(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-16
(45)【発行日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2024527670
(86)(22)【出願日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 JP2023020146
【審査請求日】2024-06-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186875
【氏名又は名称】海老澤 知則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】根来 直弥
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-261089(JP,A)
【文献】特開2018-129999(JP,A)
【文献】特開2015-95945(JP,A)
【文献】特開2002-252946(JP,A)
【文献】特開2015-33293(JP,A)
【文献】特許第7074945(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトと一体回転するロータと、
前記ロータに対して径方向に対向配置され、巻線が巻回されたコアを有するステータと、
前記シャフトの一端面から軸方向に離隔して配置され、軸方向に交差する方向に延在する基板と、
前記ステータに対して固定され、前記基板を保持するホルダと、
前記巻線と前記基板とを電気的に接続する接続手段と、
前記ロータの回転位置を検出するホールセンサと、を備え
、
前記ホルダは、前記ロータを径方向外側から覆う有底筒状のハウジングと前記ホルダに取り付けられるカバーとの間に挟まれて固定されるとともに、前記ホールセンサが取り付けられる取付孔部を有し、
前記ホールセンサは、前記取付孔部の前記ロータ側の開口から挿入されるとともに、突き当て固定される
ことを特徴とする、ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記接続手段は、前記基板の外周部において前記基板に電気的に接続される
ことを特徴とする、請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記接続手段は、前記ホルダに固定されるピンであり、
前記ピンの少なくとも一部分は、軸方向から見て、前記コアと重ならない
ことを特徴とする、請求項2に記載のブラシレスモータ
。
【請求項4】
前記取付孔部は、前記ホルダを軸方向に貫通した貫通孔を有し、前記ロータ側の開口の方が前記基板側の開口よりも大きい段付き形状である
ことを特徴とする、請求項
1に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
前記カバーは、前記ホルダとの間に、前記基板が配置された状態で、前記ホルダに取り付けられ
る
ことを特徴とする、請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項6】
前記ステータに対して固定され、前記コアよりも、前記基板が前記一端面から離隔する方向である一方向側に配置される板状の小ケース板を備え、
前記ホルダは、前記小ケース板における前記コア側に固定される固定部と、前記固定部から前記小ケース板よりも前記一方向側へ突設されたボスと、を有し、
前記基板は、軸方向に直交する方向に延在するとともに前記ボスにかしめ固定される
ことを特徴とする、請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項7】
前記ステータが前記ロータの径方向内側に配置されるアウターロータ型である
ことを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載のブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、基板を備えたブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスモータには、センサ等の電子部品や電子回路が実装された基板(電子基板や制御基板とも呼ばれる)が設けられる。基板は、ステータ又はロータの軸方向端面との間に隙間をあけて近接配置される。例えば特許文献1には、ステータに設けられた樹脂ブロックとの間に隙間を介して対向配置されるモータ基板を備えたモータが開示されている。このモータでは、ステータに設けられた孔に、モータ基板に設けられた段差付きのピンが圧入されることで、ステータの軸方向の位置決めがされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1のモータでは、モータ基板が、軸受ホルダを貫通させる孔を有しているため、孔の分だけ基板面積が小さくなってしまい、基板上に搭載できる電子部品点数が限られるという課題がある。また、電子部品点数を確保するために、基板を大きくする必要が生じ、ひいてはモータの大型化を招くおそれがある。
【0005】
本件のブラシレスモータは、このような課題に鑑み案出されたもので、モータを大型化することなく、電子部品をより多く搭載することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のブラシレスモータは、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2以降の各態様は、何れもが付加的に適宜選択されうる態様であって、何れもが省略可能な態様である。態様2以降の各態様は、何れもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0007】
態様1.開示のブラシレスモータは、シャフトと一体回転するロータと、前記ロータに対して径方向に対向配置され、巻線が巻回されたコアを有するステータと、前記シャフトの一端面から軸方向に離隔して配置され、軸方向に交差する方向に延在する基板と、前記ステータに対して固定され、前記基板を保持するホルダと、前記巻線と前記基板とを電気的に接続する接続手段と、前記ロータの回転位置を検出するホールセンサと、を備える。前記ホルダは、前記ロータを径方向外側から覆う有底筒状のハウジングと前記ホルダに取り付けられるカバーとの間に挟まれて固定されるとともに、前記ホールセンサが取り付けられる取付孔部を有し、前記ホールセンサは、前記取付孔部の前記ロータ側の開口から挿入されるとともに、突き当て固定される。
【0008】
態様2.上記の態様1において、前記接続手段は、前記基板の外周部において前記基板に電気的に接続されることが好ましい。
態様3.上記の態様1又は2において、前記接続手段は、前記ホルダに固定されるピンであり、前記ピンの少なくとも一部分は、軸方向から見て、前記コアと重ならないことが好ましい。
【0010】
態様4.上記の態様1~3のいずれかにおいて、前記取付孔部は、前記ホルダを軸方向に貫通した貫通孔を有し、前記ロータ側の開口の方が前記基板側の開口よりも大きい段付き形状であることが好ましい。
【0011】
態様5.上記の態様1~4のいずれかにおいて、前記カバーは、前記ホルダとの間に、前記基板が配置された状態で、前記ホルダに取り付けられることが好ましい。
【0012】
態様6.上記の態様1~5のいずれかにおいて、前記ブラシレスモータは、前記ステータに対して固定され、前記コアよりも、前記基板が前記一端面から離隔する方向である一方向側に配置される板状の小ケース板を備えることが好ましい。この場合、前記ホルダは、前記小ケース板における前記コア側に固定される固定部と、前記固定部から前記小ケース板よりも前記一方向側へ突設されたボスと、を有し、前記基板は、軸方向に直交する方向に延在するとともに前記ボスにかしめ固定されることが好ましい。
【0013】
態様7.上記の態様1~6のいずれかにおいて、前記ブラシレスモータは、前記ステータが前記ロータの径方向内側に配置されるアウターロータ型であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
開示のブラシレスモータによれば、シャフトを挿通するための孔を基板に設ける必要がないため、基板を大きくすることなく多くの電子部品を配置できる。したがって、モータを大型化することなく、電子部品をより多く搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係るブラシレスモータの軸方向断面図(
図2のB-B矢視断面図)である。
【
図3】
図1のブラシレスモータからカバーを省略した斜視図である。
【
図4】
図1のブラシレスモータのホルダを示す斜視図である。
【
図5】
図4のホルダを上下反転させた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、実施形態としてのブラシレスモータについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0017】
[1.構成]
[1-1.全体構成]
図1及び
図2は、本実施形態に係るブラシレスモータ1(以下「モータ1」という)の軸方向に沿う断面図であり、
図1は
図2のB-B矢視断面図、
図2は
図1のA-A矢視断面図である。また、
図3は、モータ1から後述するカバー7を省略して、モータ1を軸方向の一端側から見た斜視図である。
【0018】
図1~
図3に示すように、モータ1は、シャフト4と一体回転するロータ2と、ロータ2に対して径方向に対向配置されるステータ3と、軸方向に交差する方向に延在する基板10と、基板10を保持するホルダ6と、後述する巻線31と基板10とを電気的に接続する接続手段9と、を備える。本実施形態のモータ1は、ロータ2の径方向内側にステータ3が配置される、アウターロータ型のブラシレスDCモータである。
【0019】
本実施形態の説明では、シャフト4を基準に、モータ1の方向(軸方向,周方向,径方向)を定める。軸方向は、シャフト4の中心線Cに沿う方向(シャフト4の長手方向)であり、
図1中の上側(基板10側)を「一端側」とし、この逆を「他端側」とする。周方向はシャフト4の中心線C周りの方向(円周方向)であり、径方向は軸方向及び周方向の双方に直交する方向である。
【0020】
図1及び
図2に示すように、ロータ2は、有底円筒状のロータヨーク20と、ロータヨーク20の内周面に固定されたマグネット21とを有する。ロータヨーク20は、底部が軸方向他端側に位置し、軸方向一端側が開放された形状をなす。ロータヨーク20の底部の中央には、シャフト4が挿通された状態で固定される貫通孔が設けられる。これにより、シャフト4とロータヨーク20(ロータ2)とが一体で回転する。マグネット21は、ロータヨーク20の底部から離隔した位置における内周面に固定され、ロータヨーク20とともに一体回転する。
【0021】
ステータ3は、シャフト4の径方向外側かつロータ2の径方向内側に配置されるとともに、巻線31が巻回されたステータコア30(コア)を有する。以下、巻線31が巻回されて構成されたものをコイルといい、巻線31のうち複数のコイル間を接続する部分を渡り線という。また、本実施形態のステータ3は、ステータコア30の表面に絶縁コーティングが施された絶縁層(絶縁コーティング層)を有する。すなわち、本実施形態のモータ1では、インシュレータの代わりに、絶縁コーティング層が設けられる。
【0022】
ステータコア30は、同一形状の複数の鋼板が積層された積層コアであり、その中心には、鋼板の積層方向に軸方向を一致させた状態でシャフト4が挿通される。ステータコア30には、シャフト4が挿通される円筒部と、円筒部から径方向外側に突設された複数のティース部と、各ティース部の外側端部において周方向に展開された羽根部とが設けられる。本実施形態のステータ3は、周方向に等間隔に配置された六つのティース部(羽根部)を有する。
【0023】
ステータコア30の円筒部の内径はシャフト4の外径よりも大きく設定されており、ステータ3にシャフト4が干渉しないようになっている。ティース部は、巻線31が巻回される部分である。ティース部の表面には上記の絶縁層が設けられる。羽根部は、ロータ2のマグネット21と対向する面部であり、軸方向から見て円弧状をなす。羽根部の径方向外側を向く面が、ステータコア30の外周面30a(以下「コア外周面30a」という)となる。ステータ3の取付構造は後述する。
【0024】
シャフト4は、ロータ2を支持する回転軸であり、モータ1の出力(機械エネルギ)を外部に取り出す出力軸としても機能する。本実施形態のシャフト4は、一端部が軸受33で回転自在に支持され、ロータヨーク20よりも他端側の部分が軸受34により回転自在に支持される。一方の軸受33は後述するメタルホルダ32に固定され、他方の軸受34はハウジング5に固定される。なお、ハウジング5は、ロータ2を径方向外側から覆う有底筒状の部品であり、ロータ2の外周面との間に隙間をあけて取り付けられる。
【0025】
基板10は、シャフト4の一端面4aから軸方向に離隔して配置された板状の部品であり、電子基板や制御基板とも呼ばれる。なお、基板10がシャフト4の一端面4aから離隔する方向である一方向側(例えば
図1中の上側)が、本実施形態の「一端側」である。基板10には、図示しない電子部品が実装される。基板10は、シャフト4の一端面4aから離れて配置されるため、
図3に示すように、シャフト4を挿通するための孔部が設けられない。そのため、孔部がない分、電子部品を配置できる面積(基板面積)が増える。本実施形態の基板10は、軸方向に直交する方向に延在するように配置される。これにより、モータ1をコンパクトな構成にすることができる。基板10の取付構造は後述する。
【0026】
図1~
図3に示すように、ホルダ6は、ステータ3に対して固定される部品であり、例えば樹脂で形成される。ホルダ6は、軸方向から見てロータ2及びステータ3と重なる固定部60と、ターミナル12が設けられるコネクタ部61とを有する。コネクタ部61の形状は、モータ1の種類に応じて変更される。一方、固定部60の形状は、モータ1の種類によらず共通であることが好ましい。ホルダ6及び接続手段9の詳細な構成は後述する。
【0027】
本実施形態のモータ1は、上記の構成に加え、ロータ2の回転位置を検出するホールセンサ11と、ステータ3とホルダ6とを連結するメタルホルダ32と、渡り線をガイドするブッシュ35と、ステータ3に対して固定される小ケース板8と、ホルダ6に取り付けられるカバー7と、をさらに備える。なお、これらの部品は必須ではなく、省略可能である場合は省略してもよいし、別の部品に代えてもよい。
【0028】
図2に示すように、ホールセンサ11は、ロータ2の回転位置に応じた信号を検出する検出部11aと、検出部11aから直線的に延びた三本の端子11bとを有する。ホールセンサ11は、検出部11aがロータ2の一端面に対向するとともに、各端子11bが基板10を貫通する姿勢で、後述するホルダ6の取付孔部62に取り付けられる。なお、各端子11bは、基板10に対し、例えば半田付けにより取り付けられるが、
図1~
図3では、基板10を貫通した状態を図示している。
【0029】
メタルホルダ32は、軸受33を保持する部品であり、ステータコア30の内周面の一端から中間部に亘る範囲に固定される。メタルホルダ32は、例えば樹脂製であり、軸方向に長尺な円筒形状をなし、中央の貫通孔にシャフト4が挿通される。メタルホルダ32の中心線とシャフト4の中心線Cとは互いに一致し、メタルホルダ32の内周面とシャフト4の外周面との間には隙間が形成される。
【0030】
メタルホルダ32の一端部の内周面には、拡径された段差部が設けられる。この段差部に、一端側の軸受33が固定される。また、メタルホルダ32の外周面にも二つの段差部が設けられる。一つ目の段差部は、メタルホルダ32の内周面が拡径された部分における径方向外側に設けられる。つまり、メタルホルダ32は、軸受33が固定される部分において、内周面及び外周面がいずれも拡径されることで、板厚が確保されている。二つ目の段差部は、ステータコア30の一端面に当接する部分に設けられる。この二つ目の段差部よりも他端側の部分はメタルホルダ32の外径が最も小さい部分であり、ステータコア30の円筒部に内嵌される。
【0031】
ブッシュ35は、渡り線がシャフト4と干渉しないようにガイドする部品であり、ステータコア30の内周面の他端寄りの部分に固定される。ブッシュ35は、例えば樹脂製であり、メタルホルダ32よりも軸方向寸法が短い円筒形状をなし、中央の貫通孔にシャフト4が挿通される。ブッシュ35の中心線とシャフト4の中心線Cとは互いに一致し、ブッシュ35の内周面とシャフト4の外周面との間には隙間が形成される。また、メタルホルダ32の他端面とブッシュ35の一端面との間には隙間が形成される。
【0032】
ブッシュ35の内径は、軸方向に一定である。一方、ブッシュ35の外周面には段差部が設けられる。この段差部は、ステータコア30の他端面に当接する部分に設けられる。ブッシュ35は、この段差部よりも一端側の外径が他端側の外径よりも小さくなっており、ステータコア30の円筒部に内嵌される。なお、ブッシュ35の段差部の端面(段差面)が、ステータコア30の他端面に当接することにより、ステータコア30の他端面に絶縁層が設けられていなくても、ブッシュ35によって絶縁される。
【0033】
図1~
図3に示すように、小ケース板8は、板状の部品であり、その板厚方向を軸方向と一致させた姿勢で、ステータコア30よりも一端側に配置される。小ケース板8は、例えば、ロータ2の外径と略同等の外径を持つ円盤の周囲が部分的に切り欠かれた形状となっている。小ケース板8の中央には、円形の貫通孔と、貫通孔の周囲に立設された円筒部とが設けられる。小ケース板8の貫通孔及び円筒部には、メタルホルダ32の一端部が圧入固定される。これにより、メタルホルダ32と小ケース板8とが一体化される。
【0034】
図1及び
図2に示すように、カバー7は、ホルダ6に保持された基板10を覆うように、ホルダ6に対して一端側から取り付けられる。すなわち、カバー7は、ホルダ6との間に、基板10が配置された状態でホルダ6に取り付けられる。カバー7は、例えば樹脂で形成される。本実施形態のモータ1では、シャフト4の一端面4aが基板10を貫通しないことから、カバー7には、当然ながらシャフト4が通る貫通孔は存在しない。
【0035】
[1-2.要部構成]
次に、ホルダ6及び接続手段9の詳細な構成と、基板10の取付構造と、ステータ3の取付構造とを含む、モータ1の要部構成について説明する。
図4は、ホルダ6を一端側から見た斜視図であり、
図5は、ホルダ6を他端側から見た(
図4のホルダ6の上下を反転させた)斜視図である。また、
図6は、
図5のD部を拡大して示す斜視図である。
【0036】
図4及び
図5に示すように、ホルダ6は、上記の固定部60及びコネクタ部61に加え、取付孔部62,第一ボス63,第二ボス64(ボス),台座部65及びガイド部66を有する。
固定部60は、ホルダ6と小ケース板8とを固定する部分であり、一端側を向く面60a(以下「上面60a」という)が、小ケース板8の他端側を向く面(ステータコア30側の面)に固定される。固定部60は、軸方向から見て、中央に円形の孔を有する円盤状をなすとともに、他端側を向く面60b(以下「下面60b」という)の外周縁部から軸方向に立設された周壁部60cを有する。
【0037】
コネクタ部61は、固定部60の径方向外側の一部分に連続して設けられる。本実施形態のモータ1では、有底の角筒状(矩形の筒状)のコネクタ部61を例示する。
図1及び
図3に示すように、本実施形態のコネクタ部61は、ハウジング5との間に隙間をあけて隣接配置され、他端側に向かって(すなわち、軸方向に)開口している。すなわち、コネクタ部61の底部は一端側に配置される。コネクタ部61の底部には、切欠き,スリット,突起などが形成される。コネクタ部61の内部には、二つのターミナル12が、底部を軸方向に貫通した状態で取り付けられる。なお、各ターミナル12の一端12aは、基板10に対し、例えば半田付けにより取り付けられるが、
図1及び
図3では、基板10を貫通した状態を図示している。
【0038】
取付孔部62は、ホールセンサ11が取り付けられる部分であり、固定部60の外周寄りの部分に配置される。本実施形態のモータ1では、三つのホールセンサ11が設けられるため、三つの取付孔部62が周方向に間隔をあけて配置される。三つの取付孔部62は同様に構成されており、いずれも、ホルダ6を軸方向に貫通した貫通孔62aを有する。貫通孔62aにはホールセンサ11が装着される。
【0039】
本実施形態の取付孔部62は、固定部60の上面60aから一端側へ突出するとともに下面60bから他端側へも突出した角筒状(矩形の筒状)となっている。取付孔部62の貫通孔62aの大きさ(開口面積)は軸方向に一様ではなく、他端側(ロータ2側)の開口面積の方が一端側(基板10側)の開口面積よりも大きい。このため、
図6に示すように、取付孔部62の内部には段部62bが形成される。すなわち、取付孔部62の内部は段付き形状となっている。
【0040】
図2に示すように、段部62bよりも他端側にホールセンサ11の検出部11aが配置され、段部62bよりも一端側にホールセンサ11の端子11bが挿通される。検出部11aは、ホルダ6の取付孔部62の他端面よりも他端側へ僅かに突設される。なお、
図6に示すように、取付孔部62の他端側の開口を形成する内面には、リブ62cが突設される。リブ62cは、ホールセンサ11の検出部11aに密着し、検出部11aの位置ずれを防止する。
【0041】
図1,
図2及び
図4に示すように、第一ボス63は、ホルダ6の固定部60から一端側へ突設された部分であり、小ケース板8に貫設された孔部に嵌め込まれるとともにかしめられることで、ホルダ6と小ケース板8とを固定する。本実施形態の第一ボス63は、ホルダ6の固定部60の上面60aに突設された円柱形状をなし、小ケース板8を貫通可能な突出長さを有する。なお、
図1及び
図2では、第一ボス63が小ケース板8を貫通した状態(かしめられていない状態)を図示している。
図4に示すように、本実施形態では、三つの第一ボス63が固定部60の中央の孔部の周囲に等間隔に配置されており、小ケース板8に対しバランスよく固定される。なお、第一ボス63の個数や配置はこれに限られない。
【0042】
図1~
図4に示すように、第二ボス64は、ホルダ6の固定部60から小ケース板8よりも一端側へ突設された部分であり、基板10に貫設された孔部に嵌め込まれるとともにかしめられることで、ホルダ6と基板10とを固定する。本実施形態の第二ボス64は、ホルダ6の固定部60の上面60aに突設された円柱形状をなし、基板10を貫通可能な突出長さを有する。すなわち、第二ボス64は第一ボス63よりも突出長さが長い。なお、本実施形態では、コネクタ部61の一端側の面にも同様の第二ボス64が突設されている。
図1~
図3では、第二ボス64が基板10を貫通した状態(かしめられていない状態)を図示している。
【0043】
図3及び
図4に示すように、本実施形態では、固定部60におけるコネクタ部61から最も遠い位置に一つの第二ボス64が配置され、コネクタ部61における固定部60から最も遠い位置に二つの第二ボス64が互いに間隔をあけて配置されている。すなわち、三つの第二ボス64が、一端側から見て、三角形の配置になっており、基板10に対しバランスよく固定される。なお、第二ボス64の個数や配置はこれに限られない。
【0044】
図2及び
図4に示すように、台座部65は、接続手段9としてのピンが固定される台座状の部分である。台座部65の個数,配置,形状は、接続手段9に応じて設定される。
ここで、接続手段9について説明する。本実施形態のモータ1では、基板10がシャフト4の一端面4aから離隔して配置されることから、従来のようにシャフトが基板を貫通する構成と比較して、コイルと基板10との距離が長くなる。このため、コイルの始線(巻線31)と基板10とを電気的に接続する手段を設けることで、これらの接続を容易且つ確実に実現する。
【0045】
接続手段9は、基板10の外周部において基板10に電気的に接続される。また、本実施形態の接続手段9は、導電性材料で形成された棒状(ピン状)のピンであり、
図2及び
図3に示すように、巻線31と電気的に接続される。このように、巻線31と基板10とは、ピン9を介して互いに電気的に接続される。以下、接続手段9を「ピン9」ともいう。本実施形態のモータ1では、ピン9に巻線31が絡げられた「絡げピン」として設けられる。絡げピンの場合、基板10に対して、ピン9及び巻線31の両方が、例えば半田付けにより電気的に接続される。
【0046】
本実施形態のモータ1では、軸方向から見て、各ピン9の少なくとも一部分がステータコア30と重ならない配置となっている。言い換えると、各ピン9は、その全体がステータコア30のコア外周面30aよりも径方向外側に位置するか、軸方向から見て、部分的にステータコア30と重なるか、のいずれかの配置となっている。このように、ピン9の全体がコア外周面30aよりも径方向内側に位置しない配置とすることで、ピン9が基板10の外周部に確実に配置されることとなり、ピン9により基板面積が縮小されることが回避される。
【0047】
上記の台座部65は、固定部60の外周寄りの部分に配置される。本実施形態のモータ1では、三つのピン9が設けられるため、三つの台座部65が周方向に間隔をあけて配置される。三つの台座部65は同様に構成されており、いずれも、ホルダ6の一端側から軸方向に延びるピン穴65aを有する。なお、ピン穴65aは貫通孔ではない。ピン穴65aにはピン9が固定される。
【0048】
なお、本実施形態のホルダ6では、固定部60の外周部寄りの位置に、三つの取付孔部62及び三つの台座部65(すなわち、六つの部位)が周方向においてほぼ等間隔に配置される。ただし、三つの取付孔部62は、固定部60の外周部寄りにおいて180度の範囲内に配置され、三つの台座部65は残りの180度の範囲内に配置される。このように、ホールセンサ11が取り付けられる部分とピン9が取り付けられる部分とが、それぞれ別でありながらもバランスよく配置される。
【0049】
図2及び
図5に示すように、ガイド部66は、ピン9を介して巻線31を基板10へとガイドする部分であり、固定部60の外周寄りの部分に配置される。本実施形態のモータ1では、三つのピン9が設けられるため、三つのガイド部66が周方向に間隔をあけて配置される。三つのガイド部66は同様に構成されており、いずれも、ホルダ6を軸方向に貫通したスリット66aを有する。スリット66aには巻線31が通される。
【0050】
本実施形態のガイド部66は、固定部60の下面60bから他端側へ突出し、軸方向から見て径方向外側へ開放したU字状となっている。すなわち、ガイド部66の位置では、周壁部60cも軸方向に貫通して切り欠かれており、スリット66aが形成されている。なお、スリット66aは、
図5に示すように、台座部65まで設けられてもよい。
図2に示すように、ティース部に巻回された巻線31は、U相,V相,W相の各始線がガイド部66のスリット66aを通ってピン9へとガイドされ、ピン9に絡げられた状態で、ピン9とともに基板10に電気的に接続される。
【0051】
最後に、基板10の取付構造,ステータ3の取付構造及びモータ1の組立工程を説明する。
基板10は、上記の通り、ホルダ6の第二ボス64にかしめ固定される。
ステータ3については、まず、小ケース板8にメタルホルダ32の一端部が圧入固定され、小ケース板8にホルダ6の固定部60がかしめ固定される。なお、小ケース板8に対する、メタルホルダ32の固定とホルダ6の固定とは、どちらが先でもよい。また、ホルダ6の台座部65にはピン9を固定しておく。
【0052】
次に、メタルホルダ32に、軸受33及び絶縁コーティングされたステータコア30を固定し、ステータコア30にブッシュ35を固定する。そして、ステータコア30に対して巻線31を巻回し、U相,V相,W相のコイルを形成したのち各始線を、ガイド部66を介して各ピン9へガイドし、ピン9に絡げる。このように、本実施形態では、ホルダ6が小ケース板8及びメタルホルダ32を介してステータ3に固定される。この段階で、ステータ3が完成するため、以上の工程を「ステータ工程」ともいう。
【0053】
ロータ2については、ロータヨーク20にマグネット21を固定し、さらに、シャフト4を固定し、これらに対して、軸受34が固定されたハウジング5を取り付ける。この段階では、基板10を取り付けていないが、例えば、基板10の代わりにダミー基板を取り付けることで、モータとして正常であるかのテストを実施することができる。
【0054】
次いで、ホルダ6に基板10を載せる。このとき、ピン9,ホールセンサ11の端子11b,ターミナル12の一端12a,第二ボス64は、基板10を一端側に貫通する。そして、第二ボス64をかしめることでホルダ6に基板10をかしめ固定する。さらに、ピン9,ホールセンサ11の端子11b,ターミナル12の一端12aを、例えば半田付けにより基板10に電気的に接続する。最後に、ホルダ6にカバー7を取り付けることで、モータ1が完成する。
【0055】
[2.効果]
(1)上述したモータ1によれば、シャフト4の一端面4aから軸方向に離隔して基板10が配置されることから、シャフト4を挿通するための孔を基板10に設ける必要がないため、基板10を大きくすることなく多くの電子部品を配置できる。したがって、モータ1を大型化することなく、電子部品をより多く搭載することができる。また、上述したモータ1では、ステータ3に巻回された巻線31と基板10とが軸方向に離隔した配置となるが、接続手段9を介して巻線31と基板10とが電気接続されることから、基板10に対して正確な位置に接続することができる。なお、上記のように、アウターロータ型のブラシレスモータ1であれば、同サイズのインナーロータ型のブラシレスモータに比べて、マグネット21の表面積を大きくすることができるため、モータ性能を向上させることが可能である。
【0056】
(2)上述したモータ1では、接続手段9が基板10の外周部において基板10に電気的に接続されるため、接続手段9によって基板10上の電子部品の配置が阻害されることがない。したがって、モータ1を大型化することなく、電子部品をより多く搭載することができる。
【0057】
(3)上述したモータ1では、接続手段9がホルダ6に固定されたピン9で構成される。この場合、ピン9をホルダ6に固定する工程に耐えうる範囲、かつ、ピン9と巻線31との接続工程に耐えうる範囲で、ピン9を細く(ピン9の外径を小さく)することができる。したがって、ピン9に巻線31を絡げた状態の線径である巻付線径を細くすることができ、ピン9を挿入する基板10の穴を小さくすることができる。これにより、さらに基板面積を拡大できるとともに、半田付けが容易になり不良率の低下の効果も奏する。
【0058】
また、ピン9の少なくとも一部分が、軸方向から見て、ステータコア30と重ならない配置とされる。このように、軸方向から見たときのピン9の位置を、ステータコア30と部分的に重ならない程度に基板10上の外周部に配置することで、基板10上における電子部品の搭載自由度をより高められる。
【0059】
(4)上述したモータ1では、ロータ2と基板10とが軸方向に離隔した配置となるが、ホルダ6に取付孔部62が設けられ、この取付孔部62にホールセンサ11が取り付けられる。このため、ロータ2及びこれと一体回転するマグネット21から適切な距離にホールセンサ11を配置でき、検出精度を確保できる。また、ホールセンサ11を容易に組み付けることができるため、組立容易性を向上させることができる。さらに、ホールセンサ11が取付孔部62に配置されることから、ホールセンサ11の設置に対する剛性を高めることができ、モータ1の作動時に振動が発生してもホールセンサ11の振動を防止でき、これによっても検出精度を高められる。
【0060】
(5)上述した取付孔部62は、ホルダ6を軸方向に貫通した貫通孔62aを有し、ロータ2側の開口の方が基板10側の開口よりも大きい段付き形状となっている。このため、取付孔部62の貫通孔62aに、ロータ2側からホールセンサ11を差し込むことで、ホールセンサ11が段付き部分(上記の段部62b)に突き当たるため、ホールセンサ11の軸方向の位置決めを簡単に行うことができる。
【0061】
(6)上述したモータ1は、ホルダ6との間に基板10が配置された状態でホルダ6に取り付けられるカバー7を有するため、基板10をカバー7で保護することができる。さらに、カバー7を取り外せば、基板10だけを交換することができるため、修理コストの低減を図ることができる。
【0062】
(7)上述したモータ1は、ステータコア30よりも一端側(一方向側)に配置される小ケース板8を有する。また、上述したホルダ6は、小ケース板8のステータコア30側に固定される固定部60と、固定部60から小ケース板8よりも一端側へ突設された第二ボス64とを有する。さらに、上述した基板10は、軸方向に直交する方向に延在する姿勢でホルダ6に支持されることから、コンパクトな構成にすることができる。加えて、基板10は第二ボス64にかしめ固定される。このように、ホルダ6は、小ケース板8に固定されてステータ3と一体化されるため、ホルダ6の取付安定性を向上させることができる。一方で、基板10は小ケース板8よりも軸方向の一端側に突出した第二ボス64にかしめ固定されるので、ステータ3と適度な隙間をあけた状態で確実に固定することができる。さらに、この隙間により、基板10とステータ3との距離があくので、ステータ3で発生した熱から電子部品を保護することができる。さらに、基板10とステータ3との間に小ケース板8を有するので、ステータ3から発生した熱を小ケース板8により遮断することができ、熱による悪影響から電子部品をより保護することができる。
【0063】
[3.その他]
上述したモータ1は一例であり、上述した構成に限られない。例えば、ホルダ6と小ケース板8との固定方法や、ホルダ6と基板10との固定方法が、かしめ固定でなくてもよい。また、基板10が軸方向に直交する方向ではなく、やや斜めに(直交以外の交差する方向に)延在していてもよい。なお、ハウジング5及びカバー7は必須ではなく、省略してもよいし別の部品で代替してもよい。
【0064】
上記のコネクタ部61の形状も一例である。例えば、コネクタ部が軸方向に直交する方向に開口していてもよい。また、ターミナル12の代わりに、リード線が基板10に電気的に接続される場合には、コネクタ部61を省略し、リード線を束ねる部分をホルダに設けてもよい。
上記のホールセンサ11の取付構造も一例であり、取付孔部62の形状や配置を変更してもよいし、例えば、ホルダ6とは別体の取付部を設けてもよい。
【0065】
上述したモータ1では、接続手段としてピンが採用されているが、接続手段は、巻線31と基板10とを電気的に接続可能な構成であればピンに限られない。また、接続手段の配置は、基板10の外周部であることが好ましいが、電子部品の配置を妨げにくい位置であれば外周部に限られない。また、接続手段としてピン9が用いられる場合であっても、ピン9に巻線31が絡げられた「絡げピン」である必要はなく、ピン9に巻線31を絡げる代わりに、結線端子を用いて巻線31をピン9に接続してもよい。この場合、基板10に対して、ピン9のみが、例えば半田付けにより電気的に接続されればよい。
上述したモータ1は、アウターロータ型であるが、ロータ2の径方向外側にステータ3が対向配置される、インナーロータ型のブラシレスモータに対して、上述した構成を適用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 モータ(ブラシレスモータ)
2 ロータ
3 ステータ
4 シャフト
4a 一端面
6 ホルダ
7 カバー
8 小ケース板
9 ピン(接続手段)
10 基板
11 ホールセンサ
30 ステータコア(コア)
30a コア外周面
31 巻線
60 固定部
62 取付孔部
62a 貫通孔
64 第二ボス(ボス)
C シャフトの中心線
【要約】
ブラシレスモータ(1)は、シャフト(4)と一体回転するロータと、ロータに対して径方向に対向配置され、巻線(31)が巻回されたコアを有するステータ(3)と、シャフト(4)の一端面から軸方向に離隔して配置され、軸方向に交差する方向に延在する基板(10)と、ステータ(3)に対して固定されるとともに基板(10)を保持するホルダ(6)と、巻線31と電気的に接続される接続手段(9)と、を備える。