(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】非フッ素共重合体組成物および紙用耐油剤
(51)【国際特許分類】
D21H 19/20 20060101AFI20240718BHJP
D21H 21/14 20060101ALI20240718BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20240718BHJP
C08L 33/08 20060101ALI20240718BHJP
C08L 33/10 20060101ALI20240718BHJP
C08L 33/14 20060101ALI20240718BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
D21H19/20 A
D21H21/14
C08K5/053
C08L33/08
C08L33/10
C08L33/14
C08F220/10
(21)【出願番号】P 2022027156
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2021041343の分割
【原出願日】2021-03-15
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020048210
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】松田 礼生
(72)【発明者】
【氏名】坂下 浩敏
(72)【発明者】
【氏名】上原 徹也
(72)【発明者】
【氏名】野口 太甫
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特許第7157349(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/076347(WO,A1)
【文献】特開2001-303475(JP,A)
【文献】特開2013-112907(JP,A)
【文献】特開2005-146490(JP,A)
【文献】特開2000-104007(JP,A)
【文献】特開2003-128941(JP,A)
【文献】特開平11-124791(JP,A)
【文献】特開2006-328624(JP,A)
【文献】特開2014-001252(JP,A)
【文献】特開2016-084416(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051051(WO,A1)
【文献】特開2015-120895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/14
D21H 19/00 - 19/84
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)非フッ素共重合体、および
(2)アセチレンアルコール
を含んでなる非フッ素共重合体組成物を含む耐油剤であって、
非フッ素共重合体(1)が
(a)炭素数10~40の長鎖炭化水素基を有する、アクリル単量体から形成された繰り返し単位
を有する非フッ素共重合体であり、
アセチレンアルコール(2)が、式:
【化1】
[式中、R
1およびR
4は、独立して炭素原子数4~6のアルキル基であり、
R
2およびR
3は、独立してメチル基またはエチル基であり、
xおよびyは、独立して3~60の数である。]
で示される化合物である非フッ素共重合体組成物を含む耐油剤。
【請求項2】
非フッ素共重合体(1)が、さらに
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、
を有する非フッ素共重合体である請求項1に記載の耐油剤。
【請求項3】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH
2=C(-X
1)-C(=O)-Y
1(R
1)
k
[式中、R
1は、それぞれ独立的に、炭素数10~40の炭化水素基であり、
X
1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y
1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C
6H
4-、-O-、-C(=O)-、-S(C=O)
2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体である請求項1または2に記載の耐油剤。
【請求項4】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、X
1が水素原子であり、R
1の炭素数が18以上である請求項3に記載の耐油剤。
【請求項5】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH
2=C(-X
4)-C(=O)-Y
2-R
2
[式中、R
2は、炭素数10~40の炭化水素基であり、
X
4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y
2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH
2=C(-X
5)-C(=O)-Y
3-Z(-Y
4-R
3)
n
[式中、R
3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X
5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y
3は、-O-または-NH-であり、
Y
4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)
2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である請求項1~4のいずれかに記載の耐油剤。
【請求項6】
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH
2=CX
2C(=O)-O-(RO)
n-X
3 (b1)
CH
2=CX
2C(=O)-O-(RO)
n-C(=O)CX
2=CH
2 (b2)
および/または
CH
2=CX
2C(=O)-NH-(RO)
n-X
3 (b3)
[式中、X
2は、水素原子またはメチル基、
X
3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立して炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つの単量体である請求項2に記載の耐油剤。
【請求項7】
非フッ素共重合体(1)が、
(c)オレフィン性炭素―炭素二重結合およびイオン供与基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
をさらに有し、
オレフィン性炭素―炭素二重結合およびイオン供与基を有するアクリル単量体(c)は、親水性基を有するアクリル単量体(b)以外の単量体である、請求項1~6のいずれかに記載の耐油剤。
【請求項8】
イオン供与基を有するアクリル単量体(c)が、
(c1)カルボキシル基、スルホン酸基またはリン酸基からなる群から選択された少なくも1種のアニオン供与基を有するアクリル単量体、または
(c2)アミノ基であるカチオン供与基を有するアクリル単量体である請求項7に記載の耐油剤。
【請求項9】
アニオン供与基を有するアクリル単量体(c1)が、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、リン酸(メタ)アクリレート、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸、およびそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種の化合物であり、
カチオン供与基を有するアクリル単量体(c2)が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種の化合物である請求項8に記載の耐油剤。
【請求項10】
非フッ素共重合体に対して、単量体(a)から形成される繰り返し単位の量が、30~95重量%である請求項1~9のいずれかに記載の耐油剤。
【請求項11】
アセチレンアルコール(2)の量が、非フッ素重合体(1)100重量部に対して、0.1~20重量部である請求項1~10のいずれかに記載の耐油剤。
【請求項12】
(1)非フッ素共重合体
を含んでなる液、および
(2)アセチレンアルコール
を含んでなる耐油剤キットであって、
非フッ素共重合体(1)が
(a)炭素数10~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
を有する非フッ素共重合体であり、
アセチレンアルコール(2)が、式:
【化1】
[式中、R
1およびR
4は、独立して炭素原子数4~6のアルキル基であり、
R
2およびR
3は、独立してメチル基またはエチル基であり、
xおよびyは、独立して3~60の数である。]
で示される化合物である耐油剤キット。
【請求項13】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体および親水性基を有するアクリル単量体を重合して非フッ素共重合体を得る工程、および
非フッ素共重合体にアセチレンアルコールを添加する工程
を有する、請求項1~11のいずれかに記載の耐油剤の製造方法。
【請求項14】
請求項1~11のいずれかに記載の耐油剤における
、非フッ素共重合体
及びアセチレンアルコールを紙の内部および/または表面に含む耐油紙。
【請求項15】
食品包装材または食品容器である請求項14に記載の耐油紙。
【請求項16】
請求項1~11のいずれかに記載の耐油剤で紙を処理することを含む、処理時における泡を消す方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非フッ素共重合体組成物、および該非フッ素共重合体組成物を含んでなる紙用耐油剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、含フッ素重合体と、三重結合および水酸基を有する化合物を含んでなる組成物が提案されている。
【0003】
特許文献1(国際特許出願公開2005/090423号)は、含フッ素重合体、および添加剤としてアセチレングリコールまたはポリオキシアルキレンアセチレングリコールエーテルを含む耐水耐油剤組成物を開示している。
特許文献2(特開2007-291373号公報)は、含フッ素重合体、および分子中に1個以上の炭素-炭素三重結合および1個以上の水酸基を有する化合物からなるノニオン性界面活性剤を含む撥液剤組成物を開示している。
【0004】
これら特許文献において、含フッ素重合体と異なっている非フッ素重合体に、三重結合および水酸基を有する化合物を組み合わせることは開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際特許出願公開2005/090423号
【文献】特開2007-291373号公報(日本特許第5200403号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、処理時の発泡が少なく、基材に対して優れた耐油性と耐水性を与えることができる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、
(1)非フッ素共重合体、および
(2)アセチレンアルコール
を含んでなる非フッ素共重合体組成物に関する。
【0008】
本開示の好ましい態様は次のとおりである。
態様1:
(1)非フッ素共重合体、および
(2)アセチレンアルコール
を含んでなる非フッ素共重合体組成物。
態様2:
非フッ素共重合体(1)が
(a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
を有する非フッ素共重合体である態様1に記載の非フッ素共重合体組成物。
態様3:
非フッ素共重合体(1)が、さらに
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位、
を有する非フッ素共重合体である態様2に記載の非フッ素共重合体組成物。
態様4:
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、式:
CH
2=C(-X
1)-C(=O)-Y
1(R
1)
k
[式中、R
1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X
1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y
1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基、-C
6H
4-、-O-、-C(=O)-、-S(C=O)
2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体である態様1~3のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物。
態様5:
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)において、X
1が水素原子であり、R
1の炭素数が18以上である態様4に記載の非フッ素共重合体組成物。
態様6:
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)が、
(a1)式:
CH
2=C(-X
4)-C(=O)-Y
2-R
2
[式中、R
2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X
4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y
2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および/または
(a2)式:
CH
2=C(-X
5)-C(=O)-Y
3-Z(-Y
4-R
3)
n
[式中、R
3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X
5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y
3は、-O-または-NH-であり、
Y
4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)
2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である態様1~5のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物。
態様7:
親水性基を有するアクリル単量体(b)が、式:
CH
2=CX
2C(=O)-O-(RO)
n-X
3 (b1)
CH
2=CX
2C(=O)-O-(RO)
n-C(=O)CX
2=CH
2 (b2)
および/または
CH
2=CX
2C(=O)-NH-(RO)
n-X
3 (b3)
[式中、X
2は、水素原子またはメチル基、
X
3は、水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立して炭素数2~6のアルキレン基、nは、1~90の整数である。]
で表わされる少なくとも1つのオキシアルキレン(メタ)アクリレートである態様3~6のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物。
態様8:
非フッ素共重合体(1)が、
(c)オレフィン性炭素―炭素二重結合およびイオン供与基を有するアクリル単量体から形成された繰り返し単位
をさらに有する態様3~7のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物。
態様9:
イオン供与基を有するアクリル単量体(c)が、
(c1)カルボキシル基、スルホン酸基またはリン酸基からなる群から選択された少なくも1種のアニオン供与基を有するアクリル単量体、または
(c2)アミノ基であるカチオン供与基を有するアクリル単量体である態様8に記載の非フッ素共重合体組成物。
態様10:
アニオン供与基を有するアクリル単量体(c1)が、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、リン酸(メタ)アクリレート、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸、およびそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種の化合物であり、
カチオン供与基を有するアクリル単量体(c2)が、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそれらの塩からなる群から選択された少なくとも1種の化合物である態様9に記載の非フッ素共重合体組成物。
態様11:
非フッ素共重合体に対して、単量体(a)から形成される繰り返し単位の量が、30~95重量%であり、単量体(b)から形成される繰り返し単位の量が、5~70重量%であり、単量体(c)から形成される繰り返し単位の量が、0.1~30重量%である態様8~10のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物。
態様12:
アセチレンアルコール(2)が、式:
【化1】
[式中、R
1およびR
4は、独立して水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、
R
2およびR
3は、独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、
xおよびyは、独立して0~100の数である。]
で示される化合物である態様1~11のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物。
態様13:
アセチレンアルコール(2)の量が、非フッ素重合体(1)100重量部に対して、0.1~20重量部である態様1~12のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物。
態様14:
態様1~13のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物を含む耐油剤。
態様15:
(1)非フッ素共重合体
を含んでなる液、および
(2)アセチレンアルコール
を含んでなる耐油剤キット。
態様16:
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体および親水性基を有するアクリル単量体を重合して非フッ素共重合体を得る工程、および
非フッ素共重合体にアセチレンアルコールを添加する工程
を有する、態様1~13のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物の製造方法。
態様17:
態様1~13のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物における非フッ素共重合体を紙の内部および/または表面に含む耐油紙。
態様18:
食品包装材または食品容器である態様17に記載の耐油紙。
態様19:
態様1~13のいずれかに記載の非フッ素共重合体組成物で紙を処理することを含む、処理時における泡を消す方法。
【発明の効果】
【0009】
非フッ素共重合体組成物は、処理時の泡立ちが少なく、且つ、製品安定性に優れている。
耐油剤は、基材に、高い耐油性および耐水性を付与する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
非フッ素共重合体組成物は、
(1)非フッ素共重合体、および
(2)アセチレンアルコール
を含んでなる。
【0011】
(1)非フッ素共重合体
非フッ素共重合体(1)は、
(a)炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体から形成される繰り返し単位を有することが好ましい。加えて、非フッ素共重合体(1)は、
(b)親水性基を有するアクリル単量体から形成される繰り返し単位
を有することが好ましい。
さらに、非フッ素共重合体(1)は、単量体(a)および(b)に加えて、
(c)イオン供与基を有する単量体
によって形成されている繰り返し単位を有することが好ましい。
非フッ素共重合体(1)は、単量体(a)、(b)および(c)に加えて、
(d)他の単量体
から形成される繰り返し単位を有していてもよい。
【0012】
非フッ素共重合体(1)は、スチレン骨格を有しないことが好ましい。スチレン骨格とは、置換基を有しても有しなくてもどちらでもよいスチレンを意味する。置換基を有するスチレンは、スチレンのα位もしくはベンゼン環における少なくとも1つの水素原子が置換基で置換されている化合物を包含する。非フッ素共重合体(1)は、置換基を有しても有しなくてもどちらでもよいスチレンから誘導される繰り返し単位を有しないことが好ましい。食品添加物としてのスチレンの使用が禁止されており、食品接触用途ではスチレンモノマーが残存しないことが求められるからである。
【0013】
(a)長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)は、炭素数7~40の長鎖炭化水素基を有する。炭素数7~40の長鎖炭化水素基は、炭素数7~40の直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。長鎖炭化水素基の炭素数は、10~40、例えば、12~30、特に15~30であることが好ましい。あるいは、長鎖炭化水素基の炭素数は、18~40または18~30であってよい。
【0014】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)は、式:
CH2=C(-X1)-C(=O)-Y1(R1)k
[式中、R1は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X1は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y1は、2価~4価の炭素数1の炭化水素基(特に、-CH2-、-CH=)、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基(但し、炭化水素基を除く)であり、
kは1~3である。]
で示される単量体であることが好ましい。
【0015】
X1は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。X1の例は、水素原子、メチル基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基である。X1は、水素原子、メチル基、塩素原子であることが好ましい。X1は水素原子であることが特に好ましい。
【0016】
Y1は、2価~4価の基である。Y1は、2価の基であることが好ましい。
Y1は、炭素数1の炭化水素基、-C6H4-、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上によって構成される基(但し、炭化水素基を除く)であることが好ましい。炭素数1の炭化水素基の例として、-CH2-、枝分かれ構造を有する-CH=および枝分かれ構造を有する-C≡挙げられる。
【0017】
Y1は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-、-Y’-R’-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-、-Y’-R’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-Y’-、または-Y’-R’-Y’-R’-
[式中、Y’は、直接結合、-O-、-NH-または-S(=O)2-であり、
R’は-(CH2)m-(mは1~5の整数である)または-C6H4-(フェニレン基)である。]
であってよい。
【0018】
Y1の具体例は、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C6H4-、-O-(CH2)m-O-、-NH-(CH2)m-NH-、-O-(CH2)m-NH-、-NH-(CH2)m-O-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-、-O-(CH2)m-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-、-NH-(CH2)m-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-O-C6H4-、-O-(CH2)m-NH-S(=O)2-、-O-(CH2)m-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-O-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、または-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-である[式中、mは1~5、特に2または4である。]。
【0019】
Y1は、-O-、-NH-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-S(=O)2-、-O-(CH2)m-S(=O)2-NH-、-NH-(CH2)m-NH-S(=O)2-、または-NH-(CH2)m-S(=O)2-NH-
[式中、mは1~5の整数、特に2または4である。]
であることが好ましい。Y1は、-O-または-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、特に-O-(CH2)m-NH-C(=O)-であることがより好ましい。
【0020】
R1は、直鎖状または分岐状の炭化水素基であることが好ましい。炭化水素基は、特に直鎖状の炭化水素基であってよい。炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。炭化水素基の炭素数は、12~30、例えば16~26または15~26、特に18~22または17~22であることが好ましい。
【0021】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)の例は、
(a1)式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示されるアクリル単量体、および
(a2)式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示されるアクリル単量体である。
【0022】
(a1)アクリル単量体
アクリル単量体(a1)は、式:
CH2=C(-X4)-C(=O)-Y2-R2
[式中、R2は、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X4は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y2は、-O-または-NH-である。]
で示される化合物である。
【0023】
アクリル単量体(a1)は、Y2が-O-である長鎖アクリレートエステル単量体、またはY2が-NH-である長鎖アクリルアミド単量体である。
R2は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。R2において、炭化水素基の炭素数は、12~30、例えば16~26、特に18~22であることが好ましい。あるいは、R2の炭素数は、18~40または18~30であってよい。
X4は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基または塩素原子であることが好ましい。
【0024】
長鎖アクリレートエステル単量体の好ましい具体例は、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、イコシルαクロロアクリレート、ベヘニルαクロロアクリレートである。
長鎖アクリルアミド単量体の好ましい具体例は、ステアリル(メタ)アクリルアミド、イコシル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミドである。
【0025】
(a2)アクリル単量体
アクリル単量体(a2)は、アクリル単量体(a1)とは異なる単量体である。アクリル単量体(a2)は、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-、または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基を有する(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドである。
アクリル単量体(a2)は、式:
CH2=C(-X5)-C(=O)-Y3-Z(-Y4-R3)n
[式中、R3は、それぞれ独立的に、炭素数7~40の炭化水素基であり、
X5は、水素原子、一価の有機基またはハロゲン原子であり、
Y3は、-O-または-NH-であり、
Y4は、それぞれ独立的に、直接結合、-O-、-C(=O)-、-S(=O)2-または-NH-から選ばれる少なくとも1つ以上で構成される基であり、
Zは、直接結合、あるいは2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、
nは、1または2である。]
で示される化合物であってよい。
【0026】
R3は、脂肪族炭化水素基、特に飽和の脂肪族炭化水素基、特別にアルキル基であることが好ましい。R3において、炭化水素基の炭素数は、12~30、例えば16~26または15~26、特に18~22または17~22であることが好ましい。あるいは、R3の炭素数は、18~40または18~30であってよい。
【0027】
X5は、水素原子、メチル基、フッ素原子を除くハロゲン、置換または非置換のベンジル基、置換または非置換のフェニル基であってよい。水素原子、メチル基または塩素原子であることが好ましい。
【0028】
Y4は、-Y’-、-Y’-Y’-、-Y’-C(=O)-、-C(=O)-Y’-、-Y’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-、-Y’-R’-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-、-Y’-R’-C(=O)-Y’-、-Y’-R’-Y’-C(=O)-Y’-、または-Y’-R’-Y’-R’-
[式中、Y’はそれぞれ独立して、直接結合、-O-、-NH-または-S(=O)2-であり、
R’は-(CH2)m-(mは1~5の整数である)、炭素数1~5の不飽和結合を有する直鎖状の炭化水素基、炭素数1~5の枝分かれ構造を有する炭化水素基、または-(CH2)l-C6H4-(CH2)l-(lはそれぞれ独立して0~5の整数であり-C6H4-はフェニレン基である)である。]
であってよい。
【0029】
Y4の具体例は、直接結合、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-S(=O)2-、-S(=O)2-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C6H4-、-NH-C6H4-、-O-(CH2)m-O-、-NH-(CH2)m-NH-、-O-(CH2)m-NH-、-NH-(CH2)m-O-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-、-O-(CH2)m-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-、-NH-(CH2)m-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-O-(CH2)m-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-、-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-O-(CH2)m-O-C6H4-、-NH-(CH2)m-O-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-O-、-NH-(CH2)m-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-、-NH-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-、-NH-(CH2)m-O-C6H4-、-NH-(CH2)m-NH-C6H4-
[式中、mは1~5の整数である。]
である。
【0030】
Y4は、-O-、-NH-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-、-NH-S(=O)2-、-S(=O)2-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-、-NH-C(=O)-NH-、-O-C6H4-であることが好ましい。Y4は、-NH-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-O-C(=O)-NH-、-NH-C(=O)-O-または-NH-C(=O)-NH-であることがさらに好ましい。
【0031】
Zは、直接結合、あるいは2価または3価の炭素数1~5の炭化水素基であり、直鎖構造を有しても、枝分かれ構造を有していてもよい。Zの炭素数は、2~4、特に2であることが好ましい。Zの具体例は、直接結合、-CH2-、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2CH2CH2CH2-、枝分かれ構造を有する-CH2CH=、枝分かれ構造を有する-CH2(CH-)CH2-、枝分かれ構造を有する-CH2CH2CH=、枝分かれ構造を有する-CH2CH2CH2CH2CH=、枝分かれ構造を有する-CH2CH2(CH-)CH2-、枝分かれ構造を有する-CH2CH2CH2CH=である。
Zは直接結合でないことが好ましく、Y4およびZは同時に直接結合であることはない。
【0032】
アクリル単量体(a2)は、
CH2=C(-X5)-C(=O)-O-(CH2)m-NH-C(=O)-R3、
CH2=C(-X5)-C(=O)-O-(CH2)m-O-C(=O)-NH-R3、
CH2=C(-X5)-C(=O)-O-(CH2)m-NH-C(=O)-O-R3、
CH2=C(-X5)-C(=O)-O-(CH2)m-NH-C(=O)-NH-R3であることが好ましい[ここで、R3およびX5は上記と同意義である。]。
アクリル単量体(a2)は、CH2=C(-X5)-C(=O)-O-(CH2)m-NH-C(=O)-R3であることが特に好ましい。
【0033】
アクリル単量体(a2)は、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートまたはヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドと長鎖アルキルイソシアネートを反応させることによって製造できる。長鎖アルキルイソシアネートとしては例えば、ラウリルイソシアネート、ミリスチルイソシアネート、セチルイソシアネート、ステアリルイソシアネート、オレイルイソシアネート、ベヘニルイソシアネートなどがある。
あるいは、アクリル単量体(a2)は、側鎖にイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと長鎖アルキルアミンまたは長鎖アルキルアルコールを反応させることでも製造できる。長鎖アルキルアミンとしては例えば、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ベヘニルアミンなどがある。長鎖アルキルアルコールとしては例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールなどがある。
【0034】
長鎖炭化水素基含有アクリル単量体(a)の好ましい例は、次のとおりである。
ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ステアリルαクロロアクリレート、ベヘニルαクロロアクリレート;
ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド;
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【化6】
[上記式中、nは7~40の数であり、mは1~5の数である。]
上記の化学式の化合物は、α位が水素原子であるアクリル化合物であるが、具体例は、α位がメチル基であるメタクリル化合物およびα位が塩素原子であるαクロロアクリル化合物であってよい。
【0040】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)の融点は、10℃以上であることが好ましく、25℃以上であることがより好ましい。
【0041】
長鎖炭化水素基を有するアクリル単量体(a)としては、X1、X4及びX5が水素原子である、アクリレートであることが好ましい。
【0042】
アクリル単量体(a2)は、式:
R12-C(=O)-NH-R13-O-R11
[式中、R11は、エチレン性不飽和重合性基を有する有機残基、
R12は、炭素数7~40の炭化水素基、
R13は、炭素数1~5の炭化水素基である。]
で示されるアミド基含有単量体であることが好ましい。
【0043】
R11は、エチレン性不飽和重合性基を有する有機残基であり、炭素同士の二重結合があれば特に限定されない。具体的には-C(=O)CR14=CH2、-CHR14=CH2、-CH2CHR14=CH2等のエチレン性不飽和重合性基を有する有機残基が挙げられ、R14は、水素原子または炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。またR11はエチレン性不飽和重合性基以外に種々の有機性基を有してよく、例えば鎖式炭化水素、環式炭化水素、ポリオキシアルキレン基、ポリシロキサン基等の有機性基が挙げられ、これら有機性基は種々の置換基で置換されていても良い。R11は-C(=O)CR14=CH2であることが好ましい。
【0044】
R12は、炭素数7~40の炭化水素基、好ましくはアルキル基であり、鎖式炭化水素基、環式の炭化水素基等が挙げられる。そのなかで、鎖式炭化水素基であることが好ましく、直鎖状の飽和炭化水素基であることが特に好ましい。R12の炭素数は、7~40であるが、好ましくは11~27、特に好ましくは15~23である。
【0045】
R13は、炭素数1~5の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。炭素数1~5の炭化水素基は直鎖状または分岐鎖状のいずれでも良く、不飽和結合を有していても良いが、好ましくは直鎖状が良い。R13の炭素数は、2~4が好ましく、特に2であることが好ましい。R13は、アルキレン基であることが好ましい。
【0046】
アミド基含有単量体は、R12が1種類であるもの(例えば、R12が炭素数17である化合物のみ)、またはR12が複数の組み合わせであるもの(例えば、R12の炭素数が17である化合物と、R12の炭素数が15である化合物との混合物)であってよい。
【0047】
アミド基含有単量体の例は、カルボン酸アミドアルキル(メタ)アクリレートである。
アミド基含有単量体の具体例としては、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ベヘニン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ミリスチン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、ラウリン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、イソステアリン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、オレイン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、ターシャリーブチルシクロヘキシルカプロン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、アダマンタンカルボン酸エチルアミド(メタ)アクリレート、ナフタレンカルボン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、アントラセンカルボン酸アミドエチル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドプロピル(メタ)アクリレート、ステアリン酸アミドプロピル(メタ)アクリレート、パルミチン酸アミドエチルビニルエーテル、ステアリン酸アミドエチルビニルエーテル、パルミチン酸アミドエチルアリルエーテル、ステアリン酸アミドエチルアリルエーテル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0048】
アミド基含有単量体は、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。アミド基含有単量体は、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートを含む混合物であってよい。ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートを含む混合物において、ステアリン酸アミドエチル(メタ)アクリレートの量は、アミド基含有単量体全体の重量に対して、例えば55~99重量%、好ましくは60~85重量%、更に好ましくは65~80重量%であってよく、残りの単量体は、例えば、パルミチン酸アミドエチル(メタ)アクリレートであってよい。
【0049】
(b)親水性基を有するアクリル単量体
親水性基を有するアクリル単量体(b)は、単量体(a)以外の単量体であって、親水性単量体である。親水性基は、オキシアルキレン基(アルキレン基の炭素数は2~6である。)、特に、オキシエチレン基であることが好ましい。特に、親水性基を有するアクリル単量体(b)は、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートおよび/またはポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリルアミドであることが好ましい。オキシアルキレン(メタ)アクリレートが特に好ましい。ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、およびポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリルアミドは、一般式:
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-X3 (b1)、
CH2=CX2C(=O)-O-(RO)n-C(=O)CX2=CH2 (b2)、
および/または
CH2=CX2C(=O)-NH-(RO)n-X3 (b3)
[式中、
X2は、各々独立に水素原子またはメチル基、
X3は、各々独立に水素原子または炭素数1~22の不飽和または飽和の炭化水素基
Rは、各々独立に炭素数2~6のアルキレン基、
nは、1~90の整数
である。]
で示されるものであることが好ましい。
【0050】
nは、例えば1~50、特に1~30、特別に1~15あるいは2~15であってよい。あるいは、nは、例えば1であってよい。
Rは、直鎖または分岐のアルキレン基であってよく、例えば、式-(CH2)x-または-(CH2)x1-(CH(CH3))x2-[式中、x1およびx2は0~6、例えば2~5であり、x1およびx2の合計は1~6である。-(CH2)x1-と-(CH(CH3))x2-の順序は、記載の式に限定されず、ランダムであってもよい。]で示される基であってよい。
-(RO)n-において、Rは2種類以上(例えば、2~4種類、特に2種類)であってよく、-(RO)n-は、例えば、-(R1O)n1-と-(R2O)n2-[式中、R1とR2は、相互に異なって、炭素数2~6のアルキレン基であり、n1およびn2は、1以上の数であり、n1とn2の合計は2~90である。]の組み合わせであってよい。
【0051】
一般式(b1)、(b2)および(b3)中のRは特にエチレン基、プロピレン基またはブチレン基、特にブチレン基であることが好ましい。一般式(b1)、(b2)および(b3)中のRは2種類以上のアルキレン基の組み合わせであっても良い。その場合、少なくともRのひとつはエチレン基、プロピレン基またはブチレン基であることが好ましい。Rの組合せとしては、エチレン基/プロピレン基の組合せ、エチレン基/ブチレン基の組合せ、プロピレン基/ブチレン基の組合せが挙げられる。単量体(b)は2種類以上の混合物であっても良い。その場合は少なくとも単量体(b)のひとつは一般式(b1)、(b2)または(b3)中のRがエチレン基、プロピレン基またはブチレン基であることが好ましい。また、一般式(b2)で示されるポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを使用する場合、単独で単量体(b)として使用することは好ましくなく、単量体(b1)と併用することが好ましい。その場合も、一般式(b2)で示される化合物は使用される単量体(b)の中で30重量%未満にとどめることが好ましい。
【0052】
親水性基を有するアクリル単量体(b)の具体例は、例えば以下のものを例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH2=CHCOO-CH2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH(CH3)O-H
CH2=CHCOO-CH(CH3)CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH2CH2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH2CH(CH3)O-H
CH2=CHCOO-CH2CH(CH3)CH2O-H
CH2=CHCOO-CH(CH3)CH2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH2CH(CH2CH3)O-H
CH2=CHCOO-CH2C(CH3)2O-H
CH2=CHCOO-CH(CH2CH3)CH2O-H
CH2=CHCOO-C(CH3)2CH2O-H
CH2=CHCOO-CH(CH3)CH(CH3)O-H
CH2=CHCOO-C(CH3)(CH2CH3)O-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)2-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)4-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)5-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)6-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)90-CH3
【0053】
CH2=CHCOO-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=CHCOO-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)23-OOC(CH3)C=CH2
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)20-(CH2CH(CH3)O)5-CH2-CH=CH2
【0054】
CH2=CHCOO-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-CH(CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH(CH3)CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(CH2CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-CH2C(CH3)2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH(CH2CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-C(CH3)2CH2O-H
CH2=C(CH3)COO-CH(CH3)CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-C(CH3)(CH2CH3)O-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)2-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)4-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)6-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)90-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)9-H
【0055】
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)23-OOC(CH3)C=CH2
CH2=C(CH3)COO-(CH2CH2O)20-(CH2CH(CH3)O)5-CH2-CH=CH2
【0056】
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH(CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH(CH3)CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH2CH2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH2CH(CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH(CH3)CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH(CH3)CH2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2CH(CH2CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH2C(CH3)2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH(CH2CH3)CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-C(CH3)2CH2O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-CH(CH3)CH(CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-C(CH3)(CH2CH3)O-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)2-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)4-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)6-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)9-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)90-CH3
【0057】
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=CH-C(=O)-NH-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
【0058】
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH(CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH2CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH2CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH(CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH(CH3)CH2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2CH(CH2CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH2C(CH3)2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH(CH2CH3)CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-C(CH3)2CH2O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-CH(CH3)CH(CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-C(CH3)(CH2CH3)O-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)2-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)4-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)6-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)9-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)9-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)23-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)90-CH3
【0059】
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)9-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)9-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH(CH3)O)12-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)2-H
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)5-(CH2CH(CH3)O)3-CH3
CH2=C(CH3)-C(=O)-NH-(CH2CH2O)8-(CH2CH(CH3)O)6-CH2CH(C2H5)C4H9
【0060】
単量体(b)としては、X2が水素原子である、アクリレートまたはアクリルアミドであることが好ましい。単量体(b)は、特に、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、またはヒドロキシエチルアクリルアミドであることが好ましい。
【0061】
(c)イオン供与基を有する単量体
イオン供与基を有する単量体(c)は、単量体(a)および単量体(b)以外の単量体である。単量体(c)は、オレフィン性炭素―炭素二重結合およびイオン供与基を有する単量体(特に、アクリル単量体)であることが好ましい。イオン供与基は、アニオン供与基および/またはカチオン供与基である。
【0062】
アニオン供与基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基またはリン酸基を有する単量体が挙げられる。アニオン供与基を有する単量体の具体例は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、リン酸(メタ)アクリレート、ビニルベンゼンスルホン酸、アクリルアミドターシャリーブチルスルホン酸など、またはそれらの塩である。
【0063】
アニオン供与基の塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、またはアンモニウム塩、例えばメチルアンモニウム塩、エタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩などが挙げられる。
【0064】
カチオン供与基を有する単量体において、カチオン供与基の例は、アミノ基、好ましくは、三級アミノ基および四級アミノ基である。三級アミノ基において、窒素原子に結合する2つの基は、同じかまたは異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)または炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C6H5-CH2-))であることが好ましい。四級アミノ基において、窒素原子に結合する3つの基は、同じかまたは異なって、炭素数1~5の脂肪族基(特にアルキル基)、炭素数6~20の芳香族基(アリール基)または炭素数7~25の芳香脂肪族基(特にアラルキル基、例えばベンジル基(C6H5-CH2-))であることが好ましい。三級アミノ基および四級アミノ基において、窒素原子に結合する残りの1つの基が、炭素―炭素二重結合を有していてよい。カチオン供与基は塩の形でもよい。
【0065】
塩であるカチオン供与基は、酸(有機酸または無機酸)との塩である。有機酸、例えば炭素数1~20のカルボン酸(特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸)が好ましい。ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそれらの塩が好ましい。
【0066】
カチオン供与基を有する単量体の具体例は、次のとおりである。
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(CH2CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHC(O)N(H)-CH2CH2CH2-N(CH3)2 およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N(-CH3)(-CH2-C6H5) およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N(-CH2CH3)(-CH2-C6H5)およびその塩(例えば酢酸塩)
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH2-N+(-CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=CHCOO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(CH3)3Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH(OH)CH2-N+(-CH2CH3)2(-CH2-C6H5)Cl-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3Br-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3I-
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)3O-SO3CH3
CH2=C(CH3)COO-CH2CH2-N+(CH3)(-CH2-C6H5)2Br-
【0067】
イオン供与基を有する単量体(c)としては、メタアクリル酸、アクリル酸及びジメチルアミノエチルメタクリレートが好ましく、メタアクリル酸及びジメチルアミノエチルメタクリレートであることがより好ましい。
【0068】
(d)他の単量体
他の単量体(d)は、単量体(a)、(b)および(c)以外の単量体である。そのような他の単量体としては、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、ハロゲン化ビニルスチン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、メチロール化(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、アルキルビニルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、アルキルビニルケトン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、グリシジル(メタ)アクリレート、アジリジニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、短鎖アルキル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、ポリジメチルシロキサン基を有する(メタ)アクリレート、N-ビニルカルバゾールが挙げられる。
【0069】
非フッ素共重合体の繰り返し単位を構成する単量体の組み合わせは、例えば、次のとおりである。
単量体(a)
単量体(a)+単量体(b)
単量体(a)+単量体(c)
単量体(a)+単量体(b)+単量体(c)
単量体(a)+単量体(b)+単量体(d)
単量体(a)+単量体(c)+単量体(d)
単量体(a)+単量体(b)+単量体(c)+単量体(d)
非フッ素重合体の繰り返し単位を構成する単量体の組み合わせは、「単量体(a)+単量体(b)+単量体(c)」であることが好ましい。
【0070】
単量体(a)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(a))の量は、非フッ素共重合体に対して(または繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)の合計に対して)、30~95重量%または30~90重量%、好ましくは40~88重量%(または45~95重量%)、より好ましくは50~85重量%であってよい。あるいは、単量体(a)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(a))の量は、非フッ素共重合体に対して、30~95重量%、好ましくは50~88重量%または55~85重量%、より好ましくは60~85重量%であってよい。
単量体(b)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(b))の量は、非フッ素共重合体に対して(または繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)の合計に対して)、5~70重量%または10~70重量%、好ましくは8~50重量%、より好ましくは10~40重量%であってよい。あるいは、単量体(b)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(b))の量は、非フッ素共重合体(または繰り返し単位(a)と繰り返し単位(b)の合計に対して)に対して、5~70重量%、好ましくは8~50重量%または10~40重量%、より好ましくは10~30重量%であってよい。
単量体(c)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(c))の量は、非フッ素共重合体に対して、30重量%以下または0.1~30重量%、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは1~15重量%または2~12重量%であってよい。
単量体(d)から形成される繰り返し単位(繰り返し単位(d))の量は、非フッ素共重合体に対して、0~20重量%、例えば1~15重量%、特に2~10重量%であってよい。
【0071】
非フッ素共重合体の重量平均分子量は、1000~1000000または10000000、好ましくは5000~800000または8000000、より好ましくは10000~400000または4000000であってよい。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレン換算で求めた値である。
【0072】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルまたはメタクリルを意味する。例えば、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0073】
非フッ素共重合体は、耐油性の観点から、ブロック共重合体であるよりも、ランダム共重合体であることが好ましい。
非フッ素共重合体の融点またはガラス転移点は、好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、特に好ましくは35℃以上、例えば40℃以上である。
非フッ素共重合体の動的粘弾性(複素粘性率)は、90℃において、10~5000Pa・s、例えば20~3000Pa・s、特に50~1000Pa・sであることが好ましい。非フッ素共重合体の動的粘弾性(複素粘性率)は、70℃において、500~100000Pa・s、特に1000~50000Pa・sであることが好ましい。また、非フッ素共重合体の動的粘弾性(複素粘性率)は、80~90℃において、10~5000Pa・s、例えば20~3000Pa・s、特に50~1000Pa・sであることが好ましい。
【0074】
(2)アセチレンアルコール
アセチレンアルコール(2)は、1つ以上の炭素-炭素三重結合および1つ以上の水酸基を有する化合物である。
【0075】
アセチレンアルコール(2)は、式:
【化7】
[式中、R
1およびR
4は、独立して水素原子または炭素原子数1~10のアルキル基であり、
R
2およびR
3は、独立して水素原子、メチル基またはエチル基であり、
xおよびyは、独立して0~100の数である。]
で示される化合物であることが好ましい。
【0076】
R1およびR4は、独立して炭素原子数2~10、例えば3~8または4~6のアルキル基であることが好ましい。R1およびR4の好ましい具体例は、ブチル基、例えば、n-ブチル基、イソブチル基およびt-ブチル基である。
R2およびR3は、メチル基であることが好ましい。
xおよびyは、0であってよいが、1~80、例えば3~60であることが好ましい。エチレンオキシド基を有するポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル(エチレンオキシド基を有するアセチレンアルコール(2))は、高い耐油性および消泡性を与える。
【0077】
アセチレンアルコール(2)の具体例としては、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3-ヘキシン-2,5-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール等が挙げられる。これら具体例化合物のポリエトキシレートおよびエチレンオキシド付加物も挙げられる。2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキシド付加物が特に好ましい。
【0078】
アセチレンアルコール(2)は、次のようにして製造できる。
エチレンオキシド基を有するアセチレンアルコール(2)は、トリエチルアミンなどの塩基性触媒の存在下で、アセチレン第三級グリコール、カルビノール、またはそれらの混合物をエチレンオキシドと反応させることによって製造できる。
【0079】
アセチレン第三級グリコールまたはカルビノールは、炭化カルシウム、アルカリ金属水酸化物およびケトンを反応させることによって製造できる。アセチレン第三級グリコールは、エチレンオキシド基を有しないアセチレンアルコール(2)に該当する。
【0080】
アセチレンアルコール(2)の量は、非フッ素重合体(1)100重量部に対して、0.1~20重量部または0.2~15重量部、例えば、0.3~10重量部または0.5~8重量部または1~5重量部であってよい。あるいは、アセチレンアルコール(2)の量は、非フッ素重合体(1)100重量部に対して、0.1~10重量部、0.2~5重量部または0.3~3重量部であってよい。
あるいは、アセチレンアルコール(2)の量は、非フッ素重合体組成物(または非フッ素重合体を含んでなる液)100重量部に対して、0.01~10重量部、例えば、0.05~5重量部または0.1~2重量部であってよい。
【0081】
非フッ素共重合体の重合は、特に限定されず塊状重合、溶液重合、乳化重合、放射線重合などの種々重合方法を選択できる。例えば一般的には有機溶剤を用いた溶液重合や、水または有機溶剤と水を併用する乳化重合が選定される。重合後に水で希釈して水に乳化することで処理液に調製される。
【0082】
有機溶剤を媒体として使用する重合(例えば、溶液重合または乳化重合、好ましくは溶液重合)を行った後、水を加えてから脱溶剤して、重合体を水に分散させることが好ましい。乳化剤を加える必要なく、自己分散型の製品を製造することができる。
【0083】
アセチレンアルコール(2)は界面活性剤として機能できるので、アセチレンアルコール(2)の存在下で非フッ素共重合体の重合を行って、非フッ素共重合体組成物を得ることができる。あるいは、非フッ素共重合体を製造した後に、非フッ素共重合体を含む液(溶液または分散液)にアセチレンアルコール(2)を加えてもよい。
非フッ素重合体(1)とアセチレンアルコール(2)が相互に独立して存在するキットの形態であってもよい。例えば、キットは、非フッ素重合体(1)を含む液(特に、水性分散体)、およびアセチレンアルコール(2)によって構成される。
【0084】
有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類などが挙げられる。
【0085】
重合開始剤として、例えば過酸化物、アゾ化合物または過硫酸系の化合物を使用し得る。重合開始剤は、一般に、水溶性および/または油溶性である。
油溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチル4-メトキシバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ-第三級-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t-ブチル等が好ましく挙げられる。
【0086】
また、水溶性重合開始剤の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等が好ましく挙げられる。
重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01~5重量部の範囲で用いられる。
【0087】
また、分子量調節を目的として、連鎖移動剤、例えば、メルカプト基含有化合物を使用してもよく、その具体例として2-メルカプトエタノール、チオプロピオン酸、アルキルメルカプタンなどが挙げられる。メルカプト基含有化合物は単量体100重量部に対して、10重量部以下、0.01~5重量部の範囲で用いられる。
【0088】
具体的には、非フッ素共重合体は、以下のようにして製造できる。
溶液重合では、単量体を有機溶剤に溶解させ、窒素置換後、重合開始剤を添加して、例えば40~120℃の範囲で1~10時間、加熱撹拌する方法が採用される。重合開始剤は、一般に、油溶性重合開始剤であってよい。
【0089】
有機溶剤としては、単量体に不活性でこれらを溶解するものであり、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、低分子量のポリエチレングリコールなどのグリコール類、エチルアルコール、イソプロパノールなどのアルコール類、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、メチルペンタン、2-エチルペンタン、イソパラフィン系炭化水素、流動パラフィン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット、ミネラルターペン、ナフサなどの炭化水素系溶媒などである。溶剤の好ましい例として、例えば、アセトン、クロロホルム、HCHC225、イソプロピルアルコール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油エーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,1,1-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、テトラクロロジフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)などが挙げられる。有機溶剤は単量体の合計100重量部に対して、50~2000重量部、例えば、50~1000重量部の範囲で用いられる。
【0090】
乳化重合では、単量体を乳化剤などの存在下、水中に乳化させ、窒素置換後、重合開始剤を添加し、40~80℃の範囲で1~10時間、撹拌して重合させる方法が採用される。重合開始剤は、水溶性重合開始剤、例えば、2,2’-アゾビスイソブチルアミジン2塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナミジン)塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]硫酸塩水和物、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]塩酸塩、過硫酸カリウム、過硫酸バリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、
ならびに
油溶性重合開始剤、例えば、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2、4-ジメチル4-メトキシバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(2-イソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ-第三級-ブチルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、t-ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過ピバル酸t-ブチル
が用いられる。重合開始剤は単量体100重量部に対して、0.01~10重量部の範囲で用いられる。
【0091】
放置安定性の優れた重合体水分散液を得るためには、高圧ホモジナイザーや超音波ホモジナイザーのような強力な破砕エネルギーを付与できる乳化装置を用いて、単量体を水中に微粒子化し、油溶性重合開始剤を用いて重合することが望ましい。また、乳化剤としてはアニオン性、カチオン性あるいはノニオン性の各種乳化剤を用いることができ、単量体100重量部に対して、0.5~20重量部の範囲で用いられる。アニオン性および/またはノニオン性および/またはカチオン性の乳化剤を使用することが好ましい。単量体が完全に相溶しない場合は、これら単量体に充分に相溶させるような相溶化剤、例えば、水溶性有機溶剤や低分子量の単量体を添加することが好ましい。相溶化剤の添加により、乳化性および共重合性を向上させることが可能である。
【0092】
水溶性有機溶剤としては、アセトン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エタノール、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール又はイソプレングリコールなどが挙げられ、水100重量部に対して、1~50重量部、例えば10~40重量部の範囲で用いてよい。NMP又はDPM又は3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール又はイソプレングリコール(好ましい量は、組成物に対して例えば1~20重量%、特に3~10重量%)を添加することにより、組成物(特に、エマルション)の安定性が向上する。また、低分子量の単量体としては、メチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレートなどが挙げられ、単量体の総量100重量部に対して、1~50重量部、例えば10~40重量部の範囲で用いてよい。
【0093】
非フッ素共重合体組成物は、溶液、エマルションまたはエアゾールの形態であることが好ましい。非フッ素共重合体組成物は、非フッ素共重合体および媒体(例えば、有機溶媒および水などの液状媒体)を含んでなる。非フッ素共重合体組成物は、非フッ素共重合体の水分散体であることが好ましい。
非フッ素共重合体組成物において、非フッ素共重合体の濃度は、例えば、0.01~50重量%であってよい。
【0094】
重合体の溶液における有機溶媒の除去は、重合体溶液を(好ましくは減圧下)(例えば、30℃以上、例えば50~120℃に)加熱することによって行える。
【0095】
非フッ素共重合体組成物は、紙基材を処理(例えば、表面処理)するために使用することができる。
非フッ素共重合体組成物は、従来既知の方法により被処理物に適用することができる。通常、非フッ素共重合体組成物を有機溶剤または水に分散して希釈して、浸漬塗布、スプレー塗布、泡塗布などのような既知の方法により、被処理物の表面に付着させ、乾燥する方法が採られる(表面処理)。
被処理物の紙基材としては、紙、紙でできた容器、紙でできた成形体(例えばパルプモールド)などが挙げられる。
本開示の非フッ素共重合体は、紙基材に良好に付着する。
【0096】
紙は、従来既知の抄造方法によって製造できる。抄造前のパルプスラリーに非フッ素共重合体組成物を添加する内添処理方法、または抄造後の紙に非フッ素共重合体組成物を適用する外添処理方法を用いることができる。本開示における非フッ素共重合体組成物の処理方法は、外添処理方法が好ましい。
【0097】
外添処理方法のサイズプレスは、塗布方式によって以下のように分けることも可能である。
1つの塗布方式は、2本のゴムロールの間に紙を通して形成されるニップ部に塗布液(サイズ液)を供給し、ポンドと呼ばれる塗液溜りを作り、この塗液溜りに紙を通して紙の両面にサイズ液を塗布する、いわゆるポンド式ツーロールサイズプレスである。他の塗布方式は、サイズ液を表面転写型により塗布するゲートロール型、及び、ロッドメタリングサイズプレスである。ポンド式ツーロールサイズプレスにおいてサイズ液は紙の内部まで浸透しやすく、表面転写型においてサイズ液成分は紙の表面に留まりやすい。表面転写型は、ポンド式ツーロールサイズプレスと比べて、塗布層が紙の表面に留まりやすく、表面に形成される耐油層がポンド式ツーロールサイズプレスより多い。
本開示では、前者のポンド式2ロールサイズプレスを用いた場合でも紙に耐油性能を付与できる。
このように処理された紙は、室温または高温での簡単な乾燥後に、任意に、紙の性質に依存して300℃まで、例えば200℃まで、特に80℃~180℃の温度範囲をとり得る熱処理を伴うことで、優れた耐油性および耐水性を示す。
【0098】
本開示は、石膏ボード原紙、コート原紙、中質紙、一般ライナーおよび中芯、中性純白ロール紙、中性ライナー、防錆ライナーおよび金属合紙、クラフト紙などにおいて使用することができる。また、中性印刷筆記用紙、中性コート原紙、中性PPC用紙、中性感熱用紙、中性感圧原紙、中性インクジェット用紙および中性情報用紙においても用いることができる。
【0099】
パルプ原料としては、クラフトパルプあるいはサルファイトパルプ等の晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプ等の
晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙等の古紙パルプのいずれも使用することができる。また、上記パルプ原料と石綿、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物も使用することができる。
【0100】
サイズ剤を加えて、紙の耐水性を向上させることができる。サイズ剤の例は、カチオン性サイズ剤、アニオン性サイズ剤、ロジン系サイズ剤(例えば、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤)である。サイズ剤の量は、パルプに対して0.01~5重量%であってよい。
【0101】
紙には必要に応じて、通常使用される程度の製紙用薬剤として、澱粉、変性澱粉、カルボキシメチルセルロース、ポリアミドポリアミン-エピクロルヒドリン樹脂等の紙力増強剤、凝集剤、定着剤、歩留り向上剤、染料、蛍光染料、スライムコントロール剤、消泡剤等の紙の製造で使用される添加剤を使用することができる。澱粉および変性澱粉を用いることが好ましい。
必要により、澱粉、ポリビニルアルコール、染料、コーティングカラー、防滑剤等を用いて、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、キャレンダー等によって、非フッ素共重合体組成物を紙に塗布することができる。
【0102】
外添においては、耐油層に含まれる非フッ素共重合体の量が0.01~2.0g/m2、特に0.1~1.0g/m2であることが好ましい。耐油層は、非フッ素共重合体と澱粉および/または変性澱粉によって形成されることが好ましい。耐油層における(非フッ素共重合体を含む)固形分量は2g/m2以下であることが好ましい。
内添においては、紙を形成するパルプ100重量部に対して、非フッ素共重合体の量が0.01~50重量部または0.01~30重量部、例えば0.01~10重量部、特に0.2~5.0重量部となるように、非フッ素共重合体をパルプと混合することが好ましい。
外添および内添において、澱粉および変性澱粉と非フッ素共重合体との重量比は、10:90~98:2または60:40~95:5であってよい。
【0103】
外添において、ロールとロールの間に処理液をため、任意のロールスピードとニップ圧で、ロール間の処理液に原紙を通す、いわゆるポンド式2ロールサイズプレス処理を用いても紙に耐油性を付与することができる。
【0104】
非フッ素共重合体は、ノニオン性、カチオン性、アニオン性または両性であってよい。外添処理において、紙基材はサイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤または凝結剤などの添加剤を含んでよい。添加剤はノニオン性、カチオン性、アニオン性または両性であってよい。添加剤のイオン電荷密度は-10000~10000 μeq/g、好ましくは-4000~8000 μeq/gであり、より好ましくは-1000~7000 μeq/gであってよい。サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤または凝結剤などの添加剤(固形分または活性成分)は、パルプに対して、一般に、0.1~10重量%(例えば、0.2~5.0重量%)の量で使用できる。カチオン性の添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤または凝結剤)を含む紙基材の場合は、耐油剤はアニオン性であることが好ましい。
【0105】
内添処理において、パルプ濃度が0.5~5.0重量%(例えば、2.5~4.0重量%)であるパルプスラリーを抄紙することが好ましい。パルプスラリーに添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤または凝結剤など)および非フッ素共重合体を添加することができる。パルプは一般にアニオン性であるので、添加剤および非フッ素共重合体が良好に紙に定着するように、添加剤および非フッ素共重合体の少なくとも一方はカチオン性または両性であることが好ましい。添加剤がカチオン性または両性であり、非フッ素共重合体がアニオン性である組み合わせ、添加剤がアニオン性であり、非フッ素共重合体がカチオン性または両性である組み合わせ、添加剤および非フッ素共重合体がカチオン性または両性である組み合わせを使用することが好ましい。サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤または凝結剤などを構成する添加剤のイオン電荷密度を-1000~7000μeq/gで抄紙することがより好ましく、イオン電荷密度を100~1000μeq/g(例えば、330μeq/g、420μeq/gまたは680μeq/g)で抄紙することがさらに好ましい。
【0106】
添加剤(例えば、サイズ剤、紙力増強剤、凝集剤、歩留まり剤または凝結剤など)の例は、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン系重合体(スチレン/マレイン酸系重合体、スチレン/アクリル酸系重合体)、尿素‐ホルムアルデヒド重合体、ポリエチレンイミン、メラミン‐ホルムアルデヒド重合体、ポリアミドアミン‐エピクロルヒドリン重合体、ポリアクリルアミド系重合体、ポリアミン系重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルアミン・エピクロルヒドリン縮合物、アルキレンジクロライドとポリアルキレンポリアミンの縮合物、ジシアンジアミド・ホルマリン縮合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、オレフィン/無水マレイン酸重合体である。
【0107】
本開示においては、被処理物品を非フッ素共重合体組成物で処理する。「処理」とは、非フッ素共重合体組成物を、浸漬、噴霧、塗布などにより被処理物に適用することを意味する。処理により、非フッ素共重合体組成物の有効成分である非フッ素共重合体が被処理物の内部に浸透するおよび/または被処理物の表面に付着する。
【実施例】
【0108】
次に、実施例および比較例を挙げて本開示を具体的に説明する。ただし、これらの説明が本開示を限定するものでない。
以下において、部、%または比は、特記しない限り、重量部、重量%または重量比を表す。
【0109】
以下において使用した試験方法は次のとおりである。
【0110】
[泡試験]
試験する内容物として約50gを100mlスクリュー管に入れ、手で容器を10秒間振った後、静置して泡高さを確認した。30分後の泡高さを観測し、泡高さが0~3mmを〇、4~10mmを△、10mm以上をXと評価した。
【0111】
[外添法での評価]
木材パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)とNBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)の重量比率が、60重量%と40重量%で、かつ、パルプのろ水度が400ml(Canadian Standard Freeness)のパルプスラリーを調製し、このパルプスラリーに湿潤紙力剤、サイズ剤を添加して長網抄紙機により、紙密度が0.60g/cm3の坪量42g/m2の紙を外添処理(サイズプレス処理)の原紙として使用した。この原紙の耐油性(KIT値)は0、耐水性(Cobb値)は25g/m2であった。
【0112】
[加工紙の調製]
各合成例で得られた共重合体の水分散液を耐油剤として用い、耐油紙(加工紙)を得た。処理液は、重合体の水分散液を固形分濃度が2.4重量%、かつ、澱粉の固形分濃度が14重量%となるように調製し、処理液をサイズプレス機で処理した後、ドラムドライヤーで乾燥し、耐油紙(加工紙)を得た。得られた耐油紙を試験紙として用い、キット試験(Kit Test)を行った。
澱粉としては、一般的なヒドロキシエチル化澱粉(Penford290:Penford社製)を使用した。サイズプレス処理(Mathis社製のサイズプレス機を使用)としては、ロールとロールの間に処理液をため、任意のロールスピードとニップ圧で、ロール間の処理液に原紙を通す、いわゆるポンド式2ロールサイズプレス処理を用いた。
【0113】
[耐油性(KIT)]
耐油性(KIT法)は、TAPPI T-559cm-02に従って測定した。KIT試験液はひまし油、トルエン、ヘプタンを表1の比率で混合した試験液である。下記の表に示す試験液1滴を紙の上におき、15秒後に油の浸透状態を観察した。浸透を示さないKIT試験液が与える耐油度の最高点を耐油性とした。KIT試験液の番号が高いほど耐油性が高い。
【0114】
【0115】
合成例1
撹拌装置、温度計、還流冷却器、滴下漏斗、窒素流入口および加熱装置を備えた容積500mlの反応器を用意し、溶媒のメチルエチルケトン(MEK)を100部添加した。続いて、撹拌下、ステアリルアクリレート(StA、融点:30℃)78部、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)16部、およびメタアクリル酸(MAA)6部からなる単量体(単量体計100部)を添加し、加温溶解させた後、開始剤のパーブチルPV(PV)1.2部を添加し、この混合物を65-75℃の窒素雰囲気下で12時間混合撹拌して共重合を行った。得られた共重合体含有溶液の固形分濃度は50重量%であった。
得られた共重合体溶液の50gに0.3%のNaOH水溶液142gを添加し、分散させた後、エバポレーターを用いて加熱しながら減圧下でMEKを留去し、乳白色の共重合水分散液(揮発性有機溶媒の含有量は1重量%以下)を得た。この水分散液にさらにイオン交換水を加えて固形分濃度15重量%である水分散液を得た。
【0116】
合成例2
合成例1のStAに代えて、ステアリル酸アミドエチルアクリレート(C18AmEA、融点:70℃)を78部と、MAAに代えてジメチルアミノエチルメタクリレート(DM)を6部用いる他は、合成例1と同様に共重合と後処理を行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。
【0117】
合成例3
合成例1で得られた固形分濃度50重量%の共重合体含有溶液(200部)に、ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル(アセチレンアルコール(2)の上記化学式において、R1およびR4がイソブチル基であり、R2およびR3がメチル基であるアセチレンアルコール)(エチレンオキシドの平均付加モル数10)を1部添加して得られた共重合体溶液の50gに0.3%のNaOH水溶液142gを添加し、分散させた後、エバポレーターを用いて加熱しながら減圧下でMEKを留去し、乳白色の共重合水分散液(揮発性有機溶媒の含有量は1重量%以下)を得た。この水分散液にさらにイオン交換水を加えて固形分濃度15重量%である水分散液を得た。
【0118】
合成例4
合成例3のポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテルをポリプロピレングリコール(分子量1200)に変えた以外は合成例3と同様の手順を繰り返して、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。
【0119】
合成例5
合成例3のポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテルを一般的に製紙用途で使用されるシリコーン系消泡剤(シリコーンオイル、シリカ、および分散剤からなる)に変えた以外は合成例3と同様の手順を繰り返して、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。
【0120】
合成例6
合成例2で得られた共重合体含有水分散体に、ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテル(アセチレンアルコール(2)の上記化学式において、R1およびR4がイソブチル基であり、R2およびR3がメチル基であるアセチレンアルコール)(エチレンオキシドの平均付加モル数10)を1部添加して得られた共重合体水分散体の50gに0.4%の酢酸水溶液142gを添加し、分散させた後、エバポレーターを用いて加熱しながら減圧下でMEKを留去し、乳白色の共重合水分散液(揮発性有機溶媒の含有量は1重量%以下)を得た。この水分散液にさらにイオン交換水を加えて固形分濃度15重量%である水分散液を得た。
【0121】
合成例7
合成例6のポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテルをポリプロピレングリコール(分子量1200)に変えた以外は合成例6と同様に行い、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。
【0122】
合成例8
ポリオキシエチレンアセチレングリコールエーテルを、製紙用途で使用されるシリコーン系消泡剤(シリコーンオイル、シリカおよび分散剤からなる)に変えた以外は、合成例6と同様の手順を繰り返して、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。
【0123】
合成例9
シリコーン系消泡剤の量を0.1部に変えた以外は、合成例8と同様の手順を繰り返して、固形分濃度15重量%である水分散体を得た。
【0124】
参考例1
合成例1で得られた共重合体の水分散液を固形分が2.4重量%、且つ、澱粉の固形分濃度が14重量%になるように処理液を調製し、処理液の泡試験と外添処理を行った。さらに、共重合体の水分散液自体(製品)の泡試験を行った。結果を表1に示す。
【0125】
参考例2
合成例1の共重合体水分散液の代わりに、合成例2の共重合体水分散液を使用した以外は、参考例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0126】
比較例1
合成例1の共重合体水分散液を使用せずに、澱粉のみを使用する以外は、参考例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0127】
比較例2
合成例1の共重合体水分散液の代わりに、パラフィンワックス分散液を使用した以外は、参考例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0128】
比較例3
合成例1の共重合体水分散液の代わりに、含フッ素系アクリルポリマーの水性分散液を固形分が0.4重量%で使用した以外は、参考例1と同様の手順を繰り返した。結果を表1に示す。
【0129】
【0130】
実施例1
合成例3で得られた共重合体の水分散液を固形分が2.4重量%、且つ、澱粉の固形分濃度が14重量%になるように処理液を調製し、処理液の泡試験と外添処理を行った。
【0131】
比較例4
合成例3の共重合体水分散液の代わりに、合成例4の共重合体水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に泡試験と外添処理を行った。結果を表2に示す。
【0132】
比較例5
合成例1の共重合体水分散液の代わりに、合成例5の共重合体水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に泡試験と外添処理を行った。結果を表2に示す。
【0133】
実施例2
合成例1の共重合体水分散液の代わりに、合成例6の共重合体水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に泡試験と外添処理を行った。結果を表2に示す。
【0134】
比較例6
合成例1の共重合体水分散液の代わりに、合成例7の共重合体水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に泡試験と外添処理を行った。結果を表2に示す。
【0135】
比較例7
合成例1の共重合体水分散液の代わりに、合成例8の共重合体水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に泡試験と外添処理を行った。結果を表2に示す。
【0136】
比較例8
合成例1の共重合体水分散液の代わりに、合成例9の共重合体水分散液を使用した以外は、実施例1と同様に泡試験と外添処理を行った。結果を表2に示す。
【0137】
【産業上の利用可能性】
【0138】
本開示の非フッ素共重合体組成物は、食品容器および食品包装材に用いられる紙に適用できる。