(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】非対称熱線構造を有するペデスタルヒーターブロック
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20240718BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240718BHJP
C23C 16/46 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L21/31 B
C23C16/46
(21)【出願番号】P 2023520549
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(86)【国際出願番号】 KR2021013743
(87)【国際公開番号】W WO2022075759
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0130198
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518221346
【氏名又は名称】メカロ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MECARO CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】(Mogok-dong)103-14,Sandan-ro,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do,17745,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ドン チョル
(72)【発明者】
【氏名】アン,セ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ミョン キ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジン マン
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-525603(JP,A)
【文献】特開2018-181584(JP,A)
【文献】特開2008-132562(JP,A)
【文献】特開平03-030355(JP,A)
【文献】特開平11-074064(JP,A)
【文献】特開平10-208855(JP,A)
【文献】特開平10-326788(JP,A)
【文献】特開2001-068538(JP,A)
【文献】特開2007-250589(JP,A)
【文献】特開2013-243218(JP,A)
【文献】特開2013-149935(JP,A)
【文献】特開2000-306917(JP,A)
【文献】特開2011-144422(JP,A)
【文献】特開2008-251707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
C23C 16/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空吸着でウェーハを固定するように真空印加構造が表面に設けられ、ウェーハ裏面に温度均一化用ガスを供給するように分布されたガス供給用ホールとウェーハ加熱のための熱線とを備えている化学気相成長器用のペデスタルヒーターブロックであって、
前記真空印加構造及び前記ガス供給用ホールによりウェーハ裏面に適用されるバックサイド圧力は、3torr以下の低圧に設定され、
前記ヒーターブロックはアルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、前記熱線はカートリッジ型からなり、
前記ヒーターブロックの中央部は、円形ヒーターブロックの中心から半径の3/5~2/3の範囲内である地点を基準に設定され、その外側は周辺部をなすことを特徴とする非対称熱線構造を有し、
前記熱線は、
平面上で非対称の形態であって、前記ヒーターブロックの中央部においてその外側の
前記周辺部よりもっと高い設置密度を有するように設けられることを特徴とする非対称熱線構造を有する、ペデスタルヒーターブロック。
【請求項2】
前記ヒーターブロック表面に形成されるグルーヴは、プロセス中にウェーハ裏面に適用されるバックサイド圧力は3torr以下を維持するときに、圧着密着力を向上させるため、幅は2.3mm~3.0mm、深さは0.5mm~1.0mmの範囲に深さより幅が2~6倍さらに広く形成されることを特徴とする非対称熱線構造を有する、請求項1に記載のペデスタルヒーターブロック。
【請求項3】
前記熱線は、非対称型の蝸牛形で前記中央部内にのみ分布するように構成されることを特徴とする非対称熱線構造を有する、請求項1または
2に記載のペデスタルヒーターブロック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペデスタルヒーターブロックに関し、さらに詳しくはヒーターブロック内の高い温度均一性を有する非対称熱線構造のペデスタルヒーターブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、通常、半導体基板あるいはウェーハ(wafer)に半導体素子とそれを含む回路を形成するために熱やイオン注入などを用いた拡散、物質層の積層、フォトリソグラフィを用いたパターニングなどの多様なプロセス(工程)を経て製作するようになる。
【0003】
物質層の積層方法では、スパッタリング(sputtering)のような物理的積層と化学的蒸着を利用することができ、化学的蒸着を行う半導体装置の製造装備として化学気相成長器が用いられる。
【0004】
化学気相成長法は、キャリアガス(carrier gas)や液体デリバリーシステム(liquid delivery system:LDS)を通じて気化した薄膜原料をプロセスチャンバに注入させ、加熱された基板上で吸着、分解などの化学的過程を経ながら物質薄膜が蒸着されるようにする物質層の形成方法である。
【0005】
このような化学気相成長法に使用される原料化合物が持つべき重要な特性としては、高い蒸気圧、液体化合物、気化温度及び保管時の熱安定性、取り扱いの容易性、プロセス時の反応物との容易な反応性、簡単な蒸着メカニズム及び副産物除去の容易さなどがある。このような化学気相成長法で物質薄膜を蒸着形成するとき、均一な厚さおよび成分で形成するために、蒸着温度などのようなプロセス条件を基板全体にかけて均一に保つ必要がある。
【0006】
図1は、従来の化学気相成長器においてプロセスウェーハが載置されるペデスタルヒーターブロックの構成を示す断面図である。図示したように、その表面に基板(図示せず)が置かれ、真空吸着されて蒸着が行われるベースブロック10と、ベースブロック10の後方に結合されるブロックバックカバー20と、ベースブロック10及びブロックバックカバー20がチャンバ(図示せず)に固定される媒体である外部ロッド40と、ベースブロック10及びブロックバックカバー20を昇降させる内部ロッド30と、ベースブロック10を加熱するシーズヒーター(Sheath heater)50と、基板を真空吸着により固定するための真空パイプ60と、基板裏面に放出されてヒーターブロックの熱を基板に均等に伝達するためのアルゴンガスを供給するガス供給パイプ70と、ベースブロック10の温度を感知できるように温度センサが通過する温度センサパイプ80とで構成される。
【0007】
しかし、ヒーターブロックは内部に熱線が形成されてウェーハに熱を伝達しながら均一な温度にならなければならないが、熱線配列によって基板位置別に温度差が発生し、これによって化学気相成長によって作られる均質で均一な厚さの蒸着膜の形成が困難になることがある。
【0008】
図2は、既存の熱線配置形態を示す平面図である。このような構成では、円形のヒーターブロック110の1つの直径線を中心とした熱線配置が左右対称をなしている。また、ヒーターブロックの周辺部側とヒーターブロックの中心部側に熱線120が比較的均一に分布する様子を示している。
【0009】
一般に、熱線の分布が円形ウェーハの中心部と周辺部に均等になってヒーターブロックからウェーハへの熱伝達も均一になっており、ウェーハの位置別温度偏差は大きくないと予想されるが、実際の構成ではウェーハの中心部でウェーハ温度が低く表れ、温度の高いところと低いところとの間の温度偏差が4~5℃となる場合もある。
【0010】
このような温度差は大きくないように見えることもできるが、半導体装置の高集積化、微細化に伴い、このような温度差による蒸着膜厚の小さな差によってもプロセスの最終的な結果物である半導体素子や回路は、大きな影響を受ける可能性があるため、このような差をできるだけ減らすことが求められる。
【0011】
このような従来のヒーターブロックにおける問題点を解決するために温度偏差の現象を細かく調べた結果、ウェーハをヒーターブロックに安定的に装着するためにヒーターブロックに適用する真空吸着のための真空ホールとそれに連結されるグルーヴ130などの真空構造により、ウェーハ裏面に印加されるバックサイド気圧が3torr程度で非常に低く、真空吸着力が高いときに特にこのような温度差が多く発生することが確認できており、周辺部より中央部側の一部で低い温度部位がはっきりと形成されることが確認できた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国公開特許第10-2005-0114571号公報
【文献】韓国登録特許第10-0935648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、上述した既存の化学気相成長器用のペデスタルヒーターブロックに載置されるウェーハの温度偏差が発生するのを減らすことができる構成のペデスタルヒーターブロックを提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、ウェーハの化学気相成長プロセスが進行されるときに、ウェーハ位置別の温度偏差を減らすことができる熱線構成を有するペデスタルヒーターブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するための本発明は、真空吸着によりウェーハを固定するように中央部に真空ホールが設けられ、ウェーハの裏面に温度均一化用ガスを供給するように構成された化学気相成長器用のペデスタルヒーターブロックであって、熱線が、例えば半径の1/2~4/5、より好ましくは3/5~2/3以内の位置を基準に、ウェーハ中心部に対応する位置であるヒーターブロックの中央部において、その外側の周辺部よりも高い設置密度を有するように設置されることを特徴とする。
【0016】
本発明における熱線の配置は、設置をの容易にするために左右対称よりは蝸牛形のような非対称型で構成されることがあり、非対称型で構成される場合、シーズ(sheath)型ヒーターよりもカートリッジ(catridge)型ヒーターで構成され得る。
【0017】
本発明において、ヒーターブロック本体は、熱伝導性に優れたアルミニウムあるいはアルミニウム合金からなり、表面に熱伝導性を高めるコーティング膜を形成してなされることが好ましい。
【0018】
本発明において、ヒーターブロック表面に形成されるグルーヴは、プロセス中にウェーハの裏面に適用されるバックサイド圧力が3torr以下を維持する場合に圧着密着力を向上させるため、従来と比較するとき、幅は広く、深さは浅くする。例えば、グルーヴの従来の断面では、幅が1.2mm~1.9mm、深さが1.2mm~1.9mmの正方形に近い断面であったら、本発明では幅は、例えば1倍~1.5倍程度増え、例えば2.3mm~3.0mm程度に形成できる。また、深さは、例えば0.3倍~0.6倍に減少された、例えば0.5mm~1.0mmの範囲に形成し、全体として幅が深さより2~6倍のもっと大きい形態を成すようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ペデスタルヒーターブロックにウェーハまたは基板が置かれて化学気相成長プロセスが行われる中、基板バックサイドに低い圧力、例えば3torr以下の低い圧力が印加され、それに応じて真空吸着力が高くなる場合、基板前面の温度均一化作用を行う温度均一化ガスの流れが不十分になって温度偏差が誘発されるときでも、低い温度になりやすいウェーハ位置に対応するヒーターブロックの中央部に周辺部より高い設置密度でヒーターを設置する。そうすることで、相対的に中央部にもっと多くの熱が伝達され、周辺部には熱を少なく伝達されることで、蒸着プロセス中にウェーハ全体に温度偏差が従来に比べて減少することができ、それに応じてウェーハに蒸着される膜の厚さ均一度、均質性を高めることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】従来の化学気相成長器用のペデスタルヒーターブロックの構成を示すための一つの側断面図である。
【
図2】従来の化学気相成長器用のペデスタルヒーターブロックにおいて熱線が左右対称を成すように均衡的に設置された例を示す概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による非対称構造のカートリッジ方式の熱線を採用したペデスタルヒーターブロックの基本構成を概念的に簡略に示す構成概念図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるカートリッジ方式の熱線が非対称型に設けられた形態を示す概略平面図である。
【
図5】従来と
図4の実施形態によりウェーハに熱を伝達するときに温度別に色相を異にして温度分布を比較できるように共に示す熱画像カメラ写真である。
【
図6】従来の熱線分布と本発明の一実施形態の熱線分布における化学気相成長器内のウェーハ300℃の温度設定時の位置別温度測定のためのテストウェーハ及び各々の温度測定の位置を示す平面図である。
【
図7】従来の熱線分布と本発明の一実施形態の熱線分布における化学気相成長器内のウェーハ300℃温度設定時のいくつかのプロセスチャンバ圧力およびバックサイド圧力の組み合わせによるテストウェーハ位置別温度分布を示す熱画像カメラの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態により本発明をより詳しく説明する。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態による非対称構造のカートリッジ方式の熱線を採用したペデスタルヒーターブロックの基本構成を概念的に簡略に示す1つの構成概念図であり、
図4は本発明の一実施形態によりカートリッジ方式の熱線が非対称に設けられた形態を示す概略平面図である。
【0023】
一般的な構成において、本発明のペデスタルヒーターブロックは
図1の構成と大きな違いはないものであり、図面上ではヒーターブロック210あるいはベースブロックの中央部上に内部ロッド240部分が結合されており、内部ロッド240内側から延長されてヒーターブロック210にカートリッジ型ヒーターの熱線220が設けられている。また、内部ロッド240には、ウェーハ(基板)をつかみ取る真空を印加するためのウェーハチャッキングパイプ260、アルゴンガス供給パイプ250が外部から連結される形態に設けられており、温度センサパイプ270も設置されている。
【0024】
ここでは、ペデスタルヒーターブロックの一般的な構成は、従来のヒーターブロックの構成と多くの部分で共通してなされるが、ヒーターブロックに設けられる熱線の配置形態が従来の
図2のような左右対称型でありながら周辺部および中心部に均等に分布するように配置された形態から、カタツムリの殻のような蝸牛形または渦巻状の非対称型に変化したことが確認できる。
【0025】
また、ここでは従来の熱線は、電流が入る端子と出る端子が両側に別途に形成される電線の一重なシーズ型から、電流が入る端子と出る端子が重なりながら熱線の一側にのみ形成される電線の二重に重なったカートリッジ型に変わっている。このようなカートリッジ型は、熱線220を非対称に設置するときに設置形態を設計するのに便利であるため、このような場合、より有利に使用され得る。
【0026】
蝸牛形は同心円と類似した形をしているが、熱線220のすべての部分が互いにつながる点では違いがあり、中心側から外側に逸脱しながら円周方向と同様に回り出るが、複数回にかけて回り出る一本の線で表示されている。このような蝸牛形熱線において内側熱線部分とそれに隣接する外側熱線部分との間の間隔を一定に維持することができ、外部電源との連結は、ヒーターブロックの中心部に位置する熱線の端部を通して行われ得る。
【0027】
平面図上の円形をなすヒーターブロック210において、放射状に中心から周辺に延びる直線と、この直線の周辺側端部を円周方向に連結する円は、ウェーハが置かれるヒーターブロック210の表面に形成されたグルーヴ230を表し、放射状に延びる直線の中心側端部は、真空吸着のための中央の真空ホールと連結され得る。したがって、ウェーハ真空吸着のための負圧は、これらのグルーヴ230を介してウェーハの裏面全体にわたって働く。
【0028】
ここで、ヒーターブロックの表面に形成されるグルーヴは、その幅と深さがバックサイド圧力に応じて温度の均一度補正のため位置あるいは領域によって寸法が増減されてもよい。工程(プロセス)中にウェーハ裏面に適用されるバックサイド圧力は、3torr以下を維持する場合、圧着密着力を向上させるため従来と比較するとき、幅は広くし、深さは浅くする。例えば、グルーヴの従来の断面では幅が1.2~1.9mm、深さが1.2~1.9mmの正方形に近い断面であったら、本発明では幅は、例えば1倍~1.5倍程度延びた、例えば2.3mm~3.0mm程度に形成することができ、深さは、例えば0.3倍~0.6倍に減少した、例えば0.5mm~1.0mmの範囲に形成して全体的に幅が深さより大きい形態を成すようにすることができる。
【0029】
ヒーターブロック210の表面には、グルーヴ230だけでなくガス供給ホールが多数の箇所に設けられ、表面全体にわたって分布するようになる。ガス供給ホールから供給されるガスは、主にアルゴンやヘリウムのような不活性ガスが使用される。
【0030】
ヒーターブロックに置かれるウェーハには直接伝導(conduction)を通して多くの部分の熱が伝達されるものの、熱線は線として存在し、ヒーターブロック表面は面として存在し、したがって熱線はヒーターブロックの全体面に完全に均等に分布することができない。ヒーターブロックが熱伝導性に優れたアルミニウムのような材料で構成されていても、位置ごとの温度偏差は発生することができる。
【0031】
ガス供給ホールから出てきたガスは、ヒーターブロックの表面とウェーハの裏面との間の空間で、これらと接触しながら移動して気流を形成し、このような気流はガス移動中に部分的に高い温度を有する所で熱を奪い、部分的に低い温度を有する所で熱を与える役割を遂行しながら、グルーヴと真空ホールを経て排出される。
【0032】
バックサイド圧力は、全プロセス過程を通じて大きさが調節され、プロセス中にバックサイド圧力が、例えば3torr以下に非常に低くなって真空吸着が強くなると、ウェーハは一部変形されながら、真空ホールのある中心部側がヒーターブロック表面とさらに密着するようになる。これにより、中心部ではガス供給ホールからガスが放出され、ヒーターブロックと基板との間を円滑に流れることができなくなり、温度均一化ガスとしての役割を果たすのが難しい。
【0033】
その結果として、中心部のウェーハ温度が他の部分に比べて低く維持される部分が生じるものの、本発明では、ヒーターブロックの中心部側に周辺部に比べて熱線の設置密度を高めてこのような温度の不均衡を解消するようにする。すなわち、ガスの移動が円滑を欠き、ガスを介して熱供給が減少しても中心部に熱線を集中配置して伝導による熱伝達がより多くなるようにし、これにより全体的な温度偏差を減らすことができるようになる。
【0034】
本発明では、円形ヒーターブロック全体において、中心から、例えば半径2/3~3/5の範囲の一点までを基準に、その内側の中央部に蝸牛形をなす熱線が主に分布し、その外側の周辺部では非対称分布の熱線の一端が周辺部に一部延びていく部分があるが、この部分は全体的に見ると大きな影響を与えない。
【0035】
したがって、
図4の実施形態では、熱線220は、円形のヒーターブロックの中心から半径2/3~3/5の範囲の一点までを定めて中央部とするとき、中央部に限定して蝸牛形に設けられ、その外側にはほとんど分布しない形態を示す。
【0036】
条件によって多少の違いがあり得るが、ヒーターブロックに置かれるウェーハは、ヒーターブロックとほぼ同じ半径または10%程度の少し小さい半径を有するため、ヒーターブロック中心から半径1/2程度まで熱線の密集領域を縮小すれば、むしろ中央部領域に比べて周辺部領域の温度がより低くなることがあるため、熱線密集領域を決めるとき、少なくとも半径の半分以上になる地点を基準にしてその内側に熱線の設置密度を高めるようにする。逆に、中心から半径の4/5以上になる地点を基準にしてその内側に熱線密集領域を決めると、中心部の温度に比べて周辺部の温度が相変わらず高いため、温度偏差が十分に減らせないことになる。
【0037】
もちろん、状況によっては、この実施形態とは異なり、外側にも一部の熱線が分布することができるものの、中央部に比べて低い設置密度で設置される。これは、
図2のような従来の対称型であり、半径方向に眺めると熱線が比較的均等に案分され、ヒーターブロックの外郭周辺部にも熱線が設けられた従来技術とは異なることが確認できる。
【0038】
このような構成のために、熱線は電線が重なる単純な線形のカートリッジ型で先に形成され、ヒーターブロックのベースブロックにある蝸牛形の熱線取付溝に単純な線形のカートリッジ型熱線を変形させながら挿入・固定して蝸牛形熱線に作り、熱線の端子をヒーターブロックの後方ロッドに連結することができるように折り曲げて引き抜きながら、ベースブロックの後方にブロックバックカバーを組み立てる方式で構成される。このとき、折り曲げられた熱線の端子はブロックバックカバーの貫通孔を通過し、その後方のロッド中心を通して外部電源と連結され得る。
【0039】
あるいは、ヒーターブロックのベースブロックにある蝸牛形の熱線取付溝と同様の形で別途の平板状ジグに溝を設け、単純な線形の熱線を挿入しながら変形させて蝸牛形に形成し、このように形成された蝸牛形熱線の全体をそのままベースブロックに存在する蝸牛形熱線取付溝に入れて結合させ、前述した例と同様にブロックバックカバーをベースブロックに結合させる方法を用いてこのような構成を成すこともある。
【0040】
図5は、従来の
図2の実施形態と本発明の
図4の実施形態によりウェーハに熱を伝達するときに温度別に色相を異にして温度分布を比較できるように共に示す温度分布図の比較図である。図面上では、上側が本発明の場合を示し、下側が従来技術の場合を示す。
【0041】
従来技術の場合では、図面上のウェーハの中心から若干下部側に温度の低い部分が上下方向の長い楕円形で表れ、ウェーハの上部の左右周辺部側に温度の高い部分が表れることが確認できる。
【0042】
図4の実施形態のようなヒーターブロックを使用した場合、相変わらずウェーハ中心から若干下部側に温度の低い部分が表れるが、今度は左右方向が長い楕円形で示され、ウェーハ上部の左右周辺部側の温度の高い部分が顕著にならなくなることが確認できる。
【0043】
以下では、このような結果について従来技術との比較資料を通じてさらに説明する。
【0044】
まず、グリーンピーディー12(Green PD12)と名付けられた化学気相成長器において、
図2のような対称型熱線分布を有するシーズ型熱線を設けたヒーターブロックと、
図4のような蝸牛形で非対称型熱線分布を有するカートリッジ型熱線を設置したヒーターブロックとにテストウェーハを置く。このとき、設定温度を300℃とし、プロセスチャンバ圧力は10/40torrを適用することができ、テストウェーハ裏面に適用されるバックサイド圧力は、3/5/20torrを適用することができるように設置された装備を用いて効果を比較するための実験を行った。
【0045】
まず、従来温度偏差が激しかった圧力条件であるチャンバ圧力10torr、バックサイド圧力3torr条件で
図6のようなテストウェーハのTC1からTC17までの各位置での温度を測定して表1のようなローデータ (raw data)を獲得した。
【0046】
【0047】
その結果をまとめて表2に示した。
【0048】
【0049】
表2を参照すると、従来の熱線分布を有するヒーターブロックには同じ化学気相成長器の300℃設定条件でウェーハ位置に応じて上部の右側で最大温度296.2℃を記録し、その周囲が全体的に温度が高く、周辺部は全体的に温度が高く、中央部TC9及び中央下部TC10部分で最小温度291.4℃を記録しており、中央部は全体的に温度が低かった。温度偏差は4.8℃に達しており、温度平均は293.8℃、均一度0.81%に達した。
【0050】
本発明の実施形態の熱線分布を有するヒーターブロックでは、同じ化学気相成長器の300℃設定条件においてウェーハ位置に応じて左側で最大温度294.5℃を記録し、その周囲が全体的に温度が高く、周辺部は全体的に温度が少し高く、右下側中央部TC13部分で最小温度292.3℃を記録しており、中央部は全体的に温度が多少低かった。しかし、従来に比べて温度の高い部分は温度1.7℃程度としてかなり低くなっており、温度の低い部分は温度が0.9℃程度と若干高くなって温度偏差は2.6℃程度と低くなっており、温度平均は293.4℃で大きな変化はなく、均一度0.37%と小さくなった。
【0051】
全体的に察して見ると、温度が従来高い部分はかなり低くなり、温度が低い部分が少し高くなり、温度偏差は大幅に減少することが分かる。もちろん、温度偏差が減少すればするほど、ウェーハの位置別蒸着物質の厚さのばらつきは減少し、それによる不良率は減少し、歩留まり(収率)は向上することができる。
【0052】
以下の表3は、表2の結果を拡張して他のプロセスチャンバ圧力とバックサイド圧力の下でウェーハの位置別温度のローデータを獲得・整理して結果を取り合わせることで、比較を可能にしたものである。すなわち、比較のためにプロセスチャンバ圧力10torrとバックサイド圧力3torrの組み合わせ(CASE1)に加えて、他の圧力の組み合わせとして、プロセスチャンバ圧力10torrとバックサイド圧力5torr(CASE2)、プロセスチャンバ圧力40torrとバックサイド圧力20torr(CASE3)を適用した場合の結果をさらに示している。
【0053】
【0054】
このような表3を参照すると、熱線分布を非対称型の蝸牛形に変えた実施形態と比較する場合に、従来のとき、バックサイド圧力が高く真空吸着度が低ければ低いほど全体的にウェーハの温度レベルは設定温度である300℃に近接し、温度偏差は大きくないことが確認できる。熱線の形態を変えた本発明の構成のヒーターブロックを適用する場合、温度偏差の改善効果はすべて表れるが、バックサイド圧力が低いほど温度偏差の解消効果が大きく表れることがわかる。
【0055】
図7は、表3に係る実験の結果を示すウェーハの熱分布写真であり、一番上側がバックサイド圧力3torr、中間がバックサイド圧力5torr、下側がバックサイド圧力20torrの場合を示し、全体的に左側が従来技術であり、右側が本発明の実施形態の場合を示す。全体として表3と符合する熱分布形態を見ることができる。すなわち、バックサイド圧力が低く、ウェーハに対するヒーターブロックにおける真空吸着力が高いほど温度偏差は顕著になり、本発明のヒーターブロックを適用したときの温度偏差の改善効果があることを示している。
【0056】
以上では、限定された実施形態によって本発明を説明しているが、これは本発明の理解を助けるために例として説明されただけであり、本願発明はこれらの特定の実施形態に限定されるものではない。
【0057】
したがって、当該発明が属する分野における通常の知識を有する者であれば、本発明に基づいて多様な変更や応用例を実施することができるはずであり、このような変形例や応用例は添付の特許請求の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0058】
10、210:ベースブロック
20:ブロックバックカバー
30、240:内部ロッド
40:外部ロッド
50:シーズヒーター
60:真空パイプ
70、250:ガス供給パイプ
80、270:温度センサパイプ
110、210:ヒーターブロック
120、220:熱線
130、230:グルーヴ