(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】走行制御システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20240718BHJP
【FI】
G05D1/43
(21)【出願番号】P 2018239915
(22)【出願日】2018-12-21
【審査請求日】2021-03-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】開田 宏介
【合議体】
【審判長】渋谷 善弘
【審判官】大山 健
【審判官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-161329(JP,A)
【文献】国際公開第2017/158973(WO,A1)
【文献】特開2006-285547(JP,A)
【文献】特開2007-257276(JP,A)
【文献】特開平4-182708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を走行経路に沿って自動的に走行させる走行制御装置と、
床面に物理的に検出可能に設置され、前記移動体が走行を行うための走行指示データを関連付けた走行指示用マークの少なくとも1つである被検出マークとを具備し、
前記走行経路は、データ上で仮想的に表される仮想ガイド線であり、
前記被検出マークは、前記移動体を前記仮想ガイド線に沿って走行させる際に、前記床面における前記仮想ガイド線に沿った位置において少なくとも前記移動体を停止させる必要がある地点の手前に設置されており、
前記走行制御装置は、
前記仮想ガイド線の位置を記憶する記憶部と、
前記移動体の位置を推定する位置推定部と、
前記記憶部に記憶された前記仮想ガイド線の位置と前記位置推定部により推定された前記移動体の位置とに基づいて、前記仮想ガイド線と前記移動体とのずれ量を算出する算出部と、
前記被検出マークを検出するマーク検出部と、
前記算出部により算出された前記仮想ガイド線と前記移動体とのずれ量に基づいて、前記移動体を前記仮想ガイド線に沿って走行させるように前記移動体の駆動部を制御すると共に、前記移動体を前記仮想ガイド線に沿って走行させている状態で、前記マーク検出部により前記被検出マークが検出されたときに、前記被検出マークに関連付けられた前記走行指示データに従って前記移動体を走行させるように前記駆動部を制御する制御部とを備え
、
前記被検出マークは、前記床面における前記仮想ガイド線の脇に相当する位置に前記仮想ガイド線からずれて配置されており、
前記仮想ガイド線の位置は、2次元座標で表され、
前記移動体の位置は、2次元座標及び向きで表される走行制御システム。
【請求項2】
前記被検出マーク以外の前記走行指示用マークは、前記被検出マークが設置された地点よりも前記走行指示用マークの検知精度が要求されない地点において、データ上で仮想的に表される仮想マークであり、
前記走行制御装置は、前記位置推定部により推定された前記移動体の位置に基づいて、前記仮想マークを検知するマーク検知部を更に備え、
前記記憶部は、前記仮想ガイド線及び前記仮想マークの位置を記憶し、
前記制御部は、前記マーク検出部により前記被検出マークが検出されたときは、前記被検出マークに関連付けられた前記走行指示データに従って前記移動体を走行させるように前記駆動部を制御し、前記マーク検知部により前記仮想マークが検知されたときは、前記仮想マークに関連付けられた前記走行指示データに従って前記移動体を走行させるように前記駆動部を制御し、
前記仮想マークの位置は、2次元座標で表される請求項1記載の走行制御システム。
【請求項3】
前記マーク検知部は、2次元座標上において前記移動体が前記仮想マークに重なったとき、または2次元座標上において前記移動体が前記仮想マークを通過したときに、前記仮想マークが検知されたと判定する請求項2記載の走行制御システム。
【請求項4】
前記被検出マークは、磁気マークであり、
前記マーク検出部は、前記磁気マークを検出する磁気マークセンサである請求項1~3の何れか一項記載の走行制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行制御システムとしては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の走行制御システムは、レーザを発射し、その反射光を検知して物体までの距離を測定するレーザ距離センサと、無人搬送車が走行する走行エリアの番地と走行エリアに設定されている座標との対応情報を格納するデータメモリと、レーザ距離センサからの計測データと地図データとをマッチングさせて無人搬送車の現在位置を推定し、その推定結果に基づいて無人搬送車を経路データに従って走行させる処理部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に記載されているように、移動体の位置を推定しながら移動体を走行させる場合、仮想的な走行指示用マークをデータ上で設定し、この走行指示用マークに関連付けられた走行指示データに従って移動体を走行させることが考えられる。しかし、移動体の推定位置に基づいて走行指示用マークを検知する場合には、移動体の位置の推定精度が悪い場所では、走行指示用マークの検知位置に誤差が生じることがある。走行指示用マークの位置が正しく検知されないと、走行指示用マークに関連付けられた走行指示データに従って移動体を精度良く走行させることが困難になる。
【0005】
本発明の目的は、移動体の位置の推定精度が悪い場所があっても、走行指示データに従って移動体を精度良く走行させることができる走行制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る走行制御システムは、移動体を走行経路に沿って自動的に走行させる走行制御装置と、床面に物理的に検出可能に設置され、移動体が走行を行うための走行指示データを関連付けた走行指示用マークの少なくとも1つである被検出マークとを具備し、走行経路は、データ上で仮想的に表される仮想ガイド線であり、走行制御装置は、仮想ガイド線の位置を記憶する記憶部と、移動体の位置を推定する位置推定部と、記憶部に記憶された仮想ガイド線の位置と位置推定部により推定された移動体の位置とに基づいて、仮想ガイド線と移動体とのずれ量を算出する算出部と、被検出マークを検出するマーク検出部と、算出部により算出された仮想ガイド線と移動体とのずれ量に基づいて、移動体を仮想ガイド線に沿って走行させるように移動体の駆動部を制御すると共に、マーク検出部により被検出マークが検出されたときに、被検出マークに関連付けられた走行指示データに従って移動体を走行させるように駆動部を制御する制御部とを備える。
【0007】
このような走行制御システムにおいては、位置推定部により移動体の位置が推定され、データ上で仮想的に表される仮想ガイド線と移動体とのずれ量に基づいて、移動体を仮想ガイド線に沿って走行させるように移動体の駆動部が制御されると共に、床面に設置された被検出マークがマーク検出部により検出されたときに、その被検出マークに関連付けられた走行指示データに従って移動体を走行させるように移動体の駆動部が制御される。このように物理的に検出可能な被検出マークを床面に設置し、その被検出マークをマーク検出部により物理的に検出することにより、位置推定部による移動体の位置の推定精度の影響を受けずに、被検出マークを高精度に検知することができる。これにより、移動体の位置の推定精度が悪い場所があっても、被検出マーク(走行指示用マーク)に関連付けられた走行指示データに従って移動体を精度良く走行させることができる。
【0008】
被検出マーク以外の走行指示用マークは、被検出マークが設置された地点よりも走行指示用マークの検知精度が要求されない地点において、データ上で仮想的に表される仮想マークであり、走行制御装置は、位置推定部により推定された移動体の位置に基づいて、仮想マークを検知するマーク検知部を更に備え、記憶部は、仮想ガイド線及び仮想マークの位置を記憶し、制御部は、マーク検出部により被検出マークが検出されたときは、被検出マークに関連付けられた走行指示データに従って移動体を走行させるように駆動部を制御し、マーク検知部により仮想マークが検知されたときは、仮想マークに関連付けられた走行指示データに従って移動体を走行させるように駆動部を制御してもよい。
【0009】
このような構成では、走行指示用マークの検知精度が要求される地点では、床面に設置された被検出マークがマーク検出部により検出されたときに、その被検出マークに関連付けられた走行指示データに従って移動体を走行させるように駆動部が制御される。走行指示用マークの検知精度が要求されない地点では、データ上で仮想的に表される仮想マークがマーク検知部により検知されたときに、その仮想マークに関連付けられた走行指示データに従って移動体を走行させるように駆動部が制御される。このように走行指示用マークの検知精度が要求されない地点では、走行指示用マークとして被検出マークではなく仮想マークが使用されるため、被検出マーク自体及び被検出マークの設置にかかる費用が低減される。
【0010】
マーク検知部は、2次元座標上において移動体が仮想マークに重なったとき、または2次元座標上において移動体が仮想マークを通過したときに、仮想マークが検知されたと判定してもよい。このような構成では、位置推定部により推定された移動体の位置座標を用いて、データ上で仮想的に表される仮想マークを容易に検知することができる。
【0011】
被検出マークは、磁気マークであり、マーク検出部は、磁気マークを検出する磁気マークセンサであってもよい。このような構成では、被検出マーク及びマーク検出部を安価に実現することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体の位置の推定精度が悪い場所があっても、走行指示データに従って移動体を精度良く走行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る走行制御システムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示された走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1に示された駆動制御部により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】移動体が磁気マークを通過する様子を示す概念図である。
【
図5】比較例として移動体が仮想マークを通過する様子を示す概念図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る走行制御システムを示す概略構成図である。
【
図7】
図6に示された走行制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図7に示された駆動制御部により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係る走行制御システムを示す概略構成図である。
図1において、本実施形態の走行制御システム1は、例えばフォークリフト等の移動体2をスタート地点3Aから目的地点3Bまで無人で走行させるシステムである。なお、スタート地点3A及び目的地点3Bとしては、走行路全体におけるスタート地点及び目的地点でもよいし、走行路の一部におけるスタート地点及び目的地点でもよい。
【0016】
走行制御システム1は、移動体2をスタート地点3Aから目的地点3Bまでの走行経路である仮想ガイド線3に沿って自動的に走行させる走行制御装置4と、移動体2が走行を行うための走行指示データを関連付けた走行指示用マークである磁気マーク5とを具備している。
【0017】
仮想ガイド線3は、データ上で仮想的に表される走行経路である。なお、
図1では、仮想ガイド線3は、直線経路となっているが、曲線経路であってもよい。スタート地点3A及び目的地点3Bを含む仮想ガイド線3の位置は、2次元座標(XY座標)で表されている。ここでは、スタート地点3Aの2次元座標は、(0,0)である。目的地点3Bの2次元座標は、(100,0)である。
【0018】
磁気マーク5は、床面に設置されている。磁気マーク5は、床面における仮想ガイド線3の脇に相当する位置に埋設されている。磁気マーク5は、物理的に検出可能な被検出マークである。磁気マーク5は、仮想ガイド線3の延在方向に垂直な方向に延びている。なお、磁気マーク5の数としては、1本の仮想ガイド線3に対して1つでもよいし複数でもよい。
【0019】
図2は、走行制御装置4の構成を示すブロック図である。
図2において、走行制御装置4は、移動体2に搭載されている。走行制御装置4は、自己位置推定器6と、磁気マークセンサ7と、自動走行制御ユニット8とを備えている。
【0020】
自己位置推定器6は、移動体2の位置を推定する位置推定部である。自己位置推定器6は、SLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、移動体2の自己位置を推定する。SLAMは、センサデータ及び地図データを使って自己位置推定を行う自己位置推定技術である。SLAMは、レーザレンジスキャナー等を利用して、自己位置推定と環境地図の作成とを同時に行う。
【0021】
自己位置推定器6は、レーザセンサ9と、SLAMコントローラ10とを有している。レーザセンサ9は、移動体2の周囲にレーザ光を照射し、その反射光を受光することにより、移動体2の周囲の物体までの距離を計測する。
【0022】
SLAMコントローラ10は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。SLAMコントローラ10は、レーザセンサ9により計測された移動体2の周囲の物体までの距離と移動体2の周囲の環境地図データとに基づいて、移動体2の自己位置の推定演算を行う。移動体2の位置は、2次元座標(XY座標)及び向きで表される。
【0023】
磁気マークセンサ7は、移動体2の下部に取り付けられている。磁気マークセンサ7は、磁気マーク5を検出するマーク検出部である。
【0024】
自動走行制御ユニット8は、自己位置推定器6により推定された移動体2の位置に基づいて、所定の処理を行い、移動体2をスタート地点3Aから目的地点3Bまで自動的に走行させるように、走行モータ11及び操舵モータ12を制御する。
【0025】
走行モータ11は、走行輪(図示せず)を回転駆動させるモータである。操舵モータ12は、操舵輪(図示せず)を回転駆動させるモータである。走行モータ11及び操舵モータ12は、移動体2の駆動部を構成している。
【0026】
自動走行制御ユニット8は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。自動走行制御ユニット8は、記憶部13と、ずれ量算出部14と、駆動制御部15とを有している。
【0027】
記憶部13は、仮想ガイド線3(走行経路)の位置と走行指示データ等といった移動体2の走行に関する情報を記憶する。記憶部13は、仮想ガイド線3の位置を2次元座標として記憶している。走行指示データは、上述したように各磁気マーク5に関連付けられている。走行指示データとしては、例えば加速指示、停止指示、右折指示及び左折指示等がある。
【0028】
ずれ量算出部14は、記憶部13に記憶された仮想ガイド線3の位置と自己位置推定器6により推定された移動体2の位置とに基づいて、仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量を算出する。このとき、ずれ量算出部14は、仮想ガイド線3の位置座標と移動体2の位置座標とのずれ量と、仮想ガイド線3の向きと移動体2の向きとのずれ量とを算出する。
【0029】
駆動制御部15は、ずれ量算出部14により算出された仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量に基づいて、移動体2を仮想ガイド線3に沿って走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12を制御する。また、駆動制御部15は、磁気マークセンサ7により磁気マーク5が検出されたときに、当該磁気マーク5に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12を制御する。
【0030】
図3は、駆動制御部15により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。なお、本処理は、
図4(a)に示されるように、スタート地点3Aから目的地点3Bに向けての移動体2の走行が開始されると、実行される。
【0031】
図3において、駆動制御部15は、まず
図4(b)に示されるように、磁気マークセンサ7により磁気マーク5が検出されたかどうかを判断する(手順S101)。駆動制御部15は、磁気マーク5が検出されたと判断したときは、当該磁気マーク5の番号に対応した走行指示データを記憶部13から取得する(手順S102)。
【0032】
このとき、磁気マークセンサ7によりスタート地点3Aから1つ目の磁気マーク5(1番の磁気マーク5Aとする)が検出された場合は、1番の磁気マーク5Aに紐づけられた走行指示データが取得される。磁気マークセンサ7によりスタート地点3Aから2つ目の磁気マーク5(2番の磁気マーク5Bとする)が検出された場合は、2番の磁気マーク5Bに紐づけられた走行指示データが取得される。
【0033】
そして、駆動制御部15は、取得した走行指示データに応じた制御信号を走行モータ11及び操舵モータ12に出力する(手順S103)。駆動制御部15は、例えば取得した走行指示データが加速指示である場合には、走行モータ11の回転速度を高くするような制御信号を走行モータ11に出力する。これにより、移動体2の速度が上昇するようになる。
【0034】
駆動制御部15は、手順S103が実行された後、または手順S101で磁気マーク5が検出されていないと判断したときは、ずれ量算出部14により算出された仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量を取得する(手順S104)。そして、駆動制御部15は、仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量が0となるような制御信号を走行モータ11及び操舵モータ12に出力する(手順S105)。これにより、移動体2の位置座標及び向きが仮想ガイド線3に近づくようになる。
【0035】
続いて、駆動制御部15は、移動体2が目的地点3Bに達したかどうかを判断する(手順S106)。駆動制御部15は、移動体2が目的地点3Bに達していないと判断したときは、手順S101を再び実行する。駆動制御部15は、移動体2が目的地点3Bに達したと判断したときは、本処理を終了する。
【0036】
ところで、
図5に示されるように、データ上で仮想的に表される仮想マーク50を走行指示用マークとして使用することも考えられる。この場合、仮想マーク50は、
図5(a)に示されるように、2次元座標(XY座標)で表される。例えば、スタート地点3Aから1つ目(1番)の仮想マーク50の2次元座標は、(10,0)である。スタート地点3Aから2つ目(2番)の仮想マーク50の2次元座標は、(90,0)である。
【0037】
このような仮想マーク50を使用する場合は、仮想マーク50が検知されたときに、仮想マーク50に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を走行させることになる。仮想マーク50が検知されたかどうかの判定は、2次元座標上において移動体2の位置と仮想マーク50の位置とを比較することにより行われる。例えば
図5(b)に示されるように、2次元座標上において移動体2が仮想マーク50に重なったときに、仮想マーク50が検知されたと判定される。また、2次元座標上において移動体2が仮想マーク50を通過したときに、仮想マーク50が検知されたと判定されてもよい。
【0038】
しかし、自己位置推定器6による移動体2の推定位置には誤差が含まれるため、仮想マーク50の検知位置の誤差も大きくなる(
図5(b)中のA参照)。例えば仮想マーク50に関連付けられた走行指示データが交差点での停止である場合、仮想マーク50の位置が正しく検知されないと、移動体2の停止位置に影響することになる。具体的には、移動体2が交差点の手前位置または交差点を超えた位置で停止する可能性がある。これにより、仮想マーク50に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を精度良く走行させることが困難になる。
【0039】
一方、本実施形態では、自己位置推定器6により移動体2の位置が推定され、データ上で仮想的に表される仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量に基づいて、移動体2を仮想ガイド線3に沿って走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12が制御されると共に、床面に設置された磁気マーク5が磁気マークセンサ7により検出されたときに、その磁気マーク5に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12が制御される。このように物理的に検出可能な磁気マーク5を床面に設置し、その磁気マーク5を磁気マークセンサ7により物理的に検出することにより、自己位置推定器6による移動体2の位置の推定精度の影響を受けないため、磁気マーク5の検知位置の誤差が小さくて済み(
図4(b)中のA参照)、磁気マーク5を高精度に検知することができる。これにより、移動体2の位置の推定精度が悪い場所があっても、磁気マーク5に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を精度良く走行させることができる。
【0040】
また、本実施形態では、物理的に検出可能な被検出マークとして磁気マーク5を用い、被検出マークを検出するマーク検出部として磁気マークセンサ7を用いるので、被検出マーク及びマーク検出部を安価に実現することができる。
【0041】
図6は、本発明の第2実施形態に係る走行制御システムを示す概略構成図である。
図6において、本実施形態の走行制御システム1Aは、走行制御装置4Aと、走行指示用マークの1つである上記の磁気マーク5とを具備している。また、本実施形態の走行制御システム1Aでは、磁気マーク5以外の走行指示用マークとして、データ上で仮想的に表される仮想マーク20が設定されている。
【0042】
ここでは、スタート地点3Aから1つ目(1番)の走行指示用マークは、仮想マーク20である。スタート地点3Aから2つ目(2番)の走行指示用マークは、磁気マーク5である。スタート地点3Aから3つ目(3番)の走行指示用マークは、磁気マーク5である。仮想マーク20の2次元座標は、(30,0)である。
【0043】
磁気マーク5は、走行指示用マークの検知精度が要求される地点に設置されている。走行指示用マークの検知精度が要求される地点は、例えば移動体2を正確に停止させる必要がある目的地点3Bの手前の領域の地点である。仮想マーク20は、磁気マーク5が設置された地点よりも走行指示用マークの検知精度が要求されない地点に設定されている。
【0044】
図7は、走行制御装置4Aの構成を示すブロック図である。
図7において、走行制御装置4Aは、上記の第1実施形態における自動走行制御ユニット8に代えて、自動走行制御ユニット8Aを備えている。自動走行制御ユニット8Aは、記憶部21と、上記のずれ量算出部14と、仮想マーク検知部22と、駆動制御部23とを有している。
【0045】
記憶部21は、仮想ガイド線3及び仮想マーク20の位置と走行指示データ等といった移動体2の走行に関する情報を記憶する。記憶部21は、仮想ガイド線3及び仮想マーク20の位置を2次元座標として記憶している。
【0046】
仮想マーク検知部22は、記憶部21に記憶された仮想マーク20の位置と自己位置推定器6により推定された移動体2の位置とに基づいて、仮想マーク20を検知する。具体的には、仮想マーク検知部22は、2次元座標上において移動体2が仮想マーク20に重なったとき、または2次元座標上において移動体2が仮想マーク20を通過したときに、仮想マーク20が検知されたと判定する。
【0047】
駆動制御部23は、ずれ量算出部14により算出された仮想ガイド線3と移動体2とのずれ量に基づいて、移動体2を仮想ガイド線3に沿って走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12を制御する。また、駆動制御部23は、磁気マークセンサ7により磁気マーク5が検出されたときは、磁気マーク5に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12を制御し、仮想マーク検知部22により仮想マーク20が検知されたときは、仮想マーク20に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12を制御する。
【0048】
図8は、駆動制御部23により実行される制御処理手順の詳細を示すフローチャートである。なお、本処理において、
図3に示されるフローチャートと同じ手順には、同じ符号を付している。
【0049】
図8において、駆動制御部23は、まず仮想マーク検知部22により仮想マーク20が検知されたかどうかを判断する(手順S111)。駆動制御部23は、仮想マーク20が検知されたと判断したときは、当該仮想マーク20に相当する走行指示用マークの番号に対応した走行指示データを記憶部21から取得する(手順S112)。そして、駆動制御部23は、取得した走行指示データに応じた制御信号を走行モータ11及び操舵モータ12に出力する(手順S113)。
【0050】
駆動制御部23は、仮想マーク20が検知されていないと判断したときは、磁気マークセンサ7により磁気マーク5が検出されたかどうかを判断する(手順S114)。駆動制御部23は、磁気マーク5が検出されたと判断したときは、当該磁気マーク5に相当する走行指示用マークの番号に対応した走行指示データを記憶部21から取得する(手順S115)。そして、駆動制御部23は、取得した走行指示データに応じた制御信号を走行モータ11及び操舵モータ12に出力する(手順S113)。
【0051】
そして、駆動制御部23は、手順S113が実行された後、または手順S114で磁気マーク5が検出されていないと判断したときは、手順S104~S106を順次実行する。
【0052】
このような本実施形態においても、物理的に検出可能な磁気マーク5を床面に設置し、その磁気マーク5を磁気マークセンサ7により物理的に検出することにより、自己位置推定器6による移動体2の位置の推定精度の影響を受けることなく、磁気マーク5を高精度に検知することができる。これにより、移動体2の位置の推定精度が悪い場所があっても、磁気マーク5に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を精度良く走行させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、走行指示用マークの検知精度が要求される地点では、床面に設置された磁気マーク5が磁気マークセンサ7により検出されたときに、その磁気マーク5に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12が制御される。走行指示用マークの検知精度が要求されない地点では、データ上で仮想的に表される仮想マーク20が検知されたときに、その仮想マーク20に関連付けられた走行指示データに従って移動体2を走行させるように走行モータ11及び操舵モータ12が制御される。このように走行指示用マークの検知精度が要求されない地点では、走行指示用マークとして磁気マーク5ではなく仮想マーク20が使用されるため、磁気マーク5自体及び磁気マーク5の設置にかかる費用が低減される。
【0054】
また、本実施形態では、2次元座標上において移動体2が仮想マーク20に重なったとき、または2次元座標上において移動体2が仮想マーク20を通過したときに、仮想マーク20が検知されたと判定されるので、自己位置推定器6により推定された移動体2の位置座標を用いて、データ上で仮想的に表される仮想マーク20を容易に検知することができる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、床面に物理的に検出可能に設置された被検出マークとして、磁気マーク5が用いられているが、被検出マークとしては、特にそれには限られず、RFIDタグマーク等を用いてもよい。RFIDタグマークを用いる場合には、RFIDリーダによりRFIDタグマークが検出される。
【0056】
また、上記実施形態では、自己位置推定器6は、自己位置推定技術としてレーザを利用したSLAM手法を用いて、移動体2の位置を推定しているが、自己位置推定技術としては、特にそれには限られず、カメラの撮像画像を利用したSLAM手法または衛星を利用したGNSS(globalnavigation satellite system)測位法等を用いてもよい。
【0057】
また、上記実施形態の走行制御装置は、移動体2としてフォークリフトを走行指示データに従って自動的に走行させる装置であるが、本発明は、例えば搬送台車等のような自動走行可能な移動体全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1,1A…走行制御システム、2…移動体、3…仮想ガイド線(走行経路)、4,4A…走行制御装置、5…磁気マーク(被検出マーク、走行指示用マーク)、6…自己位置推定器(位置推定部)、7…磁気マークセンサ(マーク検出部)、11…走行モータ(駆動部)、12…操舵モータ(駆動部)、13…記憶部、14…ずれ量算出部(算出部)、15…駆動制御部(制御部)、20…仮想マーク(走行指示用マーク)、21…記憶部、22…仮想マーク検知部(マーク検知部)、23…駆動制御部(制御部)。