(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】マーケティング活動支援装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/02 20230101AFI20240718BHJP
【FI】
G06Q30/02
(21)【出願番号】P 2024044386
(22)【出願日】2024-03-21
【審査請求日】2024-03-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523144494
【氏名又は名称】田尻 望
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】田尻 望
【審査官】池田 聡史
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-9535(JP,A)
【文献】特開2021-131843(JP,A)
【文献】特開2022-142158(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第117391094(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マーケティング活動におけるターゲットに関する複数のターゲット要素からなるターゲット情報と、前記ターゲットに対するトークスクリプトと、前記トークスクリプトによる前記マーケティング活動の成否を示す成否情報とが対応付けて記憶されたマーケティングデータベースと、
1以上のターゲット要素からなる新規ターゲット情報を受け付ける情報受付部と、
前記新規ターゲット情報と、前記マーケティングデータベースの前記ターゲット情報及び前記成否情報とに基づいて、前記マーケティング活動を成功させた前記トークスクリプトを抽出するトークスクリプト抽出部と、
前記マーケティングデータベースの前記ターゲット情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、前記仮定ターゲット及び前記ロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部と、
前記大規模言語モデル部に対して前記プロンプトを出力することで、前記新規ターゲット情報に基づいて前記仮定ターゲットを生成し、前記トークスクリプト抽出部で抽出された前記トークスクリプトを前記仮定ターゲットに適用した場合における前記ロールプレイングモデルを生成させるロールプレイングモデル生成部と
を有する、マーケティング活動支援装置。
【請求項2】
前記トークスクリプト抽出部は、
前記ターゲット情報、前記トークスクリプト、および前記成否情報を教師データとして使用し、前記ターゲット情報と前記成否情報とに基づいて成功した前記トークスクリプトを予測するように学習されたトークスクリプト予測モデルを備えた機械学習により、前記新規ターゲット情報に対して前記マーケティング活動を成功させる可能性の高いトークスクリプトを抽出する
請求項1に記載のマーケティング活動支援装置。
【請求項3】
前記大規模言語モデル部に対して前記プロンプトを出力することで、前記トークスクリプト抽出部で抽出された前記トークスクリプトと、前記新規ターゲット情報とに基づいて、前記新規ターゲット情報に対して前記マーケティング活動をさらに成功させる可能性の高いトークスクリプトを生成させるトークスクリプト生成部を有し、
ロールプレイングモデル生成部は、前記トークスクリプト抽出部で抽出された前記トークスクリプトに代えて、前記トークスクリプト生成部で生成されたトークスクリプトを前記仮定ターゲットに適用した場合における前記ロールプレイングモデルを生成させる
請求項2に記載のマーケティング活動支援装置。
【請求項4】
前記トークスクリプト抽出部において複数の前記トークスクリプトが抽出された場合、前記大規模言語モデル部に対して前記プロンプトを出力することで、前記複数のトークスクリプトに基づいて、前記新規ターゲット情報に対して前記マーケティング活動を成功させる可能性の高いトークスクリプトを生成させるトークスクリプト生成部を有する
請求項1に記載のマーケティング活動支援装置。
【請求項5】
営業主体が前記マーケティング活動を行った際に集積される前記ターゲット情報を取得するターゲット情報取得部と、
前記ターゲット情報取得部において前記ターゲット情報が取得される度に、前記マーケティングデータベースを更新するデータベース更新部と
を有する請求項1に記載のマーケティング活動支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーケティング活動支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
営業戦略の分野において、顧客又は見込み顧客に関する情報を収集して分析することで、営業効率を高めようとする試みは、活発に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、営業主体が営業活動を行った際に集積される情報を、営業データとして取得する営業データ取得手段と、営業データを解析する営業データ解析手段と、営業データ解析手段による解析結果に基づいて、営業主体が架電する対象の候補が羅列されたターゲットリストを生成するターゲットリスト生成手段とを備えており、解析結果に基づいてオペレータがターゲットに架電する際に話すべき会話の流れを示すトークスクリプトを生成するとともに、新たに取得された営業データを少なくとも含む情報に、機械学習に関する手法を適用し、その結果に基づいてターゲットリスト生成手段のリスト生成で利用されるアルゴリズムを更新する技術が開示されている。
【0004】
これにより、特許文献1の技術によれば、多量の情報を収集して整理することで、営業活動を効率的に行うことが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の技術は、トークスクリプトを生成することでマーケティング活動を支援することを可能にしているが、生成したトークスクリプトをターゲットに対してどのようにマーケティング活動に活用するか不明である点においてさらなる改良の余地がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、スクリプトを基に現実に即したロールプレイングモデルを生成することで、マーケティング活動を十分に支援することができるマーケティング活動支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、新規ターゲット情報を受け取り、過去の成功例から最適なトークスクリプトを抽出し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを用いて、そのトークスクリプトを基に現実に即したロールプレイングモデルを生成することによって、上記の目的を達成できることを見いだした。そして、本発明者らは、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明は、マーケティング活動におけるターゲットに関する複数のターゲット要素からなるターゲット情報と、前記ターゲットに対するトークスクリプトと、前記トークスクリプトによる前記マーケティング活動の成否を示す成否情報とが対応付けて記憶されたマーケティングデータベースと、
1以上のターゲット要素からなる新規ターゲット情報を受け付ける情報受付部と、
前記新規ターゲット情報と、前記マーケティングデータベースの前記ターゲット情報及び前記成否情報とに基づいて、前記マーケティング活動を成功させた前記トークスクリプトを抽出するトークスクリプト抽出部と、
前記マーケティングデータベースの前記ターゲット情報に基づいて、前記自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、前記仮定ターゲット及び前記ロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部と、
前記大規模言語モデル部に対して前記プロンプトを出力することで、前記新規ターゲット情報に基づいて前記仮定ターゲットを生成し、前記トークスクリプト抽出部で抽出された前記トークスクリプトを前記仮定ターゲットに適用した場合における前記ロールプレイングモデルを生成させるロールプレイングモデル生成部と
を有する、マーケティング活動支援装置である。
【0010】
本発明によれば、新規ターゲット情報を受け取り、過去の成功例から最適なトークスクリプトを抽出し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを用いて、そのトークスクリプトを基に現実に即したロールプレイングモデルを生成することで、マーケティング活動を十分に支援することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スクリプトを基に現実に即したロールプレイングモデルを生成することで、マーケティング活動を十分に支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態のマーケティング活動支援装置の情報の流れを示す説明図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のロールプレイングモデル作成装置の情報の流れを示す説明図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のロールプレイングモデル作成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、利用者端末の表示画面を示す説明図である。
【
図5】
図5は、本実施形態のマーケティング活動支援装置の情報の流れを示す説明図である。
【
図6】
図6は、マーケティングデータベースの説明図である。
【
図7】
図7は、マーケティングデータベースの説明図である。
【
図8】
図8は、マーケティング活動プログラムを実行するマーケティング活動支援装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、本発明の実施形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明するものである。
(マーケティング活動支援装置1)
図1に示すように、マーケティング活動支援装置1は、新規ターゲット情報を受け取り、過去の成功例から最適なトークスクリプトを抽出し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを用いて、そのトークスクリプトを基に現実に即したロールプレイングモデルを生成するように構成されている。
【0014】
具体的な一例を示すと、マーケティング活動支援装置1は、マーケティング活動におけるターゲットに関する複数のターゲット要素からなるターゲット情報と、ターゲットに対するトークスクリプトと、トークスクリプトによるマーケティング活動の成否を示す成否情報とが対応付けて記憶されたマーケティングデータベース121(単に「データベース121」とも称する)と、情報受付部111と、トークスクリプト抽出部112とを有している。
【0015】
ここで、「マーケティング活動」は、企業が顧客に対して行う、商品やサービスの販売促進活動の全般を意味する。具体的には、市場調査、広告宣伝、販売促進、顧客関係管理、商品企画・開発、価格設定、流通・販売、顧客サービスなどの活動が例示される。「ターゲット」は、マーケティング活動において、商品やサービスの購入者として最も可能性が高いと考えられる特定の顧客、顧客層を意味する。例えば、年齢、性別、職業、収入、興味・関心、ライフスタイル、価値観、ニーズ、課題、地域などの属性でターゲットを設定することができる。
【0016】
「ターゲット要素」は、ターゲットを構成する要素を意味する。例えば、氏名、年齢、性別、職業、住所、電話番号、メールアドレス、興味・関心、ライフスタイル、価値観、ニーズ、課題、購入履歴、顧客満足度が挙げられる。具体的には、年齢:20代~30代、性別:女性、職業:会社員、収入:年収500万円以上、興味・関心:美容、ファッション、ライフスタイル:都会暮らし、価値観:自然志向、ニーズ:シミ・シワのない肌、課題:乾燥肌のような要素である。「ターゲット情報」は、複数のターゲット要素の集合体である。
【0017】
「トークスクリプト」は、営業主体が顧客と対面する際に使用する会話例である。具体的には、挨拶、自己紹介、顧客のニーズ確認、ソリューション提案、反論処理、クロージング、アフターフォローのような内容がトークスクリプトに含まれる。「成否情報」は、マーケティング活動の成否を示す情報である。具体的には、売上、利益、顧客獲得数、顧客満足度、顧客離脱率のような情報である。
【0018】
なお、ターゲット情報、トークスクリプト、及び成否情報は、統一的なデータ形式に正規化された状態でマーケティングデータベース121に記憶されていることが好ましい。この場合は、膨大なデータを扱う際に、共通の形式に変換し、統一的に整理されているため、学習する際に、正規化された情報を入力として用いることにより処理の効率性や正確性を向上させることが可能になる。「正規化」は、データベースのテーブルにあるデータを、一定の規則に従って整理・構造化することで、データの冗長性を排除し、データの整合性や一貫性を保つための処理手法である。
【0019】
情報受付部111は、1以上のターゲット要素からなる新規ターゲット情報を受け付ける機能を有している。ここで、「新規ターゲット情報」は、利用者4である営業主体が利用者端末2に入力し、情報受付部111で受け付けられたターゲットに関する情報である。「営業主体」は、営業活動を行う企業や組織、個人事業主、営業担当者などである。
【0020】
また、情報受付部111は、アクティベート機能を有している。アクティベート機能は、認証された利用者端末2及び管理者端末7とだけデータ通信を可能にする。なお、管理者端末7は、マーケティング活動支援装置1を管理する担当者が操作する端末装置である。具体的には、アクティベート機能は、特定の利用者端末2などから送信されたアクティベート信号が、事前に設定された認証情報に合致しているかどうかを検証する。認証方法としては、パスワード認証や生体認証、ワンタイムパスワード認証、ICチップが埋め込まれたカードを利用したスマートカード認証などの1以上の認証要素を組み合わせた認証態様が例示される。これにより、マーケティング活動支援装置1は、認証された利用者端末2や管理者端末7とだけデータ通信が可能になるため、情報の流出を困難にしている。
【0021】
尚、アクティベート機能は、制御部11とマーケティングデータベース121を備えた記憶部12との間においても備えられ、認証された制御部11とマーケティングデータベース121との間だけのデータ通信を可能にされていてもよい。この場合は、記憶部12が制御部11から離れた場所に設置され、インターネット5などのデータ通信によりアクセス可能にされている場合において、外部からマーケティングデータベース121への不正アクセスを防御することができる。
【0022】
トークスクリプト抽出部112は、新規ターゲット情報と、マーケティングデータベース121のターゲット情報及び成否情報とに基づいて、マーケティング活動を成功させたトークスクリプトを抽出する機能を有している。トークスクリプトを抽出する方法としては、ルールベース方法、テンプレートマッチング方法、経験則に基づく方法であるヒューリスティックなアプローチ方法、クラスタリング方法が例示される。
【0023】
ルールベース方法は、事前に定義されたルールやパターンに基づいて、トークスクリプトを抽出するものであり、例えば、特定のキーワードやフレーズが含まれる文をトークスクリプトとして抽出する。テンプレートマッチング方法は、予め用意されたトークスクリプトのテンプレートとマッチングさせて、適切なトークスクリプトを抽出するものであり、類似度の高いテンプレートを選択することで、ターゲットに合ったトークスクリプトを抽出する。ヒューリスティックなアプローチ方法は、統計的な手法やヒューリスティックなアルゴリズムを用いて、トークスクリプトを抽出するものであり、例えば、特定の条件を満たすトークスクリプトの頻度やパターンを分析して選択する。クラスタリング方法は、類似した特徴を持つトークスクリプトをクラスタリングし、各クラスタから代表的なトークスクリプトを抽出するものであり、類似性に基づいてトークスクリプトをグループ化することで、効果的な抽出が可能になる。
【0024】
また、トークスクリプト抽出部112は、ターゲット情報、トークスクリプト、および適否情報を教師データとして使用し、ターゲット情報と成否情報とに基づいて成功したトークスクリプトを予測するように学習されたトークスクリプト予測モデルを備えた機械学習により、新規ターゲット情報に対してマーケティング活動を成功させる可能性の高いトークスクリプトを抽出する構成にされていてもよい。
【0025】
ここで、「トークスクリプト予測モデル」は、マーケティング活動における過去のデータを基にして、新規ターゲットに対して最も効果的なトークスクリプトを予測するために設計された機械学習モデルである。このトークスクリプト予測モデルは、既存のターゲット情報、トークスクリプト、成否情報を教師データとして使用し、これらのデータからパターンを学習する。学習プロセスを通じて、トークスクリプト予測モデルは、どのタイプのトークスクリプトが特定のターゲット情報やシナリオにおいて成功をもたらしたかを理解し、新たなターゲット情報が与えられたときに成功確率の高いトークスクリプトを選択する能力を獲得する。
【0026】
上記の構成によれば、機械学習により学習されたトークスクリプト予測モデルを使用することで、新規ターゲットに対するマーケティング活動の成功確率を向上させることができるとともに、過去の成功事例から最適なトークスクリプトを抽出することで、新規ターゲットに対して効果的なアプローチを実現することができる。
【0027】
マーケティング活動支援装置1は、さらに、大規模言語モデル部113及びロールプレイングモデル生成部114を有している。大規模言語モデル部113は、マーケティングデータベース121のターゲット情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを有している。ロールプレイングモデル生成部114は、大規模言語モデル部113に対してプロンプトを出力することで、新規ターゲット情報に基づいて仮定ターゲットを生成し、トークスクリプト抽出部112で抽出されたトークスクリプトを仮定ターゲットに適用した場合におけるロールプレイングモデルを生成させる。
【0028】
ここで、「自然言語処理」は、コンピュータが自然言語で書かれた文章や音声データを理解して目的に応じた処理を実行できるようにするものである。具体的には、自然言語を構成する最小の単位である「形態素」に分解することにより品詞などの情報を付与する形態素解析、自然言語の文法的構造を解析することにより文の構造や意味を明らかにする構文解析、自然言語の意味を解析することにより単語や文の意味を理解し、論理的な判断や推論を行う意味解析、文の前後の文脈を考慮しながら自然言語を理解する文脈解析、自然言語を用いた対話や文章の中から話者や書き手の意図を抽出する意図解析などが例示される。これにより、「自然言語処理」は、形態素解析や構文解析、意味解析、文脈解析、意図解析などの処理を組み合わせて自然言語を処理し、本実施形態のマーケティング活動を支援するロールプレイングモデルの生成や機械翻訳、自動要約、質問応答システム、音声認識などを可能にしている。
【0029】
「プロンプト」は、大規模言語モデル部113に入力される単語や文章のことであり、大規模言語モデルが仮定ターゲットやロールプレイングモデルを生成するための出発点となる。即ち、プロンプトは、大規模言語モデルが特定のターゲット層やマーケティングシナリオに合わせたコンテンツを生成するための重要な入力となる。具体的には、プロンプトには、新規ターゲット情報や特定のマーケティングシナリオに関連するキーワードやフレーズが含まれており、これらの入力に基づいて、大規模言語モデルがターゲット層に適したトークスクリプトや、営業主体が使用するロールプレイングモデルを生成する。
【0030】
なお、プロンプトに基づいた大規模言語モデルによるロールプレイングモデル生成が、通常(従来)の機械学習との大きな相違点となる。通常の機械学習では、モデルが教師データから学習し、入力データに対して出力データを予測する。例えば、画像認識の機械学習モデルは、猫と犬の画像の教師データから学習し、入力画像が猫か犬かを分類する。一方、大規模言語モデルによるロールプレイングモデル生成では、モデルが教師データに加えて、モデルに生成して欲しい出力データに関する指示や情報を提供するプロンプトから学習する。
【0031】
詳細に説明すると、通常の機械学習では、モデルは教師データに含まれる内容しか生成できない一方、大規模言語モデルはプロンプトによって、教師データに含まれない新しい内容を生成することができる。例えば、教師データに、20代女性会社員の会話しか含まれていない場合でも、プロンプトによって、50代男性会社員の会話も生成することができる。また、通常の機械学習では、モデルは教師データに含まれる内容のバリエーションしか生成できない一方、大規模言語モデルはプロンプトによって、教師データに含まれない新しいバリエーションの出力データを生成することができる。例えば、教師データに、営業担当者視点の会話しか含まれていない場合でも、プロンプトによって、顧客視点の会話も生成することができる。また、通常の機械学習では、モデルは教師データに含まれる内容を再帰的に組み合わせることでしか新しい内容を生成できない一方、大規模言語モデルはプロンプトによって、教師データに含まれない創造的な内容を生成することができる。例えば、教師データに、既存の商品・サービスの説明しか含まれていない場合でも、プロンプトによって、全く新しい商品・サービスのアイデアを生成することができる。
【0032】
「仮定ターゲット」は、新規ターゲット情報や既存のターゲット情報を基に生成された、想定されるターゲット層のプロファイルである。この仮定ターゲットは、マーケティングデータベース121に記憶されているターゲット情報と成否情報とを基に、大規模言語モデル部113によって生成されるものであり、マーケティング活動の成功確率を高めるために用いられる。例えば、新規ターゲット情報として「年齢:30代、興味・関心:健康、ライフスタイル:アクティブ」といった情報が入力された場合、大規模言語モデル部113は、この情報に基づいて、過去の成功事例や関連するターゲット情報を参照して、このターゲット層に適したトークスクリプトを生成するための仮定ターゲットを作成する。例えば、仮定ターゲットは、具体的なターゲットのプロファイル(例:「30代のアクティブなライフスタイルを持つ健康に関心が高い人々」)として表現される。
【0033】
「ロールプレイングモデル」は、営業主体が顧客であるターゲットとの対話をシミュレーションするためのモデルを意味し、仮定ターゲットとトークスクリプト抽出部112によって抽出されたトークスクリプトとを組み合わせて生成される。具体的には、ロールプレイングモデルは、仮定ターゲットに基づいた反応や質問を想定し、営業主体が使用するべきトークスクリプトを提示する。これにより、営業主体は、実際のターゲットとの対話において、より適切なコミュニケーションを取ることを可能にする。例えば、仮定ターゲットが「30代のアクティブなライフスタイルを持つ健康に関心が高い人々」である場合、ロールプレイングモデルは、このターゲット層が興味を持ちそうな商品やサービスの紹介方法、彼らの潜在的な質問に対する回答、反論処理の方法などを提案する。これにより、ロールプレイングモデルは、営業主体がターゲットとの実際の対話において自信を持ち、効果的なコミュニケーションを取るための練習を提供することができる。この結果、マーケティング活動の成果を向上させることが可能になる。
【0034】
ロールプレイングモデルは、既存リストアポどりトークとして、アポどりエレベータピッチトークと、アポどりトークスクリプト自動生成とを含んでいる。ここで、「既存リストアポどりトーク」とは、予め用意されたリストやデータベースに基づいて、潜在顧客に対するアポイントメントを取得するための営業トークの一覧である。「アポどりエレベータピッチトーク」とは、短い時間内で(例えばエレベーターに乗っている間に)潜在顧客の注意を引き、興味を持ってもらうための簡潔で説得力のある営業トークであり、製品やサービスの主要な利点や価値を凝縮して伝えることに重点を置いている。
【0035】
「アポどりトークスクリプト自動生成」とは、特定の顧客データやシチュエーションに基づいて作成されたアポイントメント取得用トークスクリプトを生成するプロセスであり、個々の顧客のニーズや関心に合わせてパーソナライズされたトークを作成し、営業担当者が実際の会話で使用できるようにすることで、効率的なアポイントメント取得を支援する。具体的には、「アポどりトークスクリプト自動生成」は、基本アポどりトークスクリプト生成、通常エレベータピッチアポどりトーク生成、ソリューション成功事例自動抽出、ソリューション訴求型アポどりトーク自動生成(特長・利点・価値などはここで示されている)、ソリューション訴求型反論処理トーク自動生成、過去ニーズがある場合におけるニーズの裏のニーズのエレベータピッチアポどりトーク、過去ニーズがない場合における生成AIニーズの裏ニーズエレベータピッチアポどりトークを有している。
【0036】
また、ロールプレイングモデルは、面談時トークを含んでいる。面談時トークは、ヒーロー(ヒロイン)メイクトーク、オープニングバリュートーク、ニーズの裏のニーズ集、ソリューションニーズヒアリングトーク、エレベータピッチ、ニーズの裏のニーズのエレベータピッチ、バリューテンプレート集、勇気づけ反論処理集、ソリューション(成功事例)集、ソリューション逆算型SPIN、ソリューション逆算型提案プレゼンを有している。
【0037】
また、ロールプレイングモデルと密接に関連している機能として、ソリューション自動マッチング機能とロールプレイング自動示唆機能とがロールプレイングモデル生成部114に含まれていることが好ましい。「ソリューション自動マッチング機能」は、顧客のニーズや背景情報を分析し、最適な製品やサービス(ソリューション)を自動的に推薦する機能である。これにより、営業担当者は顧客に最も適したソリューションを提案できるようになる。「ロールプレイング自動示唆機能」は、推薦されたソリューションに基づいて、実際の営業対話の流れを模倣するためのトークのシナリオやスクリプトを自動生成する機能である。具体的には、ロールプレイング自動示唆機能は、1人のお客様を入力すると、ヒーロー(ヒロイン)メイクトーク、オープニングバリュートーク、ニーズの裏のニーズ集、ソリューションニーズヒアリングトーク、エレベータピッチ、ニーズの裏のニーズのエレベータピッチ、バリューテンプレート集、勇気づけ反論処理集、ソリューション(成功事例)集、ソリューション逆算型SPIN、ソリューション逆算型提案プレゼンが生成された上で、ロールプレイングモデルを自動生成する機能である。
【0038】
「大規模言語モデル」は、自然言語処理において用いられる確率モデルの一種であり、与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測するためのモデルである。具体的には、言語モデルは、与えられた単語列や文章の出現確率を計算したり、複数の単語列や文章の出現確率を比較することによって、次の単語や文を予測するときに、その文脈に基づいて最もありそうな単語や文を自動的に生成したり、特定の条件を満たす文を生成することを可能にしている。
【0039】
また、大規模言語モデルは、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化されている。これにより、大規模言語モデル部113は、マーケティングデータベースのターゲット情報に基づいて、自然言語処理を用いて仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化することで、生成精度と効率を向上させることができる。具体的には、ターゲット情報に関連する語彙や文法を重点的に学習することで、より現実的で具体的な仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを生成することができるとともに、生成プロセスを最適化することで、より短時間で生成することができる。さらに、大規模言語モデル部113は、新規ターゲット情報に基づいて仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを生成し、特定のターゲットに合わせたカスタマイズが可能となるため、より効果的な営業活動を行うことを可能にする。具体的には、年齢、性別、職業、興味・関心、ライフスタイル、価値観、ニーズ、課題などのターゲット要素に基づいて、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを生成することができるとともに、特定の企業や商品・サービスに合わせた専門用語や知識を含めることができる。
【0040】
以上のように、マーケティング活動支援装置1は、マーケティング活動におけるターゲットに関する複数のターゲット要素からなるターゲット情報と、ターゲットに対するトークスクリプトと、トークスクリプトによるマーケティング活動の成否を示す成否情報とが対応付けて記憶されたマーケティングデータベース121と、1以上のターゲット要素からなる新規ターゲット情報を受け付ける情報受付部111と、新規ターゲット情報と、マーケティングデータベース121のターゲット情報及び成否情報とに基づいて、マーケティング活動を成功させたトークスクリプトを抽出するトークスクリプト抽出部112と、マーケティングデータベース121のターゲット情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部113と、大規模言語モデル部113に対してプロンプトを出力することで、新規ターゲット情報に基づいて仮定ターゲットを生成し、トークスクリプト抽出部112で抽出されたトークスクリプトを仮定ターゲットに適用した場合におけるロールプレイングモデルを生成させるロールプレイングモデル生成部114とを有した構成にされている。
【0041】
上記の構成によれば、
図2に示すように、マーケティング活動支援装置1は、各データベース1211~1216を備えたマーケティングデータベース121の各ターゲット要素を含む情報を用いて、大規模言語モデル部113が学習し、情報受付部111の新規ターゲット情報とトークスクリプト抽出部112のトークスクリプトとを機械学習の説明変数に相当するものとし、ロールプレイングモデル生成部114からのプロンプトに応じて、大規模言語モデル部113がロールプレイングモデルを機械学習の目的変数に相当するものとして生成することになる。
【0042】
これにより、マーケティング活動支援装置1は、新規ターゲット情報を受け取り、過去の成功例から最適なトークスクリプトを抽出し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを用いて、そのトークスクリプトを基に現実に即したロールプレイングモデルを生成することで、マーケティング活動を十分に支援することが可能になる。特に、通常の機械学習ではなく、大規模言語モデルをロールプレイングモデルの生成に用いることで、教師データに含まれない新しい内容やバリエーションを生成することができるため、顧客や状況に合わせて、柔軟で多様なロールプレイングモデルを生成することができるとともに、教師データに含まれない創造的な内容を生成することができる。
【0043】
さらに、大規模言語モデルが、学習によって精度を向上することができるため、過去の成功例から学び、より効果的なロールプレイングモデルを継続的に生成することができる。即ち、営業活動の成果を分析し、改善点を反映したロールプレイングモデルを生成したり、顧客からのフィードバックを反映し、より顧客満足度の高いロールプレイングモデルを生成することができる。
【0044】
このように、マーケティング活動支援装置1は、大規模言語モデルを使用することで、通常の機械学習アプローチでは実現が困難な高度な機能を提供している。具体的には、自然言語処理を用いた複雑なテキスト生成や、コンテキストに基づいた内容の生成など、大規模言語モデルの特有の能力を活用している。通常の機械学習モデルでは、主に数値データやカテゴリデータを用いた予測、分類、クラスタリングなどが一般的であり、大規模なテキストデータを処理し、新たなテキストを生成するという点では限界がある。一方、大規模言語モデルは、大量のテキストデータから言語のパターンを学習し、与えられたプロンプトに基づいて新しいテキストを生成することが得意であることから、ロールプレイングモデルのように多様で複雑な言語の使用が求められる状況では、大規模言語モデルを用いたアプローチがより適切であり、従来の機械学習手法だけでは実現が難しい機能の提供が可能になっている。
【0045】
図3に示すように、マーケティング活動支援装置1は、情報受付部111、トークスクリプト抽出部112、大規模言語モデル部113及びロールプレイングモデル生成部114に加えて、トークスクリプト生成部115、ターゲット情報取得部116、データベース更新部117、端末制御部118及び通信部13を有している。通信部13を除く各部111~118は、コンピュータである制御部11に含まれている。制御部11に含まれる各部の一部又は全部は、ハードウェア及びソフトウェアの何れで構成されていても良い。情報受付部111への入力は、利用者4が操作する利用者端末2のキーボード等の入力部22で行われる。また、大規模言語モデル部113及びロールプレイングモデル生成部114により作成されたロールプレイングモデルは、利用者端末2のディスプレイ等の出力部21に表示される。
【0046】
通信部13は、利用者4が操作する利用者端末2にインターネット5を介してデータ通信可能に接続されている。尚、通信部13と利用者端末2とのデータ通信は、インターネット5に限定されるものではなく、専用線やLAN(Local Area Network)などの情報通信網が用いられてもよいし、近距離通信用の無線通信規であるBluetooth(登録商標)が用いられてもよい。また、通信部13と利用者端末2とのデータ通信は、情報漏洩を防止するため、専用線であってもよい。さらに、通信部13及び利用者端末2は、インターネット5を介してデータ通信する場合、VPN(Virtual Private Network)機能を有していることが好ましい。通信部13及び利用者端末2にVPN機能を組み込んだ場合は、利用者端末2からのデータ通信がVPN接続を経由するため、外部の不正アクセスから保護され、安全な通信が確保される。尚、利用者端末2及び管理者端末7は、一般的なパーソナルコンピュータやラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などの情報処理装置である。
【0047】
端末制御部118は、利用者端末2の表示画面をロールプレイングモデルの作成に適した画面に設定する機能を有している。例えば、
図4に示すように、端末制御部118は、利用者端末2の出力部21である表示画面において、ロールプレイングモデルの作成に必要な情報を入力するロールプレイングモデル作成画面211を形成する。ロールプレイングモデル作成画面211は、ターゲット情報としてロールプレイングを行う顧客の情報を入力する領域を有し、氏名、年齢、性別、職業、役職、電話番号、メールアドレスなどの情報を入力可能にしている。
【0048】
また、利用者端末2の表示画面には、質問ボックス212と回答ボックス213が、大規模言語モデル部113との対話用インターフェースとして形成されている。質問ボックス212には、利用者4が大規模言語モデル部113に対して入力する質問や指示のプロンプトが入力される。回答ボックス213は、質問ボックス212の入力に基づき、適切な回答や生成されたコンテンツを表示する。例えば、利用者4が「成果指標について、具体的に何をどのように書けば良いか分かりません。アドバイスをお願いします。と質問ボックス212に入力した場合は、回答ボックス213において「まずは、成果指標を設定する目的を明確にしましょう。例えば、営業活動の効率化、顧客満足度の向上、売上アップといった目的が考えられます。目的が明確になることで、適切な指標を選定しやすくなります。」との回答が出力される。これにより、端末制御部118は、利用者4と大規模言語モデル部113とのやり取りを通じて、利用者4に対してマーケティング活動における様々な入力例などを提供することができる。
【0049】
図3に示すように、マーケティング活動支援装置1は、入力受付部1192に接続された入力装置15と、表示制御部1191に接続された表示装置14とを有している。入力装置15は、キーボードやマウス、タッチパネル、音声入力装置などが例示される。表示装置14は、液晶表示装置などが例示される。これにより、マーケティング活動支援装置1は、一般的なパーソナルコンピュータやラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などの情報処理装置により構成することが可能になっている。マーケティング活動支援装置1は、入力装置15及び表示装置14の少なくとも一つが欠如されていてもよい。この場合は、入力装置15及び表示装置14が図示しない外部端末に備えられるため、マーケティング活動支援装置1をロールプレイングモデル作成サーバとして使用することができる。さらに、マーケティング活動支援装置1が利用者端末2として用いられ、利用者4が大規模言語モデル部113で生成される支援情報の支援を受けながら、マーケティング活動支援装置1においてロールプレイングモデルの作成が行われてもよい。
【0050】
尚、本実施形態においては、マーケティング活動支援装置1の機能が情報処理装置に搭載された場合について説明しているが、これに限定されるものではなく、クラウドコンピューティングにマーケティング活動支援装置1の機能が搭載されてもよい。この場合は、クラウドコンピューティングにより、必要に応じてコンピュータリソースが追加されることによって、大量の固有運用情報や共通運用情報を処理することができ、より高速かつ効率的な処理が可能になると共に、利用者4が大幅に増えた場合でも、処理能力を容易に拡張して対応することができる。
【0051】
また、マーケティング活動支援装置1は、営業主体がマーケティング活動を行った際に集積されるターゲット情報を取得するターゲット情報取得部116と、ターゲット情報取得部116においてターゲット情報が取得される度に、マーケティングデータベース121を更新するデータベース更新部117とを有している。これにより、マーケティング活動の結果として得られる新たなターゲット情報をリアルタイムでデータベースに反映させることができ、常に最新の情報をもとにマーケティング戦略を立てることができる。
【0052】
(変形例)
図5に示すように、マーケティング活動支援装置1は、大規模言語モデル部113に対してプロンプトを出力することで、トークスクリプト抽出部112で抽出されたトークスクリプトと、新規ターゲット情報とに基づいて、新規ターゲット情報に対してマーケティング活動をさらに成功させる可能性の高いトークスクリプトを生成させるトークスクリプト生成部115を有し、ロールプレイングモデル生成部114は、トークスクリプト抽出部112で抽出されたトークスクリプトに代えて、トークスクリプト生成部115で生成されたトークスクリプトを仮定ターゲットに適用した場合におけるロールプレイングモデルを生成させる構成にされていてもよい。
【0053】
上記の構成によれば、大規模言語モデル部113に対してプロンプトを出力することで、トークスクリプト抽出部112で抽出されたトークスクリプトと、新規ターゲット情報とに基づいて、新規ターゲット情報に対してマーケティング活動をさらに成功させる可能性の高いトークスクリプトが、トークスクリプト生成部115により生成される。これにより、マーケティング活動支援装置1は、より効果的なマーケティング活動を実現するロールプレイングモデルを生成することができる。
【0054】
また、マーケティング活動支援装置1は、トークスクリプト抽出部112において複数のトークスクリプトが抽出された場合、大規模言語モデル部113に対してプロンプトを出力することで、複数のトークスクリプトに基づいて、新規ターゲット情報に対してマーケティング活動を成功させる可能性の高いトークスクリプトを生成させるトークスクリプト生成部115を有してもよい。
【0055】
上記の構成によれば、複数の既存のトークスクリプトを活用して、新規ターゲットに最適なカスタマイズされたトークスクリプトを効率的に生成することができ、結果としてマーケティング活動の効果をさらに高めることができる。
【0056】
(マーケティングデータベース121)
次に、マーケティングデータベース121について詳細に説明する。マーケティングデータベース121は、記憶部12に保存されている。記憶部12は、制御部11に対してデータ通信可能に接続されている。記憶部12は、ハードディスクで構成されていてもよいし、ハードディスクとメモリとの組み合わせで構成されていてもよい。ハードディスクとメモリとを組み合わせた構成の場合は、データベースが使用するデータや索引などの一部が必要に応じてメモリにキャッシュされることによって、データベースへのアクセスを高速化することが可能になる。尚、記憶部12は、マーケティング活動支援装置1とは別に、インターネット5などの情報通信網に接続されたデータサーバであってもよい。また、記憶部12は、データベース毎に設けられた複数のデータサーバで構成されていてもよい。
【0057】
図6及び
図7に示すように、マーケティングデータベース121は、顧客情報データベース1211と、ソリューションデータベース1212と、営業トークデータベース1213と、ロールプレイングデータベース1214と、成果データベース1215と、その他のデータベース1216とを有している。
【0058】
顧客情報データベース1211は、顧客ID、氏名、会社名、役職、電話番号、メールアドレス、住所、興味のある商品/サービス、購入履歴などのターゲット要素項目を有し、各項目に対応付けてターゲット要素が記憶されることで、1件のターゲット情報とされている。例えば、顧客IDが「1」の場合、氏名が山田太郎、会社名が株式会社A、役職が営業、電話番号が090-1234-5678、メールアドレスがBBB、住所が東京都港区、興味ある商品/サービスが製品X, サービスY、購入履歴が「2023年1月: 製品X, 2023年3月: サービスY」からなるターゲット情報が記憶される。
【0059】
これにより、顧客情報データベース1211は、個々の顧客に関する詳細な情報を集約して記憶することで、マーケティング活動におけるパーソナライズされたアプローチを可能にする。また、顧客情報データベース1211に記録された顧客ID、個人情報、連絡先、購入履歴などのターゲット要素を活用することで、顧客のニーズや好みを深く理解し、それに基づいて効果的なコミュニケーション戦略を策定できる。例えば、顧客の過去の購入履歴からその人がどのような製品やサービスに関心を持っているかを把握し、類似するまたは関連する新製品の提案に活用することができる。さらに、営業主体は顧客の役職や会社名に基づいて、その顧客に最も適したアプローチを選ぶことができ、効率的でターゲットに合ったマーケティング戦略を展開することが可能になる。このように顧客情報データベース1211は、個々の顧客に合わせたカスタマイズされたマーケティングを実施し、顧客満足度の向上と販売機会の最大化を目指すことを可能にしている。
【0060】
ソリューションデータベース1212は、ソリューションID、ソリューション名、概要、対象顧客、提供価値、価格、導入事例などのターゲット要素項目を有し、各項目に対応付けてターゲット要素が記憶されることで、1件のソリューション情報とされている。例えば、ソリューションIDが「1」の場合、ソリューション名が製品X、概要が顧客管理システム、対象顧客が中小企業、提供価値が営業効率化、価格が10万円/月、導入事例が株式会社A, 株式会社Bからなるソリューション情報が記憶される。
【0061】
これにより、ソリューションデータベース1212は、企業が提供する各ソリューションの詳細な情報を一元的に管理することができる。具体的には、ソリューションID、ソリューション名、概要、対象顧客、提供価値、価格、導入事例といった項目を記憶することで、営業主体やマーケティング担当者は、顧客に最適な製品やサービスを素早く特定し提案することができる。例えば、営業効率化を図るソリューションは、特に中小企業向けに価値を提供すると記憶されているため、このセグメントの顧客にアプローチする際に有効である。また、価格情報と導入事例を組み合わせることで、顧客にとってのコストパフォーマンスと実際の効果を具体的に示すことができ、信頼性のあるセールスピッチを行うことが可能になる。導入事例を含むことで、潜在的な顧客に対して製品の成功例を示し、その効果を具体的に伝えることができるため、営業交渉を有利に進めるための強力なツールとなる。このようにソリューションデータベース1212は、製品やサービスの特徴を明確にし、顧客への適切なマッチングを支援することで、販売促進と顧客満足度の向上に寄与する。
【0062】
営業トークデータベース1213は、トークID、シチュエーション、ターゲット、目的、トーク内容などのターゲット要素項目を有し、各項目に対応付けてターゲット要素が記憶されることで、1件のソリューション情報とされている。例えば、トークIDが「1」の場合、シチュエーションが初めての訪問、ターゲットが中小企業の経営者、目的が製品Xの導入を提案、トーク内容が「製品Xの概要、導入事例、導入によるメリットを説明」からなる営業トーク情報が記憶される。
【0063】
これにより、営業トークデータベース1213は、営業シナリオに合わせた効果的なトークスクリプトを提供することを可能にしている。営業トークデータベース1213は、トークID、シチュエーション、ターゲット目的、トーク内容などのターゲット要素項目を記憶することにより、営業主体は特定の顧客へのアプローチ時に、どのような会話を展開すべきかを明確に理解することができる。例えば、初めて訪問する中小企業の経営者との会話では、製品Xの導入を提案し、製品の概要や導入事例、導入によって得られるメリットを説明するトーク内容が記憶されているため、営業主体は、そのシナリオに即した内容を用意することなく効率的にコミュニケーションを取ることができる。これにより、営業トークデータベース1213は、準備の時間短縮、顧客に合わせたパーソナライズされた対話を実現する。
【0064】
ロールプレイングデータベース1214は、ロールプレイングID、シチュエーション、ターゲット、目的、ロールプレイング内容などのターゲット要素項目を有し、各項目に対応付けてターゲット要素が記憶されることで、1件の営業トーク情報とされている。例えば、ロールプレイングIDが「1」の場合、シチュエーションが初めての訪問、ターゲットが中小企業の経営者、目的が製品Xの導入を提案、ロールプレイング内容が「営業担当者と顧客役を演じ、製品Xの導入を提案するロールプレイング」からなる営業トーク情報が記憶される。
【0065】
これにより、ロールプレイングデータベース1214は、営業主体が事前に様々な販売シナリオを練習することで、実際の顧客対応時のパフォーマンスを向上させることが可能になる。ロールプレイングデータベース1214は、実際の顧客対面シナリオに即したロールプレイングを通じて、営業担当者が対話の流れを学び、反響に対応するスキルを養う機会を提供することを可能にする。ロールプレイングID、シチュエーション、ターゲット、目的、およびロールプレイング内容を含む情報は、営業主体が顧客との実際の会話で使用する言葉選びや反応のタイミングなど、細かいコミュニケーションの技術を磨くのに役立つものである。例えば、中小企業の経営者との初対面で製品Xを提案するシチュエーションでは、このデータベースから適切なロールプレイングスクリプトを参照し、事前に様々な質問や異論に対する対処法をシミュレーションすることができる。これにより、営業主体は、より自信を持って実際のセールス状況に臨むことができ、結果として顧客からの信頼獲得や製品の販売促進に繋がる可能性が高まることになる。
【0066】
成果データベース1215は、成果ID、ソリューションID、顧客ID、トークID、ロールプレイングID、導入時期、成果指標、成果内容などのターゲット要素項目を有し、各項目に対応付けてターゲット要素が記憶されることで、1件の営業トーク情報とされている。例えば、成果IDが「1」の場合、ソリューションIDが1、顧客IDが1、トークIDが1、ロールプレイングIDが1、導入時期が2023年1月、成果指標が売上、成果内容が売上10%増加からなる成果情報が記憶される。
【0067】
これにより、成果データベース1215は、営業活動とその結果を具体的な数値や指標に基づいて追跡し、分析することを可能にする。成果データベース1215は、ソリューションの提案から成約に至るまでの各ステップにおける成果を記録し、営業プロセスのどの部分が成功しているか、または改善が必要かを明確にすることを可能にする。成果ID、ソリューションID、顧客ID、トークID、ロールプレイングID、導入時期、成果指標、成果内容などのデータを含むことにより、営業戦略の有効性を測定し、特定のソリューションや営業アプローチが顧客にどの程度受け入れられているかを具体的な数字で把握可能にする。例えば、売上の増加といった成果を達成したケースでは、何がその成果をもたらしたのかを分析することができ、成功した営業プロセスを再現または他のケースに適用するための貴重な情報源となる。
【0068】
その他のデータベース1216は、業界データ、職種データ、市場データ、競合データなどを記憶している。業界データは、特定の業界の動向、規模、成長率、業界内での主要なプレイヤーやトレンドなどの情報を含み、営業主体が業界特有のニーズを理解し、その業界に合わせた製品やサービスを提案可能にする。職種データは、特定の職種や職務内容に関連する情報を提供し、ターゲット顧客の日常業務や直面している課題についての洞察を深めるのに役立つものである。市場データは、市場のサイズ、成長の機会、顧客の行動パターン、需要動向などを含み、マーケティング戦略の策定において重要な指標となる。競合データは、競合他社の製品やサービス、価格設定、市場シェア、強みと弱み、マーケティング戦略などの情報を提供し、自社のポジショニングを決定し、競合に対する優位性を築くための戦略を練るのに役立つものである。
【0069】
(マーケティング活動支援プログラム)
図3に示すように、マーケティング活動支援装置1において、情報受付部111、トークスクリプト抽出部112、大規模言語モデル部113、ロールプレイングモデル生成部114、トークスクリプト生成部115、ターゲット情報取得部116、データベース更新部117、端末制御部118は、ハードウェア及びソフトウェアの何れで構成されていてもよい。これらの各部111~118は、少なくとも制御部11の一部を構成している。各部111~118がソフトウェアにより構成されている場合は、制御部11であるコンピュータに、ロールプレイングモデルの作成に特化された自然言語処理のための言語モデルを利用することにより、ロールプレイングモデルを生成するマーケティング活動支援プログラムをコンピュータ(制御部11)に実行させるようになっている。
【0070】
図8を用いて具体的な一例を示すと、マーケティング活動支援プログラムは、マーケティング活動におけるターゲットに関する複数のターゲット要素からなるターゲット情報と、ターゲットに対するトークスクリプトと、トークスクリプトによるマーケティング活動の成否を示す成否情報とが対応付けて記憶されたマーケティングデータベース121を有したマーケティング活動支援装置1のコンピュータ(制御部11)に、1以上のターゲット要素からなる新規ターゲット情報を受け付ける情報受付処理ステップ(S1)と、新規ターゲット情報と、マーケティングデータベース121のターゲット情報及び成否情報とに基づいて、マーケティング活動を成功させたトークスクリプトを抽出するトークスクリプト抽出処理ステップ(S2)と、マーケティングデータベース121のターゲット情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル処理ステップ(S3)と、大規模言語モデル処理ステップ(S3)に対してプロンプトを出力することで、新規ターゲット情報に基づいて仮定ターゲットを生成し、トークスクリプト抽出処理ステップ(S2)で抽出されたトークスクリプトを仮定ターゲットに適用した場合におけるロールプレイングモデルを生成させるロールプレイングモデル生成処理ステップ(S4)とを実行させるためのプログラムである。尚、マーケティング活動支援プログラムは、制御部11における各部111~118の機能を処理ステップとしてコンピュータに実行させるようになっていてもよい。
【0071】
上記の構成によれば、新規ターゲット情報を受け取り、過去の成功例から最適なトークスクリプトを抽出し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを用いて、そのトークスクリプトを基に現実に即したロールプレイングモデルを生成することで、マーケティング活動を十分に支援することが可能になる。特に、通常の機械学習ではなく、大規模言語モデルをロールプレイングモデルの生成に用いることで、教師データに含まれない新しい内容やバリエーションを生成することができるため、顧客や状況に合わせて、柔軟に多様なロールプレイングモデルを生成することができるとともに、教師データに含まれない創造的な内容を生成することができる。
【0072】
また、マーケティング活動支援プログラムは、パーソナルコンピュータやタブレット端末などの情報処理装置にインストールするだけの作業で、情報処理装置をマーケティング活動支援装置1として機能させることができる。尚、プログラムは、CDROMやUSBメモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された状態で配布されてもよいし、インターネットなどの双方向やテレビ放送などの一方向の通信網や通信回線を介して配布されてもよい。
【0073】
(マーケティング活動支援方法)
マーケティング活動支援装置1は、コンピュータ(制御部11)にマーケティング活動支援方法を実行させるようになっている。具体的には、マーケティング活動におけるターゲットに関する複数のターゲット要素からなるターゲット情報と、ターゲットに対するトークスクリプトと、トークスクリプトによるマーケティング活動の成否を示す成否情報とが対応付けて記憶されたマーケティングデータベース121を有したマーケティング活動支援装置1のコンピュータ(制御部11)に、1以上のターゲット要素からなる新規ターゲット情報を受け付ける情報受付処理と、新規ターゲット情報と、マーケティングデータベース121のターゲット情報及び成否情報とに基づいて、マーケティング活動を成功させたトークスクリプトを抽出するトークスクリプト抽出処理と、マーケティングデータベース121のターゲット情報に基づいて、自然言語処理の1種以上を組み合わせることにより、プロンプトで与えられた単語や文章が自然言語としてどのように起こりやすいかを確率的に予測し、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルを文章生成、質問応答により生成するように学習及び調整が行われることで、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル処理と、大規模言語モデル処理に対してプロンプトを出力することで、新規ターゲット情報に基づいて仮定ターゲットを生成し、トークスクリプト抽出処理で抽出されたトークスクリプトを仮定ターゲットに適用した場合におけるロールプレイングモデルを生成させるロールプレイングモデル生成処理とを実行させるための方法である。尚、マーケティング活動支援方法は、制御部11における各部111~118の機能を処理ステップとしてコンピュータに実行させるようになっていてもよい。
【0074】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば各種の変更例及び修正例に想到し得るものである。よって、それら変更例及び修正例は、本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 マーケティング活動支援装置
2 利用者端末
4 利用者
5 インターネット
7 管理者端末
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 表示装置
15 入力装置
111 情報受付部
112 トークスクリプト抽出部
113 大規模言語モデル部
114 ロールプレイングモデル生成部
115 トークスクリプト生成部
116 ターゲット情報取得部
117 データベース更新部
118 端末制御部
121 マーケティングデータベース
【要約】
【課題】スクリプトを基に現実に即したロールプレイングモデルを生成することで、マーケティング活動を十分に支援する。
【解決手段】本発明のマーケティング活動支援装置1は、新規ターゲット情報と、マーケティングデータベース121のターゲット情報及び成否情報とに基づいて、マーケティング活動を成功させたトークスクリプトを抽出するトークスクリプト抽出部112と、仮定ターゲット及びロールプレイングモデルの作成に特化された大規模言語モデルを有した大規模言語モデル部113と、大規模言語モデル部113に対してプロンプトを出力することで、新規ターゲット情報に基づいて仮定ターゲットを生成し、トークスクリプト抽出部112で抽出されたトークスクリプトを仮定ターゲットに適用した場合におけるロールプレイングモデルを生成させるロールプレイングモデル生成部114とを有する。
【選択図】
図1