(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】計測システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20240718BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
G01B11/24 K
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2020185921
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】桂 正士
(72)【発明者】
【氏名】中山 晋
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-137753(JP,A)
【文献】特開2004-150890(JP,A)
【文献】特開2011-247759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/24
B25J 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角測量によって計測対象物(41)の三次元形状を計測するための計測システムであって、
複数の軸部品(13)が関節部品(12)によって連結されているロボットアーム(15)と、前記ロボットアームに取り付けられているロボットハンド(16)とを有する可動部品(19)と、
第1計測装置(21、221)と、
前記第1計測装置と別体であって、前記可動部品に取り付けられている第2計測装置(22、322)と、
前記第1計測装置と前記第2計測装置との間の距離である装置間距離を算出する装置間距離算出部(71)と、
前記第2計測装置が取り付けられている前記可動部品の動きを制御する可動部品制御部(73)と、
前記第1計測装置の計測データと、前記第2計測装置の計測データと、前記装置間距離算出部が算出した前記装置間距離とを用いて前記計測対象物の三次元形状を算出する形状算出部(74)とを備え、
前記第1計測装置は、前記ロボットアームに取り付けられており、
前記第2計測装置は、前記ロボットハンドに取り付けられており、
前記可動部品制御部は、前記計測対象物の三次元形状を計測する際に、前記装置間距離が、前記可動部品制御部による制御の基準となる基準距離よりも長くなるように前記可動部品を制御する計測システム。
【請求項2】
前記基準距離は、前記計測システムの停止状態における前記装置間距離である停止距離(Ds)に設定されている請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記基準距離は、前記ロボットハンドによる前記計測対象物の把持開始位置における前記装置間距離である把持開始距離(Dh)に設定されている請求項1に記載の計測システム。
【請求項4】
三角測量によって計測対象物(41)の三次元形状を計測するための計測システムであって、
複数の軸部品(13)が関節部品(12)によって連結されているロボットアーム(15)と、前記ロボットアームに取り付けられているロボットハンド(16)とを有する可動部品(19)と、
第1計測装置(21、221)と、
前記第1計測装置と別体であって、前記可動部品に取り付けられている第2計測装置(22、322)と、
前記第1計測装置と前記第2計測装置との間の距離である装置間距離を算出する装置間距離算出部(71)と、
前記第2計測装置が取り付けられている前記可動部品の動きを制御する可動部品制御部(73)と、
前記第1計測装置の計測データと、前記第2計測装置の計測データと、前記装置間距離算出部が算出した前記装置間距離とを用いて前記計測対象物の三次元形状を算出する形状算出部(74)とを備え、
前記第1計測装置は、前記ロボットアームに取り付けられており、
前記第2計測装置は、前記ロボットハンドに取り付けられており、
前記可動部品制御部は、前記計測対象物の三次元形状を計測する際に、前記第1計測装置と前記第2計測装置とを結ぶ仮想基線(VL)と前記計測対象物の計測点を含む仮想平面とが直交する直交点(PO)が前記第1計測装置と前記第2計測装置との間に位置するように前記可動部品を制御する計測システム。
【請求項5】
前記形状算出部は、前記ロボットハンドが前記計測対象物を把持する前の状態と前記ロボットハンドが前記計測対象物を把持した後の状態との2つの状態で前記計測対象物の三次元形状を算出する請求項1から請求項
4のいずれかに記載の計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ロボットの部品ピッキングシステムを開示している。この先行技術文献では、光信号投影部と撮像部とを用いてピックアップ対象となる部品の姿勢を判定している。光信号投影部は、支持部材によって固定的に支持され、部品箱の中央部上方から光信号を投影している。また、撮像部は、ロボットのアームに搭載されており、アームの位置姿勢を変化させることに伴い撮像部の位置姿勢も変化するため、撮像した画像データを補正している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献の構成では、部品の姿勢を判定する際に、光信号投影部と撮像部との位置関係をどのようにすることが好ましいかについて具体的な開示がない。光信号投影部と撮像部との位置関係によっては、適切に形状を計測できない。特に、光信号投影部と撮像部との距離が近い場合には、三角測量による形状計測において計測誤差が大きくなりやすく、計測精度が低下しやすい。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、計測システムにはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示される1つの目的は、計測精度の高い計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された計測システムは、三角測量によって計測対象物(41)の三次元形状を計測するための計測システムであって、
複数の軸部品(13)が関節部品(12)によって連結されているロボットアーム(15)と、ロボットアームに取り付けられているロボットハンド(16)とを有する可動部品(19)と、
第1計測装置(21、221)と、
第1計測装置と別体であって、可動部品に取り付けられている第2計測装置(22、322)と、
第1計測装置と第2計測装置との間の距離である装置間距離を算出する装置間距離算出部(71)と、
第2計測装置が取り付けられている可動部品の動きを制御する可動部品制御部(73)と、
第1計測装置の計測データと、第2計測装置の計測データと、装置間距離算出部が算出した装置間距離とを用いて計測対象物の三次元形状を算出する形状算出部(74)とを備え、
第1計測装置は、ロボットアームに取り付けられており、
第2計測装置は、ロボットハンドに取り付けられており、
可動部品制御部は、計測対象物の三次元形状を計測する際に、装置間距離が、可動部品制御部による制御の基準となる基準距離よりも長くなるように可動部品を制御する。
【0007】
開示された計測システムによると、計測対象物の三次元形状を計測する際に、装置間距離が可動部品制御部による制御の基準となる基準距離よりも長くなるように可動部品を制御する。このため、装置間距離を少なくとも基準距離よりも長く確保して計測対象物の三次元形状を計測できる。したがって、計測精度の高い計測システムを提供できる。
【0008】
ここに開示された計測システムは、三角測量によって計測対象物(41)の三次元形状を計測するための計測システムであって、
複数の軸部品(13)が関節部品(12)によって連結されているロボットアーム(15)と、ロボットアームに取り付けられているロボットハンド(16)とを有する可動部品(19)と、
第1計測装置(21、221)と、
第1計測装置と別体であって、可動部品に取り付けられている第2計測装置(22、322)と、
第1計測装置と第2計測装置との間の距離である装置間距離を算出する装置間距離算出部(71)と、
第2計測装置が取り付けられている可動部品の動きを制御する可動部品制御部(73)と、
第1計測装置の計測データと、第2計測装置の計測データと、装置間距離算出部が算出した装置間距離とを用いて計測対象物の三次元形状を算出する形状算出部(74)とを備え、
第1計測装置は、ロボットアームに取り付けられており、
第2計測装置は、ロボットハンドに取り付けられており、
可動部品制御部は、計測対象物の三次元形状を計測する際に、第1計測装置と第2計測装置とを結ぶ仮想基線(VL)と計測対象物の計測点を含む仮想平面とが直交する直交点(PO)が第1計測装置と第2計測装置との間に位置するように可動部品を制御する。
【0009】
開示された計測システムによると、計測対象物の三次元形状を計測する際に、第1計測装置と第2計測装置とを結ぶ仮想基線と計測対象物の計測点を含む仮想平面とが直交する直交点が第1計測装置と第2計測装置との間に位置するように可動部品を制御する。このため、直交点が投光装置と受光装置との間に位置していない場合に比べて、装置間距離を長くしやすい。したがって、三次元形状計測時の装置間距離を長く確保して、計測精度を高めやすい。よって、計測精度の高い計測システムを提供することができる。
【0010】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】計測システムの概略構成を示す構成図である。
【
図2】計測システムの制御に関するブロック図である。
【
図3】計測システムの制御に関するフローチャートである。
【
図4】ロボットの停止位置を説明するための説明図である。
【
図5】ロボットの計測位置を説明するための説明図である。
【
図6】ロボットの把持開始位置を説明するための説明図である。
【
図7】第2実施形態における計測システムの概略構成を示す構成図である。
【
図8】第2実施形態における計測システムの制御に関するフローチャートである。
【
図9】第2実施形態におけるロボットの計測位置を説明するための説明図である。
【
図10】第3実施形態における計測システムの概略構成を示す構成図である。
【
図11】第3実施形態における計測システムの制御に関するフローチャートである。
【
図12】第3実施形態におけるロボットの計測位置を説明するための説明図である。
【
図13】第3実施形態におけるロボットの計測位置を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0013】
第1実施形態
図1において、計測システム1は、計測対象物41の三次元形状を計測するためのシステムである。計測システム1は、三角測量の原理を用いて計測対象物41の三次元形状を計測する。三角測量の原理を用いた計測方法としては、位相シフト法やステレオカメラを用いた方法等の様々な方法を採用可能である。
【0014】
位相シフト法では、計測対象物41に対して縞模様等のパターン光を投光し、計測対象物41で反射したパターン光を受光する。この時、投光するパターン光の位相を変化させて投光および受光を繰り返す。これにより、投光したパターン光と受光したパターン光との違いから計測対象物41の三次元形状を計測する。ただし、パターン光を投光する装置と受光する装置との距離が近い場合には、三次元形状の計測誤差が大きくなりやすい。このため、パターン光を投光する位置と受光する位置とをできるだけ離れた位置とすることが好ましい。
【0015】
ステレオカメラを用いた方法では、複数のカメラを用いて計測対象物41を異なる位置から同時に撮像する。これにより、撮像した複数の画像の視差から計測対象物41の奥行方向の情報を計測する。ただし、複数のカメラ同士の距離が近い場合には、画像の視差が小さくなるため、三次元形状の計測誤差が大きくなりやすい。したがって、複数のカメラ同士の位置をできるだけ離れた位置とすることが好ましい。
【0016】
このように、三角測量を用いた計測方法においては、計測に用いる装置同士の距離が短いと、計測の精度が低下してしまう。計測に用いる装置同士が1つの筐体に収納されて一体に構成されている場合には、装置同士の距離が短く固定されてしまい計測精度が低くなりやすかった。あるいは、装置同士の距離を長く確保するために、計測に用いる装置を収納する筐体全体が大型になり、筐体の取り付けに関する制約が多くなってしまっていた。三角測量の具体的な方法の違いによらず、計測精度を高めるためには、計測に用いる装置同士の距離を長く確保することが好ましい。以下では、位相シフト法を用いて計測対象物41の三次元形状を計測する場合を例に説明を行う。
【0017】
計測システム1は、部品を特定の箇所に組み付ける組み付け作業、部品をピッキングするピッキング作業、部品に傷や欠けがないかを検査する外観検査、部品を把持する把持作業において、部品の位置姿勢や形状等を計測する際に利用可能である。
【0018】
以下では、計測システム1を、作業台31に載置された計測対象物41を把持して組み付ける組み付け作業に適用した場合を例に説明する。作業台31は、四角形状の板部材である。ただし、作業台31の種類や形状は、上述の例に限られない。作業台31として箱型形状の部品箱を採用してもよい。また、作業台31としてベルトコンベア等の動きを伴う装置を採用してもよい。作業台31に載置された計測対象物41の数は、1つに限られない。例えば、複数の計測対象物41が互いに重なった状態で作業台31に載置されていてもよい。
【0019】
計測システム1は、ロボット10と計測ユニット20とを備えている。ロボット10は、垂直多関節型ロボットである。ただし、ロボット10は、組み付け作業を実行可能であればよく、垂直多関節型ロボットに限られない。ロボット10として、水平多関節型ロボット等を採用してもよい。
【0020】
ロボット10は、ベース11とロボットアーム15とロボットハンド16とを備えている。ベース11は、ロボット10が設置されている設置面にボルト等を用いて固定されている。ベース11は、ロボット10における基部を構成している。ベース11は、ロボット10における動かない部品である固定部品を構成している。
【0021】
ロボットアーム15は、関節部品12と軸部品13とを備えている。ロボットアーム15は、複数の軸部品13を関節部品12によって連結して構成されている。より詳細には、関節部品12は、第1関節部品12aと第2関節部品12bと第3関節部品12cとの3つの部品を備えている。軸部品13は、第1軸部品13aと第2軸部品13bと第3軸部品13cとの3つの部品を備えている。第1軸部品13aは、第1関節部品12aによってベース11に連結されている。第2軸部品13bは、第2関節部品12bによって第1軸部品13aに連結されている。第3軸部品13cは、第3関節部品12cによって第2軸部品13bに連結されている。まとめると、各関節部品12と各軸部品13とは、ベース11から近い順に第1関節部品12a、第1軸部品13a、第2関節部品12b、第2軸部品13b、第3関節部品12c、第3軸部品13cの順番で一体に連結されている。だたし、ロボットアーム15を構成する関節部品12および軸部品13の数は、上述の例に限られない。
【0022】
関節部品12には、モータが含まれている。これにより、モータを制御することで関節部品12の角度を自在に制御することができる。複数の軸部品13は、関節部品12を介して互いに相対回転可能に連結されている。ロボットアーム15は、ベース11に連結されている。
【0023】
ロボットハンド16は、ロボットアーム15の先端部に取り付けられている。言い換えると、ロボットハンド16は、ロボットアーム15のうち、ベース11に固定されている部分の反対側の部分に取り付けられている。ロボットハンド16には、モータが含まれている。これにより、モータを制御することでロボットアーム15が備える第3軸部品13cの軸周りに相対回転可能に構成されている。
【0024】
ロボットハンド16は、2本で一対をなす爪部を備えている。ただし、爪部を3本以上の部品で構成してもよい。この爪部は、ロボットハンド16の回転軸16aを回転中心として回転する。ロボットハンド16は、爪部同士の間隔を拡大および縮小する開閉動作を行うことで、作業台31に載置された計測対象物41を把持可能に構成されている。また、ロボット10は、ロボットハンド16が計測対象物41を把持した状態で可動部品19を動かすことで、計測対象物41の位置や姿勢を変えることができる。ロボットアーム15とロボットハンド16とは、ロボット10における可動部品19を構成している。
【0025】
計測ユニット20は、投光装置21と受光装置22とを備えている。計測ユニット20は、位相シフト法を用いて計測対象物41の三次元形状を計測するためのユニットである。計測ユニット20として、ステレオカメラを用いた方法を採用する場合には、投光装置21に代えて第1カメラ、受光装置22に代えて第2カメラ等を用いることとなる。投光装置21は、第1計測装置の一例を提供する。受光装置22は、第2計測装置の一例を提供する。
【0026】
投光装置21は、計測対象物41に縞模様等のパターン光を投光する装置である。投光装置21は、発光素子、レンズ、ミラー等を備えている。投光装置21は、第1軸部品13aに取り付けられている。投光装置21は、パターン光を投光する発光素子の向きを調整可能な角度調整装置を備えている。投光装置21は、第1関節部品12aのモータ制御と角度調整装置の制御とによって、計測対象物41に対して適切な方向および範囲にパターン光を投光する。
【0027】
受光装置22は、計測対象物41で反射したパターン光を受光する装置である。受光装置22は、イメージセンサを備えている。受光装置22は、ロボットハンド16に取り付けられている。受光装置22は、パターン光を受光する受光面の向きを調整可能な角度調整装置を備えている。受光装置22は、可動部品19のモータ制御と角度調整装置の制御とによって、計測対象物41で反射したパターン光に正対する向きに受光面を調整する。これにより、計測対象物41で反射したパターン光を適切に受光して、三次元形状計測を行うことができる。可動部品19には、複数の関節部品12とロボットハンド16が含まれている。言い換えると、受光装置22の位置や向きを制御可能なモータが複数存在する。このため、受光装置22の位置や向きを制御する自由度を、投光装置21の位置や向きを制御する自由度に比べて高く確保できる。
【0028】
受光装置22は、投光装置21に比べて構成部品が少ない装置である。このため、受光装置22は、投光装置21に比べて、軽量かつ小型に設計しやすい装置である。ロボットハンド16から投光装置21までの距離は、ロボットハンド16から受光装置22までの距離よりも長い。
【0029】
図2において、計測システム1の制御を行う制御部70は、エンコーダ14に接続している。エンコーダ14は、ロボット10に設けられているセンサであって、関節部品12やロボットハンド16の回転角度を検出するためのセンサである。エンコーダ14は、回転角度を検出すべき部位ごとに設けられている。回転角度は、可動部品19の位置および姿勢を検出するための物理量である。制御部70は、エンコーダ14で検出した部位ごとの回転角度を取得する。
【0030】
制御部70は、受光装置22に接続している。制御部70は、受光装置22で受光したパターン光の明るさの情報を取得する。
【0031】
制御部70は、ロボット10と投光装置21とに接続している。制御部70は、可動部品19のモータ等を制御して可動部品19の動きを含むロボット10の動きを制御する。制御部70は、投光装置21を制御して、発光素子が出力するパターン光のオンオフ等を制御する。
【0032】
制御部70は、装置間距離算出部71と基準距離設定部72と可動部品制御部73と形状算出部74とを備えている。装置間距離算出部71は、投光装置21と受光装置22との間の距離である装置間距離を算出する。装置間距離の算出方法の詳細については、後に説明する。基準距離設定部72は、三次元形状を計測する際のロボット10の動きにおける基準となる基準距離を設定する。可動部品制御部73は、ロボット10の動きを制御する。形状算出部74は、計測対象物41の三次元形状を算出する。三次元形状の算出方法の詳細については、後に説明する。
【0033】
計測システム1を用いた三次元形状計測を含む計測対象物41の組み付け作業の流れについて、以下に説明する。ただし、組み付け作業の開始前に、計測システム1のキャリブレーションを完了させておく。これにより、三次元形状計測に必要な装置間距離等の情報を正確に算出することができるようになる。キャリブレーションは、ロボット10を設置した最初に実行すればよいが、必要に応じて定期的にキャリブレーションを繰り返し実行してもよい。
【0034】
図3において、三次元形状計測を含む組み付け作業を開始すると、ステップS111で可動部品制御部73が可動部品19を計測位置に移動させる。ロボット10が計測位置に移動するまでの流れについて、図を用いて順に説明する。
【0035】
図4において、ロボット10は、停止状態であり、可動部品19が所定の停止位置で停止している。停止状態においては、ロボットアーム15が最も縮んだ状態である。停止状態におけるロボットアーム15の姿勢の一例は、第1軸部品13aおよび第3軸部品13cが鉛直姿勢であり、第2軸部品13bが第1軸部品13aに対して直角である。停止状態とは、ロボット10の可動部品19が動き出す前の状態である。停止状態には、ロボット10の電源がオフされている状態を含む。停止状態には、ロボット10の電源がオンされた後であって、動き出すことが可能なスタンバイ状態を含む。図において、停止状態における装置間距離を停止距離Dsとして示している。基準距離設定部72は、例えば停止距離Dsを基準距離に設定している。
【0036】
投光装置21、受光装置22、計測対象物41が位置する標準位置の3つの位置が同一の鉛直平面に存在する場合を仮定する。この場合において、投光装置21、受光装置22、計測対象物41の標準位置が存在する同一の鉛直平面に直交し、かつ、計測対象物41の標準位置を通る鉛直平面を標準鉛直平面と称する。停止位置では、投光装置21と受光装置22が、標準鉛直平面を挟んで位置することができない。計測対象物41が位置する標準位置とは、ロボット10が計測対象物41を把持する際の計測対象物41の標準的な位置であり、事前に設定されている。標準位置は、例えば作業台31の中央付近に設定可能である。
【0037】
図5において、可動部品19は、停止位置から計測位置まで移動が完了している状態である。計測位置では、投光装置21と受光装置22とが、標準鉛直平面に対して互いに反対側に位置している。言い換えると、計測位置では、投光装置21と受光装置22とが、標準鉛直平面を挟んで位置している。図において、投光装置21と受光装置22との間の装置間距離を計測距離Dkとして示している。計測距離Dkは、基準距離である停止距離Dsよりも長い。すなわち、可動部品19が計測位置に移動する場合に、停止状態に比べて装置間距離が広がるように移動することとなる。
【0038】
計測位置への移動が完了した状態においては、第1軸部品13aと第2軸部品13bとが第2関節部品12bで屈曲することなく、真っすぐに延びた状態である。また、第3軸部品13cは、第2軸部品13bに対して直角に屈曲している状態である。ただし、ロボット10の各部品の位置関係は上述の例に限られない。
【0039】
計測位置への移動が完了した状態において、投光装置21と受光装置22と計測対象物41の計測点とによって構成される三角形を仮想する。計測対象物41の計測点に代えて計測対象物41の標準位置を仮想する三角形の1つの頂点としてもよい。図において、投光装置21の投光位置と受光装置22の受光位置とを結ぶ直線を仮想基線VLとして示している。仮想基線VLの長さは、計測距離Dkに等しい。仮想基線VLは、三角測量における基線に相当する。計測対象物41の計測点が三角測量における計測点に相当する。図において、計測点を含む平面である仮想平面と仮想基線VLとが直交する点を直交点POとして示している。直交点POは、投光装置21の投光位置と受光装置22の受光位置との間に位置している。言い換えると、直交点POは、仮想基線VL上に位置している。
【0040】
図において、仮想した三角形の投光位置における内角を第1角度α、受光位置における内角を第2角度βとしてそれぞれ示している。第1角度αと第2角度βとは、ともに90°未満の角度、すなわち鋭角である。ここで、投光位置は、投光装置21を第1計測装置とした場合に、第1位置と称してもよい。また、受光位置は、受光装置22を第2計測装置とした場合に、第2位置と称してもよい。ステレオカメラを用いた方法の場合、第1カメラの撮像位置が第1位置に相当し、第2カメラの撮像位置が第2位置に相当することとなる。
【0041】
仮に、直交点POが投光装置21の投光位置と受光装置22の受光位置との間に位置していない場合には、第1角度αと第2角度βとの一方が90°以上の角度となる。この場合、計測点から直交点POを見たときに投光位置と受光位置とが同じ側に位置している状態となる。このため、投光位置と受光位置とが反対側に位置している場合に比べて、計測距離Dkを長く確保しにくい状態である。言い換えると、図に示すように直交点POを投光装置21の投光位置と受光装置22の受光位置との間に位置させることで、計測距離Dkを長く確保しやすくなるといえる。
【0042】
計測位置への移動において、基準距離を設定して装置間距離が基準距離を越えるように可動部品19を移動させる方法以外の方法を採用してもよい。例えば、直交点POが投光装置21の投光位置と受光装置22の受光位置との間に位置するように可動部品19を移動させてもよい。あるいは、第1角度αと第2角度βとがともに90°未満の角度となるように可動部品19を移動させてもよい。計測位置に移動した後、ステップS114に進む。
【0043】
ステップS114では、装置間距離算出部71が装置間距離を算出する。装置間距離は、投光装置21の座標と受光装置22の座標との2つの座標から算出することができる。投光装置21の座標と受光装置22の座標は、ロボット10のエンコーダ14で検出した回転角度を用いて算出する。投光装置21は、第1軸部品13aに取り付けられているため、第1関節部品12aの回転角度のみから算出することができる。受光装置22は、ロボットハンド16に取り付けられているため、全ての関節部品12とロボットハンド16の回転角度から算出することができる。したがって、受光装置22の座標は、投光装置21の座標に比べて算出に要する回転角度の情報が多い。装置間距離を算出した後、ステップS115に進む。
【0044】
ステップS115では、制御部70が計測対象物41を計測する。より詳細には、投光装置21を用いて計測対象物41にパターン光を投光し、受光装置22を用いて計測対象物41で反射したパターン光を受光する。パターン光の投光と受光は、投光するパターン光の位相を変えて3回以上行う。投光装置21がパターン光を投光し、受光装置22がパターン光を受光する状態は、ロボット10における計測状態である。
図5において、投光装置21から投光されたパターン光を投影光Lpとして示している。また、計測対象物41で反射したパターン光を反射光Lrとして示している。
【0045】
制御部70は、投光装置21で投光した投光データと、受光装置22で受光した受光データとを取得する。投光データと受光データとは、計測データの一例を提供する。仮に、計測ユニット20として複数のカメラを用いて三角測量を行う場合には、カメラで撮像した画像を計測データとして制御部70が取得することとなる。計測対象物41を計測した後、ステップS116に進む。
【0046】
ステップS116では、形状算出部74が三次元形状を算出する。三次元形状は、投光データと受光データと装置間距離とを用いて算出する。位相シフト法に基づき、投光データと受光データとに含まれるパターン光の縞模様の位相変化から第1角度αと第2角度βとを算出する。また、計測時の装置間距離である計測距離Dkと算出した第1角度αと第2角度βとを用いて、計測対象物41の計測点までの距離を計測点毎に算出する。
【0047】
パターン光が投光されている領域である計測領域全体について、順に計測対象物41までの距離を算出することで、計測対象物41の全体形状を算出する。ここで、計測対象物41が大きい場合には、計測対象物41の全体にパターン光を投光できない場合があり得る。この場合には、計測位置を変えることで計測領域をずらして複数回計測を繰り返して、計測対象物41の全体形状を算出してもよい。計測対象物41の三次元形状を算出した後、ステップS121に進む。
【0048】
ステップS121では、可動部品制御部73が可動部品19を把持開始位置に移動させる。把持開始位置は、ロボットハンド16が計測対象物41を把持可能な位置である。把持開始位置は、例えば作業台31に載置されている計測対象物41の上部を上方から掴んでいる位置である。計測対象物41の標準位置にロボットハンド16の爪部が位置する位置を把持開始位置とみなしてもよい。
図6において、把持開始位置に移動が完了した状態の装置間距離を把持開始距離Dhとして示している。把持開始距離Dhは、計測距離Dkよりも短い。すなわち、可動部品19が計測位置から把持開始位置に移動する場合に、装置間距離が狭くなるように移動することとなる。
【0049】
基準距離設定部72は、例えば把持開始距離Dhを基準距離に設定してもよい。この場合、直近の把持開始距離Dhを記憶して、次回以降の基準距離に設定することとなる。これによると、停止距離Dsが所定の距離として設定できないロボット10に対しても、把持開始距離Dhを基準距離に設定して、三次元形状計測を含む制御を実行できる。把持開始位置に移動させた後、ステップS122に進む。
【0050】
ステップS122では、ロボットハンド16が計測対象物41を把持するように可動部品制御部73が可動部品19を制御する。ロボットハンド16が計測対象物41を把持している状態は、把持状態である。ロボットハンド16が計測対象物41を把持した後、ステップS131に進む。
【0051】
ステップS131では、可動部品制御部73が可動部品19を組み付け位置に移動させる。この時、ロボットハンド16が計測対象物41を把持した状態を維持して組み付け位置に移動することとなる。可動部品19が組み付け位置に移動した後、ステップS132に進む。
【0052】
ステップS132では、計測対象物41を組み付けるように可動部品制御部73が可動部品19を制御する。計測対象物41の組み付けが完了した後、組み付け作業に関する一連の制御を終了する。計測対象物41が複数存在する場合には、ステップS111に戻り、組み付けるべき計測対象物41を全て組み付けるまで一連の制御を繰り返す。
【0053】
以下、上述した実施形態による効果を説明する。上述した実施形態によると、可動部品制御部73は、計測対象物41の三次元形状を計測する際に、装置間距離が基準距離よりも長くなるように可動部品19を制御する。このため、装置間距離を少なくとも基準距離よりも長くなるように確保して三角測量による三次元形状計測を実行することができる。したがって、装置間距離を長く確保して三角測量の精度を高めやすい。よって、計測精度の高い計測システム1を提供できる。特に、計測ユニット20をロボット10の可動部品19に取り付ける場合には、可動部品19を適切に動かすために、計測ユニット20が小型であることが要求される。したがって、投光装置21と受光装置22とを別体に分離して筐体を小型化しつつ、計測精度を高くすることは、計測ユニット20をロボット10に取り付ける上で、非常に有用である。
【0054】
基準距離は、計測システム1の停止状態における装置間距離である停止距離Dsに設定されている。このため、計測距離Dkを停止距離Dsよりも長く確保することができる。したがって、装置間距離を停止距離Dsと同じ距離として計測を行う場合に比べて、装置間距離を長く確保して、計測精度を高めやすい。
【0055】
基準距離は、ロボットハンド16による計測対象物41の把持開始位置における装置間距離である把持開始距離Dhに設定されてもよい。この場合、計測距離Dkを把持開始距離Dhよりも長く確保することができる。したがって、装置間距離を把持開始距離Dhと同じ距離として計測を行う場合に比べて、装置間距離を長く確保して、計測精度を高めやすい。
【0056】
可動部品制御部73は、計測対象物41の三次元形状を計測する際に、可動部品19を計測位置に移動させる。可動部品19が計測位置に移動した状態では、直交点POが投光装置21と受光装置22との間に位置する。このため、直交点POが投光装置21と受光装置22との間に位置していない場合に比べて、装置間距離を長くしやすい。したがって、三次元形状計測時の装置間距離を長く確保して、計測精度を高めやすい。よって、計測精度の高い計測システム1を提供することができる。また、直交点POが投光位置または受光位置に等しい位置となる場合に比べて、装置間距離を長くしやすい。
【0057】
可動部品制御部73は、計測対象物41の三次元形状を計測する際に、投光装置21と受光装置22と計測対象物41の計測点との3つの点を結ぶ三角形において、第1角度αと第2角度βとが、ともに90°未満の角度となるように可動部品19を制御する。これによると、第1角度αと第2角度βとの一方が、90°以上の角度となる場合に比べて、三次元形状計測時の装置間距離を長く確保しやすい。
【0058】
投光装置21が取り付けられている第1軸部品13aと受光装置22が取り付けられているロボットハンド16とは、関節部品12を介して連結されている。言い換えると、投光装置21と受光装置22とは、可動部品19のうち、少なくとも1つの関節部品12を介して連結されている異なる部品に取り付けられている。このため、関節部品12のモータを制御することで、投光装置21と受光装置22との相対的な位置関係を変更可能である。したがって、投光装置21と受光装置22との装置間距離等を適切に調整して、計測の精度を高めやすい。
【0059】
投光装置21と受光装置22とがともに可動部品19に取り付けられている。このため、投光装置21と受光装置22との両方の位置を制御できる。言い換えると、受光装置22の位置や向きを投光装置21の位置や向きに合わせて制御することができる。したがって、投光装置21と受光装置22とのどちらか一方のみが可動部品19に取り付けられている場合に比べて、投光装置21と受光装置22との位置関係を適切に調整しやすい。
【0060】
ロボットハンド16から投光装置21の取り付け位置までの距離は、ロボットハンド16から受光装置22の取り付け位置までの距離よりも長い。このため、投光装置21がロボットハンド16の動きに与える影響を低減しやすい。特に、投光装置21は、受光装置22に比べて大型で重くなりやすい。仮に、ロボットハンド16の近くに大型な装置が取り付けられていると、ロボットハンド16が計測対象物41を把持する際に障害となり得る。また、ロボットハンド16の近くに重い装置が取り付けられていると、ロボットハンド16の位置を微調整する際の障害となり得る。したがって、受光装置22に比べて大型で重くなりやすい投光装置21をロボットハンド16から離れた位置に取り付けることで、可動部品19を安定して動かすことができる。
【0061】
投光装置21は、第1軸部品13aに取り付けられ、受光装置22は、ロボットハンド16に取り付けられている。言い換えると、投光装置21は、ロボットアーム15に取り付けられており、受光装置22は、ロボットハンド16に取り付けられている。このため、投光装置21と受光装置22とを両方ともロボットアーム15に取り付けた場合に比べて、装置間距離を長く確保しやすい。
【0062】
投光装置21を第1軸部品13aに取り付け、受光装置22をロボットハンド16に取り付けた場合を例に説明を行ったが、取り付け位置は上述の例に限られない。投光装置21と受光装置22の取り付け位置を入れ替えてもよい。
【0063】
装置間距離算出部71は、計測対象物41を計測する直前に装置間距離を算出している。このため、計測距離Dkを算出するタイミングを、実際に計測を行うタイミングに近いタイミングとすることができる。したがって、計測距離Dkが実際に計測中の装置間距離からずれてしまうことを抑制しやすい。ただし、計測距離Dkを算出するタイミングを計測と同じタイミングとしてもよい。あるいは、計測距離Dkを算出するタイミングを計測の直後としてもよい。
【0064】
基準距離を停止距離Dsまたは把持開始距離Dhに設定する場合を例に説明を行ったが、基準距離を停止距離Dsまたは把持開始距離Dh以外の値に設定してもよい。例えば、基準距離をユーザが設定する固定値としてもよい。これによると、ユーザが設定した任意の基準距離を越えるような計測位置で三次元形状計測を実行できる。このため、停止距離Dsや把持開始距離Dhの値が変化した場合であっても、計測距離Dkを長く確保して高い計測精度を安定して維持しやすい。
【0065】
投光装置21を第1軸部品13aに取り付けた場合を例に説明を行ったが、投光装置21をベース11に取り付けてもよい。これによると、投光装置21をロボット10のうち動かない部品に取り付けることとなる。このため、投光装置21が大型かつ重量の大きな装置であっても、投光装置21が可動部品19の動きに影響を与えることがない。
【0066】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、投光装置221が固定治具232に取り付けられている。
【0067】
図7において、受光装置22は、可動部品19に取り付けられ、投光装置221は、固定治具232に取り付けられている。ここで、固定治具232は、ロボット10と独立して設けられており、可動部品19が動いた場合であっても位置を移動することのない固定部品である。言い換えると、固定治具232とロボット10のベース11との相対的な位置関係は、常に一定である。固定治具232とベース11とは、標準鉛直平面を挟んだ位置に位置している。固定治具232としては、専用の治具を採用可能であるが、計測システム1の設置環境に応じて建物の壁や柱を固定治具232に利用してもよい。投光装置221は、第1計測装置の一例を提供する。
【0068】
停止位置では、投光装置221と受光装置22とが、標準鉛直平面を挟んで位置している。固定治具232からベース11までの距離は、固定治具232から計測対象物41までの距離よりも長い。計測対象物41は、固定治具232からベース11までの間に位置している。
【0069】
三次元形状計測を含む計測対象物41の組み付け作業の流れについて、上述した実施形態と異なる部分を中心に以下に説明する。
図8において、三次元形状計測を含む組み付け作業を開始すると、ステップS211で可動部品制御部73が可動部品19を計測位置に移動させる。
【0070】
図9において、可動部品19は、停止位置から計測位置まで移動が完了している状態である。計測位置では、停止位置と同様、投光装置221と受光装置22とが、標準鉛直平面を挟んで位置している。図において、投光装置221と受光装置22との間の装置間距離を計測距離Dkとして示している。
【0071】
計測位置への移動が完了した状態において、投光装置221と受光装置22と計測対象物41とによって構成される三角形を仮想する。図において、投光装置221の投光位置と受光装置22の受光位置とを結ぶ直線を仮想基線VLとして示している。また、計測対象物41の計測点を含む平面である仮想平面と仮想基線VLとが直交する点を直交点POとして示している。直交点POは、投光装置221の投光位置と受光装置22の受光位置との間、すなわち、仮想基線VL上に位置している。
【0072】
図において、仮想した三角形の投光位置における内角を第1角度α、受光位置における内角を第2角度βとして示している。第1角度αと第2角度βとは、ともに90°未満の角度であり、第1角度αは、第2角度βよりも小さな角度である。計測位置に移動した後、ステップS214に進む。
【0073】
ステップS214では、装置間距離算出部71が装置間距離を算出する。装置間距離の算出において、投光装置221の座標は、可動部品19の動きによらず一定であるため、キャリブレーションの際に算出した座標を使用する。一方、受光装置22の座標は、ロボット10のエンコーダ14で検出した回転角度を用いて算出する。装置間距離を算出した後、ステップS215に進む。
【0074】
ステップS215では、制御部70が計測対象物41を計測する。より詳細には、位相を変えて計測対象物41にパターン光を複数回投光し、受光装置22を用いて計測対象物41で反射したパターン光を受光する。
図9において、投光装置221から投光されたパターン光を投影光Lp、計測対象物41で反射したパターン光を反射光Lrとしてそれぞれ示している。制御部70は、投光装置221で投光した投光データと、受光装置22で受光した受光データとを取得する。計測対象物41を計測した後、ステップS116以降のステップに進み、一連の制御を行う。
【0075】
以下、上述した実施形態による効果を説明する。上述した実施形態によると、投光装置221は、可動部品19が動いた場合であっても位置を移動することのない固定治具232に設けられている。このため、投光装置221の座標が変化しない。したがって、可動部品19を動かす度に投光装置221の座標を改めて算出する必要がない。よって、受光装置22の座標のみを算出して装置間距離を算出することができる。したがって、三次元形状の算出処理における負荷を低減して、高速に算出処理を完了させやすい。
【0076】
投光装置221が可動部品19とは異なる部品に設けられている。このため、投光装置221が可動部品19の動きに影響を与えることがない。したがって、投光装置221を可動部品19に取り付ける場合に比べて、投光装置221の大きさや重さに関する制約を少なくできる。よって、投光装置221の設計自由度を高めやすい。
【0077】
投光装置221を固定治具232に固定する場合を例に説明したが、投光装置221と受光装置22との取り付け位置を入れ替えてもよい。これによると、受光装置22の大きさや重さに関する制約を少なくできる。このため、受光装置22の受光面を広く確保しやすい。
【0078】
固定治具232に1つの投光装置221を取り付けた場合を例に説明を行ったが、投光装置221を複数取り付けてもよい。この場合、投光装置221の取り付け位置によって投光装置221の座標が異なる。このため、装置間距離を算出する際に、投光装置221の座標を使い分けることとなる。これによると、投光装置221を使い分けることで、計測対象物41に対する計測領域やパターン光の縞模様の種類等を使い分けることができる。
【0079】
投光装置221を固定治具232に取り付け、受光装置22をロボットハンド16に取り付けた場合を例に説明を行ったが、取り付け位置は上述の例に限られない。例えば、投光装置221と受光装置22の取り付け位置を入れ替えてもよい。
【0080】
固定治具232とベース11とが、標準鉛直平面を挟んだ位置に位置する場合を例に説明を行ったが、固定治具232とベース11との位置関係は、上述の例に限られない。固定治具232とベース11とが、標準鉛直平面を挟まない位置に位置していてもよい。これによると、投光装置221と受光装置22の位置関係を、停止位置においては標準鉛直平面を挟まない位置とし、計測位置においては、標準鉛直平面を挟んだ位置とすることができる。これによると、計測位置での装置間距離を、停止位置や把持開始位置での装置間距離に比べて長い距離とすることができる。
【0081】
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、投光装置21が第1軸部品13aに取り付けられ、受光装置322が第2軸部品13bに取り付けられている。また、作業台31に載置された状態とロボットハンド16に把持された状態との2つの状態で計測対象物41を計測する。
【0082】
図10において、投光装置21が第1軸部品13aに取り付けられ、受光装置322が第2軸部品13bに取り付けられている。言い換えると、投光装置21と受光装置322とは、ともに軸部品13に取り付けられている。ロボットハンド16から投光装置21までの距離は、ロボットハンド16から受光装置322までの距離よりも長い。ベース11から投光装置21までの距離は、ベース11から受光装置322までの距離よりも短い。受光装置322は、第2計測装置の一例を提供する。
【0083】
三次元形状計測を含む計測対象物41の組み付け作業の流れについて、上述した実施形態と異なる部分を中心に以下に説明する。
図11において、組み付け作業を開始すると、ステップS311で可動部品制御部73が可動部品19を計測位置に移動させる。
【0084】
図12において、可動部品19は、停止位置から計測位置まで移動が完了している状態である。計測位置では、投光装置21と受光装置322とが、標準鉛直平面を挟んで位置している。図において、投光装置21と受光装置322との間の装置間距離を計測距離Dk1として示している。計測距離Dk1は、投光装置21と受光装置322との間の装置間距離が最大となる状態での装置間距離である。
【0085】
計測位置への移動が完了した状態において、投光装置21と受光装置322と計測対象物41とによって構成される三角形を仮想する。図において、投光装置21の投光位置と受光装置322の受光位置とを結ぶ直線を仮想基線VL1として示している。また、計測対象物41の計測点を含む平面である仮想平面と仮想基線VL1とが直交する点を直交点PO1として示している。直交点PO1は、投光装置21の投光位置と受光装置322の受光位置との間、すなわち、仮想基線VL1上に位置している。
【0086】
図において、仮想した三角形の投光位置における内角を第1角度α1、受光位置における内角を第2角度β1として示している。第1角度α1と第2角度β1とは、ともに90°未満の角度である。計測位置に移動した後、ステップS114に進み、計測対象物41を把持する前の装置間距離として計測距離Dk1を算出する。その後、ステップS315に進む。
【0087】
ステップS315では、制御部70が計測対象物41を計測する。
図12において、投光装置21から投光されたパターン光を投影光Lpとして示している。また、計測対象物41で反射したパターン光を反射光Lrとして示している。計測対象物41を計測した後、ステップS116に進み、三次元形状を算出する。三次元形状は、第1角度α1と第2角度β1と計測距離Dk1とを用いて算出することとなる。その後、ステップS121に進み、把持開始位置に移動する。その後、ステップS122に進み、計測対象物41を把持して持ち上げる。その後、ステップS324に進む。
【0088】
ステップS324では、装置間距離算出部71が装置間距離を算出する。ロボットハンド16は、計測対象物41を把持している。このため、計測対象物41を把持した後の装置間距離として計測距離Dk1とは異なる値の装置間距離を算出することとなる。
【0089】
ステップS325では、制御部70が計測対象物41を計測する。
図13において、可動部品19は、把持開始位置から把持した状態での計測位置まで移動が完了している状態である。図において、投光装置21と受光装置322との間の装置間距離を計測距離Dk2として示している。また、投光装置21の投光位置と受光装置322の受光位置とを結ぶ直線を仮想基線VL2として示している。また、計測対象物41の計測点を含む平面である仮想平面と仮想基線VL2とが直交する点を直交点PO2として示している。また、仮想した三角形の投光位置における内角を第1角度α2、受光位置における内角を第2角度β2としてそれぞれ示している。また、投光装置21から投光されたパターン光を投影光Lp、計測対象物41で反射したパターン光を反射光Lrとしてそれぞれ示している。
【0090】
計測位置では、投光装置21と受光装置322とが、標準鉛直平面を挟んでいない位置関係である。計測対象物41を把持した状態での第2角度β2は、計測対象物41を把持する前の第2角度β1よりも大きい。計測対象物41を把持した状態での第2角度β2は、90°である。直交点PO2は、受光装置322の受光位置と等しい位置である。
【0091】
計測対象物41を把持した状態での計測距離Dk2は、計測対象物41を把持する前の計測距離Dk1よりも短い。ただし、計測距離Dk1と計測距離Dk2とは、ともに停止距離Dsおよび把持開始距離Dhよりも長い。計測対象物41を計測した後、ステップS326に進み、三次元形状を算出する。
【0092】
ステップS326では、位相シフト法に基づいて形状算出部74が三次元形状を算出する。これにより、ロボットハンド16に把持された状態の計測対象物41の位置および姿勢を算出することができる。三次元形状は、第1角度α2と第2角度β2と計測距離Dk2とを用いて算出することとなる。把持された状態の計測対象物41の三次元形状を算出した後、ステップS131に進み、組み付け位置に移動する。その後、ステップS132に進み、計測対象物41を組み付ける。これにより、把持されたことで計測対象物41の姿勢が変化した場合であっても、計測対象物41を適切に組み付けることができる。
【0093】
以下、上述した実施形態による効果を説明する。上述した実施形態によると投光装置21と受光装置322とは、ロボットアーム15に取り付けられている。このため、投光装置21とロボットハンド16との距離を長く確保するとともに、受光装置322とロボットハンド16との距離を長く確保できる。したがって、ロボットハンド16が計測対象物41を把持している状態であっても、計測対象物41と投光装置21と受光装置322との距離を長く確保できる。言い換えると、把持されている計測対象物41の計測点と投光装置21の投光位置と受光装置322の受光位置との3点の互いの距離をある程度長く確保できる。よって、計測点と投光位置との距離や、計測点と受光位置との距離が短すぎて、把持されている計測対象物41の三次元形状を計測できないといった事態を抑制しやすい。以上により、把持の前後によらず任意のタイミングで計測対象物41の三次元形状を計測しやすい。
【0094】
形状算出部74は、ロボットハンド16が計測対象物41を把持する前の状態とロボットハンド16が計測対象物41を把持した後の状態との2つの状態で計測対象物41の三次元形状を算出する。このため、把持した後に計測対象物41の姿勢が変化した場合であっても、改めて三次元形状を計測することができる。したがって、把持したことで変化した後の姿勢を計測し、組み付け作業等の作業を継続することができる。
【0095】
投光装置21を第1軸部品13aに取り付け、受光装置322を第2軸部品13bに取り付けた場合を例に説明を行ったが、取り付け位置は上述の例に限られない。例えば、投光装置21と受光装置322の取り付け位置を入れ替えてもよい。
【0096】
他の実施形態
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0097】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0098】
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置およびその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 計測システム、 10 ロボット、 11 ベース、 12 関節部品、 12a 第1関節部品、 12b 第2関節部品、 12c 第3関節部品、 13 軸部品、 13a 第1軸部品、 13b 第2軸部品、 13c 第3軸部品、 14 エンコーダ、 15 ロボットアーム、 16 ロボットハンド、 16a 回転軸、 19 可動部品、 20 計測ユニット、 21 投光装置(第1計測装置)、 22 受光装置(第2計測装置)、 31 作業台、 41 計測対象物、 70 制御部、 71 装置間距離算出部、 72 基準距離設定部、 73 可動部品制御部、 74 形状算出部、 221 投光装置(第1計測装置)、 232 固定治具、 322 受光装置(第2計測装置)