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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】リフレクトアレー・アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 15/22 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
H01Q15/22
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020573449
(86)(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 GB2019051897
(87)【国際公開番号】W WO2020008201
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】1811092.4
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509251143
【氏名又は名称】エヌピーエル マネージメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン ロー、ティアン
(72)【発明者】
【氏名】アーマド、グーラム
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン、ティム
(72)【発明者】
【氏名】アンダーウッド、クレイグ
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06437752(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第101872894(CN,A)
【文献】米国特許第07868829(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 15/22
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁場を反射するための電導性材料のパッチと、
RFグランドを与える誘電性基板と、
第1の偏波を有する電磁放射と相互に作用するように配列された電導性材料の第1の位相制御線及び第2の位相制御線と、
前記パッチとグランドとの間に配置され、前記第1の位相制御線を介して前記パッチをグランドに選択的に電気的につなげるように構成された、ON状態又はOFF状態を有する第1の2値スイッチング・デバイスと、
前記パッチとグランドとの間に配置され、前記第2の位相制御線を介して前記パッチをグランドに選択的に電気的につなげるように構成された、ON状態又はOFF状態を有する第2の2値スイッチング・デバイスと、
を含み、前記第1の2値スイッチング・デバイスは、前記パッチから前記グランドへの第1のダイオード方向を有する第1のPINダイオードであり、
前記第2の2値スイッチング・デバイスは、前記グランドから前記パッチへの第2のダイオード方向を有する第2のPINダイオードであり、さらに、
前記パッチに電気的につなげられ、前記第1の2値スイッチング・デバイス及び前記第2の2値スイッチング・デバイスの前記ON状態又はOFF状態を選択的に制御するため異なる別個の電圧レベルに設定可能な単一のDCバイアス入力部と
を含み、
前記DCバイアス入力部による前記第1の2値スイッチング・デバイス及び前記第2の2値スイッチング・デバイスの選択的動作が、各偏波および周波数の電磁放射に対して3つの位相状態を提供するように構成された前記第1の2値スイッチング・デバイス及び前記第2の2値スイッチング・デバイスの前記ON状態又はOFF状態に応じて電磁放射の位相制御を行う、
リフレクトアレー・アンテナ素子。
【請求項2】
前記第1の2値スイッチング・デバイス及び前記第2の2値スイッチング・デバイスのON又はOFF動作が、前記リフレクトアレー・アンテナ素子に前記第1の偏波で位相制御された電磁放射を発生させる、請求項1に記載のアンテナ素子。
【請求項3】
前記第1の位相制御線及び前記第2の位相制御線が、第1の偏波方向に平行に配列され、前記パッチが、長さ及び幅を有し、前記第1の位相制御線及び前記第2の位相制御線が、前記パッチの前記長さ及び前記幅のうちの一方に沿った前記第1の偏波方向に配置され、前記第1の偏波方向の各々の線が、長さを有し、前記第1の位相制御線及び前記第2の位相制御線が、第1の周波数で動作することを可能にする、請求項1又は2に記載のアンテナ素子。
【請求項4】
前記誘電性基板が、その一方の側の前記パッチ及びその他方の側のRFグランドで構成される、請求項1から3までのいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項5】
前記第1の位相制御線が、前記第1の2値スイッチング・デバイスにより前記パッチに選択的に電気的につなげられることが可能であり、前記第2の位相制御線が、前記第2の2値スイッチング・デバイスにより前記パッチに選択的に電気的につなげられることが可能である、請求項1から4までのいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項6】
電導性材料の第3の位相制御線及び第4の位相制御線と、
前記パッチとグランドとの間に配置され、前記第3の位相制御線を介して前記パッチをグランドに選択的に電気的につなげるように構成された、ON状態又はOFF状態を有する第3の2値スイッチング・デバイスと、
前記パッチとグランドとの間に配置され、前記第4の位相制御線を介して前記パッチをグランドに選択的に電気的につなげるように構成された、ON状態又はOFF状態を有する第4の2値スイッチング・デバイスと
を含み、
前記第3の2値スイッチング・デバイスは、前記パッチから前記グランドへの第3のダイオード方向を有する第3のPINダイオードであり、前記第4の2値スイッチング・デバイスは、前記グランドから前記パッチへの第4のダイオード方向を有する第4のPINダイオードであり、
前記単一のDCバイアス入力部が、前記第3の2値スイッチング・デバイス及び前記第4の2値スイッチング・デバイスの前記ON状態又はOFF状態を選択的に制御することを行う、
請求項1から5までのいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項7】
前記第3の位相制御線及び前記第4の位相制御線が、第2の偏波を有する電磁放射と相互に作用するように配列され、
前記第3の2値スイッチング・デバイス及び前記第4の2値スイッチング・デバイスの動作が、前記リフレクトアレー・アンテナ素子に前記第2の偏波で位相制御された電磁放射を発生させ、
前記第3の位相制御線及び前記第4の位相制御線が、第2の偏波方向に平行に配列される、請求項6に記載のアンテナ素子。
【請求項8】
前記パッチが、長さ及び幅を有し、前記第1の位相制御線及び前記第2の位相制御線が、前記パッチの前記長さ及び前記幅のうちの一方に沿った第1の偏波方向に配置され、前記第3の位相制御線及び前記第4の位相制御線が、前記パッチの前記長さ及び前記幅のうちの他方に沿った前記第2の偏波方向に配置され、
前記第2の偏波方向の各線が、長さを有し、前記第3の位相制御線及び前記第4の位相制御線が、第2の周波数で動作することを可能にする、請求項7に記載のアンテナ素子。
【請求項9】
前記第3の位相制御線が、前記第3の2値スイッチング・デバイスにより前記パッチに選択的に電気的につなげられることが可能であり、前記第4の位相制御線が、前記第4の2値スイッチング・デバイスにより前記パッチに選択的に電気的につなげられることが可能である、請求項から8までのいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項10】
前記DCバイアス入力部が、第1の電磁場の直交偏波を減少させる距離だけ第1のオフセット方向に前記パッチの中心からオフセットされる及び/又は第2の電磁場の直交偏波を減少させる距離だけ第2のオフセット方向に前記パッチの中心からオフセットされ、
前記第1のオフセット方向が、前記第1の偏波の前記第1の波方向である及び/又は前記第2のオフセット方向が、前記第2の偏波の前記第2の波方向である、請求項から9までのいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項11】
前記アンテナ素子のRF平面で直接的に、第1の周波数で前記第1の偏波を有する電磁放射に対して、及び任意選択でまた、第2の周波数で第2の偏波を有する電磁放射に対して3つの位相状態を与えるために1.5ビット位相制御を実施するように構成される、請求項1から10までのいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項12】
第1の層及び第2の層を含む基板構造を含み、前記パッチが前記第1の層内に設置され、前記第2の層が前記グランドであり、
相制御線の各々が、前記第1の層と前記第2の層とをリンクする導電性ビアを介してグランド層に電気的につなげられることが可能である、請求項1から11までのいずれか一項に記載のアンテナ素子。
【請求項13】
第3の層を含み、前記DCバイアス入力部が、前記グランド層への電気的接続なしに前記第1の層と前記第3の層とをリンクする導電性ビアを含み、
前記DCバイアス入力部が、前記第3の層のところでDC分離素子に電気的につなげられる、請求項12に記載のアンテナ素子。
【請求項14】
前記第2の層が、前記第1の層と前記第3の層との間にあり、
前記第2の層及び前記第3の層が、誘電性基板により隔てられ、
任意として、前記位相制御線の各々が、前記第1の層、前記第2の層及び前記第3の層をリンクする導電性ビアを介して前記グランド層に電気的につなげられる、請求項13に記載のアンテナ素子。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか一項に記載の複数のアンテナ素子を含むリフレクトアレーであって、各々のアンテナ素子に関して、前記アンテナ素子が、第1の層及び第2の層を含む基板構造を含み、前記パッチが、前記第1の層内に設置され、前記第2の層が、前記グランドであり、前記位相制御線の各々が、前記第1の層と前記第2の層とをリンクする導電性ビアを介してグランドに電気的につなげられ、
任意として、前記アンテナ素子の各々の前記DCバイアス入力部の前記電圧レベルを制御するように構成された制御システムを含み、
任意として、前記アンテナ素子のうちの少なくともいくつかが、他とは異なる反射位相シフトを与えるように構成される、リフレクトアレー。
【請求項16】
第1の周波数で前記第1の偏波を有する電磁放射に対して、及び任意選択でまた、第2の周波数で第2の偏波を有する電磁放射に対して所望の反射位相制御を行うために前記DCバイアス入力部へのDCバイアス信号を制御するステップ
を含む、請求項1から15までのいずれか一項に記載のアンテナ素子を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフレクトアレー・アンテナ素子、リフレクトアレー、及びアンテナ素子を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高利得スマート・アンテナは、次世代通信システムの鍵となる可能にする技術のうちの1つである。
【0003】
スマート・リフレクトアレー・アンテナは、通常、ユニット・セルのレベルで多数の動作状態を引き起こすのに必要な再構成ビヘイビアを適応させるためにそれ自体を含んでいるユニット・セルを必要とする。
【0004】
リフレクトアレーは、反射した電場の一定の位相が所望のアンテナ主ビームの方向に垂直な平面内で実現されるという原理で動作する。
【0005】
PINダイオード及びRF MEMSなどのスイッチは、全放射面の幾何形状の(離散化した)変化をもたらすために金属部品を電気的に接続する/切断するため典型的には使用される。
【0006】
このような素子の知られている設計の実例が、米国特許第7071888号、米国特許第7868829号、米国特許第9099775号、「A Reconfigurable Slot Antenna With Switchable Polarization」 Fries et al. IEEE Microwave and Wireless Components Letters Vol.13 No.11 November 2003 pp.490~492、「60-GHz Electrically Reconfigurable Reflectarray Using p-i-n Diode」 Kamoda et al. IEEE MTT-S International Microwave Symposium Digest 2009 pp.1177~1180に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7071888号
【文献】米国特許第7868829号
【文献】米国特許第9099775号
【非特許文献】
【0008】
【文献】「A Reconfigurable Slot Antenna With Switchable Polarization」 Fries et al. IEEE Microwave and Wireless Components Letters Vol.13 No.11 November 2003 pp.490~492
【文献】「60-GHz Electrically Reconfigurable Reflectarray Using p-i-n Diode」 Kamoda et al. IEEE MTT-S International Microwave Symposium Digest 2009 pp.1177~1180
【文献】GHULAM AHMAD、TIM W.C. BROWN、CRAIG I. UNDERWOOD及びTIAN HONG LOHによる「Reasonably Green Quantised Phase Smart Antennas using PIN Diode Switches」
【文献】Ghulam Ahmad、Tim WC Brown、Craig I Underwood及びTian Hong Lohによる「Reasonably Green Smart Quantised Phase Smart Antennas using PIN Diode Switches」
【文献】https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0094576518308622において入手可能なAhmad等による「An investigation of millimetre wave reflectarrays for small satellite platforms」、Acta Astronautica、151巻、2018年10月、ページ475~486
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、改善したリフレクトアレー・アンテナ素子、改善したリフレクトアレー及びこのようなアンテナ素子を動作させる方法を提供することを求める。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様によれば、リフレクトアレー・アンテナ素子が提供され、
電磁(EM)場を反射するための電導性材料のパッチと、
RFグランドを与える誘電性基板と、
第1の偏波を有する電磁放射と相互に作用するように配列された電導性材料の第1の位相制御線及び第2の位相制御線と、
上記パッチとグランドとの間に配置され、上記第1の位相制御線を介して上記パッチをグランドに選択的に電気的につなげるように構成された、ON状態又はOFF状態を有する第1の2値スイッチング・デバイスと、
上記パッチとグランドとの間に配置され、上記第2の位相制御線を介して上記パッチをグランドに選択的に電気的につなげるように構成された、ON状態又はOFF状態を有する第2の2値スイッチング・デバイスと、
上記パッチに電気的につなげられ、上記スイッチング・デバイスの上記状態を選択的に制御するため異なる別個の電圧レベルに設定可能な単一のDCバイアス入力部と
を含み、
上記DCバイアス入力部による上記第1の2値スイッチング・デバイス及び上記第2の2値スイッチング・デバイスの選択的動作が、上記スイッチング・デバイスの上記状態に応じて電磁放射の位相制御を行う。
【0011】
有利なことに、上記第1のスイッチング・デバイス及び上記第2のスイッチング・デバイスの動作が、上記リフレクトアレー・アンテナ素子に上記第1の偏波で位相制御された電磁放射を発生させる。
【0012】
好ましくは、上記第1の位相制御線及び上記第2の位相制御線が、第1の方向に平行に配列される。実際的な実施例では、上記パッチが長さ及び幅を有し、上記第1の位相制御線及び上記第2の位相制御線が上記パッチの上記長さ及び上記幅のうちの一方に沿った上記第1の方向に配置される。有利なことに、上記第1の方向の各々の線が長さを有し、上記第1の位相線及び上記第2の位相線が第1の周波数で動作することを可能にする。
【0013】
実際的な実施例では、上記パッチが、2つの動作上の寸法、長さ及び幅を有する。2つの位相線を有する上記パッチの上記長さが、第1の周波数F1で動作することを可能にさせる。他の2つの位相線を有するパッチの上記幅が、上記パッチにもう1つの周波数F2で動作させる。設計は、上記第1の周波数及び上記第2の周波数が同じであっても異なってもよいように柔軟である。
【0014】
実際的な実施例では、上記誘電性基板が、その一方の側の上記パッチ及びその他方の側のRFグランドで構成される。グランドが、上記パッチに実質的に平行な電導性層によって好ましくは設けられる。
【0015】
好ましい実施例では、上記第1の位相制御線が、上記第1のスイッチング・デバイスにより上記パッチに選択的に電気的につなげられるように構成され、上記第2の位相制御線が、上記第2のスイッチング・デバイスにより上記パッチに選択的に電気的につなげられるように構成される。
【0016】
有利なことに、上記第1のスイッチング・デバイスが、上記パッチから上記グランドへのダイオード方向を有する第1のPINダイオードであり、上記第2のスイッチング・デバイスが、上記グランドから上記パッチへのダイオード方向を有する第2のPINダイオードである。
【0017】
上記アンテナ素子は、電導性材料の第3の位相制御線及び第4の位相制御線と、上記パッチとグランドとの間に配置され、上記第3の位相制御線を介して上記パッチをグランドに選択的に電気的につなげるように構成された、ON状態又はOFF状態を有する第3の2値スイッチング・デバイスと、上記パッチとグランドとの間に配置され、上記第4の位相制御線を介して上記パッチをグランドに選択的に電気的につなげるように構成された、ON状態又はOFF状態を有する第4の2値スイッチング・デバイスとを含み、上記単一のDCバイアス入力部が、上記第3のスイッチング・デバイス及び上記第4のスイッチング・デバイスの上記状態を選択的に制御することを行う。
【0018】
有利なことに、上記第3の位相制御線及び上記第4の位相制御線が、第2の偏波を有する電磁放射と相互に作用するように配列される。好ましくは、上記第3の2値スイッチング・デバイス及び上記第4の2値スイッチング・デバイスの動作が、上記リフレクトアレー・アンテナ素子に上記第2の偏波で位相制御された電磁放射を発生させる。
【0019】
好ましくは、上記第3の位相制御線及び上記第4の位相制御線が、第2の方向に平行に配列される。
【0020】
実際的な実施例では、上記パッチが長さ及び幅を有し、上記第1の位相制御線及び上記第2の位相制御線が、上記パッチの上記長さ及び上記幅のうちの一方に沿った上記方向又は第1の方向に配置され、上記第3の位相制御線及び上記第4の位相制御線が、上記パッチの上記長さ及び上記幅のうちの他方に沿った上記第2の方向に配置される。上記第2の方向が、有利には長さを有し、上記第3の位相線及び上記第4の位相線が第2の周波数で動作することを可能にする。
【0021】
好ましくは、上記第3の位相制御線が、上記第3のスイッチング・デバイスにより上記パッチに選択的に電気的につなげられるように構成され、上記第4の位相制御線が、上記第4のスイッチング・デバイスにより上記パッチに選択的に電気的につなげられるように構成される。
【0022】
実際的な実装例では、上記第3のスイッチング・デバイスが、上記パッチから上記グランドへのダイオード方向を有する第3のPINダイオードであり、上記第4のスイッチング・デバイスが、上記グランドから上記パッチへのダイオード方向を有する第4のPINダイオードである。
【0023】
好ましい実施例では、上記DCバイアス入力部が、上記第1の電磁場の直交偏波を減少させる距離だけ第1の方向に上記パッチの中心からオフセットされる及び/又は上記第2の電磁場の直交偏波を減少させる距離だけ第2の方向に上記パッチの中心からオフセットされる。有利なことに、上記第1の方向が、上記第1の偏波の偏波の方向である及び/又は上記第2の方向が、上記第2の偏波の偏波の方向である。
【0024】
アンテナ素子は、ミリメートル波(ミリ波)で動作するように有利には構成される。好ましい実装例では、上記アンテナ素子は、2つの独立した周波数帯で動作するように構成され、そこでは各々の周波数帯は、2つの位相線を有する上記パッチが設計される中心周波数を有する。
【0025】
ある実施例では、上記アンテナ素子は、上記アンテナ素子の上記RF平面で直接的に、上記第1の周波数で上記第1の偏波を有する電磁放射に対して、及び任意選択でまた、上記第2の周波数で上記第2の偏波を有する電磁放射に対して3つの位相状態を与えるために1.5ビット位相制御を実施するように構成される。
【0026】
上記アンテナ素子は、第1の層及び第2の層を含む基板構造を含むことができ、上記パッチが上記第1の層内に設置され、上記第2の層が前記グランドである。
【0027】
上記位相制御線の各々を、上記第1の層と上記第2の層とをリンクする導電性ビアを介して上記グランド層に好ましくは電気的につなげることができる。各々のビアが、城郭風の穴であってもよい。
【0028】
有利なことに、上記第1の層及び上記第2の層が、誘電性基板により隔てられる。
【0029】
上記アンテナ素子は、第3の層を含むことができ、上記DCバイアス入力部が、上記グランド層への電気的接続なしに上記第1の層と上記第2の層とをリンクする導電性ビアを含む。上記DCバイアス入力部が、上記第3の層のところでDC分離素子に電気的につなげられてもよい。上記DC分離素子は、上記RF信号がDC源に達することを止めるために任意の適切な形状であってもよく、上記第2の層のところに任意選択で設置されてもよい。
【0030】
上記第2の層が、好ましくは上記第1の層と上記第3の層との間にある。
【0031】
有利なことに、上記第2の層及び上記第3の層が、誘電性基板により隔てられる。
【0032】
上記位相制御線の各々が、好ましくは、上記第1の層と上記第2の層とをリンクする導電性ビアを介して上記グランドに電気的につなげられる。このビアが、製造の容易さのために上記第3の層まで通過できる。各々のビアが、城郭風の穴であってもよい。
【0033】
本発明のもう1つの態様によれば、本明細書において特定されそして開示されたような複数のアンテナ素子を含むリフレクトアレーが提供される。
【0034】
好ましくは、各々のアンテナ素子に関して、上記アンテナ素子が、第1の層及び第2の層を含む基板構造を含み、上記パッチが、上記第1の層内に設置され、上記第2の層が、前記グランドであり、上記位相制御線の各々が、上記第1の層と第2の層とをリンクするビアを介してグランドに電気的につなげられる。
【0035】
好ましい実施例では、隣接するアンテナ素子が、ビアを共有する。
【0036】
上記リフレクトアレーは、上記アンテナ素子の各々の上記DCバイアス入力部の上記電圧レベルを制御するように構成された制御システムを好ましくは含む。
【0037】
有利なことに、上記アンテナ素子のうちの少なくともいくつかが、他とは異なる反射位相シフトを与えるように構成される。
【0038】
実際には、位相制御が、上記ユニット・セルから反射された上記電磁(EM)放射に対して行われる。多数のユニット・セルが、供給源により照らされるリフレクトアレーを形成するために採用されることがある。上記供給源から発せられるEM波が、ユニット・セル(アレー)を含む表面に入射する。この入射電場が、上記ユニット・セルにより反射される。EM場を反射する前に、各々のユニット・セルは、上記スイッチ状態に基づいてEM場に制御された位相シフトを導入する。
【0039】
本発明のもう1つの態様によれば、本明細書において特定されそして開示されたようなアンテナ素子を動作させる方法が提供され、第1の周波数で上記第1の偏波を有する電磁放射に対して、及び任意選択でまた、第2の周波数で上記第2の偏波を有する電磁放射に対して所望の反射位相制御を行うために上記DCバイアス入力部へのDCバイアス信号を制御するステップを含む。
【0040】
本発明のもう1つの態様によれば、本明細書において特定されそして開示されたようなリフレクトアレーを動作させる方法が提供され、上記第1の周波数で上記第1の偏波を有する電磁放射に対して、及び任意選択でまた、上記第2の周波数で上記第2の偏波を有する電磁放射に対して所望の反射位相制御を行うために上記リフレクトアレー・アンテナ素子の各々の上記DCバイアス入力部へのDCバイアス信号を制御するステップを含む。
【0041】
実施例では、パッチは、第1の偏波を有する電磁放射の偏波の方向である第1の偏波方向に垂直な第1の長さを有し、第1の位相制御線区間(line length)が第1の偏波方向に長さを有し、第2の位相制御線区間が第1の偏波方向に長さを有し、パッチの第1の長さ並びに第1の位相制御線区間及び第2の位相制御線区間の長さが、第1の偏波を有する電磁放射に対して所望の周波数を与えそして反射位相動作を行うように選択される。
【0042】
いくつかの実施例では、パッチは、第2の偏波を有する電磁放射の偏波の方向である第2の偏波方向に垂直な第2の長さを有し、第3の位相制御線区間が第2の偏波方向に長さを有し、第4の位相制御線区間が第2の偏波方向に長さを有し、パッチの第2の長さ並びに第3の位相制御線区間及び第4の位相制御線区間の長さが、第2の偏波を有する電磁放射に対して所望の周波数を与えそして反射位相動作を行うように選択される。
【0043】
いくつかの実施例では、第1の偏波方向は、第2の偏波方向に実質的に直交する及び/又は特許請求の範囲に詳述されたような第1の方向は、特許請求の範囲に詳述されたような第2の方向に実質的に直交する。
【0044】
本発明のもう1つの態様によれば、1.5ビット位相量子化を行うように構成されたリフレクトアレー用のユニット・セルが提供される。
【0045】
市場は、5Gの導入をともなう今後10年間にわたり極めて多数の低コスト、低電力スマート・リフレクトアレーを必要とするだろう。従来のセルラ周波数でのサーバ・スペクトル・ストレージ不足で、ミリ波周波数帯は、かなり興味のあるものである。しかしながら、高利得ミリ波における再構成を実現するために、アンテナは、個々のアンテナ素子のとても小さな幾何学的構成のために著しい実装の難題を提起する。個々のアンテナの電気的サイズが非常に小さくなるミリ波帯において、アンテナ内に再構成機構を含めることは、リアル・エステート制約のために非常に大きな難題になる。
【0046】
本発明の実施例は、次世代セルラ通信システム及び衛星通信システムのために必要とされるアンテナ・システムに対する可能性のある解として高利得ミリ波リフレクトアレー・スマート・アンテナを提供することが可能である。
【0047】
本発明の実施例は、ミリ波リフレクトアレー・ユニット・セル用の低損失の暗示的に集積された1.5位相量子化ビット(すなわち、3状態位相シフタ動作)を提供することができる。
【0048】
実施例は、電気的に再構成可能な1.5ビット位相量子化リフレクトアレー・アンテナ素子を提供する。
【0049】
本明細書において開示されたリフレクトアレーは、ミリ波で高利得及び再構成を同時に実現するための可能性のある解である。
【0050】
好ましい実施例は、3位相状態を与えるユニット・セルを用いてミリ波における実装を容易にするためにリフレクトアレー内での位相量子化を行う。シングル・ビット実装例と比較してリフレクトアレー・レベルで2.4dB高い利得を最後には与えるユニット・セル内の1.5ビット位相制御を実施する際に、改善を実現することができる。これゆえ、リフレクトアレーのより小さなアパーチャ・サイズを使用して、Kamoda等により実現されたと同じ利得を実現できる。
【0051】
本明細書において開示した実施例は、デュアル周波数デュアル偏波機能を提供できる。
【0052】
いくつかの実施例では、設計トポロジは、各々の偏波及び周波数に対して3つの動作状態を有するようにユニット・セルを準備する。単一のDC線が、同時のデュアル偏波及びデュアル周波数動作のために4つのスイッチング・デバイスにバイアス印加するために使用されることがある。これは、電子工学的に指示されることが可能なリフレクトアレーを実現するためにセル当たり4つのPINダイオードを使用することができる。
【0053】
いくつかの実施例は、直交偏波電場の大きさを制御するためにある技術を利用する。技術は、スマート・リフレクトアレーを目的とするミリ波再構成可能なユニット・セルの偏波純度を向上させる課題を扱う。DCバイアスを印加することは、通常性能を劣化させる。この技術を用いて、高い偏波純度が、DCバイアス線を採用することによりこの多状態再構成可能ユニット・セルの3つの状態すべてに実現されてきている。
【0054】
本発明の実施例が、単に実例として、添付の図面を参照して下記に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の実施例によるリフレクトアレー・アンテナ素子の回路図である。
図2図1のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図3図1及び図2のリフレクトアレー・アンテナ素子の斜視図である。
図4図1から図3のリフレクトアレー・アンテナ素子の斜視図である。
図5図1から図4のリフレクトアレー・アンテナ素子の底面図である。
図6】基板を除去した状態の図1から図5のリフレクトアレー・アンテナ素子の底面からの斜視図である。
図7】パッチ及び基板を除去した状態の図1から図6のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図8】垂直偏波を担当するユニット・セルの一部分だけが示された状態の図1から図7のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図9】垂直偏波を担当するユニット・セルの一部分だけ、及び異なる状態のパッチに電気的に接続されるこれらの構成要素だけを示している図1から図8のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図10】垂直偏波を担当するユニット・セルの一部分だけ、及び異なる状態のパッチに電気的に接続されるこれらの構成要素だけを示している図1から図8のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図11】垂直偏波を担当するユニット・セルの一部分だけ、及び異なる状態のパッチに電気的に接続されるこれらの構成要素だけを示している図1から図8のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図12】Y偏波された電場についての周波数に対する反射損失の大きさのグラフである。
図13】完全なユニット・セル上に入射するY偏波された電場を示す図である。
図14】得られた電流分布を示す図である。
図15】水平偏波を担当するユニット・セルの一部分だけが示された状態の図1から図11のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図16】水平偏波を担当するユニット・セルの一部分だけ、及び異なる状態のパッチに電気的に接続されるこれらの構成要素だけを示している図1から図11及び図15のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図17】水平偏波を担当するユニット・セルの一部分だけ、及び異なる状態のパッチに電気的に接続されるこれらの構成要素だけを示している図1から図11及び図15のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図18】水平偏波を担当するユニット・セルの一部分だけ、及び異なる状態のパッチに電気的に接続されるこれらの構成要素だけを示している図1から図11及び図15のリフレクトアレー・アンテナ素子の上面図である。
図19】X偏波された電場についての周波数に対する反射損失の大きさのグラフである。
図20】完全なユニット・セル上に入射するX偏波された電場を示す図である。
図21】得られた電流分布を示す図である。
図22】周波数に対する反射し共偏波された電場及び直交偏波された電場の大きさのグラフである。
図23】様々な指向角で主ビームを指すように受動的に構成される位相量子化された非再構成可能なリフレクトアレー・デモンストレータを示す図である。
図24】様々な指向角で主ビームを指すように受動的に構成された位相量子化された非再構成可能なリフレクトアレー・デモンストレータを示す図である。
図25】本発明の実施例によるリフレクトアレー・アンテナ素子の回路図である。
図26】本発明の実施例を示す図である。
図27】本発明の実施例を示す図である。
図28】本発明の実施例を示す図である。
図29】本発明の実施例を示す図である。
図30】本発明の実施例を示す図である。
図31】本発明の実施例を示す図である。
図32】本発明の実施例によるリフレクトアレー・アンテナ素子の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
次世代ワイアレス通信システムは、前例のない極めて高いデータ伝送レートをサポートするように予想される。この目的は、現在ミリメートル波(ミリ波)スペクトル(30~300GHz)でのみ利用可能であるより広い帯域幅を必要とする。加えて、ミリ波は、周波数によるアンテナ物理的アパーチャ・スケーリングのために大気/宇宙(air/space)リンクのための優れた候補である。厳しい伝播障害のために、ミリ波は、それ自体の性能を維持するために高利得で広角のビーム・ステアリング・スマート・アンテナを必要とする見通し内通信リンクに主に依存する。反射鏡及びフェーズド・アレーを含む高利得アンテナ解は、著しい不利益を被り、そしてミリ波における最適解ではない。アレー・ビーム形成器内の複雑さ及び損失のために、ミリ波における高利得広角電子ビーム・ステアリング・アンテナ解は、鍵となる難題になる。
【0057】
本明細書において開示した新事実は、位相量子化スマート・リフレクトアレーの形態でミリ波に対する潜在的に競合する高利得電子ビーム・ステアリング・アンテナ解を提供する。これは、フェーズド・アレー及びリフレクトアレーの有効な高性能ユニット・セルを空間的に照明するリフレクトアレー内の反射鏡アンテナの最高の特徴を保存することによって達成された。リフレクトアレーの有効な表面から反射された電磁場は、著しい高性能を実現するためにミリ波において直接的にユニット・セル内に暗示的な位相制御を組み入れることによって制御される。本明細書における開示に基づいて得られる解は、素早く、実施することが単純であり、多数のRFチェーンを必ずしも必要とせずに、広角電子ビーム・ステアリング(±78°コーン)を可能にし、いかなる利得/周波数要求に対してもスケーリング可能であり、より小さな衛星プラットフォーム用に折り畳み可能に作られてもよく、非常に信頼性が高く、そして低いDC電力しか消費しない。このスマート・リフレクトアレー・プラットフォームは、シングル/マルチ・ペンシル・ビーム、コンタード・ビーム、及びより広い角度にわたるそのスキャニングを含む放射パターン制御に関する任意の位相のみの合成技術を実施できる。この開示は、次世代地上/大気/宇宙通信システム及びレーダに可能性として役立つはずである。
【0058】
ユニット・セル構造
下記に説明するものは、ミリ波、60GHz用に再構成可能なユニット・セルを用いるアンテナ素子である。しかしながら、下記に説明するように、他の実施例では、寸法を、他の波長及び周波数用に選択することができる。図から分かるように、本発明の実施例は、アースした基板12上のミリ波ユニット・セル10を提供する。この実施例では、アースした基板は、Rogers 5880であるが、他の基板、好ましくは低損失基板を他の実施例では使用することができる。
【0059】
ユニット・セル10は、電磁場を反射するためのパッチ14を含む。パッチは、基板12上の電導性層又はプレートである。この実施例では、パッチは銅であるが、他の金属材料又はさもなければ電導性材料を他の実施例では使用することができる。
【0060】
パッチ14の形状は、示したように正方形である。しかしながら、パッチ14が必要とされる偏波の電磁場を反射することができる限り、パッチ14をいずれかの任意の形状とすることができる。
【0061】
この実施例では、アンテナ素子は、それぞれ、第1(y)の偏波方向及び第2(x)の偏波方向に偏波された第1の直線偏波及び/又は第2の直線偏波を有する電磁放射を用いて動作するように構成される。第1の偏波方向及び第2の偏波方向は、好ましくは実質的に直交する、とはいえこれは必要不可欠ではない。この実施例では、第1の偏波方向(y)が垂直であり、そして第2の偏波方向(x)が水平である。しかしながら、他の方向を他の実施例では使用することができる。衛星通信では主に、偏波は、直交である。同じことが地上用途についても当てはまる。
【0062】
パッチ14は、第1の偏波方向に垂直な第1の長さ60及び第2の偏波方向に垂直な第2の長さ62を有する(図9及び図16参照)。
【0063】
アンテナ素子は、それぞれの長さを有する第1の位相制御線16、第2の位相制御線18、第3の位相制御線20及び第4の位相制御線22を含み、またスタブとも呼ばれる。これらは、この実施例ではパッチ14と同じ材料から作られる電導性スタブである、けれども位相制御線を他の実施例では異なる材料とすることができる。第1の位相制御線、第2の位相制御線、第3の位相制御線、及び第4の位相制御線は、それぞれ長さL1Y、L2Y、L1X、L2Xを有する。第1の位相制御線及び第2の位相制御線L1Y、L2Yは、第1の偏波の電磁場を反射するように配列される。第3の位相制御線及び第4の位相制御線L1X、L2Xは、第2の偏波の電磁場を反射するように配列される。
【0064】
位相制御線L1Y~L2Xの長さは、必要とされる位相シフトにより決定される。しかしながら、幅は、インピーダンス・マッチング必要条件により決定される。これはまた、インピーダンス周波数依存性を作る周波数の関数でもある。いくつかの実施例では、位相制御線の幅を、PINダイオード・パッド幅の幅と同等にすることができる。PINダイオード・パッドは、下記に論じられる。
【0065】
この実施例では、第1の位相制御線及び第2の位相制御線L1Y、L2Yの長さは、第1の偏波方向であり、そして第3の位相制御線区間及び第4の位相制御線区間のL1X、L2Xは、第2の偏波方向である。言い換えると、第1の位相制御線及び第2の位相制御線L1Y、L2Yの長さは、第1の方向に平行であり、そして第3の位相制御線及び第4の位相制御線のL1X、L2Xの長さは、第2の方向に平行である。しかしながら、このことは、位相制御線が適切な偏波を有する電磁場を反射するように配列される場合、すべての実施例で必ずしも必要ではない。
【0066】
この実施例では、第1の位相制御線及び第2の位相制御線L1Y、L2Yが一直線に整列され、そして第3の位相制御線及び第4の位相制御線L1X、L2Xが一直線に整列される。しかしながら、下記により詳細に説明するように、一直線の整列は、すべての実施例で必ずしも必要ではない。
【0067】
第1のパッチ長及び第2のパッチ長60、62並びに位相制御線L1X、L2X、L1Y、L2Yの長さは、下記に説明するように所望の周波数及び反射位相ビヘイビアを与えるように選択される。
【0068】
この実施例では、第1の偏波及び第2の偏波に対して同等の性能を与えるために、特に第1の偏波及び第2の偏波が同じ周波数ビヘイビアを示しそして同じ周波数で動作できるように、L1X=L1Y及びL2X=L2Yである。
【0069】
この実施例では、第1の位相制御線及び第2の位相制御線L1Y、L2Yは、第1の偏波方向でパッチの反対側に設置される。
【0070】
この実施例では、第3の位相制御線及び第4の位相制御線L1X、L2Xは、第2の偏波方向でパッチの反対側に設置される。
【0071】
アンテナ素子は、第1の2値スイッチング・デバイス24、第2の2値スイッチング・デバイス26、第3の2値スイッチング・デバイス28及び第4の2値スイッチング・デバイス30、この実施例ではPINダイオードであり、また制御デバイスとも呼ばれる、を含み、これらは、この実施例では、ディジタルにバイアス印加することができる。ディジタル・バイアスを与えることにより、DCバイアス印加回路を単純化する。PINダイオードは、+/-5V又は0Vを与えると、ON又はOFFのいずれかである。PINダイオードをON/OFF方式で動作させると、温度変化に起因する変動の機会がほとんどない。本発明の実施例は、バラクタ・ダイオード又は位相変更機構の使用を制限する温度変化が顕著なことがあるケースに対して良く適している。
【0072】
PINダイオード24~30の各々は、ダイオード方向を有し、この方向はダイオードが通常の電流に対して本来導電性であり得る方向である。したがって、ダイオード方向は、アノードからカソードへである。
【0073】
第1のPINダイオード24は、第1の位相制御線区間16を介してパッチ14をRFグランドに選択的に電気的につなげることができる。第1のPINダイオード24は、パッチから第1の位相制御線16(L1Y)へのダイオード方向を有する。この実施例では、第1のPINダイオード24が、パッチと第1の位相制御線区間16(L1Y)との間につなげられ、そして第1の位相制御線16(L1Y)が、第1のPINダイオード24とRFグランドとの間につなげられる。第1のPINダイオード24のアノードがパッチ14に電気的に接続され、そして第1のPINダイオード24のカソードが第1の位相制御線16(L1Y)に電気的に接続される。
【0074】
第2のPINダイオード26は、第2の位相制御線18(L2Y)を介してパッチをRFグランドに選択的に電気的につなげることができる。第2のPINダイオード26は、第2の位相制御線18(L2Y)からパッチ14へのダイオード方向を有する。この実施例では、第2のPINダイオード26が、パッチと第2の位相制御線18(L2Y)との間につなげられ、そして第2の位相制御線18(L2Y)が、第2のPINダイオード26とRFグランドとの間につなげられる。第2のPINダイオード26のカソードがパッチ14に電気的に接続され、そして第2のPINダイオード26のアノードが第2の位相制御線18(L2Y)に電気的に接続される。
【0075】
第3のPINダイオード28は、第3の位相制御線20(L1X)を介してパッチをRFグランドに選択的に電気的につなげることができる。第3のPINダイオード28は、パッチから第3の位相制御線20(L1X)へのダイオード方向を有する。この実施例では、第3のPINダイオード28が、パッチと第3の位相制御線20(L1X)との間につなげられ、そして第3の位相制御線20(L1X)が、第3のPINダイオード28とRFグランドとの間につなげられる。第3のPINダイオード28のアノードがパッチ14に電気的に接続され、そして第3のPINダイオード28のカソードが第3の位相制御線20(L1X)に電気的に接続される。
【0076】
第4のPINダイオード30は、第4の位相制御線22(L2X)を介してパッチをRFグランドに選択的に電気的につなげることができる。第4のPINダイオード30は、第4の位相制御線22(L2X)からパッチ14へのダイオード方向を有する。この実施例では、第4のPINダイオード30が、パッチと第4の位相制御線22(L2X)との間につなげられ、そして第4の位相制御線22(L2X)が、第4のPINダイオード30とRFグランドとの間につなげられる。第4のPINダイオード30のカソードがパッチ14に電気的に接続され、そして第4のPINダイオード30のアノードが第4の位相制御線22(L2X)に電気的に接続される。
【0077】
図1では、パッチ14とダイオード24~30との間に位相制御線の小さなセクションが示されるように見える、しかしながら、これは、図の明瞭さのためだけである。それにもかかわらず、いくつかの実施例では、位相制御線を選択的に完結させそしてこれによりそれぞれの位相制御線を介してパッチ14をRFグランドにつなげるように、PINダイオードを位相制御線の内部に設置することができる。
【0078】
この実施例では、各々の位相制御線16、18、20、22は、それぞれの位相制御線の端部のところでそれぞれのパッド36、38、40、42を介してRFグランドにつなげられ、その端部は、それぞれの位相制御線がそれぞれのPINダイオードにつなげられる端部とは反対である(図2参照)。言い換えると、各々の位相制御線の一方の端部がPINダイオードに接続され、そして他方の端部がパッドに接続される。
【0079】
この実施例では、RFグランドはまた、下記に説明されるだろうように、DCグランドでもある。しかしながら、RFグランドは、すべての実施例において必ずしもDCグランドである必要はない。RFグランドがDCグランドである場合、すべてのスイッチング・デバイスに対して共通の(単一の)グランド端子を使用することが可能であるので楽になる。
【0080】
アンテナ素子10は、パッチ14に電気的につなげられたDCバイアス入力部32を含み、その結果DCバイアス入力部32に印加された電圧レベルの変動が第1の偏波及び/又は第2の偏波を有する電磁放射に関する1.5ビット反射位相制御を行うために第1のPINダイオード、第2のPINダイオード、第3のPINダイオード及び第4のPINダイオードのバイアスを変化させることができる。
【0081】
この実施例では、DCバイアス入力部32は、ミリ波での実装を容易にできる単一のDCバイアス線である。
【0082】
DCバイアス入力部32は、それぞれ第1の電圧レベル、第2の電圧レベル及び第3の電圧レベル、V、V及びV、で動作可能である。このケースでは、V=0V、V=5V、及びV=-5Vであるが、電圧レベルが適切にスイッチング・デバイス24~30をスイッチすることができる場合、他の電圧レベルを他の実施例では使用することができる。1つの実施例では、MACOM(TM)PINダイオードを使用して電力消費を減少させるために、V=0V、V=1.5V、及びV=-1.5Vである。より低い接合電圧を用いるダイオードを選択することによって電力消費をさらに減少させることができる。例えば、MACOM MA4AGBLP912 AlGaAsビーム・リードPINダイオードを使用することができる、及び/又はMA4GP905 GaAsビーム・リードPINダイオードを使用することができる。
【0083】
動作のバイアスが、本明細書に添付されている、GHULAM AHMAD、TIM W.C. BROWN、CRAIG I. UNDERWOOD及びTIAN HONG LOHによる「Reasonably Green Quantised Phase Smart Antennas using PIN Diode Switches」に記載されている。
【0084】
第1のPINダイオード24は、第1の電圧レベル及び第3の電圧レベルに呼応して実質的に非導電性であり、そして第2の電圧レベルに呼応して導電性であるように構成される。第2のPINダイオード26は、第1の電圧レベル及び第2の電圧レベルに呼応して実質的に非導電性であり、そして第3の電圧レベルに呼応して導電性であるように構成される。第3のPINダイオード28は、第1の電圧レベル及び第3の電圧レベルに呼応して実質的に非導電性であり、そして第2の電圧レベルに呼応して導電性であるように構成される。第4のPINダイオード30は、第1の電圧レベル及び第2の電圧レベルに呼応して実質的に非導電性であり、そして第3の電圧レベルに呼応して導電性であるように構成される。
【0085】
上に説明したように、位相制御線16~22は、それ自体のそれぞれのPINダイオード24~30とRFグランドとの間に電気的につなげられる。したがって、第1の電圧レベル、第2の電圧レベル、及び第3の電圧レベルは、上に論じたスイッチングを行うために適切な接合電圧に打ち勝つために十分であることが必要である。
【0086】
上記の結果として、第1の偏波及び第2の偏波の各々に対して、DCバイアス入力電圧レベルの適切な選択によって、アンテナ素子10を、3つの反射位相状態のうちの1つに設定することができる。
【0087】
下記の等式は、リフレクトアレーの位相をどのように量子化するかを述べる際に役立つことがある。等式の根拠は、本明細書に添付されている、Ghulam Ahmad、Tim WC Brown、Craig I Underwood及びTian Hong Lohによる「Reasonably Green Smart Quantised Phase Smart Antennas using PIN Diode Switches」に記載されている。これはほんの1つの可能性に過ぎず、多くの他の可能な組合せがある。
【数1】

ここでは、
ΔΦはアンテナ素子により導入される離散量子化位相シフトであり、
ΔΦはその特定の素子からの所望の連続位相であり、そして
%はモジュロ(剰余)演算子を表す。
【0088】
DC電圧レベルのうちのいずれかがユニット・セル10に印加されると、DC電圧がユニット・セルの両方の偏波構造に同時に印加される。これゆえ、各々の偏波に対して、ユニット・セルは3つの位相状態を有する。1つの偏波の位相状態は、この実施例におけるように他の偏波の位相状態と同一であってもよいが、他の実施例では、位相状態は設計に基づいて全く異なることがある。それにもかかわらず動作は、同じ原理に留まるはずである。
【0089】
さらにその上、両方の偏波ビームは、同じ角度(カバレッジ領域)に向くことができ、これは通常、同じ周波数又は異なる周波数で動作しながら、一方のビームが送信用あり、他方が受信用である衛星動作におけるケースである。
【0090】
この実施例では、DCバイアス入力部32を、直交偏波を減少させるためユニット・セル構造の全体にわたって電流分布についてユニット・セルを電気的にバランスさせるために、第1の偏波方向にΔyだけそして第2の偏波方向にΔxだけパッチ14の中心からオフセットさせる。共偏波遠方電場及び直交偏波遠方電場は、アンテナの表面電流分布に関係する。表面電流を制御することによって、遠方電場を制御することが可能である。
【0091】
言い換えると、DCバイアス線32をある大きさだけ中心からオフセットさせると、これは、直交偏波に呼応するモードの励起を減少させることによってアンテナ遠方電場内の直交偏波された電場を減少させる電流分布をもたらす。
【0092】
オフセットの大きさは、位相制御線区間の線16~22及びダイオード・パラメータにより決定され、そして当業者により決定されてもよい。
【0093】
この実施例では、アンテナ素子10は、3層基板構造である。これを、図3で最も明瞭に見ることができる。
【0094】
アンテナ素子10は、第2の基板34を含み、これは第1の基板12と同じであっても異なってもよい。この実施例では、第2の基板はボンド-ポリ(RO2929)層である。第2の基板34を、いくつかの他の実施例ではまた、ユニット・セルに剛性を与えるために並びに下記に論じるように第3の層上に分離スタブをプリントするために使用することができる。第2の基板32は、基板12よりも厚くてもよい。
【0095】
3層は、第1の基板の第1の側上の第1の層又は最上層、第1の基板の第2の側又は底部側上で、第1の基板と第2の基板との間に実効的に挟まれそして第2の基板の第1の側に隣接する第2の層、及び第2の基板の第2の側上の第3の層又は底部層を含む。第1の基板を、両面PCBと考えることができる。
【0096】
パッチ14、PINダイオード24~30、位相制御線16~22、及びパッド36、38、40、42は、ユニット・セル10を形成し、そして第1の層のところに設けられる。このようにして、アンテナ素子は、単一のDCバイアス線を使用するアンテナ素子の第1の層又はRF平面で直接的に、第1の偏波を有する電磁放射に対して、及び/又は第2の偏波を有する電磁放射に対して1.5ビット位相制御を実施するように構成される。
【0097】
第2の層又は中間層は、この実施例では安定な電圧レベルを与えるグランド層35であり、そしてこの実施例では第1の基板の第2の側上に設けられそしてこの実例では0Vであるグランド電位に接続された銅の層である。他の実施例では、他の導電性材料をグランド層用に使用することができる。
【0098】
上に論じたように、各々の位相制御線16、18、20、22は、それぞれのPINダイオードにつなげられる端部とは反対であるそれぞれの位相制御線の端部のところにそれぞれのパッド36、38、40、42を有する。言い換えると、各々の位相制御線の一方の端部が、PINダイオードに接続され、そして他方の端部がパッドに接続される。この実施例では、各々のパッドは、電導性であり、そしてそれぞれのスルー・ホール・ビア44、46、48、50を介してグランド層への電気的接続を与え、スルー・ホール・ビアは、第1の基板を貫通し、そして第1の層と第2の層とをリンクする。ビア・ホール44、46、48、50は、例えば、メッキされたスルー・ホールであることによりそれぞれのパッドをグランド層35に電気的に接続する。
【0099】
この実施例では、すべての実施例で必ずしも必要ないとはいえ、ビア・ホール44、46、48、50はまた、第2の基板を貫通し、これにより第1の層、第2の層、及び第3の層をリンクする。ビア・ホール44、46、48、50は、第3の層内のそれぞれのパッドに各々電気的につなげられ、これにより第3の層のところでグランドへの電気的な接続を与える。このことは、製造することが困難であり、同様に高価であり信頼性に欠けるブラインド・ビアを設けることを回避するという利点を提供する。第1の基板及び第2の基板の両方を貫通することにより、製造は信頼性がある。ビアはまた、グランドが第3の層又は底部層上で利用可能であることを意味する。第3の層又は底部層上でのグランドの利用可能性は、DCリターン・パスを容易にする。同様に、ビアが第3の層又は底部層のところで終端することは、後の段階での製造欠陥発見を可能にする。
【0100】
この実施例では、ビア44、46、48、50は、城郭風の穴である。これらのビアを、隣り合う類似のユニット・セル同士の間で共有することができ、これゆえ、半分の部分(及び半分のパッド)だけが図に示される。ビアは、リフレクトアレー内に設置されると隣り合うユニット・セルから残り半分を得るだろう。これは、最終的なリフレクトアレー内でグレーティングのない主ローブ・スキャニングを実現するためユニット・セル間距離を減少させるために行われる。このようにして、全体でより少ないホールしか必要としない。加えて、改善されたユニット・セル間間隔のために、広角スキャニングが可能である。
【0101】
DCバイアス入力部は、グランド層への電気的接続なしに第1の層と第3の層とをリンクするDCビア52(図6)を含む。DCビア52は、第1の基板及び第2の基板並びにグランド層を貫通し、そして、例えば、メッキしたスルー・ホールであることにより、パッチ14を第3の層内のDCバイアス・パッド54に電気的に接続する。グランド層は、DCビア52から電気的に絶縁され、ここでは、この実施例では、DCビア52の周りに間隔を設ける穴56を有することによって、グランド層へのDCビア52の電気的接続を避けるために、DCビアはグランド層を貫通する。他の実施例では、電気的絶縁性材料を、DCビア52とグランド層との間に配置することができる。
【0102】
図5及び図6に見られるように、DCバイアス入力部は、DCをRF信号から分離するために第3の層のところでDC分離素子58に電気的につなげられる。この実施例では、DC分離素子は、DCバイアス・パッド54から横方向に延びるDC分離スタブ58である。見られるように、DC分離スタブ58は、細長くそしてDCバイアス・パッド54から2つの正反対の方向に延びるが、他の配置が他の実施例では可能である。
【0103】
この実施例では、パッドは、すべて銅である。しかしながら、他の電導性材料を、他の実施例では使用することができる。
【0104】
上の説明では、複数の素子が電気的に接続される又はつなげられるように記述され、そして他の構成要素がこれらの間につなげられないように記述される場合には、複数の素子は、好ましくは直接接続される又はこれらの間に重要な電気的構成要素なしに接続される。
【0105】
アンテナ素子の動作が、下記に説明される。
【0106】
動作:垂直偏波
図8には、垂直偏波を担当するユニット・セルの一部分だけが示される。構造の残りは、明確さのために示されない。同様に、OFF状態PINダイオードに関して、等価OFF状態回路は、単純化のためにパッチに接続して示されないが、実際には存在することになる。
【0107】
垂直偏波を用いると、ユニット・セルは、3つの状態を有する。これらの状態は、DCバイアス電圧により選択される。所与の時刻において、(所与の3つの電圧レベルの中からの)DC電圧レベルのうちの1つがユニット・セルに印加されるだろう、そして対応する状態が選択されるはずである。
【0108】
この記述した実施例では、DCバイアス電圧は、下記のように構成される:
【表1】
【0109】
垂直偏波:状態1
図9に示したように、DCバイアス入力部が第1の電圧レベルであるときには、このケースではDC=0Vであり、第1のダイオード及び第2のダイオード24及び26の両方は、起動されない(ダイオードのゼロ・バイアス、これらはOFF状態である)。結果として、パッチ14は、(電気的な感覚で)これらのダイオードのないそれ自体のままで残される。上に述べたように、OFF状態等価回路は、ここには示されない/含まれないが、等価回路は実際には存在するだろう。
【0110】
動作の周波数は、第1の長さ60により決められる。これを、Y偏波における周波数1:FREQ1Yと呼ぶことができる。
【0111】
この周波数に対応して、設計周波数F1で観測したときに、ユニット・セルからの反射位相:PHASE1Yがある。
【0112】
これゆえ、DC=0V、→FREQ1Y→PHASE1Y:Y偏波ではこれを状態1と呼ぶ→STATE1Y
【0113】
垂直偏波:状態2
図10に示したように、DCバイアス入力部が第2の電圧レベルであるときには、このケースではDC=5V又は1.5Vであり、第1のダイオード24は順バイアスされそして第2のダイオード26は逆バイアスされる。第1のダイオード24は、閉(ON)スイッチとして働き、そして第1のスタブ16をパッチ14と電気的に接続する。第2のダイオード26は、パッチ14から第2の位相制御線区間を電気的に切り離す。
【0114】
結果として、動作の新たな周波数を有する新たな構造がある。
【0115】
これは、Y偏波における周波数2:FREQ2Yと呼ばれる。
【0116】
この周波数に対応して、ユニット・セルからの反射位相:PHASE2Yがある。
【0117】
これゆえ、DC=5V、→FREQ2Y→PHASE2Y:Y偏波ではこれを状態2と呼ぶ→STATE2Y
【0118】
垂直偏波:状態3
図11に示したように、DCバイアス入力部が第3の電圧レベルであるときには、このケースでは、DC=-5V又は-1.5Vであるときには、第2のダイオード26は順バイアスされそして第1のダイオード24は逆バイアスされる。第2のダイオード26は、閉(ON)スイッチとして働き、そして第2のスタブ18をパッチ14と電気的に接続する。第1のダイオード24は、パッチ14から第1のスタブを電気的に切り離す。
【0119】
結果として、それ自体の設計のために前の2つのケースとは異なる新たな構造が再びある。結果として、この第3の構造は、動作の新たな周波数を有する。
【0120】
これは、Y偏波における周波数3:FREQ3Yと呼ばれる。
【0121】
この周波数に対応して、ユニット・セルからの反射位相:PHASE3Yがある。
【0122】
これゆえ、DC=-5V、→FREQ3Y→PHASE3Y:Y偏波ではこれを状態3と呼ぶ→STATE3Y
【0123】
パッチ14並びにスタブ長L1Y及びL2Yが適切に巧みに設計されると、上に論じたように、Y偏波に関して0から360°の範囲内で任意の3つの位相を発生することが可能である。第1のパッチ長60が決められると、第1のパッチ長はY偏波における動作の周波数を決定する。これはまた、位相状態のうちの1つを固定させる。他の2つの位相状態は、この固定した状態に対する所望の位相差を得るためにこの周りで巧みに設計される。ユニット・セル設計は、それ自体の位相状態のうちの2つでDC電力を消費するに過ぎず、一方で1つの状態は、DC電力を消費せずそしてDC電力を節約する。
【0124】
図12では、3つの異なる共振周波数を、ダイオードのスイッチングを通して可能になる3つの構造から発生することができる。反射損失は、異なる状態のユニット・セルから反射して戻るときの電磁場強度の損失を指す。グラフに示された損失は、ユニット・セル内の損失を表し、そしてこの技術におけるデバイスと比較して最適である。
【0125】
図13では、完全なユニット・セル上に入射するY偏波した電場が矢印により示される。このユニット・セルは、図に示したように製造された、そして2つのパッドが円形であることの代わりに正方形/長方形であることで上に開示したユニット・セルとはわずかに異なる。パッドは、別の実施例では様々な形状を有することがある。しかしながら、図13は、まったく同じである動作を示す。矢印の色は、中心で最大であるこの電場の強度を表す。
【0126】
図14は、ユニット・セルの表面上の得られた電流分布を示す。赤は最大を表し、青は最小を表す。この電流分布は、STATE3Yのうちの1つである。他の2つの状態は、それら自体の、類似の分布を有するはずである。
【0127】
図13及び図14は、X偏波した部分とともに完全なユニット・セルもまた示す。しかしながら、図14の電流分布は、主な寄与がY偏波のためのユニット・セルのY部分によるものであることを表す。
【0128】
動作:水平偏波
図15には、水平偏波を担当するユニット・セルの一部分だけが示される。構造の残りは、明確さの目的で示されない。
【0129】
水平偏波を用いると、ユニット・セルは、3つの状態を有する。これらの状態は、DCバイアス電圧によって選択される。所与の時刻において、(所与の3つの電圧レベルの中から)DC電圧レベルのうちの1つが、ユニット・セルに印加されるだろう、そして対応する状態が発生されるはずである。
【0130】
水平偏波:状態1
図16に示したように、DCバイアス入力部が第1の電圧レベルであるときには、このケースではDC=0Vでり、第3のダイオード及び第4のダイオード28及び30の両方は、起動されない(ダイオードのゼロ・バイアス、これらはOFF状態である)。結果として、パッチ14は、(電気的な感覚で)これらのダイオードのないそれ自体のままで残される。上に述べたように、OFF状態等価回路は、明瞭さのためにここに示されないが、等価回路は実際には存在するだろう。
【0131】
動作の周波数は、第2の長さ62によって決められる。これを、X偏波における周波数1:FREQ1Xと呼ぶことができる。
【0132】
この周波数に対応して、この偏波に関する設計周波数で観測したときに、ユニット・セルからの反射位相がある:我々はこれをPHASE1Xと呼ぶ。
【0133】
これゆえ、DC=0V、→FREQ1X→PHASE1X:X偏波ではこれを状態1と呼ぶ→STATE1X
【0134】
垂直偏波:状態2
図17に示したように、DCバイアス入力部が第2の電圧レベルであるときには、このケースでは、DC=5V又は1.5Vであり、第3のダイオード28は順バイアスされそして第4のダイオード30は逆バイアスされる。第3のダイオード28は、閉(ON)スイッチとして働き、そして第3のスタブ20をパッチ14と接続する。第4のダイオード30は、パッチ14から第4のスタブを電気的に切り離す。
【0135】
結果として、動作の新たな周波数を有する新たな構造がある。
【0136】
これは、X偏波における周波数2:FREQ2Xと呼ばれる。
【0137】
この周波数に対応して、ユニット・セルからの反射位相:PHASE2Xがある。
【0138】
これゆえ、DC=5V、→FREQ2X→PHASE2X:X偏波ではこれを状態2と呼ぶ→STATE2X
【0139】
垂直偏波:状態3
図18に示したように、DCバイアス入力部が第3の電圧レベルであるときには、このケースではDC=-5V又は-1.5Vであり、第4のダイオード30は順バイアスされそして第3のダイオード28は逆バイアスされる。第4のダイオード30は、閉(ON)スイッチとして働き、そして第4のスタブ22をパッチ14と接続する。第3のダイオード28は、パッチ14から第3のスタブを電気的に切り離す。
【0140】
結果として、それ自体の設計のために前の2つのケースとは異なる新たな構造が再びある。結果として、この第3の構造は、動作の新たな周波数を有する。
【0141】
これは、X偏波における周波数3:FREQ3Xと呼ばれる。
【0142】
この周波数に対応して、ユニット・セルからの反射位相:PHASE3Xがある。
【0143】
これゆえ、DC=-5V、→FREQ3X→PHASE3X:X偏波ではこれを状態3と呼ぶ→STATE3X
【0144】
パッチ14並びにスタブ長L1X及びL2Xが適切に巧みに設計されると、上に論じたように、設計周波数のところでX偏波に関して0から360°の範囲内で任意の3つの位相を発生することが可能である。第2のパッチ長62が決められると、第2のパッチ長はX偏波における動作の周波数を決定する。これはまた、1つの位相状態を固定させる。その時には他の2つの位相状態は、この固定した状態に対する所望の位相差を得るためにこの周りで巧みに設計される。
【0145】
図19では、ダイオードのスイッチングを通して可能にさせる3つの構造に起因して、3つの異なる共振周波数があることが見られる。反射損失は、その異なる状態のユニット・セルから反射して戻るときのEM場強度の損失を指す。示された損失は、ユニット・セル内の損失を表し、そしてこの技術と比較して最適である。
【0146】
図20では、完全なユニット・セル上に入射するX偏波した電場が矢印により示される。この図に示したこのユニット・セルは、図13に関連して上に開示したユニット・セルとはわずかに異なる、しかしながら、動作はまったく同じである。矢印は、中心で最大であるこの電場の強度を表す。
【0147】
図21は、ユニット・セルの表面上の得られた電流分布を示す。赤は最大を表し、青は最小を表す。この電流分布は、STATE3Xのうちの1つである。他の2つの状態は、それら自体の、類似の分布を有するはずである。
【0148】
図20及び図21は、さらにY偏波した部分とともに完全なユニット・セルを示す。しかしながら、図21の電流分布は、主な寄与がX偏波のためのユニット・セルのX部分にあることを表す。
【0149】
ΔY及びΔX変数の関数
直交偏波ビヘイビア/ユニット・セルの偏波純度
物理的な構造が異なるダイオードのスイッチングにより変えられると、偏波純度は、特定の偏波に対して失われる。これゆえ、ユニット・セルは、本明細書ではΔY及びΔXと呼ばれる2つの変数の形態で良い偏波純度を実現するための機構を含む。その機構は、上に開示したように中心からDCバイアス・ビアをオフセットさせることにより構造の表面電流分布を制御する。中心からどれだけオフセットさせるかは、必要とされる位相状態に従うべきであり、そして当業者により決定されてもよい。最適化の後で、図22に示したような結果が、上に述べた状態に対して実現された。
【0150】
「共偏波(Co Pol)」は、所望の偏波を有する電場の反射を表す。直交偏波(Cross Pol)は、望まれない偏波の電場の反射であり、これは所望の偏波に直交する。例えば、入射電場がX偏波される場合には、この設計では、X偏波(同じ偏波)される反射電場を予期できる。しかしながら、多数の状態のために、これは完全には可能でない。これゆえ、直交する偏波(この実例ではY偏波)のある大きさが、入射X偏波に関して反射されるはずである。DCバイアス点をオフセットさせることにより、直交偏波された電場を発生する望まれないモードを抑制できる。これらのモードの抑制は、DCバイアス点をオフセットさせることを通してこの発明の実施例で実現されてきているユニット・セルの偏波純度を向上させる。
【0151】
偏波純度をさらに向上させるために、提案したユニット・セルはまた、この分野で知られておりそして4つの象限のグローバル鏡面対称又は減らした数の素子(最小4つ)を通したローカル鏡面対称などの文献の共通一般常識により記述された直交偏波技術を使用するリフレクトアレー内に実装されるように互換性がある。各々のユニット・セルの向きは、この機能を可能にする。このことが、さらに特定の用途に対してでさえ直交偏波を減少させることに適応することが可能である。
【0152】
説明したように複数のリフレクトアレー・アンテナ素子を使用して、リフレクトアレーを提供することができる。好ましい実施例では、複数のアンテナ素子が互いに隣接して配置され、その結果、隣接するアンテナ素子の城郭風のビア・ホールが互いに隣接して、隣接するアンテナ素子が上に開示したようにビア・ホールを共有することを可能にする。
【0153】
リフレクトアレー内のリフレクトアレー・アンテナ素子の各々を、異なる反射位相状態、そしてこれゆえ異なる位相シフトを与えるように構成することができる。与えられた位相シフトを、リフレクトアレー内部の素子の場所及びリフレクトアレー・アンテナの主ビーム放射方向に基づいて選択することができる。
【0154】
リフレクトアレーは、アンテナ素子の各々のDCバイアス入力部の電圧レベルを制御するように構成された制御システムを含むことができる。いくつかの実施例では、制御システムは、単一のペンシル・ビーム、多数のペンシル・ビーム、コンタード・ビーム、及びスキャニング・ビームのうちの1つ又は複数及び任意選択ですべてを与えるようにリフレクトアレーを制御することができる。いくつかの実施例では、リフレクトアレーは、位相合成に基づいてサイドローブ制御技術を実施するためのプラットフォームを提供することができる。いくつかの実施例では、リフレクトアレーは、単一中央供給(centre fed)若しくはオフセット供給ケース、デュアル・カセグレイン若しくはグレゴリアン、又はリング・フォーカス・アンテナを含め多数アンテナ構成に適している。いくつかの実施例では、リフレクトアレーは、連続ビーム・スキャン又はスイッチト・ビーム、適応型ビーム成形又はスイッチト・ビームフォーミングができる。
【0155】
利点は、ミリ波での設計内のデバイスの数が増加すると、複雑性が非常に高くなることを含む。これは、デバイスを含むための物理的空間の減少、デバイスのDCバイアス印加、及び必要なRF性能を含む。本発明の実施例は、アンテナが小型になることを可能にし、そしてアンテナ・アレーの比較的小さな物理的アパーチャを使用して所望の性能基準を満足できる。
【0156】
本発明の実施例の特徴及び利点は、下記を含む:
・ 第1の偏波及び第2の偏波の両者に関する状態1、2、3を、単一のパッチ上で個別に制御することができる
・ 単一のDC線を依然として維持しながら、偏波当たり2つのダイオード(デュアル偏波に関して合計で4つのダイオード)を使用する1.5ビット実装例(3つの位相状態)
・ 供給源及びスマート反射表面から構成されるリフレクトアレー
・ 上に詳細に説明したようなユニット・セルから構成されるスマート反射表面
・ 各々のユニット・セルが1.5ビット反射位相制御を実施するために3つの位相状態を与える
・ 好ましい設計において使用されるホール共有トポロジを用いて、少ない数のビア・ホールが必要である
・ ただ1つのDCバイアス線が、各々のユニット・セルにおいて2つの同一周波数又は異なる周波数で2つの直交直線偏波を制御するために使用される
・ 単一のDCバイアス線がユニット・セル内の偏波純度を向上させるために利用される
・ 2つの直交して偏波されたアンテナ・ビームを同時に制御する
・ 両方の直交して偏波されたアンテナ・ビームが同じ周波数又は異なる周波数を有することがある
・ ユニット・セル内の低損失のために低損失スマート反射表面
・ 任意のサイズのリフレクトアレーへ拡張できる設計
・ アンテナの直接RF平面のところに陰の位相シフタの実装
・ ビームフォーミングのために通常必要とされる別々の位相シフタを削除する
・ 非常に高い利得のために大きな設計に好都合である低い複雑性
・ 簡単な制御実装例
・ 広角ビーム・スキャニング:任意のファイ(0から360度)においてシータで+/-78度
・ 不連続/量子化反射位相制御
・ 性能が、連続位相制御システムに比較してほんの1.6dBの低下に過ぎない
・ RFレベルでのDCバイアス印加の複雑性が単一ビット実装例に比較して増加しない
・ 単一のペンシル・ビーム、多数のペンシル・ビーム、コンタード・ビーム、及びそのスキャニング・ビームを含む放射パターン制御用の任意の位相合成技術を実装するためのプラットフォームを提供する
・ 位相合成に基づきサイドローブ制御技術を実装するためのプラットフォーム
・ 単一中央供給ケース若しくはオフセット供給ケース、デュアル・カセグレイン若しくはグレゴリアン、又はリング・フォーカス・アンテナを含め多数アンテナ構成のために適している
・ プレーナ・プロファイル/低プロファイル、及び共形に作られることがある
・ 非常に高い利得及び広角ビーム・スキャニング能力を同時に可能にする
・ 連続ビーム・スキャン又はスイッチト・ビーム=適応ビーム成形又はスイッチト・ビームフォーミングができる
・ 高利得、広角スキャニング・スマート・アンテナを用いる低DC電力消費解
・ ミリ波ビームフォーミングへの代替物:ビーム成形器により達成されると同じ仕事を行うが、実装例は完全に異なる
・ 5Gバックホール、衛星間リンク、5G受信及び送信アンテナ、軍用アンテナ、宇宙アプリケーション、自動車レーダ、高データ・レート・ワイアレス通信システム(屋外セルラ・システム)、撮像システム、擬似光学パワー合成器、等における可能なアプリケーション
・ PINダイオードを与えられる任意の周波数範囲へとスケーリングすることが可能な設計がその周波数で利用可能である
・ 非常に信頼性のあるPINダイオードによる信頼性のある設計
・ 低RF損失
・ 低電力
・ 軽量
・ 高データ転送レート
・ 低コスト
・ 未来型の(まだ定義されていないような)アプリケーションを可能にする
【0157】
さらなる詳細、説明、及び選択肢を、https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0094576518308622において入手可能なAhmad等による「An investigation of millimetre wave reflectarrays for small satellite platforms」、Acta Astronautica、151巻、2018年10月、ページ475~486を参照することにより見出すことができ、その開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれている。
【0158】
変更例
上に説明した実施例では、±5V及び0Vが使用されるが、有利な実施例は、高い電流又は電圧で動作するダイオードと比較して低い電力消費を実現するために5mA電流及び/又は+、-1.5V DCで動作するPINダイオードを使用することができる。ダイオードが低い接合電圧値で選択される場合には、電力消費をさらに減少させることができる。1つの実例では、接合電圧値は、1.35V付近であってもよいが、0.8Vまで低くてもよい。
【0159】
上に説明した実施例では、PINダイオードは、パッチとそれぞれの位相制御線区間との間につなげられるが、いくつかの実施例では、PINダイオードをそれぞれの位相制御線区間とRFグランドとの間につなげることがあり、位相制御線区間がパッチに直接接続されることを意味する。この点に関して、このような実施例を示している図25を参照する。ダイオードとRFグランドへの接続部との間に位相制御線の小さなセクションが示されるように見えるが、これは単に図の明確さのためであることに留意すること。それにも関わらず、上に述べたように、いくつかの実施例では、位相制御線区間を選択的に終わらせ、これによりそれぞれの位相制御線区間を介してパッチをRFグランドにつなげるように、PINダイオードを位相制御線区間の内部に設置することができる。
【0160】
図25のような配置では、PINダイオードを、ビア・ホールの内部に設置することができる。図26から図31を参照する。この実施例では、ビア・ホールは、メッキされず、PINダイオードは、ビア・ホールを通って延び、これらのそれぞれの位相制御線区間をグランド層35に接続する。
【0161】
上に開示された実施例では、第1の位相制御線区間及び第2の位相制御線区間がパッチの反対側に設置され、第3の位相制御線区間及び第4の位相制御線区間がパッチの反対側に設置されるが、これは、すべての実施例で必ずしも必要ではない。位相制御線区間を任意に設置することができる。しかしながら、各々の線は、共偏波並びに直交偏波に寄与するだろう。しかしながら、共偏波電場を相加的にすることができる一方で直交偏波電場が相殺される場合に、ユニット・セルを設計することができる。図32を参照する。
【0162】
図32の実施例では、第1の位相制御線区間及び第2の位相制御線区間は、位相制御線のあるセクションを共有する。同様に、第3の位相制御線区間及び第4の位相制御線区間は、位相制御線のあるセクションを共有する。ユニット・セル10’は、第1の偏波方向にパッチ14に直接接続され、そしてパッチ14から延びる第1の位相制御線セクション116、及び第2の偏波方向にパッチ14に直接接続され、そしてパッチ14から延びる第2の位相制御線セクション120を含む。
【0163】
ユニット・セル10’はまた、第1の位相制御線セクションとRFグランドとの間に、このケースでは第2の偏波方向に、第1の位相制御線セクションから延びる第3の位相制御線セクション及び第4の位相制御線セクション114、118、並びに第2の位相制御線セクションとRFグランドとの間に、このケースでは第1の偏波方向に、第2の位相制御線セクション120から延びる第5の位相制御線セクション及び第6の位相制御線セクション122、124を含む。
【0164】
第1のPINダイオード24は、第3の位相制御線セクション内部に設けられ、第2のPINダイオード26は、第4の位相制御線セクション内部に設けられ、第3のPINダイオード28は、第5の位相制御線セクション内部に設けられ、そして第4のPINダイオード30は、第6の位相制御線セクション内部に設けられる。L1Yは、パッチから第3の位相制御線セクションまでの第1の位相制御線セクションの長さである。
【0165】
2Yは、第3の位相制御線セクションの長さである。
【0166】
3Yは、パッチから第4の位相制御線セクションまでの第1の位相制御線セクションの長さである。
【0167】
4Yは、第4の位相制御線セクションの長さである。
【0168】
1Xは、パッチから第5の位相制御線セクションまでの第2の位相制御線セクションの長さである。
【0169】
2Xは、第5の位相制御線セクションの長さである。
【0170】
3Xは、パッチから第6の位相制御線セクションまでの第2の位相制御線セクションの長さである。
【0171】
4Xは、第6の位相制御線セクションの長さである。
【0172】
Y偏波に関して:
第1の位相制御線実効長=L1Y+L2Y
【0173】
第2の位相制御線実効長=L3Y+L4Y
【0174】
2Y及びL4Yを、両者ともゼロ又は非ゼロとすることができる。或いは、これらのうちのいずれかをゼロとすることができ、そして残りを非ゼロとすることができる。
【0175】
第1の位相制御線セクション116は、L1Y及びL3Yを与え、これらはY偏波に関する主位相制御線セクション長であり、そして要求される位相シフトにより調節することができる。これらの長さは、L2Y及びL4Yがゼロであるか又は非ゼロであるどうかに応じて変えられる。
【0176】
X偏波に関して:
第3の位相制御線実効長=L1X+L2X
【0177】
第4の位相制御線実効長=L3X+L4X
【0178】
2X及びL4Xを、両者ともゼロ又は非ゼロとすることができる。或いは、これらのうちのいずれかをゼロとすることができ、そして残りを非ゼロとすることができる。
【0179】
第2の位相制御線セクション120は、L1X及びL3Xを与え、これらはX偏波に関する主位相制御線セクション長であり、そして要求される位相シフトにより調節することができる。これらの長さは、L2X及びL4Xがゼロであるか又は非ゼロであるどうかに応じて変えられる。
【0180】
ダイオード動作は、上に説明した主な実施例と同じままである。
【0181】
スタブの幅は、異なることがある。この理由のために、あるものは厚いように示され、そして他のものは薄いように示される。
【0182】
ダイオードが関心のある波長において互いに分離して見えるように、ダイオードは、十分に隔てられるはずである。
【0183】
DCバイアス線を、設計に応じて、スタブのところでさえ任意の適切な場所へ移動することができる。これは、DCバイアス線がパッチそれ自体の上になければならない必要が必ずしもないことを意味する。
【0184】
ダイオードの配置の多くの組合せ、例えば、スタブ(L3Y若しくはL3X)の同じ側又は反対側、があってもよい。
【0185】
ダイオードを、示したように追加のスタブ(114、118、122、124)(例えばここではL2Y及びL4Y)を用いてマウントすることができる、又は主スタブ116、120(長さL3Y、又はL3Xを有するスタブ)上に直接マウントすることができる。
【0186】
図32の実施例では、ダイオードの片側配置に適応させるために、それ自体の構成においてより低い直交偏波を実現するために中心からDCバイアス線への必要なシフトを行うことが好まれる。
【0187】
上に説明した好ましい実施例では、スイッチング・デバイスがPINダイオードであるが、他のスイッチング・デバイスを他の実施例では使用することができる。例えば、MEMSデバイス又は(FET若しくはトランジスタなどの)CMOSデバイスを使用することができる。スイッチング・デバイスを選択するための適切な基準は、サイズが小さいこと、最小の電力消費であること、最小の挿入損失であること、及びDCバイアスを印加することが容易であるべきであることを含む。PINダイオードは、慣例では多くの電力を消費する。しかしながら、好ましい実施例では、そのDC電流は、DC電力消費を低くするためにそのDC駆動電流及び電圧を制御することによって制御される。
【0188】
上に論じた実施例では、PINダイオードは、パッチに印加されるDCバイアス入力の変動によりスイッチされ、この変動がパッチとグランドとの間のPINダイオードの両端にDC電圧を生み出す。しかしながら、他の実施例では、他の方法でスイッチング・デバイスを制御することが可能である。例えば、各々のスイッチング・デバイスを、それ自体のそれぞれのバイアス電圧により制御することができる。各々のデバイスは、それ自体のバイアス端子及びDC電圧を有することができる。このことは、例えば、スイッチング・デバイスがRF MEMSである場合には適切であることがあり、RF MEMSに関して、各々のスイッチング・デバイスは、別々のDCバイアス線を必要とするはずである。このようなケースでは、パッチそれ自体は、必ずしもDC電圧を必要としないことがある。加えて又は代わりに、PINダイオードの所望の導電性状態及び非導電性状態が依然として実現されることを確実にするために、PINダイオード及びDC入力電圧レベルが適切に設定される場合、位相制御線区間がパッチと別の安定な電位との間につなげられる可能性があることが、除外されない。これが、同じ設計に異なるPINダイオードを有することを可能にする。あるPINダイオードに関して、そのアノードは、カソードよりも1.5V高いはずである。あるNPNトランジスタに関して、そのベースは、エミッタよりも0.7V高いはずである。FET及びPNPトランジスタの動作は、バイアスを印加することによりこれらを動作させるためにやはり類似の線上であってもよい。
【0189】
それ自体ではパッチは、DCバイアスを必ずしも必要としない。適切な場合には、パッチを、接続されたスイッチング・デバイスのDCバイアス印加用の端子のうちの1つとして使用することができる。
【0190】
PINダイオード又はスイッチング・デバイスは、DCバイアスを有するはずである。これは一般に2つの端子を必要とし、そこでは一方の端子がDC電源の一方の側に接続され、一方で、他方の端子がDC電源の他方の側に接続される。このことは、位相線が導電体であるので位相線を通して生じることがある。DCバイアスは、全体の幾何学配置の中へと又は外へと構造の部品をスイッチングすることにより幾何学配置を制御する。一旦この幾何学配置を変化させると、別の状態を発生することができる。
【0191】
しかしながら、スイッチは、好ましい実施例に関する限りでは、上に開示した方式で反射位相状態を設定するように制御される。
【0192】
上に詳細に説明した実施例は、ミリ波を生成することが容易であるので好ましい。利用可能な物理的空間のためにミリ波で多数のDCバイアス線を実装する/引き回すことは容易ではない。さらにその上、所与の1つの電圧レベルで動作するダイオードは、好ましくは同様であるべきである、そうでなければダイオードのうちの1つがより高い電圧であることがあり、これが電力消費を増加させることがある。
【0193】
上の説明では、水平偏波及び垂直偏波に関する結果は、両者に対する設計周波数が同じであるので同様である。これは、垂直偏波に影響を及ぼす長さが水平偏波に影響を及ぼす対応する部分の長さと同じであるという理由のためである。しかしながら、これらの長さが異なることがあり、設計周波数がこれゆえ異なることがある。実施例は、異なる周波数で動作している各々の偏波について3つの位相状態を発生することができる。例えば、偏波1は、周波数1を有し、一方で偏波2は、周波数2を有することができ、ここでは周波数1は、周波数2と等しくても等しくなくてもよい。直交偏波の最悪のケースは、両方の周波数が同じである時に観測される。周波数を異なるものにすると、直交偏波は良くなる。周波数が異なるときには、Xオフセット及びYオフセットをそれに応じて調節することができる。上に論じた好ましい実施例では、Xオフセット及びYオフセットは、同様である。
【0194】
上記の実施例が第1の偏波及び第2の偏波を与えるとはいえ、いくつかの実施例では、偏波のうちの一方に関係する成分を省略すること及び単一の偏波で働くように構成されたアンテナ素子を設けることが可能である。アンテナ素子が単一の偏波で構成されるときには、直交偏波を、中心からの単一のオフセットにより著しく改善することができる。
【0195】
加えて、円偏波又は楕円偏波された放射で働くようにアンテナ素子を構成することが可能である。このようなケースでは、位相制御線区間及びユニット・セル形状を、その機能を与えるように調整することができる。円偏波又は楕円偏波された放射で働くために、上に開示したX成分及びY成分の両者を、単一偏波に対して一緒に使用することができる。円偏波に関して、X成分及びY成分は直交する。楕円偏波された放射に関して、これらの成分は他の角度であってもよい。
【0196】
第1の基板の第2の側にグランド層を有することの代わりに、PINダイオードがDCバイアス用の折り返し接続を有する場合、グランド層を、第2の基板の第1の側に又は第1の基板の第1の側(最上部層)に配置することができる。
【0197】
上に説明した実施例が3つの層を含むとはいえ、いくつかの実施例では、2つの層だけが設けられ、そして第2の基板及び第3の層を省略することができる。このような実施例では、DC分離素子を、第2の層上に実装することができる。RF-DC分離を、他の実施例では、多くの他の方法で実施することができる。しかしながら、上に説明したように第3の層のところにDC分離素子を有することは、優れたRF性能を提供する。
【0198】
意図した周波数範囲のために設計をスケール・アップすること及びスケール・ダウンすることが可能である。使用すべきスイッチング・デバイスを、所望の周波数で動作するように選択すべきである。
【0199】
説明した実施例及び従属請求項のすべての任意選択の及び好ましい特徴及び変更は、本明細書において教示した本発明のすべての態様及び実施例で使用可能である。さらにその上、従属請求項の個々の特徴、並びに説明した実施例のすべての任意選択の及び好ましい特徴及び変更は、相互に組み合わせることができ、交換可能である。
【0200】
この出願が優先権を主張する英国特許出願番号GB1811092.4及びこの出願に添付した要約書の開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
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