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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】用水管理システム
(51)【国際特許分類】
   E02B 9/04 20060101AFI20240718BHJP
   F03B 15/02 20060101ALI20240718BHJP
【FI】
E02B9/04 Z
F03B15/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020009052
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021116546
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】冨山 貴光
(72)【発明者】
【氏名】林 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】関 和市
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-164215(JP,A)
【文献】特開2008-002073(JP,A)
【文献】特開2005-143475(JP,A)
【文献】特開2019-179293(JP,A)
【文献】特開2012-117278(JP,A)
【文献】登録実用新案第3223811(JP,U)
【文献】特開2016-142187(JP,A)
【文献】特開2019-173597(JP,A)
【文献】特開2018-174520(JP,A)
【文献】特開2019-092455(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0291581(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 9/00-13/02
E02B 1/00-3/02
E02B 3/16-3/28
F03B 15/00-15/22
A01G 25/00-29/00
E02B 7/20-7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹線水路に配置されるロータを有する第1水力発電装置と、
支線水路に配置されるロータを有する第2水力発電装置と、
前記幹線水路の水位を検出する第1センサと、
前記支線水路の水位を検出する第2センサと、
前記第1水力発電装置の発電電力が供給される第1無線装置と、
前記第2水力発電装置の発電電力が供給される第2無線装置と、
前記第1無線装置と無線通信し、前記第2無線装置と無線通信する中継装置と、を備え、
前記第1無線装置は、前記第1センサが出力する水位を前記中継装置を介して管理サーバに通知し、
前記第2無線装置は、前記第2センサが出力する水位を前記中継装置を介して前記管理サーバに通知し、
用水管理システムは、前記幹線水路から前記支線水路に分岐する用水の流量を制御する水門の開閉を制御する水門制御装置を備え、
前記水門は前記支線水路に配置され、
前記水門制御装置には、前記第1水力発電装置の発電電力が供給され
前記管理サーバは、前記幹線水路の水位データと前記第1水力発電装置の発電電力データに基づいて前記幹線水路の流量を算出し、前記支線水路の水位データと前記第2水力発電装置の発電電力データに基づいて前記支線水路の流量を算出し、
前記管理サーバは、前記幹線水路の流量、前記支線水路の流量、圃場の必要給水量に基づいて前記圃場に最適な流量の用水が分配されるように、前記水門の制御信号を作成する用水管理システム。
【請求項2】
前記第2水力発電装置、前記第2センサ、及び前記第2無線装置のセットが前記支線水路の流れ方向に複数配置されることを特徴とする請求項1に記載の用水管理システム。
【請求項3】
前記第1無線装置と前記中継装置との無線通信、又は前記第2無線装置と前記中継装置との無線通信の少なくとも一つには、LPWA(Low Power Wide Area)が用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の用水管理システム。
【請求項4】
前記管理サーバは、前記中継装置を介して前記水門制御装置に前記水門の開閉を制御するための信号を送信することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の用水管理システム。
【請求項5】
前記第1センサ及び前記第2センサが水位を検出する水位センサを有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の用水管理システム。
【請求項6】
前記用水管理システムは、前記支線水路から用水が供給される圃場の環境データを検出する環境センサを備え、
前記第2無線装置は、前記環境センサが出力する環境データを前記中継装置を介して前記管理サーバに通知することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の用水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用水等の用水を管理するための用水管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
河川の取水口から取得された用水は、幹線水路と支線水路(用水路)を経由して農地(圃場)へ供給される。用水路は、一般的に土地改良区によって管理される。農業従事者が土地改良区の組合員であることが多く、用水路は農業従事者によって管理されることが多い。
【0003】
近年、農業従事者の減少、高齢化が進んでいる。農業従事者の負担を軽減するため、用水管理の自動化が求められている。例えば、特許文献1には、河川から取得した用水を複数の領域に自動的に分散する広域分散用水分配システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-2073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、用水は、河川の取水口から末端の圃場群まで、非常に広大な領域を流れる。用水管理を自動化するためには、用水路の各箇所で電源を確保し、各所で水位データ等の流水状態を取得し、流量及び/又は流速を把握すると共に、広域に分散する多数の箇所を有線又は無線で接続し、水位データ等の流水状態を管理サーバに集約する必要がある。既存の通信網だけでは不十分であるし、かといって用水路の多数の箇所で携帯用通信回線を開設すると、例えば3G回線維持費用が莫大になる。このため、用水管理の自動化は、コスト的にも設備的にも実現が困難であった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、低コストで安定的な用水管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、幹線水路に配置されるロータを有する第1水力発電装置と、支線水路に配置されるロータを有する第2水力発電装置と、前記幹線水路の水位を検出する第1センサと、前記支線水路の水位を検出する第2センサと、前記第1水力発電装置の発電電力が供給される第1無線装置と、前記第2水力発電装置の発電電力が供給される第2無線装置と、前記第1無線装置と無線通信し、前記第2無線装置と無線通信する中継装置と、を備え、前記第1無線装置は、前記第1センサが出力する水位を前記中継装置を介して管理サーバに通知し、前記第2無線装置は、前記第2センサが出力する水位を前記中継装置を介して前記管理サーバに通知し、用水管理システムは、前記幹線水路から前記支線水路に分岐する用水の流量を制御する水門の開閉を制御する水門制御装置を備え、前記水門は前記支線水路に配置され、前記水門制御装置には、前記第1水力発電装置の発電電力が供給され、前記管理サーバは、前記幹線水路の水位データと前記第1水力発電装置の発電電力データに基づいて前記幹線水路の流量を算出し、前記支線水路の水位データと前記第2水力発電装置の発電電力データに基づいて前記支線水路の流量を算出し、前記管理サーバは、前記幹線水路の流量、前記支線水路の流量、圃場の必要給水量に基づいて前記圃場に最適な流量の用水が分配されるように、前記水門の制御信号を作成する用水管理システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、幹線水路と支線水路を活用して、メッシュ(網の目)のように電波を張り巡らせた用水管理システムを低コストで安定的に実現することができる。また、水門制御装置に第1水力発電装置の発電電力を供給するので、水門が閉じていて、第2水力発電装置が発電できない状態でも、水門を開くことができる。水門を開くことにより、第2水力発電装置が発電し、第2無線装置に電力が供給され、支線水路の流水状態、例えば水位、水温、流量、又は流速等の少なくとも1つを中継装置を介して管理サーバに通知することができ、支線水路の管理が可能となる。さらに、圃場の必要給水量に基づいて圃場に最適な流量の用水を分配することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る用水管理システムの概要図である。
図2】第1水力発電装置の構成を示す図である。
図3】ロータと発電機の斜視図である。
図4】第1無線装置の構成を示す図である。
図5】第2無線装置の構成を示す図である。
図6】中継装置の構成を示す図である。
図7】管理サーバの構成を示す図である。
図8】水門制御装置の構成を示す図である。
図9】支線水路に形成した電波メッシュを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の用水管理システムを詳細に説明する。ただし、本発明の用水管理システムは、種々の形態で具体化することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を十分に理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る用水管理システム100の概要図である。本実施形態の用水管理システム100は、第1水力発電装置1、第1センサ11、第1無線装置21、第2水力発電装置2a,2b,2c、第2センサ12a,12b,12c、第2無線装置22a,22b,22c、中継装置3、管理サーバ4を備える。
【0012】
河川の取水口から取得された用水は、幹線水路5と支線水路6a,6bを経由して圃場7a,7b,7cに供給される。幹線水路5は、河川の取水口に接続される。支線水路6a,6bは、幹線水路5から分岐する。幹線水路5と支線水路6a,6bとの間には、水門8a,8bが配置される。幹線水路5は、水門8a,8bの上流側にあり、支線水路6a,6bは、水門8a,8bの下流側にある。水門8a,8bは、幹線水路5から支線水路6a,6bに分岐する用水の流量を制御する。支線水路6a,6bには、圃場7a,7b,7cが接続される。圃場7a,7b,7cは、例えば水田である。圃場7a,7b,7cには、支線水路6a,6bから適切な水位になるように給水が行われる。
【0013】
なお、必ずしも幹線水路5が河川の取水口に接続され、支線水路6a,6bが圃場7a,7b,7cに接続されていなくてもよい。幹線水路5から支線水路6a,6bが分岐していればよい。
【0014】
以下に本実施形態の用水管理システム100の構成要素を説明する。以下の説明にあたり、支線水路6a,6b、水門8a,8b、圃場7a,7b,7c、第2水力発電装置2a,2b,2c、第2センサ12a,12b,12c、第2無線装置22a,22b,22cについて、特に区別しない場合は、支線水路6、水門8、圃場7、第2水力発電装置2、第2センサ12、第2無線装置22と記載する。後述する環境センサ13a,13b,13c、カメラ14a,14b,14cについても、特に区別しない場合は、環境センサ13、カメラ14と記載する。
(第1水力発電装置、第2水力発電装置)
【0015】
図2は、第1水力発電装置1の構成を示す。第1水力発電装置1は、水車としてのロータ41、発電機42、制御装置43、蓄電池44を備える。図1に示すように、ロータ41は、幹線水路5に配置されて、用水の流れを受けて回転する。発電機42は、電動機からなり、ロータ41の回転により発電を行う。制御装置43は、発電機42を制御すると共に、発電機42の発電電力を出力する。発電機42の発電電力は、制御装置43を介して蓄電池44に送られ、蓄電池44に充電される。
【0016】
図3は、ロータ41と発電機42の斜視図を示す。幹線水路5には、架台45が取り付けられる。架台45には、発電機42が取り付けられる。発電機42には、ロータ41が連結される。ロータ41は、発電機42に連結される垂直軸46と、垂直軸46の周囲に配置されて、垂直方向に延びる複数のブレード47と、を備える。なお、ロータ41として、水平軸の先端にプロペラを配置したものを使用してもよい。
【0017】
本実施形態のロータ41は、落差式水車や抗力式水車ではなく、水の流れのエネルギによって回転する水流式水車である。水流式水車を用いることで、幹線水路5から支線水路6に適切な流量の用水を分配し、支線水路6の流れ方向に複数のロータ41を配置することが可能になる。これに対し、落差式水車や抗力式水車では、越水のリスクがあり、管理されている用水の流れを変えてしまうので、幹線水路5から支線水路6に適切な流量の用水を分配できないおそれがある。
【0018】
第2水力発電装置2も第1水力発電装置1と同様に、ロータ41、発電機42、制御装置43、蓄電池44を備える。第2水力発電装置2の構成は、発電容量が第1水力発電装置1よりも小さい点を除いて、第1水力発電装置1と略同一なので、同一の符号を附してその説明を省略する。図1に示すように、第2水力発電装置2のロータ41は、支線水路6に配置される。ただし、第2水力発電装置2の発電容量はこれに限定されず、第1水力発電装置1の発電容量と同程度にしても同様の効果が得られる。
(第1センサ、第2センサ)
【0019】
図1に示すように、幹線水路5には、第1センサ11が配置される。第1センサ11は、幹線水路5の流水状態、例えば水位を検出する第1水位センサ及び/又は温度を検出する第1温度センサと、を備える。第1水位センサが出力する水位データは、第1無線装置21に送信される。第1温度センサが出力する温度データは、第1無線装置21に送信される。第1無線装置21と第1センサ11とは、有線又は無線で通信可能に接続される。第1無線装置21と第1センサ11とを無線で接続する場合、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、Z-Wave、Zigbee等の通信方式を用いることができる。
【0020】
支線水路6には、第2センサ12が配置される。第2センサ12は、支線水路6の流水状態、例えば水位を検出する第2水位センサ及び/又は温度を検出する第2温度センサと、を備える。第2水位センサが出力する水位データは、第2無線装置22に送信される。第2温度センサが出力する温度データは、第2無線装置22に送信される。第2無線装置22と第2センサ12とは、有線又は無線で通信可能に接続される。
(第1無線装置、第2無線装置)
【0021】
図1に示すように、第1無線装置21は、第1センサ11が出力する幹線水路5の流水状態、例えば水位データ及び/又は温度データを中継装置3を介して管理サーバ4に通知する。第1無線装置21には、第1水力発電装置1の発電電力が供給される。第1無線装置21は、第1水力発電装置1の発電電力データも中継装置3を介して管理サーバ4に通知する。
【0022】
図4は、第1無線装置21の構成を示す。第1無線装置21は、制御部51、記憶部52、LPWA無線モジュール53、アンテナ54を備える。記憶部52は、第1センサ11が出力する幹線水路5の流水状態、例えば水位データ及び/又は温度データを記憶する。LPWA無線モジュール53は、アンテナ54を介して中継装置3のLPWA無線モジュール63(図6参照)と通信する。制御部51は、LPWA無線モジュール53の通信を可能にし、幹線水路5の水位データ及び/又は温度データを記憶部52に記憶させ、第1センサ11を制御する。
【0023】
図1に示すように、第1無線装置21は、中継装置3と無線通信する。第1無線装置21と中継装置3との無線通信には、LPWA(Low Power Wide Area)が用いられる。LPWAは、Sub-GHz帯を使用した低消費電力で遠距離通信可能な通信方式である。低消費電力で遠距離通信可能であるので、LPWAは電源がない環境で広域の無線通信に適している。LPWAの通信回線として、例えばLoRa(Long Range)、Sigfox、ZETA、NB-IoT(Narrow Band-IoT)等を用いることができる。
【0024】
第2無線装置22は、第2センサ12が出力する水位データ及び/又は温度データを中継装置3を介して管理サーバ4に通知する。第2無線装置22には、第2水力発電装置2の発電電力が供給される。第2無線装置22は、第2水力発電装置2の発電電力データも中継装置3を介して管理サーバ4に通知する。
【0025】
図5は、第2無線装置22の構成を示す。第2無線装置22は、第1無線装置21と同様に、制御部51、記憶部52、LPWA無線モジュール53、アンテナ54を備える。第2無線装置22の構成は、第1無線装置21と略同一であるので、同一の符号を附してその説明を省略する。
【0026】
第2無線装置22には、第2センサ12だけでなく、環境センサ13、カメラ14が有線又は無線で接続される。環境センサ13、カメラ14の電源は、電池であっても、第2水力発電装置2でもよい。
【0027】
図1に示すように、圃場7には、圃場7の環境データを検出する環境センサ13が配置されると共に、支線水路6の水位及び/又は圃場7の農作物をモニタリングするカメラ14が配置される。環境センサ13は、例えば、大気の温度及び湿度を検出する大気センサ、圃場7の土壌の温度及び湿度を検出する土壌センサ、圃場7の雨量を検出する雨量センサ、圃場7の水位を検出する水位センサ、圃場7の水温を検出する温度センサ等である。カメラ14は、支線水路6及び/又は農作物の静止画像又は動画像を撮影する。環境センサ13が出力する環境データ、及びカメラ14が出力する画像データは、第2無線装置22に送信される。
【0028】
図1に示すように、第2水力発電装置2、第2センサ12、環境センサ13、カメラ14、第2無線装置22のセットは、圃場7の数に合わせて支線水路6の流れ方向に複数配置される。第2センサ12が出力する水位データ及び/又は温度データ、第2水力発電装置2が出力する発電電力データ、環境センサ13が出力する環境データ、カメラ14が出力する画像データは、圃場7毎に一括管理される。第2無線装置22は、これらのデータに圃場7毎の識別情報を付与して、中継装置3に送信する。なお、複数の第2無線装置22が中継装置3と直接的に無線通信してもよいし、ある1つの第2無線装置22が隣接する別の第2無線装置22を経由して(すなわちマルチホップして)中継装置3と無線通信してもよい。
(中継装置)
【0029】
図1に示すように、中継装置3は、第1無線装置21と無線通信し、第2無線装置22と無線通信する。図6は、中継装置3の構成を示す。中継装置3は、制御部61、記憶部62、LPWA無線モジュール63、アンテナ64、3G/LTE無線モジュール65を備える。記憶部62は、第1無線装置21と第2無線装置22から受信した各種のデータを記憶する。LPWA無線モジュール63は、アンテナ64を介して第1無線装置21のLPWA無線モジュール53と無線通信すると共に、第2無線装置22のLPWA無線モジュール53と無線通信する。3G/LTE無線モジュール65は、LTE(Long Term Evolution)、3G回線、4G回線、又は5G回線等を用いて、基地局9(図1参照)を介して管理サーバ4と無線通信する。制御部61は、LPWA無線モジュール63の通信を可能にし、3G/LTE無線モジュール65の通信を可能にする。また、制御部61は、第1無線装置21と第2無線装置22から受信した各種のデータをIP通信方式にプロトコル変換して管理サーバ4に送信し、管理サーバ4から受信したIP通信方式のデータをLPWAの通信方式にプロトコル変換して水門制御装置15(図1参照)に送信する。中継装置3には、系統電源から電力が供給されてもよいし、第1水力発電装置1から電力が供給されてもよいし、第2水力発電装置2から電力が供給されてもよい。
(管理サーバ)
【0030】
図1に示すように、管理サーバ4は、クラウド環境上又は土地改良区の事務所に設けられる。パーソナルコンピュータ16は、用水路の管理者(農業従事者)が土地改良区の事務所、自宅等で使用するネットワーク端末である。携帯端末17は、圃場7で農作業を行う農業従事者が利用するネットワーク端末である。携帯端末17は、タブレット、スマートフォン等である。パーソナルコンピュータ16、携帯端末17は、管理サーバ4にアクセスすることができる。パーソナルコンピュータ16、携帯端末17のディスプレイには、管理サーバ4が受信した各種のデータが表示される。
【0031】
図7は、管理サーバ4の構成を示す。管理サーバ4は、制御部71、記憶部72、通信部73を備える。記憶部72には、管理サーバ4が受信した各種のデータが記憶される。通信部73は、中継装置3、パーソナルコンピュータ16、及び携帯端末17と通信を行うためのインターフェースである。制御部71は、記憶部72に受信した各種のデータを記憶させ、通信部73の通信を可能にする。また、制御部71は、受信した各種のデータと圃場7の必要給水量に基づいて、水門8の開閉を制御するための信号を作成する。圃場7の必要給水量の情報は、パーソナルコンピュータ16、携帯端末17から入力される。制御部71は、CPUがソフトウェアを実行することによって実現される。なお、農業従事者のノウハウを標準化するために、制御部71が、受信した各種のデータと農作物の収穫量とを関連づける機械学習をするようにしてもよい。
【0032】
管理サーバ4は、水門8を制御するための信号を例えば以下のように作成する。まず、管理サーバ4は、幹線水路5の水位データと第1水力発電装置1の発電電力データに基づいて、幹線水路5の流量を算出する。また、管理サーバ4は、支線水路6の水位データと第2水力発電装置2の発電電力データに基づいて、支線水路6の流量を算出する。
【0033】
次に、管理サーバ4は、幹線水路5の流量、支線水路6の流量、圃場7の必要給水量に基づいて、圃場7に最適な流量の用水が分配されるように、水門8の制御信号を作成する。図1に示すように、管理サーバ4は、水門8を制御するための信号を中継装置3を介して水門制御装置15に送信する。
【0034】
なお、管理サーバ4は、幹線水路5の温度データと支線水路6の温度データに基づいて、冷水が圃場7に供給されないように、水門8を制御してもよい。
(水門制御装置)
【0035】
図8は、水門制御装置15の構成を示す。水門制御装置15は、制御部81、記憶部82、LPWA無線モジュール83、アンテナ84を備える。記憶部82は、管理サーバ4から受信した水門8の制御信号を記憶する。LPWA無線モジュール83は、アンテナ84を介して中継装置3のLPWA無線モジュール63(図6参照)と無線通信する。制御部81は、LPWA無線モジュール83の通信を可能にし、管理サーバ4から受信した水門8の制御信号に基づいて、水門8の駆動部85(モータ)を制御し、水門8の制御信号を記憶部82に記憶させる。水門制御装置15には、第1水力発電装置1の発電電力が供給される。水門の駆動部85(モータ)は、第1水力発電装置1の発電電力によって動作する。
【0036】
以上に本実施形態の用水管理システム100の構成を説明した。本実施形態の用水管理システム100によれば、以下の効果を奏する。
【0037】
幹線水路5と支線水路6を活用して、メッシュ(網の目)のように電波を張り巡らせた用水管理システム100を低コストで安定的に実現することができる。
【0038】
幹線水路5に配置した第1水力発電装置1と支線水路6に配置した第2水力発電装置2を用水管理システム100の電源として利用するので、安定的な用水管理システム100を実現できる。これに対し、太陽光発電を利用すると、曇りのときや夜間に発電量が低下するので、安定的な発電量を確保しにくいという問題がある。もちろん、第1水力発電装置1と第2水力発電装置2に付加的に太陽光発電を用いてもよい。
【0039】
中継装置3が第1無線装置21と管理サーバ4との通信を中継すると共に、中継装置3が第2無線装置22と管理サーバ4との通信を中継するので、第1無線装置21と第2無線装置22それぞれに携帯用通信回線を開設する必要がなくなり、用水路を活用して低コストに電波メッシュを構築することができる。
【0040】
図9に示すように、第2水力発電装置2b,2c,2d、第2水位センサ12b,12c,12d、及び第2無線装置22b,22c,22dのセットを支線水路6bの流れ方向に電波が重畳するように複数配置するので、支線水路6bに低コストで安定的な広域の電波メッシュを構築することができる。
【0041】
第1無線装置21と中継装置3との無線通信、又は第2無線装置22と中継装置3との無線通信の少なくとも一つにLPWAを用いるので、電源がない環境で広域の無線通信が可能になる。
【0042】
水門制御装置15に第1水力発電装置1の発電電力を供給するので、水門8が閉じていて、第2水力発電装置2が発電できない状態でも、水門8を開くことができる。水門8を開くことにより、第2水力発電装置2が発電し、第2無線装置22と第2センサ12に電力が供給され、支線水路6の流水状態、例えば水位、水温、流量、又は流速等の少なくとも1つを中継装置3を介して管理サーバ4に通知することができ、支線水路6の管理が可能となる。
【0043】
管理サーバ4が中継装置3を介して水門制御装置15に水門8の開閉を制御するための信号を送信するので、水門8を遠隔制御できる。
【0044】
第1センサ11と第2センサ12が水位を検出する水位センサを有するので、幹線水路5と支線水路6の水位、流量を効率的に取得することができる。
【0045】
圃場7に環境データを検出する環境センサ13を設け、環境センサが出力する環境データを第2無線装置22が中継装置3を介して管理サーバ4に通知するので、圃場7の環境データを管理することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…第1水力発電装置、2a,2b,2c…第2水力発電装置、3…中継装置、4…管理サーバ、5…幹線水路、6a,6b…支線水路、7a,7b,7c…圃場、8a,8b…水門、11…第1センサ、12a,12b,12c…第2センサ、13a,13b,13c…環境センサ、15…水門制御装置、21…第1無線装置、22a,22b,22c…第2無線装置、100…用水管理システム
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9