(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】多成分系及び多成分系の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 201/00 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2021560155
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058131
(87)【国際公開番号】W WO2020193536
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】102019107633.1
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521438205
【氏名又は名称】コサ グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポトレック ジャニーヌ-メラニー
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-153201(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133104(WO,A1)
【文献】特開2006-077258(JP,A)
【文献】特開2009-031385(JP,A)
【文献】特表2013-519783(JP,A)
【文献】特表2005-525433(JP,A)
【文献】特開2009-292941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1の物質と少なくとも1つの第2の物質とを含み、前記第1の物質及び前記第2の物質は、多成分型接着剤の構成要素であることを特徴とし、第1の物質の物質部分が、第1のカプセル(K1)内に配置されており、及び第2の物質の物質部分が、第2のカプセル(K2)内に配置されており、第1のカプセル(K1)及び第2のカプセル(K2)が活性化可能である多成分系であって、前記第1の物質及び前記第2の物質は、複数の物質部分において存在し、ここで、前記第1の物質部分には、少なくとも1つの第1の官能基(R2)が形成されており、かつ第1のリンカー(L1)が備え付けられており、かつ前記第2の物質部分には、少なくとも1つの第2の官能基(R21)が形成されており、かつ第2のリンカー(L2)が備え付けられており、前記第1の官能基(R2)は、共有結合を介して前記第2の官能基(R21)と反応して、これらが互いに接続され、かつ前記官能基とそれぞれの物質部分との距離は、それぞれのリンカー(L)によって決められており、第1のカプセル(K1)と第2のカプセル(K2)とが、異型間架橋により網状に結合されている、多成分系。
【請求項2】
前記第1のリンカー(L1)は、前記第2のリンカー(L2)より長い又はその逆であることを特徴とする、請求項1に記載の多成分系。
【請求項3】
前記第1の物質部分が、前記第2の物質部分よりも多数の物質部分と接続されている若しくは接続可能である又はその逆であるという点で、前記第1の物質部分と前記第2の物質部分とが相違することを特徴とする、請求項1又は2に記載の多成分系。
【請求項4】
前記官能基(R)は、同種又は異種で形成されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の多成分系。
【請求項5】
前記第1の物質部分は、本質的に同一の大きさを有する、及び/又は前記第2の物質部分は、本質的に同一の大きさを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の多成分系。
【請求項6】
前記第1の物質部分及び前記第2の物質部分は、異なる大きさを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の多成分系。
【請求項7】
前記多成分系は、隙間を有する網状構造を有し、ここで、前記網状構造は、前記第1の物質の物質部分から形成されており、前記隙間内には、少なくとも部分的に前記第2の物質のそれぞれ少なくとも1つの物質部分が配置されていることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の多成分系。
【請求項8】
前記第1の物質及び/又は前記第2の物質の物質部分は、ナノカプセル及び/又はマイクロカプセル内に配置されていることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の多成分系。
【請求項9】
前記第1の物質用のカプセル(K1)は、前記第2の物質用のカプセル(K2)とは異なる大きさを有し、特に、前記第1の物質用のカプセル(K1)は、前記第2の物質用のカプセル(K2)よりも大きいことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の多成分系。
【請求項10】
前記第1の物質用のカプセル(K1)は、同一の大きさを有することを特徴とする、請求項8又は9に記載の多成分系。
【請求項11】
前記多成分系の活性化は、圧力、pH値、UV放射、浸透、温度、光強度、水分等の少なくとも1つの変化によって行われることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の多成分系。
【請求項12】
前記第1の物質及び前記第2の物質は、二成分型接着剤の構成要素であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の多成分系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多成分系及び多成分系の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、多成分系は既に知られている。
【0003】
例えば、接着技術において、例えば2成分系等の多成分系が使用される。
【0004】
ここで、例えば、特許文献1でのような特殊な手動式アプリケーターを利用して、接着系を活性化し、その後に塗布することができる。
【0005】
特許文献2から、圧力に反応し、液体を相応して放出するカプセル系は既に更に知られている。
【0006】
更なるカプセル系は、例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、及び特許文献7から知られている。
【0007】
例えば、特許文献8、特許文献9、又は特許文献10から、更にカプセルインカプセル系が知られている。
【0008】
これまでのカプセル系は全て受動型の系である。これは、該カプセル系が1つ以上のカプセルを有し、その1つ以上のカプセル内に対象となる成分が封入されることを意味する。次に、活性化とも呼ばれる規定の時点で、カプセルのこの内容物が排出されることにより、相応して成分が放出される。
【0009】
しかしながら、成分の放出及びそれらの十分な混合をより良好に制御することができることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国実用新案第202017000446号
【文献】米国特許出願公開第2012/0107601号
【文献】国際公開第2017/192407号
【文献】米国特許第8,747,999号
【文献】国際公開第2017/042709号
【文献】国際公開第2016/049308号
【文献】国際公開第2018/028058号
【文献】米国特許第9,637,611号
【文献】国際公開第2002/060573号
【文献】米国特許第4,891,172号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、特に、多成分系の個々の成分の配量及びそれらの十分な混合をより良好に制御することができるため、多成分系の反応の効率が改善されるという趣旨で、冒頭で挙げられた種類の多成分系及び多成分系の製造方法を有利に開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する多成分系によって解決される。それによれば、少なくとも1つの第1の物質と少なくとも1つの第2の物質とを含み、活性化可能である多成分系であって、第1の物質及び第2の物質は、複数の物質部分において存在し、ここで、第1の物質部分には、少なくとも1つの第1の官能基が形成されており、かつ第1のリンカーが備え付けられており、かつ第2の物質部分には、少なくとも1つの第2の官能基が形成されており、かつ第2のリンカーが備え付けられており、第1の官能基は、予め規定された相互作用を介して、弱い相互作用又は強い相互作用を介するが、有利には共有結合を介して第2の官能基と反応して、これらが互いに接続され、かつ官能基とそれぞれの物質部分との距離は、それぞれのリンカーによって決められている、多成分系を提供することが意図されている。
【0013】
本発明は、リンカー及び官能基による接続の補助による規定の空間的配置によって、少なくとも1つの第1の物質及び少なくとも1つの第2の物質が規定通りに互いに配置されるという基本的思考を基礎としている。したがって、目下、第1の物質と第2の物質とを規定の比率で、かつ相応して規定された距離で互いに別個に配置することが可能となる。次に、対応する活性化によって、物質同士が互いに混合されて、物質同士の互いの反応が可能となる。
【0014】
原則的に、第1の物質と第2の物質とが同一であることで、そもそも1成分系が存在することも考えられる。このような系も上記の意味での多成分系として解釈されるべきである。
【0015】
さらに、第1のリンカーが、第2のリンカーよりも長い又はその逆であることが意図され得る。これにより、例えば、第1の物質同士が、相応の結合後に、第1の物質から第2の物質までよりも大きな互いの距離を取るという利点がもたらされる。これにより、第2の物質が常に空間的に第1の物質の間に配置されていることとなり、十分な混合が促される。これにより、物質の相互の濃度比及び/又は体積比の調整も促される。
【0016】
リンカーは、カプセルと官能基との間のあらゆる形態の接続であり得る。
【0017】
リンカーはまた、カプセルと官能基との間のあらゆる種類の直接的な接続でもあり得る。
【0018】
さらに、第1の物質部分が、第2の物質部分よりも多数の物質部分と接続されている若しくは接続可能である又はその逆であるという点で、第1の物質部分と第2の物質部分とが相違することが考えられる。これにより、濃度比及び/又は体積比、並びに物質の相互の相対比を調整することができる。
【0019】
官能基は、同種又は異種で形成されている場合がある。例えば、物質及び付随する官能基が異種である、すなわち、異なる官能基が使用され得ることが考えられる。例えば、これは、例えば製造時に最初に特定のリンカーに保護基を備え付けて、このリンカーが特定の結合、例えば第1の物質と第1の物質との結合又は第2の物質と第2の物質との結合又は更に第1の物質と第2の物質との結合に使用されるべきことを達成したい場合に望ましい。第1の官能基が2つのカプセルの接続を可能にし、かつ第2の異なる官能基が表面又は繊維上でのカプセルの結合を可能にすることも考えられる。第1の官能基が2つのカプセルの結合を可能にし、かつ第2の異なる官能基がカプセルの特性、例えば生体適合性、溶解性、又は同様の特性を変更するのを可能にすることも考えられる。異種の官能基により3成分系以上を構成することが可能となることも考えられる。
【0020】
しかしながら、全ての官能基が同種で、すなわち同一に構成されていることも考えられる。異種の構成の場合に、これを他の特性又はリンカーの構成の違い(例えば、長さ、角度、リンカーの種類等)と組み合わせることも考えられる。
【0021】
第1の物質部分は、本質的に同一の大きさを有し得る、及び/又は第2の物質部分は、本質的に同一の大きさを有し得る。大きさとは、特に空間的広がりを意味し得るが、質量又は占有体積も意味し得る。第1の物質部分及び第2の物質部分が、それぞれ同一の大きさ又は量を有することが考えられる。
【0022】
しかしながら、特に、第1の物質部分及び第2の物質部分が、異なる大きさを有することも考えられる。
【0023】
大きさの選択によって、それぞれの物質のそれぞれの(局所的)体積及び/又はそれぞれの局所的濃度も決められる。
【0024】
多成分系は、隙間を有する網状構造を有することができ、ここで、網状構造は、第1の物質の物質部分から形成されており、隙間内には周囲媒体と、少なくとも部分的に第2の物質のそれぞれ少なくとも1つの物質部分とが配置されている。結果として、個々の物質の十分な混合が改善され、したがって材料の使用も改善される。
【0025】
さらに、第1の物質及び/又は第2の物質の物質部分が、カプセル、特にナノカプセル及び/又はマイクロカプセル内に配置されていることが意図され得る。カプセル化によって、多成分系のための第1の物質及び/又は第2の物質の規定の質量又は規定の体積をもたらし得ることが容易に可能となる。マルチカプセル系又は、例えば2成分カプセル系(2Kカプセル系)では、カプセルが同じ内容物を有する場合に、カプセルが活性化されることでそれらの内容物が互いに反応し得るまで又は互いに反応せざるを得ない若しくは混ざり合わざるを得なくなるまでは、カプセルの内容物が規定の数及び/又は規定の比率並びに距離で別個の空間において互いに結合されていることが可能である。カプセルごとに、1つの物質の1つの物質部分が配置又は分包されている。1つのカプセルが複数の物質部分を含むことも考えられる。第1の物質及び第2の物質を有するカプセルの構造物は、カプセル複合体とも呼ばれることがあり、活性化後に規定の時点で試薬が互いに混合されて物質の互いの反応が進行する、ほぼ(ミニ)反応フラスコのような機能を有する。多数のこれらのカプセル複合体によって、作用様式が集約されて、より大きな効果が引き起こされる又は物質の混合及び反応が改善される。個々の物質又は反応構成要素の相互のより十分な混合によって更なる利点がもたらされ、したがって、従来の系と比較してより高い転化率が、同時により少ない材料の使用で達成され得る。1成分系の場合に、十分な混合は明らかに改善され得る。特に高粘性の接着テープの場合に、こうして一成分型接着剤で接着テープを通した完全な架橋を達成することができる。
【0026】
特に、第1の物質用のカプセルが、第2の物質用のカプセルとは異なる大きさを有し、特に、第1の物質用のカプセルが、第2の物質用のカプセルよりも大きいことが意図され得る。これによって、第2の物質に対する第1の物質の体積の比率(又はその逆)の調整、及び活性化挙動の調整が行われる。
【0027】
さらに、第1の物質用のカプセルが、同一の大きさを有することが考えられる。これはまた、活性化挙動の調整にも役立つ。
【0028】
多成分系のカプセルの活性化が、圧力、pH値、UV放射、浸透、温度、光強度、水分等の少なくとも1つの変化によって行われることが考えられる。
【0029】
1つ以上の活性化機構を並行して用いることが考えられる。
【0030】
可能なカプセル型としては、例えば、ダブルカプセル、マルチコアカプセル、カチオン特性若しくはアニオン特性を有するカプセル、異なるシェル材料を有するカプセル、複数のシェルを有するカプセル、複数の層のシェル材料を備えたカプセル(いわゆる多層マイクロカプセル)、金属ナノ粒子を有するカプセル、マトリックスカプセル及び/又は中空カプセル、気密なシェル材料、例えば絶対的気密なシェル材料を備えたカプセル、多孔質カプセル、及び/又は空の多孔質カプセル(例えば、臭気をカプセル化するため)が挙げられる。
【0031】
第1の物質及び第2の物質は、多成分型接着剤、特に二成分型接着剤の構成要素であり得る。
【0032】
原則的に、他の適用分野も可能である。
【0033】
特に、第1の物質及び第2の物質が、一成分型接着剤の構成要素であることが意図され得る。すなわち、第1の物質及び第2の物質は、同じ物質であり得る。
【0034】
カプセルにリンカー及び官能基が形成されている、又はカプセルはこれらで官能化されている。リンカーは、カプセルを互いに架橋するべきである。官能基が、なおも保護基を備えていることが意図され得る。カプセル同士の距離は、リンカーの長さによって決められ得る。リンカーの長さは、架橋を確実にするために、カプセルの排出された液体の内容物の半径が、隣接カプセルの内容物とわずかに重なるように選択されるべきである。より粘性の高い周囲媒体の場合に(例えば接着テープのように)、リンカーの長さは、ペースト又は液体等のより低い粘性の媒体の場合よりも短く選択されるべきであろう。
【0035】
一般に、カプセルの同型内架橋(Intravernetzung)が可能である。ここでは、1つのカプセル集団のカプセル同士が互いに架橋される。
【0036】
一般に、同型内架橋を介して同じ内容物を有するカプセル同士を架橋することが可能である。
【0037】
一般に、代替的に又は追加的に、カプセル同士の異型間架橋(Intervernetzung)が可能である。ここでは、少なくとも2つの異なるカプセル集団からのカプセル同士が互いに架橋される。
【0038】
一般に、異型間架橋を介して異なる内容物を有するカプセル同士を架橋することが可能である。
【0039】
化学的に硬化する接着剤の場合に、2つの別個の反応空間を有する2成分系では、樹脂と硬化剤とが規定の体積比で別個のカプセル内に存在し、貯蔵条件では活性化反応から保護されていると考えられる。その後、例えば、圧力、pH値、UV放射、浸透、温度、光強度、水分の変化、又は空気の排除によって、硬化反応が引き起こされる。
【0040】
1成分カプセル系又は多成分カプセル系、例えば2成分カプセル系のカプセルを、気相中、ペースト状媒体中、粘性媒体中、高粘性媒体中、液体系中に導入することができる、及び/又は固体表面上に載せることができる。
【0041】
例えば、カプセルが、スプレー(スプレー接着剤)に含まれていることが考えられる。
【0042】
多成分系、例えば二成分型接着剤が、周囲媒体としてのペースト状媒体中に導入されていることが考えられる。これにより、被接着面、例えば表面に接着剤を非常に正確に塗布することが可能となり得る。二成分型接着剤は活性化前までは活性化されることはなく、プロセス時間だけでなく活性化を個別に決定することもできる。
【0043】
カプセルが、表面、例えば担体材料上に載置されていることが考えられる。カプセルは、例えば、両面担体材料又は片面担体材料の中及び/又はその上に含まれている場合がある。担体材料は、例えば、プラスチック、プラスチックフィルム又は金属又は金属箔又はプラスチックフォーム又はテキスタイル織物又は紙を含み得る。担体材料を、例えば、印刷若しくは打ち抜きによって又は他の方法で更に加工することも可能である。
【0044】
1成分カプセル系又は多成分カプセル系、例えば2成分カプセル系のカプセルを含む両面担体材料又は片面担体材料の可能な用途は、接着テープ及び/又は接着ストリップ及び/又は接着ラベルである。
【0045】
1成分カプセル系又は多成分カプセル系、例えば2成分カプセル系のカプセルを含む両面担体材料又は片面担体材料の可能な用途は、人間又は動物で創傷被覆する接着テープ及び/又は接着ストリップ及び/又は接着ラベルである。一般に、植物、例えば木での使用が可能である。担体材料を、例えば、人間又は動物又は植物の皮及び/又は体表面に載置することができる。担体材料を、人間又は動物又は植物の(体)内に載置することも可能である。
【0046】
特に、こうして人間、動物、又は植物の創傷被覆が可能となり得る。創傷に狙い通りに貼り付けることが可能である。それによれば、両面担体材料又は片面担体材料上のコンタクト接着剤が、担体材料の位置決めのための最初の付着を可能にすることが意図されている。カプセルの活性化を介して架橋が起こり、それにより最終的な付着が可能となる。代替的に又は追加的に、例えば事故、負傷、外科手術、又はその他の種類の損傷によって構造的及び/又は機能的に変化した組織、例えば骨及び/又は軟骨組織、神経組織、筋肉組織、脂肪組織、上皮組織、エナメル質、象牙質、髄、実質、厚角組織、厚膜組織、表皮、周皮、木部、師部、又は器官の修復は、一成分型接着剤又は多成分型接着剤の両面担体材料又は片面担体材料の載置によって可能となり得る。
【0047】
2成分マイクロカプセルを官能化した官能基と相補的な官能基を被接着表面に形成する又は備え付ける(すなわち、官能化する)ことが考えられる。2成分マイクロカプセルが被接着表面に結合され得る。したがって、被接着表面は、非接着性に形成されている場合がある。2成分マイクロカプセルの活性化の時点及び種類を精密に決定することができる。これは、例えば、電子機器、ディスプレイ等を接着するときのようなマイクロ範囲で接着するときに使用され得る。人間又は動物での深部軟部組織傷の範囲において使用することも考えられる。記載される方法によって、深い創傷及び/又はより大きな創傷が接着され得ることも考えられる。深い創傷及び/又は大きな創傷の低侵襲性の接着が考えられる。一般に、人間、動物、又は植物のあらゆる種類の組織及び/又は器官を接着することが考えられる。
【0048】
特に、1成分カプセル系又は多成分カプセル系、例えば2成分カプセル系のカプセルが、追加的に又は代替的に、薬理学的作用を有する物質、例えば、抗生物質、成長因子、消毒剤等を含む医薬を含むことが考えられる。これは、例えば、あらゆる種類の組織又は器官のより良好な創傷治癒又は癒着を可能にし得る。
【0049】
1成分カプセル系又は多成分カプセル系、例えば2成分カプセル系のカプセルが、多孔質カプセルであることも考えられる。多孔質カプセルは、液体及び/又は臭気を吸収するために使用され得る。例えば、多孔質カプセルを使用して、動物、人間、又は更に植物の創傷での創傷液を吸収することが考えられる。
【0050】
多成分カプセル系、例えば2成分カプセル系のカプセルを介して、選択された放出プロファイルを達成することも可能である。例えば、医薬又は成長因子及び/又は作用物質の段階的放出及び/又は遅延放出が考えられる。
【0051】
2成分カプセル系では、創傷のより素早い治癒のためにフィブリンを含む第1のカプセル集団が直ちに活性化されるが、抗生物質を含む第2のカプセル集団は遅延型の活性化メカニズムを有するため、フィブリンの放出と比べて抗生物質の放出が遅れて起こることが考えられる。さらに、臭気及び/又は創傷液を吸い取る空の多孔質カプセルを導入することが可能である。
【0052】
2成分マイクロカプセル系には、水性成分(第1の相)を含む第1のカプセル集団と、油含有成分(第2の相)を含む第2のカプセル集団とが含まれることが考えられる。したがって、2成分マイクロカプセル系が、水性成分と油含有成分とを、すなわち、第1の相と第2の相とを規定の比率で溶解することを可能にすることが考えられる。こうして、(第1相対第2相の)規定の比率を有する2成分マイクロカプセル系に基づく2相生成物が生成し得ることが考えられる。例えば、規定の比率の2成分マイクロカプセル系に基づく2相生成物を、織物/繊維に適用し得ることが考えられる。2成分マイクロカプセル系に基づく2相生成物によって物質が乾燥しないことから、通常の包装で貯蔵し得ることが可能となることが考えられる。一般に、このような系は、反応が従来の系の場合よりも効率的に進行するために使用され得る。
【0053】
同じ内容物を有するが、異なる活性化機構を伴う2成分カプセル系の2つのカプセル集団を、担体材料上で回分法において同型内架橋によって相互結合させることも考えられる。これにより、1成分カプセル系と比較してより長期的に持続する、例えば薬理学的作用を有する物質の放出が可能となり得る。
【0054】
さらに、2成分カプセル系の場合に、不安定な物質が、カプセル化によって周囲媒体中でより安定した形態でより長期に貯蔵されることが考えられる。カプセルが活性化されると初めて、第1のカプセル内の安定した成分が第2のカプセルからの活性剤と反応して、反応性の形態に変換され得る。
【0055】
カプセルを含む両面担体材料又は片面担体材料の更なる可能な用途は、パーソナルケアの分野、衣類及び/又は靴の製造若しくは修理、建設分野若しくは手工芸分野、日曜大工、木工、自動車産業、接着技術、電子産業等における接着テープ及び/又は接着ストリップである。
【0056】
1成分カプセル系及び/又は2成分カプセル系のカプセルが、人間、動物、植物、又は物体用のケア製品の分野で使用されることも考えられる。
【0057】
多成分系、例えば2成分系が、自己修復製品にも使用され得ることが考えられる。
【0058】
モノマーが第1のカプセル内にカプセル化されており、活性剤が別のカプセル内にカプセル化されていることが可能である。狙い通りの活性化によって、カプセル複合体は周囲媒体と反応することができる。
【0059】
例えば、2成分系のカプセルを紙に導入することが考えられる。糖モノマーが第1のカプセル集団にカプセル化されており、対応する活性化酵素が第2のカプセル集団にカプセル化されている場合がある。活性化によってカプセルが破裂し得て、活性化酵素により糖モノマーは紙の繊維に結合され得る。こうして、1つ以上の破損箇所を修復し得ることが考えられる。この原理を、あらゆる種類の繊維、例えばプラスチック繊維に適用することが考えられる。
【0060】
一般に、モノマーが第1のカプセル集団に存在し得て、第1のカプセル集団におけるモノマーの重合用の開始剤が別のカプセル集団に存在し得る。
【0061】
この原理は、あらゆる種類のモノマーに適用され得る。
【0062】
一般に、2種のモノマーが異なるカプセル内に存在する場合もある。
【0063】
例えば、カルボン酸が第1のカプセル内に存在し、かつジオールが第2のカプセル内に存在する場合がある。カプセルの活性化によって重縮合が活性化され、両方のモノマーが反応してポリエステルが形成され得る。
【0064】
一般に、トリプルカプセル系も考えられる。第1のカプセル及び第2のカプセル内に、それぞれ同一のモノマー又は異なるモノマーが存在し得る。第3のカプセル内に、開始剤が存在し得る。
【0065】
例えば、フェノプラストの重縮合が可能であり、その際、フェノールが一方のカプセル内に存在し、アルデヒドがもう一方のカプセル内に存在する。第3のカプセル内には、開始剤が存在する。
【0066】
一般に、この原理は、あらゆる重合に適用され得る。
【0067】
カプセルが、少なくとも部分的に1種以上の芳香剤、染料、充填剤、ケア製品、成長因子、ホルモン、ビタミン、微量元素、脂肪、酸、塩基、漂白剤、アルコール、タンパク質、酵素、核酸、ヒドロゲル等を含むことが可能である。
【0068】
1成分カプセル系又は2成分カプセル系のカプセルを、洗浄剤の分野で使用することも考えられる。したがって、カプセルが、少なくとも部分的に1種以上の芳香剤、染料、洗剤、界面活性剤、アルコール、酸、塩基、漂白剤、酵素、核酸等を含むことが可能である。
【0069】
1成分カプセル系又は2成分カプセル系のカプセルを、診断法の分野で使用することも考えられる。したがって、カプセルは、少なくとも部分的に造影剤、蛍光物質、及び/又は色素を含むことが可能である。
【0070】
特に、2成分カプセル系の同種官能化及び/又は異種官能化されたカプセル集団が、共有結合で相互結合されることが考えられる。特に、2成分カプセル系の同種官能化及び/又は異種官能化されたカプセル集団が、同型内架橋及び/又は異型間架橋によって共有結合で相互結合されることが考えられる。両方のカプセル集団には、それぞれ異なる物質、例えば異なる染料で充填されている場合がある。特定の状況では特定の活性化機構によって一方のカプセル集団の中身が排出され、第2の特定の状況では特定の活性化機構によってもう一方のカプセル集団の中身が排出されることが考えられる。両方の状況が起こると、両方のカプセル内容物が混ざり合うため、特定の色が生ずる。
【0071】
担体材料に少なくとも1つの官能基を形成することで、官能化されたカプセルが表面に結合するのを可能にすることも考えられる。
【0072】
特に、被接着表面の少なくとも1つの領域に官能基を形成することが考えられる。さらに、1成分カプセル系及び多成分カプセル系のカプセルに、上記のように官能基が形成され得る。引き続き、これらのカプセルは、官能化された表面へと架橋によって共有結合される。カプセルの活性化によって、接着剤が排出され、及び/又は互いに混ざり合い、それにより接着特性が発生する。
【0073】
さらに、接着テープの担体材料の表面が官能化されている場合がある。コンタクト接着剤中に1成分系及び多成分系を混加する。後続工程で、カプセル複合体の一部を担体材料の表面に結合させる。
【0074】
更なる例示的実施形態において、カプセル複合体は、コンタクト接着剤の表面全体又はその一部に適用され得る。
【0075】
一般に、溶剤蒸発、熱ゲル化、ゲル形成、界面重縮合、重合、噴霧乾燥、流動層、液滴凍結、押出、超臨界流体、コアセルベーション、エアーサスペンション(Luftfederung)、パンコーティング、共押出、溶剤抽出、分子包接、噴霧結晶化、相分離、乳化、in situ重合、不溶性、界面分離、ナノ分子篩による乳化、イオノトロピックゲル化法、コアセルベーション相分離、マトリックス重合、界面架橋、凝固法、遠心押出、及び/又は1つ以上の更なる方法によってカプセルを製造することが可能である。
【0076】
一般に、物理的方法、化学的方法、物理化学的方法、及び/又は同様の方法によってカプセルを製造することが可能である。
【0077】
一般に、カプセルのシェルは、少なくとも1種のポリマー、ワックス、樹脂、タンパク質、多糖類、アラビアゴム、マルトデキストリン、イヌリン、金属、セラミック、アクリレート、ミクロゲル、相変化材料、及び/又は1種以上の更なる物質を含むことが可能である。
【0078】
一般に、カプセルのシェルは、多孔質ではない又は完全に多孔質ではないことが可能である。一般に、カプセルのシェルは、ほぼ完全に不透過性である又は完全に不透過性であることが可能である。
【0079】
一般に、カプセルのコアは、固体、液状、及び/又は気体状であることが可能である。さらに、カプセルのコアが、少なくとも1種の相変化材料、酵素、カロチノイド、生細胞、少なくとも1種のフェノール化合物等を含むことが可能である。
【0080】
一般に、カプセルは、線状ポリマー、多価を有するポリマー、星型ポリエチレングリコール、自己組織化単分子膜(SAM)、カーボンナノチューブ、環状ポリマー、デンドリマー、ラダーポリマー、及び/又は同様の物質で形成されていることが可能である。
【0081】
可能な保護基としては、アセチル、ベンゾイル、ベンジル、β-メトキシエトキシメチルエーテル、メトキシトリイル、(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル、ジメトキシトリチル、ビス-(4-メトキシフェニル)フェニルメチル、メトキシメチルエーテル、p-メトキシベンジルエーテル、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロピラニル、トリチル、トリフェニルメチル、シリルエーテル、tert-ブチルジメチルシリル、トリ-イソプロピルシリルオキシメチル、トリイソプロピルシリル、メチルエーテル、エトキシエチルエーテル、p-メトキシベンジルカルボニル、tert-ブチルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、カルバメート、p-メトキシベンジル、3,4-ジメトキシベンジル、p-メトキシフェニル、1つ以上のトシル基若しくはノシル基、メチルエステル、ベンジルエステル、tert-ブチルエステル、2,6-二置換フェノールエステル(例えば、2,6-ジメチルフェノール、2,6-ジイソプロピルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、シリルエステル、オルトエステル、及び/又はオキサゾリン等が挙げられる。
【0082】
カプセルのコーティング用に可能な材料としては、アルブミン、ゼラチン、コラーゲン、アガロース、キトサン、デンプン、カラギーナン、ポリデンプン、ポリデキストラン、ラクチド、グリコリド及びコポリマー、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリ無水物、ポリエチルメタクリレート、アクロレイン、グリシジルメタクリレート、エポキシポリマー、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アラビノガラクタン、ポリアクリル酸、エチルセルロース、ポリエチレン、ポリメタクリレート、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレンビニルアセテート、硝酸セルロース、シリコーン、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、パラフィン、カルナウバ蝋、鯨蝋、蜜蝋、ステアリン酸、ステアリルアルコール、グリセリンステアレート、シェラック、セルロースアセテートフタレート、ゼイン、ヒドロゲル等が挙げられる。
【0083】
可能な官能基としては、アルカン、シクロアルカン、アルケン、アルキン、フェニル置換基、ベンジル置換基、ビニル、アリル、カルベン、ハロゲン化アルキル、フェノール、エーテル、エポキシド、エーテル、過酸化物、オゾン化物、アルデヒド、水和物、イミン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、ヘミアセタール、ヘミケタール、ラクトール、アセタール/ケタール、アミナール、カルボン酸、カルボン酸エステル、ラクトン、オルトエステル、無水物、イミド、ハロゲン化カルボン酸、カルボン酸誘導体、アミド、ラクタム、ペルオキシ酸、ニトリル、カルバメート、尿素、グアニジン、カルボジイミド、アミン、アニリン、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、アゾ化合物、ニトロ化合物、チオール、メルカプタン、スルフィド、ホスフィン、P-イレン(P-Ylene)、P-イリド(P-Ylide)、ビオチン、ストレプトアビジン、メタロセン等が挙げられる。
【0084】
可能な放出機構としては、拡散、溶解、分解制御、浸食等が挙げられる。
【0085】
放出機構が組み合わされることが考えられる。
【0086】
可能なリンカーとしては、バイオポリマー、タンパク質、シルク、多糖類、セルロース、デンプン、キチン、核酸、合成ポリマー、ホモポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリラクタム、天然ゴム、ポリイソプレン、コポリマー、ランダムコポリマー、勾配コポリマー、交互コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、スチレン-アクリロニトリル(SAN)、ブチルゴム、ポリマーブレンド、ポリマーアロイ、無機ポリマー、ポリシロキサン、ポリホスファゼン、ポリシラザン、セラミック、玄武岩、アイソタクチックポリマー、シンジオタクチックポリマー、アタクチックポリマー、線状ポリマー、架橋ポリマー、エラストマー、熱可塑性エラストマー、熱硬化性樹脂、部分晶質リンカー、熱可塑性樹脂、シス-トランスポリマー、伝導性ポリマー、超分子ポリマーが挙げられる。
【0087】
リンカーは、カプセルと官能基との間のあらゆる形態の接続であり得る。
【0088】
さらに、本発明は、多成分系の製造方法に関する。それによれば、少なくとも1つの第1の物質と少なくとも1つの第2の物質とを含み、第1の物質及び第2の物質が複数の物質部分において存在し、活性化可能である多成分系の製造方法において、該方法が、以下の工程:
第1の物質部分に、少なくとも1つの第1の官能基を形成し、かつ第1のリンカーを備え付ける工程と、
第2の物質部分に、少なくとも1つの第2の官能基を形成し、かつ第2のリンカーを備え付ける工程と、
を含み、
第1の官能基が、予め規定された相互作用を介して第2の官能基と反応して、これらが互いに接続され、かつ、
官能基とそれぞれの物質部分との距離が、それぞれのリンカーによって決められることが意図されている。
【0089】
特に、第1の物質部分には、少なくとも1つの第3の官能基が形成されており、かつ第3のリンカーが備え付けられており、ここで、第3の官能基は、それぞれ少なくとも1つの保護基を有するため、第1の物質の物質部分には、第1の物質相応して官能化された物質部分しか結合することができず、かつ上記方法は、保護基が最初に存在し、第1の物質部分が第3の官能基によって互いに接続されるべき場合に初めて保護基が除去される工程を少なくとも更に含むことが意図され得る。これにより、第1の物質の物質部分、特にカプセルが既に、好ましくは第1の物質の更なる物質部分と接続されてしまうことが妨げられる。気相、低粘性相、液相、高粘性相、又は固相に導入した後に保護基を除去することができ、それにより同型内架橋が起こる。
【0090】
多成分系は、上記のような多成分系であり得る。
【0091】
本発明による方法又は系の可能な使用分野としては、バイオテクノロジー、化粧品、製薬産業、食品産業、化学産業、農業、包装技術、廃棄物リサイクル、テキスタイル産業、繊維複合材料の製造、電気工学、機械工学、医療技術、微細技術、自動車産業、ペイント、塗料等が挙げられる。
【0092】
したがって、以下の用途の1つ、すなわちバイオテクノロジー、製薬産業、化粧品、食品産業、化学産業、農業、包装技術、廃棄物リサイクル、繊維産業、繊維複合材料の製造、電気工学(例えば、電子素子の接続、チップ技術等に関連する)、機械工学、医療技術、微細技術、自動車産業等の単独での又は組み合わされた用途のための、上記及び更に下記の方法の使用が明示的に開示される。特に、化粧品分野においては、以下のことを述べることができる:
【0093】
化粧品においては、多くの2相生成物又は多相生成物が存在する。多くの場合に、ここでは水性成分と油性成分とが存在する。2Kマイクロカプセル技術によって、両方の相を規定の比率で溶解させることが可能である。
【0094】
更なる例示的実施形態において、規定の比率で2Kカプセルを有する2相生成物がコットンパッドに適用され得る。これは一方で、物質が乾燥しないため、通常の包装で貯蔵し得るという利点を有し、それに加えて、該物質がその作用を発揮する効率は、同じ材料の使用で大幅に向上する。さらに、2つの物質の効率の向上は、クリーム、パック等にも適用され得る。
【0095】
一般に、上記の2相系の原理は、あらゆる多相系に適用され得る。
【0096】
さらに、かなり一般的に、この原理は、反応に際して収率を高めるために及び/又は反応がより効率的に進行するために使用され得る。
【0097】
製品開発の分野においては、例えば自己修復製品が考えられる:
【0098】
2K系は、自己修復製品にも使用され得る。1つの変形形態において、モノマーは一方のカプセル内に存在し、活性剤又は第2のモノマーはもう一方のカプセル内に存在する。狙い通りの活性化によって、カプセル複合体は周囲媒体と反応して、破損片を互いに接合する。
【0099】
例えば、上記カプセルは紙に導入され得る。一方のカプセル内には糖モノマーがあり、もう一方のカプセル内には対応する酵素がある。例えばUV放射による活性化によって、カプセルを破裂させると、酵素により対応する糖モノマーが繊維に結合され、その後、破損箇所は再び修復される。
【0100】
繊維、特にプラスチック繊維にも同じ原理を適用することができる。モノマーは一方のカプセル内に存在し、重合用の開始剤はもう一方の相内に存在する。
【0101】
この原理は、ペイント、塗料、及び多くの他の材料においても適用され得る。ここで、本発明の更なる詳細及び利点を、より詳細に図面に示される例示的実施形態をもとに説明することとする。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】第1の物質と第2の物質とを含む本発明による多成分系の例示的実施形態を示す図である。
【
図2】第1の物質と第2の物質とを含む本発明による多成分系の更なる例示的実施形態を示す図である。
【
図3】
図1又は
図2に従う本発明による多成分系の更なる例示的実施形態を示す図である。
【
図4】
図1、
図2、又は
図3に従う本発明による多成分系の更なる例示的実施形態を示す図である。
【
図5】2つの異なる物質部分/カプセル集団の本発明による異型間架橋の例示的実施形態を示す図である。
【
図6】2つの同じ物質部分/カプセル集団の本発明による同型内架橋の例示的実施形態を示す図である。
【
図7】本発明による2成分系の例示的実施形態を示す図である。
【
図8】本発明による同型内架橋されたカプセル系の例示的実施形態を示す図である。
【
図9】
図7に従う本発明による異型間架橋及び同型内架橋された2成分系の例示的実施形態を示す図である。
【
図10】本発明による二成分型接着テープの製造のワークフローの流れ図である。
【
図11A】本発明による1成分系の同型内架橋されたカプセルの例示的実施形態を示す図である。
【
図11B】本発明による1成分系の同型内架橋されたカプセル及びガスが充填された非架橋のカプセルの例示的実施形態を示す図である。
【
図12A】本発明による2成分系の異型間架橋及び同型内架橋されたカプセルの例示的実施形態を示す図である。
【
図12B】本発明による多成分系の異型間架橋及び同型内架橋されたカプセル並びにガスが充填された非架橋のカプセルの概略図である。
【
図13】本発明に従う本発明による2成分系におけるマイクロカプセルの結合状況の図である。
【
図14】同じ大きさを有するが、異なる官能化を伴うマイクロカプセルの本発明による結合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0103】
図1は、第1の物質と第2の物質とを含む本発明による多成分系の例示的実施形態を示す。
【0104】
この例示的実施形態において、多成分系は、活性化可能である。
【0105】
第1の物質及び第2の物質が、複数の物質部分において存在することが可能である。
【0106】
この例示的実施形態において、第1の物質は、カプセル集団K1において存在する。
【0107】
すなわち、この例示的実施形態において、第1の物質部分は、第1のカプセルK1である。
【0108】
この例示的実施形態において、第2の物質は、カプセル集団K2において存在する。
【0109】
すなわち、この例示的実施形態において、第2の物質部分は、第2のカプセルK2である。
【0110】
一般に、第1の物質及び/又は第2の物質の物質部分がカプセルK、特にナノカプセル及び/又はマイクロカプセル内に配置されていることが可能である。
【0111】
この場合に、物質部分は、K1及びK2において、それぞれカプセルシェルS(殻とも呼ばれる)に取り囲まれているコアC(芯とも呼ばれる)を形成する。したがって、「コア-シェル」構造に関係している。しかしながら、原則的に、コア-シェル-シェル構造も考えられる。
【0112】
この例示的実施形態において、第1の物質部分には、少なくとも1つの第1の官能基R2が形成されており、かつ第1のリンカーL1が備え付けられている。
【0113】
この例示的実施形態において、第2の物質部分には、少なくとも1つの第2の官能基R21が形成されており、かつ第2のリンカーL2が備え付けられている。
【0114】
この例示的実施形態において、第1の官能基R2は、予め規定された相互作用を介して第2の官能基R21と反応して、これらを互いに接続する。
【0115】
この例示的実施形態において、官能基とそれぞれの物質部分との距離は、それぞれのリンカーLによって決められている。
【0116】
図2~
図6に示されるカプセルは、
図1に示されるカプセルK1及びカプセルK2と同じに構成されている。
【0117】
この例示的実施形態において、第1の物質部分には、少なくとも1つの第1の官能基R2が形成されており、かつ第1のリンカーL1が備え付けられている。
【0118】
この例示的実施形態において、第2の物質部分には、少なくとも1つの第2の官能基R21が形成されており、かつ第2のリンカーL2が備え付けられている。
【0119】
この例示的実施形態において、第1の官能基R2は、予め規定された相互作用を介して第2の官能基R21と反応して、これらを互いに接続する。
【0120】
この例示的実施形態において、官能基とそれぞれの物質部分との距離は、それぞれのリンカーLによって決められている。
【0121】
第1のリンカーL1が、第2のリンカーL2よりも長いことが可能である(
図2を参照)。
【0122】
代替的に、第2のリンカーL2が、第1のリンカーL1よりも長いことが可能である。
【0123】
代替的に、両方のリンカーL1及びL2が同じ長さであることが可能である。
【0124】
図3は、
図1又は
図2に従う本発明による多成分系の例示的実施形態を示す。
【0125】
この例示的実施形態において、第1の物質部分と第2の物質部分とは異なる。
【0126】
すなわち、この例示的実施形態において、第1のカプセル集団のカプセルK1と第2のカプセル集団のカプセルK2とは異なる。
【0127】
この例示的実施形態において、第1の物質部分は、第2の物質部分よりも多数の物質部分と接続されている又は接続可能である。
【0128】
すなわち、この例示的実施形態において、カプセルK1は、カプセルK2よりも多数のカプセルKと接続されている又は接続可能である。
【0129】
代替的には、第2の物質部分が、第1の物質部分よりも多数の物質部分と接続されている又は接続可能であることが可能である。
【0130】
すなわち、カプセルK2が、カプセルK1よりも多数のカプセルKと接続されている又は接続可能であることが可能である。
【0131】
図4は、
図1、
図2、又は
図3に従う本発明による多成分系の更なる例示的実施形態を示す。
【0132】
この例示的実施形態において、第1の物質部分及び第2の物質部分は、本質的に異なる大きさを有する。
【0133】
この例示的実施形態において、第1のカプセルK1は、第2のカプセルK2よりも本質的に大きな大きさを有する。
【0134】
一般に、第1の物質用のカプセルK1は、第2の物質用のカプセルK2とは異なる大きさを有することができ、特に、第1の物質用のカプセルK1は、第2の物質用のカプセルK2よりも大きい。
【0135】
代替的には、第2の物質部分が、第1の物質部分よりも本質的に大きな大きさを有することが可能である。
【0136】
代替的には、第1の物質部分及び第2の物質部分が、本質的に同一の大きさを有することが可能である。
【0137】
第1の物質部分が本質的に同一の大きさを有し得る、及び/又は第2の物質部分が本質的に同一の大きさを有し得ることは、示されていない。
【0138】
図5は、2つの異なる物質部分の本発明による異型間架橋の例示的実施形態を示す。
【0139】
この例示的実施形態において、カプセルK1とカプセルK2とは異型間架橋されている。
【0140】
この例示的実施形態において、カプセルK1とカプセルK2とは、官能基R2及び官能基R21を介して異型間架橋されている。
【0141】
図6は、2つの同じ物質部分の本発明による同型内架橋の例示的実施形態を示す。
【0142】
この例示的実施形態において、2つのカプセルK1は同型内架橋されている。
【0143】
この例示的実施形態において、2つのカプセルK1は、官能基R2-R2を介して同型内架橋されている。
【0144】
図7は、本発明による2成分系の例示的実施形態を示す。
【0145】
この例示的実施形態において、2成分系は、2成分マイクロカプセル系である。
【0146】
この例示的実施形態において、2成分系は、予め規定された相互作用を介してまだ互いに反応していない2成分マイクロカプセル系である。
【0147】
特に、2つの異なるカプセル集団K1及びK2が示されており、ここで、第1の物質は第1のカプセルK1内にあり、かつ第2の物質は第2のカプセルK2内にある。
【0148】
示されるカプセルK1及びカプセルK2は、例えばカプセル集団と呼ばれる多数のカプセルK1及びカプセルK2を表す。
【0149】
この例示的実施形態において、カプセルK1内の第1の物質は、第1の接着剤成分である。
【0150】
この例示的実施形態において、第2のカプセルK2内の第2の物質は、第2の接着剤成分である。
【0151】
すなわち、第1の物質及び第2の物質は、多成分型接着剤、特に二成分型接着剤の構成要素である。
【0152】
一般に、2つの異なるカプセル集団K1及びK2が、別個の回分反応器において製造されたものであることが可能である。
【0153】
両方のカプセル集団のカプセルK1及びカプセルK2は、官能化されている。
【0154】
第1のカプセルK1の表面に、異なる長さの2つの異なるリンカーL1及びリンカーL3並びに異なる官能基R1及び官能基R2を形成した(表面官能化)。
【0155】
すなわち、官能基Rは異種で形成されている。
【0156】
代替的な例示的実施形態において、官能基Rが同種で形成されていることが可能である。
【0157】
第2のカプセルK2に、リンカーL2及び官能基R21を形成した。
【0158】
第2のカプセルK2の官能基R21は、第1のカプセルK1の官能基R2と共有結合で反応する。
【0159】
この例示的実施形態において、第1のカプセルK1が、第2のカプセルK2よりも多数のカプセルKと接続されている又は接続可能であることが可能である。
【0160】
代替的な例示的実施形態において、第2のカプセルK2が、第1のカプセルK1よりも多数のカプセルKと接続されている又は接続可能であることが可能である。
【0161】
リンカーL3及び官能基R1は、第1のカプセルK1を互いに架橋するべきである(同型内架橋)。
【0162】
リンカーL1及び官能基R2並びにリンカーL2及び官能基R21を介して、カプセルK2は共有結合で第1のカプセルK1に結合される(異型間架橋)。
【0163】
両方のカプセルK1及びK2の活性化によって、カプセルK1及びカプセルK2の内容物が放出され得ることから、これにより両方の成分が混合されることとなる。
【0164】
一般に、第1のカプセルK1の表面官能化の密度又は官能基R2の数を介して、第1のカプセルK1に結合する第2のカプセルK2の数を決定することが可能である。
【0165】
一般に、2つの反応性物質は、カプセルK1及びカプセルK2内で互いに別々にカプセル化され、とりわけ共有結合(例えば、クリックケミストリー)、弱い相互作用を介して、生化学的に(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン)、又はその他の様式及び方式で特定の比率にて結合され得る。
【0166】
一般に、3つ以上の異なるカプセルKnが、3種以上の異なる物質、例えば反応性物質をカプセル化することが可能である。
【0167】
一般に、異なるカプセルKnに、3つ以上のリンカーLn及び異なる官能基Rnが形成されていることが可能である。
【0168】
一般に、リンカーLが、カプセルと官能基との間のあらゆる形態の接続であることが可能である。
【0169】
一般に、異種の官能化の場合に、表面、繊維、又はテキスタイルに結合するのに、官能基Rを使用し得ることが可能である。
【0170】
既存のカプセル系と同様に、考えられるあらゆる物質をカプセルK1及び/又はカプセルK2及び/又はカプセルKn内に導入することができる。
【0171】
2成分系の活性化は、圧力、pH値、UV放射、浸透、温度、光強度、水分等の少なくとも1つの変化によって行われ得る。
【0172】
一般に、2成分カプセル系は、あらゆる任意の媒体中で反応され得る。
【0173】
図8は、本発明による同型内架橋されたカプセル系の例示的実施形態を示す。
【0174】
この例示的実施形態において、同型内架橋された本発明によるカプセル系は、同型内架橋されたマイクロカプセル系である。
【0175】
1成分系が示されている。
【0176】
カプセル集団K1が示されている。
【0177】
カプセルK1は、1種の物質で充填されている。
【0178】
この例示的実施形態において、カプセルK1は接着剤で充填されている。
【0179】
この例示的実施形態において、カプセルK1は一成分型接着剤で充填されている。
【0180】
代替的に、カプセルK1は、あらゆる考えられる気体状、固体、粘性、及び/又は液状の物質で充填されている場合がある。
【0181】
代替的に、カプセルK1は、生きている生物及び/又はウイルスで充填されている場合もある。
【0182】
カプセルK1を官能化した。
【0183】
カプセルK1にリンカーL3を備え付けた。
【0184】
カプセルK1に(リンカーL3にある)官能基R1が形成されていることは、示されていない。
【0185】
リンカーL3は、カプセルK1同士を互いに架橋する(同型内架橋)。
【0186】
カプセルK1同士の距離は、リンカーL3の長さによって決められ得る。
【0187】
表面官能化R1の密度に応じて、カプセルK1同士の同型内架橋の程度が決められ得る。
【0188】
リンカーL3の長さは、架橋を確実にするために、カプセルK1の排出された液体の内容物の半径が、隣接カプセルK1の内容物とわずかに重なるように選択されるべきである。
【0189】
より粘性の高い周囲媒体の場合に(例えば接着テープのように)、リンカーL3の長さは、ペースト又は液体等のより低い粘性の媒体の場合よりも短く選択されるべきであろう。
【0190】
図9は、
図7に従う本発明による異型間架橋及び同型内架橋された2成分系の例示的実施形態を示す。
【0191】
第1のカプセルK1及び第2のカプセルK2は、異なる物質で充填されている。
【0192】
この例示的実施形態において、カプセルK1同士は、本質的に同一の大きさを有する。
【0193】
この例示的実施形態において、カプセルK2同士は、本質的に同一の大きさを有する。
【0194】
この例示的実施形態において、カプセルK1及びカプセルK2は、異なる大きさを有する。
【0195】
代替的な例示的実施形態において、カプセルK1及びカプセルK2が、本質的に同一の大きさを有することが可能である。
【0196】
【0197】
さらに、第1のカプセルK1には、異種のリンカーL1が形成されている。
【0198】
リンカーL1に、第2のカプセル集団K2が結合する(
図1を参照)。
【0199】
すなわち、2成分系は、隙間を有する網状構造を有し、ここで、網状構造は、第1のカプセルK1から形成されており、かつ隙間内には少なくとも部分的にそれぞれ少なくとも1つのカプセルK2が配置されている。
【0200】
一般に、異なる内容物を有する2成分カプセルK1及びK2を気相中に導入することが可能である。こうして、これらを、例えば吸入装置又は他の薬物送達系に適用することができる。不活化されたカプセルが作用部位に到達し、そこで活性化されて、内容物が放出される。また、表面をこの分散体で被覆することができる。
【0201】
一般に、異なる内容物を有する2成分カプセルK1及びK2をペースト状媒体中に導入することが可能である。例えば、このために二成分型接着剤が使用され得る。このペーストは、カプセルが活性化されて互いに反応するまで不活性であり、良好に加工され得る。接着剤の理想的な混合比は、上記のように、第1のカプセル及び第2のカプセルK1及びK2の比率によって決められている。
【0202】
2成分カプセル系の理想的な組成の利点は、液状の系においても利用され得る。2成分カプセル系の両方のカプセルK1及びK2は近接して存在しているため、カプセルK1及びカプセルK2は、個別に分散しているより素早く規定通りに互いに反応する可能性が非常に高い。
【0203】
図10は、本発明による二成分型接着テープの製造のワークフローの流れ図を示す。
【0204】
図10は、本質的に、
図7に従う2成分カプセル系を基礎としている。
【0205】
全体として、本発明による二成分型接着テープの製造は、4つの工程S1~S4に分けられる。
【0206】
第1の工程S1において、第1のカプセルK1及び第2のカプセルK2を官能化する(
図7を参照)。
【0207】
本2成分系では、2つのリンカーL1及びL3を有する第1のカプセルK1に、異種の官能基R1及び官能基R2を形成する。
【0208】
別個の回分アプローチにおいて、リンカーL2を有するカプセルK2の第2の集団を、官能基R21により官能化する。
【0209】
官能基R21は、これが別個の反応工程において第1のカプセルK1の官能基R2と(共有結合で)反応するように選択されるべきである。
【0210】
第2の工程S2において、官能化された第2のカプセルK2を、官能化された第1のカプセルK1に加える。
【0211】
官能基R2と官能基R21とが、互いに(共有結合で)結合する(異型間架橋)。
【0212】
一般に、第3のカプセル集団又は任意の多さの更なるカプセル集団K3~Knを、第1のカプセル集団K1及び/又は第2のカプセル集団K2に加えることも可能である。
【0213】
それぞれの追加のカプセル集団K3~Knは、またしても少なくとも1つの官能基で官能化されている場合がある。
【0214】
第3の工程S3において、先行する工程S2からの異種のカプセル分散液を、まだ低粘性のコンタクト接着剤、ここでは接着テープBに導入する。
【0215】
これにより、接着テープBの全域を通して形成される予め決められた(同型内)架橋反応が生ずる。
【0216】
第4の工程S4において、架橋された2成分カプセル集団を適用し、接着テープBを乾燥させる。
【0217】
この場合に、接着テープBの粘度は明らかに上昇するが、網状組織は接着テープ上で均一に分布したままである。
【0218】
工程S1において、第1のカプセルK1が官能化の間に既に早期に互いに架橋してしまわないように、リンカーL3の官能基R1になおも保護基SGが形成されている場合があることが示されている。
【0219】
さらに、工程S3において、保護基SGが除去されることが示されている。
【0220】
保護基の除去によって、カプセルK1の同型内架橋が可能となることは、示されていない。
【0221】
種々の周囲媒体中での可能な用途:
本発明による二成分型接着テープの製造についての本明細書に記載されるワークフローから出発して、2成分カプセルシステムは、代替的に他の媒体中で、かつ全てのカプセル化された物質とともに適用され得る。
【0222】
とりわけ、気体、液状、ペースト状、低粘性及び高粘性の媒体、並びに固体表面被覆が周囲媒体として考えられる。
【0223】
一般に、カプセルKが、ナノカプセル又はマイクロカプセルとして形成されていることが可能である。
【0224】
一般に、上記方法は、少なくとも1つの第1の物質と少なくとも1つの第2の物質とを含み、第1の物質及び第2の物質が複数の物質部分において存在し、活性化可能である更なる多成分系の製造を可能にし、以下の工程:
第1の物質部分に、少なくとも1つの第1の官能基R2を形成し、かつ第1のリンカーL1を備え付ける工程と、
第2の物質部分に、少なくとも1つの第2の官能基R21を形成し、かつ第2のリンカーL2を備え付ける工程と、
を含み、
第1の官能基R2は、予め規定された相互作用を介して第2の官能基R21と反応して、これらが互いに接続され、かつ、
官能基Rとそれぞれの物質部分との距離は、それぞれのリンカーLによって決められる。
【0225】
一般に、第1の物質部分に、少なくとも1つの第3の官能基R1が形成されており、かつ第3のリンカーL3が備え付けられていることが可能である。
【0226】
一般に、第3の官能基R1がそれぞれ少なくとも1つの保護基SGを有するため、第1の物質の物質部分には、第1の物質の相応して官能化された物質部分しか結合することができないことが可能である。
【0227】
一般に、上記方法は、保護基SGが最初に存在し、第1の物質部分が第3の官能基R1によって互いに接続されるべきであるときに初めて保護基が除去される工程を少なくとも更に含むことが可能である。
【0228】
一般に、官能基R1がそれぞれ少なくとも1つの保護基を有するため、第1の物質の物質部分には、第2の物質の相応して官能化された物質部分しか結合することができないことが可能である。
【0229】
さらに一般に、多成分系の製造方法は、保護基が最初に存在し、第1の物質部分及び第2の物質部分が第1の官能基及び第2の官能基R2、R21によって互いに接続されるべきであるときに初めて保護基が除去される工程を少なくとも更に含むことが可能である。
【0230】
図11Aは、本発明による高粘性の系における1成分系の同型内架橋されたカプセルの概略図を示す。
【0231】
この例示的実施形態において、
図8に記載されるような架橋された1成分系は、高粘性の系中に導入されている。
【0232】
高粘性の系は、接着テープBである。
【0233】
代替的に、他の高粘性、液状、気体状、ペースト状、又は低粘性の系が考えられる。
【0234】
この例示的実施形態において、接着テープBは、片面の接着テープBである。
【0235】
代替的には、接着テープBの両面の態様も可能である。
【0236】
通常、高粘性の系の場合には拡散の問題があるため、接着テープB内のカプセルK1の内容物は、接着される両方の材料間で交差架橋を達成しない。
【0237】
1成分系の(同型内)架橋によって、カプセルK1同士の距離及び架橋度は、カプセルK1の内容物が高粘性の接着剤を通じて架橋された系を形成するように選択され得る。
【0238】
この基本原理は、
図12Aに示されるような2成分系にも拡張され得る。そこでは、(異型間及び同型内)架橋機構が使用される。
【0239】
2成分系が、カプセルK1及びカプセルK2の事前の異型間架橋によってのみ接着テープ内に導入され得ることも、示されていない。
【0240】
図11Bは、本発明による1成分系の同型内架橋されたカプセル及びガスが充填された非架橋のカプセルの概略図を示す。
【0241】
代替的に、非架橋のカプセルに固体又は液状の物質が充填されている場合もある。
【0242】
図11Aによる1成分系の同型内架橋されたカプセルK1に加えて、ガスが充填された非架橋のカプセルKGの更なる集団を、例えば接着テープB等の高粘性の接着剤中に導入することができ、これにより破裂時にガスが放出されるため、カプセルK1の液状成分のための空き領域が作り出される、又は接着テープを再び剥がすことが可能となる。
【0243】
さらに、溶けるプレースホルダー(Platzhalter)(例えば、繊維等)を接着テープB内に導入することが考えられる。
【0244】
こうして、通路が作り出されることとなり、その中でカプセルK1の液状接着剤は、接着テープB内の広い範囲にわたって広がり架橋することができる。
【0245】
さらに、液体が充填されたカプセルK1を細管(Roehrchen)内に充填し、これらを接着テープB内に導入することが可能である。
【0246】
ここでは、架橋は細管の長さの範囲内で起こり得る。
【0247】
この基本原理は、
図12Bに示されるような2成分系にも拡張され得る。
【0248】
ここでは、異型間架橋機構及び同型内架橋機構が使用される。
【0249】
1成分系の第1のカプセルK1に加えて、第2のカプセル集団K2が導入される。
【0250】
この機構により二成分型接着系を接着テープB内に導入することが可能となる。
【0251】
記載される系は、1成分カプセル系又は2成分カプセル系に限定されない。
【0252】
それぞれの系の大きさ及び官能化に応じて、任意の多さのカプセル集団Knを相互結合させて、互いに架橋させることができる。
【0253】
個々の成分の組合せによって、非常に幅広い新たな機能様式、したがって新たな可能な用途を発展させることができる。
【0254】
以下に、ポリメチルメタクリレートマイクロカプセルの製造を例示的に記載する:
【0255】
最初に、2.5gのポリメチルメタクリレート(PMMA)を11.5mlのトルエン中に溶解する。引き続き、油を混ぜ入れる。マイクロカプセル化のために、均質な溶液を45mlの1重量%のポリビニルアルコール(PVA)溶液中に加える。エマルジョンを800回転/分で30分間撹拌する。引き続き、トルエンを蒸発させる。こうして得られたPMMAコーティング材料を含むマイクロカプセルKを蒸留水で洗浄し、5000回転/分で遠心分離し、真空炉内において50℃で一晩乾燥させる。
【0256】
次に、マイクロカプセルの表面をシラン化する。マイクロカプセルを流動床反応器に加える。コーティング材料として、5%の(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)水溶液を使用する。コーティング過程後に、表面上へのアミノシランの最適な結合を得るために、マイクロカプセルを真空炉内において80℃で1時間乾燥させる。さらに、反応前にマイクロカプセルKの表面を、酸素プラズマで活性化させることができる。
【0257】
2つのカプセル集団K1及びK2(異なる内容物を含むカプセルK)の異型間架橋のために、相補的なカプセル集団Kを、カルボキシル基で官能化することができる。ここで、手順は、上記のシラン化と類似している。しかしながら、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)の代わりにシラン-PEG-COOHを使用する。
【0258】
引き続き、カプセルKを更に、単分散性を高めるために、種々の孔径を有する篩で篩別することができる。これは、後続の結合過程で、両方のカプセル内容物の体積比を、カプセルKの大きさを介して厳密に決めることができるという利点を有する。
【0259】
次に、マイクロカプセルの結合を行う。第1のマイクロカプセルK1は第一級アミンで官能化されているのに対して、第2のマイクロカプセルK2はカルボキシル基で官能化されている。後続工程で、80μlの10%のカルボキシル官能化されたマイクロカプセル懸濁液を水溶液に加え、7μLの2Mの(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)溶液(EDC溶液)及び7μLの0.3Mの(N-ヒドロキシスクシンイミド)溶液(NHS溶液)を加えて、室温で1時間撹拌する。カルボキシル官能基を反応させて、活性エステルにする。引き続き、カルボキシルマイクロカプセルK2と同じ比率で、アミンマイクロカプセルK1をその溶液に加えて、室温で軽く撹拌しながら2時間相互結合させる。引き続き、篩を通してカプセルを濾別し、蒸留水で洗浄して、真空炉内において50℃にて1時間乾燥させる。
【0260】
図13において、ほとんどのマイクロカプセルKが比率1:1で相互結合していることを認識することができる。
【0261】
さらに、1:2の比率で結合した又は全く相互結合していないマイクロカプセルKが幾らか存在する。
【0262】
引き続き、2成分マイクロカプセルKの品質を保証するために、種々の孔径を有する篩を介して大きさ又はそれらの結合比に従って、マイクロカプセルKを精製する。マイクロカプセルKにある官能基の数によっても、マイクロカプセルKの結合比に影響が及ぼされ得る。
【0263】
同じ大きさ(例えば、8μm)を有するが、官能化が異なるマイクロカプセルK同士が相互結合されていることが可能である。線状ポリマーによる官能化の場合には1:1の結合が優勢である(
図14を参照)。多価を有するポリマーによる官能化の場合には三重の結合が優勢である。
【0264】
マイクロカプセルの官能化が吸着を介して行われることも可能である。
【0265】
特にプラスチック表面を有するマイクロカプセルの場合に、マイクロカプセルの官能化は吸着を介して行われ得る。プラスチック表面の有利な例は、アクリル樹脂、ポリ乳酸、ナイロン6及びナイロン12、エポキシ樹脂、並びにポリスチレンである。
【0266】
マイクロカプセルの表面への吸着には、有利にはアルキル鎖又は第一級アミンが使用される。
【0267】
第2の官能基は自由に選択され得るため、マイクロカプセルを結合する後続工程で利用可能である。
【0268】
マイクロカプセルのプラスチック表面は、マイクロカプセル化方法で直接的に又はこうして得られた多層マイクロカプセルによる第2工程で生成し得る。
【0269】
代替的な例示的実施形態において、金属粒子若しくは金属シェルを有する第2のマイクロカプセル集団を製造することができる、及び/又は第2のマイクロカプセル集団を金属粒子若しくは金属シェルで被覆することができる。
【0270】
両方のマイクロカプセル集団に、両方のマイクロカプセル集団の結合剤として4-アミノベンゼンチオールを加える。
【0271】
第一級アミンは吸着を介してプラスチック表面を有するマイクロカプセルに結合し、チオール基は金属表面に結合する。
【0272】
さらに、特許文献3に記載されるようにマイクロカプセル法の間に官能化することが可能である。
【0273】
それによれば、例えば、水(20ml)、酢酸エチル(5ml)、炭酸水素ナトリウム(0.580g)、約1.0mgのズダンブラック、及び1滴のTween 20を含む混合物を、機械式撹拌機(約500ml容)を使用して室温で激しく混合する(500rpmで5分間)。この混合物に77mgの1,3-ビスクロロスルホニルベンゼンを添加し、その上で約3分間撹拌する。次に、混合物を3,5-ジアミノ安息香酸で処理し、更に72時間激しく撹拌する。混合物中で起こっている反応を観察するために、激しく撹拌し始めてから30分後とともに、その後12時間の間隔でアリコートを取り出す。顕微鏡で観察すると、アリコートは、ズダンブラック染料が中に含まれる1マイクロメートル~2マイクロメートルの直径を有するカプセルの形成を示す。反応は数時間後に終わる。カプセルは表面上に複数の-COOH基を有することが想定される。
【0274】
さらに、特許文献3に記載される更なる方法に従ってマイクロカプセル法の間に官能化することが可能である。
【0275】
それによれば、第2の物質部分が、別個の回分アプローチにおいて同じ方法に従って、表面上に第一級アミンのみを伴って作製され得る。
【0276】
引き続き、先の例でのような表面上にCOOHを有するマイクロカプセルをEDC/NHSで活性化し、アミン-カプセル集団を加え、カプセル同士を互いに共有結合させることができる。後続工程において、カプセルを洗浄(任意選択で濾過)し、乾燥させることができる。次に、こうして含まれるカプセルを、更なる周囲媒体中に導入することができる。
【0277】
考えられる更なる製造方法は、例えば、Yip, J and Luk, MYA, Antimicrobial Textiles, Woodhead Publishing Series in Textiles, 2016, Pages 19-46, 3-Microencapsultion technologies for antimicrobial textilesに記載されている。
【0278】
マイクロカプセルに、荷電を介して金属粒子を適用することも考えられる。
【0279】
同型内架橋が可能である。
【0280】
表面上に金属粒子を有するマイクロカプセルを製造した後に、アルコール及びメルカプタンからの混合物(SAMポリマー)をカプセルに加えることが考えられる。
【0281】
官能化されたチオールの場合に、第2の官能基を任意に選択することができる。チオール結合は金属表面に結合する。チオール分子の残部、すなわち第2の官能基は、マイクロカプセル結合用の官能基として利用可能である。
【0282】
マイクロカプセルに加えられる1種以上のSAMポリマーの選択によって、表面の官能基を同種又は異種で構成することができる。
【0283】
さらに、リンカーの長さを、適切なメルカプタンによって決めることができる。
【0284】
1つの例示的実施形態において、短いリンカーのためにエタンチオールを選択することが可能である。より長いリンカーのためには、11-メルカプトウンデカン酸を選択することができる。
【0285】
さらに、マイクロカプセルの官能化された表面を第2のポリマー、例えばPEGと結合させることで、リンカーの長さを更に長くすることが可能である。
【0286】
SAM表面としては、二亜硫酸塩、リン酸、シラン、チオール、及び高分子電解質が使用され得る。特に、アセチルシステイン、ジメルカプトコハク酸、ジメルカプトプロパンスルホン酸、エタンチオール(エチルメルカプタン)、ジチオトレイトール(DTT)、ジチオエリスリトール(DTE)、カプトプリル、補酵素A、システイン、ペニシラミン、1-プロパンチオール、2-プロパンチオール、グルタチオン、ホモシステイン、メスナ、メタンチオール(メチルメルカプタン)、及び/又はチオフェノールが使用され得る。
【0287】
異型間架橋が可能である。
【0288】
金属ナノ粒子を有するマイクロカプセルを、上記のように製造することができる。
【0289】
引き続き、アルコール及びジチオエーテルからの混合物を加えることができる。
【0290】
その一方の官能基Rは保護されている。
【0291】
こうしてマイクロカプセルは官能化される。
【0292】
次に、マイクロカプセルの表面上に存在する金属ナノ粒子の数を介して、官能化の数又は密度、したがって官能基の数を決めることができる。これにより、互いに同型内架橋又は異型間架橋を介して相互に反応するマイクロカプセルK2の数を決めることが可能である。
【0293】
後続工程において、これらのマイクロカプセルを、例えばコンタクト接着剤(又は同等物)等の所望の周囲媒体中に導入することができる。
【0294】
異型間架橋のために、NCO基が保護されている4-イソシアナトブタン-1-チオールを使用することが考えられる。
【0295】
保護基の除去、したがって官能基Rの活性化は、ここではまだ低粘性のコンタクト接着剤内で行われる。こうして遊離されたNCO基は、水性環境(例えば、コンタクト接着剤の溶剤)中で互いに架橋して尿素となり得る。
【符号の説明】
【0296】
B 接着テープ
C コア、芯
K カプセル/カプセル集団
K1 カプセル1/カプセル集団1
K2 カプセル2/カプセル集団2
K3 カプセル3/カプセル集団2
Kn カプセルn/カプセル集団n
KG ガスカプセル
L リンカー
L1 リンカー1
L2 リンカー2
R 官能基
R1 官能基1
R2 官能基2
R21 官能基21
S カプセル、殻
S1 工程1
S2 工程2
S3 工程3
S4 工程4
SG 保護基