(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】バイオマスガス化方法、バイオマスガス化システム、およびバイオマス発電システム
(51)【国際特許分類】
C10J 3/02 20060101AFI20240718BHJP
C10J 3/00 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
C10J3/02 J ZAB
C10J3/00 F
(21)【出願番号】P 2024514413
(86)(22)【出願日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2023043318
【審査請求日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2022194629
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511284591
【氏名又は名称】株式会社ネオナイト
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】寺山 文久
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-500403(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0095866(US,A1)
【文献】特開2006-299011(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155391(WO,A1)
【文献】特開2015-165019(JP,A)
【文献】特開2007-237135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料バイオマスを乾燥する乾燥工程を行う乾燥装置と、
この乾燥装置の乾燥工程にて乾燥した原料バイオマスを導入する導入工程と、導入した原料バイオマスを熱分解可能となるまで加熱する加熱工程と、加熱した原料バイオマスを還元雰囲気で熱分解させて可燃性ガスを発生させるガス化工程と、発生した可燃性ガスを滞留させて、前記可燃性ガスに残留するタール分を改質させて可燃性ガスとするタール分改質工程と、発生した可燃性ガスを導出する導出工程と、
前記ガス化工程での熱分解にて生じた熱を排出する熱排出工程と、を
行うガス化装置と、
この
ガス化装置から導出される可燃性ガスを燃焼させて駆動するガスエンジンと、
このガスエンジンにて駆動される発電機と、
前記
ガス化装置から前記ガスエンジン
までの間
の配管に取り付けられ、前記配管内の前記可燃性ガスを引き抜いて
前記配管内を負圧に
して前記ガス化装置から導出される可燃性ガスを前記ガスエンジンまで流動させる負圧システムと、
を備え、
前記乾燥装置の乾燥工程は、前記熱排出工程から排出した熱で前記原料バイオマスを乾燥し、
前記ガス化装置および前記乾燥装置は、取り外し可能かつ移動可能にユニット化されている、
ことを特徴とするバイオマス
発電システム。
【請求項2】
前記ガス化装置は、
前記加熱工程
にて、原料バイオマスの表面を燃焼させて、前記原料バイオマスが熱分解可能となる温度まで加熱する、
ことを特徴とする請求項
1記載のバイオマス
発電システム。
【請求項3】
前記ガス化装置は、
前記加熱工程
にて、前記原料バイオマスを200℃以上600℃以下に加熱し、
前記タール分改質工程
にて、前記可燃性ガスを600℃以上800℃以下で所定時間滞留させてタール分を改質させ少なくとも一部を低分子化させる、
ことを特徴とする請求項
1記載のバイオマス
発電システム。
【請求項4】
前記ガス化装置は、
軸方向を鉛直方向に向けて設置されたガス化炉を有し、
前記導入工程
にて、
前記ガス化炉の上端部から前記原料バイオマスを導入し、
前記加熱工程
にて、前記ガス化炉内に外気を導入して、前記原料バイオマスの表面を燃焼させて加熱し、
前記ガス化工程
にて、前記ガス化炉内に導入した外気中の酸素が前記加熱工程での燃焼にて消失して還元雰囲気となり、
前記タール分改質工程
にて、前記ガス化炉の周面部に設けられた滞留路に前記可燃性ガスを巡回させて滞留させる、
ことを特徴とする請求項
1記載のバイオマス
発電システム。
【請求項5】
前記ガス化装置は、前記加熱工程および前記ガス化工程にて生じた炭を集める集炭工程と、この集炭工程にて集めた炭を排出させる排出工程
とを行い、
前記集炭工程
にて、前記ガス化炉の下部に堆積した炭を外周へ移動させて前記排出工程へ送り、
前記排出工程
にて、前記集炭工程から送られた炭を前記ガス化炉の外部へ排出させる、
ことを特徴とする請求項
4記載のバイオマス
発電システム。
【請求項6】
前記負圧システムは、前記ガスエンジンの直前の位置に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項
1記載のバイオマス発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる木材をチップ状にした原料バイオマスから可燃性ガスを発生させるバイオマスガス化方法、バイオマスガス化システム、およびバイオマス発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、持続可能な開発のための2030アジェンダ、平成27(2015)年9月25日国連サミット採択、以下「SDGs」という。)の推進に向けた取り組みが国際規模で行われている。具体的に、SDGsの目標としては、「目標7:エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」や、「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」、「目標11:住み続けられるまちづくりを」、「目標12:作る責任、使う責任」、「目標13:気候変動に具体的な対策を」、「目標15:陸の豊かさも守ろう」等があり、これら目標の解決を目指した技術開発が望まれている。
【0003】
これら目標の解決に貢献できる技術として、二酸化炭素の増減に影響を与えないカーボンニュートラルという発想の観点から、近年、木屑やチップ状の木材等を原料としたバイオマス発電の活用が期待されている。そして、この種のバイオマス発電に用いられる技術として特許文献1に記載の構成が知られている。具体的に、この特許文献1には「原料バイオマスを間接加熱して熱分解し、タール分を含む熱分解ガスとチャーを発生させる外熱式ロータリーキルン形式の熱分解部2と、熱分解部2から抽出されるタール分を含む熱分解ガスおよびチャーに対し、酸化ガスが導入されて、タール分を熱分解させるとともに、チャーをガス化させるガス化部3とを備えた。」バイオマスガス化装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のバイオマスガス化装置では、原料バイオマスを間接加熱して、タール分を含む熱分解ガスおよびチャーを発生させ、これに酸化ガスを導入してタール分を熱分解させる構成としている。要するに、原料バイオマスの間接加熱時に熱分解ガスとともに発生するタール分は、熱分解ガスを取り出す際に炉内や配管内に付着して熱分解ガスの利用効率を低下させてしまう問題から、特許文献1に記載のバイオマスガス化装置では、タール分を熱分解ガスから取り除くために、酸素ガスを導入してタール分を熱分解させる構成を別途必要としている。すなわち、特許文献1に記載のバイオマスガス化装置では、タール分を熱分解させるために酸素ガスを導入する設備や付加装置を別途設ける必要があるため、熱分解ガスの利用効率を生産性良く向上することが容易でないという問題がある。また、上記特許文献1に記載のバイオマスガス化装置では、ガス化部3から燃料ガスを吸引して抽出するための吸引ファン27が設けられており、この吸引ファン27による吸引にて燃料ガスをガスエンジン発電機23へ強制的に抽出する構成となっている。このため、ガス化部3からガスエンジン発電機23までの燃料ガスの配管内が加圧された状態となるため、このガス化部3からガスエンジン発電機23までの配管設備が大掛かりになってしまい、高圧(正圧)な燃料ガスを取り扱うことによる運転上のリスクが高いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、原料バイオマスを乾燥する乾燥工程を行う乾燥装置と、この乾燥装置の乾燥工程にて乾燥した原料バイオマスを導入する導入工程と、導入した原料バイオマスを熱分解可能となるまで加熱する加熱工程と、加熱した原料バイオマスを還元雰囲気で熱分解させて可燃性ガスを発生させるガス化工程と、発生した可燃性ガスを滞留させて、前記可燃性ガスに残留するタール分を改質させて可燃性ガスとするタール分改質工程と、発生した可燃性ガスを導出する導出工程と、前記ガス化工程での熱分解にて生じた熱を排出する熱排出工程と、を行うガス化装置と、このガス化装置から導出される可燃性ガスを燃焼させて駆動するガスエンジンと、このガスエンジンにて駆動される発電機と、前記ガス化装置から前記ガスエンジンまでの間の配管に取り付けられ、前記配管内の前記可燃性ガスを引き抜いて前記配管内を負圧にして前記ガス化装置から導出される可燃性ガスを前記ガスエンジンまで流動させる負圧システムと、を備え、前記乾燥装置の乾燥工程は、前記熱排出工程から排出した熱で前記原料バイオマスを乾燥し、前記ガス化装置および前記乾燥装置は、取り外し可能かつ移動可能にユニット化されている、ことを特徴とするバイオマス発電システム。
請求項2の発明は、請求項1記載のバイオマス発電システムにおいて、前記ガス化装置は、前記加熱工程にて、原料バイオマスの表面を燃焼させて、前記原料バイオマスが熱分解可能となる温度まで加熱する、ことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載のバイオマス発電システムにおいて、前記ガス化装置は、前記加熱工程にて、前記原料バイオマスを200℃以上600℃以下に加熱し、前記タール分改質工程にて、前記可燃性ガスを600℃以上800℃以下で所定時間滞留させてタール分を改質させ少なくとも一部を低分子化させる、ことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1記載のバイオマス発電システムにおいて、前記ガス化装置は、軸方向を鉛直方向に向けて設置されたガス化炉を有し、前記導入工程にて、前記ガス化炉の上端部から前記原料バイオマスを導入し、前記加熱工程にて、前記ガス化炉内に外気を導入して、前記原料バイオマスの表面を燃焼させて加熱し、前記ガス化工程にて、前記ガス化炉内に導入した外気中の酸素が前記加熱工程での燃焼にて消失して還元雰囲気となり、前記タール分改質工程にて、前記ガス化炉の周面部に設けられた滞留路に前記可燃性ガスを巡回させて滞留させる、ことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項4記載のバイオマス発電システムにおいて、前記ガス化装置は、前記加熱工程および前記ガス化工程にて生じた炭を集める集炭工程と、この集炭工程にて集めた炭を排出させる排出工程とを行い、前記集炭工程にて、前記ガス化炉の下部に堆積した炭を外周へ移動させて前記排出工程へ送り、前記排出工程にて、前記集炭工程から送られた炭を前記ガス化炉の外部へ排出させる、ことを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1記載のバイオマス発電システムにおいて、前記負圧システムは、前記ガスエンジンの直前の位置に取り付けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、発生した可燃性ガスを滞留させることで、可燃性ガスに残留するタール分を改質させて可燃性ガスにできるから、例えば配管などの機器中への残存タール分の付着を低減でき、メンテナンス頻度を低減できるため、可燃性ガスの利用効率を生産性良く向上することができる。そして、乾燥工程にて原料バイオマスを乾燥させてから、この乾燥させた原料バイオマスを導入工程にて導入する構成としている。このため、乾燥が不十分な原料バイオマスであっても効率良く可燃性ガスを生成できる。また、熱排出工程で排出した熱を用いて乾燥工程にて原料バイオマスを乾燥させる構成としている。このため、乾燥工程で原料バイオマスを乾燥する際に必要となる熱を、熱排出工程で排出した熱で補うことができる。さらに、ガス化装置および乾燥装置を取り外し可能かつ移動可能にユニット化している。このため、一旦設置したガス化装置および乾燥装置の取り外しや移動が容易にできるため、可燃性ガスを必要とする場所への移動および設置を容易に行うことができる。また、ガス化装置からガスエンジンまでの間の配管に取り付けた負圧システムを用いて配管内の可燃性ガスを引き抜いて、この配管内を負圧にして、ガス化装置から導出される可燃性ガスをガスエンジンまで流動させることができる。よって、例えば各工程ごとに吸引ファンやポンプ等の動力源をなんら用いることなく、ガス化装置から導出される可燃性ガスをガスエンジンまで連続的に供給できるから、ガス化装置からガスエンジンまでの配管設備を高圧配管でない簡素化した仕様にでき、運転上のリスクを低くできる。
請求項2の発明によれば、原料バイオマスの表面を燃焼させて原料バイオマスが熱分解可能となる温度まで加熱する構成としているため、原料バイオマスの熱分解に必要な温度までの加熱を簡単な構成で行うことができる。
請求項3の発明によれば、加熱工程にて200℃以上600℃以下に原料バイオマスを加熱してから、ガス化工程にて発生させた可燃性ガスを、タール分改質工程にて600℃以上800℃以下で所定時間滞留させてタール分を改質させ少なくとも一部を低分子化させる構成としている。このため、タール分改質工程にて可燃性ガスを加熱等することなく、加熱工程にて加熱された可燃性ガスの温度をコントロールして所定時間滞留させることで、可燃性ガスに残留するタール分を改質させ少なくとも一部を低分子化できる。
請求項4の発明によれば、ガス化炉内に導入した外気中の酸素が加熱工程での燃焼にて消失することでガス化工程での還元雰囲気を形成する構成としている。また同時に、ガス化炉の滞留路に可燃性ガスを巡回させて滞留させタール分改質工程での可燃性ガスに残留するタール分を所定時間に亘って効率よく改質する構成としている。このため、生産効率良く可燃性ガスを生成できるとともに、可燃性ガスに残留するタール分を簡単な構成で効率良く改質できる。
請求項5の発明によれば、ガス化炉の下部に堆積した炭を集炭工程にて外周へ移動させてから排出工程にてガス化炉の外部へ排出させる構成としている。このため、ガス化炉内で生じた炭を連続的に効率良く外部へ排出できる。
請求項6の発明によれば、ガスエンジンの直前の位置に負圧システムを取り付けることにより、ガスエンジンの直前の位置で可燃性ガスを負圧にできるから、バイオマスガス化システムから導出される可燃性ガスをガスエンジンまでより効率よく連続的に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るバイオマス発電システムの概略構成図である。
【
図2】チップ乾燥装置の内部構造を示す概略正面図である。
【
図3】チップ乾燥装置の内部構造を示す概略平面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るバイオマス発電システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0010】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1に示す本発明の第1実施形態に係るバイオマス発電システム1は、例えば木材を一辺10cm程度のチップ状に加工した原料バイオマスである木質チップAをエネルギー源とする発電システムである。このバイオマス発電システム1は、木質チップAから可燃性ガスGを生成させるバイオマスガス化システム2と、生成された可燃性ガスGを燃焼させて発電をする発電機としてのガスエンジン発電ユニット3と、を備える。バイオマスガス化システム2は、木質チップAを乾燥させるチップ乾燥ユニット4と、チップ乾燥ユニット4にて乾燥させた木質チップAから可燃性ガスGを生成させるガス化ユニット5と、を備える。
【0011】
ガス化ユニット5の下流側には、ガス化ユニット5にて生成された可燃性ガスGを精製するガスコンディショニングユニット6が設置されている。ガスコンディショニングユニット6は、ガス化ユニット5の下流側に設置されたガスフィルタ6Aを備える。ガスフィルタ6Aは、ガス化ユニット5にて生成された可燃性ガスGに含まれる副生成物を除去するものであり、湿式ガス洗浄と冷却とを組み合わせて可燃性ガスGをろ過する副生成物除去装置である。また、ガスフィルタ6Aは、例えば60℃の高温冷却水W1と、例えば30℃の低温冷却水W2のそれぞれが供給され、これら高温冷却水W1および低温冷却水W2を冷却水として循環させながら可燃性ガスGをろ過する構成となっている。
【0012】
ガスフィルタ6Aの下流側には、ガスフィルタ6Aにて副生成物が除去された可燃性ガスGに含まれる微小物質を除去するガスコンディショニングとしての電気集塵機6Bが設置されている。電位集塵機6Bは、可燃性ガスGに残留する微小物質を集塵する湿式電気集塵機である。さらに、ガスフィルタ6Aおよび電気集塵機6Bは、それぞれ循環水W3を循環させて冷却する冷却システムを有している。循環水Wは、水処理装置6Cへ送られる構成となっている。水処理装置6Cは、循環水W1に含まれている副産物を除去し、この循環水W1を浄化する浄化装置である。
【0013】
電気集塵機6Bの下流側には、ガスエンジン発電ユニット3が設置されている。要するに、ガス化ユニット5にて生成された可燃性ガスGは、ガスフィルタ6Aにて副産物が除去され電気集塵機6Bにて微小物質が除去された後、ガスエンジン発電ユニット3へ供給される構成となっている。また、ガスエンジン発電ユニット3は、可燃性ガスGを燃焼させて駆動するガスエンジン3aと、このガスエンジン3aにて駆動される発電機3bとを備えている。ガスエンジン発電ユニット3には、ガスエンジン3aでの可燃性ガスGの燃焼時および発電機3bの発電時に発生した排熱を利用するユーティリティとして熱交換ユニット7が取り付けられている。熱交換ユニット7は、高温熱交換ユニット7Aと、低温熱交換ユニット7Bと、を備える。
【0014】
高温熱交換ユニット7Aは、カスエンジン発電ユニット3に加え、チップ乾燥ユニット4、ガス化ユニット5、およびガスフィルタ6Aのそれぞれに接続されている。具体的に、高温熱交換ユニット7Aは、ガスエンジン発電ユニット3、ガス化ユニット5およびガスフィルタ6Aのそれぞれから排出される例えば90℃の高温冷却水W1が供給され、この高温冷却水W1をチップ乾燥ユニット4の空冷熱交換器4bへ供給する構成となっている。空冷熱交換器4bは、供給された高温冷却水W1を熱源として空気を温めて熱風とし、この熱風で木質チップAを乾燥させる。空冷熱交換器4bは、熱交換にて高温冷却水W1が例えば60℃に冷却され、再び高温熱交換ユニット7Aを介して、ガスエンジン発電ユニット3、ガス化ユニット5およびガスフィルタ6Aのそれぞれへ循環させる構成となっている。
【0015】
低温熱交換ユニット7Bは、ガスフィルタ6Aに接続され、ガスフィルタ6Aの駆動時に生じる排熱をチップ乾燥ユニット4に供給する構成となっている。具体的に、低温熱交換ユニット7Bは、ガスフィルタ6Aから排出される例えば40℃の低温冷却水W2が供給され、この低温冷却水W2を熱交換して例えば30℃に冷却してから、再びガスフィルタ6Aへ循環させる。そして、低温熱交換ユニット7Aは、低温冷却水W2を熱源として熱交換を行い、この熱源で空気を温めて熱風とし、この熱風をエアホース7aにてチップ乾燥ユニット4のチップ投入部11cへ供給し、チップ投入室11cに蓄積させた木質チップAを事前に乾燥させる構成となっている。
【0016】
ガスエンジン発電ユニット3には、メタネーションユニット8が取り付けられている。メタネーションユニット8は、ガスエンジン発電ユニット3または太陽光発電(図示せず)にて発電された電気にて駆動する構成となっている。そして、メタネーションユニット8は、ガスエンジン発電ユニット3による発電にて排出される排ガス中の二酸化炭素(炭酸ガス:CO2)と、電気分解にて生成した水素(H2)とからメタンガス(可燃性ガス:CH4)を合成する。さらに、メタネーションシステム8は、合成したメタンガスをガスエンジン発電ユニット3へ供給し、ガスエンジン発電ユニット3のガスエンジン3aの駆動に用いる発電用燃料として利用する構成となっている。
【0017】
また、メタネーションシステム8は、電気分解にて生成した酸素(O2)をガス化ユニット5へ供給し、この酸素をガス化ユニット5での可燃性ガスGの生成時に用いる構成となっている。要するに、メタネーションユニット8は、二酸化炭素を循環利用して、温暖化防止のための二酸化炭素の削減に寄与する機能を有している。
【0018】
<チップ乾燥ユニット>
次いで、チップ乾燥ユニット4は、
図2~
図5に示すように、少なくとも2つの投入用コンテナ部11と乾燥用コンテナ部12とを備えたバイオマス乾燥装置である。投入用コンテナ部4Aおよび乾燥用コンテナ部4Bは、水平方向に長手方向を有する直方体状の同一形状に形成され、分割可能であって取り外し可能かつ移動可能な組み立て式のユニット化とされている。これら投入用コンテナ部11および乾燥用コンテナ部12は、例えば長さ5975mm、高さ2480mm、奥行2130mmのボックス形状に形成されている。以下の記載において、特にその基準を特定しない限り、
図2の右側を下流側とし、左側を上流側と規定して説明する。
【0019】
乾燥用コンテナ部12は、内部の高さ寸法が、例えば1874mmに形成されている。そして、乾燥用コンテナ部12の下流側に制御室12aが設けられ、この制御室12aの上流側の底面部12b上には、乾燥した空気を通過させる通気路12cが設けられている。通気路12c上には、例えばパンチングメタル等の複数の孔が形成された板材12dが取り付けられている。板材12d上には、木質チップAを乾燥させるための乾燥部としての乾燥室12eと、この乾燥室12eへ熱風を供給するための熱交換室12fとが区画されている。熱交換室12fは、乾燥室12e上に設けられている。そして、制御室12aおよび熱交換室12fの上側が天板部12gにて閉塞されている。
【0020】
また、熱交換室12fおよび乾燥室12eの上流側には、木質チップAの搬送量を調整するための調整室12hが設けられている。調整室12hは、チップ投入室11cへ投入された木質チップAを通過させて乾燥室12eへ搬送させるための搬送部である。具体的に、調整室12hは、熱交換室12fの上流側の側面部をさらに下方に延出させた第1壁部12iと、乾燥用コンテナ部12の上流側の側面部の下方を切り欠いた第2壁部12jとの間の空間とされている。第1壁部12iは、乾燥用コンテナ部12の天板部12gから下方に向けて例えば1440mmほど延出し、第2壁部12jは、乾燥用コンテナ部12の天板部12gから下方に向けて例えば1050mmほど延出した形状となっている。
【0021】
そして、第1壁部12iと板材12dとの間の隙間は434mmとされ、第2壁部12jと板材12dとの間の隙間は824mmとされている。要するに、第1壁部12iは、チップ投入室11cの下流側に位置する第2壁部12jより下方に延出した形状となっている。そして、調整室12hは、第1壁部12iおよび第2壁部12jによってチップ投入室11cよりも搬送方向Hに直交する方向の開口断面積が小さく形成されている。そして、第2壁部12jには、複数の通気口12kが設けられている。
【0022】
さらに、熱交換室12fには、吸気ファン4aおよび空冷熱交換器4bが取り付けられている。吸気ファン4aは、熱交換室12fの上側に取り付けられ、外気を熱交換室12f内へ導入する構成となっている。空冷熱交換器4bは、加熱器であって、熱交換室12fの底面部に取り付けられている。熱交換室12fは、吸気ファン4aにて外気を熱交換室12f内へ取り入れて空冷熱交換器4bへ送り、この取り入れた空気を空冷熱交換器4bにて加熱して熱風とし、この熱風を熱交換室12fから乾燥室12eへ供給する構成となっている。そして、乾燥室12eは、熱交換室12fから供給された熱風を第1壁部12iおよび第2壁部12jの下方を通過させて投入用コンテナ部11へ吹き付ける構成となっている。
【0023】
また、乾燥室12eの下流側の底部には、下方に貫通したチップ排出口12mが設けられている。チップ排出口12mの下方には、木質チップAを排出させる、排出窓、例えばゲート・扉・コンベヤ等で構成されたチップ排出装置12nが取り付けられている。チップ排出装置12nは、例えば手動式の排出窓としたり、ガス化炉5aの内部温度の変化に起因する木質チップAの供給量の変化に基づいて機械的に駆動が制御される排出窓やスクリューコンベヤなどとしたりできる。チップ排出装置12nの下流側には、チップ排出装置12nにて排出させた木質チップAを搬送するための搬送器としてのチップ搬送コンベヤ9が取り付けられている。チップ搬送コンベヤ9は、チップ排出装置12nにて排出された木質チップAをガス化炉5aへ搬送し、このガス化炉5a内へ導入させる。
【0024】
一方、投入用コンテナ部11は、底面部11a上に所定の間隔を空けて板材11bが取り付けられている。板材11bは、乾燥用コンテナ部12の板材12dと同じ高さになるように取り付けられている。板材11b上には、木質チップAを乾燥室12eへ搬送するためのチップ搬送装置4cが設置されている。そして、チップ搬送装置4cの上側の空間が、木質チップAが投入されて供給される供給部としてのホッパー部となるチップ投入室11cとなっている。チップ投入室11cは、上面が開放されて開口部11dが形成されている。開口部11dは、チップ投入室11cへ投入された木質チップAから発生した水分を含んだ空気が排出されるとともに、
図2に示すように、開口部11dの上流側に下流側が挿入されたエアホース7aから熱風が供給される。そして、投入用コンテナ部11は、例えばフォークリフト等の運搬機Tによって所定量の木質チップAが開口部11dから適宜投入されてチップ投入室11cに貯留される構成となっている。
【0025】
チップ搬送装置4cは、投入用コンテナ部11の上流寄りの位置から乾燥用コンテナ部12の乾燥室12eまでに亘った板材11b,12d上に設けられている。具体的に、チップ搬送装置4cは、
図2に示すように、複数の可動羽4dがチップ搬送装置4cの搬送方向Hに向けて所定、例えば1020mmの間隔を空けて取り付けられている。各可動羽4dは、搬送方向H下流側の面が略垂直な係止面4eに形成され、搬送方向H上流側の面が上流側に傾斜した傾斜面4fに形成されている。そして、これら複数の可動羽4dは、乾燥用コンテナ部12の制御室12aに設置された駆動装置4gによって搬送方向Hに沿って往復運動される爪部であり、チップ投入室11cに投入された大量の木質チップAを搬送方向Hに向けて徐々に搬送する構成となっている。駆動装置4gは、例えば油圧シリンダおよびこの油圧シリンダを駆動させる油圧ポンプ等にて構成されている。
【0026】
チップ搬送装置4cの各可動羽4dの上流側には、固定羽4hが取り付けられている。固定羽4hは、板材11b,12d上に固定され、移動羽4dと同様に、搬送方向H下流側の面が略垂直な係止面4iに形成され、搬送方向H上流側の面が上流側に傾斜した傾斜面4jに形成されている。そして、各固定羽4hは、各可動羽4dの搬送方向Hに沿った往復運動の際に、これら可動羽4dとの間隔が変化することによって、各可動羽4dによる木質チップAの搬送をより効率良くする機能を有している。
【0027】
要するに、チップ搬送装置4cにて搬送される木質チップAは、チップ投入室11cから調整室12hへ搬送されるに際し、まず第2壁部12jにて搬送量が抑制される。さらに、木質チップAは、調整室12hから乾燥室12eへ搬送されるに際し、第1壁部12iにて搬送量がさらに抑制される。そして、木質チップAは、空冷熱交換器4bから下方へ供給される熱風が、第1壁部12iおよび第2壁部12jの下方を通過して上流側へ供給されることにより、乾燥室12eから調整室12h、およびチップ投入室11cへと供給される。この結果、木質チップAは、チップ搬送装置4cによる搬送方向Hに抗して熱風が吹き付けられ、このチップ搬送装置4cにて搬送されていく間に亘って連続して乾燥される構成となっている。
【0028】
<ガス化ユニット>
次いで、ガス化ユニット5は、
図6に示すように、軸方向を鉛直方向に向けて設置された略円筒状のガス化炉5aを有している。ガス化炉5aは、略円筒状の外壁部5bと、この外壁部5b内に同心状に収容された内壁炉5cと、を備える。外壁部5bは耐熱材料により遮熱された構造で、上側が閉塞され、外壁部5bの上側の周縁に開閉可能な点検用のメンテナンス口5dが設けられている。外壁部5bの上端部には、チップ乾燥ユニット4にて乾燥させた木質チップAをガス化炉5aへ搬送するためのチップ搬送コンベヤ9の下流側が接続される導入口5eが設けられている。導入口5eは、外壁部5bの上部の中心位置に設けられ、この外壁部5bの上側から内壁炉5c内へ木質チップAが順次供給されて導入される構成となっている。
【0029】
外壁部5bの外周部には、内壁炉5c内へ外気(空気)を供給するための複数の吸気口5fが設けられている。これら吸気口5fは、外壁部5bの上側寄りの位置に軸方向に沿って所定の間隔を空けて、複数、例えば3列設けられている。また、吸気口5fは、外壁部5bの下側寄りの位置にも設けられている。さらに、吸気口5fは、外壁部5bの周方向に向けて等間隔に、複数、例えば2つほど設けられている。要するに、吸気口5fは、例えば計8個ほど設けられている。さらに、各吸気口5fは、外壁部5bの外側から内壁炉5c内へ貫通し、ガス化炉5aの周囲の外気を内壁炉5c内へ取り込む構成となっている。
【0030】
外壁部5bの外周部には、吸気口5fから取り入れた外気の様子を確認するための点検窓5gが設けられている。これら点検窓5gは、外壁部5bの上側に取り付けられた3段の吸気口5fの高さに合わせて設けられ、同一の高さに設けられた吸気口5fの間に位置している。また、外壁部5bの外周部には、内壁炉5c内で生成された可燃性ガスGを排出させるためのガス排出口5hが設けられている。ガス排出口5hは、外壁部5bの高さ方向のほぼ中間位置に設けられ、ガスコンディショニングユニット6のガスフィルタ6Aに接続されている。
【0031】
一方、内壁炉5cは、耐熱材料により遮熱された構造で、下側が同心状に徐々に縮径した傾斜部5iが形成されている。そして、この傾斜部5iの高さ方向の中心位置には、内壁炉5c内で生成された可燃性ガスGを外壁部5bと内壁炉5cとの間の空間へ排出させるための円環状の内部排出口5jが形成されている。内部排気口5jは、内壁炉5cの周方向に沿った円環状に形成され、この内壁炉5c内にて生成された可燃性ガスGを内壁炉5cの傾斜部5iに沿うように上側に噴出させる構成となっている。そして、内壁炉5cと外壁部5bとの間の空間は、可燃性ガスGを巡回させて所定時間に亘って滞留させるための滞留路としての滞留空間Sとして構成されている。
【0032】
内壁炉5cの下端側には、内壁炉5cの下端側を同心状に開口させて形成された下部排出口5kが設けられている。下部排出口5kは、内壁炉5c内での可燃性ガスGの生成に伴って生成される炭C等を内壁炉5cの下方へ自由落下させて排出させる。下部排出口5kと外壁部5bとの間は、円環状の板材にて閉塞されて密封されて気密とされている。下部排出口5kには、内壁炉5c内の炭Cを集めて下方へ排出させる集炭機構5mが取り付けられている。集炭機構5mは、下部排出口5kの中心部に同心状に取り付けられ周方向に回転可能な回転体5nを有している。具体的に、集炭機構5mは、回転体5nが回転することで、内壁炉5c内に堆積した炭Cを回転体5nの外周方向へ移動させて集め、この集めた炭Cを、回転体5nの外周縁と下部排出口5kとの隙間から下方へ排出させる構成となっている。
【0033】
さらに、外壁部5bは下側が閉塞され、外壁部5cの下側の周縁に炭排出口5pが設けられている。炭排出口5pの下方には、炭排出口5pから排出された炭Cを順次搬送するため炭搬送装置としての炭排出コンベヤ5qが取り付けられている。要するに、内壁炉5cの下部に集められ下部排出口5kから排出された炭Cは、炭排出口5pから炭排出コンベヤ5qへ搬送され、この炭排出コンベヤ5qにて貯留タンク5rへ搬送される構成となっている。
【0034】
次いで、ガス化炉5aの内壁炉5c内は、最も上側の第1反応空間R1(絶乾領域)、第1反応空間R1の下方に位置する第2反応空間R2(加熱領域)、および第2反応空間R2の下方に位置する第3反応空間R3(ガス化領域)の3つの空間のそれぞれにおいて生じる現象が相違している。第1反応空間R1は、最も上側の吸気口5fの内側の空間が相当し、内部温度が100℃以上200℃以下に加熱され、導入口5eから導入された木質チップAを絶乾状態(ほぼ水分がない状態)になるまで乾燥させる。
【0035】
第2反応空間R2は、上側から2段目の吸気口5fの内側の空間が相当し、吸気口5fから外気を導入し、第1反応空間R1にて絶乾状態にされた木質チップAの表面を部分的に燃焼させて、木質チップAが熱分解可能となる温度、要するに内部温度が200℃以上600℃以下になるまで加熱させる。また、第3反応空間R3は、上側から3段目の吸気口5fの内側から下方の空間が相当し、酸素過多にならないように吸気口5fからの外気の吸気量が制御され、内壁炉5c内に導入された外気中の酸素が消失されることで、内部温度が800℃以上1000℃以下の還元雰囲気の状態が維持され、加熱された木質チップAを熱分解させて可燃性ガスGを発生させる。
【0036】
さらに、ガス化炉5aの滞留空間Sは、第3反応空間R3にて発生させた可燃性ガスGが内部排出口5jから導入され、この可燃性ガスGが600℃以上800℃以下の温度で所定時間滞留する構成となっている。このとき、可燃性ガスGは、滞留空間Sでの滞留によって、この可燃性ガスGに残留するタール分の少なくとも一部が改質されて低分子化され可燃性ガスGとされる構成となっている。そして、タール分が改質された可燃性ガスGは、ガス排出口5hから排出されて、ガスコンディショニングユニット6を介してガスエンジン発電ユニット3のガスエンジン3aへ供給される。
【0037】
<動作>
次に、上記第1実施形態に係るバイオマス発電システム1の動作について、図面を参照しながら説明する。
【0038】
(乾燥工程)
図1および
図2に示すように、まず、例えば丸太等から加工された一辺10cm程度の大きさの木質チップAが大量に貯留された所定の貯留場所(図示せず)から、運搬機Tにて所定量の木質チップAを、チップ乾燥ユニット4の投入用コンテナ部11の開口部11dから投入し、この投入用コンテナ部11のチップ投入室11cに所定量の木質チップAを貯留させる。このとき、チップ投入室11cに貯留された木質チップAは、エアホース7aから供給される熱風が吹き付けられて予備乾燥(事前乾燥)される。
【0039】
この状態で、チップ乾燥ユニット4を駆動させる。すると、吸気ファン4aから外気が吸気され、この吸気された外気が空冷熱交換器4bにて熱交換されて熱風とされ、この熱風が乾燥室12eへ供給される。そして、チップ搬送装置4cにより、チップ投入室11cに貯留された木質チップAが徐々に調整室12hおよび乾燥室12eへと下流側へ搬送されていく。このとき、チップ搬送装置4cによってチップ投入室11cから調整室12hへ搬送される木質チップAの搬送量が第2壁部12jにて抑制されて調整され、所定量の木質チップAが徐々に調整室12hへ搬送される。また、調整室12hから乾燥室12eへ搬送される木質チップは、第1壁部12iにてさらに木質チップAの搬送量が抑制されて調整され、乾燥室12eでの乾燥に適した所定量の木質チップAが乾燥室12eへ徐々に搬送される。
【0040】
このとき、木質チップAは、ある程度の大きさを有しており、これら木質チップAは搬送時にこれら木質チップA間に所定の隙間を有した状態でチップ搬送装置4cにて搬送される。このため、乾燥室12eへ供給される熱風は、木質チップAの搬送方向Hに抗する方向、要するに乾燥室12eから調整室12hおよびチップ投入室11c(下流側から上流側)へ流れ、チップ搬送装置4cにて徐々に搬送されてくる木質チップA間を通過して、これら木質チップAを効率良く、例えば含水率40%以上50%以下の木質チップAを含水率10%以下に乾燥させる。
【0041】
(粉体排出工程)
ここで、チップ搬送装置4cにて木質チップAを搬送するに際し木質チップA同士が擦れたり衝突したりして生じた木質粉体Pは、自重により板体12dの複数の孔を通過して通気路12cへ落下する。そして、通気路12cに落下した木質粉体Pは、通気路12cの下流側へと進んで外部へ排出される。さらに、チップ搬送装置4cにて搬送され乾燥室12eにて乾燥された木質チップAは、乾燥室12eの下流側へ搬送されチップ排出口12mからチップ排出装置12nにてチップ搬送コンベヤ9へ排出される。
【0042】
(導入工程)
そして、チップ搬送コンベヤ9へ排出された木質チップAは、このチップ搬送コンベヤ9によってガス化ユニット5の導入口5eへ搬送され、この導入口5eからガス化ユニット5の内壁炉5c内へ順次導入されて供給されていく。
【0043】
(初動工程)
ここで、ガス化ユニット5の初期駆動時においては、ガス化ユニット5の内壁炉5cへ所定量の木質チップAを導入して堆積させた状態で、各吸気口5dからの外気の吸気量を調整しながら、例えばガスバーナー等の着火装置(図示せず)を用いて所定の点検窓5gから木質チップAを燃焼させることによって、このガス化ユニット5でのガス化処理を開始(駆動)させる。
【0044】
(加熱工程)
そして、ガス化ユニット5へ搬送された各木質チップAは、内壁炉5cの最も上側に位置する第1反応空間R1において、100℃以上200℃以下の所定の温度に加熱され絶乾状態になるまで乾燥される。第1反応空間R1においては、第1反応空間R1の下方に位置する第2反応空間R2での木質チップAの燃焼にて生じる発熱によって、第1反応空間R1の温度が所定の温度に維持される。
【0045】
次いで、第1反応空間R1にて絶乾状態とされた各木質チップAは、内壁炉5c内でのガス化によって最終的にその残存物として炭Cとなり下方へ落下していく。要するに、これら木質チップAは、自重によって第2反応空間R2へ移動していく。そして、第2反応空間R2へ移動した木質チップAは、吸気口5fから内壁炉5c内に導入された外気中の酸素(O2)によって、これら木質チップAの表面が部分的に燃焼され、これら木質チップAが熱分解可能となる温度、要するに200℃以上600℃以下の所定の温度となるように加熱される。
【0046】
(ガス化工程)
さらに、第2反応空間R2にて熱分解可能な温度まで加熱された木質チップAは、その後自重によって第3反応空間R3へ移動していく。このとき、第3反応空間R3においては、第2反応空間R2での木質チップAの燃焼によって、内壁炉5c内に導入された外気中の酸素(O2)が消失する。そして、第3反応空間R3へ移動した各木質チップAは、内部温度が800℃以上1000℃以下とされ還元雰囲気状態が維持される。その結果、木質チップAが熱分解されてガス化され可燃性ガスGが生成される。
【0047】
ここで、第3反応空間R3でのガス化によって、可燃性ガスGとして一酸化炭素(CO)が発生すると同時に、不要物となる炭酸ガス(CO2)が発生する。また同時に、木質チップAが重合し、炭素数の多い固形物として炭が生成される。また、木質チップAに含まれる炭化水素の熱分解反応や還元反応に伴った、木質チップAの有機物の不完全燃焼や熱分解等による縮重合反応が生じ、不純物であるタール分(多環芳香族炭化水素:PHAs)が生成される。
【0048】
(集炭工程)
ここで、第2反応空間R2での木質チップAの燃焼や第3反応空間R3での木質チップAのガス化によって生じた炭Cは、自重により内壁炉5cの下方へ落下していく。この炭Cは、内壁炉5cの下部において集炭機構5mの回転体5nの回転によって外周方向へ移動されて集められていく。
【0049】
(排出工程)
その後、集炭機構5nにて集められた炭Cは、回転体5nと下部排出口5kとの間の隙間から外壁部5b内へ排出される。さらに、外壁部5b内へ排出された炭Cは、炭排出口5pから炭排出コンベヤ5qへ排出され、この炭排出コンベヤ5qによって貯留タンク5rへ搬送されて貯留される。
【0050】
(タール分改質工程)
さらに、第3反応空間R3にて生成された可燃性ガスGは、内壁炉5c内から内部排出口5jを介して滞留空間Sへ排出される。そして、この可燃性ガスGは、比較的低い温度、例えば600℃以上800℃以下の温度を維持しながら滞留空間Sを周方向に向けて所定時間に亘って巡回して滞留する。このとき、この可燃性ガスGに残留するタール分が改質されて可燃性ガス(シンガス:一酸化炭素(CO)と水素(H2)との混合ガス)Gとされる。ここで、タール分の改質は、このタール分を構成する種々の成分、例えばPAHs(ペンゾ[a]ピレン、ペンゾ[a]アントラセン、アントラセンなど)、ニトロPAH(2-ニトロフルオレン、1-ニトロピレンなど)、PAHキノン(1,2-ナフトキノン、9,10-アントラキノン等)よりも炭素数を少なく、要するに低分子化させることによって、比較的低い温度でも気体(ガス)状態を維持する良質な可燃性ガスとされる。
【0051】
(導出工程)
そして、滞留空間Sにてタール分が改質された可燃性ガスGは、例えば350Nm3/h以上800Nm3/h程度の発生量でガス化炉5aのガス排出口5hから排出され、ガスコンディショニングユニット6のガスフィルタ6Aへ供給される。
【0052】
(副産物除去工程)
その後、ガスフィルタ6Aへ供給された可燃性ガスGは、この可燃性ガスGに含まれる副生成物がガスフィルタ6Aにて除去されてから電気集塵機6Bへ供給される。
【0053】
(微小物質除去工程)
さらに、電気集塵機6Bへ供給された可燃性ガスGは、この可燃性ガスGに含まれる微小物質が電気集塵機6Bにて除去されてからガスエンジン発電ユニット3のガスエンジン3aへ供給される。
【0054】
(発電工程)
ガスエンジン発電ユニット3においては、供給された可燃性ガスGをガスエンジン3aで燃焼させることで、附随する発電機3bが駆動されて所定量の電力が発電される。このとき、この発電機3bにおいては、例えば定格出力250kW以上750kW以下の電力が発電されるとともに、例えば500kW以上1500kW以下の熱出力を出力させる。
【0055】
(メタネーション工程)
さらに、ガスエンジン発電ユニット3での発電、要するにガスエンジン3aでの可燃性ガスGの燃焼にて生じる排ガスがメタネーションユニット8へ供給される。このメタネーションユニット8においては、供給される排ガスに含まれる二酸化炭素(炭酸ガス:CO2)と、電気分解にて生成した水素(H2)とからメタンガス(可燃性ガス:CH4)が合成される。このとき、この合成したメタンガスをガスエンジン発電ユニット3へ供給し、ガスエンジン発電ユニット3での発電時に可燃性ガスGとして用いることも可能である(オプション機能)。
【0056】
(熱排出工程1)
また、ガスエンジン発電ユニット3での発電、ガス化ユニット5でのガス化、およびガスフィルタ6Aでの副産物除去の際に発生する熱は、高温熱交換ユニット7Aから供給される高温冷却水W1にて熱交換されて排出される。そして、この熱交換された高温な高温冷却水W1が、例えば20m3/h以上40m3/h以下の供給量で高温熱交換ユニット7Aへ供給されて循環される。その後、高温熱交換ユニット7Aにて高温冷却水W1がチップ乾燥ユニット4の空冷熱交換器4bへ供給され、この空冷熱交換器4bの熱源として利用され熱交換される。
【0057】
この空冷熱交換器4bでの熱交換によって、吸気ファン4aにて熱交換室12fへ吸気された外気(空気)が温められて熱風とされ、この熱風が乾燥室12aと供給され、この乾燥室12aへと搬送される木質チップAが乾燥される。さらに、空冷熱交換器4bにて熱交換された高温冷却水W1は、再び高温熱交換ユニット7Aを介して、ガスエンジン発電ユニット3、ガス化ユニット5およびガスフィルタ6Aのそれぞれへ供給されて循環される。
【0058】
(熱排出工程2)
さらに、ガスフィルタ6Aから排出される低温冷却水W2は、低温熱交換ユニット7Bへ供給される。そして、この低温熱交換ユニット7Bにて低温冷却水W2を熱源として熱交換が行われ、この熱交換にて空気を温めて熱風を生じさせ、この熱風がエアホース7aにてチップ乾燥ユニット4のチップ投入室11cへ供給され、このチップ投入室11cに蓄積させた木質チップAが予備的に事前乾燥される。
【0059】
<作用効果>
(ガス化)
以上により、本第1実施形態に係るバイオマス発電システム1によれば、ガス化ユニット5の内壁炉5c内にて木質チップAから発生させた可燃性ガスGを、この内壁炉5cと外壁部5bとの間の滞留空間Sにて所定時間に亘って滞留させて、この可燃性ガスGに含まれるタール分を可燃性ガスGに改質させる構成としている。この結果、可燃性ガスGに含まれるタール分を可能な限り少なくでき、タール分の生成を抑制できる。
【0060】
よって、例えば配管などの機器中や、生成された可燃性ガスGにて駆動させるガスエンジン発電ユニット3のガスエンジン3aのシリンダやプラグ等のへのタール分の付着を低減でき、このガスエンジン3a等の可燃性ガスGが通過する機器等のメンテナンス頻度を低減できる。また同時に、このタール分の付着等による発電時のエネルギー損失を少なくできる。このため、ガスエンジン発電ユニット3の長期間に亘る安定した駆動(運転)が可能となる。また同時に、可燃性ガスGに含まれるタール分を改質させて可燃性ガスGとしているため、可燃性ガスGの利用効率を生産性良く向上でき、ガスエンジン発電ユニット3の発電効率を向上できる。
【0061】
特に、ガス化ユニット5において、第2反応空間R2にて木質チップAの表面を部分的に燃焼させることで、内壁炉5cの内部温度を木質チップAが熱分解可能となる温度まで加熱する構成としている。このため、例えばボイラ等の加熱装置を別途用いることなく、ガス化炉5a内を木質チップAの熱分解に必要な温度まで加熱できるから、これら木質チップAの熱分解に必要な温度までのガス化炉5a内の加熱を簡単な構成で連続して行うことができる。
【0062】
さらに、ガス化炉5aの各通気口5fからの外気の吸気量を調整しつつ、ガス化炉5a内の第2反応空間R2による木質チップAの表面の部分的な燃焼によって、第2反応空間R2の温度を200℃以上600℃以下の木質チップAが熱分解可能な温度まで加熱でき、ガス化炉5aの第3反応空間R3の内部温度を800℃以上1000℃以下の還元雰囲気状態に維持して木質チップAを熱分解させて可燃性ガスGを発生でき、ガス化炉5aの滞留空間Sでの可燃性ガスGの温度を、残存するタール分が改質可能な600℃以上800℃以下にできる。よって、ガス化炉5aの滞留空間Sに供給されて滞留する可燃性ガスGを、例えばボイラ等の加熱装置を別途設けて加熱等することなく、滞留空間Sでの可燃性ガスGの滞留時間を調整でき、この可燃性ガスGに残留するタール分を適切に改質させて可燃性ガスGにできる。
【0063】
また、ガス化炉5a内においては、通気口5fから吸気した外気中の酸素を第2反応空間R2での木質チップAの燃焼で消失させて、第3反応空間R3で還元雰囲気を形成する構成としている。また同時に、ガス化炉5aの滞留空間Sに可燃性ガスGを滞留および巡回させて、残留するタール分を所定時間に亘って効率よく改質して可燃性ガスGとしている。この結果、木質チップAの熱分解にて生成される可燃性ガスGに加え、この熱分解にて生じたタール分をも可燃性ガスGにできるため、生産効率良く可燃性ガスGを生成でき、可燃性ガスGに残留するタール分を簡単な構成で効率良く改質できる。要するに、外部からの熱を利用せずに、木質チップAそのものを一部燃焼させることで得られる熱を用いて木質チップAを熱分解させ、この熱分解にて発生するタール分を改質させて可燃性ガスGにできる。
【0064】
さらに、ガス化炉5a内での木質チップAの燃焼や熱分解にて生じガス化炉5aの下部に堆積する炭Cを、このガス化炉5aの下部排出口5kに取り付けた集炭機構5mにて集めて炭排出口5pから排出させる。そして、炭排出口5pから排出される炭Cを炭排出コンベヤ5qにて貯留タンク5rへ連続して排出させて集積させる構成としている。このため、ガス化炉5a内で生じた炭Cを連続的に効率良くガス化炉5aの外部へ排出でき、貯留タンク5rに堆積させた炭Cの再利用を容易にできる。
【0065】
(チップ乾燥)
そして、木質チップAをガス化ユニット5へ導入する前に、チップ乾燥ユニット4にて乾燥させる構成としている。このため、乾燥が不十分な木質チップAであっても、チップ乾燥ユニット4にて乾燥させてからガス化ユニット5へ導入でき、このガス化ユニット5にて効率良く可燃性ガスGを生成できる。
【0066】
また、ガス化ユニット5から排出される高温冷却水W1を高温熱交換ユニット7Aへ供給し、この高温冷却水W1を高温熱交換ユニット7Aからチップ乾燥ユニット4の空冷熱交換器4bへ循環させ、この空冷熱交換器4bでの熱交換にて生じさせた熱風を用いて、チップ乾燥ユニット4のチップ搬送装置4cにて搬送される木質チップAを連続的に乾燥させる構成としている。このため、チップ乾燥ユニット4にて木質チップAを乾燥させる際に必要となる熱を、ガス化ユニット5での可燃性ガスGの生成時に生じた排熱を活用することで補うことができる。
【0067】
要するに、ガス化ユニット5での可燃性ガスGの生成にて生じた熱エネルギーを再利用して木質チップAを乾燥させている。このため、例えばボイラ等の加熱装置を用いて木質チップAを乾燥させる場合に比べ、新たな熱源を用いることなく木質チップAを効率良く連続的に乾燥できるから、エネルギー効率よく木質チップAを乾燥できる。また、木質チップAを効率良く乾燥させるために必要な構成を、吸気ファン5aや空冷熱交換器4b等による簡略な構成で実現できる。よって、例えばボイラ等の自ら発熱する機能を有する加熱装置を用いる必要がないため、木質チップAを乾燥させるための構成を簡略化でき、木質チップAの乾燥に必要な消費エネルギーを低減できる。
【0068】
また、チップ搬送ユニット4の空冷熱交換器4bにて熱交換した熱風を乾燥室12eから調整室12hおよびチップ投入室11へ供給する構成としている。このため、チップ乾燥ユニット4のチップ搬送装置4cにて搬送される木質チップAに対し、この木質チップAの搬送方向Hに抗した方向に向けて熱風を吹き付けて乾燥できる。よって、チップ投入室11cへ投入された大量の木質チップAをチップ搬送装置4cにて搬送しながら順次効率良く乾燥できる。
【0069】
特に、チップ搬送ユニット4は、チップ投入室11cの下流側の開口断面積が第2壁部12jにて狭められ、このチップ投入室11cの下流側の調整室12hの下流側の開口断面積が第1壁部12iにてさらに狭められた構成とされている。この結果、チップ投入室11cに投入された木質チップAは、チップ搬送装置4cにて搬送されながら、まずチップ投入室11cから調整室12hへ搬送されるに際し第2壁部12jによって木質チップAの搬送量が所定量に抑制されて調整されてから、次いで調整室12hから乾燥室12eへ搬送されるに際し第1壁部11iによって木質チップAの搬送量がさらに少量の所定量に抑制されて調整されて乾燥室12eへ搬送されていく。
【0070】
よって、チップ投入室11cへ投入した大量の木質チップAのチップ搬送装置4cによる搬送量を第1壁部12iおよび第2壁部12jにて段階的に抑制し、乾燥効率の良い所定量の木質チップAを乾燥室12eへ徐々に搬送できるから、大量の木質チップAを乾燥室12eにて効率よく連続的に順次乾燥させることができる。
【0071】
また、生成された可燃性ガスGに含まれる副生成物を除去するガスフィルタ7Aを冷却するための低温冷却水W2を低温熱交換ユニット7Bへ供給し、この低温熱交換ユニット7Bにて低温冷却水W2を熱源として熱交換した熱風をエアホース7aから、チップ投入室11cに投入された木質チップAに吹き付けて事前乾燥させる構成としている。この結果、チップ投入室11cへ投入された木質チップAを乾燥室12eにて乾燥させる前段階で、これら木質チップAを事前乾燥でき、これら木質チップAから発生した水分を含んだ空気を開口部11dから外部へ排出できる。よって、例えばボイラ等の加熱装置を用いることなく、ガスフィルタ7Aにて生じる排熱を利用して木質チップAを事前乾燥できるから、エネルギー効率良く木質チップAを乾燥でき、チップ乾燥ユニット4による木質チップAの乾燥効率を向上できる。
【0072】
(ユニット化)
また、ガス化ユニット5のガス化炉5aを取り外し可能かつ移動可能にユニット化しているとともに、チップ乾燥ユニット4の投入用コンテナ部11および乾燥用コンテナ部12のそれぞれをボックス状に形成し取り外し可能、要するに移動可能な組み立て式のユニット化した構成としている。このため、所定の場所に一旦設置したチップ乾燥ユニット4を投入用コンテナ部11と乾燥用コンテナ部12とに分解することで、これら投入用コンテナ部11および乾燥用コンテナ部12を別個に移動可能にできる。また、ガス化ユニット5を設置場所から取り外すことにより、このガス化ユニット5も移動可能となる。
【0073】
よって、これらガス化ユニット5、投入用コンテナ部11および乾燥用コンテナ部12のそれぞれを、例えばトラック等に搭載して容易に移動できるから、可燃性ガスGを必要とする場所への移動および設置を容易にできる。要するに、例えば何らかの震災等が生じて電気不足が懸念される任意の地域や場所へ、木質チップAを用いた比較的簡略な構成のバイオマス発電システム1を容易に移動させて、ガス化ユニット5、投入用コンテナ部11および乾燥用コンテナ部のそれぞれを組み立て直して可動可能に設置できるから、これら任意の地域や場所での電気不足を一時的に補うことができる。
【0074】
以上により、本発明の第1実施形態に係るバイオマス発電システム1は、SDGsの目標である、「目標7:エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」や、「目標9:産業と技術革新の基盤をつくろう」、「目標11:住み続けられるまちづくりを」、「目標12:作る責任、使う責任」、「目標13:気候変動に具体的な対策を」、「目標15:陸の豊かさも守ろう」等の目標の解決に寄与している。
【0075】
次に、本発明の第2実施形態について、図面を参照して説明する。
【0076】
[第2実施形態]
<全体構成>
図7に示す本発明の第2実施形態に係るバイオマス発電システム21は、主としてガスコンディショニングユニット26の構成が、上述した第1実施形態に係るバイオマス発電システム1のガスコンディショニングユニット6と相違する。なお、本第1実施形態と共通する構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0077】
具体的に、このバイオマス発電システム21は、ガス化ユニット5を構成するガス化炉5aの下流側にガスコンディショニングユニット26が接続され、このガスコンディショニングユニット26の下流側にガスエンジン発電ユニット3が接続されている。このガスコンディショニングユニット26は、ガス化炉5aの下流側に接続された固形物除去フィルタとしてのサイクロンフィルタ26aを備えている。このサイクロンフィルタ26aは、ガス化炉5aにて生成された可燃性ガスGが導入され、この可燃性ガスGを旋回させて、この可燃性ガスGに含まれる固形物(例えばバイオ炭など)を分離、具体的には3~5μm以上の大きさの固形物を除去する構成とされている。また、サイクロンフィルタ26aの下方には、このサイクロンフィルタ26aにて分離した固形物を回収するための回収機としてのサイクロンボトム排出物ドラム26cが設置されている。
【0078】
また、サイクロンフィルタ26aの下流側には、気液分離システム27が接続されている。この気液分離システム27は、ホットガスフィルタ27aを介して熱交換器である高温ガス冷却器27bが接続された構成とされ、この高温ガス冷却器27bの下流側に回収機としてのコンデンセート回収用のノックアウトドラム27cが接続されている。この気液分離システム27は、供給される可燃性ガスGに含まれる微細な炭(バイオ炭)をホットガスフィルタ27aにて吸着濾過してから、この可燃性ガスGを高温ガス冷却器27bにて熱交換して800℃から80℃程度に冷却した後にノックアウトドラム27cへ供給させ、このノックアウトドラム27cへ供給させた際の線速度の低下を利用して、可燃性ガスGに含まれるミスト状のタールを液化させて析出させ、この析出させた液状のタールをコンデンセートとして、ノックアウトドラム27c内に設置された網状部27dに付着させて回収する構成とされている。また、ホットガスフィルタ27aは、窒素ボンベ27hから供給される窒素ガスが外気(空気)を取り込みつつ供給される構成となっている。この窒素ガスは、ホットガスフィルタ27aへ供給される前にガス化炉5aへ供給され、このガス化炉5aへ供給させた後の窒素ガスがホットガスフィルタ27aに供給される構成とされている。
【0079】
ここで、気液分離システム27は、メンテナンス性向上の観点から、2系統が並列に設置され、一方の気液分離システム27のメンテナンス中に他方の気液分離システム27を駆動させて、供給される可燃性ガスG中に含まれるミスト状のタールを液化させて連続的に回収できる構成となっている。さらに、これら気液分離システム27それぞれのノックアウトドラム27cの下端には、これらノックアウトドラム27cにて回収された液状のタールを回収して貯留する貯留槽27eが設置されている。そして、この貯留槽27eには、この貯留槽27eに貯留させた液状のタールを回収するためのタール回収タンク27fが取り付けられている。また、各気液分離システム27それぞれのホットガスフィルタ27aの下端には、これらホットガスフィルタ27aにて濾過したバイオ炭を回収するため排出部としてのボトム排出ドラム27gがそれぞれ取り付けられている。
【0080】
さらに、これら2系統それぞれの気液分離システム27の下流側には低温クーラ26eが接続され、この低温クーラ26eを通過する可燃性ガスGを大気温程度、例えば25℃程度まで冷却する構成となっている。そして、この低温クーラ26eの下流側には、固形物除去システム28が接続されている。この固形物除去システム28は、上流側に設置されたデミスタ28aと、このデミスタ28aの下流側に接続された乾式フィルタ28bとで構成されている。ここで、デミスタ28aは、供給される可燃性ガスGに含まれる不純物(固形物)を、内部に設置されたワイヤーメッシュの線条にて捕集分離除去する分離促進機である。また、乾式フィルタ28bは、例えば400℃程度の高温フィルタであり、供給される可燃性ガスGに含まれる微細、例えば0.6μm以上の不純物(固形物や液状物:タールなど)を、内部に設置されたフィルタにて捕集分離して除去する捕集分離機である。
【0081】
ここで、この固形物除去システム28もまた、メンテナンス性向上の観点から、2系統が並列に設置され、一方の固形物除去システム28のメンテナンス中に他方の固形物除去システム28を用いて、供給される可燃性ガスG中に含まれる固形物を連続的に捕集分離して除去できる構成となっている。
【0082】
さらに、これら各固形物除去システム28の下流側には、負圧システムとしてのガスブロワ29が取り付けられ、このガスブロワ29の下流側がガスエンジン発電ユニット3の発電機3bに接続されている。このガスブロワ29は、発電機3bの直前の位置に設置されて接続され、この発電機3bより下流側、要するにガス化炉5aから発電機3bまでの間の配管はすべて一貫して接続されており、このガスブロア29一つで可燃性ガスGを引き抜いて、この配管内の圧力を大気圧より負圧にして、ガス化炉5aから回収される可燃性ガスGを発電機3bまで流動させて稼働させる構成となっている。また、このガスブロワ29には、酸素分析計29aが取り付けられ、このガスブロワ29を通過する可燃性ガスGに含まれる酸素濃度を分析できる構成となっている。
【0083】
そして、発電機3bに可燃性ガスGを送らない場合には、配管内から引かれた可燃性ガスGがフレア22bに送られる。ガスブロア29の可燃性ガスGは、プロパンボンベ22aから供給されるプロパンガスとフレア空気ブロア22cから供給される外気(空気)とに混合させ、その後フレア22bへ供給されて、このフレア22bにて完全燃焼し大気に放出する構成となっている。
【0084】
また、各気液分離システム27のホットガスフィルタ27aにて微細な炭(バイオ炭)と分離された高温の可燃性ガスGは、高温ガス冷却器27bにて80℃程度に調整され、ノックアウトドラム27cで気液分離してから低温クーラ26eにて20℃程度に調整された後、固形物除去システム28のデミスタ28aおよび乾式フィルタ28bにてさらにミストおよび固形物除去を行う構成となっている。
【0085】
さらに、発電機3bには、この発電機3bによる発電に際して生じる発熱を防止、要するに発電機3bを冷却するための発電機冷却システム23が取り付けられている。この発電機冷却システム23は、熱交換ユニットとして機能し、仮に熱交換ユニットが停止して冷却できない場合に発電機3bを冷却するためのラジエータ23aを備えている。そして、このラジエータ23aから排出される加熱された冷却水は、高温冷却水タンク23bに供給される構成となっている。この高温冷却水タンク23bの下流側には高温冷却水ポンプ23cが接続され、この高温冷却水ポンプ23cの下流側に高温冷却器23dが接続されている。
【0086】
要するに、発電機3bが通常発電している場合は、高温冷却水タンク23b内の冷却水が高温冷却水ポンプ23cにて高温冷却器23dへ供給されて冷却され、この冷却された冷却水がチップ乾燥ユニット4の空冷熱交換器4bへ供給されて、この空冷熱交換器4bを介して発電機3bが冷却される構成となっている。また、発電機3bが稼働し発生した熱により加熱された高温冷却水は、チップ搬送ユニット4の、例えば空冷熱交換器4bへと供給され、この空冷熱交換器4bによる熱交換の熱源として利用される構成となっている。
【0087】
<作用効果>
以上により、本第2実施形態に係るバイオマス発電システム21によれば、上記第1実施形態に係るバイオマス発電システム1と同様の作用効果を奏する上、以下の作用効果を奏することができる。
【0088】
要するに、このバイオマス発電システム21は、ガスエンジン発電ユニット3、ガス化ユニット5、およびガスコンディショニングユニット26のそれぞれから排出される排熱をすべて回収し、この排熱をチップ乾燥ユニット4での木質チップAの乾燥に利用する構成としているため、エネルギーロスを少なくでき、効率良く稼働できる。
【0089】
すなわち、発電機3bの直前にガスブロワ29を設置し、ガス化炉5aから発電機3bまでの配管内の可燃性ガスGや空気を必要に応じて引き抜いて、この配管内の圧力を大気圧より負圧にして、ガス化炉5aから回収される可燃性ガスGを発電機3bまで流動させて稼働する構成としている。このため、ガスブロワ29による配管内の可燃性ガスまたは空気の引き抜きが、ガス化炉5aから発電機3bまでの可燃性ガスGの流動源(動力源)となり、このガスブロワ29以外、例えば吸引ファンやポンプ等の動力源をなんら用いることなく、ガス化ユニット5から導出される可燃性ガスGを発電機3bまで連続的に供給できる。よって、ガス化炉5aから発電機3bまでの配管設備を簡素化でき、配管の設備コストを抑制できるとともに、高圧(正圧)なガスを用いずに済むため、運転上のリスクを低減でき、運転上の安全性を高めることができる。
【0090】
また、気液分離システム27および固形物除去システム28のそれぞれを2系統にして並列に設置させている。このため、一方の気液分離システム27または固体物除去システム28のメンテナンス中に、他方の気液分離システム27または固体物除去システム28を駆動させることができる。よって、これら気液分離システム27または固体物除去システム28のいずれか一方をメンテナンスする際においても、ガス化炉5aから回収される可燃性ガスGから、他方の気液分離システム27にて液状のタールを回収でき、この可燃性ガスGに含まれる不純物(固形物)を他方の固体物除去システム28にて捕集分離できる。
【0091】
このため、ガス化炉5aから回収される可燃性ガスGを用いた発電機3bによる発電を連続的に行うことができる。よって、これら気液分離システム27および固形物除去システム28をメンテナンスする際に発電機3bによる発電を停止させたり、ガス化炉5aからの可燃性ガスGの回収を停止させたりする必要がなくなり、バイオマス発電システム21による発電効率を向上できる。
【0092】
さらに、発電機3bにて加熱された高温冷却水を、チップ搬送ユニット4へ供給して、このチップ搬送ユニット4での木質チップAを乾燥させる際の熱源として利用する構成としている。また、各気液分離システム27の高温ガス冷却器27bそれぞれでの熱交換にて加熱された高温冷却水もまた、チップ搬送ユニット4へ供給して、このチップ搬送ユニット4での木質チップAを乾燥させる際の熱源として利用する構成としている。このため、例えばボイラ等の加熱装置を用いて木質チップAを乾燥させる場合に比べ、新たな熱源を用いることなく木質チップAを効率良く連続的に乾燥できるから、エネルギー効率よく木質チップAを乾燥できる。
【0093】
[その他]
なお、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形態様が含まれる。例えば、前述した各実施形態は、本発明を分りやすく説明するために説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0094】
1 バイオマス発電システム
2 バイオマスガス化システム
3 ガスエンジン発電ユニット
3a ガスエンジン
3b 発電機
4 チップ乾燥ユニット
4a 吸気ファン
4b 空冷熱交換器
4c チップ搬送装置
4d 可動羽
4e 係止面
4f 傾斜面
4g 駆動装置
4h 固定羽
4i 係止面
4j 傾斜面
5 ガス化ユニット
5a ガス化炉
5b 外壁部
5c 内壁炉
5d メンテナンス口
5e 導入口
5d 吸気口
5g 点検窓
5h ガス排出口
5i 傾斜部
5j 内部排出口
5k 下部排出口
5m 集炭機構
5n 回転体
5p 炭排出口
5q 炭排出コンベヤ
5r 貯留タンク
6 ガスコンディショニングユニット
6A ガスフィルタ
6B 電気集塵機
6C 水処理装置
7 熱交換ユニット
7A 高温熱交換ユニット
7B 低温熱交換ユニット
7a エアホース
8 メタネーションユニット
9 チップ搬送コンベヤ
11 投入用コンテナ部
11a 底面部
11b 板材
11c チップ投入室
11d 開口部
12 乾燥用コンテナ部
12a 制御室
12b 底面部
12c 通気路
12d 板材
12e 乾燥室
12f 熱交換室
12g 天板部
12h 調整室
12i 第1壁部
12j 第2壁部
12k 通気口
12m チップ排出口
12n チップ排出装置
21 バイオマス発電システム
22a プロパンボンベ
22b フレア
22c フレア空気ブロワ
22d フレアブロワ
23 発電機冷却システム
23a ラジエータ
23b 高温冷却水タンク
23c 高温冷却水ポンプ
23d 高温冷却器
26 ガスコンディショニングユニット
26a サイクロンフィルタ
26c サイクロンボトム排出物ドラム
26e 低温クーラ
27 気液分離システム
27a ホットガスフィルタ
27b 高温ガス冷却器
27c ノックアウトドラム
27d 網状部
27e 貯留槽
27f タール回収タンク
27g ボトム排出ドラム
27h 窒素ボンベ
28 固形物除去システム
28a デミスタ
28b 乾式フィルタ
29 ガスブロワ(負圧システム)
29a 酸素分析計
A 木質チップ
C 炭
G 可燃性ガス
H 搬送方向
P 木質粉体
R1 第1反応空間
R2 第2反応空間
R3 第3反応空間
S 滞留空間
T 運搬機
W1 高温冷却水
W2 低温冷却水
W3 循環水
【要約】
課題は、可燃性ガスの利用効率を生産性良く向上できるバイオマスガス化方法を提供する事である。
解決手段は、バイオマスガス化方法は、木質チップAを導入する導入工程と、導入した木質チップAを熱分解可能となるまで加熱する加熱工程と、加熱した木質チップAを還元雰囲気で熱分解させて可燃性ガスGを発生させるガス化工程と、発生した可燃性ガスGを滞留させて、可燃性ガスGに残留するタール分を改質させて可燃性ガスGとするタール分改質工程と、発生した可燃性ガスGを導出する導出工程と、を備える事である。