(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-17
(45)【発行日】2024-07-25
(54)【発明の名称】一体化電子部品を備えるハニカムコアを作製するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/12 20060101AFI20240718BHJP
B32B 7/14 20060101ALI20240718BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20240718BHJP
H05K 1/14 20060101ALI20240718BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240718BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20240718BHJP
【FI】
B32B3/12
B32B7/14
H05K1/02 B
H05K1/14 D
H10N30/30
H10N30/88
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020042664
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ドレクスラー
(72)【発明者】
【氏名】シャオシー ワン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン シー.ウィルデ
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-198101(JP,A)
【文献】特開平04-005033(JP,A)
【文献】米国特許第5445861(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H10N 1/00
H10N 30/00
B64C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカムコアと、当該ハニカムコアの表面に貼着された1つ以上の表面プライ又は積層体と、を含む複合材部品であって、前記ハニカムコアは、
複数のシートを含むとともに複数のセルを構成するハニカム基板と、
前記ハニカム基板の前記シートに印刷された複数の配線と、
前記ハニカム基板に配置された電子デバイスと、を含
み、
前記電子デバイスは、前記ハニカム基板の前記シートのうちの1つに印刷されているとともに、前記配線に電気的に接続されている、複合材部品。
【請求項2】
ハニカムコアと、当該ハニカムコアの表面に貼着された1つ以上の表面プライ又は積層体と、を含む複合材部品であって、前記ハニカムコアは、
複数のシートを含むとともに複数のセルを構成するハニカム基板と、
前記ハニカム基板の前記シートに印刷された複数の配線と、
前記ハニカム基板に配置された電子デバイスと、を含み、
前記電子デバイスは、前記セルのうちの1つ内に配置されているとともに、前記配線に電気的に接続されている、
複合材部品。
【請求項3】
前記シートは、前記シート間で互いに対して位置ずれした接着剤ストリップによって、接合線において互いに接着されている、請求項1
又は2に記載の
複合材部品。
【請求項4】
前記接合線上で前記ハニカム基板の前記シートを貫通して設けられたビアをさらに含む、請求項
3に記載の
複合材部品。
【請求項5】
互いにアライメントされて隣接しているビアどうしの間に配置された導電性接着剤をさらに含む、請求項
3又は4に記載の
複合材部品。
【請求項6】
前記電子デバイスは、センサ、圧電発電機、バッテリ、スピーカ、ノイズ除去/遮断装置、及び、静電気放電装置のうちの少なくとも1つである、請求項1~
5のいずれか1つに記載の
複合材部品。
【請求項7】
ハニカムコアと、当該ハニカムコアの表面に貼着された1つ以上の表面プライ又は積層体と、を含む複合材部品を作製するための方法であって、
複数のシートの各々に複数の配線を印刷することと、
前記シートから前記ハニカムコアを形成することと、
前記配線に電子デバイスを接続することと、を含む
、方法。
【請求項8】
前記配線に前記電子デバイスを接続することは、前記電子デバイスを前記シートに印刷することを含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記シートを貫通させてビアを形成することをさらに含む、請求項
7又は8に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハニカムコアを作製するためのシステム及び方法に関する。より具体的には、本開示は、一体化電子部品を備えるハニカムコアを作製するためのシステム及び方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
複合材部品から製造される装飾用又は内装用パネル及び音響パネルは、多くの産業で使用されている。このような複合材部品は、1つ以上の表面プライ又は積層体が貼着されたハニカムコアを含んでいる。ハニカムコアによれば、表面プライどうしを離間させることによって分離させるとともに、パネルに厚みを加えることができ、これにより、パネルの曲げ強度が向上する。さらに、音の伝達を抑制する、あるいは耐火性の材料又は構造を選択することにより、ハニカムコアによって、複合材部品に防音性及び耐火性を与えることができる。
【0003】
このような複合材部品は、その意図された機能において役立っているが、当技術分野では、さらに機能が追加されたハニカムコアを有する複合材部品を作製するためのシステム及び方法が、必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
一側面において、一体化電子素子を有するハニカムコアが提供される。当該ハニカムコアは、複数のシートを含むハニカム基板を含む。ハニカム基板のシートには、複数の配線が印刷されている。ハニカム基板には、複数の一体化電子素子が配置されている。一体化電子素子は、配線に接続されている。
【0005】
別の側面において、ハニカムコアが提供される。当該ハニカムコアは、複数のシートを含むとともに複数のセルを構成するハニカム基板を含む。ハニカム基板には、電子デバイスが配置されている。電子デバイスは、例えば、セル内に配置されるか、あるいは、シートに印刷されている。
【0006】
別の側面において、ハニカムコアを作製するための方法が提供される。当該方法は、複数のシートの各々に複数の配線を印刷することを含む。次に、シートからハニカムコアが形成される。
【0007】
さらに別の態様において、一体化電子デバイスを有するハニカムコアを使用する方法が提供される。当該方法は、ハニカムコア内に配置された電子デバイスに電力を供給することを含む。次に、電子デバイスから出力が生成される。出力は、電力、信号、音響、及び/又は、静電放電を含みうる。
【0008】
上述した特徴、機能、利点は、様々な態様において個別に達成することができ、あるいは、他の態様と組み合わせてもよく、そのさらなる詳細は、以下の記載及び図面を参照することによって明らかになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
ここで説明する図面は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを何ら意図しない。
【0010】
【
図1】例示的な態様による、電子部品を有するハニカムコアを作製するためのシステムの概略図である。
【
図2B】
図1に示した交互配置シートの拡大図である。
【
図3A】
図1に示したシート及びビアの、矢印3A-3A方向視における断面図である。
【
図3B】
図1に示したシート及び別の例のビアの、矢印3B-3B方向視における断面図である。
【
図4】
図1に示したシートの積層体の、矢印4-4方向視における断面図である。
【
図5】
図1に示したハニカム基板の拡大斜視図である。
【
図6】例示的な態様による、電子部品を有するハニカムコアを作製するための別のシステムの概略図である。
【
図7A】
図6に示したシート及びビアの、矢印7A-7A方向視における断面図である。
【
図7B】
図6に示したシート及び別の例のビアの、矢印7B-7Bの方向視における断面図である。
【
図8】ハニカム基板及び電子デバイスの分解斜視図である。
【
図9】例示的な態様による、
図1のシステムを用いて電子部品を有するハニカムコアを作製する方法を示す、例示的なプロセスフローチャートである。
【
図10】例示的な態様による、
図6のシステムを用いて電子部品を有するハニカムコアを作製する方法を示す、例示的なプロセスフローチャートである。
【
図11】例示的な態様による、
図1及び
図6のシステムを用いた、電子部品を有するハニカムコアを使用する方法を示す、例示的なプロセスフローチャートである。
【
図12】航空機の製造及び保守方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明は、単に例示的な性質のものであり、本開示やその適用例又は用途を限定することを意図するものではない。
【0012】
図1を参照すると、同図には、電子部品を有するハニカムコアを製造するためのシステム10の概略図が示されている。システム10は、後述するように、航空機の製造及び保守に関連して用いることができる。例えば、システム10は、内装作製や音響パネルを含む航空機の部品及びサブアセンブリの製造、航空機のシステム統合、機体の製造、及び、航空機の定例の整備及び保守において、用いることができる。ただし、システム10は、他の様々な産業においても用いることができ、その数例を挙げると、自動車、建設、グラフィックス、及び、一般的な輸送産業がある。
【0013】
システム10は、第1マシン14に送給されるシート12を含む。シート12は、第1マシン14に対して、連続プロセスで送給される材料ロール(図示せず)を用いてロール状に送給してもよいし、
図1に示すようにシート状に送給してもよい。当該シートは、第1面12A、及び、第1面12Aの反対側の第2面12Bを有する。シート12は、機械的靭性、可撓性、及び弾性を与える芳香族ポリアミド紙、例えばNOMEX(登録商標)の商品名で販売されているもの、であることが好ましい。ただし、本開示の範囲から逸脱しないのであれば、シート12は、織布、セルロース紙、プラスチック、又は、非導電性金属などであってもよい。
【0014】
第1マシン14は、シート12に対して、様々な電子部品及び他の材料を配置するように構成されている。第1マシン14は、配線プリンタ16、接着剤塗布装置18、ビア設置装置20、及び、電子デバイス実装装置22を含む。なお、本開示の範囲から逸脱しないならば、配線プリンタ16、接着剤塗布装置18、ビア設置装置20、及び、電子デバイス実装装置22は、別個の装置であってもよい。さらに、本開示の範囲から逸脱しないのであれば、配線プリンタ16、接着剤塗布装置18、ビア設置装置20、及び、電子デバイス実装装置22は、任意の順序で、シート12に作用することができる。
【0015】
配線プリンタ16は、シート12の第1面12Aに任意の数の配線24を印刷する、直接書き込みプリンタである。配線24は、シート12の第1面12Aに印刷してもよいし、シート12の第1面12A及び第2面12Bの両方に印刷してもよい。通常、配線24は導電性である。例えば、配線24は、導電性インクを含む。配線24は、後述するように、シート12にパターン状に印刷されて、回路を形成する。
【0016】
接着剤塗布装置18は、シート12の第2面12Bに接着剤28を塗布する。接着剤塗布装置18は、例えば、プリンタ、又は、コーティング装置である。
図2Aは、シート12の第2面12Bを示しており、当該面において、接着剤28が、接着剤のストリップ28Aとして、シート12に塗布されている。接着剤ストリップ28Aは、次に積層される交互配置シートの第1面12Aに接着する。
図2Bは、交互配置シート12’を示しており、当該シートには、接着剤28が、接着剤ストリップ28A(
図2A)から位置ずれした接着剤ストリップ28Bの形態で塗布されている。交互配置シート12’上の接着剤ストリップ28Bを位置ずれさせることにより、シート12と交互配置シート12’とを積層した後に展開した際に、ハニカムコアのような構造体を形成することができる。
【0017】
図1に戻ると、ビア設置装置20は、シート12を貫いて複数のビア30を設置するように構成されている。ビア30は、シート12を通る導電経路、及び/又は、気体の通気経路として作用する。第1の例において、ビア30は、グロメットとして構成される。
図3Aは、第1マシン14を通過後のシート12における、ビア30のうちの1つを通る断面を示している。ビア30は、第1面12Aから第2面12Bまで、シート12を通って延びている。ビア30は、接着剤ストリップ28A又は接着剤ストリップ28Bのうちの一方が設けられている箇所として定義される接合線32に配置されている。接合線32は、後述するように、隣接する積層シート12どうしが接合又は接着される箇所である。ビア30は、シート12を貫通する穴33を規定する環状体30Aを有している。この穴33により、ビア30を通じての通気が可能である。環状体30Aは、配線24と接触している。ビア30は、導電性であり、銅、アルミニウム、銀、金、スズ、又は、任意の他の導電性材料によって形成される。一態様において、接着剤塗布装置18(
図1)が、ビア30の上に導電性接着剤34を塗布する。導電性接着剤34は、
図3を参照して後述するように、シート12間でアライメントされたビア30間に電気的接続をもたらす。
【0018】
第2の例では、ビア30は、リベットとして構成されたビア30’に代えられる。
図3Bは、第1マシン14を通過後のシート12における、ビア30’のうちの1つを通る断面を示している。ビア30’は、第1面12Aから第2面12Bまで、シート12を通って延びている。ビア30’は、配線24と電気的に接触している。ビア30’は、中実であり、ビア30(
図3A)とは異なり、開口を構成していない。ビア30’は、導電性であり、銅、アルミニウム、銀、金、スズ、又は、任意の他の導電性材料によって形成される。一態様において、接着剤塗布装置18(
図1)が、ビア30’の上に導電性接着剤34を塗布する。導電性接着剤34は、
図3を参照して後述するように、シート12間でアライメントされたビア30’間に電気的接続をもたらす。
【0019】
図1に戻ると、電子デバイス実装装置22は、シート12の第1面12Aに複数の電子デバイス36を印刷する直接書き込みプリンタである。電子デバイス36は、配線24と接触して、電気回路を形成する。電子デバイス36は、シート12の第1面12Aに印刷してもよいし、シート12の第1面12A及び第2面12Bの両方に印刷してもよい。本開示の一態様において、電子デバイス36は、カビ又は真菌の検出装置、湿度センサ、圧力センサ、音響もしくは振動センサ、又はこれらの任意の組み合わせなどのセンサを含みうる。電子デバイス36は、配線24を介して供給される電流によって、電力供給される。配線24に接続された電源(図示せず)、又は、電子デバイス36自体によって、電力を供給することもできる。
【0020】
第1マシン14を通過すると、複数のシート12は、次に、積層されて、ブロック40を形成する。
図4は、ブロック40の断面図を示している。ブロックは、シート12及び交互配置シート12’によって構成される。シート12上の接着剤ストリップ28Aは、交互配置シート12’の第1面12Aに接着する。交互配置シート12’上の接着剤ストリップ28Bは、シート12の第1面12Aに接着する。接着剤ストリップ28Aが交互配置シート12’に接着する箇所、及び、接着剤ストリップ28Bがシート12に接着する箇所が、接合線32を形成している。シート12と交互配置シート12’とは、ビア30が互いにアライメントして通気経路37を形成するように、配置される。導電性接着剤34が、アライメントされた隣接するビア30どうしを、電気的に接続する。
【0021】
図1に戻ると、接着剤28は、任意の工程としてブロック40をセクション42にスライス又は切断する前に、硬化させられる。セクション42は、次に、セクション42を展開してハニカム基板46を形成するための第2マシン44に入れられる。第2マシン44は、様々な形態をとることができるが、通常は、セクション42に引張をかける。
図5は、ハニカム基板46の拡大図を示している。展開された際に、シート12と交互配置シート12’とは、接合線32で繋がったままである。シート12と交互配置シート12’との間には、複数のセル48が形成される。セル48は六角形として示されているが、本開示の範囲から逸脱しないのであれば、セル48は、他の形状を有しうる。セル48の壁50には、電子デバイス36が配置されている。壁50は、接合線32どうしの間に設けられている。通気経路49は、ビア30を介して、セル48間を連通している。
【0022】
再び
図1に戻ると、ハニカム基板46は、次に、ハニカム基板46に樹脂を塗布するための浸漬コーティング装置52に入れられる。ハニカム基板46に樹脂が付着する。樹脂は、40~50dyn/cmの表面エネルギーを有するフェノール樹脂であることが好ましい。樹脂は、エポキシ及びポリエステル樹脂も含みうる。樹脂は、ハニカム基板46全体を被覆する。ハニカム基板46は、次に、浸漬コーティング装置52から取り出されて、硬化装置54に入れられる。硬化装置54は、例えばオートクレーブ又はオーブンなどであり、ハニカム基板46上の樹脂を昇温下にて硬化させる。硬化されると、ハニカム基板46は、電子部品を有するハニカムコア56となり、これが、フェイスシートを追加する積層装置、オートクレーブ外硬化装置などの1つ以上の後処理装置58(
図1)に入れられて、最終品(図示せず)が形成される。
【0023】
図6は、電子部品を有するハニカムコアを製造するための別のシステム200の概略図である。システム200は、システム10と類似しており、同様の部品は、同様の参照数字で示している。ただし、システム200では、電子デバイス実装装置22が、樹脂離型剤塗布装置202に代わっている。樹脂離型剤塗布装置202は、シート12の第1面12A上における、ビア30及び配線24の一部に樹脂離型剤204を塗布するプリンタ又はコーティング装置である。
【0024】
図7Aは、第1マシン14を通過後のシート12における、ビア30のうちの1つを通る断面を示している。樹脂離型剤204は、穴33の内部、及び、ビア30の環状体30Aの上に、設けられている。
図7Bは、第1マシン14を通過後のシート12における、ビア30’のうちの1つを通る断面を示している。樹脂離型剤204は、ビア30’の上に設けられている。各態様において、樹脂離型剤204は、ハニカム基板46における樹脂離型剤204が塗布された部分に、樹脂が付着するのを防ぐ。
【0025】
図6に戻ると、樹脂離型剤204は、付着防止対象の樹脂よりも表面エネルギーの低い材料によって形成される。その一例として、Luscher社製のインクジェット印刷可能UVマスキングブラックワックス130度ワックス-JCHP7941のような低表面エネルギーワックス系材料がある。
【0026】
第1マシン14を通過すると、複数のシート12は、次に、積層されて、ブロック40を形成する。接着剤28は、任意の工程としてブロック40をセクション42にスライス又は切断する前に、硬化させられる。セクション42は、次に、セクション42を展開してハニカム基板46を形成するための第2マシン44に入れられる。ハニカム基板46は、次に、ハニカム基板46に樹脂を塗布するための浸漬コーティング装置52に入れられる。樹脂は、ハニカム基板46に付着するが、樹脂離型剤204には付着しない。従って、樹脂離型剤204は、ビア30及び配線24の一部を樹脂が被覆するのを防止する。ハニカム基板46は、次に、浸漬コーティング装置52から取り出されて、硬化装置54に入れられる。硬化装置54は、例えばオートクレーブ又はオーブンなどであり、ハニカム基板46上の樹脂を昇温下にて硬化させる。ビア30及び配線24の一部を樹脂が被覆するのを防止することによって、後述するように、電子デバイスを配線24及び/又はビア30に接続することができる。
【0027】
硬化すると、ハニカム基板46は、分解装置206に入れられる。分解装置206は、樹脂離型剤204を分解する、すなわち、樹脂離型剤204を除去することにより、ビア30及び配線24の一部を露出させる。一態様において、樹脂離型剤204を分解することは、溶剤で樹脂離型剤204を洗い落すことを含む。別の態様において、樹脂離型剤204を分解することは、樹脂離型剤204を熱分解することを含む。熱分解は、樹脂離型剤204を加熱して材料を分解することを含む。さらに別の態様において、樹脂離型剤204を分解することは、樹脂離型剤204を重力浮遊させることを含む。重力浮遊させることは、樹脂離型剤を浮き上がらせることができる溶液(図示せず)にハニカム基板46を浸漬することを含む。
【0028】
分解が終わると、ハニカム基板46は、電子デバイス実装装置208に入れられる。電子デバイス実装装置208は、複数の電子デバイス210(
図8に示す)をハニカム基板46に挿入するように構成されている。1つ又は複数の電子デバイス実装装置208を用いることができる。電子デバイス実装装置208は、電子デバイス210の実装を自動化するためのロボットアーム(図示せず)のエンドエフェクタを含みうる。一例において、電子デバイス実装装置208は、ばね式のセンサ供給装置のニードルアレイである。
図8は、電子デバイス210のうちの1つを有するハニカム基板46の一部の分解拡大図を示している。電子デバイス実装装置208(
図6)は、ハニカム基板46のセル48のうちの1つに、電子デバイス210を挿入する。電子デバイス210は、樹脂によって被覆されていない配線24に接触するように構成された接点212を含んでおり、これにより、電気回路を形成する。電子デバイス210は、接着性材料あるいは発泡体などの膨張可能材料(図示せず)を用いて、あるいは、ビア内に機械的に係合する永久的な嵌め込み(click-on)機能によって、セル48内の所定位置に固定して、容易に実装することができる。電子デバイス210は、圧電発電機、バッテリ、スピーカ、ノイズ除去/遮断装置、静電気放電装置、又は、セル48内に嵌入する任意の他の装置、あるいは、それらの組み合わせであってよい。
【0029】
図6に戻ると、ハニカムコア56は、完成すると、積層装置や脱オートクレーブ硬化装置などの1つ以上の後処理装置58に入れられて、最終品(図示せず)が形成される。
【0030】
引き続き
図1~
図5も参照しつつ、
図9を参照すると、同図には、システム10を用いてハニカムコア56を形成するための方法300のフローチャートが示されている。方法300は、ブロック302において開始し、当該ブロックでは、第1マシン14によって、複数のシート12の各々に、複数の配線24が印刷される。ブロック304において、配線24に電子デバイス36が接続される。電子デバイス36は、シート12に印刷される。ブロック306において、シート12からハニカムコア56が形成される。ハニカムコア56を形成することは、上述したように、シート12に接着剤28を塗布すること、シート12を積層してブロック40を形成すること、ブロック40を切断してセクション42を形成すること、セクション42を展開してハニカム基板46を形成すること、ハニカム基板46を樹脂でコーティングすること、及び、樹脂を硬化させることを含む。
【0031】
引き続き
図6~
図8も参照しつつ、
図10を参照すると、同図には、システム200を用いてハニカムコア56を形成するための方法400のフローチャートが示されている。方法400は、ブロック402において開始し、当該ブロックでは、第1マシン14によって、複数のシート12の各々に、複数の配線24が印刷される。ブロック404において、シート12における配線24の少なくとも一部の上に、樹脂離型剤204が塗布される。ブロック406において、シート12からハニカム基板46が形成される。ハニカム基板46を形成することは、シート12に接着剤28を塗布すること、シート12を積層してブロック40を形成すること、ブロック40を切断してセクション42を形成すること、セクション42を展開してハニカム基板46を形成すること、ハニカム基板46を樹脂でコーティングすること、及び、樹脂を硬化させることを含む。
【0032】
ブロック408において、分解装置206によって樹脂離型剤204が分解される。これにより、配線24が樹脂から露出される。ブロック410において、電子デバイス210が配線24に接続される。電子デバイス210は、セル48のうちの1つに挿入され、接点212が、樹脂から露出した配線24に接触する。
【0033】
システム10を方法300で用いること及びシステム200を方法400で用いることによって作製されたハニカムコア56は、様々な複合材部品に使用することができる。配線24及び電子デバイス36、210は、複合材部品の強度及び音響特性を低下させることなく、複合材部品によって複数の機能を実現させることができる。例えば、複合材部品における振動によって、エネルギーが生成され、これをバッテリに保存することができる。電気回路は、いくつかの電子デバイス210が故障しても、エネルギーを生成及び保存することによって、残りの電子デバイス210が動作するように設計される。従って、ハニカムコア56は、電子機器(図示せず)に電力供給するためのエネルギーハーベスティング(energy harvesting)装置となる。例えば、表面実装ディスプレイ(図示せず)をハニカムコア56に接続することにより、移動、広告、及び安全に関するリアルタイムの情報を、移動中に生成したエネルギーを用いて提供することができる。さらに、いくつかの用途を上げると、センサを用いて、複合材部品の状態に関するフィードバックを提供することもできる。
【0034】
図11は、電子デバイス36又は電子デバイス210を有するハニカムコア56を使用する方法450を示している。方法450は、ステップ452において、ハニカムコア56内に配置された電子デバイス36又は電子デバイス210に電力を供給することによって開始する。一態様において、この電力は、ハニカムコア56の配線24に接続された外部電源(図示せず)によって供給される。代替の態様においては、電子デバイス36又は電子デバイス210が電力を生成し、当該デバイスは、例えば、バッテリ又は圧電発電機である。ステップ454において、電子デバイス36又は電子デバイス210から出力が生成される。この出力は、使用されている電子デバイス36又は電子デバイス210の種類によって異なる。例えば、一態様において、電子デバイス36又は電子デバイス210がバッテリ又は圧電発電機の場合、出力を生成することは、電力を生成することを含む。別の態様において、電子デバイス36又は電子デバイス210がセンサの場合、出力を生成することは、データ信号を生成することを含む。さらに別の態様において、出力を生成することは、静電放電を発生させることを含む。さらに別の態様において、出力を生成することは、音響信号を生成することを含む。音響信号は、例えば、スピーカからのもの、あるいは、ノイズ除去信号のいずれかである。
【0035】
上述したシステム10及びシステム200、ならびに、方法300、方法400、及び、方法450は、
図12に示すような航空機の製造及び保守方法500、及び、
図13に示すような航空機502に関連して、用いることができる。生産開始前において、例示的な方法500は、航空機502の仕様決定及び設計504と、材料調達506とを含む。製造中には、航空機502の部品及びサブアセンブリの製造508、及び、システム統合510が行われる。その後、航空機502は、就航514に入るために、認証及び納品512を経る。顧客による就航の期間中は、航空機502は、定例の整備及び保守516(改良、再構成、改修、及び他の適当な保守を含みうる)のスケジュールに組み込まれる。
【0036】
本明細書に記載のシステム及び方法の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又は、オペレータ(例えば顧客)によって実行又は実施することができる。なお、システムインテグレータは、航空機メーカ及び主要システム下請業者をいくつ含んでいてもよく、その数は特に限定されない。また、第三者は、売主、下請業者、供給業者をいくつ含んでいてもよく、オペレータは、例えば、航空会社、リース会社、軍事団体、サービス組織などであってよい。
【0037】
図13に示すように、例示的な方法500によって製造される航空機502は、複数のシステム520及び内装522を有する機体518を含みうる。システム520の例としては、推進系524、電気系526、油圧系528、及び、環境系530のうちの1以上が挙げられる。また、その他のシステムをいくつ含んでもよい。また、航空宇宙産業に用いた場合を例として説明したが、本開示の原理は、自動車産業などの他の産業に適用してもよい。
【0038】
上述したシステム及び方法は、例示的な方法500の工程のうちの任意1つ以上において、採用することができる。例えば、部品及びサブアセンブリの製造工程508において製造される部品及びサブアセンブリを、航空機502の就航期間において製造される部品及びサブアセンブリと同様に製造してもよい。また、1以上の装置の態様、方法の態様、又はそれらの組み合わせを、部品及びサブアセンブリの製造工程508及びシステム統合工程510で用いることによって、例えば、実質的に航空機502の組み立て速度を大幅に速めたり、コストを削減したりすることができる。同様に、1つ以上の装置の態様、方法の態様、又は、それらの組み合わせを、航空機502の就航期間において、例えば、限定するものではないが、整備及び保守516に用いてもよい。上述したシステム10及びシステム200、ならびに、方法300、400、及び450の態様は、材料調達506、部品及びサブアセンブリの製造508、システム統合510、航空機の就航514、定例の整備及び保守516、機体518、及び、内装522において、採用することができる。
【0039】
さらに、本開示は、以下の付記による実施例を含む。
【0040】
付記1. 複数のシートを含むハニカム基板と、前記ハニカム基板の前記シートに印刷された複数の配線と、を含むハニカムコア。
【0041】
付記2. 前記配線は、導電性のインクを含む、付記1に記載のハニカムコア。
【0042】
付記3. 前記ハニカム基板に配置されるとともに前記配線に接続された電子デバイスをさらに含む、付記1又は2に記載のハニカムコア。
【0043】
付記4. 前記電子デバイスは、前記シートのうちの1つに印刷されている、付記3に記載のハニカムコア。
【0044】
付記5. 前記電子デバイスは、前記ハニカム基板によって構成されるセル内に配置されている、付記3に記載のハニカムコア。
【0045】
付記6. 前記ハニカム基板の前記シートを貫通して設けられたビアをさらに含む、付記1~5のいずれか1つに記載のハニカムコア。
【0046】
付記7. 前記シートは、接合線に沿って互いに接合されており、前記ビアは、前記接合線に配置されている、付記6に記載のハニカムコア。
【0047】
付記8. 前記ビアは、前記シートを貫通して設けられるとともに各々が穴を構成するグロメットである、付記6又は7に記載のハニカムコア。
【0048】
付記9. 前記ビアは、導電性を有する、付記8に記載のハニカムコア。
【0049】
付記10. 前記ビアは、前記シートを貫通して延びる導電性のリベットである、付記6又は7に記載のハニカムコア。
【0050】
付記11. 前記ビアは、前記配線に接続されている、付記6~10のいずれか1つに記載のハニカムコア。
【0051】
付記12. 付記1~11のいずれか1つに記載の前記ハニカムコアを用いて航空機の一部を製造すること。
【0052】
付記13. 複数のシートを含むとともに複数のセルを構成するハニカム基板と、前記ハニカム基板に配置された電子デバイスと、を含むハニカムコア。
【0053】
付記14. 前記ハニカム基板の前記シートに印刷された複数の配線をさらに含む、付記13に記載のハニカムコア。
【0054】
付記15. 前記電子デバイスは、前記ハニカム基板の前記シートのうちの1つに印刷されているとともに、前記配線に電気的に接続されている、付記14に記載のハニカムコア。
【0055】
付記16. 前記電子デバイスは、前記セルのうちの1つ内に配置されているとともに、前記配線に電気的に接続されている、付記14に記載のハニカムコア。
【0056】
付記17. 前記シートは、前記シート間で互いに対して位置ずれした接着剤ストリップによって、接合線において互いに接着されている、付記13~16のいずれか1つに記載のハニカムコア。
【0057】
付記18. 前記接合線上で前記ハニカム基板の前記シートを貫通して設けられたビアをさらに含む、付記17に記載のハニカムコア。
【0058】
付記19. 互いにアライメントされて隣接しているビアどうしの間に配置された導電性接着剤をさらに含む、付記17又は18に記載のハニカムコア。
【0059】
付記20. 前記電子デバイスは、センサ、圧電発電機、バッテリ、スピーカ、ノイズ除去/遮断装置、及び、静電気放電装置のうちの少なくとも1つである、付記13~19のいずれか1つに記載のハニカムコア。
【0060】
付記21. 付記1~20のいずれか1つに記載の前記ハニカムコアを用いて航空機の一部を製造すること。
【0061】
付記22. 付記1~11のいずれか1つに記載の前記ハニカムコアを作製するための方法であって、複数のシートの各々に複数の配線を印刷することと、前記シートから前記ハニカムコアを形成することと、を含む方法。
【0062】
付記23. 複数のシートの各々に複数の配線を印刷することと、前記シートから前記ハニカムコアを形成することと、を含む、ハニカムコアを作製するための方法。
【0063】
付記24. 前記配線に電子デバイスを接続することをさらに含む、付記22又は23に記載の方法。
【0064】
付記25. 前記配線に前記電子デバイスを接続することは、前記電子デバイスを前記シートに印刷することを含む、付記24に記載の方法。
【0065】
付記26. 前記シートを貫通させてビアを形成することをさらに含む、付記22~25のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
付記27. 付記1~11又は付記13~20のいずれか1つに記載のハニカムコアを使用する方法であって、前記ハニカムコア内に配置された前記電子デバイスに電力を供給することと、前記電子デバイスから出力を生成することと、を含む方法。
【0067】
付記28. 電子デバイスを有するハニカムコアを使用する方法であって、前記ハニカムコア内に配置された前記電子デバイスに電力を供給することと、前記電子デバイスから出力を生成することと、を含む方法。
【0068】
付記29. 前記出力を生成することは、電力を生成することを含む、付記27又は28に記載の方法。
【0069】
付記30. 前記出力を生成することは、データ信号を生成することを含む、付記27~29のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
付記31. 前記出力を生成することは、静電放電を発生させることを含む、付記27~30のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
付記32. 前記出力を生成することは、音響信号を生成することを含む、付記27~31のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
付記33. 前記出力を生成することは、電力、データ信号、静電放電、及び、音響信号のうちの少なくとも1つを生成することを含む、付記27又は28に記載の方法。
【0073】
付記34. 付記27~33のいずれか1つに記載の方法を用いて航空機を動作させること。
【0074】
本開示の説明は、単に例示的な性質のものであり、本開示の要旨から逸脱しない変形例は、本開示の範囲に含まれることを意図している。また、そのような変形例は、本開示の精神及び範囲から逸脱するものとみなされるべきではない。