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特許7522408穿孔方法および穿孔システム、ならびに遮蔽空間位置特定方法および遮蔽空間位置特定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】穿孔方法および穿孔システム、ならびに遮蔽空間位置特定方法および遮蔽空間位置特定システム
(51)【国際特許分類】
   F16L 1/028 20060101AFI20240718BHJP
   B29C 63/26 20060101ALI20240718BHJP
   B23B 41/08 20060101ALI20240718BHJP
   B23B 49/00 20060101ALI20240718BHJP
   B26F 1/02 20060101ALI20240718BHJP
   B21D 28/28 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F16L1/028 B
B29C63/26
B23B41/08
B23B49/00 A
B26F1/02 D
B21D28/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020003739
(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公開番号】P2021110416
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】598099143
【氏名又は名称】株式会社 南 陽
(73)【特許権者】
【識別番号】520015070
【氏名又は名称】クリステラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】野見山 康一
(72)【発明者】
【氏名】花▲崎▼ 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 宏
(72)【発明者】
【氏名】加藤 敬
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-176007(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2005/0115338(US,A1)
【文献】国際公開第2020/059475(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/028
B29C 63/26
B23B 41/08
B23B 49/00
B26F 1/02
B21D 28/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間と当該第1空間に隣接する第2空間との間に前記第空間を閉塞する遮蔽物が介在する場合に前記第1空間側から前記第2空間の位置を特定する遮蔽空間位置特定方法であって、
前記第1空間側に配置された熱源より温熱または冷熱を供給して前記遮蔽物を加熱または冷却すること、
前記第1空間側に配置された温度分布検知部により、前記第1空間内面の温度分布から、前記遮蔽物の比熱と前記第2空間内の気体の比熱の差により前記第2空間を閉塞する遮蔽物の中心部分とその周囲の遮蔽物部分とで異なる温度分布を検知することにより前記第2空間の位置を特定すること
を含む遮蔽空間位置特定方法。
【請求項2】
第1空間と当該第1空間に隣接する第2空間との間に前記第空間を閉塞する遮蔽物が介在する場合に前記第1空間側から第2空間の位置を特定する遮蔽空間位置特定システムであって、
前記第1空間側に配置された熱源であり、前記第1空間側から温熱または冷熱を供給して前記遮蔽物を加熱または冷却するための熱源と、
前記第1空間側に配置された温度分布検知部であり、前記第1空間内面の温度分布から、前記遮蔽物の比熱と前記第2空間内の気体の比熱の差により前記第2空間を閉塞する遮蔽物の中心部分とその周囲の遮蔽物部分とで異なる温度分布を検知する温度分布検知部と、
前記温度分布検知部により検知した温度分布に基づいて前記第2空間の位置を特定する遮蔽空間位置特定部と
を含む遮蔽空間位置特定システム。
【請求項3】
本管に枝管が合流する分岐管内にライニングを施した後の枝管開口部の穿孔方法であって、
前記本管に配置された熱源より温熱または冷熱を供給し、前記枝管開口部を閉塞するライニング材を加熱または冷却すること、
前記本管側に配置された温度分布検知部により、前記本管内面の温度分布から、前記ライニング材の比熱と前記枝管内の気体の比熱の差により前記枝管開口部を閉塞する前記ライニング材の中心部分とその周囲のライニング材部分とで異なる温度分布を検知することにより前記枝管開口部の中心位置を特定すること、
前記特定された前記枝管開口部の中心位置で前記ライニング材を穿孔すること
を含む穿孔方法。
【請求項4】
本管に枝管が合流する分岐管内にライニングを施した後の枝管開口部を穿孔する穿孔システムであって、
前記本管側に配置された熱源であり、前記本管側から温熱または冷熱を供給し、前記枝管開口部を閉塞するライニング材を加熱または冷却するための熱源と、
前記本管側に配置された温度分布検知部であり、前記本管内面の温度分布から、前記ライニング材の比熱と前記枝管内の気体の比熱の差により前記枝管開口部を閉塞する前記ライニング材の中心部分とその周囲のライニング材部分とで異なる温度分布を検知する温度分布検知部と、
前記温度分布検知部により特定される前記枝管開口部の中心位置で前記ライニング材を穿孔する穿孔部と
を含む穿孔システム。
【請求項5】
前記温度分布検知部は、赤外線アレイセンサである請求項4記載の穿孔システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本管に枝管が合流する下水道等の分岐管内にライニングを施した後の枝管開口部の穿孔方法および穿孔システム、ひいては第1空間と当該第1空間に隣接する第2空間との間に第1空間の内面を覆う遮蔽物が介在する場合に第1空間側から第2空間の位置を特定する遮蔽空間位置特定方法および遮蔽空間位置特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設された下水道管等の既設管が老朽化した場合に、既設管を掘り出すことなく更正するため、既設管の内面に新たにライニングを施すライニング工法が知られている。ライニング工法では、新たなライニングにより本管へ繋がる既設の枝管の開口部が閉塞されてしまうため、ライニングを施した後、この枝管の開口部に穿孔作業を施す必要がある。
【0003】
ところが、ライニングを施した後の枝管の開口部は上述のように閉塞されてしまっているため、穿孔位置の特定は容易ではない。図7はライトを使った従来の穿孔位置の特定方法を説明する断面図である。図7に示す穿孔位置の特定方法では、枝管102にライトヘッド110を挿入し、本管101の枝管開口部104を塞いでいるライニング材103を透過する光を本管101内に挿入したカメラ120により撮影することにより穿孔位置を特定する。
【0004】
また、穿孔位置を特定する方法として、例えば特許文献1には、本管をライニングする前に、受信コイルとして構成されたマーカーを枝管開口部の中心または該中心より所定距離離間した位置に設置し、このマーカーの位置を発信コイルにより検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/163191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のライトを使った穿孔位置の特定方法では、図7(A)に示すようにライトヘッド110がライニング材103に到達した状態においてはライトヘッド110の先端部分に光が集中し、図8(A)に示すような画像がカメラ120により撮影される。そのため、図7(A)に示すようにライトヘッド110が枝管102の中心にない場合であっても、この光が集中した位置を穿孔位置と誤って判断してしまう可能性がある。
【0007】
そこで、この方法では、図7(B)に示すようにライトヘッド110の先端をライニング材103から少し離れた位置まで引き出して撮影する必要がある。これにより、カメラ120によって図8(B)に示すように枝管102の内側全体が撮影されるようになり、枝管102の中心位置を特定することが可能となるが、ライトの光量が落ちるため、ライニング材が光を透過しにくい場合や透過しない場合には適用することができない。また、この方法では、ライトヘッド110を挿入できない枝管の場合にも適用することができない。
【0008】
一方、特許文献1に記載の方法では、ライニング前に受信コイルとして構成されたマーカーを設置する必要があり、施工コストが高くなるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明においては、光を透過しにくい、または透過しないライニング材が施された場合や、ライトヘッドを挿入することが困難な場合であっても、枝管開口部の位置を特定して穿孔することが可能な穿孔方法および穿孔システムを提供すること、ひいては第1空間と当該第1空間に隣接する第2空間との間に第1空間の内面を覆う遮蔽物が介在する場合に第1空間側から第2空間の位置を特定する遮蔽空間位置特定方法および遮蔽空間位置特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の穿孔方法は、本管に枝管が合流する分岐管内にライニングを施した後の枝管開口部の穿孔方法であって、枝管側から熱源より温熱または冷熱を供給し、枝管開口部を閉塞するライニング材を加熱または冷却すること、本管内面の温度分布を検知することにより枝管開口部の中心位置を特定すること、特定された枝管開口部の中心位置でライニング材を穿孔することを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の穿孔システムは、本管に枝管が合流する分岐管内にライニングを施した後の枝管開口部を穿孔する穿孔システムであって、枝管側から温熱または冷熱を供給し、枝管開口部を閉塞するライニング材を加熱または冷却するための熱源と、本管内面の温度分布を検知する温度分布検知部と、温度分布検知部により特定される枝管開口部の中心位置でライニング材を穿孔する穿孔部とを含むものである。
【0012】
これらの発明によれば、枝管側から熱源より温熱または冷熱を供給することで、枝管を通じてこの枝管の開口部を閉塞するライニング材が加熱または冷却される。これにより、この加熱または冷却された枝管開口部を閉塞するライニング材部分のみが本管内面の他の部分とは異なる温度分布となるので、本管内面の温度分布を検知することにより枝管開口部の中心位置が特定され、この特定された枝管開口部の中心位置でライニング材を穿孔することが可能となる。
【0013】
本発明の遮蔽空間位置特定方法は、第1空間と当該第1空間に隣接する第2空間との間に第1空間の内面を覆う遮蔽物が介在する場合に第1空間側から遮蔽物により閉塞された第2空間の位置を特定する遮蔽位置特定方法であって、第1空間側または第2空間側から熱源より温熱または冷熱を供給して遮蔽物を加熱または冷却すること、第1空間内面の温度分布を検知することにより第2空間の位置を特定することを特徴とする。
【0014】
本発明の遮蔽空間位置特定システムは、第1空間と当該第1空間に隣接する第2空間との間に第1空間の内面を覆う遮蔽物が介在する場合に第1空間側から遮蔽物により閉塞された第2空間の位置を特定する遮蔽位置特定装置であって、第1空間側または第2空間側から温熱または冷熱を供給して遮蔽物を加熱または冷却するための熱源と、第1空間内面の温度分布を検知する温度分布検知部と、温度分布検知部により検知した温度分布に基づいて第2空間の位置を特定する遮蔽位置特定部とを含むものである。
【0015】
これらの発明によれば、第1空間側または第2空間側から熱源により温熱または冷熱を供給することで、第1空間の内面を覆う遮蔽物が加熱または冷却される。ここで、第2空間側から熱源により温熱または冷熱を供給した場合には、第2空間を閉塞する遮蔽物部分のみが加熱または冷却され、その周囲の遮蔽物部分とは異なる温度分布となるので、第1空間内面の温度分布を検出することにより第2空間の位置を特定することが可能となる。一方、第1空間側から熱源により温熱または冷熱を供給した場合には、遮蔽物の比熱と第2空間内の気体の比熱の差により、第2空間を閉塞する遮蔽物の中心部分とその周囲の遮蔽物部分とで異なる温度分布となるため、同様に、第1空間内面の温度分布を検知することにより、遮蔽物により閉塞された第2空間の位置を特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
(1)枝管側から熱源より温熱または冷熱を供給し、枝管開口部を閉塞するライニング材を加熱または冷却し、本管内面の温度分布を検知することにより枝管開口部の中心位置を特定し、特定された枝管開口部の中心位置でライニング材を穿孔する構成によれば、枝管側からは熱源より温熱または冷熱を供給するだけで良く、光を透過しにくい、または透過しないライニング材が施された場合や、ライトヘッドを挿入することが困難な場合であっても、枝管開口部の位置を正確に特定して穿孔することが可能となる。
【0017】
(2)第1空間と当該第1空間に隣接する第2空間との間に第1空間の内面を覆う遮蔽物が介在する場合に、第1空間側または第2空間側から熱源より温熱または冷熱を供給して遮蔽物を加熱または冷却し、第1空間内面の温度分布を検知することにより、遮蔽物により閉塞された第2空間の位置を特定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態における穿孔システムの使用状態を示す概念図である。
図2】遮蔽物の赤外線(熱線)透過イメージを示す説明図である。
図3】遮蔽物によって閉塞された円形状の閉鎖空間の検出例を示す説明図である。
図4】遮蔽物によって閉塞された角形状の閉鎖空間の検出例を示す説明図である。
図5】本発明の実施の形態における遮蔽空間位置特定システムの説明図であって、(A)は概略断面図、(B)は(A)の温度分布検知部により検知した温度分布を示すイメージ図である。
図6】本発明の実施の形態における遮蔽空間位置特定システムの説明図であって、(A)は概略断面図、(B)は(A)の温度分布検知部により検知した温度分布を示すイメージ図である。
図7】ライトを使った従来の穿孔位置の特定方法を説明する概念図である。
図8】(A)は図7(A)の状態におけるカメラ画像の例を示す図、(B)は図7(B)の状態におけるカメラ画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施の形態における穿孔システムの使用状態を示す概念図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態における穿孔システムは、第1空間を形成する本管101に第2空間を形成する枝管102が合流する分岐管100内にライニング材103によりライニングを施した際に、ライニング材103が遮蔽物となって閉塞された枝管開口部104を穿孔するものである。枝管開口部104は、枝管102が本管101へ繋がる開口部分である。
【0020】
穿孔システムは、本管101内部に導入され、枝管開口部104を穿孔する削孔装置1と、枝管102側から温熱2Aを供給し、枝管開口部104を閉塞するライニング材103を加熱するための熱源としての温熱源2と、本管101内部を走行するカメラ車3と、削孔装置1およびカメラ車3を制御する制御部4等から構成される。
【0021】
削孔装置1は、その先端部に設けられ、ライニング後の枝管開口部104を穿孔する穿孔部10を有する。穿孔部10は、切削刃10Aと、油圧またはエアー等の圧力流体により切削刃10Aを回転駆動する切削モーター部10B等から構成される。
【0022】
また、削孔装置1は、穿孔部10の後方に設けられ、穿孔部10を穿孔装置本体の長手方向と直交する方向に移動させるリーチシリンダー部11と、リーチシリンダー部11のさらに後方に設けられ、穿孔部10を削孔装置本体14の長手方向に移動させるエクステンションシリンダーロッド12Aおよびエクステンションシリンダー12と、穿孔部10、リーチシリンダー部11およびエクステンションシリンダーロッド12Aを一体的に回動させ、穿孔部10を本管101の周方向にスイングさせる回動装置13を内蔵した削孔装置本体14と、削孔装置1を支持し、本管101内に沿って削孔装置1をスライドさせる一対のスライドボード15と、穿孔作業時に削孔装置1を本管101内に固定するため削孔装置本体14から上方に突出可能なアウトリガー16等から構成される。
【0023】
カメラ車3は、本管101内部を撮影する可視カメラ(図示せず。)および赤外線アレイセンサ30を備える。赤外線アレイセンサ30は、本管101内面の温度分布を検知する温度分布検知部である。
【0024】
制御部4は、カメラ車3の走行を制御するとともに、可視カメラおよび赤外線アレイセンサ30により撮影を行う。また、制御部4は、赤外線アレイセンサ30により検知した温度分布に基づいて枝管102の位置を特定する遮蔽空間位置特定部を構成する。
【0025】
次に、上記構成の穿孔システムを用いて、分岐管100内にライニングを施した後の枝管開口部104を穿孔する手順について説明する。なお、分岐管100は、例えば、鉄管やヒューム管等である。分岐管100内に施されるライニング材103は、例えば、塩ビ管、タールエポキシ、モルタル、ゴム、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ポリエチレン、コンクリート、鉄やガラス繊維等である。
【0026】
まず、温熱源2より枝管102内へ温熱を供給し、枝管開口部104を閉塞するライニング材103を加熱する。これにより、ライニング材103は、枝管開口部104を閉塞する部分のみが本管101内面の他の部分よりも高温となる。次に、本管101内でカメラ車3を走行させ、可視カメラにより本管101内面を撮影するとともに、赤外線アレイセンサ30により本管101内面の温度分布を検知する。
【0027】
このとき、赤外線アレイセンサ30により本管101内面において周囲よりも特に高温となっている箇所を検知する。制御部4は、この赤外線アレイセンサ30により検知した温度分布に基づいて枝管開口部104の位置を特定する。本管101内面において周囲よりも特に高温となっている箇所は、前述のように温熱源2より温熱2Aを供給した枝管102が本管101に繋がる枝管開口部104の箇所であり、その中心位置がライニング材103を穿孔すべき枝管開口部104の中心位置である。
【0028】
次に、削孔装置1をその前後でワイヤー(図示せず。)に連結し、削孔装置1をマンホール等から作業すべき分岐管100の本管101内部に導入した後、地上に設けられた巻き取り装置(図示せず。)により削孔装置1を前後から引っ張って移動させる。そして、この枝管開口部104を検出した位置付近でアウトリガー16を上方へ突出させて削孔装置1を固定し、穿孔部10の切削刃10Aが本管101の長手方向の枝管開口部104の中心位置にくるよう、エクステンションシリンダーロッド12Aを駆動して穿孔部10およびリーチシリンダー部11を一体的に移動させる。
【0029】
次に、切削刃10Aが本管101の周方向の枝管開口部104の中心位置にくるように、穿孔部10、リーチシリンダー部11およびエクステンションシリンダーロッド12Aを一体的にスイングさせる。最後に、切削刃10Aが本管101の径方向の所定の位置、すなわち枝管開口部104の穿孔位置にくるように、リーチシリンダー部11により穿孔部10を移動させ、削孔装置1の位置決めが完了する。
【0030】
その後、穿孔部10の切削モーター部10Bへ圧力流体を供給して切削モーター部10Bを駆動し、切削刃10Aを回転させることで、枝管開口部104の中心位置において枝管開口部104を閉塞しているライニング材103の穿孔作業が行われる。
【0031】
以上のように、本実施形態における穿孔システムによれば、枝管102側から温熱源2より温熱2Aを供給することで、枝管102を通じて枝管開口部104を閉塞するライニング材103が加熱され、本管101内面の他の部分とは異なる温度分布となるため、枝管開口部104の中心位置が特定され、この特定された枝管開口部104の中心位置でライニング材103を穿孔することが可能となる。
【0032】
したがって、この穿孔システムによれば、枝管102側からは温熱源2より温熱2Aを供給するだけで良く、光を透過しにくい、または透過しないライニング材が施されている場合や、ライトヘッドを挿入することが困難な場所であっても、枝管開口部104の位置を正確に特定して穿孔することが可能である。
【0033】
図2は遮蔽物の赤外線(熱線)透過イメージを示す説明図である。図2に示すように、ライニング材のような単層または多層の遮蔽物21が可視光20を遮蔽する場合であっても、この遮蔽物21を透過した赤外線2Bまたは伝導した伝導熱を赤外線アレイセンサ30により検出することで、枝管開口部104の位置を正確に特定することができる。
【0034】
図3は遮蔽物によって閉塞された円形状の閉鎖空間の検出例を示す図である。図3(A)および同図(B)に示すように円筒22の開口部22Aが遮蔽物21によって遮蔽され、同図(B)に示すように円形状の閉鎖空間23が形成されているとする。この場合、閉鎖空間23へ温熱源から温熱2Aを供給し、遮蔽物21の表面を赤外線アレイセンサ30により検出すると、同図(C)に示すように、この遮蔽物21を透過した赤外線または伝導した伝導熱により開口部22Aの形状および位置24を特定することができる。
【0035】
図4は遮蔽物によって閉塞された角形状の閉鎖空間の検出例を示す図である。図4(A)および同図(B)に示すように角筒25の開口部25Aが遮蔽物21によって遮蔽され、同図(B)に示すように円形状の閉鎖空間26が形成されているとする。この場合、閉鎖空間26へ温熱源から温熱2Aを供給し、遮蔽物21の表面を赤外線アレイセンサ30により検出すると、同図(C)に示すように、この遮蔽物21を透過した赤外線または伝導した伝導熱により開口部25Aの形状および位置27を特定することができる。
【0036】
なお、上記実施形態においては、熱源として、温熱を供給する温熱源2を使用し、枝管開口部104を閉塞するライニング材103を加熱する構成について説明したが、熱源として冷熱を供給する冷熱源を使用し、枝管開口部104を閉塞するライニング材103を冷却する構成とすることもできる。この場合、ライニング材103は、枝管開口部104を閉塞する部分のみが本管101内面の他の部分よりも低温となるので、赤外線アレイセンサ30により本管101内面において周囲よりも特に低温となっている箇所を検知する。要するに、枝管開口部104を閉塞するライニング材103部分のみが本管101内面の他の部分とは異なる温度分布となるようにし、赤外線アレイセンサ30により本管101内面の温度分布を検知すれば良い。
【0037】
また、本管101内面の温度分布を検知する温度分布検知部としては、赤外線アレイセンサ30に代えて赤外線カメラなどを用いることも可能である。要するに、周囲とは異なる温度に加熱または冷却された枝管開口部104の温度分布を検知できれば良い。
【0038】
次に、上記穿孔システムを応用した遮蔽空間位置特定システムについて説明する。図5および図6は本発明の実施の形態における遮蔽空間位置特定システムの説明図であって、(A)は概略断面図、(B)は(A)の温度分布検知部により検知した温度分布を示すイメージ図である。
【0039】
図5(A)に示す例では、第1空間51と、この第1空間51に隣接する第2空間52との間に、第1空間51の内面を覆う遮蔽物53が介在する。遮蔽物53は、例えば可視光を遮蔽する単層または多層の壁である。第1空間51は遮蔽物53の表側の空間である。第2空間52は、例えば遮蔽物53の裏側に埋設されたスイッチボックス54内の空間である。このスイッチボックス54には例えば配管55が接続されているとする。この状態では、第1空間51側から第2空間52の位置は分からない。
【0040】
本実施形態における遮蔽空間位置特定システムは、温熱または冷熱を供給する熱源5と、第1空間51内面の温度分布を検知する赤外線アレイセンサ等の温度分布検知部6と、温度分布検知部6により検知した温度分布に基づいて第2空間52の位置を特定する遮蔽空間位置特定部7とを有する。
【0041】
本実施形態における遮蔽空間位置特定システムでは、配管55を通じてスイッチボックス54内に熱源2から温熱または冷熱を供給、すなわち第2空間52側から温熱または冷熱を供給して遮蔽物53を加熱または冷却する。これにより、図5(B)に示すように、第2空間52を閉塞する遮蔽物部分56Aのみが加熱または冷却され、その周囲の遮蔽物部分56Bとは異なる温度分布となるので、温度分布検知部6により第1空間51内面の温度分布を検知することにより、遮蔽物53により閉塞された第2空間52の位置を特定することができる。
【0042】
一方、図6(A)に示すように、第1空間51側から熱源5により温熱または冷熱を供給した場合には、遮蔽物53の比熱と第2空間52内の気体(空気)の比熱の差により、図6(B)に示すように、第2空間52を閉塞する遮蔽物53の中心部分57Aとその周囲の遮蔽物部分57Bとで異なる温度分布となる。したがって、温度分布検知部6により第1空間51内面の温度分布を検知することにより、遮蔽物により閉塞された第2空間52の位置を特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の穿孔方法および穿孔システムは、本管に枝管が合流する下水道等の分岐管内にライニングを施した後の枝管開口部の穿孔方法および穿孔システムとして有用であり、特に、光を透過しにくい、または透過しないライニング材が施された場合や、ライトヘッドを挿入することが困難な場合であっても、枝管開口部の位置を特定して穿孔することが可能な穿孔方法および穿孔システムとして好適である。
【0044】
また、本発明の遮蔽空間位置特定方法および遮蔽空間位置特定システムは、第1空間と当該第1空間に隣接する第2空間との間に第1空間の内面を覆う遮蔽物が介在し、第2空間が遮蔽物により閉塞されている場合に第1空間側から第2空間の位置を特定する方法およびシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 削孔装置
2 温熱源
2A 温熱
3 カメラ車
4 制御部
5 熱源
6 温度分布検知部
7 遮蔽空間位置特定部
10 穿孔部
10A 切削刃
10B 切削モーター部
11 リーチシリンダー部
12 エクステンションシリンダー
12A エクステンションシリンダーロッド
13 回動装置
14 削孔装置本体
15 スライドボード
16 アウトリガー
20 可視光
21 遮蔽物
22 円筒
22A,25A 開口部
23,26 閉鎖空間
25 角筒
30 赤外線アレイセンサ
51 第1空間
52 第2空間
53 遮蔽物
54 スイッチボックス
55 配管
100 分岐管
101 本管
102 枝管
103 ライニング材
104 枝管開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8