(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ガスシリンダへガスを充填するためのガス充填システム、取付用ハンドおよび移送用ハンド
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20240718BHJP
B25J 15/04 20060101ALI20240718BHJP
F17C 5/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
B25J15/06 A
B25J15/04 A
F17C5/00
(21)【出願番号】P 2023065371
(22)【出願日】2023-04-13
(62)【分割の表示】P 2018241208の分割
【原出願日】2018-12-25
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000109428
【氏名又は名称】日本エア・リキード合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 真貴
(72)【発明者】
【氏名】河原 英昭
(72)【発明者】
【氏名】廣地 憲明
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-131277(JP,A)
【文献】特開平7-208694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
F17C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダを移送するためのロボットハンドであって、
前記シリンダの長手方向に対応する長さを有する支持本体と、
前記支持本体の長手方向と直交する方向に延設される1または2以上の吸着パッドと、
前記支持本体の長手方向と直交する方向で、かつ前記吸着パッドが延設される同じ方向に延設される少なくとも1または2以上の側面支持部と、
前記支持本体の頂部に設けられ、前記シリンダのバルブの開閉を行うためのバルブ操作部と、
を有する、移送用ハンド。
【請求項2】
前記支持本体は、その下部に、前記シリンダの底部を支持するための底支持部と、前記底支持部をその待機位置から持ち上げるための支持位置まで移動するための第一アクチュエータとを有する、請求項1に記載の移送用ハンド。
【請求項3】
前記移送用ハンドが、ロボットの先端アームに着脱可能に連結される、請求項
1または2に記載の移送用ハンド。
【請求項4】
シリンダのバルブ口金に、ガス充填用のコネクタを取り付けるためのロボットハンドであって、
ハンド本体と、
前記ハンド本体に取り付けられ、ロボットの先端アームの連結部と着脱可能に連結されるアダプタと、
前記ハンド本体に取り付けられるガス充填用のコネクタと、
を有する、取付用ハンド。
【請求項5】
シリンダを移送する第一ロボットと、
ガス充填エリアにおいて、前記シリンダを固定する少なくとも一つの固定部と、
前記シリンダのバルブ口金に、ガス充填用のコネクタを取り付けるための第二ロボットと、
を有するガス充填システムであって、
前記第一ロボットは、少なくとも先端アームを有し、当該先端アームと前記請求項
1から3のいずれか1項に記載の移送用ハンドとが連結される、ガス充填システム。
【請求項6】
前記第二ロボットは、少なくとも先端アームを有し、
前記先端アームと前記請求項
4に記載の取付用ハンドとが、前記連結部と前記アダプタを介して着脱可能に連結される、または、
前記先端アームと、ガス充填用のコネクタを把持可能な把持用ハンドが連結される、請求項
5に記載のガス充填システム。
【請求項7】
シリンダを移送する第一ロボットと、
ガス充填エリアにおいて、前記シリンダを固定する少なくとも一つの固定部と、
を有するガス充填システムであって、
前記第一ロボットは、少なくとも先端アームを有し、
前記先端アームと前記請求項
1から3のいずれか1項に記載の移送用ハンドとが着脱可能に連結され、および、
前記先端アームと前記請求項
4に記載の取付用ハンドとが、前記連結部と前記アダプタを介して着脱可能に連結される、ガス充填システム。
【請求項8】
前記シリンダの重量を計量する載置式の計量部、および/または、前記シリンダ内のガス圧またはシリンダに送るガス圧を測定する圧力測定部を有する、請求項
5から7のいずれか1項に記載のガス充填システム。
【請求項9】
前記シリンダの長手方向の長さに応じて、前記吸着パッドにおける当該シリンダへの吸着を制御する吸着制御部を有する、請求項
5から8のいずれか1項に記載のガス充填システム。
【請求項10】
前記計量部の上に載置され、前記シリンダの底と接触する接触部と、前記シリンダの底部を支持するための底支持部が挿入されかつ上方向に前記シリンダを持ち上げるための開口部とを有する計量治具をさらに有する、請求項
8に記載のガス充填システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスシリンダ(ガスボンベとも称される)へガス(例えば、液化ガス)を充填するためのガス充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガスシリンダへのガス充填は手動で行うことが多い。例えば、作業者は、複数の空のシリンダをシリンダ台車などでガス充填エリアに運び、ガス充填装置にガスシリンダをセットしてガス充填を行う。その後、ガスが充填されたガスシリンダをガス充填エリアから出荷エリアに運び、配送車に積み込む。配送車で搬送されたガスシリンダは、使用された後に再びガス充填工場に戻る。
【0003】
特許文献1は、シリンダの長手方向に平行にアダプタが取り付けられているシリンダを横に寝かせて搬送させ、横に寝かせた状態で水平に持ち上げて固定させ、充填ヘッドをアダプタに挿入させてガス充填を行うシステムを開示している、
【0004】
また、特許文献2は、高圧ガス充填として、ボンベを供給工程によって充填ステーションにまでコンベアで移送し、ボンベを充填ステーションの中心部に設置するセンタリング工程を行ってから、ボンベを移送路より昇降杆で浮上する上昇工程を施し、次いでボンベを回転してそのバルブ口をガス供給器のノズルに対向するバルブ方向修正工程(H)を行い、そこでガス供給器のノズルをバルブ口に連結し、バルブの開放工程を行うが、その際にバルブを一旦完全に閉鎖してその高さを検出しておき、ガスを供給した後にバルブを前記閉鎖高さにまで締め付け、その後移送路へ降ろして排出側へ移送するシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許出願第2896870号公報
【文献】特開平5-172300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ガスシリンダへガスを充填する際に、作業の安全性、コストの観点から省人化あるいは無人化の要望がある。しかしながら、特許文献1、2のシステムは、大がかりな装置構成であり、広い設置スペースが必要となるため、望ましくない。
また、特許文献1は、ガス充填前にアダプタを取り付け、ガス充填後にそのアダプタを取り外す必要がある。
また、特許文献2では、コンベアによる移送を行うためボンベが倒れる危険性が懸念される。特に、液化ガスを充填した場合に、シリンダ表面に結露または霜が付くことで滑る危険がある。
【0007】
本発明は、従来よりも、ガスシリンダに対するガス充填を安全に行え、省人化および省スペースで行えるガス充填システムを提供することを目的とする。
また、シリンダの移送を確実に行えるロボット用ハンドを提供する。また、充填用コネクタをシリンダのバルブ口金に確実に取付けるためのロボット用ハンドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の移送用ハンドは、シリンダを移送するためのロボットハンドであって、
前記シリンダの長手方向に対応する長さを有する支持本体と、
前記支持本体の長手方向と直交する方向に延設される1または2以上の吸着パッドと、
前記支持本体の長手方向と直交する方向で、かつ前記吸着パッドが延設される同じ方向に延設される少なくとも1または2以上の側面支持部と、を有する。
前記支持本体は、その下部(最下部の側面支持部よりも下部)に、前記シリンダの底部を支持する(持ち上げる)ための底支持部と、前記底支持部をその待機位置から、持ち上げるための支持位置まで移動するための第一アクチュエータとを有していてもよい。「待機位置」は、底支持部の先端が、吸着パッドの先端よりも支持本体側に少なくとも配置される位置である(底支持部の先端が、吸着パッドの先端よりも突出していない状態である)。「支持位置」は、底支持部がシリンダの底を支持するように吸着パッドの先端よりも突出した配置である。
上記構成によれば、液化ガスを充填したシリンダ表面に結露または霜が付いたとしても、吸着パッドおよび底支持部で安全にシリンダを移送できる。
前記支持本体は、吸着パッドおよび側面支持部と、底支持部との前記長手方向における間隔を調整する第二アクチュエータを有していてもよい。シリンダを吸着させた状態で、第二アクチュエータを駆動させ(底支持部を下方へ離す方向に移動させ)その間隔を広げることで、底支持部をシリンダの底面に配置するためのスペースを確保できる。第二アクチュエータは、エアシリンダ、電動シリンダ、他のアクチュエータ、ボールねじ機構、ラックアンドピニオン機構などで構成されていてもよい。アクチュエータ制御部が第一および第二アクチュエータを制御する。
前記支持本体の頂部(前記底支持部と対向する位置)に(その長手方向と平行に突出するように)設けられ、前記シリンダの(バルブと噛み合って)バルブの開閉を行うためのバルブ操作部を有していてもよい。
前記バルブ操作部は、バルブの形状に少なくとも部分的に係合する形状を有する(弾性部材で構成される)係合部と、バルブを(上から)押圧するように付勢するための付勢機構(例えば、ばね機構)と、付勢機構と連動して係合部とバルブとの接触の有無(接触圧力が閾値を超えたか否か)を検知するセンサとを有していてもよい。センサの検知信号に応じて、第一ロボットの先端アームを回転(正回転または逆回転)させることで、バルブ操作部が回転し、バルブを開閉させる構成であってもよい。
バルブ操作部は、支持本体の長手方向に平行にエアシリンダ、電動シリンダなどのアクチュエータで伸縮する構成でもあってもよい。
上記構成によれば、第一ロボットで、バルブの開閉動作を行えるため、他のバルブ開閉機構が不要となる。第一ロボットは、パレタイジングとデパレタイジングを兼用し、さらにバルブ開閉動作も行うため、設備コストを抑えることができる。
前記移送用ハンドが、ロボットの先端アームに着脱可能に連結されてもよい。
【0009】
本発明の取付用ハンドは、シリンダのバルブ口金に、ガス充填用のコネクタを取り付けるためのロボットハンドであって、
ハンド本体と、前記ハンド本体に取り付けられ、ロボットの先端アームの連結部と着脱可能に連結されるアダプタと、前記ハンド本体に取り付けられるガス充填用のコネクタとを有する。
ガス充填用のコネクタは、例えば、充填口金、クイックコネクタ(例えば、STAUBLI社製、Quick release coupling)、ワンタッチ充填金具(ドイツWEH社製ワンタッチ充填金具)、ネジコミコネクタなどが挙げられる。
ハンド本体には、コネクタの他に、ガス配管、配管弁などが取付られていてもよい。
これにより、ガス充填の際に、第一または第二ロボットでコネクタをバルブ口金に接続し、先端アームからハンドを切り離すことで、ハンドをシリンダに置き去りにし、別のシリンダに対する動作(別のシリンダに対するガス充填モジュールの取り外し、その取り付けなど)を行える。
【0010】
本発明の第一のガス充填システムは、シリンダを移送する第一ロボットと、ガス充填エリアにおいて、前記シリンダを固定する少なくとも一つの固定部と、前記シリンダのバルブ口金に、ガス充填用のコネクタを取り付けるための第二ロボットと、を有するガス充填システムであって、
前記第一ロボットは、少なくとも先端アームを有し、当該先端アームと上記に記載の移送用ハンドとが連結される構成である。
前記第二ロボットは、少なくとも先端アームを有し、前記先端アームと上記に記載の取付用ハンドとが、前記連結部と前記アダプタを介して着脱可能に連結される、または、
前記先端アームと、ガス充填用のコネクタを把持可能な把持用ハンドが連結される。
挟持用ハンドは、例えば、多指の構造であってもよい。
【0011】
本発明の第二のガス充填システムは、シリンダを移送する第一ロボットと、ガス充填エリアにおいて、前記シリンダを固定する少なくとも一つの固定部と、を有するガス充填システムであって、
前記第一ロボットは、少なくとも先端アームを有し、
前記先端アームと、上記に記載の移送用ハンドとが着脱可能に連結され、および、前記先端アームと上記記載の取付用ハンドとが連結部とアダプタを介して着脱可能に連結される。
第二のガス充填システムは、第一ロボットが、シリンダの移送と、コネクタの取付・取外を兼用する構成である。
【0012】
上記各発明において、前記シリンダの重量を計量する載置式の計量部、および/または、前記シリンダ内のガス圧またはシリンダに送るガス圧を測定する圧力測定部を有することが好ましい。
CO2などの液化ガスは、重量を測定し、気体の高圧ガスは、圧力を測定することが好ましいため、ガスの種類に応じた装置構成を採用する。
前記計量部は、例えばロードセルで構成される。計量部で測定された信号は、ガス充填制御部へ送られ、ガス充填の開始、終了のタイミングに使用される。
前記圧力測定部は、ガスを流す充填ライン側に取り付けてもよく、充填口金などのコネクタ付近に設置されてもよい。
ガス充填制御部は、ガス充填の開始の際に遮断弁を開け、重量または圧力が所定値になったら遮断弁を閉じるように制御することで、ガスの充填を開始させおよび停止する。
前記計量部の上に載置され、前記シリンダの底と接触する接触部と、前記底支持部が挿入されかつ上方向に前記シリンダを持ち上げるための開口部とを有する計量治具をさらに有していてもよい。
【0013】
前記固定部は、シリンダの長手方向に沿って、シリンダ側面を2つの異なる方向または2つ以上の異なる方向から固定する。固定部は、シリンダの側面を対向する2方向から挟持する一対の挟持部を少なくとも1つまたは2つ以上有して構成されていてもよい。
前記固定部または挟持部は、その先端がシリンダの側面形状に対応する形状、例えば凹状であることが好ましい。固定部または挟持部は、少なくとも2点(2箇所)でシリンダの外面に接触する形状が好ましい。固定部または挟持部は、その先端の凹状が逆三角形に欠切されていてもよく、円弧に欠切されていてもよい。
前記固定部または挟持部は、例えば、エア式、電動式、油圧式などのアクチュエータ、ボールねじ機構のアクチュエータ、ラックアンドピニオン機構のアクチュエータなどで駆動され、待機位置から固定(把持)位置へ移動(圧接)する構成でもあってもよい。固定部制御部は固定部を駆動するアクチュエータを制御する。
【0014】
前記第一ロボットは、少なくとも一つのパレットが設置されるパレットエリアと、少なくとも一つのシリンダに対してガスを充填するためのガス充填エリアとの間でシリンダを移送してもよい。
計量充填装置は、前記シリンダの重量を計量する載置式の計量部と、前記計量部に直接または間接的に載置された前記シリンダを固定する少なくとも一つの固定部とを有し、1つまたは2つ以上が計量充填装置がガス充填エリアに載置されてもよい。
前記ガス充填システムは、所定の条件の場合に、前記シリンダの向きを変えるためのシリンダ仮置エリアを有していてもよい。シリンダ仮置エリアにおいて、第一ロボットは、シリンダのバルブ口金の向きを所定方向(吸着パッドと対向する方向)になるように、シリンダを吸着しなおす。
前記ガス充填システムは、前記充填口金を有するガス充填モジュールを2以上載置するモジュール置場を有していてもよい。このモジュール置場は、テーブルを有していてもよい。
【0015】
前記ガス充填システムは、前記シリンダの長手方向の長さに応じて、前記吸着パッドにおける当該シリンダへの吸着を制御する吸着制御部を有していてもよい。
前記吸着パッドおよび/または前記側面支持部は、前記シリンダの直径サイズに応じて、前記長手方向と直交する方向に移動可能に構成されていてもよい。
前記側面支持部は、その先端がシリンダの側面形状に対応する形状、例えば凹状であることが好ましい。側面支持部は、少なくとも2点(2箇所)でシリンダの外面に接触する形状が好ましい。側面支持部は、その先端の凹状が逆三角形に欠切されていてもよく、円弧に欠切されていてもよい。
前記吸着パッドは、シリンダの側面と接触し吸着する構成である。吸着パッドは、少なくとも一つの開口または複数の開口を有していてもよい。
前記吸着制御部は、シリンダの長手方向のサイズに応じて配置される吸着パッドの吸引動作の駆動を制御する。吸引動作は、吸引手段(例えば真空ポンプ、ブロワー)、弁の開閉などを制御することで実行されてもよい。
上記構成によれば、縦置きした際のシリンダの高さに合わせて、複数の吸着パッドと複数の側面支持部を設けることで、シリンダの移送の際の倒れ防止が可能となる。
【0016】
第一ロボットは、その先端アームに第一撮像部を有し、動作目的に応じて撮像し、撮像された画像を解析する第一画像処理部を有する。第一撮像部は、先端アームの軸方向(または吸着パッドの突設方向)と直交する方向に設けられることが好ましい。
【0017】
第二ロボットは、その先端アームに第二撮像部を有し、動作目的に応じて撮像し、撮像された画像を解析する第二画像処理部を有する。第二撮像部は、先端アームの軸方向と平行に設けられることが好ましい。
【0018】
第一ロボットと第二ロボットは、多軸の多関節ロボットであり、例えば、
設置面に垂直な軸(第1軸)周りに360°旋回可能な基部と、
前記設置面に対し平行な軸(第2軸)周りに可動可能に前記基部に連結される下アームと、
前記設置面に対し平行な軸(第3軸)周りに可動可能に前記下アームに連結される上アームと、
前記設置面に対し平行な軸(第4軸)周りに可動可能に前記上アームに連結される先端アーム(手首アーム)と、を有する。
前記上アームは、上アームの長手方向と平行な上アーム中心軸(第5軸)周りに360°旋回可能であってもよい。
前記上アームは、上アームの長手方向に伸縮する構造(シリンダ構造)であってもよい。
前記手首アームは、手首アームの長手方向(上アームとの連結部位から手首アームの先端部位に向かう方向)と平行な手首アーム中心軸(第6軸)周りに360°旋回可能であってもよい。
多関節ロボットの基部及び各アームの動作は、個別の制御部または主制御部によって制御されてもよい。
多関節ロボットは、6軸ロボット以外でもよく、例えば4軸、5軸などのロボットとして構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来よりも、ガスシリンダに対するガス充填を安全に行え、省人化および省スペースで行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態1のガス充填システムの平面図である。
【
図2A】第一ロボットの吸着パッドおよび底支持部の構成例を示す図である。
【
図2B】第一ロボットの吸着パッドおよび底支持部の構成例を示す図である。
【
図3B】一対の挟持部(固定部)の形状例を示す平面図である。
【
図4A】第二ロボットおよびガス充填モジュール置場の一例を示す図である。
【
図4B】先端アームからハンドを切り離した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0022】
(実施形態1)
実施形態1のガス充填システムについて、
図1を用いて説明する。第一ロボットR1を中心にして、パレットエリアPAと第二ロボットR2およびガス充填エリアGAが対向するように配置される。パレットエリアPAとガス充填エリアGAとの間におけるシリンダSの移送経路の途中に、シリンダ仮置エリアSAが配置される。ガス充填モジュール置場MAが、第二ロボットR2とガス充填エリアGAの間に配置される。ガス充填モジュール置場MAには充填口金を有するガス充填モジュールを2以上載置する。なお、各ロボット、各エリアは
図1の配置に限定されず、他の配置であってもよい。
【0023】
パレットエリアPAにパレットP1、P2、P3がそれぞれ配置される。各パレットは、位置決め用のサイド治具201、202によって、位置決めされている。
シリンダ仮置エリアSAには、シリンダの位置決め用のガイド203が設置される。
ガス充填エリアGAには、2つの計量充填装置300、400が配置される。各計量充填装置の本体にシリンダの一方側面を支持し位置決めするためのガイド204が設置される。
【0024】
図2Aに第一ロボットR1の先端アーム(他のアームは省略している)および支持本体110、吸着パッドなどを示す。
支持本体110は、シリンダSの長手方向(上下方向)に対応する長さを有する。支持本体110の長手方向に、所定の間隔をあけて、シリンダSの長手方向と直交する方向に、第一、第二、第三、第四吸着パッド111~114が設けられている。
各吸着パッドのシリンダSの長手方向の上下位置に、支持本体110からその長手方向と直交する方向(吸着パッドが延設された同じ方向)に第一、第二、第三、第四、第五側面支持部121~125が設けられている。
本実施形態において、
図2Cに示すように、各側面支持部(121)は、その先端(121a)が逆三角形に欠切されている。
各種のシリンダSは長手方向のサイズがそれぞれ異なる。そのため、吸着制御部(不図示)は、シリンダSの長手方向のサイズに応じて各吸着パッドの吸引動作の駆動を制御する。吸引動作は、吸引手段(例えば真空ポンプ、ブロワー)、弁の開閉などを制御することで実行できる。
また、各側面支持部121~125が、シリンダSの側面に当接することで、シリンダSを垂直に立てた状態を維持しながら吸引および移送を行える。
【0025】
図2Aにおいて、支持本体110は、その下部に、シリンダSの底部を支持する(持ち上げる)ための底支持部131を設けている。底支持部131は、その待機位置T0から支持位置T1まで移動させるための第一アクチュエータ132で駆動される。
図2Aでは底支持部131が待機位置T0にある。
図2Bでは、底支持部131が支持位置T1に配置され、シリンダSの底を支持する。底支持部131は、空のシリンダを移送させる際に使用してもよく、ガス充填後に使用してもよい。また、支持本体110は、第二アクチュエータ135を有していてもよく、この場合に、底支持部131を下方へ移動させることができる。下方へ移動させて、底支持部131を待機位置T0から支持位置T1へ突出させることができる。本実施形態において、底支持部131が3つの細長棒で構成さている。
【0026】
支持本体110の頂部にその長手方向と平行に突出するようにバルブ操作部140が設けられている。バルブ操作部140は、シリンダSのバルブ601と噛み合って、バルブ601の開閉を行う。バルブ操作部140は、バルブの形状に少なくとも部分的に係合する形状の係合部141を有する。なお、バルブ操作部140は、支持本体110の長手方向に向かってエアシリンダなどのアクチュエータ145で延びる構成でもあってもよい。
バルブ操作部140は、バルブを上から押圧するように付勢するための付勢機構(例えば、ばね機構、不図示)と、付勢機構と連動して係合部141とバルブとの接触の有無(接触圧力が閾値を超えたか否か)を検知するセンサ(不図示)とを有する。このセンサの検知信号に応じて、第一ロボットR1の先端アーム101を回転(正回転または逆回転)させることで、バルブ操作部140が回転し、バルブを開閉させることができる。
【0027】
第一ロボットR1は、その先端アームに第一撮像部(不図示)を有する。第一撮像部は、動作目的に応じて撮像し、第一画像処理部は、その撮像された画像を解析する。本実施形態において第一撮像部は、先端アームの軸方向と直交する方向に設けられる。
本実施形態において、第一画像処理部は、第一撮像部でシリンダ仮置エリアSAを撮像して得られたシリンダSの画像から、バルブ口金602の位置を画像解析で特定してもよい。また、第一画像処理部は、第一撮像部でパレットエリアPAまたはパレットP1~P3を撮像して得られた画像から、シリンダSまたはパレット(パレットの空きスペース)を画像解析で特定してもよい。また、第一画像処理部は、第一撮像部でガス充填エリアGAを撮像して得られた画像から、計量部330の位置、シリンダSまたはそのバルブ601の位置を画像解析で特定してもよい。
【0028】
図3Aに第一、第二計量充填装置300、400の一例を示す。以下において、第一計量充填装置300を説明するが第二計量充填装置400も同じ構成を有する。
第一計量充填装置300は、シリンダSの重量を計量する載置式の計量部330と、計量部330の上に置かれた計量治具340と、シリンダSを固定する一対の挟持部を複数組(固定部に相当する)有する。
計量部330で測定された信号は、ガス充填制御部(不図示)へ送られ、ガス充填の開始、終了のタイミングに使用される。
計量治具340は、シリンダSの底と接触する接触部と341、底支持部131が挿入されかつ上方向にシリンダSを持ち上げるための、上向きに開口した3つの開口部343、344、345を有する。底支持部131が3つの細長棒131a、131b、131cで構成されているのに対応して、開口部の形状、数が構成されている。
【0029】
本実施形態において、固定部は、シリンダSの側面を、互いに対向する2方向から挟持する一対の挟持部を3組有して構成されている。3組の一対の挟持部(311、321)、(312、322)、(313、323)は、支持脚310、320に配置される。各挟持部(311、321)は、シリンダSの側面に対して当接するために、
図3Bに示すように、その先端(311c、321c)が逆三角形に欠切された形状である。一対の挟持部(311、321)、(312、322)、(313、323)は、エアシリンダ311a、321a、312a、322a、313a、323aで駆動される。シリンダSの長手方向サイズに対応して、一対の挟持部が選択されて、固定部制御部(不図示)によって駆動される。
図3Aにおいて、短いシリンダの場合には、最下部の一対の挟持部(313、323)のみが駆動されている。長いシリンダの場合には、2組の一対の挟持部(311、321)、(313、323)が駆動されている。なお、3組すべての一対の挟持部が駆動されてもよい。
【0030】
図4Aに第二ロボットR2およびガス充填モジュール置場MAを示す。第二ロボットR2は、シリンダSのバルブ口金602に、ガス充填用の充填口金801を取り付ける。第二ロボットR2は、下アーム530、上アーム520、先端アーム510を有する。
先端アーム510は、ハンド515を着脱可能に連結する構造であり、先端アーム510の先端に連結部513を有し、ハンド515は当該連結部513と連結されるためのアダプタ516を有する(
図4B参照)。ハンド515は先端アーム510に対し360°回転可能である。ハンド515には、充填口金801、ガス配管802などが取付けられ、これらでガス充填モジュール800を構成する。ガス充填モジュール800としては、充填口金801、ガス配管802などの他に、配管弁(不図示)なども接続されていてもよい。
【0031】
本実施形態において、ガス充填の際に、第二ロボットR2で充填口金801をバルブ口金602に接続し、先端アーム510からハンド515を切り離すことで、ガス充填モジュール800およびハンド515をシリンダSに置き去りにする(
図4B参照)。
【0032】
ガス充填モジュール800は、バルブ口金602に外装される充填口金801と、バルブ口金602と充填口金801を密着状態にするためのチャッキング機構(不図示)を有していてもよい。また、ガス充填モジュール800は、バルブ口金602に螺合するねじ式充填口金で構成されていてもよい。
【0033】
図4Aに示すように、ガス充填モジュール置場MAの天面にガイド701、702が立設されており、2つのガス充填モジュール800がそのガイド701、702の上に載置できる構成である。
【0034】
第二ロボットR2は、その先端アーム510に第二撮像部550(例えば、3Dカメラ)を有する。第二撮像部550が動作目的に応じて撮像し、撮像された画像が第二画像処理部(不図示)で解析される。第二撮像部550は、先端アーム510の軸方向と平行に設けられている。
本実施形態において、第二画像処理部は、第二撮像部550でガス充填エリアを撮像して得られた画像から、シリンダSまたはバルブ口金602の位置、ハンド515のアダプタ516の位置などを画像解析で特定してもよい。また、第二画像処理部は、ガス充填モジュールの置場において第二撮像部550で撮像して得られた画像から、ガス充填モジュールのモジュール置場MAの位置またはハンド515のアダプタ516の位置を画像解析で特定してもよい。
【0035】
シリンダSのパレットP1からP3は、シリンダSを立てて配置するために、シリンダ高さに応じた所定高さの外枠を有するが、これに限定されない。
パレットP1からP3には、バルブ口金602が一定方向を向くようにシリンダSが載置されることが好ましい。「一定方向」とは、パレットエリアPAにおいて、バルブ口金602が反対方向となるように、吸着パッドで吸着されるシリンダSの側面を第一ロボットR1へ向かせる方向である。
安全柵は、第一、第二ロボットR1、R2の稼働範囲に応じて設置され、1または2以上のパレットエリアPAがその内部に配置される。パレットエリアPAへパレットが出入りするために安全柵にそのためのゲートが設けられてもよい。
パレットエリアPAでシリンダSを吸着しガス充填エリアGAへそのまま移送させてもバルブ口金602の方向が第二ロボットR2の方向を向いていない場合がある。このような場合に、第一ロボットR1は、シリンダ仮置エリアSAにシリンダSを移送させ、ここでバルブ口金602の向きを変える。そして、第一ロボットR1はシリンダSをガス充填エリアGAへ移送する。ただし、位置決め用のサイド治具やパレットの外枠があっても、パレットの端に位置するシリンダSの向きをそれに合わせて中央側に所定角度傾くようにした場合には、バルブ口金602の向きを変えなくてもよい場合もある。また、パレットの上のシリンダSのバルブ口金602の角度がそれぞれ一定でない場合に、シリンダ仮置エリアSAで全てのシリンダSに対してバルブ口金602の角度を所定角度となるように調整してもよい。
なお、別実施形態として、シリンダ仮置エリアSAでバルブ口金602の角度を調整することに限定されず、ガス充填エリアGAでバルブ口金602の角度を調整する機構を設けてもよい。かかる場合に、計量充填装置300、400または本システムが有する第三撮像部あるいは第二撮像部でシリンダSを撮像して得られた画像を解析し、バルブ口金602の位置を特定し、バルブ口金602が所定角度を向くように、シリンダSを乗せた計量部330を回転させてもよく、シリンダSを把持した状態で一対の把持部で把持させた状態で回転させる構成でもよい。
【0036】
(動作説明)
(S1)第一ロボットR1は、パレット上の移送すべきシリンダSを特定する。なお、第一、第二ロボットR1、R2は、画像認識を行い、また予め設定された動作規則に基づいて動作するようにプログラムされている。
(S2)第一ロボットR1は、各吸着パッドおよび各側面支持部をシリンダSの側面に当て吸着させる。
(S3-1)外枠の隣の位置のシリンダSの場合は、シリンダ仮置エリアSAへ移送し、第一ロボットR1は、シリンダSのバルブ口金602の向きを所定方向(吸着パッドと対向する方向)になるように、シリンダSを吸着しなおす。次いで、第一ロボットR1は、シリンダSをガス充填エリアGAへ移送し、計量部330の上(計量治具340)に載置する。
(S3-2)外枠の隣の位置のシリンダSではない場合は、第一ロボットR1は、シリンダSをガス充填エリアGAへ直接移送し、計量部330の上(計量治具340)に載置する。
(S4)固定部(一対の挟持部)によりシリンダSの側面を固定する。
(S5)第二ロボットR2は、シリンダSのバルブ口金602を特定し、連結されたガス充填モジュール800を移送して、バルブ口金602に充填口金801を取り付ける。
(S6)第二ロボットR2は、先端アーム510からハンド515を切り離し、次の動作(別のガス充填モジュールとの連結)へ移行する。
(S7)第一ロボットR1は、バルブ601にバルブ操作部140をセットし、バルブ601を開ける。すでにバルブ601が開状態である場合(例えばパレット上ですでに開けた状態のとき)にはこのステップは不要である。ただし、省人化と適切なガス充填をする上ではこのステップがある方が好ましい。
(S8)固定部(一対の挟持部)をシリンダSから離し、固定を解除する。なお、固定を解除せずに行ってもよい。
(S9)ガス充填を開始する。
(S10)計量部330の測定値が閾値を超えた場合に、ガス充填を停止する。
(S11)固定部(一対の挟持部)によりシリンダSの側面を固定する。
(S12)第一ロボットR1は、バルブ601にバルブ操作部140をセットし、バルブ601を閉じる。次いで、第一ロボットR1は、別の動作(別のシリンダのデパレタイジングまたはパレタイジング、待機など)に移行する。
(S13)第二ロボットR2は、先端アーム510にハンド515を連結し、ガス充填モジュール800をシリンダ(バルブ口金)から取り外し、次の動作(ガス充填モジュールをモジュール置場に置く、別のガス充填モジュールとの連結など)へ移行する。
(S14)第一ロボットR1は、底支持部131を待機位置T0から支持位置T1へ移動させて、治具340の開口部343、344、345に挿入し、次いで底支持部131をシリンダSの底に当てる。それと同じタイミングまたはそれと前後して、各吸着パッドおよび各側面支持部をシリンダSの側面に当て吸着させる。シリンダSを持ち上げてパレットへ移送する。第一ロボットR1は、シリンダSをパレットへ置く前に底支持部131を待機位置T0へ収納させる。
【0037】
ガス充填システムは、ガス充填(の開始、終了)を制御するガス充填制御部と、第一ロボットR1と、第二ロボットR2を制御する第一、第二ロボット制御部と、主制御部とを有していてもよい。主制御部が、各制御部を統括する制御部であってもよい。個々の制御部および主制御部は、例えば、専用回路、ファームウエア、または、プロセッサーとメモリなどのハードウエアと制御手順を規定するプログラムとの組み合わせ構成で実現されていてもよい。
【0038】
(別実施形態)
上記実施形態では、第一ロボットR1でシリンダの移送を行い、第二ロボットR2でバルブ口金にコネクタ(充填口金)を取付、取り外す構成であったが、これに制限されず、別実施形態として、第1ロボットがシリンダの移送およびバルブ口金にコネクタ(充填口金)を取付、取り外してもよい。第一ロボットの先端アームに、移送用ハンドおよび取付ハンドが着脱自在に連結される。例えば、ガス充填エリアにシリンダを移送後、所定場所で移送用ハンドを切り離し、取付用ハンドと連結する。取付用ハンドをシリンダのバルブ口金に取り付けた後で、取付用ハンドを切り離し、移送用ハンドと連結する。
また、別実施形態として、ガス充填用のコネクタとして、クイックコネクタ(例えば、STAUBLI社製、Quick release coupling)、ワンタッチ充填金具(ドイツWEH社製ワンタッチ充填金具)、ネジコミコネクタを用いることができる。
また別実施形態として、取付用ハンドの代わりに、ガス充填用のコネクタを把持可能な把持用ハンドを使用することができる。
また、パレットエリアに替わり、シリンダの置場が配置されていてもよい。
【図面の符号の説明】
【0039】
110 支持本体
111、112、113、114 吸着パッド
121、122、123、124、125 側面支持部
131 底支持部
140 バルブ操作部
141 係合部
300 第一計量充填装置
311、321 一対の挟持部
400 第二計量充填装置
510 先端アーム
513 連結部
515 ハンド
516 アダプタ
601 バルブ
602 バルブ口金
800 ガス充填モジュール
801 充填口金
P1、P2、P3 パレット
R1 第一ロボット
R2 第二ロボット
S シリンダ