(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240718BHJP
【FI】
G01D5/245 110W
G01D5/245 110L
G01D5/245 B
(21)【出願番号】P 2020002883
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】西口 薫
(72)【発明者】
【氏名】長田 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】小原 崇弘
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-56564(JP,A)
【文献】特開2018-72086(JP,A)
【文献】特開平9-159684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0146365(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、
前記主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、
前記第1駆動歯車と噛み合う第1従動歯車と、
前記第1従動歯車と同軸上に設けられ、前記第1従動歯車の回転に従って回転する第2駆動歯車と、
前記第2駆動歯車と噛み合う第2従動歯車と、
を備え、
前記第1駆動歯車の先端側に設けられている磁石と、前記磁石から発生する磁束の変化に対応し前記磁石が設けられている前記第1
駆動歯車
の回転角度を検出する角度センサと、を備え、
前記磁石には、前記磁石の軸方向の端面から見て、第1極性の第1磁極部分と、前記第1極性とは異なる第2極性の第2磁極部分とが隣接して形成され、
前記第1磁極部分と前記第2磁極部分とは、前記磁石の径方向の中央を境に、前記径方向に隣接して形成され、
前記第1磁極部分と前記第2磁極部分とは、前記軸方向の中央を境に、前記軸方向に隣接して形成され、
前記磁石の前記径方向における外周面に磁性材により形成されている磁気干渉低減部材が設けられていて、
前記磁気干渉低減部材は、前記磁石の前記径方向における外周面を全周にわたって囲むように設けられているとともに、前記外周面に接していて、
前記第1駆動歯車は、筒状の筒状部の径方向外側に設けられ、
前記
筒状部は、マグネット保持部を有し、
前記磁石及び前記磁気干渉低減部材は、前記マグネット保持部に収容されることを特徴とするアブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、
前記主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、
前記第1駆動歯車と噛み合う第1従動歯車と、
前記第1従動歯車と同軸上に設けられ、前記第1従動歯車の回転に従って回転する第2駆動歯車と、
前記第2駆動歯車と噛み合う第2従動歯車と、
を備え、
前記第2従動歯車の先端側に設けられている磁石と、前記磁石から発生する磁束の変化に対応し前記磁石が設けられている
前記第2従動歯車の回転角度を検出する角度センサと、を備え、
前記磁石には、前記磁石の軸方向の端面から見て、第1極性の第1磁極部分と、前記第1極性とは異なる第2極性の第2磁極部分とが隣接して形成され、
前記第1磁極部分と前記第2磁極部分とは、前記磁石の径方向の中央を境に、前記径方向に隣接して形成され、
前記第1磁極部分と前記第2磁極部分とは、前記軸方向の中央を境に、前記軸方向に隣接して形成され、
前記磁石の前記径方向における外周面に磁性材により形成されている磁気干渉低減部材が設けられていて、
前記磁気干渉低減部材は、前記磁石の前記径方向における外周面を全周にわたって囲むように設けられているとともに、前記外周面に接していて、
前記第2従動歯車は、
中心軸を貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔には、マグネット保持部
を有するマグネットホルダの軸部が圧入され、前記マグネットホルダが前記第2従動歯車と一体となって回転
し、
前記磁石及び前記磁気干渉低減部材は、前記マグネット保持部に収容されることを特徴とするアブソリュートエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュートエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の制御機械装置において、可動要素の位置や角度を検出するために用いられるロータリエンコーダが知られている。このようなロータリエンコーダには、相対的な位置又は角度を検出するインクリメンタル型のエンコーダと、絶対的な位置又は角度を検出するアブソリュート型のアブソリュートエンコーダとが存在している。このようなアブソリュートエンコーダとしては、着磁された永久磁石を測定対象となる回転軸(主軸)に取り付け、磁気センサによって永久磁石の回転角を検出することにより、測定対象となる主軸の回転量を検出する磁気式エンコーダ装置が知られている。また、この主軸の複数回転にわたる回転量を、主軸の回転に伴い減速回転する回転体の回転角を取得することによって特定する方法が知られている。
【0003】
このようなアブソリュートエンコーダにおいては、例えば、マグネットホルダのマグネット収容部内に、回転軸線の周方向においてN極とS極が並ぶように設けられたマグネットを有する構造が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような減速機構を用いた、複数の永久磁石の回転量を検出するアブソリュートエンコーダにおいては、複数の永久磁石と磁気回転角センサとが存在している場合に、意図しない永久磁石の磁束を磁気回転角センサが検出することによって磁気回転角センサの精度低下が生じる場合があった。このため、この種のアブソリュートエンコーダにおいては、検出精度を向上させるために、意図しない永久磁石の磁束の影響を取り除くことができる構造が求められている。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、永久磁石の意図しない磁束が検出精度に与える影響を低減することができるアブソリュートエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、主軸の複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダであって、前記主軸の回転に従って回転する第1駆動歯車と、前記第1駆動歯車と噛み合う第1従動歯車と、前記第1従動歯車と同軸上に設けられ、前記第1従動歯車の回転に従って回転する第2駆動歯車と、前記第2駆動歯車と噛み合う第2従動歯車と、を備え、前記第1従動歯車または前記第2従動歯車の少なくともいずれか一方の先端側に設けられている磁石と、前記磁石から発生する磁束の変化に対応し前記磁石が設けられている前記第1従動歯車または前記第2従動歯車の回転角度を検出する角度センサと、を備え、前記磁石には、前記磁石の軸方向の端面から見て、第1極性の第1磁極部分と、前記第1極性とは異なる第2極性の第2磁極部分とが隣接して形成され、前記第1磁極部分と前記第2磁極部分とは、前記磁石の径方向の中央を境に、前記径方向に隣接して形成され、前記第1磁極部分と前記第2磁極部分とは、前記軸方向の中央を境に、前記軸方向に隣接して形成され、前記磁石の前記径方向における外周面に磁性材により形成されている磁気干渉低減部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアブソリュートエンコーダによれば、永久磁石の意図しない磁束が検出精度に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すアブソリュートエンコーダの構成を、ケースを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すアブソリュートエンコーダの構成を、基板及びコネクタを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すアブソリュートエンコーダの構成を、別の角度から見た状態を概略的に示す斜視図である。
【
図5】
図3に示すアブソリュートエンコーダの構成を、モータを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
【
図6】
図5に示すアブソリュートエンコーダの構成を概略的に示す平面図である。
【
図7】
図1に示すアブソリュートエンコーダを主軸の中心軸に平行な面で切断した状態を示す断面図である。
【
図8】
図1に示すアブソリュートエンコーダの構成において、モータを除いた状態で主軸ギアの中心軸を通り、かつ、中間ギアの中心軸と直交する面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
【
図9】
図8に示すアブソリュートエンコーダの構成において、マグネット及び磁気干渉低減部材の周辺部分を概略的に示す拡大断面図である。
【
図10】
図8に示すアブソリュートエンコーダの構成において、マグネット、主軸ギア、主軸アダプタ及びモータの主軸の構成を概略的に示す分解縦断面図である。
【
図11】
図6に示すアブソリュートエンコーダの構成において、中間ギアの中心軸を通り、かつ、XY平面と平行な面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
【
図12】
図11に示す断面図を別の角度から見た拡大斜視図である。
【
図13】
図6に示すアブソリュートエンコーダの構成において、中間ギアの中心軸を通り、かつ、XY平面と直交する面で切断した状態を概略的に示す部分断面図である。
【
図14】
図12に示すアブソリュートエンコーダの構成において、ベース、中間ギア、中間ギア軸、板バネ、及びねじを分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
【
図15】
図2に示すアブソリュートエンコーダの構成において、副軸ギアの中心軸を通り、かつ、中間ギアの中心軸と直交する面で切断した状態を概略的に示す部分断面図である。
【
図16】
図15に示すアブソリュートエンコーダの構成において、マグネット、マグネットホルダ、副軸ギア、及びベアリングを分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
【
図17】アブソリュートエンコーダにおける中間ギア軸の主軸側端部を支持する支持突起の一変形例を概略的に示すための
図である。
【
図18】アブソリュートエンコーダにおける中間ギア軸の主軸側端部を支持する支持突起の一変形例を概略的に示すための
図である。
【
図19】アブソリュートエンコーダにおける中間ギア軸の主軸側端部を支持する支持突起の一変形例を概略的に示すための
図である。
【
図20】
図2に示される基板を下面側から見た図である。
【
図21】
図1に示すアブソリュートエンコーダの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は、アブソリュートエンコーダにおいて、主軸の複数回の回転(以下、複数回転ともいう。)にわたる回転量(以下、主軸の回転量ともいう。)を、主軸の回転に伴い減速回転する回転体の回転角度を取得することによって、特定し得ることを見出した。すなわち、回転体の回転角度を減速比で乗ずることにより、主軸の回転量を特定することができる。ここで、特定可能な主軸の回転量の範囲は、減速比に比例して増加する。例えば、減速比が50であれば、主軸50回転分の回転量を特定することができる。
【0011】
一方、必要な回転体の分解能は、減速比に比例して小さくなる。例えば、減速比が100であれば、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/100=3.6°となり、±1.8°の検出精度が求められる。一方、減速比が50の場合、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/50=7.2°となり、±3.6°の検出精度が求められる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施の形態、変形例では、同一又は同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、図面において歯車は歯部形状を省略して示す。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0013】
本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2は、主軸1aの複数回の回転にわたる回転量を特定するアブソリュートエンコーダである。アブソリュートエンコーダ2は、主軸1aの回転に従って回転する第1駆動歯車としての第1ウォームギア部11と、第1ウォームギア部11と噛み合う第1従動歯車としての第1ウォームホイール部21とを備えている。また、アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームホイール部21と同軸上に設けられ、第1ウォームホイール部21の回転に従って回転する第2駆動歯車としての第2ウォームギア部22と、第2ウォームギア部22と噛み合う第2従動歯車としての第2ウォームホイール部31とを備えている。また、アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11または第2ウォームギア部22の少なくともいずれか一方の先端側に設けられているマグネットMp,Mqと、マグネットMp,Mqから発生する磁束の変化に対応しマグネットMp,Mqが設けられている第1ウォームギア部11または第2ウォームギア部22の回転角度を検出する角度センサSp,Sqと、を備える。マグネットMp,Mqには、マグネットMp,Mqの軸方向MpC,MqCの端面(上面Mpa,Mqa、下面Mpb,Mqb)から見て、第1極性(N極)の第1磁極部分Nと、第1極性とは異なる第2極性(S極)の第2磁極部分Sとが隣接して形成される。第1磁極部分Nと第2磁極部分Sは、マグネットMp,Mqの径方向の中央を境に、径方向に隣接して形成され、第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとは、軸方向MpC,MqCの中央を境に、軸方向MpC,MqCに隣接して形成されている。また、アブソリュートエンコーダ2には、マグネットMp,Mqの径方向における外周面Mpd,Mqdに磁性材により形成されている磁気干渉低減部材16,17が設けられている。以下、アブソリュートエンコーダ2の構造を具体的に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2の構成を概略的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すアブソリュートエンコーダ2の構成を、ケース4を除いた状態で示す斜視図である。
図1では、アブソリュートエンコーダ2のケース4及び基板5が透過されて示されており、
図2では、アブソリュートエンコーダ2の基板5が透過されて示されている。
【0015】
本実施の形態においては、説明の便宜上、アブソリュートエンコーダ2についてXYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向は夫々X軸方向に直交する。本説明において、X軸方向を左側或いは右側と、Y軸方向を前側或いは後側と、Z軸方向を上側或いは下側ともいう。
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、X軸方向における左側が左側であり、X軸方向における右側が右側である。また、
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Y軸方向における手前側が前側であり、Y軸方向における奥側が後側である。また、
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Z軸方向における上側が上側であり、Z軸方向における下側が下側である。Z軸方向で上側から視た状態を平面視と、Y軸方向で前側から視た状態を正面視と、X軸方向で視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ2の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ2は任意の姿勢で使用され得る。
【0016】
アブソリュートエンコーダ2は、既述したように、モータ1の主軸1aの複数回転にわたる回転量を特定して出力するアブソリュート型のエンコーダである。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2はモータ1のZ軸方向の上側の端部に設けられている。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2は、平面視で略矩形状を有しており、正面視及び側面視で主軸1aの延在方向である上下方向に薄い横長の矩形状を有している。つまり、アブソリュートエンコーダ2は上下方向よりも水平方向に長い偏平な直方体形状を有している。
【0017】
アブソリュートエンコーダ2は内部構造を収容する中空角筒状のケース4を備えている。ケース4は、少なくともモータ1の主軸1aの一部と、主軸ギア10と、中間ギア20とを包囲する複数(例えば4つ)の外壁部4aを含んでいる。さらに、ケース4の4つの外壁部4aの上側の端部に蓋部4bが一体となって形成されている。
【0018】
モータ1は、一例として、ステッピングモータやDCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ1は波動歯車装置等の減速機構を介して産業用等のロボットを駆動する駆動源として適用されるモータであってもよい。モータ1の主軸1aは上下方向の両側がモータのケースから突出している。アブソリュートエンコーダ2はモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力する。
【0019】
モータ1の形状は、平面視で略矩形状を有し、上下方向においても略矩形状を有している。つまり、モータ1は略立方体形状を有している。平面視においてモータ1の外形を構成する4つの外壁部の夫々の長さは例えば25mmであり、すなわち、モータ1の外形は、平面視で25mm角である。また、モータ1に設けられるアブソリュートエンコーダ2は、例えばモータ1の外形形状に合わせて25mm角である。
【0020】
図1,2においては、基板5がケース4と共にアブソリュートエンコーダ2内部を覆うように設けられている。基板5は、平面視で略矩形状を有し、上下方向に薄い板状のプリント配線基板である。また、コネクタ6は基板5に接続されており、アブソリュートエンコーダ2と外部装置(不図示)を接続するためのものである。
【0021】
図3は、
図2に示すアブソリュートエンコーダ2の構成を、基板5、及びコネクタ6を除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図4は、
図3に示すアブソリュートエンコーダ2の構成を、別の角度から見た状態を概略的に示す斜視図である。
図5は、
図3に示すアブソリュートエンコーダ2の構成を、モータ1を除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図6は、
図5に示すアブソリュートエンコーダ2の構成を概略的に示す平面図である。
【0022】
アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11(第1駆動歯車)を有する主軸ギア10と、第1ウォームホイール部21(第1従動歯車)及び第2ウォームギア部22(第2駆動歯車)を有する中間ギア20と、第2ウォームホイール部31(第2従動歯車)を有する副軸ギア30と、マグネットMpと、マグネットMpに対応する角度センサSpと、マグネットMqと、マグネットMqに対応する角度センサSqと、マイコン51とを含んでいる。
【0023】
モータ1の主軸1aは、モータ1の出力軸であり、アブソリュートエンコーダ2に回転力を伝達する入力軸である。主軸ギア10は、モータ1の主軸1aに固定されており、主軸1aと一体にモータ1の軸受部材によって回転可能に支持されている。第1ウォームギア部11は、モータ1の主軸1aの回転に従って回転するように、主軸ギア10の外周に設けられている。主軸ギア10において、第1ウォームギア部11は、その中心軸が主軸1aの中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第1ウォームホイール部21は中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21は、第1ウォームギア部11と噛み合い、第1ウォームギア部11の回転に従って回転するように設けられている。第1ウォームホイール部21と第1ウォームギア部11との軸角は90°又は略90°に設定されている。
【0024】
第1ウォームホイール部21の外径に特別な制限はないが、図示の例では、第1ウォームホイール部21の外径は第1ウォームギア部11の外径より小さく設定されており(
図8参照)、第1ウォームホイール部21の外径が小さくなっている。これにより、アブソリュートエンコーダ2では、上下方向の寸法の小型化が図られている。
【0025】
第2ウォームギア部22は中間ギア20の外周に設けられており、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。中間ギア20において、第2ウォームギア部22は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第2ウォームホイール部31は、副軸ギア30の外周に設けられており、第2ウォームギア部22と噛み合い、第2ウォームギア部22の回転に従って回転するように設けられている。第2ウォームホイール部31と第2ウォームギア部22との軸角は90°又は略90°に設定されている。第2ウォームホイール部31の回転軸
線は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0026】
ここで、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に噛み合うために、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に向かう方向を第1噛み合い方向(
図12の矢印P1方向)とする。同様に、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部31に噛み合うために、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部31に向かう方向を第2噛み合い方向(
図12の矢印P2方向)とする。本実施の形態においては、第1噛み合い方向P1及び第2噛み合い方向P2は共に水平面(XY平面)に沿う方向となっている。
【0027】
角度センサSqは、第2ウォームホイール部31の回転角度、すなわち副軸ギア30の回転角度を検知する。マグネットMqは、副軸ギア30の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMqは、副軸ギア30の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極(N/S)を有している。具体的には、マグネットMqは、中央を境に、
図15中左半分に第1磁極部分Nと第2磁極部分SとがマグネットMqの軸方向MqCに配列され、一方、
図15中右半分には、左半分とは上下逆方向に第1磁極部分Nと第2磁極部分SとがマグネットMqの
図15中軸方向MqCに配列されている。すなわち、マグネットMqでは、第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが、マグネットMqの径方向の中央を境に、径方向に隣接して設けられ、第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが、軸方向MqCの中央を境に、軸方向MqCに隣接して設けられる。マグネットMqの着磁方向は、軸方向MqCであり、つまり、面方向に着磁(面着磁)である。角度センサSqは、副軸ギア30の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMqの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0028】
一例として、角度センサSqは、アブソリュートエンコーダ2の後述するベース3に配設された基板支柱110によって支持されている基板5に固定されている。角度センサSqは、マグネットMqの磁極を検知し、検知情報をマイコン51に出力する。マイコン51は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMqの回転角度、つまり副軸ギア30の回転角度を特定する。
【0029】
マグネットMpは、主軸ギア10の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定される。マグネットMpは、主軸ギア10の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極(N/S)を有している。具体的には、マグネットMpは、中央を境に、
図9中左半分に第1磁極部分Nと第2磁極部分SとがマグネットMpの軸方向MpCに配列され、一方、
図9中右半分には、左半分とは上下逆方向に第1磁極部分Nと第2磁極部分SとがマグネットMpの
図9中軸方向MpCに配列されている。すなわち、マグネットMpでは、第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが、マグネットMpの径方向の中央を境に、径方向に隣接して設けられ、第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが、軸方向MpCの中央を境に、軸方向MpCに隣接して設けられる。マグネットMpの着磁方向は、軸方向MpCであり、つまり、面方向に着磁(面着磁)である。角度センサSpは、主軸ギア10の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMpの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0030】
一例として、角度センサSpは、角度センサSqが固定された基板5に、角度センサSqが固定される面と同一の面において固定されている。角度センサSpは、マグネットMpの磁極を検知し、検知情報をマイコン51に出力する。マイコン51は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMpの回転角度を特定することにより、主軸ギア10の回転角度、つまり主軸1aの回転角度を特定する。主軸1aの回転角度の分解能は角度センサSpの分解能に対応する。マイコン51は、後述するように、特定された副軸ギア30の回転角度及び特定された主軸1aの回転角度に基づいて主軸1aの回転量を特定し、これを出力する。マイコン51は、一例としてモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力するようにしてもよい。
【0031】
このように構成されたアブソリュートエンコーダ2は、角度センサSqの検知情報に基づいて特定された副軸ギア30の回転角度に応じて主軸1aの回転数を特定すると共に、角度センサSpの検知情報に基づいて主軸1aの回転角度を特定することができる。そして、マイコン51は、特定された主軸1aの回転数及び主軸1aの回転角度に基づいて、主軸1aの複数回の回転にわたる回転量を特定する。
【0032】
主軸1aに設けられた主軸ギア10の第1ウォームギア部11の条数は例えば5であり、第1ウォームホイール部21の歯数は例えば20である。つまり、第1ウォームギア部11と第1ウォームホイール部21とは、減速比が20/5=4の第1変速機構R1を構成する(
図6参照)。第1ウォームギア部11が4回転するとき第1ウォームホイール部21は1回転する。第1ウォームホイール部21と第2ウォームギア部22は同軸上に設けられて中間ギア20を構成しており、一体となって回転することから、第1ウォームギア部11が4回転するとき、すなわち主軸1a及び主軸ギア10が4回転するとき、中間ギア20は1回転し、第2ウォームギア部22は1回転する。
【0033】
第2ウォームギア部22の条数は例えば2であり、第2ウォームホイール部31の歯数は例えば25である。つまり、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部31とは、減速比が25/2=12.5の第2変速機構R2を構成する(
図6参照)。第2ウォームギア部22が12.5回転するとき第2ウォームホイール部31は1回転する。第2ウォームホイール部31が形成された副軸ギア30は、後述するようにマグネットホルダ35及びマグネットMqと一体となって回転するようになっており、このため、中間ギア20を構成する第2ウォームギア部22が12.5回転するとき、マグネットMqは1回
転する。以上より、主軸1aが50回転すると、中間ギア20が12.5回転し、副軸ギア30及びマグネットMqが1回転する。つまり、角度センサSqの副軸ギア30の回転角度に関する検知情報により、主軸1aの50回転分の回転数を特定することができる。
【0034】
以下、アブソリュートエンコーダ2の構成についてより具体的に説明する。
【0035】
上述のように(
図1~6参照)、アブソリュートエンコーダ2は、ベース3と、ケース4と、基板5と、コネクタ6とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、主軸ギア10と、中間ギア20と、副軸ギア30と、付勢機構40とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、マグネットMp,Mq及び角度センタSp,Sqを含んでおり、また、アブソリュートエンコーダ2の駆動部や検出部等を制御するためのマイコン51を含んでいる。
【0036】
ベース3は、主軸ギア10や中間ギア20、副軸ギア30等の各回転体を回転可能に保持し、また、基板5や付勢機構40等の各部材を固定する基台である。
図3から
図6、
図10から
図14等に示すように、ベース3は、基部101と、基部101に設けられたアブソリュートエンコーダ2の各部材を支持するための後述する種々の支持部とを有している。ベース3には、ケース4が、例えば3箇所においてツメ部によって固定され、1箇所においてネジによって固定されるようになっている。また、ベース3には、基板5が、例えば3箇所においてネジによって固定されるようになっている。
【0037】
基部101は、アブソリュートエンコーダ2の上下方向に面する一対の面を有する板状の部分であり、水平方向(X軸方向及びY軸方向)に延在している。基部101の下側の面である下面102には、
図7に示すように、ケース4に形成されたツメ部4cが係合可能な凹部103が形成されている。凹部103は、上述のように例えば3つ形成されている。
【0038】
基部101の上側の面である上面104には、基板5を支持するための部分である基板支柱110及び基板位置決めピン120が設けられている。ベース3は、例えば、3つの基板支柱110と2つの基板位置決めピン120とを有している。
【0039】
図5等に示すように、基板支柱110は、基部101の上面104から上側に向かって突出する部分であり、例えば、円柱状又は略円柱状の部分である。基板支柱110の上側の端面(上端面111)には、下側に向かって延びるネジ穴112が形成されている。各基板支柱110の上端面111は、同一の水平面上に延びるように、または、同一の水平面に沿って延びるように夫々形成されている。アブソリュートエンコーダ2において、基板5は、その下面5aが基板支柱110の上端面111に接し、ネジ穴112に螺合されたネジ8aによって基板支柱110に固定される。なお、後述するように、基板支柱110の1つは、1つの基板位置決めピン120及び後述する付勢機構40を構成する支持突起45と一体となっている。
【0040】
図5等に示すように、基板位置決めピン120は、基部101の上面104から上側に向かって突出する部分であり、例えば、円柱状又は略円柱状の部分である。基板位置決めピン120の上側の端部(先端部121)は、先端部121よりも下側の部分(基部122)よりも細くなっており、先端部121と基部122との間には段差面123が形成されている。基板位置決めピン120の先端部121は、後述する
図20に示すように基板5に形成された位置決め孔5bに挿入可能になっており、基板5の位置決め孔5bに基板位置決めピン120の先端部121が夫々挿入されることにより、ベース3に対して基板5が位置決めされる。
【0041】
また、
図5等に示すように、ベース3は、基部101の上面104に設けられた、上側に向かって突出する部分である支持突起131を有している。支持突起131には、水平方向(図示の例では左右方向)に延びるネジ孔131aが形成されており、上述のように、支持突起131のネジ孔131aにネジ8bが螺合されて、このネジ8bによりケース4がベース3に固定されるようになっている。
【0042】
また、ベース3は、基部101の上面104に設けられた、上側に向かって突出する部分である支持突起132,141,142を有している(
図3~
図6等参照)。支持突起132は、後述するように、中間ギア20を中間ギア20の中心軸方向に押す板バネ9を支持する部分である。支持突起141,142は、後述するように、中間ギア20を回転可能に支持するための部分である。また、ベース3は、後述するように、副軸ギア30を回転可能に保持するベアリング135を支持するベアリングホルダ部134を有している(
図15参照)。また、ベース3の基部101の上面104には、支持突起45が設けられている。支持突起45は、後述するように、第2ウォームギア部22を第2ウォームホイール部31の方向に付勢する付勢機構40を構成する部分であり、付勢バネ41を支持する部分である。
【0043】
続いて、アブソリュートエンコーダ2のベース3が支持する各部品について夫々具体的に説明する。
【0044】
(主軸ギア)
図8は、
図1に示すアブソリュートエンコーダ2の構成において、モータ1を除いた状態で、主軸ギア10の中心軸を通り、かつ、中間ギア20の中心軸と直交する面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
図9は、
図8に示すアブソリュートエンコーダ2の構成において、マグネットMp及び磁気干渉低減部材16の周辺部分を概略的に示す拡大断面図である。
図10は、
図8に示すアブソリュートエンコーダ2の構成において、マグネットMp、主軸ギア10、主軸アダプタ12、及びモータ1の主軸1aの構成を概略的に示す分解縦断面図である。
【0045】
図8,
図9、
図10に示すように、主軸ギア10は、モータ1の主軸1a及び主軸アダプタ12と同軸又略同軸に設けられる筒状部材である。主軸ギア10は、筒状の筒状部13と、筒状部13の径方向外側に設けられた第1ウォームギア部11とを備えている。第1ウォームギア部11は主軸ギア10のギア部である。
図10に示すように、モータ1の主軸1aの上端には、内周側に空間を形成する円筒面状の圧入部1bが形成されており、圧入部1bは、主軸アダプタ12が圧入されて固定されるようになっている。また、主軸ギア10の筒状部13には、内側に空間を形成する円筒面状の圧入部14が形成されており、圧入部14は、主軸アダプタ12が圧入されて固定されるようになっている。
【0046】
また、
図8,9,10に示すように、主軸ギア10の筒状部13には、マグネットMpを保持するためのマグネット保持部15が形成されている。マグネット保持部15は、筒状部13の上端面13aから下側に凹むマグネットMpの形状に対応した凹部を形成する部分であり、マグネットMpを収容可能になっている。マグネット保持部15は、圧入部14に連通しており、圧入部14よりも大きな径を有する円筒面状の内周面15aと、内周面15aと圧入部14とを接続する円環状の底面15bとを有している。
【0047】
マグネットMpの径方向の外周面(以下、単に「外周面」という。)Mpdには、マグネットMpの外周面Mpdを全周にわたって囲むように形成されている環状の磁気干渉低減部材16が設けられている。磁気干渉低減部材16の内周面16aは、マグネットMpの外周面Mpdに接するように、マグネットMpの外径や外周面Mpdの形状に対応して形成されている。磁気干渉低減部材16の内周面16aとマグネットMpの外周面Mpdとの間は、間隙が生じないように接していることが望ましい。
【0048】
マグネット保持部15の内周面15aは、マグネット保持部15に収容されたマグネットMpの外周面Mpdに接するように形成されている。アブソリュートエンコーダ2において、主軸アダプタ12の上端面12aは、マグネット保持部15の底面15bよりも上側に位置している。アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMpの下面Mpbは主軸アダプタ12の上端面12aに接触しており、主軸ギア10のマグネット保持部15の底面15bには接触していない。このように、マグネットMpの上下方向の位置決めは主軸アダプタ12の上端面12aによってなされ、水平方向の位置決めはマグネット保持部15の内周面15aによってなされる。このように位置決めされたマグネットMpの下面Mpbは、主軸アダプタ12の上端面12aに接着されて固定される。
【0049】
上述のように、マグネットMpは主軸アダプタ12に固定されており、マグネットMp、主軸ギア10、及び主軸アダプタ12は、モータ1の主軸1aと一体となって回転する。マグネットMp、主軸ギア10、及び主軸アダプタ12は、モータ1の主軸1aと同じ軸線周りに回転するようになっている。
【0050】
第1ウォームギア部11は、螺旋状に形成された歯部により構成され、中間ギア20の第1ウォームホイール部21と噛み合うように形成されている。第1ウォームギア部11は、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。第1ウォームギア部11は、第1駆動歯車の一例である。
【0051】
図10に示すように、マグネットMpは、主軸ギア10のマグネット保持部15の内部に挿入される円盤状又は略円盤状の永久磁石であり、互いに背向する上面Mpa及び下面Mpbを有している。アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMpの上面Mpaが角度センサSpの表面から上下方向において一定距離を隔てて向き合っているように、主軸ギア10の中心軸GmC方向におけるマグネットMpの位置(上下方向における位置)が、上述のように主軸アダプタ12の上端面12aによって規定されている。
【0052】
マグネットMpの中心軸MpC(マグネットMpの中心を表す軸又は磁極の境界の中心を通る軸)は、主軸ギア10の中心軸GmC、主軸アダプタ12の中心軸SaC、及びモータ1の主軸1aの中心軸MoCと一致又は略一致している。このように各中心軸を一致又は略一致させることで、角度センサSpがより高精度にマグネットMpの回転角又は回転量を検出することが可能となっている。
【0053】
なお、本発明の実施の形態においては、マグネットMpの2つの磁極(N/S)は、マグネットMpの中心軸MpCに対して垂直な水平面(XY平面)内で隣り合うように形成されることが望ましい。これにより、角度センサSpの回転角又は回転量の検出精度をより向上させることができる。なお、マグネットMpは、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)-Fe(鉄)-B(ホウ素)系等の磁性材料から形成される。マグネットMpは、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、ボンド磁石等であってもよい。
【0054】
次いで、アブソリュートエンコーダ2の磁気干渉低減部材17の作用について説明する。
【0055】
アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMqは、上述のように第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが、マグネットMqの径方向の中央を境に、径方向に隣接して設けられ、第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが、軸方向MqCの中央を境に、軸方向MqCに隣接して設けられ、面方向に着磁されている。このため、マグネットMqは、角度センサSqによる回転角度の検知に必要な磁束以外の磁束、すなわち、漏れ磁束が他の角度センサなどの周囲に影響を与える。
【0056】
ここで、アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMqの外周面Mqdには、磁性部材により形成されている環状の磁気干渉低減部材17が、外周面Mqdを全周にわたって囲むように設けられている。また、磁気干渉低減部材17の内周面17aは、マグネットMqの外周面Mqdに接するように設けられている。このような磁気干渉低減部材17が外周面Mqdに設けられていることにより、アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMqから径方向外周側に向かう漏れ磁束が抑制される。つまり、アブソリュートエンコーダ2において、角度センサSqによる回転角度の検知に必要な磁束を維持しつつ、マグネットMqによる周囲への磁気干渉を低減することができる。特に、アブソリュートエンコーダ2において、副軸ギア30の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されているマグネットMqからの漏れ磁束による、主軸ギア10の回転角度の検知に用いられる角度センサSpへの影響を低減することが望まれている。従って、アブソリュートエンコーダ2において、このようなマグネットMqによる漏れ磁束の影響を低減することができる磁気干渉低減部材17を設けることは、特に有効である。
【0057】
(中間ギア)
図11は、
図6に示すアブソリュートエンコーダ2の構成において、中間ギア20の中心軸を通り、かつ、水平面(XY平面)と平行な面で切断した状態を概略的に示す断面図である。
図12は
図11に示すように断面したアブソリュートエンコーダ2を中間ギア軸23の副軸側端部23b側の上方から見た拡大斜視図である。
図13は、
図6に示すアブソリュートエンコーダ2の構成において、中間ギア20の中心軸を通り、かつ、水平面(XY平面)と直交する面で切断した状態を概略的に示す部分断面図である。
【0058】
図4から
図6及び
図11から
図13に示すように、中間ギア20は、ベース3の基部101の上側において、中間ギア軸23によって回転自在に支持されている。中間ギア軸23は、水平面に平行に延びている。また、中間ギア軸23は、平面視で左右方向(X軸方向)及び前後方向(Y軸方向)の夫々とは平行ではない。すなわち、中間ギア軸23は、左右方向及前後方向の夫々に対して斜めとなっている。中間ギア軸23が、左右方向及び前後方向の夫々に対して斜めであることは、中間ギア軸23がベース3の基部101の外周面105~108(右側外周面105、後側外周面106、左側外周面107、前側外周面108)に対して斜めに延びていることを意味している(
図11参照)。アブソリュートエンコーダ2において、中間ギア軸23は、主軸ギア10側に位置する支持突起141と、副軸ギア30側に位置する支持突起142とによってベース3の基部101に支持されている。
【0059】
図11に示すように、ベース3の外周面は、YZ平面に平行な右側外周面105及び左側外周面107と、XZ平面に平行で右側外周面105及び左側外周面107との間に延びる後側外周面106及び前側外周面108とにより構成される。右側外周面105は、ベース3の右側(X軸方向右側)に設けられる側面である。左側外周面107は、ベース3の左側(X軸方向左側)に設けられる側面である。後側外周面106は、ベース3の後側(Y軸方向後側)に設けられる側面である。前側外周面108は、ベース3の前側(Y軸方向前側)に設けられる側面である。
【0060】
図3から
図6に示すように、アブソリュートエンコーダ2を平面視した寸法は、一例として25mm角のモータ1の寸法に合わせられている。そのため、ベース3の上面104に平行に配置される中間ギア20が、ベース3の外周面105~108に対して斜めに延びるように設けられることによって、水平方向へのアブソリュートエンコーダ2の寸法を小さくすることができる。なお、水平方向とは、モータ1の主軸1aの中心軸と直交する方向に等しく、またXY平面と平行な方向に等しい方向である。
【0061】
図5、
図6及び
図11~
図14に示すように、中間ギア20は、中間ギア軸23を軸として回転可能に形成された筒状の部材であり、第1ウォームホイール部21、第2ウォームギア部22、筒状部24、主軸側摺動部25、及び副軸側摺動部26を有している。筒状部24は、筒状に延びる部材であり、中間ギア軸23が挿通可能な貫通孔24aを形成する内周面24bを有している。貫通孔24aは、筒状部24の内周面24bによって囲まれる空間である。内周面24bは、貫通孔24aに挿通された中間ギア軸23の外周面に摺動可能に形成されており、中間ギア20は、中間ギア軸23周りに回転自在に中間ギア軸23に支持される。中間ギア20は、金属、樹脂等で一体的に成形された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
【0062】
図5から
図8に示すように、第1ウォームホイール部21は、主軸ギア10の第1ウォームギア部11が噛み合う歯車である。第1ウォームホイール部21は、第1従動歯車の一例である。第1ウォームホイール部21は、中間ギア20の筒状部24の一方の端部側に設けられており、例えば、中間ギア20の筒状部24の一方の端部側に形成された円筒面に設けられる複数の歯によって構成される。アブソリュートエンコーダ2において、中間ギア20は、第1ウォームホイール部21がベース3の基部101の中央近傍の箇所に位置するように設けられる。従って、第1ウォームホイール部21が近傍に設けられる筒状部24の一方の端部とは、中間ギア20の主軸ギア10側となる端部である。
【0063】
図8に示すように、第1ウォームホイール部21の外径は、第1ウォームギア部11の外径よりも小さくなっている。第1ウォームホイール部21の中心軸は、筒状部24の内周面24bの中心軸と同軸又は略同軸となっている。アブソリュートエンコーダ2において、第1ウォームホイール部21の中心軸は、ベース3の基部101の上面104と平行であるため、第1ウォームホイール部21の外径が小さくなることにより、アブソリュートエンコーダ2の上下方向(高さ方向)における小型化が可能となる。
【0064】
図5、
図6、
図11~
図15等に示すように、第2ウォームギア部22は、螺旋状に形成された歯部によって構成され、第1ウォームホイール部21と同軸上又は略同軸上に並んで設けられている。第2ウォームギア部22は、第2駆動歯車の一例である。具体的には、第2ウォームギア部22は、筒状部24の他方の端部側に設けられており、例えば、筒状部24の他方の端部側に形成された円筒面に設けられる螺旋状に形成された歯部によって構成される。筒状部24の他方の端部側とは、中間ギア20の副軸ギア30側となる端部の側である。また、第2ウォームギア部22の中心軸は、筒状部24の内周面24bの中心軸と同軸又は略同軸となっている。第2ウォームギア部22が、副軸ギア30に設けられた第2ウォームホイール部31と噛み合うことによって、中間ギア20の回転力が副軸ギア30に伝達される。
【0065】
上述のように、第1ウォームギア部11と第1ウォームホイール部21との軸角は90°又は略90°であり、第1ウォームギア部11の中心軸と第1ウォームホイール部21の中心軸とは、第1ウォームギア部11の中心軸に垂直であると共に第1ウォームホイール部21の中心軸に垂直である方向から見たとき、互いに直交又は略直交している。また、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部31との軸角は90°又は略90°であり、第2ウォームギア部22の中心軸と第2ウォームホイール部31の中心軸とは、第2ウォームギア部22の中心軸に垂直であると共に第2ウォームホイール部31の中心軸に垂直である方向から見たとき、互いに直交又は略直交している。
【0066】
図15に示すように、第2ウォームギア部22の外径は、アブソリュートエンコーダ2の上下方向(高さ方向)における小型化を可能にするために、可能な範囲で小さい値に設定されている。
【0067】
図6、
図11~
図13に示すように、中間ギア20の主軸側摺動部25は、中間ギア20の一端、すなわち中間ギア20の主軸ギア10側となる端に設けられている。具体的には、主軸側摺動部25は、筒状部24の一端の端面であり、筒状部24の一端に形成された中間ギア20の中心軸方向に面する環状の面である。アブソリュートエンコーダ2において、中間ギア20の主軸側摺動部25は、後述する板バネ9の一端9aに接触する。
【0068】
板バネ9は、弾性部材の一例であり、例えば金属製である。板バネ9は、アブソリュートエンコーダ2において、中間ギア20を中間ギア軸23の中心軸方向に押すための部材であり、
図4~
図6及び
図13に示すように、板バネ9の他端9bがベース3の支持突起132にネジ8cによって固定されて、ベース3に支持されている。板バネ9の一端9aは、中間ギア20の主軸側摺動部25に接触するように形成されており、具体的には、
図4及び
図13に示すように、板バネ9の一端9aは、二股状に分かれた2つの分岐体で構成されている。板バネ9の一端9aを構成する2つの分岐体の間には、中間ギア軸23の直径より大きな隙間が形成されている。これにより、アブソリュートエンコーダ2において、板バネ9の一端9aの2つの分岐体は、中間ギア軸23を間に通して中間ギア20の主軸側摺動部25に接触する。
【0069】
図4、
図6、
図11及び
図13に示すように、板バネ9は、アブソリュートエンコーダ2において、板バネ9が撓んだ状態で一端9aが中間ギア20の主軸側摺動部25に接触するように、他端9bにおいてベース3の支持突起132に固定される。このため、板バネ9には弾性力が発生し、中間ギア20の主軸側摺動部25は、板バネ9の一端9aによって押圧される。この板バネ9の押圧力により、中間ギア20は、中間ギア軸23に沿って、主軸ギア10側の支持突起141から副軸ギア30側の支持突起142に向かう方向に付勢される。この状態で中間ギア20が回転したとき、中間ギア20の主軸側摺動部25は、板バネ9の一端9aに接触しながら回転する。
【0070】
図4、
図6及び
図11から
図14に示すように、中間ギア20の副軸側摺動部26は、中間ギア20の他端、すなわち中間ギア20の副軸ギア30側となる端に設けられている。具体的には、副軸側摺動部26は、筒状部24の他端の端面であり、筒状部24の他端に形成された中間ギア20の中心軸方向に面する環状の面であり、中間ギア20の中心軸方向において主軸側摺動部25に背向している。
【0071】
アブソリュートエンコーダ2において、中間ギア20の副軸側摺動部26は、支持突起142に接触しており、支持突起142は、中間ギア軸23の中心軸方向における中間ギア20の位置を規定している。上述のように、中間ギア20は、板バネ9によって、主軸ギア10側の支持突起141から副軸ギア30側の支持突起142に向かう方向に押圧されているため、中間ギア20の副軸側摺動部26も同方向に押圧されて支持突起142に接触している。このように、板バネ9の押圧力が副軸ギア30から支持突起142に伝えられ、中間ギア20は、支持突起141から支持突起142に向かう方向に安定して支持されている。中間ギア20が回転した際は、中間ギア20の副軸側摺動部26は、支持突起142に接触しながら回転する。
【0072】
上述した、支持突起141及び支持突起142は夫々、中間ギア軸23を介して中間ギア20を回転自在に保持する第1軸支持部及び第2軸支持部の一例である。
図5、
図6及び
図11から
図13に示すように支持突起141及び支持突起142は、互いに対をなしており、例えば、ベース3の基部101から上側に突出する略直方体状の部分である。支持突起141は、主軸ギア10の近傍に設けられており、平面視で(
図6,10参照)、ベース3の左側且つ前後方向中央付近に設けられている。また、支持突起142は、副軸ギア30の近傍に設けられており、平面視で、ベース3の右側且つ前側に設けられている。
【0073】
図6及び
図11から
図13に示すように、支持突起141及び支持突起142は、中間ギア軸23を水平面に沿って揺動可能に支持する支持部材として機能し、つまり、中間ギア20を水平面に沿って揺動可能に支持する支持部材として機能する。中間ギア軸23は、円柱棒状の部材であり、一方の端部としての主軸側端部23aと、他方の端部としての副軸側端部23bとを有している。主軸側端部23aは、アブソリュートエンコーダ2において、主軸ギア10側に位置する中間ギア軸23の端部であり、副軸側端部23bは、アブソリュートエンコーダ2において、副軸ギア30側に位置する中間ギア軸23の端部である。
【0074】
中間ギア軸23の主軸側端部23a側に設けられた第1ウォームホイール部21は、後述する付勢機構40によって、第1噛み合い方向(
図12の矢印P1方向)に移動可能に、また、中間ギア軸23の延びる方向(中間ギア軸23の中心軸方向)及び第1噛み合い方向P1に直交する方向(上下方向)に移動不能になっている。なお、第1噛み合い方向とは、上述したように、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に噛み合うために、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に向かう方向である。
【0075】
図11から
図14に示すように、支持突起141には、中間ギア軸23の主軸側端部23aが挿入される貫通孔143が形成されている。貫通孔143の延び方向に直交する断面における形状は、丸穴形状となっている。丸穴形状とは真円又は略真円の輪郭を有する形状である。
【0076】
また、アブソリュートエンコーダ2は、中間ギア軸23の主軸側端部23aと係合可能に形成された固定部としての止め輪144を有している。止め輪144は、支持突起141の貫通孔143を通り抜けられない部分を中間ギア軸23の主軸側端部23aに形成する部材であり、中間ギア軸23
の主軸側端部23aの外径を部分的に大きくする部材である。
図12、13に示すように、止め輪144は、中間ギア軸23に形成された溝23cに係合するeリング等の環状部材である。アブソリュートエンコーダ2において、溝23cは、止め輪144が支持突起141に対して副軸側端部23b側とは反対側に位置するように、中間ギア軸23の主軸側端部23aに設けられている。つまり、止め輪144は、支持突起141の外側面141aに接触するように設けられている。外側面141aは、支持突起141の支持突起142側とは反対側に向かう面である。これにより、止め輪144の支持突起141の外側面141aとの接触により、主軸側端部23aから副軸側端部23bに向かう方向への中間ギア軸23の移動が制限されるようになっている。
【0077】
中間ギア軸23の副軸側端部23b側に設けられた第2ウォームギア部22は、後述する付勢機構40によって、第2噛み合い方向(
図12の矢印P2方向)に移動可能に、また、中間ギア軸23が中間ギア軸23の延びる方向(中間ギア軸23の中心軸方向)及び第2噛み合い方向P2に直交する方向(Z軸方向)に移動不能になっている。なお、第2噛み合い方向とは、上述したように、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部31に噛み合うために、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部31に向かう方向である。
【0078】
支持突起142には、中間ギア軸23の副軸側端部23bが挿入される貫通孔145が形成されている。貫通孔145の延び方向に直交する断面における形状は、長穴形状となっている。この貫通孔145の長穴形状は、長軸及び長軸に直交する短軸を有している。長軸側の幅は短軸側の幅よりも大きい。副軸ギア30側の支持突起142の貫通孔145の長穴形状の長軸側の幅は、中間ギア軸23の外周面の径よりも大きくなっている。また、貫通孔145の短軸側の幅は、中間ギア軸23の外周面の径と同じ又は略同じである。アブソリュートエンコーダ2において、支持突起142の貫通孔145の長軸方向は、水平面と平行又は略平行となるようになっている。中間ギア軸23の副軸側端部23bが支持突起142の貫通孔145に挿入された中間ギア軸23には、後述するように、付勢バネ41が係合し、付勢バネ41は中間ギア軸23の副軸側端部23bを第2噛み合い方向P2に付勢するようになっている。
【0079】
このように、中間ギア軸23は、後述する付勢機構40、支持突起141及び支持突起142によって、主軸側端部23aを支点(=揺動中心)とし、副軸側端部23bが水平方向に平行に又は略平行に移動できるように、また、主軸側端部23a側の第1ウォームホイール部21よりも副軸側端部23b側の第2ウォームギア部22が水平方向に平行に又は略平行に大きな幅で移動できるようになっている。これにより、付勢機構40により付勢され、支持突起141及び支持突起142に支持された中間ギア軸23、すなわち中間ギア20は、水平面(XY平面)に沿って揺動可能になっている。
【0080】
このような構成において、中間ギア軸23の移動量(揺動量)は、支持突起141に形成される貫通孔143の深さ、すなわち、中間ギア軸23の中心軸方向における支持突起141の厚さ、貫通孔143と中間ギア軸23との間のクリアランス、及び貫通孔145の長軸側の幅によって決まる。しかし、貫通孔143と中間ギア軸23との間のクリアランスが大きい場合、中間ギア軸23のガタつきが大きくなり位置ずれが生じるため、このクリアランスを大きくすることは避けたい。このため、支持突起141を薄板等で形成し、支持突起141の厚さを薄くすることで、つまり貫通孔143を浅くすることで、貫通孔143と中間ギア軸23との間のクリアランスを小さくしつつ、中間ギア軸23の移動量を確保することが可能となる。なお、貫通孔145の長軸側の幅による中間ギア軸23の移動量よりも、支持突起141の厚さによる中間ギア軸23の移動量が大きくなるように設計しておくことで、中間ギア軸23の移動量は貫通孔145の長軸側の幅によって規定することができる。
【0081】
(副軸ギア)
図15は、
図2に示すアブソリュートエンコーダ2の構成において、副軸ギア30の中心軸を通り、かつ、中間ギア20の中心軸と直交する面で切断した状態を概略的に示す部分断面図である。
図16は、
図15に示すアブソリュートエンコーダ2の構成において、マグネットMq、マグネットホルダ35、副軸ギア30、及びベアリング135を分解した状態を概略的に示す分解斜視図である。
【0082】
図15,16に示すように、副軸ギア30は、マグネットホルダ35の軸部35bが圧入されてマグネットホルダ35に固定される円筒状の部材である。副軸ギア30は、第2ウォームホイール部31と、貫通孔32とを備えている。副軸ギア30は、金属又は樹脂で一体的に成形された部材であり、ここでは一例として、ポリアセタール樹脂で形成されている。
【0083】
第2ウォームホイール部31は、中間ギア20の第2ウォームギア部22が噛み合う歯車である。第2ウォームホイール部31は、第2従動歯車の一例である。第2ウォームホイール部31は、例えば、副軸ギア30の上側の円筒部の外周部に設けられる複数の歯によって構成されている。中間ギア20が回転することによって、中間ギア20の回転力は、中間ギア20の第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部31を介して、副軸ギア30に伝達される。
【0084】
図15及び
図16に示すように、貫通孔32は、円筒状の副軸ギア30の中心軸に沿って貫通する孔である。貫通孔32には、マグネットホルダ35の軸部35bが圧入され、副軸ギア30はマグネットホルダ35と一体となって回転するようになっている。
【0085】
マグネットホルダ35は、マグネット保持部35aと軸部35bとを有している。マグネットホルダ35は、金属又は樹脂で一体的に成形された部材であり、ここでは一例として、非磁性のステンレス鋼で形成されている。ベース3に形成された筒状のベアリングホルダ部134の内周面には、2つのベアリング135の外輪が圧入されている。マグネットホルダ35の軸部35bは円柱状の部材である。軸部35bは、副軸ギア30の貫通孔32に圧入されており、軸部35bの下部は、2つのベアリング135の内輪に挿入されて固定されている。従って、マグネットホルダ35は、2つのベアリング135によってベース3に対して支持され、副軸ギア30と一体となって回転する。マグネットホルダ35は、ベアリング135を介してベアリングホルダ部134に、Z軸に平行な回転軸線周りに回転可能に保持される。
【0086】
また、マグネット保持部35aはマグネットホルダ35の上端に設けられている。マグネット保持部35aは、有底円筒状の部材である。マグネット保持部35aは、マグネットホルダ35の上端面から下側に向かって窪む窪みを有している。このマグネット保持部35aの窪みの内周面は、マグネットMqの外周面Mqdに接するように形成されている。これにより、アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMqは、マグネット保持部35aの窪みに収容されることにより、マグネット保持部35aに固定されている。
【0087】
ベース3に形成されたベアリングホルダ部134に配設された2つのベアリング135によってマグネットホルダ35の軸部35bが支持されることで、マグネットホルダ35の傾きを防止することができる。そして、2つのベアリング135は、軸部35bの上下方向においてできるだけ距離を離して配置すると、よりマグネットホルダ35の傾きを防止する効果が大きくなる。
【0088】
図16に示すように、マグネットMqは、マグネットホルダ35のマグネット保持部35aの内部に圧入される円盤状又は略円盤状の永久磁石であり、上面Mqa及び下面Mqbを有している。アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMqの上面Mqaは、角度センサSpの下面から一定距離を隔てて向き合っている。マグネットMqの中心軸MqC(マグネットMqの中心を表す軸又は磁極の境界の中心を通る軸)は、マグネットホルダ35の中心軸SC、副軸ギア30の中心軸GsC及びベアリング135の中心軸BCと一致している。このように各中心軸を一致させることで、より高精度に回転角又は回転量を検出することが可能となっている。
【0089】
なお、本発明の実施の形態においては、マグネットMqの2つの磁極(N/S)は、マグネットMqの中心軸MqCに対して垂直な水平面(XY平面)内で隣り合うように形成されることが望ましい。これにより、角度センサSqの回転角又は回転量の検出精度をさらに向上させることができる。なお、マグネットMqは、例えばフェライト系、Nd(ネオジム)-Fe(鉄)-B(ホウ素)系等の磁性材料から形成される。マグネットMqは、例えば樹脂バインダを含むゴム磁石、ボンド磁石等であってもよい。
【0090】
アブソリュートエンコーダ2において、主軸ギア10、中間ギア20、及び副軸ギア30は上述のように設けられており、主軸ギア10及び副軸ギア30の回転軸線は互いに平行であり、中間ギア20の回転軸線は、主軸ギア10及び副軸ギア30の夫々の回転軸線に対してねじれの位置にある。この各ギアの配置により、角度センサSqの検出結果に応じて主軸ギア10の複数回の回転にわたる回転量を特定することができる。中間ギア20の回転軸線が、主軸ギア10及び副軸ギア30の回転軸線に対してねじれの位置にあり正面視で直交するため、アブソリュートエンコーダ2は屈曲した伝達経路を構成して薄型化することができる。
【0091】
次いで、アブソリュートエンコーダ2の磁気干渉低減部材16の作用について説明する。
【0092】
アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMpは、上述のように第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが、マグネットMpの径方向の中央を境に、径方向に隣接して設けられ、第1磁極部分Nと第2磁極部分Sとが、軸方向MpCの中央を境に、軸方向MpCに隣接して設けられ、面方向に着磁されている。このため、マグネットMpは、角度センサSpによる回転角度の検知に必要な磁束以外の磁束、すなわち、漏れ磁束が他の角度センサなどの周囲に影響を与える。
【0093】
ここで、アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMpの外周面Mpdには、磁性部材により形成されている環状の磁気干渉低減部材16が、外周面Mpdを全周にわたって囲むように設けられている。また、磁気干渉低減部材16の内周面16aは、マグネットMpの外周面Mpdに接するように設けられている。このような磁気干渉低減部材16が外周面Mpdに設けられていることにより、アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMpから径方向外周側に向かう漏れ磁束が抑制される。つまり、アブソリュートエンコーダ2において、角度センサSpによる回転角度の検知に必要な磁束を維持しつつ、マグネットMpによる周囲への磁気干渉を低減することができる。
【0094】
(バックラッシュ低減機構)
上述のように、アブソリュートエンコーダ2は、第2ウォームギア部22を第2ウォームホイール部31の方向に付勢する付勢機構40を有しており、付勢機構40は、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部31との間のバックラッシュを低減するバックラッシュ低減機構である。
図5、
図6、
図11、
図14等に示すように、付勢機構40は、付勢バネ41と、支持突起45と、付勢バネ41を支持突起45に固定するためのネジ8dとを有している。また、上述のベース3の支持突起141の貫通孔143及び支持突起142の貫通孔145も、付勢機構40を構成する。
【0095】
付勢バネ41は、第2ウォームギア部22を第2ウォームホイール部31の方向に押圧する押圧力を発生するための部材であり、弾性部材である。付勢バネ41は、例えば板バネであり、金属板から形成されている。
図12,14に示すように、付勢バネ41は、具体的には、弾性変形して押圧力を発生する部分であるバネ部42と、バネ部42を挟んで対向する部分である係合部43及び固定部44とを有している。係合部43と固定部44とは、付勢バネ41において一対の端部を形成する部分である。
【0096】
固定部44は、ベース3の基部101の上面104から突出する支持突起45にネジ8dによって固定可能に形成されている。ネジ8dは固定部材の一例であり、固定部44には、ネジ8dが挿通される孔44aが形成されている。固定部44は、平面状に延びており、支持突起45の平面状の支持面45aに接触した状態でネジ8dにより支持突起45に固定されるようになっている。
【0097】
係合部43は、中間ギア軸23の副軸側端部23bに係合可能な形状を有している。係合部43は、例えば、
図13、
図14に示すように、係合部43のバネ部42からの延び方向に沿って延びる隙間を形成する係合溝43aを有している。係合溝43aは、係合部43のバネ部42との接続部43cと背向する端縁である先端縁43b側に開放する溝であり、上述の板バネ9の一端9aのように二俣状に分かれた分岐体を形成している。係合部43も平面状に延びている。中間ギア軸23の副軸側端部23bには、中間ギア軸23の中心軸に直交又は略直交する方向に延びる環状の溝である被係合溝23dが形成されており、係合部43の係合溝43aはこの被係合溝23dに係合可能になっている。この係合溝43aの上下方向に平行な一辺が被係合溝23dにおいて中間ギア軸23を押圧することで、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部31に向かう方向に中間ギア20が付勢されている。また、係合溝43aの左右方向に平行な二辺が被係合溝23dにおいて中間ギア軸23に接触しており、中間ギア軸23よって付勢バネ41の上下方向の移動は規制されている。
【0098】
バネ部42は、係合部43の中間ギア軸23への係合方向に弾性変形しやすい形状を有しており、具体的には、
図14に示すように、係合溝43aの延び方向に撓みやすい形状を有している。例えば、バネ部42は、係合部43の接続部43cから平面状に延びる腕部42aと、腕部42aと固定部44とを接続する立ち上がり部42bとを有している。立ち上がり部42bは、固定部44から固定部44の面する一方の側に斜めに延びる部分である。
【0099】
立ち上がり部42bが支持突起45とは反対側に固定部44から立ち上がる姿勢で付勢バネ41は固定部44においてネジ8dにより支持突起45に固定される。この固定状態において、係合部43の係合溝43aが中間ギア軸23の被係合溝23dに係合するように、また、この係合状態においてバネ部42が係合部43を中間ギア軸23に押圧する押圧力を発生するように、バネ部42や係合部43の寸法、係合部43の延び方向のバネ部42の延び方向に対する角度等が設定されている。また、この付勢バネ41の固定及び係合状態において、中間ギア軸23に取り付けられた止め輪144は、支持突起141の外側面141aに接触している。後述するバックラッシュ低減機能から、係合部43の係合溝43aは、付勢バネ41の固定状態において、中間ギア軸23の中心軸に直交又は略直交する方向に延びるように形成されていることが好ましい。なお、この付勢バネ41は、中間ギア軸23の中心軸方向への移動を規制することも可能なため、止め輪144を省略することもできる。
【0100】
次いで、アブソリュートエンコーダ2の付勢機構40の作用について説明する。
【0101】
アブソリュートエンコーダ2において、中間ギア軸23は、主軸側端部23aがベース3の支持突起141に形成された貫通孔143に挿通され、副軸側端部23bがベース3の支持突起142に形成された貫通孔145に挿通され、ベース3において支持されている。また、支持突起141の貫通孔143に挿通された主軸側端部23aの溝23cには止め輪144が取り付けられており、止め輪144は、支持突起141の外側面141aの面する側に位置するようにされた溝23cに取り付けられている。このように、中間ギア軸23は、主軸側端部23aから副軸側端部23bに向かう方向への移動が制限された状態で支持突起141,142に支持されている。
【0102】
中間ギア20は、このように中間ギア軸23に回転可能に支持されている。また、板バネ9の作用により、中間ギア20は、支持突起142に向かって付勢されており、中間ギア20の副軸側摺動部26が支持突起142の内側面142aに当接している(
図13参照)。
【0103】
上述のように、中間ギア軸23の副軸側端部23bを支持する長穴形状の貫通孔145は、長軸が短軸より長く、副軸側端部23bが貫通孔145の長軸に沿って、つまり水平面に沿って貫通孔145の長軸の幅の範囲で移動可能に支持されている。一方、中間ギア軸23の主軸側端部23aを支持する貫通孔143は、丸穴形状となっており、このため、アブソリュートエンコーダ2において、中間ギア軸23は、支持突起141、142の貫通孔143,145及び付勢機構40により、主軸側端部23aの支持部分を中心又は略中心として、水平面に沿って揺動可能になっている。
【0104】
また、このように支持された中間ギア軸23には、副軸側端部23bの被係合溝23dに付勢バネ41の係合部43が係合されており、付勢バネ41は、中間ギア軸23の副軸側端部23bに、中間ギア20の第2ウォームギア部22が副軸ギア30の第2ウォームホイール部31方向(第2噛み合い方向P2)に向かって押圧されるように、付勢力を与えている。これにより、中間ギア20の第2ウォームギア部22が副軸ギア30の第2ウォームホイール部31に押し付けられ、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部31とは、いわゆる底突き現象を起こし、ギア間のバックラッシュはゼロとなっている。
【0105】
また、揺動可能に支持された中間ギア軸23の運動側の副軸側端部23bが付勢バネ41によって付勢されているため、揺動時に中間ギア軸23は絶えず第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部31に向かう方向に付勢されている。このため、中間ギア軸23が揺動することによりギア間の回転に不具合を発生させることなく、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部31のバックラッシュを常にゼロにすることができる。
【0106】
例えば、アブソリュートエンコーダ2の周辺温度が高温になった場合、副軸ギア30は材質の線膨張係数に従って膨張し、第2ウォームホイール部31のギアのピッチ円が拡大する。この時、ベース3の支持突起142に形成された貫通孔145が本実施の形態のように長穴ではなく丸穴であった場合、中間ギア軸23の副軸側端部23bは貫通孔145によって固定されてしまい、中間ギア軸23は本実施の形態のように揺動することができない。このため、温度上昇によってギアのピッチ円が拡大した副軸ギア30の第2ウォームホイール部31は、中間ギアの22の第2ウォームギア部22に強い力で接触し、ギアが回転しなくなる場合がある。
【0107】
また、逆にアブソリュートエンコーダ2の周囲温度が低温になった場合、副軸ギア30は材質の線膨張係数に従って収縮し、第2ウォームホイール部31のギアのピッチ円が縮小する。この時、ベース3の支持突起142に形成された貫通孔145が本実施の形態のように長穴ではなく丸穴であった場合、中間ギア軸23の副軸側端部23bは貫通孔145によって固定されてしまい、中間ギア軸23は本実施の形態のように揺動することができない。この場合は、中間ギアの22の第2ウォームギア部22と副軸ギア30の第2ウォームホイール部31との間のバックラッシュが大きくなり、中間ギアの22の回転が精度良く副軸ギア30に伝わらなくなる。
【0108】
これに対し、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2においては、上述のように、中間ギア軸23は、主軸側端部23aの支持部分を中心又は略中心として、水平面に沿って揺動可能に支持されており、また、付勢機構40によって中間ギア20は、第2ウォームギア部22側から第2ウォームホイール部31側に常に付勢されている。また、中間ギア軸23に支持された中間ギア20は、板バネ9によって支持突起142に向かって付勢されている。このため、上述のように周囲温度の変化が起き、副軸ギア30の第2ウォームホイール部31のギアのピッチ円が変化した場合でも、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部31との歯面同士が常に適切な押圧力で接触した状態で、バックラッシュがゼロになる。このため、温度変化によってギアが回転しなくなったり、中間ギア20から副軸ギア30へ伝達する回転の精度が悪化することを避けることができる。
【0109】
なお、揺動による中間ギア軸23の副軸側端部23bの位置に拘わらず、付勢バネ41から一定又は略一定の押圧力が発生するように、付勢機構40を設定することが好ましい。
【0110】
上述のように、中間ギア軸23の主軸側端部23aを支持する支持突起141の貫通孔143は丸穴形状となっており、副軸側端部23bを支持する支持突起142の貫通孔145は長軸側の幅が短軸側の幅よりも大きい長穴形状をとなっており、中間ギア軸23は支持突起141の貫通孔143を支点に水平方向に平行に又は略平行に揺動できるようになっている。このため、中間ギア軸23の揺動において、第1ウォームギア部11に対する第1ウォームホイール部21の移動量よりも、第2ウォームホイール部31に対する第2ウォームギア部22の移動量の方が大きくなり、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部31が底突きをした場合でも、第1ウォームギア部11部と第1ウォームホイール部21とは底突きしない。
【0111】
図11~12に示すように、副軸側端部23bにおいて中間ギア軸23を支持する貫通孔145は、筒面又は略円筒面を形成しているが、貫通孔145は、このような形状を有するものに限られない。例えば、貫通孔145は、
図17に示すように、断面形状が長穴ではなく長方形又は略長方形であるものであってもよい。つまり、貫通孔145は、互いに対向する一対の面145a及び互いに対向する一対の面145bを形成する、四角柱状に延びる貫通孔であってもよい。貫通孔145を形成する一対の面145a及び一対の面145bは、平面であってもよく、曲面であってもよい。アブソリュートエンコーダ2において、一対の面145aが水平方向に延び、一対の面145bが上下方向に延びている。面145aの水平方向の幅は面145bの上下方向の幅よりも長くなっている。
図17に示す貫通孔145においても、上述の貫通孔145と同様に中間ギア軸23を揺動可能にすることができる。
【0112】
同様に貫通孔143は上述の形状を有するものに限られない。例えば、貫通孔143は、所謂ナイフエッジ構造を有するものであってもよい。具体的には、貫通孔143は、線接触又は点接触によって中間ギア軸23に接触するものであってもよい。例えば、貫通孔143は、
図18(a),(b)に示すように、貫通孔143の延び方向において内部側に向かうにつれて縮径する一対の円錐面状又は略円錐面状の傾斜面143cによって形成されているものでもよい。この場合、一対の傾斜面143cが接続する部分の丸穴を描く環状の線(接続線143d)において貫通孔143は中間ギア軸23と接触してこれを支持する。接続線143dの丸穴形状は、上述の貫通孔143の丸穴形状と平面視で同様の形状を有している。貫通孔143は線接触又は点接触によって中間ギア軸23を支持するため、貫通孔143の丸穴の径を中間ギア軸23の直径により近付けたとしても、中間ギア軸23を揺動可能にすることができる。このため、貫通孔143の断面形状を、貫通孔143と中間ギア軸23との間の間隙を有さない形状に近づけることができる。これにより、中間ギア軸23の揺動の際に貫通孔143と接触する中間ギア軸23の部分の移動を抑制することができ、中間ギア軸23の揺動によって、第1ウォームギア部11と第1ウォームホイール部21と間の距離の変動を抑制することができる。なお、支持突起142の貫通孔145についても、上述の支持突起141の貫通孔143のように所謂ナイフエッジ構造を有するものであってもよい、例えば長穴を描く環状の線を形成する一対の円錐面状又は略円錐面状の傾斜面によって形成されているものでもよい。
【0113】
また
、貫通孔145は、
図19(a),(b)に示すように、貫通孔145の延び方向において内部側に向かうに連れて細くなる一対の四角錐面状又は略四角錐面状の傾斜面145eによって形成されているものでもよい。この場合、一対の傾斜面145eが接続する部分の四角形若しくは略四角形を描く環状の線(接続線145f)において貫通孔145は中間ギア軸23と接触してこれを支持する。接続線145fは、互いに対向する一対の部分である線部145g及び互いに対向する一対の部分である線部145hを有している。一対の線部145g及び一対の線部145hは、直線であってもよく、曲線であってもよい。アブソリュートエンコーダ2において、一対の線部145gが水平に沿って延び、一対の線部145hが上下方向に延びている。線部145gの長さは線部145hの上下方向の長さよりも長くなっている。なお、支持突起141の貫通孔143についても、上述の支持突起142の貫通孔145のように、四角形若しくは略四角形を描く環状の線を形成する一対の四角錐面状又は略四角錐面状の傾斜面によって形成されているものであってもよい。この場合、環状の線は正方形又は略正方形となる。この場合も、上述の
図18の場合と同様に、貫通孔143は線接触又は点接触によって中間ギア軸23を支持するため、上下方向に延びる線部(
図19の線部145hに対応)の長さ及び水平方向に延びる線部(
図19の線部145gに対応)の長さを中間ギア軸23の直径により近付けたとしても、中間ギア軸23を揺動可能にすることができる。このため、貫通孔143の形状を、貫通孔143と中間ギア軸23との間の上下方向及び水平方向の間隙を有さない形状に近づけることができる。これにより、中間ギア軸23の揺動の際に貫通孔143と接触する中間ギア軸23の部分の移動を抑制することができ、中間ギア軸23の揺動によって、第1ウォームギア部11と第1ウォームホイール部21と間の距離の変動を抑制することができる。
【0114】
(制御部)
次いで、アブソリュートエンコーダ2の制御部について説明する。
図20は、
図2に示される基板5を下面5a側から見た図である。マイコン51、ラインドライバ52、双方向性ドライバ53、及びコネクタ6は、基板5に実装されている。マイコン51、ラインドライバ52、双方向性ドライバ53、及びコネクタ6は、基板5上のパターン配線によって電気的に接続されている。
【0115】
双方向性ドライバ53は、コネクタ6に接続される外部装置との間で双方向の通信を行う。双方向性ドライバ53は、操作信号等のデータを差動信号に変換して外部装置との間で通信を行う。ラインドライバ52は、回転量を表すデータを差動信号に変換し、差動信号をコネクタ6に接続される外部装置にリアルタイムで出力する。コネクタ6には、外部装置のコネクタが接続される。
【0116】
図21は、
図1に示すアブソリュートエンコーダ2の機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図21に示すマイコン51の各ブロックは、マイコン51としてのCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)がプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。
【0117】
マイコン51は、回転角取得部51p、回転角取得部51q、テーブル処理部51b、回転量特定部51c、及び出力部51eを備えている。回転角取得部51pは、角度センサSpから出力された信号をもとに主軸ギア10の回転角度Apを取得する。回転角度Apは、主軸ギア10の回転角度を示す角度情報である。回転角取得部51qは、磁気センサSqから出力された信号をもとに副軸ギア30の回転角度Aqを取得する。回転角度Aqは、副軸ギア30の回転角度を示す角度情報である。テーブル処理部51bは、副軸ギア30の回転角度Aqと、副軸ギア30の回転角度Aqに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した対応関係テーブルを参照して、取得した副軸ギア30の回転角度Aqに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。回転量特定部51cは、テーブル処理部51bによって特定された主軸ギア10の回転数と、取得した主軸ギア10の回転角度Apとに応じて主軸ギア10の複数回転にわたる回転量を特定する。出力部51eは、特定された主軸ギア10の複数回転にわたる回転量を、この回転量を示す情報に変換して出力する。
【0118】
以上に説明したように、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2では、中間ギア軸23を支持する貫通孔143,145並びに付勢バネ41の作用により、中間ギア20の第2ウォームギア部22と副軸ギア30の第2ウォームホイール部31との間のバックラッシュをゼロにすることができる。また、周囲温度が変化した場合でも、揺動可能に支持された中間ギア軸23に対する付勢バネ41の作用により、常に適切な押圧力で中間ギア20の第2ウォームギア部22及び副軸ギア30の第2ウォームホイール部31の歯面同士が接触する状態で、バックラッシュをゼロにできる。このため、温度変化によってギアが回転しなくなったり、中間ギア20から副軸ギア30へ伝達する回転精度が悪化することを避けることができる。
【0119】
このように、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2によれば、減速機構のバックラッシュが検出精度に与える影響を低減することができる。これにより、特定可能な主軸1aの回転量の分解能を維持しつつ、特定可能な主軸1aの回転量の範囲を広げることができる。
【0120】
また、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2においては、水平面に沿って配置される中間ギア20が、ベース3の外周面105~108に対して斜めに延びるように設けられることによって、前後方向及び左右方向へのアブソリュートエンコーダ2の寸法を小さくすることができる。
【0121】
また、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2において、第1ウォームホイール部21及び第2ウォームホイール部31の外径と、第1ウォームギア部11及び第2ウォームギア部22の外径とは、可能な範囲で小さな値に設定されている。これにより、アブソリュートエンコーダ2の上下方向(高さ方向)における寸法を小さくできる。
【0122】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよく、公知の技術と組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0123】
例えば、本実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2において、磁気干渉低減部材16,17は、主軸ギア10の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されるマグネットMpと、副軸ギア30の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されているマグネットMqとの双方の外周面Mpd,Mqdに設けられていたが、本発明はこれに限定されない。つまり、アブソリュートエンコーダ2において、磁気干渉低減部材は、主軸ギア10の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されるマグネットMpと、副軸ギア30の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されているマグネットMqとの少なくともいずれか一方の外周面Mpd,Mqdに設けられていればよい。また、例えば、磁気干渉低減部材16,17の形状は、上述の形状には限定されず、マグネットMp,Mqの外周面Mpd,Mqdに設けられて漏れ磁束を低減することができればよい。
【符号の説明】
【0124】
1…モータ、1a…主軸、1b…圧入部、2…アブソリュートエンコーダ、3…ベース、4…ケース、4a…外壁部、4b…蓋部、4c…ツメ部、5…基板、5a…下面、5b…位置決め孔、6…コネクタ、8a,8b,8c,8d…ネジ、9…板バネ、9a…一端、9b…他端、10…主軸ギア、11…第1ウォームギア部、12…主軸アダプタ、12a…上端面、13…筒状部、13a…上端面、14…圧入部、15…マグネット保持部、15a…内周面、15b…底面、16…磁気干渉低減部材、16a…内周面、16b…外周面、17…磁気干渉低減部材、17a…内周面、17b…外周面、20…中間ギア、21…第1ウォームホイール部、22…第2ウォームギア部、23…中間ギア軸、23a…主軸側端部、23b…副軸側端部、23c…溝、23d…被係合溝、24…筒状部、24a…貫通孔、24b…内周面、25…主軸側摺動部、26…副軸側摺動部、30…副軸ギア、31…第2ウォームホイール部、32…貫通孔、35…マグネットホルダ、35a…マグネット保持部、35b…軸部、40…付勢機構、41…付勢バネ、42…バネ部、42a…腕部、42b…立ち上がり部、43…係合部、43a…係合溝、43b…先端縁、43c…接続部、44…固定部、44a…孔、45…支持突起、45a…支持面、51…マイコン、51b…テーブル処理部、51c…回転量特定部、51e…出力部、51p,51q…回転角取得部、52…ラインドライバ、53…双方向性ドライバ、101…基部、102…下面、103…凹部、104…上面、105~108…外周面、110…基板支柱、111…上端面、112…ネジ穴、120…基板位置決めピン、121…先端部、122…基部、123…段差面、131,132,141,142…支持突起、131a…ネジ孔、134…ベアリングホルダ部、135…ベアリング、141a…外側面、142a…内側面、143,145…貫通孔、145a,145b…面、143c,145e…傾斜面、143d,145f…接続線、145g,145h…線部、144…止め輪、Ap,Aq…角度情報、BC…ベアリングの中心、GmC…主軸ギアの中心軸、GsC…副軸ギアの中心軸、MoC…モータの主軸の中心軸、Mp,Mq…マグネット、Mpa,Mqa…上面、Mpb,Mqb…下面、Mpd,Mqd…外周面、MpC,MqC…マグネットの中心軸、P…付勢方向、P1…第1噛み合い方向、P2…第2噛み合い方向、R1…第1変速機構、R2…第2変速機構、SaC…主軸アダプタの中心軸、SC…マグネットホルダの中心軸、Sp,Sq…角度センサ、XYZ…直交座標系