(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】排煙改質器およびこれを備えた排煙処理装置
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240718BHJP
B01F 23/10 20220101ALI20240718BHJP
B01F 27/1121 20220101ALI20240718BHJP
B01F 27/191 20220101ALI20240718BHJP
B01F 27/70 20220101ALI20240718BHJP
B01F 27/171 20220101ALI20240718BHJP
F24C 15/20 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
F24F13/02 Z
B01F23/10
B01F27/1121
B01F27/191
B01F27/70
B01F27/171
F24C15/20 Z
(21)【出願番号】P 2023004835
(22)【出願日】2023-01-17
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】598177016
【氏名又は名称】株式会社野田ハッピー
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】珍田 米夫
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-115612(JP,A)
【文献】特開平06-074508(JP,A)
【文献】登録実用新案第3155876(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
B01F 23/10
B01F 27/1121
B01F 27/191
B01F 27/70
B01F 27/171
F24C 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排煙が流れる筒状のケーシングと、当該ケーシング内を横断するように位置する風車状の回転部材とを備え、
前記回転部材は、モーターと、当該モーターの回転軸に設けられたハブと、当該ハブから放射状に伸び
て前記ケーシング内を流れる排煙中のオイルミストと衝突してその粒子径を小さくすべく丸棒状をした複数本のロッド
とからなることを特徴とする排煙改質器。
【請求項2】
請求項1に記載の排煙改質器において、
前記回転部材は、前記ハブの軸方向前端に位置する第1ロッド群と、前記ハブの軸方向後端に位置する第2ロッド群とを有することを特徴とする排煙改質器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排煙改質器において、
前記各ロッドの表面に螺旋状の溝を形成したことを特徴とする排煙改質器。
【請求項4】
排気ダクトに、前記請求項1乃至3のいずれかに記載の排煙改質器と、電気集塵機と、送風機と、消臭器とをその排煙の流れ方向上流側から順に備えたことを特徴とする排煙処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レストランの厨房や焼き肉店、焼き鳥店などから出る大量のオイルミストを含んだ排煙を効率的に処理するための排煙改質器およびこれを備えた排煙処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、レストランの厨房や焼き肉、焼き鳥店で発生する煙のなかには多くの油分(オイルミスト)が含まれていることから、これが流れる排気ダクトにはその油分を分離除去するためのフィルターや油分離器が必要となってくる。従来、排煙中の油を分離するためのフィルターとしては金属メッシュを用いた金属製のものの他に、例えば以下の特許文献1に示すような不織布を用いたものなどが多く用いられている。
【0003】
一方、フィルター以外の油分離器としては、例えば邪魔板方式や以下の特許文献2に示すように反転バッフル方式のものや螺旋羽根で構成された螺旋通路を備えたものなどが用いられている。さらに、以下の特許文献3や4には、回転軸の周囲に複数の羽根を設けた風車状のものを排気ダクト内に1つ以上配置し、これを回転させることでその排気ダクトを流れる排煙中のオイルミストを捕捉して遠心分離するようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-24433号公報
【文献】特開昭60-34713号公報
【文献】特開2002-239323号公報
【文献】特開2012-120947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のフィルター方式では、フィルターで分離した油が溜まるとフィルターが目詰まりを起こしてしまうことから、頻繁に清掃や交換しなければならないといった煩わしさがある。一方、邪魔板や遠心分離を用いた油分離器では、排煙中から分離した油がその邪魔板や風車の表面、排気ダクトの内側にべったりと付着してしまうため、その箇所を分解した大がかりな清掃作業を定期的に行わなければならないといった不都合がある。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その主な目的は、油分を多く含む排煙を効率的に処理できると共に、排気ダクトの清掃作業等の頻度を大幅に削減できる新規な排煙改質器およびこれを備えた排煙処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために第1の発明は、排煙が流れる筒状のケーシングと、当該ケーシング内を横断するように位置する風車状の回転部材とを備え、前記回転部材は、モーターと、当該モーターの回転軸に設けられたハブと、当該ハブから放射状に伸びる複数本のロッドからなることを特徴とする排煙改質器である。
【0008】
このような構成によれば、店内または厨房から発生する霧状の油分(オイルミスト)を含んだ排煙を排気ダクトからケーシング内に流す際に、そのケーシング内の回転部材を高速で回転させると、その複数のロッドが排煙中のオイルミストとが激しく衝突することでこれがさらに細かく分解されてその粒子径がミスト状からガス状に改質される。これによって、そのオイルミストがケーシングの内壁や回転部材の表面に付着することなく、そのまま排ガスと共に下流側に流されて大気中に放出されるため、排気ダクトの内壁などに付着することがなくなってその清掃作業等の頻度を大幅に削減できる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記回転部材は、前記ハブの軸方向前端に位置する第1ロッド群と、前記ハブの軸方向後端に位置する第2ロッド群とを有することを特徴とする排煙改質器である。このような構成によれば、排煙中のオイルミストがより多く各ロッドと衝突するため、ミスト状からガス状への改質が促進される。
【0010】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記各ロッドの表面に螺旋状の溝を形成したことを特徴とする排煙改質器である。このような構成によれば、ロッド表面に凹凸が形成されるため、ロッドの回転方向後側に発生するカルマン渦、すなわち空気抵抗が減って少ない駆動力でもロッドが高速で回転する。これによってロッドとオイルミストとの衝撃力および接触面積が大きくなるため、ガス状への改質が促進される。また、空気抵抗による回転部材の騒音も抑えることができる。
【0011】
第4の発明は、排気ダクトに、前記第1乃至3のいずれかに記載の排煙改質器と、電気集塵機と、送風機と、消臭器とをその排煙の流れ方向上流側から順に備えたことを特徴とする排煙処理装置である。このような構成によれば、フライヤーを有するレストランや焼き肉店、焼き鳥店などから出る大量のオイルミストを含む排煙であっても排気ダクトに付着する油の量を大幅に減少できるだけでなく、その排煙中に含まれる煤塵や臭い成分も除去できるため、効果的に処理することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、霧状の油分(オイルミスト)を含んだ排煙中のオイルミストが細かく分解されてガス状に改質されるため、そのオイルミストがケーシングの内壁や回転部材の表面に付着することなく、そのまま排ガスと共に下流側に流され、大気中に放出される。これによって、油分が排気ダクトの内壁などに付着することがなくなるため、排気ダクトの清掃作業等の頻度を大幅に削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る排煙改質器100の実施の一形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明に係る排煙改質器100の実施の一形態を示す正面図である。
【
図6】オイルミストの改質状況を示す概念図である。
【
図7】本発明に係る排煙処理装置200の実施の一形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図6は本発明に係る排煙改質器100の実施の一形態を示したものであり、
図7はこの排煙改質器100を組み込んだ排煙処理装置200の実施の一形態を示したものである。まず、
図7に示すようにこの排煙改質器100は、店内や厨房から延びる排気ダクトDに設けられた排煙処理装置200の一部を構成している。
【0015】
すなわちこの排煙処理装置200は、本発明に係る排煙改質器100と、電気集塵機300と、送風機400と、消臭器500とをその排煙(室内煙)の流れ方向上流側から順に繋げた構成となっている。この排煙改質器100の構造および作用は後に詳述するが、主に排煙中に含まれるオイルミストを改質して電気集塵機300に送るようになっている。電気集塵機300は、排煙中に含まれる煤塵などの各種ダストの微粒子に電荷を与え、集塵極に引き寄せることで捕集するようになっている。
【0016】
送風機400は、店内や厨房で発生した煙をその室内空気と共に排気ダクトD内に吸引して外に放出するものであり、例えばモーターで駆動するシロッコファンなどから構成されている。消臭器500は、排煙中の臭い成分を吸着または分解して消臭するものであり、例えば多孔質板に活性炭や空気触媒などを担持させた脱臭フィルターを多層に積層して構成されている。
【0017】
従って、この排煙処理装置200によれば、
図7に示すように店内や厨房などで発生した室内煙は、室内の空気と共に送風機400による吸引力によって排気ダクトD内に吸い込まれた後、まず、排煙改質器100を通過することで含まれているオイルミストが改質され、その後、電気集塵機300を通過することで煤塵などの各種ダストの微粒子が除去されて無色・透明の排ガスに清浄化される。そして、この電気集塵機300を出た排ガスは、チャンバー410、送風機400を順に通過して消臭器500に送られ、ここで臭い成分が除去または分解された後、無色・無臭のガスとなって大気中に放出されることになる。
【0018】
この排煙改質器100は、
図1乃至
図3に示すように筒状のケーシング110と、このケーシング110内を横断するように位置する風車状の回転部材120とから構成されている。このケーシング110は、両端が開口しており、その一方が排気ダクトDと連通する排煙入口111、他方が電気集塵機300と連通する排煙出口112となっている。そして、この排煙入口111の周縁には環状のフランジ113が設けられており、
図3に示すようにこのフランジ113を挟むようにして排気ダクトDが電気集塵機300の入口に連結されることでこの排気ダクトD内を横断するように設けられている。
【0019】
回転部材120は、モーター121と、このモーター121の回転軸122に設けられたハブ123と、このハブ123から放射状に伸びる複数のロッドRから構成されている。そして、この回転部材120は、さらに
図4に示すようにハブ123の軸方向前端(排煙出口112側)に設けられた第1ロッド群R1と、このハブ123の軸方向後端(排煙入口111側)に設けられた第2ロッド群R2を有している。
【0020】
このロッド群R1、R2を構成する各ロッドRは、例えばステンレススチールのような高強度・高耐食性の金属棒(丸棒)から構成されており、そのサイズは例えば直径1~1.5mm、長さ100~200mm程度になっている。そして、各ロッド群R1ごとに約100本づつほぼ同角度で合計約200本、ハブ123にそれぞれ放射状に取り付けられている。また、図示するようにこれら各ロッドRの表面には、螺旋状の溝gがそれぞれ形成されている。
【0021】
図5は、このハブ123を分解した拡大断面図である。このハブ123は、モーター121の回転軸122が連結される円板状のハブ本体12aと、そのハブ本体12aの両面にそれぞれボルトBで取り付けられる一対の固定板12b、12bとから構成されており、ハブ本体12aの両面縁部に沿って形成された複数の取付溝12cにそれぞれロッドRの根元部分を嵌め込んでから各固定板12b、12bを取り付けることで各ロッドRをハブ本体12aを中心として放射状に取り付けて固定できるようになっている。なお、このロッドRの根元部分はL字状に屈曲しており、取付溝12cの穴内にその先端を挿入するように嵌め込むことでひっぱり力や遠心力が加わっても各ロッドRがハブ本体12aから抜け落ちたりしないようになっている。
【0022】
このような構成をした本発明の排煙改質器100は、
図5に示すように店内または厨房から発生する霧状の油分(オイルミスト)を含んだ室内煙を排気ダクトDからケーシング110内に流す際に、そのケーシング110内の回転部材120をモーター121によって高速で回転させることでその機能を発揮する。すなわち、回転部材120を高速で回転させると、その複数のロッドRが排煙中のオイルミストと激しく衝突することで
図6に示すようにこれがさらに細かく分解されてその粒子径がミスト状からガス状に改質される。
【0023】
店内や厨房で発生するオイルミストの粒子径は、その発生源などによってまちまちであるが、一般におおよそ0.1~10μmのものが殆どである。このうち、特に粒子径が4μm以上の大きいものは慣性力や重力の影響を受けやすいため、排ガスの流れから分離して排気ダクトの内壁などに衝突して付着することが知られている。この現象を利用したのが従来の邪魔板方式や反転バッフル方式を用いた油分離器である。
【0024】
このような現象を鑑みて本発明の排煙改質器100は、
図6に示すようにオイルミストを含む排煙中で多数のロッドRを有する風車状の回転部材120を高速回転させることでオイルミストの粒子径を0.1μm以下に細かく分解するようにしたものである。これによって粒子径の大きいミスト状の油分がガス状までその粒子径が小さくなって排ガスの流れに沿って流れ易くなるため、排気ダクトDの内壁などに付着する油の量を大幅に減少することができる。そして、この排煙改質器100の下流側に流れたガス状の油分はそのまま電気集塵機300や送風機400、消臭器500などに殆ど付着することなく、排ガスと共に大気中に放出される。
【0025】
この結果、排気ダクトDへ付着する油の量が大幅に減るため、それらの清掃作業などの頻度を大幅に削減できる。なお、この風車状の回転部材120などは特に限定するものでなく、また発生するオイルミストの量などによって異なってくるが、多数の実証実験の結果、焼き肉店や焼き鳥店で発生する煙の場合は、約1000~2000rpmの範囲で良好な改質結果が得られた。
【0026】
また、各ロッドRの表面に螺旋状の溝gを形成したことからロッドR表面全体に亘って凹凸が形成される。この結果、ロッドRの回転(移動)方向後側に発生する特殊な空気の流れ、すなわちカルマン渦の発生によって空気抵抗が減るため、少ない駆動力でもロッドRが高速で回転する。これによって、ロッドRとオイルミストとの衝突力および接触面積が大きくなるため、オイルミストがより細かく粉砕されてガス状への改質が促進される。また、空気抵抗が減ることによって回転部材120の騒音(風切り音)も抑えることができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、回転部材のハブ123の軸方向前後端にそれぞれ第1ロッド群R1と、第2ロッド群R2を設け、ガスの流れ方向前後2回に亘って多段にオイルミストを粉砕するようにしているが、このロッド群をさらに増やし、3回以上に亘ってオイルミストを粉砕するようにすれば、より顕著な改質効果が得られる。また、第1ロッド群R1と第2ロッド群R2の各ロッドRを排煙の流れ方向にオフセットさせることでより効率よく改質することができる。
【符号の説明】
【0028】
100…排煙改質器
110…ケーシング
111…排煙入口
112…排煙出口
120…回転部材
123…ハブ
12a…ハブ本体
12b…固定板
12c…取付溝
200…排煙処理装置
300…電気集塵機
400…送風機
500…消臭器
D…排気ダクト
R…ロッド
R1…第1ロッド群
R2…第2ロッド群
g…溝