、例えば、ジヒドロフラニル基、ジヒドロピラニル基、2,5-ジヒドロ-1H-ピロリル基、4H-[1,3,4]チアジアジニル基、4,5-ジヒドロオキサゾリル基又は4H-[1,4]チアジニル基であるが、これらに限定されず、或いは、ベンゾ縮合式のものであってもよく、例えば、ジヒドロイソキノリル基であるが、これに限定されない。上記3~20員ヘテロシクリル基は、他の基と結合して本発明の化合物を構成する場合、3~20員ヘテロシクリル基における炭素原子が他の基と結合してもよく、3~20員ヘテロシクリル基環におけるヘテロ環原子が他の基と結合してもよい。例えば、3~20員ヘテロシクリル基はピペラジニル基から選ばれる場合、ピペラジニル基における窒素原子が他の基と結合してもよい。又は、3~20員ヘテロシクリル基はピペリジニル基から選ばれる場合、ピペリジニル基環における窒素原子とそのパラ位での炭素原子が他の基と結合してもよい。
【0081】
「C6-20アリール基」という用語は、好ましくは6~20個の炭素原子を有する一価芳香族又は部分的に芳香族の単環、二環(例えば、縮合環、架橋環、スピロ環)又は三環式炭化水素環を示すと理解すべきであり、単芳香族環又は縮合多芳香族環であってもよく、「C6-14アリール基」が好ましい。用語「C6-14アリール基」は、好ましくは6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の炭素原子を有する一価芳香族性又は部分的に芳香族性の単環、二環又は三環式炭化水素環(「C6-14アリール基」)、特に、6個の炭素原子を有する環(「Cアリール基」)、例えば、フェニル基、又はビフェニル基、或いは9個の炭素原子を有する環(「Cアリール基」)、例えば、インダニル基やインデニル基、或いは10個の炭素原子を有する環(「C10アリール基」)、例えば、テトラヒドロナフチル基、ジヒドロナフチル基又はナフチル基、或いは13個の炭素原子を有する環(「C13アリール基」)、例えば、フルオレニル基、或いは14個の炭素原子を有する環(「C14アリール基」)、例えば、アントリル基を示すと理解すべきである。上記C6-20アリール基は置換される場合、単一又は複数の置換であってもよい。しかも、その置換部位は限定されず、例えば、オルト、パラ、又はメタ置換であってもよい。
【0082】
「5~20員ヘテロアリール基」という用語は、5~20個の環原子を有すると共に、独立的にN、O及びSから選ばれる1~5個のヘテロ原子を含むこのような一価単環、二環(例えば、縮合環、架橋環、スピロ環)又は三環式芳香族環系を含むと理解すべきであり、例えば、「5~14員ヘテロアリール基」である。「5~14員ヘテロアリール基」という用語は、5、6、7、8、9、10、11、12、13又は14個の炭素原子、特に、5又は6又は9又は10個の炭素原子を有すると共に、独立的にN、O及びSから選ばれる1~5個、好ましくは1~3個のヘテロ原子を含み、また更に、何れの場合にもベンゾ縮合式のものであってもよい一価単環、二環又は三環式芳香族環系を含むと理解すべきである。「ヘテロアリール基」はまた、その中のヘテロアリール環が1つ又は複数のアリール基、脂環族又はヘテロシクリル基環と縮合した基を指し、そのうち、上記の連結する土台又は部位はヘテロアリール環にある。非限定的な実例は、1-、2-、3-、5-、6-、7-又は8-インダジニル基、1-、3-、4-、5-、6-又は7-イソインドリル基、2-、3-、4-、5-、6-又は7-インドリル基、2-、3-、4-、5-、6-又は7-インダゾリル基、2-、4-、5-、6-、7-又は8-プリン基、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-又は9-キノアジニル基、2-、3-、4-、5-、6-、7-又は8-キノリル基、1-、3-、4-、5-、6-、7-又は8-イソキノリル基、1-、4-、5-、6-、7-又は8-フタラジニル基(phthalazinyl)、2-、3-、4-、5-又は6-ナフタリジニル基、2-、3-、5-、6-、7-又は8-キナゾリニル基、3-、4-、5-、6-、7-又は8-シンノリニル基、2-、4-、6-又は7-プテリジル基、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-又は8-4aHカルバゾリル基、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-又は8-カルバゾリルカルバゾリル基、1-、3-、4-、5-、6-、7-、8-又は9-カルボリニル基、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-、9-又は10-フェナントリジニル基、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-又は9-アクリジニル基、1-、2-、4-、5-、6-、7-、8-又は9-ジニル基、2-、3-、4-、5-、6-、8-、9-又は10-フェナントロリニル基、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-又は9-フェナジニル基、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-、9-又は10-フェノチアジニル基、1-、2-、3-、4-、6-、7-、8-、9-又は10-フェナジニル基、2-、3-、4-、5-、6-又は1-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-又は10-ベンゾイソキノリル基、2-、3-、4-又はチエノ[2,3-b]フラニル基、2-、3-、5-、6-、7-、8-、9-、10-又は11-7H-ピラジノ[2,3-c]カルバゾリル基、2-、3-、5-、6-又は7-2H-フロ[3,2-b]-ピラニル基、2-、3-、4-、5-、7-又は8-5H-ピリド[2,3-d]-o-アジニル基、1-、3-又は5-1H-ピラゾロ[4,3-d]-チアゾリル基、2-、4-又は5-1-H-イミダゾ[4,5-d]チアゾリル基、3-、5-又は8-ピラジノ[2,3-d]ピリダジニル基、2-、3-、5-又は6-イミダゾ[2,1-b]チアゾリル基、1-、3-、6-、7-、8-又は9-フロ[3,4-c]シンノリニルル基、1-、2-、3-、4-、5-、6-、8-、9-、10-又は11-4H-ピリド[2,3-c]カルバゾリル基、2-、3-、6-又は7-イミダゾ[1,2-b][1,2,4]トリアジニル基、7-ベンゾ[b]チエニル基、2-、4-、5-、6-又は7-ベンゾオキサゾリル基、2-、4-、5-、6-又は7-ベンゾイミダゾリル基、2-、4-、4-、5-、6-又は7-ベンゾチアゾリル基、1-、2-、4-、5-、6-、7-、8-又は9-ベンゾオキサピニル基(benzoxapinyl)、2-、4-、5-、6-、7-又は8-ベンゾアジニル基、1-、2-、3-、5-、6-、7-、8-、9-、10-又は11-1H-ピロロ[1,2-b][2]ベンゾアザピニル基(benzazapinyl)を含む。典型的な縮合ヘテロアリール基は、2-、3-、4-、5-、6-、7-又は8-キノリル基、1-、3-、4-、5-、6-、7-又は8-イソキノリル基、2-、3-、4-、5-、6-又は7-インドリル基、2-、3-、4-、5-、6-又は7-ベンゾ[b]チエニル基、2-、4-、5-、6-又は7-ベンゾオキサゾリル基、2-、4-、5-、6-又は7-ベンゾイミダゾリル基及び2-、4-、5-、6-又は7-ベンゾチアゾリル基を含むが、これらに限定されない。上記5~20員ヘテロアリール基は、他の基と結合して本発明の化合物を構成する場合、5~20員ヘテロアリール基環における炭素原子が他の基と結合してもよく、5~20員ヘテロアリール基環におけるヘテロ原子が他の基と結合してもよい。上記5~20員ヘテロアリール基は置換される場合、単一又は複数の置換であってもよい。しかも、その置換部位は制限されず、例えば、ヘテロアリール基環における炭素原子と結合する水素が置換されてもよく、又は、ヘテロアリール基環におけるヘテロ原子と結合する水素が置換されてもよい。
【0083】
「スピロ環」という用語は、2つの環が1つの環形成原子を共有する環系を指す。
【0084】
「縮合環」という用語は、2つの環が2つの環形成原子を共有する環系を指す。
【0085】
「架橋環」という用語は、2つの環が3つ以上の環形成原子を共有する環系を指す。
【0086】
特に説明のない限り、ヘテロシクリル基、ヘテロアリール基又はヘテロアリレン基は、その全ての可能な異性体形態、例えば、その位置異性体を含む。従って、幾つかの説明のための非限定的な実例としては、その1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-、10-、11-、12-位など(存在する場合)のうちの1、2個又はそれ以上の位置により置換するか又は他の基と結合する形態を含んでもよく、ピリジン-2-イル、ピリジリデン-2-イル、ピリジン-3-イル、ピリジリデン-3-イル、ピリジン-4-イルとピリジリデン-4-イル、チエン-2-イル、チエニリデン-2-イル、チエン-3-イル、チエニリデン-3-イルを含むチエニル基又はチエニリデニル基、及びピラゾール-1-イル、ピラゾール-3-イル、ピラゾール-4-イル、ピラゾール-5-イルを含む。
【0087】
「オキソ」という用語は、置換基における炭素原子、窒素原子又は硫黄原子が酸化されて形成されたオキシ置換(=O)を指す。
【0088】
特に説明のない限り、本明細書における用語の定義は同様に、当該用語を含む基に適用され、例えば、C1-6アルキル基の定義は、C1-6アルキルオキシ基、C3-8シクロアルキル-C1-6アルキル-などにも適用される。
【0089】
当業者であれば、式(I)で示される化合物は、様々な薬学的に許容される塩の形態で存在可能であると理解できる。これらの化合物は塩基性中心を有する場合、酸付加塩を形成することができ、これらの化合物は酸性中心を有する場合、塩基付加塩を形成することができ、これらの化合物は酸性中心(例えば、カルボキシル基)と塩基性中心(例えば、アミノ基)の両方を含む場合、内塩を更に形成することができる。
【0090】
本発明の化合物は、溶媒和物(例えば、水和物)の形態で存在してもよく、そのうち、本発明の化合物は、上記化合物の結晶格子の構成要素とする極性溶媒、特に、例えば、水、メタノール又はエタノールを含む。極性溶媒、特に水の量は、化学量論比又は非化学量論比で存在してもよい。
【0091】
その分子構造によって、本発明の化合物は、キラルであってもよいため、様々なエナンチオマーの形態があり得る。従って、これらの化合物は、ラセミ形態又は光学活性形態で存在することが可能である。本発明の化合物は、各キラル炭素がR又はS配置である異性体又はその混合物、ラセミ体を包含する。本発明の化合物又はその中間体は、当業者によく知られている化学的又は物理的方法によって、エナンチオマー化合物に分離されたり、この形態で合成に使用されたりすることができる。ラセミアミンの場合には、光学活性の分割試薬との反応により、混合物から非エナンチオマーが製造される。好適な分割試薬の例としては、光学活性の酸であり、例えば、RとS形の酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸、好適なN-保護されたアミノ酸(例えば、N-ベンゾイルプロリンやN-ベンゼンスルホニルプロリン)又は様々な光学活性のカンファースルホン酸である。光学活性の分割試薬(例えば、シリカゲルに固定されたジニトロベンゾイルフェニルグリシン、セルローストリアセテートやその他の炭水化物の誘導体又はキラル誘導体化されたメタクリレートポリマー)によって、クロマトグラフィーによるエナンチオマーの分割をよく行うこともできる。そのための好適な溶離剤は、水又はアルコールを含む溶媒混合物、例えば、ヘキサン/イソプロパノール/アセトニトリルである。
【0092】
既知の方法により、例えば、抽出、ろ過又はカラムクロマトグラフィーなどにより、対応する安定的な異性体を分離することができる。
【0093】
「患者」という用語は、哺乳動物を含む任意の動物を指し、好ましくは、マウス、ラット、他の齧歯類動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ又は霊長類動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0094】
「治療有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医師が組織、システム、動物、個体又はヒトにおいて求めている生物学的又は医学的反応を引き起こす活性化合物又は薬物の量を指し、以下の1項又は複数項を含む:(1)疾患の予防:例えば、疾患、障害又は病症に感染しやすいが、疾患の病理又は症状が経験されていない又は現れていない個体において疾患、障害又は病症を予防すること。(2)疾患の抑制:例えば、疾患、障害又は病症の病理又は症状が経験されている又は現れている個体において疾患、障害又は病症を抑制する(即ち、病理及び/又は症状の更なる進行を阻止する)こと。(3)疾患の緩和:例えば、疾患、障害又は病症の病理又は症状が経験されている又は現れている個体において疾患、障害又は病症を緩和する(即ち、病理及び/又は症状を好転させる)こと。治療有効量は、最初に細胞培養測定により見積もることができ、インビボデータから初期用量を見積もってもよい。これらの初期ガイドラインによれば、当業者はヒトの有効用量を決定することができる。なお、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的方法により、例えば、LD50及びED50を測定することにより、本願に記載される化合物の毒性と治療効果を確定してもよい。
【0095】
「LRRKキナーゼ活性に関連する疾患又は病症」という用語は、本願に定義された不適切な上記キナーゼ活性又はキナーゼの過活性を特徴とする疾患又は病症を指す。不適切な活性は、(i)通常、上記キナーゼを発現しない細胞におけるキナーゼ発現、(ii)望ましくない細胞の増殖、分化及び/又は成長を引き起こす、増加したキナーゼ発現、又は(iii)細胞の増殖、分化及び/又は成長の望ましくない減少を引き起こす、低下したキナーゼ発現を指す。キナーゼの過活性は、特定のキナーゼをコードする遺伝子の増幅又は一定のキナーゼ活性レベルの発生を指し、細胞の増殖、分化及び/又は成長の異常に関わり得る(即ち、キナーゼレベルの増加につれて、1つ又は複数の細胞異常の症状の重症度が増加する)。過活性は、突然変異により、リガンドとは関係ない結果又は構成的活性化の結果であってもよく、上記突然変異は、例えば、リガンド結合を司るキナーゼの断片の欠失である。
【0096】
本発明に記載される「添加物」の実例は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients,2nd edition,1994, edited by A Wade & PJ Weller」に示されている。
【0097】
本発明に記載される「担体」又は「希釈剤」は、製薬分野でよく知られているもので、且つ例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(edited by A.R. Gennaro 1985)に記載されている。
【0098】
薬物担体、添加物又は希釈剤の選択は、所望の投与経路及び標準的な薬学実務によって選択することができる。医薬組成物は、担体、添加物や希釈剤となる何れかの好適な結合剤、潤滑剤、懸濁剤、コーティング剤、可溶化剤、緩衝剤、矯味薬、界面活性剤、増粘剤、防腐剤(酸化防止剤を含む)などと、制剤を対象の血液と等張にするために含まれる物質とを含み、又は付加的に含んでもよい。
【0099】
そのうち、担体が固体で経口投与に適用される薬物製剤は、単位用量製剤形態、例えば、所定量の活性化合物をそれぞれ含む丸剤、カプセル又は錠剤が最も好ましい。圧縮又は型で成形することにより、任意選択的に1種以上の補助成分と合わせて錠剤を製造することができる。適当な機器において自由流動形態(例えば、粉末又は粒子)にある活性化合物を圧縮し、任意選択的に結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、潤滑物質、界面活性剤又は分散剤と混合することにより、圧縮錠剤を製造することができる。活性化合物及び不活性液体希釈剤を型に入れて成形することにより、湿製錠剤を製造することができる。錠剤を任意選択的にコーティングしてもよいが、コーティングしなければ、任意選択的に符号を印刷することができる。活性化合物を単独で、又は1種以上の補助成分と混合してカプセル殻に充填し、そして通常の方法で密封することでカプセルを製造することができる。カシェは、カプセルと類似であり、そのうち、活性化合物を任意の補助成分と共にライスペーパーフィルムに密封する。活性化合物を分散可能なの粒子として調製してもよく、例えば、投与前にそれを水に懸濁させたり、食べ物に振りかけたりすることができる。粒子を例えば、小袋に包装してもよい。そのうち、担体は、液体のもので経口投与に適する製剤であってもよく、水性又は非水性液体形の溶液又は懸濁液としてもよく、又は水中油型液体乳剤としてもよい。
【0100】
「薬学的に許容される塩」という用語は、その好適な酸付加塩及びアルカリ塩を含む。好適な薬塩は、J Pharm Sci,66,199,1977,Bergeなどに示されている。例えば、ハロゲン化水素酸(例えば、塩酸、臭化水素酸とヨウ化水素酸)、硫酸、リン酸硫酸塩、硫酸水素塩、ヘミ硫酸塩、チオシアン酸塩、過硫酸塩とスルホン酸のような鉱酸などの無機強酸を使用したり、酢酸のような非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)の1~4個の炭素原子を持つアルカンカルボン酸などの有機強カルボン酸を使用したり、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸や4-フタル酸などの飽和又は不飽和のジカルボン酸を使用したり、アスコルビン酸、エタノール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸やクエン酸などのヒドロキシカルボン酸を使用したり、アスパラギン酸やグルタミン酸などのアミノ酸を使用したり、安息香酸を使用したり、メタン-やp-トルエンスルホン酸のような未置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)の(C-C)-アルキル-又はアリール-スルホン酸などの有機スルホン酸を使用したりして塩を形成する。
【0101】
好適な塩は、例えば、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、乳酸塩、グルコン酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、パントテン酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、酪酸塩、ジグルコン酸塩、シクロペンタンカルボン酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、シュウ酸塩、ヘプタン酸塩、カプロン酸塩、フマル酸塩、ニコチン酸塩、パルミチン酸エステル、ペクチン酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ネオペンタン酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、ラクトビオン酸塩、pivolate、ショウノウ酸塩、ウンデカン酸塩とコハク酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-クロロベンゼンスルホン酸塩とp-トルエンスルホン酸塩などの有機スルホン酸、及び塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硫酸水素、ヘミ硫酸、チオシアン酸、過硫酸、リン酸とスルホン酸などの無機酸を含む。
【0102】
「薬学的に許容されるエステル」という用語は、有機酸又はアルコール/水酸化物を使用し、本発明の化合物の構造におけるエステル化可能な官能基と合わせてエステルを形成することを指す。有機酸は、酢酸のような非置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)の1~12個の炭素原子を持つアルカンカルボン酸などのカルボン酸を含み、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸や4-フタル酸などの飽和又は不飽和のジカルボン酸を使用したり、アスコルビン酸、エタノール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸やクエン酸などのヒドロキシカルボン酸を使用したり、アスパラギン酸やグルタミン酸などのアミノ酸を使用したり、安息香酸を使用したり、メタン-やp-トルエンスルホン酸のような未置換又は置換(例えば、ハロゲンによる)の(C-C)-アルキル-又はアリール-スルホン酸などの有機スルホン酸を使用したりする。好適な水酸化物は、無機水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムを含む。アルコールは、未置換でも置換でもよい(例えば、ハロゲンによる)1~12個の炭素原子を持つアルカノールを含む。
【0103】
「同位体標識」という用語は、本発明の化合物中の少なくとも1つの原子が同位体により置換されることを示す。上記同位体の実例は、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素と塩素の同位体、例えば、対応するH、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clを含む。重水素(即ち、H)などの同位体による置換は、更に大きな代謝安定性、例えば、増加したインビボ半減期又は低下した用量要求により発生される幾つかの治療上の利点を提供することができるので、好適であり得る場合がある。例えば、本発明は、その中の何れか1つの水素原子が重水素原子により置換された一般式(I)の化合物を含む。
【0104】
「プロドラッグ化合物」という用語は、インビボで一般式(I)による活性親薬物を放出する、共有結合した化合物を示す。このようなプロドラッグは、一般的に、1つ以上の好適な基が既に修飾されていることで、ヒト又は哺乳動物対象に投与した後に当該修飾が逆転可能である本発明の化合物である。一般的に、インビボで逆転されるように第2の薬物をこのプロドラッグと共に投与するにも拘らず、このような対象における天然に存在する酵素により逆転を行う。このような修飾の実例としては、上述した薬学的に許容されるエステルを含み、ここで、この逆転はエステラーゼなどにより行うことができる。
【0105】
「結晶多形物」という用語は、種々の結晶形、多結晶形及び水和形の本発明の化合物を示す。製薬業界では、このような化合物の合成製造に使用される溶媒の精製及び/又は分離という方法により、これらの形態の何れかで化学化合物を分離できることが明らかになっている。
【0106】
「投与」という用語は、本発明の医薬組成物が直腸、鼻内、気管支内、局所(口腔と舌下を含む)、膣又は非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内と皮内を含む)、腹膜内又は鞘内投与に適用可能なことを示す。好ましくは、上記製剤は経口投与製剤である。製剤は、便利に単位剤形で、即ち、単位用量或いは単位用量の複数の単位又はサブ単位の離散部分を含む形で示すことができる。実例として、製剤は、錠剤と持続放出カプセルの形であってもよく、且つ薬学分野でよく知られている任意の方法で製造することができる。
【0107】
本発明の経口投与用の製剤は、それぞれ所定量の活性剤を含むカプセル、ゲル剤、ドロップ剤、カシェ、丸剤や錠剤のような離散単位として、粉末又は粒子として、水性液体若しくは非水性液体中の活性剤の溶液、エマルジョン又は懸濁液として、或いは水中油型液体乳剤又は油中水型液体乳剤として、或いはボーラス製剤などとして示してもよい。好ましくは、各用量のこれらの組成物は、1~250mg、且つより好ましくは10~100mgの活性成分を含む。
【0108】
経口投与用の組成物(例えば、錠剤とカプセル)には、更に、溶媒及び/又は常用添加物、例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガント、ポリビニルピロリドン(ポビドン)、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、スクロースとデンプンなどの結合剤、コーンスターチ、ゼラチン、ラクトース、スクロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、第二リン酸カルシウム、塩化ナトリウムとアルギン酸などのフィラーと担体、及びステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウムと他のステアリン酸金属エステル、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸、シリコーン流体、パラフィンワックス、油とコロイド状シリカなどの潤滑剤が含まれる。矯味薬は、例えば、ミント、冬緑油、チェリー香料などを使用してもよい。剤形が識別されやすくなるように、着色剤を添加する必要があり得る。錠剤は、この分野でよく知られている方法でコーティングしてもよい。
【0109】
経口投与に適用される他の製剤は、一般的に、スクロースとアラビアゴム又はトラガント中の活性剤である矯味基質を含む外用塗布剤と、ゼラチンとグリセリン、又はスクロースとアラビアゴムなどの不活性基質中の活性剤を含むトローチと、及び適当な液体担体中の活性剤とを含むうがい剤を含む。
【0110】
その他の投与形態は、静脈内、動脈内、鞘内、皮下、皮内、腹膜内又は筋肉内注射を行い、且つ無菌又は滅菌可能な溶液で製造された溶液又は乳剤を含む。注射可能な形態は、通常、1剤あたり10~1000mg、好ましくは10~250mgの間の活性成分を含む。
【0111】
上記投与の形態は、1種以上の本発明の化合物と1種以上の他の活性剤を併用して投与する併用投与であってもよい。この場合、本発明の化合物と1種以上の他の活性剤を連続的、同時又は順次に投与することができる。
【0112】
〔分析試験〕
本発明の別の態様は、分析試験における上記化合物の用途に関し、この分析試験は、1種又は複数種のキナーゼ、より好ましくはLRRK、更により好ましくはLRRK2を抑制可能な他の候補化合物を同定するためである。
【0113】
好ましくは、当該分析試験は競合的結合試験である。
【0114】
より好ましくは、競合的結合試験は、本発明の化合物をキナーゼ、好ましくはLRRK、より好ましくはLRRK2と候補化合物に接触させ、且つ本発明による化合物とキナーゼとの間の相互作用の何れかの変化を検測することを含む。
【0115】
好ましくは、本発明の化合物のSAR修飾により候補化合物を生成する。
【0116】
本願に使用されるように、「SAR修飾」という用語は、化学誘導化により所定の化合物を改変する標準的な方法を指す。
【0117】
従って、一態様では、同定される化合物は、モデル(例えば、テンプレート)として、他の化合物の開発に用いることができる。この測定に使用される化合物は、溶液に遊離したり、固体担体に固定したり、細胞表面に搭載したり、細胞内にあったりすることができる。化合物と測定待ち薬物との間の活性消去又は結合複合物の形成を測定することができる。
【0118】
本発明の分析試験はスクリーニングであってもよいので、多くの薬物を測定した。一態様では、本発明の分析測定方法はハイスループットスクリーニングである。
【0119】
本発明は、更に、競合的薬物スクリーニング試験の使用を考慮に入れ、そのうち、化合物に結合可能な中和抗体と化合物に結合するための測定化合物が特異的に競合する。
【0120】
物質に適当な結合親和性を有する試薬のハイスループットスクリーニング(HTS)のために、スクリーニングするための別の技術が提供され、且つ当該技術は、WO84/03564に詳しく記載された方法に基づくものである。
【0121】
本発明の分析試験方法は、測定化合物に対する小規模スクリーニングと大規模スクリーニングに適用し、且つ定量試験に適用することが期待される。
【0122】
好ましくは、競合的結合試験は、キナーゼの既知基質の存在下で、本発明の化合物を上記キナーゼに接触させ、且つ上記キナーゼと上記既知基質との間の相互作用の何れかの変化を検測することを含む。
【0123】
本発明の別の態様は、リガンドとキナーゼの結合を検測する方法を提供し、上記方法は、
(i)キナーゼの既知基質の存在下で、リガンドを上記キナーゼに接触するステップと、
(ii)上記キナーゼと上記既知基質との間の相互作用の何れかの変化を検測するステップと、を含み、
且つそのうち、上記リガンドは本発明の化合物である。
【0124】
本発明の一態様は、
(a)上記測定方法を行うステップと、
(b)リガンド結合ドメインと結合可能な1種又は複数種のリガンドを同定するステップと、
(c)一定量の上記1種又は複数種のリガンドを製造するステップと、を含む方法に関する。
【0125】
本発明の別の態様は、
(a)上記測定方法を行うステップと、
(b)リガンド結合ドメインと結合可能な1種又は複数種のリガンドを同定するステップと、
(c)上記1種又は複数種のリガンドを含む医薬組成物を製造するステップと、を含む方法を提供する。
【0126】
本発明の別の態様は、
(a)上記測定方法を行うステップと、
(b)リガンド結合ドメインと結合可能な1種又は複数種のリガンドを同定するステップと、
(c)リガンド結合ドメインと結合可能な上記1種又は複数種のリガンドを修飾するステップと、
(d)このような上記測定方法を行うステップと、
(e)上記1種又は複数種のリガンドを含む医薬組成物を任意選択的に製造するステップと、を含む方法を提供する。
【0127】
本発明は更に、上記方法により同定されるリガンドに関する。
【0128】
本発明の別の態様は、上記方法により同定されるリガンドを含む医薬組成物に関する。
【0129】
本発明の別の態様は、上記方法により同定されるリガンドの医薬組成物の製造における用途に関し、当該医薬組成物は、1種又は複数種の病症を治療するためである。
【0130】
上記方法は、1種又は複数種のキナーゼの阻害剤として利用可能なリガンドのスクリーニングに利用することができる。
【0131】
〔図面の簡単な説明〕
図1〕実施例5における投与後のマウスの平均血中薬物濃度-時間曲線である。
【0132】
図2〕実施例5における投与後のマウスの脳組織中薬物濃度-時間曲線である。
【0133】
〔発明を実施するための形態〕
以下、具体的な実施例に合わせて、本発明の技術案を更に詳しく説明する。下記の実施例は、単に本発明を例示的に説明し解釈するものであり、本発明の請求範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、何れも本発明による請求範囲内に含まれる。
【0134】
特に説明のない限り、下記の実施例で使用される原料及び試薬は何れも市販品であり、又は既知の方法によって製造することができる。
【0135】
明細書全体では、以下の略語を使用する:
AcOH 酢酸
DCM ジクロロメタン
DEA ジエチルアミン
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
EA、EtOAc 酢酸エチル
IPA イソプロパノール
NMR 核磁気共鳴
PE 石油エーテル
SFC 超臨界流体クロマトグラフィー
TEA トリエチルアミン
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
TMS トリメチルシリル基
TMSOTf トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル
保持時間
Ts 塩化パラトルエンスルホニル基
UV 紫外線
〔クロマトグラフィー〕
Agela Technologies製の機器により高速液体クロマトグラフィーを行い、そして多波長UV検測器によりモニターした。分離工程に用いられる典型的な移動相は、PE/EA、DCM/MeOH又は水/MeCNである。
【0136】
〔分析方法〕
特に説明のない限り、室温で上記溶媒において、分光器Bruker AV 400によりH核磁気共鳴(NMR)分光を行った。何れの場合にも、NMRデータは、提出された構造と一致している。メインピークを指定するための一般的な略語を使用し、100万分の1単位で特有の化学シフト(δ)を示す:例えば、s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;dd、二重線の二重線;br、幅広線。Agilent 1290 Infinity/6460 triple Quad LCMSにより質量分析を記録した。薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用する場合、それはシリカゲルTLCを指す。
【0137】
〔化合物の製造〕
製造出発原料が記載されていない場合に、これらの出発原料は、商業的に入手されるもの、文献に既知のもの、又は当業者の使用標準手順で容易に取得可能なものであってもよい。従来のような実施例又は中間体により化合物を製造する場合、当業者には、それぞれの特定の反応の反応時間、試薬の当量数と温度を変更することができ、且つ異なる後処理又は精製技術の採用が必須又は所望のことであり得ると理解される。
【0138】
〔実施例1〕
【0139】
【化10】
【0140】
ステップ1:(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)メタノール(中間体1-1)
【0141】
【化11】
【0142】
0℃の氷浴において、3-メトキシ-4-ニトロ安息香酸(15.0g、0.0761mol)のTHF(50mL)溶液にTHF(228mL、0.228mol、1M)中のBH溶液を1滴ずつ加えた。得られた混合物を60℃に加熱して4時間撹拌した。0℃に冷却した後、MeOH(30mL)を加えて反応をクエンチした。得られた混合物を濃縮して残分を得て、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EA=1:1)により上記残分を精製し、黄色い固体である(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)メタノール(1-1、10.0g、71.9%)を得た。m/z(ESI):184[M+H]
【0143】
ステップ2:3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒド(中間体1-2)
【0144】
【化12】
【0145】
中間体1-1(10.0g、54.6mmol)とMnO(9.48g、109mmol)の混合物をDCM(200mL)において一晩還流させた。室温に冷却した後、上記混合物を珪藻土(celite)によりろ過し、ろ液を濃縮し、白い固体である3-メトキシ-4-ニトロベンズアルデヒド(1-2、6.67g、67.4%)を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ10.05(s,1H),7.92(d,J=8.1Hz,1H),7.60(d,J=1.3Hz,1H),7.54(dd,J=8.1,1.4Hz,1H),4.03(s,3H).m/z(ESI):182[M+H]
【0146】
ステップ3:4-(3-メトキシ-4-ニトロベンジリデン)モルホリン-4-イル(中間体1-3)
【0147】
【化13】
【0148】
0℃で、中間体1-2(1.00g、5.52mmol)と4-(トリメチルシリル)モルホリン(1.05g、6.60mmol)をDCM(25mL)に入れた溶液にTMSOTf(1.5g、6.60mmol)を1滴ずつ加えた。得られた混合物を室温で2h撹拌し、反応混合液を濃縮し、粗中間体1-3を得て、直接に次のステップに用いた。
【0149】
ステップ4:4-(2,2,2-トリフルオロ-1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)エチル)モルホリン(中間体1-4)
【0150】
【化14】
【0151】
0℃で、DMF(20mL)中の粗中間体1-3(約5.5mmol)溶液にTMSCF(1.18g、8.25mmol)及びKF(0.50g、8.25mmol)を順に加えた。反応液が赤くなると、反応系を室温に昇温し、一晩撹拌した。EtOAc(100mL)で反応混合物を希釈し、塩水(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過・濃縮して残分を発生した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EA=5:1)により残分を精製し、白い固体である4-(2,2,2-トリフルオロ-1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)エチル)モルホリン(1-4、1.00g、2段階反応で56%)を得た。m/z(ESI):321[M+H]
【0152】
ステップ5:2-メトキシ-4-(2,2,2-トリフルオロ-1-モルホリノエチル)アニリン(中間体1-5)
【0153】
【化15】
【0154】
MeOH(30mL)中の中間体1-4(1.00g、3.12mmol)と10%Pd/C(300mg)の混合物に対してHでガス抜きとガス充填を3回した。その後、得られた混合物を室温でH雰囲気において一晩撹拌した。得られた混合物を珪藻土(celite)でろ過し、ろ液を濃縮して白い固体である粗2-メトキシ-4-(2,2,2-トリフルオロ-1-モルホリノエチル)アニリン(1-5、800mg)を得た。m/z(ESI):291[M+H]
【0155】
ステップ6:2-クロロ-4-エトキシ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(中間体1-6)
【0156】
【化16】
【0157】
2,4-ジクロロ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(10.0g、0.054mol)のEtOH溶液(300mL)にEtONa(3.6g、0.054mol)を加えた。得られた混合物を90℃で一晩撹拌した。上記反応混合物を濃縮し、EtOAc(300mL)で希釈し、塩水で洗浄した。分離した有機層を無水NaSOで乾燥し、ろ過・濃縮して粗生成物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=20:1)により残留物を精製し、白い固体である粗2-クロロ-4-エトキシ-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(1-6、5.0g)を得た。m/z(ESI):198[M+H]
【0158】
ステップ7:2-クロロ-4-エトキシ-7-トルエンスルホニル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(中間体1-7)
【0159】
【化17】
【0160】
0℃でDMF(20mL)中の粗中間体1-6(5.0g、25mmol)溶液にNaH(1.22g、30.4mmol)を加えた。得られた混合物を0℃で0.5h撹拌した。その後、0℃でTsCl(5.80g、30.4mmol)を加えた。得られた混合物を室温で2h撹拌した。0℃で水を加えて反応をクエンチし、そしてEtOAc(200mL)で希釈した。塩水で有機層を洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過・濃縮して粗生成物を得た。得られた残留物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE/EA=20:1)により精製し、2-クロロ-4-エトキシ-7-トルエンスルホニル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン(1-7、2.00g、2段階反応で22%)を得た。m/z(ESI):352[M+H]
【0161】
ステップ8:4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(2,2,2-トリフルオロ-1-モルホリノエチル)フェニル)-7-トルエンスルホニル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(中間体1-8)
【0162】
【化18】
【0163】
雰囲気で、中間体1-7(1.20g、3.42mmol)と中間体1-5(1.00g、3.44mmol)の1,4-ジオキサン(10mL)溶液にPd(dba)(275mg、0.310mmol)、RuPhos(280mg、0.617mmol)とCsCO(1.95g、5.98mmol)を加えた。マイクロ波反応器において125℃で、得られた混合物を1h撹拌した。室温に冷却した後、EtOAcと水で反応混合物を希釈した。分離した有機層を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過して濃縮し、残留物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(EA)により上記残留物を精製し、4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(2,2,2-トリフルオロ-1-モルホリノエチル)フェニル)-7-トルエンスルホニル-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(1-8、900mg、43.6%)を得た。m/z(ESI):606[M+H]
【0164】
ステップ9:4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(2,2,2-トリフルオロ-1-モルホリノエチル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(エナンチオマー1、化合物1)及び4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(2,2,2-トリフルオロ-1-モルホリノエチル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(エナンチオマー2、化合物4)の合成
【0165】
【化19】
【0166】
EtOH/HO(10mL/1mL)中の中間体1-8(900mg、1.49mmol)溶液にNaOH(297mg、7.43mmol)を加えた。50℃で、得られた混合物を2h撹拌した。上記混合物を濃縮して残留物を得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(EA:PE=1:1)により上記残留物を精製して4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(2,2,2-トリフルオロ-1-モルホリノエチル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(800mg)のエナンチオマー混合物を得て、超臨界流体クロマトグラフ(supercritical fluid chromatography,SFC)により分離(chiralpak-ICカラム、4.6mm×250mm、5μm、CO-IPA(0.2%DEA)で溶離)して、何れも白い固体である化合物1(エナンチオマー1、310mg、38.8%)及び化合物4(エナンチオマー2、300mg、37.5%)を得た。
【0167】
化合物1:H NMR(400MHz,CDOD)δ8.66(d,J=8.3Hz,1H),7.24-6.89(m,3H),6.38(d,J=3.5Hz,1H),4.59(q,J=7.1Hz,2H),4.22-4.07(m,1H),3.98(s,3H),3.70(t,J=4.7Hz,4H),2.67-2.58(m,4H),1.50(t,J=7.1Hz,3H);19F-NMR(400MHz,CDOD)δ68.40ppm;m/z(ESI):452[M+H].t=1.94min,旋光度:-52.5°(1mg/mLのエタノール溶液)、
化合物4:H NMR(400MHz,CDOD)δ8.66(d,J=8.3Hz,1H),7.24-6.89(m,3H),6.38(d,J=3.5Hz,1H),4.59(q,J=7.1Hz,2H),4.22-4.07(m,1H),3.98(s,3H),3.70(t,J=4.7Hz,4H),2.67-2.58(m,4H),1.50(t,J=7.1Hz,3H);19F-NMR(400MHz,CDOD)δ68.40ppm;m/z(ESI):452[M+H],t=2.33min,旋光度:+43.5°(1mg/mLのエタノール溶液)。
【0168】
実施例1を参照し、ステップ1、3又は6における好適な出発物質及び試薬を使用すると、表1で示される化合物5~34を製造することができる。
【0169】
【表1】


【0170】
〔実施例2〕
【0171】
【化20】
【0172】
ステップ1:3-メトキシ-4-ニトロベンゾイルクロリド(中間体2-1)
【0173】
【化21】
【0174】
DCM(100mL)中の3-メトキシ-4-ニトロ安息香酸(5.00g、25.4mmol)の溶液に数滴のDMFを滴下した。その後、0℃の氷浴でDCM(20mL)中の塩化オキサリル溶液(6.50g、51.0mmol)を1滴ずつ滴下した。得られた混合物を室温に加熱し、且つ2時間撹拌した。混合物を濃縮し、黄色い固体である3-メトキシ-4-ニトロベンゾイルクロリド(2-1、5.40g、98.8%)を得て、更に精製することなく次のステップに用いた。
【0175】
ステップ2:2-(3-メトキシ-4-ニトロベンゾイル)マロン酸ジエチル(中間体2-2)
【0176】
【化22】
【0177】
室温で、TEA(6.10g、60.2mmol)及びマロン酸ジエチル(4.80g、30.1mmol)により、トルエン(50mL)に懸濁したMgCl(1.67g、17.6mmol)の懸濁液を処理した。混合物を室温で1.5時間撹拌した。その後、中間体2-1(5.40g、25.1mmol)を数回に分けて加え、更に1h撹拌した。反応混合物に1.0MのHCl(10mL)を撹拌しながら加え、その後にEtOAc(100mL2)で抽出した。合わせた有機層を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過・濃縮して黄色い固体である粗2-(3-メトキシ-4-ニトロベンゾイル)マロン酸エステル(2-2、10.5g)を得た。m/z(ESI):340[M+H]
【0178】
ステップ3:1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)エタン-1-オン(中間体2-3)
【0179】
【化23】
【0180】
酢酸(50mL)中の粗中間体2-2(ca 25.1mmol)の溶液及び3MのHSO(aq.、50mL)を120℃に加熱し、一晩撹拌した。得られた溶液を室温に冷却してEtOAc(200mL)で希釈した。分離した有機相を塩水で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過して濃縮し、残留物を得た。上記残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し(PE/EA=3:2)、灰白色の固体である1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)エタン-1-オン(2-3、3.60g、2段階で72%)を得た。m/z(ESI):196[M+H]
【0181】
ステップ4:4-(1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)ビニル)モルホリン(中間体2-4)
【0182】
【化24】
【0183】
0℃とN保護下で、TiClをDCMに入れた溶液(1M、2.3mL、2.3mmol)を、モルホリン(1.34g、15.4mmol)のヘキサン(20mL)溶液に加えた。その後、中間体2-3(500mg、2.56mmol)をトルエン(10mL)に入れた溶液を滴下し、得られた混合物を70℃に加熱して20分間撹拌した。混合物を室温に冷却し、珪藻土(celite)によりろ過した。ろ液を濃縮して黄色い油状物である粗4-(1-(3-メトキシ-4ニトロフェニル)ビニル)モルホリン(2-4、670mg)を得た。H NMR(300MHz,CDCl)δ7.85(d,J=8.1Hz,1H),7.19(s,1H),6.14(d,J=8.4Hz,1H),4.46(d,J=6.6Hz,2H),3.98(s,3H),3.79-3.76(m,4H),2.84-2.80(m,4H)。
【0184】
ステップ5:4-(1,1,1-トリフルオロ-2-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパン-2-イル)モルホリン(中間体2-5)
【0185】
【化25】
【0186】
0℃、N雰囲気で、粗中間体2-4(570mg、2.15mmol)及びKHF(168mg、2.15mmol)のMeCN(30mL)溶液にTFA(368mg、4.30mmol)を加え、そしてTMSCF(610mg、8.25mmol)を加えた。その後、反応混合物を室温に昇温し、一晩撹拌した。NaCO(aq.、20mL)で反応混合物をクエンチし、EA(50mL)で抽出した。分離した有機相を塩水で(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、ろ過・濃縮して残留物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EA=7:3)により上記残留物を精製し、黄色い固体である4-(1,1,1-トリフルオロ-2-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)プロパン-2-イル)モルホリン(2-5、200mg、27%)を得た。m/z(ESI):335[M+H]
【0187】
ステップ6:2-メトキシ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-モルホリノプロパン-2-イル)アニリン(中間体2-6)
【0188】
【化26】
【0189】
MeOH(30mL)中の中間体5(200mg、0.60mmol)と10%Pd/C(100mg)の混合物をガス抜きし、そしてHでガス充填を3回した。その後、得られた混合物をH雰囲気で、室温で一晩撹拌した。得られた混合物を珪藻土によりろ過し、そして濃縮して白い固体である粗2-メトキシ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-モルホリノプロパン-2-イル)アニリン(6、150mg)を得た。m/z(ESI):305[M+H]
【0190】
ステップ7:4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-モルホリノプロパン-2-イル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(エナンチオマー1、化合物2)及び4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-モルホリノプロパン-2-イル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(エナンチオマー2、化合物35)
【0191】
【化27】
【0192】
実施例1中のステップ8~9のように、中間体2-6から、化合物2:4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-モルホリノプロパン-2-イル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(エナンチオマー1、t=1.63min)及び化合物35:4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(1,1,1-トリフルオロ-2-モルホリノプロパン-2-イル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(エナンチオマー2、t=2.11min)を合成した。化合物2:H NMR(400MHz,CDOD)δ8.58(d,J=8.6Hz,1H),7.32(s,1H),7.15(d,J=8.6Hz,1H),6.92(d,J=3.5Hz,1H),6.36(d,J=3.5Hz,1H),4.56(q,J=7.1Hz,2H),3.95(s,3H),3.68(t,J=4.4Hz,4H),2.75-2.58(m,4H),1.60(s,3H),1.47(t,J=7.1Hz,3H);19F-NMR(400MHz,CDOD)δ68.97ppm;m/z(ESI):466[M+H]、化合物35:H NMR(400MHz,CDOD)δ8.62-8.52(m,1H),7.32(s,1H),7.15(d,J=8.7Hz,1H),6.92(d,J=3.5Hz,1H),6.36(d,J=3.5Hz,1H),4.56(q,J=7.1Hz,2H),3.95(s,3H),3.68(t,J=4.4Hz,4H),2.75-2.58(m,4H),1.60(s,3H),1.47(t,J=7.1Hz,3H);19F-NMR(400MHz,CDOD)δ68.97ppm;m/z(ESI):466[M+H]
【0193】
〔実施例3〕
【0194】
【化28】
【0195】
ステップ1:4-(1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)シクロプロピル)モルホリン(中間体3-1)
【0196】
【化29】
【0197】
0℃、Nで、粗中間体2-4(500mg、1.89mmol)をDCM(50mL)に入れた溶液とCH(1.01g、3.77mmol)の混合物にZnEtのヘキサン溶液(1M、2.8mL、2.80mmol)を1滴ずつ加えた。当該温度で上記混合物を3h撹拌した。反応混合物にNHCl(aq.、10mL)を加えた。分離した有機層を無水NaSOで乾燥し、ろ過・濃縮して残留物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE/EA=1:1)により上記残留物を精製し、黄色い固体である4-(1-(3-メトキシ-4-ニトロフェニル)シクロプロピル)モルホリン(3-1、500mg、95%)を得た。m/z(ESI):279[M+H]
【0198】
ステップ2:2-メトキシ-4-(1-モルホリノシクロプロピル)アニリン(中間体3-2)
【0199】
【化30】
【0200】
実施例2のステップ6のように、中間体3-1から2-メトキシ-4-(1-モルホリノシクロプロピル)アニリン(中間体3-2)を製造した。m/z(ESI):249[M+H]
【0201】
ステップ3:4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(1-モルホリノシクロプロピル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(化合物3)
【0202】
【化31】
【0203】
実施例1中のステップ8~9のように、中間体3-2から4-エトキシ-N-(2-メトキシ-4-(1-モルホリノシクロプロピル)フェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-2-アミン(化合物3)を合成した。H NMR(400MHz,CDOD)δ8.53(d,J=8.7Hz,1H),6.91-6.89(m,3H),6.35(d,J=3.5Hz,1H),4.56(q,J=7.1Hz,2H),3.95(s,3H),3.61(t,J=4.8Hz,4H),2.67-2.58(m,4H),1.47(t,J=7.1Hz,3H),0.96-0.93(m,2H),0.84-0.81(m,2H);m/z(ESI):410[M+H]
【0204】
実施例1と3を参照し、好適な出発物質又は試薬を使用し、好適なステップを行うと、表2中の化合物36~38を合成することができる。
【0205】
【表2】
【0206】
〔実施例4 キナーゼ阻害の測定〕
材料
Adapta(商標)キナーゼ測定法(LRRK2_IC50測定)では:キナーゼ反応緩衝液に5×キナーゼ緩衝液S(Life Technologies、PV5213)及び2mMのDTT(Life Technologies、P2325)を含んだ。キナーゼLRRK2 G2019Sタンパク質(PV4881)及びERM(LRRKtide、PV5093)は、Life Technologiesから得られた。Adapta(商標)汎用キナーゼ測定試薬キット(Life Technologies、PV5099)は、Adapta(商標)Eu-抗-ADP抗体(PV5097、4μg)、10μMのAlexaFluor(登録商標)647 ADPトレーサー(PV5098、200pmol)、TR-FRET希釈緩衝液(PV3574、100mL)、キナーゼクエンチ緩衝液(P2825、1mL)、10mMのATP(PV3227、500μL)、及び10mMのADP(PV5096、500μL)を含む。LRRK2-IN-1(1234480-84-2、HY-10875)は、MedChem Expressから得られた。
【0207】
Adapta(商標)キナーゼ試験方法
Adapta(登録商標)汎用キナーゼ測定法は、ADPの均一性を検測するための蛍光に基づく免疫測定法である。ATP消費測定法とは逆に、Adapta(登録商標)測定法は、ADPの形成に非常に敏感であり、ほとんどのシグナル変化は、最初の10~20%のATPがADPに転化された時に発生される。これにより、Adapta(登録商標)汎用キナーゼ測定法は、低活性キナーゼに非常に適用される。
【0208】
室温(~21℃)で全ての測定を行い、且つ用いられる条件で、当該測定は、時間及び酵素濃度と直線関係を示した。5×キナーゼ緩衝液S原液(以上挙げられたもの)により1×キナーゼ反応緩衝液溶液を製造し、8mLのHOに2mLの5×原液を加えることで10mLの1×キナーゼ反応緩衝液を製造した。1MのDTT 20μLをこの1×キナーゼ反応緩衝液に加えた。
【0209】
低容量の384ウェルプレートにおいて10μLの体積でキナーゼ反応を行った。通常、Greinerプレート(目次#3674#、低容量、白い壁、784075)を用いた。測定されていない他の未処理の測定プレートも、好適である可能性がある。このような測定における基質の濃度は100μMであり、且つ1×キナーゼ反応緩衝液は、50mMのTris-HCl pH8.5、10mMのMgCl、1mMのEGTA、0.01%のBrij-35と2mMのDTT、及び特定のキナーゼに必要であり得る何れかの他の添加剤からなる。キナーゼを室温で1時間反応させ、その後5μLのTR-FRET希釈緩衝液中のキナーゼクエンチ緩衝液(EDTA、30mM)、Euで標識した抗体(6nM)とトレーサー(18.9nM)の製剤を加えた。測定ウェルにおける抗体の最終濃度は2nMで、トレーサーは6.3nM、且つEDTAは10mMである。プレートを室温で少なくとも30分間平衡させてから、Adapta(商標)TR-FRET用のプレートリーダーに置いて読み取った。
【0210】
BMG LABTECH PHERAstarプレートリーダーを利用し、Adapta(商標)のための好適なフィルターと機器の設定により、本文に提供されたデータを発生させた。ウェルにおいて、1%のDMSO(最終)で測定化合物をスクリーニングした。8点滴定では、初期濃度から5倍連続希釈した。
【0211】
結果
本発明の実施例の化合物のLRRK2 G2019Sへの阻害のIC50値は、表3に示す通りである。
【0212】
【表3】

【0213】
〔実施例5 薬物組織分布の測定〕
試験品:化合物4、純度99%
試験品の調製 22.73mgの化合物4を秤量してすり鉢に入れ(純度99%で換算)、少量の0.5%のCMC-Naを加えて十分に研磨し、容器に移し、更にすり鉢を4回洗浄し、洗浄液を容器に移し、そして0.5%のCMC-Naを30mLになるまで加え、濃度が0.75mg/mLの試験品懸濁液として調製した。サンプリング及び投与に先立ち、磁気撹拌機により1200rpmの回転速度で少なくとも15min撹拌し、用時調製した。
【0214】
投与方式:経口胃内投与
投与頻度と用量:単回投与30mg/kg(40mL/kg)
投与後に、各群の動物はそれぞれ、対応する時点0.25、0.5、1、2、4、6、8、24hに、心臓から0.4mL採血し、腹腔内に50mg/kgのゾレチルを注射して麻酔し、そして安楽死になるまで放血し、脳、肺、腎を取り、生理食塩水により洗浄してからろ紙で水分を取り、凍結保存管に入れ、ドライアイスに暫く保存し、12h以内に-60℃以下で保存した。
【0215】
採取した血液を、EDTA-K2で抗凝固し、ウェットアイスに一時的に置き、2h以内に4℃で、2600gを10Min遠心分離し、血漿を取ってドライアイスに一時的に保存し、14h以内に-60℃以下の冷蔵庫に保存した。
【0216】
分析方法:以下のLC-MS/MS法により血漿と脳組織中の薬物濃度をそれぞれ検測した。
【0217】
機器:Shimadzu LC-MS/MS(Model:LCMS-8060)
カラム:GL Sciences Inc.、InertSustain、C18、3μm、2.150mm
検測イオン:正イオンモード、m/z453.10/338.05
移動相A:0.1%のTFAを含む水溶液、移動相B:0.1%のTFAを含むメタノール溶液
流速:0.4mL・min-1
勾配: Time(min) 移動相B(%)
0.50 60
0.60 85
1.80 95
2.50 95
2.60 60
3.00 stop
薬物動態パラメータの評価指標:WinNonlin6.4プログラムにより、ノンコンパートメントモデルで薬物動態パラメータを算出した。
【0218】
結果及び結論:
図1は、実施例5における投与後のマウスの平均血中薬物濃度-時間曲線であり、その薬物動態パラメータ(PK)は下記の表4に纏められている:
【0219】
【表4】
【0220】
図2は、実施例5における投与後のマウスの脳組織中薬物濃度-時間曲線であり、その薬物動態パラメータは下記の表5に纏められている:
【0221】
【表5】
【0222】
実験結果から、この化合物は、優れた脳透過率を有することが明らかになる。そのうち、1hでの脳透過率C/Cは約3.2に達することができる一方、AUC/AUC血漿は約2.0に達することができる。従って、本発明の実施例の化合物は、更に迅速かつ効果的に血液脳関門を通過し、治療部位に到達して薬効を発揮することができる。
【0223】
以上の実施例は、本発明の実施形態を例示的に説明した。しかし、本願の請求範囲は、上記の例示的な実施形態に限定されてはならない。本発明の要旨及び原則を逸脱しない範囲で、当業者により行われた何れの修正、同等置換、改善なども、本願の特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0224】
図1】実施例5における投与後のマウスの平均血中薬物濃度-時間曲線である。
図2】実施例5における投与後のマウスの脳組織中薬物濃度-時間曲線である。
図1
図2