(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】噴霧ノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 1/12 20060101AFI20240718BHJP
B05B 1/30 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B05B1/12
B05B1/30
(21)【出願番号】P 2021199181
(22)【出願日】2021-12-08
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】397002360
【氏名又は名称】ヤマホ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】今川 良成
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-319365(JP,A)
【文献】特開2012-239964(JP,A)
【文献】米国特許第04993643(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0107282(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-1/36
A01M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心部に流路が貫通形成された筒状のノズル本体と、前記ノズル本体の先端部に取り付けられ、中央に噴口を有する噴板と、前記ノズル本体の径方向外側に配される作動筒とを備え、
前記ノズル本体は、
前記ノズル本体の後端部を外部の液体供給源に軸心まわりに回動不能に接続されるものであり、前記流路の途中にオリフィス部が設けられ、前記オリフィス部よりも先端側に外周面から前記流路に貫通する第1貫通孔が、前記オリフィス部よりも後端側に外周面から前記流路に貫通する第2貫通孔がそれぞれ設けられ、前記第2貫通孔よりも後端側の外周面におねじが設けられており、
前記作動筒は、
前記作動筒の後端側の内周面に設けられためねじが前記ノズル本体のおねじとねじ結合して、前記ノズル本体に対して軸心まわりに回動可能に取り付けられており、
前記ノズル本体の外周面と前記作動筒の内周面の間には、前記作動筒の先端側から軸方向に沿って延び、外部と前記ノズル本体の第1貫通孔および第2貫通孔とを連通させる連通路が形成され、前記連通路は、前記第1貫通孔よりも先端側および前記第1貫通孔と第2貫通孔の間でそれぞれ屈曲しており、
前記作動筒を一方向に回動させながら後端側へ移動させたときは、前記連通路が前記第1貫通孔と第2貫通孔の間の屈曲部で閉じ、前記ノズル本体の後端側から前記流路に供給された液体が、前記オリフィス部を通過した後、外部から前記連通路および第1貫通孔を通って流路に導入された空気と混合されて、前記噴板の噴口から噴射され、
前記作動筒を逆方向に回動させながら先端側へ移動させたときは、前記連通路が前記第1貫通孔よりも先端側の屈曲部で閉じ、前記ノズル本体の後端側から前記流路に供給された液体は、前記オリフィス部を通過したものと、前記第2貫通孔、連通路および第1貫通孔を順に通って再び流路に導入されたものとが合流して、空気と混合されることなく前記噴板の噴口から噴射されるようになっている噴霧ノズル。
【請求項2】
前記連通路の第1貫通孔よりも先端側の屈曲部付近に、前記作動筒が軸方向の所定位置よりも先端側にあるときには連通路を閉じ、前記作動筒が前記所定位置よりも後端側にあるときには連通路を開放する第1弾性シール部材が設けられ、前記連通路の第1貫通孔と第2貫通孔の間の屈曲部付近に、前記作動筒が前記所定位置よりも先端側にあるときには連通路を開放し、前記作動筒が前記所定位置よりも後端側にあるときには連通路を閉じる第2弾性シール部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の噴霧ノズル。
【請求項3】
前記ノズル本体と作動筒の間に、前記作動筒の先端側および後端側への軸方向移動を規制する規制部が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の噴霧ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬や水等の液体の散布に用いられる噴霧ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
農薬や水等の液体を散布する際には、液圧送ホース等の液体供給源に噴霧ノズルを接続することにより、液体を霧状にして効率よく散布作業を行うことができる。ただし、その噴霧ノズルは、液体散布の用途に応じたものを用いる必要があり、例えば農作物の葉の表面の一部に液体を散布しようとする場合は噴霧量の少ないものが用いられ、農作物の葉面全体に液体を散布しようとする場合は噴霧量の多いものが用いられる。このため、用途に応じて求められる噴霧量が変われば、液体供給源に接続している噴霧ノズルを異なる種類のものに変更する必要があり、特に大型のブームスプレイヤー等の噴霧器では噴霧ノズルを交換する際の作業負荷が大きくなる。
【0003】
これに対し、噴霧量を切り替えられる構造の噴霧ノズルを用いれば、噴霧ノズルの交換作業を省略したり交換頻度を減らしたりすることができる。このような噴霧量の切替が可能な噴霧ノズルとしては、例えば特許文献1で提案されているものがある。
【0004】
特許文献1の噴霧ノズルは、
図6に示すように、軸心部に流路52が貫通形成された筒状のノズル本体51と、そのノズル本体51の先端部に取り付けられ、中央に噴口53aを有する噴板53と、噴板53をノズル本体51に取り付ける先端キャップ54と、ノズル本体51の後端部に連結され、外部の液体供給源である液圧送ホースに接続される基筒55と、基筒55をノズル本体51に取り付ける連結キャップ56と、ノズル本体51の径方向外側に配される筒状の操作用カバー57と、ノズル本体51の流路52の先端部に配される中子58と、ノズル本体51の流路52の途中を仕切るオリフィス板59とを備えている。オリフィス板59は、中央孔59aと、その周囲の複数の周辺孔59bとを有している。ここで、先端とは液体の流れ方向の下流側端、後端とは液体の流れ方向の上流側端のことをいう(以下同じ)。
【0005】
前記ノズル本体51は、先端側本体70と基筒55に連結される後端側本体80とに分割されており、さらに、その先端側本体70が、噴板53および中子58を取り付けられる先端部71と、オリフィス板59を取り付けられる中間部72とに分割されている。先端側本体70の中間部72は、オリフィス板59取付位置よりも先端側に、外周面から流路52に貫通する貫通孔72aが設けられ、貫通孔72aよりも後端側の外周面におねじが設けられている。また、先端側本体70の先端部71と中間部72とは凹凸係合により一体化されており、後端側本体80は凹凸係合により基筒55と一体化されている。そして、先端側本体70の中間部72の後端側内周に後端側本体80の先端側部分が相対的に回動不能かつ軸方向移動可能に嵌め込まれ、後端側本体80の先端面とオリフィス板59の周辺孔59bとが軸方向で対向している。
【0006】
前記操作用カバー57は、その内周面に設けられためねじがノズル本体51を構成する先端側本体70の中間部72のおねじとねじ結合して、ノズル本体51に対して軸心まわりに回動可能に取り付けられている。また、後端部に設けられたフランジ部57aが、ノズル本体51を構成する後端側本体80の後端部と連結キャップ56とによって、軸方向に相対移動不能な状態で挟まれている。これにより、操作用カバー57を回動させると、ノズル本体51の先端側本体70が、オリフィス板59とともに、操作用カバー57およびノズル本体51の後端側本体80に対して相対的に軸方向移動するようになっている。
【0007】
そして、ノズル本体51の先端側本体70の外周面と操作用カバー57の内周面の間には、操作用カバー57の先端側から軸方向に沿って延び、外部と先端側本体70の貫通孔72aとを連通させる連通路60が形成されている。連通路60は途中に屈曲部60aを有しており、その屈曲部60aの後端側近傍にOリング61が配されている。
【0008】
この従来の噴霧ノズルは、上記の構成であり、操作用カバー57を一方向に回動させることにより、ノズル本体51の先端側本体70をオリフィス板59とともに後端側へ軸方向移動させ、連通路60を開放するとともに、オリフィス板59を後端側本体80の先端面に密着させて、オリフィス板59の周辺孔59bを閉じたときは、ノズル本体51の後端側から流路52に供給された液体が、オリフィス板59の中央孔59aを通過した後、外部から連通路60およびノズル本体51の貫通孔72aを通って流路52に導入された空気と混合されて、噴板53の噴口53aから噴射される。このときには、噴霧粒径が大きく、噴霧量の少ない噴霧態様が得られる。
【0009】
一方、操作用カバー57を逆方向に回動させることにより、ノズル本体51の先端側本体70をオリフィス板59とともに先端側へ軸方向移動させ、連通路60をOリング61で閉じるとともに、オリフィス板59を後端側本体80の先端面から離して、オリフィス板59の周辺孔59bを開放したときには、ノズル本体51の後端側から流路52に供給された液体が、オリフィス板59の中央孔59aと各周辺孔59bを通過して、空気と混合されることなく、噴板53の噴口53aから噴射される。このときには、噴霧粒径が小さく、噴霧量の多い噴霧態様が得られる。
【0010】
すなわち、この噴霧ノズルでは、ノズル本体51に取り付けられた操作用カバー57を回動させることより、空気を混入した液体を少量散布する状態と、空気非混入の液体を多量散布する状態とを切り替えられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した従来の噴霧ノズルは、ノズル本体51が3つの部材(先端側本体70の先端部71、中間部72および後端側本体80)に分割されており、その後端側本体80に対して摺動する先端側本体70の中間部72にオリフィス板59が組み込まれているため、構造が複雑で、主要部品の点数が多く、組み立てに手間がかかるという難点があった。
【0013】
そこで、本発明は、噴霧量の切り替えが可能であり、かつ比較的簡単な構造で組み立ての容易な噴霧ノズルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の噴霧ノズルは、軸心部に流路が貫通形成された筒状のノズル本体と、前記ノズル本体の先端部に取り付けられ、中央に噴口を有する噴板と、前記ノズル本体の径方向外側に配される作動筒とを備え、前記ノズル本体は、その後端部を外部の液体供給源に軸心まわりに回動不能に接続されるものであり、前記流路の途中にオリフィス部が設けられ、前記オリフィス部よりも先端側に外周面から前記流路に貫通する第1貫通孔が、前記オリフィス部よりも後端側に外周面から前記流路に貫通する第2貫通孔がそれぞれ設けられ、前記第2貫通孔よりも後端側の外周面におねじが設けられており、前記作動筒は、その後端側の内周面に設けられためねじが前記ノズル本体のおねじとねじ結合して、前記ノズル本体に対して軸心まわりに回動可能に取り付けられており、前記ノズル本体の外周面と前記作動筒の内周面の間には、前記作動筒の先端側から軸方向に沿って延び、外部と前記ノズル本体の第1貫通孔および第2貫通孔とを連通させる連通路が形成され、前記連通路は、前記第1貫通孔よりも先端側および前記第1貫通孔と第2貫通孔の間でそれぞれ屈曲しており、前記作動筒を一方向に回動させながら後端側へ移動させたときは、前記連通路が前記第1貫通孔と第2貫通孔の間の屈曲部で閉じ、前記ノズル本体の後端側から前記流路に供給された液体が、前記オリフィス部を通過した後、外部から前記連通路および第1貫通孔を通って流路に導入された空気と混合されて、前記噴板の噴口から噴射され、前記作動筒を逆方向に回動させながら先端側へ移動させたときは、前記連通路が前記第1貫通孔よりも先端側の屈曲部で閉じ、前記ノズル本体の後端側から前記流路に供給された液体は、前記オリフィス部を通過したものと、前記第2貫通孔、連通路および第1貫通孔を順に通って再び流路に導入されたものとが合流して、空気と混合されることなく前記噴板の噴口から噴射される構成を採用した。
【0015】
上記の構成によれば、ノズル本体に取り付けられた作動筒を回動させるだけで、空気を混入した液体を少量散布する状態と、空気非混入の液体を多量散布する状態とを容易に切り替えることができる。しかも、前述の従来の噴霧ノズルが、操作用カバーの回動によりノズル本体のうちのオリフィス板を組み込んだ部材が他の部材に対して軸方向に摺動する構造であるのに比べて、本発明の噴霧ノズルは、オリフィス部を含むノズル本体が固定され、作動筒がノズル本体に対して回動しながら軸方向移動するようになっているので、構造が簡単で、部品点数が少なく、組み立ても容易である。
【0016】
また、上記の構成においては、前記連通路の第1貫通孔よりも先端側の屈曲部付近に、前記作動筒が軸方向の所定位置よりも先端側にあるときには連通路を閉じ、前記作動筒が前記所定位置よりも後端側にあるときには連通路を開放する第1弾性シール部材が設けられ、前記連通路の第1貫通孔と第2貫通孔の間の屈曲部付近に、前記作動筒が前記所定位置よりも先端側にあるときには連通路を開放し、前記作動筒が前記所定位置よりも後端側にあるときには連通路を閉じる第2弾性シール部材が設けられていることが好ましい。このようにすれば、より精度よく所定の噴霧量で液体を散布できるようになる。
【0017】
すなわち、作動筒を先端側へ移動させて液体を多量散布する際には、第1弾性シール部材が第2貫通孔から連通路に流れ込んだ液体の圧力を受けて弾性変形し、第1貫通孔よりも先端側で連通路を確実にシールするので、連通路から外部への液体の漏出を防止することができる。一方、作動筒を後端側へ移動させて液体を少量散布する際は、第2弾性シール部材が第2貫通孔から連通路に流れ込んだ液体の圧力を受けて弾性変形し、第1貫通孔よりも後端側で連通路を確実にシールするので、液体が連通路から第1貫通孔を通って流路に導入されることを防止でき、噴霧量を適量に抑えることができる。
【0018】
また、前記ノズル本体と作動筒の間に、前記作動筒の先端側および後端側への軸方向移動を規制する規制部が設けられている構成とすれば、噴霧量の切り替え時に作動筒が必要以上に回動されないようにして、切替操作のしやすいものとすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の噴霧ノズルは、上述したように、オリフィス部を含むノズル本体を固定し、作動筒をノズル本体に対して回動させながら軸方向移動させることにより、噴霧量を切り替えられるようにしたものであるから、従来の操作用カバーの回動によりオリフィス板を組み込んだ部材を軸方向移動させて噴霧量を切り替える構造のものよりも、構造が簡単で、部品点数が少なく、容易に組み立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図1の噴霧ノズルの縦断正面図(少量散布状態)
【
図5】
図1の噴霧ノズルの作動筒を軸方向移動させた状態を示す縦断正面図(多量散布状態)
【
図6】従来の噴霧ノズルの一部縦断正面図(少量散布状態)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1乃至
図5に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1は、実施形態の噴霧ノズル10を、外部の液体供給源であるブームスプレイヤーのブームBの長手方向に所定間隔で設けられた導液管(枝管)Pに接続した状態を示す。ここで、ブームBの導液管Pは、図示は省略するが、先端側の外周に噴霧ノズル10を接続するためのおねじが形成されており、その先端に噴霧ノズル10を回り止めするための一対の切欠きが設けられている。
【0022】
この噴霧ノズル10は、
図2乃至
図4に示すように、軸心部に流路2が貫通形成された筒状のノズル本体1と、そのノズル本体1の先端部に取り付けられる噴板3と、噴板3をノズル本体1に取り付ける先端キャップ4と、ノズル本体1をブームBの導液管Pに接続する連結キャップ5およびロックキャップ6と、ノズル本体1の径方向外側に配される作動筒7と、ノズル本体1の流路2の先端部に配される中子8と、後述するように作動筒7のノズル本体1に対する軸方向移動を規制するためのU字状のスライドピン9とを備えている。また、そのノズル本体1は、噴板3および中子8を取り付けられる先端取付部20と、導液管Pに接続される本体部30とに分割されている。なお、
図2乃至
図4は
図1と上下方向を逆にして描いたものであり、上方が液体噴出方向となっている(後述の
図5も同じ)。
【0023】
前記ノズル本体1の先端取付部20は、その先端部に流路出口2aが形成されており、流路出口2aの底となる段差面から後端面に向かって段階的に拡径する軸孔21に、本体部30の先端側部分が軸方向移動不能かつ回動不能に嵌め込まれるようになっている。
【0024】
この先端取付部20の流路出口2aの内周には、一対の円弧状の中子受け22が先端取付部20の先端面から僅かに突出する状態で設けられ、軸孔21の先端部には、一対の中子固定用の凹部23が流路出口2aの段差面から軸方向に設けられている。また、先端側の外周には先端キャップ4とねじ結合するおねじ24が設けられている。
【0025】
前記先端キャップ4は、先端側内周に内フランジ4aを有しており、ノズル本体1の先端取付部20の先端面にOリング11と噴板3を重ねた状態で、先端取付部20のおねじ24とねじ結合することにより、噴板3の外周縁部を内フランジ4aで締め付けて、Oリング11で噴板3とノズル本体1との間をシールし、噴板3と中子8をノズル本体1に取り付けるようになっている。
【0026】
前記噴板3は、径方向に沿って延びる断面U字状の膨出部3aが形成されており、その膨出部3aの長手方向中央に幅方向に延びる噴口3bがあけられている。
【0027】
前記中子8は、流路出口2aまで流れてきた液体の流れを整えるもので、その液体を噴板3に向けて流す一対の孔8aを有している。また、背面(ノズル本体1に対向する側の面)には一対の位置決めピン8bが設けられ、前面(噴板3に対向する側の面)の周縁部には、一対の突起8cが設けられている。そして、各位置決めピン8bがノズル本体1(先端取付部20)の中子固定用の凹部23に挿入され、背面の周縁部の一部がノズル本体1の中子受け22に当接する状態で組み込まれている。
【0028】
また、この中子8を噴板3およびOリング11とともに先端キャップ4でノズル本体1に取り付けるときには、中子8の前面の各突起8cが噴板3の膨出部3aの背面(中子8に対向する側の面)の溝に嵌まり込み、これによって中子8と噴板3とが周方向に位置決めされるようになっている。
【0029】
前記ノズル本体1の本体部30は、先端取付部20の軸孔21に挿入される先端部分の途中に先細りのテーパ部31を有し、そのテーパ部31よりも後端側の外周に複数の凸部32が周方向に等間隔で設けられている。そして、そのテーパ部31が先端取付部20の軸孔21の内周に圧入され、各凸部32が先端取付部20の内周に設けられた複数の軸方向溝25に嵌め込まれて、本体部30と先端取付部20とが一体化されている。なお、本体部30のテーパ部31よりも先端側の外周と先端取付部20の内周との間に、両者の間をシールするOリング12が組み込まれている。
【0030】
また、本体部30は、流路2が後端側から軸方向中央部まで段階的に小径となるように形成され、軸方向中央部に設けられたオリフィス部2bよりも先端側はほぼ同じ径で形成されている。そして、本体部30のオリフィス部2bよりも先端側に外周面から流路2に貫通する第1貫通孔33が設けられ、オリフィス部2bよりも後端側に外周面から流路2に貫通する第2貫通孔34が設けられている。第1貫通孔33は本体部30の径方向から見て円形、第2貫通孔34は本体部30の径方向から見て矩形に形成されており、両貫通孔33、34は、本体部30の軸方向で重なる位置に、それぞれ一対が流路2を挟んで対向するように設けられている。なお、本体部30の外周の両貫通孔33、34の開口付近はその開口よりも大きく切り欠かれ、空気や液体が本体部30の外側から各貫通孔33、34に流れ込みやすくなっている。
【0031】
本体部30の第1貫通孔33と第2貫通孔34の間の外周には環状凸部35が設けられており、その環状凸部35は各貫通孔33、34とほぼ同じ周方向位置に2対の切欠き部36が形成されている。この環状凸部35の切欠き部36は、後述するように主として第2貫通孔34の外側から第1貫通孔33の外側へ液体を流す通路となっている。
【0032】
本体部30の第2貫通孔34よりも後端側の外周面には作動筒7とねじ結合するおねじ37が設けられ、おねじ37よりも後端側の外周面に、Oリング13を組み込むための第1環状溝38と、後述するように前記スライドピン9と係合する第2環状溝39が設けられている。
【0033】
さらに、本体部30の後端部外周には、連結キャップ5を係止するためのフランジ40が設けられ、フランジ40よりも後端側に一対の回り止め用凸部41が設けられている。
【0034】
前記連結キャップ5は、その先端側内周に内フランジ5aを有している。そして、図示は省略するが、ノズル本体1の回り止め用凸部41を導液管Pの切欠きに嵌め込んだ状態で、導液管Pのおねじとねじ結合することにより、内フランジ5aでノズル本体1のフランジ40を締め付けて、ノズル本体1を導液管Pに接続するようになっている。
【0035】
また、前記ロックキャップ6は、連結キャップ5の後端側に相対的に軸心まわりに回動不能かつ軸方向移動不能に装着され、上記のように連結キャップ5でノズル本体1を導液管Pに接続したときに、連結キャップ5を緩み止めするものである。
【0036】
前記作動筒7は、その後端側の内周面に設けられためねじ7aがノズル本体1の外周面のおねじ37とねじ結合して、ノズル本体1に対して軸心まわりに回動可能に取り付けられている。ここで、ノズル本体1は後端部を導液管Pに軸心まわりに回動不能に接続されているので、作動筒7は回動するときには同時に軸方向にも移動することになる。
【0037】
また、この作動筒7は、外周面が先端側から後端側へ三段階で大径となるように形成されており、その先端小径部と中間部の外周に、回動操作をしやすくするための羽根7bが軸方向に延びる状態で複数設けられている。
【0038】
そして、作動筒7の内周面は、めねじ7aの部分を除いてノズル本体1の外周面とわずかな径方向隙間をおいて対向している。これにより、ノズル本体1の外周面と作動筒7の内周面の間には、作動筒7の先端側から軸方向に沿って延び、外部とノズル本体1の第1貫通孔33および第2貫通孔34とを連通させる連通路42が形成されている。この連通路42は、第1貫通孔33よりも先端側および第1貫通孔33と第2貫通孔34の間でそれぞれ屈曲しており、その屈曲部42a、42bに第1弾性シール部材としてのOリング14と第2弾性シール部材としてのOリング15がそれぞれ設けられている。
【0039】
第1弾性シール部材としてのOリング14は、作動筒7が軸方向の所定位置よりも先端側にあるときには連通路42を閉じ、作動筒7がその所定位置よりも後端側にあるときには連通路42を開放するように組み込まれている。一方、第2弾性シール部材としてのOリング15は、作動筒7が上記の所定位置よりも先端側にあるときには連通路42を開放し、作動筒7がその所定位置よりも後端側にあるときには連通路42を閉じるように組み込まれている。また、作動筒7のめねじ7aよりも後端側の内周面とノズル本体1の外周面との間は、作動筒7の軸方向位置によらず、ノズル本体1の第1環状溝38に組み込まれたOリング13によって常にシールされている。
【0040】
また、作動筒7の後端大径部には、前記スライドピン9の一対のアーム9aがそれぞれ挿入される2つの横孔7cが設けられ、その2つの横孔7cのアーム挿入側の開口どうしの間に周方向溝7dが設けられている。そして、作動筒7をノズル本体1に取り付けて、スライドピン9の各アーム9aを横孔7cに挿入すると、そのアーム9aの中央部がノズル本体1の第2環状溝39に部分的に入り込むようになっている。このとき、スライドピン9は、アーム9aどうしを繋いでいるアーム連結部9bが作動筒7の周方向溝7dに嵌まり込むと同時に、各アーム9aの先端に設けられた爪9cが横孔7cの挿入側と反対側の周縁に係合する。これにより、作動筒7は、ノズル本体1に対する軸方向移動が、スライドピン9のアーム9aとノズル本体1の第2環状溝39の側面との軸方向隙間の範囲内に規制されるようになる。すなわち、ノズル本体1の第2環状溝39と作動筒7に嵌め込まれたスライドピン9とによって、作動筒7の先端側および後端側への軸方向移動を規制する規制部が形成されている。
【0041】
この噴霧ノズル10は、上記の構成であり、作動筒7を一方向に回動させながら軸方向の所定位置よりも後端側へ移動させて、連通路42を第1貫通孔33よりも先端側で開放するとともに、第1貫通孔33と第2貫通孔34の間の屈曲部42bで閉じた状態(
図3、
図4に示す状態)とすると、ノズル本体1の後端側から流路2に供給された液体が、オリフィス部2bを通過した後、外部から連通路42および第1貫通孔33を通って流路2に導入された空気と混合され、中子8を通過して噴板3の噴口3bから噴射される。そして、噴口3bから噴出された液体が、噴板3の膨出部3aの長手方向に薄く、その方向と直交する平面に沿って扇形に広がる扁平な噴霧パターンを形成する。このときには、噴霧粒径が大きく、噴霧量の少ない噴霧態様が得られる。
【0042】
一方、作動筒7を逆方向に回動させながら上記の所定位置よりも先端側へ移動させて、連通路42を第1貫通孔33よりも先端側の屈曲部42aで閉じるとともに、第1貫通孔33と第2貫通孔34の間で開放した状態(
図5に示す状態)とすると、ノズル本体1の後端側から流路2に供給された液体は、オリフィス部2bを通過したものと、第2貫通孔34、連通路42および第1貫通孔33を順に通って再び流路2に導入されたものとが合流するようになる。このとき、第2貫通孔34から連通路42に流出した液体は、本体部30の環状凸部35の外周と作動筒7内周の間も通るが、主として環状凸部35の切欠き部36を通って第1貫通孔33へ流れ込んでいく。そして、オリフィス部2bの出口近傍で合流した液体が、空気と混合されることなく、中子8を通過して噴板3の噴口3bから噴射され、扇形の扁平な噴霧パターンを形成する。このときには、噴霧粒径が小さく、噴霧量の多い噴霧態様が得られる。
【0043】
すなわち、この噴霧ノズル10は、作動筒7を回動させることより、空気を混入した液体を少量散布する状態と、空気非混入の液体を多量散布する状態とを容易に切り替えることができる。しかも、オリフィス部2bを含むノズル本体1が液体供給源のブームBの導液管Pに固定され、作動筒7がノズル本体1に対して回動しながら軸方向移動するようになっているので、従来の操作用カバーの回動によりオリフィス板を組み込んだ部材を軸方向移動させて噴霧量を切り替えるものに比べて、構造が簡単で、主要な部品の点数が少なく、組み立ても容易である。
【0044】
また、作動筒7を先端側へ移動させて液体を多量散布する際には、Oリング14が第2貫通孔34から連通路42に流れ込んだ液体の圧力を受けて弾性変形し、第1貫通孔33よりも先端側で連通路42を確実にシールするので、連通路42から外部への液体の漏出を防止することができる。一方、作動筒7を後端側へ移動させて液体を少量散布する際は、Oリング15が第2貫通孔34から連通路42に流れ込んだ液体の圧力を受けて弾性変形し、第1貫通孔33よりも後端側で連通路42を確実にシールするので、液体が連通路42から第1貫通孔33を通って流路2に導入されることを防止でき、噴霧量を適量に抑えることができる。
【0045】
そして、ノズル本体1と作動筒7の間に、作動筒7の先端側および後端側への軸方向移動を規制する規制部が設けられているので、噴霧量の切り替え時に作動筒7を必要以上に回動させることがなく、切替操作がしやすい。さらに、ノズル本体1が導液管Pに対して周方向に固定された状態で接続されているので、作動筒7を回動させてもノズル本体1の共回りが生じるおそれがなく、液体の散布方向が一定しているという利点もある。
【0046】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0047】
例えば、作動筒の軸方向移動を規制する規制部は、実施形態のようなスライドピンを用いる代わりに、作動筒に対して径方向にねじ込んだネジの作動筒内周からの突出部をノズル本体の第2環状溝に挿入するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ノズル本体
2 流路
2b オリフィス部
3 噴板
3b 噴口
4 先端キャップ
5 連結キャップ
6 ロックキャップ
7 作動筒
7a めねじ
8 中子
9 スライドピン
10 噴霧ノズル
14 Oリング(第1弾性シール部材)
15 Oリング(第2弾性シール部材)
20 先端取付部
30 本体部
33 第1貫通孔
34 第2貫通孔
37 おねじ
42 連通路
42a、42b 屈曲部
B ブーム
P 導液管