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特許7522503ポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/08 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
C08J11/08 ZAB
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023218446
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2023-12-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522268432
【氏名又は名称】盛勢環球系統科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】范致豪
(72)【発明者】
【氏名】林振男
(72)【発明者】
【氏名】李書昂
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-046520(JP,A)
【文献】特許第7171003(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第103306259(CN,A)
【文献】特開2007-153973(JP,A)
【文献】特開2005-232314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3/00-5/00
B29B 17/00-17/04
C08J 11/00-11/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル(PVC)のためのプラスチックリサイクル工程であって、
(1)調製ステップ:プラスチックを含む材料を用意するステップであって、プラスチックを含む前記材料は、プラスチック成分を含み、前記プラスチック成分は、ポリ塩化ビニル(PVC)を含むステップ、
(2)混合ステップ:プラスチックを含む前記材料と溶媒を混合し、第1の混合物を得るステップであって、前記プラスチック成分は前記溶媒に可溶性であり、前記溶媒は、ブタノン、シクロヘキサノンを含み、前記溶媒の総体積を基準にして、ブタノンは、20体積%~80体積%の量であり、及びシクロヘキサノンは、20体積%~80体積%の量であるステップ、
(3)溶解ステップ:第1の混合物を20℃~110℃の温度で撹拌して、前記プラスチック成分を前記溶媒に溶解し、それにより、溶解液を得るステップ、及び
(4)分離ステップ:前記溶解液を40℃~110℃の温度に保持し、減圧下で前記溶解液から前記溶媒を分離し、前記プラスチック成分を得るステップ、を含む、ポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程。
【請求項2】
前記溶解ステップの温度は、68℃~72℃であることを特徴とする、請求項に記載のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程。
【請求項3】
ブタノン及びシクロヘキサノンは、0.28~3.5:1の体積比を有することを特徴とする、請求項に記載のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程。
【請求項4】
プラスチックを含む前記材料は、粒子の形態であり、プラスチックを含む前記材料は、0mmより大きく、5mm以下の平均直径を有し、前記溶解ステップでの撹拌は、150rpm~200rpmの速度で実施され、及び前記溶解ステップは、15分~120分の時間にわたり実施されることを特徴とする請求項1に記載のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程。
【請求項5】
前記減圧は、0ミリバール以上で、90ミリバール以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程。
【請求項6】
前記溶媒の100mlの総体積を基準にして、プラスチックを含む前記材料は、0gより多く、8g以下の重量であることを特徴とする、請求項1に記載のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニル(PVC)のためのプラスチックリサイクル工程に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、19世紀に発明された。プラスチックは、高品質、低価格及び幅広い用途といった利点を持つため、様々な製品の一般的な原材料になった。例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)は、酸及びアルカ耐性、耐炎性及び高耐久性といった利点を有し、キャッシュカード、ドア、窓、食品包装用フィルム、模造皮革及びケーブル絶縁体などの製造に幅広く使用されている。
【0003】
プラスチックは、自然環境ではほとんど分解されないので、日常生活のあらゆる場所で見られるプラスチック製品は、日々のプラスチック製品による累積的置換の末に、徐々に深刻な環境問題を生じている。現在のプラスチックリサイクル工程は、(1)融解再生法:工場からの清潔な使い残し材料を収集及び再成形するか、又は種々のプラスチックを収集及び混合して、消費者使用後リサイクルプラスチックを得る方法、及び(2)熱分解法:特定のプラスチックを収集し、燃料に変える方法を含む。例えば、台湾特許登録第I254115B号(特許文献1)は、分解及び変性により廃プラスチックから液体油及び燃料ガスを製造する方法を開示している。
【0004】
ほとんどの国が、プラスチック削減の政策を実施しているが、それにもかかわらず、プラスチック廃棄物により引き起こされる環境問題は、切迫した状態にある。従って、新規プラスチックリサイクル工程を開発する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】台湾特許登録第I254115B号明細書
【発明の概要】
【0006】
上述の問題を解決するために、本発明は、ポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程を提供し、該方法は、
(1)調製ステップ:プラスチックを含む材料を用意するステップであって、プラスチックを含む材料は、プラスチック成分を含み、プラスチック成分は、ポリ塩化ビニル(PVC)を含むステップ、
(2)混合ステップ:プラスチックを含む材料と溶媒を混合し、第1の混合物を得るステップであって、プラスチック成分は前記溶媒に可溶性であるステップ、
(3)溶解ステップ:第1の混合物を20℃~110℃の温度で撹拌して、プラスチック成分を溶媒に溶解し、それにより、溶解液を得るステップ、及び
(4)分離ステップ:減圧下で溶解液から溶媒を分離し、プラスチック成分を得るステップ、を含む。
【0007】
本発明では、第1に、溶媒によるリサイクルプラスチック標的の溶解を高回収率で達成できる。第2に、撹拌は、プラスチック材料が相互に、又は第1の混合物が入った容器の壁に付着するのを防ぎ、それにより、溶解を促進し、プラスチック回収効率を高める。第3に、減圧下での溶媒の蒸発は、(1)溶媒と回収されたプラスチック標的を効率的に分離でき、及び(2)溶媒又は回収されたプラスチック標的が過熱により劣化するのを防ぐ。溶媒は、再使用可能であるので、溶媒のリサイクルは、(1)プラスチックリサイクルのためのリサイクルコストを更に低減し、より多くの製造業者のプラスチックリサイクル産業における投資を引き寄せ、(2)コストの増大、及び溶媒の排出が原因の潜在的環境問題を回避できる。従って、本発明は、2つの観点:化学廃棄物のリサイクルの促進及び化学廃棄物の排出低減の観点で環境問題を低減できる。
【0008】
本発明のプラスチックを含む材料は、高分子、それらの混合物又は組み合わせを含む。
一実施形態では、プラスチックを含む材料がポリ塩化ビニル以外の材料を含む場合、溶解液は、溶媒中に溶解したポリ塩化ビニルを含む可溶部分、及び沈殿物又は上清であり得る不溶性の部分を含む。
【0009】
好ましくは、溶解ステップの温度は、25℃~105℃、例えば、25℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、又は105℃である。
一実施形態では、分離ステップは、保温ステップ:溶解液を40℃~110℃、例えば、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、又は110℃の温度に保持するステップを更に含む。本発明は、溶媒の沸点を低下させる減圧を利用し、溶媒の温度を保持することにより、沸騰状態で溶媒を保持し、それにより、溶媒のリサイクルはより少ないエネルギーしか必要とせず、リサイクルを加速し、着実に実施できる。
好ましくは、保温ステップは:溶解液を40℃~110℃に保持して、工程内回収標的を得るステップを含む。
一実施形態では、分離ステップは、保温ステップ後に、熱乾燥ステップを更に含む。好ましくは、熱乾燥ステップは、工程内回収標的を70℃~90℃、例えば、70℃、75℃、80℃、85℃、又は90℃の温度で乾燥し、プラスチック成分を得るステップを含む。
本発明は、工程内回収標的中に残留している可能性のある溶媒を熱乾燥ステップにより更に除去する。
【0010】
一実施形態では、分離ステップでは、減圧は、0ミリバール以上で、90ミリバール以下であり、例えば、1ミリバール、10ミリバール、30ミリバール、50ミリバール、70ミリバール又は90ミリバールである。好ましくは、減圧は、0ミリバール以上で、20ミリバール以下である。
一実施形態では、分離ステップの減圧は、保温ステップに供され、熱乾燥ステップは、標準大気圧下で実施できる。
一実施形態では、保温ステップは、5分~1時間の間行われる。好ましくは、減圧は、0ミリバール以上で、20ミリバール以下である場合、保温ステップは、10分間~20分間の時間にわたり行われる。
【0011】
一実施形態では、本発明のポリ塩化ビニルのプラスチックリサイクル工程は、溶媒からプラスチック成分を分離するために沈殿剤を使用しない。
一実施形態では、溶媒は、ブタノン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン(THF)又はこれらの組み合わせを含む。
好ましくは、溶媒がブタノンを含む場合、溶解ステップの温度は、60℃~80℃、例えば、60℃、65℃、70℃、75℃又は80℃、及び/又は保温ステップの温度は、40℃~70℃、例えば、40℃、50℃、60℃、又は70℃である。
好ましくは、溶媒がシクロヘキサノンを含む場合、溶解ステップの温度は、20℃~100℃、例えば、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃又は100℃、及び/又は保温ステップの温度は、70℃~110℃、例えば、70℃、80℃、90℃、100℃又は110℃である。
好ましくは、溶媒がテトラヒドロフランを含む場合、溶解ステップの温度は、20℃~60℃、例えば、20℃、30℃、40℃、50℃又は60℃、及び/又は保温ステップの温度は、40℃~70℃、例えば、40℃、50℃、60℃、又は70℃である。
一実施形態では、溶媒はブタノン及びシクロヘキサノンを含む。
一実施形態では、溶媒はブタノン及びテトラヒドロフランを含む。
一実施形態では、溶媒は、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフランを含む。
好ましくは、溶媒がブタノン及びシクロヘキサノンを含む場合、溶解ステップの温度は、60℃~80℃、例えば、60℃、63℃、66℃、69℃、72℃、75℃、78℃又は80℃、及び/又は保温ステップの温度は、70℃~110℃、例えば、70℃、80℃、90℃、100℃又は110℃である。より好ましくは、溶媒がブタノン及びシクロヘキサノンを含む場合、溶解ステップの温度は、68℃~72℃、及び/又は、保温ステップの温度は、80℃~100℃である。
【0012】
好ましくは、溶媒がブタノン及びテトラヒドロフランを含む場合、溶解ステップの温度は、20℃~80℃、例えば、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃又は80℃、及び/又は保温ステップの温度は、40℃~70℃、例えば、40℃、50℃、60℃、又は70℃である。より好ましくは、溶媒の総体積を基準にして、ブタノンは、40体積%~60体積%の量であり、テトラヒドロフランは、40体積%~60体積%の量である。
【0013】
好ましくは、溶媒がシクロヘキサノン及びテトラヒドロフランを含む場合、溶解ステップの温度は、20℃~80℃、例えば、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃又は80℃、及び/又は保温ステップの温度は、70℃~110℃、例えば、70℃、80℃、90℃、100℃又は110℃である。より好ましくは、溶媒の総体積を基準にして、シクロヘキサノンは、40体積%~60体積%の量であり、テトラヒドロフランは、40体積%~60体積%の量である。
【0014】
一実施形態では、ブタノン及びシクロヘキサノンは、0.28~3.5:1、例えば、0.28、0.3、0.6、0.9、1.2、1.5、1.8、2.1、2.4、2.7、3.0、3.3又は3.5の体積比を有する。例えば、ブタノンが60mlの量である場合、シクロヘキサノンは、20mlの量であり、ブタノン及びシクロヘキサノンは、3:1の体積比を有する。好ましくはブタノン及びシクロヘキサノンは、0.28~3.05:1の体積比を有する。より好ましくは、ブタノン及びシクロヘキサノンは、0.28~1.6:1の体積比を有する。
【0015】
一実施形態では、溶媒の総体積を基準にして、ブタノンは、20体積%~80体積%、例えば、20体積%、30体積%、40体積%、50体積%、60体積%、70体積%又は80体積%の量であり、シクロヘキサノンは、20体積%~80体積%、例えば、20体積%、30体積%、40体積%、50体積%、60体積%、70体積%又は80体積%の量である。好ましくは、ブタノンは、20体積%~62体積%の量であり、シクロヘキサノンは、38体積%~80体積%の量である。
【0016】
一実施形態では、調製ステップの前又はその間、本発明のプラスチックリサイクル工程は、選別ステップ:異なる比重を有するプラスチックを含む複数材料を浮遊及び分離させるための異なる比重を有する複数選別溶液を提供するステップ、を更に含む。
好ましくは、プラスチックを含む複数材料は、複数選別溶液中に入れられ、選別ステップで低い比重から高い比重まで順に分離される。
例えば、複数選別溶液は、0.8の比重を有する第1の選別溶液、1.0の比重を有する第2の選別溶液、及び1.2の比重を有する第3の選別溶液を含む。0.8の比重を有する第1の選別溶液の次に、1.0の比重を有する第2の選別溶液、及び1.2の比重を有する第3の選別溶液が調製され、プラスチックを含む複数材料は、最初に、第1の選別溶液中に入れられ、第1の浮遊部分及び第1の沈殿部分が得られる。第1の沈殿部分は、第2の選別溶液中に更に入れられ、第2の浮遊部分及び第2の沈殿部分が得られる。最終的に、第2の沈殿部分は、第3の選別溶液中に更に入れられ、第3の浮遊部分及び第3の沈殿部分が得られ、第1の浮遊部分、第2の浮遊部分、第3の浮遊部分ならびに第3の沈殿部分はそれぞれ、異なる比重を有する。
一実施形態では、複数選別溶液の比重は、0.8~1.6、例えば、0.8、1.0、1.2、1.4又は1.6である。例えば、プラスチックを含む複数材料は、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5及び1.6の比重を有する複数選別溶液中に入れられ、順に分離される。好ましくは複数選別溶液の比重は、1.3~1.5である。より好ましくは、複数選別溶液の比重は、1.35~1.45である。本発明は、ポリ塩化ビニルの回収効率を改善する選別ステップにより、ポリ塩化ビニルを含まないか、又はほとんど含まない材料を効果的に選別して除去できる。
【0017】
一実施形態では、プラスチックを含む材料は、粒子の形態である。
好ましくは、プラスチックを含む材料は、0mmより大きく、5mm以下の平均直径を有する。より好ましくは、プラスチックを含む材料は、0mmより大きく、3.1mm以下、例えば、0.5mm、1mm、2mm、3mm又は3.1mmの平均直径を有する。
【0018】
一実施形態では、溶解ステップの撹拌は、150rpm~200rpm、例えば、150rpm、160rpm、170rpm、180rpm、190rpm又は200rpmの速度で行われる。本発明は、撹拌を利用して、プラスチックを含む材料を溶媒中で懸濁させ続け、それにより、溶解効率及び回収率を高める。
一実施形態では、溶解ステップは、15分~120分、例えば、15分、30分、45分、60分、90分又は120分の時間にわたり実施される。
【0019】
一実施形態では、溶媒の100mlの総体積を基準にして、プラスチックを含む材料は、0gより多く、8g以下、例えば、0.05g、0.1g、0.5g、1g、2g、3g、4g、5g、6g、7g又は8gの重量である。好ましくは、溶媒の100mlの総体積を基準にして、プラスチックを含む材料は、6.8g~7.2gの重量である。本発明では、前記の体積を基準にしたプラスチックを含む材料の前記重量範囲は、第1の混合物が溶解ステップ中に粘着性が強すぎて撹拌不可となるのを避け、プラスチック回収効率を高める。
【0020】
一実施形態では、(3)溶解ステップは、ステップ(3-1):第1の混合物を20℃~110℃の温度で撹拌して、プラスチック成分を溶媒に溶解し、それにより、第2の混合物を得るステップ、及びステップ(3-2):第2の混合物をフィルタースクリーンで濾過し、それにより、溶解液を得るステップ、を含む。本発明は、不溶性不純物を濾過することにより溶媒から除去し、回収物の純度を高める。
一実施形態では、ステップ(3-2)は、沈降ステップA:第2の混合物を得た後で、第2の混合物を静置状態で保持し、鎮静化させた第2の混合物を得るステップであって、鎮静化させた第2の混合物の温度は第2の混合物の温度より低く、鎮静化させた第2の混合物は上清及び沈殿物を含むステップ、及びステップB:上清を濾過してその不純物をフィルタースクリーンで除去し、それにより、溶解液を得るステップ、を更に含む。換言すれば、本発明は、加熱することなく静置させたままで第2の混合物を保持する沈降ステップを更に使用でき、その後、不純物を除去するために、非溶解成分及び浮遊固体をフィルタースクリーンで除去する。
好ましくは、沈降ステップでは、第2の混合物を静止状態で保持する時間は、2時間~3時間である。本発明は、最初に、第2の混合物を静置状態で室温で保持して、鎮静化させた第2の混合物を得る。鎮静化させた第2の混合物が明らかな沈降を示す、即ち、鎮静化させた第2の混合物が上清及び沈殿物を含む場合、上清は、フィルタースクリーンで更に濾過される。第2の混合物の直接濾過に比べて、その上清の濾過は、濾過に必要な時間を短縮し、溶解液中の不純物の量を低減できる。
【0021】
一実施形態では、分離ステップは、溶解液から溶媒を分離し、リサイクルされる溶媒が得られる。一実施形態では、本発明のポリ塩化ビニルのプラスチックリサイクル工程は、複数溶媒又は溶媒混合物を使用する。従って、リサイクルされる溶媒はまた、複数溶媒又は溶媒混合物も含む。
好ましくは、リサイクルされる溶媒は、第1の溶媒及び第2の溶媒を含む。分離ステップ後に、本発明のポリ塩化ビニルのプラスチックリサイクル工程は、溶媒分離ステップA:リサイクルされる溶媒をリサイクル減圧環境に入れるステップ;ステップB:リサイクルされる溶媒を第1の溶媒リサイクル温度で沸騰させて第1のリサイクル蒸気及び第1のリサイクル残留溶液を得るステップ;ステップC:第1のリサイクル蒸気を凝縮させて第1のリサイクル液を得るステップ;ステップD:第1のリサイクル残留溶液を第2の溶媒リサイクル温度で沸騰させて第2のリサイクル蒸気を得るステップ;及びステップE:第2のリサイクル蒸気を凝縮させて第2のリサイクル液を得るステップを更に含み、(1)第1の溶媒リサイクル温度は、第2の溶媒リサイクル温度より低く、及び(2)第1のリサイクル液は第1の溶媒を含み、第2のリサイクル液は第2の溶媒を含む。
好ましくは、リサイクル減圧環境は、0ミリバール以上で、90ミリバール以下、例えば、1ミリバール、10ミリバール、30ミリバール、50ミリバール、70ミリバール又は90ミリバールである。好ましくは、リサイクル減圧環境は、0ミリバール以上で、20ミリバール以下である。
好ましくは、第1の溶媒はブタノンを含み、第2の溶媒はシクロヘキサノンを含む。より好ましくは、第1の溶媒リサイクル温度は70℃~80℃であり、第2の溶媒リサイクル温度は90℃~100℃である。
好ましくは、第1のリサイクル液及び/又は第2のリサイクル液は、リサイクルされる溶媒として機能し、溶媒分離ステップに再度供される。本発明では、溶媒分離ステップの繰り返しは、第1のリサイクル液及び/又は第2のリサイクル液の純度を高め得る。
【0022】
まとめると、本発明のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程は、高プラスチック回収率及び高回収効率を有し、溶媒は、再使用可能で、リサイクルでき、このことは、コストを低減するのみでなく、潜在的環境問題も回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のポリ塩化ビニルのプラスチックリサイクル工程のフローチャートである。
図2】本発明のポリ塩化ビニルのプラスチックリサイクル工程のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、以下の実施形態により更に説明される。当業者は、本発明により達成される利点及び有効性を容易に理解し得る。本発明は、実施形態の内容に制限されるべきものではない。当業者は、本発明の内容を実施又は適用するために、本発明の趣旨と範囲から乖離せず、いくつかの改善又は修正を実施し得る。
【0025】
図1に示すように、第1に、本発明のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程は、ステップS1:調製ステップ:プラスチックを含む材料を用意するステップであって、プラスチックを含む材料はプラスチック成分を含み、プラスチック成分はポリ塩化ビニルを含むステップを含む。具体的には、プラスチックを含む材料は、ポリ塩化ビニルを含む産業廃棄物を粉砕し、通篩することにより得られる粒子である。例えば、2mm以下の直径を有する粒子の形態のプラスチックを含む材料は、10メッシュふるいにより通篩することにより得られる。
【0026】
第2に、本発明のポリ塩化ビニルのプラスチックリサイクル工程は、ステップS2:混合ステップ:プラスチックを含む材料と溶媒を混合し、第1の混合物を得るステップであって、プラスチック成分は前記溶媒に可溶性であるステップ、を含む。具体的には、溶媒は、ブタノン及びシクロヘキサノンを含み、プラスチックを含む材料、ブタノン及びシクロヘキサノンは混合されて、第1の混合物が得られる。
【0027】
第3に、本発明のポリ塩化ビニルためのプラスチックリサイクル工程は、ステップS3:溶解ステップ:第1の混合物を20℃~110℃の温度で撹拌して、プラスチック成分を溶媒に溶解し、それにより、溶解液を得るステップ、を含む。具体的には、溶解ステップの温度は、70℃、撹拌速度は150rpm~200rpm、及び溶解ステップの時間は、20分~40分である。
【0028】
最後に、本発明のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程は、ステップS4:分離ステップ:減圧下で溶解液から溶媒を分離し、プラスチック成分を得るステップ、を含む。具体的には、溶解液は、ロータリーエバポレーターに移され、密閉され、真空機能が開始されて減圧が形成され、溶解液は沸騰を始め、ブタノン及びシクロヘキサノンの両方は、蒸発により分離され、それにより、薄片状又は粒状ポリ塩化ビニルが得られる。
【0029】
図1及び図2に示されるように、プラスチックを含む材料がポリ塩化ビニルを含む産業廃棄物である場合、これは溶媒中に不溶性の成分も含み、S3溶解ステップは、ステップS3-1:第1の混合物を20℃~110℃の温度で撹拌してプラスチック成分を溶媒に溶解し、それにより、第2の混合物を得るステップ;及びステップS3-2:第2の混合物をフィルタースクリーンで濾過し、それにより、溶解液を得るステップ、を含む。具体的には、フィルタースクリーンは、不純物を除去する目的で、非溶解固体を除去するために使用される。加えて、非溶解固体をフィルタースクリーンで除去する前に、第2の混合物は、室温で第2の混合物が鎮静化状態になるように静置される。鎮静化させた第2の混合物が明らかな沈降を示す、即ち、鎮静化させた第2の混合物が上清及び沈殿物を含む場合、上清は、純度を高めるために更に濾過して収集される。
【0030】
実施例1~14
図1に示すように、本発明のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程は、ステップS1:調製ステップ:プラスチックを含む材料を用意するステップであって、プラスチックを含む材料はプラスチック成分を含み、プラスチック成分はポリ塩化ビニルを含むステップを含み、ステップS1は、以下のように実施される。具体的には、実施例1~実施例14は全て、約0.5立法センチメートルの体積を有する市販のポリ塩化ビニルである、プラスチックを含む材料を使用した。
【0031】
第2に、ステップS2は、混合ステップ:プラスチックを含む材料と溶媒を混合し、第1の混合物を得るステップであって、プラスチック成分は溶媒に可溶性であるステップを含み、ステップS2は、以下のように実施される。具体的には、実施例1~14の溶媒は、表1に示した。実施例1~実施例14のそれぞれに対し、メスシリンダー中の7gの量の市販のポリ塩化ビニル粒子及び100mlの溶媒を回転ボトルに供給し、混合して、第1の混合物を得た。
【0032】
第3に、ステップS3は、溶解ステップ:第1の混合物を20℃~110℃の温度で撹拌して、プラスチック成分を溶媒に溶解し、それにより、溶解液を得るステップを含み、ステップS3は、以下のように実施される。具体的には、第1の混合物を有する回転ボトルをロータリーエバポレーターに連結し、回転ボトル中の圧力は、標準大気圧に維持された。更に、第1の混合物を有する回転ボトルは、全群に対し、水浴中で170rpmの速度で回転され、全群の溶解ステップの温度は、表1に示され、室温は25℃であった。最後に、市販のポリ塩化ビニル粒子が完全に溶解された時間、又は溶解液を得るのに必要な時間が、溶解時間として記録され、表1に示した。
【0033】
最後に、ステップS4は、分離ステップ:減圧下で溶解液から溶媒を分離し、プラスチック成分を得るステップ、を含み、ステップS4は、以下のように実施される。具体的には、溶解液は静置された。溶解液の温度が室温とほぼ同じ場合、真空ポンプのスイッチを入れて、回転ボトル中の圧力を0ミリバール~20ミリバールに下げ、分離ステップを実施した;溶解液を、20rpmの速度で回転させ、水浴により加熱して、溶媒の蒸発を加速した。溶解液が沸騰又は蒸発し始めると、(1)加熱温度を維持し、これは、保温ステップの温度であり、表1に保持温度として記録され、及び(2)真空ポンプのスイッチを切った後、溶媒の蒸気を凝縮管により凝縮させて、溶媒を回収するために収集し、その間、回転ボトル中の圧力は、上昇が抑制された。
【0034】
溶解液中の溶媒が完全に蒸発及び凝縮された後、回収された溶媒の体積は、溶媒回収率を計算するために記録され、この結果を表2に示した。溶媒は、回転ボトル中には最早認められなくなり、フィルム形態の工程内回収標的はほぼ乾燥され、工程内回収標的はオーブンに移され、80℃の温度での約1時間の加熱により乾燥されて、全ての残留溶媒を完全に除去され、それにより、ポリ塩化ビニルフィルムを得た。ポリ塩化ビニルフィルムが室温で冷却されると、ポリ塩化ビニルフィルムは、(1)プラスチック回収率を計算するための重量測定、及び(2)フーリエ変換赤外分光法(FTIR)分析に供され、ポリ塩化ビニルの純度が確認され、両方の結果を表2に示した。
【0035】
表1:実施例1(E1)~実施例14(E14)における溶媒、溶解ステップの温度(溶解温度と短縮)、溶解時間及び保温ステップの温度(保持温度と短縮)
【0036】
【表1】
【0037】
表1によると、第1に、全群の溶解時間は15分~120分であり、実施例5は、最短であり、たったの15分という溶解時間を有し、それにより、50℃の溶解ステップの温度で(溶解温度)、テトラヒドロフランは、ポリ塩化ビニルを最速で溶解し、ポリ塩化ビニルに対する最も高い溶解効率を達成したことを示している。
【0038】
第2に、実施例2及び実施例3の両方は、同じシクロヘキサノンの溶媒を使用し、一方、実施例3は、実施例2の室温(25℃)より高い90℃の溶解温度で、実施例3は、実施例2の120分よりより短い40分の溶解時間であり、これは、同一溶剤が使用される場合、溶解温度を高めることは、溶解時間を大きく短縮できることを示した。
更に、表1は、下記を示す:
(1)実施例2及び実施例3で使用したシクロヘキサノンの溶媒の場合は、実施例2と実施例3の間の溶解温度の差異は、90-25=65℃であり、それらの溶解時間の差異は120-40=80分であった。従って、短縮度は、80/65=1.2分/℃と換算された。
(2)実施例4及び実施例5で使用したテトラヒドロフランの溶媒の場合は、実施例4と実施例5の間の溶解温度の差異は、50-25=25℃であり、それらの溶解時間の差異は40-15=25分であった。従って、短縮度は、25/25=1分/℃と換算された。
(3)実施例6及び実施例7で使用したブタノンとテトラヒドロフランの溶媒の場合は、実施例6と実施例7の間の溶解温度の差異は、70-25=45℃であり、それらの溶解時間の差異は120-20=100分であった。従って、短縮度は、100/45=2.2分/℃と換算された。
(4)実施例13及び実施例14で使用したシクロヘキサノンとテトラヒドロフランの溶媒の場合は、実施例13と実施例14の間の溶解温度の差異は、70-25=45℃であり、それらの溶解時間の差異は60-20=40分であった。従って、短縮度は、40/45=0.9分/℃と換算された。
上記から、異なる溶媒は、増大する溶解温度に起因する異なる溶解時間の短縮度を有し、実施例6及び実施例7は、2.2分/℃の最良の短縮度を有することを発見でき、これは、50体積%のブタノン及び50体積%のテトラヒドロフランが溶媒として使用された場合、溶解温度の増大は、溶解時間の最良の短縮度を達成できることを示した。
【0039】
第3に、前述のように、テトラヒドロフランはポリ塩化ビニルに対し最高の溶解効率を達成できるが、テトラヒドロフランは、表1の他の溶媒より高価であった。従って、コスト削減のためのテトラヒドロフラン置換の実現性は、下記のように評価された:
(1)実施例7は、テトラヒドロフラン(実施例5の溶媒)及びブタノン(実施例1の溶媒)の組み合わせを使用した。実施例1、実施例5及び実施例7の間の比較によると、テトラヒドロフラン及びブタノンの組み合わせを使った、実施例7は、70℃の溶解温度で20分の溶解時間を必要とし、50℃の溶解温度でテトラヒドロフランのみを使用して15分の溶解時間を必要とした実施例5より劣っていた。すなわち、実施例7は、ブタノンのみを使用し、70℃の溶解温度で120分の溶解時間を必要とした実施例1よりも良好であるに過ぎなかった。
(2)実施例14は、テトラヒドロフラン(実施例5の溶媒)及びシクロヘキサノン(実施例3の溶媒)の組み合わせを使用した。実施例3、実施例5及び実施例14の間の比較によると、テトラヒドロフラン及びシクロヘキサノンの組み合わせを使った実施例14は、70℃の溶解温度で20分の溶解時間を必要とし、50℃の溶解温度でテトラヒドロフランのみを使用して15分の溶解時間を必要とした実施例5より劣っていた。すなわち、実施例14は、シクロヘキサノンのみを使用し、90℃の溶解温度で40分の溶解時間を必要とした実施例3よりも良好であるに過ぎなかった。
【0040】
上記から、テトラヒドロフランとブタノン又はシクロヘキサノンの組み合わせは、コストを削減できるが、溶解効率も低減されることを発見できる。
対照的に、ブタノンとシクロヘキサノンの組み合わせは、下記のような異なった予想外の結果を示す:
実施例8は、ブタノン(実施例1の溶媒)とシクロヘキサノン(実施例3の溶媒)の組み合わせを使った。
【0041】
実施例1、実施例3及び実施例8の間の比較によると、ブタノン及びシクロヘキサノンの組み合わせを使い、70℃の溶解温度で40分の溶解時間を必要とした実施例8は、同じ70℃の溶解温度でブタノンを使用したが、実施例8の40分よりかなり長い120分の溶解時間を必要とした実施例1より良好であった。
更に、実施例8は、シクロヘキサノンのみを使用し、同じ40分の溶解時間を必要としたが、実施例8の70℃より高い90℃の溶解温度であった実施例3よりも良好であった。
上記から、ブタノンとシクロヘキサノンの組み合わせは、溶解効率を高める予想外の有効性を明示している。
最後に、溶解温度が全て70℃の条件に供された、実施例8と実施例9~実施例12の比較によると、実施例8は、40分の溶解時間を有し、一方、実施例9~実施例12は全て、20分のみの溶解時間を有し、これは、実施例8の40分の半分であった。従って、溶解効率は、溶媒の総体積を基準にして、ブタノンが25体積%~60体積%の量であり、シクロヘキサノンが40体積%~75体積%の量である条件下で更に高めることができる。
【0042】
表2:実施例1(E1)~実施例14(E14)におけるプラスチック回収率、FTIR分析結果(プラスチック純度)及び溶媒回収率
【0043】
【表2】
【0044】
表2によると、全群のプラスチック回収率は、全群がほぼ100%を達成し、全群のFTIR分析結果のピークは、原材料のFTIR分析結果のものと同じであり、これは、ポリ塩化ビニルフィルムである回収物は、高い純度を有することを示した。
更に、全群の回収溶媒は、不純物のない清澄化状態であり、これは、回収溶媒がまた、高純度を有することを示した。
最後に、全て溶媒の組み合わせを使用した実施例6~実施例14は、80%の溶媒回収率を有し、これは、全て単一溶媒を使用した実施例1~実施例5の90%より低かった。従って、溶媒の組み合わせの使用は、溶媒回収率をわずかに低下させた。
【0045】
まとめると、本発明のポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程は、高プラスチック回収率及び高回収効率を有し、溶媒は、再使用可能で、リサイクルでき、このことは、コストを低減するのみでなく、潜在的環境問題も回避できる。
【要約】      (修正有)
【課題】コストを低減可能で、潜在的環境問題も回避できるポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程を提供する。
【解決手段】(1)調製ステップ:プラスチックを含む材料を用意するステップであって、プラスチックを含む前記材料は、プラスチック成分を含み、前記プラスチック成分は、ポリ塩化ビニル(PVC)を含むステップ、(2)混合ステップ:プラスチックを含む前記材料と溶媒を混合し、第1の混合物を得るステップであって、前記プラスチック成分は前記溶媒に可溶性であるステップ、(3)溶解ステップ:第1の混合物を20℃~110℃の温度で撹拌して、前記プラスチック成分を前記溶媒に溶解し、それにより、溶解液を得るステップ、及び(4)分離ステップ:減圧下で前記溶解液から前記溶媒を分離し、前記プラスチック成分を得るステップ、を含む、ポリ塩化ビニルのためのプラスチックリサイクル工程とする。
【選択図】図1
図1
図2