(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】コンベア用潤滑剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 173/02 20060101AFI20240718BHJP
C10M 137/04 20060101ALN20240718BHJP
C10M 133/08 20060101ALN20240718BHJP
C10M 133/06 20060101ALN20240718BHJP
C10M 135/08 20060101ALN20240718BHJP
C10M 133/22 20060101ALN20240718BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20240718BHJP
C10N 30/16 20060101ALN20240718BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240718BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240718BHJP
F16N 15/00 20060101ALN20240718BHJP
G01N 21/90 20060101ALN20240718BHJP
【FI】
C10M173/02
C10M137/04
C10M133/08
C10M133/06
C10M135/08
C10M133/22
C10N40:00 Z
C10N30:16
C10N30:06
C10N30:00 Z
F16N15/00
G01N21/90 A
(21)【出願番号】P 2020174996
(22)【出願日】2020-09-30
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】千葉 経範
(72)【発明者】
【氏名】比企 慎太郎
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-080773(JP,A)
【文献】特開2012-173264(JP,A)
【文献】特表2004-517318(JP,A)
【文献】特開昭58-005635(JP,A)
【文献】特開2019-137836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
F16N1/00-99/00
C09K23/00-23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(A)~(C-2)成分を含有するとともに、水を含有し、(A)成分のアニオン性界面活性剤と(C-2)成分のカチオン性界面活性剤との質量比が、(A):(C-2)=1:0.05~1:0.7であることを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物:
(A)下記一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤、
【化1】
(B)アルカノールアミン
(C-2)カチオン性界面活性剤
【請求項2】
前記(A)成分のアニオン性界面活性剤が、一般式(1)で表され、一般式(1)におけるAOがプロピレンオキサイドであることを特徴とする請求項1
記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記(B)成分のアルカノールアミンが、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンであることを特徴とする請求項1
または2に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記(B)成分のアルカノールアミンを前記(A)成分のアニオン性界面活性剤とのモル比で1以下含むことを特徴とする請求項1~
3に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記(C-2)成分のカチオン性界面活性剤が、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1~
4に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のコンベア用潤滑剤組成物を、水または湯を用いて希釈し、空ビン検査機をライン上に設置したコンベアに、その潤滑剤希釈液を供給、噴霧または塗布して容器の搬送移動に用いるコンベア用潤滑剤組成物の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑性、除菌性を有しながら、抑泡性と濡れ性を併せ持ったコンベア用潤滑剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
牛乳、ビール、酒、清涼飲料等の食品、薬品、化粧品等をビンや缶に充填する工程では、ビンや缶を搬送する手段として、多数のプレートを搬送方向に無端状に連ねた搬送コンベアが広く利用されている。
【0003】
これら搬送コンベアは通常、自動制御により連続運転され、このため、コンベア上の容器の流れが停止してもコンベアのみがそのまま連続して運転される。この場合、容器とコンベアのプレート表面との間に摩擦が生じて、倒ビンやモータの負荷を異常に増したり、容器を傷つけたり、等の不都合が生じるので、この摩擦を低下させる必要がある。一方、洗浄機から運ばれてきた容器をそのまま搬送コンベアの流れに乗せるには、コンベアのプレート表面に適当な静摩擦力が要求される。
【0004】
上述の要求を満たす潤滑剤として、従来、高級脂肪酸石けんを主体とした潤滑剤が使用されていた。例えば、主成分としてヤシ油脂肪酸カリウム石けんやオレイン酸アミン石けんを用い、これらを水で100~400倍に希釈した水溶液を潤滑剤として搬送コンベアのプレート表面に塗布して使用に供されていた。
【0005】
しかし、これら高級脂肪酸石けんを主体とした潤滑剤組成物は潤滑性には優れているものの、除菌性に乏しく希釈水の硬度による影響を受けて水不溶性の金属石けんを生成する。そして、この生成物は潤滑剤水溶液を供給する際のスプレーのノズル孔を塞いだり、コンベア表面を汚したり、あるいはさらに、これらの汚れが微生物の温床となって、コンベア上に菌巣を形成する原因ともなっている。
【0006】
このような問題を解決するために、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、カチオン界面括性剤を併用したコンベア用除菌性潤滑剤組成物(特許文献1)が提案されている。
【0007】
一方、ビール等の飲料をビン等に充填する前に、ビン等の破損や洗浄不良等を検査するための機器(空ビン検査機:Empty Bottle Inspector、以後EBIともいう)を通常設置しており、EBI通過前にビン等に泡が付着していたり、水滴(以後、ウォータービーズともいう)が付着していたりするとビン等の破損や洗浄不良等の欠陥として読み取ってしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載のコンベア用除菌性潤滑剤組成物は、除菌効果を有する一方、ビン等の容器表面に撥水性被膜を形成してしまい、ビンの底面や側面に水が掛かると、均一に濡れずに水を弾いてウォータービーズを発生する。そのウォータービーズは、EBIにて汚れ等の欠陥として検出されてしまい、製造上の作業性に大きな支障を来す問題が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明を完成するに至った。
[1]下記の一般式(A)~(C-1)成分を含有するとともに、水を含有することを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物:
(A)下記一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤、
【化1】
(ただし一般式(1)のうち、RはC3~C20のアルキル基またはアルケニル基。nおよびqは1~4の整数。mは1~2の整数。Mは水素またはアルカリ金属であり、AOはプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる一種以上、EOはエチレンオキサイドである。)
(B)アルカノールアミン
(C-1)塩素系殺菌剤
[2]下記の一般式(A)~(C-2)成分を含有するとともに、水を含有し、(A)成分のアニオン性界面活性剤と(C-2)成分のカチオン性界面活性剤との質量比が、(A):(C-2)=1:0.05~1:0.7であることを特徴とするコンベア用潤滑剤組成物:
(A)下記一般式(1)で表されるアニオン性界面活性剤、
【化1】
(ただし一般式(1)のうち、RはC3~C20のアルキル基またはアルケニル基。nおよびqは1~4の整数。mは1~2の整数。Mは水素またはアルカリ金属であり、AOはプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる一種以上、EOはエチレンオキサイドである。)
(B)アルカノールアミン
(C-2)カチオン性界面活性剤
[3]前記(A)成分のアニオン性界面活性剤が、一般式(1)で表され、一般式(1)におけるAOがプロピレンオキサイドであることを特徴とする[1]または[2]に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
[4]前記(B)成分のアルカノールアミンが、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンであることを特徴とする[1]~[3]に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
[5]前記(B)成分のアルカノールアミンを前記(A)成分のアニオン性界面活性剤とのモル比で1以下含むことを特徴とする[1]~[4]に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
[6]前記(C-1)成分の塩素系殺菌剤が、次亜塩素酸及び/又はその塩であることを特徴とする[1]~[5]に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
[7]前記(C-2)成分のカチオン性界面活性剤が、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩から選ばれる少なくとも一種を含むことを特徴とする[1]~[6]に記載のコンベア用潤滑剤組成物。
[8]前記[1]~[7]のいずれか一項に記載のコンベア用潤滑剤組成物を、水または湯を用いて希釈し、空ビン検査機をライン上に設置したコンベアに、その潤滑剤希釈液を供給、噴霧または塗布して容器の搬送移動に用いるコンベア用潤滑剤組成物の使用方法。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、本発明は、潤滑性、除菌性を有しながら、濡れ性を併せ持つことで、EBI使用上の不具合をなくすコンベア用潤滑剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物は、(A)特定のアニオン性界面活性剤、(B)アルカノールアミン、(C)(C-1)塩素系殺菌剤または(C-2)カチオン性界面活性剤、から選ばれる少なくとも一種の殺菌剤と、水とを用いて得られる。
【0014】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物に用いられる(A)特定のアニオン性界面活性剤は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸またはその塩が挙げられ、下記一般式(1)で表される。
【化1】
(ただし一般式(1)のうち、RはC3~C20のアルキル基またはアルケニル基。nおよびqは1~4の整数。mは1~2の整数。Mは水素またはアルカリ金属であり、AOはプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドから選ばれる一種以上、EOはエチレンオキサイドである。)
【0015】
一般式(1)において、Rの炭素数は3~20であり、潤滑性の点から12~18が好ましい。
【0016】
AOはプロピレンオキサイド(以後、POともいう)、ブチレンオキサイド(以後、BOともいう)から選ばれる1種以上であり、EOはエチレンオキサイドである。AOとEOの付加の順序に制限はなく、重合の形態もブロックでもよいしランダムでもよい。AOの付加モル数であるnおよびEOの付加モル数であるqは合わせて、2~8が好ましく、2~4がより好ましい。
【0017】
Mは、水素またはアルカリ金属であり、アルカリ金属としては、ナトリウムおよびカリウムが挙げられる。
【0018】
(A)成分のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸またはその塩の配合量は、コンベア用潤滑剤組成物中に3~25重量%が好ましく、潤滑性と抑泡性の点から、5~20重量%がより好ましい。すなわち、少なすぎると充分な潤滑効果が得られず、多すぎると泡立ちが激しくなる。
【0019】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物に用いられる(B)アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン等が挙げられ、これらを単独でも用いることも、二種以上混合して用いることもできる。好ましくは、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンである。
【0020】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物中に含む(B)成分の配合量は、前記(A)成分に対して(B)成分が、モル比で1以下であることが好ましい。過剰のアルカノールアミンが存在しないことが、泡を抑制する点で好ましい。
【0021】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物に用いられる(C-1)塩素系殺菌剤としては、次亜塩素酸及び/又はその塩、ジクロロイソシアヌル酸塩、二酸化塩素等が挙げられる。これらは単独で用いても、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。殺菌性、使いやすさの点から、次亜塩素酸、次亜塩素酸塩が好ましく、次亜塩素酸ナトリウムがさらに好ましい。
【0022】
上記次亜塩素酸の水溶液は製造方法に制限は無いが、食塩水や塩酸を電気分解して生成された酸性電解水を使用してもよいし、次亜塩素酸ナトリウムに酸を加えたり、イオン交換等をしたりすることで酸性に調整したものを使用することも出来る。
【0023】
塩素系殺菌剤は、コンベア用潤滑剤組成物のその他の成分と、予め混合して使用しても良いし、使用直前に混合しても良い。また、コンベアが稼働している時に混合して使用しても良い。
【0024】
塩素系殺菌剤の配合量は、殺菌性の点から、使用中に有効塩素濃度として10~100ppmであることが好ましく、20~60ppmがさらに好ましい。
【0025】
カチオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩やグアニジン系カチオン界面活性剤などが挙げられる。第四級アンモニウム塩としては、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウム二塩基酸塩(例えば、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムピメレート、ジデシルジメチルアンモニウムスベレート、ジデシルジメチルアンモニウムアゼレート、ジデシルジメチルアンモニウムセバケート、ジデシルジメチルアンモニウムドデカノジオエート、ジデシルジメチルアンモニウムグルタレート、ジデシルジメチルアンモニウムサッシネート、ジデシルジメチルアンモニウムマロネート、ジデシルジメチルアンモニウムオキサレート等)、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムスルホネート、ジデシルジメチルアンモニウムプロピオネート、1,4-ビス(3,3′-(1-デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド、N,N′-ヘキサメチレンビス(4-カルバモイル-1-デシルピリジニウムブロマイド)、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化セチルピリジニウム、アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド、デシルイソノニルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルメチルポリオキシエチレンアンモニウムプロピオネート、およびベンゼトニウムクロライドが挙げられ、なかでも、除菌力の強さの点からアルキル基の炭素原子数が8~16に設定される。
【0026】
また、グアニジン系カチオン界面活性剤としては、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンホスフェート、ポリヘキサメチレングアニジンクロライド、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられ、なかでも、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンホスフェートが好ましい。さらに、アルキルジアミンおよび/またはその塩はアルキル基の炭素原子数が8~20に設定され、アルキルモノアミンおよび/またはアルキルジアミンが好ましい。
【0027】
特に好ましくは、除菌性、濡れ性の点から、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩である。
【0028】
カチオン性界面活性剤は、使用するコンベア用潤滑剤組成物または希釈液中に、除菌または菌抑制効果を発揮できる量で適宜配合することができる。例えば、コンベア用潤滑剤組成物または希釈液中に、カチオン性界面活性剤について、0.001質量%以上の量、好ましくは0.004質量%以上の量、例えば、0.008質量%以上、0.012質量%以上、0.015質量%以上、0.021質量%以上、または0.04質量%以上の量とすることができる。使用するコンベア用潤滑剤組成物または希釈液中に0.001質量%未満の量で用いられた場合には所望の除菌性能が得られない場合がある。一方、配合量の上限は、使用するコンベア用潤滑剤組成物または希釈液の中に1質量%以下、0.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以下の量で配合することができる。1質量%を超えると濡れ性が劣り、ビール等のガラス表面にコンベア用潤滑剤組成物または希釈液が均一に濡れず、ウォータービーズを発生する恐れがある。
【0029】
(C)成分として、カチオン性界面活性剤を配合する場合は、カチオン性界面活性剤と前記(A)成分のアニオン性界面活性との質量比が、(A):(C-2)=1:0.05~1:0.7であることが好ましい。特に殺菌性、濡れ性の点から、1:0.1~1:0.6がより好ましく、1:0.2~1:0.5がさらに好ましい。
【0030】
本発明に用いられる水としては、水道水、軟水、純水、蒸留水、イオン交換水、精製水等が挙げられ、なかでも除菌性の点から精製水が好ましく、また、経済性の点から、水道水、軟水、イオン交換水が好ましい。
【0031】
本発明のコンベア用潤滑剤組成物は、さらにノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、(A)成分以外のアニオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種の界面活性剤を所望される効果を失わない程度に含有することができる。
【0032】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(EO)とポリオキシプロピレン(PO)のブロックコポリマー、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンオキシド、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種類以上を組み合わせても良い。
【0033】
両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2-アルキル-N-カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミノエチルグリシン、アルキルジ(アミノエチル)グリシン、グリシンn-(3-アミノプ ロピル)C10~16誘導体、アルキルポリアミノエチルグリシン、アルキルβアラニン、アルキルアミノプロピオン酸またはその塩、ならびにアルキルアミドジメチルハイドロキシプロピルスルホベタイン等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種類以上を組み合わせても良い。
【0034】
(A)成分以外のアニオン性界面活性剤としては、炭素数8~24の炭化水素系エーテルカルボン酸またはその塩、炭素数8~24の炭化水素系硫酸エステル塩、炭素数8~24の炭化水素系スルホン酸塩、脂肪酸塩、アシル化アミノ酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いても、二種類以上を組み合わせても良い。
【0035】
本発明のコンベア用除菌性潤滑剤組成物は、必要に応じてさらに、他の除菌剤、消泡剤、洗浄ビルダー、可溶化剤、アルカリ剤等のその他成分を含有することもできる。例えば、他の除菌剤としては、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-s-トリアジン、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリエチル-s-トリアジン、2-メチルチオ-4-t-ブチルアミノ-6-シクロプロピルアミノ-s-トリアジン等のトリアジン系化合物や5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン等が挙げられ、消泡剤としてはシリコン化合物、洗浄ビルダーとしては、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、イミノジ酢酸およびこれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩およびモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩、可溶化剤としては、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等、アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、メタケイ酸ナトリウム等のケイ酸塩、リン酸三カリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウム等のリン酸塩を利用することができる。また、オレイン酸等の脂肪酸を使用してもよい。
【0036】
また、本発明のコンベア用潤滑剤組成物は、使用時に所望される効果が失われない範囲において、原液~1000倍に水または湯で希釈し潤滑剤希釈液として用いられる。潤滑剤希釈液は、使用時に所望の使用濃度に希釈しても良いし、予め適度な濃度に希釈した溶液を作っておいて、これを使用時にさらに所望の使用濃度となるように希釈しても良い。また、コンベア用潤滑剤組成物の各成分を個別に希釈しておき、使用時に混合しても良い。例えば、塩素系殺菌剤以外の成分を予め配合しておき(仮に組成物Aとする)、使用時に水または湯を用いて100~1000倍に希釈し、塩素系殺菌剤を使用時に有効塩素濃度が10~100ppmになるよう希釈し、組成物Aの希釈物と塩素系殺菌剤の希釈物を使用直前に混合するか、それぞれを同時にコンベア上に添加して使用することもできる。こうして希釈された潤滑剤希釈液はコンベア上に対しておおむね10~200ml/分、好ましくは30~100ml/分の割合でポンプ等を介しノズルから連続的あるいは間欠的に噴霧しても刷毛等で塗布してもよい。
【0037】
特にコンベアのライン上に、空ビン検査機(EBI)を設置している場合、本発明のコンベア用潤滑剤組成物を使用すれば、ウォータービーズの発生によって作業が止まる可能性が低くなる。すなわち、ウォータービーズが発生すると、EBIに設置されたCCD(Charge Coupled Device)カメラでは、このウォータービーズが黒く映り、ゴミと誤検出してしまうが、本発明のコンベア用潤滑剤組成物を使用すれば、濡れ性が良いので、ウォータービーズが発生しない。
【0038】
さらに空ビン検査機だけでなく、飲料等が充填された後の実ビン検査機においても、同様に本発明の効果が発揮される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例について比較例と併せて説明する。本発明は、これらに限定されるものではない。なお、以下の記載において「%」は質量%を意味する。
【0040】
1.除菌性試験
本発明のコンベア用潤滑剤組成物に関し、後記の表1~4に示す実施例1~18、および表5に示す比較例1~6の組成(各表の数値は、各成分の純分を表したものであり、その単位は、質量%である)の供試コンベア用潤滑剤液を作製し、除菌性について以下のとおり評価した。なお、実施例7~18、比較例1~6は、表中の希釈倍率に希釈し試験に供した。
【0041】
〔試験方法〕
懸濁法により、供試潤滑剤組成物の除菌性を試験し、以下の評価基準で判定した。
【0042】
〔供試菌株〕
緑膿菌(シュードモナス エルギノーザ)初発菌数:5.0×107 cfu/ml
【0043】
〔接触時間/温度〕
10分/20℃
【0044】
〔使用希釈水〕
イオン交換水。
【0045】
〔評価基準〕
コンベア用潤滑剤組成物と接触後の菌数の減少に基づいて、以下の評価基準にしたがって除菌性を評価した。
◎:5Logリダクション以上の菌数減少
○:Logリダクションが2以上5未満の菌数減少
×:2Logリダクション2未満の菌数減少
◎および○を実用性のあるものとして判定した。
【0046】
2.潤滑性試験
本発明の潤滑剤組成物の実施例1~18および比較例1~6について、その潤滑性を以下のとおり評価した。なお、実施例7~18、比較例1~6は、表中の希釈倍率に希釈し試験に供した。
【0047】
〔試験方法〕
ステンレスコンベアプレート上に試験用容器を置き、次いで、このコンベアプレート上に本発明の潤滑剤組成物を、それぞれ、12ml/分で供給したときの10分後の摩擦係数(μ)を測定し、各容器の潤滑性を評価した。なお、テストコンベア条件コンベア速度は40cm/秒とし、試験用容器は、ビール大壜1本とした。摩擦係数(μ)は以下の算定式より算出した。
摩擦係数(μ)=引張抵抗値(g)/テスト容器の総重量(g)
【0048】
〔評価基準〕
◎:0.13未満
○:0.13以上0.14未満
×:0.14以上
◎および○を実用性のあるものとして判定した。
【0049】
3.濡れ性
本発明の潤滑剤組成物の実施例1~18および比較例1~6について、その濡れ性を以下のとおり評価した。なお、実施例7~18、比較例1~6は、表中の希釈倍率に希釈し試験に供した。
【0050】
〔試験方法〕
本発明のコンベア用潤滑剤組成物を、直径9.2cmのシャーレーに2ml入れ、ビール瓶(中ビンサイズ)の底面を液に接触させ、流水ですすいだ後の状態を目視で確認した。
【0051】
〔評価基準〕
◎:ウォータービーズがほとんどなし
○:ウォータービーズが少ない
×:ウォータービーズが多い
◎および○を実用性のあるものとして判定した。
【0052】
[成分]
(A)成分
・アニオン性界面活性剤1
ポリオキシアルキレン(PO1モル、EO1モル)ラウリルエーテルリン酸
一般式(1)のR=C12、n=1、q=1、m=1、M=水素。
(純分83%以上)、分子量:368
・アニオン性界面活性剤2
ポリオキシアルキレン(PO2モル、EO1モル)ラウリルエーテルリン酸
一般式(1)のR=C12、n=2、q=1、m=1、M=水素。
(純分83%以上)、試作品、分子量:426
・アニオン性界面活性剤3
ポリオキシアルキレン(PO2モル、EO2モル)ラウリルエーテルリン酸
一般式(1)のR=C12、n=2、q=2、m=1、M=水素。
(純分83%以上)、試作品、分子量:470
・アニオン性界面活性剤4
ポリオキシアルキレン(PO3モル、EO1モル)ラウリルエーテルリン酸
一般式(1)のR=C12、n=3、q=1、m=1、M=水素。
(純分83%以上)、試作品、分子量:484
【0053】
(B)成分
・モノエタノールアミン
商品名「モノエタノールアミン90」(純分90%)、日本触媒社製
・トリエタノールアミン
商品名「トリエタノールアミンS」(純分99%)、日本触媒社製
【0054】
(C-1)成分
・次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素12%)
・次亜塩素酸水(pH6.0)
(次亜塩素酸ナトリウム水溶液に塩酸を加えて調整)
(C-2)成分
・カチオン性界面活性剤1
ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド
商品名「バーダックLF-80」(純分80%)、ロンザ社製
・カチオン性界面活性剤2
塩化ベンザルコニウム
商品名「ドジゲン226」(純分50%)、クラリアント社製
・カチオン性界面活性剤3
ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェイト
商品名「リポカード210-80MSPG」(純分80%)、
ライオンスペシャリティケミカルズ社製
・カチオン性界面活性剤4
ポリヘキサメチレンビグアニド塩酸塩
商品名「プロキセルIB」(純分20%)、ロンザ社製
【0055】
[任意成分]
・ノニオン性界面活性剤
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル
(純分100%)
・オレイン酸(純分100%)
・洗浄ビルダー
エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム液(純分38%)
・トリアジン系化合物
ヘキサヒドロ-1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-s-トリアジン(純分74%以上)
【0056】
【表1】
表1に記載のベース処方をイオン交換水で200倍に希釈したベース処方希釈液と、イオン交換水で表2中の有効塩素濃度になるよう調整した下記の(C-1)成分の水溶液とを試験直前に1:1にて混合し、試験に供した。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
上記表1~表5の評価結果から、実施例1~18は、いずれの項目においてもほぼ良好な結果が得られていることがわかる。いずれも良好な除菌性、潤滑性を示し、さらに濡れ性がよいため、ウォータービーズがほとんど発生しないか、発生しても極少量なので、EBIの誤検出を誘引する可能性が低い。
これに対し、比較例1~6は、少なくともいつくかの項目において、実用上の問題があることがわかる。(A)成分:(C-2)成分が、1:0.05~0.7の範囲を超えると濡れ性が悪くなり、ウォータービーズを多く発生させる。また、範囲を下回ると所望の除菌性が得られないことがわかる。