(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
B01D 29/66 20060101AFI20240718BHJP
B01D 33/06 20060101ALI20240718BHJP
B03B 5/00 20060101ALI20240718BHJP
B07B 1/22 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
B01D29/38 520E
B01D33/06 D
B01D29/38 510C
B03B5/00 Z
B07B1/22 A
(21)【出願番号】P 2020077551
(22)【出願日】2020-04-24
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237167
【氏名又は名称】富士フィルター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 裕一
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特許第6450056(JP,B1)
【文献】特開2012-016672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/00-35/05
B01D 35/10-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材の一面側から他面側に流体を通過させる濾過時に流体中の物質を前記一面に捕捉し、前記濾材の他面側から一面側に流体を通過させる逆洗時に前記捕捉物質を前記濾材から離脱させるフィルターエレメントと、前記濾材の一面側から他面側に原液を通過させる濾過機構と、前記原液を濾過した濾液を前記濾材の他面側から一面側に逆洗用流体として通過させる逆洗機構と、前記濾材の他面側に配置されて前記濾過機構による濾過時に濾材の一面側から流入してきた流体を吸引する吸引機構と、前記逆洗機構及び前記吸引機構、又は前記フィルターエレメントの少なくとも一方を他方に対して相対回転させる駆動部と、少なくとも前記フィルターエレメント、前記濾過機構、前記逆洗機構、及び前記吸引機構を支持するケーシングと、前記濾過機構、前記逆洗機構、前記吸引機構、及び前記駆動部を制御する制御手段と、を備え、
前記逆洗機構は、前記濾材の他面側の流体を前記濾材を通過させて吸引する第1吸引口、及び前記濾材の一面に摺擦する第1摺擦部材を備えた逆洗ヘッドと、前記逆洗ヘッドにより吸引された流体を前記ケーシングの外部へ排出する逆洗用流体排出管と、を備え、
前記第1吸引口は、前記濾材の一面側の一部分と対面するように配置されており、前記第1摺擦部材は、前記第1吸引口の周縁に沿って配置された環状体をなし、前記濾材との間に半閉鎖空間としての第1空所を形成し、
前記吸引機構は、前記濾材の他面側から前記濾材の一部分と対面するように配置されて前記濾材の一面側の流体を前記濾材を通過させて吸引する第2吸引口、及び該第2吸引口の周縁に沿って配置されて前記濾材の他面に摺擦する第2摺擦部材を備えた少なくとも一つの吸引ヘッドと、前記吸引ヘッドにより濾材の他面側を経由して吸引された流体を前記ケーシングの外部へ排出する吸引流体排出管体と、を備えて
おり、
前記第2摺擦部材は、前記第2吸引口の周縁に沿って配置された環状体をなし、前記濾材との間に半閉鎖空間としての第2空所を形成し、
前記第2空所は、前記濾材を介して前記第1空所と連通可能であり、
逆洗時に前記吸引流体排出管から前記吸引ヘッドへ向けて逆洗用流体を供給する逆洗用流体供給機構を備えていることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記逆洗機構は円筒状の前記フィルターエレメントの外周面と前記ケーシングとの間に配置されており、
前記吸引機構は前記フィルターエレメントの内部に配置されており、
前記吸引流体排出管体は、前記フィルターエレメントの回転軸と同軸上に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記吸引流体排出管を、回転しない固定部と、前記吸引ヘッドを備えると共に前記固定部により所定の角度範囲で回動自在に支持された可動部と、から構成し、
前記吸引ヘッドは、前記所定の角度範囲内で前記フィルターエレメントに連れ回りすることを特徴とする請求項
2に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記逆洗機構は円筒状の前記フィルターエレメントの内部に配置されており、
前記吸引機構は前記フィルターエレメントの外周面と前記ケーシングとの間に配置されており、
前記逆洗用流体排出管は、前記フィルターエレメントの回転軸と同軸上に配置されていることを特徴とする請求項
1に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記逆洗用流体排出管を、回転しない固定部と、前記逆洗ヘッドを備えると共に前記固定部により所定の角度範囲で回動自在に支持された可動部と、から構成し、
前記逆洗ヘッドは、所定の角度範囲内で前記フィルターエレメントに連れ回りすることを特徴とする請求項
4に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記逆洗用流体排出管から前記逆洗ヘッドへ向けて洗浄用流体を供給する洗浄用流体供給機構を備えたことを特徴とする請求項
1に記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆洗機能を備えた液体用の濾過装置において、フィルターエレメントに捕捉された物質中から除去不要物質を効率的に分離、篩い分けし、且つ目詰まりの発生を防止し、逆洗、洗浄の頻度を低減するようにした濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海水、湖水、河川水、上水道、下水道等の水の濾過、各種装置の冷却水又はプロセス液等の産業一般に用いられる液体の濾過、化学工場等で使用される気体、粉体、粒体、粉粒体等を含む流体状の各種原料の濾過において、それらに含まれる微粒子や塵埃等を捕捉除去する目的で、種々の濾過装置が用いられている。
濾過装置による濾過を長期間続けていると、フィルターエレメントの開口を通過できずに捕捉された固形分やゲル状の塵埃等が濾材面に蓄積して濾材の開口を通過する流体に対する抵抗が上昇し、最終的には流体の濾過が困難になる。これに対処するため、例えば定期的に、フィルターエレメントに濾過時と逆向きに流体を通して該フィルターエレメントに付着した捕捉物質を剥離させる「逆洗」と呼ばれる操作を行い、フィルターエレメントの濾過性能を回復させている。
【0003】
逆洗の操作は有効なものではあるが、フィルターエレメントに付着した捕捉物質が逆洗によって完全に除去されずに残存することがある。その場合に濾過、逆洗による再生を繰り返したとしてもフィルターエレメントを構成する濾材の流体に対する抵抗が低下せず、対象となる流体の濾過が困難になることがあった。
これに対して、特許文献1(特許第6450056号)には、フィルターエレメントを構成する濾材の一次側面の一部分に接面するように配置されて濾材の一次側の流体を濾材を通過させて吸引する吸引口、及び該吸引口の周囲に植毛されて濾材の一次側面に摺接するブラシを備えた逆洗ヘッドと、逆洗ヘッドに吸引された流体をケーシングの外部へ排出する逆洗用流体排出管を含んで構成される逆洗機構とを備えた濾過装置による運転方法が開示されている。これによれば、濾材の一次側面に対して逆洗ヘッドのブラシが相対回転する時に捕捉物質の離脱、捕捉物質の分散、及びそれに対する篩い分けを補助することにより、濾材の濾過性能を回復させることができる。
しかし、逆洗ヘッドのブラシが濾材の外面に接しているに過ぎないためブラッシング時に濾材を通過して濾材内部に進入した物質がフィルターエレメント内に拡散して濾液に混入されるという問題があった。
【0004】
この点をさらに詳細に説明する。
逆洗時には濾過時とは逆方向へ流体を通過させるため、逆洗を行うと濾過時とは逆の方向から濾材、及び濾材内部に物質が堆積して目詰まりを生じることがある。
濾材に捕捉される粒子は濾材の開口径よりも大きい粒子ばかりではなく、開口径よりも小さな粒子が凝集して開口径を越えるサイズとなったもの、小さな粒子が濾材の開口付近で部分的に形成したケークからなるもの、繊維状の粒子のように不定形粒子であってその通過方向によって通過径が変わるもの、粒子ではないがゲル状であるために濾材に付着して開口を通過できないもの等がある。これらの中には、分散、離脱させることにより濾材を通過し得る形態に変化するものがある。
特許文献1では、濾過時に濾材の一次側面に捕捉された捕捉物質をブラッシングにより分散させてから濾材を通過させることにより目詰まりを回復させる濾過装置の運転方法を提案している。このブラッシングのみで濾材の目詰まりを回復させる濾過装置の運転方法では、逆洗を行う回数を最少にすることができるので、濾材の逆方向(二次側面)からの目詰まりを防ぐ効果は高い。
【0005】
しかし、捕捉物質をブラッシングにより分散しているため、濾材を通過して濾液室側に分散された捕捉物質(固形成分)が拡散されて濾液中に含まれることとなる。このため、濾液中の固形成分濃度を下げることが濾過の目的である場合に、ブラッシングだけを行うと濾材を通過してくる固形物が多くなって目的を達成できなくなる。
その場合は、特許文献1で示される濾過装置によるブラッシングだけではなく逆洗ヘッドにより逆洗を行いながらブラッシングを行うことによって濾液中の固形成分濃度を下げるという目的が達成される。
しかし、この場合、逆洗を行うので、逆方向、つまり、濾液室側面(二次側面)から目詰まりが発生することを阻止できずに二次側面に固形成分が堆積する。
図12は特許文献1におけるブラッシングの効果を説明する略断面図であり、濾材500に対して逆洗ヘッド510が相対移動する構成において、吸引口520の周縁に沿って環状に植設されたブラシ525を構成する前後2つのブラシ列525a、525bが空所Sを介して並行に配置されている。逆洗ヘッド510が矢印方向へ移動する過程で前側のブラシ列525aが濾面上の捕捉物質をブラッシングして分散すると、分散した捕捉物質のうちの濾材の開口よりも小さいものは濾液室側へ通過する。この際、前側と後側の各ブラシ列の間の空所S内に位置する濾面500aでは他の濾面部分に比してブラッシングによる目詰まり回復の結果として抵抗が小さくなり、流体が通過し易くなっている。
【0006】
しかし、ブラッシング時に濾面500aを通過して濾液室内部に進入した固形成分がフィルターエレメント内に拡散して濾液に混入されるという問題を生じる。
次に、
図13のように単一のブラシ列560のみで濾材の原液室側面(一次側面)をブラッシングする場合、
図12のような後側のブラシ列525bが存在しないため、単一のブラシ列によるブラッシングで分散された捕捉物質(固形成分)は原液室側に飛び散りケーシングの原液内に広く拡散する。
図12の構成例のように2つのブラシ列の間に空所Sを形成することによりブラッシングにより原液中に拡散されようとする固形成分を空所S内に留めつつブラッシング直後に濾液室側(二次側)に通過させることができれば濾面の開口部はブラッシングにより目詰まりを回復できた状態にあり、効率よく分散された固形分を濾液室側へ流すことができる。しかし、
図13の構成例では固形成分はケーシング内の原液中に広く分散しており、ブラッシングによって目詰まりが回復している濾面500bにより濾過が行われることになる。その場合、ブラッシングにより解砕されて濾面の開口部径よりも小さくなり、且つ原液内に拡散された固形成分ばかりでなく、元々原液中に存在していた凝集粒子も目詰まりが回復している濾面500bに集中して濾過されることにより再凝集を起こして再び捕捉される現象が起きる。つまり、
図13の構成例ではブラッシングにより原液中に拡散されようとする固形成分をブラッシング直後に効率よく濾液室側に通過させることができていない。このため、原液内に広く拡散した固形成分が次第に濃縮し、更にその大半が目詰まりが一旦回復した濾面500bを通過しようとする時点では、該濾面500bでは既に目詰まりを再発している状態にある可能性が高くなる。また、
図12の場合と同様に目詰まりが回復している濾面500bを通過した固形成分は濾液中に拡散されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、フィルターエレメントを構成する濾材の一面側に逆洗ヘッドを配置する構成を採用した場合にブラッシングによって濾材の他面側へ通過した物質が濾液内へ拡散するという問題を解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明に係る濾過装置は、濾材の一面側から他面側に流体を通過させる濾過時に流体中の物質を前記一面に捕捉し、前記濾材の他面側から一面側に流体を通過させる逆洗時に前記捕捉物質を前記濾材から離脱させるフィルターエレメントと、前記濾材の一面側から他面側に原液を通過させる濾過機構と、前記原液を濾過した濾液を前記濾材の他面側から一面側に逆洗用流体として通過させる逆洗機構と、前記濾材の他面側に配置されて前記濾過機構による濾過時に濾材の一面側から流入してきた流体を吸引する吸引機構と、前記逆洗機構及び前記吸引機構、又は前記フィルターエレメントの少なくとも一方を他方に対して相対回転させる駆動部と、少なくとも前記フィルターエレメント、前記濾過機構、前記逆洗機構、及び前記吸引機構を支持するケーシングと、前記濾過機構、前記逆洗機構、前記吸引機構、及び前記駆動部を制御する制御手段と、を備え、前記逆洗機構は、前記濾材の他面側の流体を前記濾材を通過させて吸引する第1吸引口、及び前記濾材の一面に摺擦する第1摺擦部材を備えた逆洗ヘッドと、前記逆洗ヘッドにより吸引された流体を前記ケーシングの外部へ排出する逆洗用流体排出管と、を備え、前記吸引機構は、前記濾材の他面側から前記濾材の一部分と対面するように配置されて前記濾材の一面側の流体を前記濾材を通過させて吸引する第2吸引口、及び該第2吸引口の周縁に沿って配置されて前記濾材の他面に摺擦する第2摺擦部材を備えた少なくとも一つの吸引ヘッドと、前記吸引ヘッドにより濾材の他面側を経由して吸引された流体を前記ケーシングの外部へ排出する吸引流体排出管体と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、濾材の一面側に逆洗ヘッドを配置する構成を採用した場合にブラッシングによって濾材の他面側へ通過した物質が濾液内へ拡散することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る濾過装置の縦断面図((b)のA-A線断面図)であり、(b)は(a)のB-B線断面図である。
【
図2】吸引ヘッドと吸引流体排出管の構成を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態において逆洗ヘッドと吸引ヘッドが濾材を間に挟んで対向している状態を説明する断面図である。
【
図5】(a)及び(b)は逆洗ヘッド、及び吸引ヘッドを構成する除去ブラシの他の植設例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の濾過装置の運転手順を示すフローチャートである。
【
図7】(a)及び(b)はブラッシングにより篩い分けを行っている状態を示す濾材の要部拡大断面図である。
【
図8】(a)は本発明の第2の実施形態に係る濾過装置の要部断面図であり、(b)は第1除去ブラシの構成を示す斜視図である。
【
図9】(a)は本発明の濾過装置に使用する吸引ヘッドの他の構成例(第3の実施形態)を示す斜視図であり、(b)は(a)の吸引ヘッドを濾過装置に組み付けた場合における逆洗ヘッドとの位置関係を示す横断面図であり、(c)は吸引ヘッドと逆洗ヘッドとの位置関係を示す説明図であり、(d)は吸引ヘッド(逆洗ヘッド)の他の構成例を示す斜視図である。
【
図10】(a)は本発明の第4の実施形態に係る吸引ヘッド151の周辺の構成を示す断面図(
図1(a)のB-B断面図に相当)、(b)は(a)のC―C断面図、(c)は回転機構を示す要部斜視図である。
【
図11】(a)及び(b)は本発明の第5の実施形態に係る濾過装置の構成を示す縦断面図((b)のA-A断面図)、及び(a)のB-B断面図である。
【
図12】特許文献1におけるブラッシングの効果を説明する略断面図である。
【
図13】単一のブラシ列のみで濾材の原液室側面をブラッシングする場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る濾過装置の構成例について説明する。
図1(a)は本発明の第1実施形態に係る濾過装置の縦断面図((b)のA-A線断面図)であり、(b)は(a)のB-B線断面図であり、
図2は吸引ヘッドと吸引流体排出管の構成を示す斜視図である。
図3は濾材の一例の拡大断面図である。
図4は本実施形態において逆洗ヘッドと吸引ヘッドが濾材を間に挟んで対向している状態を説明する断面図である。
図5(a)及び(b)は逆洗ヘッド、及び吸引ヘッドを構成する除去ブラシの他の植設例を示す斜視図である。
本濾過装置は、例えば船舶のバラスト水を濾過するもので、流体入口6から導入した流体をフィルターエレメントを通過させて流体出口7から流出させて濾過を行う。
第1実施形態に係る濾過装置は、ケーシング1と、隔壁2と、フィルターエレメント3と、ギアードモータ(駆動部)13と、濾過機構120(流体入口6、流体出口7、原液室8等)と、逆洗機構140と、吸引機構150と、制御手段(CPU等)600等を概略備えている。
【0013】
本濾過装置は、フィルターエレメントを構成する円筒状の濾材31の一面側(原液室側=一次側)から他面側(濾液室側=二次側)に流体を通過させる濾過時に流体中の物質を一面に捕捉し、濾材の他面側から一面側に流体を通過させる逆洗時に濾材の一面に捕捉された捕捉物質を濾材から離脱させるフィルターエレメント3と、濾材の一面側から他面側に原液を通過させる濾過機構120と、原液を濾過した濾液を濾材の他面側から一面側に逆洗用流体として通過させる逆洗機構140と、濾材の他面側に配置されて濾過機構120による濾過時に濾材の一面側から流入してきた流体を吸引する吸引機構150と、逆洗機構及び吸引機構とフィルターエレメントの少なくとも一方を他方に対して相対回転させる駆動部13と、少なくともフィルターエレメント3、濾過機構120、逆洗機構140、及び吸引機構150を支持するケーシング1と、を備える。
逆洗機構140は、濾材31の一面側(原液室側)から濾材の一部分に接面するように配置されて濾材の他面側(濾液室側)の流体を濾材を通過させて吸引する第1吸引口(逆洗吸引口)143、及び第1吸引口の周囲(周縁)に沿って植毛(突設)されて濾材の一面に摺接する第1除去ブラシ(第1摺擦部材)144を備えた逆洗ヘッド141と、逆洗ヘッドに吸引された流体をケーシング1の外部へ排出する逆洗用流体排出管145と、を備える。
【0014】
吸引機構150は、濾材31の他面側から濾材の一部分に対向する(濾材の全面に対向せず、軸方向に細長い局部に対向する)ように配置されて濾材の一面側(原液室側)の流体を濾材を通過させて吸引する第2吸引口152a、及び該第2吸引口の周囲(周縁)に沿って植毛(突設)されて濾材の他面に摺接する第2除去ブラシ(第2摺擦部材)154を備えた吸引ヘッド151と、吸引ヘッドにより吸引された流体を濾材の他面側(
図1では濾液室9と連通したフィルター内部のこと)を経由してケーシングの外部へ排出する吸引流体排出管160と、を備える。
制御手段600は、濾過機構120、逆洗機構140、吸引機構150、及び駆動部13を制御する。
【0015】
本濾過装置は、フィルターエレメント3の一次側面(外周面)の一部分に対面、接面するように配置された逆洗ヘッド141等からなる逆洗機構140を用い、除去ブラシ144の強い摺擦力と、第1吸引口143からの強い吸引力とにより高い逆洗効果を発揮するものである。
【0016】
ケーシング1は濾過装置の外殻をなすもので、ケーシング本体1aとケーシング蓋1bとからなる。ケーシング本体1aは、有底の筒状(例えば円筒形状)、直方体形状などに形成され、例えば側壁上部に外部から流体が流入する流体入口6を有すると共に、側壁下部に内部で濾過された流体を外部へ流出する流体出口7を有している。ケーシング蓋1bは、ケーシング本体1aの上に載置されケーシング1内部を密封する蓋である。
ケーシング1の内部の下部には、隔壁2が水平に設けられている。この隔壁2は、ケーシング1内部を、流体入口6と連通して濾過前の流体を収容する原液室8(上側)と、流体出口7と連通して濾過後の流体を収容する濾液室9(下側)とに隔離する壁である。この隔壁2の中央部には貫通孔2aが設けられ、これに嵌合して筒状部分10が上向きに突設されている。
ケーシング1の内部であって隔壁2の上側には、円筒状のフィルターエレメント3が、原液室8内に垂直方向に設けられ、フィルターエレメント3の下端部内周が筒状部分10の外周により回動可能に支持され、筒状部分10の内部を介してフィルターエレメントの内部が濾液室9と連通している。このフィルターエレメント3は、流体を原液室側から濾液室側へ通過させて濾過するフィルターとなるもので、円筒面を成す濾材31と、下端部を成す下側閉塞板32と、上端部を成す上側閉塞板33とを有し、対象となる流体を外側から内側に向けて濾材31を通過させ流体中に含まれる固形分やゲル状の塵埃等を捕捉して濾過するものである。
【0017】
濾材31は、例えば
図3に一例を示す様に、複数層に重ねられており最外層、つまり原液室側(一次側)が最も細かい網目であり内側に向かって次第に粗くなっているものであればよく、複数積層した金網を焼結して一体化し強度を高めたものを円筒状に成形したものが好ましい。最外層が最も細く次第に粗くなっているという点からメッシュではないが、円筒状のノッチワイヤーからなるもの、ウェッジワイヤーからなるもの等を用いることができる。焼結したものの場合は、最外層の網目の大きさは10~200μmのもの、それより内側の層の網目の大きさは100~5000μmのものの中から適宜選定すればよい。この場合、最外層以外の補強メッシュや保護メッシュは、フィルターエレメント3の強度に係わるものであり、必要な強度が得られるようにその層数、網目の大きさ及び線材径を選択する。また、メッシュの織り方は、平織り、綾織り、朱子織り、畳織り、綾畳織り等が適用できる。なお、最外層を金網として、その外側に例えば角穴が無数に穿設された円筒状のパンチングプレートや、複数本の細いロッドを縦横方向に並べた補強部材を配設した状態で焼結してもよい。
また、濾材31は原液室側の開口が小さく、濾液室側へ向かう程開口が粗くなっている。このため逆洗による目詰まりが濾材の濾液室側の面に発生した場合、濾液室側から濾材をブラッシングしても粗いメッシュが障害となってブラッシングの効果がない。つまり、濾液室側に配置された第2除去ブラシ154はシール効果(半閉鎖空間としての第2空所S2を形成する効果)しか発揮しない。
【0018】
下側閉塞板32は円板状を成し、外周が円筒状の濾材31に嵌合されてこれと固定されており、中央部には貫通孔34が設けられて、これに筒状部分10が回動可能に嵌合している。貫通孔34の内周には溝が設けられてOリング12が設けられ、筒状部分10の外周との間にシールを形成している。
【0019】
一方、上側閉塞板33も円板状を成し、外周が筒状の濾材31に嵌合されてこれと固定されている。この上側閉塞板33の中央部は、ケーシング蓋1bの上側に設けられたギアードモータ(駆動部)13からケーシング蓋1bの貫通孔1dを通過して伸びる回転軸14に接続されている。これにより、フィルターエレメント3は、ギアードモータ13により回動できるようになっている。また、貫通孔1dの内周にはOリング1b`が設けられ、回転軸14との間のシールを形成している。
【0020】
逆洗機構140は、原液室8側からフィルターエレメント3の濾材31の一部分に接面するように配置されて濾液室9側の流体(濾液、或いはバルブVGを通して供給された逆洗用流体)を濾材31を通過させて吸引し、吸引された流体をケーシング1の外部へ排出することにより濾材31の逆洗を行うもので、逆洗ヘッド(一次側ヘッド)141と、逆洗用流体排出管145とを含む。尚、本明細書で「吸引」とは、必ずしも大気圧より低い圧力で流体を引き込むことに限定されず、圧力差がある場合に相対的に圧力の低い側に流体を引き込むこと一般を意味する。この逆洗機構140と、接面位置移動手段としてのギアードモータ13等からなるフィルターエレメント3の回転機構とが本実施形態の逆洗手段を構成する。
逆洗ヘッド141は、濾材31の一部分に対面、接面するように配置されて濾液室9側の流体を濾材31の開口(濾孔)を通過させて吸引する手段である。
逆洗ヘッド141は、軸方向両端が閉塞した略管状の部材であり、且つ濾材31の外側面に近接配置(対向配置)されてその軸と平行に設けられている逆洗ダクト142と、逆洗ダクトがフィルターエレメント外面と対向する部分(対向面)に開口形成され、濾材31の略全長をカバーするスリット状の第1吸引口(一次側吸引口=逆洗吸引口)143と、第1吸引口の全周縁に沿って植毛された第1除去ブラシ(第1摺擦部材)144と、を概略備えている。逆洗用流体排出管145は、ケーシング本体1aの下部適所を貫通して逆洗ダクト142内部と連通している。
【0021】
第1除去ブラシ144は吸引口143の全周縁に沿って植設されることにより先端部を濾材の一次側面に摺接されており、第1除去ブラシ144は全体として環状のブラシ列を構成し、環状体のブラシ列内部は吸引口143と連通した第1空所(一次側空所)S1となっている。第1除去ブラシ144の植毛密度は、第1空所S1内を外部の濾液から隔離、遮断して半閉鎖空間とする程度とする。なお、後述するように第1除去ブラシから成る環状のブラシ列は全周に亙って間断なく連続的に延在していることは必須ではなく、部分的に植毛密度にバラツキがあったり、部分的に植毛されていない部位があったとしても外部の濾液からある程度隔離することにより第1空所S1による固形成分の保持機能が発揮できれば問題ない。
【0022】
回転しない逆洗ヘッド141に対してフィルターエレメント3をギアードモータ13で回転させながら逆洗を行うことにより、第1除去ブラシ144で捕捉物質をかき取りながら、濾材31の全面を逆洗できるようになっている。
なお、図示しないがフィルターエレメントを固定しながら、逆洗ヘッド141(吸引ヘッド151)を回転移動させる構成としても良いことは勿論である。
第1除去ブラシ144のブラシ毛の材質は、例えば天然若しくは合成の繊維、又は鋼、銅、真鍮などの金属線等であり、濾過装置の使用目的及び通過させる流体に応じて選択する。
【0023】
一方、軸方向に長い逆洗ヘッド141の下端部近傍には、濾材31との接面側と反対側に逆洗用流体排出管145が接続されている。この逆洗用流体排出管145は、逆洗ヘッド141に吸引された流体をケーシング1の外部へ排出する手段であり、ケーシング本体1aの側面に設けられた貫通孔を経て外部に延出し、外部の排出管147に接続されている。この逆洗用流体排出管145には、止め弁としての開閉バルブVFが設けられている。この開閉バルブVFは、逆洗用流体の流出・停止を制御するもので、濾過装置の逆洗時には開放され、それ以外のときには閉塞される。この開閉バルブVFの排出側は、流体出口7の圧力より低圧、例えば大気圧P0に開放されたドレイン側へ接続されている。
また、開閉バルブVFの上流側(フィルターエレメント側)の外部排出管147には、洗浄用の流体を供給するための配管147aと、この配管を開閉するバルブVHを配置する。開閉バルブVFを閉じた状態でバルブVHを開放して排出管147から逆洗ダクト142に向けて洗浄用流体を供給することにより逆洗による濾材の目詰まりを回復させることができる。即ち、逆洗により濾材の内面に付着した固形成分などは、洗浄用流体を逆方向から供給することにより濾材から除去されて吸引流体排出管160、吸引流体排出口162、止め弁VEから機外へ排出される。この際、洗浄用流体が濾材を通過する速度が速いほど高い洗浄効果を得ることができる。
図示しない洗浄用流体供給部、開閉バルブVF、バルブVH、逆洗機構140(逆洗用流体排出管145、逆洗ダクト142、吸引流体排出管160等は、第1の洗浄用流体供給機構を構成する。
【0024】
濾過装置に接続する濾過対象流体の外部の配管系として、ケーシング1の流体入口6には入口側配管121が接続され、入口側配管121は途中に入口側バルブVIを有して1次圧(P1)を有する原液供給源(濾過機構)と接続されている。一方、ケーシング1の流体出口7に出口側配管122が接続され、この出口側配管122は途中に出口側バルブVOを有して2次圧(P2)を有する濾液貯留槽等に接続されている。
【0025】
次に、逆洗ヘッド141の吸引口143、及び除去ブラシ(摺擦部材)144が対面する濾材部分を挟んで濾材の二次側には、吸引ヘッド(二次側ヘッド)151が配置され、吸引ヘッド151の内径側開口部152bはフィルターエレメント3の回転軸と同軸上に固定配置された吸引流体排出管160の内部と連通している。
吸引ヘッド151は、逆洗ダクト142の第1吸引口(一次側吸引口)143と対向配置された第2吸引口(二次側吸引口)152aを備えた吸引ダクト152と、第2吸引口152aの全周縁に沿って植設されて先端を濾材の二次側面に摺接させる第2除去ブラシ(第2摺擦部材)154と、を概略備えている。吸引ダクト152の内径側開口部152bは吸引流体排出管160の内部と連通している。内径側開口部152bは、第2吸引口152aと同様に軸方向に長いスリットとして構成する。第2吸引口152aは吸引流体排出管160に設けた軸方向へ延びるスリット160aと連通している。つまり、本実施例では吸引ダクト152は内径側で吸引流体排出管160と一体化している。
【0026】
吸引ダクト152の第2吸引口152aの開口形状、サイズは、逆洗ダクトの第1吸引口143と同一形状、サイズとしてもよいし、第1吸引口143の周縁全体を内部に包摂するように大な開口形状としてもよい。要するに第1空所S1から濾材を経て二次側に流入してくる流体を漏れなく第2空所(二次側空所)S2内に吸引できるように構成されていれば良い。
吸引ダクト152の上部と上側閉塞板33との間には上側閉塞板33の回転を円滑にするための軸受156が配置されている。
吸引流体排出管160の下部はフィルターエレメント3の下部開口を通過して濾液室9内で横方向へ屈曲してケーシング本体1a下部を貫通して外部に突出する。吸引ダクト152の外側端部は吸引流体排出口(濃縮液出口)162を構成しており、止め弁VEにより開閉制御される。逆洗用のバルブVFを閉じることにより逆洗が行われない状態で、止め弁VEを開放状態にしたときに濃縮液出口162の外部が濾液よりも低圧となるようにする。必要ならば、ポンプ等により吸引する。これにより、第1除去ブラシ144と濾材との相対移動によって濾材の一次側面から除去され、且つ解砕された捕捉物質(固形成分)は、逆洗ダクト142の第1空所S1内部から濾材を通過して二次側に流入して第2空所S2内に直接導かれる。第2空所S2に流入した固形成分は、二次側吸引口152a、内径側開口部152bを経由して吸引流体排出管160、吸引流体排出口162へと排出される。このため、フィルターエレメントを構成する濾材の一面側に逆洗ヘッドを配置する構成を採用した場合にブラッシングによって濾材の他面側へ通過した物質が濾液内へ拡散することを防止し、濾液中の固形成分濃度を下げることができる。
図4は逆洗ヘッドと吸引ヘッドが濾材を間に挟んで対向している状態を説明する断面図である。
【0027】
濾過装置による濾過実施中に、逆洗機構140による逆洗を行わない状態で第1除去ブラシ144を濾材31に対して相対回転させることにより、ブラシによるブラッシングを伴わない濾過によっては捕捉物質中から除去できない除去不要物質を大きさにより要除去物質と分別して篩い分け、除去不要物質だけを他面側へ通過させる篩い分け作業を実施する。
第1除去ブラシ144の全体形状は濾材31側から視た時に軸方向に細長い環状体をなしているため、
図4の断面図では第1除去ブラシの相対移動方向前方に位置する前部除去ブラシ列144aと、相対移動方向後方に位置する後部除去ブラシ列144bと、第1空所S1とが視認できる。
逆洗ヘッド141は吸引口143の周縁全体に植設した除去ブラシ(列)144を濾面に向けて突設させてブラシ先端部を適度な圧力により濾面に接触させた構成を備えているため、逆洗ヘッド141、及び吸引機構150がフィルターエレメント3に対して図中に各矢印で示す方向へ相対移動することにより、吸引口143を間に挟んで前方に位置する前部除去ブラシ列144aが捕捉物質と接触してこれを解砕する。この際に、前記相対回転に起因して前部除去ブラシ列144aの先端部と濾材表面との間に形成される隙間を介して矢印F1で示したように外部(原液室)から両除去ブラシ列144a、144b間の第1空所S1に向かう流れ(液流)が形成され、捕捉物質の分散に寄与する。
【0028】
なお、上記「ブラシ先端部を適度な圧力により濾面に接触させた構成」における「適度な圧力」とは、除去ブラシ列144aの先端部と濾材表面との間に形成される隙間を介して外部(原液室)から両除去ブラシ列144a、144b間の第1空所S1に向かう流れ(液流)Fを形成すると共に、第1空所S1内の圧力が原液室8よりも低くなる状態(半閉鎖空間状態)を維持し得る圧力を意味する。
即ち、第1除去ブラシ144と濾材31により包囲された第1空所S1は上記した半閉鎖空間状態となっているため、第1空所S1内の圧力はその外側の原液室8よりも低く、且つ濾材31を介して下流側に位置する第2空所S2の圧力よりも高い。このため、原液室8から第1空所S1内へ向かう液流F1が発生する一方で、第1空所S1と対面するブラッシング済みの濾面31Nを介して第2空所S2へ向けて流れる液流F2によりスムーズに濾過が行われる。本実施例では特に、逆洗用流体排出系の開閉バルブVFを閉塞した状態で第2空所S2内を吸引流体排出管160を介して大気圧P0と連通させており、第2空所S2内が第1空所S1よりも所定値低圧に設定されているため液流F2は強い吸引力を発揮する。
【0029】
連続、間欠、或いは必要に応じて入口側バルブVI及び出口側バルブVOは開放し、逆洗用流体排出系の開閉バルブVFは閉塞する。
即ち、前部除去ブラシ列144aによるブラッシングによって捕捉物質が解砕されて粒径の大きい要除去物質と小さい除去不要物質に分別されつつ濾面から離脱するが、大半の要除去物質と除去不要物質は液流F1に乗って両除去ブラシ144a、144b間の第1空所S1内に導入される(ブラッシングによる解砕を液流F1が助長する)。一方、後部除去ブラシ列144b(及び図面の紙面と直交する両方向にある除去ブラシ列)は第1空所S1部分が原液室よりも低圧になっていて濾面に押し付けられるため、第1空所S1内に導入された物質を第1空所S1外へ逃さないシール効果と、濾面に付着した物質を除去する本来のブラッシング効果を発揮する。つまり、両除去ブラシ列144a、144b(環状の第1除去ブラシ144全体)のシール効果により、前部除去ブラシ列144aにより濾面から除去されて分散した物質(要除去物質、及び除去不要物質)は原液室8内に飛び散ること無く第1空所S1内に収集されて、目詰まりが回復した直後の濾面31Nにより効果的に濾過される。
【0030】
一方、濾面31Nを通過した流体の大半は、濾面31Nを間に挟んだ対向位置に配置され、且つ濾液室よりも低圧に設定された第2空所S2内に流入する。つまり、除去不要物質としての固形成分を多く含んだ流体が第2空所S2内に流入する。第2空所S2内に流入した流体は、二次側吸引口152a、内径側開口部152bを経由して吸引ダクト152、吸引流体排出口162へと排出される。従って、吸引流体排出管160により吸引される流体は除去不要物質としての固形成分が濃縮された状態にある。
このように一次側でのブラッシングによって第1空所S1を経由して濾材を通過した固形成分を濾液室側で第2空所S2に吸引することにより、この固形成分を濾液に混入させた濃縮液の状態で吸引流体排出口162から排出することができる。また、吸引機構150により吸引されずに濾材を通過して濾液室に流入した濾液には捕捉物質が分散されたものが混入しない状態となっている。
【0031】
本発明に係る濾過装置は、吸引機構150を備えたことにより、濾過時に濾材31の一次側に捕捉された固形成分を解砕した状態で第1空所S1内に保持しつつ、第1空所S1と対面する濾過済みの濾面31Nを経由して第2空所S2内に流通させて、濾材を通過した固形成分が濃縮した状態で吸引流体排出口162から流体を取り出せるようにした構成が特徴的である。その結果、濾液室側からの濾材の目詰まりをもたらす逆洗によることなく濾液と固形成分との分離ができるという顕著な効果をもたらす。また、濾液中から固形成分を除きたい場合、即ち固形成分を除去した濾液を利用したい場合には、吸引機構150により吸引されて吸引流体排出口162から排出される固形成分を濃縮した流体ではない濾液室内の濾液を利用することになる。またこれとは逆に固形成分の方を利用したい場合には、吸引流体排出口162から排出される固形成分を濃縮した流体を利用すればよいということになる。
【0032】
図4では、環状体をなす第2除去ブラシ154は、前部除去ブラシ列154a、後部除去ブラシ列154b、及び両ブラシ列の長手方向両端部を連設する端部ブラシ列との協働により、濾面31Nとの間にシール効果を備えた半閉鎖空間としての第2空所S2を形成する。
即ち、第2除去ブラシ154と濾材31により包囲された第2空所S2は半閉鎖空間となっており、且つ吸引流体排出管160からの負圧(
図1(a)中の2次圧P2よりも低い圧力)の作用により、第2空所S2内の圧力はその外側のフィルターエレメント内部、及び濾液室9よりも低い。このため、第1空所S1から第2空所S2内へ向かう強い液流F2が発生し、濾面31Nを介してスムーズに濾過が行われる。
図1の装置構成においてバルブVHを開放して洗浄用流体を逆洗ダクト142へ供給する場合、濾材面31Nの原液室側の圧力を可能な限り高くし、濾材面31Nの濾液室側の圧力を可能な限り低くすることにより洗浄効果を高めることができる。
【0033】
上記実施形態では第1除去ブラシ144と第2除去ブラシ154を間断なく連続する環状のブラシ列から成る構成としたが、
図5(a)に示すように第2除去ブラシ154を並行に配置された前後の除去ブラシ列154a、154bから構成し、且つ各ブラシ列の長手方向一端部間を他のブラシ列により連結しない(開放した)構成としてもよい。つまり、第2空所S2を間に挟んで二本の除去ブラシ列154a、154bを並行に配列し、一端部間だけをブラシ列で接続しただけの構成としても、除去ブラシ列により解砕された捕捉物質(固形成分)の大半を液流F1により第2空所S2内へ流入させることができるので、第2空所S2からの吸引による固形成分の濾液内への拡散防止効果を充分に発揮することができる。除去ブラシ列が存在しない部分をブラシ列の欠落部154cと称する。なお、欠落部154cとは、除去ブラシ(摺擦部材)が完全に存在しない場合と、他部よりもブラシの密度が薄くまばらな場合と、ブラシは存在するが短尺であるために濾面と接触し得ない場合を含むものである。
【0034】
また、
図5(b)に示すように第1除去ブラシ154を並行に配置された前後の除去ブラシ列154a、154bから構成し、且つ各除去ブラシ列の長手方向両端部間に他のブラシ列を配置しない構成(ブラシ列の欠落部154c)としてもよい。つまり、第1空所S1を間に挟んで二本の除去ブラシ列154a、154bを並行に配列しただけの構成としても、解砕された捕捉物質(固形成分)の大半を液流F1により第2空所S2内へ流入させることができるので、第2空所S2からの吸引による固形成分の濾液内への拡散防止効果を充分に発揮することができる。
第2空所S2からの吸引による固形成分の濾液内への拡散防止効果を充分に発揮することができれば、欠落部154cはブラシ列の長手方向両端部のみならず、ブラシ列の途中に設けても良い。
【0035】
以上のように、少なくとも濾材の一次側(原液室側)と二次側(濾液室側)に夫々二本の並行なブラシ列を対向して設け、一次側で逆洗機構による逆洗が行われないようにしつつ二次側の吸引機構150を作動させて、濾液(
図1(a)中の2次圧P2)よりも圧力の低い場所に濃縮液排出口162を接続する。すると、
図4で説明したようにフィルターエレメントで捕捉した物質を濾液に混入させずに(完全分離はできないが)、濃縮液排出口としての吸引流体排出口162から低圧側へ排出することができる。
【0036】
以上のように構成された第1実施形態の濾過装置の動作は、次の通りである。
濾過時においてはフィルターエレメント3を回転し、連続、間欠、或いは必要に応じて入口側バルブVI及び出口側バルブVOは開放し、逆洗用流体排出系の開閉バルブVFは閉塞する。濾過すべき流体は、
図1の流体入口6から実線の矢印aで示すようにケーシング1の原液室8に流入し、円筒状の濾材31の逆洗ヘッド141が接面していない部分を通過して、フィルターエレメント3の内部へ流入することにより濾過される。濾過された流体は濾液室9へ流入し、流体出口7を通って矢印bのように外部へ流出する。
この際、第1除去ブラシ144が接している濾材の外面に付着しようとする、或いは付着している捕捉物質(固形物、ゲル状の塵埃等)はフィルターエレメントを回転させることによってブラッシングを受けて付着を解消される、或いは塊状の除去不要物は解砕されて濾材の開口を通過してゆく。このように濾過時のブラッシングによって除去物と除去不要物を篩い分け、除去不要物を二次側へ通過させることができる。
【0037】
このため、捕捉物質中に含まれていた大半の除去不要物を二次側へ流出させることができるばかりでなく、濾過差圧の上昇を大幅に遅延させることができる。
このように濾過中における篩い分け作業により目詰まりが発生しにくくなるため、濾過継続時間を長期化して逆洗回数を減少させ、装置の稼働率を高めることができる。また、逆洗回数の減少により逆洗による目詰まりの発生率を低減させることもできる。
更に本実施形態では濾材31を間に挟んで逆洗ヘッド141と対向する二次側に吸引ヘッド151を配置して、第1除去ブラシ144により形成される第1空所S1と第2除去ブラシ154により形成される第2空所S2とを連通させている。このため、第1除去ブラシにより除去、解砕されて濾材の開口を通過し得る状態となった捕捉物質の大半が第1空所S1を経由して第2空所S2からケーシング外部に排出されることとなり、固形成分の濾液内への拡散を阻止することが可能となる。
【0038】
次に逆洗機構140を用いた逆洗時においては、入口側バルブVI及び出口側バルブVOは引き続き開放されるとともに、逆洗用流体排出系の開閉バルブVFが開放され、逆洗用流体排出管145を経由して連通する逆洗ヘッド141内部の圧力が下がる。また、濾過時に止め弁VEを通して一旦機外へ排出されていた濃縮液を逆洗用流体として吸引流体排出管160へ逆流させることにより、この濃縮液が吸引ヘッド151を経て、白抜きの矢印で示すように濾材31を通過して第1吸引口143から逆洗ダクト142内に流入する。この際、第2除去ブラシ154を通過して第2空所S2へ進入した流体は第1吸引口143に接面する濾材31の縦長帯状の部分を逆洗する。
【0039】
なお、上記の逆洗手順では、使用する逆洗用流体が濃縮液であるため、逆洗による濾材の濾液室側からの目詰まりの可能性が高くなる。そこで、吸引流体排出管160の吸引流体排出口162に設けた止め弁VEを閉止し、止め弁VEと吸引流体排出口162との間に接続した逆洗用流体供給管163に設けたバルブVGを開放して逆洗用液体を吸引流体排出口162から吸引流体排出管160内に供給するようにしてもよい。これによれば、第2空所S2、濾材31を経由して第1空所S1側へ逆洗用流体を流出させることにより第1吸引口143に接面する濾材31の縦長帯状の部分が更に効率的に逆洗される。特に、逆洗による濾液室側からの目詰まりを効果的に防ぐことが可能になる。
つまり、止め弁VEを閉止しつつバルブVGから逆洗用流体供給管163を経て吸引流体排出管160、吸引ダクト152(吸引ヘッド151)に向けて加圧された逆洗用流体(清水等)を供給することにより逆洗機構140による逆洗を補助することができる。
バルブVGを開放して逆洗用流体を吸引流体排出口162から吸引流体排出管160内に供給する場合、図示しない逆洗用流体供給部、バルブVG、止め弁VE、吸引流体排出口162、吸引流体排出管160、吸引ヘッド151等は、第1の逆洗用流体供給機構を構成する。
【0040】
また、ギアードモータ13によるフィルターエレメント3の回転を行うことにより、第1除去ブラシ144で捕捉物質をかき取りながら、濾材31の全面が逆洗される。但し、逆洗時においても、濾過すべき流体は、流体入口6から実線の矢印aで示すように原液室8に流入するので、円筒状の濾材31のうち逆洗ヘッド141に対面していない部分では濾過が継続される。逆洗は、濾過装置の使用条件(濾過速度や流体中の異物の量など)に応じて、所定の頻度で所定の時間行う。
図1の実施形態の場合、第2除去ブラシ154は、第2空所S2内に位置する濾材部分である濾面31Nのみのシールを行っている。濾材内部を清掃するためにはバルブVHから洗浄用流体を逆洗ダクト142内に導入し、当該濾材部分を通過させて第2空所内に流入させることになる。
【0041】
第1実施形態に係る濾過装置では、フィルターエレメント3を構成する濾材31の外面(一次側面)に対して相対移動可能に配置されて該相対移動時に捕捉物質の離脱(除去)、及び捕捉物質に対する篩い分けの補助を行う第1除去ブラシ144と、第1除去ブラシ、又はフィルターエレメントの少なくとも一方を他方に対して相対移動させる駆動部13と、濾過機構と、逆洗機構と、駆動部、濾過機構、逆洗機構を制御する制御手段600と、を備え、濾過実施中に濾材の両面間の濾過差圧が所定値を越えた場合、或いは所定の時間経過を契機として逆洗を開始し、差圧解消後、或いは所定時間経過した後に濾過に戻る運転方法を実施する。
本運転方法では、制御手段が、濾過中に駆動部を駆動してブラシを濾材に対して相対移動させて捕捉物質中から除去不要物を篩い分け、該除去不要物を他面側へ通過させる作業を実施している。
【0042】
図6は本発明の濾過装置の運転手順を示すフローチャートである。本フローチャートによる運転手順は以下の他の実施形態に共通して適用する。
制御手段600は、濾過を開始する際に入口側バルブV
I及び出口側バルブV
Oを開放し、逆洗用流体排出系の開閉バルブV
Fは閉塞し、フィルターエレメント3を回転させることにより、濾材の一次側面を除去ブラシ144により定期的に、或いは連続的に(常時)ブラッシングして捕捉物質中から除去不要物質を篩い分け、該除去不要物質を他面側へ通過させる作業を実施する(ステップS1、S2)。なお、ステップS2におけるブラッシングは、間欠的なブラッシングであってもよい。
【0043】
次いで、ステップS3では、図示しない濾過差圧の測定装置により、濾過差圧が所定値に達したか否か、換言すれば濾過差圧が許容値を超えたか否かを判定し、許容値を超えた場合にはステップS4に進んでブラッシングしながらの逆洗を開始する。許容値を超えていない場合にはステップS2に戻る。なお、ステップS3においてタイマーにより濾過時間を計測し、所定の濾過時間の経過によりステップS4に進んで逆洗を開始するようにしてもよい。
逆洗作業では、入口側バルブVI及び出口側バルブVOを引き続き開放し続けるとともに、逆洗用流体排出系の開閉バルブVFを開放する。この際、止め弁VEを開放しつつバルブVGを閉止することにより止め弁VEを経由して逆洗用流体(濃縮液)を吸引流体排出管160へ供給してもよいし、止め弁VEを閉止しつつバルブVGを開放することによりバルブVGを経由して逆洗用流体(洗浄用流体)を吸引流体排出管160、吸引ダクト152へ供給してもよい。
止め弁VEを開放しつつバルブVGを閉止することにより止め弁VEを経由して逆洗用流体(濃縮液)を吸引流体排出管160へ供給する場合、図示しない逆洗用流体供給部、止め弁VE、バルブVG、吸引流体排出口162、吸引流体排出管160、吸引ヘッド151等は、第2の逆洗用流体供給機構を構成している。
【0044】
なお、ステップS3の濾過差圧の測定において濾過差圧が許容値を超えたことが検知されたとしても、その後でブラッシングしながらの逆洗を開始するとエレメントが一回転に達しない僅かな回転角度、例えば15度程度しか回転していない時点で測定装置により許容値よりも低い濾過差圧が検知されることがある。しかし、この段階ではフィルターエレメントの全周面に対するブラッシングによる逆洗が完了しておらずブラッシング未了の面には捕捉物が依然として残っている。このような不具合に対処するためには、タイマーによる計時により、エレメントがブラシに対して少なくとも一回転、本実施例では最大3回転してエレメントの全周面に対してまんべんなくブラッシングや逆洗が行われたことを確認しなければならない。
【0045】
ステップS4におけるブラッシングをしながらの逆洗を実施した後でステップS5における濾過差圧の測定を実施した結果として濾過差圧が所定値(例えば、0.002MPa)まで低下した場合には、逆洗の終了後にステップS2に戻る。
ステップS5において濾過差圧が所定値から低下していない場合にはステップS6に進んで濾過を停止し、ステップS7でアラームによりメンテナンスが必要である旨を警告する。
【0046】
次に、
図7はブラッシングにより篩い分けを行っている状態を示す濾材の要部拡大断面図である。
図7(a)では濾材31を構成する金属メッシュ材料の開口3Aに一次側に粒子状の除去不要物質Mが凝集した状態で目詰まりを起こしているが、除去ブラシ144を濾材の一次側面に沿って摺接させることにより、除去ブラシの先端が凝集状態にある粒子Mを解砕して個々の粒子に分散させる。このため個々の粒子は濾過時の流体の流れに乗って二次側へ通過することができ、目詰まりが解消される。なお、同図では除去対象物は図示を省略している。
図7(b)では除去不要物質としての粒子Mに対して繊維Nが絡み付くことにより開口3Aを目詰まりさせているが、除去ブラシ144を濾材の一次側面に沿って摺接させることにより、除去ブラシの先端が絡み付いた状態にある粒子Mと繊維Nを分離させて個々の粒子に分散させる。このため個々の粒子は濾過時の流体の流れに乗って二次側へ通過することができ、目詰まりが解消される。
【0047】
次に
図8(a)は本発明の第2の実施形態に係る濾過装置の要部断面図であり、(b)は第1除去ブラシの構成を示す斜視図である。なお、
図4と同一部分には同一符号を付して説明する。なお、逆洗用の第1吸引口は原液室8の外壁を構成するケーシング本体1aの適所に設ければ良く、
図8では図示を省略する。
この実施形態では、一次側の第1除去ブラシ144として支持部材146に植設(固定)されて濾材31の軸方向に沿って配列された単一の除去ブラシ列144cを用いる一方で、濾材を間に挟んで濾液室9側に配置された第2吸引口152aの周縁に沿って環状に植設(突設)された第2除去ブラシ154を対向配置している。一次側の除去ブラシ列144cと第2空所S1との位置関係は、図示のように一次側のブラシ列144cと二次側の第2除去ブラシ154の前部除去ブラシ列154aとを濾材を間に挟んでほぼ同一の周方向位置にて対向させる。このように構成することにより一次側のブラシ列144cにより除去、解砕された捕捉物質(固形成分)が液流F2に乗って流入する下流側に第2空所S2が位置することとなり、目詰まりが解消した直後の濾面31Nから負圧状態にある第2空所S2内に効率的に流入させることが可能となる。第2吸引口152aからの負圧により吸引することとなり、原液室8内に拡散しようとする固形成分の多くをいち早く吸引して濾過することが可能となる。
【0048】
このため、除去ブラシ列144cにより濾面から除去、解砕された直後の物質が原液室内全体に飛散して目詰まりを起こしている他の濾材部分に捕捉されて目詰まりを増大させることを防止でき、濾過性能を高めることができる。
つまり、第1除去ブラシ144は、必ずしも第1空所S1を形成する環状のブラシ列である必要はなく、ブラシ列が一列の場合であっても濾液室側で吸引することにより分散された捕捉物質を回収することができる。
【0049】
次に、
図9(a)は本発明の濾過装置に使用する吸引ヘッドの他の構成例(第3の実施形態)を示す斜視図であり、(b)は(a)の吸引ヘッドを濾過装置に組み付けた場合における逆洗ヘッドとの位置関係を示す横断面図であり、(c)は吸引ヘッドと逆洗ヘッドとの位置関係を示す説明図である。また、同図(d)は吸引ヘッド(逆洗ヘッド)の他の構成例を示す斜視図である。
本実施例に係る吸引ヘッド151Aは、吸引流体排出管160の長手方向に沿って、且つ周方向位置をずらして複数個配置されている。各吸引ヘッド151Aは、円筒状の吸引ダクト152の先端側開口である第2吸引口152aの周縁に沿って第2除去ブラシ154を環状に植設したものである。吸引ダクト152の円形の底面中央には、枝管165を介して吸引流体排出管160と連通して接続される内径側開口部152bが形成されている。本実施例に係る各枝管165は、吸引流体排出管160の軸方向上の異なった位置に配置され、更に吸引流体排出管160の周面に対する各枝管165の周方向位置も少しずつずれて重ならないように構成されている。
【0050】
各枝管165に対して内径側開口部152bを連通した状態で固定された複数の吸引ヘッド151は、環状の第2除去ブラシ154によって形成される各第2空所S2が濾材31の内面の軸方向全体をカバーするように軸方向に近接して連続して配置される。つまり、各吸引ヘッド151の各第2空所S2は軸方向位置、及び周方向位置を異ならせているが、濾材の軸方向には間断なく配置されているため、固定された各吸引ヘッドに対して濾材が一回転したときに濾材の軸方向全面が何れかの第2空所を通過し、且つ第2除去ブラシ154により摺擦されるように構成されている。
【0051】
図9(b)に示すように、フィルターエレメント3の内部(濾液室9)において吸引流体排出管160の全周に亙って軸方向位置を異ならせた複数の吸引ヘッド151Aを配置すると共に、濾材を介した原液室8内には各吸引ヘッド151Aと対向するように、吸引ヘッドと同等の形状を有した逆洗ヘッド141Aを配置する。なお、図の一部には逆洗ヘッド141Aとして環状の第1ブラシに代えて、単一のブラシ列から成る第1ブラシ144が図示されているが、このように単一のブラシ列から成る第1ブラシを用いても良い。
図9(c)は逆洗機構140を構成する逆洗ヘッド141Aとして、各吸引ヘッド151Aと同様に円筒状の逆洗ダクト142の第1吸引口143の周縁に第1除去ブラシ144を植設した構成例を示している。このように構成することにより円環状のブラシ列から成る第1除去ブラシ内部に第1空所S1を形成する。そして、両空所S1、S2が濾材を介して連通するように対向配置する。
【0052】
なお、図示した構成例では複数の吸引ヘッド151Aを濾材の軸方向に沿って、且つ周方向位置をずらして配置した例を示しているが、周方向位置をずらすことなく軸方向に沿って一直線に配列してもよい。また、この一直線の配列から成る吸引ヘッド151A群を複数列周方向に並行に配置してもよい。
【0053】
図9(d)は吸引ヘッド151A(及び逆洗ヘッド141A)の変形例を示している。同図(a)(b)(c)の吸引ヘッドは第2吸引口152aの全周縁に沿って第2除去ブラシ154を植設しているが、本実施例では第2除去ブラシの一部に流体が出入り可能な欠落部(隙間)154cが設けられている。このように第2除去ブラシの一部にブラシが存在しない部分が存在しているとしても、濾材31との間に半閉鎖空間を形成する第2空所S2を形成するに差し支えない範囲であれば欠落部154cは許容される。つまり、第2空所S2を第1空所S1よりも低圧にすることにより、ブラッシング済みの濾面31N(
図4参照)を介して第2空所S2へ向けて流れる液流F2によりスムーズに濾過が行われることになれば、欠落部の存在は問題とならない。
【0054】
除去ブラシに欠落部を設けることの是非は、
図1、
図2、
図5、
図8に夫々示した他の第2除去ブラシ154についても当てはまる。また、第2除去ブラシのみならず、第1除去ブラシ144につても同様にあてはまる。
図9の各構成例では、第1除去ブラシを円環状に構成した例を示したが、楕円環状、その他の環状、或いは四角形、多角形としてもよい。
なお、上記各実施形態では、濾面31Nとの間に第2空所S2を形成する摺擦部材として除去ブラシを示したが、これは一例に過ぎない。ブラシ以外の弾性を有した樹脂や金属から成る板材、ゴムヘラ等の摺擦部材の利用も可能である。この際、摺擦部材が第2吸引口を包囲することにより形成される第2空所S2に対して、周囲からの流体の流入が少なくなるように構成すればよい。ただ、固形分の分散能力、誤差の吸収能力、回転抵抗に及ぼす影響などを考慮するとブラシが望ましい。
【0055】
このことは、以下の他の実施形態にもあてはまる。
次に、
図10(a)は第1の実施形態の変形例(第4の実施形態)に係る吸引ヘッド151の周辺の構成を示す断面図(
図1(a)のB-B断面図に相当)、(b)は(a)のC―C断面図、(c)は回転機構を示す要部斜視図である。
図1の装置構成では逆洗に際しては、濃縮液や別途用意した逆洗用流体を白抜きの矢印で示すように濾材31を通過して第1吸引口143から逆洗ダクト142内に流入するようにしなければならない。つまり、第1除去ブラシ141により形成される第1空所S1が対面する細幅帯状の濾材部分(
図4中の濾面31N)は、第2除去ブラシ154により濾液室9内の濾液の流れ込みが阻害された状態になって逆洗液としての濾液が第1空所S1に流入する妨げとなり、且つ第1空所S1と第2空所S2とが対面(連通)している状態になる。両空所は濾材を介して半閉鎖空間を形成しており、両空所が連通した状態にある限り、第2空所S2を通じて逆洗用流体を第1空所S1内に流入させる以外は逆洗用流体の流入は難しい。このため、吸引流体排出口162を通じて濃縮液や別途用意した逆洗用流体(洗浄用流体)を逆洗に使わざるを得ず、濾液室9内の濾液を有効に使用することができない。
【0056】
そのための対策として、本実施例では逆洗時にフィルターエレメントを
図10(a)中に実線で示した位置から破線で示した時計回り方向へ任意の角度、例えば90度回動させることにより、吸引ヘッド151の第2空所S2を第1空所S1と連通しない周方向位置に退避させるようにしている。
図1(a)中のバルブVG、止め弁VE、バルブVHを閉止し、開閉バルブVFを開放するだけで逆洗を行うことができ、外部から逆洗用流体を供給したり、濃縮液を逆流させる必要がなくなる。
即ち、本実施例では、吸引流体排出管160を下側の回転しない固定部160Aと、固定部160Aの適所、本実施例では固定部の上部により所定の角度範囲で回動自在に支持された可動部160Bと、可動部の回動範囲を所定の範囲に規制するストッパ200と、から構成し、吸引ヘッド151の吸引ダクト152を可動部160Bに一体化した構成が特徴的である。
【0057】
固定部160Aの上端外周面には円弧環状のストッパ200が固定されている。また、ストッパ200の内周面には、可動部160Bの外周面がすべり軸受202を介して回転可能に支持されている。このため、固定部160Aと可動部160Bは同一軸心状の位置関係でストッパ200の開口部200aの範囲内で正逆回動することができる。ストッパの開口部200a内には可動部160Bの外周面から突出した吸引ヘッド151が位置しており、開口部200aの周方向角度を越えては回動することができない。従って、可動部160B、及び吸引ヘッド151は実線で示した位置と破線で示した位置との間で回動する。
可動部106Bは格別の駆動源により回転させる必要はなく、フィルターエレメント3が回転する際に濾材と接する第1除去ブラシ144を介して連れ回りにより回転するように構成すればよい。
固定部160Aと、可動部160Bと、すべり軸受202と、図示しないモータは回転機構を構成している。
【0058】
図10(
図1)に示した装置構成では、濾過機構120による濾過時には流体入口6から流入した流体(原液)がフィルターエレメント外部から濾材31を通過して内部に流入する。この際にフィルターエレメントを
図10(a)の反時計回りに回転させておくことにより、吸引ヘッド151を実線で示した初期位置(第2除去ブラシ154が第1除去ブラシ144と対向する位置)に維持する。また、吸引流体排出管160の止め弁VEを開放して吸引状態としておく(バルブVH、開閉バルブVF、バルブVGは何れも閉止)。このため、フィルターエレメント外面に除去不要物質を構成する粒子が複数個塊状となっている場合に、第1除去ブラシ144をフィルターエレメント外面に対して相対移動させることにより塊状粒子を解砕して濾材の開口を通過し得るサイズにし、濾液の一部として濾材を通過させて吸引流体排出管160から粒子が濃縮された流体を回収することができる。
逆洗時には、フィルターエレメントを
図10(a)の時計回りに回転させ続けることにより、吸引ヘッド151が連れ回りして第2除去ブラシ154が実線で示した初期位置から破線で示した退避位置(第2除去ブラシ154が第1除去ブラシ144と対向しない位置)に移動し、この状態を維持する。このため、第1及び第2空所S1、S2が連通しない状態となる。この状態で逆洗を行うためには逆洗用の開閉バルブVFを開放して排出管147から吸引を行いながら、第1除去ブラシ144によりフィルターエレメント外面を周方向にブラッシングして捕捉物質を除去する。濾材から除去された捕捉物質は、逆洗用流体排出管145からの吸引力により第1空所S1を経て逆洗用流体排出管145内へ流入する。なお、逆洗作業中においても濾過機構120を作動させておくことにより、流体入口6から流入した流体(原液)をフィルターエレメン外部から第1除去ブラシが接していない濾材31の部分を通過して外部に流出させる濾過作業を並行して実施することができる。なお、この濾過と並行して実施される逆洗作業中は、吸引流体排出口162に接続された止め弁VE、バルブVGは閉止する。
逆洗ヘッド141、吸引ヘッド151、逆洗ヘッド、及び吸引ヘッドに対して相対的に正逆回動可能なフィルターエレメント3、その駆動部13、制御手段(CPU等)600、吸引流体排出管160(固定部160A、160B)等は、第3の逆洗用流体供給機構を構成している。
【0059】
次に、
図10(a)においてフィルターエレメントを反時計回りに回転させ続けることにより吸引ヘッド151を実線で示した初期位置に維持した状態で、排出管147に接続された逆洗用の開閉バルブVFを閉じ、且つバルブVHを開放して排出管147から逆洗用流体排出管145、逆洗ダクト142に向けて加圧された洗浄用流体(清水)を供給することにより、上記逆洗による濾材内部(濾材の肉厚内部)の目詰まりを回復させることができる。即ち、バルブVHを開放して洗浄用流体を排出管147から逆洗用流体排出管145、逆洗ダクト142に向けて供給し、且つ止め弁VEを開放して洗浄用流体を吸引流体排出口162から排出するようにした場合には、濾材の濾面の内部に詰まった異物をブラシ154で囲まれた部分のみの濾過流速を高めて流し出すことができる。
この洗浄用流体の供給作業中は、バルブVGを閉止し、止め弁VEは開放しておくことにより、濾材を通過してフィルターエレメント内部に進入した洗浄用流体を吸引流体排出口162から機外に排出する。
この場合、排出管147、逆洗用流体排出管145、逆洗ヘッド141、開閉バルブVF、バルブVH、吸引流体排出管160、バルブVG、止め弁VE等は、第2の洗浄用流体供給機構を構成しており、当該第2の洗浄用流体機構は、逆洗用流体排出管145から逆洗ヘッド141を経て吸引流体排出管160へ向けて洗浄用流体を供給する手段である。
【0060】
次に、吸引ヘッド151を実線で示した初期位置に維持した状態で止め弁VEを閉止しつつ開放したバルブVGから逆洗用流体供給管163を経て吸引流体排出管160、吸引ダクト152(吸引ヘッド151)に向けて加圧された逆洗用流体(清水等)を供給することにより逆洗機構140によるブラッシングを用いた逆洗を補助することができる。そして濾材の内側に詰まった異物を、第2除去ブラシ154で囲まれた部分のみの濾過流速を高めることにより流し出すことができる。この際、バルブVHを閉じ、開閉バルブVFを開放することにより、逆洗用流体排出管145から排出された逆洗用流体は排出管147を経て機外に排出される。
この場合、逆洗用流体供給管163、吸引流体排出管160、吸引ダクト152(吸引ヘッド151)、止め弁VE、バルブVG等は、第4の逆洗用流体供給機構を構成しており、当該第4の逆洗用流体供給機構は、吸引流体排出管160の吸引流体排出口162から導入した逆洗用流体を吸引ヘッド151、逆洗機構140に向けて供給する手段である。
本実施形態の構成は、
図1乃至
図9に示した全ての実施形態にも適用することができる。
【0061】
次に、
図11(a)及び(b)は本発明の第5の実施形態に係る濾過装置の構成を示す縦断面図((b)のA-A断面図)、及び(a)のB-B断面図である。
本実施形態では、逆洗機構140を構成する逆洗ヘッド141をフィルターエレメント3の内部(原液室8)に配置すると共に、吸引機構150を構成する吸引ヘッド151をフィルターエレメント3の外側、即ち濾材とケーシング本体1aとの間の空間(濾液室9)内に配置した構成が
図1の第1実施形態と異なっている。
なお、第5の実施形態に係る濾過装置については主として第1実施形態との相違点を中心として説明し、同一機能を果たす部材等については同一符号を付し、重複した構成、機能の説明は省略する。
第5の実施形態に係る濾過装置は、ケーシング1と、隔壁2と、フィルターエレメント3と、駆動部13と、濾過機構120、逆洗機構140と、吸引機構150と、制御手段(CPU等)600等を概略備えている。
濾過機構120は、ケーシング側壁下部に配置され外部からケーシング内部に流体(原液)を流入させる流体入口6と、流体入口6の上部の側壁に配置されて内部で濾過された流体を外部へ流出する流体出口7と、ケーシング下部、及びフィルターエレメント内部に位置する原液室8等を有している。
本濾過装置は、濾材31の一面側(内面側)から他面側(外面側)に流体を通過させる濾過時に流体中の物質を一面に捕捉し、濾材の他面側から一面側に流体を通過させる逆洗時に捕捉物質を濾材から離脱させるフィルターエレメント3と、濾材の一面側から他面側に原液を通過させる濾過機構120と、原液を濾過した濾液を濾材の他面側から一面側に逆洗用流体として通過させる逆洗機構140と、濾材の他面側に配置されて濾過機構による濾過時に濾材の一面側から流入してきた流体を吸引する吸引機構150と、逆洗機構及び吸引機構とフィルターエレメントの少なくとも一方を他方に対して相対回転させる駆動部13と、少なくともフィルターエレメント3、濾過機構120、逆洗機構140、及び吸引機構150を支持するケーシング1と、を備える。
【0062】
第5の実施形態に係る逆洗機構140は、濾材31の一面側(原液室8側)から濾材の一部分に接面するように配置されて濾材の他面側(濾液室9側)の流体を濾材を通過させて吸引する第1吸引口(逆洗吸引口)143、及び第1吸引口の周囲(周縁)に沿って植毛(突設)されて濾材の一面に摺接する第1除去ブラシ(第1摺擦部材)144を備えた逆洗ヘッド141と、逆洗ヘッドに吸引された流体をケーシング1の外部へ排出する逆洗用流体排出管(流体排出管)145と、を備える。第1吸引口143は逆洗ダクト142の外径側のスリットであり、逆洗ダクト142の内径側開口は逆洗用流体排出管145の連通口145aに連通接続されている。逆洗用流体排出管145は逆洗ヘッド141に吸引された流体をケーシング1の外部へ排出する手段であり、その下部はフィルターエレメント3の下部開口を経由して原液室8内で横方向へ屈曲してケーシング外へ突出して排出管147と接続される。
【0063】
第5の実施形態に係る吸引機構150は、濾材31の他面(外面)側から濾材の一部分に対向するように配置されて濾材の一面側(内面側)の流体を濾材を通過させて吸引する第2吸引口152a、及び該第2吸引口の周囲(周縁)に沿って植毛(突設)されて濾材の他面に摺接する第2除去ブラシ(第2摺擦部材)154を備えた吸引ヘッド151と、吸引ヘッドにより吸引された流体を濾材の他面側を経由してケーシングの外部へ排出する吸引流体排出管160と、を備える。
【0064】
本濾過装置は、フィルターエレメント3の一次側面(内周面)の一部分に対面、接面するように配置された逆洗ヘッド141等からなる逆洗機構140を用い、除去ブラシ144の強い摺擦力と、第1吸引口143からの強い吸引力とにより高い逆洗効果を発揮するものである。
【0065】
つまり、逆洗機構140は、フィルターエレメントの内部、即ち原液室8内に配置されている点を除けば第1実施形態の逆洗機構と同様の構成を備えている。即ち、逆洗機構140は、逆洗ヘッド(一次側ヘッド)141と、逆洗用流体排出管145とを含んでいる。
逆洗ヘッド141は、軸方向両端が閉塞した略管状の部材であり、且つ濾材31の内側面に接面してその軸と平行に設けられている逆洗ダクト142と、逆洗ダクトの接面部分(フィルターエレメント内面との対向面)に開口形成され、濾材31の略全長をカバーするスリット状の第1吸引口(一次側吸引口=逆洗吸引口)143と、第1吸引口の全周縁に沿って植毛、突設された第1除去ブラシ(第1摺擦部材)144と、を概略備えている。逆洗用流体排出管145は、フィルターエレメントと同一軸心状に、且つフィルターエレメントの回転中心軸と並行に配置されている。
【0066】
第1除去ブラシ144は吸引口143の全周縁に沿って植設されることにより先端部を濾材の一次側面に摺接されており、第1除去ブラシ144は全体として環状のブラシ列を構成し、環状体のブラシ列内部は吸引口143と連通した第1空所(一次側空所)S1となっている。
【0067】
次に、逆洗ヘッド141の吸引口143、及び除去ブラシ(摺擦部材)144が対面する濾材部分を挟んで濾材の二次側には、吸引ヘッド(二次側ヘッド)151が配置され、吸引ヘッドを構成する吸引ダクト152の外径側開口部は吸引流体排出管160の内部と連通している。
吸引ヘッド151の構成は、第1実施形態の吸引ヘッドと同様であるが、濾材の外側に配置されている点が第1実施形態と異なっている。吸引ヘッド151は、逆洗ダクト142の第1吸引口(一次側吸引口)143と対向配置された第2吸引口(二次側吸引口)152aを備えた吸引ダクト152と、第2吸引口152aの全周縁に沿って植設されて先端を濾材の二次側面に摺接させる第2除去ブラシ(第2摺擦部材)154と、を概略備えている。その他の構成は第1実施形態で述べたことと同様である。
【0068】
吸引ダクト152の下部から外部に突出した吸引流体排出管160は吸引流体排出口162を構成しており、止め弁VEにより開閉制御される。逆洗用の開閉バルブVFを閉じることにより逆洗が行われない状態で、止め弁VEを開放状態にしたときに吸引流体排出口162の外部が濾液よりも低圧となるようにポンプ等により吸引する。これにより、第1除去ブラシ144と濾材との相対移動によって濾材の一次側面から除去され、且つ解砕された捕捉物質(固形成分)は、逆洗ダクト142の第1空所S1内部から濾材を通過して二次側に流入して第2空所S2内に直接導かれる。第2空所S2に流入した固形成分は、二次側吸引口152a、内径側開口部152bを経由して吸引流体排出管160、吸引流体排出口162へと排出される。
【0069】
また、逆洗用の開閉バルブVFの上流側(フィルターエレメント側)の外部排出管147には、洗浄用の流体を供給するための配管147bと、この配管を開閉するバルブVHを配置する。逆洗用の開閉バルブVFを閉じた状態でバルブVHを開放して排出管147から逆洗用流体排出管145に向けて洗浄用流体を供給することにより逆洗による濾材の目詰まりを回復させることができる。即ち、フィルターエレメントの外側からの逆洗により濾材内部に付着した固形成分などは、洗浄用流体を逆方向から供給することにより濾材から除去されて逆洗用流体排出管145から機外へ排出される。
なお、
図4において述べた第1実施形態の濾過装置の作用、効果、即ち一次側でのブラッシングによって第1空所S1を経由して濾材を通過した固形成分を濾液側で第2空所S2の負圧により吸引することにより、この固形成分を濾液に混入させることなく回収することができることは第5の実施形態にもそのまま当てはまる。
【0070】
また、
図9(a)乃至(d)に夫々示した小型環状の吸引ヘッド151Aを複数個濾材の軸方向に沿って、且つ周方向位置を異ならせて配置する構成は
図11の実施形態にも適用することができる。
また、
図11の逆洗ヘッド141を
図8(a)(b)に示した一列で、非環状のブラシ列により構成してもよい。
また、
図10に示した吸引流体排出管160の構成を
図11の逆洗ヘッド140に適用して逆洗用流体排出管145の一部がフィルターエレメントに対して連れ回りするようにしてもよい。即ち、逆洗用流体排出管145の下側を回転しない固定部145A(
図10の固定部160Aを参照)とする一方で、逆洗用流体排出管145の固定部145Aにより逆洗用流体排出管145の上部を所定の角度範囲で回動自在に支持して、この回動可能な部分を可動部145B(
図10の可動部160Bを参照)とする。可動部145Bの回動範囲は
図10におけるストッパ200と同様なストッパ(図示せず)により規制する。逆洗用流体排出管の可動部145Bは、逆洗ヘッド141の逆洗ダクト142と一体化することにより、除去ブラシ144はフィルターエレメント3に対してストッパに規制されつつ所定の角度範囲で連れ回りすることができる。
【0071】
つまり、逆洗ヘッド141に装着された第1除去ブラシ144は、フィルターエレメントの外側にあって周方向への移動を固定された第2除去ブラシ154に対して、フィルターエレメントの正逆回転によってフィルターエレメントを介して向かい合ったり、所定角度、例えば90度外れた方向を向くことができる。上記ストッパは第1除去ブラシ144の相対回転範囲を規制する手段である。
図11に示した装置構成では、濾過機構120による濾過時には流体入口6から流入した流体(原液)がフィルターエレメント内部から濾材31を通過して外部に流出する。この際にフィルターエレメントを
図11(b)の反時計回りに回転させておくことにより、逆洗ヘッド141を実線で示した初期位置(第1除去ブラシ144が第2除去ブラシ154と対向する位置)に維持する。また、吸引流体排出管160の止め弁VEを開放して吸引状態としておく。このためMBECと片仮名を併記しないとしても、カタログ、ウェブサイト等々のどこかにカタカナを記載しておけば、MBECを使用しても「emBeCK」を侵害する可能性は低いと考えます除去不要物質を構成する粒子が複数個塊状となっている場合に、第1除去ブラシ144を濾材壁に対して相対回転させることにより塊状粒子を解砕して濾材の開口を通過し得るサイズにし、濾液の一部として濾材を通過させて吸引流体排出管160から粒子が濃縮された流体を回収することができる。
【0072】
逆洗時には、フィルターエレメントを
図11(b)の時計回りに回転させ続けることにより、第1除去ブラシ144が連れ回りして逆洗ヘッド141が実線で示した初期位置から破線で示した退避位置(第1除去ブラシ144が第2除去ブラシ154と対向しない位置)に移動し、この状態を維持する。このため、第1及び第2空所S1、S2が連通しない状態となる。この状態で逆洗を行うためには逆洗用の開閉バルブVFを開放して排出管147から吸引を行いながら、第1除去ブラシ144によりフィルターエレメント内面を周方向にブラッシングして捕捉物質を除去する。濾材から除去された捕捉物質は、逆洗用流体排出管145からの吸引力により第1空所S1を経て逆洗用流体排出管145内へ流入する。なお、逆洗作業中においても濾過機構120を作動させておくことにより、流体入口6から流入した流体(原液)をフィルターエレメント内部から第1除去ブラシが接していない濾材31の部分を通過して外部に流出させる濾過作業を並行して実施することができる。なお、この濾過と並行して実施される逆洗作業中は、吸引流体排出口162に接続された止め弁VE、バルブVGは閉止する。
逆洗ヘッド141、逆洗用流体排出管145(固定部145A、可動部145B)吸引ヘッド151、逆洗ヘッド、及び吸引ヘッドに対して相対的に正逆回動可能なフィルターエレメント3、その駆動部13、制御手段(CPU等)600、吸引流体排出管160等は、第5の逆洗用流体供給機構を構成している。
【0073】
次に、
図11(b)においてフィルターエレメントを反時計回りに回転させ続けることにより逆洗ヘッド141を実線で示した初期位置に維持した状態で、排出管147に接続された逆洗用の開閉バルブVFを閉じ、且つバルブVHを開放して排出管147から逆洗用流体排出管145に向けて加圧された洗浄用流体(清水等)を供給することにより、上記逆洗によるフィルターエレメントの目詰まりを回復させることができる。即ち、バルブVHを開放して洗浄用流体を排出管147から逆洗用流体排出管145、逆洗ダクト142に向けて供給し、且つ止め弁VEを開放して洗浄用流体を吸引流体排出管160の吸引流体排出口162から排出するようにした場合には、濾材の内部に詰まった異物をブラシ154で囲まれた部分のみの濾過流速を高めて流し出すことができる。
この洗浄用流体の供給作業中は、バルブVGを閉止し、止め弁VEは開放しておくことにより、フィルターエレメントの内部から外側へ向けて通過した洗浄用流体を吸引流体排出口162、逆洗用流体供給管163から排出する。
この場合における排出管147、逆洗用流体排出管145、逆洗ヘッド141、開閉バルブVF、バルブVH、吸引流体排出管160、バルブVG、止め弁VE等は、第3の洗浄用流体供給機構を構成しており、当該第3の洗浄用流体供給機構は、逆洗用流体排出管145から逆洗ヘッド141へ向けて洗浄用流体を供給する手段である。
次に、逆洗ヘッド141を実線で示した初期位置に維持した状態で止め弁VEを閉止しつつ開放状態にあるバルブVGから吸引流体排出口162を経て吸引流体排出管160、吸引ダクト152(吸引ヘッド151)に向けて加圧された逆洗用流体(清水等)を供給することにより逆洗機構140によるブラッシングを利用して逆洗を補助したり、フィルターエレメントの濾過面に詰まった異物をブラシ154で囲まれた部分のみの流速を高めて流し出すことができる。
この場合における吸引流体排出管160、吸引ヘッド151、止め弁VE、バルブVG、開閉バルブVF、バルブVH等は、第6の逆洗用流体供給機構を構成しており、当該第6の逆洗用流体供給機構は、吸引流体排出管160の吸引流体排出口162から導入した逆洗用流体を吸引ヘッド151に向けて供給する手段である。
【0074】
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
第1の本発明に係る濾過装置は、濾材31の一面側(原液室側)から他面側(濾液室側)に流体を通過させる濾過時に流体中の物質を一面に捕捉し、濾材の他面側から一面側に流体を通過させる逆洗時に捕捉物質を濾材から離脱させるフィルターエレメント3と、濾材の一面側から他面側に原液を通過させる濾過機構120と、原液を濾過した濾液を濾材の他面側から一面側に逆洗用流体として通過させる逆洗機構140と、濾材の他面側に配置されて濾過機構による濾過時に濾材の一面側から流入してきた流体を吸引する吸引機構150と、前記逆洗機構及び吸引機構、又は前記フィルターエレメントの少なくとも一方を他方に対して相対回転させる駆動部13と、少なくともフィルターエレメント、濾過機構、逆洗機構、及び吸引機構を支持するケーシング1と、濾過機構、逆洗機構、吸引機構、及び駆動部を制御する制御手段600と、を備え、逆洗機構140は、濾材の他面側の流体を濾材を通過させて吸引する第1吸引口143、及び濾材の一面に摺擦する第1摺擦部材144を備えた逆洗ヘッド141と、逆洗ヘッドにより吸引された流体をケーシングの外部へ排出する逆洗用流体排出管145と、を備え、吸引機構150は、濾材の他面側から濾材の一部分と対面するように配置されて濾材の一面側の流体を濾材を通過させて吸引する第2吸引口152a、及び該第2吸引口の周縁に沿って配置されて濾材の他面に摺擦する第2摺擦部材154を備えた少なくとも一つの吸引ヘッド151と、吸引ヘッドにより吸引された流体を濾材の他面側を経由してケーシングの外部へ排出する吸引流体排出管体160と、を備えていることを特徴とする。
【0075】
フィルターエレメントは円筒体に限らず、円錐状、平板状を含む。
第1摺擦部材、第2摺擦部材としてはブラシに限らず、樹脂、ゴム、金属等から成る板状体等であってもよい。
第1摺擦部材は環状に構成されていてもよいし、
図8の構成例のようにブラシ、板状体を平板状に構成したものであってもよい。
図1、
図10、
図11の各実施形態における逆洗の方法には、止め弁VEを開放して濃縮液を吸引流体排出管体160から吸引機構150を経て逆洗機構140に供給する方法と、バルブVGを開放して逆洗用流体(洗浄用流体)を供給する方法とがある。
第2の本発明に係る濾過装置では、第2摺擦部材154は、第2吸引口152aの周縁に沿って配置された環状体をなし、濾材との間に半閉鎖空間としての第2空所を形成することを特徴とする。
【0076】
第2空所S2は第2吸引口からの負圧により濾材の反対側の原液室(第1空所S1)よりも低圧になっているため、第1摺擦部材により除去、解砕された捕捉物質を効率的に吸収してケーシング外へ排出することが可能となる。
第2摺接部材の少なくとも一部に第2摺動部材が存在しない、或いは第2摺擦部材の突出長が短尺である欠落部が存在する。
第2摺擦部材を構成するブラシや板状体は第2吸引口の全周に沿って間断なく存在する必要はなく、一部欠落していてもよい。
【0077】
第2摺擦部材154を備えた複数の吸引ヘッド151は、濾材の軸方向に沿って隣接配置されている。
第2摺擦部材は第1実施形態のように濾材の軸方向全長をカバーする長方形状の環状体としてもよいし、濾材の軸方向全長に達しない短尺な環状体を複数個、軸方向に沿って配列したものであってもよい。この際、個々の短尺な第2摺擦部材の周方向位置をずらすようにしてもよい。或いは、周方向位置をずらすことなく軸方向に一直線状に配列してもよい。
【0078】
第3の本発明に係る濾過装置では、第1吸引口143は、濾材の一面側の一部と対面するように配置されており、第1摺擦部材は、第1吸引口の周縁に沿って配置された環状体をなし、濾材との間に半閉鎖空間としての第1空所を形成することを特徴とする。
逆洗ヘッド141を構成する第1摺擦部材を環状体として構成した場合には、濾材との間に第1空所S1が形成されるため、第1摺擦部材により除去、解砕された捕捉物質は原液中に拡散されることなく、第1空所内に確保される。
第4の本発明に係る濾過装置では、第2空所S2は、濾材を介して第1空所と連通可能であることを特徴とする。
第1摺擦部材により除去、解砕された捕捉物質は原液中に拡散されることなく、第1空所内に確保され、直ちに第2空所S2側へ吸引されてゆく。
第5の本発明に係る濾過装置では、逆洗機構は円筒状のフィルターエレメントの周面とケーシングとの間に配置されており、吸引機構は円筒状のフィルターエレメントの内部に配置されており、吸引流体排出管体は、フィルターエレメントの回転軸と同軸上に配置されていることを特徴とする。
逆洗機構をフィルターエレメントの外側に形成される原液室8内に配置し、吸引機構をフィルターエレメントの内側に形成される濾液室9内に配置した構成例である。
【0079】
第6の本発明に係る濾過装置では、吸引流体排出管160を、回転しない固定部160Aと、吸引ヘッド151を備えると共に該固定部により所定の角度範囲で回動自在に支持された可動部160Bと、から構成し、吸引ヘッド151は、フィルターエレメントに連れ回りすることを特徴とする。
第1空所S1と第2空所S2とが対面している状態では濾材を介して半閉鎖空間を形成しているため、両空所が連通した状態にある限り、濾材内部からの逆洗用流体を第1空所S1内に流入させることが難しくなる可能性がある。
そのための対策として、本実施例では逆洗時には吸引ヘッド151の第2空所S2を第1空所S1と連通しない周方向位置に退避させるようにした。
可動部及び吸引ヘッドを回動させる手段としては、格別の駆動手段を用いることなく、フィルターエレメントに連れ回りするようにしたので、装置の大型化、高コスト化を回避することができる。
【0080】
第7の本発明に係る濾過装置では、逆洗機構は円筒状のフィルターエレメントの内部に配置されており、吸引機構は円筒状のフィルターエレメントの外周面とケーシングとの間に配置されており、逆洗用流体排出管は、フィルターエレメントの回転軸と同軸上に配置されていることを特徴とする。
逆洗機構をフィルターエレメントの内側に形成される濾液室9内に配置し、吸引機構をフィルターエレメントの外側に形成される原液室8内に配置した構成例である。
【0081】
第8の本発明に係る濾過装置では、逆洗用流体排出管145を、回転しない固定部145Aと、逆洗ヘッド141を備えると共に該固定部により所定の角度範囲で回動自在に支持された可動部145Bと、から構成し、逆洗ヘッド141は、所定の角度範囲内でフィルターエレメントに連れ回りすることを特徴とする。
この構成例において、フィルターエレメント内に位置する逆洗用流体排出管が逆洗ヘッドを保持している部分をフィルターエレメントに連れ回りするように構成してもよい。
逆洗時には、フィルターエレメントを吸引ヘッド151、及び逆洗ヘッド141に対して相対回転させ続けることにより、第2空所S2を第1空所S1と連通しない周方向位置に退避させる。この状態で逆洗用の開閉バルブVFを開放して排出管147から吸引を行いながら、第1除去ブラシ144によりフィルターエレメント内面を周方向にブラッシングして捕捉物質を除去する。
第9の本発明に係る濾過装置では、吸引流体排出管160から吸引ヘッド151へ向けて逆洗用流体を供給する逆洗用流体供給機構を備えたことを特徴とする。
本構成例は、
図1、
図10、
図11の全ての実施形態における濾材の逆洗に適用することができる。例えば、この逆洗用流体供給機構を用いて第2空所S2、濾材31を経由して第1空所S1側へ逆洗用流体を流出させることにより、第1吸引口143に接面する濾材の部分が更に効率的に逆洗される。特に、逆洗による濾液室側からの目詰まりを効果的に防ぐことが可能になる。
第10の本発明に係る濾過装置は、逆洗用流体排出管145から逆洗ヘッド141へ向けて洗浄用流体を供給する洗浄用流体供給機構を備えたことを特徴とする。
本構成例は、
図1、
図10、
図11の全ての実施形態における濾材の洗浄に適用することができる。例えば、この洗浄用流体供給機構を用いて濾材の濾面に詰まった異物を第1除去ブラシ144で囲まれた濾材部分のみの濾過流速を高めて流し出すことができる。
【符号の説明】
【0082】
1…ケーシング、1a…ケーシング本体、3…フィルターエレメント、3A…開口、6…流体入口、7…流体出口、8…原液室、9…濾液室、S1、S2…空所、10…筒状部分、11…軸受、12…Oリング、13…ギアードモータ(駆動部)、14…回転軸、31…濾材、31N…濾面、32…下側閉塞板、33…上側閉塞板、34…貫通孔、120…濾過機構、121…入口側配管、122…出口側配管、140…逆洗機構、141…逆洗ヘッド、141A…逆洗ヘッド、142…逆洗ダクト、143…吸引口、144…第1除去ブラシ(第1摺擦部材)、144a…前部除去ブラシ列、144b…後部除去ブラシ列、144c…除去ブラシ列、145…逆洗用流体排出管、146…支持部材、147…排出管、150…吸引機構、151…吸引ヘッド、151A…吸引ヘッド、152…吸引ダクト、152a…二次側吸引口、152b…内径側開口部、154…第2除去ブラシ(第2摺擦部材)、154a…前部除去ブラシ列、154b…後部除去ブラシ列、154c…欠落部、156…軸受、160…吸引流体排出管、160a…スリット、160A…固定部、160B…可動部、162…吸引流体排出口(濃縮液出口)、163…逆洗用流体供給管、165…枝管、200…ストッパ、200a…開口部、202…すべり軸受、500…濾材、500a…濾面、500b…濾面、510…逆洗ヘッド、520…吸引口、525…ブラシ、525a…ブラシ列、525b…ブラシ列、560…ブラシ列、600…制御手段。