(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】圧縮機室を制御するための方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
F04B 49/06 20060101AFI20240718BHJP
F04C 28/00 20060101ALI20240718BHJP
F04D 27/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F04B49/06 341D
F04C28/00 A
F04D27/00 K
(21)【出願番号】P 2023518769
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(86)【国際出願番号】 IB2021058007
(87)【国際公開番号】W WO2022064299
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-23
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(73)【特許権者】
【識別番号】514013428
【氏名又は名称】カソリック ウニヴェルシテイト ルーヴェン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】ルアロウディ エブラヒム
(72)【発明者】
【氏名】ファン ロイ ヴィム
(72)【発明者】
【氏名】グエンス フィリップ
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-171789(JP,A)
【文献】特開2017-129120(JP,A)
【文献】特開2001-066054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0144766(US,A1)
【文献】特表2009-543965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
F04C 28/00
F04D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上の消費者(111)に圧縮空気又はガスを供給するように構成された1又は2以上の圧縮機(101-103)を含む圧縮空気又はガスシステム(113)を制御するための
コンピュータにより実行される方法であって、前記圧縮空気又はガスは、1又は2以上のプロセス変数によって定義されており、前記方法は、
-観測データ(211)に基づいて、前記圧縮空気又はガスシステム(113)の現在の状態を推定するステップ(202)と、
-前記
現在の状態に基づいて将来のプロセス変数プロファイル(225)を予測するステップ(203)と、
-前記圧縮空気又はガスシステム(113)の容積(107)に基づくサンプリング周波数を有するサンプリング法によって将来のプロセス変数プロファイルをサンプリングし(204)、それによってサンプリングされた将来のプロセス変数プロファイルを取得するステップと、
-モデル予測制御(MPC)法により、前記サンプリングされた将来のプロセス変数プロファイル及び前記現在の状態を、
・予め定義された第1の時間期間にわたって分布する1又は2以上のアクションを含むアクションプロファイル、及び
・前記予め定義された第1の時間期間に等しいか又はそれよりも大きい、予め定義された第2の時間期間にわたって分布する状態プロファイル、
に変換するステップ(205)と、
-前記アクションプロファイルに従って前記1又は2以上のアクションを実行するように前記1又は2以上の圧縮機に指示し、それによって前記圧縮空気又はガスシステム(113)を制御するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記圧縮空気又はガスシステム(113)は、1又は2以上のエージェントをさらに備え、前記指示することは、前記アクションプロファイルに従って前記1又は2以上のアクションを実行するように前記1又は2以上のエージェントに指示することをさらに含む、請求項1に記載の
コンピュータにより実行される方法。
【請求項3】
前記エージェントは、送風機、ファン、ピストン、ターボ、可変周波数駆動エージェント、乾燥器、バルブ、潤滑器、濾過器、圧力調整器、及び/又はフロー開閉器のグループのうちの1つを含む、請求項2に記載のコンピュータにより実行される方法。
【請求項4】
-前記サンプリングされた将来のプロセス変数プロファイルを以前の状態プロファイルと比較して、前記サンプリングされた将来のプロセス変数が予め定義された偏差閾値内にある1又は2以上のゾーンを識別するステップ、
をさらに含み、前記予測するステップは、さらに前記1又は2以上のゾーンに基づく、
請求項1から3のいずれかに記載の
コンピュータにより実行される方法。
【請求項5】
前記サンプリング周波数は、さらに、
-前記予測の不確実性因子、
-前記圧縮空気又はガスシステムの1又は2以上の運転パラメータ、
-圧縮機の応答時間、
のグループのうちの1又は2以上に基づく、
請求項1から4のいずれかに記載の
コンピュータにより実行される方法。
【請求項6】
前記現在の状態を推定するステップは、さらに前記圧縮空気又はガスシステムのモデルに基づく、
請求項1から5のいずれかに記載の
コンピュータにより実行される方法。
【請求項7】
前記予測するステップは、さらに履歴データに基づく、
請求項1から6のいずれかに記載の
コンピュータにより実行される方法。
【請求項8】
-前記現在の状態及び/又は観測されたデータによって前記履歴データを更新するステップ、
をさらに含む、
請求項7に記載の
コンピュータにより実行される方法。
【請求項9】
プロセス変数は、流量、圧力、圧力露点、ガス温度、酸素レベル、エネルギーレベル、相対湿度、ガス分圧、溶存酸素レベル、及び/又はオイル汚染レベルのグループのうちの1つを含む、
請求項1から8のいずれかに記載の
コンピュータにより実行される方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の方法を実施するための手段を含む、データ処理システム。
【請求項11】
コンピュータで実行されると、前記コンピュータに請求項1から9のいずれかに記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読のデータキャリア。
【請求項13】
請求項10に記載のデータ処理システムを含む
圧縮空気又はガスシステム。
【請求項14】
請求項1から9のいずれかの方法に従って制御されるように構成された圧縮空気又はガスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の分野に関し、より詳細には、消費者に圧縮空気又はガスを供給するための圧縮機システムを制御することに関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機は、1又は2以上の圧縮段で空気又はガスを圧縮するために使用することが知られている。圧縮空気又はガスは、その後、1又は2以上の消費者に供給される。その分配は、圧縮空気又はガスシステムによって提供される。
【0003】
消費者の数は膨大であり、例えば工業プラント又は病院のようにかなりの面積に空間的に分布する場合があるので、通常、圧縮空気又はガスを供給するための中央ハブが設置される。
【0004】
中央ハブは、通常、1又は2以上の圧縮機室を備え、各圧縮室には1又は2以上の圧縮機が設置されている。さらに、バルブ、濾過器、乾燥器、容器、センサ、制御構成要素、及び/又は他の装置などの圧縮機室を管理及び/又は制御するための補助装置も同様に設置されている。次に、1又は2以上の圧縮機室から、消費者に供給するためのパイプ又はダクトが出る。系統内の最終部分として、圧縮空気又はガスは、消費者によって様々な用途に利用される。
【0005】
さらに、圧縮機と消費者との間には、安全弁、分配弁、制御センサ、もしくは圧縮空気又はガスの分配を制御及び保護するための他の装置などの、別の装置セットが存在する場合がある。
【0006】
上記の装置は、圧縮空気又はガスシステムとしてさらに称されることになる。従って、圧縮空気又はガスシステムは、1つの消費者に供給する1つの圧縮機を備えることができるが、一般的には、より広範なものとみなされ、結果として複数の構成要素を備え、それによって互いに相互作用する複数の要素の複合システムを構成することになる。
【0007】
空気又はガスシステムを利用するためには、様々な部分を制御する必要がある。独立したローカルコントローラによって圧縮機を個別に制御することは既に知られており、それによって様々なコントローラが予め定義された圧力値に設定され、これによって圧縮空気の消費量に応じて圧縮機を順次スイッチオン又はオフにすることができる。
【0008】
圧縮空気又はガスシステムの一部である構成要素を制御するための複数の通信コントローラによって、圧縮空気又はガスシステムを制御する方法を適用することはさらに知られており、それによって構成要素は、コントローラのいずれも他のコントローラによって制御される何らかの構成要素の動作状態を決定しないように制御される。国際公開第2008/009073号には、このような方法が開示されている。
【0009】
国際公開第2008/009072号には、少なくとも1つの共通制御可能な構成要素を有する複数の圧縮空気又はガスネットワークで構成される圧縮空気ユニットを制御するための別の方法が開示されており、これにより、圧縮空気又はガスネットワークの少なくとも1つの測定データに基づいて、少なくとも共通構成要素が少なくとも1つのコントローラによって制御される。
【0010】
しかしながら、これらの制御方法の欠点は、圧縮空気又はガスシステムの現在の状態にのみ基づいて動作すること、つまり、いかなる種類の予測も考慮することができないことである。これは、準最適制御及び高いエネルギーコストにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2008/009073号
【文献】国際公開第2008/009072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記及び他の欠点を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的のために、本発明は、1又は2以上の消費者に圧縮空気又はガスを供給するように構成された1又は2以上の圧縮機を含む圧縮空気又はガスシステムを制御する方法に関し、圧縮空気又はガスは、1又は2以上のプロセス変数によって定義されており、本方法は、
-観測データに基づいて、圧縮空気又はガスシステムの現在の状態を推定するステップと、
-現在の状態に基づいて将来のプロセス変数プロファイルを予測するステップと、
-圧縮空気又はガスシステムの容積に基づくサンプリング周波数を有するサンプリング法によって将来のプロセス変数プロファイルをサンプリングし、それによってサンプリングされた将来のプロセス変数プロファイルを取得するステップと、
-モデル予測制御(MPC)法により、サンプリングされた将来のプロセス変数プロファイル及び現在の状態を、
・予め定義された第1の時間期間にわたって分布する1又は2以上のアクションを含むアクションプロファイル、及び
・予め定義された第1の時間期間に等しいか又はそれよりも大きい、予め定義された第2の時間期間にわたって分布する状態プロファイル、
に変換するステップと、
-アクションプロファイルに従って1又は2以上のアクションを実行するように1又は2以上の圧縮機に指示し、それによって圧縮空気又はガスシステムを制御するステップと、
を含む。
【0014】
圧縮空気又はガスシステムは、上述のように1又は2以上の圧縮機を備える。随意的に、圧縮空気又はガスシステムは、送風機、ファン、窒素発生器、ピストン、ターボ、可変周波数駆動エージェント、乾燥器、バルブ、潤滑器、濾過器、圧力調整器、フロー開閉器、又は圧縮空気又はガスシステムに適した他の何らかの装置又は構成要素などの1又は2以上のエージェントをさらに含むことができる。
【0015】
圧縮空気又はガスは、流量、圧力、圧力露点、ガス温度、酸素レベル、エンタルピーレベル、相対湿度、ガス分圧、溶存酸素レベル、オイル汚染レベル、又は圧縮空気又はガスに適した何らかの他のパラメータのような、1又は2以上のプロセス変数によって定義される。
【0016】
第1のステップでは、圧縮空気又はガスシステムの現在の状態が推定される。この状態は、エージェント及び/又は圧縮機の一部の状態を示す。この推定は、観測されたデータに基づく。このデータは、1又は2以上のプロセス変数を測定又は観察するように構成されたセンサに由来する。現在の状態の推定は、直接測定された信号に基づいて及び/又は測定又は観測された信号又はデータを処理することによって行われる。
【0017】
随意的に、推定は、存在する場合、さらに圧縮空気又はガスシステムのモデルに基づいて行うことができる。モデルは、例えば、方程式セット、アルゴリズム、ブラックボックス手法、又は圧縮空気又はガスシステムをモデル化する他の何らかの適切な方法である。
【0018】
現在の状態は、圧縮システムの状態を示し、1又は2以上のプロセス変数及び/又は運転変数によって表すことができ、従って圧縮空気又はガスシステムの現在の状態を示す。現在の状態は、スカラー、すなわち1つの離散値又は連続値によって示すことができるが、一般的には、各々が状態を表す変数列を含むことになる。後者の場合、現在の状態は、ベクトル、行列、配列、又は他の適切な表現として表される。
【0019】
次に、第2のステップでは、現在の状態に基づいて、将来のプロセス変数プロファイルを予測する。将来のプロセス変数プロファイルは、有限の時間期間にわたって予測された一連の将来のプロセス変数を含む。さらに、第1のステップで推定されたプロセス変数の各々に関して、そのようなプロファイルを予測することができる。随意的に、好ましくは、予測は、さらに圧縮空気又はガスシステム上で実行された測定の履歴データに基づくことができる。予測された系列は、連続グラフ又はスカラーの離散範囲を構成することができる。その後、履歴データは、現在の状態及び/又は観測データによって更新することができる。
【0020】
予測された将来のプロセス変数プロファイルは、将来におけるプロセス変数セットの予測プロファイルを表す。その時間範囲は、数分、数時間、あるいは数日間と様々である。この範囲の大きさは、例えば、圧縮空気又はガスシステムの複雑さ、又は圧縮空気又はガスシステムを制御及び管理する処理装置の能力に依存することをさらに理解されたい。
【0021】
第3のステップでは、予測が行われた後、将来のプロセス変数プロファイルは、予め知られているか又は推定される圧縮空気又はガスシステムの容積に基づくサンプリング周波止を有するサンプリング法によってサンプリングされる。容積は、例えば、ガス容積のような、容器の容積及び/又は圧縮空気システム全体の容積である。好ましくは、サンプリング法は、2又は3以上のサンプリング周波数を含む。例えば、将来のプロセス変数プロファイルが流量要求を含む場合、プロファイルは、流量が速く変化するときには短いサンプリング間隔によってサンプリングされ、流量がゆっくりと変化するときには長いサンプリング間隔によってサンプリングされることになる。換言すれば、サンプリング周波数は、流れが急速に変化するときは高くなり、流れが滑らかに変化するときは低くなる。従って,サンプリングされた将来プロセス変数プロファイルは,複数の非等距離サンプルを有することになる。
【0022】
次に、サンプリングされた将来のプロセス変数プロファイル及び現在の状態は、モデル予測制御(MPC)法によって、2つの別のプロファイルに変換される。
【0023】
MPC法で生成される第1のプロファイルは、アクションプロファイルである。アクションプロファイルは、連続するアクションの範囲を含む第1の時間期間にわたるプロファイルである。これらのアクションは、圧縮空気又はガスシステムを制御するために実行される可能性のある行為又は動作を表す。アクションは、例えば、圧縮機のオン又はオフの切り替え、バルブの開放、部分的開放又は閉鎖、圧縮機の流れの方向転換又は調整、又はシステムを制御するための圧縮機及び/又はエージェントによって引き起こすことができる他の何らかのアクションである。換言すれば、アクションによって状態を所望の新しい状態に変更又は操作すること又は状態を維持することができ、それによってアクションは内部又は外部の作用又は影響に対する反応とみなされる。
【0024】
アクションプロファイルは、予め定義された第1の時間期間にわたって分布し、その大きさは、同様に、圧縮空気又はガスシステムの複雑さ、制御ユニットの処理能力、しかし特定のアクションが有する又は有することになる反応に依存する。
【0025】
サンプリングされた将来のプロセス変数プロファイル及び現在の状態を変換することによってMPC法によって生成される第2のプロファイルは、予め定義された第2の時間期間にわたって分布する状態プロファイルである。この第2の時間期間の大きさは、アクションプロファイルの予め定義された第1の時間期間と同じか又はそれ以上である。
【0026】
最後に、本方法は、アクションプロファイルに従ってアクションを実行するように1又は2以上の圧縮機に指示するステップを含む。
【0027】
将来のプロセス変数プロファイルを1又は2の異なるサンプリング周波数で適応的にサンプリングすることにより、プロファイルは、処理システムで処理するのに適したものになる。さらに、2又は3以上のサンプリング周波数が使用される場合、サンプルは、非等距離サンプリンググリッドを有し、リアルタイム性能及びメモリ使用量の点でより効率的である。さらに、有利には、ガス量に基づいて異なるサンプリング周波数を使用することにより、圧縮空気又はガスシステムの特性は、事前に考慮される。
【0028】
さらに、相互作用が事前に考慮されるようにアクション並びに状態プロファイルが同時に生成されることも利点である。さらに、予測だけに又は現在の状態だけに頼るのではなく、アクションと状態との間の相互作用及び相関が考慮され、最適な方法で対処される。
【0029】
別の利点は、切り替え及びアイドルコストが考慮されるので、圧縮空気又はガスシステムの機械摩耗を低減しながら大幅なエネルギー節約を達成することができる。これは、予測によって最適な圧縮機を事前にスケジュールすることができ、同時にアイドリング時間を最小化することができるからである。加えて、例えば、乾燥器をより効率的に動作させて湿気の濃度を劇的に低下させるように圧縮機を予熱することで、供給される圧縮空気又はガスの品質を向上させることができる。
【0030】
実施形態によれば、本方法は、
-サンプリングされた将来のプロセス変数のプロファイルを以前の状態プロファイルと比較して、サンプリングされた将来のプロセス変数が予め定義された偏差閾値内にある1又は2以上のゾーンを識別するステップ、
を含み、予測ステップは、さらに1又は2以上のゾーンに基づく。
【0031】
予め定義された偏差閾値内にあるゾーンは、以前の状態と一致する。換言すれば、これらのゾーンは、正しい又は正確であるとみなされる予測を含む。従って、これらのゾーンでは、計算されたデータを再利用することができる。従って、これらのゾーン上での予測ステップに基づくことにより、予測を行う必要はなく、以前のデータを再利用することができる。加えて、ゾーンの両側にある小さなオーバーラップ領域を同様に考慮することができる。予測時にゾーンを考慮することで、予測ステップをより効率的に行うことができる。
【0032】
加えて、サンプリング周波数は、さらに、
-予測の不確実性因子、
-圧縮空気又はガスシステムの1又は2以上の運転パラメータ、
-圧縮機の応答時間、
のグループのうちの1又は2以上に基づく。
【0033】
予測の不確実性を考慮することで、より正確でない予測は、より低いサンプリング周波数につながることになる。このようにして、予測は最適化される。
【0034】
さらに、圧縮空気又はガスシステムの容積の他に、圧縮機、エージェント、乾燥器及び/又は膨張器の反応時間などの他の運転パラメータ又は機械特性を考慮することができる。
【0035】
第2の態様によれば、本発明は、第1の態様による方法を実施するための手段を含むデータ処理システムに関する。
【0036】
第3の態様によれば、本発明は、コンピュータで実行されると、コンピュータに第1の態様による方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムに関する。随意的に、プログラムは第2のコンピュータによって実行することができ、それにより、第2のコンピュータは、第1のコンピュータから符号化データを受信し、第1の態様による方法のステップの1又は2以上を実行することによって受信データを復号するようにさせる。
【0037】
換言すれば、各ステップは異なるコンピュータ間で分割することができ、それによって、これらのコンピュータの1つは、他のものと比較して異なる場所に位置することができる。
【0038】
第4の態様によれば、本発明は、第3の態様のコンピュータプログラムが格納されたコンピュータ可読なデータキャリアに関する。
【0039】
本発明は、図面を参照してさらに説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】圧縮空気又はガスシステムを制御するための方法の流れ図を示す。
【
図4】概略的なモデル予測制御方法の解決手法を示す。
【
図5】第1の時間ステップでのアクションの予測を示す。
【
図6】第2の時間ステップでのアクションの予測を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、クライアントネットワーク111に圧縮空気又はガスを供給するように構成された3つの圧縮機101-103を備える圧縮空気又はガスシステム113を示す。圧縮空気又はガスシステム113は、圧縮空気又はガスを貯蔵するための容器又はタンク107と、クライアントネットワーク111に接続されたバルブ110とをさらに備える。クライアントのネットワーク111には、1又は2以上の消費者が存在する。
【0042】
圧縮空気又はガスシステム113は、乾燥器、濾過器、調整器、及び/又は潤滑器などの他の装置をさらに備えることができることを理解されたい。しかしながら、以下では、本発明は、圧縮空気又はガスシステム113の構成として
図1を参照して説明することになる。
【0043】
圧縮機101-103の各々は、それぞれのコントローラ104-106によって局所的に制御可能である。さらに、圧縮空気又はガスシステム113を効率的に制御するために、コントローラ104-106は、協調的に制御されることになる。換言すれば、コントローラ104-106の各々が個別にそれぞれの圧縮機101-103を制御することは回避される。しかし、コントローラ104-106は、圧縮空気又はガスシステム113の全体的な性能及び効率が向上するように、マスターコントローラ112によって指示される。
【0044】
コントローラ112は、コントローラ104-106の近くに位置することができるが、圧縮空気又はガスシステム113と比較して離れた場所に位置することもできる。あるいは、コントローラ104-106のうちの1つは、全ての圧縮機101-103を制御するためのマスターコントローラとして機能するように構成することができる。
【0045】
マスターコントローラ112によって、圧縮空気又はガスシステム113の運転、切り替え、及びアイドルコストが対処され、それによって様々な装置の構成要素の摩耗が低減されると同時に、圧縮空気又はガスシステム113のエネルギー消費量が最適化される。この目的のために、クライアントネットワーク111の現在の要求と将来の要求の両方が考慮される。
【0046】
マスターコントローラ112が圧縮空気又はガス113を制御する方法は、
図2の流れ図で示されている。マスターコントローラ112は、出力210及び入力211を介して、圧縮空気又はガスシステム113を制御する及びそれと通信する。
【0047】
図2を再び参照すると、マスターコントローラ112の様々なモジュール又は構築要素は、データベース200、圧縮機モデルセット及び/又は圧縮空気又はガスシステムのモデル201、1又は2以上の推定器202、流量予測ブロック203、サンプリングブロック204、及びモデル予測制御(MPC)ブロック205である。これらのブロック200-205は、1つのマスターコントローラ112の一部であるように図示されているが、物理的にあるいは仮想的に、互いに対して分散配置できることに留意されたい。例えば、データベース200は、リモートサーバに位置し、オーダーメイドのデータ接続を介してアクセスすることができる。
【0048】
マスターコントローラ112の構築ブロック200-205をさらに詳細に説明する前に、
図3を参照して汎用MPC法の要件を説明する。
図3は、圧縮空気又はガスシステム113を制御するために使用するのに適した方法を示す。
【0049】
圧縮空気又はガスシステム113を制御するためには、1又は2以上の目標300を規定する必要があり、1又は2以上の制約301を考慮する必要があり、そして予測302を行う。目標300は、例えば、クライアントネットワーク111における一定圧力又は一定流量である。制約は、例えば、最大圧力又は容器107の容積である。
【0050】
次に、解決器310によって又はシミュレーションモデル311によって、圧縮空気又はガスシステム113のための命令として、アクション320が規定される。最後に、圧縮空気又はガスネットワーク113が所望通りに機能するか否かを検証するために、測定値322が解決器310及びシミュレーションモデル311に送り返され、アクション320を適合させる必要があるか否かを決定する。
【0051】
図3のMPCブロック205の実例は、測定値322(211に対して)によるフィードバックが本発明の発明概念に関連するという点で、
図2のものと異なることをさらに理解されたい。すなわち、圧縮空気又はガスシステム113からの何らかの測定値を直接フィードバック322する代わりに、フィードバック211は、すでに上述したような及びさらに以下の図を参照して明らかにするような発明的な方法で
コンピュータにより実行される方法によって処理される。
【0052】
本方法の機能は、圧縮空気又はガスシステム113が、例えば起動又は停止からの何らかの過渡的現象が存在しないという意味で、動作可能であるという観点からさらに議論することができる。換言すれば、各ステップは番号付けされた方法で議論されるが、それらの間に階層はなく、これらのステップは厳密な順序で従う必要もない。つまり、ブロック200-205は、それぞれ個別に、入力を考慮してそれを出力に処理することによって、専用のタスクを実行するように構成されている。従って、全ての構築ブロック200-205は、それ自身の特定の機能を有し、従来の既存の方法の欠点を排除する。
【0053】
第1のステップでは、1又は2以上の推定器202は、圧縮空気又はガスシステム113の測定値211を受け取る(220)。1又は2以上の推定器202は、データベース200をさらに照会する(221)ことができ、さらなる入力として圧縮機モデル201の既存のセットを使用する(222)ことができる。圧縮機モデルのセット201は、データベース200自体に組み込むことができることにも留意されたい。
【0054】
圧縮機モデルのセット201は、圧縮空気又はガスシステム113を表現する。モデルは、圧縮空気又はガスシステムのデジタルツインとすること、圧縮空気又はガスシステムを表現する微分方程式セットを含むモデルとすること、又はブラックボックス手法とすることができる。
【0055】
推定器ブロック202は、受け取った(220)測定値211に基づいて、随意的にモデル201に基づいて、圧縮空気又はガスシステム113の現在の状態を推定することになる。加えて、推定の精度を高めるために、データベース200から以前の推定値をアップロード221することができる。
【0056】
次に、推定ブロック202の出力は、それぞれ流量予測ブロック203及びMPCブロック205の入力224、227として使用される。さらに、出力221は、データベース200を更新するために使用することができる。
【0057】
続くステップにおいて、予測ブロック203は、圧縮空気又はガスシステム113の1又は2以上の将来のプロセス変数を予測する。予測225は、推定器ブロック202の出力224と、随意的にデータベース200に格納されたデータ226に基づく。
【0058】
予測ブロック203は、圧縮空気又はガスシステム113の現在のプロセス変数及びエージェント状態データを使用して、適切な時間期間のための圧縮空気又はガスシステム113の望ましい状態を計算する。これらの変数又はデータは、例えば、容器圧力及び流量要求であり、将来のプロセス変数プロファイルで表現される。
【0059】
予測(prediction)は、観測されていない(unseen)データについて結果を推定することに関連するが、予想(forecasting)は、予測の下位区分であり、ここでは、時系列データを使用して将来に関して予測を行うことをさらに理解されたい。従って、予測と予想の違いは、後者では時間次元が考慮されることである。このように、用語「予測」は、「予想」と解釈することもできるが、以下では、用語「予測」を使用することにする。
【0060】
予測ブロック203は、データベース200を経由する過去のプロセス変数データ226及び推定器ブロック202を経由する現在のプロセス変数データ224を考慮する。さらに、過去及び将来の状態エージェントデータ、生産計画、カレンダーデータ、休日データ、及び/又は天気予報データのような他の入力データを考慮することもできる。
【0061】
予測ブロック203の出力225は、ユーザによって又はさらに議論されるMPCプログラムによって設定することができる予め定義された時間期間に対して与えられる予測プロセス変数のデータプロファイルを含む。MPCプログラムでは、時間期間の設定は自動化される。
【0062】
予測ブロック203は、入力、出力、モデルパラメータ及びハイパーパラメータを有する入出力モデルに基づく予測機能ブロックである。例示的に、予測ブロック203に適した4つの予測パラダイムが議論される。
【0063】
複数の出力予測戦略は、何らかの関数近似器を用いて、所与の固定時間期間Hの予測関数を直接推定するか又は訓練する。この手法は、多段階手法としても知られている。
【0064】
ここでは、多変量予測関数は、現在及び過去の観察結果(observation)が与えられて直接訓練される。
【0065】
再帰的多段階予測法であり、適切な(I)/Oモデルが選択される。(I)/Oモデルの訓練パラメータから、予測関数が構築され、出力が所与の時間期間Hに関して再帰的にシミュレーション又は予測される。
【0066】
直接的多段階予測戦略は、各予測時間ステップに関して個別の予測器を構築することを含む。
【0067】
第4の予測パラダイムとして、上記のパラダイムの2又は3以上を組み合わせた混合型予測戦略を使用することができる。
【0068】
次に、サンプリングブロック204において、出力225は、MPCブロック205に適したサンプリング周波数でサンプリングされる。必要に応じて、サンプリング周波数はリセットすること又は時間的に変化することができる。
【0069】
図4は、MPC法の解決手法の動作をさらに説明する。この解決手法は、設定値405にできるだけ追従するために、圧縮機101-103の最適なアクションを計算することになる。
【0070】
これを行うには、設定値405、過去データ410、モデル、及び予測要求が必要である。過去データ410は、過去の設定値402とその実際の値403、並びにそれぞれのコントローラ104-106を介して圧縮機101-103がとったアクション404を含む。
【0071】
解決器で使用されるモデルは、少なくとも制御している各圧縮機のモデル、及び圧縮空気又はガスシステムのモデルを含む。
【0072】
将来推定411に関して、サンプリング法は、各計算ノード間408の時間を予め設定することになる。非等距離グリッドを可能にすることで、状況に応じて計算速度を向上させることができる。多くのアクションをとることが必要な推定ゾーンでは、細かく設定された(grounded)グリッドを選択することができる。推定値が大きく変化するゾーンが現在ある又は非常に近い将来にある。また、圧縮機へのコマンドはそれほど頻繁に変化しないので、ゆっくり変化する推定ゾーンは、非常に大ざっぱにサンプリングすることができる。
【0073】
このデータに基づいて、将来の推定値は、MPC手順によって生成されることになる。このアクションセットを解く過程で、制御下のパラメータ406の予測値が生成されることになり、また、圧縮機101~103の状態、k+nまでの各時間ステップkにおける全期間409に関する生成された流量及び圧力など、システムからの状態の限定サブセットも生成される。このデータに基づいて、全ての圧縮機101-103のためのアクションセット407が抽出されることになる。
【0074】
問題を解決した後、アクションセット407からの第1の時間ステップまたは複数の時間ステップが制御のために使用されることになる。次のサイクルでは、計算時間を短縮するために、得られた解が使用されて更新されることになる。
【0075】
所与のMPC問題は、ループ時間内に常に実現可能な解(feasible solution)を有するように解く必要がある。従って、この手順は、最適な解が見つかった場合又は最大計算時間が経過した場合に停止されることになる。最初に実現可能性について解き、その後で最適性について解くことになる。このようにして、常に実現可能な解を保証することができる。
【0076】
実現可能であるが準最適な解は、代替的に、シーケンサー、ルックアップテーブル、又はデータベース200を参照することによる従来の実現可能な解などの、すでに実装されている又は文献に記載されている解によって同様に生成することができる。
【0077】
機械の状態を特別な方法で処理することによって、従来技術と比較して大きな改善を行うことができる。負荷、無負荷、停止などの圧縮機の状態は、通常、カスタムヒューリスティック(custom heuristic)、分枝限定法(branch & bound)、線形プログラム・シンプレックスソルバー(simplex solver)、ダイナミックプログラミングなどの、いくつかの既存の複数の技術のうちの1つを使用して解かれる離散変数をもたらす。これらの計算は、通常、あらゆる新しい解のために実行される。しかしながら、解を再利用することができれば、計算要件を大幅に低減することができ、ハードウェア要件の低減につながる。過去の解の再利用は、以下で説明するように、有効範囲の存在に基づく。
【0078】
MPC解法の最終段階として、連続変数はニュートン・ラグランジュ法ベースの解決器又はこの特定の目的のために作成されたカスタムヒューリスティックを使用して改善されることになる。
【0079】
図5及び6は、有効範囲503を使用して以前の解を再利用するために使用される方法論をさらに説明する。この範囲503は、MPC法における離散変数の解法段階で計算されることになる。新しい予測がこの有効範囲に入るゾーンでは、新しい解は再計算する必要はない。
【0080】
さらに、MPC法の計算ステップにおいて、システムの挙動を検証するために、他の有用なデータを抽出することができる。このデータは、その後、エアネット(airnet)容量又は圧縮機サイズが小さすぎるなどの可能性のある問題についてシステムを分析するために使用することができる。
【0081】
図5は、モデル予測法の解決手法の計算ステップによって生成されたデータを示す。これは、設定値501と予測軌道Y 502、予測値PV 504とその有効範囲503、及び連続制御アクションU 505とその有効範囲503を含む。
【0082】
上述したように、制御ループの各反復では、
図6から分かるように、以前の解が新しい開始点601にシフトされる。その後、新しい予測値PVが到着し、以前の解の有効範囲と比較されることになる。この予測値がその有効範囲内にある限り、連続変数の小さな更新だけが必要である。しかしながら、予測値が有効範囲602の外側にある場合、離散変数に関するより大きな更新が必要となる。従って、違反が発生したゾーン603とその近傍604は、離散変数の更新のためにマーク付けされることになる。
【0083】
また、計算中に連続変数が有効範囲に違反することも起こり得る。また、この場合、より大きな更新が必要となる可能性があり、その近傍を含むゾーンが更新のためにマーク付けされることになる。
【0084】
これらの有効範囲は、2つの方法で計算することができる。離散変数を維持したまま値を得る実現可能性に基づくか又は最適性に基づくかである。最適性条件によって生成された境界は、実現可能性境界を使用して生成された場合よりも小さい。しかしながら、新しい予測値PVとその計算された制御値Uがこれらの境界の中にある場合、最適性が保証される。
【0085】
アルゴリズムにおいて、両方の境界を利用できるようにすることを予見することができる。この場合、有効性ベースの境界は、モデル予測制御アルゴリズムの1つの制御サイクル内で解く必要があり、また、完全問題を実行可能にする必要がある。最適性ベースの境界は、期限が切れるまで、又はそれを解くのに十分な時間がある場合に延期することができる。