(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】結合構造
(51)【国際特許分類】
F16B 4/00 20060101AFI20240717BHJP
B21D 39/03 20060101ALI20240717BHJP
F16B 5/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
F16B4/00 N
B21D39/03 A
F16B5/04 C
(21)【出願番号】P 2024508186
(86)(22)【出願日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2023009836
(87)【国際公開番号】W WO2023176828
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2022040991
(32)【優先日】2022-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】アイシンシロキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大図 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】永井 浩介
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-029876(JP,A)
【文献】特開2001-212633(JP,A)
【文献】特開2003-039125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 4/00
B21D 39/03
F16B 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と第2部材を結合した結合構造であって、
前記第1部材は、前記第2部材側を向く第1対向面と、前記第1対向面の反対側の第1非対向面とを有し、
前記第2部材は、前記第1部材側を向く第2対向面と、前記第2対向面の反対側の第2非対向面とを有し、
前記第1部材は、
前記第1対向面から突出して前記第2部材の内側に入り込み、周方向に連続する形状をなして、外周側と内周側の少なくとも一方に突出する第1嵌合部を有する環状爪部と、
前記第1非対向面から前記環状爪部の内部まで連通する貫通孔と、を有し、
前記第2部材は、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を有することを特徴とする結合構造。
【請求項2】
前記環状爪部は、周方向の全体に一様な完全連続形状であることを特徴とする、請求項1に記載の結合構造。
【請求項3】
前記第1部材は、前記貫通孔の内部に、前記第1非対向面に向かうにつれて広がる第3嵌合部を有し、
前記第2部材は、前記環状爪部及び前記貫通孔の内部に位置する進入部を有し、前記進入部に、前記第3嵌合部に嵌合する第4嵌合部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の結合構造。
【請求項4】
前記第2部材は、少なくとも一部が前記進入部の延長上に位置し、前記第2非対向面から前記進入部へ向けて凹んだ有底の凹部を有することを特徴とする、請求項3に記載の結合構造。
【請求項5】
前記凹部は、前記環状爪部の内側まで入り込む形状であることを特徴とする、請求項4に記載の結合構造。
【請求項6】
前記凹部は、前記第2非対向面側から底部側へ進むにつれて狭くなるテーパ面を有することを特徴とする、請求項4に記載の結合構造。
【請求項7】
前記凹部は、前記第2部材を押圧したプレス痕であることを特徴とする、請求項4に記載の結合構造。
【請求項8】
前記第2部材は、前記環状爪部の外周よりも外周側に少なくとも一部が位置し、前記第2非対向面から前記第2対向面へ向けて凹んだ有底の外周凹部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の結合構造。
【請求項9】
前記外周凹部は、前記環状爪部の全体を囲うことを特徴とする、請求項8に記載の結合構造。
【請求項10】
前記外周凹部の底部は、前記環状爪部の先端よりも深い位置にあることを特徴とする、請求項8に記載の結合構造。
【請求項11】
前記第1部材は前記第2部材よりも硬度が高いことを特徴とする、請求項1または2に記載の結合構造。
【請求項12】
前記第1部材と前記第2部材の間にシーリング材を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属板などの複数の部品を積層状態で結合させる構造には、様々なものが知られている。溶接による接合は、熱による歪の発生を考慮する必要がある。超音波や摩擦撹拌を用いた固相接合には、接合が完了するまでの時間が長くなること、近距離で複数箇所を同時に接合させにくいこと、などの課題がある。
【0003】
締結用の部品を用いる結合構造として、リベット結合が広く用いられている。リベット結合には、複数の部品に設けた下穴を貫通したリベットの突出部分を変形させる(かしめる)タイプや、一方の部品に対して打ち込んだリベットが他方の部品を貫通しない状態で締結させるタイプ(セルフピアッシングリベット)などが知られている。いずれのタイプも、少なくとも一方の部品の外面に、リベットのかしめ部分やリベットの打痕が突出した部分として形成されるため、外観品質や設計自由度に制約が生じる場合があった。また、結合作業時にリベットを供給するための装置が必要である。
【0004】
リベットのような別部品を用いずに、結合する部品自体に結合用の部位を設ける結合構造も知られている。例えば、特許文献1には、カシメ爪形成用部材に孔開けすると同時にバーリング加工して、カシメ爪を設けている。被加工物に対して、カシメ爪を設けたカシメ爪形成用部材をプレスで打ち付けて、被加工物にカシメ爪を差し込ませて屈曲させることにより、カシメ爪形成用部材と被加工物を結合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、カシメ爪形成用部材に設けるカシメ爪が、四角錐状の4本爪用ピンを挿入して形成されており、4つの分離した爪形状になっている。つまり、4つのカシメ爪の互いの間が途切れた(割れた)形状になっている。このようなカシメ爪を用いた場合、カシメ爪が存在する箇所と存在しない箇所で結合の状態が不均一になったり、全体的な結合強度が不足したりするという問題がある。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みてなされたものであり、結合強度が高く、外観品質や設計の自由度に優れる結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、第1部材と第2部材を結合した結合構造であって、前記第1部材は、前記第2部材側を向く第1対向面と、前記第1対向面の反対側の第1非対向面とを有し、前記第2部材は、前記第1部材側を向く第2対向面と、前記第2対向面の反対側の第2非対向面とを有し、前記第1部材は、前記第1対向面から突出して前記第2部材の内側に入り込み、周方向に連続する形状をなして、外周側と内周側の少なくとも一方に突出する第1嵌合部を有する環状爪部と、前記第1非対向面から前記環状爪部の内部まで連通する貫通孔と、を有し、前記第2部材は、前記第1嵌合部に嵌合する第2嵌合部を有することを特徴とする。
【0009】
前記環状爪部は、周方向の全体に一様な完全連続形状であることが好ましい。
【0010】
前記第1部材は、前記貫通孔の内部に、前記第1非対向面に向かうにつれて広がる第3嵌合部を有し、前記第2部材は、前記環状爪部及び前記貫通孔の内部に位置する進入部を有し、前記進入部に、前記第3嵌合部に嵌合する第4嵌合部を有することが好ましい。
【0011】
前記第2部材は、少なくとも一部が前記進入部の延長上に位置し、前記第2非対向面から前記進入部へ向けて凹んだ有底の凹部を有することが好ましい。
【0012】
一例として、前記凹部は、前記環状爪部の内側まで入り込む形状であってもよい。
【0013】
一例として、前記凹部は、前記第2非対向面側から底部側へ進むにつれて狭くなるテーパ面を有する形状であってもよい。
【0014】
前記凹部は、前記第2部材を押圧したプレス痕として構成可能である。
【0015】
前記第2部材は、前記環状爪部の外周よりも外周側に少なくとも一部が位置し、前記第2非対向面から前記第2対向面へ向けて凹んだ有底の外周凹部を備えてもよい。
【0016】
前記外周凹部は、前記環状爪部の全体を囲うことが好ましい。
【0017】
前記外周凹部の底部は、前記環状爪部の先端よりも深い位置にあってもよい。
【0018】
前記第1部材は前記第2部材よりも硬度が高いことが好ましい。
【0019】
前記第1部材と前記第2部材の間にシーリング材を有してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、結合強度が高く、外観品質や設計の自由度に優れる結合構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施の形態の結合構造を示す断面図である。
【
図2】本実施の形態の結合構造を示す斜視図である。
【
図3】本実施の形態の結合構造を示す斜視図である。
【
図6】第1部材と第2部材の間に第3部材を有する結合構造を示す断面図である。
【
図7】第2部材における凹部の径と深さのバリエーションを示す断面図である。
【
図8】第2部材における凹部の形状のバリエーションを示す断面図である。
【
図9】第2部材における凹部の形状のバリエーションを示す断面図である。
【
図10】第2部材における進入部の形状のバリエーションを示す断面図である。
【
図11】第1部材における環状爪部の形状のバリエーションを示す断面図である。
【
図12】環状爪部の変形例に対応する、結合前の第1部材の斜視図である。
【
図13】環状爪部の変形例に対応する、結合前の第1部材の断面図である。
【
図14】環状爪部の変形例に対応する、結合前の第1部材の斜視図である。
【
図15】環状爪部の変形例に対応する、結合前の第1部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明を適用した実施形態について説明する。
図1から
図3は、第1部材10と第2部材20を結合させた結合構造を示している。第1部材10と第2部材20はそれぞれ板状の部材であり、X軸方向に積層されている。X軸方向は第1部材10と第2部材20のそれぞれの厚み方向である。また、X軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0023】
本発明の結合構造は、様々な材質の部材の結合に用いることが可能である。第1部材10の方が第2部材20よりも硬度が高い材質からなることが好ましい。一例として、第1部材10は鉄であり、第2部材20はアルミニウム合金である。
【0024】
第1部材10は、X軸方向の両側に向く第1対向面11と第1非対向面12を有する。第2部材20は、X軸方向の両側に向く第2対向面21と第2非対向面22を有する。第1対向面11、第1非対向面12、第2対向面21、第2非対向面22はそれぞれ、X軸方向に対して略垂直な平面である。第1対向面11から第1非対向面12までのX軸方向の寸法を、第1部材10の板厚とする。第2対向面21から第2非対向面22までのX軸方向の寸法を、第2部材20の板厚とする。第1部材10と第2部材20は、第1対向面11と第2対向面21を対向させ、第1対向面11と第2対向面21が密着するまでX軸方向に接近させることによって結合される。
図2は、第1部材10の第1非対向面12の側から見た結合構造の斜視図である。
図3は、第2部材20の第2非対向面22の側から見た結合構造の斜視図である。
【0025】
第1部材10と第2部材20の結合に用いる装置については図示していないが、第1部材10が取り付けられる第1支持部と、第2部材20が取り付けられる第2支持部とを有するプレス装置が用いられる。プレス装置によって、第1支持部と第2支持部をX軸方向で接近させるプレス動作を行う。
図1は、当該プレス動作の結果として、第1部材10と第2部材20が結合した状態を示している。
【0026】
第1部材10は、第1対向面11からX軸方向に突出して第2部材20の内側に入り込む環状爪部13を有する。環状爪部13は、X軸方向に延びる中心軸X1を囲む環状構造(筒構造)を有している。以下の説明では、環状爪部13において、Y軸方向で中心軸X1側を内周側、Y軸方向で中心軸X1とは反対側を外周側とする。また、中心軸X1を中心とする回転方向を周方向とする。
【0027】
環状爪部13は、中心軸X1を含むいずれの断面位置でも略同じ形状を有している。つまり、
図1に示す断面形状と略同じ形状が周方向の全体に連続している。
図1に示す断面構造において環状爪部13は孔や切り欠きを有していないので、環状爪部13は周方向のいずれの部分にも孔や切り欠きを有さない完全連続形状になっている。
【0028】
環状爪部13は、X軸方向で基端側(第1対向面11に近い側)から先端側(第1対向面11から離れる側)へ進むにつれて、外周側へ傾く先広がり形状である。当該形状の環状爪部13は、外周側に突出する第1嵌合部14を有している。第1嵌合部14は周方向の全体に連続して形成されている。環状爪部13の内周側には、内側テーパ面15が設けられている。内側テーパ面15は中心軸X1を中心とする円錐状の面であり、X軸方向で環状爪部13の基端側から先端側へ進むにつれて、内側テーパ面15の内径が大きくなる。
【0029】
第2部材20は、第1部材10の第1嵌合部14に嵌合する第2嵌合部23を有する。第2嵌合部23は、第2対向面21から第2部材20の内側に入り込んだ環状爪部13の外周側に沿って位置する部分であり、第1対向面11と第1嵌合部14によって囲まれる領域に入り込んでいる。つまり、第1嵌合部14と第2嵌合部23がY軸方向の同じ範囲に位置している。第1嵌合部14と第2嵌合部23の両方を含むY軸方向の領域をオーバーラップ領域Y1とする。オーバーラップ領域Y1は、中心軸X1を中心とする円環状の範囲に存在している。
【0030】
オーバーラップ領域Y1で嵌合する第1嵌合部14と第2嵌合部23は、X軸方向のうち第1対向面11と第2対向面21を離間させる方向への第1部材10と第2部材20の移動を互いに規制するオーバーハング構造になっている。従って、第1嵌合部14と第2嵌合部23の嵌合によって、第1部材10と第2部材20の結合が維持される。
【0031】
また、第1嵌合部14(環状爪部13)は、第2嵌合部23と後述の進入部24とによって全周を挟まれており、第1部材10と第2部材20がY軸方向に対向した方向(中心軸X1を中心とする半径方向)への移動をそれぞれが規制するオーバーハング構造になっている。従って、第1嵌合部14(環状爪部13)、第2嵌合部23、進入部24によって、Y軸方向においても第1部材10と第2部材20の結合が維持される。
【0032】
X軸方向における環状爪部13の突出量は、第2対向面21から第2非対向面22までの第2部材20の板厚よりも小さく、環状爪部13は第2非対向面22まで達しない埋没構造になっている。従って、第2部材20の第2非対向面22上には、環状爪部13を含む第1部材10のいずれの部分も露出しない。
【0033】
第1部材10は、第1非対向面12から環状爪部13の内部まで連通する貫通孔16を有している。貫通孔16は、中心軸X1を中心とする略円形(円筒状)の孔であり、内側テーパ面15の内径の最も小さい部分に対応する内径を有している。貫通孔16のうち、環状爪部13に連通する側とは反対側には、X軸方向で第1非対向面12に近づくにつれてY軸方向に広くなる(内径が大きくなる)形状の第3嵌合部17が形成されている。第3嵌合部17は周方向の全体に連続して形成されている。
【0034】
第2部材20は、環状爪部13及び貫通孔16の内部に位置する進入部24を有する。進入部24は、基端側の一部が、第2部材20の板厚の範囲内で環状爪部13の内側テーパ面15に密着している。さらに、進入部24は第2対向面21よりもX軸方向に突出しており、この進入部24の突出部分が貫通孔16の内周面に密着している。
【0035】
進入部24の先端付近には、第1部材10の第3嵌合部17に嵌合する第4嵌合部25を有する。第4嵌合部25は、進入部24の先端側に進むにつれて外径を大きくする円錐状の部分であり、第3嵌合部17と第4嵌合部25がY軸方向の同じ範囲に位置している。第3嵌合部17と第4嵌合部25の両方を含むY軸方向の領域をオーバーラップ領域Y2とする。オーバーラップ領域Y2は、中心軸X1を中心とする円環状の範囲に存在している。
【0036】
オーバーラップ領域Y2で嵌合する第3嵌合部17と第4嵌合部25は、X軸方向のうち第1対向面11と第2対向面21を離間させる方向への第1部材10と第2部材20の移動を互いに規制するオーバーハング構造になっている。従って、第3嵌合部17と第4嵌合部25の嵌合によって、第1部材10と第2部材20の結合が維持される。
【0037】
第2対向面21に対するX軸方向への進入部24の突出量は、第1対向面11から第1非対向面12までの第1部材10の板厚以下である。従って、進入部24の先端は第1非対向面12から突出しない。
【0038】
第2部材20にはさらに、凹部26が設けられている。凹部26は、X軸方向で進入部24の延長上に位置し、第2非対向面22から進入部24へ向けて凹んだ有底の凹部である。凹部26は、底部側にテーパ面27を有し、テーパ面27と第2非対向面22の間に円筒面28を有している。テーパ面27は中心軸X1を中心とする円錐状の面であり、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれてテーパ面27が狭くなる(内径が小さくなる)。円錐状のテーパ面27の母線は、中心軸X1に対して約45度の傾斜角を有している。円筒面28は中心軸X1を中心とする円筒状の面であり、円筒面28の内径は一定である。
【0039】
凹部26のうち、テーパ面27の領域は、X軸方向で環状爪部13の内側に入り込んでいる。円筒面28の領域は、X軸方向で環状爪部13の内側に入り込んでいない。また、Y軸方向での円筒面28の内径は、貫通孔16の内径よりも大きく、環状爪部13の先端付近の内側テーパ面15の内径よりも小さい。
【0040】
中心軸X1に対する内側テーパ面15の傾斜角は、中心軸X1に対するテーパ面27の傾斜角(約45度)よりも小さく、環状爪部13の先端側に進むにつれて内側テーパ面15とテーパ面27の間隔が小さくなる。凹部26は、テーパ面27と円筒面28の境界部分付近で、環状爪部13に最も近づいている。従って、進入部24のうち環状爪部13の内部に位置する領域は、環状爪部13の先端側に進むにつれて、内側テーパ面15とテーパ面27の間で絞り込まれた形状になっている。
【0041】
以上の結合構造は、結合対象の部材の内部に結合箇所が位置するインターロック構造の一種であり、第1部材10と第2部材20の厚みの範囲内に嵌合部(第1嵌合部14と第2嵌合部23、第3嵌合部17と第4嵌合部25)を有する。具体的には、
図2に示すように、第1部材10の第1非対向面12の側では、第2部材20の進入部24が突出していない。
図3に示すように、第2部材20の第2非対向面22の側では、第1部材10の環状爪部13が突出せずに、凹部26が形成されている。このように、第1非対向面12や第2非対向面22から外部に突出する形状を有さないので、第1部材10と第2部材20の結合部分の外観品質に優れる。また、外部への突出形状が存在しないことにより、第1部材10と第2部材20を用いる工業製品の設計の自由度が向上する。
【0042】
1つ目の結合部分として、第1部材10に設けた環状爪部13を第2部材20の内側に位置させて、環状爪部13の第1嵌合部14と第2部材20の第2嵌合部23とを嵌合させている。環状爪部13は、中心軸X1を中心とする周方向に連続した形状であるため、高い結合強度を得ることができる。特に、本実施形態の環状爪部13は、周方向のいずれの部分にも孔や切り欠きを有さず、周方向の全体に一様な完全連続形状であるため、強度的に弱い箇所が存在せず、環状爪部13の全体で第1嵌合部14と第2嵌合部23を均一に結合させて、最も優れた結合強度を得ることができる。
【0043】
なお、本実施形態の環状爪部13のような完全連続形状ではなく、一部に切り欠きなどの不連続な部分を有する部分連続形状の環状爪部であっても、複数の爪が独立している構造に比して結合強度が向上する。このような部分連続形状の環状爪部も、本発明の適用範囲に含まれる。このような部分連続形状を有する環状爪部の変形例については後述する。
【0044】
2つ目の結合部分として、第2部材20に形成した貫通孔16内に第1部材10の進入部24を位置させて、貫通孔16に形成した第3嵌合部17と第2部材20の第4嵌合部25とを嵌合させている。1つ目の結合部分である第1嵌合部14と第2嵌合部23に加えて、2つ目の結合部分を有することにより、第1部材10と第2部材20の結合強度が向上する。
【0045】
図4及び
図5に示すように、第1部材10と第2部材20を結合させる前の状態で、第1部材10には、環状爪部13の元になるバーリング部18が設けられている。バーリング部18は、中心軸X1を中心とする円筒形状の突出部であり、第1非対向面12側から第1部材10を貫通するパンチ(図示略)によって形成される。このパンチの通過によって、結合後の貫通孔16の元になる貫通孔19が形成される。貫通孔19には、X軸方向で第1非対向面12に近づくにつれてY軸方向に広くなる(内径が大きくなる)形状の入口部19aが形成されている。入口部19aは、結合後の第3嵌合部17の元になる部分である。入口部19aよりも先のバーリング部18の先端までの部分は、貫通孔19の内径が概ね一定であり、結合後の内側テーパ面15に対応する形状はまだ形成されていない。
【0046】
第1部材10と第2部材20を結合させる際にX軸方向への押圧力が加わると、バーリング部18が第2対向面21から第2部材20の内側に入り込むと共に外周側に傾きを生じて、
図1に示す形状の環状爪部13になる。これにより、第1嵌合部14と第2嵌合部23が嵌合する状態になる。第2部材20の材質よりも第1部材10の材質の方が硬いことによって、第1部材10側のバーリング部18を第2部材20内に入り込ませやすくなり、適切な形状の環状爪部13を形成できる。
【0047】
また、第2部材20への環状爪部13の進入に応じて、第2部材20の一部が進入部24として環状爪部13及び貫通孔16の内部に入り込み、第3嵌合部17と第4嵌合部25が嵌合する状態になる。
【0048】
凹部26は、プレス装置の第2支持部(第2部材20が取り付けられる部分)に設けた凸部によって形成されるプレス痕である。プレス時に凸部から加わる押圧力によって凹部26が形成され、外周側への環状爪部13の傾き(第1嵌合部14と第2嵌合部23の嵌合)と、貫通孔16への進入部24の進入(第3嵌合部17と第4嵌合部25の嵌合)が促進される。
【0049】
このように、本実施形態の結合構造は、一般的なプレス装置によるプレス加工で結合させることが可能であり、結合用の特別な装置を必要としない点において優れている。
【0050】
また、本実施形態の結合構造は、リベットのような結合用部材を要さず、第1部材10と第2部材20を構成する部分のみで結合されるので、低コストに実現でき、結合作業の効率性においても優れている。
【0051】
第1部材10と第2部材20の間にシーリング材を配してもよい。第1部材10が鉄、第2部材20がアルミニウム合金の場合のように、異種金属からなる2部材を結合させる場合、異種金属間に流れる電流を原因として化学的腐食(電蝕)が生ずるおそれがある。第1部材10と第2部材20の間にシーリング材(被覆材)を配することにより、このようなダメージの発生を防ぐことができる。シーリング材として、接着剤、シリコンなどのコーキング材、塗料など様々なものを用いることができる。
【0052】
本発明の結合構造は、以上の実施形態に限定されるものではない。
図6以降を参照して、本発明の結合構造のバリエーション(変形例)について説明する。なお、
図6以降において、
図1の実施形態と共通する符号を付している構成要素については、細部の形状や寸法が異なる場合でも、先に説明した
図1の実施形態と同様の役割や効果を有するものとする。
【0053】
図6は、第1部材10と第2部材20の間に第3部材30を有するタイプの結合構造である。第3部材30は、第1対向面11に対向する第3対向面31と、第2対向面21に対向する第4対向面32を有している。
【0054】
第3対向面31から第4対向面32までの第3部材30の板厚は、X軸方向における環状爪部13の突出量よりも小さい。そのため、第1部材10の環状爪部13は、第3部材30を貫通して第2部材20の内部まで達する。環状爪部13の第1嵌合部14に対して、第2部材20の第2嵌合部23と、第3部材30の第5嵌合部33の両方が嵌合する。
【0055】
第3部材30は、X軸方向で第2部材20の進入部24と重なる進入部34を有している。進入部34は第1部材10の貫通孔16内に位置し、進入部34の第6嵌合部35が、第1部材10の第3嵌合部17に嵌合する。
【0056】
以上の結合構造により、第1部材10と第2部材20と第3部材30が結合される。このように、本発明の結合構造は、2つの部材の結合だけではなく、3つ以上の部材の結合にも適用が可能である。特に、積層方向(X軸方向)で最も外側に位置する2つの部材の一方(第1部材10)に設けた環状爪部13の第1嵌合部14が、他方(第2部材20)に設けた第2嵌合部23に嵌合するという要件を満たすことによって、3つ以上の部材であっても確実に結合させることができる。なお、
図6では3つの部材を結合させる場合を示したが、第1部材10と第2部材20の間に配する部材の数を増やして、4つ以上の部材を係合させることも可能である。
【0057】
図7は、第2部材20に設ける凹部の径と深さのバリエーションを示している。第1部材10の環状爪部13の基端側の外径を外径Y3とする。また、X軸方向において、環状爪部13の先端の位置を先端位置X2とし、環状爪部13の基端の位置を基端位置X3とする。
【0058】
図7(A)の凹部40は、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面40aを有しており、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて凹部40の内径が小さくなる。第2非対向面22に近い開口側の領域で、凹部40の内径が環状爪部13の外径Y3よりも大きくなっている。凹部40の深さは、第2部材20のうち環状爪部13が進入していない部分の板厚よりも小さく、凹部40が環状爪部13の先端位置X2まで達していない。
【0059】
図7(B)の凹部41は、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面41aを有しており、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて凹部41の内径が小さくなる。第2非対向面22に接する最も開口径が大きい箇所で、凹部41の内径が環状爪部13の外径Y3とほぼ同じになっている。凹部41の深さは、第2部材20のうち環状爪部13が進入していない部分の板厚よりも小さく、凹部41が環状爪部13の先端位置X2まで達していない。
【0060】
図7(C)の凹部42は、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面42aを有しており、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて凹部42の内径が小さくなる。凹部42の全体において、凹部42の内径が環状爪部13の外径Y3よりも小さい。凹部42の深さは、第2部材20のうち環状爪部13が進入していない部分の板厚よりも小さく、凹部42が環状爪部13の先端位置X2まで達していない。
【0061】
図7(D)の凹部43は、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面43aを有しており、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて凹部43の内径が小さくなる。凹部43の全体において、凹部43の内径が環状爪部13の外径Y3よりも小さい。凹部43の深さは、第2部材20のうち環状爪部13が進入していない部分の板厚とほぼ同じであり、X軸方向において、凹部43の最も深い箇所が環状爪部13の先端位置X2とほぼ同じ位置にある。
【0062】
図7(E)の凹部44は、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面44aを有しており、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて凹部44の内径が小さくなる。凹部44の全体において、凹部44の内径が環状爪部13の外径Y3よりも小さい。凹部44の深さは、第2部材20のうち環状爪部13が進入していない部分の板厚よりも大きく、X軸方向において、凹部44の最も深い箇所が環状爪部13の先端位置X2と基端位置X3の間に位置している。
【0063】
図7(F)の凹部45は、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面45aと、中心軸X1に対してほぼ垂直な底面45bとからなる円錐台形の凹部である。テーパ面45aの部分では、第2非対向面22側から底面45b側へ進むにつれて凹部45の内径が小さくなる。凹部45の全体において、凹部45の内径が環状爪部13の外径Y3よりも小さい。凹部45の深さは、第2部材20における第2対向面21から第2非対向面22までの板厚よりも大きく、底面45bが環状爪部13の基端位置X3よりも深い位置にある。つまり、X軸方向において、凹部45の一部が、第1部材10における貫通孔16の内側(第1対向面11から第1非対向面12までの板厚の範囲内)に達している。
【0064】
図7(G)のように、第2部材20において進入部24の延長上に位置する凹部を設けない構成にすることも可能である。プレス痕としての凹部を形成しないことにより、第1部材10への進入部24の進入の程度が軽減されており、進入部24が第3嵌合部17まで達していない。従って、進入部24は第3嵌合部17に嵌合する部分(第4嵌合部25)を有していない。
【0065】
図7(G)のような構造でも、第1嵌合部14と第2嵌合部23の嵌合によって第1部材10と第2部材20の結合が実現される。つまり、本発明の結合構造は、少なくとも第1部材10と第2部材20が第1嵌合部14と第2嵌合部23を有していれば成立する。
【0066】
図8は、第2部材20に設ける凹部の形状のバリエーションを示している。なお、
図8に示すそれぞれの凹部の断面形状は周方向のいずれの部分でも共通している。つまり、それぞれの凹部は、中心軸X1を中心とする周方向に一様な形状を有している。
【0067】
図8(A)に示す凹部46は円錐形の凹部であり、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面46aを内面に有している。
【0068】
図8(B)に示す凹部47は円錐台形の凹部であり、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面47aと、中心軸X1に対して垂直な底面47bとを内面に有している。
【0069】
図8(C)に示す凹部48は半球形の凹部であり、中心軸X1上に中心が位置する球面48aの半分によって内面が構成されている。
【0070】
図8(D)に示す凹部49は砲弾型の凹部であり、内面に湾曲面49aを有している。湾曲面49aは、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて内径が小さくなると共に、中心軸X1から離れる方向への膨らみを持つ面である。
【0071】
図8(E)に示す凹部50はホーン型の凹部であり、内面に湾曲面50aと底面50bを有している。湾曲面50aは、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて内径が小さくなると共に、中心軸X1に近づく方向への膨らみを持つ面である。底面50bは、中心軸X1に対してほぼ垂直な面である。
【0072】
図8(F)に示す凹部51はホーン型の凹部であり、内面に湾曲面51aを有している。湾曲面51aは、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて内径が小さくなると共に、中心軸X1に近づく方向への膨らみを持つ面である。凹部51の底部は、平坦な底面を有さない尖った形状になっている。
【0073】
図8(G)に示す凹部52は、円錐台形の底の一部が隆起したカルデラ型の凹部である。凹部52は、中心軸X1を中心とする円錐状のテーパ面52aと、中心軸X1に対して垂直な底面52bと、底面52bの中央からX軸方向に突出する突出部52cとを有している。
【0074】
図8(H)に示す凹部53は、ホーン型とカルデラ型を複合したタイプの凹部である。凹部53は、内面に湾曲面53aと底面53bを有している。湾曲面53aは、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて内径が小さくなると共に、中心軸X1に近づく方向への膨らみを持つ面である。底面53bは、中心軸X1に対してほぼ垂直な面である。凹部53はさらに、底面53bの中央からX軸方向に突出する突出部53cを有している。
【0075】
図8(I)に示す凹部54は円柱型の凹部であり、中心軸X1を中心とする円柱面54aと、円柱面54aの底部に位置する底面54bとを内面に有している。円柱面54aは内径の大きさが一定であり、X軸方向に延びている。底面54bは、中心軸X1に対してほぼ垂直な面である。円柱面54aの内径は環状爪部13の内径よりも小さい。
【0076】
図8(J)に示す凹部55は、内径が異なる2つの円柱型の凹部を組み合わせた多段構造の凹部である。第2非対向面22に隣接する凹部55の開口側には第1円柱部55aが形成され、第1円柱部55aの底部中央に連通して第2円柱部55bが形成されている。第1円柱部55aの内径は、環状爪部13の内径よりも大きく、第2円柱部55bの内径は環状爪部13の内径よりも小さい。
【0077】
図8(K)に示す凹部56は円環状の凹部である。凹部56は、中心軸X1を囲む領域に環状に形成されており、周方向へ連続している。凹部56は、中心軸X1を中心とする径方向に対向する環状の外周面と環状の内周面を有しており、凹部56の外周面の内径は環状爪部13の内径よりも小さい。
【0078】
以上に説明した
図8の各構成のうち、凹部46~53は、中心軸X1に対して傾いた面(非平行かつ非垂直な面)であるテーパ面、球面、湾曲面を有している。これらの傾いた面を有することにより、プレス装置の凸部からの押圧力を受けて凹部46~53を形成する際に、第2部材20の進入部24を環状爪部13の内部にスムーズに進入させやすくなると共に、環状爪部13を外周側に傾いた適正な形状に設定しやすくなる。しかし、凹部54~56のように、中心軸X1に対して傾いた面を有さないタイプの凹部を採用することも可能である。
【0079】
図9は、多段構造の凹部のバリエーションを示している。先に説明した
図8(J)の凹部55も多段構造の凹部のバリエーションに含まれる。なお、
図9に示すそれぞれの凹部の断面形状は周方向のいずれの部分でも共通している。つまり、それぞれの凹部は、中心軸X1を中心とする周方向に一様な形状を有している。
【0080】
図9(A)に示す凹部57は、円錐形の第1凹部57aと、円柱形の第2凹部57bとを有している。第1凹部57aは、凹部57の底部側へ進むにつれて内径が小さくなるテーパ面を内面に有している。第2凹部57bは、第1凹部57aと第2非対向面22の間に形成されており、内径が一定の円柱面を内面に有している。第2凹部57bの内径は第1凹部57aの最大内径よりも大きく、第1凹部57aと第2凹部57bの間には、第2凹部57bの底面である段差面57cが形成されている。段差面57cは、中心軸X1に対してほぼ垂直な面である。
【0081】
図9(B)に示す凹部58は、円錐台形の第1凹部58aと、円柱形の第2凹部58bとを有している。第1凹部58aは、凹部58の底部側へ進むにつれて内径が小さくなるテーパ面と、中心軸X1に対してほぼ垂直な底面とを内面に有している。第2凹部58bは、第1凹部58aと第2非対向面22の間に形成されており、内径が一定の円柱面を内面に有している。第2凹部58bの内径は第1凹部58aの最大内径よりも大きく、第1凹部58aと第2凹部58bの間には、第2凹部58bの底面である段差面58cが形成されている。段差面58cは、中心軸X1に対してほぼ垂直な面である。
【0082】
図9(C)に示す凹部59は、半球形の第1凹部59aと、円柱形の第2凹部59bとを有している。第1凹部59aは、中心軸X1上に中心が位置する球面の半分によって内面が構成されている。第2凹部59bは、第1凹部59aと第2非対向面22の間に形成されており、内径が一定の円柱面を内面に有している。第2凹部59bの内径は第1凹部59aの直径よりも大きく、第1凹部59aと第2凹部59bの間には、第2凹部59bの底面である段差面59cが形成されている。段差面59cは、中心軸X1に対してほぼ垂直な面である。
【0083】
図9(D)に示す凹部60は、砲弾型の第1凹部60aと、円柱形の第2凹部60bとを有している。第1凹部60aは、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて内径が小さくなると共に、中心軸X1に近づく方向への膨らみを持つ湾曲面を内面に有している。第2凹部60bは、第1凹部60aと第2非対向面22の間に形成されており、内径が一定の円柱面を内面に有している。第2凹部60bの内径は第1凹部60aの最大直径よりも大きく、第1凹部60aと第2凹部60bの間には、第2凹部60bの底面である段差面60cが形成されている。段差面60cは、中心軸X1に対してほぼ垂直な面である。
【0084】
図9(E)に示す凹部61は、それぞれが円錐台形である第1凹部61aと第2凹部61bとを有している。第1凹部61aは、凹部61の底部側へ進むにつれて内径が小さくなるテーパ面と、中心軸X1に対してほぼ垂直な底面とを内面に有している。第2凹部61bは、第1凹部61aと第2非対向面22の間に形成されており、凹部61の底部側へ進むにつれて内径が小さくなるテーパ面と、中心軸X1に対してほぼ垂直な底面(段差面61c)とを内面に有している。中心軸X1に対する第1凹部61aのテーパ面の傾きは、中心軸X1に対する第2凹部61bのテーパ面の傾きよりも大きい。第2凹部61bの最小内径は第1凹部61aの最大内径よりも大きく、第1凹部61aと第2凹部61bの間には、第2凹部61bの底面である段差面61cが形成されている。
【0085】
図9(F)に示す凹部62は、円錐台形の第1凹部62aと、円錐形の第2凹部62bとを有している。第1凹部62aは、凹部62の底部側へ進むにつれて内径が小さくなるテーパ面と、中心軸X1に対してほぼ垂直な底面とを内面に有している。第2凹部62bは、第1凹部62aと第2非対向面22の間に形成されており、凹部62の底部側へ進むにつれて内径が小さくなるテーパ面を内面に有している。中心軸X1に対する第1凹部62aのテーパ面の傾きは、中心軸X1に対する第2凹部62bのテーパ面の傾きよりも大きい。第2凹部62bの最小内径と第1凹部62aの最大内径がほぼ等しく、第1凹部62aとテーパ面と第2凹部62bのテーパ面が連続する構造になっている。つまり、第1凹部62aと第2凹部62bの間に別の段差面が存在していない。
【0086】
図10は、第2部材20に設ける進入部の形状のバリエーションを示している。なお、
図10に示すそれぞれの進入部の断面形状は周方向のいずれの部分でも共通している。つまり、それぞれの進入部は、中心軸X1を中心とする周方向に一様な形状を有している。
【0087】
図10(A)に示す進入部80は、X軸方向における先端の位置が、第1部材10の第1非対向面12とほぼ同じであり、進入部80の先端面と第1非対向面12とが面一になっている。第2部材20には、X軸方向で進入部80の延長上に凹部63が形成されている。
【0088】
図10(B)に示す進入部81は、X軸方向における先端の位置が、第1部材10の第1対向面11と第1非対向面12の間にある。そのため、進入部81の先端面が第1部材10の貫通孔16の内部に位置して、貫通孔16と進入部81の部分が第1非対向面12に対して凹んだ構造になっている。そして、進入部81が第1部材10の第3嵌合部17まで達していない。第2部材20には、X軸方向で進入部81の延長上に凹部64が形成されている。
【0089】
図10(C)に示す進入部82は、X軸方向における先端の位置が、第1部材10の第1対向面11とほぼ同じである。従って、進入部82は、環状爪部13の内側に入り込むが、貫通孔16まで達していない。貫通孔16と進入部82の部分が第1非対向面12に対して凹んだ構造であり、
図10(B)の構成よりも凹みの深さが大きくなっている。第2部材20には、X軸方向で進入部82の延長上に凹部65が形成されている。
【0090】
図10(D)では、第1部材10の第1対向面11と第2部材20の第2対向面21が密着せず、第1対向面11と第2対向面21の間にX軸方向の隙間が存在している。進入部83は、X軸方向における先端の位置が、第2対向面21とほぼ同じである。従って、進入部83は、環状爪部13の内側に入り込むが、貫通孔16まで達していない。第2部材20には、X軸方向で進入部83の延長上に凹部66が形成されている。
【0091】
図10(E)に示す進入部84は、先端側の周縁部から中央(中心軸X1)に近づくにつれてX軸方向への突出量が大きくなる山型部84aを有している。山型部84aは貫通孔16の内部に位置しているが、山型部84aの周縁部はX軸方向への突出量が小さく、第3嵌合部17の位置まで達していない。山型部84aは全体が貫通孔16の内部に収まっており、第1非対向面12に対してX軸方向に突出していない。第2部材20には、X軸方向で進入部84の延長上に凹部67が形成されている。
【0092】
進入部81(
図10(B))、進入部82(
図10(C))、進入部83(
図10(D))、進入部84(
図10(E))はいずれも、第3嵌合部17に嵌合する部分(
図10(A)に示す第4嵌合部25)を有していない。つまり、先に説明した
図7(G)の構造と同様に、第1部材10と第2部材20の結合において第3嵌合部17を使用しない構造である。
【0093】
図10(F)に示す進入部85は、X軸方向における先端の位置が、第1部材10の第1非対向面12とほぼ同じである。進入部85の先端の中央付近に中央凹部85aを有する。中央凹部85aは、中心軸X1を中心とする円錐形の凹部である。第2部材20には、X軸方向で進入部85の延長上に凹部68が形成されている。
【0094】
図10(G)に示す進入部86は、X軸方向における先端の位置が、第1部材10の第1非対向面12とほぼ同じであり、進入部86の先端の中央付近に中央凹部86aを有する。中央凹部86aは、中心軸X1を中心とする円錐形の凹部である。進入部86の中央凹部86aは、
図10(F)における進入部85の中央凹部85aよりも深い。第2部材20には、X軸方向で進入部86の延長上に凹部69が形成されている。
【0095】
進入部85(
図10(F))と進入部86(
図10(G))はいずれも、先端の中央付近に中央凹部85aと中央凹部86aが形成されており、周縁部には第4嵌合部25が存在している。従って、第1嵌合部14と第2嵌合部23の嵌合に加えて、第3嵌合部17と第4嵌合部25も嵌合する構造である。
【0096】
図10(H)に示す進入部87は、先端側の周縁部から中央(中心軸X1)に近づくにつれてX軸方向への突出量が大きくなる山型部87aを有している。山型部87aは周縁部が第3嵌合部17まで達しており、進入部87に設けた第4嵌合部25が第3嵌合部17に嵌合する。山型部87aは、第1非対向面12に対してX軸方向に突出する。第2部材20には、X軸方向で進入部87の延長上に凹部70が形成されている。
【0097】
図10(I)に示す進入部88は、第3嵌合部17に嵌合する第4嵌合部25を有し、さらに貫通孔16の外部に位置する頭部88aを有する。頭部88aは、貫通孔16の内径よりもY軸方向の寸法(径)が大きく、X軸方向には薄い扁平形状である。頭部88aは第1非対向面12に対してX軸方向に突出しており、頭部88aの一部が第1非対向面12に当接してX軸方向への移動が規制される。従って、第3嵌合部17と第4嵌合部25の嵌合に加えて、頭部88aが第1非対向面12に嵌合して、結合強度を向上させる。第2部材20には、X軸方向で進入部88の延長上に凹部71が形成されている。
【0098】
進入部87(
図10(H))と進入部88(
図10(I))はいずれも、一部(山型部87a、頭部88a)が貫通孔16の外部に位置するが、第1非対向面12からの突出量は僅かであり、結合構造における外観品質や設計の自由度には大きな影響を及ぼさない。
【0099】
図10に示した様々なバリエーションの進入部80~88は、第2部材20の凹部63~71をプレス痕として形成するプレス装置の凸部(図示略)や、当該プレスの際に進入部80~88の先端部分を受けるプレス装置の受け部(図示略)などの選択によって得ることができる。
【0100】
例えば、
図10では、凹部63~68、70、71が円錐形であり、凹部69がカルデラ型である。また、円錐形の凹部63~68、70、71は、径や深さがそれぞれ異なっている。このような凹部63~71の形状の違いに応じて、凹部63~71の延長上に位置する進入部80~88の形状や突出量が異なるものになる。
【0101】
また、プレスの際に進入部80~88の先端部分を受ける受け部の形状に応じて、X軸方向での先端位置を変更したり、山型部84a、中央凹部85a、中央凹部86a、山型部87a、頭部88aのような形状を形成したりすることができる。
【0102】
図11は、第1部材10に設ける環状爪部の形状のバリエーションを示している。なお、
図11に示すそれぞれの環状爪部の断面形状は周方向のいずれの部分でも共通している。つまり、それぞれの環状爪部は、中心軸X1を中心とする周方向に一様な形状を有している。
【0103】
図11(A)に示す環状爪部90は、X軸方向で基端側(第1対向面11に近い側)から先端側(第1対向面11から離れる側)へ進むにつれて外周側に傾く(中心軸X1から離れる)形状であり、中心軸X1に対して概ね直線的な傾斜を有している。第2部材20には、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて内径を小さくする円錐形の凹部72が形成されている。
【0104】
環状爪部90は外周側に突出する第1嵌合部90aを有する。環状爪部90の内周側には、環状爪部90の基端側から先端側へ進むにつれて内径が大きくなる内側テーパ面90bが形成されている。第2部材20は、環状爪部90の外周側に位置して第1嵌合部90aに嵌合する第2嵌合部100を有する。
【0105】
図11(B)に示す環状爪部91は、X軸方向で基端側(第1対向面11に近い側)から先端側(第1対向面11から離れる側)へ進むにつれて外周側に傾く(中心軸X1から離れる)形状であり、中心軸X1に対して曲線的に傾斜する湾曲形状になっている。第2部材20には、第2非対向面22側から底部側へ進むにつれて内径を小さくする円錐形の凹部73が形成されている。
【0106】
環状爪部91は外周側に突出する第1嵌合部91aを有する。環状爪部91の内周側には内側湾曲面91bが形成されている。内側湾曲面91bは、環状爪部91の先端側に進むにつれて内径が大きくなると共に、中心軸X1に近づく方向への膨らみを持つ面である。第2部材20は、環状爪部91の外周側に位置して第1嵌合部91aに嵌合する第2嵌合部101を有する。
【0107】
図11(C)に示す環状爪部92は、X軸方向で基端側(第1対向面11に近い側)から先端側(第1対向面11から離れる側)へ進むにつれて、内周側に傾く(中心軸X1に近づく)形状である。当該形状の環状爪部92は、内周側に突出する第1嵌合部92aを有し、外周側に外側テーパ面92bを有している。外側テーパ面92bは、環状爪部92の基端側から先端側へ進むにつれて外径が小さくなる形状である。
【0108】
第2部材20は凹部74を有する。凹部74は、中心軸X1上に位置する円錐台形の中央凹部74aと、中央凹部74aを囲む環状凹部74bとで構成される。環状凹部74bは、第2非対向面22側で幅が広く底部側に進むにつれて幅が狭くなるV字状の断面形状を有しており、当該V字状の断面形状が、中心軸X1を中心とする周方向に連続している。このような凹部74をプレス痕として形成させる際の押圧力によって、内周側に傾く環状爪部92が形成される。
【0109】
より詳しくは、環状凹部74bは、中心軸X1を中心とする径方向で、環状爪部92の外周よりも少なくとも一部が外周側に位置し、第2非対向面22から第2対向面21へ向けて凹んだ有底の外周凹部である。このような環状凹部74bをプレス痕として形成させる際の押圧力によって、環状爪部92を内周側に倒すことができる。環状凹部74bは、中心軸X1を中心とする径方向で、最も内径側の部分が環状爪部92と重なる範囲にあり、最も外径側の部分が環状爪部92の外周側に位置しており、環状凹部74bを形成する際の押圧力を環状爪部92へ効率的に伝えることができる。なお、この構成とは異なり、中心軸X1を中心とする径方向で、全体が環状爪部92の外周側に位置する構成の外周凹部を適用することも可能である。また、環状凹部74bのようなV字状の断面形状には限定されず、U字状や矩形状などの異なる断面形状の外周凹部を適用することもできる。
【0110】
外周凹部である環状凹部74bは、周方向に途切れずに連続し、環状爪部92の周方向の全体を囲う環状の形状である。これにより、環状爪部92の周方向の全体を確実に内周側に倒すことができる。なお、周方向に連続しない(環状ではない)構成の外周凹部であっても、プレス時の押圧力によって環状爪部の少なくとも一部を内周側に傾かせる効果を得ることが可能であり、本発明では周方向に連続しない構成の外周凹部についても適用が可能である。
【0111】
第2部材20は、環状爪部92の内側に位置する進入部102を有する。進入部102は、環状爪部92の第1嵌合部92aに嵌合する第2嵌合部102aを有する。第1嵌合部92aと第2嵌合部102aの嵌合によって、第1部材10と第2部材20が結合される。
【0112】
図11(C)に示す凹部74は、進入部102の延長上に位置する中央凹部74aを備えているが、中央凹部74aを備えずに環状凹部74bのような外周凹部のみで構成された凹部を適用することも可能である。外周凹部のみで構成された凹部でも、環状爪部92のような内周側に傾く形状の環状爪部を形成させることができる。
【0113】
図11(D)の構成は、基本的に
図11(C)と同様の構成を備えており、凹部74における外周凹部である環状凹部74cが、環状爪部92の先端よりも深くなっている点が異なる。つまり、環状凹部74cの底部が、X軸方向で環状爪部92の先端よりも深い位置(第1対向面11及び第2対向面21に近い位置)にある。この構成により、環状凹部74cをプレス痕として形成させる際の押圧力によって、より確実に環状爪部92を内周側に倒すことができる。
【0114】
あるいは、
図11(D)の構成とは逆に、環状爪部92の先端よりも浅い位置(第2非対向面22に近い位置)に底部がある構成の外周凹部を適用することも可能である。
【0115】
図11(E)に示す環状爪部93は、第1対向面11からX軸方向に突出する基端部93aに対して先端側を外周側に拡径させており、この拡径部分によって第1嵌合部93bを構成している。
【0116】
第2部材20は、環状爪部93の外周側に位置して第1嵌合部93bに嵌合する第2嵌合部103を有する。また、第2部材20には、内径が異なる2つの円柱部を合わせた多段構造の凹部75が形成されている。
【0117】
図11(F)に示す環状爪部94は、第1対向面11からX軸方向に突出する基端部94aに対して先端を内周側に屈曲させた形状の第1嵌合部94bを有している。
【0118】
第2部材20は、環状爪部94の内側に位置する進入部104を有する。進入部104は、第1嵌合部92aに嵌合する第2嵌合部104aを有する。また、第2部材20には、内径が異なる2つの円柱部を合わせた多段構造の凹部76が形成されている。
【0119】
環状爪部90(
図11(A))、環状爪部91(
図11(B))、環状爪部92(
図11(C)及び
図11(D))は、基端側から先端までのほぼ全体が中心軸X1に対して傾いた形状である。環状爪部93(
図11(E))と環状爪部94(
図11(F))は、X軸方向に延びる形状を基本としながら、先端側の一部を外周側や内周側に突出させた形状である。このように、環状爪部は、外周側と内周側の少なくとも一方に突出する第1嵌合部を有するという要件を満たしていれば良く、その形状には様々なバリエーションがある。
【0120】
なお、環状爪部90~92のように全体が傾斜するタイプは、X軸方向に対して傾斜する面を有する凹部72~74をプレス痕とする形態の押圧によって形成しやすい。一方、環状爪部93、94のように、先端側の一部を圧縮や屈曲によって外周側や内周側に突出させるタイプは、X軸方向に対して垂直な面の割合が多い凹部75、76をプレス痕とする形態の押圧によって形成しやすい。
【0121】
図12から
図15は、結合前の第1部材10のバーリング部のバリエーションを示したものである。このバリエーションは、結合構造の変形例として、一部に切り欠きなどの不連続な部分を有する部分連続形状の環状爪部に対応するものである。
図12から
図15において、先に説明した
図4及び
図5の第1部材10やバーリング部18と共通する構成については、同じ符号で示し、説明を省略する。
【0122】
図12及び
図13に示すバーリング部110は、中心軸X1を中心とする円筒形状を基本としている点において、
図4及び
図5に示すバーリング部18と共通しているが、円筒の先端側に、複数の凹部111を有している(先割れ形状になっている)点が異なる。バーリング部110は、周方向の位置の違いに応じて断面形状が異なり、
図13に示しているのはその一例の断面形状である。
【0123】
バーリング部110では、複数の凹部111が周方向に間隔を空けて配置されている。それぞれの凹部111は、バーリング部110の先端からX軸方向の途中位置まで形成されており、バーリング部110の基端まで達していない。つまり、バーリング部110の基端側には、周方向に連続する連続部分112が設けられている。
【0124】
バーリング部110を備える第1部材10を第2部材20(
図12及び
図13には表れていない)と結合させると、バーリング部110が変形して、第2部材20側に嵌合する環状爪部(図示略)になる。この環状爪部は、バーリング部110の凹部111に対応する先端側の一部分が凹状や溝状になるが、環状爪部の基端側は、バーリング部110の連続部分112を元にして周方向に連続する形状を有している。
【0125】
図14及び
図15に示すバーリング部120は、中心軸X1を中心とする円筒形状を基本としている点において、
図4及び
図5に示すバーリング部18と共通しているが、円筒の先端側に、X軸方向の高さが変化する凹凸部121を有している点が異なる。バーリング部120は、周方向の位置の違いに応じて断面形状が異なり、
図15に示しているのはその一例の断面形状である。
【0126】
バーリング部120の凹凸部121は、X軸方向に高くなる山部分と低くなる谷部分を交互に有している。凹凸部121を構成する複数の山部分の高さや形状は、同一でもよいし、異なっていてもよい。同様に、凹凸部121を構成する複数の谷部分の深さや形状は、同一でもよいし、異なっていてもよい。凹凸部121は、バーリング部120の先端からX軸方向の途中位置まで形成されており、凹凸部121の谷部分はバーリング部120の基端まで達していない。つまり、バーリング部120の基端側には、周方向に連続する連続部分122が設けられている。
【0127】
バーリング部120を備える第1部材10を第2部材20(
図14及び
図15には表れていない)と結合させると、バーリング部120が変形して、第2部材20側に嵌合する環状爪部(図示略)になる。この環状爪部は、バーリング部120の凹凸部121に対応する先端側の一部分に凹凸形状を有するが、環状爪部の基端側は、バーリング部120の連続部分122を元にして周方向に連続する形状を有している。
【0128】
以上のバーリング部110、120を元に形成される環状爪部は、少なくとも基端側で、中心軸X1を中心とする周方向に連続した形状(連続部分112、122を元にした形状)を有しているため、第2部材20と結合した状態で高い結合強度を得ることができる。
【0129】
以上、図示の形態に基づいて説明したが、本発明の技術は上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらに、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明の適用により、結合強度が高く、外観品質や設計の自由度に優れる結合構造を提供することができ、複数の部材を積層して結合させる様々な製品の製造に有用である。
【0131】
本出願は、2022年3月16日出願の特願2022-040991に基づく。この内容は、すべてここに含めておく。