IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターの特許一覧

特許7522438導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法
<>
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図1
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図2
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図3
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図4
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図5
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図6
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図7
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図8
  • 特許-導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01P 3/12 20060101AFI20240718BHJP
   H01P 11/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01P3/12
H01P11/00 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020103592
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021197646
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】506209422
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康平
(72)【発明者】
【氏名】渡部 雄太
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 耕平
(72)【発明者】
【氏名】竹村 昌太
(72)【発明者】
【氏名】桑原 聡士
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆一
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-015472(JP,A)
【文献】特開昭63-111704(JP,A)
【文献】特開2014-220390(JP,A)
【文献】特開昭61-281602(JP,A)
【文献】特開平09-260906(JP,A)
【文献】特開平06-097710(JP,A)
【文献】特開2018-204092(JP,A)
【文献】実開昭50-092645(JP,U)
【文献】特開2001-053509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0366800(US,A1)
【文献】米国特許第05380386(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/12
H01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合された第1部品と第2部品とを備え、
前記第1部品と前記第2部品とのうちの少なくとも一方は接合面に、接合されることで導波路となる溝を有し、
前記第1部品と前記第2部品とはそれぞれ、樹脂を含む樹脂部品と、前記樹脂部品を覆い前記樹脂よりも導電率が高い被覆膜と、を備え、
前記溝において、前記被覆膜の算術表面粗さ(Ra)は、前記樹脂部品の算術表面粗さ(Ra)より小さ
前記被覆膜の算術表面粗さ(Ra)は20μm未満であり、前記樹脂部品の算術表面粗さ(Ra)は20μm以上である、導波管コンポーネント。
【請求項2】
接合された第1部品と第2部品とを備え、
前記第1部品と前記第2部品とのうちの少なくとも一方は接合面に、接合されることで導波路となる溝を有し、
前記第1部品と前記第2部品とはそれぞれ、樹脂を含む樹脂部品と、前記樹脂部品を覆い前記樹脂よりも導電率が高い被覆膜と、を備え、
前記溝において、前記被覆膜の算術表面粗さ(Ra)は、前記樹脂部品の算術表面粗さ(Ra)より小さく、
前記樹脂部品は、外表面の密度が内部の密度より高い、導波管コンポーネント。
【請求項3】
前記被覆膜は、金属メッキ膜である、請求項1又は2に記載の導波管コンポーネント。
【請求項4】
前記第1部品と前記第2部品とが接合された状態で、伝送方向の両端にフランジを有し、
前記フランジは、前記接合面を挟んで分割されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の導波管コンポーネント。
【請求項5】
前記導波路を伝送方向と直交する面で切断した切断面の形状が矩形であり、
前記導波路は、前記伝送方向の成分を有する第1電流が流れる2つの第1面と、前記伝送方向と直交する第2電流が流れる2つの第2面とを有し、
前記接合面は、前記第1面と交差する、請求項1~のいずれか一項に記載の導波管コンポーネント。
【請求項6】
付加製造技術を用いて樹脂部品を2つ以上作製する第1工程と、
前記樹脂部品のそれぞれの外表面を、前記樹脂部品を構成する樹脂材料よりも導電率の高い材料で被覆する第2工程と、
被覆膜で被覆された樹脂部品を接合し、接合面に導波路を形成する第3工程と、を有し、
前記第1工程における付加製造技術は、粉末床溶融結合法であり、
前記第2工程において、無電解メッキ処理を行った後に、電解メッキ処理を行う、導波管コンポーネントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管コンポーネント及び導波管コンポーネントの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
導波管は、所定の経路に沿って波を伝送する構造体である。導波管は、回路における各構成要素を繋ぐ。構成要素は、例えば、フィルタ、増幅器、マルチプレクサ等である。
【0003】
例えば、特許文献1には、3Dプリンタを用いて作製した導波管が記載されている。また例えば、特許文献2には、付加製造した複数の導波管が集合した導波管アセンブリが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/203568号
【文献】特表2019-527989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の導波管は、自重でのたわみを防止することを目的としており、金属からなる重い導波管である。また特許文献2に記載の導波管は、それぞれ一体成型されている。そのため、導波路を囲む導電体を均一に作製できず、十分な伝送特性が得られない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、伝送特性に優れ、軽い導波管コンポーネントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、2つ以上の樹脂部品を成形し、その表面を導電性及び平滑性の高い被覆膜でコートすることで、伝送特性に優れ、軽い導波管コンポーネントを得ることができることを見出した。上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0008】
(1)第1の態様にかかる導波管コンポーネントは、接合された第1部品と第2部品とを備え、前記第1部品と前記第2部品とのうちの少なくとも一方は接合面に、接合されることで導波路となる溝を有し、前記第1部品と前記第2部品とはそれぞれ、樹脂を含む樹脂部品と、前記樹脂部品を覆い前記樹脂よりも導電率が高い被覆膜と、を備え、前記溝において、前記被覆膜の算術表面粗さ(Ra)は、前記樹脂部品の算術表面粗さ(Ra)より小さい。
【0009】
(2)上記態様にかかる導波管コンポーネントにおいて、前記被覆膜の算術表面粗さ(Ra)は20μm未満であり、前記樹脂部品の算術表面粗さ(Ra)は20μm以上であってもよい。
【0010】
(3)上記態様にかかる導波管コンポーネントにおいて、前記被覆膜は、金属メッキ膜であってもよい。
【0011】
(4)上記態様にかかる導波管コンポーネントにおいて、前記第1部品と前記第2部品とが接合された状態で、伝送方向の両端にフランジを有し、前記フランジは、前記接合面を挟んで分割されていてもよい。
【0012】
(5)上記態様にかかる導波管コンポーネントにおいて、前記樹脂部品は、外表面の密度が内部の密度より高くてもよい。
【0013】
(6)上記態様にかかる導波管コンポーネントにおいて、前記導波路を伝送方向と直交する面で切断した切断面の形状が矩形であり、前記導波路は、前記伝送方向の成分を有する第1電流が流れる2つの第1面と、前記伝送方向と直交する第2電流が流れる2つの第2面とを有し、前記接合面は、前記第1面と交差していてもよい。
【0014】
(7)第2の態様にかかる導波管コンポーネントの製造方法は、付加製造技術を用いて樹脂部品を2つ以上作製する第1工程と、前記樹脂部品のそれぞれの外表面を、前記樹脂部品を構成する樹脂材料よりも導電率の高い材料で被覆する第2工程と、被覆膜で被覆された樹脂部品を接合し、接合面に導波路を形成する第3工程と、を有する。
【0015】
(8)上記態様にかかる導波管コンポーネントの製造方法において、前記第1工程における付加製造技術は、粉末床溶融結合法であってもよい。
【0016】
(9)上記態様にかかる導波管コンポーネントの製造方法において、前記第2工程において、無電解メッキ処理を行った後に、電解メッキ処理を行ってもよい。
【発明の効果】
【0017】
上記態様にかかる導波管コンポーネントは、伝送特性に優れ、軽い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態にかかる導波管コンポーネントの斜視図である。
図2】本実施形態にかかる導波管コンポーネントの展開図である。
図3】本実施形態にかかる導波管コンポーネントの断面図である。
図4】本実施形態にかかる導波管コンポーネントの側面図である。
図5】本実施形態にかかる導波路を流れる表面電流を示した図である。
図6】本実施形態にかかる導波路の別の例の斜視図である。
図7】本実施形態にかかる導波路を用いたフィルタの一部の斜視図である。
図8】実施例1及び比較例1の伝送特性を示す図である。
図9】実施例2及び比較例2のフィルタの特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態にかかる導波管コンポーネントについて、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であり、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
まず方向について定義する。後述する導波管コンポーネント100の延びる方向をx方向とする。x方向は、例えば、信号の伝送方向と一致する。x方向と直交し、後述する第1部品10と第2部品20との接合面と直交する方向をy方向とする。x方向及びy方向と直交する方向をz方向とする。
【0021】
図1は、本実施形態にかかる導波管コンポーネント100の斜視図である。導波管コンポーネント100は、導波管を構成する要素の一つである。導波管コンポーネント100は、第1部品10と第2部品20とを有し、内部に導波路Wgを有する。第1部品10と第2部品20とは、接合されている。第1部品10と第2部品20とは、例えば、ねじ止め、接着、溶接等により接合される。
【0022】
導波管コンポーネント100は、第1部品10と第2部品20とが接合された状態で、主要部MとフランジFとを有する。主要部Mは、導波管コンポーネント100の伝送方向に延びる部分である。フランジFは、導波管コンポーネント100の伝送方向の両端にあり、主要部Mと交差する方向に広がる部分である。フランジFは、例えば、yz方向に広がる。フランジFは、別の導波管コンポーネント100との接続を担う。
【0023】
図2は、本実施形態にかかる導波管コンポーネント100の展開図である。図2には、第1部品10と第2部品20との接合面が露出するように展開している。第1部品10は、例えば、溝10aを有する。第2部品20は、例えば、溝20aを有する。溝10aと溝20aとで、導波路Wgが形成される。図2では、第1部品10と第2部品20のいずれにも溝10a、20aが形成された例を示したが、いずれか一方のみに溝10a又は溝20aが形成されていてもよい。
【0024】
図3は、本実施形態にかかる導波管コンポーネント100の断面図である。図3は、図1に示す導波管コンポーネント100をyz方向に沿って切断した断面である。第1部品10と第2部品20とは、互いの接合面が向き合うように接合され、導波管コンポーネント100となる。接合面は、xz平面に沿って広がる。第1部品10と第2部品20とに挟まれた開口部が導波路Wgとなる。
【0025】
導波路Wgは、高周波信号を伝送する。導波路Wgは、例えば、マイクロ波、ミリ波を伝送する。導波路Wgのyz断面の形状は、例えば、矩形である。導波路Wgのyz断面の形状は円形、楕円形等でもよい。導波路Wgは、導電性を有する被覆膜Cで囲まれている。
【0026】
第1部品10及び第2部品20はそれぞれ、樹脂部品Rと被覆膜Cとを有する。被覆膜Cは、樹脂部品Rを覆う。
【0027】
樹脂部品Rは、樹脂を含む。樹脂部品Rを構成する樹脂は、外表面に被覆膜を形成できれば、特に問わない。樹脂部品Rは、例えば、ナイロン11、ナイロン12である。樹脂部品Rの形状は問わず、自由な形状を作製できる。樹脂部品Rは、詳細は後述するが付加製造技術で製造される。樹脂部品Rは、光造形法で製造された樹脂部材より靭性が高く壊れにくい。例えば、光造形法で製造された樹脂部材はねじ止めによる締結時に樹脂部材に割れが発生しやすく歩留まりに課題があるが、ナイロン11、ナイロン12は靭性が高くねじ止めによる割れが発生しない。
【0028】
樹脂部品Rの密度は、例えば、0.7g/cm以上である。
【0029】
また樹脂部品Rは、外表面と内部とで密度が異なってもよい。例えば、樹脂部品Rの外表面の密度は、内部の密度より高くてもよい。樹脂部品Rの内部の密度を下げることで、導電管コンポーネント100が軽くなる。
【0030】
被覆膜Cは、樹脂部品Rを構成する樹脂より導電率が高い。被覆膜Cの導電率は、例えば、1.43×10S/m以上である。被覆膜Cは、例えば、金属メッキ膜である。被覆膜Cは、例えば、Cu、Ni、Ag、Auを含む単体又は合金である。Cu、Ni、Auは、Agより耐蝕性に優れ、被覆膜Cとして適切である。
【0031】
被覆膜Cの厚さは、例えば、1μm以上100μm以下であり、好ましくは10μm以上50μm以下であり、より好ましくは20μm以上30μm以下である。
【0032】
第1部品10及び第2部品20の溝10a、20aにおいて、被覆膜Cの算術表面粗さ(Ra)は、樹脂部品Rの算術表面粗さ(Ra)より小さい。すなわち、被覆膜Cをコーティング前の樹脂部品Rの溝の表面より被覆膜Cをコーティング後の第1部品10及び第2部品20の溝の表面は平坦である。被覆膜Cの算術表面粗さ(Ra)は、例えば、20μm未満である。樹脂部品Rの算術表面粗さ(Ra)は、例えば、20μm以上である。
【0033】
図4は、本実施形態にかかる導波管コンポーネント100の側面図である。図4は、導波管コンポーネント100をx方向から見た図であり、フランジFをx方向から平面視した図である。導波管コンポーネント100におけるフランジFは、第1部品10の半円板と第2部品20の半円板とからなる。すなわち、第1部品10及び第2部品20はそれぞれ、導波路Wgを形成する主要部とフランジを形成する半円板とを有する。フランジFは、例えば、第1部品10と第2部品20との接合面を挟んで分割可能である。
【0034】
図5は、本実施形態にかかる導波路Wgを抜き出した図である。図5には、導波路Wgを流れる表面電流を電流線として図示している。導波路Wgを流れる表面電流の電流線は、第1電流線Iaと第2電流線Ibとに分けられる。第1電流線Iaは、表面電流のうち伝送方向(x方向)の成分を有する電流を表す。第1電流線Iaは、導波路Wgの第1面S1に広がる。第2電流線Ibは、表面電流のうち伝送方向と直交する電流を表す。第2電流線Ibは、導波路Wgの第2面S2に広がる。
【0035】
第1部品10と第2部品20との接合面は、例えば、第1面S1と交差する位置に設ける。例えば、接合面は、導波路Wgのyz断面における長辺の中点を通り、長辺と直交する。接合面を導波路Wgの表面電流を分断しない位置に設けることで、導波管コンポーネント100の伝送特性が向上する。
【0036】
次いで、本実施形態にかかる導波管コンポーネント100の製造方法について説明する。本実施形態にかかる導波管コンポーネント100の製造方法は、第1工程と第2工程と第3工程とを有する。第1工程は、樹脂部品Rを作製する工程である。第2工程は、樹脂部品Rを被覆膜Cで覆う工程である。第3工程は、第1部品10と第2部品20とを接合する工程である。以下、具体的に説明する。
【0037】
第1工程では、樹脂部品Rを2つ以上作製する。樹脂部品は、付加製造技術を用いて作製する。付加製造技術は、3次元物体を形作るために材料を接合して実現する加工法である。付加製造技術は、3Dプリンティングとも呼ばれる。
【0038】
第1工程で用いられる付加製造技術は、例えば、粉末床溶融結合法である。粉末床溶融結合法は、光造形法と比較して靭性が高い物体を製造できる。一方で、粉末床溶融結合法で得られる物体は、光沢が得られる光造形法で製造された物体と比較して、表面が粗い。例えば、粉末床溶融結合法を用いて作製した樹脂部品Rの表面粗さ(Ra)は、20μm以上である。光造形法を用いると表面粗さ(Ra)は20μm未満になる。
【0039】
粉末床溶融結合法では、粉末原料をレーザー等で溶かし、溶けた原料を再固化させるという工程を層毎に繰り返すことで物体を成形する。成形される樹脂部品Rの密度は、レーザーの出力によって変わる。レーザーの出力が高いと、粉末原料が十分溶解し、成形品の密度が高まる。レーザーの出力が低い、もしくはレーザーを照射しないと、粉末原料間の空隙が一部残り、成形品の密度が下がる。樹脂部品Rの外表面と内部の密度を変える場合は、樹脂部品Rの外表面にあたる位置を成形する際のレーザーの出力を、内部を成形する際のレーザーの出力より高める。
【0040】
次いで、第2工程では、樹脂部品Rのそれぞれの外表面を、樹脂部品Rを構成する樹脂材料よりも導電率の高い材料で被覆する。第1部品10となる樹脂部品Rと第2部品20となる樹脂部品Rとはそれぞれ別々に被覆膜Cがコーティングされるため、第1部品10及び第2部品20のそれぞれの溝10a、20aにも、被覆膜Cを略均一に被覆できる。
【0041】
被覆膜Cは、例えば、メッキ処理、導電塗料の塗布等で作製される。メッキ処理の場合、無電解メッキ処理を行った後に、電解メッキ処理を行う。無電解メッキ処理のみでは被覆膜Cの厚みを十分確保できず、被覆膜Cの表面粗さ(Ra)を樹脂部品Rの表面粗さ(Ra)より小さくすることが難しい。樹脂部品Rを被覆膜Cでコーティングすることで、第1部品10と第2部品20とがそれぞれ得られる。
【0042】
次いで、第3工程では、被覆膜Cで被覆された樹脂部品Rを接合し、接合面に導波路Wgを形成する。上述のように、第1部品10と第2部品20とは別々に作製される。第1部品10と第2部品20とを接合することで、接合面の間に導波路Wgが形成される。別々に作製した第1部品10と第2部品20とを接合することで、導波路Wgの内表面の平坦性を略均一にできる。また導波管コンポーネント100を複数個作製した場合でも、分割部品とすることで、導波路Wgの内表面の状態を再現しやすい。
【0043】
本実施形態にかかる導波管コンポーネント100は、内部が樹脂でできているため、金属でできた導波管コンポーネントと比較して軽量である。また詳細は実施例で示すが、本実施形態にかかる導波管コンポーネント100は、金属でできた導波管コンポーネントと同等の性能を有する。また付加製造技術を用いることで、複雑な形状も容易に形成でき、加工コストも低減できる。さらに、導波管コンポーネント100の内部が樹脂であることで、金属でできた導波管コンポーネントより熱伝導性が低い。そのため、導波管コンポーネント100は、外部の熱の影響を受けにくく、航空宇宙部品のような外気温の変化が激しい過酷な用途にも適用できる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0045】
例えば、図6は、第1変形例にかかる導波管コンポーネント101の斜視図である。第1変形例にかかる導波管コンポーネント101は、第1部品11と第2部品21の形状が、図1に示す導波管コンポーネント100と異なる。導波管コンポーネント101において、フランジFは第1部品11に属し、分割されていない。第1部品11は、導波路Wgを形成する主要部と、主要部の伝送方向の両端にある円板と、を有する。円板が導波管コンポーネント101のフランジFとなる。第2部品21は、導波路Wgを形成する主要部(平板)からなる。第1部品11の両端の円板の間に、第2部品21がはめ込まれることで、導波管コンポーネント101となる。
【0046】
第1変形例にかかる導波管コンポーネント101は、部品の分割の仕方が異なるだけであり、導波管コンポーネント100と同様の効果が得られる。
【0047】
また例えば、図7は、第2変形例にかかる導波管コンポーネント102を構成する第1部品12の斜視図である。図7では、説明のため第2部品を図示していない。第2変形例にかかる導波管コンポーネント102は、導波路WgにリブLが設けられている点が、図1に示す導波管コンポーネント100と異なる。リブLは、導波路Wgの伝送方向と交差するように設けられている。リブLは、例えば、第1部品12の溝12aにある。導波管コンポーネント102は、リブLを有することで、フィルタとして機能する。
【0048】
第2変形例にかかる導波管コンポーネント102は、リブLを有する点が異なるだけであり、導波管コンポーネント100と同様の効果が得られる。
【実施例
【0049】
(実施例1)
まず樹脂材料としてナイロン11を用いて、粉末床溶融結合法により樹脂部品を作製した。樹脂部品を作製する際のレーザーの出力は一定とし、樹脂部品の密度は略均一にした。樹脂部品は2つ作製し、それぞれの形状は図1に示す導波管コンポーネント100の第1部品10、第2部品20と同様にした。そして、樹脂部品の表面粗さ(Ra)を測定したところ26.3μmであった。
【0050】
次いで、2つの樹脂部品のそれぞれにメッキ処理を施した。まず45℃の無電解ニッケルメッキ液に、樹脂部品を10分浸漬し、無電解メッキ処理を行った。ついで、無電解メッキ処理後の樹脂部品を電解メッキした。電解メッキの条件は、23℃の硫酸銅メッキ液を用いて、3A/dmの条件で40分処理した。得られた被覆膜は、銅メッキ膜であり、その厚みは、25μmであった。作製された第1部品10及び第2部品20の溝10a、20aにあたる部分の表面粗さ(Ra)を測定したところ14.9μmであった。
【0051】
次いで、作製した第1部品10と第2部品20とを接合して導波管コンポーネント100を作製した。導波管コンポーネント100の長さは5cmであり、導波路Wgのyz断面は矩形とした。導波路Wgの長辺の長さは2.54mm、短辺の長さは1.27mmとした。接合面は、導波路Wgの長辺の中心を通り、xz方向に広がるように設けた。
【0052】
(比較例1)
比較例1の導波管コンポーネントは、金属でできている点が実施例1と異なる。比較例1の導波管コンポーネントは、引き抜き加工により作製した導波路を形成する管に、フランジを後からロウ付けして作製した。比較例1の導波管コンポーネントの構成は、実施例1の導波管コンポーネントの構成と同じとした。導波管コンポーネントを構成する金属は、銅合金とした。
【0053】
図8は、実施例1及び比較例1の伝送特性を示す図である。図8は、実施例1及び比較例1の導波管コンポーネントのSパラメータを示す。図8に示すように、実施例1に係る導波管コンポーネントは、比較例1に係る導波管コンポーネントと同等の性能を示した。実施例1の導波管コンポーネントは、粗い樹脂部品の表面が金属メッキにより平滑化されることで、高周波信号に対する伝送特性が十分維持されていると考えられる。
【0054】
(実施例2)
実施例2は、樹脂部品にリブLを設け、構造を図7に示す導波管コンポーネント102と同様にした点が、実施例1と異なる。その他の条件は、実施例1と同様に作製した。また導波管コンポーネント102の表面状態等も実施例1の導波管コンポーネントと同等であった。
【0055】
(比較例2)
アルミ切削によりリブLが設けられた導波管コンポーネントを作製した。導波路の構成は、実施例2と同等とした。
【0056】
図9は、実施例2及び比較例2のフィルタの特性を示す図である。図9には、フィルタの設計値も示す。図9に示すように、実施例2に係るフィルタは、比較例1に係るフィルタと同等の性能を示した。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本実施形態にかかる導波管コンポーネントは、航空宇宙分野における衛星搭載部品、ミリ波帯域を使用する5Gを超える世代の携帯電話の部品、ミリ波レーダーの部品、ミリ波非破壊検査装置の部品等に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
10、11、12 第1部品
10a、20a 溝
20、21、22 第2部品
100、101、102 導波管コンポーネント
C 被覆膜
R 樹脂部品
M 主要部
F フランジ
Wg 導波路
Ia 第1電流線
Ib 第2電流線
S1 第1面
S2 第2面
L リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9