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特許7522498配管計画支援システム、及び管路構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】配管計画支援システム、及び管路構築方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/18 20200101AFI20240718BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20240718BHJP
   G06F 111/20 20200101ALN20240718BHJP
   G06F 113/14 20200101ALN20240718BHJP
【FI】
G06F30/18
G06F30/12
G06F111:20
G06F113:14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023181815
(22)【出願日】2023-10-23
【審査請求日】2024-03-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523399902
【氏名又は名称】豊和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山元 英生
(72)【発明者】
【氏名】蛯澤 崇士
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-328550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0212967(US,A1)
【文献】特開平07-271832(JP,A)
【文献】特開平08-279003(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113434959(CN,A)
【文献】中国特許第109693058(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管と曲管を含む管体を接続して一連の管路を構築するための計画を支援するシステムであって、
前記直管をモデル化した直管モデルと、前記曲管をモデル化した曲管モデルと、を含む管体モデルを記憶するモデル記憶手段と、
前記モデル記憶手段に記憶された前記管体モデルの中から、オペレータ操作によって1の該管体モデルを選定するモデル選定手段と、
前記モデル選定手段によって選定された1の前記曲管モデルが他の前記管体モデルと接続する曲管接続部において、オペレータ操作によって該曲管モデルの接続角を変更することによって、該曲管モデルの姿勢を変更する曲管回転手段と、
前記管体モデルを3次元空間モデルに表示させる表示制御手段と、
前記曲管接続部において前記曲管モデルが他の前記管体モデルと接続する前記接続角を取得する接続角取得手段と、を備え、
前記接続角は、前記曲管モデルの断面中心を通る中心軸周りの回転角であり、
前記モデル記憶手段は、複数種類の前記直管モデルと、複数種類の前記曲管モデルと、を記憶し、
前記表示制御手段は、3次元空間モデルのうちオペレータが指定した位置に前記管体モデルを表示させ、
また前記表示制御手段は、前記曲管回転手段によって変更された姿勢で前記管体モデルを表示させ、
前記接続角取得手段は、前記曲管回転手段によって変更された姿勢の前記管体モデルに係る前記接続角を取得し、
前記モデル選定手段を用いて種々の管体仕様の前記曲管モデルを繰り返し選定するとともに、前記曲管回転手段を用いて前記曲管モデルに係る前記接続角を変更しながら、試行錯誤を繰り返したうえで一連の管路の完成形を決定することができる、
ことを特徴とする配管計画支援システム。
【請求項2】
前記管体モデルは、一端側に受け口が形成されるとともに他端側に挿し口が形成され、
連続して配置される前記管体モデルは、一方の前記管体モデルの前記挿し口が、他方の前記管体モデルの前記受け口に挿入されるように接続され、
前記曲管接続部では、前記管体モデルの前記受け口の外周テープ状の角度目盛が表示されるとともに、前記挿し口が形成された前記管体モデルに基準位置が表示され、
テープ状の前記角度目盛は、所定間隔の前記中心軸周りの角度が示され
前記基準位置は、前記挿し口の外周のうちあらかじめ定められた位置であり、
前記基準位置と前記角度目盛とを照らし合わせることによって、前記接続角を確認し得る、
ことを特徴とする請求項1記載の配管計画支援システム。
【請求項3】
前記管体モデルは、一端側に受け口が形成されるとともに他端側に挿し口が形成され、
連続して配置される前記管体モデルは、一方の前記管体モデルの前記挿し口が、他方の前記管体モデルの前記受け口に挿入されるように接続され、
前記曲管接続部では、前記管体モデルの前記挿し口の外周テープ状の角度目盛が表示されるとともに、前記受け口が形成された前記管体モデルに基準位置が表示され、
テープ状の前記角度目盛は、所定間隔の前記中心軸周りの角度が示され
前記基準位置は、前記受け口の外周のうちあらかじめ定められた位置であり、
前記基準位置と前記角度目盛とを照らし合わせることによって、前記接続角を確認し得る、
ことを特徴とする請求項1記載の配管計画支援システム。
【請求項4】
前記管体モデルは、一端側に受け口が形成されるとともに他端側に挿し口が形成され、
連続して配置される前記管体モデルは、一方の前記管体モデルの前記挿し口が、他方の前記管体モデルの前記受け口に挿入されるように接続され、
前記表示制御手段は、オペレータが表示された前記管体モデルを指定すると、前記モデル選定手段によって選定された1の前記管体モデルを、既に表示された該管体モデルと接続するように表示させる、
ことを特徴とする請求項1記載の配管計画支援システム。
【請求項5】
前記管体モデルの配管計画を出力する結果出力手段を、さらに備え、
前記結果出力手段は、前記管体モデルごとに、接続順、前記管体の仕様、及び前記曲管接続部に係る前記接続角を出力する、
ことを特徴とする請求項1記載の配管計画支援システム。
【請求項6】
請求項2又は請求項3記載の前記配管計画支援システムを利用して、前記管体を接続して一連の前記管路を構築する方法であって、
前記配管計画支援システムを用いて、配管計画を策定する計画工程と、
前記曲管接続部で接続される一方の前記管体の外周にテープ状の前記角度目盛を貼付するとともに、他方の前記管体の外周のうちあらかじめ定められた位置に前記基準位置を付す目盛表示工程と、
前記計画工程で策定された前記配管計画に基づいて前記管体を接続していく配管工程と、を備え、
前記配管計画には、前記配管計画支援システムを用いて出力された前記管体モデルごとの接続順、前記管体の仕様、及び前記曲管接続部に係る前記接続角が含まれ、
前記配管工程では、前記接続角、前記角度目盛、及び前記基準位置に基づいて前記曲管の前記接続角を変更することによって、該曲管モデルの姿勢を調整する、
ことを特徴とする管路構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、地中などに構築される管路に関する技術であり、より具体的には、曲管の姿勢に関する情報を取得することができる配管計画支援システムと、これを利用して管体を構築する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発電所では数千~数万ボルトの電気が生成されるが、電気抵抗によるロスを避けるため数十万ボルト程度の超高圧にしたうえで送電している。そして、超高圧変電所や一次変電所、二次変電所、配電用変電所などの各変電所で徐々に電圧を下げたうえで工場などに供給し、さらに柱上変圧器などで電圧を下げて家庭に供給している。いずれにしろ、発電所で生成された電気は、電線やケーブルなどを利用した送電線や配電線(以下、これらを総じて「送電線等」という。)を介して利用者に供給される。
【0003】
送電線等には、電力柱に架空される架空送電線等(架空送電線や架空配電線)や、地下に埋設される地中送電線等(地中送電線や地中配電線)があるが、現状では架空送電線等の方が圧倒的に多い。一方、近年では地中化が推進されており、例えば東京23区内では92.6%(2021年)まで地中化されている。とはいえ、全国的に見るとまだ地中化された区間は少なく(2割弱程度)、やはり電力柱に架線された送電線等が大部分を占めているのが現状である。また、都市部においては架空送電に必要な鉄塔を建てることが困難であることも地中化されている一つの要因でもある。
【0004】
架空送電線等が地中に埋設されると、都市景観が向上するだけでなく、電力柱が撤去される結果、歩道を広く使えることができベビーカーや車いすをより安全に利用することができるようになる。また、台風や地震といった災害時に、電力柱が倒れたり、架空送電線等が垂れ下がったりすることで道を塞ぐことを回避できるため、緊急車両等もスムーズに通行することができる。さらに、災害時などに架空送電線等が切断される危険性も軽減されることから、停電の発生も抑制され安定的に電気を利用することができる。
【0005】
通常、送電線等を埋設するには、歩道や車道が利用される。つまり、道路を掘削(通常は開削)して配管を設置し、その配管内に送電線等を収容するわけである。地中に埋設される管路(以下、「地中管路」という。)は、1本のみで構成されることもあるが、2列×2段(つまり4本1組)や3列×2段(つまり6本1組)など複数本を1組として構成されることが多い。
【0006】
ところで、地中(特に道路下)には水道管や下水管、情報ボックス、共同溝、人孔など様々な構造物が埋設されている。そのため新たに地中管路を構築するときは、これら既設の構造物をかわしながら配管しなければならない。例えば、地中管路が3列×2段で構成されるケースでは、図12に示すように地下構造物をかわすため部分的に6列×1段で配管するいわゆる「管くずし」が行われる。
【0007】
管くずしを行うには、管軸が直線状の管体(以下、単に「直管」という。)のみならず、管軸が曲線状の管体(以下、単に「曲管」という。)が利用され、現地では次のような手順で配管していた。すなわち、まずは見かけ上の平面線形と縦断線形から適用する曲管を暫定的に選定する。次いで、その曲管を仮に接続して回転しながら適切に配置できるか判断する。そして、これを何度か繰り返すことによって曲管の配置を決定するわけである。これら一連の作業は、相当の経験を有する技術者の技量や感覚に頼るところが大きく、すなわち地中管路を構築するには経験豊富な技術者が欠かせなかった。
【0008】
地中管路を構築するにあたっては、その配管計画が実施されることもある。このとき、上記した理由から平面線形のみならずいわば立体的な線形で計画する必要がある。そのため、近年では図13に示すような3次元CAD(Computer Aided Design)を利用して配管計画を実施することもあり、これに関する種々の技術も提案されている。例えば特許文献1では、複数の管体によって構成される配管パターンをいくつか準備し、この配管パターンを参照しながら配管計画を実施することができる技術について提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2007-328550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
既述したとおり、管くずしを含む地中管路の構築工事には経験豊富な技術者が必要である。しかしながら、このような技術者は限定的であり、そのうえ建設業における近年の慢性的な人手不足の問題もあって適時に適切な技術者を確保することは難しくなっている。それ故、事前に適切な配管計画を実施することが望ましい。適切な配管計画が得られると、経験豊富な技術者を確保することなく管くずしを含む地中管路の構築工事を実行することができるわけである。とはいえ、特許文献1をはじめとする従来の技術では、管くずしのような複雑な線形を計画することはできなかった。特に、3次元CADを利用し、ディスプレイを目視しながら曲管の姿勢(管軸方向)を決定することはできたとしても、その姿勢に関する情報を的確に現地に伝える技術は見られなかった。
【0011】
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、適切な配管計画を支援することができる配管計画支援システムと、これを利用した管体構築方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、3次元CADを利用するとともに、曲管モデルが他の管体と接続する角度を数値情報として取得する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われたものである。
【0013】
本願発明の配管計画支援システムは、管体(直管と曲管を含む)を接続して一連の管路を構築するための計画を支援するシステムであって、モデル記憶手段とモデル選定手段、曲管回転手段、表示制御手段、接続角取得手段を備えたものである。このうちモデル記憶手段は、直管をモデル化した「直管モデル」と曲管をモデル化した「曲管モデル」を含む「管体モデル」を記憶する手段である。またモデル選定手段は、モデル記憶手段に記憶された管体モデルの中からオペレータ操作によって1の管体モデルを選定する手段であり、曲管回転手段は、「曲管接続部(曲管モデルが他の管体モデルと接続する部分)」でオペレータ操作によって曲管モデルの姿勢を変更する手段である。表示制御手段は、管体モデルを3次元空間モデルに表示させる手段であり、接続角取得手段は、曲管接続部において「接続角(曲管モデルが他の管体モデルと接続する角度)」を取得する手段である。モデル記憶手段には、複数種類の直管モデルと複数種類の曲管モデルが記憶される。また表示制御手段は、3次元空間モデルのうちオペレータが指定した位置に管体モデルを表示させるとともに、曲管回転手段によって変更された姿勢で管体モデルを表示させる。なお接続角とは、曲管モデルの断面中心を通る「中心軸」の周りの回転角である。
【0014】
本願発明の配管計画支援システムは、受け口が形成された管体モデルに角度目盛が表示され、挿し口が形成された管体モデルに基準位置が表示されるものとすることできる。この場合の管体モデルは、一端側に受け口が形成されるとともに他端側に挿し口が形成され、 連続して配置される管体モデルは、一方の管体モデルの挿し口が他方の管体モデルの受け口に挿入されるように接続される。なお、角度目盛は中心軸周りの角度であり、受け口の外周に表示される。また基準位置は、挿し口の外周のうちあらかじめ定められた位置である。この場合、基準位置と角度目盛とを照らし合わせることによって接続角を確認することができる。
【0015】
本願発明の配管計画支援システムは、挿し口が形成された管体モデルに角度目盛が表示され、受け口が形成された管体モデルに基準位置が表示されるものとすることできる。
【0016】
本願発明の配管計画支援システムは、モデル選定手段によって選定された管体モデルの表示位置が自動的に定まるものとすることもできる。この場合の表示制御手段は、オペレータが表示された管体モデルを指定すると、選定された管体モデルが表示された管体モデルと接続するように表示させる。
【0017】
本願発明の配管計画支援システムは、結果出力手段をさらに備えたものとすることもできる。この結果出力手段は、管体モデルごとに、接続順と管体の仕様、曲管接続部に係る接続角を出力する手段である。
【0018】
本願発明の管路構築方法は、本願発明の配管計画支援システムを利用して一連の管路を構築する方法であって、計画工程と目盛表示工程、配管工程を備えた方法である。このうち計画工程では、配管計画支援システムを用いて配管計画を策定し、目盛表示工程では、曲管接続部で接続される一方の管体の外周に角度目盛を付すとともに他方の管体の外周に基準位置を付す。また配管工程では、計画工程で策定された配管計画に基づいて管体を接続していく。なお配管計画には、配管計画支援システムを用いて出力された管体モデルごとの接続順と管体の仕様、曲管接続部に係る接続角が含まれる。そして配管工程では、接続角と角度目盛、基準位置に基づいて曲管の姿勢を調整する。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の配管計画支援システム、及び管路構築方法には、次のような効果がある。
(1)建設業における近年の慢性的な人手不足のなか、経験豊富な技術者を確保することなく管路構築工事を実施することができる。
(2)管くずしを行う場合、最短距離での配管を計画することができ、その結果、工事にかかるコストを低減することができる。
(3)実際に使用する曲管が明確になることから、施工時に余分な曲管を用意する必要がない。
(4)施工現場で曲管の選定~配置といった試行錯誤の作業がなくなることから、作業時間を短縮することができる。
(5)3次元CADを利用することによってディスプレイを目視しながら配管計画を実施することができ、いわば直感的に配管状況を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は管体のうち直管を模式的に示す側面図、(b)は管体のうち曲管を模式的に示す側面図、(c)は管体のうち受け口を模式的に示す正面図、(d)は管体のうち挿し口を模式的に示す正面図。
図2】(a)は挿し口を受け口に差し込むことによって接続された3本の管体を模式的に示す平面図、(b)は曲管接続部における「基準位置」と「接続角」を模式的に示す断面図。
図3】本願発明の配管計画支援システムの主な構成を示すブロック図。
図4】(a)は表示手段上の直管モデルが指定された状態を模式的に示す画面図、(b)は直管モデルに接続された曲管モデルを模式的に示す画面図。
図5】(a)は「管くずし」の途中の段階の管体モデルが表示手段に表示された画面図、(b)は「管くずし」が完成した段階の管体モデルが表示手段に表示された画面図。
図6】(a)は回転前の曲管モデルが表示手段に表示された画面図、(b)は曲管回転手段によって回転された曲管モデルが表示手段に表示された画面図。
図7】基準位置が貼付された直管モデルと、角度目盛が貼付された曲管モデルを示す画面図。
図8】角度目盛の一例を模式的に示す平面。
図9】(a)は曲管モデルの挿し口側に基準位置が貼付されるとともに直管モデルの受け口側に角度目盛が貼付された状態を模式的に示すモデル図、(b)は曲管モデルの挿し口側に角度目盛が貼付されるとともに直管モデルの受け口側に基準位置が貼付された状態を模式的に示すモデル図。
図10】複数の管体レコードによって構成される配管計画を模式的に示すモデル図。
図11】本願発明の管路構築方法の主な工程の流れを示すフロー図。
図12】管くずしされた3列×3段の管路を示す斜視図。
図13】管路と既設の地下構造物をディスプレイに表示した画像図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明の配管計画支援システム、及び管路構築方法の実施形態の一例を図に基づいて説明する。なお本願発明は、地中に限らず様々な場所で管路を構築する際に利用することができるが、便宜上ここでは地中管路を構築する例で説明する。
【0022】
1.定義
本願発明の実施形態の例を説明するにあたって、はじめにここで用いる用語の定義を示しておく。
【0023】
(3次元空間モデル)
本願発明の配管計画支援システムは、いわゆる3次元CADを利用することができ、したがって3次元でモデル化した空間を表現することができる。ここでは、この空間のことを「3次元空間モデル」ということとする。例えば、地中管路を構築するために地盤を開削して形成された地下空間を、この3次元空間モデルとすることができる。3次元空間モデルは、当然ながら3軸(例えば、X軸-Y軸-Z軸)からなる座標系に置かれ、したがって3次元座標を有する点や線分(ポリライン)、面(ポリゴン)によって形成される。また3次元空間モデルには、地下地形のほか、水道管や下水管、情報ボックス、共同溝、人孔、土留め壁といった既設の地下構造物、あるいは計画されている地下構造物が含まれる。
【0024】
(管体)
地中管路は、例えばCPFP(Curtail Polyester Concrete Fiberglass Reinforced Plastic)製の管材を接続していくことで形成される。ここでは、CPFP管などの管材のことを「管体TM」ということとする。図1に示すように管体TMは、その一端側(図では左側)に「受け口SC」が設けられ、他端側(図では右側)が「挿し口IN」とされる。この受け口SCは、図1(c)に示すように断面が拡径されたいわゆるソケット(継手)であり、図1(d)に示す挿し口IN断面より大きな孔径を有している。これにより隣接する2本の管体TMは、図2(a)示すように一方(図では左側)の管体TMの挿し口INを他方(図では右側)の管体TMの受け口SCに差し込むことによって接続される。
【0025】
管体TMは、内部に円形孔が設けられた円筒形状であり、図2(a)に示すように円形孔(管断面)の中心を通る管軸(以下、単に「中心軸」という。)が形成される。そして管体TMには、図1(a)に示すように中心軸が直線である「直管TS」と、図1(b)に示すように中心軸が曲線(円弧)である「曲管TB」が含まれる。換言すれば、管体TMは直管TSと曲管TBの総称である。上記したとおり、管体TMは挿し口INを受け口SCに差し込むことによって接続される。便宜上ここでは、図2(a)に示すように管体TMどうしが接続される部分のことを「接続部」ということとし、曲管TBの挿し口INが他の管体TM(直管TSや曲管TB)の受け口SCに差し込まれた接続部のことを特に「曲管接続部」ということとする。
【0026】
(管体モデル)
管体TM(つまり、直管TSや曲管TB)は実際の管材を示し、したがって3次元CADでこれらを直接的に取り扱うことができない。そのため、これらをモデル化(いわば数値化)したデータを3次元CADで取り扱うことになる。便宜上ここでは、直管TSをモデル化したものを「直管モデル」と、同様に曲管TBをモデル化したものを「曲管モデル」ということとし、直管モデルと曲管モデルの総称として「管体モデル」ということとする。
【0027】
管体モデル(つまり、直管モデルや曲管モデル)は、3次元座標を有する点や線分(ポリライン)、面(ポリゴン)によって3次元の形状として形成される。また管体モデルは、直管と曲管の別を示す「管種」や「管径」、「曲率半径」、「管長」、「重量」といった管体TMの諸元(以下、「管体仕様」という。)を属性情報として備えることもできる。
【0028】
(基準位置と接続角)
図2(b)は、曲管接続部における「基準位置」と「接続角」を模式的に示す断面図である。「基準位置」は、管体TMの断面のうちあらかじめ定められた位置に設定される。例えば図2(b)では、時計で例えると「12時」の位置(つまり頂部)を基準位置として設定している。一方の「接続角」は、中心軸周りの回転角であって、基準位置を基準としたいわば中心角のことである。例えば図2(b)では、時計で例えると「12時~4時」の間を接続角として示している。この接続角は、受け口SCにおける中心軸の方向、つまり曲管TBを接続する際にどれだけ回転すべきかを示す値である。したがって、基準となる曲管TBの姿勢(以下、単に「基準姿勢」という。)をあらかじめ定めておくとよい。例えば、曲管TBの中心軸が鉛直面に収まり、かつ受け口SCが上方を向くときを「基準姿勢」とすることができる。この場合、接続角が+45°と定められた曲管TBは基準姿勢から時計回りに45°だけ回転して接続され、接続角が0°と定められた曲管TBは基準姿勢のまま接続されるわけである。
【0029】
2.配管計画支援システム
次に本願発明の配管計画支援システムについて説明する。なお、本願発明の管路構築方法は、本願発明の配管計画支援システムを使用して得られた配管計画に基づいて管体を接続していく方法である。したがって、まずは本願発明の配管計画支援システムについて説明し、その後に本願発明の管路構築方法について説明することとする。
【0030】
図3は、本願発明の配管計画支援システム100の主な構成を示すブロック図である。この図に示すように本願発明の配管計画支援システム100は、モデル選定手段101と曲管回転手段103、表示制御手段102、接続角取得手段104を含んで構成され、さらに結果出力手段105や表示手段106、モデル記憶手段107、後述する角度目盛などを含んで構成することもできる。
【0031】
配管計画支援システム100を構成するモデル選定手段101と曲管回転手段103、表示制御手段102、接続角取得手段104、結果出力手段105は、専用のものとして製造することもできるし、汎用的なコンピュータ装置を利用することもできる。すなわち、所定のプログラム(例えば、3次元CAD)によってコンピュータ装置に演算処理を実行させることで、それぞれの手段特有の処理を行うわけである。このコンピュータ装置は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAMといったメモリを具備しており、さらにマウスやキーボード等の入力手段やディスプレイを含むものもあり、例えばパーソナルコンピュータ(PC)やサーバなどによって構成することができる。ディスプレイを具備したコンピュータ装置を利用する場合は、そのディスプレイを表示手段106として利用するとよい。
【0032】
またモデル記憶手段107は、汎用的コンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)の記憶装置を利用することもできるし、データベースサーバに構築することもできる。データベースサーバに構築する場合、ローカルなネットワーク(LAN:Local Area Network)に置くこともできるし、インターネット経由で保存するクラウドサーバとすることもできる。
【0033】
以下、本願発明の配管計画支援システム100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
【0034】
(モデル記憶手段)
モデル記憶手段107は、複数種類の管体モデルを記憶する手段である。より詳しくは、管体仕様(特に、管径や管長)が異なる複数種類の直管モデルと、管体仕様(特に、曲率半径や管径、管長)が異なる複数種類の曲管モデルを記憶するものである。
【0035】
(モデル選定手段)
モデル選定手段101は、モデル記憶手段107に記憶された管体モデルの中から、オペレータが所望の管体モデルを選定する手段である。管体モデルを選定するにあたっては、ディスプレイなどの表示手段106に表示された管体モデルのリストや図面を目視しながら、オペレータがポインティングデバイス(マウスやタッチパネル、ペンタブレット、タッチパッド、トラックパッド、トラックボールなど)やキーボードを利用して所望の管体モデルを指定する仕様とすることができる。あるいは、オペレータが管体モデルの識別子(ID:IDentification)を入力することによって直接的に所望の管体モデルを指定する仕様としてもよい。
【0036】
(表示制御手段)
表示制御手段102は、管体モデルを3次元空間モデルに表示させる手段である。具体的には、オペレータがモデル選定手段101を用いて所望の管体モデルを選定すると、表示制御手段102がその選定された管体モデルを表示手段106に表示させる。このとき、3次元空間モデルのうちオペレータがポインティングデバイス等で指定した位置に、管体モデルを表示させる仕様とすることができる。あるいは、既に表示手段106に表示された管体モデルの中から、オペレータがポインティングデバイス等で所望の管体モデルを指定すると、新たに選定された管体モデルが、表示された管体モデルに接続されるように表示させる仕様とすることができる。例えば図4(a)では、表示手段106に表示された直管モデルTSMが指定されており、一方でオペレータがモデル選定手段101を用いて曲管モデルTBMを選定している。これにより、図4(b)に示すように曲管モデルTBMの挿し口INが直管モデルTSMの受け口SCに差し込まれた状態で、この曲管モデルTBMは表示されている。このとき曲管モデルTBMは、ひとまず基準姿勢で表示するなど、あらかじめ定められた(つまりデフォルトの)姿勢で表示するとよい。
【0037】
(曲管回転手段)
曲管回転手段103は、曲管接続部において曲管モデルTBMの姿勢を変更する手段である。具体的には、オペレータがポインティングデバイス等を用いて所望の管体モデルの姿勢を変更するように操作すると、その操作に応じて表示制御手段102が曲管モデルTBMを表示手段106に表示させる。以下、図5を参照しながら、曲管回転手段103によって曲管モデルTBMの姿勢を変更する状況について説明する。図5は、管体モデルが表示手段106に表示された画面図であり、(a)は「管くずし」の途中の段階を示し、(b)は「管くずし」が完成した段階を示している。ここで「管くずし」とは、既述したとおりn列×m段の地中管路を、例えば地下構造物をかわすため、部分的に(n×m)列×1段で配管することである。
【0038】
図5では、地中管路が2列×2段を基本として構成され、変化区間として3スパン(3本分の管体区間)を設定したうえで、4列×1段に組み替える管くずしの例を示している。この場合、まず図5(a)に示すように、変化区間の手前に2列×2段の直管モデルTSMを配置するとともに、変化区間には下段の2列の直管モデルTSMを配置し、さらに変化区間の前方には4列×1段の直管モデルTSMを配置する。このとき、オペレータがモデル選定手段101を用いて所望の直管モデルTSMを選定し、オペレータが指定した位置や既表示の管体モデルに基づいて、表示制御手段102が直管モデルTSMを3次元空間モデル上に表示させるのは既述したとおりである。
【0039】
所定の直管モデルTSMを配置すると、図5(b)に示すように上段2列の曲管モデルTBMを配置していく。図5(b)では完成形を示しているが、一度にこのような配置が決まることはない。実際には、モデル選定手段101を用いて種々の管体仕様(特に、曲率半径)の曲管モデルTBMを繰り返し選定したり、あるいは図6に示すように曲管回転手段103を用いて曲管接続部における接続角を変更したりしながら、試行錯誤を繰り返したうえで完成形を決定していく。図6は、曲管回転手段103によって曲管モデルTBMが回転する状況を示す画面図であり、(a)は回転前の状態を示し、(b)は回転後の状態を示している。従来では、このような試行錯誤を施工現場で繰り返していたため、作業に要する時間が長期化し、しかも考えられる種々の曲管TBを用意する必要があった。これに対して本願発明では、計画段階で試行錯誤を行うことから、施工現場における作業時間が長期化することがなく、また余計な曲管TBを用意する必要もない。
【0040】
(接続角取得手段)
接続角取得手段104は、曲管接続部における接続角を取得する手段である。3次元CADを利用していることから空間演算を実行することによって接続角を求めることができ、接続角取得手段104はその値を接続角として取得する仕様とすることができる。あるいは、図7に示すように曲管接続部における一方の管体モデル(図では直管モデルTSMの受け口SC)に「角度目盛108」を貼付するとともに、他方の管体モデル(図では曲管モデルTBM)に「基準位置」を貼付することとし、オペレータが目視によって接続角を確認することができる仕様とすることもできる。もちろん、空間演算によって接続角を求めたうえで、接続角を目視確認することができる仕様とすることもできる。
【0041】
ここで角度目盛108とは、一定間隔で接続角を示すいわば定規であり、管体モデルの周方向に配置される。例えば図8では、0°から180°まで30°刻みの接続角が表示された角度目盛108と、―30°から―150°まで30°刻みの接続角が表示された角度目盛108を示している。なお、この図では便宜上2つに分けて角度目盛108を示しているが、もちろん管体モデルには一連のものとして角度目盛108が配置される。また角度目盛108は、管体モデルの周面に接続角を示すことができれば、図8の角度目盛108に限らず種々の形式とすることができ、30°刻み限らず所望の間隔で接続角を示すことができる。この角度目盛108は、3次元空間モデル上に表示されることから、管体モデルと同様、3次元座標を有する点や線分(ポリライン)、面(ポリゴン)によって形成される。
【0042】
図7に示すように、一方の管体モデルに基準位置が貼付され、他方の管体モデルに角度目盛108が貼付されていることから、基準位置における角度目盛108の接続角を読み取ることができる。これにより、作業者に接続角を伝えることができ、施工現場では基準姿勢から接続角だけ回転するように曲管TBを配置したうえで接続することができる。なお、曲管接続部における基準位置と角度目盛108は、それぞれいずれの管体モデルに貼付してもよい。例えば図9(a)では、曲管モデルTBMの挿し口IN側に基準位置が貼付されるとともに、直管モデルTSMの受け口SC側に角度目盛108が貼付されている。これに対して図9(b)では、曲管モデルTBMの挿し口IN側に角度目盛108が貼付されるとともに、直管モデルTSMの受け口SC側に基準位置が貼付されている。
【0043】
(結果出力手段)
既設の地下構造物をかわしながら、起点からか目的地まで管体モデルを配置することができ、すなわち地中管路を構築するための計画(以下、「配管計画」という。)が決定すると、結果出力手段105によって配管計画が出力される。この配管計画は、管体モデルごとのレコード(以下、「管体レコード」という。)として構成することができる。例えば図10に示すように、管体TMを特定するための「管体識別子(ID)」と、起点から数えた配置の順である「接続順」、管種や管径、曲率半径といった「管体仕様」、曲管接続部における「接続角」を1の管体レコードとし、複数の管体レコードによって構成されるテーブルを配管計画として出力することができる。そして、例えば紙面などに出力された配管計画を施工現場に持ち込み、配管計画を確認しながら管体TM函体を接続し、配管計画のうち接続角に基づいて曲管TBの姿勢を定めていく。
【0044】
3.管路構築方法
続いて、本願発明の管路構築方法ついて説明する。なお本願発明の管路構築方法は、ここまで説明した配管計画支援システム100を使用して得られた配管計画に基づいて管体を接続していく方法である。したがって、配管計画支援システム100について説明した内容と重複する説明は避け、本願発明の管路構築方法に特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「1.定義」を含め「2.配管計画支援システム」で説明したものと同様である。
【0045】
図11は本願発明の管路構築方法の主な工程の流れを示すフロー図である。本願発明の配管計画支援システム100を利用して使用して管体を接続していくにあたっては、まず配管計画支援システム100を使用して「配管計画」を策定する(図11のStep201)。そして、結果出力手段105によって出力された配管計画を施工現場に持ち込み、各作業者にこれを伝達する。
【0046】
所定の作業者は、配管計画に基づいて使用する直管TSや曲管TBを用意する。このとき、接続順にしたがって直管TSや曲管TBを並べておくとよい。次いで、曲管接続部を構成する曲管TBと直管TS、あるいは曲管TBと曲管TBに、基準位置と角度目盛108を設置する(図11のStep202)。例えば、図8に示すようなテープ状の角度目盛108を直管TS(あるいは曲管TB)の受け口SCの外周に貼付することもできるし、受け口SCの外周に接続角の目盛りをマジック等で直接表示することもできる。同様に、曲管TB(あるいは直管TS)の外周に基準位置をペンキ等で直接表示することもできるし、あらかじめ用意したシール等を貼付することによって基準位置を示すこともできる。また、曲管TBの挿し口IN側に基準位置を設置するとともに、他方の管体TMの受け口SC側に角度目盛108を設置することもできるし、曲管TBの挿し口IN側に角度目盛108を設置するとともに、他方の管体TMの受け口SC側に基準位置を設置することもできる。
【0047】
曲管接続部の管体TMにそれぞれ基準位置と角度目盛108を設置すると、配管計画に基づいて直管TSや曲管TBを接続していく(図11のStep203)。特に、曲管TBに関しては、配管計画のうちの接続角を確認しながら、所定の姿勢となるまで曲管TBを回転する(図11のStep204)。例えば、ひとまず基準姿勢で曲管TBを接続し、その後、角度目盛108のうち接続角に相当する目盛りが基準位置と一致するまで曲管TBを回転することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本願発明の配管計画支援システム、及び管路構築方法は、送電線や配電線を始め、情報通信回線など様々な線状物を地下に埋設する際に利用することができる。本願発明によれば、効率的かつ低コストで電線の地中化を実現することができ、ひいては電線の地中化の促進に寄与することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
【符号の説明】
【0049】
100 本願発明の配管計画支援システム
101 (配管計画支援システムの)モデル選定手段
102 (配管計画支援システムの)表示制御手段
103 (配管計画支援システムの)曲管回転手段
104 (配管計画支援システムの)接続角取得手段
105 (配管計画支援システムの)結果出力手段
106 (配管計画支援システムの)表示手段
107 (配管計画支援システムの)モデル記憶手段
108 (配管計画支援システムの)角度目盛
IN 挿し口
SC 挿受け口
TB 挿曲管
TBM 曲管モデル
TM 挿管体
TS 挿直管
TSM 直管モデル
【要約】
【課題】本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、適切な配管計画を支援することができる配管計画支援システムと、これを利用した管体構築方法を提供することである。
【解決手段】本願発明の配管計画支援システムは、管体(直管と曲管を含む)を接続して一連の管路を構築するための計画を支援するシステムであって、モデル記憶手段とモデル選定手段、曲管回転手段、表示制御手段、接続角取得手段を備えたものである。このうち接続角取得手段は、曲管接続部において曲管モデルが他の管体モデルと接続する「接続角」を取得する手段である。なお接続角とは、曲管モデルの断面中心を通る中心軸周りの回転角である。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13