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特許7522378混注制御装置、混注制御プログラム、混注システム、混注装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】混注制御装置、混注制御プログラム、混注システム、混注装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20240718BHJP
   A61J 1/20 20060101ALI20240718BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20240718BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61J1/20 314C
A61J3/00 310C
G16H20/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023206191
(22)【出願日】2023-12-06
(62)【分割の表示】P 2020092579の分割
【原出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2024019340
(43)【公開日】2024-02-08
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】▲浜▼上 博史
(72)【発明者】
【氏名】河内 一樹
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/041092(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 1/20
G16H 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される調製データに基づいて作業者によって実行されるべき混注作業の内容を表示する混注支援装置に前記調製データを入力可能な入力装置と、
調製データに含まれ得る第1器材の情報と、第1容器内の薬品を第2容器に注入する混注処理を実行する混注装置で使用可能な第2器材の情報との対応関係を示す器材変換情報に基づいて、調製データにおける前記第1器材の情報を前記第2器材の情報に変換した変換調製データを生成する変換処理部と、
前記調製データ又は前記変換処理部で生成された前記変換調製データに基づいて前記混注処理を実行する混注装置と、
を備え
前記変換処理部は、前記調製データが前記器材変換情報に基づいて変換の必要のないデータである場合は当該調製データを前記変換調製データに変換せずに前記混注装置に送信する、混注システム。
【請求項2】
前記変換処理部は、前記混注装置に入力される前の調製データ又は入力された後の調製データに基づいて前記変換調製データを生成する、
請求項1に記載の混注システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬品容器に収容された抗がん剤などの薬品を輸液容器に注入する混注処理を実行する混注装置の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
バイアル瓶などの薬品容器に収容された抗がん剤などの薬品を注射器で吸引し、その薬品を輸液が収容された輸液バッグに注入する混注処理を実行する混注装置が知られている。また、この種の混注装置において、混注処理の実行タイミングを予約可能な技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしなら、混注処理ごとに実行タイミングを設定する操作はユーザーにとって煩雑である。
【0005】
本発明の目的は、混注処理の実行タイミングを予約するためのユーザー操作を軽減することが可能な混注制御装置及び混注制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る混注制御装置は、調製データに基づいて第1容器内の薬品を第2容器に注入する混注処理を実行する混注装置を制御する混注制御装置であって、前記調製データに含まれる特定情報の内容と、前記混注処理の実行タイミングに関する予約条件とが対応付けられた予約対応情報に基づいて、前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを予約する予約処理部を備える。
【0007】
本発明に係る混注制御プログラムは、調製データに基づいて第1容器内の薬品を第2容器に注入する混注処理を実行する混注装置を制御する混注制御装置が備えるプロセッサーに、前記調製データに含まれる特定情報の内容と、前記混注処理の実行タイミングに関する予約条件とが対応付けられた予約対応情報に基づいて、前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを予約するステップと、前記実行タイミングに基づいて前記混注装置による前記混注処理を実行させるステップと、を実行させるための混注制御プログラムである。
【0008】
本発明に係る混注システムは、入力される調製データに基づいて作業者によって実行されるべき混注作業の内容を表示する混注支援装置に前記調製データを入力可能な入力装置と、調製データに含まれ得る第1器材の情報と、第1容器内の薬品を第2容器に注入する混注処理を実行する混注装置で使用可能な第2器材の情報との対応関係を示す器材変換情報に基づいて、調製データにおける前記第1器材の情報を前記第2器材の情報に変換した変換調製データを生成する変換処理部と、前記変換処理部で生成された前記変換調製データに基づいて前記混注処理を実行する混注装置と、を備える。
【0009】
本発明に係る混注装置は、注射器を操作可能な操作部と、前記注射器の注射針の先端が薬品容器内に穿刺され当該注射針の先端が水平方向よりも上方向に向けられた状態で、前記操作部を制御して前記注射器のプランジャを引く第1工程と前記操作部を制御して前記注射器のプランジャを押す第2工程とを含む薬品吸引工程を複数回実行する置換処理部と、前記第1工程における前記プランジャの引き速度を前記薬品容器内の薬品の粘度に応じて変更する第1変更処理部と、前記第1工程の実行後から前記第2工程が開始されるまでの待ち時間を前記薬品容器内の薬品の粘度に応じて変更する第2変更処理部と、を備える。
【0010】
本発明に係る混注装置は、薬品容器を変位可能に保持する第1駆動部と、注射器を変位可能に保持する第2駆動部と、前記注射器の注射針が前記薬品容器内に穿刺された状態で、前記第1駆動部及び前記第2駆動部を制御して前記注射器及び前記薬品容器を変位させ、前記薬品容器内の薬品を攪拌する攪拌工程を実行する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、混注処理の実行タイミングを予約するためのユーザー操作を軽減することが可能な混注制御装置及び混注制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る混注システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る混注装置の外観構成を示す斜視図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る混注装置の収容ユニットの一部を省略した状態の斜視図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る混注装置の主扉及び前壁の一部を取り外した状態の正面図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る混注装置で使用されるトレイを示す斜視図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る混注装置を下方から見た斜視図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る混注装置の第1ロボットアームの保持部を示す斜視図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る混注装置の第2ロボットアームの保持部を示す斜視図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る混注装置のトレイ搬送部を示す平面模式図である。
図10図10は、本発明の実施形態に係る混注装置のトレイ搬送部の機構を示す斜視図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る混注装置の収容ユニットの構成を示す図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理における表示画面の一例を示す図である。
図14図14は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理における表示画面の一例を示す図である。
図15図15は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理で用いられるデータの一例を示す図である。
図16図16は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注管理処理で用いられるデータの一例を示す図である。
図17図17は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される混注制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図18図18は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される薬品吸引工程の一例を示す模式図である。
図19図19は、本発明の実施形態に係る混注制御装置で実行される薬品吸引工程の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0014】
[混注システム2]
図1に示されるように、本実施形態に係る混注システム2は、混注装置1、上位システム600、混注支援装置610、及びプリンタ506などを含む。混注装置1、上位システム600、混注支援装置610、及びプリンタ506などは、無線又は有線で通信可能に接続される。
【0015】
[混注装置1]
図1及び図2に示されるように、本実施形態に係る混注装置1は、混注制御装置100、薬品装填部200、混注処理部300、収容ユニット700を備える。前記混注装置1は、病院などの医療施設に設置される。そして、前記混注装置1では、前記混注制御装置100により調製データに基づいて前記混注処理部300及び前記収容ユニット700の動作が制御されることによって、注射器で調製データに示された抗がん剤などの薬品を既定量の薬品が収容された一又は複数の第1容器から輸液バッグなどの第2容器に注入する混注処理が実行される。
【0016】
[混注制御装置100]
図1を参照しつつ前記混注制御装置100の概略構成について説明する。
【0017】
前記混注制御装置100は、通信可能に接続された第1制御部400及び第2制御部500を備える。前記第1制御部400は、前記薬品装填部200側に設けられ、前記第2制御部500は、前記混注処理部300側に設けられる。また、前記第2制御部500には、モノクロプリンタ、カラープリンタ、又はラベルプリンタなどのプリンタ506が接続され、当該プリンタ506は、紙又はラベルなどへの各種情報の印刷に用いられる。
【0018】
本実施形態で説明する前記第1制御部400及び前記第2制御部500各々の処理分担は一例に過ぎず、前記混注制御装置100で実行される各処理は前記第1制御部400及び前記第2制御部500のいずれかによって実行されればよい。また、他の実施形態として、前記混注制御装置100が、一つの制御部であること、又は三つ以上の制御部を有することも考えられる。なお、前記第1制御部400及び前記第2制御部500で実行される処理の一部又は全部が、ASIC又はDSPなどの電子回路により実行されてもよい。
【0019】
前記第1制御部400は、前記混注装置1に調製データを入力する電子カルテシステム又は調剤管理システムなどの上位システム600との間で通信可能である。前記調製データは、処方データに基づいて生成される調製用のデータ又は前記処方データそのものである。
【0020】
前記処方データには、処方箋交付年月日、患者ID、患者名、患者生年月日、薬品情報(薬品コード、薬品名、用量など)、剤形情報(内服、外用など)、用法情報(1日3回毎食後など)、診療種別(外来、入院など)、診療科、病棟、及び病室などが含まれる。前記調製データには、調製ID、患者情報(患者ID、患者名など)、医師情報、薬品情報、薬品の処方量、薬品容器の種類(薬液入りアンプル、薬液入りバイアル瓶、又は粉薬入りバイアル瓶など)、調製内容情報(混注処理に使用する薬品容器、注射器、注射針の種類及び本数等)、調製手順情報(作業内容、溶解薬、溶媒、溶解薬量、溶媒量、抜取量)、調製日、処方箋区分、投薬日、診療科、病棟、所要時間などが含まれる。
【0021】
前記第1制御部400は、CPU401、ROM402、RAM403、データ記憶部404、及び操作部405などを備えるコンピュータである。また、前記第1制御部400には、前記薬品装填部200に設けられるタッチパネルモニタ203、バーコードリーダ204、空気清浄装置205、及びICリーダ207などの各種の電気部品が接続されている。
【0022】
前記CPU401は、各種の制御プログラムに従って処理を実行するプロセッサーである。前記ROM402は、前記CPU401により実行されるBIOS等のプログラムが予め記憶された不揮発性メモリである。前記RAM403は、前記CPU401による各種の制御プログラムの展開及びデータの一時記憶に用いられる揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。
【0023】
前記データ記憶部404は、前記CPU401に各種の処理を実行させるための各種のアプリケーションプログラム及び各種のデータを記憶するハードディスク等の不揮発性の記憶装置である。具体的に、前記データ記憶部404には、前記CPU401に後述の混注管理処理を実行させるための第1混注制御プログラムが記憶される。また、前記データ記憶部404には、前記上位システム600から入力される前記調製データが記憶される。
【0024】
前記第1制御部400は、前記上位システム600から入力された前記調製データと共に、前記調製データごとに対応する後述のトレイ101の識別情報を前記データ記憶部404に記憶する。例えば、前記調製データと前記トレイ101の識別情報との対応付けは前記第1制御部400によって行われる。また、前記調製データと前記トレイ101の識別情報との対応関係を示す情報が、前記調製データと共に前記上位システム600から前記混注装置1に入力されてもよい。
【0025】
前記データ記憶部404には、医薬品マスター、患者マスター、医師マスター、処方箋区分マスター、診療科マスター、及び病棟マスターなどの各種データベースが記憶される。前記医薬品マスターには、薬品コード、薬品名、JANコード(又はRSS)、薬瓶コード、区分(剤形:散薬(粉薬)、錠剤、水剤、外用薬など)、比重、粘度、薬品種(普通薬、抗がん剤、毒薬、麻薬、劇薬、抗精神薬、治療薬など)、配合変化、賦形薬品、注意事項、薬品容器の種別(アンプル、バイアル瓶)、薬品容器単位の薬品の収容量(既定量)、薬品容器の容器形状情報、及び薬品容器の重量などの情報が含まれる。また、前記医薬品マスターでは、残薬利用する薬品には残薬保存対象薬品である旨が予め登録されており、前記第1制御部400は、前記残薬保存対象薬品として登録された薬品の前記薬品容器10を残薬として使用する対象と判断することが考えられる。
【0026】
また、前記データ記憶部404には、残薬情報D30、対応情報D31、予約対応情報D32が記憶される。前記残薬情報D30及び前記対応情報D31は、前記第1制御部400及び前記第2制御部500によって更新される。なお、前記残薬情報D30及び前記対応情報D31の更新には、データの新規登録、修正、削除などが含まれる。前記予約対応情報D32は、ユーザー操作に応じて、前記第1制御部400又は前記第2制御部500によって設定又は更新される。
【0027】
図15(A)に示されるように、前記残薬情報D30では、前記調製データの識別情報である「調製No.」と、当該調製データに基づく混注処理で残った薬品の「薬品名」、「残量」、「開封日時」、「使用期限」、「使用予定調製データ」、「穿刺回数」などが対応付けられている。前記使用予定調製データは、残薬を使用する予定の調製データを識別するための識別情報である。なお、前記残薬情報D30には、前記残薬が収容された前記薬品容器10が載置される後述の載置棚33における位置情報等の他の情報も含まれる。なお、前記残薬が混合薬品である場合、前記残薬情報D30には、前記混合薬品の成分(薬品名、溶媒名)、溶媒量、残量、開封日時、使用期限、使用予定調製データ情報、及び穿刺回数などの各種の情報が含まれる。
【0028】
図15(B)に示されるように、前記対応情報D31では、前記調製データの識別情報である「調製No.」と、前記トレイ101の識別情報「トレイID」と、前記トレイ101の収容先の前記トレイ収容部811の識別情報「収容部No.」とが対応付けられている。また、前記対応情報D31では、前記調製データ各々に、当該調製データに基づく混注処理で使用される薬品の「薬品名」、「使用量」、「既定量」、「残薬利用有無」、「薬品装填有無」、「実行タイミング」などの情報も対応付けられている。なお、図15(B)に示される前記対応情報D31では、前記調製データ各々が、先に混注処理が実行される順で上位から表示されている。
【0029】
図16(A)に示されるように、前記予約対応情報D32では、参照項目D321と、当該参照項目D321に対応する予約条件D322とが対応付けられている。
【0030】
前記参照項目D321は、予約対象となる前記調製データに含まれる各種の情報のうち当該調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを予約する際に参照される情報の内容を示す。例えば、前記参照項目D321は、病棟、病室、療法、薬品名、診療種別、又は患者IDなどである。以下、本実施形態では、図16(A)に示されるように、前記参照項目D321の内容が前記調製データに対応する患者の病棟の情報である場合を例に挙げて説明する。
【0031】
前記予約条件D322は、前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを設定するために用いられる情報である。具体的に、前記予約条件D322は、予約時間帯、予約日付、又は予約曜日などである。以下、本実施形態では、図16(A)に示されるように、前記予約条件D322の内容が前記予約時間帯である場合を例に挙げて説明する。
【0032】
より具体的に、図16(A)に示される前記予約対応情報D32では、病棟が「病棟A」である場合には予約時間帯が「9時以前」であり、病棟が「病棟B」である場合には予約時間帯が「9時~10時」であることが定められている。即ち、前記予約対応情報D32では、病棟Aに入院する患者に対応する前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングは9時以前であり、病棟Bに入院する患者に対応する前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングは9時~10時の間であるべきである旨が定められている。
【0033】
前記操作部405は、前記第1制御部400における各種のユーザー操作を受け付けるキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの各種の操作部を含む。
【0034】
前記第2制御部500は、CPU501、ROM502、RAM503、データ記憶部504、操作部505などを備えるコンピュータである。前記第2制御部500には、前記混注処理部300に設けられた第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、トレイ搬送部110、タッチパネルモニタ14、ICリーダ101c、ICリーダ15a、トレイ確認カメラ41、注射器確認カメラ42などの各種の電気部品が接続されている。
【0035】
前記CPU501は、各種の制御プログラムに従って処理を実行するプロセッサーである。前記ROM502は、前記CPU501により実行されるBIOS等のプログラムが予め記憶された不揮発性メモリである。前記RAM503は、前記CPU501による各種の制御プログラムの展開及びデータの一時記憶に用いられる揮発性メモリ又は不揮発性メモリである。
【0036】
前記データ記憶部504は、前記CPU501に各種の処理を実行させるための各種のアプリケーションプログラム及び各種のデータを記憶するハードディスク等である。具体的に、前記データ記憶部504には、前記CPU501に後述の混注制御処理などを実行させるための第2混注制御プログラムが記憶される。また、前記データ記憶部504にも、前記データ記憶部404と同様の前記医薬品マスターが記憶されており、前記第2制御部500は前記医薬品マスターを参照可能である。他の実施形態としては、前記第2制御部500が、前記第1制御部400から前記医薬品マスターの情報を取得可能な構成であってもよい。
【0037】
前記操作部505は、前記第2制御部500における各種のユーザー操作を受け付けるキーボード、マウス、又はタッチパネルなどの各種の操作部を含む。
【0038】
[薬品装填部200]
次に、図2及び図3を参照しつつ、前記薬品装填部200の概略構成について説明する。なお、図3は、前記薬品装填部200の内部構成の要部を示す図であり、前記収容ユニット700の記載は省略されている。
【0039】
図2及び図3に示されるように、前記薬品装填部200は、扉201、作業テーブル202、タッチパネルモニタ203、バーコードリーダ204、空気清浄装置205、及びトレイ排出口206などを備えるクリーンベンチである。なお、前記薬品装填部200と前記混注処理部300とは、前記混注処理部300の側面に形成されたトレイ装填口114(図6参照)及びトレイ排出口701(図11参照)で連通している。
【0040】
前記扉201は、前記薬品装填部200の前面に設けられており、鉛直上下方向に開閉可能な透明な部材である。ユーザーは、図2に示されるように、前記扉201を少し開いて手を前記薬品装填部200内に入れた状態で、前記混注装置1により実行される混注処理の準備作業を行う。具体的に、前記作業テーブル202上に載置されるトレイ101には、図5に示されるように、前記混注装置1で実行される混注処理で使用する薬品容器10(第1容器の一例)、注射器11、及び輸液バッグ12(第2容器の一例)などが収容される。なお、前記輸液バッグ12には、当該輸液バッグ12の種別に対応する既定量の生理用食塩水、ブドウ糖、又は高カロリー輸液などの輸液が収容されている。また、前記薬品容器10に収容されている薬品は、例えば抗がん剤であるが、抗がん剤以外の薬品であってもよい。前記準備作業には、例えば前記トレイ101の所定の位置に前記薬品容器10、前記注射器11、及び前記輸液バッグ12を載置させ、前記トレイ101を前記収容ユニット700に装填する装填作業が含まれる。本実施形態では、前記薬品容器10がバイアル瓶である場合を例に挙げて説明する。一方、前記薬品容器10はアンプルなどの他の形状の薬品容器であってもよい。
【0041】
前記作業テーブル202は、前記混注装置1により実行される混注処理の準備作業を行うために用いられ、前記作業テーブル202には、前記タッチパネルモニタ203、前記バーコードリーダ204、及び前記トレイ101などが載置される。また、前記作業テーブル202の前面には、前記収容ユニット700から排出される前記トレイ101を取り出す際に開閉される前記トレイ排出口206が設けられている。また、前記作業テーブル202内には、前記作業テーブル202に載置された前記トレイ101のICタグ101bから情報を読み取ることが可能な前記ICリーダ207が設けられている。なお、前記ICリーダ207による読取結果は前記第1制御部400に入力される。
【0042】
前記タッチパネルモニタ203は、前記第1制御部400からの制御指示に応じて各種の情報を表示させる液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示部と、ユーザーのタッチ操作を受け付けるタッチパネルなどの操作部とを含む。
【0043】
前記バーコードリーダ204は、処方箋又は調製指示書などに記載されたバーコードを読み取って、前記バーコードの内容を前記第1制御部400に入力する。前記空気清浄装置205は、前記薬品装填部200内に所定のフィルターを通じて空気を供給する。
【0044】
図5に示されるように、前記トレイ101は、患者名(患者識別情報)、レジメン名(レジメン識別情報)、及び施用などが文字表示される電子ペーパー101aと、各種の情報が読み書き可能なRFID(Radio Frequency Identification)タグのようなICタグ101bとを有する。前記ICタグ101bは、前記トレイ101の底面に設けられており、前記ICタグ101bは、前記トレイ101を識別するための識別情報が記憶される記録媒体である。
【0045】
前記トレイ101は、前記薬品容器10及び前記注射器11(シリンジ11a、注射針11c)が載置される器材載置部102と、前記輸液バッグ12を保持する輸液バッグ保持部103とを有する。前記器材載置部102及び前記輸液バッグ保持部103は、前記トレイ101に対して個別に着脱可能である。前記器材載置部102には、注射針11cなどを傾斜した状態で支持する支持部102Aが設けられている。
【0046】
前記薬品容器10及び前記注射器11は、図5に示されるように、前記器材載置部102に傾倒した状態でセットされる。前記注射器11は、シリンジ11a及び注射針11cが分離した状態である。なお、ここで説明する前記器材載置部102内の配置形態は例示であり、これに限定されるものではない。
【0047】
前記輸液バッグ保持部103には、図5に示されるように、前記輸液バッグ12の混注口(首部)を固定するためのチャック部140が設けられている。前記準備作業では、ユーザーが前記輸液バッグ12を前記チャック部140で保持させた状態で前記輸液バッグ保持部103にセットする。また、前記輸液バッグ保持部103には、前記輸液バッグ保持部103を昇降させる際に使用される係合穴部103aが設けられている。
【0048】
そして、前記トレイ101は、ユーザーにより前記薬品容器10、前記注射器11及び前記輸液バッグ12などの器材がセットされた後、前記収容ユニット700に装填される。後述するように、前記収容ユニット700には複数の前記トレイ101が収容可能であり、前記収容ユニット700から必要に応じて前記トレイ101が前記トレイ排出口701及び前記トレイ装填口114を通じて前記混注処理部300に自動的に供給される。その後、前記トレイ101は、前記混注処理部300における前記混注処理の終了後、前記輸液バッグ12が収容された状態で、前記混注処理部300のトレイ排出口15から排出され、又は、前記収容ユニット700を介して前記薬品装填部200の前記トレイ排出口206から排出される。
【0049】
[混注処理部300]
続いて、前記混注処理部300の概略構成について説明する。
【0050】
図2図4に示されるように、前記混注処理部300の前面には、主扉301、注射器取出扉302、ゴミ収容室扉13、タッチパネルモニタ14、及びトレイ排出口15などが設けられている。
【0051】
前記主扉301は、例えば前記混注処理部300に設けられた混注処理室104内の清掃、又は前記薬品容器10の取り出しなどの目的で、前記混注処理室104内にアクセスするために開閉される。前記混注装置1では、薬品が注入された前記輸液バッグ12を払い出す他に、薬品が充填された状態で前記注射器11を払い出すことも可能であり、前記注射器取出扉302は、前記混注処理室104から前記注射器11を取り出す際に用いられる。
【0052】
前記ゴミ収容室扉13は、前記混注処理室104における混注処理で使用された後の前記薬品容器10及び前記注射器11などの廃棄物が収容されるゴミ収容室13aから前記廃棄物を除去するために開閉される。また、前記トレイ排出口15は、前記混注処理室104における前記混注処理の実行後の前記輸液バッグ12が載置された前記トレイ101を取り出すために開閉される。
【0053】
前記タッチパネルモニタ14は、前記第2制御部500からの制御指示に応じて各種の情報を表示させる液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイなどの表示部と、ユーザーのタッチ操作を受け付けるタッチパネルなどの操作部とを含む。
【0054】
[混注処理室104]
図3及び図4に示されるように、前記混注処理室104には、第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22、攪拌装置32、載置棚33、薬品読取部34、秤量計35、針曲り検知部36、混注連通口37、針挿入確認透明窓38、及びゴミ蓋132aなどが設けられている。また、図6に示されるように、前記混注処理室104の天井には、トレイ確認カメラ41、注射器確認カメラ42、注射針着脱装置43、針挿入確認カメラ44、殺菌灯45などが設けられている。
【0055】
[第1ロボットアーム21、第2ロボットアーム22]
前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22は、多関節構造を有する駆動部であり、前記混注処理室104の天井側に基端部を固定して垂下状に設けられている。なお、前記第1ロボットアーム21が本発明に係る第1駆動部の一例であり、前記第2ロボットアーム22が本発明に係る第2駆動部の一例である。
【0056】
例えば、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の関節はそれぞれ5軸~8軸である。そして、前記混注装置1では、双腕型の前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により混注処理における各作業工程が実行される。
【0057】
具体的に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の各関節に設けられた駆動モーターを個別に駆動させ、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22に前記混注処理における各作業を実行させる。なお、前記混注処理部300は、前記混注処理を実行することができる構造であれば、例えば1本のロボットアームを有する構成、3本以上のロボットアームを含む構成、又はロボットアームを用いない構成であってもよい。
【0058】
図6に示されるように、前記第1ロボットアーム21は、前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材を変位可能に保持することが可能な保持部25を備え、前記保持部25を予め定められた可動範囲内において任意の位置に移動させることが可能である。前記第2ロボットアーム22は、前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材を変位可能に保持することが可能な保持部26を備え、前記薬品容器10及び前記注射器11などを予め定められた可動範囲内において任意の位置に移動させることが可能である。また、前記保持部26は、前記注射器11による吸引及び注入の操作を実行することが可能な操作部である。
【0059】
図7に示されるように、前記第1ロボットアーム21の前記保持部25は、一対の把持爪25aと、モーター251と、前記モーター251によって回転される2本のねじシャフト252、253と、前記ねじシャフト252、253に螺合されたナットブロック254、255とを備える。
【0060】
前記一対の把持爪25aは、前記薬品容器10の保持に適した凹部を有する把持部である。前記一対の把持爪25aは、前記ナットブロック254、255にそれぞれ固定されている。そして、前記ねじシャフト252、253の回転によって前記ナットブロック254、255が移動し、前記一対の把持爪25aが相互に近接及び離間して前記保持部25で前記薬品容器10等を保持し又はその保持を解放する。前記保持部25は、前記一対の把持爪25aによって、注射針11c又は前記注射器11を保持することも可能である。
【0061】
図8に示されるように、前記第2ロボットアーム22の前記保持部26は、注射器保持部261、プランジャ保持部262及び移動部263を備える。前記注射器保持部261は、前記注射器11のシリンジ11aを保持する一対の把持爪261aを備える。前記一対の把持爪261aは、前記保持部25で用いられている駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間して前記注射器11の前記シリンジ11aを保持及び解放する把持部である。また、前記一対の把持爪261aにおいては、互いに対向する対向面に、前記把持爪261aの上端面から前記対向面へ向けて下り傾斜する傾斜部261bが形成されている。
【0062】
前記プランジャ保持部262は、前記注射器11のプランジャ11bの鍔部を保持する一対の把持爪262aを備えている。前記一対の把持爪262aは、前記保持部25で用いられている駆動機構と同様の機構により、相互に近接及び離間して前記注射器11の前記プランジャ11bの鍔部を保持及び解放する把持部である。前記把持爪262a各々の上面には把持爪262bが固定されている。前記把持爪262b各々は、前記一対の把持爪262aを近接及び離間させることで近接及び離間し、前記注射器11だけではなく前記薬品容器10などの他の器材を把持する把持部である。なお、前記一対の把持爪262aの対向側の上面には前記プランジャ11bの鍔部が入り込むための凹部が形成されている。また、前記一対の把持爪262bの先端は前記一対の把持爪262aよりも前方に突出しており、前記一対の把持爪262bによる前記薬品容器10などの器材の把持が容易である。なお、前記把持爪262bは前記把持爪261aに設けられていてもよい。
【0063】
前記移動部263は、前記プランジャ保持部262を前記注射器11のプランジャ11bの移動方向に移動させることが可能である。前記移動部263は、例えば、モーター、前記モーターによって回転されるねじシャフト、前記ねじシャフトに螺合されたナットブロック、ガイド等の駆動機構により前記プランジャ11bを移動させる。前記プランジャ保持部262は、前記ナットブロックに固定されており、前記ナットブロックの移動によって移動する。
【0064】
[トレイ搬送部110]
また、前記混注処理部300には、図6における右側端部の前記トレイ装填口114と左側端部のトレイ搬送終端部110aとの間で前記トレイ101を往復搬送可能なトレイ搬送部110が設けられている。
【0065】
ここに、図9は、前記トレイ搬送部110における前記トレイ101の搬送経路の一例を示す平面模式図である。図9に示されるように、前記トレイ搬送部110は、前記トレイ101を、前記混注処理室104の下方であって前記ゴミ蓋132aの下に位置する前記ゴミ収容室13aの後方側を通過させて搬送するように設けられている。
【0066】
なお、図9では、前記トレイ搬送部110の搬送経路を示すために、前記トレイ搬送部110内を移動する前記トレイ101を二点鎖線で示しており、前記トレイ搬送部110内に同時に複数の前記トレイ101が存在するわけではない。また、前記トレイ搬送部110が、前記トレイ搬送部110内において前記トレイ装填口114と前記トレイ搬送終端部110aとの間で、複数の前記トレイ101を同時に搬送可能な構成であってもよい。
【0067】
前記トレイ搬送部110の前記トレイ搬送開始部110bには、前記トレイ装填口114から挿入される前記トレイ101を内部に引き込み、又は前記トレイ装填口114から前記トレイ101を排出することが可能な不図示のベルトコンベアーが設けられている。また、前記トレイ搬送部110には、前記トレイ101の前記輸液バッグ保持部103に設けられた前記ICタグ101bから情報を読み取り可能なICリーダ101c及びICリーダ15aが設けられている。例えば、前記ICリーダ101c及び前記ICリーダ15aは、RFIDタグから情報を読み取るRFIDリーダである。前記ICリーダ101cは、前記トレイ装填口114から前記トレイ101が装填されるトレイ搬送開始部110bに設けられる。また、前記ICリーダ15aは、前記トレイ101が前記トレイ排出口15から排出される前記トレイ搬送終端部110aに設けられる。
【0068】
そして、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ装填口114から前記トレイ搬送開始部110bに挿入されたことを不図示のセンサ出力に基づいて判断すると、前記ICリーダ101cにより前記ICタグ101bから情報を読み取る。また、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送終端部110aに挿入されたことを不図示のセンサ出力に基づいて判断すると、前記ICリーダ15aにより前記ICタグ101bから情報を読み取る。同様に、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送開始部110bから前記トレイ装填口114を介して前記収容ユニット700に向けて搬送される際にも、前記ICリーダ101cにより前記ICタグ101bから情報を読み取ることが可能である。そして、前記第2制御部500は、前記ICリーダ101c及び前記ICリーダ15aによる読取結果に応じて前記トレイ101の適否などを判断するトレイ照合処理などを実行する。
【0069】
また、前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ装填口114を通って前記トレイ搬送部110内の所定位置に達したことを、例えばセンサ(不図示)の出力に基づいて判断すると、前記トレイ搬送部110及び前記混注処理室104を連通及び遮蔽させるシャッター111を水平方向にスライドさせて開放する。前記シャッター111が開けられると、前記器材載置部102が前記混注処理室104内に露出される。図9では、前記器材載置部102が前記混注処理室104内に露出された状態が示されている。
【0070】
前記トレイ搬送部110には、前記トレイ装填口114を通って前記トレイ搬送部110内に移動された前記トレイ101における前記器材載置部102を昇降させるトレイ昇降部112が設けられている。図10に示されているように、前記トレイ昇降部112は、例えば昇降可能に設けられた4本のシャフト112aの上下方向の駆動により、前記器材載置部102を下から上方に持ち上げる。
【0071】
そして、前記第2制御部500は、前記トレイ昇降部112によって前記器材載置部102を上昇させた後、前記トレイ確認カメラ41による撮影を行う。前記トレイ確認カメラ41は、予め定められた前記器材載置部102に載置された前記薬品容器10及び前記注射器11等を上方から撮影する。前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41の撮影画像を用いて画像認識処理を実行し、前記調製データで示されている数の前記薬品容器10及び前記注射器11(シリンジ11a及び注射針11c)などが前記器材載置部102上に存在しているかどうか等の判断を行う。
【0072】
また、図10に示されるように、前記混注処理室104の左側空間に位置する前記トレイ搬送終端部11・BR>Oaには、前記輸液バッグ保持部103を昇降させるバッグ昇降部113が設けられている。前記第2制御部500は、前記トレイ101を前記バッグ昇降部113の前まで搬送させた後、前記バッグ昇降部113のフック部113aを前記係合穴部103aに下から引っかける。そして、前記第2制御部500は、前記フック部113aが形成された円弧ギア部113bをモーター113cで回転駆動させることにより、前記輸液バッグ保持部103を上昇させ、前記輸液バッグ12の混注口を前記混注連通口37に位置させる。また、前記第2制御部500は、前記モーター113cを制御することにより、前記バッグ昇降部113を駆動させて前記輸液バッグ保持部103を傾斜させ、前記輸液バッグ12の混注口を上向き又は下向きにすることができる。
【0073】
また、図6に示されるように、前記トレイ搬送終端部110aの上方には、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12を照明するドーム型ライト120及び輸液用カメラ121が設けられている。前記輸液用カメラ121は、前記ドーム型ライト120内の中心部に設けられ、前記輸液バッグ12の表面に付されているバーコードを読み取る。
【0074】
[攪拌装置32]
前記攪拌装置32は、当該攪拌装置32にセットされる一又は複数の前記薬品容器10を揺動させることにより当該薬品容器10内の薬品を攪拌する。
【0075】
[載置棚33]
図4に示されるように、前記載置棚33は、前記混注装置1において実行される混注処理において前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材を仮置きするために用いられる。また、前記載置棚33には、前記混注処理で使用された薬品が残った前記薬品容器10の保存にも用いられる。前記載置棚33は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22の双方がアクセス可能な位置に設けられている。
【0076】
前記載置棚33には、前記混注処理で使用される前記器材が載置される器材載置領域と、前記混注処理で使用された薬品が残った前記薬品容器10を載置するための残薬載置領域とが設けられている。そして、前記残薬載置領域には、予め設定された一又は複数の前記薬品容器10が載置可能である。
【0077】
[薬品読取部34]
前記薬品読取部34は、前記薬品容器10に貼付されたラベルに記載されたバーコードを読み取る。前記バーコードは、前記薬品容器10に収容された薬品の識別情報を示す。具体的に、前記薬品読取部34は、前記薬品容器10を周方向に回転させながら、当該薬品容器10に貼付されたラベルから前記バーコードを読み取ることが可能である。
【0078】
[秤量計35]
前記秤量計35は、前記混注装置1において実行される混注処理において前記注射器11の重量を測定するために用いられ、前記秤量計35による測定結果は前記第2制御部500に入力される。なお、前記秤量計35は、前記第2ロボットアーム22の可動範囲内に配置されており、前記第2ロボットアーム22により載置された前記注射器11の重量を測定する。
【0079】
[混注連通口37]
前記混注連通口37は、図3に示されるように、前記混注処理室104の側壁における外側に突出するドーム状箇所に形成されており、且つ前記ドーム状箇所には上下方向に前記輸液バッグ12の混注口を通すための切欠きが形成されている。そのため、前記輸液バッグ保持部103が上昇すると、前記輸液バッグ12の混注口が前記混注処理室104内に位置することになる。これにより、前記第2ロボットアーム22で保持された前記注射器11の注射針11cが前記輸液バッグ12の混注口に挿通可能となる。
【0080】
[収容ユニット700]
続いて、図11を参照しつつ、前記収容ユニット700について説明する。なお、以下では、図11に示す上下左右の方向を用いて説明することがある。
【0081】
前記収容ユニット700は、トレイ搬入部712、昇降ユニット800などを備え、前記混注制御装置100によって制御される。前記トレイ搬入部712及び前記昇降ユニット800は、前記作業テーブル202の後方に配置されている。前記収容ユニット700には、複数の前記トレイ101が収容可能であり、前記混注制御装置100は、任意の前記トレイ101を前記収容ユニット700から前記混注処理部300に搬出することが可能である。なお、前記収容ユニット700の具体的構成については、同様の機能を達成することができれば、ここで説明する構成に限らない。
【0082】
前記トレイ搬入部712は、前記収容ユニット700内の前記昇降ユニット800に前記トレイ101を装填するために開閉される。ユーザーは、前記作業テーブル202上で前記トレイ101を後方側にスライド移動させることにより、前記トレイ101を前記昇降ユニット800内に装填することが可能である。
【0083】
前記昇降ユニット800は、上下方向に昇降可能に支持された移動筐体810、及び、前記移動筐体810内において上下方向に配置された複数段のトレイ収容部811などを備える。前記移動筐体810は、例えば前記収容ユニット700の筐体内面に形成されたレール部(不図示)によって上下方向にスライド可能に支持されている。前記移動筐体810は、少なくとも最上段の前記トレイ収容部811が前記トレイ搬入部712よりも上方に位置する状態と、最下段の前記トレイ収容部811が前記トレイ搬入部712よりも下方に位置する状態との間で昇降可能である。
【0084】
また、前記収容ユニット700は、前記トレイ収容部811各々に装填された前記トレイ101を当該トレイ収容部811から前記トレイ排出口701を介して前記混注処理部300に搬送可能な搬送機構(不図示)を備える。さらに、前記搬送機構(不図示)は、前記混注処理部300から供給される前記トレイ101を前記収容部811各々に搬送可能である。即ち、前記混注装置1では、前記トレイ収容部811から前記混注処理部300に前記トレイ101を搬送することが可能であり、前記混注処理の実行後の前記トレイ101を前記トレイ収容部811に収容することが可能である。
【0085】
[混注処理]
次に、前記混注装置1において、前記混注制御装置100によって前記混注処理部300が制御されることによって実行される混注処理の処理手順の一例について説明する。
【0086】
前記混注処理では、以下に説明するように、前記第2制御部500が、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22などを制御することにより、前記調製データに基づいて一又は複数の前記薬品容器10から前記注射器11で薬品を吸引すると共に前記注射器11から前記輸液バッグ12などの他の容器に前記薬品を注入する。
【0087】
ここでは、前記薬品容器10に収容された薬品が溶解の必要のある粉薬のような薬品であり、その薬品を輸液と混合してから前記輸液バッグ12に注入する際の混注処理について説明する。また、ここでは前記トレイ101が前記収容ユニット700から前記混注処理部300に供給された後の処理について説明する。
【0088】
前記第2制御部500は、前記トレイ101が前記トレイ搬送部110に供給されると、前記ICリーダ101cによって前記トレイ101の前記ICタグ101bから前記トレイ101の識別情報を読み取る。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ101の識別情報が、当該混注処理の前記調製データに予め対応付けられた識別情報に一致する場合、前記シャッター111を開く。その後、前記第2制御部500は、前記トレイ101の前記器材載置部102を、前記トレイ搬送部110の前記トレイ昇降部112により上昇させて前記混注処理室104に露出させる。
【0089】
次に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102を前記トレイ確認カメラ41により撮影する。そして、前記第2制御部500は、前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理によって、前記器材載置部102に載置された前記薬品容器10及び前記注射器11などの器材の位置や向きを把握する。特に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102から前記薬品容器10又は前記注射器11を取り出す度に、前記トレイ確認カメラ41で前記器材載置部102を撮影し、その撮影画像から最新の前記薬品容器10及び前記注射器11の位置や向きを把握する。
【0090】
続いて、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記混注処理室104内に露出された前記器材載置部102に載置された前記注射器11を前記載置棚33に仮置きする。また、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記器材載置部102に載置された前記薬品容器10を前記薬品読取部34にセットする。そして、前記第2制御部500は、前記薬品読取部34により、前記薬品容器10に収容された薬品の種類などの情報を読み取る。
【0091】
次に、前記第2制御部500は、前記器材載置部102上の全ての器材を取り出すと、前記トレイ搬送部110の前記トレイ昇降部112により前記器材載置部102を下降させて前記トレイ101に戻す。なお、前記第2制御部500は、前記器材載置部102上の器材が全て取り出されたか否かを前記トレイ確認カメラ41による撮影画像に基づく画像認識処理により確認する。
【0092】
その後、前記第2制御部500は、前記シャッター111を閉めて、前記トレイ搬送部110により前記トレイ101を前記トレイ搬送終端部110aに搬送させる。次に、前記第2制御部500は、前記トレイ搬送部110の前記バッグ昇降部113により前記トレイ101の前記輸液バッグ保持部103で保持されている前記輸液バッグ12の混注口を前記混注処理室104に形成された混注連通口37に位置させる。
【0093】
そして、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記薬品読取部34にセットされた前記薬品容器10を前記載置棚33に移動させる。一方、この移動処理と並行して、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記器材載置部102に載置された前記注射器11の前記注射針11cを前記注射針着脱装置43にセットする。
【0094】
次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置棚33から前記注射器11を取り出し、前記第2ロボットアーム22にセットする。続いて、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて前記注射器11に前記注射針11cをセットさせる。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11を前記針曲り検知部36に移動させ、前記注射針11cの曲りの有無を検出する。なお、前記注射針11cが前記注射器11のシリンジ11aに装着された状態で前記トレイ101にセットされることも考えられる。この場合には、前記注射器11に前記注射針11cにセットする工程は省略される。
【0095】
続いて、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の混注口のゴム栓に前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記輸液バッグ12から前記調製データで示された輸液量の輸液を吸引する輸液吸引工程を実行する。なお、前記輸液吸引工程では、前記トレイ101に載置されていた前記輸液バッグ12ではなく、複数の患者についての複数の前記混注処理で共通して用いるために前記混注装置1に予め装填されている溶解用輸液バッグなどの溶解用輸液容器から輸液が吸引されてもよい。一方、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記載置棚33に載置されている前記薬品容器10を取り出す。
【0096】
そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記薬品容器10と前記注射器11とをそれぞれ接近させて、前記注射器11の前記注射針11cを前記薬品容器10に穿刺する。その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22によって前記プランジャ11bを操作することにより、前記注射器11内の前記輸液を前記薬品容器10内に注入する輸液注入工程を実行する。このように、前記薬品が粉薬である場合には、前記混注処理において、前記注射器11で前記輸液バッグ12から輸液を抜き取る前記輸液吸引工程と、前記注射器11から前記薬品容器10に前記輸液を注入する輸液注入工程とが実行される。これにより、前記薬品容器10内の薬品が前記輸液で溶解されて薬液となる。このとき、前記注射器11及び前記薬品容器10の姿勢は、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直下方向に向けられ、前記薬品容器10の口部が鉛直上方向に向けられた状態である。
【0097】
次に、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記薬品容器10を前記攪拌装置32にセットし、当該攪拌装置32を用いて前記薬品容器10内の薬品及び輸液を攪拌する攪拌工程を実行する。前記攪拌工程における攪拌時間は、例えば前記薬品の種別によって予め定められている。また、前記攪拌時間は、前記薬品及び前記輸液の組み合わせごとに予め定められていてもよく、前記薬品容器10内の薬品量によって変更されてもよい。前記攪拌装置32による攪拌工程が終了すると、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21により、前記攪拌装置32から前記薬品容器10を取り出す。
【0098】
そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11の前記注射針11cを前記薬品容器10に穿刺し、前記第2ロボットアーム22によって前記プランジャ11bを操作することにより、前記薬品容器10内の薬品を前記注射器11で吸引する薬品吸引工程を実行する。このとき、前記注射器11及び前記薬品容器10の姿勢は、前記薬品容器10の口部が鉛直下方向に向けられ、前記注射器11の前記注射針11cが鉛直上方向に向けられた状態である。なお、前記注射器11及び前記薬品容器10の姿勢は、少なくとも前記注射器11の注射針11cの先端が水平方向よりも上方向に向けられ、前記薬品容器10の口部が水平方向よりも下方向に向けられた状態であればよい。
【0099】
その後、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により、前記トレイ搬送終端部110aに搬送された前記輸液バッグ12の混注口のゴム栓に前記注射器11の前記注射針11cを穿刺して、前記注射器11内の薬品を前記輸液バッグ12に注入する薬品注入工程を実行する。このように、前記混注処理では、前記薬品容器10から前記注射器11で前記薬品が吸引される前記薬品吸引工程、及び前記注射器11から前記輸液バッグ12に前記薬品が注入される前記薬品注入工程が実行される。
【0100】
また、前記第2制御部500は、前記ゴミ蓋132aを開き、前記第1ロボットアーム21により前記薬品容器10を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。さらに、前記第2制御部500は、前記第2ロボットアーム22により前記注射器11を前記注射針着脱装置43に移動させて、前記注射器11を前記ゴミ収容室13a内に落下させて廃棄する。また、前記ゴミ収容室13aなどに、前記薬品容器10又は前記注射器11などの廃棄物の通過を検出可能な光学式センサが設けられていてもよい。そして、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21又は前記第2ロボットアーム22を制御し、前記薬品容器10又は前記注射器11などの廃棄物を落下させる動作を実行させた後、当該廃棄物が前記ゴミ収容室13aに収容されたことを前記光学式センサによる検出結果に応じて判断してもよい。
【0101】
なお、前記薬品容器10に収容された薬品が溶解の必要のない薬液のような薬品であることも考えられる。この場合の前記混注処理は、前記輸液吸引工程、前記輸液注入工程、及び前記攪拌工程が実行されない点を除いて、前記薬品容器10に収容された薬品が溶解の必要のある粉薬のような薬品である場合の前記混注処理と同様であるため説明を省略する。また、前記薬品容器10に収容された薬品が液体である場合でも前記薬品の種類によっては前記攪拌工程が実行されてもよい。
【0102】
以下、図12図17を参照しつつ、前記混注装置1において、前記混注制御装置100によって実行される混注管理処理及び混注制御処理の手順の一例について説明する。
【0103】
[混注管理処理]
まず、図12を参照しつつ、前記第1制御部400によって実行される前記混注管理処理の一例について説明する。
【0104】
<ステップS20>
ステップS20において、前記第1制御部400は、ユーザーによる前記タッチパネルモニタ203を用いた装填準備開始操作を待ち受ける(S20:No)。具体的に、前記第1制御部400は、前記混注装置1に入力されている前記調製データの一覧を示す処方選択画面M1を前記タッチパネルモニタ203に表示させる。そして、処方選択画面M1において、ユーザーにより処理対象となる前記調製データが選択されると、前記装填準備開始操作が行われたと判断し(S20:Yes)、処理がステップS21に移行する。なお、以下では、ここで選択された処理対象の調製データを対象調製データと称することがある。
【0105】
ここに、図13は、前記処方選択画面M1の一例を示す図である。図13に示される前記処方選択画面M1には、前記選択候補を絞り込むための検索条件の入力欄が配置された検索条件表示部D1、及び前記選択候補の前記調製データが並べて配置された処方表示部D2などが含まれる。前記検索条件表示部D1には、前記検索条件に従って前記調製データの選択候補を絞り込む抽出処理を開始させるための抽出キーD11が配置されている。
【0106】
前記混注装置1における混注処理の対象となる前記調製データの選択候補が複数存在する場合、前記処方選択画面M1では、選択候補の前記調製データが予め設定されたソート条件に従って並べられた状態で表示される。前記ソート条件は、例えば、前記混注装置1による調製日時、投与日時、処方箋区分、及び調製データの発行日時のいずれか一つ又は複数の組み合わせによって定められたものである。
【0107】
また、前記第1制御部400は、バーコードリーダ204によって、処方箋又は調製指示書などに記載されたバーコードから、前記調製データを識別可能な「調製No.」などの識別情報が読み取られた場合に、当該調製データを前記対象調製データとして前記装填準備開始操作が行われたと判断してもよい。
【0108】
<ステップS21>
ステップS21において、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行要求が行われたか否かを判定する。ここで、前記実行要求が行われたと判定されると(S21:Yes)、処理がステップS22に移行し、前記実行要求が行われるまでの間は(S21:No)、処理がステップS21で待機する。
【0109】
具体的に、前記ステップS21において、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行を指示するための実行指示画面P10を前記タッチパネルモニタ203に表示させる。ここに、図14は、前記実行指示画面P10の一例を示す図である。
【0110】
図14では、前記実行指示画面P10が、前記トレイ101への器材の装填を支援するための装填チェック画面M11上にポップアップ表示されている。なお、前記装填チェック画面M11には、前記対象調製データに含まれる診療科、診療種別、病棟などの各種の情報が表示される表示領域A11と、前記対象調製データに基づく前記混注処理で必要な前記薬品容器10及び前記輸液バッグ12などの器材が表示される表示領域A12とが含まれる。
【0111】
そして、図14に示されるように、前記実行指示画面P10では、前記対象調製データに関する情報として、例えば患者を識別するための患者ID及び患者名と、前記対象調製データを識別するための管理番号と、当該対象調製データに基づく混注処理の所要時間とが表示される。なお、前記混注処理の所要時間は、前記対象調製データで指示される調製内容(レジメン)ごとに前記データ記憶部404に記憶されている。また、前記データ記憶部404に前記所要時間を算出するための演算情報が記憶されており、前記第1制御部400が、当該演算情報に基づいて前記混注処理の所要時間を算出してもよい。
【0112】
前記実行指示画面P10では、前記対象調製データの予約手法の選択操作を受け付けるための操作キーK11~K13、前記対象調製データの予約の実行操作を受け付けるための操作キーK14、及び残薬の利用の可否の設定を受け付けるための操作キーK15などが表示されている。
【0113】
そして、前記第1制御部400は、前記操作キーK14の操作が行われると、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行要求が行われたと判定する(S21:Yes)。
【0114】
また、前記操作キーK11は、前記対象調製データに基づく混注処理を、当該対象調製データが入力された順で実行させる時間指定無し予約を予約手法として選択するための操作キーである。
【0115】
前記操作キーK12は、前記対象調製データに基づく混注処理を、ユーザー操作によって予め設定される実行タイミングに基づいて実行させる時間指定有り予約を予約手法として選択するための操作キーである。なお、前記実行タイミングの設定は、前記混注処理の完了予定時期を示す調製終了時刻の入力、又は、前記混注処理の開始予定時期を示す開始予定時刻の入力などによって行われる。より具体的に、前記操作キーK12が選択された場合、前記実行指示画面P10では、当該対象調製データに基づく混注処理を実行する日時が設定可能である。例えば、図14に示された前記実行指示画面P10は、8月22日の19時00分までに前記混注処理が終了する旨の時間指定有り予約の設定が行われる状態である。
【0116】
また、前記実行指示画面P10において、時間指定有り予約が行われる場合には、前記混注処理の完了予定時期に対する余裕時間も設定可能である。前記余裕時間は、前記完了予定時期の設定後に前記混注処理の実行タイミングを早める場合などにおける変更可能範囲を示している。前記余裕時間は、前記医薬品マスターにおいて薬品ごとに設定された時間、又は前記実行指示画面P10においてユーザー操作に応じて入力される時間である。例えば、前記完了予定時期が19時00分であり、余裕時間が30分である場合、前記混注処理の実行タイミングは、前記完了予定時期の30分前の18時30分以降であって19時00分以前に前記混注処理が完了する範囲で変更可能である。
【0117】
そして、前記対象調製データについて前記時間指定有り予約が行われた場合、前記第1制御部400は、前記時間指定有り予約で設定された前記完了予定時期に当該対象調製データに基づく混注処理が終了するように前記実行タイミングを設定する。なお、前記第1制御部400は、前記トレイ収容部811の数と同じ予め設定された最大予約数以下の前記調製データの予約を設定可能である。例えば、前記完了予定時期から前記混注処理の所要時間を引いた時間が前記実行タイミングとして設定され、複数の前記混注処理の実行時間が重複する場合には、一又は複数の前記混注処理の実行タイミングを早めることにより複数の前記混注処理の実行時間が重複しないように前記実行タイミングを設定する。
【0118】
前記操作キーK13は、前記対象調製データに基づく混注処理について、予め設定された自動予約条件に基づいて自動的に予約する自動予約処理を予約手法として選択するための操作キーである。
【0119】
前記操作キーK15は、前記対象調製データに基づく前記混注処理における残薬の利用の可否の設定を受け付けるための操作部である。そして、前記第1制御部400は、前記操作キーK15により残薬の利用の可否によって残薬の利用の有無を制御する。さらに、前記第1制御部400は、前記対象調製データに対応する患者の情報に基づいて、前記対象調製データに基づく前記混注処理における残薬の利用の可否を自動判定することも考えられる。具体的に、前記第1制御部400は、前記対象調製データのうち入院患者に対応する調製データについては、前記混注処理における残薬の利用を許可し、前記対象調製データのうち外来患者に対応する調製データについては、前記混注処理における残薬の利用を許可しないことが考えられる。また、これとは逆に、前記対象調製データのうち外来患者に対応する調製データについては、前記混注処理における残薬の利用が許可され、前記対象調製データのうち入院患者に対応する調製データについては、前記混注処理における残薬の利用が許可されないことも考えられる。
【0120】
<ステップS22>
ステップS22において、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを前記自動予約条件に基づいて予約する自動予約処理を実行するか否かを判定する。具体的に、前記第1制御部400は、前記実行指示画面P10において、前記操作キーK13の操作状態に応じて前記自動予約処理の実行の有無を判定する。ここで、前記自動予約処理を実行しないと判定されると(S22:No)、処理がステップS221に移行し、前記自動予約処理を実行すると判定されると(S22:Yes)、処理がステップS222に移行する。
【0121】
また、前記実行指示画面P10において前記操作キーK11~K13の表示が省略されており、前記ステップS21において前記混注処理の実行要求が行われたと判定された場合に、前記第1制御部400が前記ステップS222を実行してもよい。この場合、前記ステップS21における前記実行指示画面P10の表示が省略され、前記ステップS20における前記装填準備開始操作が前記実行要求として受け付けられてもよい。例えば、前記第1制御部400は、バーコードリーダ204によって、処方箋又は調製指示書などに記載されたバーコードから、前記対象調製データを識別可能な「調製No.」などの識別情報が読み取られた場合に、当該対象調製データについての前記混注処理の実行要求が行われたと判断し(S22:Yes)、処理をステップS222に移行させる。即ち、前記第1制御部400は、前記実行指示画面P10における前記操作キーK13の選択操作を要することなく、自動的に前記自動予約処理を実行することになる。これにより、ユーザーは、前記実行指示画面P10で前記操作キーK13を操作する手間を省略することが可能であり、作業を効率的に行うことが可能である。
【0122】
<ステップS221>
ステップS221において、前記第1制御部400は、前記実行指示画面P10に入力された予約条件に基づいて、前記対象調製データの実行タイミングを設定するための予約設定処理を実行し、前記対応情報D31を更新した後、処理をステップS23に移行させる。
【0123】
例えば、前記操作キーK11が操作され、前記時間指定無し予約が選択されている場合、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理を、実行指示が行われた順で実行するように前記対応情報D31を更新する。即ち、前記混注装置1で前記混注処理が実行中でない場合には、前記対象調製データに基づく前記混注処理が開始されることになる。また、前記混注装置1で前記混注処理が実行中である場合には、当該混注処理の終了後に、他の前記調製データに基づく前記混注処理が待機中でない場合に、前記対象調製データに基づく前記混注処理が開始されることになる。一方、前記操作キーK12が操作され、前記時間指定有り予約が選択されている場合、前記第1制御部400は、前記対象調製データに含まれる調製日と、前記終了予定時期又は前記開始予定時期とに基づいて、前記混注処理の実行タイミングが重複しないように前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングなどを設定し、前記対応情報D31を更新する。
【0124】
<ステップS222>
ステップS222において、前記第1制御部400は、前記自動予約処理を実行し、前記対応情報D31を更新した後、処理をステップS23に移行させる。ここに、前記自動予約処理を実行するときの前記第1制御部400が本発明に係る予約処理部の一例である。
【0125】
具体的に、前記自動予約処理において、前記第1制御部400は、前記予約対応情報D32を前記データ記憶部404から読み出す。そして、前記第1制御部400は、前記予約対応情報D32と、前記対象調製データに含まれる特定情報の内容とに基づいて、当該対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを予約する。例えば、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理に関する情報(「薬品名」、「使用量」、「既定量」、「残薬利用有無」、「薬品装填有無」、「実行タイミング」などの情報)を前記対応情報D31に新規に追加する。なお、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理に関する情報の新規の追加に伴って、他の調製データに基づく前記混注処理に関する情報に影響がある場合には、その情報も更新する。具体的に、前記第1制御部400は、複数の前記調製データに基づく前記混注処理の実行時間が重複する場合には、既に予約されており前記対応情報D31に登録されている一又は複数の前記調製データについて、当該調製データに基づく前記混注処理の実行時間が重複しないように実行タイミングを変更することが考えられる。例えば、前記第1制御部400は、複数の前記調製データに基づく前記混注処理の実行時間が重複する場合には、既に予約されて前記対応情報D31に登録されている一又は複数の前記調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを前後にずらすことが考えられる。これにより、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを当該対象調製データの内容に応じて登録するためのユーザー操作の手間が省略される。
【0126】
例えば、図16(A)に示される前記予約対応情報D32に基づいて前記自動予約処理が実行される場合、患者の病棟が「病棟A」であれば、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングは、前記対象調製データに含まれる調製日における「9時以前」の条件を満たすように設定される。同様に、患者の病棟が「病棟B」であれば、前記対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングは、前記対象調製データに含まれる調製日における「9時~10時」の条件を満たすように設定される。前記調製日は、前記実行指示画面P10においてユーザー操作によって指定されてもよい。
【0127】
なお、本実施形態では、前記予約対応情報D32における前記参照項目D321が「病棟」であり、前記予約条件D322が「予約時間帯」である場合について説明する。一方、図16(B)又は図16(C)に示されるように、前記参照項目D321は、「診療種別」、「処方区分」などの他の項目の情報であってもよい。例えば、図16(B)では、「外来」及び「入院」などの診療種別ごとに「予約時間帯」が設定されている。同様に、図16(C)では、「定期」及び「臨時」などの処方区分ごとに「予約時間帯」が設定されている。
【0128】
さらに、前記参照項目D321が異なる複数の前記予約対応情報D32が前記データ記憶部404に記憶されており、当該予約対応情報D32ごとに予め優先順位が設定されていてもよい。この場合、前記第1制御部400は、前記対象調製データと前記予約対応情報D32と前記優先順位とに基づいて、前記対象調製データに含まれる各種の情報のうち前記優先順位が高い前記参照項目D321の情報に対応する前記予約対応情報D32を特定し、当該予約対応情報D32に基づいて前記自動予約処理を実行してもよい。
【0129】
なお、前記第1制御部400は、前記自動予約処理において、前記対象調製データに含まれる前記特定情報の内容に対応する前記予約時間帯が、前記予約対応情報D32に設定されていない場合には、当該対象調製データについては前記ステップS221における前記時間指定無し予約と同様に当該対象調製データに基づく前記混注処理の実行タイミングを設定してもよい。
【0130】
また、前記第1制御部400は、前記自動予約処理において、前記対象調製データに基づく前記混注処理を予約する際には、前記残薬情報D30に含まれる残薬の使用期限に基づいて当該対象調製データについての予約を実行してもよい。具体的に、前記第1制御部400は、前記残薬情報D30に含まれる残薬の使用期限又は当該使用期限から所定時間経過後までの間に当該残薬を使用することができるように前記対象調製データについての予約を実行する。例えば、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理において残薬が使用可能である場合には、当該残薬の使用期限が経過するまでの間に当該混注処理が終了するように、当該対象調製データに基づく前記混注処理の実行順番又は実行タイミングなどを設定する。また、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理において残薬が使用可能である場合には、当該残薬の使用期限が経過するまでの残り時間が所定時間以上となるように、当該対象調製データに基づく前記混注処理の実行順番又は実行タイミングなどを設定してもよい。
【0131】
<ステップS23>
ステップS23において、前記第1制御部400は、前記対象調製データに基づく前記混注処理に必要な前記薬品容器10、前記注射器11、前記輸液バッグ12などを前記トレイ101にセットする作業を支援するための器材準備支援処理を実行する。
【0132】
例えば、ステップS23において、前記第1制御部400は、前記輸液バッグ12及び前記薬品容器10に付されているGS1データバーなどの識別情報の読み取りを指示するためのメッセージ及び画像などを含む前記装填チェック画面M11を前記タッチパネルモニタ203に表示する。具体的に、前記装填チェック画面M11には、前記対象調製データに含まれる前記輸液バッグ12の種類、前記注射器11の種類、及び前記薬品容器10の種類などが表示される。
【0133】
そして、前記第1制御部400は、前記バーコードリーダ204によって前記輸液バッグ12及び前記薬品容器10の識別情報が読み取られ、前記対象調製データとの照合結果が一致すると、処理をステップS24に移行させる。なお、前記第1制御部400は、前記輸液バッグ12又は前記薬品容器10の識別情報と前記対象調製データとの照合結果が一致しない場合には、前記タッチパネルモニタ203にエラーメッセージ等を表示させる。また、前記ステップS23において、前記第1制御部400は、前記ICリーダ207を用いて、前記作業テーブル202に現在載置されている前記トレイ101のICタグ101bから当該トレイ101の識別情報を、当該対象調製データに対応する前記トレイ101を識別するための情報として読み取る処理も実行する。
【0134】
<ステップS24>
ステップS24において、前記第1制御部400は、前記対象調製データについての装填準備が完了した旨の確認操作の有無を判断する。具体的に、前記第1制御部400は、前記確認操作を受け付けるための操作キーなどを前記タッチパネルモニタ203に表示し、前記操作キーが操作された場合に前記確認操作が行われたと判断する。ここで、前記確認操作が行われた場合は(S24:Yes)、処理をステップS25に移行させ、前記確認操作が行われるまでの間は(S24:No)、処理をステップS24で待機させる。
【0135】
<ステップS25>
ステップS25において、前記第1制御部400は、前記収容ユニット700の前記トレイ搬入部712を開放させる。具体的に、前記第1制御部400は、前記第2制御部500に対して、前記トレイ搬入部712の開放指示を送信する。これにより、前記第2制御部500は、前記収容ユニット700を制御して前記トレイ搬入部712を開放させ、ユーザーは、前記トレイ101を前記トレイ収容部811に収容することが可能である。
【0136】
なお、前記第2制御部500は、前記トレイ搬入部712を開放する前に、前記対応情報D31に基づいて、未使用の前記トレイ収容部811が前記トレイ101を収容することが可能な位置に配置されるように前記移動筐体810の位置を制御する。具体的に、前記トレイ101に対応する前記トレイ収容部811として前記対応情報D31に記憶されていない前記トレイ収容部811が未使用であると判断される。なお、前記第2制御部500は、前記トレイ収容部811への前記トレイ101の装填時、及び前記トレイ収容部811からの前記トレイ101の排出時などに、前記対応情報D31を編集する。
【0137】
<ステップS26>
そして、ステップS26において、前記第1制御部400は、前記収容ユニット700の前記トレイ収容部811に前記トレイ101が収容されると、前記対象調製データと前記トレイ101の識別情報と前記トレイ収容部811とを対応付ける処理を実行する。具体的に、前記第1制御部400は、前記対象調製データと、前記トレイ101の識別情報と、前記トレイ収容部811との対応関係を前記対応情報D31に記録する。これにより、前記第1制御部400及び前記第2制御部500は、前記対応情報D31に基づいて、前記対象調製データ、前記トレイ101の識別情報、及び前記トレイ収容部811の対応関係を認識することが可能である。
【0138】
例えば、前記第1制御部400は、前記ステップS23が実行される際に、前記作業テーブル202に設けられた前記ICリーダ207を用いて、前記作業テーブル202に載置された前記トレイ101の前記ICタグ101bから前記トレイ101の識別情報を読み取る。そして、前記ステップS26において、前記第1制御部400は、前記ICタグ101bから読み取られていた前記識別情報を、処理対象として選択された前記対象調製データに対応する前記トレイ101の識別情報として前記データ記憶部404の前記対応情報D31に記憶する。また、前記対応情報D31では、前記調製データ各々に対応する前記トレイ101に当該調製データに基づく混注処理で残薬を使用するか否かを示す残薬利用情報が記憶されてもよい。
【0139】
なお、前記調製データと前記トレイ101との対応関係、前記調製データ又は前記トレイ101と前記トレイ収容部811との対応関係、前記調製データと前記残薬利用情報との対応関係が、それぞれ個別のデータベースで管理されてもよい。また、前記調製データと前記トレイ101との対応関係が前記第1制御部400のデータ記憶部404に記憶され、前記調製データ又は前記トレイ101と前記トレイ収容部811との対応関係が前記第2制御部500のデータ記憶部504に記憶されていてもよい。
【0140】
なお、前記対象調製データに基づく前記混注処理において必要な前記薬品容器10、前記注射器11、前記輸液バッグ12などの器材が一つの前記トレイ101に載置できない場合には、前記第1制御部400は、処理対象として選択された前記対象調製データと複数の前記トレイ101とを対応付けて対応情報D31に記憶する処理を実行してもよい。そして、前記対象調製データに基づく前記混注処理では、複数の前記トレイ101から供給される前記薬品容器10などの器材が用いられる。
【0141】
<ステップS27>
ステップS27において、前記第1制御部400は、前記対象調製データを前記第2制御部500に送信する。なお、前記第1制御部400は、前記対象調製データそのものに限らず、前記対象調製データに基づいて前記混注処理部300に混注処理を実行させるための混注制御データを生成し、前記混注制御データを前記第2制御部500に送信するものであってもよい。また、前記対象調製データを識別可能な調製データ識別情報が前記第2制御部500に送信されて、当該第2制御部500によって前記調製データ識別情報に対応する前記対象調製データが前記データ記憶部404から読み出されることも考えられる。
【0142】
[混注制御処理]
続いて、図17を参照しつつ、前記第2制御部500によって実行される前記混注制御処理の手順の一例について説明する。
【0143】
<ステップS50>
ステップS50において、前記第2制御部500は、前記対応情報D31に登録されている調製データのいずれかについて前記混注処理の実行タイミングが到来したか否かを判断する。そして、前記実行タイミングが到来したと判断すると(S50:Yes)、処理がステップS51に移行し、前記実行タイミングが到来していなければ(S50:No)、処理がステップS50で待機する。
【0144】
具体的に、前記第1制御部400は、前記対応情報D31に登録されている予約済の前記調製データのうち前記混注処理の実行タイミングが到来した前記調製データについての前記混注処理の実行開始要求を前記第2制御部500に送信することが考えられる。この場合、前記第2制御部500は、前記実行開始要求を受信した場合に、前記実行タイミングが到来したと判断する。以下、前記ステップS50で前記混注処理の実行タイミングが到来したと判定された前記調製データを実行調製データと称することがある。
【0145】
<ステップS510>
次に、ステップS510において、前記第2制御部500は、前記実行調製データに基づく前記混注処理において、当該実行調製データに対応して前記混注装置1に装填された前記薬品容器10を用いた場合に、当該薬品容器10に残薬が発生するか否かを判断する。ここで、前記第2制御部500は、前記薬品容器10に残薬が生じると判断した場合は(S51:Yes)、処理をステップS51に移行させ、前記薬品容器10に残薬が生じないと判断した場合は(S51:No)、処理をステップS52に移行させる。
【0146】
<ステップS51>
ステップS51において、前記第2制御部500は、前記実行調製データに基づく前記混注処理において、過去に実行された前記混注処理で残存した残薬を使用するか否かを判断する。ここで、前記第2制御部500は、前記残薬を使用すると判断すると(S51のYes側)、処理をステップS53に移行させ、前記残薬を使用しないと判断すると(S51のNo側)、処理をステップS52に移行させる。
【0147】
具体的に、前記第2制御部500は、前記残薬情報D30及び前記対応情報D31に基づいて、前記実行調製データに基づく前記混注処理における残薬利用の有無を判断する。例えば、前記第2制御部500は、前記対応情報D31において前記実行調製データについて残薬利用が有りに設定され、且つ前記残薬情報D30の内容が予め設定された使用条件を満たす場合に前記実行調製データに基づく前記混注処理で残薬を利用すると判断する。前記使用条件は、例えば前記残薬情報D30に記憶された前記残薬の使用期限が経過していないこと、前記残薬の開封日時から所定時間が経過していないこと、又は前記薬品容器10への注射針11cの穿刺回数が上限回数に達していないこと等である。
【0148】
<ステップS52>
ステップS52において、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から入力された前記実行調製データに基づいて前記混注処理部300を制御することにより、当該実行調製データに対応する前記トレイ101に載置されていた前記薬品容器10から前記輸液バッグ12に薬品を注入する通常の前記混注処理を実行させる。
【0149】
具体的に、ステップS52において、前記第2制御部500は、前記収容ユニット700を制御し、前記実行タイミングが到来した前記実行調製データに対応付けられている前記トレイ101を前記収容ユニット700の前記トレイ収容部811から前記混注処理部300に供給する。そして、前記混注処理において、前記第2制御部500は、前記実行調製データに示された薬品を前記トレイ101に載置された一又は複数の前記薬品容器10から前記注射器11によって吸引し、前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入する。
【0150】
<ステップS53>
一方、ステップS53において、前記第2制御部500は、前記第1制御部400から入力された前記実行調製データ、前記残薬情報D30、及び前記対応情報D31に基づいて前記混注処理部300を制御することにより、前記残薬を使用して前記輸液バッグ12に薬品を注入する例外的な前記混注処理を実行する。即ち、前記第2制御部500は、処理対象の調製データ各々に基づく混注処理において、当該調製データとは異なる他の調製データに基づく混注処理で残る前記薬品容器10内の薬品を前記混注処理部300に使用させることが可能である。従って、例えば混注処理後に薬品が前記薬品容器10に残存する場合に、当該薬品が有効に利用され、当該薬品の無駄が抑制される。
【0151】
具体的に、ステップS53において、前記第2制御部500は、前記収容ユニット700を制御し、前記実行タイミングが到来した前記実行調製データに対応付けられている前記トレイ101を前記収容ユニット700の前記トレイ収容部811から前記混注処理部300に供給する。そして、前記混注処理において、前記第2制御部500は、前記実行調製データに示された薬品を前記載置棚33に載置されている前記薬品容器10から前記注射器11によって吸引し、前記注射器11から前記輸液バッグ12に注入する。なお、前記実行調製データに基づく前記混注処理では、前記載置棚33に残薬として保存されている前記薬品容器10と共に、前記トレイ101に載置された一又は複数の前記薬品容器10が用いられることもある。
【0152】
<ステップS54>
前記混注処理が終了すると、ステップS54において、前記第2制御部500は、前記薬品容器10に薬品が残存したか否かを判断する。前記ステップS54における残薬の発生の有無の判断処理は、前記ステップS510と同様の処理であってもよいが、前記第2制御部500が前記混注処理の結果に基づいて判断してもよい。ここで、前記第2制御部500は、前記薬品が残存したと判断すると(S54のYes側)、処理をステップS55に移行させ、前記薬品が残存しなかったと判断すると(S54のNo側)、処理をステップS541に移行させる。
【0153】
<ステップS55>
ステップS55において、前記第2制御部500は、前記薬品容器10を残薬として前記載置棚33に保存するか否かを判定する判定処理を実行する。具体的に、前記第2制御部500は、予め設定された保存条件を満たす場合に、前記薬品容器10を残薬として保存すると判定する。前記保存条件には、予め設定される一又は複数の判定条件が含まれる。例えば、前記判定条件は、前記薬品容器10が前記薬品容器10であること、前記薬品容器10が前記医薬品マスターにおいて残薬保存対象薬品として登録されていること、前記薬品容器10内の残薬の残量が予め設定された最小残量以上であること、前記薬品容器10の識別情報が前記バーコードリーダ34bによって正常に読み取られたこと、前記薬品容器10の穿刺回数が上限回数以内であること、又は前記薬品容器10の使用期限が経過していないこと等である。なお、前記保存条件として複数の前記判定条件が設定されている場合には、当該判定条件の全てを満たす場合に前記保存条件を満たすと判定される。
【0154】
<ステップS56>
ステップS56において、前記第2制御部500は、前記薬品容器10内の薬品を再度利用可能な状態で前記混注処理室104内に保存する。より具体的に、前記第2制御部500は、前記混注処理部300の前記第1ロボットアーム21を制御することにより、前記薬品容器10を再度利用可能な状態で前記載置棚33に載置させる。即ち、前記混注処理部300は、前記実行調製データに基づく前記混注処理で薬品が残った前記薬品容器10を残薬容器として前記混注装置1内に保存し、当該残薬容器内の薬品を他の前記調製データに基づく前記混注処理で使用することが可能である。また、前記第2制御部500は、前記残薬情報D30に登録されている各種の情報を必要に応じて更新する。
【0155】
<ステップS541>
一方、前記薬品容器10に薬品が残存していない場合、前記第2制御部500は、ステップS541において、前記第1ロボットアーム21により前記薬品容器10を前記ゴミ収容室13aに廃棄する。即ち、基本的に、前記薬品容器10内の薬品を使い切っていない場合は前記薬品容器10が前記載置棚33に戻され、前記薬品容器10内の薬品が使い切られた場合は前記薬品容器10が廃棄される。
【0156】
[他の機能]
以下、前記混注システム2が備える各種の機能又は前記混注システム2の他の実施形態などについて説明する。
【0157】
[調製変換機能]
前述したように、前記上位システム600は、前記処方データに基づいて前記調製データを生成し、当該調製データを前記混注装置1に入力する。また、図1に示されるように、前記上位システム600には、薬剤師などの作業者による手作業で前記注射器11を用いて前記薬品容器10から薬品を吸引して前記輸液バッグ12に注入する混注作業を支援する混注支援装置610が接続されることがある。そして、前記混注支援装置610では、入力される調製データに基づいて前記作業者によって実行されるべき混注作業の内容が表示される。例えば、前記混注作業の内容として、前記混注作業に含まれる各手順が実行順に表示される。これにより、前記作業者は、前記混注支援装置610による表示内容を見ながら前記混注作業を行うことが可能である。
【0158】
そして、前記上位システム600は、前記調製データを前記混注装置1及び前記混注支援装置610に入力する。また、前記上位システム600は、前記調製データを予め設定された振分条件に基づいて前記混注装置1又は前記混注支援装置610のいずれか一方に入力してもよい。さらに、前記上位システム600は、前記調製データの送信先をユーザーによる選択操作に応じて切り替えてもよい。なお、前記上位システム600が、本発明に係る入力装置の一例であり、前記混注装置1、前記混注支援装置610、及び前記上位システム600を含むシステムが本発明に係る混注システムの一例である。
【0159】
ところで、前記上位システム600で生成される前記調製データが前記混注装置1に適さない場合がある。例えば、前記混注装置1では、前記トレイ101に前記薬品容器10、前記注射器11、前記輸液バッグ12などの各種の器材が載置された状態で、当該トレイ101が前記混注装置1に装填される。ここで、前記トレイ101に載置可能な前記輸液バッグ12の数が一つであって、前記調製データに示された前記輸液バッグ12の数が二つ以上であることが考えられる。この場合には、二つ以上の前記輸液バッグ12を前記トレイ101に載置することができないため、前記調製データは前記混注装置1に適さない。また、前記調製データに示される前記薬品容器10が割れやすいガラス製のアンプルである場合も、当該調製データは前記混注装置1に適さない。
【0160】
そこで、前記上位システム600は、前記調製データを前記混注装置1に送信する場合には、前記調製データの内容が前記混注装置1に適した内容となるように当該調製データを変換し、変換後の調製データ(以下、「変換調製データ」と称する)を前記混注装置1に送信するデータ変換機能を備えることが考えられる。
【0161】
具体的に、前記上位システム600は、CPU、RAM、及びROMなどを含む制御部601、及びハードディスクドライブ等の記憶部602などを備える。そして、前記制御部601は、前記記憶部602に記憶されているデータ変換プログラムに従って、前記調製データを前記変換調製データに変換する調製変換処理を実行することにより、前記調製変換機能を具現する。なお、前記調製変換処理を実行するときの前記制御部601が本発明に係る変換処理部の一例である。
【0162】
具体的に、前記記憶部602には、前記調製データに含まれ得る第1器材の情報と、前記混注装置で使用可能な第2器材の情報との対応関係を示す器材変換情報が記憶されている。前記第2器材は、前記第1器材に代えて用いることが可能な器材として予め設定されたものである。
【0163】
具体的に、前記器材変換情報では、前記調製データに含まれ得る特定サイズの前記輸液バッグ12の情報と、当該輸液バッグ12に代えて用いることが可能な一又は複数の前記薬品容器10の情報とが対応付けられている。例えば、前記特定サイズの前記輸液バッグ12(第1器材)を、当該輸液バッグ12と同等の輸液が収容された3本の前記薬品容器10(第2器材)に置き換え可能である場合には、前記器材変換情報において、前記輸液バッグ12の情報と当該3本の前記薬品容器10の情報とが対応付けられている。また、前記器材変換情報では、前記調製データに前記薬品容器10の情報として含まれ得るガラス製のアンプル(第1器材)の情報と、当該薬品容器10に代えて用いることが可能なプラスチック製のアンプル(第2器材)の情報とが対応付けられている。
【0164】
そして、前記制御部601は、前記上位システム600から前記混注支援装置610に入力する際には、前記調製データをそのまま入力し、又は前記調製データを前記器材変換情報とは異なる他の情報などに基づいて編集した調製データを入力する。一方、前記制御部601は、前記上位システム600から前記混注装置1に前記調製データを入力する際には、前記器材変換情報に基づいて、当該調製データにおける前記第1器材の情報を前記第2器材の情報に変換することにより変換調製データを生成する。即ち、前記制御部601は、前記混注装置1に入力される前の調製データに基づいて前記変換調製データを生成する。具体的に、前記制御部601は、前記器材変換情報に基づいて、前記調製データにおける前記第1器材の情報を、前記混注支援装置610に入力されるときの当該調製データにおける前記第1器材の情報とは異なる前記第2器材の情報に変換することが可能である。その後、前記制御部601は、前記混注装置1に前記変換調製データを入力する。これにより、前記混注装置1では、前記調製データではなく前記変換調製データに基づいて前記混注処理を実行することが可能になり、前記混注装置1及び前記混注支援装置610を含む前記混注システムでは、前記混注装置1で実行可能な前記混注処理を増加させることが可能となる。
【0165】
なお、前記調製データが前記器材変換情報に基づいて変換の必要のないデータである場合、前記制御部601は、当該調製データを前記変換調製データに変換せずにそのまま前記混注装置1に送信する。また、前記制御部601は、前記混注装置1から前記調製データの送信要求を受信した場合に、当該調製データに基づいて前記変換調製データを生成して当該変換調製データを前記混注装置1に送信してもよい。
【0166】
さらに、前記調製データから前記変換調製データへの変換は、前記混注装置1の前記第1制御部400等の他の制御主体によって実行されてもよい。具体的には、前記制御部601によって前記調製データが前記混注装置1に入力され、前記第1制御部400が、当該混注装置1に入力された後の当該調製データ及び前記器材変換情報に基づいて前記変換調製データを生成してもよい。これにより、前記混注装置1では、前記第1制御部400で生成された前記変換調製データに基づいて前記混注処理が実行される。この場合、前記第1制御部400が本発明に係る変換処理部の一例である。
【0167】
[薬品吸引工程の一例]
前述したように、前記混注装置1で実行される前記混注処理において、前記第2制御部500は、前記注射器11により前記薬品容器10から薬品を吸引する前記薬品吸引工程を実行する。なお、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記注射器11の注射針11cが前記薬品容器10に穿刺され当該注射針11cの先端が水平方向よりも上方向に向けられた状態で前記薬品吸引工程を実行する。前記注射針11cの前記薬品容器10への穿刺は、当該注射針11cの先端が水平方向よりも下方向に向けられた状態で行われてもよい。
【0168】
ところで、前記第2制御部500は、前記薬品吸引工程において、前記保持部26を制御して前記プランジャ11bを引いて前記薬品容器10から薬品を吸引する第1工程と、前記保持部26を制御して前記プランジャ11bを押して前記シリンジ11a内の空気を前記注射器11から前記薬品容器10に注入する第2工程とを複数回実行することがある。これにより、前記薬品容器10内の薬品と前記シリンジ11a内の空気とが徐々に置換されることになるため、前記注射器11内が陽圧になり過ぎる状態、及び、前記薬品容器10内が負圧になり過ぎる状態が回避される。ここに、前記薬品吸引工程を実行するときの前記第2制御部500が本発明に係る置換処理部の一例である。
【0169】
具体的に、図18(A)に示されるように、最初に前記第1工程が実行される際には、前記シリンジ11a内に空気が入った状態である。そして、前記第1工程では、前記注射針11cが前記薬品容器10に穿刺され、前記プランジャ11bが引かれることにより、図18(B)に示されるように、前記薬品容器10内の薬品が前記シリンジ11aに注入される。続いて、前記第2工程では、前記プランジャ11bが押されることにより、図18(C)に示されるように、前記シリンジ11a内の空気が前記薬品容器10内に注入される。
【0170】
そして、その後も同様に、前記第1工程では、前記プランジャ11bが引かれることにより、図18(D)に示されるように、前記薬品容器10内の薬品が前記シリンジ11aに更に注入される。同じく、前記第2工程では、前記プランジャ11bが押されることにより、前記プランジャ11bが押されることにより、前記シリンジ11a内の空気が前記薬品容器10内に注入される。
【0171】
このように、前記薬品吸引工程では、前記第1工程及び前記第2工程が繰り返し実行されることにより、前記薬品容器10内の薬品が徐々に前記シリンジ11a内に移動し、当該シリンジ11a内の空気が徐々に前記薬品容器10内に移動する。なお、他の実施形態としては、図18(C)に示されるように前記プランジャ11bが引かれて前記薬品容器10内の薬品が前記シリンジ11a内に吸引された後、図18(D)のような前記シリンジ11a内の空気を前記薬品容器10に注入する行程を経ることなく、前記注射針11cが前記薬品容器10から抜かれてもよい。この場合には、前記薬品容器10内が陰圧になるため、当該薬品容器10の口部が下方に向けられた状態で当該薬品容器10から前記注射針11cが抜かれる際の液漏れが抑止される。
【0172】
ところで、前記第1工程が終了してから前記第2工程が実行されるまでの待ち時間が短すぎると、前記第1工程の実行後、図18(E)に示されるように前記シリンジ11a内に取り込まれる薬品が下方に移動するまでの間に、前記第2工程が実行されて薬品が前記薬品容器10に戻るという問題が生じることがある。特に、このような問題は、前記薬品容器10内の薬品の粘度が高い場合に顕著に現れる。
【0173】
これに対し、前記第2制御部500は、前記薬品吸引工程の前記第1工程における前記プランジャ11bの引き速度、及び、前記第1工程の終了後から前記第2工程が開始されるまでの待ち時間を、薬品の粘度に応じて変更することが考えられる。特に、前記第2制御部500は、前記薬品の粘度が高いほど前記引き速度を遅くし、前記薬品の粘度が高いほど前記待ち時間を短くする。
【0174】
具体的に、前記第2制御部500は、前記薬品容器10内の薬品の粘度が予め設定された特定値以上である場合には、前記引き速度を予め設定された第1速度に設定する。また、前記第2制御部500は、前記薬品容器10内の薬品の粘度が前記特定値以上である場合には、前記待ち時間を予め設定された第1時間に設定する。例えば、前記保持部26の前記移動部263を駆動するモーターの正逆転により、前記プランジャ11bが押し引きされる場合、前記モーターの正逆転の切り替えの時間を除き、前記第1時間は0である。即ち、前記モーターの制御上、正回転(逆回転)から逆回転(正回転)への切り替え時に所定の停止時間が必要になる場合、前記第1時間は、当該所定の停止時間を除く時間であって、前記第2制御部500による処理上の設定時間である。そのため、前記第1時間が0に設定されている場合であっても、前記モーターの正回転(逆回転)が停止してから逆回転(正回転)が開始されるまでの間に前記所定の停止時間だけ前記プランジャ11bの動作が停止することはある。
【0175】
一方、前記第2制御部500は、前記薬品容器10内の薬品の粘度が前記特定値未満である場合には、前記引き速度を前記第1速度よりも早い予め設定された第2速度に設定する。また、前記第2制御部500は、前記薬品容器10内の薬品の粘度が前記特定値未満である場合には、前記待ち時間を前記第1時間よりも長い第2時間に設定する。なお、前記引き速度を薬品の粘度に応じて変更するときの前記第2制御部500が本発明に係る第1変更処理部の一例であり、前記待ち時間を薬品の粘度に応じて変更するときの前記第2制御部500が本発明に係る第2変更処理部の一例である。
【0176】
なお、前記薬品容器10内の空気量が多いほど、前記プランジャ11bを引いたときの当該薬品容器10内の圧力低下が小さく、前記薬品容器10から前記注射器11への薬品の移動速度が遅くなる。また、前記注射器11の注射針11cの内径が大きいほど、前記プランジャ11bを引いたときの前記薬品容器10から前記注射器11への薬品の移動速度が早くなる。そのため、前記第2時間は、前記薬品容器10内の空気量(「薬品容器10の容積」-「薬品容器10内の液体量」)、及び前記注射器11の注射針11cの内径などに基づいて予め設定される。具体的に、前記第2時間は、前記薬品容器10内の空気量が多いいほど長く設定され、前記注射器11の注射針11cの内径が大きいほど短く設定される。
【0177】
このように、前記薬品吸引工程では、前記薬品の粘度が前記特定値以上である場合には、前記第1工程で前記プランジャ11bがゆっくり引かれるが前記待ち時間が短くなり、前記薬品の粘度が前記特定値未満である場合には、前記第1工程の実行後から前記第2工程が実行されるまでの時間が長くなるが前記引き速度が速くなる。従って、前記薬品の粘度に応じて、前記薬品の前記シリンジ11aから前記薬品容器10への逆流を抑制すると共に、前記薬品吸引工程の所要時間の無駄を抑制することが可能である。
【0178】
[薬品吸引工程の他の例]
ここで、図19を参照しつつ、前記薬品吸引工程の他の例について説明する。なお、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記注射器11の注射針11cの先端を水平方向よりも上方向に向けた状態で当該注射針11cを前記薬品容器10に穿刺した後に前記薬品吸引工程を実行する。また、前記薬品吸引工程の開始時には、図19(A)に示されるように、前記注射器11のプランジャ11bは、前記シリンジ11aの先端側端部まで押された状態である。
【0179】
そして、前記薬品吸引工程において、前記第2制御部500は、前記保持部26を制御して前記注射器11の前記プランジャ11bを引く第3工程と、当該第3工程の実行後に前記保持部26を制御して前記プランジャ11bを押す第4工程と、当該第4工程の実行後に前記保持部26を制御して前記プランジャ11bを引く第5工程とを実行する。これにより、前記注射器11内の不要な空気を排出することができ、当該注射器11に吸引される薬品量の精度を高めることが可能である。
【0180】
<第3工程>
前記薬品吸引工程における前記第3工程では、前記注射器11のプランジャ11bが引かれることにより、図19(B)に示されるように、前記薬品容器10内の薬品が前記注射器11のシリンジ11a内に吸引される。ここで、前記第3工程の開始時に、前記シリンジ11a内には空気が存在しないが、前記注射器11の注射針11c内には空気A1が存在するため、前記第3工程で前記薬品容器10の薬品が前記注射器11のシリンジ11a内に吸引されると、当該シリンジ11a内に前記注射針11c内の空気A1が吸引されることになる。
【0181】
なお、前記第3工程における前記プランジャ11bの引き量は、少なくとも前記注射器11の注射針11c内の空気A1が前記シリンジ11a内に取り込まれる量として予め設定された量である。また、前記第3工程における前記プランジャ11bの引き量は、前記注射器11又は前記注射針11cの種類ごとに予め定められていてもよい。
【0182】
<第4工程>
前記第3工程の後に実行される前記第4工程では、前記注射器11のプランジャ11bが先端まで押されることにより、図19(C)に示されるように、前記注射器11のシリンジ11a内の空気A1及び薬品が前記薬品容器10内に注入される。このとき、前記注射器11が上方向に向けられており、当該注射器11のシリンジ11a内の空気A1が先に排出されることになるため、前記第4工程の実行後の前記注射器11の注射針11c内には、前記薬品が残っている状態となる。
【0183】
なお、前記第4工程では、前記プランジャ11bを先端まで押してもよいが、前記シリンジ11a内の空気A1が前記シリンジ11aから前記薬品容器10に移動する量として予め設定された特定量だけ押されてもよい。
【0184】
<第5工程>
前記第4工程の後に実行される前記第5工程では、前記第3工程と同様に前記注射器11のプランジャ11bが引かれることにより、図19(D)に示されるように、前記薬品容器10内の薬品が前記注射器11のシリンジ11a内に吸引される。このとき、前記第5工程の開始時には前記注射器11の注射針11c内には空気が存在しないため、当該第5工程の終了後の前記注射器11のシリンジ11a内は空気が存在しない状態となる。
【0185】
なお、前記第5工程における前記プランジャ11bの引き量は、前記調製データに基づく前記薬品の必要量に対応する量である。また、前記第4工程において、前記シリンジ11a内の薬品が全て前記薬品容器10に排出されない場合には、前記第3工程における前記プランジャ11bの引き量と前記第4工程における前記プランジャ11bの押し量とに基づいて、前記第5工程における前記プランジャ11bの引き量が決定されてもよい。
【0186】
このように、前記薬品吸引工程において、前記第3工程、前記第4工程、及び前記第5工程が順に実行されると、前記シリンジ11a内に不要な空気が残存しないため、当該シリンジ11aで前記薬品容器10から前記輸液バッグ12に注入される薬品量の精度を高めることが可能である。
【0187】
[攪拌工程の他の例]
前記実施形態では、前記第2制御部500によって実行される前記混注処理における前記攪拌工程では、前記攪拌装置32を用いて前記薬品容器10内の薬品及び輸液が攪拌される場合について説明した。一方、前記攪拌工程では、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を用いて前記薬品容器10内の薬品及び輸液が攪拌されてもよい。
【0188】
以下、前記攪拌工程において前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22が用いられる前記混注処理の一例について説明する。特に、ここでは、前記調製データに基づく前記混注処理において、複数の前記薬品容器10の薬品が輸液で溶解され、当該薬品容器10各々から前記輸液バッグ12に薬品が注入される場合について説明する。なお、ここで説明する前記攪拌工程は、前記薬品容器10が一つである場合に実行されてもよい。以下では、既に説明した前記混注処理と異なる部分について説明する。
【0189】
<輸液吸引工程>
まず、前記第2制御部500は、前記輸液吸引工程において、前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記調製データで示された複数の前記薬品容器10の薬品を溶解するための輸液量に基づいて、前記薬品容器10各々に対応する前記輸液量の合計量の輸液を前記注射器11で前記輸液バッグ12から吸引する。例えば、前記調製データにおいて、3本の前記薬品容器10内の薬品をそれぞれ20mlの輸液で溶解して前記輸液バッグ12に注入する旨が示されている場合には、前記第2制御部500は、前記輸液吸引工程において、前記注射器11で3本の前記薬品容器10の薬品の溶解に用いる合計60mlの輸液を前記輸液バッグ12から纏めて吸引する。以下、説明の便宜上、このように3本の前記薬品容器10内の薬品をそれぞれ20mlの輸液で溶解して前記輸液バッグ12に注入する場合を具体例として説明することがある。
【0190】
そして、前記第2制御部500は、前記輸液吸引工程の実行後、前記薬品容器10ごとに、前記輸液注入工程、前記攪拌工程、及び前記薬品吸引工程を含む一連の処理を連続して実行する。その後、前記第2制御部500は、前記注射器11内の液体を前記輸液バッグ12に注入する前記薬品注入工程を実行する。以下、前記輸液注入工程、前記攪拌工程、及び前記薬品吸引工程について説明する。
【0191】
<輸液注入工程>
前記第2制御部500は、前記輸液吸引工程の実行後、前記輸液注入工程において、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御することにより、前記注射器11の注射針11cを前記薬品容器10に穿刺し、前記注射器11内の液体の一部又は全部を当該薬品容器10に注入する。例えば、1本目の前記薬品容器10には、前記注射器11内の液体のうち前記調製データにおいて当該1本目の前記薬品容器10の溶解で用いられる輸液量として示された量の液体が注入される。前記具体例の場合には、1本分の前記薬品容器10に対応する20mlの液体が前記注射器11から前記薬品容器10に注入されることになる。
【0192】
<攪拌工程>
前記第2制御部500は、前記輸液注入工程の実行後、前記攪拌工程において、前記攪拌装置32を用いることなく、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を用いて前記薬品容器10内の薬品及び輸液を攪拌する。具体的に、前記第2制御部500は、前記輸液注入工程において前記注射器11の注射針11cが前記薬品容器10に穿刺されたままの状態で、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御し、前記注射器11及び前記薬品容器10を変位させて前記薬品容器10内の薬品を攪拌する。
【0193】
例えば、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22を制御し、前記保持部25及び前記保持部26で保持された前記注射器11及び前記薬品容器10を、予め設定された時間だけ同期して揺動させる。前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11及び前記薬品容器10を同じ方向に同じ距離だけ同時に移動させることにより、前記注射器11の注射針11cが前記薬品容器10に穿刺された状態を維持する。また、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22により、前記注射器11及び前記薬品容器10の相対的な姿勢を維持しつつ前記注射器11及び前記薬品容器10を回動させてもよい。例えば、前記第2制御部500は、前記薬品容器10の口部を下方に向け、前記注射器11の注射針11cを上方に向けた状態から、水平方向を回転軸として、前記薬品容器10及び前記注射器11を時計回りに45°回動させた後、反時計回りに90°回動させてもよい。なお、前記第2制御部500は、前記注射器11及び前記薬品容器10を、水平方向を回動軸として回動させてもよく、回動軸を任意に複数回変更しながら回動させてもよい。
【0194】
<薬品吸引工程>
前記攪拌工程の実行後、前記第2制御部500は、前記薬品吸引工程において前記注射器11の注射針11cが前記薬品容器10に穿刺されたままの状態で、前記第2ロボットアーム22によって前記プランジャ11bを操作することにより、前記薬品容器10内の薬品を前記注射器11で吸引する。
【0195】
そして、前記薬品吸引工程が終了すると、前記第2制御部500は、前記注射器11の注射針11cを前記薬品容器10から抜いて、次の前記薬品容器10に穿刺し、同様に前記輸液注入工程、前記攪拌工程、及び前記薬品吸引工程を実行する。その後も同様に、前記第2制御部500は、複数の前記薬品容器10の全てについて、前記輸液注入工程、前記攪拌工程、及び前記薬品吸引工程が終了するまで、前記輸液注入工程、前記攪拌工程、及び前記薬品吸引工程を繰り返し実行する。これにより、前記第1ロボットアーム21によって前記薬品容器10を前記攪拌装置32にセットした後、再度前記攪拌装置32から前記薬品容器10を取り出すための移動動作が必要なくなるため、所要時間を短縮することが可能である。また、前記混注装置1の構成から前記攪拌装置32を省略することも可能である。
【0196】
ところで、2回目以降の前記輸液注入工程では、前記注射器11から前記薬品容器10への液体の注入量が、1回目の前記輸液注入工程における前記注入量と同じであってもよいが、2回目以降の前記輸液注入工程における前記注入量は、1回目の前記輸液注入工程における前記注入量よりも多いことが考えられる。さらに、前記第2制御部500は、複数の前記薬品容器10について複数回の前記薬品注入工程が実行される場合に、後に実行される前記輸液注入工程ほど前記注入量を徐々に多くすることが考えられる。これらの構成によれば、前記薬品吸引工程が実行されるごとに前記注射器11内の輸液における薬品の濃度が徐々に高くなる状況に応じて前記薬品容器10内における薬品の溶け残りが抑制される。また、前記第2制御部500は、複数の前記薬品容器10について前記攪拌工程が実行される場合に、後に実行される前記攪拌工程ほど前記攪拌工程の時間を長くしてもよい。
【0197】
[残薬使用制限機能]
前記混注処理では、当該混注処理の実行後に前記薬品容器10に残薬が生じた場合に、当該薬品容器10が前記載置棚33の前記残薬載置領域に載置され、その後に実行される他の前記混注処理で使用されることがある。なお、以下では、前記残薬が収容されている前記薬品容器10を残薬容器10Aと称することがある。
【0198】
ところで、前記混注処理で必要な量の薬品が前記残薬容器10A内に残っていない場合には、当該残薬容器10Aと共に、前記トレイ101に載置されている前記薬品容器10を用いる必要がある。しかしながら、この場合には、前記残薬容器10Aから薬品を吸引する動作と、前記薬品容器10から薬品を吸引する動作を行う必要があり、前記混注処理の所要時間が長くなるという問題がある。
【0199】
そこで、前記第2制御部500は、前記混注処理で必要な薬品の量が前記残薬容器10A内の残薬の量よりも少ない場合には、当該残薬容器10Aを使用せずに前記薬品容器10を用いて前記混注処理を実行する残薬使用制限機能を備えることが考えられる。
【0200】
より具体的に、前記第2制御部500は、前記調製データに基づく前記混注処理で必要な薬品の量が1本分の前記薬品容器10の収容量と同じであり、前記残薬容器10A内に残存している薬品の量が1本分の前記薬品容器10の収容量未満である場合には、当該残薬容器10Aを用いることなく、前記調製データに対応して装填された前記トレイ101に載置されている前記薬品容器10を用いて前記混注処理を実行する。
【0201】
一方、前記第2制御部500は、前記調製データに基づく前記混注処理で必要な薬品の量が1本分の前記薬品容器10の収容量と同じであり、前記残薬容器10A内に残存している薬品の量が1本分の前記薬品容器10の収容量以上である場合には、当該残薬容器10Aを用いて前記混注処理を実行する。
【0202】
このように、前記混注処理では、1本の前記残薬容器10Aだけで前記混注処理が完結可能である場合には当該残薬容器10Aが用いられ、1本の前記残薬容器10Aだけで前記混注処理が完結可能でない場合には当該残薬容器10Aが用いられず新品の前記薬品容器10が用いられる。そのため、前記残薬容器10A及び新品の前記薬品容器10の両方が用いられることがなく、当該混注処理の所要時間が短縮される。
【0203】
[残薬払出機能]
前述したように、前記混注装置1では、前記注射器11に薬品が充填された状態で当該注射器11を前記注射器取出扉302から払い出すことも可能である。ところで、前記混注装置1では、前記残薬容器10Aが前記載置棚33の前記残薬載置領域に載置されることがある。そこで、前記混注装置1では、前記第2制御部500が、前記残薬容器10A内の薬品を前記注射器11で吸引して前記注射器取出扉302から払い出す残薬払出処理が実行可能な残薬払出機能を備えることが考えられる。
【0204】
より具体的に、前記第2制御部500は、予め設定された特定のユーザー操作により払出対象の前記残薬容器10Aが選択され、前記残薬容器10A内の薬品の払い出しに用いられる前記注射器11が載置された前記トレイ101が装填された場合に、前記残薬払出処理を実行する。前記残薬払出処理において、前記第2制御部500は、前記第1ロボットアーム21を制御して前記載置棚33から前記残薬容器10Aを取り出し、前記第2ロボットアーム22を制御して前記トレイ101に載置された前記注射器11により前記残薬容器10A内の薬品を吸引する。そして、前記薬品を吸引した後の前記注射器11を前記注射器取出扉302の近傍に移動させる。また、前記第2制御部500は、前記残薬容器10A内の薬品を吸引した前記注射器11を前記トレイ101に載置して前記トレイ排出口15から当該トレイ101を排出してもよい。そして、前記残薬払出機能によれば、前記残薬容器10A内の薬品を外部に取り出して有効に利用することが可能である。
【0205】
また、前記第2制御部500は、前記残薬払出処理において、前記注射器11で払い出す残薬の情報を示す払出残薬情報を、前記プリンタ506でラベルに印刷してもよい。具体的に、前記払出残薬情報には、前記残薬容器10A内に残存している薬品の情報として前記残薬情報D30に記憶されている、「調製No.」、「薬品名(薬品識別情報)」、「残量」、「開封日時」、又は「使用期限」などのように、当該注射器11内の薬品をその後に使用する際に参照される各種の情報が含まれる。
【0206】
これにより、ユーザーは、前記ラベルを前記注射器11に貼付することにより、当該注射器11を前記混注装置1から取り出した後も、当該注射器11内の残薬の情報を容易に把握して使用することが可能である。なお、前記ラベルは、前記混注装置1の前記第1ロボットアーム21及び前記第2ロボットアーム22などによって前記注射器11に自動的に貼付されてもよい。また、前記混注装置1が、前記ラベルを前記注射器11に自動的に貼付する貼付装置を別途備えてもよい。
【0207】
さらに、前記ラベルには、前記払出残薬情報を示す一次元コード又は二次元コード等のコード情報が印刷されることも考えられる。そして、前記第2制御部500は、前記ラベルの前記コード情報が読み取られた場合に、当該コード情報に基づいて当該コード情報に対応する前記注射器11を前記混注装置1で再度利用可能な状態にすることが考えられる。具体的に、前記第2制御部500は、前記残薬情報D30に前記払出残薬情報を追加することが考えられる。これにより、前記第2制御部500は、前記注射器11に収容されている薬品と前記調製データとの照合処理、当該薬品の残量の情報の取得、当該薬品の使用期限のチェック、前記薬品容器10の穿刺回数のチェックなどを実行することが可能である。なお、前記第2制御部500は、前記注射器11について前記残薬払出処理を実行した後、当該注射器11内の薬品を残薬として使用可能な前記調製データについて前記混注管理処理が実行される場合に、前記注射器11の存在を前記タッチパネルモニタ203に表示させることも考えられる。
図1
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