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特許7522508無機化合物、分散液およびその製造方法、ならびに膜およびその製造方法、無機化合物、メタンおよび水素の製造方法、分散液およびその製造方法、ならびに膜およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】無機化合物、分散液およびその製造方法、ならびに膜およびその製造方法、無機化合物、メタンおよび水素の製造方法、分散液およびその製造方法、ならびに膜およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20240718BHJP
   C01G 33/00 20060101ALI20240718BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20240718BHJP
   C07C 9/04 20060101ALI20240718BHJP
   C07C 5/00 20060101ALI20240718BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C01G23/00 C
C01G23/00 Z
C01G33/00 Z
C01B3/04 Z
C07C9/04
C07C5/00
C07B61/00 300
【請求項の数】 32
(21)【出願番号】P 2023576318
(86)(22)【出願日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2023029745
(87)【国際公開番号】W WO2024038899
(87)【国際公開日】2024-02-22
【審査請求日】2023-12-11
(31)【優先権主張番号】P 2022131218
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022131219
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515222218
【氏名又は名称】日本材料技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】大井 寛崇
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/092359(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/064816(WO,A1)
【文献】特開2020-093971(JP,A)
【文献】特開2006-172991(JP,A)
【文献】特開2003-229142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00-23/08
C01G 25/00-47/00
C01B 49/10-99/00
C01B 11/24
C07C 1/20、5/00、9/04
B32B 5/00
C07B 61/00
H01M 4/00-4/62
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MとOとFとを含み、
Mは、1種以上の遷移金属元素であり、
Oのモル比をb、Fのモル比をcとすると、(b/c)が0.60以上2.30以下であり、
X線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅は0.001°以上0.60°以下である、無機化合物。
【請求項2】
前記無機化合物は、さらにXを含み、Xは、CまたはNから選択される1種以上の元素である、請求項1に記載の無機化合物。
【請求項3】
Mは周期律表の第4族元素および第5族元素の少なくとも一方であり、XはCである、請求項2に記載の無機化合物。
【請求項4】
MはTiおよびNbの少なくとも一方であり、XはCである、請求項2に記載の無機化合物。
【請求項5】
前記無機化合物は、さらにXおよびYを含み、Xは、CまたはNから選択される1種以上の元素であり、Yは、H、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、酸素を除くカルコゲン元素およびフッ素を除くハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素である、請求項1に記載の無機化合物。
【請求項6】
Mは周期律表の第4族元素および第5族元素の少なくとも一方であり、XはCである、請求項4に記載の無機化合物。
【請求項7】
MはTiおよびNbの少なくとも一方であり、XはCである、請求項4に記載の無機化合物。
【請求項8】
前記無機化合物は、Al、Si、Ga、P、S、Ge、As、Cd、In、Sn、TlおよびPbからなる群より選択される1種以上の不可避不純物をさらに含み、Mのモル総量Wmに対する前記不可避不純物のモル総量Wiの比(Wi/Wm)は1.0×10-6以上5.0×10-1以下である、請求項1に記載の無機化合物。
【請求項9】
前記無機化合物のMのモル比をaとすると、((b+c)/a)が0.30以上1.60以下である、請求項1に記載の無機化合物。
【請求項10】
前記無機化合物は層状であり、層の厚みが0.15μm以上10.00μm以下である、請求項1に記載の無機化合物。
【請求項11】
前記無機化合物の全量に対する前記無機化合物中のHFの重量比は、1ppt以上50ppm以下である、請求項1に記載の無機化合物。
【請求項12】
前記無機化合物の全量に対する前記無機化合物中の水分の重量比は、1ppm以上1.0%以下である、請求項1に記載の無機化合物。
【請求項13】
前記無機化合物は、マキシンである、請求項1~12のいずれか1項に記載の無機化合物。
【請求項14】
請求項13に記載の無機化合物を含む分散液。
【請求項15】
請求項13に記載の無機化合物を含む膜。
【請求項16】
請求項13に記載の無機化合物を用いて分散液を製造する分散液の製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載の無機化合物を用いて膜を製造する膜の製造方法。
【請求項18】
MとOとFとを含み、
Mは、1種以上の遷移金属元素であり、
Oのモル比をb、Fのモル比をcとすると、(b/c)が0.01以上1.50以下であり、
X線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅は0.45°以上1.00°以下である、無機化合物。
【請求項19】
前記無機化合物は、さらにXを含み、Xは、CおよびNのうちの少なくともCを含む、請求項18に記載の無機化合物。
【請求項20】
MはTiであり、XはCである、請求項19に記載の無機化合物。
【請求項21】
前記無機化合物は、さらにXおよびYを含み、Xは、CおよびNのうちの少なくともCを含み、Yは、H、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、酸素を除くカルコゲン元素およびフッ素を除くハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素である、請求項18に記載の無機化合物。
【請求項22】
MはTiであり、XはCである、請求項21に記載の無機化合物。
【請求項23】
前記無機化合物は、Al、Si、Ga、P、S、Ge、As、Cd、In、Sn、TlおよびPbからなる群より選択される1種以上の元素をさらに含み、Mのモル総量Wmに対する前記元素のモル総量Wiの比(Wi/Wm)は0.03以上0.50以下である、請求項18に記載の無機化合物。
【請求項24】
前記無機化合物のMのモル比をaとすると、((b+c)/a)が0.50以上5.00以下である、請求項18に記載の無機化合物。
【請求項25】
前記無機化合物は層状であり、層の厚みが0.05μm以上0.20μm以下である、請求項18に記載の無機化合物。
【請求項26】
前記無機化合物は、マキシンである、請求項18~25のいずれか1項に記載の無機化合物。
【請求項27】
請求項26に記載の無機化合物を加熱してメタンおよび水素を製造する、メタンおよび水素の製造方法。
【請求項28】
請求項26に記載の無機化合物とアルコールまたは水とを接触させてメタンおよび水素を製造する、メタンおよび水素の製造方法。
【請求項29】
請求項26に記載の無機化合物を含む分散液。
【請求項30】
請求項26に記載の無機化合物を含む膜。
【請求項31】
請求項26に記載の無機化合物を用いて分散液を製造する分散液の製造方法。
【請求項32】
請求項26に記載の無機化合物を用いて膜を製造する膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無機化合物、分散液およびその製造方法、ならびに膜およびその製造方法に関する。また、本開示は、無機化合物、メタンおよび水素の製造方法、分散液およびその製造方法、ならびに膜およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な無機化合物の研究が盛んに行われている。無機化合物のなかでも、近年、新規物質として、複合原子層化合物であるマキシン(MXene)が発見および開発されている。マキシンは、グラフェンに代表されるナノシート材料の一つであり、特許文献1に記載されているような組成式Mn+1で表され、M原子とX原子が層状に配列した結晶構造を一部ないしは全部に有する無機化合物である。Mは遷移金属であり、例えばSc、Y、Lu、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、Wが例示される。Mは1種類の遷移金属から構成されても良いし、複数種類の遷移金属から構成されてもよい。XはCおよび/またNである。nは1から4の整数である。このように、マキシンは構成元素の組み合わせで極めて多くのバリエーションが存在する。構成元素の組み合わせに応じて、それぞれのマキシンは導電性や触媒活性、刺激応答性等、物性や機能が異なり、用途に応じて多様なマキシンが検討されている。
【0003】
しかしながら、例えば非特許文献1などに記載されているように、従来報告されているマキシンは、高温に晒されると、分解され、20%以上も重量減少されてしまう。このように、従来のマキシンは、耐熱性が低いため、高温環境下で製造・使用される電子部品や蓄電池の材料に応用することは困難である。
【0004】
また、メタンの製造方法は、一酸化炭素と水素を反応させる方法以外に、炭化アルミニウムを加熱する方法などが知られている。しかしながら、これらのメタンの製造方法では、いずれも高温が必要条件である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2012/177712号
【非特許文献】
【0006】
【文献】James L. Hart, et al., Control of MXenes’ electronic properties through termination and intercalation, nature communications, Vol.10 P1-10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示の目的は、耐熱性の高い無機化合物、この無機化合物を含む分散液およびその製造方法、ならびにこの無機化合物を含む膜およびその製造方法を提供することである。また、本開示の目的は、低温でのメタンおよび水素の製造が可能な無機化合物、この無機化合物を用いたメタンおよび水素の製造方法、この無機化合物を含む分散液およびその製造方法、ならびにこの無機化合物を含む膜およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] MとOとFとを含み、Mは、1種以上の遷移金属元素であり、Oのモル比をb、Fのモル比をcとすると、(b/c)が0.60以上2.30以下であり、X線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅は0.60°以下である、無機化合物。
[2] 前記無機化合物は、さらにXを含み、Xは、CまたはNから選択される1種以上の元素である、上記[1]に記載の無機化合物。
[3] Mは周期律表の第4族元素および第5族元素の少なくとも一方であり、XはCである、上記[2]に記載の無機化合物。
[4] MはTiおよびNbの少なくとも一方であり、XはCである、上記[2]に記載の無機化合物。
[5] 前記無機化合物は、さらにXおよびYを含み、Xは、CまたはNから選択される1種以上の元素であり、Yは、H、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、酸素を除くカルコゲン元素およびフッ素を除くハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素である、上記[1]に記載の無機化合物。
[6] Mは周期律表の第4族元素および第5族元素の少なくとも一方であり、XはCである、上記[4]に記載の無機化合物
[7] MはTiおよびNbの少なくとも一方であり、XはCである、上記[4]に記載の無機化合物。
[8] 前記無機化合物は、Al、Si、Ga、P、S、Ge、As、Cd、In、Sn、TlおよびPbからなる群より選択される1種以上の不可避不純物をさらに含み、Mのモル総量Wmに対する前記不可避不純物のモル総量Wiの比(Wi/Wm)は1.0×10-6以上5.0×10-1以下である、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[9] 前記無機化合物のMのモル比をaとすると、((b+c)/a)が0.30以上である、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の無機化合物
[10] 前記無機化合物のMのモル比をaとすると、((b+c)/a)が1.60以下である、上記[1] ~[9]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[11] 前記無機化合物は層状であり、層の厚みが0.15μm以上10.00μm以下である、上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[12] 前記無機化合物の全量に対する前記無機化合物中のHFの重量比は、1ppt以上50ppm以下である、上記[1]~[11]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[13] 前記無機化合物の全量に対する前記無機化合物中の水分の重量比は、1ppm以上1.0%以下である、上記[1]~[12]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[14] 前記無機化合物は、マキシンである、上記[1]~[13]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[15] 上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の無機化合物を含む分散液。
[16] 上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の無機化合物を含む膜。
[17] 上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の無機化合物を用いて分散液を製造する分散液の製造方法。
[18] 上記[1]~[14]のいずれか1つに記載の無機化合物を用いて膜を製造する膜の製造方法。
[19] MとOとFとを含み、Mは、1種以上の遷移金属元素であり、Oのモル比をb、Fのモル比をcとすると、(b/c)が1.50以下であり、X線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅は0.45°以上である、無機化合物。
[20] 前記無機化合物は、さらにXを含み、Xは、CおよびNのうちの少なくともCを含む、上記[19]に記載の無機化合物。
[21] MはTiであり、XはCである、上記[20]に記載の無機化合物。
[22] 前記無機化合物は、さらにXおよびYを含み、Xは、CおよびNのうちの少なくともCを含み、Yは、H、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、酸素を除くカルコゲン元素およびフッ素を除くハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素である、上記[19]に記載の無機化合物。
[23] MはTiであり、XはCである、上記[22]に記載の無機化合物。
[24] 前記無機化合物は、Al、Si、Ga、P、S、Ge、As、Cd、In、Sn、TlおよびPbからなる群より選択される1種以上の元素をさらに含み、Mのモル総量Wmに対する前記元素のモル総量Wiの比(Wi/Wm)は0.03以上0.50以下である、上記[19]~[23]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[25] 前記無機化合物のMのモル比をaとすると、((b+c)/a)が0.50以上である、上記[19]~[24]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[26] 前記無機化合物は層状であり、層の厚みが0.20μm以下である、上記[19]~[25]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[27] 前記無機化合物は、マキシンである、上記[19]~[26]のいずれか1つに記載の無機化合物。
[28] 上記[19]~[27]のいずれか1つに記載の無機化合物を加熱してメタンおよび水素を製造する、メタンおよび水素の製造方法。
[29] 上記[19]~[27]のいずれか1つに記載の無機化合物とアルコールまたは水とを接触させてメタンおよび水素を製造する、メタンおよび水素の製造方法。
[30] 上記[19]~[27]のいずれか1つに記載の無機化合物を含む分散液。
[31] 上記[19]~[27]のいずれか1つに記載の無機化合物を含む膜。
[32] 上記[19]~[27]のいずれか1つに記載の無機化合物を用いて分散液を製造する分散液の製造方法。
[33] 上記[19]~[27]のいずれか1つに記載の無機化合物を用いて膜を製造する膜の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、耐熱性の高い無機化合物、この無機化合物を含む分散液およびその製造方法、ならびにこの無機化合物を含む膜およびその製造方法を提供することができる。また、本開示によれば、低温でのメタンおよび水素の製造が可能な無機化合物、この無機化合物を用いたメタンおよび水素の製造方法、この無機化合物を含む分散液およびその製造方法、ならびにこの無機化合物を含む膜およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】マキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。
図2】マキシンの結晶構造の他の例を示す概略模式図である。
図3】複数種のM元素と複数種のX元素を有するマキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。
図4】複数種の表面官能基原子を有するマキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。
図5】実施例1の無機化合物のTGデータである。
図6】比較例1の無機化合物のTGデータである。
図7】実施例1の無機化合物のXRDデータである。
図8】実施例4の無機化合物のSEM像である。
図9】実施例7の無機化合物のSEM像である。
図10】実施例10の無機化合物のSEM像である。
図11】比較例1の無機化合物のSEM像である。
図12】比較例2の無機化合物のSEM像である。
図13】比較例3の無機化合物のSEM像である。
図14】比較例5の無機化合物のSEM像である。
図15】実施例12の無機化合物のSEM像である。
図16】比較例9の無機化合物のSEM像である。
図17】実施例12の無機化合物のGC-BIDデータである。
図18】比較例9の無機化合物のGC-BIDデータである。
図19】実施例12の無機化合物のXRDデータである。
図20】比較例9の無機化合物のXRDデータである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、従来と異なる製造条件により、無機化合物の組成および結晶子サイズを制御して、耐熱性を高めることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。また、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、従来と異なる製造条件により、無機化合物の組成および結晶子サイズを制御して、低温でメタンおよび水素を生成できることを見出し、かかる知見に基づき本開示を完成させるに至った。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態の無機化合物は、MとOとFとを含み、Mは、1種以上の遷移金属元素であり、Oのモル比をb、Fのモル比をcとすると、(b/c)が0.60以上2.30以下であり、X線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅は0.60°以下である。
【0014】
上記のように、第1実施形態の無機化合物は、MとO(酸素)とF(フッ素)とを含む。
【0015】
無機化合物を構成するMは、1種以上の遷移金属元素であり、好ましくは前周期遷移金属元素である。例えば、Mは、1種の遷移金属元素でもよいし、2種以上の遷移金属元素でもよい。
【0016】
また、無機化合物は、MとOとFに加えて、さらにXを含んでもよい。無機化合物を構成するXは、C(炭素)またはN(窒素)から選択される1種以上の元素である。すなわち、Xは、Cのみ、Nのみ、CおよびNのいずれかである。
【0017】
無機化合物がMとOとFとXとを含む場合、無機化合物の耐熱性を向上する観点から、Mは、周期律表の第4族元素および第5族元素の少なくとも一方であることが好ましく、Ti(チタン)およびNb(ニオブ)の少なくとも一方であることがより好ましい。また、同様の観点から、XはCであることが好ましい。
【0018】
また、無機化合物は、MとOとFに加えて、さらにXおよびYを含んでもよい。無機化合物を構成するYは、H(水素)、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、酸素を除くカルコゲン元素およびフッ素を除くハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素である。例えば、Yは、1種のアルカリ金属元素でもよいし、1種のアルカリ金属元素および1種のアルカリ土類金属元素でもよい。Yとしては、H、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、S、Se、Te、Cl、BrおよびIからなる群より選択される1種以上の元素であることが好ましく、H、Li、Na、K、Mg、Ca、S、Se、ClおよびBrからなる群より選択される1種以上の元素であることがより好ましく、H、Li、NaおよびClからなる群より選択される1種以上の元素であることがさらに好ましい。
【0019】
無機化合物がMとOとFとXとYとを含む場合、無機化合物の耐熱性を向上する観点から、Mは、周期律表の第4族元素および第5族元素の少なくとも一方であることが好ましく、TiおよびNbの少なくとも一方であることがより好ましい。また、同様の観点から、XはCであることが好ましい。
【0020】
また、無機化合物は、不可避不純物として、Al、Si、Ga、P、S、Ge、As、Cd、In、Sn、TlおよびPbからなる群より選択される1種以上の元素を含んでもよい。不可避不純物とは、製造工程上、不可避的に混入してしまう含有レベルの不純物である。不可避不純物の含有量によっては無機化合物の特性に影響を及ぼす要因になりうるため、不可避不純物の含有量は少ないことが好ましい。
【0021】
無機化合物の耐熱性向上を維持する観点から、無機化合物に含まれる、Mのモル総量Wmに対する不可避不純物のモル総量Wiの比(Wi/Wm)は、5.0×10-1以下であることが好ましく、小さいほど好ましい。また、比(Wi/Wm)の下限値としては、例えば1.0×10-6以上である。
【0022】
また、無機化合物には、無機化合物の耐熱性向上の効果が低下しない程度に、上記元素以外の元素が含まれてもよい。
【0023】
また、無機化合物は、層状の無機化合物(以下、層状化合物ともいう。)であることが好ましく、そのなかでもマキシン(MXene)であることがより好ましい。層状の無機化合物とは、無機化合物の一次粒子または二次粒子がシート形状である無機化合物である。
【0024】
層状化合物としては、スメクタイト類、マガディアイト、カネマイトおよびタルク、カオリナイトのような粘土鉱物、ニオブ酸カリウムおよびニオブ酸リチウムのようなニオブ酸塩、チタン酸カリウムおよびチタン酸リチウムのようなチタン酸塩、金属リン酸塩、ハイドロタルサイトのような層状水酸化物、MoS、WS、TaSおよびNbSのような金属カルコゲン化物、マキシン、MAX相が好適である。
【0025】
また、マキシンは、一般的には、組成式Mn+1(nは1から4の整数)で表され、M原子とX原子が層状に配列した結晶構造を一部ないしは全部に有する無機化合物であり、例えば、図1~4が例示される。図1は、Mマキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。M原子の層とX原子の層が交互に配列した構造を有し、最表面に表面官能基原子を有する。図2は、MXマキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。Mマキシンと層の数が異なるが、MXマキシンも同様の構造を有している。図3は、複数種のM元素および複数種のX元素を有するマキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。図4は、複数種の表面官能基原子を有するマキシンの結晶構造の一例を示す模式図である。
【0026】
また、MAX相は、組成式Mn+1AXで表される無機化合物である。例えば、nは1から4の整数である。
【0027】
第1実施形態の無機化合物がMとOとFとXとを含むマキシンである場合、無機化合物に含まれるMのモル比をa、Oのモル比をb、Fのモル比をc、Xのモル比をdとすると、マキシンは下記式(1)で表される。XがCとNとからなる場合は、Cのモル比をd1、Nのモル比をd2と表す。d1とd2の和(d1+d2)はdである。
【0028】
式(1)
【0029】
式(1)で表されるマキシンとして、Ti、Ti、Tid1d2、V、V、Vd1d2、Nb、Nb、Nbd1d2、Mo、Mo、Mod1d2、Sc、Sc、Scd1d2、Cr、Cr、Crd1d2、Zr、Zr、Zrd1d2、Hf、Hf、Hfd1d2、Ta、Ta、Tad1d2は耐熱性向上および合成容易性の点で好ましく、そのなかでもTi、Ti、Tid1d2、V、V、Vd1d2、Nb、Nb、Nbd1d2、Mo、Mo、Mod1d2、Cr、Cr、Crd1d2、Ta、Ta、Tad1d2は導電性や触媒機能等の高い機能をさらに有する点でより好ましく、そのなかでもTid1d2、V、V、Vd1d2、Nb、Nb、Nbd1d2は上記機能をさらに向上する点でさらに好ましい。
【0030】
また、無機化合物がMとOとFとXとYとを含むマキシンである場合、無機化合物に含まれるMのモル比をa、Oのモル比をb、Fのモル比をc、Xのモル比をd、Yのモル比をeとすると、マキシンは下記式(2)で表される。YがY1からYnのn種類の元素(nは1以上の整数)からなる場合は、Yの各元素のモル比をそれぞれe1からenと表す。e1からenの和(e1+・・・+en)はeである。
【0031】
式(2)
【0032】
無機化合物の耐熱性を向上する観点から、式(2)で表されるマキシンとしては、YがH、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、S、Se、Te、Cl、BrおよびIからなる群より選択される1種類以上の元素を含むことが好ましく、H、Li、Na、K、Mg、Ca、S、Se、ClおよびBrからなる群より選択される1種類以上の元素を含むことがより好ましく、H、Li、NaおよびClからなる群より選択される1種類以上の元素を含むことがさらに好ましい。式(2)で表されるマキシンとしては、具体的には、Ti、Ti、Tid1d2、Tie1Lie2、Tie1Lie2、Tid1d2e1Lie2、Tie1Cle2、Tie1Cle2、Tid1d2e1Cle2、Nbが好適である。
【0033】
上記の無機化合物について、無機化合物に含まれるOのモル比をb、Fのモル比をcとすると、(b/c)が0.60以上2.30以下である。(b/c)が上記範囲内であると、無機化合物の耐熱性を向上できる。
【0034】
また、無機化合物に含まれるMのモル比をaとすると、((b+c)/a)は1.60以下であることが好ましい。((b+c)/a)が上記範囲内であると、無機化合物の耐熱性をさらに向上できる。
【0035】
特に、室温から350℃における無機化合物の耐熱性向上の観点においては、(b/c)は、0.60以上であり、好ましくは1.10以上、より好ましくは1.30以上、さらに好ましくは1.70以上である。同様の観点から、((b+c)/a)の上限値は、好ましくは1.60以下、より好ましくは1.20以下、さらに好ましくは1.00以下であり、((b+c)/a)の下限値は、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.70以上である。また、350℃以上における無機化合物の耐熱性向上の観点においては、(b/c)は、2.30以下であり、好ましくは2.10以下、より好ましくは1.80以下、さらに好ましくは1.40以下である。同様の観点から、((b+c)/a)の上限値は、好ましくは1.60以下であり、((b+c)/a)の下限値は、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは1.00以上、特に好ましくは1.20以上である。
【0036】
室温から350℃における無機化合物の重量減少は、主に無機化合物表面に存在し、弱く結合した表面官能基原子が分解・揮発するためと考えられる。官能基総量を表す((b+c)/a)が小さいほど、無機化合物の耐熱性が高く、官能基種の比率を表す(b/c)が大きいほど、比較的弱い結合であるM-F結合の量が少なくなるため、無機化合物の耐熱性が向上する。また、350℃以上における無機化合物の重量減少は、強く結合した表面官能基の分解と無機化合物のバルク部分の分解であり、無機化合物に欠陥やひずみが少ないほど、無機化合物の耐熱性が高くなると考えられる。(b/c)および((b+c)/a)が上記範囲内であれば、欠陥やひずみの少ない無機化合物が得られるため、無機化合物の耐熱性が向上する。
【0037】
無機化合物に含まれるMのモル比a、Oのモル比b、Fのモル比cは、SEM-EDXで測定できる。
【0038】
また、無機化合物のX線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅(以下、単に半値幅ともいう)は、0.60°以下であり、好ましくは0.54°以下、より好ましくは0.40°以下であり、小さいほど好ましい。上記半値幅が0.60°以下であると、無機化合物の耐熱性を向上でき、上記半値幅が小さいほど、無機化合物の耐熱性を向上できる。無機化合物の分解は欠陥や結晶のひずみ部分から発生すると考えられ、半値幅が小さいと、すなわち単結晶サイズが大きく欠陥が少ないと、無機化合物は分解しにくく耐熱性が高くなると考えられる。また、半値幅の下限値は、例えば0.001°以上である。
【0039】
無機化合物のX線回折分析は、次のようにして行う。X線回折装置を用いて、試料ホルダーに粉末状の無機化合物を充填させ、θ-2θ法にて、例えば3°~80°間のX線回折強度を測定し、ピーク強度からノイズであるバックグラウンド値を差し引いて、(110)面の回折ピークを得る。得られた(110)面の回折ピークを基に、半値幅を算出する。このとき、X線としてはCuKαの特性X線(波長0.154nm)を用いる。
【0040】
また、無機化合物は層状であり、層の厚みについて、下限値は、好ましくは0.15μm以上、より好ましくは0.18μm以上、さらに好ましくは0.20μm以上であり、上限値は、好ましくは10.00μm以下、より好ましくは5.00μm以下、さらに好ましくは2.00μm以下である。無機化合物の層の厚みが0.15μm以上であると、無機化合物の耐熱性が向上する。また、無機化合物の層の厚みが10.00μm以下であると、シート状の形態をとることができ、また、比表面積の増加等の効果が得られる。
【0041】
無機化合物の層の厚みとは、無機化合物の単結晶シート(シート形状の単結晶)の厚みではなく、無機化合物の複数の単結晶シートが、おおよそ0.05μm以下の隙間を介して積層してなるシート状の凝集体の厚みである。無機化合物の形状や無機化合物の層の厚みは、粉末状の無機化合物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して測定する。
【0042】
また、無機化合物中にフッ化水素(HF)が含まれている場合、無機化合物の全量に対する無機化合物中のHFの重量比(以下、単にHFの重量比ともいう)は、好ましくは50ppm以下、より好ましくは20ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下であり、小さいほど好ましい。HFの重量比が50ppm以下であると、無機化合物の耐熱性をさらに向上でき、HFの重量比が小さいほど、無機化合物の耐熱性を向上できる。また、HFの重量比の下限値は、例えば1ppt以上である。
【0043】
HFの重量比は、HFを溶解する有機溶媒と無機化合物を混合し、24時間攪拌した後、有機溶媒中のFイオン濃度をイオンクロマトグラフィにて測定することで有機溶媒中に抽出されたHF重量を定量化し、HF重量を無機化合物重量で除することで求めることができる。
【0044】
また、無機化合物中に水分が含まれている場合、無機化合物の全量に対する無機化合物中の水分の重量比(以下、単に水分の重量比ともいう)は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下であり、小さいほど好ましい。水分の重量比が1.0%以下であると、無機化合物の耐熱性をさらに向上でき、水分の重量比が小さいほど、無機化合物の耐熱性を向上できる。また、水分の重量比の下限値は、例えば1ppm以上である。
【0045】
水分の重量比は、水と混和する有機溶媒と無機化合物を混合し、24時間攪拌した後、有機溶媒中の水分量をカールフィッシャー水分計等で定量化し、水分重量を無機化合物重量で除することで求めることができる。
【0046】
このような第1実施形態の無機化合物は、耐熱性に優れているため、耐熱性の低い従来のマキシンでは適用に困難であった、高温環境下で製造・使用される電子部品や蓄電池の材料に好適に用いることができる。さらに、無機化合物は、太陽電池、LED、タッチパネルの材料に好適に用いることができる。
【0047】
次に、第1実施形態の無機化合物の製造方法の一例について説明する。
【0048】
例えば、A相を選択的に除去する溶液(以下、除去溶液ともいう)にMAX相(マックス相)を添加し、MAX相のA相を選択的に除去することで、主にMとXから構成されるナノサイズの単結晶シートおよび複数の単結晶シートが積層してなる凝集体を生成する。その後、溶液中で生成された凝集体を洗浄および乾燥することで、粉末状の凝集体を得る。このプロセス自体は、従来のマキシンの一般的な製造方法である。ここで、Aは、周期表の第13族元素または第14族元素である。除去溶液としては、フッ化水素(HF)の水溶液であるフッ化水素酸(フッ酸)であることが好ましい。また、除去溶液は、フッ酸とその他の酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸、有機酸等)を混合した混合溶液でもよい。
【0049】
このプロセスでは、A相を選択的に除去するとともに、単結晶シートの表面が改質されて、-OH、-O、-Fなどの官能基が表面の末端基として導入される。しかしながら、このような従来のプロセスでは、単結晶シート表面への上記官能基の導入量など、官能基に関する反応制御が行われておらず、場合によっては官能基に関する反応制御を行うという発想すら存在しなかった。
【0050】
一方で、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、上記プロセスにおいて、除去溶液に添加するMAX相の量、除去溶液中のA相の除去条件、洗浄条件、乾燥条件などを変えることで、無機化合物の組成および結晶子サイズを制御して、無機化合物の耐熱性を高めることを見出した。さらには、除去溶液に添加するMAX相の量や上記条件などを変えることで、無機化合物中の不可避不純物の種類や量、無機化合物の形状、無機化合物中のHF量や水分量などを制御して、無機化合物の耐熱性を高めることも見出した。
【0051】
例えば、無機化合物の組成制御としては、除去溶液に含まれるフッ酸の濃度や等量を増加すると、(b/c)を小さくできる。また、反応時間(除去時間)を長くすると、(b/c)を大きくできると共に、((b+c)/a)を小さくできる。
【0052】
また、MとOとFとXとYとを含む無機化合物については、除去溶液にYを含む溶液を用いることで製造できる。例えば、除去溶液に酸性の水溶液を用いればYとしてH等を導入でき、塩酸を含む水溶液を用いればYとしてHおよびClを導入できる。
【0053】
また、結晶子サイズの制御としては、反応温度を低くする、反応時間を長くすることで、無機化合物のX線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅を小さくすることができる。
【0054】
また、不可避不純物の種類は、原料とするMAX相の組成によって変えることができる。例えばTiAlやNbCAlを用いればAlが不可避不純物となり、TiSiを用いればSiが不可避不純物となる。また、不可避不純物量は、例えばフッ酸濃度や洗浄回数によって制御できる。例えば、高フッ酸濃度の除去溶液を用いれば不可避不純物量を増加でき、洗浄回数を増やせば不可避不純物量を減少できる。
【0055】
また、無機化合物の形状制御としては、除去溶液中のフッ酸濃度を数%から50%程度に増加すると、無機化合物の凝集体の厚み、すなわち無機化合物の層の厚みを小さくできる。また、除去溶液の温度を高くすると、無機化合物の層の厚みを小さくできる。
【0056】
また、無機化合物中のHF量は、洗浄回数や洗浄方法によって制御できる。例えば、洗浄回数を増やせばHF量を減少できる。
【0057】
また、無機化合物中の水分量は、乾燥温度や乾燥時圧力によって制御することができる。例えば、乾燥温度を高くすれば水分量を減少できる。
【0058】
また、無機化合物を含む分散液や無機化合物を含む膜についても、上記で説明した無機化合物の効果である高耐熱性が維持される。
【0059】
例えば、分散媒である溶液に無機化合物を添加して撹拌することで、無機化合物を含む分散液を製造することができる。また、分散液には、無機化合物の耐熱性の効果が低下しない程度に、各種添加物が含まれてもよい。
【0060】
また、上記分散液を基板に塗布し、溶媒を蒸発などで除去することで、無機化合物を含む膜を製造することができる。また、上記した粉末状の無機化合物を型に充填した後に加圧成形することで、無機化合物を含む膜を製造してもよい。その後に、焼成などの熱処理を膜に施してもよい。また、膜には、無機化合物の耐熱性の効果が低下しない程度に、各種添加物が含まれてもよい。
【0061】
以上説明した第1実施形態によれば、無機化合物の組成および結晶子サイズを制御することで、無機化合物の耐熱性を高めることができる。
【0062】
(第2実施形態)
第2実施形態の無機化合物は、MとOとFとを含み、Mは、1種以上の遷移金属元素であり、Oのモル比をb、Fのモル比をcとすると、(b/c)が1.50以下であり、X線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅は0.45°以上である。
【0063】
上記のように、第2実施形態の無機化合物は、MとO(酸素)とF(フッ素)とを含む。
【0064】
無機化合物を構成するMは、1種以上の遷移金属元素であり、好ましくは前周期遷移金属元素である。例えば、Mは、1種の遷移金属元素でもよいし、2種以上の遷移金属元素でもよい。
【0065】
また、無機化合物は、MとOとFに加えて、さらにXを含んでもよい。無機化合物を構成するXは、C(炭素)およびN(窒素)のうちの少なくともCを含む。すなわち、Xは、Cのみ、CおよびNのいずれかである。
【0066】
無機化合物がMとOとFとXとを含む場合、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成を向上する観点から、MはTi(チタン)であり、XはCであることが好ましい。
【0067】
また、無機化合物は、MとOとFに加えて、さらにXおよびYを含んでもよい。無機化合物を構成するYは、H(水素)、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、酸素を除くカルコゲン元素およびフッ素を除くハロゲン元素からなる群より選択される1種以上の元素である。例えば、Yは、1種のアルカリ金属元素でもよいし、1種のアルカリ金属元素および1種のアルカリ土類金属元素でもよい。Yとしては、H、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、S、Se、Te、Cl、BrおよびIからなる群より選択される1種以上の元素であることが好ましく、H、Li、Na、K、Mg、Ca、S、Se、ClおよびBrからなる群より選択される1種以上の元素であることがより好ましく、H、Li、NaおよびClからなる群より選択される1種以上の元素であることがさらに好ましい。
【0068】
無機化合物がMとOとFとXとYとを含む場合、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成を向上する観点から、MはTiであり、XはCであることが好ましい。
【0069】
また、無機化合物は、Al、Si、Ga、P、S、Ge、As、Cd、In、Sn、TlおよびPbからなる群より選択される1種以上の元素(以下、添加元素ともいう)をさらに含み、Mのモル総量Wmに対する添加元素のモル総量Wiの比(Wi/Wm)は0.03以上0.50以下であることが好ましい。
【0070】
上記比(Wi/Wm)の下限値が0.03以上であると、無機化合物の結晶構造の歪みが生じ活性が高まるため、低温でのメタンおよび水素発生量が増加する。そのため、比(Wi/Wm)の下限値は、好ましくは0.03以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.07以上である。
【0071】
また、上記比(Wi/Wm)が0.50超であると、添加元素によって安定な新たな結晶が形成されるため、上記比(Wi/Wm)の上限値が0.50以下である場合に、低温でのメタンおよび水素が発生しやすい。そのため、比(Wi/Wm)の上限値は、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.20以下、さらに好ましくは0.10以下である。
【0072】
また、無機化合物には、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成向上の効果が低下しない程度に、上記元素以外の元素が含まれてもよい。
【0073】
また、無機化合物は、層状の無機化合物(以下、層状化合物ともいう。)であることが好ましく、そのなかでもマキシン(MXene)であることがより好ましい。層状の無機化合物とは、無機化合物の一次粒子または二次粒子がシート形状である無機化合物である。
【0074】
層状化合物としては、スメクタイト類、マガディアイト、カネマイトおよびタルク、カオリナイトのような粘土鉱物、ニオブ酸カリウムおよびニオブ酸リチウムのようなニオブ酸塩、チタン酸カリウムおよびチタン酸リチウムのようなチタン酸塩、金属リン酸塩、ハイドロタルサイトのような層状水酸化物、MoS、WS、TaSおよびNbSのような金属カルコゲン化物、マキシン、MAX相が好適である。
【0075】
また、マキシンは、一般的には、組成式Mn+1(nは1から4の整数)で表され、M原子とX原子が層状に配列した結晶構造を一部ないしは全部に有する無機化合物であり、例えば、図1~4が例示される。図1は、Mマキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。M原子の層とX原子の層が交互に配列した構造を有し、最表面に表面官能基原子を有する。図2は、MXマキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。Mマキシンと層の数が異なるが、MXマキシンも同様の構造を有している。図3は、複数種のM元素および複数種のX元素を有するマキシンの結晶構造の一例を示す概略模式図である。図4は、複数種の表面官能基原子を有するマキシンの結晶構造の一例を示す模式図である。
【0076】
また、MAX相は、組成式Mn+1AXで表される無機化合物である。例えば、nは1から4の整数である。
【0077】
第2実施形態の無機化合物がMとOとFとXとを含むマキシンである場合、無機化合物に含まれるMのモル比をa、Oのモル比をb、Fのモル比をc、Xのモル比をdとすると、マキシンは下記式(3)で表される。XがCとNとからなる場合は、Cのモル比をd1、Nのモル比をd2と表す。d1とd2の和(d1+d2)はdである。
【0078】
式(3)
【0079】
式(3)で表されるマキシンとして、Ti、Ti、Tid1d2、V、V、Vd1d2、Nb、Nb、Nbd1d2、Mo、Mo、Mod1d2、Sc、Sc、Scd1d2、Cr、Cr、Crd1d2、Zr、Zr、Zrd1d2、Hf、Hf、Hfd1d2、Ta、Ta、Tad1d2は低温でのメタンおよび水素の発生能が優れているため好ましく、そのなかでもTi、Ti、Tid1d2、V、V、Vd1d2、Nb、Nb、Nbd1d2、Mo、Mo、Mod1d2、Cr、Cr、Crd1d2、Ta、Ta、Tad1d2はメタンおよび水素生成活性が高いためより好ましく、そのなかでもTid1d2、V、V、Vd1d2、Nb、Nb、Nbd1d2は合成容易であるためさらに好ましい。
【0080】
また、無機化合物がMとOとFとXとYとを含むマキシンである場合、無機化合物に含まれるMのモル比をa、Oのモル比をb、Fのモル比をc、Xのモル比をd、Yのモル比をeとすると、マキシンは下記式(4)で表される。YがY1からYnのn種類の元素(nは1以上の整数)からなる場合は、Yの各元素のモル比をそれぞれe1からenと表す。e1からenの和(e1+・・・+en)はeである。
【0081】
式(4)
【0082】
無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成を向上する観点から、式(4)で表されるマキシンとしては、YがH、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、S、Se、Te、Cl、BrおよびIからなる群より選択される1種類以上の元素を含むことが好ましく、H、Li、Na、K、Mg、Ca、S、Se、ClおよびBrからなる群より選択される1種類以上の元素を含むことがより好ましく、H、Li、NaおよびClからなる群より選択される1種類以上の元素を含むことがさらに好ましい。式(4)で表されるマキシンとしては、具体的には、Ti、Ti、Tid1d2、Tie1Lie2、Tie1Lie2、Tid1d2e1Lie2、Tie1Cle2、Tie1Cle2、Tid1d2e1Cle2が好適である。
【0083】
上記の無機化合物について、無機化合物に含まれるOのモル比をb、Fのモル比をcとすると、(b/c)が1.50以下である。(b/c)が1.50以下であると、低温でのメタンおよび水素の生成能が高い。そのため、(b/c)は、1.50以下であり、好ましくは1.00以下、より好ましくは0.70以下、さらに好ましくは0.50以下である。
【0084】
また、無機化合物の合成が容易である観点から、(b/c)の下限値は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上、特に好ましくは0.40以上である。
【0085】
また、無機化合物に含まれるMのモル比をaとすると、((b+c)/a)は0.50以上であることが好ましい。((b+c)/a)が0.50以上であると、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成をさらに向上できる。そのため、((b+c)/a)は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.90以上、さらに好ましくは1.30以上であり、大きいほど好ましい。
【0086】
また、((b+c)/a)の上限値は、メタンおよび水素以外の水等の生成物量を低減するために、例えば、5.00以下であることが好ましく、3.00以下であることがより好ましい。
【0087】
無機化合物に含まれるMのモル比a、Oのモル比b、Fのモル比cは、SEM-EDXで測定できる。
【0088】
また、無機化合物のX線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅(以下、単に半値幅ともいう)は、0.45°以上であり、好ましくは0.50°以上、より好ましくは0.60°以上であり、大きいほど好ましい。上記半値幅が0.45°以上であると、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成を向上でき、上記半値幅が大きいほど、上記生成を向上できる。また、半値幅の上限値は、例えば1.00°以下である。
【0089】
無機化合物のX線回折分析は、次のようにして行う。X線回折装置を用いて、試料ホルダーに粉末状の無機化合物を充填させ、θ-2θ法にて、例えば3°~80°間のX線回折強度を測定し、ピーク強度からノイズであるバックグラウンド値を差し引いて、(110)面の回折ピークを得る。得られた(110)面の回折ピークを基に、半値幅を算出する。このとき、X線としてはCuKαの特性X線(波長0.154nm)を用いる。
【0090】
また、無機化合物は層状であり、層の厚みは、好ましくは0.20μm以下、より好ましくは0.18μm以下、さらに好ましくは0.12μm以下であり、小さいほど好ましい。無機化合物の層の厚みが0.20μm以下であると、無機化合物の比表面積が大きくなることから、活性点が増えるため、無機化合物のメタンおよび水素の生成をさらに向上でき、層の厚みが小さいほど、上記生成を向上できる。また、膜の厚みの下限値は、例えば0.05μm以上である。
【0091】
無機化合物の層の厚みとは、無機化合物の単結晶シート(シート形状の単結晶)の厚みではなく、無機化合物の複数の単結晶シートが、おおよそ0.05μm以下の隙間を介して積層してなるシート状の凝集体の厚みである。無機化合物の形状や無機化合物の層の厚みは、粉末状の無機化合物を走査電子顕微鏡(SEM)で観察して測定する。
【0092】
また、無機化合物中にフッ化水素(HF)が含まれている場合、無機化合物の全量に対する無機化合物中のHFの重量比(以下、単にHFの重量比ともいう)について、下限値は、好ましくは1ppt以上、より好ましくは1ppb以上、さらに好ましくは1ppm以上であり、上限値は、好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下である。HFの重量比が1ppt以上であると、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成をさらに向上できる。また、HFの重量比が100ppm以下であると、無機化合物におけるHFの毒性に対する安全性が十分である。
【0093】
HFの重量比は、HFを溶解する有機溶媒と無機化合物を混合し、24時間攪拌した後、有機溶媒中のFイオン濃度をイオンクロマトグラフィにて測定することで有機溶媒中に抽出されたHF重量を定量化し、HF重量を無機化合物重量で除することで求めることができる。
【0094】
また、無機化合物中に水分が含まれている場合、無機化合物の全量に対する無機化合物中の水分の重量比(以下、単に水分の重量比ともいう)について、下限値は、好ましくは1ppm以上、より好ましくは10ppm以上、さらに好ましくは50ppm以上であり、上限値は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.7%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。水分の重量比が1ppm以上であると、低温でのメタンおよび水素の発生量が増加する。また、水分の重量比が1.0%以下であると、生成ガス中にメタンおよび水素以外の水等のガスが混入することを防止することができる。
【0095】
水分の重量比は、水と混和する有機溶媒と無機化合物を混合し、24時間攪拌した後、有機溶媒中の水分量をカールフィッシャー水分計等で定量化し、水分重量を無機化合物重量で除することで求めることができる。
【0096】
このような第2実施形態の無機化合物は、低温でのメタンおよび水素の生成に優れているため、従来のような高温環境が不要になる。
【0097】
次に、第2実施形態の無機化合物の製造方法の一例について説明する。
【0098】
例えば、A相を選択的に除去する溶液(以下、除去溶液ともいう)にMAX相(マックス相)を添加し、MAX相のA相を選択的に除去することで、主にMとXから構成されるナノサイズの単結晶シートおよび複数の単結晶シートが積層してなる凝集体を生成する。その後、溶液中で生成された凝集体を洗浄および乾燥することで、粉末状の凝集体を得る。このプロセス自体は、従来のマキシンの一般的な製造方法である。ここで、Aは、周期表の第13族元素または第14族元素である。除去溶液としては、フッ化水素(HF)の水溶液であるフッ化水素酸(フッ酸)であることが好ましい。また、除去溶液は、フッ酸とその他の酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸、有機酸等)を混合した混合溶液でもよい。
【0099】
このプロセスでは、A相を選択的に除去するとともに、単結晶シートの表面が改質されて、-OH、-O、-Fなどの官能基が表面の末端基として導入される。しかしながら、このような従来のプロセスでは、単結晶シート表面への上記官能基の導入量など、官能基に関する反応制御が行われておらず、場合によっては官能基に関する反応制御を行うという発想すら存在しなかった。
【0100】
一方で、本発明者らが鋭意研究を重ねた結果、上記プロセスにおいて、除去溶液に添加するMAX相の量、除去溶液中のA相の除去条件、洗浄条件、乾燥条件などを変えることで、無機化合物の組成および結晶子サイズを制御して、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成を高めることを見出した。さらには、除去溶液に添加するMAX相の量や上記条件などを変えることで、無機化合物中の添加元素の種類や量、無機化合物の形状、無機化合物中のHF量や水分量などを制御して、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成を高めることも見出した。
【0101】
例えば、無機化合物の組成制御としては、除去溶液に含まれるフッ酸の濃度や等量を増加すると、(b/c)を小さくできる。また、反応時間(除去時間)を長くすると、(b/c)を大きくできると共に、((b+c)/a)を小さくできる。
【0102】
また、MとOとFとXとYとを含む無機化合物については、除去溶液にYを含む溶液を用いることで製造できる。例えば、除去溶液に酸性の水溶液を用いればYとしてH等を導入でき、塩酸を含む水溶液を用いればYとしてHおよびClを導入できる。
【0103】
また、結晶子サイズの制御としては、反応温度を高くする、反応時間を短くすることで、無機化合物のX線回折分析で得られる(110)面の回折ピークの半値幅を大きくすることができる。
【0104】
また、添加元素の種類は、原料とするMAX相の組成によって変えることができる。例えばTiAlを用いればAlが添加元素となり、TiSiを用いればSiが添加元素となる。また、添加元素量は、例えばフッ酸濃度や洗浄回数によって制御できる。例えば、高フッ酸濃度の除去溶液を用いれば添加元素量を増加でき、洗浄回数を増やせば添加元素量を減少できる。
【0105】
また、無機化合物の形状制御としては、除去溶液中のフッ酸濃度を数%から50%程度に増加すると、無機化合物の凝集体の厚み、すなわち無機化合物の層の厚みを小さくできる。また、除去溶液の温度を高くすると、無機化合物の層の厚みを小さくできる。
【0106】
また、無機化合物中のHF量は、洗浄回数や洗浄方法によって制御できる。例えば、洗浄回数を増やせばHF量を減少できる。
【0107】
また、無機化合物中の水分量は、乾燥温度や乾燥時圧力によって制御することができる。例えば、乾燥温度を高くすれば水分量を減少できる。
【0108】
また、無機化合物を含む分散液や無機化合物を含む膜についても、上記で説明した無機化合物の効果である低温でのメタンおよび水素の生成向上が維持される。
【0109】
例えば、分散媒である溶液に無機化合物を添加して撹拌することで、無機化合物を含む分散液を製造することができる。また、分散液には、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成向上の効果が低下しない程度に、各種添加物が含まれてもよい。
【0110】
また、上記分散液を基板に塗布し、溶媒を蒸発などで除去することで、無機化合物を含む膜を製造することができる。また、上記した粉末状の無機化合物を型に充填した後に加圧成形することで、無機化合物を含む膜を製造してもよい。その後に、焼成などの熱処理を膜に施してもよい。また、膜には、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成向上の効果が低下しない程度に、各種添加物が含まれてもよい。
【0111】
次に、メタンおよび水素の製造方法について説明する。
【0112】
メタンおよび水素の製造方法は、第2実施形態の無機化合物を加熱する加熱工程を有する。加熱工程で第2実施形態の無機化合物を加熱することで、メタンおよび水素を製造できる。加熱工程における無機化合物を加熱する温度は、例えば、従来報告されているマキシンの熱分解温度よりも低い。
【0113】
また、他のメタンおよび水素の製造方法は、第2実施形態の無機化合物とアルコールまたは水とを接触させる接触工程を有する。接触工程で第2実施形態の無機化合物とアルコールまたは水とを接触させることで、メタンおよび水素を製造できる。上記のメタンおよび水素の製造方法と異なり、このメタンおよび水素の製造方法では、加熱処理が不要である。
【0114】
以上説明した第2実施形態によれば、無機化合物の組成および結晶子サイズを制御することで、無機化合物の低温でのメタンおよび水素の生成を高めることができる。
【0115】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本開示の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0116】
次に、実施例および比較例について説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0117】
(実施例1)
7.5%のHF水溶液100g中に、5gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を35℃に加温して24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、窒素雰囲気下150℃で24時間乾燥することで実施例1の無機化合物であるマキシンを得た。各条件を表1に示す。
【0118】
(実施例2)
25.0%のHF水溶液30g中に、5gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を45℃に加温して24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、窒素雰囲気下150℃で24時間乾燥することで実施例2の無機化合物であるマキシンを得た。
【0119】
(比較例1)
50.0%のHF水溶液50g中に、5gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を60℃に加温して3時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、窒素雰囲気下150℃で24時間乾燥することで比較例1の無機化合物であるマキシンを得た。
【0120】
(実施例3)
10.0%のHF水溶液100g中に、5gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、室温で24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、減圧乾燥機を用いて減圧下80℃で24時間乾燥することで実施例3の無機化合物であるマキシンを得た。
【0121】
(実施例4~8、比較例2~4)
表1に示す条件に変更した以外は実施例3と同様にして、実施例4~8および比較例2~4の無機化合物であるマキシンを得た。
【0122】
(実施例9)
46%のHF水溶液32.61gと37%塩酸120gと蒸留水47.39gとを混合した除去溶液中に10gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を35℃に加温して24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、減圧乾燥機を用いて減圧下80℃で24時間乾燥することで実施例9の無機化合物であるマキシンを得た。
【0123】
(実施例10)
7.5%のHF水溶液100g中に、5gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を35℃に加温して24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、管状炉を用いて窒素雰囲気下150℃で24時間乾燥し、ついで窒素雰囲気下400℃で1時間焼成することで実施例10の無機化合物であるマキシンを得た。
【0124】
(比較例5)
実施例1のマキシン3gに、15%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を177g加え、24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、減圧乾燥機を用いて減圧下80℃で24時間乾燥することで比較例5の無機化合物であるマキシンを得た。
【0125】
(比較例6)
比較例1のマキシン3gに、15%の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を177g加え、24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、減圧乾燥機を用いて減圧下80℃で24時間乾燥することで比較例6の無機化合物であるマキシンを得た。
【0126】
(実施例11)
50%のHF水溶液100g中に、10gのNbCAl粉末を攪拌しながら加えた。NbCAl粉末を加えた後、室温で96時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、窒素雰囲気下200℃で24時間乾燥することで実施例11の無機化合物であるマキシンを得た。
【0127】
【表1】
【0128】
[測定および評価]
上記実施例1~11および比較例1~6で得られた無機化合物について、下記の測定および評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
[1] Mのモル比a、Oのモル比b、Fのモル比c
無機化合物の元素分析をSEM-EDX測定により行い、各元素のモル比(at%)を求めた。Mのモル比をa、Oのモル比をb、Fのモル比をcとした。Oのモル比をFのモル比で除することで(b/c)を求め、Oのモル比とFのモル比の和をMのモル比で除することで(b+c)/aを求めた。SEM-EDX測定条件は以下である。
装置:JED-2300(日本電子社)
加速電圧:20kV
【0130】
[2] (110)面の回折ピークの半値幅
XRD測定により無機化合物のX線回折パターンを得て、(110)面の回折ビークの半値幅を求めた。XRDの測定条件は以下である。
装置:全自動水平型多目的X線回折装置SmartLab(リガク社)
X線管球:Cu
X線出力:40kV、50mA
フィルタ:Cu_Kβ
試料作製方法:シリコン無反射板に充填
【0131】
[3] 比(Wi/Wm)
無機化合物の元素分析をSEM-EDX測定により行い、各元素のモル比(at%)を求めた。Mのモル比をWm、不可避不純物のモル比をWiとして、不可避不純物のモル比をMのモル比で除することでモル比(Wi/Wm)を求めた。SEM-EDX測定条件は以下である。
装置:JED-2300(日本電子社)
加速電圧:20kV
【0132】
[4] 層の厚み
無機化合物の形状観察および層の厚み測定をSEM観察により行った。層の厚みは、画像内の扁平粒子を無作為に20点選び厚みを測定し、その平均値を層の厚みとした。SEM測定にはTSM-7610F(日本電子社)を用いた。
【0133】
[5] HFの重量比
無機化合物のHFの重量比は、10gのアセトニトリルと1gの無機化合物とを混合し、24時間攪拌した後、アセトニトリル中のFイオン濃度をイオンクロマトグラフィ測定により定量し、アセトニトリル中に溶出したHF重量(g)を算出し、無機化合物重量1gで除することで算出した。
【0134】
[6] 水分の重量比
無機化合物の水分の重量比は、10gのアセトニトリルと1gの無機化合物とを混合し、24時間攪拌した後、アセトニトリル中の水分量をカールフィッシャー水分計により定量し、無機化合物重量1gで除することで算出した。
【0135】
[7] 耐熱性
無機化合物の耐熱性評価として、TG(熱重量)測定により温度に対する重量変化を測定した。TG測定条件は以下である。
装置:熱重量測定装置TGA-50(島津製作所社)
サンプルセル:Pt
昇温速度:10℃/min
温度範囲:室温から1000℃
雰囲気:Heガス
ガス流量:100ml/min
【0136】
【表2】
【0137】
図5は、実施例1の無機化合物のTGデータであり、図6は、比較例1の無機化合物のTGデータである。また、図7は、実施例1の無機化合物のXRDデータである。また、図8は、実施例4の無機化合物のSEM像であり、図9は、実施例7の無機化合物のSEM像であり、図10は、実施例10の無機化合物のSEM像であり、図11は、比較例1の無機化合物のSEM像であり、図12は、比較例2の無機化合物のSEM像であり、図13は、比較例3の無機化合物のSEM像であり、図14は、比較例5の無機化合物のSEM像である。
【0138】
上記結果のように、実施例1~11の無機化合物では、1種以上の遷移金属元素であるMとOとFとを含み、(b/c)および(110)面の回折ピークの半値幅がそれぞれ所定範囲内に制御されていたため、耐熱性が優れていた。一方、比較例1~6では、(b/c)および(110)面の回折ピークの半値幅の少なくとも一方が所定範囲外であったため、耐熱性が不良であった。また、実施例6と比較例2を比較すると、(b/c)の値は近いものの、上記半値幅が0.62°の比較例2は1000℃加熱時の重量減少が17.3%であったのに対し、半値幅が0.50°の実施例6は重量減少が8.9%であり、実施例6の耐熱性がより高かった。このことから上記半値幅が0.60°以下のときに耐熱性が高くなることが言える。また、表2中の比較例5~6におけるHFの重量比について、比較例5~6は、HF水溶液ではなく水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液で処理しているため、HFの重量比の測定で検出されたフッ素イオンはHF水溶液由来ではないと考えられる。
【0139】
また、実施例1で得られた粉末状の無機化合物をエタノールに添加して撹拌することで、無機化合物を含む分散液を得た。続いて、分散液をガラス板に塗布した後に溶媒を蒸発することで、無機化合物を含む膜を得た。同様にして、比較例1で得られた粉末状の無機化合物を用いて、無機化合物を含む膜を得た。
【0140】
これらの膜について、上記と同様の耐熱性を測定した結果、比較例1に比べて、実施例1の無機化合物を用いて得られた膜の耐熱性が優れていた。
【0141】
(実施例12)
50.0%のHF水溶液50g中に、5gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を60℃に加温して3時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、窒素雰囲気下150℃で24時間乾燥することで実施例12の無機化合物であるマキシンを得た。各条件を表3に示す。
【0142】
(実施例13)
25.0%のHF水溶液30g中に、5gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を70℃に加温して5時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、減圧乾燥機を用いて減圧下80℃で24時間乾燥することで実施例13の無機化合物であるマキシンを得た。
【0143】
(比較例7~8)
表3に示す条件に変更した以外は実施例12と同様にして、比較例7~8の無機化合物であるマキシンを得た。
【0144】
(実施例14~17、比較例9~10)
表3に示す条件に変更した以外は実施例13と同様にして、実施例14~17および比較例9~10の無機化合物であるマキシンを得た。
【0145】
(比較例11)
46%のHF水溶液32.61gと37%塩酸120gと蒸留水47.39gとを混合した除去溶液中に10gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を35℃に加温して24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、減圧乾燥機を用いて減圧下80℃で24時間乾燥することで比較例11の無機化合物であるマキシンを得た。
【0146】
(比較例12)
7.5%のHF水溶液100g中に、5gのTiAl粉末を攪拌しながら加えた。TiAl粉末を加えた後、液温を35℃に加温して24時間攪拌した。その後、反応液を濾過し、蒸留水により濾液が中性になるまで濾物の濾過洗浄を繰り返した。洗浄後の濾物を、管状炉を用いて窒素雰囲気下150℃で24時間乾燥し、ついで窒素雰囲気下400℃で1時間焼成することで比較例12の無機化合物であるマキシンを得た。
【0147】
【表3】
【0148】
[測定および評価]
上記実施例12~17および比較例7~12で得られた無機化合物について、下記の測定および評価を行った。結果を表4に示す。
【0149】
[1] Mのモル比a、Oのモル比b、Fのモル比c
無機化合物の元素分析をSEM-EDX測定により行い、各元素のモル比(at%)を求めた。Mのモル比をa、Oのモル比をb、Fのモル比をcとした。Oのモル比をFのモル比で除することで(b/c)を求め、Oのモル比とFのモル比の和をMのモル比で除することで(b+c)/aを求めた。SEM-EDX測定条件は以下である。
装置:JED-2300(日本電子社)
加速電圧:20kV
【0150】
[2] (110)面の回折ピークの半値幅
XRD測定により無機化合物のX線回折パターンを得て、(110)面の回折ビークの半値幅を求めた。XRDの測定条件は以下である。
装置:全自動水平型多目的X線回折装置SmartLab(リガク社)
X線管球:Cu
X線出力:40kV、50mA
フィルタ:Cu_Kβ
試料作製方法:シリコン無反射板に充填
【0151】
[3] 比(Wi/Wm)
無機化合物の元素分析をSEM-EDX測定により行い、各元素のモル比(at%)を求めた。Mのモル比をWm、添加元素のモル比をWiとして、添加元素のモル比をMのモル比で除することでモル比(Wi/Wm)を求めた。SEM-EDX測定条件は以下である。
装置:JED-2300(日本電子社)
加速電圧:20kV
【0152】
[4] 層の厚み
無機化合物の形状観察および層の厚み測定をSEM観察により行った。層の厚みは、画像内の扁平粒子を無作為に20点選び厚みを測定し、その平均値を層の厚みとした。SEM測定にはTSM-7610F(日本電子社)を用いた。
【0153】
[5] HFの重量比
無機化合物のHFの重量比は、10gのアセトニトリルと1gの無機化合物とを混合し、24時間攪拌した後、アセトニトリル中のFイオン濃度をイオンクロマトグラフィ測定により定量し、アセトニトリル中に溶出したHF重量(g)を算出し、無機化合物重量1gで除することで算出した。
【0154】
[6] 水分の重量比
無機化合物の水分の重量比は、10gのアセトニトリルと1gの無機化合物とを混合し、24時間攪拌した後、アセトニトリル中の水分量をカールフィッシャー水分計により定量し、無機化合物重量1gで除することで算出した。
【0155】
[7] メタンおよび水素の生成量
不活性ガス(ArまたはHeまたは窒素)を充填したグローブボックス中で、20mlのヘッドスペースバイアル中に1gの無機化合物を入れ、キャップを閉じた。この試料を暗室中、室温で数日静置した。次いで、バイアル中のガスをシリンジで採取し、GC-BID測定によってガス成分を定量評価し、バイアル中のメタンおよび水素量を算出した。このメタンおよび水素量を静置日数で除することで、1gの無機化合物が1日に生成するメタンおよび水素量(nmol/g/日)を算出した。
【0156】
【表4】
【0157】
図15は、実施例12の無機化合物のSEM像であり、図16は、比較例9の無機化合物のSEM像である。また、図17は、実施例12の無機化合物のGC-BIDデータであり、図18は、比較例9の無機化合物のGC-BIDデータである。また、図19は、実施例12の無機化合物のXRDデータであり、図20は、比較例9の無機化合物のXRDデータである。
【0158】
上記結果のように、実施例12~17の無機化合物では、1種以上の遷移金属元素であるMとOとFとを含み、(b/c)および(110)面の回折ピークの半値幅がそれぞれ所定範囲内に制御されていたため、低温でのメタンおよび水素の生成が優れていた。一方、比較例7~12では、低温でのメタンおよび水素の生成が確認されなかった。
【0159】
また、実施例12で得られた粉末状の無機化合物をエタノールに添加して撹拌することで、無機化合物を含む分散液を得た。続いて、分散液をガラス板に塗布した後に溶媒を蒸発することで、無機化合物を含む膜を得た。同様にして、比較例7で得られた粉末状の無機化合物を用いて、無機化合物を含む膜を得た。
【0160】
これらの膜について、上記と同様のメタンおよび水素の生成量を測定した結果、比較例7に比べて、実施例12の無機化合物を用いて得られた膜は、低温でのメタンおよび水素の生成に優れていた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20